JP2022044021A - ポリアミド酸、ポリアミド酸溶液、ポリイミド、ポリイミド膜、積層体およびフレキシブルデバイス、ならびにポリイミド膜の製造方法 - Google Patents

ポリアミド酸、ポリアミド酸溶液、ポリイミド、ポリイミド膜、積層体およびフレキシブルデバイス、ならびにポリイミド膜の製造方法 Download PDF

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伸明 田中
Nobuaki Tanaka
博文 中山
Hirobumi Nakayama
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Abstract

【課題】透明性に加え、高い耐熱性や低残留応力を有するポリイミド、ならびに前記ポリイミドを使用した耐熱性や透明性の要求の高い製品又は部材を提供する。【解決手段】式(1)の構造を有するポリアミド酸組成物で、Aは、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナンと、デカヒドロ-1H,3H-4,10:5,9-ジメタノナフト[2,3-c:6,7-c’]ジフラン-1,3,6,8-テトラオンを含み、Bは4,4’-ジアミノベンズアニリドを含む。JPEG2022044021000015.jpg58120【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド酸、ポリアミド酸溶液、ポリイミド、およびポリイミド膜に関する。さらに、本発明はポリイミドを用いた電子デバイス材料、TFT基板、フレキシブルディスプレイ基板、カラーフィルター、印刷物、光学材料、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3-Dディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、透明導電膜基板等、現在ガラスが使用されている部分の代替材料に関する。
ディスプレイ、タッチパネル、照明装置、太陽電池等の電子デバイスにおいては、薄型化、軽量化、およびフレキシブル化が要求されており、ガラス基板に代えて樹脂フィルム基板の利用が検討されている。特に、高い耐熱性や、寸法安定性、高機械強度が求められる用途では、ガラス代替材料としてポリイミドフィルムの適用が検討されている。
電子デバイスの製造プロセスでは、基板上に、薄膜トランジスタや透明電極等の電子素子が設けられるが、電子素子の形成は高温プロセスを要し、プラスチックフィルム基板には高温プロセスに適応可能な耐熱性が要求されるため、プラスチックフィルム基板の材料として、ポリイミドの使用が検討されている。
電子デバイスの製造プロセスは、バッチタイプとロール・トゥ・ロールタイプに分けられるが、バッチプロセスでは、ガラス支持体上に樹脂溶液を塗布、乾燥して、ガラス支持体とフィルム基板との積層体を形成し、その上に素子を形成した後、ガラス支持体からフィルム基板を剥離すればよく、現行のガラス基板用プロセス設備を利用できる。
フィルム基板がポリイミドである場合は、支持体上にポリイミド前駆体としてのポリアミド酸溶液を塗布し、支持体とともにポリアミド酸を加熱してイミド化を行うことにより、支持体とポリイミド膜との積層体が得られる。
トップエミッション型の有機ELなどでは基板の反対側に光を出射するため、基板材料に透明性は求められていなかった。しかし、透明ディスプレイやボトムエミッション型の有機ELなど素子から発せられる光がフィルム基板を通って出射する場合やスマートフォンなどを全面ディスプレイ(ノッチレス)にするため、基板の背面にセンサーやカメラモジュールを設置する場合には、基板材料にも高い透明性が求められる。
このような背景から、高い耐熱性、寸法安定性を有し、さらには高い透明性を有する材料が求められている。
高い透明性を有するポリイミドとして、脂環モノマーを用いることでフィルムの着色を抑制したり(特許文献1)、耐熱性を向上させたり(特許文献2)、イミダゾール系化合物を含有させることで400nmの透過率を向上させ高い透明性を有することができる(特許文献3)。
特許文献記載のポリイミドは高い透明性を有するが、特許文献1に記載のポリイミドは高温下で保持した際の重量減少値が大きく、特許文献2に記載のポリイミドはCTEが高く、電子素子形成の高温プロセスに適応できない。
特開2017-160360号公報 WO2014-038714号 特開2019-108552号公報
筆者らが検証したところ、特許文献1、2に記載のポリイミドフィルムは、特定の脂環式構造を有する酸二無水物とジアミンから得られるポリイミドが開示されているが、それぞれ脂環式構造に起因して高温保持下での重量減少値が大きい、内部応力や線膨張係数が大きいといった課題があり、基板材料としての特性に改善の余地があった。特許文献3記載のポリイミドフィルムは高い透明性を有しており、内部応力も改善されているが、脂環式構造に起因して高温保持下での重量減少値が大きく、基板材料としての特性には改善の余地があった。
本発明は、透明性に加え、高い耐熱性や低残留応力を有するポリイミドを得ることを目的とする。さらに、これらの要求を満たすポリイミドを開発することで耐熱性や透明性の要求の高い製品又は部材を提供することも目的とする。特に、本発明のポリイミド、およびポリアミド酸を、ガラス、金属、金属酸化物及び単結晶シリコン等の無機物表面に形成する用途に適用し他製品、および部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の組成を有するポリアミド酸組成物を用いたポリイミド膜において、基板材料としての特性のバランスがよく、優れたものであることを見出した。
すなわち本発明は以下の構成をなす。
1).下記式(1)で表される構造を有するポリアミド酸組成物であって、
