JP2021105141A - 溶剤組成物およびその用途 - Google Patents

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宏明 光岡
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Abstract

【課題】地球環境に悪影響を及ぼさず、樹脂材料への影響が小さく、充分な揮発性を有し、油類等への溶解性に優れた溶剤組成物およびその用途の提供。【解決手段】1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンと、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンとを含む溶剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、溶剤組成物およびその用途に関する。
従来油汚れ洗浄、フラックス洗浄、塵埃洗浄、水分除去溶剤、ドライクリーニング溶剤、反応溶剤、潤滑剤等の希釈溶剤として、不燃性、低毒性、安定性に優れるハイドロフロロクロロカーボン(以下、HCFCともいう。)が用いられてきた。しかし、HCFCは、オゾン層に悪影響を及ぼすことから、先進国においては2020年にHCFCの生産が全廃される予定である。
オゾン層に悪影響を及ぼさない溶剤として、ペルフルオロカーボン(以下、PFCともいう。)、ハイドロフルオロカーボン(以下、HFCともいう。)、ハイドロフルオロエーテル(以下、HFEともいう。)等が知られている。しかし、地球温暖化係数が大きいため、HFCおよびPFCは、京都議定書の規制対象物質となっている。
このような中、HFC,PFC,HFEの溶剤に替わる新しい溶剤として、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(以下、HCFO−1233ydともいう。)や1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(以下、HCFO−1224ydともいう。)等のハイドロクロロフルオロオレフィン(以下、HCFOともいう。)が提案されている。これらのHCFOは、炭素原子−炭素原子間で二重結合をもち、分解しやすい性質を有することから、大気中での寿命が短く、オゾン層破壊係数や地球温暖化係数が小さく、地球環境への影響が小さいとされている。これらのHCFOは、分子内に塩素原子を有することから洗浄用溶剤組成物としての性能を有する(特許文献1,2)。
国際公開第2017/018010号 国際公開第2019/123759号
しかし、これらのHCFOには課題が存在した。HCFO−1233ydにおいては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(以下、ABS樹脂ともいう。)、ポリカーボネート(以下、PCともいう。)、ポリスチレン樹脂(以下、PSともいう。)、ポリエーテルサルフォン樹脂(以下、PESともいう。)等の樹脂材料に接触した場合、樹脂材料の白化やひび割れが生じる、または樹脂材料が溶解する等の樹脂材料への影響がある場合があった。したがって、このような樹脂材料を含む部品を洗浄する場合、または潤滑剤等を塗布する場合、HCFO−1233ydは使用しにくいという課題があった。さらに、HCFO−1233ydはHCFCに比べて油類等への溶解性が小さかった。
一方で、HCFO−1224ydにおいては、樹脂材料への影響や油類などへの溶解性はHCFCと同等であったが、沸点が低い(15℃)ために乾燥速度が早く、対象物への付着性が十分でなかった。
本発明は、地球環境に悪影響を及ぼさず、樹脂材料への影響が小さく、充分な揮発性を有し、油類等への溶解性に優れた溶剤組成物およびその用途を提供することを目的とする。
本発明は、HCFO−1233ydとHCFO−1224ydとを含有する溶剤組成物を用いることで、上記課題が解決できることを見出した。
本発明は、下記の構成を有する溶剤組成物およびその用途を提供する。
[1]1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンと、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンとを含む溶剤組成物。
[2]1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンがZ異性体、E異性体またはその両方の混合物である、[1]に記載の溶剤組成物。
[3]1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンがZ異性体、E異性体またはその両方の混合物である、[1]に記載の溶剤組成物。
[4]溶剤組成物の全質量における、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンと、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンとの合計の含有量が90質量%以上である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の溶剤組成物。
[5]溶剤組成物において、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンに対する1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンの含有割合が質量比で、1/99〜99/1である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の溶剤組成物。
