JP2022044038A - ドネペジル含有経皮吸収液剤およびその製造方法 - Google Patents

ドネペジル含有経皮吸収液剤およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】認知症予防および/または治療において、ドネペジルの安定な放出能を保持しつつ、所望の効果を得ることができる経皮吸収製剤、その使用および製造方法を提供する。【解決手段】ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる、経皮吸収液剤を用いる。水溶性添加剤が、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、高級モノアルコール、多価アルコール脂肪酸エステル、炭酸エステル、モノアルコール脂肪酸エステルおよび高級脂肪酸からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。【選択図】図1

Description

本開示は、ドネペジルまたはその塩を含んでなる経皮吸収液剤およびその製造方法に関する。
ドネペジルは、アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の治療薬であり、患者には一般的には経口的に投与されている。本剤の投与対象者であるアルツハイマー型認知症またはレビー小体型認知症の患者は高齢者である場合が多い。高齢者においては同疾患の進行や老化や種々の他疾患の影響で、嚥下機能の低下の認められることが多い。嚥下機能の低下は嚥下障害と称されることが多い。嚥下障害の患者にとっては、通常の食物は勿論のこと、固形物である通常の錠剤やカプセル剤を飲み込むことが困難である。そこで、ドネペジルについては通常の錠剤と細粒剤に加え、口腔内崩壊錠やゼリー剤が既に開発されている。
しかしながら、嚥下障害の程度は病態や老化の進行によって差が大きい。細粒剤や易崩壊性製剤さえも服用が困難な患者も見られる。特に高齢者では唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾燥していることが多く、口腔内崩壊錠といえども口腔内では容易に崩壊せず、長時間口腔内に残留することが多々、経験される。細粒剤は水と共に服用することが必要であるが、水とともに服用することは、誤嚥の原因となることがある。また服用後、いつまでも細粒剤の一部が口腔内に残存し、異物感を訴えることがある。
また、アルツハイマー病等の認知症は、通常、加齢とともに進行するため、その治療剤は長期連用が必須である。しかし、アルツハイマー病の主要な治療剤として既に臨床応用されているドネペジルを代表とするコリンエステラーゼ阻害剤は、長期連用により副作用が発生する場合や、半年以上の長期連用によりそのアルツハイマー病治療作用が低下する場合があるという問題がある。
また、症状が進んだ認知症患者は抗認知症薬物を服用することが困難となる場合が少なくない。
かかる状況にあって、医療現場では、患者にとって肉体的・精神的負担の少ない用法、用量で、アルツハイマー病等の認知症や、それに伴う病態や臨床症状を効果的、且つ、安全に改善することができる医薬用の製剤の開発が切望されている。特に、症状の進んだ患者に対してドネペジルを経皮的に投与することで服用の困難を回避して長期間連続して薬物を投与することが可能になるため、有用であると考えられる。
しかし、一般に皮膚は薬物の透過性が低く、十分な効果を奏する薬物量を、皮膚を通じて体内に透過させることは困難である。この問題を解消するため、従来から経皮吸収製剤が研究されている。
特許文献1には、抗認知症薬物の経皮投与のための軟膏等および直腸投与のための座剤が開示されており、高級アルコールとそのエステル誘導体を含有する基剤により、塩酸ドネペジルの経皮吸収性が向上するとされている。
また、特許文献2には、支持層、薬物含有マトリックス層、粘着層および剥離層から構成される経皮吸収製剤であって有効成分がドネペジルである製剤が開示されている。
しかし、現在、塩酸ドネペジルを有効成分とする医薬品で現在市場に流通しているものは内服する薬剤のみであり、依然として薬物の安定な放出能を保持しつつ、所望の治療効果を得ることができる経皮吸収製剤が求められている。
特開平11-315016号公報 特表2015-508813号公報
開示の概要
本開示者らは、鋭意検討の結果、ドネペジルまたはその塩と水溶性添加剤とを組み合わせて調製した特定の液剤を用いて、ドネペジルまたはその塩を経皮的かつ効率的に投与できることを見出した。本開示はこれらの知見に基づくものである。
したがって、本開示は、ドネペジルまたはその塩を経皮的かつ効率的に投与することが可能な製剤を提供することを一つの目的としている。
本開示の一つの態様によれば、ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる、経皮吸収液剤が提供される。
また、本開示の別の態様によれば、ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる混合液を加熱する工程を含んでなる、経皮吸収液剤の製造方法が提供される。
本開示によれば、ドネペジルまたはその塩と水溶性添加剤とを組み合わせて調製した液剤を用いて、ドネペジルまたはその塩を経皮的かつ効率的に投与することができる。本開示の経皮吸収液剤によれば、広範な皮膚適用面積に適用しても、既存の錠剤等と同程度の効果を示すことが可能であり、嚥下障害を有する患者の予防または治療に対しても容易に使用しうる点で特に有利である。また、本開示の経皮吸収液剤によれば、ドネペジルを速やかに生体に対して経皮的に投与しうることから、液剤の塗布量や皮膚適用面積の影響を回避しつつ、一定のドネペジル血中濃度を達成することが可能となる。また、本開示の経皮吸収製剤によれば、ドネペジルは速やかに生体に吸収されることから、液剤の塗布量や厚さを低減し、薄く塗り広げることにより、一定のドネペジル血中濃度を達成することができる。したがって、本開示の経皮吸収液剤は、液だれを防止し、液だれ防止用の布、ガーゼ、カップ等、液剤の含浸や適用部位の被覆を目的とした部材の使用を回避する上で有利である。また、本開示の経皮吸収製剤によれば、液剤の塗布量や皮膚適用面積の影響を回避しながらドネペジル血中濃度を一定に保つことが容易であるため、医療従事者や患者自身等の製剤塗布の手技によらず安定的な治療効果を達成しうる点でも有利である。また、本開示の経皮吸収液剤は良好な保存安定性を示し、長期保存後に使用しても良好な治療効果を達成しうる点でも有利である。