式(1)中のAは、(A-1)と(A-2)で表される構造単位を含み、式(1)中のBは、(B-1)で表される構造単位を含み、(A-1)で表される構造単位が、50モル%以上70モル%以下であり、(A-2)で表される構造単位が30モル%以上50モル%以下であることを特徴とするポリアミド酸組成物。(式中のAは4価の芳香族基、もしくは脂肪族基であり、Bは2価の芳香族基、もしくは脂肪族基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、一価の脂肪族基または芳香族基である。)
Figure 2022044021000001
Figure 2022044021000002
Figure 2022044021000003
2).前記一般式(1)中のBは少なくとも一つが(B-1)であって、(B-2)および/または(B-3)を含むことを特徴とする1)に記載のポリアミド酸組成物。
Figure 2022044021000004
3).イミダゾール系化合物を含有する1)、2)のいずれかに記載のポリアミド酸樹脂組成物。
4).さらに有機溶媒を含有する1)~3)のいずれかに記載のポリアミド酸組成物。
5).1)~4)のいずれかに記載のポリアミド酸組成物の脱水環化物である、ポリイミド。
6).5)に記載のポリイミドを含むポリイミド膜。
7).430℃で1時間加熱した際の重量減少値が1%未満であることを特徴とする6)に記載のポリイミド膜。
8).YIが8以下であることを特徴とする6)又7)に記載のポリイミド膜。
9).支持体上に6)~8)のいずれかに記載のポリイミド膜が設けられた積層体。
10).9)に記載の積層体において、10μm厚みのポリイミド膜とした際に、25℃における残留応力が25MPa以下となるポリイミド膜。
11).4)に記載の有機溶媒を含有するポリアミド酸組成物を支持体に塗布して、支持体上に膜状のポリアミド酸を形成し、加熱によりポリアミド酸をイミド化して、前記支持体上にポリイミド膜を形成する、積層体の製造方法。
12).5)~11)に記載のポリイミドと、該ポリイミド上に形成された電子素子とを有するフレキシブルデバイス。
上記のポリアミド酸から得られるポリイミド膜は、無機支持体との積層体の残留応力が小さく、耐熱性および透明性に優れ、透明性が必要とされる電子デバイス用の基板材料として好適である。また、本発明のポリイミド膜は特に、耐熱性の低い脂環構造を有するポリイミドとしては高温下で保持した際の重量減少値が非常に低く耐熱性に優れる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重付加反応によりポリアミド酸が得られ、ポリアミド酸の脱水閉環反応によりポリイミドが得られる。すなわち、ポリイミドはテトラカルボン酸二無水物とジアミンの重縮合反応物である。
[ポリアミド酸]
本発明の実施形態に係るポリアミド酸組成物は、下記一般式(1)中のAが(A-1)と(A-2)で表される構造単位を含み、(1)中のBは(B-1)で表される構造単位を含み、(A-1)で表される構造単位が、50モル%以上70モル%以下であり、(A-2)で表される構造単位が30モル%以上50モル%以下であることを特徴とするポリアミド酸組成物である。(式中のAは4価の芳香族基、もしくは脂肪族基であり、Bは2価の芳香族基、もしくは脂肪族基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、一価の脂肪族基または芳香族基である。)
Figure 2022044021000005
Figure 2022044021000006
Figure 2022044021000007
本発明の形態に係るポリアミド酸において、前記一般式(1)はノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(以下、CpODAと称することがある)、及びデカヒドロ-1H,3H-4,10:5,9-ジメタノナフト[2,3-c:6,7-c’]ジフラン-1,3,6,8-テトラオン(以下、DNDAと称することがある)で表される酸二無水物と4,4'-ジアミノベンズアニリド(以下、DABAと称することがある)で表されるジアミンを含むことで電子基板材料として好適なポリイミド膜を製造するためのポリアミド酸を得ることができる。
CpODA及びDNDAは脂環式モノマーでありながらシクロヘキサンをメチレン基で架橋させることで剛直な構造を有しており、脂環式構造に由来する高い透明性を発現し、さらに高Tg、低CTE、低内部応力、高耐熱性を与えるために効果的である。
前記一般式(1)中、透明性、耐熱性、低内部応力のバランスを取るため、ポリアミド酸を構成する全酸二無水物を100mol%とした時にCpODAの割合は70mol%以下が好ましく、65mol%以下がさらに好ましい。耐熱性の観点から、50mol%以上が好ましく、55mol%以上がさらに好ましい。
DNDAは縮合多環脂環構造を有しており、さらなる高Tgの発現に効果的である。高Tgと耐熱性の観点から、ポリアミド酸を構成する全酸二無水物を100mol%とした時にDNDAの割合は30mol%以上未満が好ましく、35mol%以上がさらに好ましい。低内部応力の観点から50mol%以下が好ましく、45mol%以下がさらに好ましい。
本発明の形態に係るポリアミド酸は、その性能を損なわない範囲で、CpODA、DNDA以外のテトラカルボン酸二無水物成分を含んでもよい。例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、3,3’,4,4′-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(BPAF)、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、5-(ジオキソテトラヒドロフリル-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-テトラリン-1,2-ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,4-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物及びそれらの類似物が挙げられ、これらを単独または2種類以上用いてもよい。