[6]さらに、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンの分解を抑制する安定剤を含む、[5]に記載の溶剤組成物。
[7]安定剤の含有量が、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンに対して1質量ppm〜5質量%である、[6]に記載の溶剤組成物。
[8][1]〜[7]のいずれか一項に記載の溶剤組成物からなる洗浄剤。
[9][1]〜[7]のいずれか一項に記載の溶剤組成物を物品に接触させて、物品の表面に付着した汚れを除去することを特徴とする洗浄方法。
[10]溶剤組成物に接触する物品表面の少なくとも一部の材料が樹脂材料である、[9]に記載の洗浄方法。
[11]不揮発性有機化合物および[1]〜[7]のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含むことを特徴とする塗膜形成用組成物。
[12][11]に記載の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布した後、溶剤組成物を蒸発除去して、不揮発性有機化合物を含む塗膜を形成することを特徴とする塗膜付き基材の製造方法。
[13]溶剤組成物に接触する基材表面の少なくとも一部の材料が樹脂材料である、[12]に記載の塗膜付き基材の製造方法。
[14]溶質、噴射剤および[1]〜[7]のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含むことを特徴とするエアゾール組成物。
[15][1]〜[7]のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含むことを特徴とする、熱サイクルシステム用の熱移動媒体。
本発明の溶剤組成物は、地球環境に悪影響を及ぼさず、樹脂材料への影響を低減し、充分な揮発性を有し、油類等への溶解性に優れる。
本発明の物品の洗浄方法は、地球環境に悪影響を及ぼさず、樹脂材料への影響を低減し、物品に付着した汚れを洗浄することができる。
本発明の塗膜付き物品の製造方法によれば、地球環境に悪影響を及ぼさず、物品への影響を低減し、塗膜付き物品を製造できる。
(溶剤組成物)
本発明の溶剤組成物は、HCFO−1233ydと、HCFO−1224ydとを含む。溶剤組成物の全質量において、HCFO−1233yd/HCFO−1224ydで表される質量比は、1/99〜99/1が好ましく、10/90〜60/40がより好ましい。また、溶剤としての優れた性能を発揮するために、溶剤組成物は、組成物におけるHCFO−1233ydとHCFO−1224ydの合計が溶剤組成物の全量に対して90質量%以上が好ましい。上記範囲内であると、下記の3つの条件を満たす溶剤組成物が見いだされた。(1)樹脂材料への影響を低減する、(2)充分な揮発性を有する、(3)油類等の溶解性に優れる。
(HCFO−1233yd)
HCFO−1233yd(CHFCF=CHCl)は、炭素原子−炭素原子間に二重結合を有するオレフィンである。このため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さい。
HCFO−1233ydは、立体異性体が存在することが知られており、HCFO−1233ydのZ異性体(以下、HCFO−1233yd(Z)ともいう。)の沸点は54℃であり、HCFO−1233ydのE異性体(以下、HCFO−1233yd(E)ともいう。)の沸点は46℃である。公知の製造方法により、HCFO−1233yd(Z)とHCFO−1233yd(E)およびそれらの混合物(通常は、HCFO−1233yd(Z)の割合が高い)が得られ、蒸留により両者を分離することができる。本発明の溶剤組成物に含有されるHCFO−1233ydとしては両異性体の一方のみであってもよいが、生産性を考慮するとHCFO−1233yd(Z)の割合が高い異性体混合物であることが好ましい。前記溶剤組成物に含まれるHCFO−1233ydの全質量において、HCFO−1233yd(Z)/HCFO−1233yd(E)で表される質量比は、50/50〜100/0が好ましい。
上記沸点を有することより、HCFO−1233ydは、揮発性に優れ、取扱いが容易である。
HCFO−1233ydは、引火点を持たない。
HCFO−1233ydは、表面張力や粘度が低く、室温でも容易に蒸発する。
HCFO−1233ydは、鉱物油、フッ素オイル、シリコーンオイル、合成油、離型剤、埃等の洗浄除去や、シリコーンオイル等の潤滑剤の溶解性に優れる。
以上のように、HCFO−1233ydは、種々の成分への溶解性に優れ、洗浄剤や潤滑剤の希釈溶媒として充分な性能を有している。また、HCFO−1233ydは溶剤に適した沸点を有するため、使用時の取扱いが容易であり、室温で使用する際に揮発することがないため、回収、再利用ができ、コストを抑えられる。
HCFO−1233ydは、たとえば、工業的に安定的に入手可能な1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(CHF−CF−CHFCl。以下、HCFC−244caともいう。)を水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを反応剤として、50〜80℃の温度で脱フッ化水素反応することで製造できる。
一方、HCFO−1233ydは安定性が充分でなく、HCFO−1233ydを常温常圧で保管すると数日で分解して塩素イオンを発生する課題がある。そこで、本発明の溶剤組成物においては、HCFO−1233ydとともに、その分解を抑制する安定剤を含有することが好ましい。本発明の溶剤組成物がかかる安定剤を含むことにより、加熱条件等の過酷な条件下であっても溶剤組成物が分解することなく使用できる。安定剤としては1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の溶剤組成物がかかる安定剤を含む場合は、安定剤の量は、溶剤組成物中のHCFO−1233ydの全量に対して、1質量ppm以上であることが好ましく、3質量ppm以上であることがより好ましく、5質量ppm以上であることが特に好ましい。安定剤の量の上限としては5質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。
