JP2022027454A - 鋼板の矯正位置算出方法及び鋼板の製造方法 - Google Patents

鋼板の矯正位置算出方法及び鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オフラインで鋼板の矯正をするに際して、オフラインで計測された鋼板の表面形状情報に基づいて矯正回数を極力減らせるような鋼板の矯正位置を算出することができる鋼板の矯正位置算出方法及び鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】鋼板の矯正位置算出方法は、オフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報に基づいて鋼板Sの矯正位置を算出する鋼板矯正位置算出工程(ステップS2)を含む。鋼板矯正位置算出工程(ステップS2)では、鋼板Sの矯正位置として、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差が所定値である矯正判定基準値N1を超える1又は複数の第1位置p1と、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差が矯正判定基準値N1以下かつ矯正実行基準値N2以上となる1又は複数の第2位置p2と、を含む複数位置を算出する。【選択図】図4

Description

本発明は、鋼板の矯正位置算出方法及び鋼板の製造方法に関する。
鋼板の製造ラインでは、一般に、コールドレベラー、ホットレベラーと呼ばれる鋼板の形状を矯正する矯正装置を配置し、その矯正装置によって製造時に発生した反りなどの形状を矯正する。
しかし、一般に厚物材と呼ばれる厚さ40mm以上の鋼板の場合、形状を矯正するのに必要な曲げモーメントが板厚の3乗に比例するため、オンライン(製造ライン内)のコールドレベラーやホットレベラーでは、形状を矯正しきれない。このため、厚物材に形状不良が発生した場合には、鋼板を製造ラインから外し、いわゆるオフラインで形状矯正を行う。
従来のオフラインで鋼板の形状矯正を行う鋼板の形状矯正装置として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
特許文献1に示す鋼板の形状矯正装置は、一つのレーザ光源からのレーザ光をガルバノミラーで変向し、変向されたレーザ光を走査して、搬送ライン上に静止した鋼板上の所定の検出点群を測定し、測定された検出群データからの鋼板の形状を計測する鋼板形状計測装置を備えている。また、この形状矯正装置は、鋼板形状計測装置で計測された鋼板の形状計測結果及び位置検出装置で検出された鋼板の位置情報に基づいて、プレス機及び搬送ラインを制御する制御装置を備えている。
特許文献1に示す鋼板の形状矯正装置によれば、静止した鋼板の形状を容易且つ正確に計測するこが可能になり、この正確な鋼板の形状から鋼板の形状を矯正することができる。
特開2010-155272号公報
ところで、矯正作業者は、通常、直棒状のストレッチャーを用いて鋼板の形状を把握し、その結果に基づいて矯正位置を特定する。この際に、鋼板の目標表面形状に対する偏差を所定値以下にすることが矯正作業者には義務付けられる。ここで、矯正作業者が特定された矯正位置で矯正した際に、その矯正による戻り歪が生じることがあり、その戻り歪を矯正するために何度も矯正をする必要が生じ、結果的に矯正回数が増加して矯正作業の効率が悪化してしまう問題がある。この問題を解決するために、矯正回数を極力減らせるような鋼板の矯正位置を算出する必要がある。
一方、特許文献1に示す鋼板の形状矯正装置においては、鋼板形状計測装置で計測された鋼板の形状計測結果及び位置検出装置で検出された鋼板の位置情報に基づいて、プレス機及び搬送ラインを制御して鋼板の矯正をするようにしているが、鋼板の矯正位置の算出については何ら開示していない。
従って、本発明は、この従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、オフラインで鋼板の矯正をするに際して、オフラインで計測された鋼板の表面形状情報に基づいて矯正回数を極力減らせるような鋼板の矯正位置を算出することができる鋼板の矯正位置算出方法及び鋼板の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る鋼板の矯正位置算出方法は、オフラインで計測された鋼板の表面形状情報に基づいて鋼板の矯正位置を算出する鋼板矯正位置算出工程を含む鋼板の矯正位置算出方法であって、前記鋼板矯正位置算出工程では、前記矯正位置として、前記鋼板の表面形状の目標表面形状に対する偏差が所定値である矯正判定基準値を超える1又は複数の第1位置と、前記鋼板の表面形状の目標表面形状に対する偏差が前記矯正判定基準値以下かつ矯正実行基準値以上となる1又は複数の第2位置と、を含む複数位置を算出することを要旨とする。
また、本発明の別の態様に係る鋼板の製造方法は、前述の鋼板の矯正位置算出方法により算出された鋼板の矯正位置で前記鋼板を矯正する矯正工程と、該矯正工程で矯正された鋼板を所定長さに切断する製品切断工程とを含むことを要旨とする。
本発明に係る鋼板の矯正位置算出方法及び鋼板の製造方法によれば、オフラインで鋼板の矯正をするに際して、オフラインで計測された鋼板の表面形状情報に基づいて矯正回数を極力減らせるような鋼板の矯正位置を算出することができる。
本発明の第1実施形態から第3実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される鋼板の形状矯正装置の一例の概略構成図である。 図1に示す形状計測装置中のレーザ距離計の概略構成図である。 本発明の第1実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される鋼板の形状矯正装置の制御装置による処理の流れを説明するためのフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法によって算出される長手矯正での複数の矯正位置を説明するための鋼板の表面形状と鋼板の長手方向の位置との関係の一例を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される鋼板の形状矯正装置の制御装置による処理の流れを説明するためのフローチャートである。 図1に示す鋼板形状計測装置から得られる鋼種Aの鋼板の表面形状データに対して歪み特定処理を施した一例の図で、(a)は長さ1mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例の図、(b)は長さ2mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例の図である。 