JP2022014719A - 亜鉛電池の状態検知方法および電源システム - Google Patents

亜鉛電池の状態検知方法および電源システム Download PDF

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Abstract

Figure 2022014719000001
【課題】亜鉛電池における電解液中の水分の減少状態を正確に検知できる、亜鉛電池の状態検知方法及び亜鉛電池を備える電源システムを提供する。
【解決手段】この状態検知方法は、亜鉛電池の周辺温度と、単位時間当たりの亜鉛電池の電解液中における水分の減少率あるいは減少量である減液評価値との関係を示すデータを保持する保持ステップと、亜鉛電池10の周辺温度を測定する測定ステップと、亜鉛電池10の状態を検知する検知ステップと、を含み、検知ステップにおいて、所定時間の間隔で測定した周辺温度を基にデータを参照して、当該周辺温度に対応する減液評価値を特定し、減液評価値に所定時間を乗じた値を繰り返し積算することで、水分の合計の減少率あるいは減少量を算出し、算出した合計の減少率あるいは減少量を基に補水を促すメッセージを出力する。
【選択図】図6

Description

本発明は、亜鉛電池の状態検知方法および電源システムに関する。
特許文献1には、鉛蓄電池の電解液中の水分の減少状態を推定する装置に関する技術が開示されている。この文献に記載された装置は、蓄電池の端子間電圧を計測し、計測した端子間電圧が所定値以上である時間を積算し、積算した時間が所定値になった場合に補水を促す告知を表示している。
特開2004-288588号公報
上述した従来の技術においては、蓄電池の周辺温度の変化に応じて逐次変化する電解液中の水分の減少率を考慮した水分の減少状態の推定は困難である。特に、亜鉛電池を対象とする場合には、運用期間が長くなった際には周辺温度の変化に対する水分の減少率の変化が大きくなるため、従来の技術によっては、正確な水分の減少状態の推定が困難となる。
そこで、亜鉛電池における電解液中の水分の減少状態を正確に検知できる、亜鉛電池の状態検知方法及び亜鉛電池を備える電源システムを提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る亜鉛電池の状態検知方法は、亜鉛電池の状態を検知する方法であって、亜鉛電池の周辺温度と、単位時間当たりの亜鉛電池の電解液中における水分の減少率あるいは減少量である減液評価値との関係を示すデータを保持する保持ステップと、亜鉛電池の周辺温度を測定する測定ステップと、亜鉛電池の状態を検知する検知ステップと、を含み、検知ステップにおいて、所定時間の間隔で測定した周辺温度を基にデータを参照して、当該周辺温度に対応する減液評価値を特定し、減液評価値に所定時間を乗じた値を繰り返し積算することで、水分の合計の減少率あるいは減少量を算出し、算出した合計の減少率あるいは減少量を基に補水を促すメッセージを出力する。
本発明の一側面に係る電源システムは、亜鉛電池と、亜鉛電池の状態を検知する検知部と、を備え、検知部は、亜鉛電池の周辺温度と、単位時間当たりの亜鉛電池の電解液中における水分の減少率あるいは減少量である減液評価値との関係を示すデータを保持し、亜鉛電池の周辺温度を測定し、所定時間の間隔で測定した周辺温度を基にデータを参照して、当該周辺温度に対応する減液評価値を特定し、減液評価値に所定時間を乗じた値を繰り返し積算することで、水分の合計の減少率あるいは減少量を算出し、算出した合計の減少率あるいは減少量を基に補水を促すメッセージを出力する。
これらの状態検知方法及び電源システムでは、亜鉛電池の周辺温度と単位時間当たりの電解液中の水分の減少率或いは減少量である減液評価値との関係を示すデータが予め保持され、所定時間の間隔で測定した亜鉛電池の周辺温度を基にデータを参照することによって、減液評価値が特定され、その値に所定時間を乗じた値を繰り返し積算することで水分の合計の減少率或いは減少量が算出され、この算出結果を基に補水を促すメッセージが出力される。これにより、周辺温度の変化に応じた電解液中の水分の減少率あるいは減少量を逐次考慮した水分の合計の減少率あるいは減少量を算出することができ、その算出結果を用いることで、水分の減少を正確に検知したメッセージ出力が可能となる。
