JP2021184348A - ニッケル亜鉛電池の状態推定方法、ニッケル亜鉛電池のsoc推定方法、及び電源システム - Google Patents

ニッケル亜鉛電池の状態推定方法、ニッケル亜鉛電池のsoc推定方法、及び電源システム Download PDF

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Abstract

【課題】充電状態で待機させる用途において使用中にニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定することが可能な、ニッケル亜鉛電池の状態推定方法及び電源システムを提供する。【解決手段】この方法は、ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる用途においてニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する方法であって、ニッケル亜鉛電池である複数の試験用電池を用意し、各試験用電池に対してそれぞれ異なる充電電圧を印加して充電を行いつつ各試験用電池の放電容量を測定して、放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に取得するステップと、推定対象であるニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値をデータから取得するステップと、取得した放電容量関連値に基づいて、推定対象であるニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定するステップと、を含む。【選択図】図5

Description

本発明は、ニッケル亜鉛電池の状態推定方法、ニッケル亜鉛電池のSOC推定方法、及び電源システムに関する。
特許文献1には、充電式のバッテリの劣化状態の推定方法に関する技術が開示されている。この方法は、バッテリの充放電電流を積算することによりクーロンカウント値を生成するステップと、バッテリの状態を監視するステップと、クーロンカウント値に基づいて、バッテリが所定電荷量、充放電されたことを検出するステップと、所定電荷量の充放電が検出されるたびに、バッテリの劣化を示す指標Xを、所定電荷量が充放電された期間において測定されたバッテリの状態(バッテリの温度及びSOC(State Of Charge))に応じた変化量ΔXだけ変化させるステップと、を含む。
特開2017−116522号公報
蓄電池を充電状態で待機させ、蓄電池の電力が必要となった場合に電源を蓄電池に切り替える電源システムが知られている。例えば、無停電電源システム(Uninterruptible Power Systems;UPS)では、商用電源を用いて充電した蓄電池を充電状態で待機させ、停電の際に、電源を商用電源から蓄電池に切り替える。また、近年、このような用途で用いられる電源システムの蓄電池として、亜鉛電池が注目されている。例えばニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有すると共に、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有する。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて、低コストといった利点を有する。
上記の電源システムでは、蓄電池が劣化状態を使用中に知得することが重要となる。蓄電池の劣化が進むと放電容量が次第に低下するので、蓄電池が劣化した状態で使用を続けると、蓄電池の電力が必要となったときに放電容量が不足して十分な電力を供給できないおそれがあるからである。例えば蓄電池を完全に放電し、再び満充電とするときの充電電流量を積算することにより放電容量値を得ることができるが、蓄電池の使用中においてそのような操作を行うことは困難である。また、蓄電池の劣化が進んで放電容量が低下すると、SOCを推定する際の精度も低下してしまう。
本発明の一側面は、充電状態で待機させる用途において使用中にニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定することが可能な、ニッケル亜鉛電池の状態推定方法及び電源システムを提供することを目的とする。また、本発明の別の側面は、充電状態で待機させる用途においてニッケル亜鉛電池のSOCを精度良く推定することが可能な、ニッケル亜鉛電池のSOC推定方法及び電源システムを提供することを目的とする。