図6に示す歪み特定処理で特定された歪みとパラメータとしてのラム長及び板寸法情報から算出された矯正点数とに基づいて算出した矯正位置(算出矯正位置)の一例を示すもので、(a)は図6(a)で示す長さ1mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数とに基づいて算出した矯正位置の一例を示す図、(b)は図6(b)で示す長さ2mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数とに基づいて算出した矯正位置の一例を示す図である。 矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)の一例を示すもので、(a)は図7(a)で示す矯正位置を参考に矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置の一例を示す図、(b)は図7(b)で示す矯正位置を参考に矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置の一例を示す図である。 図7に図8を重ね合わせたもので、(a)は図7(a)に図8(a)を重ね合わせた図、(b)は図7(b)に図8(b)を重ね合わせた図である。 各矯正位置の点分布を変換した空間パターンを示すもので、(a)は図8(a)で示す矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)の点分布を変換した実績矯正位置空間パターン(教師パターン)の一例を示す図、(b)は図7(a)で示す算出した矯正位置(算出矯正位置)の点分布を変換した算出矯正位置空間パターン(ガイダンスパターン)の一例を示す図である。 図10(b)で示す算出した矯正位置の点分布を変換した算出矯正位置空間パターン(ガイダンスパターン)と図10(a)で示す矯正実績から得られる矯正位置の点分布を変換した実績矯正位置空間パターン(教師パターン)の差の大きさを表す偏差評価値の一例を示す図である。 図1に示す形状計測装置から得られる鋼種Bの鋼板の矯正前形状データに対して歪み特定処理を施した一例の図で、(a)は長さ1mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例の図、(b)は長さ2mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例の図である。 図12に示す歪み特定処理で特定された歪みとパラメータとしてのラム長及び板寸法情報から算出された矯正点数とに基づいて算出した矯正位置(算出矯正位置)の一例を示すもので、(a)は図12(a)で示す長さ1mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数に基づいて算出した矯正位置の一例を示す図、(b)は図12(b)で示す長さ2mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数に基づいて算出した矯正位置の一例を示す図である。 矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)の一例を示すもので、(a)は図13(a)で示す矯正位置を参考として矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置の一例を示す図、(b)は図13(b)で示す矯正位置を参考に矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置の一例を示す図である。 図13に図14を重ね合わせたもので、(a)は図13(a)に図14(a)を重ね合わせた図、(b)は図13(b)に図14(b)を重ね合わせた図である。 各矯正位置の点分布を変換した空間パターンを示すもので、(a)は図14(a)で示す矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)の点分布を変換した実績矯正位置空間パターン(教師パターン)の一例を示す図、(b)は図13(a)で示す算出した矯正位置(算出矯正位置)の点分布を変換した算出矯正位置空間パターン(ガイダンスパターン)の一例を示す図である。 図16(b)で示す算出した矯正位置の点分布を変換した算出矯正位置空間パターン(ガイダンスパターン)と図16(a)で示す矯正実績から得られる矯正位置の点分布を変換した実績矯正位置空間パターン(教師パターン)の差の大きさを表す偏差評価値の一例を示す図である。 偏差評価値と有効ラム長との関係の一例を示すグラフである。 本発明の第3実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される鋼板の形状矯正装置の制御装置による処理の流れを説明するためのフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態と後述する第2及び第3実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される鋼板の形状矯正装置の一例の概略構成が示されている。
図1に示す鋼板の形状矯正装置1は、上述したように、オンラインで形状を矯正することができない鋼板の形状不良をオフラインで矯正する設備である。
この鋼板の形状矯正装置1は、鋼板Sの形状を矯正するプレス機2を備えている。そして、プレス機2の入側には入側搬送テーブル3が配設され、プレス機2の出側には出側搬送テーブル4が配設されている。入側搬送テーブル3には、鋼板Sをプレス機2に搬送するための複数の入側ローラ3aが配設され、出側搬送テーブル4には、鋼板Sをプレス機2から搬送するための複数の出側ローラ4aが配設されている。
また、プレス機2の入側及び出側のそれぞれには、鋼板Sの表面形状を計測する鋼板形状計測装置5が配置されている。各鋼板形状計測装置5は、レーザ光によってレーザ光の射出点から検出点までの距離を計測するレーザ距離計50(図2参照)と、レーザ距離計50で検出された距離データから鋼板Sの表面形状を計測するコンピュータシステム(図示せず)とを備えている。レーザ距離計50は、図2に示すように、回転軸を中心に回転する回転台51に、レーザ光源52及びガルバノミラー53が回転軸に対して直交するように対向配置されている。ガルバノミラー53は、回転台51の回転軸に対して直交する回転軸を中心に回転する。レーザ光源52からのレーザ光は、ガルバノミラー53を回転させることにより、主として鋼板Sの経度方向に変向し、回転台51を回転させることにより、ガルバノミラー53から変向されるレーザ光を主として鋼板Sの緯度方向に走査する。これにより、レーザ距離計50から鋼板Sの表面におけるレーザ反射位置までの3次元的な点群データを計測し、鋼板Sの表面形状を計測する。
