JP2022025618A - 硬化膜及び積層体、並びにこれらの製造方法 - Google Patents

硬化膜及び積層体、並びにこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】艶消し性及び帯電防止性に優れる硬化膜及び積層体、並びにこのような硬化膜及び積層体の製造方法を提供する。【解決手段】活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化膜であって、表面にしわ状の凹凸構造を有し、帯電防止剤を含有する硬化膜。帯電防止剤を含有する硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる前記硬化膜の製造方法。前記硬化膜が基材上に積層されてなる積層体。基材上に帯電防止剤を含有する硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる前記積層体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化膜及び積層体、並びにこれらの製造方法に関する。
壁紙等の建築建材、ディスプレイ用部材、加飾フィルム等の部材に、艶消し性等を付与するために、基材の表面に微細な凹凸を付与することがある。またこれらの部材には帯電防止性が求められることがある。
特許文献1には、磁気記録媒体に用いられる二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの表面にエキシマレーザー光を照射して微細な凹凸を形成する方法が開示されている。
特許文献2には、反射防止フィルムに用いられるハードコート層を有するフィルム表面への凹凸形成方法として、ハードコート樹脂及び無機微粒子を含むハードコート層が形成されたフィルムにエキシマ光を照射することで、表層のハードコート樹脂の部分を分解する方法が開示されている。
特開平4-305430号公報 特開2014-224920号公報
しかし、特許文献1に記載の方法では、十分な艶消し効果が得られない特定の凹凸構造しか得られない。また、二軸配向熱可塑性樹脂フィルムに直接凹凸を形成しているので、耐擦傷性や帯電防止性などの各種の表面特性を付与して使用するディスプレイ用途などに適用するのは困難である。
特許文献2に記載の方法では、ハードコート層のハードコート樹脂だけを分解して無機微粒子を表面に露出させるので、当該粒子が脱落しやすくなり、ディスプレイ等に使用する場合に視認性に支障をきたすことがある。また、表面凹凸構造が粒子の形状や分布により限定されるという問題がある。
本発明は、艶消し性及び帯電防止性に優れる硬化膜及び積層体、並びにこのような硬化膜及び積層体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化膜であって、表面にしわ状の凹凸構造を有し、帯電防止剤を含有する硬化膜。
[2] 活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化膜であって、表面にしわ状の凹凸構造を有し、実質的に粒子を含まず、60°グロスが50以下、表面抵抗値が1.0×1013Ω以下である硬化膜。
[3] 前記硬化性組成物は(メタ)アクリレートを含有する、前記[1]又は[2]に記載の硬化膜。
[4] 前記凹凸構造のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1μm以上である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化膜。
[5] 前記凹凸構造のISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1μm以上である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の硬化膜。
[6] 前記凹凸構造の局部傾斜角度の平均値(θa)が2°以上である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化膜。
[7] 表面の60°グロスが30以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の硬化膜。
[8] 帯電防止剤を含有する硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる、前記[1]~[7]のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
[9] 前記[1]~[7]のいずれかに記載の硬化膜が基材上に積層されてなる積層体。
[10] 前記基材がフィルムである、前記[9]に記載の積層体。
[11] 基材上に帯電防止剤を含有する硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる、前記[9]又は[10]に記載の積層体の製造方法。
[12] 基材上に実質的に粒子を含まない硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる、前記[9]又は[10]に記載の積層体の製造方法。
本発明の硬化膜及び積層体は、艶消し性及び帯電防止性に優れる。本発明の硬化膜及び積層体の製造方法によれば、艶消し性及び帯電防止性に優れる硬化膜及び積層体が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
〔硬化膜〕
本発明の硬化膜(以下、単に「硬化膜」という)は、活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなるものであり、表面にしわ状の凹凸構造(非平滑構造)を有するものである。
本発明の第一の硬化膜は、表面にしわ状の凹凸構造を有し、帯電防止剤を含有する硬化膜である。また、本発明の第ニの硬化膜は、表面にしわ状の凹凸構造を有し、実質的に粒子を含まず、60°グロスが50以下、表面抵抗値が1.0×1013Ω以下である硬化膜である。本発明の硬化膜は、艶消し性及び帯電防止性に優れることから、防眩膜として好適である。
(グロス)
後述する実施例に記載の方法により測定される硬化膜の表面の60°グロス(60°鏡面光沢度)は、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下、最も好ましくは11以下の範囲であり、低いほど好ましい。60°グロス値は小さいほど艶消し性に優れる。
また、同様に20°グロスは、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは2以下、最も好ましくは1以下の範囲であり、低いほど好ましい。20°グロス値は小さいほど艶消し性に優れる。
(表面抵抗値)
硬化膜の表面抵抗値は、好ましくは1.0×1013Ω以下、より好ましくは1.0×1012Ω以下、さらに好ましくは1.0×1011Ω以下、特に好ましくは1.0×1010Ω以下の範囲であり、特に下限はないが好ましくは1.0×10Ω以上、より好ましくは1.0×10Ω以上である。表面抵抗値は小さいほど帯電防止性に優れ、ほこりなどの付着を防止できる。
(粗さ曲線要素の平均長さ)
硬化膜の凹凸構造における粗さ曲線要素の平均長さは、JIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm、以下単に「RSm」ともいう)である。RSmを算出する際の評価長さは236.87μmとした。RSmの好ましい範囲は1μm以上、より好ましくは2~100μm、さらに好ましくは3~60μm、特に好ましくは4~50μm、最も好ましくは5~25μmの範囲である。上記範囲であると艶消し性に優れ、ディスプレイ等に用いた時の視認性に優れる。
(算術平均高さ)
硬化膜の凹凸構造における算術平均高さは、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa、以下単に「Sa」ともいう)である。Saを算出する際の評価領域は177.60μm×236.87μmとした。Saは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15~20μm、さらに好ましくは0.2~10μm、特に好ましくは0.3~5μm、最も好ましくは0.4~3μmの範囲である。上記範囲であると艶消し性に優れ、ディスプレイ等に用いた時の視認性に優れる。
(凹凸構造の傾斜角の平均値)
硬化膜の凹凸構造における局部傾斜角度の平均値(θa、以下単に「θa」ともいう)は、後述する実施例の記載の方法により測定することができる。θaを算出する際の評価長さは236.87μmとした。θaは、好ましくは2°以上、より好ましくは4°以上、さらに好ましくは7°以上、特に好ましくは10°以上、最も好ましくは15°以上の範囲であり、上限としては、90°でもよい。この範囲にあると良好な艶消し性を備える。
(厚み)
硬化膜(凹凸層)の厚みは、艶消し性向上の観点から、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.2~20μm、さらに好ましくは0.3~10μm、特に好ましくは0.3~7μmの範囲である。硬化膜の厚みは、凹凸層の最大厚みを示し、電子顕微鏡による断面観察により求められる。
(鉛筆硬度)
後述する実施例に記載の方法により測定される硬化膜の鉛筆硬度は、F以上であることが好ましく、より好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上である。上記範囲であると耐擦傷性に優れ、ディスプレイ用等、視認性を重視する用途に適したものとなる。
〔硬化膜及び積層体の製造方法〕
本発明の硬化膜およびこれを有する本発明の積層体(以下、単に「積層体」という)は、例えば、基材上に硬化性組成物の塗膜を積層し、当該塗膜の表面側(基材と反対側)から活性エネルギー線を照射することで基材の表面に硬化膜を形成する方法で製造できる。
硬化性組成物の塗膜の表面側からに活性エネルギー線を照射することにより、塗膜の表面側が先に硬化して硬化被膜が形成される。その後、塗膜の内部が硬化すると、先に硬化した表面側の硬化被膜が座屈するので、表面にしわ状の凹凸構造を有する硬化膜が形成される。
(硬化性組成物)
硬化膜の形成に用いる硬化性組成物は、帯電防止剤を含有する。硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性の化合物、有機溶剤、光重合開始剤、その他の成分をさらに含むことができる。
(帯電防止剤)
硬化性組成物には硬化膜に帯電防止剤性を付与する目的で、帯電防止剤を配合することができる。帯電防止剤性の付与により、剥離帯電による塵埃等の異物の付着防止に寄与することができる。
帯電防止剤としては、特に制限はなく、従来公知の帯電防止剤を使用することが可能である。帯電防止剤としては、例えば、高分子タイプ、界面活性剤タイプ等の有機化合物、金属酸化物等の無機化合物が挙げられる。これらの中でも凹凸構造の形成のしやすさから、有機化合物が好ましい。また、耐熱性、耐湿熱性、耐久性の観点から、高分子タイプがより好ましい。高分子タイプの帯電防止剤としては、例えば、アンモニウム基を有する化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸基を有する化合物、ベタイン化合物、導電ポリマーが挙げられる。
また、帯電防止剤は、活性エネルギー線硬化性の官能基を有する化合物とすることも可能である。活性エネルギー線硬化性の官能基とは、例えば(メタ)アクリロイル基が挙げられる。当該官能基を含有することで、凹凸構造の形成に寄与できるし、耐擦傷性などの特性の向上にも寄与できる。
アンモニウム基を有する化合物とは、分子内にアンモニウム基を有する化合物であり、例えば、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミンが挙げられる。アンモニウム基を有する化合物は、高分子タイプのアンモニウム基を有する化合物が好ましい。当該アンモニウム基は、カウンターイオンとしてではなく、高分子の主鎖や側鎖中に組み込まれている構造であることが好ましい。また、高分子の中でも、効果的に帯電防止性を付与するために、アンモニウム基の濃度を高くできるものが好ましく、そのために(メタ)アクリル系の高分子であることが好ましい。例えば、付加重合性のアンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有する単量体を重合した重合体からアンモニウム基を有する高分子化合物とするものが挙げられる。重合体としては、付加重合性のアンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有する単量体を単独で重合してもよいし、これらを含有する単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。
アンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体単量体としては、例えば、アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、具体的には、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、特にN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好適に使用される。N,N-ジアルキルアミノ基の2つアルキル基は異なっていてもよい。
