JP2022037259A - 超音波撮像システム及び超音波撮像方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波CT画像の画質を向上させる。【解決手段】本発明による超音波撮像システムは、被検体の周囲に配置され、超音波の送信及び受信の少なくともいずれか一方を行う複数の素子と、超音波を送信する送信素子を切り替えながら、前記複数の素子の少なくとも一部を介して、前記被検体から反射される反射超音波の測定データを収集するデータ収集部と、を備える。前記データ収集部において、撮像領域の各点における音圧強度の積算値が均一になるよう調整する。【選択図】図1
Description
本発明は、超音波を照射して被検体の断層画像を作成する超音波撮像システム及び超音波撮像方法に関する。
非侵襲性である超音波による撮像システムは、生体を直接切開して観察する外科手術の必要がないため、被検体内部の情報を撮像する技術として医療分野で広く用いられている。
超音波撮像の一手法である超音波CT(Computed Tomography)は、超音波を被検体に照射し、反射超音波や透過超音波を用いて被検体の断層画像を作成するものであり、近年の研究により、乳がんの検出に有用性があることが示されている。超音波CTは、例えば、超音波の送受信を行う多数の素子をリング状に配置したリング型アレイトランスデューサを使用し、断層像を作成する。
従来の断層像作成方法の1種である開口合成法では、まず、1回の超音波送信に対し、エコー信号を複数の素子で受信して、第1軸が受信素子番号、第2軸がエコー信号到達時間を示す2次元データ(測定データ)を生成する。超音波を送信する素子を順に変えていくことで、リング型アレイトランスデューサ1周の送信回数分の測定データが生成される。
超音波CTでは、これら複数の測定データを重ね合わせ、信号強度を輝度に変換して1枚の断層画像(スライス画像)が生成される。医師がスライス画像を見て精確に診断を行うために、画質の向上が求められている。
被検体のスライス面を隙間なく画像化するためには、撮像領域全域にまんべんなく信号を到達させる必要がある。しかし、例えば同一円周上に配置された送信アレイにおいて、画像生成に最適な送信幅や送信角度、収束点を適用して超音波送信を行おうとすると、送信された波形が届きにくい領域が生じるため、撮像視野に抜けができ、画像の精度低下につながっていた。また、画素によって、超音波が到達する送信素子の空間的配置に偏りが生じると解像度の低下が生じる。これはリング状のアレイを用いた撮像において、高い空間解像度を実現するには、多様な方向から音が到達して、かつ散乱した波を広い開口で受診する必要があるからである。
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、撮像視野の抜けを低減し、超音波画像の画質を向上させる超音波撮像システム及び超音波撮像方法を提供することを目的とする。
本発明による超音波撮像システムは、被検体の周囲に配置され、超音波の送信及び受信の少なくともいずれか一方を行う複数の素子と、超音波を送信する送信素子を切り替えながら、前記複数の素子の少なくとも一部を介して、前記被検体から反射される反射超音波の測定データを収集するデータ収集部と、を備え、前記データ収集部において、撮像領域の各点における音圧強度の積算値が均一になるよう調整するものである。
本発明の一態様によれば、前記送信の切り替えに伴い、焦点の深さを変える。
本発明の一態様によれば、超音波の送信方向を送信面から傾ける。
本発明の一態様によれば、前記データ収集部は、反射超音波を受信する受信素子群を切り替えながら前記測定データを収集し、前記送信素子は、受信素子群の切り替え毎に焦点位置を変えて超音波を送信する。
本発明の一態様によれば、前記送信素子毎の前記測定データを合成して、前記被検体の断層像を生成する合成処理部をさらに備え、前記合成処理部は、撮像領域における音圧強度が不均一な状態で得られた反射波測定データから音圧強度が均一の下での測定データとなるように合成処理を行い、前記断層像を生成する。
