JP2022011640A - 撥水処理剤、撥水構造体及び撥水構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な撥水性と耐洗濯性とを両立した撥水構造体を得ることができる撥水処理剤を提供すること。【解決手段】アミノ基を有するポリシロキサン化合物と、液状媒体と、前記液状媒体より沸点が低い相溶化剤と、を含む撥水処理剤。【選択図】図1

Description

本発明は、撥水処理剤、撥水構造体及び撥水構造体の製造方法に関する。
ガラス、プラスチックス製品等の基材に撥水性能を付与するべく、基材表面に撥水性に優れたコーティング材の被膜(以下、「撥水膜」ともいう)を形成する方法が知られている。撥水膜とは、一般的に、水の接触角が90°以上になる被膜のことをいう。
このような撥水膜を形成する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びその誘導体が知られている。
また、フルオロアルキルシランを用いた撥水膜の形成が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
特開2002-105661号公報 特開2000-81214号公報
近年、繊維に対して容易に撥水性を付与可能な撥水剤が求められている。繊維においては、良好な撥水性のみならず、洗濯等を経ても十分な撥水性が維持されることが期待される。しかし、従来の撥水剤では、良好な撥水性と耐洗濯性とを両立することが困難であった。
また、撥水剤は、懸濁、沈殿等があると、均一な塗膜形成のための作業手順が複雑化することから、均一で作業性に優れる溶液であることが望まれる。
本発明は、良好な撥水性と耐洗濯性とを両立した撥水構造体を得ることができ、均一で作業性に優れる撥水処理剤を提供することを目的とする。本発明はまた、当該撥水処理剤を用いて得られる撥水構造体及び撥水構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アミノ基を有するポリシロキサン化合物及び沸点の低い相溶化剤を含む撥水処理剤を用いることで、良好な撥水性と耐洗濯性とを両立した撥水構造体が形成されることを見出し、本発明の完成に至った。
本開示は、アミノ基を有するポリシロキサン化合物と、液状媒体と、前記液状媒体より沸点が低い相溶化剤と、を含む撥水処理剤を提供する。当該撥水処理剤を用いることで、良好な撥水性と耐洗濯性とを両立した撥水構造体を得ることができる。
一態様において、ポリシロキサン化合物が一分子中に有するケイ素原子の数は、5~500であってよい。
一態様において、相溶化剤は、ジメチルジメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランからなる群より選択されてよい。
一態様において、相溶化剤の含有量は、ポリシロキサン化合物100質量部に対して、20~200質量部であってよい。
一態様において、ポリシロキサン化合物は、シロキサン鎖の側鎖にアミノ基を有していてよい。
一態様において、ポリシロキサン化合物は、炭素数12~50のアルキル基を有していてよい。
一態様において、ポリシロキサン化合物は、シロキサン鎖の末端に上記アルキル基を有していてよい。
一態様に係る撥水処理剤は、有機酸を更に含んでいてよい。
一態様において、有機酸は酢酸であってよい。
一態様に係る撥水処理剤は、繊維処理用であってよい。
本開示はまた、基材と、基材上に形成された撥水部と、を備え、撥水部が上記撥水処理剤の乾燥物を含む、撥水構造体を提供する。
本開示は更に、上記撥水処理剤で基材を処理する工程を備える、撥水構造体の製造方法を提供する。
本発明によれば、良好な撥水性と耐洗濯性とを両立した撥水構造体を得ることができ、均一で作業性に優れる撥水処理剤が提供される。また、本発明によれば、当該撥水処理剤を用いて得られる撥水構造体及び撥水構造体の製造方法が提供される。
図1は、一実施形態に係る撥水構造体を模式的に表す図である。
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
<撥水処理剤>
本実施形態の撥水処理剤は、アミノ基を有するポリシロキサン化合物と、液状媒体と、液状媒体より沸点が低い相溶化剤と、を含む。
本実施形態の撥水処理剤は様々な基材に対し撥水性を付与することができるが、特に撥水性の付与が困難であった繊維に対する撥水処理剤として好適に用いることができる。また、本実施形態の撥水処理剤は、基材に対する接着性に優れた撥水部を形成できるため、本実施形態の撥水処理剤により形成された撥水構造体は、洗濯等を経ても十分な撥水性が維持される。