前記式(1)中に含まれる2価の有機基Bは、ジアミンのアミノ基以外の有機基を意味し、下記(B-1)で表される4,4'-ジアミノベンズアニリド(以下、DABAと称することがある)を含む。
Figure 2022044021000008
DABAは剛直な構造と水素結合形成部を有しており、高Tg、高耐熱及び低内部応力に効果的である。高Tg、高耐熱及び低内部応力の観点から、ポリアミド酸を構成する全ジアミンを100mol%とした時にDABAの割合は30mol%以上含むことが好ましく、40mol%以上含むことがより好ましく、60mol%以上含むことがさらに好ましく、100mol%でも構わない。
本実施の形態に係るポリアミド酸は、その性能を損なわない範囲で、DABA以外のジアミン成分を含んでもよい。例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、m-トリジン、o-トリジン、4,4’-ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノ-3,3’ジヒドロキシビフェニル、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン及びそれらの類似物が挙げられ、これらを単独または2種類以上用いてもよい。中でも下記(B-2)で表される1,4-フェニレンジアミン(以下、PDAと称することがある)や(B-3)で表される9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(以下、BAFLと称することがある)などが耐熱性、Tgの向上の観点で望ましい。
Figure 2022044021000009
Tgをさらに向上させるために、PDAを添加してもよい。高Tgの観点から、ポリアミド酸を構成する全ジアミンを100mol%とした時にPDAの割合は10mol%以上含むことが好ましく、20mol%以上含むことがより好ましく、30mol%以上含むことがさらに好ましい。低内部応力の観点からは80mol%以下が好ましく、75mol%以下がより好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。
またBAFLはフルオレン構造に由来してかさ高い構造を有しており、少量含むだけでポリイミドの結晶化を抑制することができるため、添加してもよい。ポリアミド酸を構成する全酸ジアミンを100mol%とした時にBAFLの割合は1mol%以上が好ましく、3mol%以上がより好ましく5mol%以上がさらに好ましく、10mol%以上でも構わない。低内部応力の観点からは50mol%以下が好ましく、40mol%以下がより好ましく、30mol%以下がさらに好ましい。
上記範囲にすることで、ポリイミドにした時にYIが低く、内部応力に優れ、ガラス転移温度及び耐熱性に優れた性能を発揮することができる。
本発明のポリアミド酸に用いるモノマー原料は適宜市販のものを使用することができる。
本発明のポリアミド酸は、公知の一般的な方法にて合成することができ、有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによりポリアミド酸が得られる。例えば、ジアミンを、有機溶媒中に溶解またはスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とし、テトラカルボン酸二無水物を、有機溶媒に溶解もしくはスラリー状に分散させた溶液または固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。テトラカルボン酸二無水物溶液中に、ジアミンを添加してもよい。
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を用いてポリアミド酸を合成する場合、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物のいずれか一方または両方に、複数種を用い、ジアミンおよび酸二無水物全量のモル数をそれぞれ調整することにより、複数種の構造単位を有するポリアミド酸共重合体が得られる。また、2種のポリアミド酸をブレンドすることによって複数のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを含油するポリアミド酸を得ることもできる。本発明においては、ポリアミド酸の合成はランダムでもブロックでもよい。
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の溶解および反応は、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応の温度条件は、特に限定されないが、例えば、0℃~150℃であり、かつポリアミド酸の分解を抑制する観点から、0~120℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。反応時間は、例えば、10分~40時間の範囲で任意に設定すればよい。反応の進行に伴ってポリアミド酸の分子量が大きくなり、反応液の粘度が上昇する。反応速度を上昇させるため、反応溶液におけるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの濃度を高めてもよい。反応溶液における原料(ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物)の仕込み濃度は、15~30重量%が好ましい。
ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒は特に限定されない。有機溶媒は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンとを反応させる際に利用可能なものであればよく、重合により生成するポリアミド酸を溶解可能であるものが好ましい。
ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒の具体例としては、テトラメチル尿素、N,N-ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォン等のスルホキシドあるいはスルホン系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ―ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒:シクロペンタノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p-クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独で用いるが、必要に応じて2種以上を適宜組み合わせてもよい。ポリアミド酸の溶解性および反応性を高めるために、ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒は、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒およびエーテル系溶媒より選択されることが好ましく、特にDMF、DMAC、NMP等のアミド系溶媒が好ましく、NMPが特に好ましい。溶液の安定性を高めるために、ジエチレングリコールやテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒を添加してもよい。
ポリアミド酸の重量平均分子量は、例えば10,000~1,000,000であり、10,000~500,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、ポリイミド膜の機械強度を確保できる。重量平均分子量が1,000,000以下であれば、ポリアミド酸が溶媒に対して十分な溶解性を示し、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜またはフィルムが得られる。分子量は、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレンオキシド換算の値である。
ポリアミド酸溶液は、ポリアミド酸と溶媒とを含む。ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させた溶液は、そのままポリアミド酸溶液として使用できる。また、重合溶液から溶媒の一部を除去したり、溶媒を添加することにより、ポリアミド酸の濃度および溶液の粘度を調整してもよい。添加する溶媒は、ポリアミド酸の重合に用いた溶媒と異なっていてもよい。また、重合溶液から溶媒を除去して得られた固体のポリアミド酸樹脂を溶媒に溶解してポリアミド酸溶液を調製してもよい。ポリアミド酸溶液の有機溶媒としては、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒およびエーテル系溶媒が好ましく、中でも、DMF、DMAC、NMP等のアミド系溶媒が好ましく、NMPが特に好ましい。
本発明のポリアミド酸溶液は、ポリアミド酸の硬化促進剤としてイミダゾール類を含有することが好ましい。ポリアミド酸溶液がイミダゾール類を含有する場合に、熱的手法によりイミド化する際の着色抑制や得られたポリイミド膜の熱寸法安定性が向上し、熱膨張係数が小さくなる傾向がある。イミダゾール類とは、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル2-フェニルイミダゾール等の1,3-ジアゾール環構造を含有する化合物である。中でも、1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル2-フェニルイミダゾールが好ましく、1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールが特に好ましく、1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールがさらに好ましい。
イミダゾール類の添加量は、ポリアミド酸のアミド基1モルに対して0.005~0.2モル程度が好ましく、0.01~0.15モルがより好ましく、0.02~0.10モルがさらに好ましい。
「ポリアミド酸のアミド基」とは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の重付加反応によって生成したアミド基を意味する。イミダゾール類を添加する場合は、ポリアミド酸を重合後に添加を行うことが好ましい。イミダゾール類は、そのままポリアミド酸溶液に添加してもよく、イミダゾール溶液としてポリアミド酸溶液に添加してもよい。
ポリアミド酸溶液にイミダゾール類を添加することにより、ポリイミド膜の熱寸法安定性が向上する理由は定かではないが、イミダゾール類がポリアミド酸の脱水閉環によるイミド化を促進し、低温でイミド化が進行しやすいことが、熱寸法安定性向上に関与していると推定される。低温で膜中に溶媒が残存している状態では、ポリマー鎖が適度な運動性を有しており、この状態でイミド化が進行すると、安定性の高い剛直なコンフォメーションでポリマーの配向が固定されやすいことが、熱寸法安定性向上の一要因として挙げられる。
また、硬化促進剤は、その沸点が120℃を超えるものを使用することが好ましく、沸点が熱的処理の上限温度を超えないものを選択することが好ましい。沸点が上限温度を超える場合は、ポリイミド中に残存する割合が高くなり、ポリイミドの耐熱性などの特性に影響を与える傾向がある。
ポリアミド酸の脱水閉環により、ポリイミドが得られる。脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法によって行うことができる。ポリアミド酸からポリイミドへのイミド化は、1~100%の任意の割合をとることができ、一部がイミド化されたポリアミド酸を合成してもよい。
