例えば、レーダ装置として、パルス波を繰り返し発信するパルスレーダ装置が知られている。広角範囲において車両/歩行者を検知する広角パルスレーダの受信信号は、近距離に存在するターゲット(例えば車両)と、遠距離に存在するターゲット(例えば歩行者)とからの複数の反射波が混合された信号となる。このため、(1)レーダ送信部では、低いレンジサイドローブとなる自己相関特性(以下、低レンジサイドローブ特性と呼ぶ)を有するパルス波又はパルス変調波を送信する構成が検討され、(2)レーダ受信部では、広い受信ダイナミックレンジを有する構成が検討されている。
広角レーダ装置の構成として、以下の2つの構成が挙げられる。
一つ目の構成は、パルス波又は変調波を狭角(数度程度のビーム幅)の指向性ビームを用いて、機械的又は電子的に走査してレーダ波を送信し、狭角の指向性ビームを用いて反射波を受信する構成である。この構成では、高分解能を得るためには走査回数が増加するので、高速移動するターゲットに対する追従性が劣化する。
二つ目の構成は、受信ブランチにおいて、複数のアンテナ(複数のアンテナ素子)で構成されるアレーアンテナによって反射波を受信し、アンテナ素子間隔に対する受信位相差に基づく信号処理アルゴリズムによって反射波の到来角を推定する手法(Direction of Arrival (DOA) estimation)を用いる構成である。この構成では、送信ブランチでの送信ビームの走査間隔を間引いたとしても、受信ブランチにおいて到来角を推定できるので、走査時間の短縮化を図ることができ、1つ目の構成と比較して追従性が向上する。例えば、到来方向推定方法には、行列演算に基づくフーリエ変換、逆行列演算に基づくCapon法及びLP(Linear Prediction)法、又は、固有値演算に基づくMUSIC(Multiple Signal Classification)及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)が挙げられる。
また、受信ブランチに加え、送信ブランチでも複数のアンテナ素子を用いてビーム走査を行うMIMOレーダは、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重した信号を複数の送信アンテナ素子から送信し、周辺物体で反射された信号を複数の受信アンテナ素子で受信し、受信信号の各々から、多重された送信信号を分離して受信する。
さらに、MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおけるアンテナ素子の配置を工夫することにより、最大で送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積に等しい仮想的な受信アレーアンテナ(仮想受信アレー)を構成できる。これにより、送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積で示される伝搬路応答を得ることができ、送受信アンテナ素子間隔を適切に配置することで、少ない素子数によってアレーアンテナの実効的な開口長を仮想的に拡大し、角度分解能の向上を図ることができる。
ここで、MIMOレーダにおけるアンテナ素子構成として、1つのアンテナ素子を用いる構成(以下、単体アンテナと呼ぶ)と、複数のアンテナ素子をサブアレー化した構成(以下、サブアレーと呼ぶ)とに大別される。
単体アンテナを用いた場合は、サブアレーを用いた場合と比較して、広い指向性を有する特性となるが、アンテナ利得は相対的に低くなる。そのため、反射波信号の受信SNR(Signal to Noise Ratio)を向上させるためには、受信信号処理において、例えば、より多くの加算処理を行うか、或いは、単体アンテナを複数用いてアンテナを構成することになる。
一方、サブアレーを用いた場合は、単体アンテナを用いた場合と比較して、1つのサブアレーには、複数のアンテナ素子が含まれるため、アンテナとしての物理的なサイズが大きくなり、メインビーム方向のアンテナ利得を高めることができる。具体的には、サブアレーの物理的なサイズは、送信信号の無線周波数(キャリア周波数)における波長程度以上となる。
また、MIMOレーダは垂直方向又は水平方向の一次元走査を行う場合以外に、垂直方向及び水平方向の二次元におけるビーム走査を行う場合にも適用可能である(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。例えば、車載用途などに用いられる長距離用の二次元ビーム走査が可能なMIMOレーダにおいては、水平方向に一次元にビーム走査を行うMIMOレーダと同等の水平方向の高い分解能に加えて、垂直方向の角度推定能力が求められる。
しかしながら、MIMOレーダに対して小型化かつ低コスト化を図るために送受信ブランチのアンテナ素子数が制約を受ける場合がある。例えば、送信4アンテナ素子程度/受信4アンテナ素子程度といった制約がある場合、MIMOレーダによる面的な仮想受信アレーにおいて垂直方向及び水平方向の開口長が制約を受ける。開口長の制約により、水平方向及び水平方向の分解能が低下する。
例えば、車載用途などに用いられる長距離用の二次元ビーム走査可能なMIMOレーダにおいては、水平方向に一次元にビーム走査を行うMIMOレーダと同等の水平方向の高い分解能に加えて、垂直方向の角度推定能力が求められる。しかしながら、アンテナ素子数の制約がある場合は、一次元ビーム走査を行うMIMOレーダに比べて開口長が制約を受ける。開口長の制約により、一次元ビーム走査を行うMIMOレーダに比べて水平方向の分解能が低下する。
また、誤検出の確率が低減されたMIMOレーダを実現するために、仮想受信アレーは形成するビームのサイドローブが低くなるような構成が望ましい。
(実施の形態1)
本開示に係る一態様は、一次元ビーム走査するMIMOレーダに比べて水平方向の角度分離性能の劣化を抑制し、垂直方向の角度推定能力が追加された三次元測位可能なMIMOレーダを構成することができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
複数の送信アンテナ(送信サブアレー)及び複数の受信アンテナ(受信サブアレー)の配置の説明に先立ち、レーダ装置の構成について説明する。具体的には、レーダ装置の送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナを時分割で切り替えて、時分割多重された異なるレーダ送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行うMIMOレーダの構成について説明する。
なお、レーダ装置の構成は、時分割多重された異なるレーダ送信信号を送出するものに限定されない。例えば、レーダ送信信号は、時分割多重される代わりに、周波数分割多重又は符号分割多重されてもよい。即ち、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから周波数分割多重された異なるレーダ送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成でもよい。また、同様に、レーダ装置の構成は、送信ブランチで複数の送信アンテナから符号分割多重されたレーダ送信信号を送出し、受信ブランチで、受信処理を行う構成でもよい。
なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示は以下の実施の形態により限定されるものではない。
[レーダ装置10の構成]
図1は、本開示に係るレーダ装置10の構成の一例を示すブロック図である。
レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチまたはレーダ送信回路とも称する)100と、レーダ受信部(受信ブランチまたはレーダ受信回路とも称する)200と、基準信号生成部(基準信号生成回路)300と、制御部(制御回路)400と、を有する。
レーダ送信部100は、基準信号生成部300から受け取る基準信号に基づいて高周波(無線周波数:Radio Frequency)のレーダ信号(レーダ送信信号)を生成する。そして、レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ素子#1~#Ntを時分割で切り替えて、レーダ送信信号を送信する。
レーダ受信部200は、ターゲット(図示せず)において反射されたレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ素子#1~#Naを用いて受信する。レーダ受信部200は、基準信号生成部300から受け取る基準信号を用いて、下記の処理動作を行うことで、レーダ送信部100と同期した処理を行う。レーダ受信部200は、各受信アンテナ素子#1~#Naにおいて受信した反射波信号を信号処理し、少なくともターゲットの有無検出又は方向推定を行う。なお、ターゲットは、レーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(2輪、3輪、及び4輪を含む)又は人を含む。
基準信号生成部300は、レーダ送信部100及びレーダ受信部200のそれぞれに接続されている。基準信号生成部300は、基準信号をレーダ送信部100及びレーダ受信部200に供給し、レーダ送信部100及びレーダ受信部200の処理を同期させる。
