JP2022003268A - 伝動用vベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性、耐側圧性および耐屈曲疲労性を向上できるローエッジタイプVベルトを提供する。【解決手段】ローエッジタイプVベルト1の内周面側に配設される圧縮ゴム層を、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された圧縮ゴム層の本体5と、前記圧縮ゴム層の本体5の内周側表面を被覆し、かつジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された平均厚み0.3〜3.5mmの内表面層6とで構成する。前記ローエッジタイプVベルト1は、ベルト外周面側に配設される伸張ゴム層をさらに含んでいてもよい。前記伸張ゴム層は、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された伸張ゴム層の本体3と、前記伸張ゴム層の本体3の外周側表面を被覆し、かつエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された外表面層2とを有していてもよい。【選択図】図2

Description

本発明は、ローエッジVベルトやローエッジコグドVベルトなどのローエッジタイプの伝動用Vベルトに関する。
摩擦伝動により動力を伝達するVベルトには、摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)がカバー布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがあり、摩擦伝動面の表面性状(ゴム層とカバー布との摩擦係数)の違いから用途に応じて使い分けられている。また、ローエッジタイプのベルトには、コグを設けないローエッジVベルトの他、ベルトの下面(内周面)のみにコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルトや、ベルトの下面(内周面)および上面(外周面)の両方にコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルト(ローエッジダブルコグドVベルト)がある。
ローエッジVベルトやローエッジコグドVベルトは、主として、一般産業機械、農業機械の駆動、自動車エンジンでの補機駆動などに用いられる。また、他の用途として自動二輪車などのベルト式無段変速装置に用いられる変速ベルトと呼ばれるローエッジコグドVベルトがある。
図1に示すように、ベルト式無段変速装置30は、駆動プーリ31と従動プーリ32に伝動用Vベルト1を巻き掛けて、変速比を無段階で変化させる装置である。各プーリ31,32は、軸方向への移動が規制又は固定された固定プーリ片31a,32aと、軸方向に移動可能な可動プーリ片31b,32bとを備えており、固定プーリ片31a,32aの内周壁と可動プーリ片31b,32bの内周壁とでV溝状の傾斜対向面を形成している。各プーリ31,32は、これらの固定プーリ片31a,32aと可動プーリ片31b,32bとで形成されるプーリ31,32のV溝の幅を連続的に変更できる構造を有している。前記伝動用Vベルト1の幅方向の両端面は、各プーリ31,32のV溝状の傾斜対向面に対応して傾斜が合致するテーパ面で形成され、変更されたV溝の幅に応じて、V溝の対向面における任意の上下方向の位置に嵌まり込む。例えば、駆動プーリ31のV溝の幅を狭く、従動プーリ32のV溝の幅を広くすることにより、図1の(a)に示す状態から図1の(b)に示す状態に変更すると、伝動用Vベルト1は、駆動プーリ31側ではV溝の上方へ、従動プーリ32側ではV溝の下方へ移動し、各プーリ31,32への巻き掛け半径が連続的に変化して、変速比を無段階で変化できる。このような用途に用いる変速ベルトは、ベルトが大きく屈曲するとともに高負荷での過酷なレイアウトで用いられる。すなわち、駆動プーリと従動プーリとの二軸間の巻き掛け回転走行だけでなく、プーリ半径方向への移動、巻き掛け半径の連続的変化による繰り返される屈曲動作など、高負荷環境での過酷な動きに耐用すべく特異的な設計がなされている。
近年、このようなVベルト、特にベルト式無段変速装置に用いられる変速ベルトにおいては、耐熱性、耐側圧性および耐屈曲疲労性(耐亀裂性)などの諸特性を向上させることが求められている。
例えば、特開2010−196888号公報(特許文献1)には、耐側圧性を確保しつつ耐屈曲疲労性に優れるベルトの提供を課題として、圧縮ゴム層が心線に近い上層とベルト内周面側の下層の2層からなり、下層に比べて上層の硬度を高く設定した伝動用ベルトが開示されている。そして、上層として使用することができる素材としては硬質ウレタンが好ましいと記載され、下層として使用することができる素材としてはクロロプレンゴムや水素化ニトリルゴムなどを例示している。
また、特開平9−303488号公報(特許文献2)には、耐側圧性や耐屈曲疲労性に優れるとともに、耐熱性、耐摩耗性を十分満足する動力伝動用Vベルトを提供することを課題として、圧縮ゴム層が水素添加ニトリルゴム、不飽和カルボン酸金属塩、短繊維、有機過酸化物を配合して架橋したゴム組成物からなり、しかも短繊維を含まない亀裂防止ゴム層を積層したことを特徴とする動力伝動用Vベルトが開示されている。そして、亀裂防止ゴム層の厚みは、0.5〜3mmが好ましいと記載され、実施例では厚み14.5mmのローエッジコグベルト(ローエッジコグドVベルト)が作製されている。
