JP2022016313A - 溶剤組成物およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】地球環境に悪影響を及ぼさず、ゴム材料や樹脂材料への影響が小さく、油類等への溶解性に優れた溶剤組成物およびその用途の提供。【解決手段】1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、ノナフルオロブトキシメタンおよびノナフルオロブトキシエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルとを含む溶剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、溶剤組成物およびその用途に関する。
従来、油汚れ洗浄や塵埃洗浄に用いる洗浄液、潤滑剤等の希釈溶剤として、不燃性、低毒性、安定性に優れるハイドロフロロクロロカーボン(以下、HCFCともいう。)が用いられてきた。しかし、HCFCは、オゾン層に悪影響を及ぼすことから、先進国においては2020年にHCFCの生産が全廃される予定である。
オゾン層に悪影響を及ぼさない溶剤として、ペルフルオロカーボン(以下、PFCともいう。)、ハイドロフルオロカーボン(以下、HFCともいう。)、ハイドロフルオロエーテル(以下、HFEともいう。)等が知られている。しかし、地球温暖化係数が大きいため、HFCおよびPFCは、京都議定書の規制対象物質となっている。
このような中、HFC、PFCの溶剤に替わる新しい溶剤として、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(以下、HCFO-1224ydともいう。)等のハイドロクロロフルオロオレフィン(以下、HCFOともいう。)が提案されている。
したがって、上記用途の洗浄液や希釈溶剤としては、HCFOおよびHFEが有望である。
しかし、HCFOおよびHFEには課題が存在した。
HCFOは、分子内に塩素原子を有することから油汚れ洗浄剤としての性能を有するが、ゴム材料や樹脂材料に接触させた場合、これら材料へ膨潤などの影響がある。例えば、HCFO-1224ydは、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム材料に接触させた場合、これらゴム材料が膨潤する傾向がある。
一方、HFEのノナフルオロブトキシメタン(C49OCH3、以下、HFE-449s1ともいう。)、ノナフルオロブトキシエタン(C49OC25、以下、HFE-569sf2ともいう。)は、塩素原子を有さないため、ゴム材料や樹脂材料への影響は生じないが、加工油や潤滑油等の油類の溶解性が充分でない。
本発明は、地球環境に悪影響を及ぼさず、ゴム材料や樹脂材料への影響が小さく、油類等への溶解性に優れた溶剤組成物およびその用途を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できることを見出した。
[1] 1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、ノナフルオロブトキシメタンおよびノナフルオロブトキシエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルとを含む溶剤組成物。
[2] 上記1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、Z異性体およびE異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、[1]に記載の溶剤組成物。
[3] 上記ノナフルオロブトキシメタンが、1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよび1-メトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなり、
上記ノナフルオロブトキシエタンが、1-エトキシ-2-トリフルオロメチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよび1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、[1]または[2]に記載の溶剤組成物。
[4] 上記1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンに対する上記ハイドロフルオロエーテルの含有割合が質量比で、10/90~90/10である、[1]~[3]のいずれかに記載の溶剤組成物。
[5] 上記1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとハイドロフルオロエーテルとの合計の含有量が、上記溶剤組成物全質量に対して、40質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の溶剤組成物。
[6] 物品の表面に、[1]~[5]のいずれかに記載の溶剤組成物を接触させて、上記物品の表面に付着する汚れを除去する、洗浄方法。
[7] 上記物品の材料が、繊維、金属、樹脂、ゴム、ガラス、およびセラミックスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[6]に記載の洗浄方法。
[8] 上記汚れが、カーボン、油脂または塵埃である、[6]または[7]に記載の洗浄方法。
[9] 不揮発性有機化合物および[1]~[5]のいずれかに記載の溶剤組成物を含む、塗膜形成用組成物。
[10] [9]に記載の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布した後、上記溶剤組成物を蒸発させて、上記不揮発性有機化合物を含む塗膜を形成する、塗膜付き基材の製造方法。
[11] 上記基材の材料が、金属、樹脂、ゴム、ガラス、およびセラミックスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[10]に記載の塗膜付き基材の製造方法。
[12] [1]~[5]のいずれかに記載の溶剤組成物を含むエアゾール組成物。
[13] [1]~[5]のいずれかに記載の溶剤組成物を含む熱サイクルシステム用の熱移動媒体。
本発明の溶剤組成物は、地球環境に悪影響を及ぼさず、ゴム材料や樹脂材料への影響を低減し、油類等への溶解性に優れる。
本発明の溶剤組成物は、エアゾール組成物や熱サイクルシステム用の作動媒体(熱移動媒体)としても使用できる。
本発明の物品の洗浄方法は、地球環境に悪影響を及ぼさず、ゴム材料や樹脂材料への影響を低減し、物品に付着した汚れを洗浄することができる。
