JP2022007998A - 植物の土壌伝染病防除用組成物及び土壌伝染病防除方法 - Google Patents

植物の土壌伝染病防除用組成物及び土壌伝染病防除方法 Download PDF

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Abstract

【課題】植物の土壌伝染病を、より効果的に防除できるようにした、植物の土壌伝染病防除用組成物及び土壌伝染病防除方法を提供する。【解決手段】土壌伝染病防除用組成物は、(1)アルカリ性組成物、(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種、(3)海藻資材のうち、2種以上の組合せを含有する。土壌伝染病防除方法は、土壌伝染病防除用組成物を、植物の播種から定植までの育苗期間に、育苗培土又は種子又は植物自体に付与する。【選択図】なし

Description

本発明は、アルカリ性組成物等を用いた、植物の土壌伝染病防除用組成物及び土壌伝染病防除方法に関する。
植物の病気の大部分は微生物が主因となる伝染病である。特に、土壌生息性の病原微生物によって引き起こされる病害(土壌伝染病)は、植物の地下部から病原微生物が感染するため、化学薬剤の散布によって病原微生物を十分に殺菌し防除することが難しい。
そのため、燻蒸剤によって土壌中の病原菌を殺菌する方法(土壌消毒)が実施されている。しかし、土壌消毒には、10アール当たり6万円以上の経費を要すること、更に、土壌の表面をビニールで被覆する必要があることから、コストや労力を要する。更に、作用対象となる生物の選択性が低く、病原菌以外の生物にも作用することから、周辺生物への影響も懸念されている。また、環境負荷を解消するため、有機物施用と灌水によって圃場土を還元化して殺菌する方法(土壌還元消毒)も考案されているものの、その効果は不安定である。更に、これらの方法では、燻蒸や還化による土壌消毒の実施期間中は作付できないことも経営上のデメリットとなっている。
一方、病害抵抗性品種の利用は理想的な防除手段ではあるが、そのような品種が利用できる病害は一部に過ぎない。また、抵抗性を打破する新しい病原性系統が出現すればその効果は低下・消滅する。更に、病害抵抗性品種を台木として利用する場合には、接ぎ木の手間、あるいはそのための外注経費が余分に掛かる。
したがって、環境に調和し、高品質な野菜の安定生産を実現するために、これらの問題を克服する新たな土壌伝染病の防除技術の開発が求められている。
このような技術の1つとして、下記非特許文献1,2,3には、肥料用の転炉スラグを土壌pHが7.5程度となるように多量に施用することにより、土壌伝染病の被害を複数年間に渡って軽減できることが報告されている。
また、下記非特許文献4には、呼吸に関わるユビキノン還元酵素のQi部位に作用し、殺菌効果を示すQi阻害物質を用いた土壌用殺菌剤アミスルブロム(商品名「オラクル顆粒水和剤」、日産化学工業株式会社製)のアブラナ科野菜根こぶ病に対する効果が確認されている。下記非特許文献5には、植物に作用し、病害抵抗性を誘起することによって発病軽減効果を示す抵抗性誘導物質を用いた薬剤アシベンゾラルS-メチル(商品名「Bion(バイオン)」、シンジェンタ製)のアブラナ科野菜根こぶ病に対する効果が確認されている。
更に、下記非特許文献6には、海藻粉末による野菜類根こぶ病、立枯病の発病抑制効果が報告されている。
「転炉スラグを用いた土壌pH 改良と抵抗性台木を用いたキュウリホモプシス根腐病の被害軽減」、岩舘康哉、植物防疫第68巻第9号(2014)、p.523-530 「転炉スラグによる土壌pH矯正が野菜の細菌性病害に与える影響」、門田育生・今▲崎▼伊織、植物防疫第70巻第4号 (2016)、P.215-219 「転炉スラグによるブロッコリー根こぶ病の防除対策」、村上圭一・篠田英史・丸田里江・後藤逸男、 日本土壌肥料学雑誌75巻1号、P.53-58、2004年2月 「新規土壌用殺菌剤アミスルブロム(オラクルR粉剤・顆粒水和剤)の特徴と使い方」、若山健二 、植物防疫 第66巻 第10号、2012年、p.573-581 「Control of light leaf spot and clubroot in brassica cropsusing defence elicitors」、Graham R. D. McGrann・Tracy Yoxall・Linda J. Paterson・Jeanette M.G. Taylor・Ioannis G. Birmpilis・Dale R. Walters・Neil D. Havis、European Journal of Plant Pathology 第148巻、2017年、p.447-461 「海藻粉末による野菜類根こぶ病、立枯病の発病抑制」、辻 元人, 石田 理子, 道家 章生, 杉山 暁史, 木村 重光, 久保 中央、環境微生物系学会合同大会、2017年、ポスター要旨
上記従来技術に示されるように、アルカリ性肥料を土壌に混和し、pHを矯正することでアブラナ科野菜等の土壌伝染病を防除できる。しかしながら、多量に施用しなければ十分な効果を得ることはできない。
また、Qi阻害物質を用いた土壌用殺菌剤は、育苗期施用のみでは効果が不安定になることが予想されている。抵抗性誘導物質を用いた薬剤は、土壌伝染病に対する実用化事例は乏しい。
更に、海藻資材については、化学農薬と比較するとアブラナ科野菜根こぶ病の防除効果は劣っている。
したがって、本発明の目的は、植物の土壌伝染病を、より効果的に防除できるようにした、植物の土壌伝染病防除用組成物及び土壌伝染病防除方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物は、下記に示す(1)アルカリ性組成物、(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種、(3)海藻資材のうち、2種以上の組合せを含有することを特徴とする。