また、プレス機2は、図1示すように、入側搬送テーブル3から搬送された鋼板Sが載置される台座2cと、下面に加圧ラム2bを備えた加圧ヘッド2aとを備えている。加圧ヘッド2aは、鋼板Sの幅方向に移動可能になっているとともに、昇降可能になっている。加圧ヘッド2aを回転することで、長手矯正と幅矯正を切り替える。加圧ヘッド2aは、台座2c上にある鋼板Sの幅方向の所定位置で降下し、加圧ラム2bの下端で鋼板Sを加圧して鋼板Sに曲げモーメントを作用させて鋼板Sの形状を矯正する。プレス機2の操作は、後述する表示装置8に表示された鋼板Sの矯正位置に基づいて矯正作業者が行う。なお、加圧ラム2bは、図1に示すように、その先端部(下端部)が上側から見て鋼板Sの幅方向に細長く延びる矩形状を有し、そのラム長Lは、加圧ラム2bの細長く延びる鋼板Sの幅方向長さを意味する。また、プレス機2には、加圧ラム2bが鋼板Sを矯正するに際しての荷重を検出する荷重計2dが設けられている。
また、プレス機2の入側及び出側のそれぞれには、プレス機2に対する鋼板Sの位置を検出する位置検出装置6が設置されている。各位置検出装置6は、鋼板形状計測装置5と同様の原理(但し、レーザ距離計50における回転台51は回転させない)で、鋼板Sの長手方向線上での鋼板Sの表面形状を計測し、計測された形状から後述する制御装置7を用いて特徴量(鋼板Sの先端における段差)の位置を計算し、プレス機2に対する鋼板Sの位置を検出する。位置検出装置6はカメラを用いた画像処理によってプレス機2に対する鋼板Sの位置を検出するようにしてもよい。
また、鋼板の形状矯正装置1には、制御装置7が設けられている。制御装置7は、加圧ラム2bによる鋼板Sの矯正位置を算出し、算出された鋼板Sの矯正位置を表示装置8に対し出力する。制御装置7には、鋼板形状計測装置5、位置検出装置6、及び荷重計2dが接続されている。制御装置7は、ハードディスク、ROM,RAM,CPU等を備えて構成されたコンピュータシステムであり、ハードディスク等に予め記憶された各種専用のプログラムを実行することにより、以下に述べる各ステップをソフトウェア上で実現する。
図3には、本発明の第1実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される制御装置7による処理の流れを説明するためのフローチャートが示されている。
先ず、制御装置7は、鋼板Sの矯正位置を算出するために、ステップS1において、オフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報を取得する(鋼板形状取得工程)。具体的には、制御装置7は、プレス機2の入側に設置された鋼板形状計測装置5で計測された鋼板Sの表面形状情報(矯正前形状データ)を取得する。
次いで、制御装置7は、ステップS2において、ステップS1で取得された鋼板Sの表面形状情報に基づいて鋼板Sの矯正位置を算出する(鋼板矯正位置算出工程)。
この鋼板矯正位置算出工程では、鋼板Sの矯正位置として、ステップS1で取得した鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が所定値である矯正判定基準値N1を超える1又は複数の第1位置p1(図4参照)と、第1位置p1を基準とする所定領域(鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差が矯正実行基準値N2となるまでの範囲)内に存在し、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が矯正判定基準値N1以下かつ矯正実行基準値N2以上となる1又は複数の第2位置p2(図4参照)と、を含む複数位置を算出する。
具体的に説明すると、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)の評価方法としては、歪(1m)と歪(2m)の2種類が存在する。1m、2mは、歪の波長である。歪(1m)と歪(2m)のおのおのに、鋼種毎で矯正判定基準値N1が決められている。この矯正判定基準値N1は前述の偏差(歪)をその値以内で矯正することがオペレータの義務となる所定値に設定される。ここで、所定値は、例えば2mmである。歪(1m)は空間分解能が高く、小波歪(波長が短い歪)に対して正確な矯正位置を見積ることができるが大波歪(波長が長い歪)を表現できない。一方、歪(2m)は小波歪に対して正確な矯正位置を見積ることはできないが大波歪を表現することができる。矯正方法としては、小波歪を矯正した後に大波歪を矯正するので、最初は歪(1m)の矯正における矯正位置を算出し、その矯正後に、歪(1m)の矯正位置がなくなったら、歪(2m)の矯正における矯正位置を算出する。歪(1m)の矯正及び歪(2m)の矯正のそれぞれの矯正においては、鋼板Sの長手方向(鋼板Sには長辺と短辺とがあり、鋼板Sの長辺方向(搬送方向))での長手矯正と、鋼板Sの短手方向(鋼板Sの短辺方向(搬送方向と直交する方向))での幅矯正とがあり、歪(1m)の長手矯正及び幅矯正、及び歪(2m)の長手矯正及び幅矯正のそれぞれにおいて矯正位置を算出する。
この歪(1m)の長手矯正及び幅矯正、及び歪(2m)の長手矯正及び幅矯正のそれぞれにおける矯正位置の算出に際し、鋼板Sの矯正位置として、ステップS1で取得した鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が所定値である矯正判定基準値N1を超える1又は複数の第1位置p1と、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が矯正判定基準値N1以下かつ矯正実行基準値N2以上となる1又は複数の第2位置p2(図4参照)と、を含む複数位置を算出する。
ここで、鋼板Sの矯正位置として、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が矯正判定基準値N1を超える第1位置p1のみの矯正をするわけではなく、当該偏差(歪)が矯正判定基準値N1以下かつ矯正実行基準値N2以上となる第2位置p2の矯正も行っている。この理由は、矯正作業者が第1位置p1で鋼板Sの矯正した際に、その矯正による戻り歪が生じることがあり、その戻り歪を矯正するために何度も矯正をする必要が生じ、第1位置p1での矯正だけでは、結果的に矯正回数が増加して矯正作業の効率が悪化してしまうからである。