ポリイミド膜を得るためには、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持体にポリアミド酸溶液を膜状に塗布し、加熱によりポリアミド酸を脱水閉環する方法が好ましい。バッチタイプのデバイス製造プロセスに適応させるためには、支持体としてガラス基板を用いることが好ましく、無アルカリガラスが好適に用いられる。加熱時間の短縮や特性発現のために、イミド化剤および/または脱水触媒をポリアミド酸溶液に添加し、このイミド化剤および/または脱水触媒を添加したポリアミド酸溶液を上記のような方法で加熱してイミド化してもよい。
上記イミド化剤としては、特に限定されないが、第三級アミンを用いることが好ましく、中でも複素環式の第三級アミンが好ましい。複素環式の第三級アミンの好ましい具体例としては、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。上記脱水触媒としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が好ましい具体例として挙げられる。
イミド化剤および脱水触媒の添加量としては、ポリアミド酸のアミド基に対して、イミド化剤は0.5~5.0倍モル当量、さらには0.7~2.5倍モル当量、特には0.8~2.0倍モル当量が好ましい。また、ポリアミド酸のアミド基に対して、脱水触媒は0.5~10.0倍モル当量、さらには0.7~5.0倍モル当量、特には0.8~3.0倍モル当量が好ましい。ポリアミド酸溶液にイミド化剤および/または脱水触媒を加える際、有機溶媒に溶かさず直接加えても良いし、有機溶媒に溶かしたものを加えても良い。有機溶媒に溶かさず直接加える方法ではイミド化剤および/または脱水触媒が拡散する前に反応が急激に進行し、ゲルが生成することがある。イミド化剤および/または脱水触媒を有機溶媒に溶かして得られた溶液を、ポリアミド酸溶液に混合することがより好ましい。
本発明に係るポリアミド酸およびポリイミドに加工特性や各種機能の付与等を目的として、ポリアミド酸およびポリイミドに、有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、顔料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、シリコーン、増感剤、充填剤、微粒子等が挙げられる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。可塑剤には、リン酸エステル、亜リン酸エステルやフタル酸エステル等を用いてもよい。ポリアミド酸溶液は、ポリアミド酸以外に、光硬化性成分、熱硬化性成分、非重合性樹脂等の樹脂成分を含んでいてもよい。
上述したように、本実施の形態に係るポリアミド酸から製造されたポリイミド膜は無色透明で黄色度が低く、TFT作製工程に耐えうるTgや耐熱性を有していることから、フレキシブルディスプレイの透明基板における使用に適している。
フレキシブルディスプレイを製造する場合、ガラスなどの無機膜を支持体としてその上にフレキシブル基板を形成し、その上にTFTなどの電子素子を形成する(フレキシブルデバイス)。TFTを形成する工程は一般的に150℃~650℃の広い温度領域で実施されるが、実際に所望する性能を達成するためには300℃以上で酸化物半導体やa-Siを形成し、場合によってはさらにレーザー等でa―Si等を結晶化させLTPS(Low Temperature Polysilicone)を形成する。
この際、ポリイミド膜の熱分解温度が低い場合、素子形成時の加熱によりポリイミド膜からアウトガスが発生し、ポリイミド膜上に形成した素子の性能低下や剥離の原因となり得る。そのため、ポリイミド膜の1%重量減少温度Td1は450℃以上が好ましく、高ければ高いほどよい。
TFT作製工程について詳細に説明すると、TFT作成前にバリア膜としてポリイミド膜上にSiOxやSiNxなどを形成する。ポリイミドの耐熱性が低い場合やイミド化が完全に進行していない場合、無機膜積層後の高温プロセス、例えばLTPSの脱水素工程などでポリイミドの分解ガス等の揮発成分に由来してポリイミドと無機膜の界面に剥離が生じる。
そのためデバイス作製のプロセスにもよるが400℃~500℃で等温保持した際のアウトガスが少ないことが求められる。具体的にはポリイミド膜上にSiOxなどの無機膜を形成後、400℃で1時間保持した際にポリイミド膜と無機膜の間に剥離がないことが望ましい。TFTは処理温度が高いほど性能が良くなるため、420℃で剥離がないことがより望ましく、430℃で剥離がないことがさらに望ましい。
アウトガスの観点からは、430℃で等温保持した際の重量減少値が1%未満であることが好ましく、0.8%未満であることがさらに好ましく、0.6%未満であることが特に好ましい。
またTgがプロセス温度よりも著しく低い場合は、素子形成中に位置ずれ等の生じる可能性があるため、反りや破損の原因となり得る。そのため、フレキシブル基板として用いられるポリイミド膜のTgは300℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましく、400℃以上がより好ましい。
一般的に、ガラスの熱膨張係数は樹脂に比較して小さいため、電子素子形成時の加熱や、その後の冷却の温度変化により、支持体とポリイミド膜との積層体の界面に応力が発生する。支持体として用いたガラス基板や電子素子とポリイミド膜に生じる内部応力が高ければ、高温のTFT工程で膨張した後、常温冷却時に収縮する際、ガラス基板の反りや破損、フレキシブル基板のガラス基板からの剥離などの問題が生じる。一般的に、ガラス基板の熱膨張係数は樹脂に比較して小さいため、フレキシブル基板との間に内部応力が発生する。そのため、ポリイミド膜とガラス基板との間に生じる内部応力が30MPa以下であることが好ましく、25MPa以下がより好ましく、20MPa以下がさらに好ましい。