(1)アルカリ性組成物:(a)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰及びケイ酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種、(b)微量要素、(c)二酸化ケイ素及び酸化鉄から選ばれた少なくとも1種のうち、(a)と(b)の組合せ、(a)と(c)の組合せ、又は(a)と(b)と(c)の組合せを含有するものである。
(2)Qi阻害物質:呼吸に関わるユビキノン還元酵素のQi部位に作用し、殺菌効果を示す物質である。
抵抗性誘導物質:病原菌に対する直接的な殺菌作用は示さないが、植物に作用して病害抵抗反応を誘起する物質である。
(3)海藻資材:海水中で生育する緑藻、紅藻、褐藻から選ばれた1種以上の海藻そのもの、前記海藻の乾燥物、前記海藻の乾燥物を粉砕した物、前記海藻の乾燥物を高圧蒸気滅菌した物、又は前記海藻の乾燥物の粉砕物を高圧蒸気滅菌した物を含むものである。
本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物においては、A:(1)アルカリ性組成物と(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種との組合せ、B:(1)アルカリ性組成物と(3)海藻資材との組合せ、C:(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種と(3)海藻資材との組合せ、D:(1)アルカリ性組成物と(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種と(3)海藻資材との組合せから選ばれたものを含有することが好ましい。
本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物において、前記(1)アルカリ性組成物は、前記(a)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰及びケイ酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種、及び前記(c)二酸化ケイ素及び酸化鉄から選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。
また、本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物は、変形菌性又は細菌性又は真菌性の土壌伝染病に対する防除用組成物として特に有効である。
また、植物の土壌伝染病防除方法は、上記に記載された土壌伝染病防除用組成物を、植物の播種から定植までの育苗期間に、育苗培土又は種子又は植物自体に付与することを特徴とする。
本発明によれば、上述した(1)アルカリ性組成物、(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種、(3)海藻資材のうち、2種以上の組合せからなる植物の土壌伝染病防除用組成物を土壌や植物に付与することにより、これらの成分が相乗的に作用して、植物の土壌伝染病を効果的に防除できる。また、植物の播種から定植までの育苗期間に、育苗培土又は種子又は植物自体に付与するだけで、定植される汚染圃場に土壌伝染病防除剤を付与しなくても、植物の土壌伝染病を効果的に防除できる。
海藻資材の施用が植物の苗の生重量に与える影響を評価した結果を示す図表である。 アルカリ性組成物と、海藻資材の各種施用量の組合せ施用が植物の苗の生重量に与える影響を評価した結果を示す図表である。 アルカリ性組成物と、各種海藻資材と、抵抗性誘導物質との各種組合せの施用が土壌伝染病の発生程度に与える影響を評価した図表である。
本発明の対象となる植物としては、特に限定されないが、例えば、カリフラワー、カブ、カラシナ、キャベツ、コマツナ、ダイコン、チンゲンサイ、ナタネ、ハクサイ、ブロッコリー、ミズナ、ワサビなどのアブラナ科野菜などが挙げられる。
本発明が適用される土壌伝染病としては、制限はないが、上記のアブラナ科野菜に発生するカリフラワー根こぶ病、カブ根こぶ病、カラシナ根こぶ病、キャベツ根こぶ病、コマツナ根こぶ病、ダイコン根こぶ病、チンゲンサイ根こぶ病、ナタネ根こぶ病、ハクサイ根こぶ病、ブロッコリー根こぶ病、ミズナ根こぶ病、ワサビ根こぶ病などが挙げられ、本発明は、これらの土壌伝染病に対して、特に有効である。
ここで、根こぶ病(ねこぶびょう、Club root disease)とは、ハクサイなどのアブラナ科野菜の根が、変形菌類に属する原始的な菌であるプラスモディオフォラ・ブラシケー(Plasmodiophora brassicae)の寄生を受け、こぶ状に著しく肥大する病気である。この病気にかかると、地上部の生育は悪くなり、葉は初期には日中萎凋(いちょう)する程度であるが、病勢が進むと黄変し落葉する。根こぶ病菌は、休眠胞子の状態で長期間生存するといわれており、感染した根はこぶを作り、膨大な数の休眠胞子が作られる。このこぶが腐敗すると、休眠胞子が土壌中に分散し、感染を繰り返す。
このように、土壌伝染するアブラナ科野菜根こぶ病は、その原因微生物の根絶が難しく、土壌が土壌伝染病菌に感染すると、長期間に亘って植物の生育を阻害する傾向がある。本発明は、このような土壌伝染性の根こぶ病に侵された圃場において、植物の発病度を低減させる土壌伝染病防除用組成物及び土壌伝染病防除方法を提供するものである。