図1は処方10および12をそれぞれ1mL、20cmの皮膚に適用した場合の血中ドネペジル濃度の推移を表している。 図2は処方12を0.6mL、80cm、160cmおよび240cmの皮膚に適用した場合の血中ドネペジル濃度の推移を表している。 図3は処方12を0.8mL、80cm、160cmおよび240cmの皮膚に適用した場合の血中ドネペジル濃度の推移を表している。 図4は処方12を1.0mL、80cm、160cmおよび240cmの皮膚に適用した場合の血中ドネペジル濃度の推移を表している。 図5は40℃75%RHで6箇月および室温で3箇月保存した後の、処方12および14の製剤の外観を表している。 図6は処方14を0.8mL、80cm、160cm、240cmおよび320cmの皮膚に適用した場合の血中ドネペジル濃度の推移を表している。 図7は処方14を1.0mL、80cm、160cm、240cmおよび320cmの皮膚に適用した場合の血中ドネペジル濃度の推移を表している。
発明の具体的説明
定義
本明細書において、「アルキル」とは、直鎖状、分岐状または環状のアルキルを意味し、好ましくは総炭素数(C)が2~18である。また、本明細書において、「アルコール」とは、直鎖状、分岐状または環状の飽和または不飽和アルコールを意味する。
経皮吸収液剤
本開示の一つの実施形態によれば、経皮吸収液剤は、ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなることを特徴としている。ドネペジルと水溶性添加剤とを組み合わせた液剤を用いると、高度の薬物フラックスを達成し、ひいてはドネペジルを経皮的かつ効率的に生体に投与しうることは意外な事実である。
ドネペジルまたはその塩の含有量は、特に限定されないが、0.5~20質量%とすることができ、好ましくは3~20質量%であり、より好ましくは3~15質量%である。このようにドネペジルまたはその塩の含有量を設定することは、効率的に薬物を経皮投与する上で好ましい。
ドネペジルの塩としては薬理学上許容される塩であれば特に限定されず、無機酸塩または有機酸塩のいずれであってもよいが、例えば、塩酸塩、酒石酸塩、臭化水素酸塩などが挙げられる。
また、経皮吸収液剤に使用される水溶性添加剤は、ドネペジルの効果的な経皮投与の観点から、好ましくは、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、高級モノアルコール、多価アルコール脂肪酸エステル、炭酸エステル、モノアルコール脂肪酸エステルおよび高級脂肪酸からなる群から選択される少なくとも一つであり、より好ましくは多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、ならびに、高級モノアルコールおよび/または多価アルコール脂肪酸エステルである。したがって、一つの態様によれば、経皮吸収液剤における水溶性添加剤は、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物および高級モノアルコールを含んでなる。また、一つの態様によれば、経皮吸収液剤における水溶性添加剤は、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物および多価アルコール脂肪酸エステルを含んでなる。また、一つの態様によれば、経皮吸収液剤における水溶性添加剤は、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、高級モノアルコールおよび多価アルコール脂肪酸エステルを含んでなる。また、一つの態様によれば、経皮吸収液剤における水溶性添加剤は、さらに炭酸エステルを含んでなる。
多価アルコールは、例えば、2~6価アルコールであり、好ましくは2~5価アルコールであり、より好ましくは2~4価アルコールである。
多価アルコールは、例えば、糖アルコールおよび/またはグリコールであってもよく、具体的には、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、d―ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ポリエチレングリコール等を挙げることができ、これらは単独でまたは組み合わせて用いられてもよい。より好ましい態様によれば、多価アルコールは、グリセリンまたはプロピレングリコールである。
本開示の好ましい態様によれば、アミノ基を有する高分子化合物は、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルと、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびこれらの組み合わせから選択されるモノマー単位とから構成されるコポリマーである。かかるコポリマーは、薬物を安定に保持し、かつ良好な薬物のフラックスを実現する上で有利である。
また、アミノ基を有する高分子化合物は、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエチルコポリマーであり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸ジC1~2アルキルアミノC1~2アルキルと、(メタ)アクリル酸C1~4アルキル、および(メタ)アクリル酸モノヒドロキシC2~4アルキルをモノマー単位して含んでなるコポリマーであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル・(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマーであり、さらに好ましくはメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマーである。かかるメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマーは、例えば、オイドラギット(登録商標)E100(デグサ社)として市販されている。