本発明のポリイミドは、TFT基板やタッチパネル基板等のディスプレイ基板材料として好適に用いることができる。上記用途に用いる際、支持体とポリイミドとの積層体を製造し、その上に電子素子を形成し、最後にポリイミド層を剥離する製造方法が用いられるケースが多い。また、支持体としては、無アルカリガラスが好適に用いられる。以下、ポリイミドと支持体との積層体の製造方法および積層体を経由するポリイミドの製造方法について具体的に述べる。これらはポリイミドの製造方法の一例であり、以下に限定されるものではない。
支持体上へのポリイミド膜の形成においては、まず、支持体にポリアミド酸溶液を塗布して塗膜を形成し、支持体とポリアミド酸の塗膜との積層体を40~150℃の温度で3~120分加熱して溶媒を除去する。例えば、50℃にて30分、続いて100℃にて30分のように、2段階以上の温度で乾燥を行ってもよい。
支持体とポリアミド酸との積層体を、温度200~450℃で3分~300分加熱することにより、ポリアミド酸が脱水閉環して、支持体上にポリイミド膜が設けられた積層体が得られる。このとき低温から徐々に高温にし、最高温度まで昇温することが好ましい。昇温速度は2~10℃/分が好ましく、4~10℃/分がより好ましい。最高温度は250~430℃が好ましい。最高温度が250℃以上であれば、十分にイミド化が進行し、最高温度が430℃以下であれば、ポリイミドの熱劣化や着色を抑制できる。イミド化のための加熱においては、最高温度に到達するまでに任意の温度で任意の時間保持してもよい。加熱雰囲気は、空気下、減圧下、または窒素等の不活性ガス中のいずれでもよい。より高い透明性を発現させるためには、減圧下、または不活性ガス中での加熱が好ましい。加熱装置としては、熱風オーブン、赤外オーブン、真空オーブン、イナートオーブン、ホットプレート等が挙げられる。また、加熱時間の短縮や特性発現のために、イミド化剤および/または脱水触媒をポリアミド酸溶液に添加し、このイミド化剤および/または脱水触媒を添加したポリアミド酸溶液を上記のような方法で加熱してイミド化してもよい。
支持体からポリイミド膜を剥離する方法は特に限定されない。例えば、手で引き剥がしてもよく、駆動ロール、ロボット等の剥離装置を用いてもよい。支持体とポリイミド膜との密着性を低下させることにより剥離を行ってもよい。例えば、剥離層を設けた支持体上にポリイミド膜を形成してもよい。多数の溝を有する基板上に酸化シリコン膜を形成し、エッチング液を浸潤させることにより剥離を促進してもよい。レーザー光の照射より剥離を行ってもよい。
バッチタイプのデバイス作製プロセスにおいては、支持体とポリイミドとの間の密着性が良いことがより好ましい。ここでいう密着性とは、密着強度という意味である。支持体上のポリイミド膜に電子素子等を形成して基板形成した後に、支持体から、電子素子等が形成されたポリイミド基板を剥がすという作製プロセスにおいて、支持体との密着性に優れるということは、電子素子等をより正確に形成または実装することができる。支持体上に電子素子等を積層させる製造プロセスの観点ではピール強度は高ければ高いほど良い。具体的には0.05N/cm以上が好ましく、0.1N/cm以上がさらに好ましい。
上述したような製造プロセスにおいて、支持体とポリイミドとの積層体からポリイミド層を剥離する際、レーザー照射によって支持体から剥離される場合が多い。この剥離の加
工性の観点から、ポリイミドにレーザーの波長の光を吸収させる必要がある。レーザー剥離にはエキシマーレーザーが用いられることが多く、そのレーザーの波長の光を吸収する必要があることから、Cut off波長は312nm以上が好ましく、330nm以上がより好ましい。また、Cut Off波長が390nm以下であると、十分な透明性を発現できることから、Cut Off波長は320nm以上390nm以下であることが好ましく、330nm以上380nm以下であることがより好ましい。なお、本明細書中におけるCut off波長とは、紫外-可視分光光度計によって測定される、透過率が0.1%以下になる波長のことを意味する。
ポリアミド酸溶液には、支持体との適切な密着性の発現等を目的として、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤の種類は特に限定されないが、ポリアミド酸との反応性の観点からアミノ基を含有するシランカップリング剤が好ましい。
ポリアミド酸の分子量低下を抑制する観点から、シランカップリング剤の添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して、0.5重量部以下が好ましく、0.1重量部以下がより好ましく、0.05重量部以下がさらに好ましい。ポリイミド膜と支持体との密着性を向上する目的でシランカップリング剤を使用する場合は、シランカップリング剤の添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部以上であってもよい。
ポリイミド膜の透明性は、JIS K7361およびJIS K7136に従った全光線透過率およびヘイズで評価できる。ポリイミド膜の全光線透過率は、85%以上が好ましく、86%以上がより好ましいく、87%以上がさらに好ましい。
ポリイミド膜のヘイズは、1.5%以下が好ましく、1.2%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。ディスプレイ等の用途においては、可視光の全波長領域で透過率が高いことが要求される。ポリイミド膜の黄色度(YI)は、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましく、5以下がとりわけ好ましい。YIは、JIS K7373-2006に従い測定できる。このように透明性の高いポリイミド膜は、ガラス代替用途等の透明基板として使用でき、基板の背面にセンサーやカメラモジュールを設置しても、センサーやカメラモジュールの解像度や色再現性への影響を抑えることができる。