本発明の一態様によれば、前記合成処理部は、所定の範囲内に位置する複数の送信素子をグループ化し、各グループに対応する前記測定データを整相加算して整相データを生成し、前記整相データを振幅加算する。
本発明の一態様によれば、前記データ収集部は、前記被検体を透過する透過超音波の測定データを収集し、前記合成処理部は、前記透過超音波の測定データから超音波の伝播経路における音速分布を算出し、算出した音速分布を用いて前記整相加算を行う。
本発明の一態様によれば、前記合成処理部は、前記反射超音波の測定データから超音波の伝播経路における音速分布を算出し、算出した音速分布を用いて前記整相加算を行う。
本発明の一態様によれば、前記複数の素子は同一円周上に配置され、複数の収容部に分けて水密に収容されている。
本発明による超音波撮像方法は、被検体の周囲に配置された複数の素子を用いて、超音波を送信する送信素子を切り替えながら、前記被検体から反射される反射超音波を受信する工程と、前記反射超音波を受信した素子から得たデータである測定データを収集する工程と、前記送信素子毎の前記測定データを合成して、前記被検体の断層像を生成する工程と、を備え、前記送信素子の切り替えに伴い、焦点形成位置の深さを変えるものである。
本発明によれば、超音波CT画像の画質を向上させることができる。
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。本発明の好ましい実施形態に係る超音波撮像システムは、人体等の被検体に超音波を照射し、受信した反射波信号を用いて断層像(超音波画像)を作成する。医師は、作成された断層像を確認し、診断を行う。本実施形態では、リング状トランスデューサーを用いた乳がん用超音波画像撮像装置を例として説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る超音波撮像システム10は、リングアレイRと、スイッチ回路110と、送受信回路120と、演算装置130と、画像表示装置140とを備えている。
リングアレイRは、複数の振動子が組み合わさって構成される、好ましくは直径80~500mm、より好ましくは直径100~300mmのリング型形状の振動子である。また、リングアレイRは、直径を可変とする構成をとることもできる。本実施形態では一例として、4つの凹面型振動子P01~P04を組み合わせたリング形状の振動子を用いる。
例えば、凹面型振動子P01~P04が、それぞれ512個の短冊形圧電素子E(以下、単に「素子E」とも呼ぶ。)を有する場合、リングアレイRは2048個の素子Eから構成されることになる。凹面型振動子P01~P04のそれぞれに設けられる素子Eの数は限定されず、好ましくは1~1000個である。水中で測定することを考慮し、凹面型振動子P01~P04は、それぞれ、素子Eを水密に収容することが好ましい。
各素子Eは、電気的信号と超音波信号とを相互変換する機能を有する。素子Eは被検体Tに超音波を送信し、被検体T(例えば四肢や乳房)の表面及び内部組織で散乱する散乱波を受信し、電気的信号を測定データとして形成する。
本実施形態では、各素子Eが、超音波の送信及び受信の両方の機能を備えるものとして説明するが、これに限定されない。例えば、超音波の送信機能及び受信機能のうちいずれか一方のみを有する送信素子又は受信素子を使用し、複数の送信素子及び複数の受信素子をリング状に配置してもよい。また、送信及び受信の両方の機能を備える素子と、送信素子と、受信素子とが混在する構成であってもよい。
図2は、図1のA-A線断面図である。例えば、リングアレイRは、穴の開いたベッドの下に、ベッドの穴と挿入部SPとが重畳するように設置される。被験者はベッドの穴から、撮像対象となる身体の部位(被検体T)を挿入部SPに挿入する。