ここで、保持ステップでは、減液評価値として、充電容量当たりの水分の減少率あるいは減少量を示すデータを保持し、測定ステップでは、亜鉛電池における充電電流をさらに測定し、検知ステップでは、所定時間間隔の間に測定した充電電流を時間積分することで充電容量を計算し、充電容量を乗算することによって水分の合計の減少率あるいは減少量を補正してもよい。亜鉛電池では、充電する充電容量によっても電解液中の水分の減少率が大きく左右される。亜鉛電池における充電電流を測定し、それを基に充電容量を計算し、その充電容量を用いて水分の合計の減少率あるいは減少量を補正することで、さらに正確な水分の合計の減少率あるいは減少量の算出が可能となる。その結果、補水を促すメッセージを適切なタイミングで出力できる。
また、保持ステップでは、亜鉛電池の運用期間毎にデータを保持し、検知ステップでは、亜鉛電池の運用期間の経過に応じたデータを用いて、減液評価値を特定してもよい。この場合、運用期間の経過に応じた減液評価値を用いた水分の減少率或いは減少量の正確な算出が実現され、運用期間を通じた水分の合計の減少率あるいは減少量をより正確に算出できる。
また、検知ステップでは、算出した合計の減少率あるいは減少量が、所定値を超えたことを契機に、メッセージを出力してもよい。この場合、補水を促すメッセージを、合計の減少率あるいは減少量に応じた適切なタイミングで出力できる。
また、検知ステップでは、メッセージを、水分の合計の減少率あるいは減少量を視覚的に示すメッセージとして出力してもよい。この場合、補水を促すメッセージを視覚的に訴えるように出力することができる。
本発明の一側面によれば、亜鉛電池における電解液中の水分の減少状態を正確に検知できる、亜鉛電池の状態検知方法及び亜鉛電池を備える電源システムを提供することができる。
電源システム及びその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。 制御部のハードウェア構成例を示す図である。 運用中における亜鉛電池のSOCの時間変化を示すグラフである。 様々な周辺温度の環境下における亜鉛電池10の電解液中の水分の減少率と電源システム1の運用期間との関係を示すグラフである。 制御部のメモリ内に保持される減液評価値データが示す関係のグラフである。 本実施形態の亜鉛電池10の状態検知方法を示すフローチャートである。 様々な周辺温度の環境下における充電容量あたりの減液率と電源システム1の運用期間との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照しながら本発明による亜鉛電池の状態検知方法および電源システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、亜鉛電池とは、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、及び銀亜鉛電池等、負極に亜鉛を用いる電池の概念である。本実施形態にかかる亜鉛電池には、ニッケル亜鉛電池を採用する。
図1は、電源システム1及びその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。電源システム1は、蓄電池の充電状態を維持しつつ未使用状態で待機させ、必要に応じて蓄電池の電力を供給する。電源システム1が適用される場面は限定されず、例えば、電源システム1は固定物にも移動体にも適用可能である。固定物への適用の例として、電源システム1は、UPSとして家庭、オフィス、工場、農場等の様々な場所で利用され得る。
電源システム1は、電源システム1に電力を供給可能な供給要素2と、電源システム1から電力を受け取ることが可能な需要要素(負荷)4との間に設けられる。電源システム1と供給要素2とは交流電流が流れる配線6Aを介して電気的に接続され、需要要素4と電源システム1とは、交流電流が流れる配線6Bを介して電気的に接続される。供給要素2から出力された電力は、配線6Aを通じて電源システム1に蓄えられ、また配線6A,6Bを通じて需要要素4に供給される。電源システム1に蓄えられた電力は、配線6Bを通じて需要要素4に供給される。
供給要素2は、電源システム1に電力を供給可能な装置または設備である。供給要素2の種類は何ら限定されない。例えば、供給要素2は、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置であってもよい。発電方法および発電装置の種類は何ら限定されず、例えば、発電装置は太陽光発電装置でもよいし風力発電機でもよい。あるいは、供給要素2は、発電、変電、送電、および配電を統合した商用電源の設備である外部の電力系統であってもよい。外部の電力系統は、例えば電力会社により提供される。