上記効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。まず本実施形態では、撥水処理剤が相溶化剤を含むことで、ポリシロキサン化合物が撥水処理剤中に均一に分散し、また、撥水処理剤の乾燥時にポリシロキサン化合物の凝集が抑制されると考えられる。このため、本実施形態の撥水処理剤によれば、均一な撥水部を容易に形成できると考えられる。また、本実施形態では、ポリシロキサン化合物がアミノ基を有するため、当該アミノ基が基材に対する吸着基として機能し、基材に対する接着性に優れる撥水部が形成されると考えられる。
(ポリシロキサン化合物)
ポリシロキサン化合物は、シロキサン鎖とアミノ基とを有している。ポリシロキサン化合物は、シロキサン鎖の末端にアミノ基を有していてもよく、シロキサン鎖の側鎖にアミノ基を有していてもよい。基材への接着性がより向上する観点から、ポリシロキサン化合物は、シロキサン化合物の側鎖にアミノ基を有していることが好ましい。
ポリシロキサン化合物は、シロキサン鎖を構成する繰り返し単位の一部が、アミノ基を有する構成単位で置換された化合物、ということもできる。
ポリシロキサン化合物が有するシロキサン鎖は、例えば、下記式(1-1)で表される繰り返し単位から構成されていてよい。
Figure 2022011640000002
式中、Rは、アルキル基を示す。複数のRは同一でも異なっていてもよい。
は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
ポリシロキサン化合物が有するシロキサン鎖は、アミノ基を有する構造単位として、下記式(2-1)で表される構造単位を有していてもよい。
Figure 2022011640000003
式中、Rは、アルキル基を示し、Lは2価の基を示す。
は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
としては、例えば、アルカンジイル基、及び、当該アルカンジイル基中の-CH-の少なくとも一つが、-NH-又は-O-で置換された基が挙げられる。上記アルカンジイル基の炭素数は、例えば2~12であってよく、好ましくは4~8である。
としては、例えば、-R21-NH-R22-で表される基が好ましい。R21及びR22はそれぞれ独立にアルカンジイル基を示す。なお、当該基中、R21はSiに結合する基であり、R22はNHに結合する基である。
21及びR22のアルカンジイル基の炭素数は、例えば1~8であってよく、好ましくは1~4である。
ポリシロキサン化合物が一分子中に有するアミノ基の数は、例えば1~10であってよく、撥水性及び接着性の観点からは、好ましくは1~7、より好ましくは1~4である。
ポリシロキサン化合物のシロキサン鎖中、式(1-1)で表される繰り返し単位の含有量Cに対する式(2-1)で表される構造単位の含有量Cのモル比(C/C)は、例えば5~200であってよく、接着性及び安定性の観点からは、好ましくは10~100、より好ましくは25~75である。
ポリシロキサン化合物が一分子中に有するケイ素原子の数は、例えば5以上であってよく、好ましくは20以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは50以上である。ポリシロキサン化合物中のケイ素原子の数が多い、すなわちポリシロキサン化合物の重合度が大きいと、形成される撥水部の撥水性がより向上する傾向がある。なお、通常、ポリシロキサン化合物中のケイ素原子の数が多い(ポリシロキサン化合物の重合度が大きい)と、液状媒体への分散性・溶解性が低下する傾向があるが、本実施形態では相溶化剤の配合によってポリシロキサン化合物の分散性・溶解性が向上しているため、ポリシロキサン化合物中のケイ素原子の数が多い(ポリシロキサン化合物の重合度が大きい)場合でも、均一な撥水処理剤及び均一な撥水部を実現できる。
また、ポリシロキサン化合物が一分子中に有するケイ素原子の数は、例えば500以下であってよく、好ましくは400以下、より好ましくは360以下である。これにより、液状媒体への分散性・溶解性がより向上する傾向がある。
ポリシロキサン化合物は、撥水性及び粘度の観点から、炭素数12~50のアルキル基(以下、長鎖アルキル基)を有することが好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは12~30、より好ましくは16~18である。長鎖アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状がより好ましい。
ポリシロキサン化合物は、シロキサン鎖の末端に長鎖アルキル基を有していてもよく、シロキサン鎖の側鎖に長鎖アルキル基を有していてもよい。撥水性の観点から、ポリシロキサン化合物は、シロキサン鎖の末端に長鎖アルキル基を有していることが好ましい。