本発明の塗膜付き基材の製造方法によれば、地球環境に悪影響を及ぼさず、ゴム材料や樹脂材料を含む物品への影響を低減し、塗膜付き基材を製造できる。
(溶剤組成物)
本発明の溶剤組成物は、HCFO-1224ydと、HFE-449s1およびHFE-569sf2からなる群から選ばれる少なくとも1種のHFEとを含む。以下、上記特定のHFEをHFE(A)ともいう。
(HCFO-1224yd)
HCFO-1224yd(CF3CF=CHCl)は、炭素原子-炭素原子間に二重結合を有するオレフィンである。このため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さい。
HCFO-1224ydは、立体異性体が存在することが知られており、HCFO-1224ydのZ異性体(以下、HCFO-1224yd(Z)ともいう。)の沸点は15℃であり、HCFO-1224ydのE異性体(以下、HCFO-1224yd(E)ともいう。)の沸点は17℃である。公知の製造方法により、HCFO-1224yd(Z)とHCFO-1224yd(E)およびそれらの混合物(通常は、HCFO-1224yd(Z)の割合が高い)が得られ、蒸留により両者を分離できる。本発明の溶剤組成物に含まれるHCFO-1224ydとしては両異性体の一方のみであってもよいが、生産性を考慮するとHCFO-1224yd(Z)の割合が高い異性体混合物であることが好ましい。本発明の溶剤組成物に含まれるHCFO-1224ydの全質量において、HCFO-1224yd(Z)/HCFO-1224yd(E)で表される質量比は、50/50~100/0が好ましい。
上記沸点を有することより、HCFO-1224ydは、揮発性に優れる。
HCFO-1224ydは、引火点を持たない。
HCFO-1224ydは、表面張力や粘度が低く、室温でも容易に蒸発する。
HCFO-1224ydは、洗浄剤または塗布溶剤としての使用に優れる。
HCFO-1224ydは、鉱物油、シリコーンオイル、フッ素オイル、合成油、離型剤、埃等の洗浄除去や、鉱物油、シリコーンオイル、フッ素オイル、合成油等の潤滑剤を溶解し対象物への塗布性に優れる。
HCFO-1224ydを製造する方法としては、例えば、(1)1,2-ジクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパン(以下、HCFC-234bbともいう。)を脱塩化水素反応させる方法、および、(2)1,1-ジクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(以下、CFO-1214yaともいう。)を水素還元させる方法等が挙げられる。
以下、それぞれの方法について詳述する。
(1)HCFC-234bbの脱塩化水素反応
HCFC-234bbを液相中で、溶媒に溶解した塩基すなわち溶液状態の塩基と接触させ、234bbの脱塩化水素反応を行う。なお、HCFC-234bbは、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(以下、HFO-1234yfともいう。)と塩素を溶媒中で反応させることにより製造できる。
(2)CFO-1214yaを水素還元させる方法
CFO-1214yaを触媒存在下、水素を用いて還元することでHFO-1234yfに還元され、その中間体としてHCFO-1224ydが得られる。また、この還元反応においては、HCFO-1224yd以外に多種類の含フッ素化合物が副生する。CFO-1214yaは、例えば、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(以下、HCFC-225caともいう。)等を原料として、相関移動触媒存在下にアルカリ水溶液で、または、クロム、鉄、銅、活性炭等の触媒存在下に気相反応で、脱フッ化水素反応させて製造する方法が知られている。
本発明の溶剤組成物は、HCFO-1224ydの製造の際に副生する不純物として、下記微量成分(以下、微量成分(X)ともいう。)を含んでいてもよい。
<微量成分(X)>
微量成分(X)は、HCFO-1224ydの製造の際に副生し不純物として生成組成物中に存在する化合物、または、製造の際に用いられる溶媒である。微量成分(X)は、具体的には、HCFC-225cb、HFC-254eb、CFO-1214ya、HCFO-1224xe(Z)、HCFO-1224xe(E)、HCFO-1233xf、HFO-1234yf、HFO-1234ze(Z)、HFO-1234ze(E)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、C464で示されるフッ化炭化水素、C444で示されるフッ化炭化水素、HCFC-244bb、HFC-254fb、HFC-245fa、CFO-1215xc、HCFC-225ca、FC-227ca、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、ヘキサンおよび水から選ばれる少なくとも1種である。
微量成分(X)は、HCFO-1224ydの製造の際に得られる粗組成物(例えば、反応器からの出口成分や出口成分が粗精製された粗精製物等の、精製組成物に比べて不純物を多く含む組成物をいう。以下同様である。)に含まれる成分(原料中の不純物、中間生成物、副生物等が含まれる。以下同様である。)であり、さらに該粗組成物を、通常の方法で精製して得られるHCFO-1224ydの精製組成物に、微量に含まれる成分や、精製の際に用いられる溶媒成分である。
上記(1)HCFC-234bbの脱塩化水素反応の場合、HFO-1234yf、HCFO-1224xe、HCFO-1233xf、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HCFC-244bbを微量成分(X)として含み得る。
上記(2)CFO-1214yaを水素還元させる方法の場合、CFO-1215xc、HFC-254eb、HFO-1234ze、C464で示されるフッ化炭化水素、C444で示されるフッ化炭化水素、HCFO-1224xe、HCFO-1233xf、HCFC-244bb、HFC-254fb、HFC-245fa、HCFC-225ca、FC-227caを微量成分(X)として含み得る。
微量成分(X)は、HCFO-1224ydと微量成分(X)との合計量に対して1.5質量%未満が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。