本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物は、下記に示す(1)アルカリ性組成物、(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種、(3)海藻資材のうち、2種以上の組合せを含有する。なお、ここで「2種以上の組合せを含有する」とは、2種以上の組合せ成分を1つの剤として含有することに限らず、それぞれの成分を別々に投与する態様をも含む意味である。
(1)アルカリ性組成物:(a)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰及びケイ酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種、(b)微量要素、(c)二酸化ケイ素及び酸化鉄から選ばれた少なくとも1種のうち、(a)と(b)の組合せ、(a)と(c)の組合せ、又は(a)と(b)と(c)の組合せを含有するものである。
(2)Qi阻害物質:呼吸に関わるユビキノン還元酵素のQi部位に作用し、殺菌効果を示す物質である。
抵抗性誘導物質:病原菌に対する直接的な殺菌作用は示さないが、植物に作用して病害抵抗反応を誘起する物質である。
(3)海藻資材:海水中で生育する緑藻、紅藻、褐藻から選ばれた1種以上の海藻そのもの、前記海藻の乾燥物、前記海藻の乾燥物を粉砕した物、前記海藻の乾燥物を高圧蒸気滅菌した物、又は前記海藻の乾燥物の粉砕物を高圧蒸気滅菌した物を含むものである。
上記(1)~(3)成分の組合せとして、具体的には、A:(1)アルカリ性組成物と(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種との組合せ、B:(1)アルカリ性組成物と(3)海藻資材との組合せ、C:(2)Qi阻害物質と(3)海藻資材との組合せ、D:(1)アルカリ性組成物と(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種と(3)海藻資材との組合せ、などが挙げられる。
特には、D:(1)アルカリ性組成物と(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種と(3)海藻資材との組合せからなることが好ましい。
まず、(1)アルカリ性組成物について説明する。アルカリ組成物は、(a)炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、苦土石灰(CaCO3とMgCO3の複合物)及びケイ酸マグネシウム(Mg2Si3O8・5H2O)から選ばれた少なくとも1種、(b)微量要素、(c)二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化鉄(Fe2O3)から選ばれた少なくとも1種のうち、(a)と(b)の組み合わせ、(a)と(c)の組み合わせ、又は(a)と(b)と(c)の組み合わせを含有する。
(a)成分の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰、ケイ酸マグネシウムは、土壌のpHを上昇させるためのアルカリ性無機物として作用するものである。アルカリ性無機物としては、各種のものが知られているが、本発明者らは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰及びケイ酸マグネシウムが、土壌伝染病に対する効果が高いことを見いだした。炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰及びケイ酸マグネシウムは、それぞれ単独で使用してもよいが、併用してもよい。
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の育苗培土に対する付与量は、付与後の育苗培土中における濃度が1~1,000 mMとなるようにすることが好ましく、1~500 mMとなるようにすることがより好ましく、1~250 mMとなるようにすることが最も好ましい。上記付与量が1 mM未満では、土壌pHの上昇効果が乏しくなり、土壌伝染病防除効果が弱められる傾向がある。ここで、育苗培土中における濃度mMは、育苗培土1 L中に含まれる当該化合物の分子数に基づいた量(mol)を表し、mM = mmol / Lの意味である。苦土石灰の育苗培土に対する付与量は、付与後の育苗培土中の濃度が1~100 g/Lとなるようにすることが好ましく、5~20 g/Lとなるようにすることがより好ましい。
(b)成分の微量要素は、土壌pH矯正に伴って欠乏しやすくなるため、微量要素欠乏症を回避するために添加される。微量要素としては、マンガンとホウ素が特に必要である。
マンガンの育苗培土に対する付与量は、施用後の育苗培土中における濃度が0.08~20 mMとなるようにすることが好ましい。ホウ素の育苗培土に対する付与量は、施用後の育苗培土中における濃度が0.04~10 mMとなるようにすることが好ましい。
(c)成分の1つである二酸化ケイ素は、植物の必須要素ではないものの、転炉スラグに豊富に含まれており、植物によっては生長促進効果や発病軽減効果を付与する効果がある。
二酸化ケイ素の育苗培土に対する付与量は、付与後の育苗培土中における濃度が120~3,000 mMとなるようにすることが好ましい。
(c)成分のもう1つである酸化鉄としては、酸化第二鉄(Fe2O3)が好ましく用いられる。鉄は、転炉スラグに豊富に含まれており、転炉スラグの実績から、土壌伝染病防除効果を高める作用を有していると考えられる。
酸化鉄の育苗培土に対する付与量は、施用後の育苗培土中における濃度が2~50 mMとなるようにすることが好ましい。
(1)アルカリ性組成物としては、(a)炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、苦土石灰(CaCO3とMgCO3の複合物)及びケイ酸マグネシウム(Mg2Si3O8・5H2O)から選ばれた少なくとも1種と、(c)二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化鉄(Fe2O3)から選ばれた少なくとも1種を含有することがより好ましい。