本発明の一側面に係るニッケル亜鉛電池の状態推定方法は、ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる用途においてニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する方法であって、ニッケル亜鉛電池である複数の試験用電池を用意し、各試験用電池に対してそれぞれ異なる充電電圧を印加して充電を行いつつ各試験用電池の放電容量を測定して、放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に作成するステップと、推定対象であるニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値をデータから取得するステップと、取得した放電容量関連値に基づいて、推定対象であるニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定するステップと、を含む。
本発明の一側面に係る電源システムは、ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる電源システムであって、ニッケル亜鉛電池と、ニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する状態推定部と、試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に記憶するデータ記憶部と、を備える。状態推定部は、推定対象であるニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値をデータから取得し、取得した放電容量関連値に基づいて該ニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する。
本発明者の実験によれば、ニッケル亜鉛電池の劣化の進み具合は充電電圧の大きさに依存する。これらの状態推定方法及び電源システムでは、試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量関連値の経時変化に関するデータを充電電圧毎に予め取得しておき、そのデータを用いて、使用中のニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する。故に、充電状態で待機させる用途において使用中にニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定することができる。
上記の状態推定方法において、放電容量関連値が所定の閾値を下回った場合に、推定対象であるニッケル亜鉛電池の交換を促してもよい。この場合、ニッケル亜鉛電池の適切な交換タイミングを使用者に知らせることができる。
上記の状態推定方法において、複数の試験用電池に印加される充電電圧の最大値と最小値との差が0.10V以下であってもよい。鉛電池といった他の二次電池と異なり、ニッケル亜鉛電池においては、充電電圧のわずかな違いで劣化の進み具合が大きく変わる。試験用電池への充電電圧の最大値と最小値との差がこのような小さな値であることにより、ニッケル亜鉛電池の劣化状態を精度良く推定することができる。
上記の状態推定方法におけるデータを作成するステップでは、各試験用電池を複数の温度に設定し、各試験用電池の放電容量を各温度にて測定し、放電容量関連値の経時変化に関する充電電圧毎のデータを温度毎に作成し、放電容量関連値をデータから取得するステップでは、推定対象であるニッケル亜鉛電池の温度に更に基づいて、放電容量関連値をデータから取得してもよい。ニッケル亜鉛電池の劣化の進み具合は、ニッケル亜鉛電池の温度にも依存する。故に、放電容量関連値の経時変化に関する充電電圧毎のデータを温度毎に予め取得しておき、ニッケル亜鉛電池の温度に基づいて放電容量関連値をデータから取得することにより、ニッケル亜鉛電池の劣化状態を精度良く推定することができる。
本発明の一側面に係るニッケル亜鉛電池のSOC推定方法は、ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる用途においてニッケル亜鉛電池のSOCを推定する方法であって、ニッケル亜鉛電池である複数の試験用電池を用意し、各試験用電池に対してそれぞれ異なる充電電圧を印加して充電を行いつつ各試験用電池の放電容量を測定して、放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に作成するステップと、推定対象であるニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値をデータから取得するステップと、取得した放電容量関連値から得られる放電容量の値を満充電値として、推定対象であるニッケル亜鉛電池のSOCを推定するステップと、を含む。
本発明の別の側面に係る電源システムは、ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる電源システムであって、ニッケル亜鉛電池と、ニッケル亜鉛電池のSOCを推定するSOC推定部と、試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に記憶するデータ記憶部と、を備える。SOC推定部は、推定対象であるニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値をデータから取得し、取得した放電容量関連値から得られる放電容量の値を満充電値として該ニッケル亜鉛電池のSOCを推定する。