ポリイミドは、そのまま、製品や部材を作製するためのコーティングや成形プロセスに供してもよい。上記のように、ポリイミドは、フィルム状に成形されたポリイミド膜とすることもできる。ポリイミド膜の表面には、金属酸化物や透明電極等の各種無機薄膜を形成していてもよい。これら無機薄膜の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法が挙げられる。
本発明に係るポリイミドは、耐熱性、低熱膨張性、透明性に加えて、ガラス基板との内部応力が小さいため、これらの特性が有効とされる分野および製品、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、光学フィルム、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3-Dディスプレイ、タッチパネル、透明導電膜基板あるいは太陽電池に使用されることが好ましく、さらには現在ガラスが使用されている部分の代替材料とすることがさらに好ましい。
また、本発明に係るポリアミド酸、ポリイミドおよびポリアミド酸溶液は、支持体上にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱してイミド化し、電子素子等を形成して基板形成した後、剥がすという、バッチタイプのデバイス作製プロセスに好適に用いることができる。したがって、本発明には、支持体上にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱してイミド化し、支持体上に形成されたポリイミド膜に電子素子等を形成する基板形成工程を含む電子デバイスの製造方法も含まれる。また、かかる電子デバイスの製造方法は、さらに、基板形成工程の後に、支持体から、電子素子等が形成されたポリイミド基板を剥がす工程を含んでいてもよい。
ポリイミド膜を基板とするフレキシブルデバイスとして有機ELディスプレイや有機EL照明が挙げられる。有機ELデバイスは、基板側から光を取り出すボトムエミッション方式と、基板の反対面から光を取り出すトップエミッション方式の2種類がある。可視光の透過率が高くYIが小さい透明ポリイミド膜は、ボトムエミッション方式の有機ELデバイスの基板材料としても適している。
以下、実施例を示し具体的に説明するが、これらは説明のために記述されるものであり、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法のよって得られたものである。
<ポリイミド膜の光透過率およびYI>
日本分光製紫外可視近赤外分光光度計(V-650)を用いて、ポリイミド膜の200~800nmにおける光透過率を測定し、JIS K7373-2006に記載の方法によって、黄色度を表す指標としてイエローインデックス(YI)を算出した。
<ポリイミド膜の全光線透過率>
村上色彩技術研究所社製積分球式ヘイズメーター(HM-150N)により、JIS K7361記載の方法により測定した。
<ヘイズ>
村上色彩技術研究所社製積分球式ヘイズメーター(HM-150N)により、JIS K7136記載の方法により測定した。
<ガラス転移温度(Tg)>
熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス製「TMA/SS7100」)を用い、幅3mm、長さ10mmの試料に98.0mNの荷重をかけ、10℃/minで20℃から450℃まで昇温し、温度と歪量(伸び)をプロットした(TMA曲線)。傾きが変化する前後のTMA曲線の接線から外挿した交点をガラス転移温度とした。
<残留応力>
あらかじめ反り量を計測していたコーニング社製の無アルカリガラス(厚み0.7mm、100mm×100mm)上に実施例および比較例で調製したポリアミド酸溶液をスピンコーターで塗布し、空気中80℃で30分、窒素雰囲気下430℃で30分加熱し、ガラス基板上に膜厚10μのポリイミド膜を備える積層体を得た。ポリイミド膜の吸水の影響を排除するために、積層体を120℃で10分乾燥させた後、窒素雰囲気下25℃における積層体の反り量を、薄膜応力測定装置(テンコール製「FLX-2320-S」)を用いて測定し、ガラス基板とポリイミド膜の間に生じた残留応力を評価した。
<1%重量減少温度(Td1)>
株式会社日立ハイテクサイエンス(株)製「TG/DTA/7200」を用い、窒素雰囲気下、20℃/minで25℃から500℃まで昇温し、150℃時点での重量から1%重量減少した際の温度をポリイミド膜のTd1とした。
<430℃等温保持下での重量減少値>
株式会社日立ハイテクサイエンス(株)製「TG/DTA/7200」を用い、窒素雰囲気下、20℃/minで25℃から430℃まで昇温した後、430℃で1時間保持し、430℃到達時の重量を基準として1時間後の重量減少値を求めた。
<ポリイミド膜の熱膨張係数(CTE)>
線熱膨張係数の測定は、日立ハイテクサイエンス(株)製「TMA/SS7100」を用いて(サンプルサイズ 幅3mm、長さ10mm、膜厚を測定し、フィルムの断面積を算出)、荷重29.4mNとし、10℃/minで10℃から400℃まで一旦昇温させた後、40℃/minで降温させたときの、降温時の100~400℃における単位温度あたりの試料の歪の変化量から線膨張係数を求めた。
[化合物および試薬類の略称]
以下において、化合物および試薬類は下記の略称で記載している。
<溶媒>
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
<テトラカルボン酸二無水物>
CpODA:2’-オキソジスピロ[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,1’-シクロペンタン-3’,2’’-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン]-5,6:5’’,6’’-テトラカルボン酸二無水物(別名:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物)