制御部400は、レーダ送信部100が生成するパルス符号、レーダ送信部100による可変ビーム制御において設定する位相、及び、レーダ送信部100が信号を増幅するレベルを、レーダ送信周期Tr毎に設定する。そして、制御部400は、パルス符号を指示する制御信号(符号制御信号)、位相を指示する制御信号(位相制御信号)、及び、送信信号の増幅レベルを指示する制御信号(送信制御信号)を、レーダ送信部100に出力する。また、制御部400は、レーダ送信部100における送信サブアレー#1~#Nの切替(レーダ送信信号の出力切替)タイミングを指示する出力切替信号をレーダ受信部200に出力する。
[レーダ送信部100の構成]
図2は、本開示に係るレーダ送信部100の構成の一例を示すブロック図である。
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部(レーダ送信信号生成回路)101と、送信周波数変換部(送信周波数変換回路)105と、電力分配器(電力分配回路)106と、送信増幅部(送信増幅回路)107と、送信アレーアンテナ108と、を有する。
なお、以下では、符号化パルスレーダを用いたレーダ送信部100の構成を一例として示すが、これに限定されず、例えば、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダの周波数変調を用いたレーダ送信信号に対しても同様に適用可能である。
レーダ送信信号生成部101は、基準信号生成部300から受け取る基準信号を所定数倍したタイミングクロック(クロック信号)を生成し、生成したタイミングクロックに基づいてレーダ送信信号を生成する。そして、レーダ送信信号生成部101は、制御部100からの所定のレーダ送信周期Tr毎の符号制御信号に基づいて、レーダ送信周期Trにてレーダ送信信号を繰り返し出力する。
レーダ送信信号は、y(kt,M)=I(kT,M)+jQ(kt,M)で表される。ここで、jは虚数単位を表し、kは離散時間を表し、Mはレーダ送信周期の序数を表す。また、I(kT,M)及びQ(kT,M)は、第M番目のレーダ送信周期における離散時間kTにおけるレーダ送信信号(kT,M)の同相成分(In-Phase成分)、及び直交成分(Quadrature成分)をそれぞれ表す。
レーダ送信信号生成部101は、符号生成部(符号生成回路)102と、変調部(変調回路)103と、LPF(Low Pass Filter)104とを含む。
符号生成部102は、レーダ送信周期Tr毎の符号制御信号に基づいて、第M番目のレーダ送信周期における符号長Lの符号系列の符号an(M)(n=1,…,L)(パルス符号)を生成する。符号生成部102において生成される符号an(M)には、低レンジサイドローブ特性が得られるパルス符号が用いられる。符号系列としては、例えば、Barer符号、M系列符号、Gold符号が挙げられる。なお、符号生成部102で生成される符号an(M)は、同一の符号であっても、異なる符号が含まれる符号であってもよい。
変調部103は、符号生成部102から出力される符号an(M)に対してパルス変調(振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying)、パルスシフトキーイング)又は位相変調(PSK:Phase Shift Keying)を行い、変調信号をLPF104へ出力する。
LPF104は、変調部103から出力される変調信号のうち、所定の制限帯域以下の信号成分を、ベースバンドのレーダ送信信号として送信周波数変換部105へ出力する。
送信周波数変換部105は、LPF104から出力されるベースバンドのレーダ送信信号を,所定のキャリア周波数(RF:Radio Frequency)帯でのレーダ送信信号に周波数変換する。
電力分配器106は、送信周波数変換部105から出力される無線周波数帯のレーダ送信信号をNt個に分配し、各送信増幅部107へ出力する。
送信増幅部107(107-1~107-Nt)は、制御部400から指示されるレーダ送信周期Tr毎の送信制御信号に基づいて、出力されるレーダ送信信号を所定レベルに増幅して出力するか、或いは送信出力をオフとする。
送信アレーアンテナ108は、Nt個の送信アンテナ素子#1~#Nt(108-1~108-Nt)を有する。各送信アンテナ素子#1~#Ntは、それぞれ、個別の送信増幅部107-1~107-Ntに接続され、個別の送信増幅部107-1~107-Ntから出力されるレーダ送信信号を送信する。
図3は、本開示に係るレーダ送信信号の一例を示す図である。
各レーダ送信周期Trのうち、符号送信区間Twの間にパルス符号系列が送信され、残りの区間(Tr-Tw)は無信号区間となる。符号送信区間Tw内には符号長Lパルス符号系列が含まれる。1つの符号には、L個のサブパルスが含まれる。また、1つのサブパルスあたり、No個のサンプルを用いたパルス変調が施されることにより、各符号送信区間Tw内には、Nr(=No×L)個のサンプルが含まれる。また、レーダ送信周期Trにおける無信号区間(Tr-Tw)には、Nu個のサンプルが含まれる。
図4は、本開示に係る制御部400による各送信アンテナ素子#1~#Ntの時分割切替動作の一例を示す。
図4において、制御部400は、レーダ送信周期Tr毎に、送信アンテナ素子#1から送信アンテナ素子#Ntまで順に、各送信アンテナ素子からの出力を切り替える指示をする制御信号(符号制御信号、送信制御信号)をレーダ送信部100へ出力する。また、制御部400は、各送信サブアレーの送信出力期間を(Tr×Nb)とし、全ての送信サブアレーの送信出力期間(Tr×Np)=(Tr×Nb×Nt)の切替動作を、Nc回繰り返す制御を行う。また、後述するレーダ受信部200は、制御部400の切替動作に基づいて測位処理を行う。
例えば、送信アンテナ素子#1からレーダ送信信号を送信する場合、制御部400は、送信アンテナ素子#1に接続された送信増幅部107-1に対して、入力信号を所定レベルに増幅するように指示する送信制御信号を出力し、送信アンテナ素子#1に接続されていない送信増幅部107-2~107-Ntに対して、送信出力をオフとするように指示する送信制御信号を出力する。
同様に、送信アンテナ素子#2からレーダ送信信号を送信する場合、制御部400は、送信アンテナ素子#2に接続された送信増幅部107-2に対して、入力信号を所定レベルに増幅するように指示する送信制御信号を出力し、送信アンテナ素子#2に接続されていない送信増幅部107に対して、送信出力をオフとするように指示する送信制御信号を出力する。
以降、制御部400は、送信アンテナ素子#3~#Ntに対して同様の制御を順に行う。以上、制御部400によるレーダ送信信号の出力切替動作について説明した。
[レーダ送信部100の他の構成]
図5は、本開示に係るレーダ送信信号生成部101aの他の構成の一例を示すブロック図である。
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101の代わりに、図5に示すレーダ送信信号生成部101aを備えてもよい。レーダ送信信号生成部101aは、図2に示される符号生成部102、変調部103及びLPF104を有さず、代わりに図5に示される符号記憶部(符号記憶回路)111及びDA変換部(DA変換回路)112を備える。
符号記憶部111は、図2に示される符号生成部102において生成される符号系列を予め記憶し、記憶している符号系列を巡回的に順次読み出す。
DA変換部112は、符号記憶部111から出力される符号系列(デジタル信号)をアナログのベースバンド信号に変換する。
[レーダ受信部200の構成]
図6は、実施の形態1及び2に係るレーダ受信部200の構成の一例を示すブロック図である。
レーダ受信部200は、受信アレーアンテナ202と、Na個のアンテナ系統処理部(アンテナ系統処理回路)201(201-1~201-Na)と、方向推定部(方向推定回路)214と、を有する。
受信アレーアンテナ202は、Na個の受信アンテナ素子#1~#Na(202-1~202-Na)を有する。Na個の受信アンテナ素子202-1~202-Naは、測定ターゲット(物体)を含む反射物体に反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、それぞれ、対応するアンテナ系統処理部201-1~201-Naへ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201(201-1~201-Na)は、受信無線部(受信無線回路)203と、信号処理部(信号処理回路)207とを有する。受信無線部203及び信号処理部207は、基準信号生成部300から受け取る基準信号を所定数倍したタイミングクロック(基準クロック信号)を生成し、生成したタイミングクロックに基づいて動作することにより、レーダ送信部100との同期を確保する。
受信無線部203は、増幅部(増幅回路)204と、周波数変換器(周波数変換回路)205と、直交検波器(直交検波回路)206と、を有する。具体的には、第z番目の受信無線部203において、増幅器204は、第z番目の受信アンテナ素子#zから受け取る受信信号を所定レベルに増幅する。ここで、z=1,…,Nrである。次いで、周波数変換器205は、高周波帯域の受信信号をベースバンド帯域に周波数変換する。次いで、直交検波器206は、ベースバンド帯域の受信信号を、I信号及びQ信号を含むベースバンド帯域の受信信号に変換する。