これらのSOC推定方法及び電源システムでは、試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量関連値の経時変化に関するデータを充電電圧毎に予め取得しておき、該データから得られる放電容量の値を満充電値として、ニッケル亜鉛電池のSOCを推定する。故に、ニッケル亜鉛電池の劣化により放電容量が低下した場合であっても、ニッケル亜鉛電池のSOCを精度良く推定することができる。
本発明の一側面によれば、充電状態で待機させる用途において使用中にニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定することが可能な、ニッケル亜鉛電池の状態推定方法及び電源システムを提供することができる。本発明の別の側面によれば、充電状態で待機させる用途においてニッケル亜鉛電池のSOCを精度良く推定することが可能な、ニッケル亜鉛電池のSOC推定方法及び電源システムを提供することができる。
電源システム及びその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。 制御部のハードウェア構成例を示す図である。 制御部の機能ブロックを示す図である。 データ記憶部に記憶されているデータテーブルを概念的に示す図である。 本実施形態のニッケル亜鉛電池の状態推定方法及びSOC推定方法を示すフローチャートである。 実験により得られた、ニッケル亜鉛電池の放電容量維持率と充電日数との関係を充電電圧毎に示すグラフである。 実験により得られた、ニッケル亜鉛電池の放電容量維持率と試験日数との関係を充電電圧毎に示すグラフである。
以下、添付図面を参照しながら本発明によるニッケル亜鉛電池の状態推定方法、ニッケル亜鉛電池のSOC推定方法、及び電源システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、電源システム1及びその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。電源システム1は、蓄電池の充電状態を維持しつつ未使用状態で待機させ、必要に応じて蓄電池の電力を供給する。電源システム1が適用される場面は限定されず、例えば、電源システム1は固定物にも移動体にも適用可能である。固定物への適用の例として、電源システム1は、UPSとして家庭、オフィス、工場、農場等の様々な場所で利用され得る。
電源システム1は、電源システム1に電力を供給可能な供給要素2と、電源システム1から電力を受け取ることが可能な需要要素(負荷)4との間に設けられる。電源システム1と供給要素2とは交流電流が流れる配線6Aを介して電気的に接続され、需要要素4と電源システム1とは、交流電流が流れる配線6Bを介して電気的に接続される。供給要素2から出力された電力は、配線6Aを通じて電源システム1に蓄えられ、また配線6A,6Bを通じて需要要素4に供給される。電源システム1に蓄えられた電力は、配線6Bを通じて需要要素4に供給される。
供給要素2は、電源システム1に電力を供給可能な装置または設備である。供給要素2の種類は何ら限定されない。例えば、供給要素2は、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置であってもよい。発電方法および発電装置の種類は何ら限定されず、例えば、発電装置は太陽光発電装置でもよいし風力発電機でもよい。あるいは、供給要素2は、発電、変電、送電、および配電を統合した商用電源の設備である外部の電力系統であってもよい。外部の電力系統は、例えば電力会社により提供される。
需要要素4は、電源システム1から電力を受け取ることが可能な装置または設備である。需要要素4の種類も何ら限定されない。需要要素4は、電力を消費する1以上の機器または装置の集合である負荷であってもよい。負荷の例として、1以上の家庭用または業務用の様々な電気機器の集合と、任意の装置の任意の構成要素とが挙げられる。
電源システム1は、コンバータ7、インバータ8、ニッケル亜鉛電池10、バッテリ・コントロール・ユニット(Battery Control Unit:BCU)12、温度センサ13、および制御部14を備える。コンバータ7の入力端は配線6Aを介して供給要素2と電気的に接続されており、コンバータ7の出力端は、直流電流が流れる配線6Cを介してインバータ8の入力端と電気的に接続されている。インバータ8の出力端は、配線6Bを介して需要要素4と電気的に接続されている。配線6Bの途中のノードNは、直流電流が流れる配線6Dを介してニッケル亜鉛電池10と電気的に接続されている。図1の例では電源システム1は1組のニッケル亜鉛電池10及びBCU12を備えるが、その組数は限定されず、2以上でもよい。複数の組が存在する場合に、ニッケル亜鉛電池10の性能(例えば、定格容量、応答速度など)は統一されてもよいし、統一されなくてもよい。制御部14は、通信線を介してコンバータ7、インバータ8、及びBCU12と通信可能に接続される。