水素添加ニトリルゴム以外で耐熱性に優れるポリマーとしては、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)をはじめとするエチレン−α−オレフィンエラストマーが挙げられる。特に、EPDMは主鎖に二重結合を含まないことによる耐熱性の高さに加えて、ジエン成分に由来する側鎖の二重結合部の存在により、有機過酸化物による架橋に加えて硫黄による架橋も適用できることから、架橋ゴムの特性をコントロールして伝動ベルトの性能を向上できる可能性がある。
例えば、特開2000−283243号公報(特許文献3)には、耐熱性および耐寒性に優れるとともに、亀裂の進展が遅いために寿命のばらつきが小さく、信頼性に優れる伝動ベルトの提供を課題として、架橋剤として硫黄を配合したエチレン/α−オレフィン/ジエンターポリマーを含むゴムを用いた伝動ベルトが開示されている。より具体的には、架橋剤として硫黄を含むEPDMを用いたVリブドベルトが、クロロプレンゴムを用いたVリブドベルト、または架橋剤として有機過酸化物を含むEPDMを用いたVリブドベルトよりも、寿命の長さや寿命のばらつきの小ささの点で優れていることが開示されている。
特開2010−196888号公報 特開平9−303488号公報 特開2000−283243号公報
しかし、特許文献1では、課題として耐熱性の向上を明記していないが、近年のベルト式無段変速装置ではコンパクト化や冷却機能の簡素化によって熱が発散しにくくなっている。そのため、変速ベルトの耐熱性の向上が重要な課題となっているが、特許文献1に例示されているような従来の素材では十分な耐熱性を確保できない場合が増加している。
また、特許文献2では、圧縮層を形成するゴム組成物のポリマー成分として、不飽和カルボン酸金属塩を含む水素添加ニトリルゴムが用いられているが、高価なポリマーであるために製造コストが高くなる欠点があった。さらに、亀裂防止ゴム層が短繊維を含まないために、耐側圧性が低下しやすい欠点があり、実用に耐える構成ではなかった。
さらに、特許文献3では、硫黄を配合したエチレン/α−オレフィン/ジエンターポリマーを含むゴムで伝動ベルトを形成することにより、耐熱性、耐側圧性、耐屈曲疲労性の向上に一定の効果を発揮するものの、これらの特性に対する近年の厳しい要求を十分に満足できるものではなくなってきており、さらなる改善が求められていた。
従って、本発明の目的は、耐熱性、耐側圧性および耐屈曲疲労性を向上できるローエッジタイプVベルトを提供することにある。
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ローエッジタイプVベルトの圧縮ゴム層を、有機過酸化物を用いて架橋したエチレン−α−オレフィンエラストマーで形成された圧縮ゴム層の本体と、硫黄系架橋剤で架橋したジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーで形成された特定厚みの表面層との組み合わせで構成することにより、耐熱性、耐側圧性および耐屈曲疲労性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のローエッジタイプVベルトは、内周面側に配設される圧縮ゴム層を含み、前記圧縮ゴム層が、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された圧縮ゴム層の本体と、前記圧縮ゴム層の本体の内周側(ベルト内周側)表面を被覆し、かつジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された平均厚み0.3〜3.5mmの内表面層とで形成されている。前記ローエッジタイプVベルトは、外周面側に配設される伸張ゴム層をさらに含んでいてもよい。前記伸張ゴム層は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成されていてもよい。また、前記伸張ゴム層は、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された伸張ゴム層の本体と、前記伸張ゴム層の本体の外周側(ベルト外周側)表面を被覆し、かつジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された外表面層とを有していてもよい。前記ローエッジタイプVベルトのベルト全体の平均厚みは8〜18mmであってもよい。前記圧縮ゴム層の本体の硬度は90〜99度であり、かつ前記内表面層の硬度は70〜95度であってもよい。前記圧縮ゴム層の本体において、エチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量は3.5質量%未満であってもよい。前記内表面層において、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量は3.5質量%以上であってもよい。前記ローエッジタイプVベルトは、少なくとも内周面側にコグを有していてもよい。前記ローエッジタイプVベルトは、変速ベルトであってもよい。
本発明では、ローエッジタイプVベルトの圧縮ゴム層が、有機過酸化物を用いて架橋したエチレン−α−オレフィンエラストマーで形成された圧縮ゴム層の本体と、硫黄系架橋剤で架橋したジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーで形成された特定の厚みの内表面層との組み合わせで構成されているため、耐熱性、耐側圧性および耐屈曲疲労性を向上できる。そのため、変速ベルトなどの高負荷環境での過酷な状況で走行してもゴム層の亀裂(クラック)やポップアウト(心線がベルトの側面から飛び出す現象)が抑制され、耐久性を向上できる。