各信号処理部207は、第1のAD変換部(AD変換回路)208、第2のAD変換部(AD変換回路)209と、相関演算部(相関演算回路)210と、加算部(加算回路)211と、出力切替部(出力切替回路)212と、Nt個のドップラ解析部(ドップラ解析回路)213-1~213-Ntと、を有する。
第1のAD変換部208は、直交検波器206からI信号を入力する。第1のAD変換部208は、I信号を含むベースバンド信号に対して、離散時間でのサンプリングを行うことにより、I信号をデジタルデータに変換する。
第2のAD変換部209は、直交検波器206からQ信号を入力する。第2のAD変換部209は、Q信号を含むベースバンド信号に対して、離散時間でのサンプリングを行うことにより、Q信号をデジタルデータに変換する。
ここで、第1のAD変換部208及び第2のAD変換部209のサンプリングでは、レーダ送信信号における1つのサブパルスの時間Tp(=Tw/L)あたり、Ns個の離散サンプルが行われる。すなわち、1サブパルスあたりのオーバーサンプル数はNsとなる。
図7は、本開示に係るレーダ装置10のレーダ送信信号の送信タイミング、及び、測定範囲の一例を示す。
以下の説明では、I信号Iz(k,M)及びQ信号Qz(k,M)を用いて、第1のAD変換部208及び第2のAD変換部209の出力としての第M番目のレーダ送信周期Tr[M]の離散時間kにおけるベースバンドの受信信号を複素数信号xz(k,M)=Iz(k,M)+jQz(k,M)と表す。また、以下では、離散時間kは、レーダ送信周期(Tr)の開始するタイミングを基準(k=1)とし、信号処理部207は、レーダ送信周期Trが終了する前までのサンプル点であるk=(Nr+Nu)Ns/Noまで周期的に計測を行う。すなわち、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noとなる。ここでjは虚数単位である。
第z番目の信号処理部207において、相関演算部210は、レーダ送信周期Tr毎に、第1のAD変換部208及び第2のAD変換部209から受け取る離散サンプル値x
z(k,M)と、レーダ送信部100において送信される符号長Lのパルス符号a
n(M)(ただし、z=1,…,Na、n=1,…,L)との相関演算を行う。例えば、相関演算部210は、離散サンプル値x
z(k,M)と、パルス符号a
n(M)とのスライディング相関演算を行う。例えば、第M番目のレーダ送信周期Tr[M]における離散時間kのスライディング相関演算の相関演算値AC
z(k,M)は、式(1)に基づき算出される。
式(1)において、アスタリスク(*)は複素共役演算子を表す。
相関演算部210は、例えば、式(1)に従って、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noの期間に亘って相関演算を行う。
なお、相関演算部210は、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noに対して相関演算を行う場合に限定されず、レーダ装置10の測定対象となるターゲットの存在範囲に応じて、測定レンジ(すなわち、kの範囲)を限定してもよい。限定することにより、相関演算部210における演算処理量が低減される。例えば、相関演算部210は、k=Ns(L+1),…,(Nr+Nu)Ns/No-NsLに測定レンジを限定してもよい。この場合、図7に示されるように、レーダ装置10は、符号送信区間Twに相当する時間区間では測定を行わない。
上述の構成により、レーダ送信信号がレーダ受信部200に直接的に回り込むような場合でも、レーダ送信信号が回り込む期間(少なくともτ1未満の期間)では相関演算部210による処理が行われない。したがって、レーダ装置10は、回り込みの影響を排除して測定できる。また、測定レンジ(kの範囲)を限定する場合、以下で説明する加算部211、出力切替部212、ドップラ解析部213、及び方向推定部214の処理に対しても、同様に測定レンジ(kの範囲)を限定した処理を適用すればよい。これにより、各構成部での処理量を削減でき、レーダ受信部200における消費電力を低減できる。
第z番目の信号処理部207において、加算部211は、制御部400から出力される出力切替信号に基づいて、第ND番目の送信アンテナ素子#NDから連続的に送信されるレーダ送信周期Trの複数回Nbの期間(Tr×Nb)を単位として、離散時間k毎に相関演算部210から受け取る相関演算値ACz(k,M)を用いて、加算(コヒーレント積分)処理を行う。ここで、ND=1,…,Nt、z=1,…,Naである。
期間(Tr×Nb)に亘る加算(コヒーレント積分)処理は次の式(2)で表される。
ここで、CI
z
(ND)(k,m)は相関演算値の加算値(以下、相関加算値と呼ぶ)を表し、mは加算部211における加算回数の序数を示す1以上の整数である。また、z=1,…,Naである。
なお、理想的な加算利得を得るためには、相関演算値の加算区間において、相関演算値の位相成分がある程度の範囲で揃うことが好ましい。つまり、加算回数は、測定対象となるターゲットの想定最大移動速度に基づいて設定されることが好ましい。これは、ターゲットの想定最大移動速度が大きいほど、ターゲットからの反射波に含まれるドップラ周波数の変動量が大きく、高い相関を有する時間期間が短くなるため、Np(=N×Nb)は小さい値となり、加算部211での加算による利得向上効果が小さくなるためである。
第z番目の信号処理部207において、出力切替部212は、制御部400から出力される出力切替信号に基づいて、CIz
(ND)(k,m)を、第NDのドップラ解析部213-NDに択一的に切り替えて出力する。ここで、CIz
(ND)(k,m)は、第NDの送信アンテナ素子から連続的に送信されるレーダ送信周期Trの複数回Nbの期間(Tr×Nb)を単位に加算した、離散時間k毎の加算結果であり、ND=1,…,Nt、z=1,…,Naである。
各信号処理部207は、送信アンテナ素子#1~#Ntと同数のNt個のドップラ解析部213-1~213-Ntを有する。ドップラ解析部213(213-1~213-Nt)は、離散時間k毎に得られた加算部211のN
C個の出力であるCI
z
(ND)(k,N
C(w-1)+1)~CI
z
(ND)(k,N
C×w)を一単位として、離散時間kのタイミングを揃えてコヒーレント積分を行う。例えば、ドップラ解析部213は、以下の式(3)に示すように、2Nf個の異なるドップラ周波数f
sΔΦに応じた位相変動Φ(f
s)=2πf
s(T
r×N
b)ΔΦを補正した後に、コヒーレント積分を行う。
ここで、FT_CI
z
(ND)(k,f
s,w)は、第z番目の信号処理部207における第N
D番目のドップラ解析部213-N
Dにおける第w番目の出力であり、加算部211の第N
D番目の出力に対する、離散時間kでのドップラ周波数f
sΔΦのコヒーレント積分結果を示す。ただし、N
D=1,…,Ntであり、f
s=-Nf+1,…,0,Nfであり、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noであり、wは自然数であり、ΔΦは位相回転単位であり、jは虚数単位であり、z=1,…,Naである。
これにより、各信号処理部207は、離散時間k毎の2Nf個のドップラ周波数成分に応じたコヒーレント積分結果であるFT_CIz
(ND)(k,-Nf+1,w),…,FT_CIz
(ND)(k,Nf-1,w)を、レーダ送信周期間Trの複数回Nb×Ncの期間(Tr×Nb×Nc)毎に得る。
ΔΦ=1/Ncとした場合、上述したドップラ解析部213の処理は、サンプリング間隔Tm=(Tr×Np)、サンプリング周波数fm=1/Tmで加算部211の出力を離散フーリエ変換(DFT)処理していることと等価である。
また、Nfを2のべき乗の数に設定することで、ドップラ解析部213は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理を適用でき、演算処理量を削減できる。なお、Nf>Ncでは、q>Ncとなる領域においてCIz
(ND)(k,Nc(w-1)+1)=0とするゼロ埋め処理を行うことで、ドップラ解析部213は、同様にFFT処理を適用でき、演算処理量を削減できる。
また、ドップラ解析部213において、FFT処理の代わりに、上述の式(3)に示す積和演算を逐次的に演算する処理を行ってもよい。つまり、ドップラ解析部213は、離散時間k毎に得られた加算部211のNc個の出力であるCIz
(ND)(k,Nc(w-1)+q+1)に対して、fs=-Nf+1,…,0,Nf-に対応する係数exp[-j2πfsTrNbqΔΦ]を生成し、逐次的に積和演算処理してもよい。ここで、q=0,…,Nc-1である。
なお、以下の説明では、第1番目のアンテナ系統処理部201-1の信号処理部207から第Na番目のアンテナ系統処理部201-Naの信号処理部207の各々において同様の処理を施して得られた第w番目の出力FT_CI
z
(1)(k,f
s,w),…,FT_CI
z
(Na)(k,f