被検体Tを挿入するための挿入部SPは、リングアレイRの中央に設けられている。リングアレイRの複数の素子Eは、リングに沿って挿入部SPの周囲に等間隔で設けられている。リングアレイRの内周側には、音響レンズと呼ばれる凸面レンズが表面に取り付けられている。このような表面加工をリングアレイRの内周側に施すことで、各素子Eが送信する超音波を、リングアレイRを含む平面内に収束させることができる。
本実施形態では、各素子Eを等間隔にリング状に配置しているが、リングアレイRの形状は円形に限定されず、例えば、六角形、正方形、三角形など任意の多角形、少なくとも一部に曲線や円弧を含む形状、その他任意の形状、または、これらの形状の一部(例えば、半円や円弧)であってもよい。すなわち、リングアレイRは、アレイRと一般化することができる。また、アレイRを構成する各素子Eの配置は、被検体Tの周囲を断続的に少なくとも90度またはそれ以上囲むような配置であれば好ましいものの、これらに限定されるものではない。
リングアレイRはスイッチ回路110を介して送受信回路120に接続されている。送受信回路120(制御部)は、リングアレイRの素子Eに制御信号(電気的信号)を送信し、超音波の送受信を制御する。例えば、送受信回路120は、素子Eに対して、送信する超音波の周波数や大きさ、波の種類(連続波やパルス波等)等を指示する。
スイッチ回路110は、リングアレイRの複数の素子Eの各々に接続されており、送受信回路120からの信号を任意の素子Eに伝達し、素子Eを駆動させ、信号の送受信を行わせる。例えば、スイッチ回路110が、送受信回路120からの制御信号を供給する素子Eを切り替えることで、複数の素子Eのいずれかを、超音波を送信する送信素子として機能させ、複数(例えば全て)の素子Eで反射波を受信させる。
リングアレイRは、ステッピングモータ等により上下動可能に設置されている。リングアレイRを上下動させて、被検体Tの全体のデータ収集を行うことができる。
演算装置130は、例えばCPU、記憶部(RAM、ROM、ハードディスク等)、通信部等を備えたコンピュータにより構成されている。記憶部に格納されたプログラムが実行されることで、図3に示すような、素子決定部131、焦点位置決定部132、データ収集部133、合成処理部134等の機能が実現され、測定データ格納領域136及び画像データ格納領域137が記憶部Mに確保される。各部による処理については後述する。
図4は超音波の送信1回に対する撮像領域内の音圧強度のシミュレーション図である。開口合成法では、送信位置、画素、受信素子の位置の情報からエコーデータ中から抽出する信号を決定する。この観点では送信波は方位方向に広がった波面となることが望ましい。一方、解像度を高くするには高い周波数を用いることが望ましい。しかし周波数を高くした場合、送波後の伝搬距離に応じて超音波信号が減衰してしまって、深部に音波が届かない場合がある。これを防ぐために図4のように方位方向に狭めることで、深部到達距離を長くすることが有効である。
撮像領域内の座標(X,Y)の音圧の強度が濃淡で示され、収束波の送信音圧は焦点で最も高くなっていることがわかる。領域内の点音源における散乱波の音圧は、音場の音圧に比例するため、散乱像の輝度もまた音場の音圧強度に影響される。撮像領域の音圧が不均一であると、同一の散乱体に起因する散乱信号であっても、音場の音圧強度が均一な場合に比べて、輝度変換の精度が低下する。従って撮像領域内の音圧は均一かつ一定以上であることが望ましい。
臨床において、腫瘤形成性の病変を発見するには、輝度の違い(乳腺は輝度が高く、腫瘤内部は輝度が低い)を手掛かりにしているので、輝度のムラは診断能力に大きな影響を与える。また、腫瘍の良悪性の鑑別においても、腫瘤内部の超音波減衰率の違いに起因する後方陰影が手掛かりとなる場合があるので、やはり輝度ムラを抑えることが重要となる。予め画素位置ごとに、送信エネルギーの到達量の相違が分かっている場合は、補正する手段も考えられるが、現実には、被検体の音響特性の不均質に起因して屈折や反射、減衰が生じるため、輝度ムラの補正には限界があるために、本発明で示す、撮像領域内にて音圧を均一にしておくことは重要となる。
