JP2022018279A - 猫用猫尿臭抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】猫尿臭を抑制する物質の提供。【解決手段】アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用猫尿臭抑制剤。【選択図】なし

Description

本発明は、猫用猫尿臭抑制剤に関する。
ペット等の排泄物を処理する処理具において、排泄物から生じる臭気が知覚されないようにする目的で、消臭剤を該処理具に配することが行われている。例えば、特許文献1には、特定の化学式で表されるアルミノシリケートを含有するペット用消臭剤が開示されている。また特許文献2には、フェノール性化合物及び/又はメディエータと、それらを酸化することができる酵素とを含む消臭剤を含有する消臭剤含有製品が開示されている。特許文献3には、大環状ケトンを有効成分とするβ-グルクロニダーゼ阻害剤が、尿にβ-グルクロニダーゼが作用することによって生じる揮発性の尿臭成分の生成を抑制し、ヒトや動物の尿臭を抑制することが記載されている。
猫の尿臭(以下、猫尿臭とも言う)は、ヒトや犬の尿臭と比較して臭いことが知られており、猫尿臭に対する消臭効果の向上が求められている。しかし、特許文献1~3に記載されたペット用消臭剤及び消臭剤含有製品やβ-グルクロニダーゼ阻害剤は、猫尿臭に対する消臭効果が十分であるとは言い難い。猫の尿中に含まれる悪臭成分には、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)や3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)などの猫尿に特有のチオール類が含まれている(非特許文献1、2)。したがって、猫尿臭を抑えるためにはこれらのチオール系化合物の臭いの抑制が求められる。
飼い主だけでなく、猫自身が快適に生活するためにも、猫尿臭を制御することは望ましい。猫は概してきれい好きであり、排泄物等により汚れたトイレを嫌う傾向がある。猫がトイレを使用することができない場合、トイレトレーニングができなかったり、トイレ以外の場所に粗相したり、あるいは猫がトイレを我慢して膀胱炎を起こすことがある。猫用トイレの排泄物の臭気を抑えて、猫が快適にトイレを使用できるようにすることが望まれる。
ヒト等の哺乳動物においては、匂いは、鼻腔上部の嗅上皮に存在する嗅神経細胞上の嗅覚受容体に匂い分子が結合し、それに対する受容体の応答が中枢神経系へと伝達されることにより認識されている。一般的に、嗅覚受容体と匂い分子は複数対複数の組み合わせで対応付けられている。すなわち、個々の嗅覚受容体は構造の類似した複数の匂い分子を異なる親和性で受容し、一方で、個々の匂い分子は複数の嗅覚受容体によって受容される。さらに、ある嗅覚受容体を活性化する匂い分子が、別の嗅覚受容体の活性化を阻害するアンタゴニストとして働くことも報告されている。これら複数の嗅覚受容体の応答の組み合わせが、個々の匂いの認識をもたらしている。
したがって、同じ匂い分子が存在する場合でも、同時に他の匂い分子が存在すると、当該他の匂い分子によって受容体応答が阻害され、最終的に認識される匂いが全く異なることがある。このような仕組みを嗅覚受容体のアンタゴニズムと呼ぶ。この受容体アンタゴニズムによる匂いの抑制は、香水や芳香剤等の別の匂いを付加することによる消臭と異なり、特定の悪臭の認識を特異的に失くしてしまうことができ、また芳香剤の匂いによる不快感が生じることもないという利点を有している。
嗅覚受容体アンタゴニズムの考え方に基づき、嗅覚受容体の活性を指標として悪臭抑制物質を同定する方法、及び悪臭抑制剤がこれまでにいくつか開示されている。例えば、特許文献4には、ヘキサン酸やイソ吉草酸の悪臭を抑制する物質を、それらの悪臭物質に特異的に応答する嗅覚受容体の活性を指標として探索することが開示されている。同様に、特許文献5には、スカトール臭を抑制する物質を、特許文献6には、ポリスルフィド化合物の臭いを抑制する物質を、それぞれの悪臭物質に特異的に応答する嗅覚受容体の活性を指標として探索することが開示されている。特許文献7には、アセチルセドレン等の香料に、嗅覚受容体アンタゴニズムに基づいてp-クレゾール臭及びこれに起因する尿臭を抑制する作用があることが記載されている。しかしながら、嗅覚受容体アンタゴニズムに基づいて猫尿由来の悪臭、特にチオール臭を抑える技術については、これまで報告がない。
特許文献1には、アルミノシリケートを含有するペット用消臭剤に香料を含有させることでペット臭の消臭効果が高まり、また使用者の快さも向上することが記載されている。特許文献8には、(A)トップノート成分及び/又は(B)ミドルノート成分及び/又は(C)ベースノート成分及び/又は(D)天然香料成分の群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有する環境用芳香消臭組成物により、アミン臭、アンモニア臭、硫黄臭、酸臭、錆臭、煙草臭、動物臭、又はハロゲン臭などの臭気をマスキングすることが記載されている。特許文献9には、エトキシル化アルキルフェノール、トリエチレングリコール、エタノール、リシノール酸、水、及びクエン酸を含有する悪臭中和のための消臭組成物が、汗臭、腋臭、足臭、頭皮臭等の体臭、及びタバコやペット臭等の生活臭を含む様々な悪臭を蓄積した室内の臭気を中和することが記載されており、また当該組成物が香料を含有していてもよいことが記載されている。上記の文献には、該消臭剤又は消臭組成物に含有され得る香料として他種多様な香料が例示されているが、該香料又はそれを含む該消臭剤もしくは消臭組成物が猫尿由来の悪臭、又はその原因物質であるMMFやMMB等の特定のチオール類の臭いを抑制する作用を有することは開示されていない。