次に、(2)Qi阻害物質について説明すると、Qi阻害物質とは、呼吸に関わるユビキノン還元酵素のQi部位に作用し、殺菌効果を示す物質である。Qi阻害物質として具体的には、アミスルブロム、ジアゾファミドなどが挙げられ、これらの化合物から選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。Qi阻害物質としては、例えば、アミスルブロム水和剤(商品名「オラクル顆粒水和剤」、日産化学工業株式会社製)や、ジアゾファミド水和剤(商品名「ランマンフロアブル」、石原産業株式会社製)などの市販品を用いることもできる。
Qi阻害物質の育苗培土に対する付与量は、施用後の育苗培土中における濃度が10~1700 mg/Lとなるようにすることが好ましい。
抵抗性誘導物質について説明すると、抵抗性誘導物質とは、病原菌に対する直接的な殺菌効果を示さないが、植物に作用して病害に対する抵抗反応を誘起する物質である。抵抗性誘導物質として具体的には、プロベナゾール、アシベンゾラルS-メチル、イソチアニル、チアジニルなどが挙げられ、これらの化合物から選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。抵抗性誘導物質としては、例えば、プロベナゾール水和剤(商品名「オリゼメート顆粒水和剤」、Meiji Seikaファルマ株式会社製)、アシベンゾラルS-メチル水和剤(商品名「アクティガード顆粒水和剤」、シンジェンタジャパン株式会社製)、イソチアニル水和剤(商品名「ルーチンフロアブル」、バイエルクロップサイエンス株式会社製)、チアジニル水和剤(商品名「ブイゲットフロアブル」、日本農薬株式会社製)などの市販品を用いることもできる。
抵抗性誘導物質の育苗培土に対する付与量は、施用後の育苗培土中における濃度が10~1700 mg/Lとなるようにすることが好ましい。
次に、(3)海藻資材について説明すると、海藻資材としては、海水中で生育する緑藻(Dictyosphaeria cavernosa、Enteromorpha spp.、Ulvaspp.)、紅藻(Ahnfeltia plicata、Gracilaria spp.、Gracilaria chilensis、Halymenia venusta、Laurencia papillosa、Lithothamnion corallioides、Phymtolithon calcareum)、褐藻(Alaria fitulosa、Ascophyllum nodosum、Ecklonia maxima、Fucus gardneri、Hydroclathrus clathratus、Laminaria schinzii、Macrocystis pyrifera、Nereocystis luetkaena、Durvillea potatorum、Sargassum spp.、Turbinaria spp.)などから選ばれた海藻そのもの、又は海藻の乾燥物、又は当該乾燥物を粉砕したもの、又は当該乾燥物を高圧蒸気滅菌したもの、又は当該粉砕物を高圧蒸気滅菌したものなどが使用できる。
前記非特許文献6によれば、根こぶ病菌汚染土壌における発病抑制効果は、北欧産褐藻アスコフィラム ノドサムが最も高く、褐藻アカモクにも発病抑制効果が認められたことが記載されている。また、立枯病菌に対しても効果があったことが記載されている。
(3)海藻資材の育苗培土に対する付与量は、海藻の乾燥物換算で、1~50 g/Lであることが好ましく、1~12 g/Lであることがより好ましく、1~9 g/Lであることが更に好ましい。
本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物は、(1)アルカリ性組成物、(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種、(3)海藻資材を、予め混合して調製した組成物であってもよく、個々の成分を個別に付与するようにした組合せの組成物であってもよい。
本発明の植物の土壌伝染病防除剤の土壌への付与方法は、粉体混合物としてそのまま、育苗培土や植物自体に付与することもできるが、適当量の水に溶解分散させて溶液又は懸濁液として付与することもできる。この場合、本発明の土壌伝染病防除用組成物を水に溶解分散させた溶液又は懸濁液(以下単に「溶液」とする)中のそれぞれの成分の濃度は、下記のような濃度とすることが好ましい。
(1)アルカリ性組成物における(a)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の上記溶液中の濃度は、1~5,000 mMが好ましい。アルカリ性組成物における(a)苦土石灰の上記溶液中の濃度は、1 g/L~500 g/Lが好ましい。
同アルカリ性組成物における(b)微量要素のうち、マンガンの上記溶液中の濃度は、0.08~100 mMが好ましい。ホウ素の上記溶液中の濃度は、0.04~50 mMが好ましい。
同アルカリ性組成物における(c)成分のうち、二酸化ケイ素の上記溶液中の濃度は、120~15,000 mMが好ましい。また、酸化鉄の上記溶液中の濃度は、2~250 mMが好ましい。
(2)Qi阻害物質と抵抗性誘導物質の上記溶液中の濃度は、各々0.01~1%(質量 / 体積)が好ましい。
(3)海藻資材の上記溶液中の濃度は、0.1 ~ 25%(質量 / 体積)が好ましい。