このため、鋼板矯正位置算出工程では、鋼板Sの矯正位置として、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が所定値である矯正判定基準値N1を超える1又は複数の第1位置p1のみでなく、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が矯正判定基準値N1以下かつ矯正実行基準値N2以上となる1又は複数の第2位置p2をも矯正位置として算出し、矯正に際し、第2位置p2での矯正(過矯正)を行って、第1位置p1での鋼板Sの矯正による戻り歪を解消することとし、結果的に矯正回数を減らして、矯正の効率を上げるようにしている。
ここで、第2位置p2での矯正(過矯正)を行う鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)の下限値は、矯正実行基準値N2である。後述する第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法で、約100枚の矯正実績データから学習したところ、長手矯正での矯正実行基準値はN2=0.8×N1(矯正判定基準値)であった。一方で幅矯正での矯正実行基準値はN2=N1(矯正判定基準値)であった。
また、1又は複数の第1位置p1と1又は複数の第2位置p2とを含む複数の矯正位置の振り分けについては、1又は複数の第1位置p1のうち、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が最も大きい第1位置p1を中心として1又は複数の第2位置p2のうち、当該偏差(歪)が最も小さい第2位置p2に向けて(長手矯正では偏差(歪)が最も大きい第1位置p1を中心として鋼板長手方向の先頭側及び尾端側のそれぞれの偏差(歪)が最も小さい第2位置p2に向けて、幅矯正では偏差(歪)が最も大きい第1位置p1を中心として鋼板短手方向の一端側及び他端側のそれぞれの偏差(歪)が最も小さい第2位置p2に向けて)所定のピッチ長δ(図4参照)で矯正位置を振り分ける。このピッチ長δは、過去の矯正実績から求められた値あるいは後述する第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法によって調整されたピッチ長(パラメータ)の値を用いることができる。なお、長手矯正でのピッチ長δは、鋼板Sの板厚、硬度が大きいほど小さくなることが学習でわかっている。
図4には、本発明の第1実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法によって算出される長手矯正での複数の矯正位置を説明するための鋼板の表面形状と鋼板の長手方向の位置との関係の一例が示されている。この例では、鋼板Sの表面Saの形状が鋼板Sの目標表面形状に対し(+)側に突出しているところでは、3つの第1位置p1及び2つの第2位置p2が算出されている。また、鋼板Sの表面形状が鋼板Sの目標表面形状に対し(-)側に凹んでいるところでは、3つの第1位置p1及び2つの第2位置p2が算出されている。
次いで、ステップS2が終了したら、ステップS3に移行し、制御装置7は、ステップS2で算出した複数の矯正位置を表示装置8に対し出力し、制御装置7による処理は終了する。
矯正作業者は表示装置8に表示された鋼板Sの矯正位置を参照してプレス機2を操作し、鋼板Sの矯正を行うことができる。この矯正工程においては、第2位置p2を第1位置p1よりも先に矯正することが好ましい。この理由は、例えば、図4における左側を鋼板Sの長手方向の位置の先頭側とし、右側を鋼板Sの長手方向の位置の尾端側とした場合、鋼板Sの先頭側から矯正するにしても尾端側から矯正するにしても、第2位置p2を第1位置p1よりも先に矯正することで、無駄なく効率的に鋼板Sの矯正を行うことができる。
そして、矯正作業者がこの鋼板の矯正位置算出方法により算出された鋼板Sの矯正位置で鋼板Sを矯正する矯正工程を経た後、矯正された鋼板Sを製造ラインに戻し、その製造ラインで鋼板Sを所定長さに切断する製品切断工程経て、鋼板Sは製造される。
このように、第1実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法は、鋼板矯正位置算出工程(ステップS2)では、鋼板Sの矯正位置として、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差(歪)が所定値である矯正判定基準値N1を超える1又は複数の第1位置p1と、第1位置p1を基準とする所定領域(鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差が矯正実行基準値N2となるまでの範囲)内に存在し、鋼板Sの表面形状の目標表面形状に対する偏差が矯正判定基準値N1以下かつ矯正実行基準値N2以上となる1又は複数の第2位置p2と、を含む複数位置を算出する。
これにより、オフラインで鋼板Sの矯正をするに際して、オフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報に基づいて矯正回数を極力減らせるような鋼板の矯正位置を算出することができる。つまり、鋼板Sの矯正に際し、第1位置p1での矯正のみならず、第2位置p2での矯正(過矯正)を行って、第1位置p1での鋼板Sの矯正による戻り歪を解消することとし、結果的に矯正回数を減らして、矯正の効率を上げるようにしている。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法について、図5乃至図18を参照して説明する。図5には、本発明の第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される制御装置7による処理の流れを説明するためのフローチャートが示されている。
第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法において、先ず、制御装置7は、鋼板Sの矯正位置を算出するために、ステップS11において、オフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報を取得する(鋼板形状取得工程)。具体的には、制御装置7は、プレス機2の入側に設置された鋼板形状計測装置5で計測された鋼板Sの表面形状情報(矯正前形状データ)を取得する。