上記安定剤としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、α−ピコリン、N−メチルベンジルアミン、ジアリルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロール等のアミン類、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ジオキサン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、ジイソブチレン等が挙げられる。
(HCFO−1224yd)
HCFO−1224yd(CFCF=CHCl)は、炭素原子−炭素原子間に二重結合を有するオレフィンである。このため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さい。
HCFO−1224ydは、立体異性体が存在することが知られており、HCFO−1224ydのZ異性体(以下、HCFO−1224yd(Z)ともいう。)の沸点は15℃であり、HCFO−1224ydのE異性体(以下、HCFO−1224yd(E)ともいう。)の沸点は17℃である。公知の製造方法により、HCFO−1224yd(Z)とHCFO−1224yd(E)およびそれらの混合物(通常は、HCFO−1224yd(Z)の割合が高い)が得られ、蒸留により両者を分離することができる。本発明の溶剤組成物に含有されるHCFO−1224ydとしては両異性体の一方のみであってもよいが、生産性を考慮するとHCFO−1224yd(Z)の割合が高い異性体混合物であることが好ましい。本発明の溶剤組成物に含まれるHCFO−1224ydの全質量において、HCFO−1224yd(Z)/HCFO−1224yd(E)で表される質量比は、50/50〜100/0が好ましい。
上記沸点を有することより、HCFO−1224ydは、揮発性に優れる。
HCFO−1224ydは、引火点を持たない。
HCFO−1224ydは、表面張力や粘度が低く、室温でも容易に蒸発する。
HCFO−1224ydは、鉱物油、シリコーンオイル、フッ素オイル、合成油、離型剤、埃等の洗浄除去や、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑剤の溶解性に優れる。
HCFO−1224ydは、ABS樹脂、PC、PS、PES等の樹脂材料への影響が小さい。
HCFO−1224ydは、洗浄剤または塗布溶剤としての使用に優れる。
HCFO−1224ydは、たとえば、(1)1,2−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(以下、HCFC−234bbともいう。)を脱塩化水素反応させる方法、および、(2)1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、CFO−1214yaともいう。)を水素還元させる方法等が挙げられる。
(1)HCFC−234bbの脱塩化水素反応
234bbを液相中で、溶媒に溶解した塩基すなわち溶液状態の塩基と接触させ、234bbの脱塩化水素反応を行う。なお、234bbは、たとえば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、HFO−1234yfともいう。)と塩素を溶媒中で反応させることにより製造できる。
(2)CFO−1214yaを水素還元させる方法
CFO−1214yaを触媒存在下、水素を用いて還元することでHFO−1234yfに還元され、その中間体としてHCFO−1224ydが得られる。また、この還元反応においては、HCFO−1224yd以外に多種類の含フッ素化合物が副生する。CFO−1214yaは、たとえば、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225caともいう。)等を原料として、相関移動触媒存在下にアルカリ水溶液で、またはクロム、鉄、銅、活性炭等の触媒存在下に気相反応で、脱フッ化水素反応させて製造する方法が知られている。
本発明の溶剤組成物は、組成物におけるHCFO−1233ydとHCFO−1224ydの合計が組成物の全量に対して90質量%以上が好ましい。本発明の溶剤組成物は、必要に応じてHCFO−1233ydおよびHCFO−1224yd以外の有機溶剤(以下、有機溶剤(A)ともいう。)を含んでもよい。
(有機溶剤(A))
有機溶剤(A)は、HCFO−1233ydおよびHCFO−1224ydに可溶な有機溶剤である。有機溶剤(A)は、溶解性を高める、揮発速度を調節する等の各種の目的に応じて、適宜選択される。
有機溶剤(A)としては、HCFO−1233yd、HCFO−1224ydに可溶な炭化水素、アルコール、ケトン、非フッ素系エーテル、エステル、クロロカーボン、HFC、HFE等が挙げられる。
本発明の溶剤組成物において、有機溶剤(A)は、溶剤組成物の全量に対して、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
炭化水素としては、炭素数が5以上の炭化水素が好ましい。炭化水素は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素であってもよい。
炭化水素としては、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンが好ましい。