需要要素4は、電源システム1から電力を受け取ることが可能な負荷(装置または設備)である。需要要素4の種類も何ら限定されない。需要要素4は、電力を消費する1以上の機器または装置の集合である負荷であってもよい。負荷の例として、1以上の家庭用または業務用の様々な電気機器の集合と、任意の装置の任意の構成要素とが挙げられる。
電源システム1は、コンバータ7、インバータ8、亜鉛電池10、バッテリ・コントロール・ユニット(Battery Control Unit:BCU)12、温度センサ13A、電流センサ13B、および制御部14を備える。BCU12、温度センサ13A、電流センサ13B、及び制御部14は、亜鉛電池10の状態を検知する検知部を構成する。コンバータ7の入力端は配線6Aを介して供給要素2と電気的に接続されており、コンバータ7の出力端は、直流電流が流れる配線6Cを介してインバータ8の入力端と電気的に接続されている。インバータ8の出力端は、配線6Bを介して需要要素4と電気的に接続されている。配線6Cの途中のノードNは、直流電流が流れる配線6Dを介して亜鉛電池10と電気的に接続されている。図1の例では電源システム1は1組の亜鉛電池10及びBCU12を備えるが、その組数は限定されず、2以上でもよい。複数の組が存在する場合に、亜鉛電池10の性能(例えば、定格容量、応答速度など)は統一されてもよいし、統一されなくてもよい。制御部14は、通信線を介してコンバータ7、インバータ8、及びBCU12と通信可能に接続される。
亜鉛電池10は、供給要素2から提供される電力を化学エネルギに変えて蓄える装置であり、充放電が可能である。亜鉛電池10は、直列に接続された複数のセルを含んで構成される。亜鉛電池10には制御機能としてのBCU12が接続されている。BCU12は、亜鉛電池10に関するデータを制御部14に送信する。
温度センサ13Aは、亜鉛電池10の周辺温度をセンシング(測定)するセンサユニットである。温度センサ13Aは、例えば、亜鉛電池10の筐体の側面に設けられ、亜鉛電池10の周辺の温度をセンシングする。この温度センサ13Aは、亜鉛電池10が複数のセルを含んで構成されている場合には、いずれかのセルの周辺に設けられてもよいし、それぞれのセルの周辺に複数で設けられてもよい。また、温度センサ13Aは、亜鉛電池10の周辺の温度をセンシングできればよく、亜鉛電池10の筐体から離れて設けられていてもよい。温度センサ13Aの出力はBCU12に電気的に接続されている。
電流センサ13Bは、亜鉛電池10に供給される充電電流をセンシング(測定)するセンサユニットである。電流センサ13Bは、例えば、亜鉛電池10の電極に電気的に接続された電流センサである。この電流センサ13Bは、亜鉛電池10全体で供給される充電電流をセンシングできればよく、亜鉛電池10が複数のセルを含んで構成されている場合には、いずれかのセルに設けられてもよいし、それぞれのセル毎に複数で設けられてもよい。電流センサ13Bの出力はBCU12に電気的に接続されている。
BCU12は、検知部を兼ねる。すなわち、BCU12は、亜鉛電池10の周辺温度を示すデータを、温度センサ13Aが出力する電気信号を基に取得する。また、BCU12は、亜鉛電池10の充電電流を示すデータを、電流センサ13Bが出力する電気信号を基に取得する。BCU12が取得した周辺温度及び充電電流を示すデータは、他のデータとともに制御部14に送信される。このとき、温度センサ13Aが亜鉛電池10のセルごとに複数で設けられている場合には、BCU12は、複数の温度センサ13Aの出力が示す周辺温度からそれらを代表する周辺温度を示すデータを送信する。代表する周辺温度とは、複数の温度センサ13Aの検出した周辺温度を平均した周辺温度、あるいは、複数の温度センサ13Aの検出した周辺温度から1つを選択した周辺温度である。また、電流センサ13Bが亜鉛電池10のセルごとに複数で設けられている場合には、BCU12は、複数の電流センサ13Bの出力が示す充電電流から特定される全体の充電電流を示すデータを送信する。なお、温度センサ13Aあるいは電流センサ13Bの出力は制御部14に接続され、周辺温度を示すデータあるいは充電電流を示すデータは、制御部14によって、温度センサ13Aあるいは電流センサ13Bの出力する電気信号を基に取得されてもよい。BCU12が制御部14に送信するデータとしては、亜鉛電池10における温度センサ13Aの設置個所を示すデータを含む。