また、上記アミノ基を有する高分子化合物において、モノマー単位のモル比、分子量等は、当業者が適宜調節することが可能である。
また、経皮吸収液剤におけるアミノ基を有する高分子化合物の含量は、特に限定されないが、好ましくは1~25質量%であり、より好ましくは3~20質量%である。
高級モノアルコールは、飽和または不飽和のC6以上の直鎖または分岐アルコールを意味する。高級モノアルコールは、好ましくは飽和または不飽和のC6~25の直鎖または分岐アルコールである。高級モノアルコールとしては、例えば、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等を挙げることができ、好ましくはオレイルアルコールである。
高級モノアルコール配合量は、経皮吸収液剤の全量に対して、1~20質量%であっても良く、3~12質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
多価アルコール脂肪酸エステルは、好ましくは糖アルコール脂肪酸エステルまたはグリコール脂肪酸エステルであり、より好ましくはグリコール脂肪酸エステルであり、さらに好ましくはプロピレングリコール脂肪酸エステルである。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等が挙げられるが、好ましくはモノラウリン酸プロピレングリコールまたはモノカプリル酸プロピレングリコールである。
多価アルコール脂肪酸エステルを使用する場合、その配合量は、経皮吸収液剤の全量に対して、好ましくは1つの成分当たり15質量%以下であり、より好ましくは1つの成分当たり1~12質量%である。
モノアルコール脂肪酸エステルは、好ましくはC6~18脂肪酸アルキルエステルであり、C12~18脂肪酸C1~18アルキルエステルである。モノアルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸メチルまたはラウリン酸ヘキシル等が挙げられるが、好ましくは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイルまたはラウリン酸ヘキシルであり、より好ましくはミリスチン酸イソプロピルである。
モノアルコール脂肪酸エステルを使用する場合、その配合量は、経皮吸収液剤の全量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
高級脂肪酸は、通常C6以上の脂肪酸を意味し、好ましくはC6~20の脂肪酸である。高級脂肪酸は、イソステアリン酸、ラウリン酸等が挙げられるが、好ましくはイソステアリン酸である。
高級脂肪酸を使用する場合、その配合量は、経皮吸収液剤の全量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。
炭酸エステルは、好ましくは、炭酸における2つの水素原子を直鎖、分岐鎖または環状の1または2つのアルキル基で置き換えた炭酸アルキルエステルである。前記炭酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、限定されるわけではないが、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~4である。前記炭酸アルキルエステルは、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられるが、好ましくは炭酸プロピレンである。
本開示の経皮吸収液剤は、ドネペジルについて、高度の薬物フラックスを達成することができる。本開示の一つの実施態様によれば、皮膚への適用後5時間までドネペジルの最大フラックスとしては、例えば、5~800〔μg/cm/hour〕であり、好ましくは100~600〔μg/cm/hour〕であり、より好ましくは200~500〔μg/cm/hour〕である。本開示の一つの実施態様によれば、適用する皮膚は特に限定されないが、好ましくはヘアレスマウス皮膚である。
また、本開示の一つの実施態様によれば、経皮吸収液剤について、皮膚への適用後5時間までのドネペジルの累積皮膚透過量としては、例えば、10~1800(μg/cm)であり、好ましくは50~1500(μg/cm)である。本開示の一つの実施態様によれば、適用する皮膚は特に限定されないが、好ましくはヘアレスマウス皮膚である。
製造方法
経皮吸収製剤は、ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤を適宜混合撹拌して製造することができる。混合の順序、撹拌速度・時間等の条件は、当業者が適宜決定することができる。
また、経皮吸収製剤の製造においては、経皮吸収性の向上の観点から、ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤の混合液を加熱処理することが好ましい。したがって、本開示の一つの態様によれば、ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる混合液を加熱する工程を含んでなる、経皮吸収液剤の製造方法が提供される。加熱温度は、特に限定されないが、例えば、60~90℃であり、好ましくは65~85℃であり、より好ましくは80~85℃である。加熱は、特に限定されないが、4分間以上行うことが好ましい。また、加熱は繰り返し行ってもよい。
また、本開示の一つの態様によれば、経皮吸収性の向上の観点から、ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる混合液が澄明になるまで加熱することが好ましい。なお、澄明とは、濁っておらず、透けて見えることを意味し、無色透明の他、例えば、黄色等の着色を有するが、健常人による目視により透けて見えることも包含する。
