JP2022024298A - 猫用猫尿臭抑制剤の探索方法 - Google Patents

猫用猫尿臭抑制剤の探索方法 Download PDF

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Abstract

【課題】猫用猫尿臭抑制剤の探索。【解決手段】FcOR2M3及びこれと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及び猫尿臭原因物質を添加すること;該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、測定された応答に基づいて該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、を含む猫用猫尿臭抑制剤の探索方法。【選択図】なし

Description

本発明は、猫用猫尿臭抑制剤の探索方法に関する。
ペット等の排泄物を処理する処理具において、排泄物から生じる臭気が知覚されないようにする目的で、消臭剤を該処理具に配することが行われている。例えば、特許文献1には、特定の化学式で表されるアルミノシリケートを含有するペット用消臭剤が開示されている。また特許文献2には、フェノール性化合物及び/又はメディエータと、それらを酸化することができる酵素とを含む消臭剤を含有する消臭剤含有製品が開示されている。特許文献3には、大環状ケトンを有効成分とするβ-グルクロニダーゼ阻害剤が、尿にβ-グルクロニダーゼが作用することによって生じる揮発性の尿臭成分の生成を抑制し、ヒトや動物の尿臭を抑制することが記載されている。
猫の尿臭(以下、猫尿臭とも言う)は、ヒトや犬の尿臭と比較して臭いことが知られており、猫尿臭に対する消臭効果の向上が求められている。しかし、特許文献1~3に記載されたペット用消臭剤及び消臭剤含有製品やβ-グルクロニダーゼ阻害剤は、猫尿臭に対する消臭効果が十分であるとは言い難い。猫の尿中に含まれる悪臭成分には、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)や3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)などの猫尿に特有のチオール類が含まれている(非特許文献1、2)。したがって、猫尿臭を抑えるためにはこれらのチオール系化合物の臭いの抑制が求められる。
飼い主だけでなく、猫自身が快適に生活するためにも、猫尿臭を制御することは望ましい。猫は概してきれい好きであり、排泄物等により汚れたトイレを嫌う傾向がある。猫がトイレを使用することができない場合、トイレトレーニングができなかったり、トイレ以外の場所に粗相したり、あるいは猫がトイレを我慢して膀胱炎を起こすことがある。猫用トイレの排泄物の臭気を抑えて、猫が快適にトイレを使用できるようにすることが望まれる。
ヒト等の哺乳動物においては、匂いは、鼻腔上部の嗅上皮に存在する嗅神経細胞上の嗅覚受容体に匂い分子が結合し、それに対する受容体の応答が中枢神経系へと伝達されることにより認識されている。一般的に、嗅覚受容体と匂い分子は複数対複数の組み合わせで対応付けられている。すなわち、個々の嗅覚受容体は構造の類似した複数の匂い分子を異なる親和性で受容し、一方で、個々の匂い分子は複数の嗅覚受容体によって受容される。さらに、ある嗅覚受容体を活性化する匂い分子が、別の嗅覚受容体の活性化を阻害するアンタゴニストとして働くことも報告されている。これら複数の嗅覚受容体の応答の組み合わせが、個々の匂いの認識をもたらしている。
したがって、同じ匂い分子が存在する場合でも、同時に他の匂い分子が存在すると、当該他の匂い分子によって受容体応答が阻害され、最終的に認識される匂いが全く異なることがある。このような仕組みを嗅覚受容体のアンタゴニズムと呼ぶ。この受容体アンタゴニズムによる匂いの抑制は、香水や芳香剤等の別の匂いを付加することによる消臭と異なり、特定の悪臭の認識を特異的に失くしてしまうことができ、また芳香剤の匂いによる不快感が生じることもないという利点を有している。
嗅覚受容体アンタゴニズムの考え方に基づき、嗅覚受容体の活性を指標として悪臭抑制物質を同定する方法がこれまでにいくつか開示されている。例えば、特許文献4には、ヘキサン酸やイソ吉草酸の悪臭を抑制する物質を、それらの悪臭物質に特異的に応答する嗅覚受容体の活性を指標として探索することが開示されている。同様に、特許文献5には、スカトール臭を抑制する物質を、特許文献6には、ポリスルフィド化合物の臭いを抑制する物質を、それぞれの悪臭物質に特異的に応答する嗅覚受容体の活性を指標として探索することが開示されている。特許文献7には、嗅覚受容体OR1A1、OR2W1、OR4S2、OR5K1、OR5P3、OR8H1、OR9Q2、OR10G4及びOR10G7が、p-クレゾール、2-メトキシ-4-ビニルフェノール等の尿臭原因物質に応答することが記載されている。非特許文献3には、嗅覚受容体OR2M3が、タマネギに含まれる臭い物質である3-メルカプト-2-メチルペンタン-1-オールに特異的に応答すること、この受容体は、より弱い強度で3-メルカプト-2-メチルブタン-1-オール及び3-メルカプト-2-メチルヘキサン-1-オールに応答するほかは、3-メルカプト-3-メチルヘキサン-1-オール等の他のチオール類や類似物質には応答しなかったことが記載されている。しかしながら、嗅覚受容体アンタゴニズムに基づいて猫尿由来の悪臭、特にチオール臭を抑える技術については、これまで報告がない。
特開2007-229151号公報 特開2005-65750号公報 特開2014-195696号公報 特開2012-050411号公報 特開2012-249614号公報 国際公開公報第2016/204211号 特開2015-211667号公報
Chem Biol,2006,13(10):1071-1079 J Chem Ecol,2018,44(4):364-373 Chemical Senses,2017,42(3):195-210
本発明は、嗅覚受容体の応答を指標として猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制する物質を効率良く探索する方法を提供する。
