JP2022020099A - テーパコレット - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、工具のシャンク部を把握するコレットに関する。
工作機械の主軸に装着される工具ホルダとして従来、例えば特開2010-162684号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1の工具ホルダは、コレットチャック本体と、テーパコレットと、ロックナットを備える。テーパコレットの中心には、軸線に沿って延びる工具挿入孔が形成され、エンドミル等工具のシャンク部が差し込まれる。テーパコレットは、コレットチャック本体の先端に形成されるテーパ穴に差し込まれ、ロックナットの締め付け回転に伴ってテーパ穴の奥へすべり込み、縮径してシャンク部を把握する。特許文献1のテーパコレット等、従来のコレットは、工具ホルダの内部に設けられるため錆の心配もなく、コレットの金属表面は表面処理されていない。
近年、大型のワークや、インコネル(登録商標)等の難削材を長時間切削することが要求されている。このため工具が工具ホルダから抜け出さないよう、従来よりも確りと把握したいという要求がある。
そこでテーパコレットに対し表面処理を施し、テーパコレットの金属表面に微細な凹凸からなる被膜を形成し、摩擦係数を増大させることが考えられる。
しかしながら、テーパコレットの全表面に単純に表面処理を施すと、必ずしも把握力が大きくなるわけではないことを本発明者は見出した。すなわち、テーパコレット外周のテーパ面に被膜を形成すると、上述したテーパ穴奥へのすべり込みが阻害されてしまい、テーパコレットの縮径および工具シャンク部の把握が完全でなくなることを見出した。
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも大きな把握力を発揮するテーパコレットを提供することを目的とする。
この目的のため本発明によるテーパコレットは、先端から末端に向かって外径が徐々に小さくなるテーパ部と、テーパ部の中心軸線に沿って延びる工具挿入孔と、テーパ部に形成されるスリ割りとを備え、工具挿入孔を構成する内周面に、摩擦係数を高めるための表面処理が施される。
かかる本発明によれば、テーパ面とテーパ穴の壁面との間の摩擦が増大しないので、テーパ部をテーパ穴奥へ充分すべり込ませることができる。したがってテーパコレットの縮径が阻害されない。また工具シャンク部の外周面と工具挿入孔の内周面との間の摩擦が増大される。その結果、工具は従来よりも確りと把握される。
本発明の一局面としてテーパコレットは、テーパ部から先端側へ突出する首部と、首部の先端と結合する鍔部をさらに備える。かかる局面によれば、工具ホルダのロックナット等を首部に係合させて、テーパ穴からテーパコレットおよび工具を引き抜くことができる。
本発明の他の局面としてテーパコレットは、テーパ部から末端側へ突出する円筒部と、円筒部の内周面に形成される雌ねじとをさらに備える。かかる局面によれば、引きねじを使用してテーパコレットをテーパ穴にすべり込ませることができる。
コレットに施される表面処理は、塗膜、被膜、目荒らし等、特に限定されないが、本発明の好ましい局面として、表面処理は四三酸化鉄被膜である。かかる局面によれば、テーパコレットの内周面に黒染の被膜が形成されることから、赤さびを寄せ付けず、耐久性が向上する。
このように本発明によれば、把握力が従来よりも大きくなり、大型のワークや、インコネル(登録商標)等の難削材を長時間切削することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態になるテーパコレットを示す側面図である。図2は、同実施形態を示す正面図であり、先端側からみた状態を表す。図3は、同実施形態を示す断面図であり、工具ホルダとともに使用状態を表す。本実施形態のテーパコレット10は、テーパ部11と、工具挿入孔13と、スリ割り14,15と、首部17と、鍔部18と、円筒部19とを備える。
図1を参照して、テーパ部11は、テーパコレット10の先端部および末端部を除くテーパコレット10の大部分をなし、先端から末端に向かって外径が徐々に小さくなる。テーパ部11の外周をテーパ面12ともいう。
