JP2022006749A - 手術用ドリルビット - Google Patents

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Figure 2022006749000001
【課題】インプラント用の埋植孔の穿孔を、複数の工程を要することなく一度で行うことができる手術用ドリルビットを提供する。
【解決手段】手術用ドリルビット1は、切れ刃4が設けられた先端部5を有する刃部2を備え、先端角α1が16~20°で、刃部2の直径が1.8~5.0mmであり、かつシンニングが施されている。また、切れ刃4は、先端角α1が先端部5の後端まで一定又は該後端に近づくほど減少するような形状を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、人間の顎骨に歯科インプラントを埋植するための孔を穿孔する際に使用される手術用ドリルビットに関する。
従来、人間の顎骨に歯科インプラントを埋植するための孔を穿孔する際に用いられる手術用ドリルビットが知られている(例えば、特許文献1、2参照)特許文献1の手術用ドリルビットでは、先端角が80~150°の範囲内に設定される。
また、特許文献2の手術用ドリルビットは、顎骨に予め形成された下孔を拡大するための穿孔部を備える。この穿孔部は、先端に切刃を有さない先端面と、先端面に連続し、ドリルの中心軸に対して鋭角である第1角度αを成し、第1切刃を有する第1テーパ面と、第1テーパ面に連続し、ドリルの中心軸に対して鋭角である第2角度を成し、第2切刃を有する第2テーパ面と、第2テーパ面に連続したボディ面とを備える。第1角度αは、55°≦αa≦65°の範囲であるのが好ましいとされている。
特開平6-7382号公報 特開2016-30090号公報
しかしながら、上記特許文献1、2の手術用ドリルビットによれば、径の異なる複数のドリルを用いて、削孔する孔の径を広げてゆく必要がある。
また、従来、抜歯をした後、数か月養生期間を置いてから、歯科インプラントを埋植するための埋植孔を穿孔する方法が用いられている。しかし、これによれば、上顎の前歯の場合、抜歯後数か月経過すると唇側の薄い歯槽骨が吸収されてしまうので、GBR(骨誘導再生法)などの骨造成が必要になり、審美上の修復も困難になる。
このため、近年の歯科インプラント治療では、上顎の前歯に関しては、抜歯後直ちに歯科インプラントを埋植するケースが増えてきている。ただし、この場合においても、所定の抜歯処理を行った後、複数の工具を取り換えて用いながら、複数の工程を経て歯科インプラント用の埋植孔を形成する必要がある。
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、歯科インプラント用の埋植孔の穿孔を、複数の工程を要することなく一度で行うことができる手術用ドリルビットを提供することにある。
本発明の手術用ドリルビットは、
切れ刃が設けられた先端部を有する刃部を備え、
先端角が16~20°の範囲内に設定され、前記刃部の直径が1.8~5.0mmの範囲内に設定されており、かつシンニングが施されていることを特徴とする。
本発明によれば、所定の抜歯処理の後、本発明の手術用ドリルビットだけを用いて、直ちに、歯槽骨に対して精確な穿孔位置から正しい方向に向かって穿孔を行い、インプラント用の埋植孔を形成することができる。
本発明において、前記先端部の切れ刃は、先端角が該先端部の後端まで一定の又は該後端に近づくほど減少する形状を有するのが好ましい。これによれば、歯槽骨に対する穿孔を、スムーズに行うことができる。
本発明において、ウェブ厚が刃部の直径の15%~25%の範囲内に設定され、溝長が10~26mmの範囲内に設定され、溝の捩れ角が15~30°の範囲内に設定されるのが好ましい。これによれば、本体の剛性を保ちつつ、切りくずを適切に排除して歯槽骨の切削に適した切削抵抗を実現することができる。
本発明において、前記刃部に、0.5~2mmの範囲内に設定された幅を有する少なくとも3つのラインマーキングが所定間隔で設けられるのが好ましい。これによれば、各ラインマーキングにより、手術用ドリルビットによる歯槽骨に対する穿孔深さを術者が良好に認識することができる。