本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物は、植物の播種から定植までの育苗期間に、育苗培土又は種子又は植物自体に付与することが好ましい。本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物を、植物の播種から定植までの育苗期間に、育苗培土又は種子又は植物自体に付与することにより、その後に土壌伝染病に汚染された圃場に定植しても、土壌伝染病の発病度を低減することができる。このため、圃場全体に土壌伝染病防除用組成物を施用しなくても、土壌伝染病防除効果が期待できる。勿論、本発明の植物の土壌伝染病防除用組成物は、定植する圃場にも付与することができ、それによって、土壌伝染病防除効果をより高めることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実験例1>
海藻資材の施用が植物の苗の生重量に与える影響を評価した。海藻資材としては、アスコフィルム ノドサム粉末(商品名「アスコ・シーグリーン」、アンデス貿易株式会社販売)を用いた。
令和元年9月28日に、育苗培土(商品名「くみあいセル専用N220」、三研ソイル株式会社製)を詰めた128穴セルトレーに、栽培植物としてキャベツ(品種「おきな」)を播種した。海藻資材を含む施用区では、育苗培土に海藻資材を0、3、6又は9 g/L混和して、施用区毎に調製した育苗培土をセルトレーに詰めた。播種30日後(同年10月28日)、子葉を含む子葉より上部の生重量を測定した。
各施用区の生重量の結果を図1に示す。
図1に示されるように、海藻資材の施用量が3、6、9 g/Lでは生重量に影響がなかった。
したがって、海藻資材の施用量が少なくとも9 g/L以下であれば生重量への影響はないことが明らかとなった。
<実験例2>
(1)アルカリ性組成物と(2)海藻資材の各種施用量の組合せ施用が植物の苗の生重量に与える影響を評価した。
(1)のアルカリ性組成物としては、(a)炭酸マグネシウム(商品名「炭酸マグネシウムTT」、ナイカイ塩業株式会社製)と(b)二酸化ケイ素(商品名「スーパーイネルギー」、片倉コープアグリ株式会社販売、富士シリシア化学株式会社製)の混合物、又は(a)苦土石灰(商品名「こがね苦土石灰」、日本肥料株式会社製)と(b)酸化鉄(Fe2O3、富士フィルム和光株式会社製)の混合物を使用した。
(2)の海藻資材としては、アスコフィルム ノドサム粉末(商品名「アスコ・シーグリーン」、アンデス貿易株式会社販売)を用いた。
これら(1)、(2)の物質を組合せて、キャベツ育苗実験を行った。
令和2年3月19日に、育苗培土(商品名「くみあいセル専用N220」、三研ソイル株式会社製)を詰めた128穴セルトレーに、栽培植物としてキャベツ(品種「おきな」)を播種した。アルカリ性組成物を含む施用区では、育苗培土に炭酸マグネシウムを1.5 g/L(約15 mM)と二酸化ケイ素を40 g/L(約600 mM)、又は、苦土石灰を10 g/Lと酸化鉄を1.7 g/L(約10 mM)混和し、海藻資材を含む施用区では、育苗培土に海藻資材を0、2、4、6又は8 g/L混和して、施用区毎に調製した育苗培土をセルトレーに詰めた。また、各施用区の育苗培土の一部を取り、pHを測定した。播種32日後(同年4月20日)、子葉節から最も長い本葉の先端までの長さと子葉を含む子葉より上部の生重量を測定した。
育苗培土pH、苗の長さ、苗の生重量の測定結果を図2に示す。
図2に示されるように、海藻資材の施用によって育苗培土のpHは低下する傾向が認められたが、無施用以外は全てpH6.5以上であった。アルカリ性組成物として、炭酸マグネシウムと二酸化ケイ素の混合物を施用した場合には、海藻資材の施用量が2、4、6又は8 g/Lでは生重量に影響がなかった。また、アルカリ性組成物として、苦土石灰と酸化鉄の混合物を施用した場合には、海藻資材の施用量が2、4又は6 g/Lでは生重量に影響がなかった。
<実験例3>
(1)アルカリ性組成物、(2)海藻資材、(3)アルカリ性組成物と海藻資材の組合せ施用が土壌伝染病の発生程度に与える影響を評価した。
(1)のアルカリ性組成物としては、(a)炭酸カルシウム(商品名「53炭酸カルシウム肥料」、三陸石灰株式会社製)、(b)酸化鉄(Fe2O3、富士フィルム和光株式会社製)の混合物を使用した。
(2)の海藻資材としては、アスコフィルム ノドサム粉末(商品名「ハイケルプ(粉末)」、NCTフロンティア株式会社販売)を用いた。
これら(1)、(2)の物質を単独又は組合せて、キャベツ栽培の圃場実験を行った。
令和2年6月8日に、育苗培土(商品名「くみあいセル専用N170」、三研ソイル株式会社製)を詰めた128穴セルトレーに、栽培植物としてキャベツ(品種「おきな」)を播種した。アルカリ性組成物を含む施用区では、育苗培土に炭酸カルシウムを10 g/L(約100 mM)、酸化鉄を1.7 g/L(約10 mM)混和し、海藻資材を含む施用区では、育苗培土に海藻資材を2 g/L混和して、施用区毎に調製した育苗培土をセルトレーに詰めた。播種21日後(同年6月29日)、土壌病原菌としてアブラナ科野菜根こぶ病菌の汚染圃場に定植した。
定植58~59日後、キャベツ根こぶ病の発生程度に与える影響を評価する指標として、キャベツ根こぶ病の病徴の程度を示す発病指数を下記の評価基準で設け、各キャベツ株を発病程度に応じて区分した。なお、定植58日後には4種類の各処理区における半数の株(20株)、定植59日後には各区における残りの20株を評価・区分した。区分後、発病度を下記式1に基づいて算出し、更に発病度から同様に下記式1に基づいて防除価を算出した。
(発病指数の評価基準)
0:無発病、1:根こぶが根系全体の1/3未満の根に着生、2:根こぶが根系全体の1/3以上2/3未満の根に着生、3:根こぶが根系全体の2/3以上の根に着生(側根形成あり)、4:根こぶが根系全体の根に着生(側根の形成なし)
発病度={Σ(発病指数別株数×発病指数)/(全株数×4)}×100 ・・・(式1)