工具挿入孔13は、テーパコレット10の少なくとも先端に設けられ、テーパコレット10の中心軸線(以下、軸線Oという)に沿って延びる。本実施形態では、工具挿入孔13がテーパ部11の軸線O方向略全域に渡って延びる。テーパコレット10の原形状態で、工具挿入孔13はテーパ部11の先端側から一定深さまで一定内径である。
テーパ部11の先端には首部17および鍔部18が同軸に設けられる。鍔部18の外径はテーパ部11の先端部分の外径よりも小さい。首部17は、テーパ部11を胴部とし鍔部18を頭部として両者を結合する。首部17の外径は鍔部18の外径よりも小さい。本実施形態の鍔部18は、軸線O方向に関し、一定外径である。ただし鍔部18の先端側および末端側には面取りが形成されていてもよい。
テーパ部11の先端面には環状面16が形成される。この環状面16は、軸線Oと直角な平坦面である。工具挿入孔13は、首部17および鍔部18を貫通して延びる。
テーパ部11の先端面には環状面16が形成される。この環状面16は、軸線Oと直角な平坦面である。工具挿入孔13は、首部17および鍔部18を貫通して延びる。
テーパ部11の末端には円筒部19が同軸に形成される。軸線O方向に関し、円筒部19の外径は一定である。円筒部19の中心孔19n(図3)は、工具挿入孔13と接続する。つまり本実施形態のテーパコレット10は軸線Oに沿って延びる中心孔を備える。なお、中心孔19nの内径は、工具挿入孔13の内径よりも大きい。
図1を参照して、スリ割り14はテーパコレット10の先端から末端に向かって延びる。具体的には、スリ割り14は、テーパコレット先端に位置する鍔部18および首部17を貫通し、テーパ部11の軸線O方向中央部を超えて、テーパコレット末端に位置する円筒部19の近くまで、軸線Oと平行に延びる。反対にスリ割り15は、テーパコレット10の末端から先端に向かって延びる。具体的には、スリ割り15は、円筒部19を貫通し、テーパ部11の軸線O方向中央部まで軸線Oと平行に延びる。スリ割り14,15は、周方向等間隔の角度で、先端側と末端側と互い違いに配置される。このためスリ割り14,15の軸線O方向位置は、テーパ部11で重なる。スリ割り14,15の隙間が狭められることにより工具挿入孔13は縮径する。またスリ割り14,15の隙間が広がることにより工具挿入孔13は原形寸法まで復径する。
テーパコレット10は弾性変形可能な鉄製であり、後述する使用方法により縮径したり復径したりする。図3を参照して、工具挿入孔13を構成する内周面には表面処理が施される。これに対し、テーパ面12は、テーパコレット10を構成する金属素材の表面そのものである。
テーパ部11の内周面の表面処理は、鉄表面を化学的に変性させた被膜である。本実施形態では四三酸化鉄の被膜が形成される。本実施形態の表面処理は、RPT(Rust Proof Treatment)であり、濃水酸化ナトリウム水溶液等でテーパコレット10の鉄表面を酸化させたものである。かかる表面処理によって、元々銀色であった鉄表面は黒染めされる。四三酸化鉄の被膜は、微小な凹凸面であり、表面処理を施される前の円滑な鉄表面の摩擦係数を、増大させる。
本実施形態では、まずテーパコレット10の表面全体に表面処理を施し、次にテーパコレット10の外周面を研摩加工する。これにより工具挿入孔13を含めて、テーパコレット10の内周面のみが表面処理を施される。この研摩加工の例として、テーパコレット10の中心孔の両端を塞ぎバレル研摩を施すことが挙げられる。これによりテーパ面12の表面処理は除去され、さらに円滑面にされる。
次にテーパコレット10の使用につき説明する。
図3を参照して、テーパコレット10は、円筒部19からテーパ部11まで、コレットチャック100の先端部に形成されたテーパ穴101に差し込まれる。テーパ穴101は、テーパ面12に対応する勾配で、末端から先端に向かって徐々に内径が大きくなる。工具挿入孔13には、テーパコレット10の先端から、仮想線で示す切削工具のシャンク部110が差し込まれる。切削工具は例えばエンドミルである。
コレットチャック100およびロックナット120を備える工具ホルダは従来のもので足りる。テーパ穴101よりも先端側でコレットチャック100の中心孔に形成された雌ねじ102に、環状のロックナット120が螺合する。ロックナット120の内周縁は、首部17に係合し、環状面16を押圧する。なお本実施形態では、末端側の環状面16と先端側のロックナット120の間に、プレーンベアリング130が介在する。プレーンベアリング130により、環状面16とロックナット120の間の摩擦が小さくされ、ロックナット120が回転してもテーパコレット10の芯ずれは防止される。