用途
本開示の好ましい態様によれば、経皮吸収液剤は、1週間1回皮膚に塗布して適用(塗布時間24時間)する場合、認知症を顕著に効果的に治療するのに特に有利である。したがって、本開示の好ましい態様によれば、上記経皮吸収液剤は1週間1回皮膚に塗布する(塗布時間24時間)ために用いられる。
また、別の態様によれば、経皮吸収液剤は、皮膚刺激の抑制や、薬物の安定かつ効率的な投与を勘案すれば、1日1回程度で適用してもよい。したがって、本発明の別の態様によれば、上記経皮吸収液剤は、生体の皮膚に1日に1回適用するために用いられる。
本開示による経皮吸収液剤によれば、ドネペジルまたはその塩を安定して持続的に経皮的に投与することができ、症状が進行した患者においても認知症を効果的に治療することが可能となる。したがって、本開示の別の態様によれば、上記経皮吸収液剤を生体の皮膚に適用する工程を含んでなる、認知症の治療方法が提供される。
上記生体としては、哺乳動物等が挙げられるが、好ましくはヒトである。
本発明の一つの態様によれば、経皮吸収製剤は、様々な皮膚適用面積に適用しても、優れたドネペジルの経皮吸収性を維持することができる。かかる皮膚適用面積としては、特に限定されないが、例えば、1cm以上であり、好ましくは20cm以上であり、より好ましくは80~320cmである。
経皮吸収製剤は、様々な用法・用量で対象の皮膚に適用することができる。一つの態様によれば、上記治療方法においては、経皮吸収液剤を皮膚に1日1回適用する。また、別の態様によれば、上記治療方法においては、経皮吸収液剤を皮膚に1週間に1回適用する。また、別の好ましい態様によれば、上記治療方法において、治療開始1日目に成人1人当たりの1週間当たりの投与量が投与され、次の6日間が休薬期間であり、2週目以降は1週目と同じ投与スケジュールを繰り返す。
また、本発明の一つの好ましい態様によれば、以下の(1)~(21)を提供することができる。
(1)ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる、経皮吸収液剤。
(2)前記水溶性添加剤が、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、高級モノアルコール、多価アルコール脂肪酸エステル、炭酸エステル モノアルコール脂肪酸エステルおよび高級脂肪酸からなる群から選択される少なくとも一つである、(1)に記載の経皮吸収液剤。
(3)前記水溶性添加剤が、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、ならびに、高級モノアルコールおよび/または多価アルコール脂肪酸エステルを含んでなる 、(1)または(2)に記載の経皮吸収液剤。
(4)前記水溶性添加剤が、さらに炭酸エステルを含んでなる、(3)に記載の経皮吸収液剤。
(5)前記ドネペジルまたはその塩が、0.5~20質量%である、(1)~(4)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(6)前記多価アルコールが、2~6価アルコールである、(2)~(5)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(7)前記多価アルコールが、グリセリンまたはプロピレングリコールである、(2)~(6)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(8)前記アミノ基を有する高分子化合物が、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルと、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびこれらの組み合わせから選択されるモノマー単位とから構成されるコポリマーである(2)~(7)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(9)前記アミノ基を有する高分子化合物が、(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエチルコポリマーである、(2)~(8)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(10)前記高級モノアルコールが、炭素数6~25のモノアルコールである、(2)~(9)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(11)前記高級モノアルコールが、オレイルアルコールである、(2)~(10)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(12)前記多価アルコール脂肪酸エステルが、糖アルコール脂肪酸エステルまたはグリコール脂肪酸エステルである、(2)~(11)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(13)前記多価アルコール脂肪酸エステルが、モノラウリン酸ソルビタン、モノカプリル酸プロピレングリコール、またはモノラウリン酸プロピレングリコールである、(2)~(12)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(14)前記モノアルコール脂肪酸エステルが、モノアルコール高級脂肪酸エステルである、(2)~(13)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(15)前記モノアルコール脂肪酸エステルが、ミリスチン酸イソプロピルである、(2)~(14)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(16)前記高級脂肪酸が、炭素数6~20の脂肪酸である、(2)~(15)のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