上記において、発病指数別株数とは、それぞれの発病指数を示した株数を意味する。また、式1において、Σ(発病指数別株数×発病指数)は、次のようにして計算した値を意味する。すなわち、発病指数「0(無病徴)」を示すキャベツ株数に発病指数「0」を掛算する。次に、発病指数「1(根こぶが根系全体の1/3未満の根に着生)」を示すキャベツ株に発病指数「1」を掛算する。他の発病指数でも同様に掛算し、それぞれで得られた数値を合算した値となる。
防除価=100-(処理区の発病度/無処理の発病度)×100 ・・・(式1)
また、アルカリ性組成物と海藻資材の組み合わせ施用の予測防除価(EV)をColbyの理論(Colby, R. S. 1967 Weeds 15:20-22)に基づいた以下の式2を用いて算出し、これと実測される防除価(OV)と比べた。OVがEVより大きい場合には相乗作用があると判定した。
(2種類の組み合わせ処理の場合の予測防除価)
EV=X+Y-XY/100 ・・・(式2)
(上記式において、EVはAとBの2種類の要素を組合せて施用した際の予測防除価を示し、XはAを単独で施した際に実測される防除価を示し、YはBを単独で施した際に実測される防除価を示す)。
こうして求められた発病度、防除価、相乗効果の有無の判定結果を表1に示す。
Figure 2022007998000001
表1の結果に示されるように、防除価の高さは、「アルカリ性組成物+海藻資材」、「アルカリ性組成物」、「海藻資材」の順となった。また、「アルカリ性組成物」と「海藻資材」と組合せに相乗効果が検出された。したがって、土壌に、「アルカリ性組成物」と「海藻資材」とを組合せて施せば、病害防除の作用効果が相乗的に得られることが明らかとなった。
<実験例4>
(1)アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ処理無し)、(2)アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ処理有り)、(3)抵抗性誘導物質、(4)アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ処理無し)+抵抗性誘導物質、(5)アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ処理有り)+抵抗性誘導物質の施用が土壌伝染病の発生程度に与える影響を評価した。
(1)のアルカリ性組成物としては、(a)炭酸カルシウム(商品名「53炭酸カルシウム肥料」、三陸石灰株式会社製)、(b)酸化鉄(Fe2O3、富士フィルム和光株式会社製)の混合物を使用した。また、海藻資材としては、アスコフィルム ノドサム粉末(商品名「ハイケルプ(粉末)」、NCTフロンティア株式会社販売)を用いた。
(2)のアルカリ性組成物と海藻資材については(1)と同じ製品を用いた。なお、海藻資材については、2 kgを高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)用の袋に入れて、121℃下で20分間オートクレーブ処理した。
(3)の抵抗性誘導物質としてはプロベナゾール水和剤(商品名:「オリゼメート顆粒水和剤」、Meiji Seikaファルマ株式会社製)を用いた。
これら(1)、(2)、(3)の組合せにおいて、キャベツ栽培実験を行った。
令和2年10月28日に、育苗培土(商品名「くみあいセル専用N220」、三研ソイル株式会社製)を詰めた128穴セルトレーに、栽培植物としてキャベツ(品種「おきな」)を播種した。アルカリ性組成物+海藻資材の施用区では、育苗培土に炭酸カルシウムを10 g/L(約100 mM)、酸化鉄を1.7 g/L(約10 mM)、海藻資材を2 g/L混和した後、セルトレーに詰めた。アルカリ性組成物+海藻資材+抵抗性誘導物質の施用区では、育苗培土にアルカリ性組成物と海藻資材を同様に混和した後、セルトレーに詰めた。播種後、無加温のガラス室内で栽培した。播種44日後(同年12月11日)、プロベナゾールを施用する試験群には、128穴セルトレー1枚当たり500 mLの0.24%プロベナゾールを含む懸濁液を灌注した。灌注後、土壌病原菌としてアブラナ科野菜根こぶ病菌で汚染した土を入れたポリポット(容量:約750 ml)に移植した。移植後は、人工気象器内で底面吸水しながら栽培した。なお、人工気象器は、12月28日(移植17日後)まで、明期25℃・16時間、暗期20℃・8時間とし、それ以降は発病を促すため器内温度を3℃高め、明期28℃・16時間、暗期23℃・8時間とした。
定植32日後、キャベツの茎葉(地上部)と根部の生重量を測定した。なお、根部の生重量については、土を水で洗い流した後、濾紙上に約1時間置き水を切った後に測定した。キャベツ根こぶ病の発生程度に与える影響を評価する指標として、キャベツ根こぶ病の病徴の程度を示す発病指数を下記の評価基準で設け、各キャベツ株を発病程度に応じて区分した。区分後、発病度を前述の式1に基づいて算出し、更に発病度から同様に前述の式2に基づいて防除価を算出した。
(発病指数の評価基準)
0:無発病、1:軽微な根こぶの着生、2:根の生育障害および(または)根こぶの着生、3:著しい根の生育障害
また、「アルカリ性組成物+海藻資材」又は「アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ処理済み)」と「抵抗性誘導物質」の組み合わせ施用の予測防除価(EV)を前述の式3を用いて算出し、これと実測される防除価(OV)と比べた。OVがEVより大きい場合には相乗作用があると判定した。
こうして求められた生重量を図3、発病度、防除価、相乗効果の有無の判定結果を表2に示す。
Figure 2022007998000002