本発明者は、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)などの、猫尿に含まれ、猫特有の尿臭をもたらすチオール類に応答する猫由来の嗅覚受容体を新たに同定することに成功した。また本発明者は、当該猫由来の嗅覚受容体又はそれと同様の機能を有するポリペプチドの応答を指標とすることにより、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制によって猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制する物質を、評価及び選択することが可能であることを見出した。
したがって本発明は、猫用猫尿臭抑制剤の探索方法であって、以下:
FcOR2M3、及びこれと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及び猫尿臭原因物質を添加すること;
該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、
測定された応答に基づいて該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、
を含む方法を提供する。
本発明によれば、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制により猫尿臭に対する猫の嗅覚を選択的に抑制することができる猫用猫尿臭抑制剤を、効率よく探索することができる。
種々の濃度の猫尿臭原因物質に対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答。A:FcOR2M3、B:FcOR2M3-like、C:HsOR2M3、いずれも左がMMFに対する応答、右がMMBに対する応答。データは平均値±SE(それぞれn=3)。 アセチルセドレンによる、猫尿臭原因物質に対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答の抑制。A:FcOR2M3、B:FcOR2M3-like、C:HsOR2M3、いずれも左がMMFに対する応答、右がMMBに対する応答。横軸はアセチルセドレン濃度、縦軸は応答強度。データは平均値±SE(n=3)。 フロルヒドラルによる、猫尿臭原因物質に対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答の抑制。A:FcOR2M3、B:FcOR2M3-like、C:HsOR2M3、いずれも左がMMFに対する応答、右がMMBに対する応答。横軸はフロルヒドラル濃度、縦軸は応答強度。データは平均値±SE(n=3)。 実施例3で用いた試験シート(猫尿処理具1)の断面図。 アンタゴニスト香料による猫に対する猫尿臭抑制効果。A:猫尿混合物を滴下したシートに対する猫の尿臭嗅ぎ行動の回数(左)及び総時間(右)。Control:未賦香シート、Antagonist:アンタゴニスト賦香シート。エラーバー=SE(n=7)、**:p=0.0082、Paired t-test。B:シートに対する猫の嗜好性。シートに対する猫の到達回数(左)及び滞在時間(右)。Control:未賦香シート、Antagonist:アンタゴニスト賦香シート。エラーバー=SE(n=12)。
本明細書における「嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制」とは、目的の匂い分子と他の匂い分子をともに適用することにより、当該他の匂い分子によって目的の匂い分子に対する受容体応答を阻害し、結果的に個体に認識される匂い(悪臭を含む)を抑制する手段である。嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制は、同様に他の匂い分子を用いる手段であっても、芳香剤等の、目的の匂いを別の強い匂いによって打ち消す手段(いわゆる香りによるマスキング)とは区別される。嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制の一例は、アンタゴニスト等の嗅覚受容体の応答を阻害する物質を使用するケースである。特定の匂いをもたらす匂い分子の受容体にその応答を阻害する物質を適用すれば、当該受容体の当該匂い分子に対する応答が抑制されるため、最終的に個体に知覚される匂いを抑制することができる。
本明細書において、「嗅覚受容体ポリペプチド」とは、嗅覚受容体又はそれと同等な機能を有するポリペプチドをいい、嗅覚受容体と同等な機能を有するポリペプチドとは、嗅覚受容体と同様に、細胞膜上に発現することができ、匂い分子の結合によって活性化し、且つ活性化されると、細胞内のGαsと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで細胞内cAMP量を増加させる機能を有するポリペプチドをいう(Nat.Neurosci.,2004,5:263-278)。
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同一性は、NCBI BLASTプログラム(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を用いて算出される。
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に関する「少なくとも80%の同一性」とは、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