コンバータ7及びインバータ8は、亜鉛電池10の充放電を制御する。コンバータ7は、電力を交流から直流に変換する装置であり、インバータ8は、電力を直流から交流に変換する装置である。交流入力側の電源異常(停電、電圧低下等)が発生した場合、亜鉛電池10に充電された直流電力をインバータ8で逆変換し、交流出力の供給を継続する。本実施形態の制御部14は、コンバータ7及びインバータ8の動作を制御することにより、亜鉛電池10の充放電を制御する。電源システム1に複数の亜鉛電池10が設けられている場合には、コンバータ7及びインバータ8は、制御部14の動作制御により、亜鉛電池10毎に充放電を制御する。充電モードでは、供給要素2から出力された電力の一部を亜鉛電池10に蓄え、放電モードでは、亜鉛電池10を強制的に放電させて需要要素4に電力を供給する。
制御部14は、亜鉛電池10の充電及び放電を制御するとともに亜鉛電池10の状態を検知するコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)である。図2は、制御部14のハードウェア構成例を示す図である。この図に示すように、制御部14は、プロセッサ141、メモリ142、通信インタフェース143、及び出力インタフェース144を有する。プロセッサ141は例えばCPUであり、メモリ142は例えばフラッシュメモリで構成されるが、制御部14を構成するハードウェア装置の種類はこれらに限定されず、任意に選択されてよい。制御部14の各機能は、プロセッサ141が、メモリ142に格納されているプログラムを実行することで実現される。例えば、プロセッサ141は、メモリ142から読み出したデータまたは通信インタフェース143を介して受信したデータに対して所定の演算を実行し、その演算結果を通信インタフェース143及び出力インタフェース144を介して他の装置に出力することで、該他の装置を制御する。例えば、他の装置としては、コンバータ7、インバータ8、ディスプレイ、スピーカ、ランプ、バイブレータ、警報装置等が挙げられる。あるいは、プロセッサ141は受信したデータまたは演算結果をメモリ142に格納する。制御部14は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータの集合(すなわち分散システム)で構成されてもよい。
例えばUPS等である電源システム1は、亜鉛電池10の電力を必要としない平常時においては、亜鉛電池10の充電状態を維持しつつ停電発生時まで待機させる(待機状態)。その際、制御部14は、亜鉛電池10を定電圧充電(フロート充電)によって充電させるように制御する。図3は、運用中における亜鉛電池10の充電電荷量の変化を模式的に示すグラフである。同図において、横軸は時間を表し、縦軸は充電電荷量の割合(SOC:State Of Charge)を表す。SOCは、亜鉛電池10の放電容量に対する充電電荷量の割合を示す。図3に示されるように、電源システム1は、停電等の不定期(ランダム)な要因が発生したタイミングTd1,Td2,Td3,…における放電動作と、その放電動作の間の充電期間P,P,P,…における充電動作を交互に繰り返すように、制御部14によって制御される。充電期間P,P,Pでは、定電圧充電(フロート充電)によって亜鉛電池10を充電するよう制御部14がコンバータ7を制御する。充電期間P,P,Pでは、フロート充電によって、初期においてSOCが0%から100%まで上昇し、その後はSOCが100%の状態(満充電状態)が維持される。なお、充電とは、配線6C,6Dから亜鉛電池10へ電力を供給し、電荷を亜鉛電池10において蓄えることをいう。
ここで、電源システム1においては、上記のような待機状態とフロート充電とを繰り返しながら運用期間が経過するに従って、亜鉛電池10のセルの電解液中の水分が次第に減少する。電源システム1の制御部14は、亜鉛電池10のセルの電解液中の水分の減少状態を検知する機能を有する。
図4は、様々な周辺温度の環境下における亜鉛電池10の電解液中の水分の減少率(減液率)(%)と、電源システム1の運用期間(日)との関係を示す。図4に示す関係は、亜鉛電池10自体の製造時に亜鉛電池10を対象に、あるいは亜鉛電池10と同種(同じ構成、同じ設計値)の亜鉛電池を対象に、予め所定の測定条件の下で測定されたものである。所定の測定条件は、電源システム1の運用時の条件に近づくように予め設定され、測定時の亜鉛電池10の周辺温度である「試験温度(°C)」と、亜鉛電池10を強制的に完全放電させて減液率を測定する周期である「確認間隔(日)」と、完全放電時に流す放電電流である「確認電流(C)」と、フロート充電の充電電圧である「フロート充電電圧(V)」とを含む。例えば、図4に示す関係を測定した際の測定条件は、「試験温度(°C)」を25°C、35°C、40°C、55°Cのそれぞれに固定し、「確認間隔(日)」を30日とし、「確認電流(C)」を4Cとし、「フロート充電電圧(V)」を1.825Vとした条件である。ここで、「確認電流(C)」は、1時間あたりに流す電荷量を放電容量の設計値(初期値)の単位で示す量であり、容量確認電流が“4C”とは、放電容量の設計値が0.25時間で完全放電される電流値である。