ニッケル亜鉛電池10は、供給要素2から提供される電力を化学エネルギに変えて蓄える装置であり、充放電が可能である。ニッケル亜鉛電池10は、直列に接続された複数のセルを含んで構成される。ニッケル亜鉛電池10には制御機能としてのBCU12が接続されている。BCU12は、ニッケル亜鉛電池10に関するデータを制御部14に送信する。
BCU12は、SOC測定部を兼ねる。すなわち、BCU12は、ニッケル亜鉛電池10の充電状態(SOC)を測定する。例えば、BCU12は、ニッケル亜鉛電池10に通電された電流を計測し、積算することによりSOCを測定する。BCU12が測定したSOCに関する情報は、他のデータとともに制御部14に送信される。なお、SOCの算出に必要な情報(例えば電池の開回路電圧、放電電流量及び充電電流量、または放電電流の積算量および充電電流の積算量)をBCU12が制御部14に送信し、制御部14がSOCを算出してもよい。
SOCは、例えば次のようにして測定される。まず、ニッケル亜鉛電池10の充電中における、ニッケル亜鉛電池10へ流れる電流量を取得する。そして、該電流量から充電容量を算出する。次に、ニッケル亜鉛電池10の放電中における、ニッケル亜鉛電池10から流れる電流量を取得する。そして、該電流量から放電容量を算出する。これらの充電容量及び放電容量に基づいて、SOCを算出することができる。
コンバータ7及びインバータ8は、ニッケル亜鉛電池10の充放電を制御する。コンバータ7は、電力を交流から直流に変換する装置であり、インバータ8は、電力を直流から交流に変換する装置である。交流入力側の電源異常(停電、電圧低下等)が発生した場合、ニッケル亜鉛電池10に充電された直流電力をインバータ8で逆変換し、交流出力の供給を継続する。本実施形態の制御部14は、BCU12から得られるニッケル亜鉛電池10のSOCに基づいて、コンバータ7及びインバータ8の動作を制御することにより、ニッケル亜鉛電池10の充放電を制御する。充電モードでは、供給要素2から出力された電力の一部をニッケル亜鉛電池10に蓄え、放電モードでは、ニッケル亜鉛電池10を強制的に放電させて需要要素4に電力を供給する。
制御部14は、BCU12から得られたSOCをニッケル亜鉛電池10の劣化状態に応じて補正すると共に、ニッケル亜鉛電池10の充電及び放電を制御するコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)である。図2は、制御部14のハードウェア構成例を示す図である。この図に示すように、制御部14は、プロセッサ141、メモリ142、および通信インタフェース143を有する。プロセッサ141は例えばCPUであり、メモリ142は例えばフラッシュメモリで構成されるが、制御部14を構成するハードウェア装置の種類はこれらに限定されず、任意に選択されてよい。制御部14の各機能は、プロセッサ141が、メモリ142に格納されているプログラムを実行することで実現される。例えば、プロセッサ141は、メモリ142から読み出したデータまたは通信インタフェース143を介して受信したデータに対して所定の演算を実行し、その演算結果を他の装置に出力することで、該他の装置を制御する。あるいは、プロセッサ141は受信したデータまたは演算結果をメモリ142に格納する。制御部14は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータの集合(すなわち分散システム)で構成されてもよい。
例えばUPS等である電源システム1は、ニッケル亜鉛電池10の電力を必要としない平常時においては、ニッケル亜鉛電池10の充電状態を維持しつつ停電発生時まで待機させる。その際、制御部14は、ニッケル亜鉛電池10のSOCを、或る大きさ(例えば60%〜100%の範囲内)となるように制御する。この期間は、停電が発生しない限り、例えば数年(例えば約1年)といった長期間にわたって継続される。
ここで、制御部14におけるSOCの補正について説明する。図3は、制御部14の機能ブロックを示す図である。図3に示されるように、制御部14は、データ記憶部14aと、状態推定部14bと、SOC推定部14cと、警告部14dとを備える。データ記憶部14aは、例えば図2に示されたメモリ142によって実現される。状態推定部14b、SOC推定部14c、及び警告部14dは、例えば図2に示されたプロセッサ141が、メモリ142に格納されているプログラムを実行することにより実現される。
データ記憶部14aは、試験用のニッケル亜鉛電池10の放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に記憶する。図4は、データ記憶部14aに記憶されているデータテーブルTAを概念的に示す図である。図4に示されるように、このデータテーブルTAは、放電容量関連値(例えば放電容量維持率)と、経過時間及び充電電圧との関係をそれぞれ示す複数のデータテーブルTAaを含む。複数のデータテーブルTAaは、それぞれ異なる温度に対応している。このデータテーブルTAから、或る充電電圧、或る経過時間、及び或る温度に対応する一つの放電容量関連値が得られる。データテーブルTAは、例えば、ニッケル亜鉛電池である複数の試験用電池を用意し、各試験用電池に対してそれぞれ異なる充電電圧を印加して充電を行いつつ各試験用電池の放電容量を測定することにより得られる。