本発明により抑制される「猫尿臭」は、好ましくは排尿直後の(又は新鮮な)猫尿及び排尿後時間が経過した猫尿(好ましくは排尿後72時間以内の猫尿)が有する猫尿特有の尿臭であり、好ましくは、猫尿に含まれるイオウ系化合物(チオール類やスルフィド類)に起因する猫尿臭であり、より好ましくは、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)、及び/又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)に起因する猫尿臭である。MMF及びMMBは、猫尿に含まれるチオール類であり、猫尿の悪臭成分として知られている(非特許文献1、2を参照)。これらチオール類は、猫尿に特有の成分であり、犬やヒトの尿臭と比べて強く且つ独特な臭いを有する猫尿の臭いをもたらす主要成分である(非特許文献1)。一方、ヒトや犬、猫の尿に共通する、排尿から時間が経過した尿から発生する不快臭が存在する。この不快臭は、尿素がウレアーゼによって分解されて生じるアンモニア臭、及び尿中に含まれる菌が持つβ-グルクロニダーゼによる尿中のフェノール類、アミン類などの加水分解により発生するフェノール、p-クレゾール、インドールなどによる臭いを含む。しかし、これらの不快臭は、ヒトや犬の尿からも発生する臭いであり、猫尿を特徴づける臭いではない。またこれらの不快臭は、尿成分の微生物分解により発生した物質を原因とする腐敗臭であるため、排尿から時間が経過した猫尿から発生し、排尿直後の猫尿からは発生しない。一方、上述のチオール類は、猫尿に元々含まれている成分であるため、その臭いは排尿直後から発生し、そのまま時間が経過した猫尿からも発生し続ける。したがって、猫尿臭を効果的に抑えるためには、排尿直後の尿からのMMF、MMBなどのチオール類臭を抑える必要がある。
図1に示すとおり、本発明者は、猫由来の嗅覚受容体FcOR2M3を、猫尿臭原因物質であるMMF及びMMBに対して応答する嗅覚受容体として同定した。該嗅覚受容体は、MMF及びMMBに対して濃度依存的に応答する。さらに本発明者は、FcOR2M3様ポリペプチドであるFcOR2M3-likeもまた、MMF及びMMBに対して濃度依存的に応答することを見出した。したがって、FcOR2M3又はこれと同等の機能を有するポリペプチドの応答を抑制する物質は、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制により、中枢におけるMMF臭及びMMB臭の認識に変化を生じさせ、結果として、猫尿臭を選択的に抑制することができる。
したがって、本発明は、猫用猫尿臭抑制剤の探索方法を提供する。当該方法は、FcOR2M3、及びこれと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及び猫尿臭原因物質を添加すること;該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、測定された応答に基づいて該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、を含む。同定された試験物質は、猫用猫尿臭抑制剤として選択される。
上記本発明の方法において、猫尿臭原因物質としては、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)、又はそれらの混合物が好適に使用される。あるいは、MMF又はMMBを含む猫尿又はその抽出物もまた、本発明の方法において猫尿臭原因物質として使用することができる。猫尿は、排尿から時間が経過すると含まれる微生物の作用によりアンモニアを発生することがあるため、本発明の方法において猫尿臭原因物質として用いる猫尿は、排尿から時間が経過していない(又は新鮮な)猫尿、又は除菌又は抗菌処理されている猫尿であることが好ましい。
本発明の別の実施形態は、猫用MMF臭抑制剤の探索方法である。当該方法は、FcOR2M3、及びこれと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及びMMFを添加すること;該MMFに対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、測定された応答に基づいて該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、を含む。当該方法においては、MMFの代わりに、MMFを含む猫尿又はその抽出物を使用してもよい。同定された試験物質は、猫用MMF臭抑制剤として選択される。
本発明のさらに別の実施形態は、猫用MMB臭抑制剤の探索方法である。当該方法は、FcOR2M3、及びこれと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及びMMBを添加すること;該MMBに対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、測定された応答に基づいて該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、を含む。当該方法においては、MMBの代わりに、MMBを含む猫尿又はその抽出物を使用してもよい。同定された試験物質は、猫用MMB臭抑制剤として選択される。
上記本発明の方法は、in vitro又はex vivoで行われる方法であり得る。本発明の方法においては、上述した猫尿臭原因物質に応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質と該猫尿臭原因物質とが添加される。
本発明の方法に使用される試験物質は、猫用猫尿臭抑制剤として使用することを所望する物質であれば、特に制限されない。試験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的もしくは生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、又は化合物であっても、組成物もしくは混合物であってもよい。
FcOR2M3は、猫嗅細胞で発現している嗅覚受容体である。FcOR2M3は、GenBankにAccession number:XP_011281372として登録されている。FcOR2M3は、配列番号1のヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
FcOR2M3と同等な機能を有するポリペプチドの例としては、FcOR2M3-likeが挙げられる。FcOR2M3-likeは、GenBankにAccession number:XP_003980593として登録されている、推定猫嗅覚受容体である。FcOR2M3-likeは、配列番号3のヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。FcOR2M3-likeは、FcOR2M3に対して86.7%の配列同一性を有する。