N,N-ジアルキルアミノ基含有単量体のアンモニウム基としては、例えば、市販のN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライドによる4級化物[例えば、商品名「ライトエステル(登録商標)DQ-100」、共栄社化学社製]が挙げられる。N,N-ジアルキルアミノ基含有単量体のアンモニウム基は、例えば、アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルの4級化反応によって製造することもできる。
(メタ)アクリル系の高分子による場合、アンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体単量体以外の重合性単量体単位を含んでいてもよく、このような重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;前記のアミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレンが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。これらの中で、疎水性の高い長鎖アルキル基を有する重合性単量体を含有する場合は、硬化膜の空気界面に偏析させて、硬化膜の帯電防止性を高めることができるので好ましい形態である。このような長鎖アルキル基を有する重合性単量体としては、好ましくは炭素数が8~30のアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくは炭素数が12~22のアルキル(メタ)アクリレートであり、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アンモニウム基を有する化合物を(メタ)アクリル系の高分子(重合体)中のアンモニウム基含有単量体単位の割合は、好ましくは5~95質量%、より好ましくは10~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%、特に好ましくは30~70質量%の範囲である。この割合は多いほど帯電防止性が高くなり、少ないほど硬化物層の塗布後の外観が向上する傾向があり、上記範囲で使用することでバランスが取れたものとなる。重合体中の長鎖アルキル基含有単量体単位の割合は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下の範囲である。上記範囲で使用することで、帯電防止性を発現しやすくなる。
アンモニウム基を有する化合物を(メタ)アクリル系の高分子(重合体)の重量平均分子量は、800~120000が好ましく、2000~60000がより好ましい。
アンモニウム基を有する化合物を(メタ)アクリル系の高分子(重合体)は、上記の原料単量体を用いてラジカル重合反応により製造することができる。ラジカル重合反応は、有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下で実施することが好ましい。
ラジカル重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセタート等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合反応に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤は、原料単量体の合計100質量部に対して0.01~5質量部の範囲で用いることが好ましい。
また、ラジカル重合反応の際には、重合体の重量平均分子量を制御する目的で連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、チオグリコール酸2-エチルへキシル、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルフィド、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノ-ル、メルカプトエタノール、チオサリチル酸、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプト酢酸、メルカプト琥珀酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系化合物等が挙げられる。これらは、1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の使用量は、原料単量体の合計100重量部に対して0.1~25重量部が好ましく、0.5~20重量部がより好ましく、1.0~15重量部がさらに好ましい。
ラジカル重合反応の反応時間は1~20時間が好ましく、3~12時間がより好ましい。また、反応温度は40~120℃が好ましく、50~100℃がより好ましい。
帯電防止剤として配合することができるポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエチレングリコールを側鎖に有するアクリル樹脂が挙げられる。
帯電防止剤として配合することができるスルホン酸基を有する化合物とは、分子内にスルホン酸あるいはスルホン酸塩を含有する化合物のことであり、例えば、ポリスチレンスルホン酸等、スルホン酸あるいはスルホン酸塩が多量に存在する化合物が好適なスルホン酸基を有する化合物として挙げられる。
帯電防止剤として配合することができる導電ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリアセチレン系が挙げられ、その中でも例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)をポリスチレンスルホン酸と併用するような、ポリチオフェン系が好適に用いられる。導電ポリマーは抵抗値が低くなるという点において、上述の他の帯電防止剤に比べて好適である。しかし、一方で導電ポリマーは、高価であったり、硬化膜が着色したりする場合があるので、種類の選定や使用量の低減などの工夫を適宜行うとよい。
帯電防止剤として配合することができる界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性が良好になるという観点、各種の樹脂との相溶性の観点において、アニオン系界面活性剤や非イオン系界面活性剤が好ましく、特にアニオン系界面活性剤が好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、エステルスルホン酸塩等のスルホン酸型、アルキルリン酸エステルまたはその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩等のリン酸型、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル型、アルキル脂肪酸塩等のカルボン酸塩型が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性に優れるという観点から、スルホン酸型が好ましい。
スルホン酸型アニオン系界面活性剤としては、例えば、デシルスルホン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、テトラデシルスルホン酸塩、ヘキサデシルスルホン酸塩、オクタデシルスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩、ブチルベンゼンスルホン酸塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸塩、オクチルベンゼンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、テトラデシルベンゼンスルホン酸塩、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸塩、オクタデシルベンゼンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸塩、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルアリールスルホン酸塩、ジブチルスルホコハク酸エスエル塩、ジオクチルスルホコハク酸エステル塩、ドデシルスルホ酢酸エステル塩、ノニルフェノキシポリエチレングリコールスルホ酢酸エステル塩等のエステルスルホン酸塩が挙げられる。これらの中でも帯電防止性に優れるという観点において、アルキル基の炭素数は8以上、好ましくは10~22、さらに好ましくは12~18の範囲のものである。また、塩としては金属塩が好ましく、特にリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。種類としては、帯電防止性の観点から、アルキルスルホン酸塩が好ましい。
リン酸型アニオン系界面活性剤としては、例えば、ブチルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル塩、ヘキシルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル塩、デシルリン酸エステル、デシルリン酸エステル塩、ラウリルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル塩、テトラデシルリン酸エステル、テトラデシルリン酸エステル塩、ヘキサデシルリン酸エステル、ヘキサデシルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル塩等のアルキルリン酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンブチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンブチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシプロピレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシプロピレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸エステル塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩が挙げられる。
これらの中でも、界面活性剤としての性能、帯電防止性能の観点から、アルキルリン酸エステル塩やポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩が好ましい。
また、アルキルリン酸エステル塩に関しては、アルキル基の炭素数は4以上、好ましくは4~22、さらに好ましくは6~12の範囲のものであり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩に関しては、アルキル基の炭素数は4以上、好ましくは6~22、さらに好ましくは8~18の範囲のものである。また、塩としては金属塩やアミン塩が好ましく、特にリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルキルアミン塩、アルコールアミン塩がより好ましく、ナトリウム塩やモノエタノールアミン塩がさらに好ましい。
硬化膜を形成する硬化性組成物中の帯電防止剤の含有量は、不揮発分(溶媒を除く全成分)に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上、最も好ましくは2.0質量%以上の範囲である。上限は特に制限はなく、100質量%でもよいが、硬化膜の硬度を考慮した場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは8質量%以下の範囲である。上記下限値以上であると帯電防止性に優れる。
硬化性組成物の不揮発分とは、有機溶剤等の溶媒以外の成分の合計質量である。硬化性組成物の不揮発分は、従来公知の方法で測定することができ、例えば、1gの組成物を広げて、100℃で1時間加熱することで有機溶剤を揮発させたときの重さの変化により測定される。
(活性エネルギー線硬化性の化合物)
活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化膜の凹凸構造の形成のしやすさ、耐擦傷性の向上、硬度の向上のために、活性エネルギー線硬化性の化合物を配合していることも好ましい形態である。活性エネルギー線硬化性の化合物としては、例えば、(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、活性エネルギー線硬化性樹脂材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