s,w)を、次の式(4)(又は式(5))のように仮想受信アレー相関ベクトルh(k,f
s,w)として表記する。
仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)は、送信アンテナ素子#1~#Ntの数Ntと受信アンテナ素子#1~#Naの数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh(k,fs,w)は、後述する、ターゲットからの反射波信号に対して受信アンテナ素子#1~#Na間の位相差に基づく方向推定を行う処理の説明に用いる。ここで、z=1,…,Naであり、ND=1,…,Ntである。
また、上述の式(4)及び式(5)では、各送信サブアレーからの送信時間差に起因するドップラ周波数(fsΔΦ)毎の位相回転が補正されている。すなわち、第1の送信サブアレー(ND=1)を基準として、第NDの送信サブアレーからのドップラ周波数(fsΔΦ)成分の受信信号FT_CIz
(Na)(k,fs,w)に対し、exp[-j2πfsΔΦ(ND-1)TrNb]が乗算されている。
以上、信号処理部207の各構成部における処理について説明した。
方向推定部214は、第1番目のアンテナ系統処理部201-1の信号処理部207ないし第Na番目のアンテナ系統処理部201-Naの信号処理部207から出力されるw番目のドップラ解析部213の仮想受信アレー相関ベクトルh(k,f
s,w)に対して、仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k,f
s,w)を算出する。ここで、仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k,f
s,w)は、仮想受信アレー相関ベクトルh(k,f
s,w)に対して、以下の式(6)で表されるように送信アレーアンテナ108間及び受信アレーアンテナ202間の移相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値h
cal[b]を乗算することで、アンテナ間偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルである。なお、b=1,…,(Nt×Na)である。
アンテナ間偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(k,fs,w)は、Na×Nr個の要素からなる列ベクトルである。以下では、仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(k,fs,w)の各要素をh1(k,fs,w),…,hNa×Nr(k,fs,w)と表記して、方向推定処理の説明に用いる。
次いで、方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(k,fs,w)を用いて、受信アンテナ素子202-1~202-Na間の反射波信号の位相差に基づいて反射波信号の到来方向の推定処理を行う。
方向推定部214は、方向推定評価関数値PH(θ,k,fs,w)における方位方向θを所定の角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出し、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向の推定値とする。
なお、評価関数値PH(θ,k,fs,w)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種のものがある。例えば非特許文献2に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、ビームフォーマ法は、以下の式(7)及び式(8)のように表すことができる。
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、a
H(θ
u)は、方位方向θ
uの到来波に対する仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。また、θ
uは到来方向推定を行う方位範囲内を所定の方位間隔β
1で変化させたものである。例えば、θ
uは以下のように設定される。
ここでfloor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
なお、ビームフォーマ法に代えて、Capon、MUSICといった手法も同様に適用可能である。
図8は、本開示に係る方向推定部214の動作説明に用いる三次元座標系を示す。
方向推定部214の処理を図8に示される三次元座標系に適応することにより二次元方向に推定処理を行う場合について、以下説明する。
図8において、原点Oを基準とした物標(ターゲット)PTの位置ベクトルをrPTと定義する。また、図8では、物標PTの位置ベクトルrPTをXZ平面に射影した射影点をPT’とする。この場合、方位角θは、直線O-PT’とZ軸とのなす角度と定義される(物標PTのX座標が正の場合、θ>0)。また、仰角φは、物標PT、原点O及び射影点PT’を含む平面内での、物標PT、原点O及び射影点PT’を結ぶ線の角度と定義される(物標PTのY座標が正の場合、φ>0)。なお、以下では、XY平面内に送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202を配置する場合を一例として説明を行う。
原点Oを基準とした、仮想受信アレーにおける第nva番目のアンテナ素子の位置ベクトルをSnvaと表記する。ここで、nva=1,…, Nt×Naである。
仮想受信アレーにおける第1番目(nva=1)のアンテナ素子の位置ベクトルS1は、第1番目の受信アンテナ素子Rx#1の物理的な位置と原点Oとの位置関係に基づいて決定される。仮想受信アレーにおける他のアンテナ素子の位置ベクトルS2,…,Snvaは、第1番目のアンテナ素子の位置ベクトルS1を基準に、XY平面内に存在する送信アレーアンテナ108及び受信アレーアンテナ202の素子間隔から決定される仮想受信アレーの相対的な配置を保持した状態で決定される。なお、原点Oを第1番目の受信アンテナ素子Rx#1の物理的な位置と一致させてもよい。
レーダ受信部200が遠方界に存在する物標P
Tからの反射波を受信する場合、仮想受信アレーの第1番目のアンテナ素子での受信信号を基準とした、第2番目のアンテナ素子での受信信号の位相差d(r
PT,2,1)は、以下の式(9)で示される。ここで、<x,y>はベクトルx及びベクトルyの内積演算子である。
なお、仮想受信アレーの第1番目のアンテナ素子の位置ベクトルを基準とした、第2番目のアンテナ素子の位置ベクトルを、素子間ベクトルD(2,1)として次の式(10)で表す。
同様に、レーダ受信部200が遠方界に存在する物標P
Tからの反射波を受信する場合、仮想受信アレーの第n
va
(r)番目のアンテナ素子での受信信号を基準とした、第n
va
(t)番目のアンテナ素子での受信信号の位相差d(r
PT, n
va
(t),n
va
(r))は、以下の式(11)で示される。ここで、n
va
(r)=1,…, Nt×Na、n
va
(t)=1,…, Nt×Naである。
なお、仮想受信アレーの第n
va
(r)番目のアンテナ素子の位置ベクトルを基準とした、第n
va
(t)番目のアンテナ素子の位置ベクトルを、素子間ベクトルD(n
va
(t),n
va
(r))として次の式(12)に表す。
上述の式(11)及び式(12)に示すように、仮想受信アレーの第nva
(r)番目のアンテナ素子での受信信号を基準とした、第nva
(t)番目のアンテナ素子での受信信号の位相差d(rPT,nva
(t), nva
(r))は、遠方界に存在する物標PTの方向を示す単位ベクトル(rPT/|rPT|)及び素子間ベクトルD(nva
(t),nva
(r))に依存する。
また、仮想受信アレーが同一平面内に存在する場合、素子間ベクトルD(nva
(t),nva
(r))は同一平面上に存在する。方向推定部214は、このような素子間ベクトルの全て又は一部を用いて、素子間ベクトルが示す位置に仮想的にアンテナ素子が存在するものとして、仮想面配置アレーアンテナを構成し、二次元における方向推定処理を行う。すなわち、方向推定部214は、仮想受信アレーを構成するアンテナ素子に対する補間処理によって補間された複数の仮想的なアンテナを用いて到来方向推定処理を行う。
なお、方向推定部214は、仮想的なアンテナ素子が重複する場合、重複するアンテナ素子のうちの一つのアンテナ素子を予め固定的に選択してもよい。又は、方向推定部214は、重複する全ての仮想的なアンテナ素子での受信信号を用いて加算平均処理を施してもよい。
以下、Nq個の素子間ベクトル群を用いて、仮想面配置アレーアンテナを構成した場合における、ビームフォーマ法を用いた二次元における方向推定処理について説明する。
ここで、仮想面配置アレーアンテナを構成する第nq番目の素子間ベクトルをD(nva(nq)
(t),nva(nq)
(r))と表す。ここで、nq=1,…,Nqである。
方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k, fs, w)の各要素であるh
1(k, fs, w),…,h