したがって、FcOR2M3と同等な機能を有するポリペプチドのさらなる例としては、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つMMF及び/又はMMBに対する応答性を有するポリペプチド、及び、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つMMF及び/又はMMBに対する応答性を有するポリペプチドが挙げられる。
本発明の方法に使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、FcOR2M3、及びこれと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種であればよい。好ましくは、本発明の方法に使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、FcOR2M3、FcOR2M3-like、及びこれらと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種である。より好ましくは、本発明の方法に使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列で示されるFcOR2M3、配列番号4のアミノ酸配列で示されるFcOR2M3-like、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つMMF及び/又はMMBに対する応答性を有するポリペプチド、及び、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つMMF及び/又はMMBに対する応答性を有するポリペプチド、からなる群より選択される少なくとも1種である。さらに好ましくは、本発明の方法に使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列で示されるFcOR2M3、配列番号4のアミノ酸配列で示されるFcOR2M3-like、及び、配列番号2のアミノ酸配列及び配列番号4のアミノ酸配列の両方と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つMMF及び/又はMMBに対する応答性を有するポリペプチド、からなる群より選択される少なくとも1種である。さらに好ましくは、本発明の方法に使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、FcOR2M3及びFcOR2M3-likeからなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の方法において、当該嗅覚受容体ポリペプチドは、当該猫尿臭原因物質に対する応答性を失わない限り、任意の形態で使用され得る。例えば、該嗅覚受容体ポリペプチドは、生体から単離された嗅覚受容器もしくは嗅細胞等の、該嗅覚受容体ポリペプチドを天然に発現する組織や細胞、又はそれらの培養物;該嗅覚受容体ポリペプチドを担持した嗅細胞の膜;該嗅覚受容体ポリペプチドを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞又はその培養物;該嗅覚受容体ポリペプチドを有する該組換え細胞の膜;該嗅覚受容体ポリペプチドを有する人工脂質二重膜、などの形態で使用され得る。これらの形態は全て、本発明で使用される嗅覚受容体ポリペプチドの範囲に含まれる。
好ましい態様においては、嗅覚受容体ポリペプチドとしては、嗅細胞等の当該嗅覚受容体ポリペプチドを天然に発現する細胞、又は該嗅覚受容体ポリペプチドを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞、あるいはそれらの培養物が使用される。該組換え細胞は、該嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞を形質転換することで作製することができる。
好適には、当該嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜発現を促進するために、該嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子とともに、RTP(receptor-transporting protein)をコードする遺伝子を細胞に導入する。好ましくは、RTP1Sをコードする遺伝子を、該嗅覚受容体ポリペプチドをコードする遺伝子とともに細胞に導入する。RTP1Sの例としては、ヒトRTP1Sが挙げられる。ヒトRTP1Sは、GenBankにAccession number:AY562235として登録されており、配列番号5のヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
本発明の方法によれば、当該嗅覚受容体ポリペプチドへの試験物質及び当該猫尿臭原因物質の添加に続いて、該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答が測定される。測定は、嗅覚受容体の応答を測定する方法として当該分野で知られている任意の方法、例えば、細胞内cAMP量測定等によって行えばよい。例えば、嗅覚受容体は、匂い分子によって活性化されると、細胞内のGαsと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させることが知られている(Nat.Neurosci.,2004,5:263-278)。したがって、匂い分子添加後の細胞内cAMP量を指標にすることで、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することができる。cAMP量を測定する方法としては、ELISA法やレポータージーンアッセイ等が挙げられる。嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定する他の方法としては、カルシウムイメージング法が挙げられる。