本実施形態のリングアレイを用いた場合、送信波は円周内部の撮像領域に向かって入射する。撮像領域の一定の深度に焦点を設定する送信ビームフォーミングを行い開口合成法で測定データを取得しようとすると、撮像領域内に信号が到達しない部分が発生してしまう。
撮像領域内の一定の深さに焦点を設定する送信条件で送信シミュレーションを行って生成された音圧強度像の例を図5に示す。シミュレーション条件は、リングアレイ半径230mm、音速1520m/s、受信素子数2048、送信条件数64~512とした。
散乱体のない撮像領域では音圧は均一になるべきであるが、図5に示すように、リングアレイを用いた撮像では、音圧強度にムラが生じ、リング状の高輝度領域が生じている一方で、音圧が全く発生していない影の部分が生じている。これは、図6(a)に示すように、超音波を送信する際の焦点(仮想音源)の位置をリングアレイから中心に向かって50mmの深度に固定して得られた測定データを重ね合わせた際の焦点ずれがリング状に発現したものである。撮像領域内にこのような音圧ムラがあると、画像再構成を行う際に、輝度ムラに起因して実態よりも音圧が高く計測された組織と、反射エコーにより輝度が高くなった組織との区別が困難となる。その結果、被検体からの信号とアーチファクトとの区別や、異なる組織同士の区別が難しくなり、診断精度に影響を与え得る。
そこで、本実施形態では、図6(b)に示すように、送信開口の切り替えに伴い、焦点の位置をずらし、音速均一時の撮像領域内の音圧ムラを低減する。焦点位置の調整は、演算装置130内の焦点位置決定部132において決定される。まず、1回目の送信において、素子決定部で送受信素子が決定されると同時に、焦点位置決定部では焦点位置が決定される。送信焦点の位置は例えば送信開口の中心素子から挿入部SPの中心に向かった深度や送信開口の中心軸からの傾きで決定される。
送受信素子と焦点位置の情報に応じて、送受信回路120とスイッチ回路110により、焦点設定された信号が、送信ビームフォーマを介して、決定された複数の送信素子へ転送され、収束超音波が放出される。この送信によって発生した散乱波を先に決定された複数の受信素子にて受信し、データ収集部133に測定データが格納される。データの格納が完了すると、演算装置130において、次の送受信のための素子と焦点位置が決定される。この時、焦点位置は1回目の焦点位置よりも浅い又は深い位置に設定する。これを、送信開口がリングアレイを一周するまで繰り返し、焦点位置の異なる送信信号による測定データを蓄積する。
例えば、送信毎に、焦点位置を深さ方向に30,40,50,30,40,50,・・・(単位はmm)と順に切り替えた場合の音圧強度シミュレーション図が図7である。焦点深度が一定の場合の図5と比較し、音圧抜けがなくムラの少ない音圧強度像が得られている。
一方、平面波や非球面波を用いて、送信毎の焦点位置での音圧集中とその周辺の音圧抜けを緩和することができる。しかし、この場合も、例えば平面波では図8(a)のように、撮像領域の中心から離れるほど、音圧抜けができる事は明らかである。これを防ぐため、図8(b)に示すように、平面波の送信角度を、送信面(送信開口の中心と円形のリングトランスデューサの縁の中心を結ぶ直線)から一定角度ずらすと、中心の輝度の強調が低減できる。また、図8(c)に示すように、送信角度や送信素子を予め最適化されたランダムな組み合わせを用いることで、撮像領域内の音圧が均一になるよう、送信条件を設定してもよい。
送受信の開口度(幅、もしくは送受信開口内の素子数)はスイッチ回路110のビームフォーマ―等の性能に依存する。本実施形態のように多数の素子を配置した場合、全ての素子に同時に接続できないことがある。そのため、マルチプレクサ等を介して、接続する素子群を順に切り替えて信号を送受信する。