このように、運用期間の経過に応じて減液率が増加し、減液率の増加率は亜鉛電池10の周辺温度が上昇するに従って大きくなる。また、同じ周辺温度に維持された状態においても、運用期間によって減液率の増加率が変化している。
制御部14は、上述したような予め測定された電源システム1の運用期間と亜鉛電池10の減液率との関係を利用して、亜鉛電池10のセルの電解液中の水分の減少状態を検知する(状態検知処理)。詳細には、制御部14は、予め、亜鉛電池の周辺温度と、減液率の単位時間当たりの変化(減液評価値)との関係を示すデータ(以下、「減液評価値データ」という。)をメモリ142内に保持している。このデータは、予め測定された電源システム1の運用期間と減液率との関係を基に設定される。
図5は、メモリ142内に保持される減液評価値データが示す関係のグラフの例である。減液評価値データは、亜鉛電池10の周辺温度(°C)と、減液率の運用期間における単位時間当たりの変化(%/日)との関係を示す。減液率の単位時間当たりの変化は、それぞれの周辺温度において予め測定された運用期間と減液率との関係を示すグラフの傾きを基に設定される。減液評価値データは、この関係を近似した関数を特定するデータを含んでいてもよいし、この関係を示すルックアップテーブル(LUT)のデータ構造を有していてもよい。
ここで、メモリ142に保持する減液評価値データは、周辺温度と減液率の変化との1つの関係を示すものには限られない。すなわち、充電電圧データには、温度センサ13Aによる亜鉛電池10の周辺温度の測定箇所に応じた複数の関係を示す複数のデータが含まれていてもよい。
制御部14は、上述したような減液評価値データをメモリ142から参照しながら状態検知処理を実行する。すなわち、制御部14は、温度センサ13Aによってセンシングされた周辺温度を示すデータをBCU12から継続して取得し、そのデータの示す周辺温度を基に、所定時間間隔(例えば、1日毎)で定期的に周辺温度の代表値を算出し、その代表値を基に減液評価値データを参照し、代表値に対応する減液率の単位時間当たりの変化の値を特定する。代表値としては、所定時間の間の周辺温度の平均値が例示される。このとき、制御部14は、減液評価値データが関数を特定するデータである場合には、代表値をその関数に適用することによって減液率の単位時間当たりの変化の値を特定し、減液評価値データがLUTのデータ構造を有している場合には、代表値を基にLUTを検索し、代表値に近似される値に対応する減液率の単位時間当たりの変化の値を特定する。また、制御部14は、減液評価値データに亜鉛電池10の周辺温度の複数の測定箇所に応じた複数のデータが含まれる場合は、複数のデータのうちから、実際の測定箇所に対応する1つのデータを選択して、そのデータの示す関係を用いて減液率の単位時間当たりの変化の値を特定する。この選択は、予め電源システム1のユーザによる指定に基づいてなされてもよいし、複数のデータに対応する測定箇所に関するパラメータがメモリ142等に予め記憶され、制御部14により、実際の測定箇所に対応するデータが、そのパラメータとBCU12から受信された温度センサ13Aの設置個所を示すデータを基にその都度判別されてもよい。
そして、制御部14は、特定した減液率の単位時間当たりの変化の値に基づいて亜鉛電池10の電解液中における水分に関する合計の減液率を算出する。具体的には、制御部14は、特定した減液率の単位時間当たりの変化の値に対して、代表値の算出の時間間隔の期間を乗算し、乗算した値を前回算出した合計の減液率に積算することで、今回の合計の減液率を算出する。さらに、制御部14は、算出した合計の減液率が所定の閾値を超えたことを契機に、電源システム1のユーザに対して亜鉛電池10の補水を促すメッセージを出力する。メッセージの出力の態様としては、ディスプレイ又はランプ等を制御することによる減液率の程度を視覚的に示す(インジケータ等の)メッセージの出力、スピーカ又は警報装置を制御することによる補水を促す音声メッセージの出力、バイブレータを制御することによる振動の発生によるメッセージ出力、等が挙げられる。
ここで、電源システム1を用いた亜鉛電池10の状態検知方法について説明する。図6は、本実施形態の亜鉛電池10の状態検知方法を示すフローチャートである。この状態検知方法は、亜鉛電池10の周辺温度をモニターすることにより亜鉛電池10の電解液中の水分の量を監視する方法である。この状態検知方法による処理は、電源システム1が起動された後に開始される。