次いで、測定された当該嗅覚受容体ポリペプチドの応答に基づいて、当該猫尿臭原因物質への応答に対して当該試験物質が及ぼす作用を評価し、該応答を抑制する試験物質を同定する。試験物質による作用の評価は、試験物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチド(試験物質添加群)の該猫尿臭原因物質に対する応答を、対照群における該猫尿臭原因物質に対する応答と比較することによって行うことができる。対照群としては、より低濃度の試験物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチド、試験物質を添加しなかった該嗅覚受容体ポリペプチド(例えば物質非添加、又は対照物質を添加した該嗅覚受容体ポリペプチドや、試験物質を添加する前の該嗅覚受容体ポリペプチド等)、などを挙げることができる。
例えば、当該嗅覚受容体ポリペプチドの応答に対して当該試験物質が及ぼす作用は、より高濃度の試験物質添加群とより低濃度の試験物質添加群との間、試験物質添加群と非添加群との間(例えば、試験物質添加群と物質非添加群との間、試験物質添加群と対照物質添加群との間、又は試験物質添加前後)で、当該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を比較することによって評価することができる。試験物質添加により、又はより高濃度の試験物質の添加により該嗅覚受容体ポリペプチドの応答が抑制される場合、該試験物質を、該嗅覚受容体ポリペプチドの該猫尿臭原因物質に対する応答を抑制する物質として同定することができる。
上記の手順で測定された試験物質添加群における嗅覚受容体ポリペプチドの応答が、対照群と比較して抑制されていれば、当該試験物質を、当該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する物質として同定することができる。例えば、該試験物質添加群における嗅覚受容体ポリペプチドの応答が、対照群と比較して好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは25%以下に抑制されていれば、該試験物質を、該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する物質として同定することができる。あるいは、該試験物質添加群における嗅覚受容体ポリペプチドの応答が、対照群と比較して統計学的に有意に抑制されていれば、該試験物質を、該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する物質として同定することができる。
上記の手順で同定された試験物質は、当該猫尿臭原因物質に対する猫嗅覚受容体の応答を抑制することによって、猫個体による猫尿臭の認識を抑制することができる物質である。したがって、上記手順で同定された試験物質は、猫用猫尿臭抑制剤として選択することができる。さらに必要に応じて、上記の手順で同定された試験物質の猫尿臭抑制作用を、猫を用いた行動実験により評価してもよい。本発明の方法における該行動実験の一実施形態においては、上記手順で選択された試験物質を、猫用猫尿臭抑制剤の候補物質として取得する。次いで、該候補物質の猫に対する猫尿臭抑制作用を行動実験により評価する。例えば、候補物質の存在下及び非存在下での猫尿臭に対する猫の匂い嗅ぎ行動や、候補物質の存在下及び非存在下のトイレに対する猫の嗜好性を評価する。具体的な評価方法としては、例えば、猫尿臭原因物質を含む試験品と、猫尿臭原因物質及び候補物質を含む試験品を準備し、これらの試験品に対する猫の匂い嗅ぎ行動を計測する。候補物質存在下での試験品に対する猫の匂い嗅ぎ行動の時間又は回数が、該候補物質非存在下と比較して65%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下に低下していれば、該候補物質を猫用猫尿臭抑制剤として選択することができる。あるいは、候補物質存在下でのトイレに対する猫の滞在時間が、該候補物質非存在下でのトイレと比較して20%以上、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは50%以上に増加していれば、該候補物質を猫用猫尿臭抑制剤として選択することができる。
本発明の方法によって猫用猫尿臭抑制剤として選択された物質は、猫尿臭原因物質に対する猫の嗅覚受容体の応答を抑制し、それにより、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制によって猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制することができる。
本発明で得られた猫用猫尿臭抑制剤は、猫尿臭に対する猫の嗅覚の抑制のための有効成分として、猫に対して適用され得る。例えば、該抑制剤は、猫が使用する又は猫に適用される組成物又は物品に、猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制するための有効成分として含有され得る。あるいは、該抑制剤は、猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制するための有効成分として、猫が使用する又は猫に適用される組成物又は物品の製造のために使用することができる。本発明で得られた猫用猫尿臭抑制剤の適用例としては、猫用トイレ、ケージ、ハウスもしくはベッドへの該抑制剤の載置や噴霧;猫を飼育する室内や環境への該抑制剤の載置や噴霧;該抑制剤を含有するペット(猫を含む、以下同じ)用のトイレ、又はトイレ用砂やシート;該抑制剤を含有するペット用のシーツや紙おむつ;該抑制剤を含有するペット用品の洗浄剤;該抑制剤を含有する消臭剤; 該抑制剤を含有するペット用の遊具や、被服、アクセサリー、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
猫尿臭原因物質
3-Mercapto-3-methybutyl Formate(MMF)(Sigma aldrich Co.)