(メタ)アクリレートとしては、しわ状の凹凸構造を形成しやすいという観点から、単官能あるいは2官能(メタ)アクリレートが好ましい。硬化膜の硬度や耐擦傷性を高くするためには、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが一般的には好ましい。しかし、本発明者の検討によれば、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの種類によっては、しわ状の凹凸構造が形成しにくくなる場合があるので、種類の選定や配合量の低減などの工夫を適宜行うとよい。
2官能の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でもしわ状の凹凸構造の形成のしやすさを考慮すると分岐のない構造であることが好ましく、アルキルジオールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が4~18であるアルキルジオールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレートが挙げられる。これらの中でも、しわ状の凹凸構造の形成のしやすさを考慮するとエチレンオキサイド変性タイプや、3官能(メタ)アクリレートが好ましい。
硬化性組成物には、(メタ)アクリレート以外の活性エネルギー線硬化性の化合物を配合してもよい。このような化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン、ハロゲン化ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物等が挙げられる。
硬化性組成物中に活性エネルギー線硬化性の化合物を配合する場合、その含有量は、不揮発分に対して、好ましくは5~99.99質量%、より好ましくは30~99.9質量%、さらに好ましくは40~95質量%、特に好ましくは50~90質量%、最も好ましくは60~80質量%の範囲である。上記範囲の場合、しわ状の凹凸構造が形成しやすくなり、また硬度にも優れる硬化膜を形成することができる。
(樹脂)
硬化性組成物には基材との密着性の向上などを目的に、各種の樹脂をさらに配合することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂等の従来公知の樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に透明性や密着性に優れるという点において、アクリル樹脂が好ましい。
硬化性組成物中に樹脂を含有する場合、その含有量は、不揮発分に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下の範囲である。この含有量は、少ないほど硬化膜の硬度が高くなる傾向がある。
硬化性組成物に配合する樹脂として、耐擦傷性や硬度の向上を考慮すると炭素-炭素二重結合等の活性エネルギー線硬化性の官能基を有することが好ましい。活性エネルギー線硬化性の官能基としては、(メタ)アクリロイル基や、ビニルエーテル化合物が挙げられる。これらの中でも導入のしやすさや反応性を考慮すると(メタ)アクリロイル基、特にアクリロイル基が好ましい。
本願発明者は、活性エネルギー線硬化性の官能基を有する樹脂を配合すると、耐擦傷性や硬度の向上といった活性エネルギー線硬化性の官能基に起因する特性の向上のみならず、しわ状の凹凸構造がより細かくなることを見出した。すなわち、RSmが小さくなり、Saも小さくなることが判明した。加えて、ヘイズが高くなる場合や、グロスが低くなる場合も見られた。これらの特性は、艶消し性に対して相乗的に効果を発揮することができ、特にディスプレイ用途など視認性が重視される用途においては、重要な特性である。
炭素-炭素二重結合等の活性エネルギー線の官能基を有するアクリル樹脂の製造方法としては、例えば、エポキシ基を有するアクリル樹脂に二重結合及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法1)、カルボキシル基を有するアクリル樹脂に二重結合及びエポキシ基を有する化合物を反応させる方法(方法2)、水酸基を有するアクリル樹脂に二重結合及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法3)、カルボキシル基を有するアクリル樹脂に二重結合及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法4)、イソシアネート基を有するアクリル樹脂に二重結合及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法5)、水酸基を有するアクリル樹脂に二重結合及びイソシアネート基を有する化合物を反応させる方法(方法6)等が挙げられる。また、以上の方法は組み合わせて使用してもよい。なお、以下において、炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合可能なモノマーをビニルモノマーと称することがある。
前記方法1において、エポキシ基を有するアクリル樹脂を得るために用いられるエポキシ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特に反応性の良好性、材料の使用のしやすさを考慮するとグリシジル(メタ)アクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
また、前記方法1における二重結合及びカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水フタル酸の付加物等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸がさらに好ましい。なお、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
前記方法2において、カルボキシル基を有するアクリル樹脂を得るために用いられるカルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、多塩基酸変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
また、前記方法2において、二重結合及びエポキシ基を有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
前記方法3において、水酸基を有するアクリル樹脂を得るために用いられる水酸基を有するビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
また、前記方法3において、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物としては、前記方法1における化合物と同様のものを用いることができる。
前記方法4において、カルボキシル基を有するアクリル樹脂としては、前記方法2と同様のものを用いることができる。
また、前記方法4において、二重結合及び水酸基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
前記方法5において、イソシアネート基を有するアクリル樹脂を得るために用いられるイソシアネート基を有するビニルモノマーとしては、例えば、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、前記方法5において、二重結合及び水酸基を有する化合物としては、例えば、前記方法4において挙げた化合物と同様のものを用いることができる。
前記方法6において、水酸基を有するアクリル樹脂としては、前記方法3における化合物と同様のものを用いることができる。
また、前記方法6において、二重結合及びイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
以上の方法の中でも、反応を制御しやすいので方法1が好ましい。方法1では、二重結合は、エポキシ基を有するアクリル樹脂のエポキシ基と、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物におけるカルボキシル基との間の開環・付加反応により導入される。
前記方法1において、エポキシ基を有するアクリル樹脂中の、エポキシ基を有するモノマーは、エポキシ基を有するアクリル樹脂を構成するモノマー全量のうち、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上の範囲である。また上限としては特に制限はないが、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは40重量%以下の範囲である。当該範囲で使用することで、硬化膜の基材との密着性、耐擦傷性、硬度の向上のみならず、しわ状の凹凸構造を細かくすることができる傾向にあり、RSmの低下、Saの低下や、場合によってはヘイズの増加や、グロスの低下を達成することができる。
また、前記方法1において、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物は、エポキシ基を有するアクリル樹脂中のエポキシ基に対する、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物の割合として、好ましくは10~150モル%であり、より好ましくは30~130モル%、さらに好ましくは50~110モル%である。当該範囲で使用することで、反応を過不足なく進行させ、また原料の残渣を少なくする観点から好ましい。
さらに、上述したエポキシ基を有するアクリル樹脂など、アクリル樹脂は、上述した以外の(メタ)アクリレートやその他のビニルモノマーを共重合したものであってもよい。なお、これらの原料の重合反応は通常、ラジカル重合であり、従来公知の条件で重合することができる。
原料として併用することのできるモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリルアミド、i-ブチル(メタ)アクリルアミド、t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド;スチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン等のスチレン系モノマーが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
アクリル樹脂は、上記の原料ビニルモノマーを用いてラジカル重合反応により製造することができる。ラジカル重合反応は、有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下で実施することが好ましい。
ラジカル重合に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセタート等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤は原料のビニルモノマーの合計100重量部に対して0.01~5重量部の範囲で用いることが好ましい。
また、ラジカル重合の際には、アクリル樹脂の重量平均分子量を制御するなどの目的で、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、チオグリコール酸2-エチルへキシル、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルフィド、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノ-ル、メルカプトエタノール、チオサリチル酸、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプト酢酸、メルカプト琥珀酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系化合物等が挙げられる。これらは、1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の使用量は、原料のビニルモノマーの合計100重量部に対して0.1~25重量部が好ましく、0.5~20重量部がより好ましく、1.0~15重量部がさらに好ましい。
ラジカル重合の反応時間は、1~20時間が好ましく、3~12時間がより好ましい。また、反応温度は、40~120℃が好ましく、50~100℃がより好ましい。
アクリル樹脂に二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等を反応させるには、上記のようにして得られたアクリル樹脂に、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等を添加して、トリフェニルホスフィン、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン等の触媒の1種又は2種以上存在下に通常90~140℃、好ましくは100~120℃の温度で、通常3~9時間程度反応させればよい。ここで、触媒は、原料の(メタ)アクリル酸エステル系重合体と二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等の化合物との合計100重量部に対して0.5~3重量部程度の割合で用いることが好ましい。この反応は、アクリル樹脂を重合反応で製造した後、引き続き行ってもよく、反応系からアクリル樹脂を一旦分取した後、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等の化合物等を添加して行ってもよい。