アルコールとしては、炭素数1〜16のアルコールが好ましい。アルコールは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和アルコールであってもよく、不飽和アルコールであってもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
ケトンとしては、炭素数3〜9のケトンが好ましい。ケトンは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和ケトンであってもよく、不飽和ケトンであってもよい。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
非フッ素系エーテルとしては、炭素数2〜8のエーテルが好ましい。非フッ素系エーテルは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エーテルであってもよく、不飽和エーテルであってもよい。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランが好ましい。
エステルとしては、炭素数2〜19のエステルが好ましい。エステルは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エステルであってもよく、不飽和エステルであってもよい。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
クロロカーボンとしては、炭素数1〜3のクロロカーボンが好ましい。クロロカーボンは、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和クロロカーボンであってもよく、不飽和クロロカーボンであってもよい。
クロロカーボンとしては、塩化メチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレンがより好ましい。
HFCとしては、炭素数4〜8の鎖状または環状のHFCが好ましく、1分子中のフッ素原子数が水素原子数以上であるHFCがより好ましい。
HFCとしては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサンが好ましい。
HFEとしては、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ−1−(2,2,2−トリフルオロ)エタン(以下、HFE−347pc−fともいう。)等が好ましい。
有機溶剤(A)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、2種以上の有機溶剤(A)が含まれる場合、それらの組合せは同じ範疇の溶剤の組合せであってもよく、異なる範疇の溶剤の組合せであってもよい。たとえば、炭化水素から選ばれる2種の組合せであってもよく、炭化水素から選ばれる1種とアルコールから選ばれる1種との組合せであってもよい。
有機溶剤(A)は引火点を持たない溶剤であることがさらに好ましい。引火点を持たない有機溶剤としては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン等のHFCや、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ−1−(2,2,2−トリフルオロ)エタン等のHFE等が挙げられる。有機溶剤(A)として引火点を有する溶剤を用いる場合には、溶剤組成物として引火点を持たない範囲で用いることが好ましい。
本発明の溶剤組成物は、地球環境に悪影響を及ぼさず、樹脂材料への影響を低減し、十分な揮発性を有し、油類、鉱物油等の疎水性物質の溶解性に優れる。
本発明の溶剤組成物は、溶剤としての性能に優れるため、油汚れ洗浄、フラックス洗浄、精密洗浄、ドライクリーニング等の疎水性物質を除去するための洗浄剤として使用できる。
また、本発明の溶剤組成物は、シリコーン系潤滑剤、フッ素系潤滑剤等の潤滑剤、鉱物油や合成油等からなる防錆剤、撥水処理を施すための防湿コート剤、防汚処理を施すための指紋除去付着剤等の防汚コート剤等の疎水性物質の塗膜を形成するための溶剤として使用できる。すなわち、本発明の溶剤組成物に上記疎水性物を溶解して塗膜形成用組成物とし、この塗膜形成用組成物を物品表面に塗布し、次いで溶剤を蒸発除去して上記疎水性物質の塗膜を形成することができる。
さらに、本発明の溶剤組成物は、物品の加熱や冷却するための熱移動媒体としても適している。
(洗浄剤、および物品の洗浄方法)
本発明の洗浄剤は、本発明の溶剤組成物からなることを特徴とする。
本発明の洗浄方法は、本発明の溶剤組成物を物品に接触させて、物品に付着した汚れを除去することを特徴とする。
具体的な洗浄方法としては、物品の表面に本発明の溶剤組成物を接触させればよい。特に限定されないが、たとえば、手拭き、浸漬、スプレー、揺動、超音波、蒸気洗浄またはこれらを組み合わせた方法等を採用すればよい。洗浄装置、洗浄条件等も公知のものを適宜選択できる。
たとえば、国際公開第2008/149907号公報に示される洗浄装置、および洗浄方法が挙げられる。
本発明の溶剤組成物を用いて国際公開第2008/149907号公報に示される洗浄装置にて洗浄を行う場合、第1浸漬槽内の本発明の溶剤組成物の温度を25℃以上、溶剤組成物の沸点未満とすることが好ましい。上記温度範囲内であれば、加工油等の汚れの洗浄を容易に行うことができ、超音波による洗浄効果が高い。また、第2浸漬槽内の本発明の溶剤組成物の温度を10〜35℃とすることが好ましい。上記温度範囲内であれば、すすぎ洗浄効果が高い。また洗浄性の点から第2浸漬槽の溶剤組成物の温度より第1浸漬槽内の本発明の溶剤組成物の温度が高いことが好ましい。