3-Mercapto-3-methy-1-butanol(MMB)(東京化成工業(株))
試験物質
アセチルセドレン(メチルセドリルケトン;[1-[(1S,2R,5R,7S)-2,6,6,8-tetramethyltricyclo[5.3.1.01,5]undec-8-en-9-yl]ethanone);(CAS登録番号:32388-55-9;商品名:Vertofix;International Flavors&Fragrances,Inc.)
フロルヒドラル(β-Methyl-3-(1-methylethyl)benzenepropanal);(登録商標(国際登録0534879))(CAS登録番号:125109-85-5)(Givaudan SA)
実施例1 猫尿臭原因物質に応答する嗅覚受容体ポリペプチドの同定
1)嗅覚受容体ポリペプチド遺伝子の合成
GenBankに登録されている配列情報を基に、猫嗅覚受容体ポリペプチドFcOR2M3及びFcOR2M3-likeをコードする遺伝子(それぞれ配列番号1及び3)を合成した。遺伝子の合成には、Thermo Fisher ScientificによるDNA合成サービスを利用した。またGenBankに登録されている配列情報を基に、猫尿臭原因物質に応答するヒト嗅覚受容体HsOR2M3(GenBank Accession number:KP290147、特願2019-005550参照)をコードする遺伝子をhuman genomic DNA female(G1521:Promega)よりクローニングした。各遺伝子をpME18Sベクター上のFlag-Rhoタグ配列の下流に組込んだ。
2)pME18S-ヒトRTP1Sベクターの作製
ヒトRTP1Sをコードする遺伝子(配列番号5)をpME18SベクターのEcoRI、XhoIサイトへ組み込んだ。
3)嗅覚受容体発現細胞の作製
各嗅覚受容体ポリペプチドをそれぞれ発現させたHEK293細胞を作製した。表1に示す組成の反応液を調製しクリーンベンチ内で15分間静置した。マルチウェルプレート(96ウェルプレート、BioCoat)の各ウェルに反応液10μLを添加し、次いでHEK293細胞(2×105細胞/cm2)90μLを添加して細胞を播種した。細胞を37℃、5%CO2を保持したインキュベータ内で24時間培養した。対照として、嗅覚受容体を発現させない細胞(mock)を用意した。
Figure 2022024298000001
4)嗅覚受容体応答のルシフェラーゼアッセイ
HEK293細胞に発現させた嗅覚受容体ポリペプチドは、細胞内在性のGαsと共役しアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。本実施例での猫尿臭原因物質に対する細胞の応答測定には、細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子(fluc2P-CRE-hygro)由来の発光値としてモニターするルシフェラーゼレポータージーンアッセイを用いた。また、CMVプロモータ下流にウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を融合させたもの(hRluc-CMV)を同時に細胞に遺伝子導入し、遺伝子導入効率や細胞数の誤差を補正する内部標準として用いた。ルシフェラーゼの活性測定には、Dual-GloTMluciferase assay system(Promega)を用いた。3)の操作後、嗅覚受容体発現細胞の培養物から培地を取り除き、各ウェルに猫尿臭原因物質を含む培地又は含まない培地を75μLずつ添加した。培地には、300μM CuCl2を含むDMEM溶液を用いた。猫尿臭原因物質としては、MMF(最終濃度0~0.03mM)又はMMB(最終濃度0~0.1mM)を用いた。猫尿臭原因物質添加の4時間後に、製品の操作マニュアルに従って発光を測定し、ホタルルシフェラーゼ由来の発光値をウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値で除した値[fLuc/hRluc]を算出した。猫尿臭原因物質刺激に対する嗅覚受容体の応答性の指標として、下記式に従ってFold increaseを算出した。
Fold increase=X/Y
X:猫尿臭原因物質刺激により誘導されたfLuc/hRluc
Y:猫尿臭原因物質刺激なしの場合のfLuc/hRluc
結果を図1に示す。mockにおいてはMMF及びMMBに対する応答が観察されなかったのに対し、FcOR2M3及びFcOR2M3-likeを発現した細胞においては、MMF及びMMBのいずれに対しても濃度依存的な応答が観察された(図1A及びB)。これらの応答は、ヒトのMMF及びMMB受容体HsOR2M3(本出願人による特願2019-005550)と同様であった(図1C)。以上の結果から、FcOR2M3及びFcOR2M3-likeは、猫尿臭の成分であるMMF及びMMBを認識する猫由来嗅覚受容体ポリペプチドであることが示された。
実施例2 アセチルセドレン及びフロルヒドラルによる嗅覚受容体ポリペプチド応答の抑制活性