アクリル樹脂における二重結合量は、好ましくは0.1~10mmol/g、より好ましくは0.2~7.0mmol/g、さらに好ましくは0.5~5.0mmol/g、特に好ましくは0.8~4.0mmol/g、最も好ましくは1.0~3.0mmol/gの範囲である。当該範囲で使用することで、硬化膜の基材との密着性、耐擦傷性、硬度の向上のみならず、しわ状の凹凸構造を細かくすることができる傾向にあり、RSmの低下、Saの低下や、場合によってはヘイズの増加や、グロスの低下を達成することができる。なお、二重結合量とは、アクリル樹脂中の(メタ)アクリロイル基濃度、すなわち(メタ)アクリロイル基の導入量を意味する。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、硬化性組成物の用途に応じて適宜選択されるべきであるが、通常、5000以上であり、好ましくは7000以上であり、より好ましくは9000以上であり、通常200000以下であり、好ましくは100000以下であり、より好ましくは70000以下であり、更に好ましくは50000以下である。上記範囲内であると、表面凹凸を形成し易くなる。なお、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン標準による換算値として決定することができる。具体的な測定条件は後掲の実施例に示す。
硬化性組成物中に樹脂を配合する場合、その含有量は、不揮発分に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは3~60質量%、さらに好ましくは5~50質量%、特に好ましくは10~40質量%の範囲である。上記範囲の場合、硬化膜の基材との密着性、耐擦傷性、硬度の向上のみならず、しわ状の凹凸構造を細かくすることができる傾向にあり、RSmの低下、Saの低下や、場合によってはヘイズの増加や、グロスの低下を達成することができる。
(粒子)
硬化膜のしわ状の凹凸構造による艶消し性をさらに向上させるため、硬化性組成物に粒子を配合することも可能である。粒子は、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。具体例としては、シリカ、中空シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。無機粒子は(メタ)アクリロイル基等の反応性基を有するシランカップリング剤で表面修飾された粒子であってもよい。有機粒子は形状維持のために架橋タイプが好ましく、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン樹脂粒子がより好ましい。これらの粒子は2種以上を併用してもよい。
粒子の平均一次粒子径としては、好ましくは0.01~30μm、より好ましくは0.05~10μm、さらに好ましくは0.1~5μm、特に好ましくは0.5~3μmの範囲である。当該範囲の場合、艶消し性の向上に優れる。
硬化性組成物中に粒子を配合する場合、その含有量は、艶消し性向上の観点から、不揮発分に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは0.1~20質量%、さらに好ましくは0.5~10質量%、特に好ましくは1~8質量%の範囲である。
しかしながら、粒子と帯電防止剤は相性が悪い場合が多く、すなわち塗布液として調合の場合、あるいは塗布時、塗布後において白化、凝集、沈降などの変化がおきやすい。これは粒子および/または帯電防止剤にイオン系の化合物が含有されていることに起因することが主となる。特に、帯電防止性を発現させやすいカチオン系の帯電防止剤を使用する場合には注意が必要で、粒子としてシリカ粒子などを使用する場合は特に懸念事項となる。これらの白化、凝集、沈降などが起きる場合、塗布外観が不均一となってしまう、十分な帯電防止性が出ない、硬化膜の硬化性が悪いなどの不具合が発生しやすい。そのため各々の材料の選択が重要となる。
本発明においては、粒子を用いずに硬化膜の表面に凹凸構造を形成することができ、そのために使用できる材料の幅が広いという特徴も有する。それゆえに、実質的に粒子を含有しない系で設計することが可能である。なお、「実質的に」とは意図的に粒子を含有させないことを意味する。
(光重合開始剤)
硬化性組成物の硬化性促進のために光重合開始剤を配合してもよい。光重合開始剤の分子量は1000以下が好ましい。具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、p,p’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピバロインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1-ジクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホンが挙げられる。これらの光重合開始剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤を配合する場合、その含有量は、硬化性促進や硬化膜の硬度の観点から、不揮発分に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下の範囲である。
(レベリング剤)
硬化膜の外観を向上させるため、硬化性組成物にレベリング剤を配合することができる。レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤が挙げられる。これらのレベリング剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
レベリング剤を配合する場合、その含有量は、硬化膜の外観向上の観点から、不揮発分に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下の範囲である。
(各種添加剤)
硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、チオール基を含有する化合物等の重合促進剤、防汚剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を配合してもよい。
(有機溶剤)
硬化性組成物を基材に塗布する際の作業性を向上させる目的で、硬化性組成物に有機溶剤を必要に応じて配合することもできる。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの有機溶剤のうち、塗布における作業性を向上させやすい点で、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤及びケトン系溶剤が好ましい。
硬化性組成物に有機溶剤を配合する場合、その含有量は、塗布操作における操作性の向上の観点から、不揮発分100質量部に対して、10質量部以上1900質量部以下が好ましく、40質量部以上400質量部以下がより好ましい。
(塗膜の形成)
硬化性組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、硬化性組成物を基材又は物品の面上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥する方法が挙げられる。塗布する方法は特に限定されないが、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート等の公知の方法が挙げられる。
硬化性組成物が有機溶剤を含む場合、活性エネルギー線を照射する前に予め加熱乾燥することが好ましい。予め加熱乾燥することにより、塗膜中の溶媒を効果的に除去することができる。加熱乾燥の乾燥温度は、30℃以上200℃以下が好ましく、40℃以上150℃以下がより好ましい。乾燥時間は、0.01分以上30分以下が好ましく、0.1分以上10分以下がより好ましい。
(活性エネルギー線の照射)
基材又は物品の表面に形成した硬化性組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化膜とし、基材又は物品に硬化膜が積層された積層体を形成する。活性エネルギー線としては、塗膜の表面を効果的に硬化できるエネルギーが高いもの(波長の短いもの)が好ましく、真空紫外線(波長200nm以下の紫外線)がより好ましい。真空紫外線の中でも半値幅が50nm以下であるエキシマ光が最適である。エキシマ光としては、例えば、アルゴンエキシマ光(126nm)、クリプトンエキシマ光(146nm)、キセノンエキシマ光(172nm)、アルゴン・フッ素エキシマ光(193nm)が挙げられる。これらの中でも、使用のしやすさや、硬化膜に効果的な凹凸構造が形成できること、硬化性組成物の硬化性等を考慮すると、キセノンエキシマ光が好適である。
真空紫外線を用いる場合、照射する積算光量は、好ましくは1~3000mJ/cm、より好ましくは3~1000mJ/cm、さらに好ましくは5~500mJ/cm、特に好ましくは10~100mJ/cmの範囲である。また、照度としては好ましくは1~500mW/cm、より好ましくは2~300mW/cm、さらに好ましくは3~100mW/cmの範囲である。
また、真空紫外線照射時の雰囲気として、窒素雰囲気下など酸素が少ない環境で行うことが好ましい。雰囲気中の酸素濃度は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下の範囲である。
真空紫外線照射後、硬化膜を深部まで硬化させるために真空紫外線以外の活性エネルギー線を照射することが好ましい。活性エネルギー線としては紫外線、電子線等が挙げられる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯や低圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV-LEDランプ等から照射される波長200nm以上の紫外線が挙げられる。電子線としては、EB照射機等から照射される電子線が挙げられる。真空紫外線以外の活性エネルギー線は、硬化性組成物の硬化性を考慮すると紫外線がより好ましい。
照射する紫外線の積算光量は、好ましくは1~5000mJ/cm、より好ましくは50~3000mJ/cm、さらに好ましくは100~1000mJ/cm、特に好ましくは200~700mJ/cmの範囲である。また、照度としては好ましくは1~1000mW/cm、より好ましくは50~500mW/cm、さらに好ましくは80~300mW/cmの範囲である。
〔積層体〕
本発明の積層体は、基材からなる層と、硬化性組成物の硬化膜からなる層(凹凸層)を有する。積層体はさらに、基材と硬化膜との間にプライマー層を有していてもよい。また、基材の硬化膜側とは反対側の面上に裏面機能層を有してもよい。本発明の効果を損なわないものであれば、硬化膜の基材とは反対側の面上に表面機能層を有してもよい。
(基材)
基材としては、公知のものを使用でき、例えば、樹脂基材、金属基材、紙基材が挙げられる。これらの中では、加工性の観点から、樹脂基材が好ましい。樹脂基材は、単層構成であっても2層以上の多層構成であってもよく、特に限定されるものではない。樹脂基材を2層以上の多層構成とし、それぞれの層に特徴を持たせ、多機能化を図ることが好ましい。
樹脂基材としては、各種の樹脂フィルム(シート)を使用でき、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルムが挙げられる。
積層体をディスプレイ用途へ展開する場合には、ポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルムが好ましい。これらの中でも、アンチグレア用途においては、ポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルムが好ましく、さらに透明性や成形性、汎用性を考慮すると、ポリエステルフィルムがより好ましい。
ポリエステルフィルムは、無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムが好ましい。中でも、一軸方向に延伸された一軸延伸フィルム、又は二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムが好ましく、力学特性のバランスや平面性に優れる観点から、二軸延伸フィルムがより好ましい。
基材として用いられうるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
ホモポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られたものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコールはそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸が挙げられる。グリコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。ジカルボン酸成分、グリコール成分はそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが例示される。