次いで、制御装置7は、ステップS12において、ステップS11で取得された鋼板Sの表面形状情報と調整可能なパラメータを含むプログラムとに基づいて鋼板の矯正位置を算出する(鋼板矯正位置算出工程)。
ここで、プログラムは、鋼板Sの表面形状情報と、鋼板Sを矯正するプレス機2の複数部位の夫々に付与された複数の設定値と、基準値(製品として許容される歪み量)と、板寸法情報(矯正される鋼板Sの板厚、板長、及び板幅で表される板寸法の情報)と、鋼種(板の強度)とを含む情報に基づいてオフラインでの鋼板Sの矯正位置を算出するものである。そして、パラメータは、前述の複数の設定値(ラム長、ラム幅、長手矯正位置間隔、幅矯正位置間隔、不感歪値、1m歪と2m歪の配合比、先尾端長さ、先尾端矯正間隔等)に含まれる1つの設定値、本実施形態では、加圧ラム2bのラム長Lである。このパラメータには、第1実施形態で説明した矯正実行基準値N2も含まれ、矯正実行基準値N2も学習させることができる。鋼板Sに幅方向の矯正の場合には鋼板Sの板幅をラム長Lで除した値がおおよそ幅方向における矯正点数であり、矯正位置を決める目安となる。プログラムは、制御装置7に記憶されている。また、鋼板Sを矯正するプレス機2の複数部位の夫々に付与された複数の設定値と、基準値と、板寸法情報とを含む情報は、図示しない上位計算機から制御装置7に入力される。
そして、矯正位置の算出に先立ち、制御装置7は、ステップS11で取得された鋼板Sの表面形状情報(本実施形態では画像データ)に対して歪み特定処理(本実施形態では画像処理)を施す。
図6には、鋼板形状計測装置5から得られる鋼種Aの鋼板Sの表面形状データ(画像データ)に対して歪み特定処理を施した一例が示されている。図6(a)には長さ1mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例が、図6(b)には長さ2mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例が示されている。図6(a),(b)において、符号Rで示す領域が前述した基準値から外れた領域であり、それ以外の領域が前述の基準値内の領域である。図6(a),(b)において、右側には鋼板Sの表面に対しての凹凸状況を示す数値が示され、0を基準として負側が凹み、正側が凸であることを示している。
そして、制御装置7は、この鋼板Sの表面の歪み特定処理で特定された歪みと、パラメータとしてのラム長L及び板寸法情報から算出された矯正点数とから鋼板Sの矯正位置を算出する。図7には、図6に示す歪み特定処理で特定された歪みとパラメータとしてのラム長L及び板寸法情報から算出された矯正点数とに基づいて算出した矯正位置(算出矯正位置)の一例が示されている。図7(a)には図6(a)で示す長さ1mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数とに基づいて算出された矯正位置P1が、図7(b)には図6(b)で示す長さ2mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数とに基づいて算出した矯正位置P1が示されている。
次いで、制御装置7は、ステップS13において、ステップS12で算出された矯正位置を別途矯正作業者が視聴可能な表示装置8に対し出力する(出力工程)。
矯正作業者は、表示装置8に表示された矯正位置や第1実施形態に係る矯正位置算出方法によって算出され、表示装置8に出力された複数の矯正位置を参考として、矯正位置をどの位置とするか最終判断を行い、プレス機2を操作して実際に鋼板Sの矯正を実行する。矯正作業者は、例えば、図7(a),(b)における基準値から外れた領域Rを基準値内にするように自らの経験を加味しつつ矯正作業を行う。
次いで、制御装置7は、ステップS14において、矯正作業者が実際に鋼板Sの矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置を取得する(実績矯正位置取得工程)。
ここで、矯正実績から得られる矯正位置は、矯正を実行するプレス機2に設けられた荷重計2dから得られる荷重値と、プレス機2に対する位置検出装置6から得られる鋼板Sの位置にと基づいて特定される。
図8には、矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)の一例が示されている。図8(a)には図7(a)で示す矯正位置(算出矯正位置)P1を参考に矯正作業者が実際に鋼板Sの矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)P2が示されている。図8(b)には図7(b)で示す矯正位置(算出矯正位置)P1を参考に矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)P2が示されている。
また、図9において、(a)には図7(a)に図8(a)を重ね合わせたもの、(b)には図7(b)に図8(b)を重ね合わせたものが示されている。
次いで、制御装置7は、ステップS15において、ステップS12での矯正位置の算出数とステップS14での矯正実績から得られる矯正位置の取得数とが目標数に達していないか否かを判定する(判定工程)。ステップS12での矯正位置の算出とステップS14での矯正実績から得られる矯正位置の取得とは一対一に対応し、それぞれの算出数と取得数とは同一である。
それぞれが目標数に達成していない(YES)と判定した場合、制御装置7による処理は終了する。
一方、それぞれが目標数に達している(NO)と判定した場合、ステップS16に移行する。この目標数は、後述するパラメータの調整に必要な数である。
ステップS16では、制御装置7は、ステップS12で算出した矯正位置を算出矯正位置、ステップS14で取得した矯正実績から得られる矯正位置を実績矯正位置とし、算出矯正位置と実績矯正位置とに基づいてパラメータとしてのラム長Lを調整する(パラメータ調整工程)。パラメータとしてのラム長Lは、過去に矯正された他の鋼板Sの表面形状情報にプログラムを適用して算出された算出矯正位置(ステップS12で算出された算出矯正位置)と、当該他の鋼板Sに対する矯正実績から得られる実績矯正位置(ステップS14で取得した矯正実績から得られる実績矯正位置)とに基づいて調整可能に構成されている。
つまり、制御装置7は、鋼板Sの算出矯正位置と鋼板Sの実績矯正位置とを比較し、算出矯正位置が、矯正作業者による実績矯正位置に近づくようにパラメータとしてのラム長Lを調整する。
制御装置7は、具体的に、複数の鋼板Sにおける算出矯正位置と複数の鋼板Sにおける実績矯正位置との差分に基づく複数の偏差評価値を算出し、算出された複数の偏差評価値に基づいてパラメータとしてのラム長Lを調整する。