本実施形態においても、素子数が多いためマルチプレクサを利用するが、1つの送信条件においてリングアレイ一周分の受信素子のエコー信号から1枚の測定データを作成する例を説明する。例えば、スイッチ回路110が、2048個の素子のうち、128個の素子に接続して信号を受信する場合、リングアレイ一周分の受信素子で信号を受信するためには、受信素子を16回(=2048/128)切り替える必要がある。したがって、1枚の測定データを取得するためには同じ送信条件で超音波を16回送信することになる。
この16回の超音波の送信毎に、焦点位置を変えてもよい。受信素子群毎に送信する超音波の焦点位置を変えると、1フレーム内における音場の音圧不均一を軽減し、画質向上を図ることができる
焦点位置は深さ方向に変えてもよいし、左右方向(深さ方向とは直交する方向)に変えてもよい。
本実施形態では、1送信毎の送信素子の切り替えは、素子決定部131によって、隣接した素子に順に設定される。しかし、撮像領域内に抜けなく音圧をかけるように、超音波が送信されればよく、開口位置は必ずしも連続する必要はない。例えば素子数を削減するためにリングアレイに配置される素子を間引く場合、素子間に隙間ができる。また、複数の素子を水密構造に格納し、これをリング状に配置する場合にも、水密構造に隔てられた素子間には隙間ができる。このような場合にも、送信ビームフォーマにより、焦点位置や送信角度を調整し、撮像領域に一様に音圧をかける。また送信毎に、撮像領域に一様に音圧をかけるように、送信開口位置を順不同に決定してもよい。その結果、開口幅や送信回数の削減により、データ処理の負担を軽減することができる。
また、送受信素子数を削減し、円周上全体に配置せずに、円弧状に素子を配置したアレイを、被検体の周囲を機械的に一周させながら、スライス画像を撮像することも可能である。この場合、マルチプレクサを使用する必要はないが、送信毎に焦点位置ずらして撮像することで、リングアレイと同様の効果を得ることができる。
素子決定部131(図3参照)は、超音波の送信を行う素子及び受信を行う素子を決定し、送受信回路120に指示する。例えば、素子決定部131は、2048個の素子のうち超音波の送信を行う128個の素子を送受信回路120に指示する。また、素子決定部131は、全ての素子で受信を行うように送受信回路120に指示する。
焦点位置決定部132は、送信する超音波の焦点位置を決定し、送受信回路120に指示する。例えば、焦点位置決定部132は、送信素子毎に、又は1つの送信素子が超音波を送信する毎に異なる焦点位置を送受信回路120に指示する。また、焦点を形成しない平面波や非球面波の条件決定も行う。
送受信回路120は、指示された素子の中から送信素子を順に切り替えて、焦点位置情報を含む制御信号を送信する。また、送受信回路120は、受信素子群を順に切り替えて、受信信号を取得する(図13、ステップS1)。
送受信回路120において360度分の送受信が終了したことが確認されると、図示しない制御部において、リングアレイを所定位置下に降下させ、次のスライス撮像のための送受信を開始する。制御部はまた、リングアレイの最終撮像回数を記録し、事前に記憶された所定のスライス数の取得が完了した場合に、撮像を終了する。
データ収集部132は、スイッチ回路110及び送受信回路120を介して、複数の受信素子により得られたエコー信号及び測定データ(フレームデータ)を収集(受信又は取得することを含む)する(ステップS2)。測定データは、測定データ格納領域136に格納される。測定データは加算処理前のフレームデータの他、加算処理や音速補正、遅延補正による補正済みのデータ等も含む。
合成処理部134は、主に測定データの再構成を行う。合成処理部134は、データ収集部132が収集した測定データに対し、送信音速補正や遅延処理等の補正を行い、送信毎の測定データを再構成する。さらに、合成処理部134は、送信素子の位置が近い測定データ同士を整相加算して複数の整相データを生成し(ステップS3)、複数の整相データを振幅加算し(ステップS4)、受信強度を輝度に変換して、超音波画像スライスを生成する。スライス画像は、リングアレイの位置又は取得順に結合され、乳房全体の超音波CT画像を再構成する(ステップS5)。これらスライス画像は画像データ格納領域137に格納されると共に、画像表示装置140に表示される。