Na×N(k, fs, w)を用いて、以下の式(13)に示す仮想面配置アレーアンテナ相関ベクトルh
VA(k, fs, w)を生成する。
仮想面配置アレー方向ベクトルa
VA(θu, φv)を、次の式(14)に示す。
仮想受信アレーがXY平面内に存在する場合、物標P
Tの方向を示す単位ベクトル(r
PT/|r
PT|)と、方位角θ及び仰角φとの関係を次の式(15)に示す。
方向推定部214は、垂直方向及び水平方向の二次元空間プロファイルを算出する各角度方向θu,φvに対して、上述の式(15)を用いて単位ベクトル(rPT/|rPT|)を算出する。
さらに、方向推定部214は、仮想面配置アレーアンテナ相関ベクトルhVA(k,fs,w)、及び、仮想面配置アレー方向ベクトルaVA(θu,φv)を用いて、水平方向及び垂直方向の二次元方向推定処理を行う。
例えば、ビームフォーマ法を用いた二次元における方向推定処理では、仮想面配置アレーアンテナ相関ベクトルh
VA(k,fs,w)及び仮想面配置アレー方向ベクトルa
VA(θu,φv)を用いて、次の式(16)で示される二次元における方向推定評価関数を用いて垂直方向及び水平方向の二次元空間プロファイルを算出し、二次元空間プロファイルの最大値又は極大値となる方位角及び仰角方向を到来方向の推定値とする。
なお、方向推定部214は、ビームフォーマ法以外にも、仮想面配置アレーアンテナ相関ベクトルhVA(k, fs, w)及び仮想面配置アレー方向ベクトルaVA(θu, φv)を用いて、Capon法又はMUSIC法などの高分解能到来方向推定アルゴリズムを適用してもよい。これにより、演算量は増加するが、角度分解能を高めることができる。
また、上述した時刻情報kは、距離情報に変換して出力されてもよい。時刻情報kを距離情報R(k)に変換する際には次の式(17)を用いればよい。
ここで、Twは符号送信区間を表し、Lはパルス符号長を表し、C
0は光速度を表す。
また、ドップラ周波数情報は、相対速度成分に変換して出力されてもよい。ドップラ周波数f
sΔΦを相対速度成分v
d(f
s)に変換する際には次の式(18)を用いて変換できる。
ここで、λは送信周波数変換部105から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長である。
[実施の形態1に係るレーダ装置10におけるアンテナ素子配置]
以上の構成を有するレーダ装置10の送信アレーアンテナ108のNt個の送信アンテナ素子Tx#1~#Nt及び受信アレーアンテナ202のNa個の受信アンテナ素子Rx#1~#Naの配置について、以下に説明する。
<配置例1>
図9は、実施の形態1に係る受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#Naの配置例1を示す。
図9に示されるように、受信アレーアンテナ202のNa個の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#Naは、第1軸に沿って配置される。Na個の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#Naは、第1の間隔dHで基本的に等間隔に配置され、一部が第1の間隔dHと異なる第3の間隔duで配置される。換言すると、Na個の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#Naの隣接する受信アンテナの間の間隔である#Na-1個の間隔のうち、一部が、第1の間隔と異なる第3の間隔duに等しく、その他が、第1の間隔dHに等しい。
図10Aは、実施の形態1に係る受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の配置例1を示す。
図10Aに示される一例においては、受信アレーアンテナ202は、8個の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8を備える。8個の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8のうち受信アンテナ素子Rx#1~Rx#7までは、第1軸に沿って第1の間隔dHで等間隔に配置される。ここで、例えば、第1の間隔dHは、0.5波長に等しい。残りの受信アンテナ素子Rx#8は、受信アンテナ素子Rx#7から第3の間隔2×dHで配置される。即ち、受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8は、一部が不等間隔に配置される。受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の位相中心の合成開口長dRxは、受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の第1軸に沿った幅である8×dHに等しい。
図10Bは、実施の形態1に係る送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#2の配置例1を示す。
図10Bに示される一例においては、送信アレーアンテナ108は、2個の送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2を備える。2個の受信アンテナ素子Tx#1及びTx#2は、第1軸方向に8×dHの間隔、第1軸方向に直行する第2軸方向にdVの間隔で配置される。
一例において、レーダ送信信号で用いられる波長を基準として、第1の間隔dH及び第2の間隔dVは、それぞれ、0.3波長以上2波長以下であってもよく、半波長程度であってもよい。例えば、第1の間隔dH及び第2の間隔dVは、0.5波長に等しい。
第1軸及び第2軸は、図8に示されるXY平面上にあってもよく、また、互いに直交するように配置されてもよい。例えば、第1軸方向は、水平方向であり、第2軸方向は、垂直方向である。以下の説明において、簡単のために、第1軸方向が水平方向に一致し、第2軸方向が垂直方向に一致するものとする。
図10Bに示される送信アレーアンテナ108を、例えば、高速道路における車両前方の観測の長距離観測の用途で使用する場合、視野角(FOV)は、水平方向及び垂直方向に狭角に絞ってもよい。例えば、FOVは、水平方向に30度程度、垂直方向に10度程度である。
受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子のそれぞれは、図10Aに示される点(網掛け白丸)を位相中心として、第2軸方向に開口長を広げて垂直方向のビーム幅を絞り、高いアンテナ利得を得ることができる。また、送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子のそれぞれは、図10Bに示される点(白丸)を位相中心として、第1軸方向、および第2軸方向に開口長を広げて、水平方向及び垂直方向のビーム幅を絞り、高いアンテナ利得を得ることができる。なお、各アンテナ素子はサブアレーアンテナを用いて構成し、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。
図10Aに示される不等間隔に配置されている受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8に対して、ダミーアンテナ素子を設置してもよい。ここで、ダミーアンテナ素子とは、構成するアンテナ素子が他のアンテナ素子と物理的に同様の構成をとり、レーダ信号の送受信に用いられないアンテナである。例えば、受信アンテナ素子Rx#7と受信アンテナ素子Rx#8との間などの不等間隔領域、受信アンテナ素子Rx#1の左側領域、又は受信アンテナRx#8の右側領域にダミーアンテナ素子を設置してもよい。ダミーアンテナ素子を設置することによって、例えば、アンテナの放射、インピーダンス整合、アイソレーションといった電気的特性の影響を一様化する効果が得られる。
図10Cは、配置例1に係る仮想受信アレーの配置を示す。
図10Cに示されるように、一対の仮想アンテナ素子VA#8及びVA#9が第2軸方向にdVの間隔で隣接して配置される。また、図10Cに示されるように、仮想受信アレーの第1軸方向の開口長は、16×dHに等しい。
第1軸方向及び第2軸方向に延在する二次元的な仮想受信アレーによって、二次元のビームが構成される。実施の形態1に係る受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8及び送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の配置は、水平方向に高い分解能を持ち、垂直方向の角度推定能力を有するアンテナ配置であることを、比較例1及び比較例2との比較によって以下に説明する。
<比較例1>
図11Aは、比較例1に係る受信アレーアンテナの受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の配置を示す。
比較のため、図11Aに示される受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の素子数は、図10Aに示される受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の素子数に等しい。また、図11Aに示されるように、受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8は、第1軸方向に第1の間隔dHで等間隔に配置されている。