ポリエステルフィルムとしては、機械的強度や耐熱性を考慮すると、前記の中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートから形成されたフィルムがより好ましく、製造のしやすさ、表面保護フィルム等の用途としての取扱い性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートから形成されたフィルムが特に好ましい。
基材として用いられうるポリ(メタ)アクリレートフィルムを構成するポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレートに基づく単位を有するものであればよく、各種のアクリル樹脂を使用することができる。(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、より炭素数が多いアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリ(メタ)アクリレートは、透明性、加工性、耐薬品性を考慮すると、炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位を主成分とすることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートに基づく単位及びエチル(メタ)アクリレートに基づく単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とすることがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートに基づく単位を主成分とすることが特に好ましい。
ポリ(メタ)アクリレートに、アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートに基づく単位や、その他の単量体に基づく単位を含有させて柔軟性等の特性を付与することも可能である。
ポリ(メタ)アクリレートの総質量に対する炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
基材は、易滑性の付与、各工程での傷発生防止、耐ブロッキング特性の向上を目的として、粒子を含むことができる。
粒子の種類は、目的に応じて適宜選定でき、特に限定されない。具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、基材層がポリエステルフィルムを含む場合、ポリエステル製造工程で触媒等の金属化合物の一部を析出させた析出粒子を用いることもできる。これらの中でも特に少量で効果が出やすいという点で、シリカ粒子や炭酸カルシウム粒子が好ましい。
粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
粒子の平均一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.01~5μm、さらに好ましくは0.01~3μmの範囲である。平均一次粒子径が10μm以下であれば、基材の透明性の低下による不具合が生じにくい。
粒子の平均一次粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定装置により測定される等価球形分布における積算50%(質量基準)の値である。
基材が粒子を含む場合、その含有量は、粒子の平均一次粒子径との兼ね合いもあるので一概にはいえないが、基材の総質量(基材が複数の層で構成される場合は粒子を含有する層の総質量)に対し、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003~3質量%の範囲、さらに好ましくは0.0005~1質量%の範囲である。粒子の含有量が5質量%以下であれば、粒子の脱落や基材の透明性の低下等の不具合が生じにくい。
基材は、必要に応じて、上述の粒子以外の添加剤を含むことができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等の公知の添加剤を用いることができる。
基材がフィルムの場合、その厚みは、製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは2~350μm、より好ましくは5~250μm、さらに好ましくは10~100μmの範囲である。
(プライマー層)
プライマー層は、基材と硬化膜(凹凸層)との間に各種の機能を付与するために適宜設けられる。プライマー層は、一層で単一又は複数の機能を有していてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
好ましい一態様において、プライマー層は密着向上層である。基材と凹凸層との密着性が不十分であると、用途によっては積層体を使用できない場合がある。密着向上層を有することで、基材と凹凸層との密着性が向上し、積層体を種々の用途に使用できる。密着性向上等の観点から、密着向上層には樹脂及び架橋剤由来の化合物のいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。
好ましい他の一態様において、プライマー層は帯電防止層である。プライマー層が帯電防止層であれば、積層体の最表面、特に基材に対して凹凸層が存在する側の最表面に対する、剥離帯電や摩擦帯電による塵埃等の付着を軽減できる。
プライマー層を帯電防止層とするには、例えば、プライマー層に帯電防止剤を含有させればよい。
プライマー層に含まれる樹脂としては、従来公知の樹脂を使用することができる。樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル樹脂(ポリビニルアルコール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等)等が挙げられる。その中でも、密着性能やコーティング性を考慮すると、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
基材が樹脂フィルムである場合、基材との親和性の観点から、プライマー層に含まれる樹脂は樹脂フィルムと同種の樹脂が好ましい。例えば基材がポリエステルフィルムの場合、プライマー層はポリエステル樹脂を含有することが好ましい。基材がポリ(メタ)アクリレートフィルムの場合、プライマー層はアクリル樹脂を含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分が多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸及び、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムが挙げられる。
これらの化合物の中から、それぞれ1つ以上を適宜選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル系モノマーを含む重合性モノマーの重合体である。アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体及び共重合体、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
アクリル樹脂は、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体であってもよい。このような共重合体は、例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。又は、ポリエステルの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、ポリウレタンの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、他のポリマーの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
上記重合性モノマーとしては、特に限定されないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有モノマー及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の水酸基含有モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等のスチレン系化合物、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の珪素含有モノマー;燐含有ビニル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビリデン等のハロゲン化ビニル;ブタジエン等の共役ジエンが挙げられる。
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことであり、典型的には、ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応により合成される。ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよい。ウレタン樹脂を得るために使用されるポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールは、多価アルコールとカーボネート化合物との反応(脱アルコール反応)により得られる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタンが挙げられる。カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートが挙げられる。ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネートが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸又はその酸無水物と、多価アルコールとの反応により得られるもの、ポリカプロラクトン等のラクトン化合物の誘導体ユニットを有するものが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオールが挙げられる。
ポリオールとしては、密着性能を考慮すると、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコール等のグリコール化合物が挙げられる。
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミンが挙げられる。
ウレタン樹脂は、典型的には、分散液又は溶液の形態で使用される。分散液又は溶液の媒体としては、溶剤であってもよいが、水が好ましい。
ウレタン樹脂の水分散液又は水溶液としては、乳化剤を用いた強制乳化型、ウレタン樹脂の構造中に親水性基を導入した自己乳化型又は水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化型が、液の貯蔵安定性や、得られるプライマー層の耐水性、透明性に優れており好ましい。
ウレタン樹脂の構造中に導入されるイオン基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、第4級アンモニウム塩基等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。
カルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等の中和剤で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましい中和剤は、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。中和剤で中和されたカルボキシル基を有するウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、架橋剤による架橋反応点として用いることができる。これにより、コーティング前の液の状態での安定性に優れる上、得られるプライマー層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等を向上させることが可能となる。
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時にカルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート化合物、鎖延長剤等の一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法が挙げられる。特に、カルボキシル基含有ジオールを用い、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の合成に用いるジオールに対してカルボキシル基含有ジオールを共重合させることができる。
