JP2022039775A - 固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサ - Google Patents

固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサ Download PDF

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Abstract

Figure 2022039775000001
【課題】耐熱信頼性が高い固体電解コンデンサ素子を提供する。
【解決手段】開示される固体電解コンデンサ素子は、素子部100aと、素子部100aの表面および内部のうちの少なくとも一方に配置された高分子とを含む。素子部100aは、陽極体110と、陽極体110の表面に形成された誘電体層113と、誘電体層113の少なくとも一部を覆う固体電解質層120と、固体電解質層120の少なくとも一部を覆う陰極引出層130とを含む。上記高分子は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを含む第1の共重合体、および/または、ブテンジオール単位とビニルアルコール単位とを含む第2の共重合体である。
【選択図】図1

Description

本開示は、固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサに関する。
固体電解コンデンサは、固体電解質層を備える固体電解コンデンサ素子と、固体電解コンデンサ素子と電気的に接続されたリード端子と、固体電解コンデンサ素子を封止する外装体とを備える。固体電解コンデンサ素子は、例えば、表層に多孔質部を備えた陽極体と、陽極体の表面の少なくとも一部に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。
特許文献1では、表面に酸化膜層が形成された弁作用金属からなる陽極部と、該表面の所定の領域に固体電解質層を有して層状に形成され最外層は導電性材料からなる陰極部と、該陽極部と該陰極部とを電気的に絶縁するレジスト部とにより構成される固体電解コンデンサ素子を複数備える固体電解コンデンサが提案されている。
特許文献2では、表面に多孔質層を有する固体電解コンデンサ用基材の陽極部領域と陰極部領域を分離する領域に遮蔽層を有する固体電解コンデンサが提案されている。
特許文献3では、誘電体皮膜中に浸透しかつ浸透部の上にマスキング層を形成するマスキング材溶液を塗布する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法が提案されている。
特許文献4では、弁作用金属の表面に形成したエッチング層に、固体電解質材料の浸透を防止するレジスト層を設けることで、陽極部と陰極部を区分するとともに、レジスト層の陰極部側に第1の溝を形成すること、第1の溝よりも陽極部側に第2の溝を形成し、第2の溝にレジスト層を形成することが提案されている。
特開2007-165777号公報 国際公開第2007/061005号パンフレット 国際公開第2000/067267号パンフレット 特開2007-305661号公報
固体電解コンデンサでは、空気が固体電解コンデンサ素子の内部に侵入することがある。侵入した空気中の酸素と固体電解コンデンサ素子に含まれる固体電解質層とが接触すると、高温下で固体電解質層が劣化し、固体電解コンデンサの静電容量が低下したり、ESRが増大したりする。
本開示の一局面は、固体電解コンデンサ素子に関する。当該固体電解コンデンサ素子は、素子部と、前記素子部の表面および内部のうちの少なくとも一方に配置された高分子とを含み、前記素子部は、陽極体と、前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、前記固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを含み、前記高分子は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを含む第1の共重合体、および/または、ブテンジオール単位とビニルアルコール単位とを含む第2の共重合体である。
本開示の他の一局面は、固体電解コンデンサに関する。当該固体電解コンデンサは、少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含み、前記固体電解コンデンサ素子が本開示に係る固体電解コンデンサ素子である。
本開示によれば、耐熱信頼性が高い固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサが得られる。
実施形態1のコンデンサ素子に含まれる素子部の一例を模式的に示す断面図である。 実施形態1のコンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。 図2に示したコンデンサ素子のうち、陰極引出層の表面近傍を示す断面図である。 実施形態2の電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。 図4に示した電解コンデンサの一部を模式的に示す断面図である。
以下、本開示の実施形態の例について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値Bの範囲」という場合、当該範囲には数値Aおよび数値Bが含まれる。この明細書において、「高分子(M)がある部分に配置されている」という文は、特別な記載がない限り、高分子(M)が他の部分にも配置されている形態を排除しない。
(固体電解コンデンサ素子)
本実施形態に係る固体電解コンデンサ素子は、素子部と高分子とを含む。当該高分子を、以下では「高分子(M)」と称する場合がある。また、本実施形態に係る固体電解コンデンサ素子を、以下では「コンデンサ素子(CE)」と称する場合がある。高分子(M)は、素子部の表面および内部(例えば、素子部の表面近傍の内部)のうちの少なくとも一方に配置されている。素子部は、陽極体と、陽極体の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを含む。高分子(M)は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを含む第1の共重合体、および/または、ブテンジオール単位とビニルアルコール単位とを含む第2の共重合体である。以下では、エチレン単位とビニルアルコール単位とを含む第1の共重合体を「共重合体(P1)」と称する場合があり、ブテンジオール単位とビニルアルコール単位とを含む第2の共重合体を「共重合体(P2)」と称する場合がある。
なお、素子部は、固体電解コンデンサ素子として機能する構成を有する。そのため、この明細書において、素子部を「固体電解コンデンサ素子」と読み替えることが可能である。
検討した結果、本発明者らは、高分子(M)を素子部の表面および/または内部に配置することによって、固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサの耐熱信頼性を向上できることを新たに見出した。本発明は、この新たな知見に基づくものである。
高分子(M)は、共重合体(P1)のみであってもよいし、共重合体(P2)のみであってもよいし、両者の混合物であってもよい。また、両者を別々に配置してもよい。例えば、共重合体(P1)を含む層と、共重合体(P2)を含む層とを積層してもよい。
共重合体(P1)は、エチレン単位(-CH-CH-)とビニルアルコール単位(-CH-CHOH-)とを主要な構成単位とする重合体である。共重合体(P1)は、本発明の効果が得られる範囲で、他の構成単位を含んでもよい。他の構成単位の例には、けん化されずに残存したビニルエステル単位(例えば酢酸ビニル単位)などが含まれる。共重合体(P1)の全構成単位に占める、エチレン単位(-CH-CH-)とビニルアルコール単位(-CH-CHOH-)との合計の割合R1は、80~100モル%の範囲(例えば90~100モル%の範囲や、95~100モル%の範囲)にあってもよい。
共重合体(P1)のエチレン単位とビニルアルコール単位とのモル比(%)をエチレン単位:ビニルアルコール単位=100-X:Xとしたときに、Xは、50~90の範囲(例えば、60~90の範囲や、60~80の範囲や、60~70の範囲)にあってもよい。この範囲とすることによって、高い酸素バリア性が得られ、その結果、コンデンサ素子(CE)の耐熱信頼性を特に高めることができる。好ましい一例では、共重合体(P1)の全構成単位に占めるエチレン単位とビニルアルコール単位との合計の割合R1が上述した範囲にあり、且つ、Xが上述した範囲にある。
