JP2022038605A - 錠剤の崩壊促進用組成物および錠剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、特定の糖質を有効成分とする錠剤の崩壊促進用組成物、および、これを用いる錠剤の製造方法に関する。
錠剤は、一般に、活性成分または活性成分に賦形剤等の副材料を加えたものを圧縮形成などの方法により一定の形に製した固形の製品をいう。錠剤は、従来から、内服用や口腔用等の医薬品、菓子等の食品、入浴剤、洗浄剤等さまざまな分野で製品が製造されている。
錠剤の多くは、使用時には液体と接触し、崩壊して活性成分を放出することにより用いられる。そこで、使用時における崩壊ないし活性成分の放出を容易にするため、錠剤には、添加物(崩壊剤)が配合される場合がある。係る崩壊剤としては、従来、ポリビニルピロリドン系のクロスポビドン、セルロース系のカルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび結晶セルロース、ならびにデンプン系の部分アルファー化デンプンなどが使用されている。また、特許文献1には大豆由来の食物繊維からなる崩壊剤が、特許文献2にはアラニンからなる崩壊剤が、それぞれ開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の崩壊剤は、製品消費者に大豆アレルギーをもつ者を含めることができないという課題がある。また、特許文献2に記載の崩壊剤は、大量に添加した場合に、加工性や味質に悪影響を及ぼす懸念がある。さらに、上述のポリビニルピロリドン系やセルロース系の崩壊剤は、一般消費者にとって馴染みのない化合物であるため、食品用途の錠剤への添加にあたっては抵抗感を抱く消費者が多い。一方、一部のデンプン系の崩壊剤については、消費者における抵抗感が少ないものの、崩壊性が満足いくものではないという課題があった。
すなわち、これら従来技術を鑑みても、安心・安全で、味質や加工性への悪影響が少なく、錠剤の崩壊を効果的に促進することができる技術は十分に提供されている状況ではない。本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、安心・安全で、味質や加工性への悪影響が少なく、錠剤の崩壊を効果的に促進することができる崩壊促進用組成物を提供することを目的とする。また、これを用いる錠剤の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトールおよびイソマルトから選択される1以上の糖質が、液体の性質にかかわらず、液体中における錠剤の崩壊を促進することを見出した。また、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトおよびラクトースから選択される1以上の糖質が、酸性液体中または塩溶液中における錠剤の崩壊を促進することを見出した。そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
(1)本発明に係る錠剤の崩壊促進用組成物の第1の態様は、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトールおよびイソマルトから選択される1以上の糖質を有効成分とする。本第1の態様では、水、酸性、中性あるいは塩基性液体、塩溶液などの液体の性質を問わず、錠剤の崩壊を促進することができる。
(2)本発明に係る錠剤の崩壊促進用組成物の第2の態様は、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトおよびラクトースから選択される1以上の糖質を有効成分とする。本第2の態様では、酸性の液体または塩溶液における錠剤の崩壊を促進することができる。
(3)本発明において、糖質は、エリスリトールであってもよい。この場合、錠剤に接触する液体の性質にかかわらず、高い崩壊性を発揮することができる。また、一定の打錠圧で調製した錠剤であっても、顕著に高い崩壊性を発揮することができる。
(4)本発明において、糖質は、錠剤における質量比が5質量%以上99質量%以下となるよう、錠剤に配合してもよい。
(5)本発明に係る錠剤の製造方法は、本発明に係る崩壊促進用組成物を含む原材料を、所定の形状に成形加工する工程を有する。