カルボキシル基含有ジオールとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸、それらのカルボキシル基が中和剤で中和された塩が挙げられる。
プライマー層をより強固にして密着性等の性能を向上させるため、プライマー層には架橋剤由来の化合物を含有することが好ましい。
架橋剤としては、公知の材料を使用することができ、例えば、メラミン化合物、イソシアネート系化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物、ヒドラジド化合物、アジリジン化合物が挙げられる。それらの中でも、メラミン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物が好ましく、密着性及び耐久性をさらに向上させる観点からは、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物やエポキシ化合物がより好ましく、メラミン化合物、オキサゾリン化合物やイソシアネート系化合物が特に好ましい。これらの架橋剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用することでさらに密着性や耐久性が向上する場合がある。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的又は完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。エーテル化に用いるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノールが挙げられる。メラミン化合物としては、単量体、又は2量体以上の多量体のいずれであってもよく、又はこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。メラミン化合物としては、各種化合物との反応性を考慮すると、水酸基を有するものが好ましい。
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート化合物、又はブロックイソシアネート化合物に代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート化合物;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート化合物が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。上記イソシアネート化合物の中でも、紫外線による黄変を避ける観点から、芳香族イソシアネート化合物よりも脂肪族イソシアネート化合物又は脂環族イソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物としては、上記イソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック剤でブロックされたものが挙げられる。ブロック剤としては、例えば、重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、イソブタノイル酢酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系化合物、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム等のラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ブロックイソシアネート化合物としては、プライマー層が破壊されにくいという観点から、活性メチレン系化合物によりブロックされたイソシアネート化合物が好ましい。
イソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を用いることが好ましい。
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物である。オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましい。オキサゾリン基を含有する重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独又は他のモノマーとの重合によって得られる。
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーとしては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが、工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーとしては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、等のα,β-不飽和芳香族モノマーが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
オキサゾリン化合物1g当たりのオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは1~9mmol/g、さらに好ましくは3~8mmol/g、特に好ましくは4~6mmol/gの範囲である。オキサゾリン基量が上記範囲内であれば、塗膜の耐久性が向上し、密着性の調整がしやすくなる。
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンと水酸基又はアミノ基を有する化合物(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等)との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが挙げられる。ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。グリシジルアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサンが挙げられる。
カルボジイミド系化合物とは、分子内にカルボジイミド構造又はカルボジイミド誘導体構造を1つ以上有する化合物である。カルボジイミド系化合物としては、プライマー層の強度の観点から、分子内にカルボジイミド構造又はカルボジイミド誘導体構造を2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
カルボジイミド系化合物は、公知の方法で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上させるために、本発明の効果を消失させない範囲において、界面活性剤を添加してもよいし、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩等の親水性モノマーを添加してもよい。
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基等の加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。シランカップリング化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有化合物、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基含有化合物、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有化合物、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基含有化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有化合物が挙げられる。
シランカップリング化合物としては、上記化合物の中でも、プライマー層の強度の観点から、エポキシ基含有シランカップリング化合物、ビニル基や(メタ)アクリル基等の二重結合含有シランカップリング化合物、アミノ基含有シランカップリング化合物が好ましい。
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や製膜過程において反応し、プライマー層の性能を向上させる。形成されるプライマー層中には、架橋剤由来の化合物として、架橋剤の未反応物、反応後の化合物、又はそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
プライマー層に含有させる帯電防止剤としては、特に制限はなく、公知の帯電防止剤を使用することが可能であり、例えば、アンモニウム基を有する化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸基を有する化合物、ベタイン化合物、導電性有機高分子が挙げられる。
プライマー層は、ブロッキングや滑り性改良のために粒子を含有していてもよい。
プライマー層は、本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。
プライマー層100質量%中の樹脂の割合は、例えば5質量%以上、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは30~90質量%の範囲である。樹脂の割合が上記範囲内であれば、密着性能、プライマー層の外観がより優れる。
プライマー層100質量%中の架橋剤由来の化合物の割合は、例えば80質量%以下、好ましくは0.5~65質量%、より好ましくは3~50質量%、さらに好ましくは5~40質量%の範囲である。架橋剤由来の化合物の割合が上記範囲内であれば、密着性能、プライマー層の強度がより優れる。
プライマー層の厚みは、プライマー層に使用する材料や発現させる性能にも依存するため一概にはいえないが、好ましくは0.001~10μm、より好ましくは0.01~4μm、さらに好ましくは0.02~1μmの範囲である。
プライマー層は、公知の方法で形成できる。
(表面機能層)
表面機能層は、硬化膜(凹凸層)の基材層とは反対側の面に各種の機能を付与するために設けられる層である。表面機能層としては、例えば、防汚層、帯電防止層、屈折率調整層(反射防止層、低反射層等)、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層が挙げられる。表面機能層は、一層で単一又は複数の機能を有していてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
防汚層は、硬化膜に撥水性や撥油性を付与することで防汚性能を向上させるために設けるものである。防汚層に用いられる材料としては、シリコーン化合物、フッ素化合物、長鎖アルキル基含有化合物等、従来公知のものを用いることができる。これらの中でもより強力な防汚性能の発現には、シリコーン化合物やフッ素化合物が好ましく、また、防汚層が接触する相手を汚染しないという観点からはフッ素化合物や長鎖アルキル基含有化合物が好ましい。
シリコーン化合物としては、分子内にシリコーン構造を有する化合物のことであり、例えば、ジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン等のアルキルシリコーン、また、フェニル基を有するフェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーンが挙げられる。シリコーンには各種の官能基を有するものも使用することができ、例えば、エーテル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、フッ素等のハロゲン基、パーフルオロアルキル基、各種アルキル基や各種芳香族基等の炭化水素基が挙げられる。他の官能基として、ビニル基を有するシリコーンや水素原子が直接ケイ素原子に結合したハイドロゲンシリコーンも一般的で、両者を併用して、付加型(ビニル基とハイドロゲンシランの付加反応による型)のシリコーンとして使用することも可能である。また、アクリロイル基等の二重結合を導入し、当該二重結合部で反応させる方法も好ましい。
また、シリコーン化合物として、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン等の変性シリコーンを使用することも可能である。耐熱性、汚染性を考慮すると、硬化型シリコーン樹脂を使用することが好ましく、硬化型の種類としては、縮合型、付加型、活性エネルギー線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
フッ素化合物は、フッ素原子を含有している化合物である。フッ素化合物としては、有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物が挙げられる。離型性の観点からパーフルオロアルキル基を有する化合物であることが好ましい。さらにフッ素化合物には後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物も使用することができる。