本発明の溶剤組成物が適用可能な物品の材料としては、金属、樹脂、エラストマー、ガラス、セラミックスが挙げられる。また、物品としては、これらの2種以上の材料を有する複合材料からなる物品であってもよい。複合材料としては、金属と樹脂の積層体等が挙げられる。特に、本発明の溶剤組成物は、HCFO−1233ydを使用できなかった、ABS樹脂、PC、PS、PES等の樹脂を含む材料からなる物品に対しても使用できる。
物品の具体例としては、繊維製品、医療器具、電気機器、精密機械、光学機器、車両・乗物・輸送機関およびそれらの部品等が挙げられる。電気機器、精密機械、光学物品およびそれらの部品の具体例としては、IC、コンデンサ、プリント基板、マイクロモーター、リレー、ベアリング、光学レンズ、ガラス基板等が挙げられる。車両・乗物・輸送機関およびそれらの部品の具体例としては、ボディ、ブレーキ部品、サスペンション、ホイール等が挙げられる。特に、本発明の溶剤組成物は、溶剤組成物に接触する物品表面の少なくとも一部の材料が上記樹脂等の樹脂材料である、物品に対しても使用できる。
本発明の洗浄方法において、洗浄除去される付着物としては、各種被洗浄物に付着した、フラックス、加工油、離型剤、これらを介して付着した塵埃等が挙げられる。加工油としては、切削油、焼き入れ油、圧延油、潤滑油、機械油、プレス加工油、打ち抜き油、引き抜き油、組立油、線引き油、ブレーキフルード等が挙げられる。本発明の溶剤組成物は従来の溶剤組成物であるHFCやHFE等と比較してこれら油類への溶解性に優れることから、これら油類からなる汚れの洗浄に用いることが好ましい。
(塗膜形成用組成物、塗膜付き基材の製造方法)
本発明の溶剤組成物は、不揮発性有機化合物の塗膜を形成するための溶剤としても使用できる。
本発明の塗膜形成用組成物は、不揮発性有機化合物および本発明の溶剤組成物を含むことを特徴とする。
本発明の塗膜付き基材の製造方法は、本発明の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布した後、本発明の溶剤組成物を蒸発除去して、不揮発性有機化合物の塗膜を形成することを特徴とする。
本発明の塗膜形成用組成物は、通常、本発明の溶液組成物に不揮発性有機化合物を溶解した溶液状の組成物として調製される。塗膜形成用組成物の調製方法は、不揮発性有機化合物を所定の割合で本発明の溶剤組成物に均一に溶解できる方法であれば特に制限されない。本発明の塗膜形成用組成物は基本的には不揮発性有機化合物と本発明の溶剤組成物のみで構成される。
本発明の塗膜形成用組成物(100質量%)中の不揮発性有機化合物の含有量は、0.01〜50質量%が好ましく、0.05〜30質量%がより好ましく、0.1〜20質量%が特に好ましい。不揮発性有機化合物の含有量が上記範囲内であれば、塗膜形成用組成物を塗布したときの塗布膜の膜厚、および溶剤組成物の蒸発除去(以下、乾燥ともいう。)後の不揮発性有機化合物塗膜の厚さを適正範囲に調製しやすい。
ここで、本発明における不揮発性有機化合物は、沸点が本発明の溶剤組成物より高く、溶剤組成物が蒸発した後も有機化合物が表面に残留するものをいう。不揮発性有機化合物として、具体的には、物品に潤滑性付与するための潤滑剤、金属部品の防錆効果を付与するための防錆剤、物品に撥水性を付与するための防湿コート剤、物品へ防汚性能を付与するための指紋除去付着防止剤等の防汚コート剤等が挙げられる。本発明の塗膜付き基材の製造方法において、溶解性の点から不揮発性有機化合物として潤滑剤を用いることが好ましい。
潤滑剤は、2つの部材が互いの面を接触させた状態で運動するときに、接触面における摩擦を軽減し、熱の発生や摩擦損傷を防ぐために用いるものを意味する。潤滑剤は、液体(オイル)、半固体(グリース)、固体のいずれの形態であってもよい。
潤滑剤としては、本発明の溶剤組成物への溶解性が優れる点から、鉱物油系潤滑剤、合成油系潤滑剤、フッ素系潤滑剤またはシリコーン系潤滑剤が好ましい。なお、フッ素系潤滑剤とは、分子内にフッ素原子を有する潤滑剤を意味する。また、シリコーン系潤滑剤とは、シリコーンを含む潤滑剤を意味する。塗膜形成用組成物に含まれる潤滑剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。フッ素系潤滑剤とシリコーン系潤滑剤は、それぞれを単独で使用してもよく、それらを併用してもよい。
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂粉末等のフッ素系固体潤滑剤が挙げられる。フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。たとえば、製品名「クライトックス(登録商標)GPL102」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS−65」(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。フッ素グリースとしては、パーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンの低重合物等のフッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。たとえば、製品名「クライトックス(登録商標)グリース240AC」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイルグリースDG−203」、「デムナムL65」、「デムナムL100」、「デムナムL200」(以上、ダイキン株式会社製)、「スミテックF936」(住鉱潤滑剤株式会社製)、「モリコート(登録商標)HP−300」、「モリコート(登録商標)HP−500」、「モリコート(登録商標)HP−870」、「モリコート(登録商標)6169」等が挙げられる。