アセチルセドレン又はフロルヒドラル存在下でのMMF又はMMBに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定し、応答強度の変化を調べた。実施例1と同様の手順に従って、嗅覚受容体ポリペプチド発現HEK293細胞のルシフェラーゼアッセイを行った。MMFの最終濃度は0.01mM、MMBの最終濃度は0.03mMに調整した。アセチルセドレン及びフロルヒドラルの最終濃度は0~0.3mMの範囲で調整した。MMF又はMMB単独刺激により誘導されたfLuc/hRluc値(X)、MMF又はMMBで刺激しなかった細胞でのfLuc/hRluc値(Y)、及び、MMF又はMMBとアセチルセドレン又はフロルヒドラルとの共刺激により誘導されたfLuc/hRluc値(Z)を求めた。下記式により、アセチルセドレン又はフロルヒドラル存在下での嗅覚受容体ポリペプチドのMMF又はMMBに対する応答強度(Response(%))を求めた。
Response(%)=(Z-Y)/(X-Y)×100
独立した実験を3回行い、各回の実験で得られた応答強度の平均値を求めた。
結果を図2及び3に示す。アセチルセドレン(図2)及びフロルヒドラル(図3)のいずれも、濃度依存的にMMF及びMMBに対するFcOR2M3及びFcOR2M3-likeの応答を抑制した。以上の結果から、これら2つの化合物がFcOR2M3及びFcOR2M3-likeのアンタゴニスト香料であることが確認された。またこれらの化合物は、従来の知見(特願2019-005550)と同様に、MMF及びMMBに対するHsOR2M3の応答を抑制した。
実施例3 アンタゴニスト香料の猫に対する猫尿臭抑制能
アンタゴニスト香料の猫尿臭の抑制能を、猫を用いた行動実験により評価した。
1)試験シートの作製
図4に示す断面構成を有するペット用シート(猫尿処理具1)を製造した。猫尿処理具1は、吸液性材料46と、それに挟まれた高吸収性ポリマー47からなる吸収体部分4を備える。吸収体部分4は長手方向Y(図示なし)の長さが40cmであり、幅方向Xの長さが30cmであり、厚さ方向Zの長さが0.26cmである。吸収体部分4は、表面側及び裏面側からコアラップシート44a及び44bで包まれており、裏面側コアラップシート44bの端部は表面側でコアラップシート44aと重なっている。吸収体部分4は、上部を45×35cm角の表面シート2、下部を45×35cm角の裏面シート3で覆われている。表面シート2と裏面シート3の上下左右の端2.5cmが接着されて、吸収体部分4をシールしている。猫尿処理具1を構成する各部材としては、以下のものを使用した。
表面シート2 :ポリオレフィン系不織布20g/m2
裏面シート3 :ポリエチレン系シート、20g/m2
表面側コアラップシート44a:薄葉紙、16g/m2
裏面側コアラップシート44b:薄葉紙、16g/m2
吸液性材料46 :パルプ、100g/m2
高吸収性ポリマー47 :ポリアクリル酸ナトリウム架橋体の吸水性樹脂、117g/m2
アンタゴニスト賦香シートは、試験シートの表面側のコアラップシート44aの全面に、該コアラップシート44aの質量に対して3.5質量%のアンタゴニスト香料(アセチルセドレン及びフロルヒドラルを質量比98:2で含有)をスプレーして製造した。スプレーされたアンタゴニスト香料は吸収体部分4の表面側、すなわちコアラップシート44aに多くが吸収される。
2)猫の行動試験
試験1 尿臭嗅ぎ行動
1)で製造したアンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートの中央直径5cmの領域に、雄猫(年齢1~10)の滅菌ろ過した尿混合物を5mL滴下した。24頭の猫(年齢3~13、雌雄12頭ずつ)を自由行動下で飼育している環境下に、該猫尿混合物を滴下したアンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートを載置した。猫は猫尿臭を認識すると好奇心をもって嗅ぎ行動を示す。猫による猫尿臭の認識がアンタゴニスト香料により抑制されたならば、その猫の猫尿臭に対する嗅ぎ行動は減少するはずである。本試験では、60分間の試験時間内にいずれかのシートに到達又は匂い嗅ぎ行動を示した猫を解析対象とした。
7頭の猫がいずれかのシートに嗅ぎ行動を示した。それらの猫のシートに対する嗅ぎ行動の回数及び総時間を図5Aに示す。猫の嗅ぎ行動は、主に未賦香シート上の尿臭に向けられ、アンタゴニスト賦香シートに対してはほとんど観察されなかった(図5A左)。アンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートに対する嗅ぎ行動の回数には、統計学的な有意差がみられた(p=0.0082,Paired t-test)。猫が嗅ぎを行った総時間についても、アンタゴニスト賦香シートでは短い傾向がみられた(図5A右)。したがって、アンタゴニスト香料が猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制することが行動試験により示唆された。
試験2 アンタゴニスト賦香シートに対する猫の嗜好性