まず、亜鉛電池10あるいは亜鉛電池10と同種の亜鉛電池を対象にして得られた測定値を基に、減液評価値データが設定されてメモリ142内に保持される(ステップS01)。このステップS01は、最初の状態検知方法の処理の時あるいはその処理前に実行されればよく、毎回の状態検知方法の処理毎に実行される必要はない。そして、制御部14により、温度センサ13Aによって継続的にセンシングされた周辺温度に関する代表値が算出される(ステップS02)。
その後、制御部14によって、算出した代表値と、メモリ142内の減液評価値データとを基に、代表値に対応する減液率の単位時間当たりの変化の値が特定される(ステップS03)。次に、制御部14によって、特定した減液率の単位時間当たりの変化の値に代表値の算出の時間間隔の期間が乗算され、乗算された値を前回算出した合計の減液率に積算することによって、現在の合計の減液率が算出される(ステップS04)。その後、制御部14によって、現在の合計の減液率が所定の閾値を超えたか否かが判定される(ステップS05)。判定の結果、現在の合計の減液率が所定の閾値を超えた場合には(ステップS05;Yes)、制御部14によって補水を促すメッセージの出力が制御される(ステップS06)。
さらに、所定の時間間隔が経過したか否かが判定され(ステップS07)、所定時間間隔が経過した場合(ステップS07;Yes)、ステップS02~ステップS06の処理が繰り返される。このような動作により、亜鉛電池10の周辺温度のモニター結果に応じた亜鉛電池10の電解液中の水分状態の監視が所定の時間間隔で繰り返される。
以上に説明した本実施形態の亜鉛電池10の状態検知方法及び電源システム1によって得られる効果について説明する。前述したように、亜鉛電池の周辺温度と単位時間当たりの電解液中の水分の減少率である減液評価値との関係を示すデータが予め保持され、所定時間間隔で算出した亜鉛電池10の周辺温度の代表値を基にデータを参照することによって、減液評価値が特定され、その値に代表値の算出間隔の期間を乗じた値を繰り返し積算することで水分の合計の減少率が算出され、この算出結果を基に補水を促すメッセージが出力される。これにより、周辺温度の変化に応じた電解液中の水分の減少率を逐次考慮した水分の合計の減少率を算出することができ、その算出結果を用いることで、水分の減少を正確に検知したメッセージ出力が可能となり、亜鉛電池の長寿命化を促進することができる。
本実施形態では、算出した合計の減少率が所定の閾値値を超えたことを契機に、メッセージを出力している。この場合、補水を促すメッセージを、合計の減少率に応じた適切なタイミングで出力できる。
また、上記メッセージを、水分の合計の減少率を視覚的に示すメッセージとして出力している。この場合、補水を促すメッセージを視覚的に訴えるように出力することができる。
本発明による亜鉛電池の状態検知方法及び電源システムは、上述した実施形態の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記実施形態では、亜鉛電池10の電解液中の水分の減少率(減液率)を減液評価値として算出して水分の状態を検知しているが、減液評価値データに記録する値、及び算出する減液評価値として、電解液中の水分の減少量(減液量)を用いてもよい。このような場合でも、周辺温度の変化に応じた電解液中の水分の減少量を逐次考慮した水分の合計の減少量を算出することができ、水分の減少を正確に検知したメッセージ出力が可能となる。
また、上記実施形態では、亜鉛電池の運用期間毎に減液評価値データを保持し、検知ステップでは、亜鉛電池の運用期間の経過に応じた減液評価値データを用いて、減液評価値を特定してもよい。この場合、運用期間の経過に応じた減液評価値を用いた水分の減少率或いは減少量の正確な算出が実現され、運用期間を通じた水分の合計の減少率あるいは減少量をより正確に算出できる。
また、上記実施形態では、減液評価値データとして、亜鉛電池の充電容量当たりの水分の減少率(あるいは減少量)である減液評価値を示すデータが保持され、制御部14が、電流センサ13Bのセンシングを基に亜鉛電池10における充電容量を所定時間間隔で計算し、減液評価値に充電容量を乗算することによって合計の減液率(あるいは減液量)を補正してもよい。一般に、亜鉛電池では、充電する充電容量によっても電解液中の水分の減少率が大きく左右される。亜鉛電池10における充電容量を用いて合計の減液率を補正することで、さらに正確な合計の減液率の算出が可能となる。その結果、補水を促すメッセージをさらに適切なタイミングで出力できる。