次に、本実施形態による超音波画像(断層像)の作成方法について説明する。所定の複数の送信素子から送信された超音波は被検体Tの表面及び内部の散乱体で反射し、複数の受信素子で受信される。受信されたエコー信号から、第1軸が受信素子番号、第2軸が反射波到達時間となる二次元の測定データが得られる。図9は、受信信号を輝度変換し画像に再構成した散乱像である。信号処理効率やアーチファクト低減の観点から、送信素子を要とした扇状の撮像視野が表示される。
送信素子を切り替えながら測定を行うことで、送信回数分の測定データが得られる。例えば、リングアレイRに設けられた2048個の素子のうち、連続する複数の素子を送信開口に設定し、円周方向に順に開口素子をずらしながら256回送信した場合、図10に示すように、256個の測定データ#1~#256が得られる。なお、送信開口幅や送信回数は円周の大きさ、素子数及び送信回路の性能によって最適値を適用すればよい。
複数の測定データを重ね合わせることで、超音波スライス画像を生成する。画像再構成の方法としては例えば、従来の開口合成法を用いる。被検体Tである乳房に送信された超音波は、乳房内の散乱体で散乱し、その散乱波が受信素子にて受信される。1回の送信において、同じ送信条件のもと受信された散乱波は、被検体Tの同一散乱体に起因するものであっても、受信素子の位置に応じて、受信信号到達時間は異なる。
そこで、被検体T内における超音波の音速値に基づき、受信された信号の送信素子から受信素子までの伝搬経路における距離と時間を算出する。ここで算出された値を加味して測定データに遅延処理を施した受信信号を加算処理して測定データを生成する。測定データは輝度変換され散乱像を再構成する。この時、同一観測点に対する複数の異なる受信信号に基づき設定された仮想点音源に基づき、遅延制御を行うことで、解像度を高めることができる。
ところで、音速は散乱体により異なるので、リング状トランスデューサーに囲まれた撮像領域の音速は、被検体Tを挿入すると不均一となる。さらに、被検体内の音速は組織により異なるので、被検体内における超音波の音速もまた一様ではない。そのため、被検体内の実際の音速を正確に推定することは困難であり、推定した音速と実際の音速とが異なると、被検体内で反射されて受信素子に至る反射波の到達時間が、設定した遅延時間とズレる。
その結果、適正な位相整合を行うことができず、波形の重ね合わせにより却って超音波画像の画質が劣化する場合がある。これは特に散乱体への入射方向が異なる送信素子からの測定データを加算する場合に生じ易い。
本実施形態においても、被検体である乳房の周囲に円弧状に送信素子が配置されるため、リング内の撮像領域のある点音源には360度の角度から信号が複数回到達する。従って、点音源から反射される波形の位相角は、送信素子からの到達時間のほか、送信素子位置にも影響される。
挿入部SPの中点と凹面型振動子P01(図1参照)の中心素子とを結ぶ直線BL(図示略)を0度としたときを例に説明する。直線BLを中心軸とし、凹面型振動子P01と、凹面型振動子P01の対角線上に配置された凹面型振動子P03とを結ぶ特徴線上の挿入部SP中点よりも凹面型振動子P03寄りの位置に、点音源Aが存在するとする。凹面型振動子P01からの超音波送信により取得された受信信号P01xに基づく点音源Aの位置と、凹面型振動子P03からの送受信で得られた受信信号P03xに基づく点音源Aの位置は、同一となるはずである。
しかし、受信信号に基づいて散乱像を再構成すると、送信素子によって検出される点音源Aの位置がずれる。これは、送信経路の音速が不均質であることで、送信素子と点音源Aとの距離が長い信号P01xの方が、信号P03xよりも誤差が大きくなり、開口合成法によって画像を再構成する際に、両者の散乱像上での座標にずれが生じるためである。従って、円周360度分の送信によって得られた測定データを再構成する際には、点音源Aに入射する入射角の異なる送信波形同士を、位相情報を含めて加算処理すると、再構成画像の精度の低下を招く。