図1は、ベルト式無段変速装置の変速機構を説明するための概略図である。 図2は、本発明のローエッジコグドVベルトの一例を示す概略部分断面斜視図である。 図3は、図2のローエッジコグドVベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。 図4は、実施例での耐久走行試験で用いた試験機のレイアウトを示す概略図である。
[ローエッジタイプVベルトの構造]
本発明のローエッジタイプVベルト(ローエッジタイプの伝動用Vベルト)は、圧縮ゴム層の本体と表面層(内表面層)との特定の二層構造を有する圧縮ゴム層を含むローエッジタイプVベルトであれば、特に限定されない。ローエッジタイプVベルトには、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルトが含まれる。さらに、ローエッジコグドVベルトは、ローエッジVベルトの内周側のみにコグが形成されたローエッジコグドVベルトと、ローエッジVベルトの内周側および外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルトとに大別できる。これらのうち、耐側圧性と耐屈曲疲労性とを高度なレベルで両立することを要求される点から、ローエッジコグドVベルトおよびローエッジダブルコグドVベルトが好ましく、より過酷な状況で利用され、高度なレベルを要求される点から、ローエッジダブルコグドVベルトが特に好ましい。
図2は、本発明のローエッジコグドVベルトの一例を示す概略部分断面斜視図であり、図3は、図2のローエッジコグドVベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。
この例では、ローエッジコグドVベルト1は、ベルト本体の内周面に、ベルトの長手方向(図中のA方向)に沿ってコグ山1aとコグ谷1bとが交互に並んで形成されたコグ部を有しており、このコグ山1aの長手方向における断面形状は略半円状(湾曲状または波形状)であり、長手方向に対して直交する方向(幅方向または図中のB方向)における断面形状は台形状である。すなわち、各コグ山1aは、ベルト厚み方向において、コグ谷1bからA方向の断面において略半円状に突出している。ローエッジコグドVベルト1は、積層構造を有しており、ベルト外周側から内周側(コグ部が形成された側)に向かって、伸張ゴム層の外表面層2、伸張ゴム層の本体3、接着ゴム層4、圧縮ゴム層の本体5、圧縮ゴム層の内表面層6が順次積層されている。ベルト幅方向における断面形状は、ベルト外周側から内周側に向かってベルト幅が小さくなる台形状である。さらに、接着ゴム層4内には、芯体4aが埋設されており、前記コグ部は、コグ付き成形型により圧縮ゴム層5に形成されている。
本発明のローエッジタイプVベルトのベルト全体の厚み(平均厚み)は、例えば8〜18mm、好ましくは9〜16mm(特に10〜15mm)、さらに好ましくは10〜14mm(特に11〜13mm)である。厚みが薄すぎると、耐側圧性が低下する虞があり、厚すぎると、屈曲性が低下して伝動効率が低下するとともに、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
なお、本願において、圧縮ゴム層がコグ部を有する場合、ベルト全体の厚みは、コグ部の頂部における厚み(ベルトの最大厚み)を意味する。
[圧縮ゴム層]
圧縮ゴム層は、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された圧縮ゴム層の本体と、この本体のベルト内周側表面を被覆し、かつエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された表面層(内表面層)とを有している。圧縮ゴム層は、圧縮ゴム層の本体と内表面層とを有していればよく、他の層(例えば、圧縮ゴム層の本体と内表面層との間に介在する他のゴム層など)を有していてもよいが、圧縮ゴム層の機械的特性や生産性などの点から、圧縮ゴム層の本体と内表面層との二層構造が好ましい。本発明では、圧縮ゴム層を本体と内表面層との二層構造に形成することにより、耐側圧性と耐屈曲疲労性とを両立できる。さらに、圧縮ゴム層がエチレン−α−オレフィンエラストマーを含むことで耐熱性に優れ、高温下での使用におけるローエッジVベルトの耐久性を向上できる。
(圧縮ゴム層の本体)
本発明では、圧縮ゴム層の本体(圧縮ゴム層本体)がエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成されており、圧縮ゴム層のゴム硬度を高くできるため、耐側圧性を向上できる。
(A1)エチレン−α−オレフィンエラストマー
エチレン−α−オレフィンエラストマーは、主鎖に二重結合を含まないため、耐熱性に優れている。そのため、圧縮ゴム層本体のゴム成分をエチレン−α−オレフィンエラストマーで形成すると、高温下での使用におけるローエッジVベルトの耐久性を向上できる。エチレン−α−オレフィンエラストマーは、構成単位として、エチレン単位、α−オレフィン単位を含んでいればよく、ジエン単位をさらに含んでいてもよい。エチレン−α−オレフィンエラストマーには、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴムなどが含まれる。
α−オレフィン単位を形成するためのα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α−C3−12オレフィンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンのうち、プロピレンなどのα−C3−4オレフィン(特に、プロピレン)が好ましい。