共重合体(P2)は、ブテンジオール単位とビニルアルコール単位とを主要な構成単位とする重合体である。共重合体(P2)は、本発明の効果が得られる範囲で、他の構成単位を含んでもよい。他の構成単位の例には、けん化されずに残存したビニルエステル単位(例えば酢酸ビニル単位)などが含まれる。
共重合体(P1)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体であってもよい。共重合体(P2)は、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合体であってもよい。
高分子(M)は、市販のものを用いてもよいし、公知の合成方法で合成してもよい。高分子(M)の重合度に特に限定はなく、例えば200~500の範囲にあってもよい。
高分子(M)の少なくとも一部は、コンデンサ素子(CE)の最外層の少なくとも一部を構成してもよい。例えば、コンデンサ素子(CE)の最外層の少なくとも一部が、高分子(M)を含む高分子層であってもよい。当該高分子層の厚さは、0.1μm~10μmの範囲(例えば0.5μm~5μmの範囲)にあってもよい。当該高分子層に占める高分子(M)の割合は、1質量%~100質量%の範囲(例えば、10質量%~100質量%)の範囲にあってもよい。
高分子(M)が素子部の表面に浸透する場合、その浸透深さは、0.001μm以上(例えば0.01μm以上、または0.1μm以上)であってもよい。浸透深さの上限は特に限定されないが、高分子(M)が浸透可能な層の厚さに影響を受ける。浸透深さは、20μm以下(例えば5μm以下、1μm以下、0.005μm以下)であってもよい。
コンデンサ素子(CE)の構成部材の例について、以下に説明する。
(陽極体)
陽極体は、弁作用金属を含む金属を用いて形成される。陽極体には、弁作用金属を含む箔(金属箔)を用いることができる。弁作用金属としては、チタン、タンタル、アルミニウムおよびニオブ等が挙げられる。陽極体は、1種または2種以上の弁作用金属を含む。陽極体は、弁作用金属を、合金または金属間化合物の形態で含んでもよい。陽極体の厚さは特に限定されない。薄肉部以外における陽極体の厚さは、例えば、15μm以上300μm以下であり、80μm以上250μm以下であってよい。
陽極体の少なくとも一部の表面は、電解エッチング等によって粗面化処理されていてもよい。その場合、陽極体は、その表面に多孔質部を備える。陽極体全体が多孔質であってもよい。ただし、強度の観点から、陽極体は、両方の主面に配置された多孔質部と、それら多孔質部の間に配置された芯部とを含むことが好ましい。芯部の多孔度は、多孔質部の多孔度よりも低い。多孔質部は、多数の微細な孔を有する領域である。芯部は、例えば、電解エッチングされていない領域である。
(誘電体層)
誘電体層は、陽極体の表面の少なくとも一部に形成される。誘電体層は、例えば、陽極体の表面を化成処理等により陽極酸化することによって形成してもよい。そのため、誘電体層は、弁作用金属の酸化物を含み得る。例えば、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合、誘電体層はAl23を含み得る。なお、誘電体層はこれに限らず、誘電体として機能するものであればよい。誘電体層は、陽極体の多孔質部の表面の少なくとも一部に形成されてもよい。
(固体電解質層)
固体電解質層は、誘電体層の少なくとも一部を覆うように配置されている。固体電解質層は、誘電体層の表面全体を覆うように配置されていてもよい。
固体電解質層は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等は、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等を基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等には、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等が含まれる。
導電性高分子は、ドーパントとともに固体電解質層に含まれていてよい。ドーパントは、単分子アニオンであってもよいし、高分子アニオンであってよい。単分子アニオンの具体例としては、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。高分子アニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独モノマーの重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸由来の高分子アニオンが好ましい。
(陰極引出層)
陰極引出層は、固体電解質層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよく、固体電解質層の表面全体を覆うように形成されていてもよい。
陰極引出層は、例えば、カーボン層と、カーボン層の表面に形成された金属(例えば、銀)ペースト層と、を含んでもよい。陰極引出層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
(カーボン層)
カーボン層は炭素材料を含み、導電性を有する。炭素材料は特に限定されない。炭素材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン片、カーボンナノチューブが挙げられる。
カーボン層は、必要に応じて、バインダ樹脂および/または添加剤などを含んでもよい。バインダ樹脂は特に制限されず、一般的な固体電解コンデンサ素子の作製に用いられる公知のバインダ樹脂が挙げられる。バインダ樹脂としては、例えば、上記の熱可塑性樹脂または硬化性樹脂が挙げられる。添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、塩基、および/または酸などが挙げられる。
(金属ペースト層)
金属ペースト層は、金属材料を含む。金属材料は特に限定されない。導電性の観点から、金属材料は銀を含んでよい。金属ペースト層は、例えば、金属粒子(例えば銀粒子)を含む金属ペースト(例えば銀ペースト)を用いて形成してもよい。
金属材料の形状は特に限定されない。金属材料は、球状および/または鱗片状の金属粒子を含んでいてよい。球状の金属粒子(以下、球状粒子と称す。)の平均アスペクト比は、例えば、1.5未満である。鱗片状の金属材料の平均アスペクト比は、例えば、1.5以上であり、2以上である。高分子(M)は、これらの金属粒子同士の隙間を充填するように配置されてもよい。
金属ペースト層における金属材料の割合は、0体積%を超える限り特に限定されない。抵抗が小さくなり易い点で、上記体積割合は、60体積%以上、70体積%以上、または80体積%以上であってよい。
金属ペースト層は、さらにバインダ樹脂を含んでもよい。金属ペースト層おけるバインダ樹脂の割合は、特に限定されない。電気抵抗の観点から、金属ペースト層におけるバインダ樹脂の割合は、60体積%以下、20体積%以下、または10体積%以下であってよい。上記割合は、0.1体積%以上であってよい。上記体積割合は、0体積%であってもよい。金属ペースト層における各成分の体積割合は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により確認できる。
金属ペースト層の厚さは特に限定されない。金属ペースト層の厚さは、例えば、0.1μm以上で50μm以下であってよく、1μm以上で20μm以下であってよい。金属ペースト層の厚さは、金属ペースト層の厚さ方向の断面における任意の5点の平均値である。
高分子(M)(高分子(M)の少なくとも一部)は、陰極引出層の表面および内部のうちの少なくとも一方に配置されていてもよい。すなわち、高分子(M)は、陰極引出層の表面および内部のうちのいずれか一方または両方に配置されていてもよい。上述したように、陰極引出層の表面に金属ペースト層が存在する場合、高分子(M)の少なくとも一部は、金属ペースト層の表面および内部のうちの少なくとも一方に配置されていてもよい。陰極引出層は通常、緻密でなく、空隙を有する。そのため、陰極引出層から酸素が侵入し、固体電解質層が劣化する場合がある。高分子(M)を陰極引出層の表面および/または内部に配置することによって、酸素の侵入を効果的に抑制することができる。