本発明の一実施形態に係る手術用ドリルビットの正面図である。 図1の手術用ドリルビットの先端部を、図1の場合と軸周りの角度を90°程度変えて示す図である。 図1の手術用ドリルビットを先端側から見た図である。 図1の手術用ドリルビットの先端切れ刃の逃げ角を示す断面図である。 図1の手術用ドリルビットの刃部に設けられたラインマーキングを示す図である。 図1の手術用ドリルビットを用いて歯科インプラントを埋植するための埋植孔を穿孔する様子を示す図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る手術用ドリルビットを示す。図1に示すように、この手術用ドリルビット1は、刃部2と、その後方に連なり、手術用ドリルビット1をドリルチャックに取り付けるためのシャンク部3とを備える。
刃部2は、2枚の切れ刃4を有する先端部5を備える。先端部5は、刃部2の先端を頂点とするほぼ円錐状の形状を有する。また、刃部2は、所定の捩れ角βを有して先端部5から連続し、切削屑を排出するための溝6を有する。捩れ角βの好ましい範囲は、15~30°であり、さらに好ましい範囲は17~23°である。本実施形態では20°とされる。
先端角α1の好ましい範囲は、16~20°であり、本実施形態では18°とされる。すなわち、先端角α1の値としては、顎骨(歯槽骨)の骨質と所望する超強斜位角度での穿孔に適した値が採用される。
切れ刃4は、先端角α1が先端部5の後端まで一定の又は該後端に近づくほど減少するような形状を有する。なお、先端角は、手術用ドリルビット1の軸に平行な面に,切れ刃を平行にして投影したときの角であり、切れ刃の部位に応じて変化する場合がある。
先端部5の長さL1は、刃部2の直径と先端角α1によって決定され、本実施形態では7.3mm程度である。刃部2の直径φの好ましい範囲は1.8~5.0mmであり、より好ましくは2.0~3.5mmである。本実施形態では2.34mm程度とされる。
溝長L2の好ましい範囲は、10~26mmであり、より好ましい範囲は、穿孔深さに刃部2の直径を加えた値の1.5~2.0倍である。本実施形態では15mmとされる。手術用ドリルビット1全体の長さL3は、25~45mm程度であり、本実施形態では40mmとされる。
図2は、手術用ドリルビット1の先端部5を、図1の場合と軸周りの角度を90°程度変えて示す。図2においては、先端部5の先端の角度α2は、例えば、14°程度である。
図3は、手術用ドリルビット1を先端側から見た様子を示す。本実施形態では図3に示すように、シンニングの形状はX形(クロス形)であり、スラスト荷重を大幅に減少させて食い付き性を向上させたものとなっている。但し、シンニング形状はこれに限るものでは無く、骨質等に合わせて適宜選択することができる。すなわち。切れ刃4の先端部がシンニング切れ刃8となっている。
図3のように先端側から見た場合、刃部2の先端を通り、溝6と逃げ面7との交線に接する線と、シンニング切れ刃8とが成す角γは、例えば、95°程度とされる。マージン幅tは、例えば、0.23mm程度とされる。二番取り深さdは、例えば0.1mm程度とされる。溝6の半径rは、例えば、0.6mm程度とされる。
図4は、切れ刃4の逃げ角を示す。逃げ面7は、3つの面で構成される。切れ刃4に隣接する面及びこれに隣接する面は、それぞれ、すくい面9からW1及びW2の距離まで存在する。W1及びW2の値は、それぞれ、例えば0.2mm及び0.6mmとされる。それぞれの面の逃げ角は、例えば、小さい方からθ1=15°、θ2=35°、θ3=55°とされる。
また、ウェブ厚は、刃部2の直径の15~25%、好ましくは17~23%である。ウェブテーパは0.5/100、溝幅比は1:1.2とされる。また、手術用ドリルビット1は、右刃右ねじれ形式のものであって、術者が手に持って使用する機器であることから、バックテーパは設けていない。
図5は、刃部2の先端部5より後側に設けられるラインマーキングを示す。図5に示すように、刃部2には、少なくとも3つのラインマーキングA~Cが先端側から所定間隔で設けられる。各ラインマーキングA~Cは、全周にわたる帯状のものとして設けられる。これらのラインマーキングA~Cは、手術用ドリルビット1で穿孔を行う際に、穿孔深さを認識する目安となる。
各ラインマーキングA~Cは、例えば、0.5~2mm程度の軸方向の幅を有する。ラインマーキングAの先端は、刃部2の先端からd1の箇所に位置する。ラインマーキングBは、ラインマーキングAからd2だけ後方に位置し、ラインマーキングCは、ラインマーキングAのd3だけ後方に位置する。d1~d3の値は、例えば、8mm、4mm、8mmとされる。その際、ラインマーキングA~Cの幅は、穿孔深さを認識し易ければ良く、同一でも異なっていても構わない。