ロックナット120を締め付け方向に回転させると、テーパコレット10は、テーパ穴101の奥(末端側)へすべり込み、くさび作用によって縮径する。これによりシャンク部110は確りと把握される。把握を解除する場合には、ロックナット120を緩め方向に回転させるとよい。そうすると弾性変形していたテーパコレット10は原形に復帰し、工具挿入孔13が元の内径まで広がる。また首部17に係合するロックナット120は先端方向へ前進し、テーパコレット10をテーパ穴101から引き抜く。この際、シャンク部110も前進し、工具を工具ホルダから離脱させる作業が容易化される。
次に第1実施形態のテーパコレット10と、従来例のテーパコレットについて対比実験を行った。
第1実施形態のテーパコレット10と、従来例のテーパコレットは、全く同一の寸法であり、具体的にはSK10-6の寸法規格である(内径6mm)。ただし従来例のテーパコレットでは、表面に何らRPT表面処理が施されず、素材の鉄表面が露出する。これに対し第1実施形態のテーパコレット10では、内周面のみRPT表面処理が施される。第1実施形態のテーパ面12は、テーパコレット10の素材の金属表面そのままであり、鉄表面が露出している。
工具挿入孔13に差し込まれる工具のシャンク部110は、第1実施形態および従来例共、上述した6mmに対応する外径寸法であり、同じ差し込み深さで差し込まれる。
テーパコレットが差し込まれる工具ホルダは、第1実施形態および従来例共、同一のコレットチャック100およびロックナット120である。ロックナットは同じトルクレンチによって同じ締め付けトルクで締め付け回転されて、第1実施形態および従来例はそれぞれ、テーパ穴101の奥にすべり込む。
実験結果として、第1実施形態では、把握力(最大トルク)61.14N・mであった。これに対し、従来例では、把握力(最大トルク)24.54N・mであった。第1実施形態は、従来例の2.49倍の把握力を得ることができた。
この理由として、第1実施形態では、従来例と同様に、テーパコレット10がテーパ穴101の奥まで十分すべり込み、工具挿入孔13が十分縮径しているためと考えられる。また工具挿入孔13の内周面全体にRPT表面処理が施され、四三酸化鉄の被膜が形成されているので、工具挿入孔13の内周面の摩擦係数が大きくなり、相手材(シャンク部110)との結合が良くなるためと考えられる。第1実施形態では、工具挿入孔13の内周面に表面処理を施すことによって、当該内周面の摩擦係数がテーパ部11の外周に形成されるテーパ面12の摩擦係数よりも大きくなる。
これに対し従来例では、工具挿入孔13は十分縮径しているものの、工具挿入孔の内周面と相手材(シャンク部110)との摩擦が第1実施形態よりも小さいためと考えられる。
次に第1実施形態のテーパコレット10と、参考例のテーパコレットについて対比実験を行った。
第1実施形態のテーパコレット10と、参考例のテーパコレットは、全く同一の寸法であり、具体的にはSK10-6の寸法規格である(内径6mm)。ただし参考例のテーパコレットでは、内周面のみならず外周面にもRPT表面処理が施される。これに対し第1実施形態のテーパコレット10では、内周面のみRPT表面処理が施される。第1実施形態のテーパ面12は、テーパコレット10の素材の金属表面そのままであり、鉄表面が露出している。
工具挿入孔13に差し込まれる工具のシャンク部110は、第1実施形態および参考例共、上述した6mmに対応する外径寸法であり、同じ差し込み深さで差し込まれる。
テーパコレットが差し込まれる工具ホルダは、第1実施形態および参考例共、同一のコレットチャック100およびロックナット120である。ロックナットは同じトルクレンチによって同じ締め付けトルクで締め付け回転されて、第1実施形態および参考例はそれぞれ、テーパ穴101の奥にすべり込む。
実験結果として、第1実施形態では上述したとおり把握力(最大トルク)61.14N・mであった。これに対し、参考例では、把握力(最大トルク)39.96N・mであった。第1実施形態は、参考例の1.53倍の把握力を得ることができた。
この理由として参考例では、テーパコレットがテーパ穴101の奥まですべり込みが不十分であり、工具挿入孔13が十分縮径していないためと考えられる。この原因として、テーパ面12の摩擦係数が大きく、テーパコレットのすべり込みが阻害されたためと考えられる。これに対して第1実施形態では、テーパコレット10がテーパ穴101の奥まで十分すべり込み、工具挿入孔13が十分縮径している。