特許文献10には、フロルヒドラルを含むアルデヒドが1-ブタンチオールの悪臭を中和する作用を有することが記載され、また、5重量%~100重量%のパルミチン酸メチル、ファルネソール、ベチバーアセテート、ウンデシレンアルデヒド、酢酸テルピニル、メチルイソオイゲノール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、パッチワン、及び場合により、ベンゾフェノン、酸化ジフェニル、メロゾーン、酢酸イソノニル、セドリルメチルエーテル、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される物質を含む香料混合物と、該アルデヒドを含む悪臭低減組成物が、1-ブタンチオールの悪臭を中和する作用を有することが記載されている。特許文献11には、フロルヒドラルを含む揮発性アルデヒドが1-ブタンチオールの悪臭を中和する作用を有することが記載され、また悪臭を低減させるための有効量のベンゾフェノン、パルミチン酸メチル、ファルネソール、ベチバーアセタート、及びウンデシレンアルデヒドを含む香料混合物と、該揮発性アルデヒドとを含む悪臭抑制組成物が、1-ブタンチオールの悪臭を中和し、かつニンニク臭を低減させたことが記載されている。特許文献12には、フロルヒドラルを含む揮発性アルデヒドと、25℃で約0.01~約13の蒸気圧を有する酸触媒とを含む悪臭制御組成物によりブタンチオールを中和し、その臭いを減少させることが記載されている。しかし、上記の文献には、該アルデヒド又はそれを含む組成物が猫尿由来の悪臭、又はその原因物質であるMMFやMMB等の特定のチオール類の臭いを抑制する作用を有することは開示されていない。
特開2007-229151号公報 特開2005-65750号公報 特開2014-195696号公報 特開2012-050411号公報 特開2012-249614号公報 国際公開公報第2016/204211号 特開2017-101224号公報 特開2003-190264号公報 米国特許公開公報第2006/0228250号 特表2015-520619号公報 特表2014-502519号公報 特表2013-513457号公報
Chem Biol,2006,13(10):1071-1079 J Chem Ecol,2018,44(4):364-373
本発明は、猫尿臭又はその原因物質の臭いに対する猫の嗅覚を抑制する物質を提供することに関する。
本発明者は、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)などの、猫尿に含まれ、猫特有の尿臭をもたらすチオール類に応答する猫嗅覚受容体を見出した。さらに本発明者は、該猫嗅覚受容体の応答を抑制する物質が、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制によって、MMF及び/又はMMBの臭い、ならびにこれらに起因する猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制することができることを見出した。
したがって、本発明は、アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用猫尿臭抑制剤を提供する。
また本発明は、アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用の、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの臭いの抑制剤を提供する。
また本発明は、アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を猫に適用することを含む、猫のための猫尿臭の抑制方法を提供する。
また本発明は、アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を猫に適用することを含む、猫のための、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの臭いの抑制方法を提供する。
本発明により提供される猫尿臭抑制剤、及び3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)の臭いの抑制剤は、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制により、MMF臭及び/又はMMB臭、ならびにこれに起因する猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制することができる。したがって、当該抑制剤によれば、トイレ等からの猫尿臭によって生じる猫の不快感を軽減し、猫にとっての生活環境をより快適にすることができる。
種々の濃度の猫尿臭原因物質に対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答。A:FcOR2M3、B:FcOR2M3-like、C:HsOR2M3、いずれも左がMMFに対する応答、右がMMBに対する応答。データは平均値±SE(それぞれn=3)。 アセチルセドレンによる、猫尿臭原因物質に対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答の抑制。A:FcOR2M3、B:FcOR2M3-like、C:HsOR2M3、いずれも左がMMFに対する応答、右がMMBに対する応答。横軸はアセチルセドレン濃度、縦軸は応答強度。データは平均値±SE(n=3)。 フロルヒドラルによる、猫尿臭原因物質に対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答の抑制。A:FcOR2M3、B:FcOR2M3-like、C:HsOR2M3、いずれも左がMMFに対する応答、右がMMBに対する応答。横軸はフロルヒドラル濃度、縦軸は応答強度。データは平均値±SE(n=3)。 実施例3で用いた試験シート(猫尿処理具1)の断面図。 アンタゴニスト香料による猫に対する猫尿臭抑制効果。A:猫尿混合物を滴下したシートに対する猫の尿臭嗅ぎ行動の回数(左)及び総時間(右)。Control:未賦香シート、Antagonist:アンタゴニスト賦香シート。エラーバー=SE(n=7)、**:p=0.0082、Paired t-test。B:シートに対する猫の嗜好性。シートに対する猫の到達回数(左)及び滞在時間(右)。Control:未賦香シート、Antagonist:アンタゴニスト賦香シート。エラーバー=SE(n=12)。