ポリシロキサン化合物のシロキサン鎖の末端は、例えば、下記式(3-1)で表される構造単位、又は、下記式(3-2)で表される構造単位であってよい。これらの構造単位は、シロキサン鎖の酸素原子末端とは直接結合し、ケイ素原子末端とは酸素原子を介して結合していてよい。
Figure 2022011640000004
Figure 2022011640000005
式中、R31、R32及びR33は、それぞれ独立にアルキル基を示す。複数のR31は同一でも異なっていてもよい。
31は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
32は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
33は、好ましくは長鎖アルキル基である。
ポリシロキサン化合物のシロキサン鎖の末端は、式(3-2)で表される構造単位であることが好ましい。
ポリシロキサン化合物の分子量は、例えば950以上であり、好ましくは2500以上、より好ましくは8000以上、更に好ましくは20000以上である。ポリシロキサン化合物の分子量が大きいと、形成される撥水部の撥水性がより向上する傾向がある。なお、通常、ポリシロキサン化合物の分子量が大きいと、液状媒体への分散性・溶解性が低下する傾向があるが、本実施形態では相溶化剤の配合によってポリシロキサン化合物の分散性・溶解性が向上しているため、ポリシロキサン化合物の分子量が大きい場合でも、均一な撥水処理剤及び均一な撥水部を実現できる。
また、ポリシロキサン化合物の分子量は、例えば40000以下であってよく、好ましくは35000以下、より好ましくは25000以下である。これにより、液状媒体への分散性・溶解性がより向上する傾向がある。
(液状媒体)
液状媒体としては、例えば、水、アルコール類、水及びアルコール類の混合液等を用いることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。これらのうち、ポリシロキサン化合物との相溶性の観点から、液状媒体は2-プロパノールであってよい。
液状媒体の含有量は、特に限定されず、ポリシロキサン化合物100質量部に対して、例えば500以上であってよく、1000以上であってもよい。また、液状媒体の含有量は、ポリシロキサン化合物100質量部に対して、例えば100000であってよく、10000以下であってもよい。
液状媒体としては、撥水処理剤の取扱性が向上する観点から、沸点が70℃以上の液状媒体が好ましく、沸点が80℃以上の液状媒体がより好ましい。また、液状媒体としては、撥水処理剤による処理がより容易となる観点から、沸点が203℃以下の液状媒体が好ましく、沸点が110℃以下の液状媒体がより好ましい。
なお、実際の使用に際しては、撥水処理剤を更に希釈してもよい。すなわち、撥水処理剤を希釈媒体で例えば3~100倍に、好ましくは3~30倍に希釈して、撥水処理剤希釈液として用いてもよい。希釈媒体は、撥水処理剤中の液状媒体と同じ液状媒体であってもよく、撥水処理剤中の液状媒体と異なる液状媒体であってもよい。作業性及び安全性に優れる観点から、希釈媒体は水であることが好ましい。
(相溶化剤)
本実施形態において、相溶化剤は、ポリシロキサン化合物の液状媒体に対する分散性及び/又は溶解性を向上できる化合物であり、且つ、液状媒体より沸点が低い化合物であればよい。
本実施形態では、撥水処理剤が相溶化剤を含むことで、ポリシロキサン化合物が撥水処理剤中に均一に分散し、また、撥水処理剤の乾燥時にポリシロキサン化合物の凝集が抑制されると考えられる。また、本実施形態では、相溶化剤が液状溶媒より低い沸点を有するため、撥水処理剤の乾燥時に液状媒体と共に相溶化剤が除去される。このため、相溶化剤の残存による撥水性の低下が抑制され、良好な撥水性を有する撥水部が形成される。
相溶化剤としては、例えば、シラン化合物、リン化合物、エステル化合物、エーテル化合物等が挙げられるが、低沸点の観点からはシラン化合物が好ましい。
シラン化合物としては、例えば、ジアルキルジアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
相溶化剤としては、乾燥時の除去が容易となる観点からは、ジメチルジメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランからなる群より選択される相溶化剤が好ましく、ジメチルジメトキシシランがより好ましい。
相溶化剤の含有量は、ポリシロキサン化合物100質量部に対して、例えば20質量部以上であり、上述の効果がより顕著に得られる観点からは、好ましくは40質量部以上、より好ましくは80質量部以上である。また、相溶化剤の含有量は、ポリシロキサン化合物100質量部に対して、例えば200質量部以下であり、乾燥工程における揮発分低減及びコスト低減の観点からは、好ましくは130質量部以下、より好ましくは110質量部以下である。