(17)前記高級脂肪酸が、イソステアリン酸である、(2)~(16)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(18)前記炭酸エステルが、炭酸プロピレンである、(2)~(17)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(19)1週間1回投与するための、(2)~(18)のいずれかに記載の経皮吸収液剤。
(20)ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる混合液を加熱する工程を含んでなる、(1)~(19)のいずれかに記載の経皮吸収液剤の製造方法。
(21)前記混合液が澄明になるまで加熱する、(20)に記載の製造方法。
以下、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。なお、本開示における測定方法および単位は、JIS(日本工業規格)の規定に従う。また、配合量は特記しない限り、質量%で示す。
試験例1
処方1の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液に室温で攪拌しながら、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコール、イソステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピルを順次加え、液剤を得た。
処方2の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液に室温で攪拌しながら、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、イソステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、エタノールを順次加え、液剤を得た。
処方3の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液に室温で攪拌しながら、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコール、イソステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、セタノールを順次加え、液剤を得た。
処方4の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液に室温で攪拌しながら、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコール、イソステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール400を順次加え、液剤を得た。
処方5の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液に室温で攪拌しながら、ミリスチルアルコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコール、イソステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピルを順次加え、液剤を得た。
処方6の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液に室温で攪拌しながら、ミリスチルアルコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコール、イソステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸プロピレングリコールを順次加え、液剤を得た。
処方7の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液にミリスチルアルコールを加え、100℃で3分間加熱し、混合液とした。次に、この混合液にオイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコール、イソステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、およびモノラウリン酸プロピレングリコールを加えて攪拌し、液剤を得た。
処方8の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。この懸濁液にミリスチルアルコールを加え、100℃で3分間加熱し、混合液とした。次に、この混合液にオイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコール、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、およびモノラウリン酸プロピレングリコールを加えて攪拌し、液剤を得た。
処方9の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールおよびミリスチルアルコールにドネペジル塩酸塩を分散させ、白濁した懸濁液を得た。さらに、100℃で7分間加熱し、混合液とした。混合液にオイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、オレイルアルコールを加えて再度100℃で7分加熱し、さらにモノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、およびモノラウリン酸プロピレングリコールを加えて攪拌し、液剤を得た。
処方10の製造
以下の表1に示す処方でドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。すなわち、プロピレングリコールにドネペジル塩酸塩を加えて攪拌し、白濁した懸濁液を得た。さらに、懸濁液にオイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)を加えた。この懸濁液を80℃で30秒間加熱し、室温下で30秒攪拌した。この加熱し、攪拌する工程を計8回繰り返し、混合溶液とした。混合溶液にオレイルアルコール、モノラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、およびモノラウリン酸プロピレングリコールを順次加えて攪拌し、液剤を得た。