シリコーン系潤滑剤としては、シリコーンオイルやシリコーングリースが挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、側鎖や末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルが好ましい。たとえば、製品名「信越シリコーンKF−96」、「信越シリコーンKF−965」、「信越シリコーンKF−968」、「信越シリコーンKF−868」、「信越シリコーンKF−99」、「信越シリコーンKF−50」、「信越シリコーンKF−54」、「信越シリコーンHIVAC F−4」、「信越シリコーンHIVAC F−5」、「信越シリコーンKF−56A」、「信越シリコーンKF−995」、「信越シリコーンKF−868」、「信越シリコーンKF−859」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」、「MDX4−4159」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。シリコーングリースとしては、前記に挙げた種々のシリコーンオイルを基油として、金属石けん等の増ちょう剤、各種添加剤を配合した製品が好ましい。たとえば、製品名「信越シリコーンG−30シリーズ」、「信越シリコーンG−40シリーズ」、「信越シリコーンFG−720シリーズ」、「信越シリコーンG−411」、「信越シリコーンG−501」、「信越シリコーンG−6500」、「信越シリコーンG−330」、「信越シリコーンG−340」、「信越シリコーンG−350」、「信越シリコーンG−630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤とは、空気中の酸素によって容易に酸化されて錆を生じる金属の表面を覆い、金属表面と酸素を遮断することで金属材料の錆を防止するために用いるものを意味する。防錆剤としては、鉱物油、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテルのような合成油が挙げられる。
防湿コート剤の製品例としては、トパス5013、トパス6013、トパス8007(以上、ポリプラスチックス社製)、ゼオノア1020R、ゼオノア1060R(以上、日本ゼオン社製)、アペル6011T、アペル8008T(以上、三井化学社製)、SFE−DP02H、SNF−DP20H(以上、セイミケミカル社製)が挙げられる。指紋付着防止剤等の防汚コート剤の製品例としては、オプツールDSX、オプツールDAC(以上、ダイキン工業社製)フロロサーチFG−5000(以上、フロロテクノロジー社製)SR−4000A(以上、セイミケミカル社製)が挙げられる。
本発明の塗膜形成用組成物を基材表面に塗布して基材表面に塗膜形成用組成物の膜を形成し、次いで、基材表面に形成された塗膜形成用組成物の膜から溶剤組成物を蒸発除去することにより、基材表面に不揮発性有機化合物からなる塗膜が形成される。
本発明の塗膜形成用組成物の塗布方法としては、たとえば、刷毛による塗布、スプレーによる塗布、物品を塗膜形成用組成物に浸漬することによる塗布、塗膜形成用組成物を吸い上げることによりチューブや注射針の内壁に塗膜形成用組成物を接触させる塗布方法等が挙げられる。
塗膜形成用組成物から溶剤組成物を蒸発除去する方法としては、公知の乾燥方法が挙げられる。乾燥方法としては、たとえば、風乾、加熱による乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、20〜100℃が好ましい。
本発明の塗膜付き基材の製造方法により、基材表面に潤滑剤、防錆剤、防湿コート剤、防汚コート剤等を含む塗膜を形成した塗膜付き基材を製造することができる。すなわち、塗膜形成用組成物が塗布される基材としては、金属、樹脂、ゴム、ガラス、セラミックス等、様々な材料からなる基材が採用される。また、本発明の塗膜形成用組成物は、樹脂材料を含む物品に対して影響なく塗布することができる。
塗膜付き基材の具体例としては、フッ素系潤滑剤が用いられたものとして、産業機器、パーソナルコンピュータやオーディオ機器におけるCDやDVDのトレー部品、プリンタ、コピー機器、フラックス機器等の家庭用機器またはオフィス用機器等が挙げられる。シリコーン系潤滑剤が用いられたものとして、注射器やシリンダ、医療用チューブ部品、金属刃、カテーテル等が挙げられる。防湿コート剤や防汚コート剤が用いられたものとして、プラスチック材、ゴム在、金属材、ガラス材、実装回収板等への防湿性や防汚性を付与するために用いられた機器が挙げられる。
本発明の溶剤組成物は、噴射剤と溶剤組成物に溶解した溶質とを含むエアゾール組成物として用いることもできる。噴射剤としては液化ガスおよび圧縮ガスが挙げられる。エアゾール組成物における液化ガスとしては、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)、プロパン、ブタン、イソブタン、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)等が挙げられる。一方、圧縮ガスとしては、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素等が挙げられる。
(熱移動媒体および熱サイクルシステム)
本発明の溶剤組成物は、熱サイクルシステム用の作動媒体(熱移動媒体)として用いることができる。すなわち、本発明は、本発明の溶剤組成物を含む熱移動媒体を提供する。本発明の熱移動媒体は、物質を加熱したり冷却したりする熱サイクルシステムに適用できる。
熱サイクルシステムとしては、ランキンサイクルシステム、ヒートポンプサイクルシステム、冷凍サイクルシステム、熱輸送システム、二次冷媒冷却システム等が挙げられる。