ジエン単位を形成するためのジエンモノマーとしては、通常、非共役ジエン系単量体が利用される。非共役ジエン系単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが例示できる。これらのジエンモノマーのうち、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンが好ましく、架橋ゴムの物性(特に硬度)や耐熱性を向上できる点から、エチリデンノルボルネンが特に好ましい。
代表的なエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体が好ましく、ジエン単位による架橋効率に優れ、耐側圧性を向上できる点から、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴムがさらに好ましく、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)が特に好ましい。
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体において、エチレンとプロピレンとの割合(質量比)は、前者/後者=35/65〜90/10、好ましくは40/60〜80/20、さらに好ましくは45/55〜70/30、最も好ましくは50/50〜60/40であってもよい。
エチレン−α−オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴム)のエチレン含量は30質量%以上(例えば30〜80質量%)であってもよく、好ましくは50〜70質量%、さらに好ましくは52〜65質量%、より好ましくは53〜60質量%、最も好ましくは54〜58質量%である。エチレン含量が少なすぎると、耐熱性が低下する虞がある。
なお、本願において、エチレン含量は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを構成する全単位中のエチレン単位の質量割合を意味し、慣用の方法により測定できるが、モノマー比であってもよい。
エチレン−α−オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴム)のジエン含量は10質量%以下(例えば0.1〜10質量%)であってもよく、特に限定されず、ジエン含量は0質量%であってもよいが、耐熱性および耐側圧性を向上できる点から、後述する圧縮ゴム層の内表面層におけるエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量よりも小さいジエン含量が好ましい。圧縮ゴム層の本体を形成するエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量を、内表面層を形成するエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量よりも小さくすることで、耐熱性と耐側圧性とを高めることができる。
好ましい前記ジエン含量は3.5質量%未満(例えば1〜3.4質量%)であってもよく、さらに好ましくは1.5〜3.3質量%、より好ましくは2〜3.2質量%、最も好ましくは2.5〜3質量%である。本発明では、主鎖に二重結合を有していないゴム成分を用いることにより耐熱性を向上させているが、側鎖として導入するジエン単位による二重結合も少量に抑制することにより、高度な耐熱性を担保できる。ジエン含量が多すぎると、高度な耐熱性が担保できない虞がある。
なお、本願において、ジエン含量は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを構成する全単位中のジエンモノマー単位の質量割合を意味し、慣用の方法により測定できるが、モノマー比であってもよい。
未架橋のエチレン−α−オレフィンエラストマーのムーニー粘度[ML(1+4)125℃]は80以下であってもよく、ゴム組成物のVmを調整し、カーボンブラックの分散性を向上できる点から、例えば10〜80、好ましくは20〜70、さらに好ましくは30〜60、最も好ましくは35〜50である。ムーニー粘度が高すぎると、ゴム組成物の流動性が低下して、混練りにおける加工性が低下する虞がある。
なお、本願において、ムーニー粘度は、JIS K 6300−1(2013)に準じた方法で測定でき、試験条件は、L形ロータを使用し、試験温度125℃、予熱1分、ロータ作動時間4分である。
ゴム組成物中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合は10質量%以上であってもよく、例えば10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%、より好ましくは40〜50質量%である。ゴム組成物中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合が少なすぎると、耐熱性が低下する虞がある。
(A2)有機過酸化物
本発明では、圧縮ゴム層本体の架橋剤(または加硫剤)として有機過酸化物を用いることにより、ゴム硬度を向上でき、耐側圧性を向上できる。