本発明によれば、液体中における錠剤の崩壊を促進することができる。したがって、例えば、医薬品用途の錠剤であれば、体内や体表面で活性成分が薬効を奏することを容易にすることができる。また、例えば、食品用途の錠剤であれば、呈味成分が味を呈したり、栄養成分が体内に吸収されたりするのを容易にすることができる。また、例えば、洗浄剤用途の錠剤であれば、洗浄成分が洗浄効果を発揮するのを容易にすることができる。また、例えば、入浴剤用途の錠剤であれば、活性成分が温浴効果や発汗効果、香り、保湿効果などを発揮するのを容易にすることができる。
また、本発明の糖質はいずれも、食品や食品添加物、あるいは医薬品添加物として長い摂取経験があり、高い安全性が証明されていることから、一般消費者にとって抵抗感が少ない物質である。よって、本発明によれば、安全性への懸念を惹起することなく、液体中における錠剤の崩壊を促進することができる。
また、本発明の糖質は、ショ糖と同等以下の甘味を呈するものの、刺激的あるいは顕著に特徴的な味や臭いは有さないため、製品の味質に与える悪影響は小さい。また、本発明の糖質がエリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトールまたはイソマルトである場合は、反応性の高い還元末端を構造中に有しないため、錠剤に配合する活性成分との化学的反応が起こりづらく、安全性ないし品質安定性の高い錠剤を製造することができる。さらに、後述する実施例で示すように、高濃度に添加しても打錠可能で、成形加工への悪影響も少ない。よって、本発明によれば、味質あるいは成形加工に大きな悪影響を及ぼすことなく、液体中における崩壊性が高い錠剤を製造することができる。
さらに、本発明によれば、原材料に本発明の糖質を配合するという簡便な方法により、
液体中における崩壊性が高い錠剤を製造することができる。
液体中における崩壊性が高い錠剤を製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において「錠剤」とは、活性成分または活性成分に賦形剤等の副材料を加えたものを原材料として、一定形状に成形加工した固形の製品をいう。本発明は、特に、最終消費者による使用時に液体(唾液や胃液などの体液を含む)と接触させて活性成分を放出させることにより用いられる錠剤を適用対象としている。使用時に液体に接触させて用いるものである限り錠剤の用途は特に限定されず、例えば、医薬品、医薬部外品、飲食品、入浴剤や洗浄剤、化粧品などの日用品・工業用品・清掃用品等の各種の用途の錠剤を適用対象としている。錠剤の形状や寸法、重量もまた特に限定されず、その用途や活性成分等に応じて適宜設定できる。
なお、ここでいう「活性成分」とは、錠剤の用途に応じて本来的な作用を発揮する成分をいう。例えば、医薬品であれば、生理作用を発揮する成分をいい、飲食品であれば呈味成分ないし栄養成分をいい、洗浄剤であれば洗浄成分をいい、入浴剤であれば温浴効果や発汗効果をもたらす成分をいう。
本発明において、「崩壊促進用組成物」とは、錠剤の崩壊を促進するために、錠剤に配合する物質をいう。
第1の態様の崩壊促進用組成物によれば、水、酸性液体、中性液体、塩基性液体あるいは塩溶液などの液体の性質を問わず、あるいは、錠剤に接触する液体の水素イオン濃度(pH)にかかわらず、錠剤の崩壊を促進することができる。また、第2の態様の崩壊促進用組成物によれば、酸性液体または塩溶液における錠剤の崩壊を促進することができる。
ここで、「酸性液体」とはpHが0以上7未満の液体を、「塩基性液体」とはpHが7超14以下の液体を、「中性液体」とはpHが7または7付近の液体をいう。また、「塩(えん)」とは、酸の水素イオンが他の陽イオンで置換された化合物、または、塩基の水酸化物イオンが他の陰イオンで置換された化合物をいう。換言すれば、塩基由来の陽イオンと酸由来の陰イオンとがイオン結合した化合物をいう。そして、「塩溶液」とは、塩が溶解した液体、加水分解した塩を含む液体、あるいは、塩由来の陽イオンと陰イオンとを含有する液体をいう。
本発明において、「錠剤の崩壊を促進する」とは、錠剤が液体と接触して崩壊を開始してから、崩壊が完了するまでに要する時間(崩壊時間)を短くすることをいう。崩壊時間は、後述する実施例で示すように、第十七改正日本薬局方(平成28年3月7日 厚生労働省告示第64号)に記載の崩壊試験法に準じた試験を行うことにより確認することができる。本発明の糖質を配合した錠剤と配合していない錠剤とを同条件の崩壊試験に供して、崩壊時間を測定して比較する。前者の方が崩壊時間が短ければ、本発明の糖質により錠剤の崩壊が促進されたと判断することができる。