皮膚透過性試験
処方例1~10により得られた製剤について、ドネペジル塩酸塩の皮膚透過性試験を行ない、経皮吸収性の評価を行なった。透過試験装置には縦型拡散セルを用いて試験を行った。具体的には、レセプター液(pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS))を満たした縦型拡散セルの開口部に、真皮側がレセプター液に接するようにヘアレスマウス腹部皮膚を取り付けた。角質層側にセルキャップを取り付け、セルキャップと皮膚および縦型拡散セルをセルホルダーで固定した。皮膚の角質層側にドネペジル液剤を200μL適用した時刻を実験開始時刻とし、経時的にレセプター液を200μL採取した。採取した溶液中のドネペジル濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した。5時間目におけるドネペジル累積皮膚透過量(Q5)〔μg/cm〕を算出し、さらに5時間目までの最大フラックス(Fmax)〔μg/cm/hour〕を算出しその結果を表1に示した。
Figure 2022044038000002
表1に示されるように、処方7~10は特に良好な皮膚透過性を示した。
試験例2
処方11~13の製造
以下の表2に示す処方で、種々の高級モノアルコール(オレイルアルコール)の濃度を有するドネペジル塩酸塩の液剤(処方例11~13)を調製した。ドネペジル塩酸塩にプロピレングリコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)の順に秤量して加え、80℃で4分加熱し取り出して室温下で4分撹拌した。この工程を合計2回行った。澄明になったのを確認し、室温程度まで戻ったところでオレイルアルコールを無添加、5%または10%加えて撹拌した。澄明になったことを確認し、さらにモノラウリン酸ソルビタンを加えて撹拌した。均一に分散したことを確認し、さらにミリスチン酸イソプロピルを加えて撹拌した。モノカプリル酸プロピレングリコールを加えて澄明になるまで撹拌した。
処方例11~13の製剤について、処方例1~10と同様にドネペジル塩酸塩の皮膚透過性試験を行ない、経皮吸収性の評価を行なった。それぞれの処方例のQ5およびFmaxを表2に示す。
Figure 2022044038000003
表2に示されるように、処方12および13は特に良好な皮膚透過性を示した。
試験例3
処方10および処方12について、ヒト血中ドネペジル濃度推移をソフトウェアSKIN-CAD(登録商標)(株式会社バイオコムシステムズ)を使用して計算した。ヘアレスマウス皮膚で透過試験を行い、累積透過量のプロファイルからフラックスと、時間遅れ(td)を算出し、これをソフトウェアに入力した。また、ヒトの角質層の厚さとして20μmを入力した。また、ヒトへ投与した場合の体内動態パラメータとして、消失速度定数0.008hr-1および分布容積13.5±1.5L/kg(「アリセプト」医薬品インタビューフォーム第30版、p48、「消失速度定数」等参照)を使用し、消失速度定数0.008hr-1および分布容積810L(成人男性の体重を60kgとして)をソフトウェアに入力した。それぞれの液剤の濃度をソフトウェアに代入し、用法に関する値として計算時間4週間、投与回数4回、投与のタイミング(0~24時間目(1週目の1日目)、168時間目~192時間目(2週目の1日目)、336時間目~360時間目(3週目の1日目)、504時間目~528時間目(4週目の1日目))を入力した。
結果を図1に示す。
処方10および12の液剤のドネペジル血中濃度推移はドネペジルを含有するアリセプト錠5mgまたは8mgを1日1回14日間反復投与した際の被験者の血中濃度推移と同様であった(「アリセプト」医薬品インタビューフォーム第30版、p42、「反復投与」参照)。処方10および12の液剤により従来よりも長い投与間隔での治療が可能になることがわかった。
試験例4
処方12の液剤の一定量(0.6~1.0mL、ドネペジル0.03~0.05g)を異なる皮膚適用面積(80cm、160cmまたは240cm)に適用した。
図2~4に示される通り、血中ドネペジル濃度は、皮膚適用面積の影響をほとんど受けなかった。液剤によって皮膚適用面積を制御しなくても一定のドネペジル血中濃度が保てることが示された。
試験例5
処方14の製造
以下の表3に示す処方で、ドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。ドネペジル塩酸塩にプロピレングリコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、炭酸プロピレンの順に秤量して加え、80℃で4分加熱し取り出して室温下で4分撹拌した。この工程を合計2回行った。澄明になったのを確認し、室温程度まで戻ったところでオレイルアルコールを5%加えて撹拌した。澄明になったことを確認し、さらにモノラウリン酸ソルビタンを加えて撹拌した。均一に分散したことを確認し、さらにミリスチン酸イソプロピルを加えて撹拌した。モノカプリル酸プロピレングリコールを加えて澄明になるまで撹拌した。
処方例12および14の製剤について、加速条件(40℃、75%RH)において製剤中のドネペジルの含量の経時変化を測定し、製剤の安定性の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2022044038000004
表3に示すようにいずれの製剤も良好な安定性を示した。また、10%の炭酸プロピレンを添加することにより、ドネペジル以外の添加物に由来する経時的に生じる沈殿物が見られなくなり、良好な外観を示した(図5)。加えて、長期保存後の製剤は製造直後の製剤と比較してほぼ同程度の透過性であった。
試験例6
処方15の製造