有機過酸化物としては、架橋剤として慣用的に利用される有機過酸化物を利用でき、例えば、ジアシルパーオキサイド(ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなど)、パーオキシケタール[1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタンなど]、アルキルパーオキシエステル(t−ブチルパーオキシベンゾエートなど)、ジアルキルパーオキサイド[ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなど]、パーオキシカーボネート(t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキサイドなどが汎用される。
有機過酸化物の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば0.2〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1.5〜3質量部、最も好ましくは1.5〜2.5質量部である。有機過酸化物の割合が少なすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(A3)共架橋剤
前記ゴム組成物は、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物に加えて、共架橋剤をさらに含んでいてもよい。
共架橋剤(架橋助剤または共加硫剤co-agent)としては、公知の架橋助剤、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2−ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどの(メタ)アクリル酸多価金属塩]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート]、ビスマレイミド類(脂肪族ビスマレイミド、例えば、N,N’−1,2−エチレンジマレイミド、N,N′−ヘキサメチレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)シクロヘキサンなどのアルキレンビスマレイミド;アレーンビスマレイミド又は芳香族ビスマレイミド、例えば、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレジマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンジマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジフェニルエーテルジマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンジマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼンなど)などが挙げられる。
これらの共架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸亜鉛などの不飽和カルボン酸の金属塩が好ましい。
共架橋剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば0.5〜40質量部、好ましくは1〜35質量部、さらに好ましくは3〜30質量部、より好ましくは5〜25質量部、最も好ましくは10〜20質量部である。共架橋剤の割合が少なすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(A4)短繊維
前記ゴム組成物は、短繊維をさらに含んでいてもよい。短繊維としては、ポリアミド短繊維(ポリアミド6短繊維、ポリアミド66短繊維、ポリアミド46短繊維、アラミド短繊維など)、ポリアルキレンアリレート短繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維、ポリエチレンナフタレート短繊維など)、液晶ポリエステル短繊維、ポリアリレート短繊維(非晶質全芳香族ポリエステル短繊維など)、ビニロン短繊維、ポリビニルアルコール系短繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)短繊維などの合成短繊維;綿、麻、羊毛などの天然短繊維;カーボン短繊維などの無機短繊維などが挙げられる。これら短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アラミド短繊維、PBO短繊維が好ましく、アラミド短繊維が特に好ましい。
短繊維の平均繊維長は、例えば0.1〜20mm、好ましくは0.3〜15mm、さらに好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは1〜5mm、最も好ましくは2〜4mmである。短繊維の平均繊維径は、例えば1〜50μm、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは8〜20μm、より好ましくは10〜15μmである。
短繊維は、エチレン−α−オレフィンエラストマーとの接着力を高めるために、汎用の接着処理を行ってもよい。このような接着処理としては、エポキシ化合物またはポリイソシアネート化合物を含む処理液に浸漬する方法、レゾルシンとホルムアルデヒドとラテックスとを含むRFL処理液に浸漬する方法、ゴム糊に浸漬する方法などが挙げられる。これらの処理は単独で適用してもよく、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