状態推定部14bは、ニッケル亜鉛電池10の劣化状態を推定する。具体的には、状態推定部14bは、データ記憶部14aからデータテーブルTAを読み出し、ニッケル亜鉛電池10の充電電圧、使用期間及び温度に対応する放電容量関連値をデータテーブルTAから取得する。ニッケル亜鉛電池10の温度は、温度センサ13からの電気信号により得られる。温度センサ13からの電気信号は、温度センサ13から制御部14に直接送られてもよく、温度センサ13からBCU12を介して制御部14に送られてもよい。状態推定部14bは、取得した放電容量関連値に基づいて、ニッケル亜鉛電池10の劣化状態を推定する。なお、劣化状態の推定とは、ニッケル亜鉛電池10の劣化状態を示す何らかの数値を算出又は取得することをいい、放電容量関連値からニッケル亜鉛電池10の放電容量の低下度合い(すなわち放電容量維持率)を算出する処理も劣化状態の推定に含まれる。
警告部14dは、状態推定部14b又はデータ記憶部14aから、ニッケル亜鉛電池10の充電電圧、使用期間及び温度に対応する放電容量関連値を取得する。警告部14dは、取得した放電容量関連値が所定の閾値を下回った場合に、推定対象であるニッケル亜鉛電池10の新品への交換を促す。所定の閾値は、例えば、放電容量関連値から算出される(放電容量関連値が放電容量維持率である場合には、その放電容量関連値である)放電容量維持率が80%以下となる場合に相当する値である。警告部14dは、例えば、ニッケル亜鉛電池10の交換を促すための警告画像を表示するディスプレイを含む。或いは、警告部14dは、ニッケル亜鉛電池10の交換を促すための信号を外部装置へ出力してもよい。
SOC推定部14cは、BCU12から得られた(或いは自ら算出した)ニッケル亜鉛電池10のSOCを補正することにより、より正確なSOCを推定する。具体的には、SOC推定部14cは、データ記憶部14aからデータテーブルTAを読み出し、ニッケル亜鉛電池10の充電電圧、使用期間及び温度に対応する放電容量関連値をデータテーブルTAから取得する。SOC推定部14cは、取得した放電容量関連値から得られる放電容量の値が満充電値(100%)となるように、BCU12から得られた(或いは自ら算出した)ニッケル亜鉛電池10のSOCを補正する。なお、SOC推定部14c自らがSOCを算出する場合、始めからデータテーブルTAの放電容量関連値を考慮してSOCを算出してもよい。
ここで、電源システム1を用いたニッケル亜鉛電池10の状態推定方法及びSOC推定方法について説明する。図5は、本実施形態のニッケル亜鉛電池10の状態推定方法及びSOC推定方法を示すフローチャートである。この方法は、ニッケル亜鉛電池10の充電状態を維持しつつ待機させる方法であって、データ取得ステップST1と、関連値取得ステップST2と、劣化状態推定ステップST3と、SOC推定ステップST4と、を含む。
データ取得ステップST1は、ニッケル亜鉛電池10の使用前に行われる。データ取得ステップST1では、ニッケル亜鉛電池である複数の試験用電池を用意し、各試験用電池に対してそれぞれ異なる充電電圧を印加して充電を行いつつ各試験用電池の放電容量を測定する。複数の試験用電池に印加される充電電圧の最大値と最小値との差は、例えば0.10V以下である。また、このデータ取得ステップST1では、各試験用電池を複数の温度に設定し、各試験用電池の放電容量を各温度にて測定する。これにより、放電容量関連値の経時変化に関する充電電圧毎のデータテーブルTAaを温度毎に作成する。作成した複数のデータテーブルTAaを含むデータテーブルTAは、データ記憶部14aに格納される。
関連値取得ステップST2では、状態推定部14bが、ニッケル亜鉛電池10の充電電圧、使用期間及び温度に対応する放電容量関連値を、データテーブルTAから取得する。前述したように、ニッケル亜鉛電池10の温度に関する情報は、温度センサ13から直接又は間接的に提供される。劣化状態推定ステップST3では、関連値取得ステップST2において取得した放電容量関連値に基づいて、状態推定部14bにてニッケル亜鉛電池10の劣化状態を推定する。放電容量関連値が所定の閾値を下回った場合には、必要に応じて、警告部14dによりニッケル亜鉛電池10の交換を促す。
SOC推定ステップST4では、関連値取得ステップST2において取得した放電容量関連値から得られる放電容量の値を満充電値(100%)として、ニッケル亜鉛電池10のSOCを推定する。推定されたSOCは、例えば制御部14によるニッケル亜鉛電池10の充放電制御に利用される。