また、錠剤について「崩壊性が高い」とは、崩壊時間が短いことをいう。
エリスリトール(エリトリトール)は、ブドウやナシなどの果実、味噌や醤油、清酒などの発酵食品にも元来含まれている糖アルコールである。化学名は1,2,3,4-Butaneterolで四炭糖の単糖アルコールであり、甘味度はショ糖の60~80%である。エリスロース(エリトロース)の還元体であるが、工業的には発酵により得られる。
マルチトールは、マルトース(麦芽糖)の還元体で、二糖類の糖アルコールである。グルコース1分子とソルビトール1分子とが結合した構造からなり、還元麦芽糖とも呼ばれる。甘味度はショ糖の80~90%で、ショ糖に類似した甘味質を有する。マルチトールは、還元麦芽糖水飴に主成分として(例えば、50~75%以上)含まれる。よって、本発明のマルチトールとして、還元麦芽糖水飴を用いることもできる。
マンニトールは、乾燥した海藻や干し柿、キノコなどにも元来含まれている、六炭糖の単糖アルコールである。ソルビトールの異性体で、甘味度はショ糖の55~70%である。
ソルビトールは、ナナカマドの実やリンゴ、プルーンなどにも元来含まれている、六炭糖の単糖アルコールである。グルコースの還元体で、甘味度はショ糖の60~70%である。
ラクチトール(還元乳糖)は、ラクトース(乳糖)の還元体で、二糖類の糖アルコールである。甘味度はショ糖の30~40%である。
キシリトールは、プラムやイチゴ、カリフラワーなど多くの果実や野菜にも元来含まれている、五炭糖の単糖アルコールである。キシロースの還元体で、ショ糖と同等の甘味度を有する。
イソマルト(イソマル水和物、イソマルツロース還元物)は、α-D-グルコピラノノース-1,6-ソルビトール(GPS)とα-D-グルコピラノシド-1,6-マンニトール(GPM)という二種類の糖アルコールの混合物である。イソマルツロース(イソマルトース)の還元体で、ショ糖の45~60%の甘味度を有する。イソマルトにおけるGPMとGPSとの混合比としては、例えば、GPM:GPS=43~57%:57~43%を例示することができる。GPMおよびGPSの混合比がほぼ等モルの製品「パラチニット(登録商標)」「還元パラチノース(登録商標)」(いずれも三井製糖)が市販されている。
ラクトース(乳糖)は、哺乳類の乳汁やレンギョウの花粉などに元来含まれている二糖類の糖質である。ガラクトースとグルコースとがβ-1,4-グリコシド結合した構造をもち、甘味度はショ糖の約40%である。工業的には、チーズなどの製造時に分離されるミルクホエーからタンパク質を除去し、これを濃縮・結晶化して作られる。
本発明の糖質は、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよく、簡便には、市販されているものを用いてもよい。また、本発明の糖質は、成形加工により錠剤を製造することができる限り、液体、粉末状、顆粒状などいずれの形態のものも用いることができる。
市販のエリスリトールまたは公知の方法により製造したエリスリトールはそのまま用いてもよいが、造粒して、エリスリトールを主成分とする顆粒(エリスリトール顆粒)としてから用いてもよい。また、エリスリトール顆粒は、例えば「エリスリトール顆粒DC」(物産フードサイエンス)が市販されており、本発明ではこれを用いることもできる。
造粒方法としては、例えば、エリスリトールの粉末を攪拌しながら、当該エリスリトールの粉末に結着剤を含有する噴霧液を噴霧した後、乾燥させる方法を挙げることができる。結着剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)やヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)といったセルロース誘導体を用いることができる。噴霧液におけるHPCまたはHPMCの濃度は、例えば、2.5~30質量%などとすることができる。本造粒方法は、後述する実施例の試験方法(1)に示すように流動層造粒法により行うことができるほか、攪拌造粒法、押出造粒法、噴霧乾燥法などにより行うこともできる。