なお、微量成分(X)が水を含む場合、本発明の溶剤組成物における水の含有量は、カールフィッシャー電量滴定法により測定される水分含有量として、HCFO-1224ydと微量成分(X)との合計量に対して、200質量ppm以下が好ましく、150質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以下が特に好ましく、20質量ppm以下が最も好ましい。
(HFE(A))
HFE-449s1:
HFE-449s1は、C49OCH3で表される化合物を意味する。HFE-449s1は4種の構造異性体があり、本発明の溶剤組成物に含まれるHFE-449s1としては、それらの1種のみであってもよく、それらの2種以上の混合物であってもよい。本発明の溶剤組成物に含まれるHFE-449s1としては、1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンと1-メトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタンとの混合物が好ましい。この混合物としては、例えば、製品「Novec7100」(スリーエム社製)が挙げられる。
HFE-449s1は、沸点が61℃であり、沸騰させて蒸気となっても61℃であるため、ゴム部品や樹脂部品等の熱による影響を受けやすい部品であっても悪影響を及ぼしにくい。
HFE-449s1は、引火点を持たない。
HFE-449s1は、表面張力や粘度が低く、室温でも容易に蒸発する。
HFE-449s1は、ゴム材料や樹脂材料への影響が小さい。
HFE-449s1は、公知の方法により製造できる。
例えば、特許第2908033号公報に記載されるように、CF3CF2CF2C(O)F、CF3CF(CF3)C(O)FおよびC25C(O)CF3ならびにこれらの混合物と、無水アルカリ金属フッ化物(例えば、フッ化カリウムもしくはフッ化セシウム)または無水フッ化銀等の無水フッ化物イオンの任意の好適な供給源と、をAldrich Chemical Companyから入手可能なADOGEN464等の第四級アンモニウム化合物の存在下で無水の極性非プロトン性溶剤中でジメチルスルフェート等のアルキル化剤と反応させることによって製造できる。
HFE-569sf2:
HFE-569sf2は、C49OC25で表される化合物を意味する。HFE-569sf2は4種の構造異性体があり、本発明の溶剤組成物に含まれるHFE-569sf2としては、それらの1種のみであってもよく、それらの2種以上の混合物であってもよい。本発明の溶剤組成物に含まれるHFE-569sf2としては、1-エトキシ-2-トリフルオロメチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンと1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタンの混合物が好ましい。この混合物としては、例えば、製品「Novec7200」(スリーエム社製)が挙げられる。
HFE-569sf2は、沸点が76℃であり、沸騰させて蒸気となっても76℃であるため、ゴム部品や樹脂部品等の熱による影響を受けやすい部品であっても悪影響を及ぼしにくい。
HFE-569sf2は、引火点を持たない。
HFE-569sf2は、表面張力や粘度が低く、室温でも容易に蒸発する。
HFE-569sf2は、ゴム材料や樹脂材料への影響が小さい。
HFE-569sf2は、公知の方法により製造できる。
例えば、特許第3068199号公報に記載されるように、CF3CF2CF2C(O)F、CF3CF(CF3)C(O)F、およびC25C(O)CF3ならびにこれらの混合物と、無水アルカリ金属フッ化物(例えば、フッ化カリウムもしくはフッ化セシウム)または無水フッ化銀等の無水フッ化物イオンの任意の好適な供給源とをAldrich Chemical Companyから入手可能なADOGEN464等の第四級アンモニウム化合物の存在下で無水の極性非プロトン性溶剤中でジエチルスルフェート等のアルキル化剤と反応させることによって製造できる。
本発明の溶剤組成物において、HCFO-1224ydに対するHFE(A)の含有割合が質量比で、10/90~90/10であることが、ゴム材料や樹脂材料への影響を低減し、油類等の溶解性に優れるため好ましい。
本発明の溶剤組成物において、HCFO-1224ydに対するHFE(A)の含有割合が質量比で、20/80~80/20がより好ましく、40/60~60/40がさらに好ましい。
本発明の溶剤組成物において、HCFO-1224ydとHFE(A)の合計量が、溶剤組成物の全量に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、93質量%以上がさらに好ましく、95質量%が特に好ましい。
本発明の溶剤組成物は、HCFO-1224ydおよびHFE(A)以外の有機溶剤(以下、有機溶剤(B)ともいう。)を含んでもよい。
(有機溶剤(B))
有機溶剤(B)は、HCFO-1224ydおよびHFE(A)に可溶な有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤(B)は、溶解性を高める、揮発速度を調節する等の各種の目的に応じて、適宜選択される。
有機溶剤(B)としては、HCFO-1224ydおよびHFE(A)に可溶な、炭化水素、アルコール、ケトン、非フッ素系エーテル、エステル、クロロカーボン、HFC、HFE(HFE(A)を除く。)、HCFO(HCFO-1224ydを除く。)、ハイドロフルオロオレフィン(以下、HFOともいう。)等が挙げられる。
有機溶剤(B)の含有量は、溶剤組成物の全量に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、7質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
炭化水素としては、炭素数が5以上の炭化水素が好ましい。炭化水素は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素であってもよい。
炭化水素としては、n-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンが好ましい。
アルコールとしては、炭素数1~16のアルコールが好ましい。アルコールは、鎖状であってもよく、環状であってもよい。また、アルコールは、飽和アルコールであってもよく、不飽和アルコールであってもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
ケトンとしては、炭素数3~9のケトンが好ましい。ケトンは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和ケトンであってもよく、不飽和ケトンであってもよい。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