以上に説明した本実施形態によるニッケル亜鉛電池10の状態推定方法、SOC推定方法、及び電源システム1によって得られる効果について説明する。本発明者の実験によれば、ニッケル亜鉛電池の劣化の進み具合は充電電圧の大きさに依存する。図6は、実験により得られた、ニッケル亜鉛電池の放電容量維持率と充電日数との関係を充電電圧毎に示すグラフである。ここで放電容量維持率とは、電池の初期の放電容量を、各充電電圧で所定の期間充電した後に取得した放電容量で除し、100を乗じた数値である(単位:%)。図6において、縦軸は放電容量維持率を表し、横軸は充電日数(単位:日)を表す。また、図7は、実験により得られた、ニッケル亜鉛電池の放電容量維持率と試験日数との関係を充電電圧毎に示すグラフである。これらの図において、縦軸は放電容量維持率(単位:%)を表し、横軸は試験日数(単位:日)を表す。これらの図において、グラフG11,G21は充電電圧が1.825Vである場合を示し、グラフG12,G22は充電電圧が1.83Vである場合を示し、グラフG13,G23は充電電圧が1.84Vである場合を示し、グラフG14,G24は充電電圧が1.85Vである場合を示し、グラフG15,G25は充電電圧が1.87Vである場合を示す。図6に示されるように、充電日数がまだ少ない期間においては、充電電圧が高いほど放電容量維持率が高くなる傾向がある。一方、図7に示されるように、充電日数が長くなると、放電容量維持率の低下度合いが充電電圧によって異なり、充電電圧によっては放電容量維持率が急速に低下する。このことは、ニッケル亜鉛電池の劣化の進み具合が充電電圧に依存することを示唆する。
本実施形態の状態推定方法及び電源システム1では、試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量関連値の経時変化に関するデータテーブルTAを充電電圧毎に予め取得しておき、そのデータテーブルTAを用いて、使用中のニッケル亜鉛電池10の劣化状態を推定する。故に、充電状態で待機させる用途において使用中にニッケル亜鉛電池10の劣化状態を推定することができる。また、本実施形態のSOC推定方法及び電源システム1では、試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量関連値の経時変化に関するデータテーブルTAを充電電圧毎に予め取得しておき、データテーブルTAから得られる放電容量の値を満充電値(100%)として、ニッケル亜鉛電池10のSOCを推定する。故に、ニッケル亜鉛電池10の劣化により放電容量が低下した場合であっても、ニッケル亜鉛電池10のSOCを精度良く推定することができる。
前述したように、放電容量関連値が所定の閾値を下回った場合、ニッケル亜鉛電池10の交換を促してもよい。この場合、ニッケル亜鉛電池10の適切な交換タイミングを使用者に知らせることができる。そして、適切なタイミングでニッケル亜鉛電池10が交換されることにより、電源システム1から電力を供給する際の電力不足を回避することができる。
前述したように、複数の試験用電池に印加される充電電圧の最大値と最小値との差は0.10V以下であってもよい。鉛電池といった他の二次電池と異なり、ニッケル亜鉛電池においては、充電電圧のわずかな違いで劣化の進み具合が大きく変わる。例えば、図7に示された実験例では、充電電圧の最大値(1.87V)と最小値(1.825V)との差は僅か0.045Vであるが、放電容量維持率の低下度合いはグラフG1〜G5間で大きく異なる。したがって、試験用電池への充電電圧の最大値と最小値との差が0.10V以下といった小さな値であることにより、ニッケル亜鉛電池10の劣化状態を精度良く推定することができる。
前述したように、データ取得ステップST1では、各試験用電池を複数の温度に設定し、各試験用電池の放電容量を各温度にて測定し、放電容量関連値の経時変化に関する充電電圧毎のデータテーブルTAaを温度毎に取得し、関連値取得ステップST2では、ニッケル亜鉛電池10の温度に更に基づいて、複数のデータテーブルTAaを含むデータテーブルTAから放電容量関連値を取得してもよい。ニッケル亜鉛電池10の劣化の進み具合は、ニッケル亜鉛電池10の温度にも依存する。故に、放電容量関連値の経時変化に関する充電電圧毎のデータテーブルTAを温度T(1)〜T(n)毎に予め取得しておき、ニッケル亜鉛電池10の温度に基づいて放電容量関連値をデータテーブルTAから取得することにより、ニッケル亜鉛電池10の劣化状態を精度良く推定することができる。
本発明によるニッケル亜鉛電池の状態推定方法、ニッケル亜鉛電池のSOC推定方法、及び電源システムは、上述した実施形態の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態では放電容量関連値の経時変化に関するデータとしてデータテーブルTAを用いているが、放電容量関連値の経時変化に関するデータはこれに限られず、例えば放電容量関連値の経時変化を表す関数の係数であってもよい。また、上記実施形態ではニッケル亜鉛電池10の温度に基づいて放電容量関連値をデータテーブルTAから取得しているが、ニッケル亜鉛電池10の温度が一定である等の場合には、必要に応じて、ニッケル亜鉛電池10の温度変化による影響を含まないデータテーブルから放電容量関連値を取得してもよい。