高分子(M)(高分子(M)の少なくとも一部)は、陰極引出層の外側の表面から0.001μm以上(例えば、0.01μm以上、または0.5μm以上)の深さにわたって配置されていてもよい。この構成によれば、酸素の侵入を特に抑制できる。
酸素遮断性の観点から、高分子(M)は、陰極引出層の表面の面積の60%以上(例えば80%以上)を覆っていることが好ましい。高分子(M)は、陰極引出層の表面全体を覆っていてもよい。
陰極引出層は、最外層に配置された金属ペースト層であって金属材料を含む金属ペースト層を含んでもよい。この場合、金属ペースト層の内部には高分子(M)が配置されていてもよい。この場合、金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数Npは、金属材料に由来する元素のモル数Nmの65%以上であってもよい。モル数Npは、モル数Nmの66%以上であることがより好ましく、67原子%以上であることが特に好ましい。電気抵抗の観点から、モル数Npは、モル数Nmの、300%以下であることが好ましく、290%以下であることがより好ましい。
高分子(M)の位置は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いた元素分析や、蛍光X線分析法、ラマン分光分析法、フーリエ変換赤外分光光度法(FT-IR)、原子吸光分析法等の分析法によって評価することができる。具体的には、上記方法によって、コンデンサ素子(CE)の断面における高分子(M)に由来する元素(例えば、C、O等)の分布を確認すればよい。
金属ペースト層における、金属材料に由来する元素のモル数Nmに対する高分子(M)に由来する元素のモル数Npの割合も、上記分析方法によって評価できる。金属ペースト層がバインダ樹脂を含む場合、分析結果にはバインダ樹脂に由来する元素も含まれ得る。しかし、バインダ樹脂は通常は微量であるため、バインダ樹脂に由来する元素は無視することが可能である。すなわち、高分子(M)に含まれる元素についての分析結果は、高分子(M)に由来する元素についての分析結果であるとみなすことができる。
金属ペースト層は、バインダ樹脂を含む場合がある。この場合であっても、高分子(M)の有無は確認できる。一例では、まず、金属ペースト層の厚さを、固体電解質層側の表面からの深さが金属ペースト層の厚さの20%までの第1領域と、それ以外の第2領域とにわける。バインダ樹脂は、通常、金属ペースト層全体に略均一に配置されており、金属ペースト中の濃度は低い。一方、金属ペースト層の表面近傍に高分子(M)が偏在している場合、その濃度は、金属ペースト層の表面から内部に向かって小さくなる。そのため、金属ペースト層の断面において、高分子(M)に含まれる元素をマッピングしたときに、第1領域において確認される元素は、バインダ樹脂に由来するとみなすことができる。高分子(M)に由来する元素の濃度は、第1領域における上記元素の濃度よりも高い。つまり、マッピングされた元素の濃度が、第1領域における当該元素の濃度より大きい領域には、高分子(M)が配置されているとみなすことができる。
陰極引出層における高分子(M)の深さ(浸透深さ)は、任意の5点において測定された深さの平均値である。高分子(M)の深さは、高分子(M)が配置されていると上記の方法によって判断された領域の、厚さ方向(陰極引出層の厚さ方向)における長さである。
高分子(M)は、陰極引出層の表面の少なくとも一部を覆うように配置されていてもよい。陰極引出層の表面を覆う高分子(M)の厚さは特に限定されない。酸素遮断性の観点から、陰極引出層の表面を覆う高分子(M)の厚さは、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが特に好ましい。陰極引出層の表面を覆う高分子(M)の厚さは、陰極引出層の表面の任意の5点における高分子(M)の層の厚さの平均値である。
陽極体は、固体電解質層が形成されていない第1の陽極体部と、固体電解質層が形成されている第2の陽極体部とを含んでもよい。この場合、第1の陽極体部の表面および内部のうちの少なくとも一方に絶縁性樹脂が配置されていてもよい。絶縁性樹脂を配置することによって、陽極体と陰極引出層とが短絡することを抑制できる。
上記絶縁性樹脂は、高分子(M)であってもよい。絶縁性樹脂として高分子(M)を用いることによって、第1の陽極体部を介して素子内部に酸素が侵入することを抑制できる。
第1の陽極体部は、陽極端部と、陽極端部と第2の陽極体部との間に配置された分離部とを含んでもよい。この場合、絶縁性樹脂は、分離部の表面に配置されていてもよい。分離部は、陽極端部よりも薄くてもよい。例えば、第1の陽極体部の一部を圧縮または除去することによって分離部を形成してもよい。
酸素遮断性の観点から、絶縁性樹脂は、第1の陽極体部の表面に配置されていてもよいし、第1の陽極体部の内部に配置されていてもよい。例えば、第1の陽極体部の表面に存在する多孔質部の空隙に、絶縁性樹脂が配置されていてもよい。
高分子(M)は、陽極端部の表面から、0.001μm以上(例えば、0.01μm以上、または1μm以上)の深さにわたって配置されていてもよい。
高分子(M)は、陽極端部の面積の60%以上(例えば80%以上)を覆っていることが好ましい。高分子(M)は、陽極端部の表面全体を覆っていてもよい。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは特に限定されない。酸素遮断性の観点から、陽極端部の表面を覆う高分子(M)の層の厚さは、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
酸素遮断性の観点から、高分子(M)は、分離部の表面および内部のうちの少なくとも一方に配置されていてもよい。高分子(M)は、分離部の表面から0.001μm以上(例えば、0.01μm以上、または1μm以上)の深さにわたって配置されていることが好ましい。
高分子(M)は、分離部の面積の60%以上(例えば80%以上)を覆っていることが好ましい。高分子(M)は、分離部の表面全体を覆っていてもよい。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは特に限定されない。酸素遮断性の観点から、分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
分離部の表面の少なくとも一部は、高分子(M)に替えて、あるいは高分子(M)とともに、絶縁性の分離部材によって覆われていてもよい。この構成によれば、陽極端部と陰極引出層との短絡を特に抑制できる。分離部材の厚さは特に限定されないが、例えば、0.5μm以上100μm以下であってよく、10μm以上50μm以下であってよい。分離部材には、公知の絶縁テープ(レジストテープ)を用いてもよい。
高分子(M)は、分離部の内部に配置されていてもよい。高分子(M)は、分離部の表面から0.001μm以上(例えば、0.01μm以上、または1μm以上)の深さにわたって配置されていてもよい。
第1の陽極端部に配置されている高分子(M)の濃度、深さ、および厚さは、陰極引出層に配置されている高分子(M)について説明した方法と同様の方法で評価できる。
好ましい一例では、高分子(M)は、陰極引出層の表面および陽極端部の表面に配置される。この構成によれば、酸素の外部からの侵入が抑制され易くなる。
(固体電解コンデンサ)
本実施形態に係る固体電解コンデンサは、少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含み、複数の固体電解コンデンサ素子を含んでもよい。当該固体電解コンデンサ素子は、本実施形態のコンデンサ素子(CE)である。なお、固体電解コンデンサは、コンデンサ素子(CE)以外の固体電解コンデンサ素子を含んでもよい。好ましい一例では、固体電解コンデンサに含まれるすべての固体電解コンデンサ素子が、コンデンサ素子(CE)である。固体電解コンデンサに含まれる固体電解コンデンサ素子の数は、1~20の範囲(例えば2~20の範囲)にあってもよい。
上述したように、コンデンサ素子(CE)の素子部の表面および内部のうちの少なくとも一方には、高分子(M)が配置されている。例えば、コンデンサ素子(CE)の表面には、高分子(M)が配置されていてもよい。