本明細書における「嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制」とは、目的の匂い分子と他の匂い分子をともに適用することにより、当該他の匂い分子によって目的の匂い分子に対する受容体応答を阻害し、結果的に個体に認識される匂い(悪臭を含む)を抑制する手段である。嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制は、同様に他の匂い分子を用いる手段であっても、芳香剤等の、目的の匂いを別の強い匂いによって打ち消す手段(いわゆる香りによるマスキング)とは区別される。嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制の一例は、アンタゴニスト等の嗅覚受容体の応答を阻害する物質を使用するケースである。特定の匂いをもたらす匂い分子の受容体にその応答を阻害する物質を適用すれば、当該受容体の当該匂い分子に対する応答が抑制されるため、最終的に個体に知覚される匂いを抑制することができる。
本明細書において「アンタゴニスト」とは、受容体に結合するが、受容体を活性化しないか、又はアゴニストに対する受容体の応答を抑制する(あるいは受容体活性を阻害する)物質をいう。
本発明により抑制される「猫尿臭」は、好ましくは排尿直後の(又は新鮮な)猫尿及び排尿後時間が経過した猫尿(好ましくは排尿後72時間以内の猫尿)が有する猫尿特有の尿臭であり、好ましくは、猫尿に含まれるイオウ系化合物(チオール類やスルフィド類)に起因する猫尿臭であり、より好ましくは、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)、及び/又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)に起因する猫尿臭である。MMF及びMMBは、猫尿に含まれるチオール類であり、猫尿の悪臭成分として知られている(非特許文献1、2を参照)。これらチオール類は、猫尿に特有の成分であり、犬やヒトの尿臭と比べて強く且つ独特な臭いを有する猫尿の臭いをもたらす主要成分である(非特許文献1)。一方、ヒトや犬、猫の尿に共通する、排尿から時間が経過した尿から発生する不快臭が存在する。この不快臭は、尿素がウレアーゼによって分解されて生じるアンモニア臭、及び尿中に含まれる菌が持つβ-グルクロニダーゼによる尿中のフェノール類、アミン類などの加水分解により発生するフェノール、p-クレゾール、インドールなどによる臭いを含む。しかし、これらの不快臭は、ヒトや犬の尿からも発生する臭いであり、猫尿を特徴づける臭いではない。またこれらの不快臭は、尿成分の微生物分解により発生した物質を原因とする腐敗臭であるため、排尿から時間が経過した猫尿から発生し、排尿直後の猫尿からは発生しない。一方、上述のチオール類は、猫尿に元々含まれている成分であるため、その臭いは排尿直後から発生し、そのまま時間が経過した猫尿からも発生し続ける。したがって、猫尿臭を効果的に抑えるためには、排尿直後の尿からのMMF、MMBなどのチオール類臭を抑える必要がある。
本発明において、「3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート(MMF)の臭い(又はMMF臭)」、及び「3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(MMB)の臭い(又はMMB臭)」とは、それぞれ、MMF及びMMBによりもたらされる臭いであり得る。本発明における「MMF臭」及び「MMB臭」は、代表的には、排尿直後の(又は新鮮な)猫尿から発せられる臭いとして表現され得る。
本明細書において、「嗅覚受容体ポリペプチド」とは、嗅覚受容体又はそれと同等な機能を有するポリペプチドをいい、嗅覚受容体と同等な機能を有するポリペプチドとは、嗅覚受容体と同様に、細胞膜上に発現することができ、匂い分子の結合によって活性化し、且つ活性化されると、細胞内のGαsと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで細胞内cAMP量を増加させる機能を有するポリペプチドをいう(Nat.Neurosci.,2004,5:263-278)。
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同一性は、NCBI BLASTプログラム(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を用いて算出される。
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に関する「少なくとも80%の同一性」とは、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
FcOR2M3は、猫嗅細胞で発現している嗅覚受容体であり、GenBankにAccession number:XP_011281372として登録されている。FcOR2M3は、配列番号1のヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。FcOR2M3-likeは、GenBankにAccession number:XP_003980593として登録されている、推定猫嗅覚受容体である。FcOR2M3-likeは、配列番号3のヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