そこで、本実施形態では、送信素子が近い(所定の範囲内の)測定データ同士については整相加算するが、送信素子が遠い(所定の範囲外の)測定データについては波形情報のうち振幅の値のみを加算することで、画質を向上させる。例えば、図11に示すように、256個の測定データ#1~#256がある場合、位置が近い送信素子をN個ずつグループ化し、各グループに対応するN個の測定データを1組として整相加算する。すなわちN=8の場合、測定データ#1~#8を整相加算し、整相データA1を生成する。次に、#2~#9、#3~#10…とそれぞれ8データずつ整相加算する。なお、Nは装置の送信素子数と受信素子数、並びに画像再構成の精度によって最適値を求めればよい。
続いて、整相データA1~A256を、位相情報を除外して振幅加算し、加算したデータを用いて、超音波スライス画像Bを生成する。
なお、上記のように整相加算データを取得する場合、演算負荷が大きくなる。演算量を削減するために、例えば、測定データ#1~#8を整相加算して整相データA1を生成し、次に測定データ#9~#16を整相加算して整相データA2を生成し、以降同様に処理を行い、整相データA1~A32を生成してもよい。
このように、本実施形態によれば、被検体までの距離等の送信条件が近似している、物理的な位置が近い素子から超音波を送信した際の測定データ同士を整相加算する。また、正確な整相が困難である、物理的な位置が遠い素子から超音波を送信した際の測定データは、波形情報のうち振幅の値のみを加算する。これにより、複数の測定データを重ね合わせる際の位相のずれに起因する方位分解能と深さ分解能低下が抑制され、超音波画像の画質を向上させることができる。
また、超音波の焦点の位置を可変にし、焦点位置を変えながら超音波を送信することで、再構成された超音波画像に輝度ムラが生じることを抑制し、超音波画像の画質をさらに向上させることができる。
また、送信回数を削減しても撮像領域の送信音圧を一様にできることで、送信回数やデータ処理量の削減が可能となり、撮像効率を向上させることができる。
上記実施形態において、音速の推定は、反射波の測定データから被検体Tの輪郭や解剖学的構造を測定し、組織毎の音速分布を算出してもよい。例えば、受信素子毎の到達時間の後方散乱信号から自動的に組織構造を算出することにより、音速の異なる領域を抽出する。
また、生成した超音波画像から被検体Tの輪郭を測定して音速分布を算出し、以降の処理ではこの音速分布を使用するようにしてもよい。また、被検体Tを透過する透過超音波を測定し、透過超音波の測定結果から音速分布を求めてもよい。
上記実施形態において、画像合成時には、画素毎に重複する回数を推定し、輝度を調整して超音波画像を生成してもよい。例えば、1回の送信で撮像可能領域を図12(a)のように定義する。この撮像可能領域を全送信分合成した場合の重複回数を示したシミュレーションを図12(b)に示す。図の中心は、全送信回数分、例えば256回送信した場合には、256枚分の信号が重複することになる。従って、重複回数に合わせ画像再構成時の輝度を調整し、撮像領域内の輝度の均一化を図る。
図14に送信素子配置によって、解像度とノイズレベルがどのように変化するか計算した結果を示す。(a)は点応答関数の面積を用いて、解像度が送信素子配置の偏りによって、どのような影響を受けるか評価した結果である。連続配置とは、例えば総素子数256にて、素子数25%の場合では、1から64chまでが送信に使われた場合を示しており、不連続配置とはランダムに素子が配置された場合の結果を示している。(b)のノイズフロアとは、結像している部分以外のノイズの総和を示しており、縦軸の単位は画素サイズや評価エリアの面積によって変化する。