本発明の糖質は、錠剤を製造する際に、当該錠剤の原材料に配合することにより用いる。すなわち、本発明は、本発明の崩壊促進用組成物を含有する原材料を、所定の形状に成形加工する工程を有する、錠剤の製造方法も提供する。
原材料を所定の形状に成形加工する方法は、公知の錠剤の製法に従って行うことができる。例えば、原材料を練り合わせて延ばしたものを所定の形に打ち抜いて製造する湿製法により行ってもよく、原材料を湿式練合したものを型に入れ乾燥させる方法により行ってもよい。また、原材料を圧縮形成する打錠法により行ってもよい。打錠法には、混合した原材料をそのまま打錠する直接打錠法(直打法)と、混合した原材料を結合剤溶液や水等の適当な溶媒を用いて造粒し、顆粒にしてから打錠する「間接打錠法」とがあるが、本発明ではこれらのいずれも用いることができる。
原材料あるいは錠剤における本発明の糖質の配合割合は特に限定されず、例えば、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上、5質量%以上、100質量%未満、99質量%以下の間で適宜設定することができる。このうち、5質量%以上99質量%以下、あるいは、5質量%以上70質量%以下とした場合は、後述する実施例に示すように、製造した錠剤は、顕著に高い崩壊性を発揮することができる。
なお、錠剤を構成する本発明の崩壊促進用組成物以外の原材料は、錠剤の用途に応じて適宜設定することができる。
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<試験方法>
本実施例は、別段に記載のない限り下記(1)~(5)の方法で行った。また、本実施例においては、別段に記載のない限り「%」は「質量%」を意味する。エリスリトールは「ERT」と表記する場合がある。
本実施例は、別段に記載のない限り下記(1)~(5)の方法で行った。また、本実施例においては、別段に記載のない限り「%」は「質量%」を意味する。エリスリトールは「ERT」と表記する場合がある。
(1)エリスリトール顆粒の調製
造粒装置「マルチプレックス FD-MP-01ND(パウレック)」に、微粉末状のエリスリトール(エリスリトール50M(物産フードサイエンス))を仕込み、熱風入口温度が80℃、風量が0.6m3/分、噴霧圧力が0.2MPaにて、噴霧液を噴霧しながら造粒を行い、エリスリトールを主成分とする顆粒を調製し、これをエリスリトール顆粒(ERT顆粒)とした。噴霧液には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC SSL(日本曹達))を9%となるよう溶解した水溶液を用いた。ERT顆粒中にはヒドロキシプロピルセルロースが3%の濃度で含有されていた。
造粒装置「マルチプレックス FD-MP-01ND(パウレック)」に、微粉末状のエリスリトール(エリスリトール50M(物産フードサイエンス))を仕込み、熱風入口温度が80℃、風量が0.6m3/分、噴霧圧力が0.2MPaにて、噴霧液を噴霧しながら造粒を行い、エリスリトールを主成分とする顆粒を調製し、これをエリスリトール顆粒(ERT顆粒)とした。噴霧液には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC SSL(日本曹達))を9%となるよう溶解した水溶液を用いた。ERT顆粒中にはヒドロキシプロピルセルロースが3%の濃度で含有されていた。
(3)錠剤の調製
各実施例にて示す配合となるように、原材料を混合して連続式単発打錠機「AUTO TAB200(市橋精機)」に仕込み、3.3~10kNの打錠圧(打圧)で、隅角平面の円形錠に圧縮成型した。錠剤のサイズは、直径が8mmで1錠当たりの重量が200mgとした。
各実施例にて示す配合となるように、原材料を混合して連続式単発打錠機「AUTO TAB200(市橋精機)」に仕込み、3.3~10kNの打錠圧(打圧)で、隅角平面の円形錠に圧縮成型した。錠剤のサイズは、直径が8mmで1錠当たりの重量が200mgとした。
(4)錠剤硬度の測定
錠剤の硬度はロードセル式錠剤硬度計DC-30(岡田精工)により測定した。
錠剤の硬度はロードセル式錠剤硬度計DC-30(岡田精工)により測定した。
(5)崩壊時間の測定