図1に示すとおり、本発明者は、FcOR2M3及びFcOR2M3-likeが、猫尿臭原因物質であるMMF及びMMBに対して濃度依存的な活性化を示す、MMF及びMMBのそれぞれに対する猫嗅覚受容体であることを見出した。したがって、これらの猫嗅覚受容体の応答を抑制するアンタゴニストを、MMF臭、MMB臭、又は猫尿臭の抑制のために使用することができる。該猫嗅覚受容体アンタゴニストは、嗅覚受容体アンタゴニズムによりMMF又はMMBに対する猫嗅覚受容体の活性を抑制することによって、猫個体によるMMF臭、MMB臭、又は猫尿臭の認識を抑制することができる。
本発明で使用される猫嗅覚受容体アンタゴニストとして、下記の化合物が見出された:
アセチルセドレン(メチルセドリルケトン;[1-[(1S,2R,5R,7S)-2,6,6,8-tetramethyltricyclo[5.3.1.01,5]undec-8-en-9-yl]ethanone:CAS登録番号:32388-55-9);及び
フロルヒドラル(β-Methyl-3-(1-methylethyl)benzenepropanal:CAS登録番号:125109-85-5)。
これらの化合物は、いずれも市販のものを購入することができる。例えば、これらの化合物は、International Flavors&Fragrances,Inc.やGivaudan SAなどから入手することが可能である。あるいは、化学合成によって、該市販品と同一物質又はそれを含む組成物を製造することが可能である。
アセチルセドレン及びフロルヒドラル(以下、これらを本発明の化合物ともいう)は、いずれか単独又は2種の組み合わせで、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制するための有効成分として、猫に対して適用され得る。
また本発明の化合物は、FcOR2M3、FcOR2M3-like又はそれらと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対するアンタゴニストである。FcOR2M3と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドの例としては、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMF及び/又はMMBに対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。FcOR2M3-likeと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドの例としては、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMF及び/又はMMBに対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。
本発明の化合物は、これまで香料素材として知られていたが、FcOR2M3及びFcOR2M3-likeに対するアンタゴニスト作用を有することや、MMF臭、MMB臭、又は猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制する機能があることは知られていなかった。
したがって、一態様において、本発明は、アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用猫尿臭抑制剤を提供する。好ましくは、該猫尿臭は、MMF又はMMBに起因する猫尿臭である。
別の一態様において、本発明は、アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用のMMF臭抑制剤を提供する。
別の一態様において、本発明は、アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用のMMB臭抑制剤を提供する。
本発明のMMF臭、MMB臭又は猫尿臭の抑制剤(以下、まとめて本発明の抑制剤という)の有効成分は、本発明の化合物からなる群より選択される少なくとも1種、例えばいずれか単独又は2種の組み合わせであり得る。本発明の抑制剤は、該本発明の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物から本質的に構成されていてもよいが、該本発明の化合物のいずれか1種以上を有効成分とし、さらにその他の成分を含む組成物であってもよい。例えば、本発明の抑制剤は、上記本発明の化合物のいずれか1種以上に加えて、他の消臭効果を有する成分を、その目的に応じて適宜含有していてもよい。当該消臭効果を有する他の成分としては、ウッドチップ等の木材、シリカ、活性炭などが挙げられる。さらに、本発明の抑制剤は、消臭剤や防臭剤に一般的に添加される任意の成分を含んでいてもよい。
一実施形態において、本発明の抑制剤は、猫が使用する又は猫に適用される組成物又は物品に、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制するための有効成分として含有され得る。あるいは、本発明の抑制剤は、猫が使用する又は猫に適用される組成物又は物品の製造において、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制するための有効成分として使用することができる。本発明の抑制剤を含有する、該猫が使用する又は猫に適用される組成物又は物品の例としては、該抑制剤を含有するペット(猫を含む)用のトイレ、又はトイレ用砂やシート;該抑制剤を含有するペット(猫を含む)用のケージ、ハウスもしくはベッド;該抑制剤を含有するペット(猫を含む)用の遊具や、被服、アクセサリー、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