固体電解コンデンサは、上記少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を封止する外装体をさらに含んでもよい。外装体には、高分子(M)が分散されていてもよい。外装体が高分子(M)を含むことによって、大気中の酸素が固体電解コンデンサ素子に到達することを抑制できる。
外装体は、封止樹脂を含む樹脂組成物で形成できる。封止樹脂としては、例えば、硬化性樹脂の硬化物、エンジニアリングプラスチックが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステルが挙げられる。エンジニアリングプラスチックには、汎用エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックが含まれる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。外装体に高分子(M)を分散させる場合には、外装体の材料となる樹脂組成物に、高分子(M)を混合すればよい。
樹脂組成物は、封止樹脂に加えて、無機フィラーなどの他の添加剤を含んでもよい。無機フィラーの例には、シリカ(溶融シリカなど)、タルク、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
固体電解コンデンサが複数のコンデンサ素子(CE)を含む場合、当該コンデンサ素子(CE)は積層されていてもよい。通常、積層されたコンデンサ素子(CE)の第1の陽極体部(例えば陽極端部)は、互いに電気的に接続される。例えば、それらの第1の陽極体部は、溶接によって接合されていてもよい。複数の第1の陽極体部は、陽極リード端子によってかしめられた後、溶接されてもよい。少なくとも1つの第1の陽極体部に、陽極リード端子が接合されてもよい。
通常、積層された固体電解コンデンサ素子の陰極引出層同士は、電気的に接続されている。少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子の陰極引出層に、陰極リード端子が接合されてもよい。陰極リード端子は、導電性接着剤やはんだを介して陰極引出層に接合されてもよい。あるいは、陰極リード端子は、溶接(抵抗溶接やレーザ溶接など)によって陰極引出層に接合されてもよい。導電性接着剤は、例えば、硬化性樹脂と炭素粒子や金属粒子との混合物である。
(リード端子)
リード端子の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されない。リード端子の材質は、金属であってもよいし、非金属であってもよい。リード端子の厚さは、25μm~200μmの範囲(例えば25μm~100μmの範囲)であってもよい。
(固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサの製造方法)
本実施形態に係るコンデンサ素子(CE)および固体電解コンデンサの製造方法に特に限定はない。それらの製造方法には、高分子(M)を配置する方法を除いて、公知の製造方法を適用してもよいし、公知の製造方法の一部を修正して適用してもよい。
本実施形態に係るコンデンサ素子(CE)および固体電解コンデンサの製造方法の例を以下に説明する。ただし、本実施形態に係るコンデンサ素子(CE)および固体電解コンデンサは、以下で説明する方法以外の方法で製造してもよい。コンデンサ素子(CE)および固体電解コンデンサについて説明した事項は以下の製造方法にも適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。また、以下の製造方法について説明した事項は、本実施形態に係るコンデンサ素子(CE)および固体電解コンデンサにも適用できる。
(コンデンサ素子(CE)の製造方法)
コンデンサ素子(CE)の製造方法の一例は、素子部を形成する工程(a)と、工程(a)の途中または工程(a)の後に、素子部の表面および内部のうちの少なくとも一方に高分子(M)を配置する工程(b)とを含む。
高分子(M)は、例えば、高分子(M)を含む液体を素子部の表面に塗布した後、当該液体を乾燥させることによって素子部に配置することができる。このとき、素子部の表面に配置された高分子(M)の少なくとも一部は、素子部の内部に浸透することがある。その結果、高分子(M)が素子部の内部に配置される。
高分子(M)を含む液体(以下では、「原料液」と称する場合がある)は、高分子(M)の溶液であってもよいし、高分子(M)の分散液であってもよい。原料液の液体成分(溶媒または分散媒)の例には、水や、水と有機溶媒(例えばn-プロパノールなどのアルコール)との混合液が含まれる。
高分子(M)としてエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いる場合の一例では、エチレン-ビニルアルコール共重合体の粉末を、水とn-プロパノールとの混合液(質量比50:50)に添加し、得られた液体を90℃~100℃に加熱することによって、濃度が1~10質量%(例えば5~15質量%)の原料液を調製してもよい。
高分子(M)としてブテンジオール-ビニルアルコール共重合を用いる場合の一例では、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合の粉末を、水に添加し、得られた液体を90℃~100℃に加熱することによって、濃度が1~15質量%(例えば5~15質量%)の原料液を調製してもよい。
原料液の塗布量に特に限定はなく、高分子(M)の厚さや浸透深さが上記の範囲となるように選択してもよい。塗布量は、例えば、原料液の濃度や粘度、浸漬時間によって調整される。
素子部に浸透させるには、原料液の粘度が低い方が好ましい。一方、酸素ガスバリア性を高めるために厚い層を形成するためには、原料液の粘度が高い方が好ましい。原料液の粘度は、過度に高くないことが望ましい。動的粘弾性測定装置を用いて25℃で測定される原料液の粘度は、1000mPa・s以下(例えば900mPa・s以下)であってもよい。原料液の粘度がこの範囲であると、陰極引出層に浸透し易くなる。原料液の上記粘度は、5mPa・s以上(例えば50mPa・s以上)であってもよい。原料液の粘度は、例えば、粘弾性測定装置を用いて、測定温度25℃、測定時間180秒の条件で測定される。
また、上記原料液は、コーターを用いるコーティング法、ディスペンサーを用いるディスペンス法、または転写(ローラ転写など)などによって、塗布してもよい。このとき、塗布方法や塗布位置に応じて、原料液の組成や粘度等を変えてもよい。
高分子(M)を含む液体を素子部に塗布する方法に特に限定はない。例えば、高分子(M)を含む液体に素子部を浸漬してもよい。
複数の固体電解コンデンサ素子を含む固体電解コンデンサを製造する場合、まず、複数の素子部を積層するとによって積層体を作製してもよい。その後、高分子(M)を含む液体に積層体を浸漬することによって、素子部の表面および/または内部に高分子(M)を配置してもよい。陽極リード端子および陰極リード端子は、高分子(M)を配置する前または後に、固体電解コンデンサ素子に接続することができる。
なお、上記原料液を用いて複数の素子部に高分子(M)を配置した後に、当該複数の素子部を積層してもよい。
素子部を形成する工程(a)は、例えば、多孔質部を有する陽極体の表面の少なくとも一部に誘電体層を形成する工程と、当該陽極体を、陽極端部と分離部と第2の陽極体部とに区分する区分工程と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層を形成する工程と、を含む。
区分工程は、分離部となる領域の多孔質部の一部を圧縮または除去することによって、分離部を薄くする工程を含んでもよい。すなわち、分離部は薄肉部を含んでもよい。また、上記区分工程は、分離部(例えば薄肉部)の表面の少なくとも一部に分離部材を配置する工程を含んでもよい。
固体電解コンデンサの製造方法の一例は、少なくとも1つのコンデンサ素子(CE)を準備する工程(i)と、コンデンサ素子(CE)を外装体で封止する工程(ii)とを含む。コンデンサ素子(CE)は、上述した製造方法で準備できる。工程(i)と工程(ii)との間に、積層工程とリード端子接続工程とをこの順に行ってもよい。積層工程では、複数のコンデンサ素子(CE)が積層される。リード端子接続工程では、固体電解コンデンサ素子の第1の陽極体部(例えば陽極端部)に陽極リード端子が接続され、陰極引出層に陰極リード端子が接続される。