非フッ素系エーテルとしては、炭素数2~8のエーテルが好ましい。非フッ素系エーテルは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エーテルであってもよく、不飽和エーテルであってもよい。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランが好ましい。
エステルとしては、炭素数2~19のエステルが好ましい。エステルは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エステルであってもよい。エステルは、不飽和エステルであってもよい。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
クロロカーボンとしては、炭素数1~3のクロロカーボンが好ましい。クロロカーボンは、鎖状であってもよく、環状であってもよい。また、クロロカーボンは、飽和クロロカーボンであってもよく、不飽和クロロカーボンであってもよい。
クロロカーボンとしては、塩化メチレン、trans-1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレンがより好ましい。
HFCとしては、炭素数4~8の鎖状または環状のHFCが好ましく、1分子中のフッ素原子数が水素原子数以上であるHFCがより好ましい。
HFCとしては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンが好ましい。
HFE(A)以外のHFEとしては、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン(以下、HFE-347pc-fともいう。)等が好ましい。
HCFO-1224yd以外のHCFOとしては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのE体およびZ体、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンのE体およびZ体等が好ましい。
HFOとしては、メトキシパーフルオロヘプテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのE体およびZ体等が好ましい。
有機溶剤(B)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、2種以上の有機溶剤(B)が含まれる場合、それらの組合せは同じ範疇の溶剤の組合せであってもよく、異なる範疇の溶剤の組合せであってもよい。例えば、炭化水素から選ばれる2種の組合せであってもよく、炭化水素から選ばれる1種とアルコールから選ばれる1種との組合せであってもよい。
有機溶剤(B)は、引火点を持たない溶剤であることが好ましい。引火点を持たない有機溶剤としては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン等のHFCや、HFE-347pc-f等のHFE(A)以外のHFEや、メトキシパーフルオロヘプテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン等のHFO等が挙げられる。有機溶剤(B)として引火点を有する溶剤を用いる場合には、溶剤組成物として引火点を持たない範囲で用いることが好ましい。
本発明の溶剤組成物において、有機溶剤(B)に対するHCFO-1224ydおよびHFE(A)の合計含有量の含有割合が質量比で、5/95~60/40が好ましく、5/95~50/50がより好ましく、10/90~50/50がさらに好ましい。
具体的な組成例としては、以下の例が挙げられる。ただし数字はいずれも質量比である。
HCFO-1224yd/Novec7100/1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンとしては、5~75/15~70/10~60が好ましく、5~75/15~70/10~35がより好ましい。
HCFO-1224yd/Novec7200/1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンとしては、5~75/15~70/10~60が好ましく、5~75/15~70/10~35がより好ましい。
本発明の溶剤組成物は、地球環境に悪影響を及ぼさず、ゴム材料や樹脂材料への影響を低減し、油類、鉱物油等の疎水性物質の溶解性に優れる。
本発明の溶剤組成物は、溶剤としての性能に優れるため、油汚れ洗浄、フラックス洗浄、精密洗浄、ドライクリーニング等の疎水性物質を除去するための洗浄、衣類等の染み抜き洗浄用の洗浄剤として使用できる。
また、本発明の溶剤組成物は、シリコーン系潤滑剤、フッ素系潤滑剤等の潤滑剤、鉱物油、合成油等からなる防錆剤、撥水処理を施すための防湿コート剤、防汚処理を施すための指紋付着防止剤等の防汚コート剤等の疎水性物質の塗膜を形成するための溶剤、非破壊検査等の浸透探傷剤として使用できる。すなわち、本発明の溶剤組成物に上記疎水性物質を溶解して塗膜形成用組成物とし、この塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布し、次いで溶剤を蒸発除去して上記疎水性物質の塗膜を形成することができる。
さらに、本発明の溶剤組成物は、物品の加熱や冷却するための熱移動媒体としても適している。
(洗浄方法)
本発明の洗浄方法は、本発明の溶剤組成物を物品の表面に接触させて、物品の表面に付着した汚れを除去することを特徴とする。
具体的な洗浄方法としては、物品の表面に本発明の溶剤組成物を接触させればよい。特に限定されないが、例えば、手拭き、浸漬、スプレー、揺動、超音波、蒸気洗浄またはこれらを組み合わせた方法等を採用すればよい。洗浄装置、洗浄条件等も公知のものを適宜選択できる。
例えば、国際公開第2008/149907号公報に示される洗浄装置、および洗浄方法が挙げられる。
本発明の溶剤組成物を用いて国際公開第2008/149907号公報に示される洗浄装置にて洗浄を行う場合、第1浸漬槽内の本発明の溶剤組成物の温度を溶剤組成物の沸点以下とすることが好ましい。この場合、加工油等の汚れの洗浄を容易に行うことができ、超音波による洗浄効果が高い。具体的には15℃以下が好ましい。下限は特にないが、0℃以上が好ましい。また、第2浸漬槽内の本発明の溶剤組成物の温度を溶剤組成物の沸点以下とすることが好ましい。この場合、すすぎ洗浄効果が高い。具体的には15℃以下が好ましい。下限は特にないが、0℃以上が好ましい。また、洗浄性の点から、第2浸漬槽の溶剤組成物の温度より第1浸漬槽内の本発明の溶剤組成物の温度が高いことが好ましい。