1…電源システム、2…供給要素、4…需要要素、6A〜6D…配線、7…コンバータ、8…インバータ、10…ニッケル亜鉛電池、12…BCU、13…温度センサ、14…制御部、14a…データ記憶部、14b…状態推定部、14c…SOC推定部、14d…警告部、141…プロセッサ、142…メモリ、143…通信インタフェース、N…ノード、ST1…データ取得ステップ、ST2…関連値取得ステップ、ST3…劣化状態推定ステップ、ST4…SOC推定ステップ、TA,TAa…データテーブル。

Claims (7)

  1. ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる用途において前記ニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する方法であって、
    ニッケル亜鉛電池である複数の試験用電池を用意し、各試験用電池に対してそれぞれ異なる充電電圧を印加して充電を行いつつ各試験用電池の放電容量を測定して、放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に作成するステップと、
    推定対象である前記ニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値を前記データから取得するステップと、
    取得した放電容量関連値に基づいて、推定対象である前記ニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定するステップと、
    を含む、ニッケル亜鉛電池の状態推定方法。
  2. 前記放電容量関連値が所定の閾値を下回った場合に、推定対象である前記ニッケル亜鉛電池の交換を促す、請求項1に記載のニッケル亜鉛電池の状態推定方法。
  3. 前記複数の試験用電池に印加される充電電圧の最大値と最小値との差が0.10V以下である、請求項1又は2に記載のニッケル亜鉛電池の状態推定方法。
  4. 前記データを作成するステップでは、各試験用電池を複数の温度に設定し、各試験用電池の放電容量を各温度にて測定し、前記放電容量関連値の経時変化に関する充電電圧毎のデータを温度毎に作成し、
    前記放電容量関連値を前記データから取得するステップでは、推定対象である前記ニッケル亜鉛電池の温度に更に基づいて、前記放電容量関連値を前記データから取得する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル亜鉛電池の状態推定方法。
  5. ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる用途において前記ニッケル亜鉛電池のSOCを推定する方法であって、
    ニッケル亜鉛電池である複数の試験用電池を用意し、各試験用電池に対してそれぞれ異なる充電電圧を印加して充電を行いつつ各試験用電池の放電容量を測定して、放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に作成するステップと、
    推定対象である前記ニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値を前記データから取得するステップと、
    取得した放電容量関連値から得られる放電容量の値を満充電値として、推定対象である前記ニッケル亜鉛電池のSOCを推定するステップと、
    を含む、ニッケル亜鉛電池のSOC推定方法。
  6. ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる電源システムであって、
    前記ニッケル亜鉛電池と、
    前記ニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する状態推定部と、
    試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に記憶するデータ記憶部と、
    を備え、
    前記状態推定部は、推定対象である前記ニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値を前記データから取得し、取得した前記放電容量関連値に基づいて該ニッケル亜鉛電池の劣化状態を推定する、電源システム。
  7. ニッケル亜鉛電池を充電状態で待機させる電源システムであって、
    前記ニッケル亜鉛電池と、
    前記ニッケル亜鉛電池のSOCを推定するSOC推定部と、
    試験用のニッケル亜鉛電池の放電容量または放電容量に相当する数値(以下、放電容量関連値という)の経時変化に関するデータを充電電圧毎に記憶するデータ記憶部と、
    を備え、
    前記SOC推定部は、推定対象である前記ニッケル亜鉛電池の充電電圧と使用期間とに対応する放電容量関連値を前記データから取得し、取得した前記放電容量関連値から得られる放電容量の値を満充電値として該ニッケル亜鉛電池のSOCを推定する、電源システム。
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