以下の表4に示す処方で、ドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。ドネペジル塩酸塩にプロピレングリコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、炭酸プロピレンの順に秤量して加え、80℃で4分加熱し取り出して室温下で4分撹拌した。この工程を合計2回行った。澄明になったのを確認し、室温程度まで戻ったところでオレイルアルコールを5%加えて撹拌した。澄明になったことを確認し、さらにモノラウリン酸ソルビタンを加えて撹拌した。均一に分散したことを確認し、さらにミリスチン酸イソプロピルを加えて撹拌した。モノカプリル酸プロピレングリコールを加えて澄明になるまで撹拌した。
処方16~18の製造
以下の表4に示す処方で、ドネペジル塩酸塩の液剤を調製した。ドネペジル塩酸塩にプロピレングリコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、炭酸プロピレンの順に秤量して加え、80℃で8分加熱し取り出して室温下で4分撹拌した。澄明になったのを確認し、室温程度まで戻ったところでオレイルアルコールを5%加えて撹拌した。澄明になったことを確認し、さらにモノラウリン酸ソルビタンを加えて撹拌した。均一に分散したことを確認し、さらにミリスチン酸イソプロピルを加えて撹拌した。モノカプリル酸プロピレングリコールを無添加、5%または15%加えて澄明になるまで撹拌した。
処方例12および14~18の製剤について、処方例1~10において行ったドネペジル塩酸塩の皮膚透過性試験と同様の方法で皮膚透過性試験を行い、経皮吸収性の評価を行なった。それぞれの処方例のQ5およびFmaxを表4に示す。
Figure 2022044038000005
表4に示すように、炭酸プロピレンはヘアレスマウス皮膚の透過性にほぼ影響を与えないが、モノカプリル酸プロピレングリコールはその添加量によってヘアレスマウス皮膚の透過性が異なることが示された。
試験例7
処方19~22の製造
表4に示す処方で、種々のモノアルコール脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル)の濃度を有するドネペジル塩酸塩の液剤(処方例19~22)を調製した。ドネペジル塩酸塩にプロピレングリコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、炭酸プロピレンの順に秤量して加え、80℃で8分加熱し取り出して室温下で4分撹拌した。澄明になったのを確認し、室温程度まで戻ったところでオレイルアルコールを5%加えて撹拌した。澄明になったことを確認し、さらにモノラウリン酸ソルビタンを加えて撹拌した。均一に分散したことを確認し、さらにミリスチン酸イソプロピルを無添加、1.25%、5%または10%加えて撹拌した。モノカプリル酸プロピレングリコールを加えて澄明になるまで撹拌した。
処方例19~22の製剤について、処方例1~10の製剤において行ったドネペジル塩酸塩の皮膚透過性試験と同様の方法で皮膚透過性試験を行い、経皮吸収性の評価を行なった。それぞれの処方例のQ5およびFmaxを表4に示した。
表4に示すように、ミリスチン酸イソプロピルは添加量5%でヘアレスマウス皮膚の透過性が最大値を示した。
試験例8
処方23~25の製造
表4に示す処方で、種々のモノラウリン酸ソルビタンの濃度を有するドネペジル塩酸塩の液剤(処方例23~25)を調製した。ドネペジル塩酸塩にプロピレングリコール、オイドラギット(登録商標)E-100(粉砕品)、炭酸プロピレンの順に秤量して加え、80℃で8分加熱し取り出して室温下で4分撹拌した。澄明になったのを確認し、室温程度まで戻ったところでオレイルアルコールを5%加えて撹拌した。澄明になったことを確認し、さらにモノラウリン酸ソルビタンを無添加、10%または15%加えて撹拌した。均一に分散したことを確認し、さらにミリスチン酸イソプロピルを加えて撹拌した。モノカプリル酸プロピレングリコールを加えて澄明になるまで撹拌した。
処方例23~25の製剤について、処方例1~10の製剤において行ったドネペジル塩酸塩の皮膚透過性試験と同様の方法で皮膚透過性試験を行い、経皮吸収性の評価を行なった。それぞれの処方例のQ5およびFmaxを表4に示した。
表4に示すように、モノラウリン酸ソルビタンは添加量10%でヘアレスマウス皮膚の透過性が最大値を示した。
試験例9
試験例3と同様に、処方14について、ヒト血中ドネペジル濃度推移をソフトウェアSKIN-CAD(登録商標)を使用して計算した。ヒト皮膚で透過試験を行い、累積透過量のプロファイルからフラックスと、時間遅れ(td)を算出し、これをソフトウェアに入力した。ヒトの角質層の厚さ、ヒトへ投与した場合の体内動態パラメータは試験例3と同じ値を用いた。液剤の濃度をソフトウェアに代入し、用法に関する値として計算時間4週間、投与回数4回、投与のタイミング(0~24時間目(1週目の1日目)、168時間目~192時間目(2週目の1日目)、336時間目~360時間目(3週目の1日目)、504時間目~528時間目(4週目の1日目))を入力した。処方14の液剤の一定量(0.8または1.0mL、ドネペジル0.04または0.05g)を異なる皮膚適用面積(80cm、160cm、240cmまたは320cm)に適用した。
結果を図6および7に示す。
in vitroヘアレスマウス皮膚透過試験結果からin vivoヒト血中濃度を計算した結果と、in vitroヒト皮膚透過試験結果からin vivoヒト血中濃度を計算した結果は大きく変わらないことが示された。したがって、本発明の液剤を適切な条件で適用することにより、アリセプト5mg錠の連続投与時のドネペジル最低血中濃度(トラフ値)を下回らずに、1週間ドネペジルの血中濃度を保てることが示された。
試験例10
ヒト残存試験