このようにして、コンデンサ素子(CE)およびそれを含む固体電解コンデンサを製造できる。コンデンサ素子(CE)およびそれを含む固体電解コンデンサの製造方法の一例について、以下に説明する。
(1)陽極体の準備工程(S11)
陽極体の原料として、例えば、弁作用金属を含む金属箔が用いられる。まず、金属箔の少なくとも一方の主面を粗面化する。粗面化によって、金属箔の少なくとも主面側に、多数の微細な孔を有する多孔質部が形成される。粗面化は、例えば金属箔を電解エッチングすることによって行われる。
(2)誘電体層を形成する工程(S12)
次に、陽極体の表面に誘電体層を形成する。例えば、陽極体の多孔質部の表面に誘電体層を形成する。誘電体層の形成方法は特に限定されない。誘電体層は、例えば、陽極体を化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、陽極体をアジピン酸アンモニウム溶液等の化成液に浸漬し、熱処理する。陽極体を化成液に浸漬し、電圧を印加してもよい。
(3)陽極体を区分する工程(S13)
次に、必要に応じて、誘電体層を形成した陽極体を、陽極端部と、分離部と、第2の陽極体部とに区分する。例えば、陽極体の一部を薄肉部とすることによって分離部を形成してもよい。薄肉部は、分離部となる領域において、多孔質部の圧縮および/または除去によって形成してもよい。圧縮は、プレス加工などによって行うことができる。多孔質部の除去は、切削加工、レーザ加工などによって行ってもよい。
(4)分離部の表面に分離部材を配置する工程(S14)
次に、必要に応じて、分離部の表面に分離部材を配置する。分離部材を、固体電解質層を形成する工程の前に、分離部材を配置する工程を行うことによって、固体電解質層を形成する際に、導電性高分子が陽極端部側に形成されることを防止できる。
(5)固体電解質層を形成する工程(S15)
次に、誘電体層の表面に固体電解質層を形成する。固体電解質層は、陽極体の存在下で、原料(モノマーまたはオリゴマー)を化学重合および/または電解重合することによって形成してもよい。あるいは、固体電解質層は、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することによって形成してもよい。
原料となるモノマーまたはオリゴマーは、上記導電性高分子の原料となるモノマーまたはオリゴマーであり、例えば、ピロール、アニリン、チオフェン、またはこれらの誘導体等である。化学重合および/または電解重合に用いられる重合液には、原料モノマーもしくはオリゴマーに加えて、上記のドーパントが含まれてよい。
(6)陰極引出層を形成する工程(S16)
次に、固体電解質層の表面に陰極引出層を形成する。陰極引出層は、例えば、カーボンペーストおよび銀ペーストを、この順に固体電解質層に塗布することによって形成できる。このようにして、素子部が形成される。
(7)積層体を作製する工程(S17)
複数の素子部を積層し、陽極端部同士を接合して、積層体を作製する。陽極端部同士は、溶接および/またはかしめ等によって接合することによって、電気的に接続する。隣接する陰極引出層は、金属ペーストなどによって接続されてもよい。また、必要に応じて、陽極端部に陽極リード端子が接続され、陰極引出層に陰極リード端子が接続される。
(8)高分子(M)を含む液体に積層体を浸漬する工程(S18)
次に、上記積層体の全体を、高分子(M)を含む液体に浸漬する。その後、必要に応じて、乾燥、熱処理などが行われる。このようにして、陰極引出層、陽極端部、分離部材(または分離部)のそれぞれの表面に高分子(M)が配置される。また、高分子(M)の一部は、陰極引出層および陽極端部の内部に浸透する。
以上のようにして、複数のコンデンサ素子(CE)の積層体が得られる。次に、この積層体を用いて、以下の方法で固体電解コンデンサを製造する。
(9)固体電解コンデンサの製造
まず、少なくとも1つのコンデンサ素子(CE)の陽極端部に陽極リード端子を電気的に接続し、陰極引出層に陰極リード端子を電気的に接続する。陽極端部と陽極リード端子とは、例えば溶接されて、電気的に接続される。陰極引出層と陰極リード端子とは、例えば、陰極引出層と陰極リード端子とを導電性接着剤を介して接着させることにより、電気的に接続される。
次に、積層されたコンデンサ素子(CE)と、リード端子の一部とを外装体によって封止する。封止は、公知の成形技術(射出成形、インサート成形、圧縮成形など)を用いて行われてもよい。例えば、所定の金型を用いて、積層された固体電解コンデンサ素子とリード端子の一部とを覆うように外装体の材料(樹脂組成物)を配置した後、加熱を行ってもよい。このようにして、外装体が形成される。
本開示に係る実施形態の例について、図面を参照して以下に具体的に説明する。以下で説明する例の構成要素には、上述した構成要素を適用できる。また、以下で説明する例は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、以下で説明する実施形態において、本開示の固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサに必須ではない構成要素は省略してもよい。以下で説明する固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサは、上述した方法で製造してもよい。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る固体電解コンデンサ素子の素子部を模式的に示す断面図である。素子部100aは、陽極体110と、陽極体110の少なくとも一部を覆う誘電体層113と、誘電体層113の少なくとも一部を覆う固体電解質層120と、固体電解質層120の少なくとも一部を覆う陰極引出層130と、を含む。陰極引出層130は、固体電解質層120上に配置されたカーボン層131と、カーボン層131上に配置された金属ペースト層132とを含む。素子部100aは、図1の紙面に垂直な方向に広がるシート状の形状を有してもよい。陽極体110の表面のうち、誘電体層113が形成されている主面は粗面化されて多孔質部となっている。
陽極体110は、第1の陽極体部111と第2の陽極体部112とを含む。第2の陽極体部112上には、固体電解質層120が配置されている。第1の陽極体部111は、陽極端部111aと分離部111bとを含む。分離部111bは、陽極端部111aと第2の陽極体部112との間に配置されている。図1では、理解を容易にするため、陽極端部111aと分離部111bとの境界、および、分離部111bと第2の陽極体部112との境界を点線で示す。陽極体110のうち2つの主面近傍の部分には多孔質部(図示せず)が存在している。2つの多孔質部の間には、芯部が存在している。分離部111bは、陽極体110の他の部分よりも薄い。分離部111b上には、分離部材140が配置されている。
好ましい一例では、素子部100aの表面を覆うように高分子(M)が配置され、一部の高分子(M)は、素子部100aの表面から内部に浸透している。そのような一例の固体電解コンデンサ素子100の断面図を、図2に模式的に示す。
図2に示す固体電解コンデンサ素子100は、素子部100aの表面を覆うように配置された高分子層150を含む。高分子層150は、高分子(M)を含む。なお、陽極端部111a上に形成された誘電体層113および高分子層150の一部は、必要に応じて除去される。例えば、陽極端部111aのうち他の部材(例えば、他の陽極端部111a、陽極リード端子など)と接続される部分に形成された誘電体層113および高分子層150は、他の部材と接続される際に除去される。
陰極引出層130の表面近傍の拡大図を、図3に模式的に示す。図3に示すように、陰極引出層130の表面には、高分子層150が存在する。また、陰極引出層130(より詳細には金属ペースト層132)の表面近傍の部分には、高分子(M)が浸透している領域130aが存在する。図3に模式的に示す一例では、高分子(M)は、陰極引出層130の表面から、深さLの位置まで浸透している。同様に、陽極端部111aの表面には高分子(M)の層が形成されており、陽極端部111aの表面近傍の部分には、高分子(M)が浸透している。固体電解コンデンサ素子100では、大気中の酸素ガスが素子内部(例えば固体電解質層120)に浸透することが、高分子(M)によって抑制される。その結果、固体電解質層120の特性の低下(特に高温下での特性の低下)が抑制される。そのため、固体電解コンデンサ素子100は、高い耐熱信頼性を有する。