図6は、手術用ドリルビット1を用いたインプラント治療を説明するための説明図である。このインプラント治療に際しては、例えば、まず、ルートメンブレンテクニックと呼ばれる手法により、インプラント治療される前歯10の歯冠部11を削除し、歯根12をカットしてその唇13側の一部(ルートメンブレン)14を残し、該一部14の唇13と反対側の面15の形態修正と抜歯窩16内の掻爬、及び該一部14のトリミングを行う。
なお、図6において、前歯10の歯冠部11及び歯根12は2点鎖線で示し、歯根12の当該一部14は実線で示してある。
次に、手術用ドリルビット1を用いて、唇側の歯顎線17の法線又は歯槽骨18の内面に対してほぼ10°を成す角度、すなわち、歯槽骨18に対して超強斜位からの穿孔が行われる。
この穿孔の開始にあたっては、手術用ドリルビット1の先端角が18°程度であり、適切なシンニングが施されていることから、手術用ドリルビット1を正確な穿孔位置に対して正確な穿孔角度で容易に位置決めして穿孔が開始される。
そして、この穿孔は、例えば、10mm程度の穿孔深さに達するまで行われる。この場合、穿孔の終了は、例えば、刃部2のラインマーキングAの半分程度が歯槽骨18に埋没したことにより認識される。
このようにして、穿孔が完了すると、歯槽骨18にインプラントを埋植するための埋設孔が形成されたことになる。この埋設孔に歯科用インプラントのインプラント体(人口歯根)がねじ込まれ、さらに3,4か月経過後、これにアバットメントを介して人工歯冠を取り付けることにより、インプラント治療が完了する。
以上のように、本実施形態の手術用ドリルビット1は、先端角α1が16~20°であり、直径が1.8~5.0mmである。このため、ルートメンブレンテクニック等による前処理後、手術用ドリルビット1のみを用いて、容易に埋設孔を穿孔することができる。
すなわち、従来、前処理後、例えば、ラウンドダイヤモンドバーで硬い歯槽骨18に起始点を形成し、ISFダイヤモンドバーで歯槽骨18に対するインプラントの埋入方向を決定し、さらにマーキングバーで歯槽骨18にインプラント床を形成してから埋植孔を歯科用のガイドドリルで削孔する必要があったが、これらの処置を、手術用ドリルビット1により一度で行うことができる。
また、先端部5の切れ刃4は、先端角α1が先端部5の後端まで一定又は該後端に近づくほど減少するような形状を有するので、歯槽骨18に対する穿孔を、スムーズに行うことができる。
また、手術用ドリルビット1のウェブ厚が直径の15%~25%で、刃部2は、溝長L2が10~26mmで、捩れ角βが15~30°の溝6を備えるので、切削くずを適切に排除して歯槽骨18の切削に適した切削抵抗を実現することができる。
また、刃部2に、0.5~2mm幅の3つのラインマーキングA~Cが所定間隔で設けられるので、各ラインマーキングA~Cにより、手術用ドリルビット1による歯槽骨18に対する穿孔深さを術者が良好に認識することができる。
1…手術用ドリルビット、2…刃部、3…シャンク部、4…切れ刃、5…先端部、6…溝、7…逃げ面、8…シンニング切れ刃、9…すくい面、A~C…ラインマーキング、10…前歯、11…歯冠部、12…歯根、13…唇、14…歯根の一部、15…面、16…抜歯窩、17…歯顎線、18…歯槽骨。

Claims (4)

  1. 切れ刃が設けられた先端部を有する刃部を備え、
    先端角が16~20°の範囲内に設定され、前記刃部の直径が1.8~5.0mmの範囲内に設定されており、かつシンニングが施されていることを特徴とする手術用ドリルビット。
  2. 前記先端部の切れ刃は、該先端部の後端まで先端角が一定の又は該後端に近づくほど減少する形状を有することを特徴とする請求項1に記載の手術用ドリルビット。
  3. ウェブ厚が刃部の直径の15%~25%の範囲内に設定され、溝長が10~26mmの範囲内に設定され、溝の捩れ角が15~30°の範囲内に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の手術用ドリルビット。
  4. 前記刃部に、0.5~2mmの範囲内に設定された幅を有する少なくとも3つのラインマーキングが所定間隔で設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の手術用ドリルビット。
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