図11Bは、比較例1に係る送信アレーアンテナの送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の配置を示す。
比較のため、図11Bに示される送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の素子数は、図11Aに示される送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の素子数に等しい。また、少なくとも一対の仮想受信アレーが第2軸方向に並ぶように、受信アンテナ素子Tx#1及びTx#2は、第1軸方向に7×dHの間隔、第1軸方向に直行する第2軸方向にdVの間隔で配置されている。
図11Cは、比較例1に係る仮想受信アレーの配置を示す。
図11Cに示されるように、仮想受信アレーは図10Cに示す本実施の形態と同様、VA#8とVA#9が第2軸方向にdVの間隔で隣接して配置される。しかしながら、仮想受信アレーの第1軸方向の開口長は14×dHであり、実施の形態1に係る仮想受信アレーの第1軸方向の開口長である16×dHよりも小さい。
図12は、配置例1及び比較例1に係る二次元のビームの第2軸方向0度での第1軸方向に沿った断面図である。
図12に示されるように、実施の形態1に係る-3dBに対応するビーム幅6.2度は、比較例1に係るビーム幅7.0度に比べて小さい。即ち、実施の形態1に係るアンテナ配置によると、比較例1に係るアンテナ配置よりも、水平方向に沿って高い分解能が得られる。なお、水平方向の視野角を絞っている場合、広角側のサイドローブの高低は、誤検出の確率に実質的に影響を与えない。
<比較例2>
図13は、比較例2に係る仮想受信アレーの配置を示す。
比較のため、比較例2に係る受信アンテナの素子数は、図10Aに示される受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の素子数に等しい。さらに、比較例2に係る送信アンテナの素子数は、図11Aに示される送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の素子数に等しい。
仮想受信アレーにおける第1軸方向の開口長を最大化するため、受信アンテナ8素子を図11Aに示されるように第1軸方向に沿って等間隔で配置する。さらに、送信アンテナ2素子を図10Bに示されるように第1軸方向に8×dHの間隔で配置する。この場合、仮想受信アレーの配置は、図13に示される配置となる。
図13に示される配置を備える仮想受信アレーを用いる状況下で、同一距離、同一速度に複数ターゲットが存在する場合、例えば、到来方向の垂直方向成分の推定において誤差が生じる。一方、実施の形態1に係る仮想受信アレーにおいては、一対の仮想受信アレーが第2軸方向にも並んでいるため、同一距離、同一速度に複数のターゲットが存在する場合であっても、垂直方向成分の推定における誤差が小さくなり、検出精度が向上する。
送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の第1軸方向に沿った間隔が、受信アレーアンテナ202の合成開口長dRに等しいと、少なくとも一対の仮想受信アレーを第2軸方向に並べつつ仮想受信アレーの第1軸方向の開口長を最大化できるので好ましい。例えば、図10Aに示される受信アレーアンテナ202の合成開口長dRと、図10Bに示される送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の間隔とは、共に8×dHであり等しい。しかしながら、送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の間隔は、これに限られず、例えば、受信アレーアンテナ202の合成開口長dR以下であり、かつ第1の間隔dHの整数倍であってもよい。送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の第1軸方向の間隔を狭くすることにより、第2軸方向に並ぶ仮想受信アレーの組み合わせが増え、垂直方向の精度が向上する。
図10Aに示される配置例1においては、受信アンテナ素子Rx#7及びRx#8の間の第3の間隔duは、2×dHに等しい。しかしながら、第3の間隔duの大きさは、これに限定されない。例えば、第3の間隔duを拡大し、仮想受信アレーの開口長を拡大すると、形成されるビームのメインローブを狭くして分解能を向上できる。また、例えば、第3の間隔duを縮小し、仮想受信アレーの開口長を縮小すると、サイドローブレベルを小さくできる。
<配置例2>
図10Aに示される配置例1においては、受信アンテナ素子Rx#7及びRx#8の間の間隔が受信アンテナ素子Rx#1~Rx#7の間の間隔と異なるように、受信アレーアンテナ202の端部が不等間隔に配置されている。しかしながら、実施の形態1に係るアンテナ配置は、配置例1に限定されない。
図14Aは、実施の形態1の配置例2に係る受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の配置例2を示す。
図14Aに示される配置例2においては、受信アンテナ素子Rx#5及びRx#6の間の間隔が受信アンテナ素子Rx#1~Rx#5及び受信アンテナ素子Rx#6~Rx#8の間の間隔と異なるように、受信アレーアンテナ202の内側が不等間隔に配置されている。
図14Bは、配置例2に係る仮想受信アレーの配置を示す。
図14Bに示されるように、一対の仮想アンテナVA#8及びVA#9が第2軸方向にdVの間隔で隣接して配置される。また、図14Bに示されるように、仮想受信アレーの第1軸方向の開口長は、16×dHに等しい。
図15は、配置例1及び配置例2に係る二次元のビームの第2軸方向0度での第1軸方向に沿った断面図である。
図15に示されるように、受信アレーアンテナ202において不等間隔に配置する受信アンテナ素子を変更することにより、サイドローブレベルが変化することが分かる。一方、受信アレーアンテナ202において不等間隔に配置する受信アンテナ素子を変更しても、仮想受信アレーの開口長は、共に16×dHに等しく、メインローブ幅についても、ほとんど変化しない。
なお、送信アレーアンテナ108と受信アレーアンテナ202の配置は、それぞれ、上述の配置に限定されるものではない。例えば、送信アレーアンテナ108と受信アレーアンテナ202の配置とを入れ替えても、入れ替える前と同様の仮想受信アレーが得られ、入れ替える前と同様の特性が得られる。また、送信アレーアンテナ108と受信アレーアンテナ202の配置を、それぞれ、左右反転及び/又は上下反転してもよい。
本開示の実施の形態1においては、レーダ装置10は、レーダ信号を送信アレーアンテナ108から送信するレーダ送信部100と、レーダ信号がターゲットにおいて反射された反射波信号を受信アレーアンテナ202から受信するレーダ受信部200と、を具備する。さらに、送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Nt及び受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#Naは、図9、図10A、図10B、又は図14Aに示される配置を採る。
本開示の実施の形態1によれば、水平方向の分解能の劣化を抑制し、垂直方向の角度推定能力を有する仮想受信アレーを構成することができ、水平方向に高精度かつ垂直方向の角度推定を行う三次元測位可能なレーダ装置を構成することができる。さらに、本開示の実施の形態1によれば、一次元ビーム走査するMIMOレーダ装置に比べて水平方向の角度分離性能を劣化させずに、第2軸方向の角度推定能力が追加された三次元測位可能なMIMOレーダ装置を構成することができる。
(実施の形態2)
送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Ntの配置が、実施の形態1におけるアンテナ配置と異なる実施の形態2を、以下説明する。なお、実施の形態2に係るレーダ装置10の構成は、送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Ntの配置を除いて図1に示される実施の形態1に係るレーダ装置10の構成と略同様であり、レーダ装置10の構成の説明を省略する。
[レーダ装置10におけるアンテナ配置]
<配置例3>
図16Aは、実施の形態2に係る送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Ntの配置例3を示す。
図16Aにおいて、送信アンテナ素子#1~#Ntの総数Ntは、4に等しい。送信アンテナ素子#1~#4は、第2軸方向に第2の間隔dVで、かつ1つおきに第1軸方向に第1の間隔dHずらして配置されている。例えば、第1の間隔dH及び第2の間隔dVは、それぞれ、0.5波長及び0.6波長に等しい。