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る固体電解コンデンサを模式的に示す断面図である。なお、図4では、高分子(M)が存在する領域の図示を省略している。図4に示す固体電解コンデンサ200は、積層された複数の固体電解コンデンサ素子100と、陽極リード端子211と、陰極リード端子212と、外装体230とを含む。
複数の固体電解コンデンサ素子100の陽極端部は、互いに接続されている。陽極リード端子211は、少なくとも1つの陽極端部に接続されている。複数の固体電解コンデンサ素子100の陰極引出層は互いに接続されている。陰極リード端子212は、少なくとも1つの陰極引出層に接続されている。陽極リード端子211の一部および陰極リード端子212の一部はそれぞれ、外装体230から露出している。その露出している部分が、端子として機能する。外装体230は、積層された固体電解コンデンサ素子100の全体を覆うように配置されている。上述したように、外装体230に高分子(M)が分散されていてもよい。
高分子(M)を含む高分子層150は、複数の固体電解コンデンサ素子100を覆うように配置されている。積層されている固体電解コンデンサ素子100の一部の拡大図を、図5に示す。図5に示すように、隣接する固体電解コンデンサ素子100の陰極引出層130は、導電層213によって接続されている。高分子層150は、導電層213が形成されている箇所を除いて、陰極引出層130の全体を覆うように配置されている。さらに、高分子層150は、陽極端部111aと分離部材140上にも配置されている。高分子(M)の一部は、陽極端部111aの表面近傍の部分および陰極引出層130の表面近傍の部分に浸透している。図2に示した固体電解コンデンサ素子100と同様に、固体電解コンデンサ200は、高い耐熱信頼性を有する。
本開示に係る固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサについて、実施例によってさらに詳細に説明する。この実施例では、複数の固体電解コンデンサを作製して評価した。
(電解コンデンサA1の作製)
下記の要領で、積層された7つのコンデンサ素子を含む固体電解コンデンサ(電解コンデンサA1)を作製した。
(1)コンデンサ素子の作製
基材としてアルミニウム箔(厚さ100μm)を準備し、アルミニウム箔の表面にエッチング処理を施し、多孔質部(アルミニウム箔の一方の主面側における厚さ35μm、他方の主面側における厚さ35μm)を備える陽極体を得た。陽極体を濃度0.3質量%のリン酸溶液(液温70℃)に浸して70Vの直流電圧を20分間印加することにより、陽極体の表面に酸化アルミニウム(Al)を含む誘電体層を形成した。
陽極体を、陽極端部と第2の陽極体部とこれらの間の分離部とに区分し、分離部の一部をプレス加工により圧縮して薄肉部(厚さ35μm)を形成した。薄肉部に絶縁性のレジストテープ(分離部材)を貼り付けた。
誘電体層が形成された陽極体を、導電性材料を含む液状組成物に浸漬し、プレコート層を形成した。ピロール(導電性高分子のモノマー)と、ナフタレンスルホン酸(ドーパント)と、水とを含む重合液を調製した。得られた重合液中に、誘電体層およびプレコート層が形成された陽極体を浸漬して、印加電圧3Vで電解重合を行い、固体電解質層を形成した。
固体電解質層に、黒鉛粒子を水に分散した分散液を塗布した後、乾燥して、固体電解質層の表面にカーボン層を形成した。次いで、カーボン層の表面に、銀粒子とバインダ樹脂(エポキシ樹脂)とを含む銀ペーストを塗布した後、加熱してバインダ樹脂を硬化させ、金属ペースト層(銀ペースト層、厚さ15μm)を形成した。このようにして、カーボン層と金属ペースト層とで構成される陰極引出層10を形成し、素子部を得た。
上記素子部を7つ作製し、7つの素子部を積層した。そして、陽極端部同士をレーザ溶接により接合して、積層体を得た。
得られた積層体を、高分子(M)を含む原料液に浸漬したのち、積層体を熱処理することによって、高分子(M)を積層体の表面近傍に配置した。原料液には、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む液体を用いた。原料液の分散媒には、水とn-プロパノールとの混合液を用いた。高分子(M)の浸漬深さおよび陰極引出層上の高分子(M)の層厚は、原料液の濃度、温度、浸漬時間を変えることにより変化させることができる。原料液の濃度を低くすること、原料液の温度を高くすること、および、浸漬時間を長くすることのうちの少なくとも1つを行うことによって、高分子(M)の浸透深さを増加させることができる。一方、原料液の濃度を高くすること、および、原料液の温度を下げることのうちの少なくとも1つを行うことによって、陰極引出層上および陽極端部表面における高分子(M)の厚さを厚くすることができる。電解コンデンサA1の作製では、陰極引出層上における層厚を厚くすることを狙い、原料液におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体の濃度を12質量%、原料液の温度を20℃、浸漬時間を3分とした。
ラマン分光分析、フーリエ変換赤外分光光度法、TEM/EDS(透過型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)もしくはTEM/EELS(透過型電子顕微鏡/電子線エネルギー損失分光法)によって高分子(M)の配置を確認した。積層体において、高分子(M)は、陽極体の内部、分離部の内部、陰極引出層の内部、隣接するコンデンサ素子の分離部材の間に配置されていた。高分子(M)は、陰極引出層の最表面から0.001μmの深さにわたって配置されていた。金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の75%であった。
高分子(M)は、陽極端部の最表面から0.001μmの深さにわたって配置されていた。高分子(M)は、レジストテープの下方であって、分離部の最表面から0.001μmの深さにわたって配置されていた。高分子(M)は、陰極引出層の表面にも配置されていた。陰極引出層の表面を覆う高分子(M)の厚さは、6.4μmであった。
(2)電解コンデンサの組み立て
積層されたコンデンサ素子に2本のリードフレーム(Snメッキされた銅)を接合した。次いで、積層されたコンデンサ素子と各リードフレームの一部を、ビフェニル型エポキシ樹脂(Tg180℃)を含む封止材料で封止することによって外装体を形成し、電解コンデンサA1を完成させた。
(電解コンデンサA2の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から0.005μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA2を完成させた。なお、電解コンデンサA2および以下の電解コンデンサの作製において、高分子(M)の厚さおよび浸透深さは、原料液の濃度、原料液の温度、および原料液への浸漬時間のうちの少なくとも1つを変更することによって変更した。それらの条件は、後掲する表1に示す。また、電解コンデンサA2および以下の電解コンデンサにおいて、陰極引出層を覆うように配置された高分子(M)の層の厚さも、後掲する表1に示す。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の71%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極部陽極端部の最表面から0.005μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.8μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から0.005μmの深さにわたって配置されていた。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、4.8μmであった。
(電解コンデンサA3の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から0.01μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA3を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の66%であった。高分子(M)はまた、陽極端部の最表面から0.01μmの深さにわたって配置されていた。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の最表面から0.01μmの深さにわたって配置されていた。