(有機酸)
本実施形態の撥水処理剤は、有機酸を更に含んでいてもよい。有機酸を含有することで、撥水処理剤中の液状媒体又は撥水処理剤を希釈するための希釈媒体として水を用いた場合に、ポリシロキサン化合物の分散性が向上して、より均一な撥水処理を行いやすくなる。
なお、本実施形態の撥水処理剤は、ポリシロキサン化合物中のアミノ基と有機酸とが塩を形成していてもよい。なお、本明細書では、ポリシロキサン化合物中のアミノ基と有機酸とが塩を形成している場合も「撥水処理剤がポリシロキサン化合物と有機酸とを含む」態様に含まれる。
有機酸としては、揮発性の有機酸が好ましい。すなわち、有機酸の沸点は180℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。これにより、撥水処理時に有機酸を揮発させて、撥水部から有機酸を容易に除去することができ、撥水性及び耐洗濯性がより向上する。
有機酸としては、例えば、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、揮発除去性の観点からは、酢酸、塩酸が好ましく、酢酸がより好ましい。
有機酸の量は、特に限定されず、例えばポリシロキサン化合物のアミノ基に対して0.01~5当量であってよく、好ましくは0.05~3当量、より好ましくは0.06~1当量である。
本実施形態の撥水処理剤は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、分散剤、界面活性剤、安定化剤等が挙げられる。
<撥水構造体>
図1は、一実施形態に係る撥水構造体を模式的に表す図である。同図に示すとおり、撥水構造体10は、基材1と、基材上に(基材の被処理面上に)撥水部2と、を備えている。撥水部は上記撥水処理剤の乾燥物を含む。
基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、及びこれらを組合せた材料(複合材料、積層材料等)が挙げられる。基材の形態としては、板状やブロック状のバルク体、繊維、粒子等が挙げられる。基材は繊維の集合体(織布又は不織布)、粒子の集合体等であってよい。
金属としては、例えば、ステンレス、アルミ、銅、亜鉛めっき鋼板及び鉄が挙げられる。セラミックスとしては、例えば、アルミナ、チタン酸バリウム、窒化ホウ素及び窒化珪が挙げられる。ガラスとしては、例えば、通常のソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス及びアルミノシリケートガラスが挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリフェニレンカーボネート等の芳香族ポリカーボネート系樹脂、及び、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。
本実施形態の撥水処理剤は、繊維に対する撥水処理剤として好適であることから、基材としては、繊維が好ましい。繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアセタール繊維、セルロース繊維、炭素繊維等が挙げられる。
撥水部の厚さは特に限定されず、風合い維持の観点から、例えば0.1nm~10μmであってよく、0.2nm~1μmであってもよい。
撥水構造体は、撥水部において、超純水の液滴1μLに対し90°以上の接触角を有することができる。接触角は接触角計を用い、例えば10回の測定の平均値により算出することができる。
<撥水構造体の製造方法>
撥水構造体は、上記の撥水処理剤で基材を処理する工程を備える、撥水構造体の製造方法により得られる。より具体的には、本実施形態の製造方法は、後述の塗布工程及び乾燥工程を備えていてよい。
(塗布工程)
塗布工程は、上記撥水処理剤を基材に塗布する工程である。撥水処理剤は、基材全体に塗布してもよく、一部に選択的に塗布してもよい。
塗布方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法、バーコート法及びグラビアコート法が挙げられる。特に、スプレーコート法は、凹凸のある被処理面にも、均一に撥水部を形成し易い観点、生産性が高く、撥水処理剤の使用効率が高い観点から、好ましい。これらの方法は、単独で、又は2種類以上を併用してもよい。