別の一実施形態において、本発明の抑制剤は、猫が生活する環境、又は該環境にある物品に対して、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭に対する猫の嗅覚の抑制のための有効成分として使用され得る。猫が生活する環境の例としては、猫を飼育する室内や施設などが挙げられ、該環境に含まれる物品の例としては、該猫を飼育する室内や施設に備わる床、壁、及び家具、カーテン、カーペット等のインテリア、及び、上述した猫が使用する又は猫に適用される組成物又は物品、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
別の一実施形態において、本発明の抑制剤は、猫が生活する環境又は該環境にある物品に使用されるMMF臭、MMB臭又は猫尿臭を抑制するための組成物又は物品に対して、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制するための有効成分として含有され得る。あるいは、本発明の抑制剤は、該MMF臭、MMB臭又は猫尿臭を抑制するための組成物又は物品の製造において、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制するための有効成分として使用することができる。該MMF臭、MMB臭又は猫尿臭を抑制するための組成物又は物品の例としては、猫が生活する環境で、又は該環境下で猫が使用する物品に使用される、該抑制剤を含有する消臭剤;該抑制剤を含有するペット(猫を含む)用品の洗浄剤、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の抑制剤における有効成分の含有量は、該抑制剤の形態や用法により異なり得るが、全量中におけるアセチルセドレン及びフロルヒドラルの合計量として、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。アセチルセドレン及びフロルヒドラルを組み合わせて用いる場合、アセチルセドレンとフロルヒドラルの比率は、質量比で1:0.001~1:1が好ましく、1:0.005~1:0.5がより好ましく、1:0.01~1:0.2がさらに好ましい。
さらなる態様として、本発明は、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭と、当該本発明の化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを共存させる工程を含む、猫のためのMMF臭、MMB臭又は猫尿臭の抑制方法を提供する。
本発明の方法の一実施形態においては、MMF臭、MMB臭、又は猫尿臭の存在下で、対象である猫に、当該本発明の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を適用することにより、該MMF臭、MMB臭又は猫尿臭と該アンタゴニストとを共存させる。それによって、MMF及びMMBに対する該対象猫のFcOR2M3の活性化が抑制されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制に基づいて、猫においてMMF臭、MMB臭、又は猫尿臭が抑制される。
本発明の方法の別の一実施形態においては、当該本発明の化合物のいずれか1種以上が、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭の発生する可能性のある環境下に予め適用される。それにより、該環境下でMMF臭、MMB臭又は猫尿臭が発生した場合、該MMF臭、MMB臭又は猫尿臭存在下で対象猫に該本発明の化合物が適用されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによる匂い抑制に基づいて該対象猫におけるMMF臭、MMB臭又は猫尿臭の認識が抑制され、結果としてMMF臭、MMB臭又は猫尿臭は抑制される。MMF臭、MMB臭又は猫尿臭の発生する可能性のある環境の例としては、猫を飼育する室内や施設などが挙げられる。本実施形態における該本発明の化合物の適用の例としては、上述した環境又は該環境に含まれる物品に対して、該本発明の化合物のいずれか1種以上を載置又は噴霧することなどが挙げられる。該環境に含まれる物品の例としては、該猫を飼育する室内や施設に備わる床、壁、及び家具、カーテン、カーペット等のインテリア、などが挙げられる。
本発明の方法の別の一実施形態において、当該本発明の化合物のいずれか1種以上が、MMF臭、MMB臭又は猫尿臭を含有するか、又はその可能性のある組成物又は物品に適用される。これによって、該本発明の化合物が、該組成物又は物品に含まれるMMF又はMMBに対する対象猫のFcOR2M3の活性化を抑制して、該対象猫におけるMMF臭、MMB臭又は猫尿臭の認識を抑制し、結果としてMMF臭、MMB臭又は猫尿臭を抑制する。MMF臭、MMB臭又は猫尿臭を含有するか又はその可能性のある組成物又は物品の例としては、ペット(猫を含む)用のトイレ、ケージ、ハウス又はベッド、ペット(猫を含む)用のトイレで用いる砂やシート、ペット(猫を含む)用のシーツや紙おむつ、ペット(猫を含む)用の遊具や、被服、アクセサリー、などが挙げられる。本実施形態における該本発明の化合物の適用の例としては、該組成物又は物品への該本発明の化合物のいずれか1種以上の噴霧、及び該本発明の化合物のいずれか1種以上を予め含有する該組成物又は物品の提供、などが挙げられる。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
猫尿臭原因物質
3-Mercapto-3-methybutyl Formate(MMF)(Sigma aldrich Co.)