(電解コンデンサA4の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から0.03μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA4を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の66%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極端部の最表面から0.01μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.0μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から0.01μmの深さにわたって配置されていた。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.0μmであった。
(電解コンデンサA5の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から0.05μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA5を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の67%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の最表面から0.05μmの深さにわたって配置されていた。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の最表面から0.05μmの深さにわたって配置されていた。
(電解コンデンサA6の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から0.07μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA6を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の67%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極端部の最表面から0.07μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、4.8μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の最表面から0.07μmの深さにわたって配置されていた。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、3.4μmであった。
(電解コンデンサA7の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から0.1μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA7を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素モル数は、銀原子のモル数の67%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極端部の最表面から0.1μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.3μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の最表面から0.1μmの深さにわたって配置されていた。
(電解コンデンサA8の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から1.0μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA8を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の85%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極端部の最表面から1.0μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.2μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から0.8μmの深さにわたって配置されていた。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.0μmであった。
(電解コンデンサA9の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から5.0μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA9を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の170%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極端部の最表面から5.2μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.0μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から5.0μmの深さにわたって配置されていた。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.2μmであった。
(電解コンデンサA10の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から10.0μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA10を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の276%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極端部の最表面から9.5μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、4.9μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から10.0μmの深さにわたって配置されていた。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、4.6μmであった。
(電解コンデンサA11の作製)
高分子(M)を、陰極引出層の最表面から15.0μmの深さにわたって配置されるように含浸させたこと以外、電解コンデンサA1と同様にしてコンデンサ素子を作製し、電解コンデンサA11を完成させた。
金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の283%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極端部の最表面から15.0μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.1μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から14.6μmの深さにわたって配置されていた。分離部の表面を覆う高分子(M)の厚さは、5.2μmであった。
(電解コンデンサA12の作製)
高分子(M)として、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合体を配置した電解コンデンサを作製した。電解コンデンサA1と同様に作製した積層体を、高分子(M)を含む原料液に浸漬したのち、積層体を熱処理することによって、高分子(M)を積層体の表面近傍に配置した。高分子(M)にはブテンジオール-ビニルアルコール共重合体を用いた。原料液の分散媒には水を用いた。原料液におけるブテンジオール-ビニルアルコール共重合体の濃度は8質量%とした。原料液の粘度は120Pa・sであった。原料液の温度50℃、浸漬時間30分として、原料液に積層体を浸漬した。高分子(M)は、陰極引出層の最表面から13.5μmの深さにわたって配置されていた。金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の253%であった。