塗布工程で用いる撥水処理剤の温度は、例えば、20~80℃であってもよく、25~60℃であってもよい。上記温度を、20℃以上とすることにより、撥水性と密着性とが更に向上する傾向にあり、上記温度を、80℃以下とすることにより、撥水部の透明性が得られ易い傾向にある。撥水処理剤による処理時間は、例えば30秒間~4時間とすることができ、1~10分間とすることができる。
(乾燥工程)
乾燥工程では、撥水処理剤を塗布した後、処理剤から液状媒体を揮発させる。液状媒体は、例えば常温で放置することで揮発させることができ、加熱して揮発させることもできる。乾燥温度は、特に限定されず、基材の耐熱温度によっても異なるが、例えば、60~250℃であってもよく、120~180℃であってもよい。本工程により、ポリシロキサン化合物を含む撥水部が形成される。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<ポリシロキサン化合物Aの製造>
1-ヘキサデセン(東京化成工業(株)製)100質量部及び1%塩化白金酸イソプロパノール溶液0.2質量部を攪拌しながら70℃まで昇温した。次いで、下記式(i)で表されるポリオルガノシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名「XF40-C2195」)74質量部を滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し1時間攪拌を行い、下記式(ii)のアルキル変性ポリオルガノシロキサンを得た。なお、式(ii)中、Rは炭素数16の直鎖アルキル基を示す。
H(CH-SiO-((CHSiO)18-Si(CHH …(i)
(CH-SiO-((CHSiO)18-Si(CH …(ii)
次に、得られたアルキル変性ポリオルガノシロキサン186部、オクタメチルシクロテトラシロキサン(東京化成工業(株)製)651部、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(東京化成工業(株)製)25部を混合し、攪拌を行いながら90℃まで昇温した。続けて、10%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(ナカライテスク(株)製)を有効成分で90ppm添加し、90℃で3時間撹拌した。続いて、低分子量のシロキサンを減圧化で留去して、両末端長鎖アルキル・側鎖アミノ変性オルガノポリシロキサン(ポリシロキサン化合物A)を得た。ポリシロキサン化合物Aのアミン当量は2300であり、分子量は23300であり、一分子中のケイ素原子の数は305であり、シロキサン鎖中の式(1-1)で表される繰り返し単位の含有量Cに対する式(2-1)で表される構造単位の含有量Cのモル比(C/C)は0.06であった。
<撥水処理剤の調製>
1.875mLのポリシロキサン化合物Aに、0.4285mLの酢酸及び15.0mLの2-プロパノールを添加して撹拌した後、1.875mLのジメチルジメトキシシランを添加し、25℃で1時間攪拌し、撥水処理剤の原液を得た。得られた原液は、懸濁、沈殿等のない透明な溶液であった。当該原液1mLを、20mLの2-プロパノールで希釈し、撥水処理剤の希釈液(1)を得た。
<撥水処理(A)>
繊維生地として、ナイロン生地を準備した。ナイロン生地を撥水処理剤の希釈液(1)に浸漬し、120℃で30分間乾燥させて、撥水処理繊維生地(1-A)を得た。
<撥水処理(B)>
繊維生地として、ポリエステル生地を準備した。ポリエステル生地を撥水処理剤(1)の希釈液に浸漬し、120℃で30分間乾燥させて、撥水処理繊維生地(1-B)を得た。
<評価>
[撥水度試験]
撥水処理繊維生地(1-A)及び撥水処理繊維生地(1-B)のそれぞれについて、JIS L 1092の撥水度試験(スプレー法)により、撥水度を評価した。結果を表1に示す。なお、表にはJISの等級を示しており、「4+」は4級を超え、5級未満の撥水度であることを示す。また、「3~4級」は3級~4級の中間程度の撥水度であることを示す。
[耐洗濯性評価試験]
撥水処理繊維生地(1-A)及び撥水処理繊維生地(1-B)のそれぞれについて、JIS L 1930の繊維製品の家庭洗濯試験により1回洗濯し、洗濯済みの繊維生地を得た。この洗濯済みの繊維生地の撥水度を、JIS L 1092の撥水度試験(スプレー法)により評価した。結果を表1に示す。
[風合い試験]
未処理の繊維生地及び撥水処理繊維生地のそれぞれの手触りを複数人が確認し、硬さに変化がないと判断された場合をA、硬さに明確に変化があったと判断された場合をBとして評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
<ポリシロキサン化合物Xの製造>