本発明の溶剤組成物が適用可能な物品の材料としては、金属、樹脂、ゴム、ガラス、セラミックス、天然繊維、合成繊維が挙げられる。また、物品としては、これらの2種以上の材料を有する複合材料からなる物品であってもよい。複合材料としては、金属と樹脂の積層体等が挙げられる。特に、本発明の溶剤組成物は、HCFO-1224ydの影響を受けるSBR等のゴム材料や樹脂材料を含む物品に対しても使用できる。
物品の具体例としては、繊維製品、医療器具、電気機器、精密機械、光学機器、車両・乗物・輸送機関およびそれらの部品等が挙げられる。電気機器、精密機械、光学物品およびそれらの部品の具体例としては、IC、コンデンサ、プリント基板、マイクロモーター、リレー、ベアリング、光学レンズ、ガラス基板等が挙げられる。車両・乗物・輸送機関およびそれらの部品の具体例としては、ボディ、ブレーキ部品、サスペンション、ホイール等が挙げられる。特に、本発明の溶剤組成物は、溶剤組成物に接触する物品表面の少なくとも一部の材料が、SBR等のゴム材料や樹脂材料を含む物品に対しても使用できる。
本発明の洗浄方法において、洗浄除去される汚れとしては、各種被洗浄物に付着した、カーボンや、フラックス、加工油、離型剤、皮脂、食品油、化粧料などの油脂や、これらを介して付着した塵埃等が挙げられる。加工油としては、切削油、焼き入れ油、圧延油、潤滑油、機械油、プレス加工油、打ち抜き油、引き抜き油、組立油、線引き油、ブレーキフルード等が挙げられる。化粧料としては、マニキュア、口紅等が挙げられる。各種被洗浄物には、上記した汚れの2種以上が付着していてもよい。本発明の溶剤組成物は従来の溶剤組成物であるHFCやHFE等と比較してこれら油類への溶解性に優れることから、これら油類からなる汚れの洗浄に用いることが好ましい。
(塗膜形成用組成物、塗膜付き基材の製造方法)
本発明の溶剤組成物は、不揮発性有機化合物の塗膜を形成するための溶剤としても使用できる。
本発明の塗膜形成用組成物は、不揮発性有機化合物および本発明の溶剤組成物を含むことを特徴とする。
本発明の塗膜付き基材の製造方法は、本発明の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布した後、本発明の溶剤組成物を蒸発除去して、不揮発性有機化合物の塗膜を形成することを特徴とする。
本発明の塗膜形成用組成物は、通常、本発明の溶液組成物に不揮発性有機化合物を溶解した溶液状の組成物として調製される。塗膜形成用組成物の調製方法は、不揮発性有機化合物を所定の割合で本発明の溶剤組成物に均一に溶解できる方法であれば特に制限されない。本発明の塗膜形成用組成物は、基本的には、不揮発性有機化合物と本発明の溶剤組成物のみで構成される。
本発明の塗膜形成用組成物(100質量%)中の不揮発性有機化合物の含有量は、塗膜形成用組成物の全量に対して、0.01~50質量%が好ましく、0.05~30質量%がより好ましく、0.1~20質量%が特に好ましい。不揮発性有機化合物の含有量が上記範囲内であれば、塗膜形成用組成物を塗布したときの塗布膜の膜厚、および溶剤組成物の蒸発除去(以下、乾燥ともいう。)後の不揮発性有機化合物塗膜の厚さを適正範囲に調整しやすい。
ここで、本発明における不揮発性有機化合物は、沸点が本発明の溶剤組成物より高く、溶剤組成物が蒸発した後も有機化合物が表面に残留するものをいう。不揮発性有機化合物として、具体的には、物品に潤滑性付与するための潤滑剤、金属部品の防錆効果を付与するための防錆剤、物品に撥水性を付与するための防湿コート剤、物品へ防汚性能を付与するための指紋付着防止剤等の防汚コート剤等が挙げられる。本発明の塗膜付き基材の製造方法において、溶解性の点から不揮発性有機化合物として潤滑剤を用いることが好ましい。
潤滑剤は、2つの部材が互いの面を接触させた状態で運動するときに、接触面における摩擦を軽減し、熱の発生や摩擦損傷を防ぐために用いるものを意味する。潤滑剤は、液体(オイル)、半固体(グリース)、固体のいずれの形態であってもよい。
潤滑剤としては、本発明の溶剤組成物への溶解性が優れる点から、鉱物油系潤滑剤、合成油系潤滑剤、フッ素系潤滑剤またはシリコーン系潤滑剤が好ましい。なお、フッ素系潤滑剤とは、分子内にフッ素原子を有する潤滑剤を意味する。また、シリコーン系潤滑剤とは、シリコーンを含む潤滑剤を意味する。塗膜形成用組成物に含まれる潤滑剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。フッ素系潤滑剤とシリコーン系潤滑剤は、それぞれを単独で使用してもよく、それらを併用してもよい。
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂粉末等のフッ素系固体潤滑剤が挙げられる。フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)GPL102」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS-65」(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。フッ素グリースとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物等のフッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)グリース240AC」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイルグリースDG-203」、「デムナムL65」、「デムナムL100」、「デムナムL200」(以上、ダイキン株式会社製)、「スミテックF936」(住鉱潤滑剤株式会社製)、「モリコート(登録商標)HP-300」、「モリコート(登録商標)HP-500」、「モリコート(登録商標)HP-870」、「モリコート(登録商標)6169」等が挙げられる。