パーフルオロアルキル基を有する化合物とは、例えば、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートやその重合物、パーフルオロアルキルメチルビニルエーテル、2-パーフルオロアルキルエチルビニルエーテル、3-パーフルオロプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニルビニルエーテル等のパーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルやその重合物が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると重合物であることが好ましい。重合物は単一化合物のみでも複数化合物の重合物でもよい。また、防汚性の観点からパーフルオロアルキル基は炭素原子数が3~11であることが好ましい。さらに後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物との重合物であってもよい。
長鎖アルキル化合物とは、炭素原子数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有4級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に防汚性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。前記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基が挙げられる。これらの反応性基を有する化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。これらの中でも防汚性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールが好ましい。
上記の反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物としては、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコールが挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
表面機能層中の防汚性能を発現するための上述した防汚材料の含有量は、使用する材料にも依存するので一概にはいえないが、シリコーン化合物やフッ素化合物の場合は通常0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上の範囲であり、上限は100質量%であってもかまわない。また、長鎖アルキル基含有化合物を使用する場合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上の範囲であり、上限は100質量%であってもかまわない。上記範囲で使用することで効果的な防汚性能を有することができる。
表面機能層として帯電防止層を形成する際に使用する帯電防止剤としては、従来公知の各種の帯電防止剤を使用することができる。また、例えばアンモニウム基を有する化合物にアクリロイル基等の二重結合を導入し、当該二重結合部で反応させる方法も好ましい。
屈折率調整層としては、例えば、高屈折率層、低屈折率層及びそれらの積層物が挙げられる。
高屈折率化を目的とする場合の屈折率調整層の材料としては、従来公知の材料を使用することができ、例えば、ベンゼン構造、ビスフェノールA構造、メラミン構造、フルオレン構造のような芳香族含有化合物、また、芳香族の中でも高屈折率化合物と考えられるナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレン構造のような縮合多環式芳香族化合物、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化セリウム、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の金属酸化物や、チタンキレートやジルコニウムキレート等の金属キレート化合物等の金属含有化合物、硫黄元素を含有する化合物、ハロゲン元素を含有する化合物が挙げられる。
金属酸化物は、使用形態によっては密着性が低下する懸念があるため、粒子の状態で使用することが好ましく、また、その平均一次粒子径は塗布外観等の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下の範囲である。
低屈折率化を目的とする場合の屈折率調整層の材料としては、従来公知の材料を使用することができ、例えば、低屈折率のアクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。また、特にフッ素原子が樹脂の中に組み込まれた化合物、例えば、フッ素樹脂や、主種骨格にフッ素樹脂を含有する化合物、側鎖にパーフルオロアルキル基を含有する化合物が挙げられる。また、無機材料としては、例えば、中空シリカ粒子や、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウム等フッ素原子含有無機化合物や、それらの中空粒子やナノポーラス粒子も挙げられる。
表面機能層の厚みは、硬化膜の凹凸構造の凹部から凸部までの高さの5倍以下であることが好ましく、2倍以下がより好ましい。この倍率は小さいほど硬化膜の艶消し性能が低下しにくくなる傾向がある。表面機能層の厚みは、硬化膜の凹凸構造の凹部から凸部までの高さによるので一概にはいえないが、通常0.001~3μm、好ましくは0.005~2μm、より好ましくは0.01~1μm、さらに好ましくは0.02~0.5μm、特に好ましくは0.03~0.2μmの範囲である。上記範囲で使用することで、表面機能層による機能の発現と、硬化膜の艶消し性の両立が可能となる。
表面機能層は、公知の方法で形成できる。
(裏面機能層)
裏面機能層は、基材層の硬化膜(凹凸層)とは反対側の面に各種の機能を付与するために設けられる層である。裏面機能層としては、例えば、粘着層、帯電防止層、屈折率調整層、アンチブロッキング層が挙げられる。裏面機能層は、一層で単一又は複数の機能を有していてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
粘着層は、積層体を各種の被着体に接合するために設けられる。帯電防止層は、積層体の最表面、特に基材層の凹凸層側とは反対側の最表面における剥離帯電や摩擦帯電によるゴミ等の付着、それによる欠陥等を防止するために設けられる。屈折率調整層は、例えば、積層体の全光線透過率を向上させるために設けられる。アンチブロッキング層は、積層体のブロッキングを軽減するために設けられる。
粘着層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系の公知の粘着剤が挙げられる。それらの中でも汎用性を考慮すると、アクリル系粘着剤が好ましい。
帯電防止層、屈折率調整層を形成する成分は、表面機能層においてそれぞれ説明したものと同様である。
裏面機能層の厚みは、裏面機能層に使用する材料や発現させる性能にも依存するため一概にはいえないが、例えば0.001~30μmである。裏面機能層が粘着層である場合は、好ましくは0.01~30μm、より好ましくは0.1~20μmである。裏面機能層が帯電防止層である場合は、好ましくは0.001~10μm、より好ましくは0.01~5μmである。
裏面機能層は、公知の方法で形成できる。
(表面機能層および裏面機能層の形成)
表面機能層および裏面機能層は、例えば、上述の一連の成分を溶液または溶媒の分散体として、固形分濃度が0.1~80質量%程度を目安に調整した液を所定の面にコーティングし、乾燥、硬化することで形成できる。
コーティングする方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等の従来公知のコーティング方式が挙げられる。
表面機能層および裏面機能層を形成する際の乾燥および硬化条件は特に限定されるものではないが、コーティング液に使用している水等の溶媒の乾燥に関しては、通常50~150℃、好ましくは80~130℃、さらに好ましくは90~120℃の範囲である。乾燥の時間の目安としては、3~200秒、好ましくは5~120秒の範囲である。また、表面機能層および裏面機能層の強度を向上させるため、乾燥後に、通常150~270℃、好ましくは170~230℃、さらに好ましくは180~210℃の範囲の熱処理することが好ましい。熱処理の時間の目安としては、3~200秒、好ましくは5~120秒の範囲である。このような熱処理は、積層体がフィルムである場合に好適である。
(全光線透過率)
積層体は透過性を有することが好ましい。後述する実施例に記載の方法により測定される全光線透過率が、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の範囲であり、高いほど好ましい(上限値は100%である)。
(ヘイズ)
後述する実施例に記載の方法により測定される積層体のヘイズ(haze)は、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上、最も好ましくは20%以上の範囲であり、上限としては、例えば99%である。ヘイズは高いほど艶消し性が良好になる傾向がある。
また、特に各種ディスプレイのアンチグレア用に使用する場合は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上の範囲であり、特に好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上の範囲であり、上限としては、例えば99%である。また用途によっては、高いほど好ましい用途もある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明で用いた測定方法及び評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均一次粒子径(d50:μm)
島津製作所社製、遠心沈降式粒度分布測定装置 SA-CP3型を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均一次粒子径とした。
(3)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)
アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)「HLC-8120」(東ソー社製)を用いて測定した。カラムとしては、TSKgel G5000HXL*GMHXL-L(東ソー社製)を使用した。また、標準ポリスチレンとして、F288/F80/F40/F10/F4/F1/A5000/A1000/A500(東ソー社製)及びスチレンを使用して検量線を作成した。測定は、重合体をテトラヒドロフランに濃度が0.4%になるように溶解した溶液100μlを使用してカラムオーブン温度40℃で行った。重量平均分子量(Mw)は標準ポリスチレン換算にて算出した。
(4)RSm、Sa及び傾斜角(θa)
表面形状計測システム(日立ハイテクサイエンス社製 走査型白色干渉顕微鏡「VS1330」)を用い、硬化膜の表面の177.60μm×236.87μmの領域について、表面形状を光干渉法にて測定し、データ解析を行った。RSm、θaの算出に用いた評価長さは236.87μmである。測定時における対物レンズの倍率は20倍に設定して測定した。なお、本評価にてしわ状の凹凸構造の有無も確認した。
データ解析に用いた処理条件は以下の通りである。
面補正:4次
補間:完全補間
フィルタ:メジアン3×3ピクセル
境界処理:対称拡張してエッジ部を補間
トリミング:無し
(5)全光線透過率・ヘイズ
基材上に硬化膜を形成した積層体を測定対象とした。全光線透過率及びヘイズは、JIS Z8722:2009(透過物体の照射及び受光の幾何条件)及びJIS K7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)JIS K7136:2000(プラスチック-透明材料のヘ-ズの求め方)に準拠し、日本電色工業製ヘーズメーター「SH7000」を用いて測定した。
(6)20°および60°グロス・艶消し性
基材上に硬化膜を形成した積層体を測定対象とした。20°および60°グロス(20°および60°鏡面光沢度)を、JIS Z 8741-1997に準拠し、日本電色工業社製グロスメーター「VG2000」を用いて測定した。グロスの値が低いほど艶消し性に優れる。
(7)表面抵抗値の測定方法
三菱ケミカルアナリテック社製、高抵抗率計:ハイレスタ MCP-HP450を使用し、印過電圧100V、23℃、50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後の表面抵抗率を測定した。表面抵抗値がOVERと出る場合は、測定できないほど表面抵抗値が高いことを示す。
(8)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4:1999 塗料一般試験法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に従って、硬化膜の鉛筆硬度を測定した。
(9)艶消し性
白色で直線状の蛍光灯を灯した室内に、積層体を設置し、蛍光灯と積層体の距離を2.5mに設定して目視外観にて凹凸層側の艶消し性(蛍光灯の映り込み)を以下の評価基準A~Dで評価した。評価A~Cにおいては艶消し性が確認できる判定である。