3-Mercapto-3-methy-1-butanol(MMB)(東京化成工業(株))
試験物質
アセチルセドレン(メチルセドリルケトン;[1-[(1S,2R,5R,7S)-2,6,6,8-tetramethyltricyclo[5.3.1.01,5]undec-8-en-9-yl]ethanone);(CAS登録番号:32388-55-9;商品名:Vertofix;International Flavors&Fragrances,Inc.)
フロルヒドラル(β-Methyl-3-(1-methylethyl)benzenepropanal);(登録商標(国際登録0534879))(CAS登録番号:125109-85-5)(Givaudan SA)
実施例1 猫尿臭原因物質に応答する嗅覚受容体ポリペプチドの同定
1)嗅覚受容体ポリペプチド遺伝子の合成
GenBankに登録されている配列情報を基に、猫嗅覚受容体ポリペプチドFcOR2M3及びFcOR2M3-likeをコードする遺伝子(それぞれ配列番号1及び3)を合成した。遺伝子の合成には、Thermo Fisher ScientificによるDNA合成サービスを利用した。またGenBankに登録されている配列情報を基に、猫尿臭原因物質に応答するヒト嗅覚受容体HsOR2M3(GenBank Accession number:KP290147、特願2019-005550参照)をコードする遺伝子をhuman genomic DNA female(G1521:Promega)よりクローニングした。各遺伝子をpME18Sベクター上のFlag-Rhoタグ配列の下流に組込んだ。
2)pME18S-ヒトRTP1Sベクターの作製
ヒトRTP1Sをコードする遺伝子(配列番号5)をpME18SベクターのEcoRI、XhoIサイトへ組み込んだ。
3)嗅覚受容体発現細胞の作製
各嗅覚受容体ポリペプチドをそれぞれ発現させたHEK293細胞を作製した。表1に示す組成の反応液を調製しクリーンベンチ内で15分間静置した。マルチウェルプレート(96ウェルプレート、BioCoat)の各ウェルに反応液10μLを添加し、次いでHEK293細胞(2×105細胞/cm2)90μLを添加して細胞を播種した。細胞を37℃、5%CO2を保持したインキュベータ内で24時間培養した。対照として、嗅覚受容体を発現させない細胞(mock)を用意した。
Figure 2022018279000001
4)嗅覚受容体応答のルシフェラーゼアッセイ
HEK293細胞に発現させた嗅覚受容体ポリペプチドは、細胞内在性のGαsと共役しアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。本実施例での猫尿臭原因物質に対する細胞の応答測定には、細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子(fluc2P-CRE-hygro)由来の発光値としてモニターするルシフェラーゼレポータージーンアッセイを用いた。また、CMVプロモータ下流にウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を融合させたもの(hRluc-CMV)を同時に細胞に遺伝子導入し、遺伝子導入効率や細胞数の誤差を補正する内部標準として用いた。ルシフェラーゼの活性測定には、Dual-GloTMluciferase assay system(Promega)を用いた。3)の操作後、嗅覚受容体発現細胞の培養物から培地を取り除き、各ウェルに猫尿臭原因物質を含む培地又は含まない培地を75μLずつ添加した。培地には、300μM CuCl2を含むDMEM溶液を用いた。猫尿臭原因物質としては、MMF(最終濃度0~0.03mM)又はMMB(最終濃度0~0.1mM)を用いた。猫尿臭原因物質添加の4時間後に、製品の操作マニュアルに従って発光を測定し、ホタルルシフェラーゼ由来の発光値をウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値で除した値[fLuc/hRluc]を算出した。猫尿臭原因物質刺激に対する嗅覚受容体の応答性の指標として、下記式に従ってFold increaseを算出した。
Fold increase=X/Y
X:猫尿臭原因物質刺激により誘導されたfLuc/hRluc
Y:猫尿臭原因物質刺激なしの場合のfLuc/hRluc