送信アレーアンテナ108のアンテナ素子のそれぞれは、図16Aに示される点(白丸)を位相中心とし、第2軸方向にアンテナ同士が干渉しない程度に開口長を広げて垂直方向のビーム幅を絞る構成をとる。送信アレーアンテナ108を近距離かつ広角観測の用途で使用する場合、視野角(FOV)は、水平方向及び垂直方向に広く設けてもよい。例えば、FOVは、水平方向に80度程度、垂直方向に30度程度である。
実施の形態2の配置例3に係る受信アレーアンテナ202の複数の受信アンテナ素子#1~#Naの配置は、図10Aに示される配置と同様の配置である。受信アレーアンテナ202のアンテナ素子のそれぞれは、図10Aに示される点を位相中心として、第2軸方向に開口長を広げて垂直方向のビーム幅を視野角である30度程度となるようなアンテナ素子を用いる。
複数の送信アンテナ素子#1~#Nt及び複数の受信アンテナ素子#1~#Naは、水平方向には、広角を観測できるように広いビーム幅を持つアンテナとしてもよい。サブアレーアンテナを用いて各アンテナ素子を構成してよく、また、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。
図10Aに示される不等間隔に配置されている受信アンテナ素子Rx#1~#8に対して、ダミーアンテナ素子を設置してもよい。例えば、受信アンテナ素子Rx#7と受信アンテナ素子Rx#8との間などの不等間隔領域、受信アンテナ素子Rx#1の左側領域、又は受信アンテナRx#8の右側領域にダミーアンテナ素子を設置してもよい。ダミーアンテナ素子を設置することによって、アンテナの放射、インピーダンス整合、アイソレーションといった電気的特性の影響を一様化する効果が得られる。
図16Bは、配置例3に係る仮想受信アレーの配置を示す。
実施の形態2に係る受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8及び送信アンテナ素子Tx#1~Tx#4の配置は、水平方向及び垂直方向に高い分解能を持つアンテナ配置であることを、受信アンテナ素子が等間隔に配置された比較例3との比較によって以下に説明する。
<比較例3>
比較のため、比較例3における受信アンテナ素子Rx#1~Rx#Naの素子数Naは、図10Aに示される受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8の素子数8に等しい。また、比較例3における送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Nxの素子数Nxは、図16Aに示される送信アンテナ素子Tx#1~Tx#4の素子数4に等しい。
比較例3において、受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8を、図11Aに示されるように等間隔に配置する。また、送信アンテナ素子Tx#1~Tx#4は、図16Aに示されるのと同様に配置する。
図17は、比較例3に係る仮想受信アレーの配置を示す。
図17に示されるように、比較例3に係る仮想受信アレーの第1軸方向の開口長は、8×dHに等しい。この開口長は、図16Bに示される実施の形態2に係る仮想受信アレーの第1軸方向の開口長である9×dHよりも小さい。
図18は、配置例3及び比較例3に係る二次元のビームの第2軸方向0度での第1軸方向に沿った断面図である。
図18に示されるように、実施の形態2に係るビームは、比較例3に係るビームに比べて隣接するサイドローブが低い。即ち、実施の形態2に係るアンテナ配置は、比較例3に係るアンテナ配置と比べて、誤検出の確率が低減される。また、実施の形態2に係るビーム幅は、比較例3に係るビーム幅に比べて小さい。即ち、実施の形態2に係るアンテナ配置は、比較例3に係るアンテナ配置と比べて、高い分解能が得られる。
実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、受信アンテナ素子Rx#7及びRx#8の間の間隔の第3の間隔duは、図10Aに示される配置においては、2×dHに等しい。しかしながら、第3の間隔duの大きさは、これに限定されない。例えば、第3の間隔duを拡大し、仮想受信アレーの開口長を拡大することによって、形成されるビームのメインローブを狭くして分解能を向上できる。また、例えば、第3の間隔duを縮小し、仮想受信アレーの開口長を縮小することによって、サイドローブレベルを小さくできる。
また、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、受信アレーアンテナ202において不等間隔に配置する受信アンテナを変更することにより、サイドローブレベルが変化する。一方、受信アレーアンテナ202において不等間隔に配置する受信アンテナ素子を変更しても、仮想受信アレーの開口長は、変化せず、メインローブ幅についても、ほとんど変化しない。
<配置例4>
図19は、実施の形態2に係る送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#4の配置例4を示す図である。
実施の形態2においては、送信アンテナ素子Tx#2及びTx#4は、図19に示される配置例4のように、第1軸方向にずらさずに、第2軸方向に沿って第2の間隔dVで等間隔に配置される場合であっても、図16Aに示される配置例3と同様の効果が得られる。
実施の形態2においても、実施の形態1と同様、送信アレーアンテナ108と受信アレーアンテナ202の配置は、それぞれ、上述の配置に限定されるものではない。例えば、送信アレーアンテナ108と受信アレーアンテナ202の配置とを入れ替えても、入れ替える前と同様の仮想受信アレーが得られ、同様の特性が得られる。また、送信アレーアンテナ108と受信アレーアンテナ202の配置を、それぞれ、左右反転及び/又は上下反転してもよい。
本開示の実施の形態2においては、レーダ装置10は、レーダ信号を送信アレーアンテナ108から送信するレーダ送信部100と、レーダ信号がターゲットにおいて反射された反射波信号を受信アレーアンテナ202から受信するレーダ受信部200と、を具備する。さらに、送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Nt及び受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子Rx#1~Rx#Naは、例えば、図16又は図19に示される配置を採る。
本開示の実施の形態2によれば、仮想受信アレーが形成するビームの水平方向のサイドローブを抑制することが可能であり、加えて水平方向の分解能を向上させることができ、誤検出の確率が低減された三次元測位可能なMIMOレーダを構成することができる。
(実施の形態3)
送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Ntの配置を切り替えて使用する実施の形態3を、以下説明する。
図20は、実施の形態3に係るレーダ受信部(レーダ受信回路)200aの構成の一例を示すブロック図である。
レーダ受信部200aの方向推定部(方向推定回路)214aは、実施の形態1及び2に係る方向推定部214の機能を備える。さらに、方向推定部214aは、制御部400から制御信号を入力し、制御信号に基づいて、レーダ装置10の動作モードを切り替える。動作モードについては、図23を参照して後述する。
レーダ受信部200aの方向推定部214a以外の構成要素は、実施の形態1及び2に係るレーダ受信部200の構成要素と同様であり、説明を省略する。
[レーダ装置10におけるアンテナ配置]
以下、簡単のために、送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子#Tx1~#Ntの素子数Ntが6に等しく、受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子Rx#1~#Naの素子数Naが8に等しい場合を例にとって実施の形態3を説明する。しかしながら、素子数は、これらの数に限定されない。
実施の形態3において、受信アレーアンテナ202の受信アンテナ素子Rx#1~#8は、実施の形態1及び実施の形態2と同様、等間隔配置を基本として一部不等間隔に配置される。例えば、受信アレーアンテナ202の配置は図10Aに示される配置と同様の配置である。
図21は、実施の形態3に係る送信アレーアンテナ108の送信アンテナ素子Tx#1~Tx#6の配置例4を示す。
送信アンテナ素子Tx#1~Tx#6は、第1の送信アンテナ群G1及び第2の送信アンテナ群G2を含む。
第1の送信アンテナ群G1は、送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2を含み、そのアンテナ配置は、図10Bに示される実施の形態1の配置例1に係る送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の配置と同じである。第1の送信アンテナ群G1は、例えば、長距離狭角の観測用途に用いられる。
第2の送信アンテナ群G2は、送信アンテナ素子Tx#3~Tx#6を含み、そのアンテナ配置は、図16Aに示される実施の形態2の配置例3に係る送信アンテナ素子Tx#1~Tx#Ntの配置と同じである。第2の送信アンテナ群G2は、例えば、短距離広角の観測用途に用いられる。観測用途に応じて、用いられる送信アンテナ群が、第1の送信アンテナ群G1又は第2の送信アンテナ群G2の間で切り替えられる。