錠剤の崩壊時間は、第十七改正日本薬局方(平成28年3月7日 厚生労働省告示第64号)に記載の崩壊試験法に準じて行った。1処方あたり6錠以上について測定を行い、崩壊時間の偏差を算出した。すなわち、崩壊試験装置(NT-200、富山産業)を用いて、試験器の6本のガラス管それぞれに錠剤を1個ずつ入れ、試験器を脱イオン水、崩壊試験第1液または崩壊試験第2液に浸漬した。液温は37±2℃に保ち、30回/分にて上下運動を行い、錠剤が崩壊するまでに要した時間(崩壊時間)を測定した。(i)錠剤の残留物をガラス管内に全く認めないとき、(ii)錠剤の残留物を認めるが、明らかに原形をとどめない軟質の物質であるとき、(iii)錠剤の残留物を認めるが、それが不溶性の剤皮であるときの(i)-(iii) のいずれかの場合に、錠剤が崩壊したと判断した。なお、崩壊試験第1液(第1液)は、胃液を模した強酸性の液体であり、当該液体中での崩壊性は、胃の中での崩壊性の指標となる。また、崩壊試験第2液(第2液)は、腸液を模した中性~弱アルカリ性の液体であり、当該液体中での崩壊性は、腸の中での崩壊性の指標となる。それらの組成を以下に示す。
<第1液>塩化ナトリウム2.0gを塩酸7.0mL及び水に溶かして1Lとする。この液は無色澄明で、そのpHは約1.2である。
<第2液>0.2mol/Lリン酸二水素カリウム水溶液250mLに0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液118mLおよび水を加えて1Lとする。この液は無色澄明で、そのpHは約6.8である。
錠剤の崩壊時間は、第十七改正日本薬局方(平成28年3月7日 厚生労働省告示第64号)に記載の崩壊試験法に準じて行った。1処方あたり6錠以上について測定を行い、崩壊時間の偏差を算出した。すなわち、崩壊試験装置(NT-200、富山産業)を用いて、試験器の6本のガラス管それぞれに錠剤を1個ずつ入れ、試験器を脱イオン水、崩壊試験第1液または崩壊試験第2液に浸漬した。液温は37±2℃に保ち、30回/分にて上下運動を行い、錠剤が崩壊するまでに要した時間(崩壊時間)を測定した。(i)錠剤の残留物をガラス管内に全く認めないとき、(ii)錠剤の残留物を認めるが、明らかに原形をとどめない軟質の物質であるとき、(iii)錠剤の残留物を認めるが、それが不溶性の剤皮であるときの(i)-(iii) のいずれかの場合に、錠剤が崩壊したと判断した。なお、崩壊試験第1液(第1液)は、胃液を模した強酸性の液体であり、当該液体中での崩壊性は、胃の中での崩壊性の指標となる。また、崩壊試験第2液(第2液)は、腸液を模した中性~弱アルカリ性の液体であり、当該液体中での崩壊性は、腸の中での崩壊性の指標となる。それらの組成を以下に示す。
<第1液>塩化ナトリウム2.0gを塩酸7.0mL及び水に溶かして1Lとする。この液は無色澄明で、そのpHは約1.2である。
<第2液>0.2mol/Lリン酸二水素カリウム水溶液250mLに0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液118mLおよび水を加えて1Lとする。この液は無色澄明で、そのpHは約6.8である。
<実施例1>崩壊を促進する糖質の検討
表2に示す配合および打錠圧で1~9番の錠剤を調製した。すなわち、1番はグルコース以外の糖質を含まない配合、2~9番は、各種の糖質を30%含む配合である。打錠圧は、各錠剤が同程度の硬度(77~81N)となるように設定した。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水、第1液および第2液を用いた。その結果を表2の最下段に示す。また、脱イオン水における崩壊時間を図1に、第1液における崩壊時間を図2に、第2液における崩壊時間を図3に、それぞれ示す。
表2に示す配合および打錠圧で1~9番の錠剤を調製した。すなわち、1番はグルコース以外の糖質を含まない配合、2~9番は、各種の糖質を30%含む配合である。打錠圧は、各錠剤が同程度の硬度(77~81N)となるように設定した。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水、第1液および第2液を用いた。その結果を表2の最下段に示す。また、脱イオン水における崩壊時間を図1に、第1液における崩壊時間を図2に、第2液における崩壊時間を図3に、それぞれ示す。