ここで、偏差評価値は、鋼板Sにおける算出矯正位置の点分布を変換した算出矯正位置空間パターンと鋼板Sにおける実績矯正位置の点分布を変換した実績矯正位置空間パターンとの差の大きさの平均値である。
実績矯正位置空間パターンは、教師パターンであり、例えば、図10(a)に示すように、実績矯正位置(図8参照)の点分布を、実績矯正位置が極大となる略正規分布曲面の和集合である空間パターンに変換されたものである。
また、算出矯正位置空間パターンは、ガイダンスパターンであり、例えば、図10(b)に示すように、算出矯正位置(例えば、図7参照)の点分布を、算出矯正位置が極大となる略正規分布曲面の和集合である空間パターンに変換されたものである。これら図10(a),(b)においては、白い領域に矯正点が存在する確率が高く、黒い領域には矯正点が存在する確率が低いとみなされる。
図11には、図10(b)で示す算出矯正位置の点分布を変換した算出矯正位置空間パターン(ガイダンスパターン)と図10(a)で示す実績矯正位置の点分布を変換した実績矯正位置空間パターン(教師パターン)の差の大きさを表す偏差評価値の一例が示されている。図11においては、黒いほど算出矯正位置空間パターンと実績矯正位置空間パターンとの差が小さいことを意味しており、この例では算出矯正位置空間パターンと実績実矯正位置空間パターンとの差がほとんどなく、両者が一致していることがわかる。従って、鋼種Aについては適切に鋼板Sの矯正位置が算出できていることが分かる。
一方、図12には、図1に示す鋼板形状計測装置5から得られる鋼種Bの鋼板Sの表面形状データに対して歪み特定処理を施した一例が示されている。図12(a)には長さ1mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例が、図12(b)には長さ2mの仮想ストレッチャーを用いて歪み特定処理を施した一例が示されている。
また、図13には、図12に示す歪み特定処理で特定された歪みとパラメータとしてのラム長及び板寸法情報から算出された矯正点数とに基づいて算出した矯正位置(算出矯正位置)の一例が示されている。図13(a)は図12(a)で示す長さ1mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数に基づいて算出した矯正位置の一例を示す。図13(b)は図12(b)で示す長さ2mの仮想ストレッチャーを用いた歪み特定処理で特定された歪みと矯正点数に基づいて算出した矯正位置の一例を示す。
更に、図14には、矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)の一例が示されている。図14(a)は図13(a)で示す矯正位置を参考として矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置の一例を示す。図14(b)は図13(b)で示す矯正位置を参考に矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正実績から得られる矯正位置の一例を示す。
また、図15において、(a)には図13(a)に図14(a)を重ね合わせたもの、(b)には図13(b)に図14(b)を重ね合わせたものが示されている。
また、図16において、(a)には図14(a)で示す矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)の点分布を変換した実績矯正位置空間パターン(教師パターン)の一例が示されている。(b)には図13(a)で示す算出した矯正位置(算出矯正位置)の点分布を変換した算出矯正位置空間パターン(ガイダンスパターン)の一例が示されている。
そして、図17には、図16(b)で示す算出した矯正位置の点分布を変換した算出矯正位置空間パターン(ガイダンスパターン)と図16(a)で示す矯正実績から得られる矯正位置の点分布を変換した実績矯正位置空間パターン(教師パターン)の差の大きさを表す偏差評価値の一例が示されている。
図17から分かるように、鋼種Bについては算出矯正位置空間パターンと実績矯正位置空間パターンとに差があることが分かる。
そして、ステップS16において、パラメータとしてのラム長Lは、偏差評価値を目的関数としてその目的関数が最小となるような値に調整される。
図18には、偏差評価値と有効ラム長との関係の一例が示されている。この場合、実績数が58であり、パラメータとしての有効ラム長が1.7mのときに偏差評価値(目的関数)が極小(最小)となり、パラメータとしてのラム長の最適値は1.7mであることがわかる。
次いで、ステップS16の後、ステップS11に戻り、制御装置7は、過去に矯正された他の鋼板S(前述のステップS11~ステップS16における鋼板S)とは別の矯正対象となる鋼板Sの表面形状情報を取得する。制御装置7は、鋼板形状計測装置5で計測された鋼板Sの表面形状情報(矯正前形状データ)を取得する。
そして、ステップS12において、制御装置7は、前述のステップS16で調整されたパラメータとしてのラム長Lを含むプログラムを、ステップS11で取得した、過去に矯正された他の鋼板Sとは別の鋼板Sの表面形状情報に適用して鋼板Sの矯正位置を算出する。
以後、制御装置7は、ステップS13、ステップS14、ステップS15、及びステップS16を繰り返す。
これにより、制御装置7による処理は終了する。
ステップS13において、矯正対象となる鋼板Sの矯正位置は表示装置8に対して出力され、矯正作業者は表示装置8に表示された鋼板Sの矯正位置を参照してプレス機2を操作し、鋼板Sの矯正を行うことができる。
そして、矯正作業者がこの鋼板の矯正位置算出方法により算出された鋼板Sの矯正位置で鋼板Sを矯正する矯正工程を経た後、矯正された鋼板Sを製造ラインに戻し、その製造ラインで鋼板Sを所定長さに切断する製品切断工程経て、鋼板Sは製造される。
このように、第2実施形態に係る鋼板Sの矯正位置算出方法及び鋼板Sの製造方法によれば、オフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報と、調整可能なパラメータを含むプログラムとに基づいて鋼板の矯正位置を算出する鋼板矯正位置算出工程(ステップS12)を有する。そして、パラメータは、過去に矯正された他の鋼板Sの表面形状情報にプログラムを適用して算出された算出矯正位置と、当該他の鋼板Sに対する矯正実績から得られる実績矯正位置とに基づいて調整可能に構成される(ステップS16)。そして、鋼板矯正位置算出工程(ステップS12)では、算出矯正位置と実績矯正位置とに基づいて調整されたパラメータを含むプログラムをオフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報に適用して鋼板Sの矯正位置を算出する。