試験1におけるアンタゴニスト賦香シートでの猫の尿臭嗅ぎ行動の減少が、アンタゴニスト香料による猫尿臭抑制効果のためではない可能性が考えられた。すなわち、シートから発せられたアンタゴニスト香料の匂いが猫にとって不快なものであったために、猫が尿臭を認識してもシートの嗅ぎ行動を控えた可能性が考えられた。本試験では、そのような可能性を検証した。試験1と同じ24頭の猫を自由行動下で飼育している環境下に、アンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートを載置した。30分間の試験時間内にいずれかのシートに到達及び滞在した猫を解析対象とした。
12頭の猫がいずれかのシートに到達した。それらの猫のシートに対する到達回数及び滞在時間を図5Bに示す。猫は、未賦香のシートよりもアンタゴニスト賦香シートに高頻度に到達し、且つ長く滞在した。これらの結果から、アンタゴニスト香料の匂いが猫にとって忌避行動を引き起こすような不快な匂いではないことが示された。したがって、試験1で認められた猫の尿臭嗅ぎ行動の減少は、アンタゴニスト香料による猫尿臭抑制によるものであることが確認された。
以上の結果から、猫嗅覚受容体FcOR2M3又はFcOR2M3-likeのアンタゴニストにより、MMFやMMBなどによる猫尿臭が抑制されることが示された。したがって、これらの猫嗅覚受容体の応答に基づいて、猫尿臭、特に猫尿に含まれるチオール臭に対する猫の嗅覚を抑制する物質を効率よく探索することができることが明らかにされた。
1 猫尿処理具
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体部分
44 コアラップシート
46 吸液性材料
47 高吸収性ポリマー

Claims (7)

  1. 猫用猫尿臭抑制剤の探索方法であって、以下:
    FcOR2M3、及びこれと同等な機能を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種の嗅覚受容体ポリペプチドに、試験物質及び猫尿臭原因物質を添加すること;
    該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定すること;及び、
    測定された応答に基づいて該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する試験物質を同定すること、
    を含む方法。
  2. 前記嗅覚受容体ポリペプチドが、以下:
    配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート及び/又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対する応答性を有するポリペプチド;
    配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;ならびに、
    配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート及び/又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対する応答性を有するポリペプチド、
    からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1記載の方法。
  3. 前記嗅覚受容体ポリペプチドが、該嗅覚受容体ポリペプチドを発現するように遺伝的に操作された組換え細胞上に発現されている、請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
  4. 前記試験物質を添加しなかった前記嗅覚受容体ポリペプチドの前記猫尿臭原因物質に対する応答を測定することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記試験物質を添加した前記嗅覚受容体ポリペプチドの前記猫尿臭原因物質に対する応答が、該試験物質を添加しなかった該嗅覚受容体ポリペプチドの該猫尿臭原因物質に対する応答に対して抑制されていたときに、該試験物質を、該猫尿臭原因物質に対する該嗅覚受容体ポリペプチドの応答を抑制する物質として同定することをさらに含む、請求項4記載の方法。
  6. 前記猫尿臭原因物質が、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール、又はそれらの混合物である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記嗅覚受容体ポリペプチドの応答の測定が、ELISAもしくはレポータージーンアッセイによる細胞内cAMP量測定、又はカルシウムイメージングによる測定である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
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