表2および図1に示すように、3番および9番の錠剤は、1番と比較して崩壊時間が長かった。一方、2番および4~8番の錠剤はいずれも、1番と比較して崩壊時間が短かった。すなわち、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトールまたはイソマルトを含有する錠剤は、水中で、崩壊までに要する時間が短いことが明らかになった。
また、表2および図2に示すように、2~9番の錠剤はいずれも、1番と比較して崩壊時間が短かった。すなわち、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトまたはラクトースを含有する錠剤は、胃液を模した酸性の液体中で、崩壊までに要する時間が短いことが明らかになった。
また、表2および図3に示すように、2~9番の錠剤はいずれも、1番と比較して崩壊時間が短かった。すなわち、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトまたはラクトースを含有する錠剤は、腸液を模した中性の塩溶液中で、崩壊までに要する時間が短いことが明らかになった。
これらの結果から、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトールおよびイソマルトは、液体の性質を問わず、錠剤の崩壊を促進できることが明らかになった。また、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトおよびラクトースは、酸性液体または塩溶液における錠剤の崩壊を促進できることが明らかになった。
<実施例2>同打錠圧での崩壊時間の検討
打錠圧を6kNとして、表3に示す配合で10~18番の錠剤を調製した。すなわち、10番はグルコース以外の糖質を含まない配合、11~18番は、各種の糖質を30%含む配合である。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水を用いた。その結果を表3の最下段および図4に示す。
打錠圧を6kNとして、表3に示す配合で10~18番の錠剤を調製した。すなわち、10番はグルコース以外の糖質を含まない配合、11~18番は、各種の糖質を30%含む配合である。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水を用いた。その結果を表3の最下段および図4に示す。
表3および図4に示すように、16番および18番の錠剤は、10番と比較して崩壊時間が長かった。一方、11~15番および17番の錠剤はいずれも、10番と比較して崩壊時間が短かった。特に、11番の錠剤の崩壊時間が顕著に短かった。この結果から、同じ打錠圧で調製する場合は、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトールまたはイソマルトを含有させることにより、錠剤の崩壊を促進できることが明らかになった。特に、エリスリトールを含有させることにより、錠剤の崩壊を顕著に促進できることが明らかになった。
<実施例3>糖質の配合割合の検討
打錠圧は6kNとして、表4に示す配合で19~25番の錠剤を調製した。すなわち、19~25番は、エリスリトール顆粒を、それぞれ0%、5%、10%、30%、50%、70%および99%含む配合である。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水、第1液および第2液を用いた。その結果を表4の最下段に示す。また、脱イオン水における崩壊時間を図5に、崩壊試験第1液における崩壊時間を図6に、崩壊試験第2液における崩壊時間を図7に、それぞれ示す。
打錠圧は6kNとして、表4に示す配合で19~25番の錠剤を調製した。すなわち、19~25番は、エリスリトール顆粒を、それぞれ0%、5%、10%、30%、50%、70%および99%含む配合である。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水、第1液および第2液を用いた。その結果を表4の最下段に示す。また、脱イオン水における崩壊時間を図5に、崩壊試験第1液における崩壊時間を図6に、崩壊試験第2液における崩壊時間を図7に、それぞれ示す。