これにより、オフラインで鋼板Sの矯正をするに際して、オフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報に基づいて熟練した矯正作業者と同様の精度で鋼板Sの矯正位置を算出することができる。そして、パラメータを調整して算出した鋼板Sの矯正位置を表示装置8に表示することで、どの矯正作業員も熟練矯正作業員と同じ矯正作業が可能となり、作業効率及び矯正された鋼板の品質を向上させることができる。
そして、鋼板Sの矯正位置が算出されて表示装置8に表示されるので、ストレッチャーを用いた計測やその後の算出位置の特定のために矯正作業者がライン内に立ち入る必要がなくなり、安全性及び作業効率が向上する。具体的には、矯正作業の全体の効率が20%程度向上する。
また、第2実施形態に係る鋼板Sの矯正位置算出方法及び鋼板Sの製造方法によれば、鋼板Sを矯正するプログラムに含まれ、調整可能なパラメータは、鋼板Sを矯正するプレス機2の複数部位の夫々に付与された複数の設定値に含まれる設定値である。このため、鋼板Sの矯正位置を算出するに際して最も熟練度が必要となるプレス機2の複数部位の夫々に付与された設定値の影響を効果的に考慮することができる。
また、第2実施形態に係る鋼板Sの矯正位置算出方法及び鋼板Sの製造方法によれば、パラメータは、複数の過去に矯正された他の鋼板Sにおける算出矯正位置と複数の当該他の鋼板Sにおける実績矯正位置との差分に基づく複数の偏差評価値を算出し、算出された複数の偏差評価値に基づいて調整される。そして、この偏差評価値は、過去に矯正された他の鋼板Sにおける算出矯正位置の点分布を変換した算出矯正位置空間パターンと当該他の鋼板Sにおける実績矯正位置の点分布を変換した実績矯正位置空間パターンとの差の大きさの平均値である。そして、パラメータは、偏差評価値を目的関数としてその目的関数が最小となるような値に調整される。これにより、熟練した矯正作業者と近似したパラメータの調整を的確かつ正確に行うことができ、オフラインで計測された鋼板Sの表面形状情報に基づいて熟練した矯正作業者と同様のより正確な精度で鋼板Sの矯正位置を算出することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法について図19を参照して説明する。図19は、本発明の第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法が適用される鋼板の形状矯正装置の制御装置による処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図19に示すように、第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法では、第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法と同様に、制御装置7は、ステップS21(鋼板形状取得工程)、ステップS22(鋼板矯正位置算出工程)、及びステップS23(出力工程)を実行する。
第3実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法では、第2実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法と異なり、制御装置7は、ステップS23(出力工程)の後に、ステップS24(形状判定工程)を実行する。
ステップS24では、制御装置7は、鋼板Sに対して矯正を実行した際の表面形状と目標表面形状との差異が適正範囲内であるか否かを判定する。ここで、「目標表面形状」の情報は、図示しない上位計算機から制御装置7に予め入力されている。また、「適正範囲」は、1m歪と2m歪の許容範囲であり、板厚、鋼種、用途等であらかじめ決められている。例えば、1m歪は1mm以内、2m歪は2mm以内といった具合である。
そして、ステップS24での判定結果が前述の差異が適正範囲内であるとき(YESであるとき)に、制御装置7は、ステップS25(実績矯正位置取得工程)を実行し、鋼板Sに対する矯正実績から得られる実績矯正位置を取得する。
次いで、制御装置7は、ステップS26(判定工程)及びステップS27(パラメータ調整工程)を実行する。
一方、ステップS24(形状判定工程)での判定結果が前述の差異が適正範囲外であるとき(NOであるとき)に、制御装置7による処理は終了する。
このように、第3実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法によれば、鋼板Sに対して矯正を実行した際の表面形状と目標表面形状との差異が適正範囲内であるときに、鋼板Sに対する矯正実績から得られる矯正位置(実績矯正位置)を取得する。
これにより、矯正後の鋼板Sの表面形状が目標表面形状の適正範囲外であるときは、矯正作業者が実際に鋼板の矯正を実行した際の矯正位置がステップS17(パラメータ調整工程)において教師データとして使用されないことになる。このため、パラメータの調整を適切な実績矯正位置に基づいて適切に行うことができる。例えば、矯正作業者が経験の浅い者であり、矯正後の鋼板Sの表面形状が目標表面形状の適正範囲外となる場合である。
なお、矯正後の鋼板Sの表面形状が目標表面形状の適正範囲外となる場合には、前述したように、制御装置7による処理は終了することになるが、この場合において制御装置7による処理を終了せずに、実際に鋼板の矯正を実行した際の鋼板Sの表面形状と、鋼板Sに対応付けられた目標表面形状との差異から適切な矯正位置を再算出し、ステップS22で算出された矯正位置が当該再算出した矯正位置となるようにパラメータを調整してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、第2実施形態及び第3実施形態のいずれにあっても、パラメータは、プレス機2の複数部位の夫々に付与された複数の設定値に含まれる1つの設定値として、ラム長Lとしてある。しかし、パラメータは、前述の複数の設定値に含まれる1つの設定値に限らず、2つ以上の設定値としてもよい。また、その設定値としてラム長Lに限らず、ラム幅や長手方向矯正時の矯正位置間隔等であってもよい。