DNDA:デカヒドロ-1H,3H-4,10:5,9-ジメタノナフト[2,3-c:6,7-c’]ジフラン-1,3,6,8-テトラオン
<ジアミン>
DABA:4,4’-ジアミノベンズアニリド
PDA:1,4-フェニレンジアミン
BAFL:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン
<イミダゾール>
DMI:1,2-ジメチルイミダゾール
(実施例1)
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機および窒素導入管を装着した300mLのガラス製セパラブルフラスコに、NMP45g、およびDABA5.890gを仕込み、1時間以上攪拌させた後、CpODA6.137g(エネオス社製)、DNDA3.133g(エネオス社製)を加えて40℃で攪拌し、溶解させた。溶解後、室温(23℃)にて24時間撹拌し、ポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液を得た。この反応溶液におけるジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分の仕込み濃度は、反応溶液全量に対して25.0重量%であった。このポリアミド酸溶液にDMIを樹脂に対して1phr添加し、5分攪拌し均一なポリアミド酸溶液を得た。
このポリアミド酸溶液をコーニング社製の無アルカリガラス(厚み0.7mm、100mm×100mm)上にスピンコーターで塗布し、空気中80℃で30分、窒素雰囲気下430℃で30分加熱し、ガラス基板上に膜厚10μのポリイミド膜を備える積層体を得た。得られた積層体のガラス基材からポリイミド膜を剥離して、特性の評価を行った。得られたポリイミド膜の評価結果を表1に示す。
(実施例2~4、比較例1~6)
酸二無水物及びジアミンの仕込み比率を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液を実施例1と同様にして、ポリイミド膜とした。
表に示すように、本実施例においては下記(1)~(3)を満たすポリアミド酸が得ら
れる。
(1)430℃で1時間加熱した際の重量減少値が1%未満
(2)YIが8以下
(3)内部応力が25MPa以下
比較例1~3はYIが低く、Tgも優れているが、内部応力が25MP以上であり、寸法安定性が低く、ガラス基板の低反りを必要とされる用途には適用できない。
比較例4~6ではYIや内部応力が低く、Tgも優れているが、430℃で1時間保持すると重量減少値が1%以上であり、耐熱性が不足しており、TFT作製工程等高温を要する用途には適用できない。
これらの結果から、本発明に係る特定のポリアミド酸からなるポリアミド酸組成物から得られるポリイミドは無色透明であり、熱分解温度やアウトガス発生量ならびにガラス転移温度が高く、無機基板との内部応力が小さく高温でのプロセス耐熱性を有することが確認された。なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
Figure 2022044021000010

Claims (12)

  1. 下記式(1)で表される構造を有するポリアミド酸組成物であって、
    式(1)中のAは、(A-1)と(A-2)で表される構造単位を含み、式(1)中のBは、(B-1)で表される構造単位を含み、(A-1)で表される構造単位が、50モル%以上70モル%以下であり、(A-2)で表される構造単位が30モル%以上50モル%以下であることを特徴とするポリアミド酸組成物。(式中のAは4価の芳香族基、もしくは脂肪族基であり、Bは2価の芳香族基、もしくは脂肪族基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、一価の脂肪族基または芳香族基である。)
    Figure 2022044021000011
    Figure 2022044021000012
    Figure 2022044021000013
  2. 前記式(1)中のBは少なくとも一つが(B-1)であって、(B-2)および/または(B-3)を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
    Figure 2022044021000014
  3. イミダゾール系化合物を含有する請求項1~2のいずれかに記載のポリアミド酸樹脂組成物。
  4. さらに有機溶媒を含有する請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド酸組成物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のポリアミド酸組成物の脱水環化物である、ポリイミド。
  6. 請求項5に記載のポリイミドを含むポリイミド膜。
  7. 430℃で1時間加熱した際の重量減少値が1%未満であることを特徴とする請求項6に記載のポリイミド膜。
  8. YIが8以下であることを特徴とする請求項6又7に記載のポリイミド膜。
  9. 支持体上に請求項6~8のいずれかに記載のポリイミド膜が設けられた積層体。
  10. 請求項9に記載の積層体において、10μm厚みのポリイミド膜とした際に、25℃における残留応力が25MPa以下となるポリイミド膜。
  11. 請求項4に記載の有機溶媒を含有するポリアミド酸組成物を支持体に塗布して、支持体上に膜状のポリアミド酸を形成し、加熱によりポリアミド酸をイミド化して、前記支持体上にポリイミド膜を形成する、積層体の製造方法。
  12. 請求項5~11に記載のポリイミドと、該ポリイミド上に形成された電子素子とを有するフレキシブルデバイス。
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