図7には、上記の減液評価値データを設定するための測定結果を示す。図7に示すグラフは、様々な周辺温度の環境下における充電容量当たりの減液率と電源システム1の運用期間との関係を示しており、図4に示す関係を測定する際の測定条件と同様な測定条件下で得られた結果を示している。この関係が示すように、運用期間の経過に応じて充電容量当たりの減液率が増加し、減液率の増加率は亜鉛電池10の周辺温度が上昇するに従って大きくなる。また、同じ周辺温度に維持された状態においても、運用期間によって充電容量当たりの減液率の増加率が変化している。減液評価値データは、このような測定結果の値を基に、亜鉛電池の周辺温度と、充電容量当たりの減液率の単位時間当たりの変化の値との関係を示すデータに設定される。これに対して、制御部14は、所定の時間間隔で電流センサ13Bによって継続的にセンシングされた充電電流の値を時間積分することで充電容量を算出し、減液評価値に算出した充電容量を乗算することによって減液評価値を補正し、その値を合計の減液率を算出する際に使用する。
1…電源システム、2…供給要素、4…需要要素、6A~6D…配線、7…コンバータ、8…インバータ、10…亜鉛電池、12…BCU(制御部)、13A…温度センサ、13B…電流センサ、14…制御部、141…プロセッサ、142…メモリ、143…通信インタフェース、N…ノード。

Claims (6)

  1. 亜鉛電池の状態を検知する方法であって、
    前記亜鉛電池の周辺温度と、単位時間当たりの前記亜鉛電池の電解液中における水分の減少率あるいは減少量である減液評価値との関係を示すデータを保持する保持ステップと、
    前記亜鉛電池の周辺温度を測定する測定ステップと、
    前記亜鉛電池の状態を検知する検知ステップと、
    を含み、
    前記検知ステップにおいて、所定時間の間隔で測定した前記周辺温度を基に前記データを参照して、当該周辺温度に対応する前記減液評価値を特定し、前記減液評価値に前記所定時間を乗じた値を繰り返し積算することで、前記水分の合計の減少率あるいは減少量を算出し、算出した前記合計の減少率あるいは減少量を基に補水を促すメッセージを出力する、
    亜鉛電池の状態検知方法。
  2. 前記保持ステップでは、前記減液評価値として、充電容量当たりの前記水分の減少率あるいは減少量を示す前記データを保持し、
    前記測定ステップでは、前記亜鉛電池における充電電流をさらに測定し、
    前記検知ステップでは、所定時間間隔の間に測定した前記充電電流を時間積分することで充電容量を計算し、前記充電容量を乗算することによって前記水分の合計の減少率あるいは減少量を補正する、
    請求項1に記載の亜鉛電池の状態検知方法。
  3. 前記保持ステップでは、前記亜鉛電池の運用期間毎に前記データを保持し、
    前記検知ステップでは、前記亜鉛電池の運用期間の経過に応じた前記データを用いて、前記減液評価値を特定する、
    請求項1又は2に記載の亜鉛電池の状態検知方法。
  4. 前記検知ステップでは、算出した前記合計の減少率あるいは減少量が、所定値を超えたことを契機に、前記メッセージを出力する、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の亜鉛電池の状態検知方法。
  5. 前記検知ステップでは、前記メッセージを、前記水分の合計の減少率あるいは減少量を視覚的に示すメッセージとして出力する、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の亜鉛電池の状態検知方法。
  6. 亜鉛電池と、
    前記亜鉛電池の状態を検知する検知部と、
    を備え、
    前記検知部は、
    前記亜鉛電池の周辺温度と、単位時間当たりの前記亜鉛電池の電解液中における水分の減少率あるいは減少量である減液評価値との関係を示すデータを保持し、
    前記亜鉛電池の周辺温度を測定し、
    所定時間の間隔で測定した前記周辺温度を基に前記データを参照して、当該周辺温度に対応する前記減液評価値を特定し、前記減液評価値に前記所定時間を乗じた値を繰り返し積算することで、前記水分の合計の減少率あるいは減少量を算出し、算出した前記合計の減少率あるいは減少量を基に補水を促すメッセージを出力する、
    電源システム。
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