第1の送信アンテナ群G1又は第2の送信アンテナ群G2は、それぞれ独立に仮想受信アレーを構成する。第1の送信アンテナ群G1と図10Aに示される受信アレーアンテナ202によって、図10Cに示される仮想受信アレーが構成される。第2の送信アンテナ群G2と図10Aに示される受信アレーアンテナ202によって、図16Bに示される仮想受信アレーが構成される。
図21に示される第1の送信アンテナ群G1及び第2の送信アンテナ群G2は、第1軸方向の基本間隔が共通であってもよく、第2軸方向の基本間隔が異なる間隔であってもよい。例えば、第1の送信アンテナ群G1の第1軸方向の基本間隔dH1と、第2の送信アンテナ群G2の第1軸方向の基本間隔dH2とは、ともに0.5波長であってもよい。また、例えば、第1の送信アンテナ群G1の第2軸方向の基本間隔dV1は、0.5波長に等しくてもよく、第2の送信アンテナ群G2の第2軸方向の基本間隔dV2は、0.6波長に等しくてもよい。
上述したように、第1の送信アンテナ群G1と第2の送信アンテナ群G2とは、それぞれ独立に仮想受信アレーを構成する。したがって、物理的に干渉しない限り、第1の送信アンテナ群G1と第2の送信アンテナ群G2のアンテナ素子を、サイズも含めて自由に配置してよい。
図22は、実施の形態3の配置例4に係る送信アレーアンテナ108の各アンテナ素子の配置の一例を示す。
図22に示されるように、第1のアンテナ群G1の送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2の間に第2のアンテナ群G2の送信アンテナ素子を配置することにより、送信アレーアンテナ108の全体の設置面積を小さくできる。
第1の送信アンテナ群G1及び第2の送信アンテナ群G2の各アンテナ素子の構成は、それぞれ、視野角(FOV)に適した構成を採ってもよい。例えば、第1の送信アンテナ群G1は、水平方向及び垂直方向の双方向に沿ってビーム幅を絞るために、図22に示されるように、各アンテナ素子の開口長を第1軸方向及び第2軸方向の双方向に拡げる。また、例えば、第2の送信アンテナ群G2は、垂直方向に沿って比較的広角なビームの放射パターンを得るために、図22に示されるように、アンテナ素子同士が干渉しない程度に、各アンテナ素子の開口長を広げる。各アンテナ素子はサブアレーアンテナを用いて構成し、サブアレーアンテナにアレーウエイトをかけてサイドローブを抑制してもよい。
実施の形態3においても、実施の形態1と同様、図10Aに示される不等間隔に配置されている受信アンテナ素子Rx#1~Rx#8に対して、ダミーアンテナ素子を設置してもよい。例えば、受信アンテナ素子Rx#7と受信アンテナ素子Rx#8との間などの不等間隔領域、受信アンテナ素子Rx#1の左側領域、又は受信アンテナ素子Rx#8の右側領域にダミーアンテナ素子を設置してもよい。ダミーアンテナ素子を設置することによって、例えば、アンテナの放射、インピーダンス整合、または、アイソレーションといった電気的特性の影響を一様化する効果が得られる。
図23は、実施の形態3に係る第1のアンテナ群G1の及び第2のアンテナ群G2の時分割切替制御の一例を示す。
レーダ装置10が時分割多重MIMOレーダの場合、レーダ送信部100は、制御部400からの制御信号に基づいて、時分割多重送信に用いるアンテナの組み合わせを時間的に切り替える。図23に示すように、長距離狭角の観測を実施する動作モードである長距離モードでは、レーダ送信部100は、第1の送信アンテナ群G1の送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2を時分割多重送信に用いる。また、短距離広角の観測を実施する動作モードである短距離モードでは、レーダ送信部100は、第2の送信アンテナ群G2の送信アンテナ素子Tx#3~Tx#6を時分割多重送信に用いる。
また、長距離モードと短距離モードを併用する動作モードの場合は、レーダ送信部100は、時分割多重送信に用いる第1の送信アンテナ群G1及び第2の送信アンテナ群G2を、時間的に切り替える。例えば、レーダ送信部100は、全ての送信アンテナTx#1~Tx#6を時分割に切り替えて使用する。例えば、図23に示されるように、時間区間dur1、dur2、dur7、及びdur8では、第1のアンテナ群G1の送信アンテナ素子Tx#1及びTx#2を時分割多重送信に用いる。また、時間区間dur3~dur6、dur9、及びdur10では、第2のアンテナ群G2の送信アンテナTx#3~Tx#6を時分割多重送信に用いる。なお、送信アンテナ素子Tx#1~Tx#6を用いる順番は、図23に示される順番に限定されない。
なお、実施の形態3では、図20のレーダ受信部を用いてもよく、方向推定部214aは、制御部400から入力された動作モードを示す制御信号に基づいて、レーダ装置10の動作モードを切り替えてもよい。また、実施の形態3では、図2のレーダ送信部を用いてもよく、レーダ信号生成部101が、制御部400から入力された制御信号に基づいてレーダ装置10の動作モードを切り替えてもよい。
一例において、レーダ送信信号生成部100は、制御部400からの指示情報に基づいて、動作モードに応じて、送信周期又は送信帯域幅の信号特性が異なるレーダ信号を送信してもよい。例えば、短距離モードで動作する場合、レーダ装置10は、より高い距離分解能を得るため、比較的広い帯域でレーダ信号を送信してもよい。一方、長距離モードで動作する場合、より高速に移動する物体を観測するため、比較的早い周期でレーダ信号を送信してもよい。
また、レーダ装置10が符号分割又は周波数分割によって多重するMIMOレーダである場合、レーダ送信部100は、動作モードに応じて、第1の送信アンテナ群G1及び第2の送信アンテナ群G2への給電を切り替えてもよい。給電を切り替えることにより、使用する送信アンテナ群が選択され、動作モードを切り替えられる。
本開示の実施の形態3においては、レーダ装置10は、レーダ信号を送信アレーアンテナ108から送信するレーダ送信部100と、レーダ信号がターゲットにおいて反射された反射波信号を受信アレーアンテナ202から受信するレーダ受信部200と、を具備する。さらに、レーダ装置10は、動作モードに合わせて、用いる仮想受信アレーを、例えば、実施の形態1及び実施の形態2で構成された仮想受信アレーの間で切り替える。
本開示の実施の形態3によれば、実施の形態1及び実施の形態2で得られる効果を、それぞれに対応した動作モードで得られる三次元測位可能なMIMOレーダを構成できる。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
上記各実施の形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。例えば、バイオ技術の適用が可能性としてありえる。
[実施例のまとめ]
本開示のレーダ装置は、レーダ信号を送信アレーアンテナから送信するレーダ送信部と、前記レーダ信号がターゲットにおいて反射された反射波信号を受信アレーアンテナから受信するレーダ受信部と、を具備し、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの一方は、位相中心が第1軸方向に沿って配置される複数の第1のアンテナを含み、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの他方は、位相中心が前記第1軸方向とは異なる第2軸方向に第2の間隔で配置される複数の第2のアンテナを含み、前記複数の第1のアンテナは、位相中心が第1の間隔で配列される3つ以上のアンテナと、位相中心が前記第1の間隔と異なる第3の間隔で配列される2つ以上のアンテナと、を含み、前記複数の第2のアンテナは、位相中心が第1軸方向に、前記複数の第1のアンテナの位相中心の合成開口長に等しい間隔で配置される。
本開示のレーダ装置において、前記複数の第1のアンテナの隣接するアンテナの位相中心の間隔が、少なくとも1つの間隔を除いて前記第1の間隔に等しく、前記少なくとも1つの間隔が、前記第3の間隔に等しい。
本開示のレーダ装置において、前記第3の間隔が、前記第1の間隔の整数倍に等しい。
本開示のレーダ装置において、前記第3の間隔が、前記第1の間隔の2倍に等しい。
本開示のレーダ装置において、前記少なくとも1つの間隔が1つの間隔である。
本開示のレーダ装置において、前記複数の第2のアンテナは、位相中心が第1軸方向に、前記複数の第1のアンテナの位相中心の合成開口長に等しい間隔で配置される。
本開示のレーダ装置において、前記第2のアンテナの素子数は、2に等しい。
本開示のレーダ装置において、前記複数の第2のアンテナは、位相中心が配置される範囲の第1軸方向の長さが、前記複数の第1のアンテナの位相中心の合成開口長以下であり、前記第2軸方向に前記第2の間隔の整数倍の間隔で配置される。
本開示のレーダ装置において、前記複数の第2のアンテナは、位相中心が前記第2軸方向に前記第2の間隔で配置される。
本開示のレーダ装置において、前記複数の第2のアンテナは、構成する仮想受信アレーが異なる第1のアンテナ群及び第2のアンテナ群を備え、前記第1のアンテナ群及び前記複数の第1のアンテナとの間の送受信と、前記第2のアンテナ群及び前記複数の第1のアンテナとの間の送受信とを切り替え可能である。