シリコーン系潤滑剤としては、シリコーンオイルやシリコーングリースが挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、側鎖や末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルが好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンKF-96」、「信越シリコーンKF-965」、「信越シリコーンKF-968」、「信越シリコーンKF-868」、「信越シリコーンKF-99」、「信越シリコーンKF-50」、「信越シリコーンKF-54」、「信越シリコーンHIVAC F-4」、「信越シリコーンHIVAC F-5」、「信越シリコーンKF-56A」、「信越シリコーンKF-995」、「信越シリコーンKF-868」、「信越シリコーンKF-859」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」、「MDX4-4159」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。シリコーングリースとしては、上記に挙げた種々のシリコーンオイルを基油として、金属石けん等の増ちょう剤、各種添加剤を配合した製品が好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンG-30シリーズ」、「信越シリコーンG-40シリーズ」、「信越シリコーンFG-720シリーズ」、「信越シリコーンG-411」、「信越シリコーンG-501」、「信越シリコーンG-6500」、「信越シリコーンG-330」、「信越シリコーンG-340」、「信越シリコーンG-350」、「信越シリコーンG-630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤とは、空気中の酸素によって容易に酸化されて錆を生じる金属の表面を覆い、金属表面と酸素を遮断することで金属材料の錆を防止するために用いるものを意味する。防錆剤としては、鉱物油、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテルのような合成油が挙げられる。
防湿コート剤の製品例としては、トパス5013、トパス6013、トパス8007(以上、ポリプラスチックス社製)、ゼオノア1020R、ゼオノア1060R(以上、日本ゼオン社製)、アペル6011T、アペル8008T(以上、三井化学社製)、SFE-DP02H、SNF-DP20H(以上、セイミケミカル社製)が挙げられる。指紋付着防止剤等の防汚コート剤の製品例としては、オプツールDSX、オプツールDAC(以上、ダイキン工業社製)フロロサーチFG-5000(以上、フロロテクノロジー社製)SR-4000A(以上、セイミケミカル社製)等が挙げられる。
本発明の塗膜形成用組成物を基材表面に塗布して基材表面に塗膜形成用組成物の膜を形成し、次いで、基材表面に形成された塗膜形成用組成物の膜から溶剤組成物を蒸発除去することにより、基材表面に不揮発性有機化合物からなる塗膜が形成される。
本発明の塗膜形成用組成物の塗布方法としては、例えば、刷毛による塗布、スプレーによる塗布、物品を塗膜形成用組成物に浸漬することによる塗布、塗膜形成用組成物を吸い上げることによりチューブや注射針の内壁に塗膜形成用組成物を接触させる塗布方法等が挙げられる。
塗膜形成用組成物から溶剤組成物を蒸発除去する方法としては、公知の乾燥方法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、風乾、加熱による乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、20~100℃が好ましい。
本発明の塗膜付き基材の製造方法により、基材表面に潤滑剤、防錆剤、防湿コート剤、防汚コート剤等を含む塗膜を形成した塗膜付き基材を製造できる。すなわち、塗膜形成用組成物が塗布される基材としては、金属、樹脂、ゴム、ガラス、セラミックス等、様々な材料からなる基材が採用される。また、本発明の塗膜形成用組成物は、ゴム材料や樹脂材料を含む物品に対して影響なく塗布できる。
塗膜付き基材の具体例としては、フッ素系潤滑剤が用いられたものとして、産業機器、パーソナルコンピュータやオーディオ機器におけるCDやDVDのトレー部品、プリンタ、コピー機器、フラックス機器等の家庭用機器またはオフィス用機器等が挙げられる。シリコーン系潤滑剤が用いられたものとして、注射器やシリンダ、医療用チューブ部品、金属刃、カテーテル等が挙げられる。防湿コート剤や防汚コート剤が用いられたものとして、プラスチック材、ゴム材、金属材、ガラス材、実装回収板等への防湿性や防汚性を付与するために用いられた機器が挙げられる。
本発明の溶剤組成物は、噴射剤と溶剤組成物に溶解した溶質とを含むエアゾール組成物として用いることもできる。このようなエアゾール組成物は、エアゾールソルベントまたや、ソルベントエアゾールとも呼ばれる。噴射剤としては、液化ガスおよび圧縮ガスが挙げられる。エアゾール組成物における液化ガスとしては、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)、プロパン、ブタン、イソブタン、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)等が挙げられる。一方、圧縮ガスとしては、窒素、二酸化炭素、圧縮空気、亜酸化窒素等が挙げられる。
(熱移動媒体および熱サイクルシステム)
本発明の溶剤組成物は、熱サイクルシステム用の作動媒体(熱移動媒体)として用いることができる。すなわち、本発明は、本発明の溶剤組成物を含む熱移動媒体を提供する。本発明の熱移動媒体は、物質を加熱したり冷却したりする熱サイクルシステムに適用できる。
熱サイクルシステムとしては、ランキンサイクルシステム、ヒートポンプサイクルシステム、冷凍サイクルシステム、熱輸送システム、二次冷媒冷却システム等が挙げられる。
以下、熱サイクルシステムの一例として、冷凍サイクルシステムについて説明する。
冷凍サイクルシステムとは、蒸発器において作動冷媒は負荷流体により熱エネルギーを除去することにより、負荷流体を冷却し、より低温に冷却するシステムである。冷凍サイクルシステムでは、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機と、圧縮された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器と、凝縮器から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁と、膨張弁から排出された作動媒体Dを加熱して高温高圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器と、蒸発器に負荷流体Eを供給するポンプと、凝縮器に流体Fを供給するポンプとから構成されるシステムである。
さらに、本発明の熱移動媒体は二次循環冷却システムにも適用できる。