皮膚テスト用パッチテープ(商品名:パッチテスター「トリイ」(リバテープ製薬株式会社製))に処方14のドネペジル液剤を40mg含浸させた。液剤を含浸させた皮膚テスト用パッチテープを3名の被験者の両腕にそれぞれ1か所ずつ貼付した。片方のパッチテスターを貼付直後に剥離し、パッチテスターから回収した薬物量と皮膚表面を拭き取り回収した薬物量の和を測定することで、貼付直後に皮膚に吸収されずに残存している薬物の量を求めた(M)。通気性の良好なカバーパッチを24時間貼付するパッチテスターの上にサポートとして貼付し、入浴時(シャワー)には防水用のカバーパッチをさらに上から貼付し、入浴後に剥がした。24時間後、もう片方のパッチテスターとカバーパッチを剥離し、それらから回収した薬物量と皮膚表面を拭き取り回収した薬物量の和を測定することで、貼付直後に皮膚に吸収されずに残存している薬物の量を求めた(M24)。得られたMおよびM24を以下の数1に代入し、薬剤利用率(%)を得た。
Figure 2022044038000006
ヒト残存試験の結果、薬剤利用率の平均値は15.0%、標準偏差は0.3であり、これはin vitroヒト皮膚透過試験の24時間時点での利用率(約10%)と同等であった。ヒト残存試験で24時間後に減少した量の薬物は皮膚から吸収されたと考えられるため、in vivoにおいてもin vitroヒト皮膚透過試験と同等の量の薬物が皮膚を透過したと考えられる。

Claims (21)

  1. ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる、経皮吸収液剤。
  2. 前記水溶性添加剤が、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、高級モノアルコール、多価アルコール脂肪酸エステル、炭酸エステル、モノアルコール脂肪酸エステルおよび高級脂肪酸からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の経皮吸収液剤。
  3. 前記水溶性添加剤が、多価アルコール、アミノ基を有する高分子化合物、ならびに、高級モノアルコールおよび/または多価アルコール脂肪酸エステルを含んでなる、請求項1または2に記載の経皮吸収液剤。
  4. 前記水溶性添加剤が、さらに炭酸エステルを含んでなる、請求項3に記載の経皮吸収液剤。
  5. 前記ドネペジルまたはその塩が、0.5~20質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  6. 前記多価アルコールが、2~6価アルコールである、請求項2~5のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  7. 前記多価アルコールが、グリセリンまたはプロピレングリコールである、請求項2~6のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  8. 前記アミノ基を有する高分子化合物が、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルと、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびこれらの組み合わせから選択されるモノマー単位とから構成されるコポリマーである、請求項2~7のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  9. 前記アミノ基を有する高分子化合物が、(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエチルコポリマーである、請求項2~8のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  10. 前記高級モノアルコールが、炭素数6~25のモノアルコールである、請求項2~9のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  11. 前記高級モノアルコールが、オレイルアルコールである、請求項2~10のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  12. 前記多価アルコール脂肪酸エステルが、糖アルコール脂肪酸エステルまたはグリコール脂肪酸エステルである、請求項2~11のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  13. 前記多価アルコール脂肪酸エステルが、モノラウリン酸ソルビタン、モノカプリル酸プロピレングリコール、またはモノラウリン酸プロピレングリコールである、請求項2~12のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  14. 前記モノアルコール脂肪酸エステルが、モノアルコール高級脂肪酸エステルである、請求項2~13のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  15. 前記モノアルコール脂肪酸エステルが、ミリスチン酸イソプロピルである、請求項2~14のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  16. 前記高級脂肪酸が、炭素数6~20の脂肪酸である、請求項2~15のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  17. 前記高級脂肪酸が、イソステアリン酸である、請求項2~16のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  18. 前記炭酸エステルが、炭酸プロピレンである、請求項2~17のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  19. 1週間1回投与するための、請求項2~18のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤。
  20. ドネペジルまたはその塩と、水溶性添加剤とを含んでなる混合液を加熱する工程を含んでなる、請求項1~19のいずれか一項に記載の経皮吸収液剤の製造方法。
  21. 前記混合液が澄明になるまで加熱する、請求項20に記載の製造方法。
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