結果を図1に示す。mockにおいてはMMF及びMMBに対する応答が観察されなかったのに対し、FcOR2M3及びFcOR2M3-likeを発現した細胞においては、MMF及びMMBのいずれに対しても濃度依存的な応答が観察された(図1A及びB)。これらの応答は、ヒトのMMF及びMMB受容体HsOR2M3(本出願人による特願2019-005550)と同様であった(図1C)。以上の結果から、FcOR2M3及びFcOR2M3-likeは、猫尿臭の成分であるMMF及びMMBを認識する猫由来嗅覚受容体ポリペプチドであることが示された。
実施例2 アセチルセドレン及びフロルヒドラルによる嗅覚受容体ポリペプチド応答の抑制活性
アセチルセドレン又はフロルヒドラル存在下でのMMF又はMMBに対する嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定し、応答強度の変化を調べた。実施例1と同様の手順に従って、嗅覚受容体ポリペプチド発現HEK293細胞のルシフェラーゼアッセイを行った。MMFの最終濃度は0.01mM、MMBの最終濃度は0.03mMに調整した。アセチルセドレン及びフロルヒドラルの最終濃度は0~0.3mMの範囲で調整した。MMF又はMMB単独刺激により誘導されたfLuc/hRluc値(X)、MMF又はMMBで刺激しなかった細胞でのfLuc/hRluc値(Y)、及び、MMF又はMMBとアセチルセドレン又はフロルヒドラルとの共刺激により誘導されたfLuc/hRluc値(Z)を求めた。下記式により、アセチルセドレン又はフロルヒドラル存在下での嗅覚受容体ポリペプチドのMMF又はMMBに対する応答強度(Response(%))を求めた。
Response(%)=(Z-Y)/(X-Y)×100
独立した実験を3回行い、各回の実験で得られた応答強度の平均値を求めた。
結果を図2及び3に示す。アセチルセドレン(図2)及びフロルヒドラル(図3)のいずれも、濃度依存的にMMF及びMMBに対するFcOR2M3及びFcOR2M3-likeの応答を抑制した。以上の結果から、これら2つの化合物がFcOR2M3及びFcOR2M3-likeのアンタゴニスト香料であることが確認された。またこれらの化合物は、従来の知見(特願2019-005550)と同様に、MMF及びMMBに対するHsOR2M3の応答を抑制した。
実施例3 アンタゴニスト香料の猫に対する猫尿臭抑制能
アンタゴニスト香料の猫尿臭の抑制能を、猫を用いた行動実験により評価した。
1)試験シートの作製
図4に示す断面構成を有するペット用シート(猫尿処理具1)を製造した。猫尿処理具1は、吸液性材料46と、それに挟まれた高吸収性ポリマー47からなる吸収体部分4を備える。吸収体部分4は長手方向Y(図示なし)の長さが40cmであり、幅方向Xの長さが30cmであり、厚さ方向Zの長さが0.26cmである。吸収体部分4は、表面側及び裏面側からコアラップシート44a及び44bで包まれており、裏面側コアラップシート44bの端部は表面側でコアラップシート44aと重なっている。吸収体部分4は、上部を45×35cm角の表面シート2、下部を45×35cm角の裏面シート3で覆われている。表面シート2と裏面シート3の上下左右の端2.5cmが接着されて、吸収体部分4をシールしている。猫尿処理具1を構成する各部材としては、以下のものを使用した。
表面シート2 :ポリオレフィン系不織布20g/m2
裏面シート3 :ポリエチレン系シート、20g/m2
表面側コアラップシート44a:薄葉紙、16g/m2
裏面側コアラップシート44b:薄葉紙、16g/m2
吸液性材料46 :パルプ、100g/m2
高吸収性ポリマー47 :ポリアクリル酸ナトリウム架橋体の吸水性樹脂、117g/m2
アンタゴニスト賦香シートは、試験シートの表面側のコアラップシート44aの全面に、該コアラップシート44aの質量に対して3.5質量%のアンタゴニスト香料(アセチルセドレン及びフロルヒドラルを質量比98:2で含有)をスプレーして製造した。スプレーされたアンタゴニスト香料は吸収体部分4の表面側、すなわちコアラップシート44aに多くが吸収される。
2)猫の行動試験
試験1 尿臭嗅ぎ行動
1)で製造したアンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートの中央直径5cmの領域に、雄猫(年齢1~10)の滅菌ろ過した尿混合物を5mL滴下した。24頭の猫(年齢3~13、雌雄12頭ずつ)を自由行動下で飼育している環境下に、該猫尿混合物を滴下したアンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートを載置した。猫は猫尿臭を認識すると好奇心をもって嗅ぎ行動を示す。猫による猫尿臭の認識がアンタゴニスト香料により抑制されたならば、その猫の猫尿臭に対する嗅ぎ行動は減少するはずである。本試験では、60分間の試験時間内にいずれかのシートに到達又は匂い嗅ぎ行動を示した猫を解析対象とした。