また、第2実施形態において、鋼種A、Bに応じてパラメータを調整する例を説明したが、これに限らず、例えば、板厚、矯正種別(粗矯正か圧延矯正か)などに応じてパラメータを調整するようにしてもよい。例えば、板厚について説明すると、板厚が80mm以上の厚鋼板はライン上の矯正位置では十分に矯正できない。そこで、第1実施形態においては、ステップS12(鋼板矯正位置算出工程)では、鋼板Sの板厚が所定厚さ(80mm)未満の薄鋼板であるときは、鋼板Sの前端部及び後端部における矯正位置を算出し、鋼板Sの板厚が所定厚さ(80mm)以上の厚鋼板であるときは、鋼板Sの全長における矯正位置を算出するようにしてもよい。これは、第3実施形態に係る鋼板の矯正位置算出方法においても同様である。
また、第2実施形態及び第3実施形態において、プレス機2は矯正作業者が操作するようにしてあるが、制御装置7がその動作を制御するように構成してもよい。そして、制御装置7は、ステップS12(鋼板矯正位置算出工程)で算出した鋼板Sの矯正位置に基づいてプレス機2を制御し、自動で矯正作業を行うようにしてもよい。
また、熟練作業者の教師データを採用したい場合は、ステップS13あるいはステップS23を無くせばよい。ステップS13あるいはステップS23を無くすことで、プログラムに影響を受けない教師データを取得することができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、他の鋼板Sの表面形状情報にプログラムを適用して算出された算出矯正位置を第1矯正位置、他の鋼板Sに対する矯正実績から得られる実績矯正位置を第2矯正位置と読み替えてもよい。
そして、当該算出矯正位置を第1矯正位置、当該実績矯正位置を第2矯正位置と読み替えた場合、パラメータは、第1矯正位置と第2矯正位置との偏差を示す値である所定の評価値(前述した説明では偏差評価値)を目的関数としてその目的関数が最小値となるように調整されてもよい。ここで、この所定の評価値は、第1矯正位置に基づく第1分布曲面(前述した説明では、算出矯正位置空間パターン)と第2矯正位置に基づく第2分布曲面(前述した説明では、実績矯正位置空間パターン)との誤差を平均して算出した値である。また、第1分布曲面は、第1矯正位置を極大値として鋼板における矯正位置の分布を示した分布曲面であり、第2分布曲面は、第2矯正位置を極大値として鋼板における矯正位置の分布を示した分布曲面である。
1 形状矯正装置
2 プレス機
2a 加圧ヘッド
2b 加圧ラム
2c 台座
2d 荷重計
3 入側搬送テーブル
3a 入側ローラ
4 出側搬送テーブル
4a 出側ローラ
5 鋼板形状計測装置
6 位置検出装置
7 制御装置
8 表示装置
50 レーザ距離計
51 回転台
52 レーザ光源
53 ガルバノミラー
p1 第1位置
p2 第2位置
S 鋼板

Claims (10)

  1. オフラインで計測された鋼板の表面形状情報に基づいて鋼板の矯正位置を算出する鋼板矯正位置算出工程を含む鋼板の矯正位置算出方法であって、
    前記鋼板矯正位置算出工程では、前記矯正位置として、前記鋼板の表面形状の目標表面形状に対する偏差が所定値である矯正判定基準値を超える1又は複数の第1位置と、前記鋼板の表面形状の目標表面形状に対する偏差が前記矯正判定基準値以下かつ矯正実行基準値以上となる1又は複数の第2位置と、を含む複数位置を算出することを特徴とする鋼板の矯正位置算出方法。
  2. 前記矯正位置は、前記オフラインで計測された鋼板の表面形状情報と、調整可能なパラメータを含むプログラムとに基づいて前記鋼板矯正位置算出工程において算出されるものであり、
    前記パラメータは、過去に矯正された他の鋼板の表面形状情報に前記プログラムを適用して算出された算出矯正位置と、当該他の鋼板に対する矯正実績から得られる実績矯正位置とに基づいて調整可能に構成され、
    前記鋼板矯正位置算出工程では、前記算出矯正位置と前記実績矯正位置とに基づいて調整された前記パラメータを含む前記プログラムを前記オフラインで計測された前記鋼板の表面形状情報に適用して前記鋼板の矯正位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の鋼板の矯正位置算出方法。
  3. 前記プログラムは、前記鋼板の表面形状情報と、前記鋼板を矯正するプレス機の複数部位の夫々に付与された複数の設定値とを含む情報に基づいてオフラインでの前記鋼板の矯正位置を算出するものであり、
    前記パラメータは、前記複数の設定値に含まれる1以上の設定値であることを特徴とする請求項2に記載の鋼板の矯正位置算出方法。
  4. 前記パラメータは、複数の前記他の鋼板における前記算出矯正位置と複数の前記他の鋼板における前記実績矯正位置との差分に基づく複数の偏差評価値を算出し、算出された複数の偏差評価値に基づいて調整されることを特徴とする請求項2又は3に記載の鋼板の矯正位置算出方法。
  5. 前記偏差評価値は、前記他の鋼板における前記算出矯正位置の点分布を変換した算出矯正位置空間パターンと前記他の鋼板における前記実績矯正位置の点分布を変換した実績矯正位置空間パターンとの差の大きさの平均値であり、前記パラメータは、前記偏差評価値を目的関数としてその目的関数が最小となるような値に調整されることを特徴とする請求項4に記載の鋼板の矯正位置算出方法。
  6. 前記他の鋼板における前記実績矯正位置は、矯正を実行するプレス機に設けられた荷重計から得られる荷重値と、前記プレス機に対する前記他の鋼板の位置を検出する位置検出装置から得られる前記他の鋼板の位置にと基づいて特定されることを特徴とする請求項2乃至5のうちいずれか一項に記載の鋼板の矯正位置算出方法。
  7. 前記鋼板矯正位置算出工程では、前記鋼板の板厚が所定厚さ未満の薄鋼板であるときは、前記鋼板の前端部及び後端部における矯正位置を算出し、前記鋼板の板厚が所定厚さ以上の厚鋼板であるときは、前記鋼板の全長における矯正位置を算出することを特徴とする請求項2乃至6のうちいずれか一項に記載の鋼板の矯正位置算出方法。
  8. 前記他の鋼板に対して矯正を実行した際の表面形状と目標表面形状との差異が適正範囲内であるときに、前記他の鋼板に対する矯正実績から得られる実績矯正位置を取得することを特徴とする請求項2乃至7のうちいずれか一項に記載の鋼板の矯正位置算出方法。
  9. 請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載された鋼板の矯正位置算出方法により算出された鋼板の矯正位置で前記鋼板を矯正する矯正工程と、該矯正工程で矯正された鋼板を所定長さに切断する製品切断工程とを含むことを特徴とする鋼板の製造方法。
  10. 前記矯正工程において、前記第2位置を前記第1位置よりも先に矯正することを特徴とする請求項9に記載の鋼板の製造方法。
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