攪拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコにて、ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサン「XC96-723」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名)を100.0質量部、メチルトリメトキシシランを181.3質量部及びt-ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させた。その後、この反応液を、1.3kPaの減圧下、140℃で2時間加熱し、揮発分を除去することで、両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(ポリシロキサン化合物X、アミノ基を有しないポリシロキサン化合物)を得た。
<撥水処理剤の調製>
3.75gのポリシロキサン化合物Xに、0.4285mLの酢酸及び15.0mLの2-プロパノールを添加し、25℃で1時間撹拌し、撥水処理剤の原液を得た。当該原液1mLを、20mLの2-プロパノールで希釈し、撥水処理剤の希釈液(X1)を得た。
<撥水処理及び評価>
撥水処理剤の希釈液(1)に代えて撥水処理剤の希釈液(X1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ナイロン生地を撥水処理した撥水処理繊維生地(X1-A)、及び、ポリエステル生地を撥水処理した撥水処理繊維生地(X1-B)を得た。得られた撥水処理繊維生地を実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
<撥水処理剤の調製>
ジメチルジメトキシシランを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして撥水処理剤の原液を得た。得られた原液は懸濁していた。当該原液1mLを、20mLの2-プロパノールで希釈し、撥水処理剤の希釈液(X2)を得た。
<撥水処理及び評価>
撥水処理剤の希釈液(1)に代えて撥水処理剤の希釈液(X2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ナイロン生地を撥水処理した撥水処理繊維生地(X2-A)、及び、ポリエステル生地を撥水処理した撥水処理繊維生地(X2-B)を得た。得られた撥水処理繊維生地を実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
ナイロン生地及びポリエステル生地のそれぞれについて、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1に示す。
Figure 2022011640000006
1…基材、2…撥水部、10…撥水構造体。

Claims (12)

  1. アミノ基を有するポリシロキサン化合物と、液状媒体と、前記液状媒体より沸点が低い相溶化剤と、を含む撥水処理剤。
  2. 前記ポリシロキサン化合物が一分子中に有するケイ素原子の数が、5~500である、請求項1に記載の撥水処理剤。
  3. 前記相溶化剤が、ジメチルジメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の撥水処理剤。
  4. 前記相溶化剤の含有量が、前記ポリシロキサン化合物100質量部に対して、20~200質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水処理剤。
  5. 前記ポリシロキサン化合物が、シロキサン鎖の側鎖にアミノ基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の撥水処理剤。
  6. 前記ポリシロキサン化合物が、炭素数12~50のアルキル基を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水処理剤。
  7. 前記ポリシロキサン化合物が、シロキサン鎖の末端に前記アルキル基を有する、請求項6に記載の撥水処理剤。
  8. 有機酸を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の撥水処理剤。
  9. 前記有機酸が酢酸である、請求項8に記載の撥水処理剤。
  10. 繊維処理用である、請求項1~9のいずれか一項に記載の撥水処理剤。
  11. 基材と、前記基材上に形成された撥水部と、を備え、
    前記撥水部が請求項1~10のいずれか一項に記載の撥水処理剤の乾燥物を含む、撥水構造体。
  12. 請求項1~10のいずれか一項に記載の撥水処理剤で基材を処理する工程を備える、撥水構造体の製造方法。
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