図3の結果に示されるように、地上部の生重量の値は、無施用区に対して、「アルカリ性組成物+海藻資材」、「アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ済み)」、「アルカリ性組成物+海藻資材+抵抗性誘導物質」、「アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ済み)+抵抗性誘導物質」の施用区では有意に高くなった。一方、抵抗性誘導物質の単独施用区では、無施用区と有意差がなかった。また、根部の生重量の値は、無施用区に対して、「アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ済み)」、「アルカリ性組成物+海藻資材+抵抗性誘導物質」の施用区で優位に高くなった。一方、その他の区は、無施用区と有意差がなかった。
表2の結果に示されるように、防除価の高さは、「アルカリ性組成物+海藻資材+抵抗性誘導物質」、「アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ済み)」、「アルカリ性組成物+海藻資材」と「アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ済み)+抵抗性誘導物質」、「抵抗性誘導物質」の順となった。また、「アルカリ性組成物+海藻資材」と「抵抗性誘導物質」の組合せに相乗効果が検出された。
したがって、「アルカリ性組成物+海藻資材+抵抗性誘導物質」と「アルカリ性組成物+海藻資材(オートクレーブ済み)」の施用区では、根こぶ病の発病が抑制され、地上部と根部の生重量の値が高くなることが明らかとなった。さらに、土壌に、「アルカリ性組成物+海藻資材」と「抵抗性誘導物質」とを組合せて施せば、病害防除の作用効果が相乗的に得られることが明らかとなった。
<実験例5>
(1)アルカリ性組成物+海藻資材、(2)アルカリ性組成物+海藻資材+Qi阻害物質+抵抗性誘導物質の施用が土壌伝染病の発生程度に与える影響を評価した。
(1)のアルカリ性組成物としては、(a)炭酸カルシウム(商品名「53炭酸カルシウム肥料」、三陸石灰株式会社製)、(b)酸化鉄(Fe2O3、富士フィルム和光株式会社製)の混合物を使用した。また、海藻資材としては、アスコフィルム ノドサム粉末(商品名「ハイケルプ(粉末)」、NCTフロンティア株式会社販売)を用いた。
(2)のQi阻害物質としてはアミスルブロム水和剤(商品名「オラクル顆粒水和剤」、日産化学工業株式会社製)、抵抗性誘導物質としてはプロベナゾール水和剤(商品名:「オリゼメート顆粒水和剤」、Meiji Seikaファルマ株式会社製)をそれぞれ用いた。
これら(1)、(2)の組合せにおいて、キャベツ栽培の圃場実験を行った。
令和2年6月1日に、育苗培土(商品名「くみあいセル専用N170」、三研ソイル株式会社製)を詰めた128穴セルトレーに、栽培植物としてキャベツ(品種「おきな」)を播種した。アルカリ性組成物+海藻資材の施用区では、育苗培土に炭酸カルシウムを10 g/L(約100 mM)、酸化鉄を1.7 g/L(約10 mM)、海藻資材を2 g/L混和した後、セルトレーに詰めた。アルカリ性組成物+海藻資材+Qi阻害物質+抵抗性誘導物質の施用区では、育苗培土にアルカリ性組成物と海藻資材を同様に混和した後、セルトレーに詰めた。播種22日後(同年6月23日)、アミスルブロムとプロベナゾールを施用する試験群には、128穴セルトレー1枚当たり500 mLの0.25%アミスルブロム及び0.24%プロベナゾールの各々を含む懸濁液を灌注した。播種23日後(同年6月24日)、土壌病原菌としてアブラナ科野菜根こぶ病菌の汚染圃場に定植した。
定植56~57日後、キャベツ根こぶ病の発生程度に与える影響を評価する指標として、キャベツ根こぶ病の病徴の程度を示す発病指数を下記の評価基準で設け、各キャベツ株を発病程度に応じて区分した。なお、定植56日後には4種類の各処理区における2/3の株(80株)、定植57日後には各区における残りの40株を評価・区分した。区分後、発病度を前述の式1に基づいて算出し、更に発病度から同様に前述の式2に基づいて防除価を算出した。
(発病指数の評価基準)
0:無発病、1:根こぶが根系全体の1/3未満の根に着生、2:根こぶが根系全体の1/3以上2/3未満の根に着生、3:根こぶが根系全体の2/3以上の根に着生(側根形成あり)、4:根こぶが根系全体の根に着生(側根の形成なし)
こうして求められた発病度、防除価を表3に示す。
Figure 2022007998000003
表3の結果に示されるように、防除価の高さは、「アルカリ性組成物+海藻資材+Qi阻害物質+抵抗性誘導物質」、「アルカリ性組成物+海藻資材」の順となった。したがって、土壌に、「アルカリ性組成物+海藻資材」に加え、Qi阻害物質又は抵抗性誘導物質又はその両方を組合せて施せば、病害防除の作用効果が向上することが明らかとなった。
<実験例6>
(1)アルカリ性組成物、(2)Qi阻害物質、(3)海藻資材の組合せ施用が土壌伝染病の発生程度に与える影響を評価した。
(1)のアルカリ性組成物としては、(a)炭酸マグネシウム(商品名「炭酸マグネシウムTT」、ナイカイ塩業株式会社製)、(b)微量要素(商品名「FTE1号」、東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製)、(c)二酸化ケイ素(商品名「スーパーイネルギー」、片倉コープアグリ株式会社販売、富士シリシア化学株式会社製)の混合物を使用した。
(2)のQi阻害物質としては、アミスルブロム水和剤(商品名「オラクル顆粒水和剤」、日産化学工業株式会社製)を用いた。
(3)の海藻資材としては、アスコフィルム ノドサム粉末(商品名「アスコ・シーグリーン」、アンデス貿易株式会社販売)を用いた。
これら(1)、(2)、(3)の物質を単独又は組合せて、キャベツ栽培の圃場実験を行った。