高分子(M)はまた、陽極端部の表面、および、陽極部の最表面から13.1μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部を覆う高分子(M)の厚さは4.3μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から13.1μmの深さにわたって配置されていた。
(電解コンデンサA13の作製)
高分子(M)として、エチレン-ビニルアルコール共重合体とブテンジオール-ビニルアルコール共重合体との混合物を配置した電解コンデンサを作製した。電解コンデンサA1と同様に作製した積層体を、高分子(M)を含む原料液に浸漬したのち、積層体を熱処理することによって、高分子(M)を積層体の表面近傍に配置した。原料液の作製では、まず、電解コンデンサA1と同様の方法でエチレン-ビニルアルコール共重合体の原料液(濃度:8質量%)を作製し、さらに電解コンデンサA12と同様の方法でブテンジオール-ビニルアルコール共重合体の原料液(濃度:8質量%)を作製した。これらの原料液を、質量比で1:1の割合で混合、攪拌して原料液を作製した。
高分子(M)は、陰極引出層の最表面から13.8μmの深さにわたって配置されていた。金属ペースト層において、高分子(M)に由来する元素のモル数は、銀原子のモル数の241%であった。
高分子(M)は、陽極端部の表面、および、陽極部の最表面から13.1μmの深さにわたって配置されていた。陽極端部を覆う高分子(M)の厚さは4.3μmであった。高分子(M)はさらに、レジストテープの下方であって、分離部の表面および分離部の最表面から12.8μmの深さにわたって配置されていた。
(電解コンデンサR1の作製)
積層体に高分子(M)を含浸させなかったこと以外は、電解コンデンサA1と同様にして、電解コンデンサR1を作製した。
[評価]
(1)静電容量およびESR
上記で作製した電解コンデンサA1~A13およびR1について、以下の手順で、静電容量およびESRの変化率を評価した。20℃の環境下で、4端子測定用のLCRメータを用いて、初期静電容量値C0(μF)、および、電解コンデンサの周波数100kHzにおける初期のESR値X0(mΩ)をそれぞれ測定した。次に、145℃の温度にて、電解コンデンサに定格電圧を500時間印加した(耐熱試験)。その後、上記と同様の方法で、静電容量値C1(μF)、および、ESR値(X1)(mΩ)をそれぞれ測定した。そして、静電容量およびESRの変化率(%)を求めた。それぞれは以下の式で求められる。
静電容量の変化率(%)=100×(C1-C0)/C0
ESRの変化率(%)=100×(X1-X0)/X0
評価結果を表1に示す。また、陰極引出層の表面近傍における高分子(M)の配置の状態も、表1に示す。なお、静電容量の変化率は、数値が大きい方(すなわち低下率が低い方)が好ましい。また、ESRの変化率は、数値が小さい方(すなわち上昇率が低い方)が好ましい。
Figure 2022039775000002
電解コンデンサA1~A13は、比較例である電解コンデンサR1と比べて、耐熱試験前後において、静電容量の低下率が低く、ESRの上昇率が低かった。電解コンデンサA1~A13では、高分子(M)が素子部の表面近傍(例えば陰極引出層の上および内部)に配置されている。その結果、固体電解質層への空気の侵入が抑制され、それによって、導電性高分子の劣化が抑制されて電解コンデンサの耐熱性が向上したと考えられる。
本開示は、固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサに利用できる。本開示に係る電解コンデンサは、高温雰囲気に晒された場合でも固体電解質層に含まれる導電性高分子の劣化が抑制され、静電容量の低下を抑制できる。また、ESRの上昇を抑制することもできる。よって、本開示に係る固体電解コンデンサ素子および固体電解コンデンサは、低いESRや高い静電容量が求められる用途、熱に晒されるような用途など、様々な用途に利用できる。これらの用途は単なる例示であり、これらに限定されるものではない。
100:固体電解コンデンサ素子
100a:素子部
110:陽極体
111:第1の陽極体部
112:第2の陽極体部
113:誘電体層
120:固体電解質層
130:陰極引出層
132:金属ペースト層
150:高分子層
200:固体電解コンデンサ
230:外装体

Claims (11)

  1. 素子部と、前記素子部の表面および内部のうちの少なくとも一方に配置された高分子とを含み、
    前記素子部は、
    陽極体と、
    前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、
    前記誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、
    前記固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを含み、
    前記高分子は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを含む第1の共重合体、および/または、ブテンジオール単位とビニルアルコール単位とを含む第2の共重合体である、固体電解コンデンサ素子。
  2. 前記第1の共重合体は、エチレン-ビニルアルコール共重合体であり、
    前記第2の共重合体は、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合体である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ素子。
  3. 前記高分子は、前記陰極引出層の表面および内部のうちの少なくとも一方に配置されている、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ素子。
  4. 前記高分子は、前記陰極引出層の外側の表面から0.001μm以上の深さにわたって配置されている、請求項3に記載の固体電解コンデンサ素子。
  5. 前記陰極引出層は、最外層に配置された金属ペースト層であって金属材料を含む金属ペースト層を含み、
    前記金属ペースト層の内部には前記高分子が配置されており、
    前記金属ペースト層において、前記高分子に由来する元素のモル数は、前記金属材料に由来する元素のモル数の65%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ素子。
  6. 前記高分子は、前記陰極引出層の表面の少なくとも一部を覆うように配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ素子。
  7. 前記陽極体は、前記固体電解質層が形成されていない第1の陽極体部と、前記固体電解質層が形成されている第2の陽極体部とを含み、
    前記第1の陽極体部の表面および内部のうちの少なくとも一方に絶縁性樹脂が配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ素子。
  8. 前記絶縁性樹脂は前記高分子である、請求項7に記載の固体電解コンデンサ素子。
  9. 少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を含む固体電解コンデンサであって、
    前記固体電解コンデンサ素子が請求項1~8のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ素子である、固体電解コンデンサ。
  10. 前記固体電解コンデンサ素子の表面に前記高分子が配置されている、請求項9に記載の固体電解コンデンサ。
  11. 前記少なくとも1つの固体電解コンデンサ素子を封止する外装体をさらに含み、
    前記外装体には前記高分子が分散されている、請求項9または10に記載の固体電解コンデンサ。
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