二次循環冷却システムとは、アンモニアや炭化水素冷媒からなる一次冷媒を冷却する一次冷却手段と、二次冷却手段用二次冷媒(以下、「二次冷媒」という。)を循環させて被冷却物を冷却する二次循環冷却手段と、一次冷媒と二次冷媒とを熱交換させ、二次冷媒を冷却する熱交換器と、有するシステムである。この二次循環冷却システムにより、被冷却物を冷却できる。本発明の熱移動媒体は、二次冷媒としての使用に好ましい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。例2~13、15~26が本発明の溶剤組成物の実施例、例1、14、および27が比較例である。
(製造例:HCFO-1224ydの製造)
国際公開第2017/110851号公報の記載の方法に従って、HCFO-1224yd(E)およびHCFO-1224yd(Z)の異性体混合物を製造した。上記異性体混合物を国際公開第2017/146190号公報に記載の方法により精製して、HCFO-1224yd(E)、HCFO-1224yd(Z)を製造した。
(HCFO-1224ydの調製)
実施例に用いたHCFO-1224ydは、HCFO-1224yd(Z)/HCFO-1224yd(E)で表される質量比が99/1となるように混合した。
HCFO-1224ydの純度は、99.9%、99.5%の2種類を準備した。
HCFO-1224ydにおける微量成分(X)は、HCFC-225cb、HFC-254eb、CFO-1214ya、HCFO-1224xe(Z)、HCFO-1224xe(E)、HCFO-1233xf、HFO-1234yf、HFO-1234ze(Z)、HFO-1234ze(E)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、C464で示されるフッ化炭化水素、C444で示されるフッ化炭化水素、HCFC-244bb、HFC-254fb、HFC-245fa、CFO-1215xc、HCFC-225ca、FC-227ca、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、ヘキサンおよび水であり、その含有量は、HCFO-1224ydと上記微量成分(X)の合計量に対して合計で0.1質量%、0.5質量%であった。さらに、水の含有量は1224ydと上記微量成分(X)の合計量に対して20質量ppmであった。
(HFE-449s1またはHFE-569sf2の調製)
HFE系の不燃性フッ素系溶剤のHFE-449s1としては、3MTM NOVECTM7100 高機能性液体(スリーエム ジャパン株式会社,日本)を、HFE系の不燃性フッ素系溶剤のHFE-569sf2としては、3MTM NOVECTM7200 高機能性液体(スリーエム ジャパン株式会社,日本)をそれぞれ購入した。
(溶剤組成物の調製)
HCFO-1224ydとHFE-449s1またはHFE-569sf2を、表1に示す質量比となるように混合して、例1~27の溶剤組成物を調製した。
(各種油類への溶解性評価)
96ccのハイパーグラスシリンダー(耐圧硝子工業株式会社製)内に、合計質量が45gとなるようにHCFO-1224ydおよびHFE-449s1またはHFE-569sf2をそれぞれ表1に示す質量比で調製し、ハイパーグラスシリンダーに各油類(株式会社富士化工研究所製のブレーキフルード2500H-A、信越化学工業株式会社製の信越シリコーンKF-96-50cs、または、日本ソルベー株式会社製のFOMBLIN Y25)の5gを添加した。溶剤組成物と油類を混合し、25℃で2時間静置した後の溶液の状態(溶解性)を下記基準にて溶解性を評価した。
A:透明溶解
B:薄く白濁
C:白濁
D:二相分離
なお、溶解性評価がCの場合は、使用上問題ないが、溶解性評価がDの場合は使用不可である。
(材料影響試験)
96ccのハイパーグラスシリンダー(耐圧硝子工業株式会社製)に、溶剤組成物の合計が80gとなるようにHCFO-1224ydとHFE-449s1またはHFE-569sf2をそれぞれ表1に示す量で調製し、SBRのテストピース(20mm×37.5mm×厚さ2mm)を3枚ずつ入れた。ハイパーグラスシリンダーを25℃で30分間静置した後、テストピースを取出し、3枚のテストピースの膨潤による体積変化の平均値を下記基準にて評価した。
A:膨潤による体積変化1.0%未満
B:膨潤による体積変化1.0%以上1.5%未満
C:膨潤による体積変化1.5%以上2.0%未満
D:膨潤による体積変化2.0%以上
なお、材料影響試験の評価がCの場合は、使用上問題ないが、評価がDの場合は使用不可である。
結果を表1に示す。純度が99.9%のHCFO-1224ydを使用したものと、純度が99.5%HCFO-1224ydを使用したものとは結果が同じであった。
なお、表1中の「2500H-A」は上記ブレーキフルード2500H-Aをいい、「KF」は上記KF-96-50csをいい、「Y25」は上記FOMBLIN Y25をいう。
Figure 2022016313000001
例3、7、12、16、20、25の溶剤組成物については、さらに、有機溶剤(B)である炭化水素類としてn-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、アルコール類としてエタノール、メタノール、クロロカーボン類としてtrans-1,2-ジクロロエチレン、ハイドロフルオロオレフィン類としては、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンを含ませた。
有機溶剤(B)は、溶剤組成物/有機溶剤(B)で表される質量比を下記とした。
n-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンについては、95/5、90/10、80/20とした。
エタノールおよびメタノールについては、95/5、90/10とした。
trans-1,2-ジクロロエチレンについては、95/5、90/10、70/30、50/50とした。
(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンについては、90/10、80/20、75/25、70/30、60/40、50/50、40/60とした。
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンについては、90/10、80/20、75/25、70/30、60/40、50/50、40/60とした。
これら有機溶剤(B)を含む例3、7、12、16、20、25の溶剤組成物について、溶剤組成物/有機溶剤(B)=40/60で表される溶剤組成物は、材料影響試験の評価結果がCであった。一方、その他の溶剤組成物は、表1に示す溶解性試験結果および材料影響試験結果と同様の判定結果が得られた。
(浸漬での洗浄試験)