以下、熱サイクルシステムの一例として、冷凍サイクルシステムについて説明する。
冷凍サイクルシステムとは、蒸発器において作動冷媒は負荷流体により熱エネルギーを除去することにより、負荷流体を冷却し、より低温に冷却するシステムである。冷凍サイクルシステムでは、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機と、圧縮された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器と、凝縮器から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁と、膨張弁から排出された作動媒体Dを加熱して高温高圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器と、蒸発器に負荷流体Eを供給するポンプと、凝縮器に流体Fを供給するポンプとから構成されるシステムである。
さらに、本発明の熱移動媒体は二次循環冷却システムにも適用できる。
二次循環冷却システムとは、アンモニアや炭化水素冷媒からなる一次冷媒を冷却する一次冷却手段と、二次冷却手段システム用二次冷媒(以下、「二次冷媒」という。)を循環させて被冷却物を冷却する二次循環冷却手段と、一次冷媒と二次冷媒とを熱交換させ、二次冷媒を冷却する熱交換器と、有するシステムである。この二次循環冷却システムにより、被冷却物を冷却できる。本発明の熱移動媒体は、二次冷媒としての使用に好ましい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。例2〜8が本発明の溶剤組成物の実施例、例1が比較例である。
(製造例:HCFO−1233ydの製造)
国際公開第2017/018412号公報の記載の方法に従って、HCFO−1233yd(E)およびHCFO−1233yd(Z)の異性体混合物を製造した。さらに、精製により、HCFO−1233yd(E)、HCFO−1233yd(Z)を製造した。
(製造例:HCFO−1224ydの製造)
国際公開第2017/110851号公報の記載の方法に従って、HCFO−1224yd(E)およびHCFO−1224yd(Z)の異性体混合物を製造した。上記異性体混合物を国際公開第2017/146190号公報に記載の方法により精製して、HCFO−1224yd(E)、HCFO−1224yd(Z)を製造した。
(HCFO−1233ydの調製)
実施例に用いたHCFO−1233ydは、HCFO−1233yd(Z)/HCFO−1233yd(E)で表される質量比が95/5となるように混合し、p−メトキシフェノールを0.01質量%となるように添加した。
(HCFO−1224ydの調製)
実施例に用いたHCFO−1224ydは、HCFO−1224yd(Z)/HCFO−1224yd(E)で表される質量比が99/1となるように混合した。
(溶剤組成物の調製)
HCFO−1233ydとHCFO−1224ydとを、表1に示す質量比となるように混合して、例1〜8の溶剤組成物を調製した。
(各種油類への溶解性の評価)
96ccのハイパーグラスシリンダー(耐圧硝子工業株式会社製)の合計が45gとなるようにHCFO−1233ydおよびHCFO−1224ydをそれぞれ表1に示す量で調製し、ハイパーグラスシリンダーに油類(出光興産株式会社製、ダフニマーグプラスLA−5および株式会社富士化工研究所製、ブレーキフルード2500H−Aおよび信越化学工業株式会社製、信越シリコーンKF−96−50csおよび日本ソルベー株式会社製、FOMBLIN Y25)の5gを添加した。溶剤組成物と油類を混合し、25℃で2時間静置した後の溶液の状態(溶解性)を下記基準にて溶解性を評価した。
結果を表1に示す。なお、表1中の「LA−5」は上記ダフニマーグプラスLA−5をいい、「2500H−A」は上記ブレーキフルード2500H−Aをいい、「KF」は上記KF−96−50csをいい、「Y25」は上記FOMBLIN Y25をいう。
〇:均一に溶解。
×:明らかな白濁もしくは二層分離。
(樹脂材料への影響評価)
96ccのハイパーグラスシリンダー(耐圧硝子工業株式会社製)に、溶剤組成物の合計が80gとなるようにHCFO−1233ydおよびHCFO−1224ydをそれぞれ表1に示す量で調製し、ABS樹脂(ABS)、PC、PS、PESのテストピース(20mm×7.5mm×厚さ2mm)を1枚ずつ入れた。ハイパーグラスシリンダーを25℃で5分間静置した後、テストピースを取出し、下記基準にて外観を評価した。結果を表1に示す。
〇:テストピースに外観変化が見られない。
△:テストピースにわずかな変色・表面の変化が見られた。
×:テストピースに明らかな変色および表面の溶解が見られる。
Figure 2021105141
(フラックス洗浄性能評価)
くし型基板(導体幅:0.40mm、導体間隔:0.19mm、重ね代:15.87mm、基板全体寸法:50×50mm)に洗浄用ポストフラックス(弘輝社製、JS−15CAT)を塗布し、100℃で10分間乾燥後、260℃の噴流式鉛半田槽にて半田付け後、一晩静置して半田付けした基板を作製した。
上記により得られた基板について、表1に示す例1〜8の溶剤組成物を用いて下記の方法にて洗浄試験を実施した。
洗浄工程は、溶剤組成物を500ml入れた500mlのガラス製ビーカーに出力が200W、周波数が35kHzの超音波を照射した液温が45℃の浸漬洗浄を3分間、さらに溶剤組成物を500mlいれた500mlのガラス製ビーカーに浸漬してすすぎ洗浄を3分間行い、最後に冷却コイルを取り付けた2000mlのビーカーで上記洗浄を3分間実施した。すると、例2〜8において、基板から残渣を除去できた。また、試験片に付着した溶剤組成物はすぐに乾燥した。
(潤滑油の塗膜性能評価)