令和元年5月31日に、育苗培土(商品名「くみあいセル専用N220」、三研ソイル株式会社製)を詰めた128穴セルトレーに、栽培植物としてキャベツ(品種「おきな」)を播種した。アルカリ性組成物を含む施用区では、育苗培土に炭酸マグネシウムを19.4 g/L、二酸化ケイ素を40 g/L、微量要素を1.5 g/L混和し、海藻資材を含む施用区では、育苗培土に海藻資材を10 g/L混和して、施用区毎に調製した育苗培土をセルトレーに詰めた。播種31日後(同年7月1日)、アミスルブロムを施用する試験群には、128穴セルトレー1枚当たり500 mLの0.25%アミスルブロム懸濁液を灌注した。播種32日後(同年7月2日)、土壌病原菌としてアブラナ科野菜根こぶ病菌の汚染圃場に定植した。
定植63日後、キャベツ根こぶ病の発生程度に与える影響を評価する指標として、キャベツ根こぶ病の病徴の程度を示す発病指数を下記の評価基準で設け、各キャベツ株を発病程度に応じて区分した。区分後、発病度を前述の式1に基づいて算出し、更に発病度から前述の式2に基づいて防除価を算出した。
(発病指数の評価基準)
0:無発病、1:根こぶが根系全体の1%以上25%未満の根に着生、2:根こぶが根系全体の25%以上50%未満の根に着生、3:根こぶが根系全体の50%以上75%未満の根に着生、4:根こぶが根系全体の75%以上の根に着生
また、アルカリ性組成物+Qi阻害物質と海藻資材の組み合わせ施用の予測防除価(EV)を前述の式3を用いて算出し、これと実測される防除価(OV)と比べた。OVがEVより大きい場合には相乗作用があると判定した。
(2種類の組み合わせ処理の場合の予測防除価)
こうして求められた発病度、防除価、相乗効果の有無の判定結果を表4に示す。
Figure 2022007998000004
表4に示されるように、定植63日後の判定結果から、「アルカリ性組成物+Qi阻害物質+海藻資材」、「アルカリ性組成物+Qi阻害物質」、「海藻資材」の順に高い防除価を示した。また、「アルカリ性組成物+Qi阻害物質」と「海藻資材」との組合せに相乗効果が検出された。
表4の結果に示されるように、「アルカリ性組成物+Qi阻害物質+海藻資材」、「アルカリ性組成物+Qi阻害物質」の組合せにより、高い防除価が得られた。また、「アルカリ性組成物+Qi阻害物質」と「海藻資材」との組合せにおいて、相乗効果が表れて防除効果が高まった。したがって、土壌に、(i)「アルカリ性組成物又はQi阻害物質、あるいは、アルカリ性組成物とQi阻害物質の両方」、(ii)「海藻資材」のうち、(i)と(ii)の組合せを施せば、病害防除の作用効果が相乗的に得られることが明らかとなった。

Claims (6)

  1. 下記に示す(1)アルカリ性組成物、(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種、(3)海藻資材のうち、2種以上の組合せを含有することを特徴とする、植物の土壌伝染病防除用組成物。
    (1)アルカリ性組成物:(a)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰及びケイ酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種、(b)微量要素、(c)二酸化ケイ素及び酸化鉄から選ばれた少なくとも1種のうち、(a)と(b)の組合せ、(a)と(c)の組合せ、又は(a)と(b)と(c)の組合せを含有するものである。
    (2)Qi阻害物質:呼吸に関わるユビキノン還元酵素のQiサイトに作用し、殺菌効果を示す物質である。
    抵抗性誘導物質:病原菌に対する直接的な殺菌作用は示さないが、植物に作用して病害抵抗反応を誘起する物質である。
    (3)海藻資材:海水中で生育する緑藻、紅藻、褐藻から選ばれた1種以上の海藻そのもの、前記海藻の乾燥物、前記海藻の乾燥物を粉砕した物、前記海藻の乾燥物を高圧蒸気滅菌した物、又は前記海藻の乾燥物の粉砕物を高圧蒸気滅菌した物を含むものである。
  2. A:(1)アルカリ性組成物と(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種との組合せ、B:(1)アルカリ性組成物と(3)海藻資材との組合せ、C:(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種と(3)海藻資材との組合せ、D:(1)アルカリ性組成物と(2)Qi阻害物質及び抵抗性誘導物質から選ばれた少なくとも1種と(3)海藻資材との組合せから選ばれたものを含有する、請求項1記載の植物の土壌伝染病防除用組成物。
  3. 前記(1)アルカリ性組成物は、前記(a)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、苦土石灰及びケイ酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種、及び前記(c)二酸化ケイ素及び酸化鉄から選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1又は2記載の植物の土壌伝染病防除用組成物。
  4. 前記(1)アルカリ性組成物の前記(b)微量要素は、マンガン、ホウ素を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の植物の土壌伝染病防除用組成物。
  5. 変形菌性又は細菌性又は真菌性の土壌伝染病に対する防除用組成物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の植物の土壌伝染病防除用組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載された土壌伝染病防除用組成物を、植物の播種から定植までの育苗期間に、育苗培土又は種子又は植物自体に付与することを特徴とする植物の土壌伝染病防除方法。
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