ステンレス鋼SUS304の試験片(20mm×37.5mm×厚さ2mm)を各種油類(株式会社富士化工研究所製のブレーキフルード2500H-A、または、信越化学工業株式会社製の信越シリコーンKF-96-50cs)に1分間浸漬し、引き揚げた後一晩静置したものをテストピースとした。
各種油類が付着した試験片を96ccのハイパーグラスシリンダー(耐圧硝子工業株式会社製)に入れ、ハイパーグラスシリンダーを真空引きした後、例1~27の溶剤組成物を50g充填し、試験片を1分間浸漬して引き上げ、試験片における各種油類の残留状態を目視で観察し、洗浄性の評価とした。例2~13、15~26において、試験片から金属加工油を除去できた。また、試験片に付着した溶剤組成物はすぐに乾燥した。
(エアゾール組成物での洗浄性能評価)
SUS304の試験片(25mm×30mm×厚さ2mm)を各種油類(株式会社富士化工研究所製のブレーキフルード2500H-A、または、信越化学工業株式会社製の信越シリコーンKF-96-50cs)に1分間浸漬し、試験片を引き揚げた後一晩静置したものをテストピースとした。
例1~27の溶剤組成物に、昇圧剤として圧縮ガス(CO2またはN2)を、スプレー缶の内圧が、0.5、0.6、0.7、0.8MPaとなるように充填した。
このスプレー缶から溶剤組成物を噴射したところ、例2~13、15~26において、試験片から金属加工油を除去できた。また、試験片に付着した溶剤組成物はすぐに乾燥した。昇圧剤の種類で洗浄性能に影響は見られなかった。
(エアゾール組成物での塗膜性能評価)
例1~27の溶剤組成物に、潤滑油(信越化学工業株式会社製の信越シリコーンKF-96-50cs、または、日本ソルベー株式会社製のFOMBLIN Y25)を、溶剤組成物と潤滑油の合計量に対して0.5質量%になるように溶解した。
上記で得られた塗膜形成用組成物に、昇圧剤として圧縮ガス(CO2またはN2)については、スプレー缶の内圧が、0.5、0.6、0.7、0.8MPaとなるように充填、液化ガス(LPGまたはDMEまたは1234ze(E))については、塗膜形成用組成物/昇圧剤で表される質量比が、20/80、25/75、30/70となるようにスプレー缶に充填した。このスプレー缶から塗膜形成用組成物を噴射したところ、例2~13、15~26において、試験片の表面に目視による評価で均一に塗膜が形成されていた。また、試験片に付着した溶剤組成物はすぐに乾燥した。昇圧剤の種類で塗膜性能に影響は見られなかった。
本発明の溶剤組成物は、地球環境に悪影響を及ぼさず、溶剤としての性能に優れるため、洗浄、塗布用途、熱移動媒体等の広範囲の工業用途に有用である。特に、表面がゴム材料や樹脂材料を含む物品に付着する塵埃、油類等の汚れの除去として有用である。

Claims (13)

  1. 1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、ノナフルオロブトキシメタンおよびノナフルオロブトキシエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルとを含む溶剤組成物。
  2. 前記1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、Z異性体およびE異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1に記載の溶剤組成物。
  3. 前記ノナフルオロブトキシメタンが、1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよび1-メトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなり、
    前記ノナフルオロブトキシエタンが、1-エトキシ-2-トリフルオロメチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよび1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1または2に記載の溶剤組成物。
  4. 前記1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンに対する前記ハイドロフルオロエーテルの含有割合が質量比で、10/90~90/10である、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶剤組成物。
  5. 前記1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと前記ハイドロフルオロエーテルとの合計の含有量が、前記溶剤組成物全質量に対して、40質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶剤組成物。
  6. 物品の表面に、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶剤組成物を接触させて、前記物品の表面に付着する汚れを除去する、洗浄方法。
  7. 前記物品の材料が、繊維、金属、樹脂、ゴム、ガラス、およびセラミックスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の洗浄方法。
  8. 前記汚れが、カーボン、油脂および塵埃からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6または7に記載の洗浄方法。
  9. 不揮発性有機化合物および請求項1~5のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含む、塗膜形成用組成物。
  10. 請求項9に記載の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布した後、前記溶剤組成物を蒸発させて、前記不揮発性有機化合物を含む塗膜を形成する、塗膜付き基材の製造方法。
  11. 前記基材の材料が、金属、樹脂、ゴム、ガラス、およびセラミックスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の塗膜付き基材の製造方法。
  12. 請求項1~5のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含むエアゾール組成物。
  13. 請求項1~5のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含む熱サイクルシステム用の熱移動媒体。
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