例1〜8の溶剤組成物に、潤滑油(信越シリコーンKF−96−50csおよび日本ソルベー株式会社製、FOMBLIN Y25)を、溶剤組成物と潤滑油の合計量に対して0.5質量%になるように溶解した。さらに、SUS304の試験片(25mm×30mm×厚さ2mm)の表面に、上記で得られた塗膜形成用組成物を塗布し、19〜21℃で風乾することにより、SUS304の表面に潤滑剤塗膜を形成した。例2〜8の溶剤組成物を塗布溶剤として用いたいずれの例においても、目視による評価で均一に塗膜が形成されていた。
(エアゾール組成物での洗浄性能評価)
SUS304の試験片(25mm×30mm×厚さ2mm)を金属加工油(出光興産株式会社製、ダフニマーグプラスLA−5)に1分間浸漬し、引き揚げた後一晩静置したものをテストピースとした。
例1〜8の溶剤組成物に、昇圧剤(COまたはN)を、溶剤組成物/昇圧剤で表される質量比が、95/5となるようにスプレー缶に充填した。このスプレー缶から溶剤組成物を噴射したところ、例2〜8において、試験片から金属加工油を除去できた。また、試験片に付着した溶剤組成物はすぐに乾燥した。昇圧剤の種類で洗浄性能に影響は見られなかった。
(エアゾール組成物での塗膜性能評価)
例1〜8の溶剤組成物に、潤滑油(信越シリコーンKF−96−50csおよび日本ソルベー株式会社製、FOMBLIN Y25)を、溶剤組成物と潤滑油の合計量に対して0.5質量%になるように溶解した。
上記で得られた塗膜形成用組成物に、昇圧剤(COまたはN)を、塗膜形成用組成物/昇圧剤で表される質量比が、95/5となるようにスプレー缶に充填した。このスプレー缶から塗膜形成用組成物を噴射したところ、例2〜8において、試験片の表面に目視による評価で均一に塗膜が形成されていた。また、試験片に付着した溶剤組成物はすぐに乾燥した。昇圧剤の種類で塗膜性能に影響は見られなかった。
本発明の溶剤組成物は、地球環境に悪影響を及ぼさず、溶剤としての性能に優れるため、洗浄、塗布用途、熱移動媒体等の広範囲の工業用途に有用である。特に、表面が樹脂材料からなる物品に付着する塵埃、油類等の汚れの除去として有用である。

Claims (15)

  1. 1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンと、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンとを含む溶剤組成物。
  2. 1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンがZ異性体、E異性体またはその両方の混合物である、請求項1に記載の溶剤組成物。
  3. 1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンがZ異性体、E異性体またはその両方の混合物である、請求項1に記載の溶剤組成物。
  4. 前記溶剤組成物の全質量における、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンと、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンとの合計の含有量が90質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶剤組成物。
  5. 前記溶剤組成物において、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンに対する1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンの含有割合が質量比で、1/99〜99/1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶剤組成物。
  6. さらに、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンの分解を抑制する安定剤を含む、請求項5に記載の溶剤組成物。
  7. 前記安定剤の含有量が、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンに対して1質量ppm〜5質量%である、請求項6に記載の溶剤組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶剤組成物からなる洗浄剤。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶剤組成物を物品に接触させて、前記物品の表面に付着した汚れを除去することを特徴とする洗浄方法。
  10. 前記溶剤組成物に接触する物品表面の少なくとも一部の材料が樹脂材料である、請求項9に記載の洗浄方法。
  11. 不揮発性有機化合物および請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含むことを特徴とする塗膜形成用組成物。
  12. 請求項11に記載の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布した後、前記溶剤組成物を蒸発除去して、前記不揮発性有機化合物を含む塗膜を形成することを特徴とする塗膜付き基材の製造方法。
  13. 前記溶剤組成物に接触する前記基材表面の少なくとも一部の材料が樹脂材料である、請求項12に記載の塗膜付き基材の製造方法。
  14. 溶質、噴射剤および請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含むことを特徴とするエアゾール組成物。
  15. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含むことを特徴とする、熱サイクルシステム用の熱移動媒体。
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