まず点応答関数に関しては、不連続配置にすれば、送信素子数が減容しても解像度の低下は抑制できることを示している。一方、ノイズフロアに関しては、不連続配置にしても送信素子数が10%を下回ったあたりから低下している様子が確認できる。このような評価結果を活用して、画素ごとの送信素子の空間的な偏りが小さくなるように設定された条件にて撮像を行うことが性能を担保する上で重要となる。ここでは解像度評価を行っているが、後方陰影の影響や、反射が生じる境界の抽出能においても、多様な方向から送信されたときの散乱波を取得することが、リング状アレイを用いた撮像の長所を維持する上で重要となる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
10 超音波撮像システム
110 スイッチ回路
120 送受信回路
130 演算装置
140 画像表示装置
110 スイッチ回路
120 送受信回路
130 演算装置
140 画像表示装置
Claims (11)
- 被検体の周囲に配置され、超音波の送信及び受信の少なくともいずれか一方を行う複数の素子と、
超音波を送信する送信素子を切り替えながら、前記複数の素子の少なくとも一部を介して、前記被検体から反射される反射超音波の測定データを収集するデータ収集部と、
を備え、
前記データ収集部において、撮像領域の各点における音圧強度の積算値が均一になるよう調整することを特徴とする超音波撮像システム。 - 前記送信の切り替えに伴い、焦点の深さを変えることを特徴とする請求項1に記載の超音波撮像システム。
- 超音波の送信方向を送信面から傾けることを特徴とする請求項1に記載の超音波撮像システム。
- 前記データ収集部は、反射超音波を受信する受信素子群を切り替えながら前記測定データを収集し、
前記送信素子は、受信素子群の切り替え毎に焦点位置を変えて超音波を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波撮像システム。 - 前記送信素子毎の前記測定データを合成して、前記被検体の断層像を生成する合成処理部をさらに備え、
前記合成処理部は、撮像領域における音圧強度が不均一な状態で得られた反射波測定データから音圧強度が均一の下での測定データとなるように合成処理を行い、前記断層像を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波撮像システム。 - 前記合成処理部は、所定の範囲内に位置する複数の送信素子をグループ化し、各グループに対応する前記測定データを整相加算して整相データを生成し、前記整相データを振幅加算することを特徴とする請求項5に記載の超音波撮像システム。
- 前記データ収集部は、前記被検体を透過する透過超音波の測定データを収集し、
前記合成処理部は、前記透過超音波の測定データから超音波の伝播経路における音速分布を算出し、算出した音速分布を用いて前記整相加算を行うことを特徴とする請求項6に記載の超音波撮像システム。 - 前記合成処理部は、前記反射超音波の測定データから超音波の伝播経路における音速分布を算出し、算出した音速分布を用いて前記整相加算を行うことを特徴とする請求項6に記載の超音波撮像システム。
- 前記合成処理部は、画素毎に重複する回数を推定し、輝度の濃度を調整して画像再構成を行うことを特徴とする請求項5に記載の超音波撮像システム。
- 前記複数の素子は同一円周上に配置され、複数の収容部に分けて水密に収容されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の超音波撮像システム。
- 被検体の周囲に配置された複数の素子を用いて、超音波を送信する送信素子を切り替えながら、前記被検体から反射される反射超音波を受信する工程と、
前記反射超音波を受信した素子から得たデータである測定データを収集する工程と、
前記送信素子毎の前記測定データを合成して、前記被検体の断層像を生成する工程と、
を備え、
前記送信素子の切り替えに伴い、焦点形成位置の深さを変えることを特徴とする超音波撮像方法。
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