次に本発明の第2実施形態を説明する。図4は第2実施形態を示す側面図である。図5は、同実施形態を示す断面図であり、使用状態を表す。第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施形態のテーパコレット20では、鍔部18の外周にテーパ面22が形成される。テーパ面22は末端側から先端側に向かって徐々に外径が小さくなる。テーパ部11の末端には、外径一定の円筒部が延設されない。
図5を参照して、コレットチャック100の先端外周面には雄ねじ103が形成される。雄ねじ103にはロックナット126が螺合する。ロックナット126の先端には、ベアリング129を介して先端テーパ部材128が連結される。ベアリング129は、ロックナット126と先端テーパ部材128の間で、相対回転を許容しつつ、軸線O方向の押し引き力を伝達する。先端テーパ部材128はリング状であり、先端テーパ部材128の外周面とロックナット126の内周面が対面する。先端テーパ部材128の内周縁は、テーパコレット20の首部17に係合し、テーパ面22を末端方向へ押圧する。
第2実施形態も、前述した第1実施形態と同様、工具挿入孔13の内周面に表面処理が施され、かかる内周面の摩擦係数はテーパ面12の摩擦係数よりも大きくされる。これにより従来よりも把握力(トルク)を増大させることができる。
次に本発明の第3実施形態を説明する。図6は第3実施形態を示す側面図である。第3実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第3実施形態のテーパコレット30では、先端側の内径と末端側の内径が異なる。
テーパコレット30は、末端に、一定外径のストレートな円筒部31を備える。円筒部31はテーパ部11の末端から突出し、テーパ部11の軸線O方向寸法の半分以上2倍未満である。スリ割り14は、テーパ部11を貫通し、円筒部31の軸線O方向中央部まで延びる。
円筒部31の末端部内周には雌ねじ32が形成される。テーパコレット30は図示しないコレットチャックのテーパ穴に差し込まれ、雌ねじ32はコレットチャックの内部に設けられる引きねじ(図略)と螺合する。そして引きねじの作用により、テーパコレット30は末端側へ引き込まれる。
第2実施形態も、前述した第1実施形態と同様、工具挿入孔13の内周面に表面処理が施され、かかる内周面の摩擦係数はテーパ面12の摩擦係数よりも大きくされる。これにより従来よりも把握力(トルク)を増大させることができる。
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
本発明は、工作機械において有利に利用される。
10,20,30 テーパコレット、 11 テーパ部、
12,22 テーパ面、 13 工具挿入孔、 14,15 スリ割り、
16 環状面、 17 首部、 18 鍔部、 19,31 円筒部、
32 雌ねじ。
12,22 テーパ面、 13 工具挿入孔、 14,15 スリ割り、
16 環状面、 17 首部、 18 鍔部、 19,31 円筒部、
32 雌ねじ。
Claims (4)
- 先端から末端に向かって外径が徐々に小さくなるテーパ部と、
前記テーパ部の中心軸線に沿って延びる工具挿入孔と、
前記テーパ部に形成されるスリ割りとを備え、
前記工具挿入孔を構成する内周面に、摩擦係数を高めるための表面処理が施される、テーパコレット。 - 前記テーパ部から先端側へ突出する首部と、前記首部の先端と結合する鍔部をさらに備える、請求項1に記載のテーパコレット。
- 前記テーパ部から末端側へ突出する円筒部と、前記円筒部の内周面に形成される雌ねじとをさらに備える、請求項1に記載のテーパコレット。
- 前記表面処理は四三酸化鉄被膜である、請求項1~3のいずれかに記載のテーパコレット。
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2020
- 2020-07-20 JP JP2020123370A patent/JP2022020099A/ja active Pending
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