A:蛍光灯の反射像が強くぼやけており、蛍光灯の輪郭が確認できない。
B:蛍光灯の反射像がぼやけているが、うっすらと輪郭を確認することができる。
C:蛍光灯の反射像が少しぼやけており、輪郭を確認することもできるが、波打った形状で観察され、暗い白色に映る。
D:蛍光灯の反射像が鮮明ではっきりと輪郭を確認することができ、また直線状で白色に映る。
(10)耐ブロッキング性
基材上に硬化膜を形成した積層体の、硬化膜の上に硬化膜を形成していないポリエステルフィルムを配置し、圧力5g/cmとなるように25℃で1週間放置し、その後、硬化膜の上に配置したポリエステルフィルムを剥がして、剥がしたポリエステルフィルムを観察し評価した。評価Aの場合の方が評価Bよりも優れる判定であり、ブロッキングが問題ないことを示す。
A:硬化膜の跡が確認できない。
B:硬化膜の跡が確認できる。
実施例および比較例において使用した材料は、以下の通りである。
(基材)
・ポリエステル(S1):重合触媒として酢酸マグネシウム・四水和物およびテトラブチルチタネートを用いて得られる、極限粘度が0.63dl/gのポリエチレンテレフタレートホモポリマー。
・ポリエステル(S2):重合触媒として酢酸マグネシウム・四水和物、正リン酸および二酸化ゲルマニウムを用いて得られる、極限粘度が0.64dl/gのポリエチレンテレフタレートホモポリマー。
・ポリエステル(S3):平均一次粒子径2μmのシリカ粒子を0.3質量%含有する、ポリエチレンテレフタレートホモポリマー。
(帯電防止剤(A1)の製造)
次の方法でアンモニウム基を含有する(メタ)アクリル系の高分子である帯電防止剤(A1)を製造した。
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を取り付けた反応器に、DQ100:18質量部、SL:7.5質量部、DM:4.5質量部、メチルエチルケトン(MEK):20質量部、イソプロピルアルコール(IPA):50質量部を仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃に昇温した。ここへ、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製 V-65):0.6質量部を添加した後、系内を65 ℃まで昇温し、3時間撹拌した後、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル):0.6質量部を添加して65℃で3時間撹拌した。系内を80℃まで昇温し、2時間撹拌した後、室温まで冷却し、重合体の溶液を得た。この溶液の組成は重合体/MEK/IPA=30/20/50(重量比)であった。重合体の重量平均分子量(Mw)は45200であった。なお、上記原料の略称は次のものを意味する。
DQ-100:共栄社化学社製 ライトエステル(登録商標)DQ-100
SL:三菱ケミカル社製 アクリエステル(登録商標)SL
ラウリルメタクリレートとトリデシルメタクリレートの45:55(重量比)の混合物
DM:三菱ケミカル社製 アクリエステル(登録商標)DM
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートと
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライドによる4級化物の混合物
(活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(C)の製造)
次の方法で活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(C)を製造した。
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(178質量部)、グリシジルメタクリレート(20質量部)、メチルメタクリレート(79質量部)、エチルアクリレート(1.0質量部)、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.6質量部)を加えて、65℃で3時間反応させた。その後、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.3質量部)を加えて3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(48質量部)とp-メトキシフェノール(0.5質量部)を加え100℃まで加熱した。
次に、アクリル酸(10質量部)、及びトリフェニルホスフィン(1.6質量部)を添加して、110℃で6時間反応させることで、二重結合量(アクリロイル基濃度(アクリロイル基の導入量))1.2mmol/gの側鎖にラジカル重合可能な二重結合を有するアクリル樹脂(C)を得た。重量平均分子量(Mw)は48800であった。
(硬化性組成物)
以下に示す各材料を表1に示す量(質量部、不揮発分換算)で混合した。ついで、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGM)とメチルエチルケトン(以下、MEK)の混合溶剤(PGM:MEK(質量比)が7:3)を固形分濃度が30質量%になるように添加し、均一になるまで撹拌して各実施例及び比較例で使用する硬化性組成物(塗布液)を得た。
・帯電防止剤(A1):上記の方法で製造した帯電防止剤(A1)
・帯電防止剤(A2):4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル系の高分子 (三菱ケミカル社製 ニッカタイボー 数平均分子量:28000)
・帯電防止剤(A3):アニオン性界面活性剤 (花王社製 エレクトロストリッパー ME-2)
・(メタ)アクリレート(B1):1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(2官能)
・(メタ)アクリレート(B2):変性エポキシアクリレート(ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL 3708)
・(メタ)アクリレート(B3):ウレタンアクリレート(三菱ケミカル社製 紫光 UV-1700B)
・(メタ)アクリレート(B4):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・(メタ)アクリレート(B5):ペンタエリスリトールテトラアクリレート
・(メタ)アクリレート(B6):メトキシエチルアクリレート
・アクリル樹脂(C):上記の方法で製造した活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(C)
・粒子(D):平均粒子径1.8μmの架橋アクリル粒子(綜研化学社製 MX-180TA)
・光重合開始剤(E):IGM Resins B.V.社製 Omnirad 184
Figure 2022025618000001
(プライマー層形成用組成物)
以下に示すポリエステル樹脂(P1)、ウレタン樹脂(P2)、メラミン化合物(P3)、粒子(P4)をポリエステル樹脂(P1)/ウレタン樹脂(P2)/メラミン化合物(P3)/粒子(P4)(固形分質量比)=60/25/10/5で混合してプライマー層形成用組成物を得た。
・ポリエステル樹脂(P1):下記組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・ウレタン樹脂(P2):下記組成からなるポリエステル系ウレタン樹脂の水分散体
イソホロンジイソシアネート:テレフタル酸:イソフタル酸:エチレングリコール:ジエチレングリコール:ジメチロールプロパン酸=12:19:18:21:25:5(mol%)
・メラミン化合物(P3):ヘキサメトキシメチロールメラミン
・粒子:(P4):平均一次粒子径0.07μmのシリカ粒子
(ポリエステルフィルム基材)
ポリエステル(S1)、(S2)、(S3)をそれぞれ91質量%、3質量%、6質量%の割合で混合した原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(S1)、(S2)をそれぞれ97質量%、3質量%の割合で混合した原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:8:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.1倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、プライマー層形成用組成物を塗布し、テンターに導き、95℃で10秒間乾燥させた後、横方向に120℃で4.2倍延伸し、230℃で10秒間熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、片面に厚み0.1μmのプライマー層を有する厚み(乾燥後)50μmのポリエステルフィルム基材を得た。
[実施例1~12]
ポリエステルフィルムのプライマー層上に、表1に示す塗布液を塗布し、70℃で1分間乾燥し、キセノン(波長172nm)によるエキシマ光(半値幅14nm)を照射量15mJ/cm、照度5mW/cm(ウシオ電機社製 キセノンエキシマ172nm光照射機、ランプユニット型式:SUS05(ランプハウス型式:H0011、点灯電源型式:B0005)、窒素フロー(酸素濃度1%以下))で表1の塗布液からなる塗膜に照射し、さらに空気雰囲気中にて高圧水銀灯で積算光量400mJ/cm、照度200mW/cm(アイグラフィックス社製 高出力UV装置(型式:US5-X1802-X1202)のUVコンベア)にて紫外線を照射し、厚み(乾燥後)が5μmのしわ状の凹凸構造を有する硬化膜を形成し積層体を得た。
得られた積層体は表面抵抗値が低く、艶消し性が良好な結果であった。この積層体の特性を表2に示す。
[比較例1~3]
実施例1において、塗布液の組成を表1に示す組成に変更し、エキシマ光を使用せず、高圧水銀灯による紫外線照射のみで硬化したこと以外は、実施例1と同様にして製造し、硬化膜を有する積層体を得た。得られた積層体を評価したところ、表2に示す通り、凹凸構造は形成されず、艶消し性のないものであった。
なお、エキシマ光を使用しない場合は、硬化が悪くなる場合が見られた。硬化が悪いもの(鉛筆硬度が低いもの)に関しては、高圧水銀灯による紫外線照射量を高くして鉛筆硬度がF以上になるようにしても、しわ状凹凸は形成されず、艶消し性など他物性の変化は見られず改善されなかった。
[比較例4、5]
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更した以外は実施例1と同様にして製造し、硬化膜を有する積層体を得た。得られた積層体の特性は、表2に示す通り、表面抵抗値が高いものであった。
Figure 2022025618000002

Claims (12)

  1. 活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化膜であって、表面にしわ状の凹凸構造を有し、帯電防止剤を含有する硬化膜。
  2. 活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射してなる硬化膜であって、表面にしわ状の凹凸構造を有し、実質的に粒子を含まず、60°グロスが50以下、表面抵抗値が1.0×1013Ω以下である硬化膜。
  3. 前記硬化性組成物は(メタ)アクリレートを含有する、請求項1又は2に記載の硬化膜。
  4. 前記凹凸構造のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1μm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化膜。
  5. 前記凹凸構造のISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1μm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化膜。
  6. 前記凹凸構造の局部傾斜角度の平均値(θa)が2°以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化膜。
  7. 表面の60°グロスが30以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化膜。
  8. 帯電防止剤を含有する硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化膜の製造方法。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化膜が基材上に積層されてなる積層体。
  10. 前記基材がフィルムである、請求項9に記載の積層体。
  11. 基材上に帯電防止剤を含有する硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる、請求項9又は10に記載の積層体の製造方法。
  12. 基材上に実質的に粒子を含まない硬化性組成物を積層し、エキシマ光を照射して硬化させる、請求項9又は10に記載の積層体の製造方法。
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