表4および図5に示すように、20番(ERT顆粒の配合割合5%)~25番(ERT顆粒の配合割合99%)の錠剤はいずれも、19番(ERT顆粒の配合割合0%)と比較して崩壊時間が短かった。その中でも特に、20番(ERT顆粒の配合割合5%)~24番(ERT顆粒の配合割合70%)の錠剤の崩壊時間が顕著に短かった。この結果から、少量の糖質(エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトまたはラクトース)を配合することにより、水中における錠剤の崩壊を促進できることが明らかになった。また、水中では、当該糖質の配合割合を5%以上70%以下にすると、錠剤の崩壊を顕著に促進できることが明らかになった。
また、表4および図6に示すように、20番(ERT顆粒の配合割合5%)~25番(ERT顆粒の配合割合99%)の錠剤はいずれも、19番(ERT顆粒の配合割合0%)と比較して崩壊時間が短かった。この結果から、酸性の液体中では、少量の糖質(エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトまたはラクトース)を配合することにより、錠剤の崩壊を促進できることが明らかになった。
また、表4および図7に示すように、20番(ERT顆粒の配合割合5%)~25番(ERT顆粒の配合割合99%)の錠剤はいずれも、19番(ERT顆粒の配合割合0%)と比較して崩壊時間が短かった。この結果から、中性の塩溶液中では、少量の糖質(エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトまたはラクトース)を配合することにより、錠剤の崩壊を促進できることが明らかになった。
<実施例4>エリスリトールの性状の違いによる崩壊性の検討
打錠圧を6kNとして、表5に示す配合で26~30番の錠剤を調製した。すなわち、26番はグルコース以外の糖質を含まない配合、27~28番は、それぞれエリスリトール顆粒およびエリスリトールを10%含む配合、29~30番は、それぞれエリスリトール顆粒およびエリスリトールを30%含む配合である。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水を用いた。その結果を表5の最下段および図8に示す。
打錠圧を6kNとして、表5に示す配合で26~30番の錠剤を調製した。すなわち、26番はグルコース以外の糖質を含まない配合、27~28番は、それぞれエリスリトール顆粒およびエリスリトールを10%含む配合、29~30番は、それぞれエリスリトール顆粒およびエリスリトールを30%含む配合である。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。崩壊時間の測定には脱イオン水を用いた。その結果を表5の最下段および図8に示す。
表5および図8に示すように、27番~30番の錠剤はいずれも、26番と比較して崩壊時間が短かった。また、27番と28番とを比較すると、崩壊時間は同程度であった。同様に、29番と30番とを比較すると崩壊時間は同程度であった。すなわち、粉末状のエリスリトールを用いた場合も、ヒドロキシプロピルセルロースを配合したエリスリトール顆粒を用いた場合も、崩壊時間は同程度に短かった。この結果から、エリスリトールはその性状にかかわらず、また、ヒドロキシプロピルセルロースの有無にかかわらず、液体中における錠剤の崩壊を促進できることが明らかになった。
Claims (5)
- エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトールおよびイソマルトから選択される1以上の糖質を有効成分とする、錠剤の崩壊促進用組成物。
- エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトおよびラクトースから選択される1以上の糖質を有効成分とする、酸性液体または塩溶液における錠剤の崩壊促進用組成物。
- 前記糖質がエリスリトールである、請求項1または請求項2に記載の崩壊促進用組成物。
- 錠剤における質量比が5質量%以上99質量%以下となるよう前記糖質を配合することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の崩壊促進用組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の崩壊促進用組成物を含む原材料を、所定の形状に成形加工する工程を有する、錠剤の製造方法。
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