7頭の猫がいずれかのシートに嗅ぎ行動を示した。それらの猫のシートに対する嗅ぎ行動の回数及び総時間を図5Aに示す。猫の嗅ぎ行動は、主に未賦香シート上の尿臭に向けられ、アンタゴニスト賦香シートに対してはほとんど観察されなかった(図5A左)。アンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートに対する嗅ぎ行動の回数には、統計学的な有意差がみられた(p=0.0082,Paired t-test)。猫が嗅ぎを行った総時間についても、アンタゴニスト賦香シートでは短い傾向がみられた(図5A右)。したがって、アンタゴニスト香料が猫尿臭に対する猫の嗅覚を抑制することが行動試験により示唆された。
試験2 アンタゴニスト賦香シートに対する猫の嗜好性
試験1におけるアンタゴニスト賦香シートでの猫の尿臭嗅ぎ行動の減少が、アンタゴニスト香料による猫尿臭抑制効果のためではない可能性が考えられた。すなわち、シートから発せられたアンタゴニスト香料の匂いが猫にとって不快なものであったために、猫が尿臭を認識してもシートの嗅ぎ行動を控えた可能性が考えられた。本試験では、そのような可能性を検証した。試験1と同じ24頭の猫を自由行動下で飼育している環境下に、アンタゴニスト賦香シート及び未賦香シートを載置した。30分間の試験時間内にいずれかのシートに到達及び滞在した猫を解析対象とした。
12頭の猫がいずれかのシートに到達した。それらの猫のシートに対する到達回数及び滞在時間を図5Bに示す。猫は、未賦香のシートよりもアンタゴニスト賦香シートに高頻度に到達し、且つ長く滞在した。これらの結果から、アンタゴニスト香料の匂いが猫にとって忌避行動を引き起こすような不快な匂いではないことが示された。したがって、試験1で認められた猫の尿臭嗅ぎ行動の減少は、アンタゴニスト香料による猫尿臭抑制によるものであることが確認された。
以上の結果から、嗅覚受容体FcOR2M3又はFcOR2M3-likeのアンタゴニストであるアセチルセドレン又はフロルヒドラルにより、MMFやMMBなどによる猫尿臭に対する猫の嗅覚が抑制されることが示された。
1 猫尿処理具
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体部分
44 コアラップシート
46 吸液性材料
47 高吸収性ポリマー

Claims (6)

  1. アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用猫尿臭抑制剤。
  2. 前記猫尿臭が3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート及び/又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに起因する臭いである、請求項1記載の猫用猫尿臭抑制剤。
  3. アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、猫用の、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの臭いの抑制剤。
  4. アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を猫に適用することを含む、猫のための猫尿臭の抑制方法。
  5. 前記猫尿臭が3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート及び/又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに起因する臭いである、請求項4記載の方法。
  6. アセチルセドレン及びフロルヒドラルからなる群より選択される少なくとも1種を猫に適用することを含む、猫のための、3-メルカプト-3-メチルブチルフォルメート又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの臭いの抑制方法。
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