短繊維の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば5〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは8〜35質量部、より好ましくは10〜30質量部、最も好ましくは20〜30質量部である。
(A5)フィラー
前記ゴム組成物は、フィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどが挙げられる。フィラーは、補強性フィラーを含む場合が多く、このような補強性フィラーは、カーボンブラック、補強性シリカなどであってもよい。これらのフィラーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。圧縮ゴム層では、耐側圧性を向上できる点から、フィラーは少なくとも補強性フィラー(特に、カーボンブラック)を含むのが好ましい。
カーボンブラックの平均粒径は、例えば5〜200nm、好ましくは10〜150nm
、さらに好ましくは15〜100nmであり、補強効果が高い点から、小粒径、例えば、
平均粒径が5〜38nm、好ましくは10〜35nm、さらに好ましくは15〜30nm
のカーボンブラックであってもよい。小粒径のカーボンブラックとしては、例えば、SA
F、ISAF−HM、ISAF−LM、HAF−LS、HAF、HAF−HSなどが例示
できる。これらのカーボンブラックは単独または組み合わせて使用できる。
フィラー(特に、カーボンブラック)の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば10〜200質量部、好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは30〜100質量部、より好ましくは50〜80質量部、最も好ましくは60〜70質量部である。フィラーの割合が少なすぎると、弾性率が不足して耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、弾性率が高くなりすぎて、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(A6)他の成分
前記ゴム組成物は、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、他のゴム成分[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなどのジエン系ゴム;クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなど]、他の架橋剤、架橋促進剤(または加硫促進剤)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤または可塑剤(パラフィンオイルやナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸などの脂肪酸、ステアリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイド、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、滑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。
これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。
他の成分の合計割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部である。
(A7)圧縮ゴム層本体の特性
圧縮ゴム層本体は、高いゴム硬度を有しており、ゴム硬度は、例えば90〜99度、好ましくは91〜98度、さらに好ましくは92〜98度、より好ましくは93〜97度、最も好ましくは94〜96度である。圧縮ゴム層本体のゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、大きすぎると、耐屈曲性疲労性および耐久性が低下する虞がある。
なお、本願において、各ゴム層のゴム硬度は、JIS K6253(2012)(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−硬さの求め方−)に規定されているスプリング硬さ試験(A形)に準じて測定された値Hs(JIS A)を示し、単にゴム硬度と記載する場合がある。
圧縮ゴム層本体の平均厚みは、ベルトの種類に応じて適宜選択できるが、例えば0.5〜12mm(特に1〜10mm)、好ましくは2〜9mm(特に3〜8mm)、さらに好ましくは4〜7mm(特に5〜6mm)、より好ましくは4〜6mm(最も好ましくは4〜5mm)である。なお、本願において、圧縮ゴム層がコグ部を有する場合、圧縮ゴム層本体の厚みは、コグ部の頂部における厚みを意味する。
(圧縮ゴム層の内表面層)
本発明では、前記圧縮ゴム層本体のベルト内周側表面は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された平均厚み0.3〜3.5mmの表面層(内表面層)で被覆されている。前記内表面層は、耐屈曲疲労性を向上させる機能を有しており、前記圧縮ゴム層本体と内表面層との組み合わせによって、耐熱性、耐側圧性および耐屈曲疲労性を向上できる。
(B1)ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー
圧縮ゴム層の内表面層を形成するゴム組成物において、エチレン−α−オレフィンエラストマーは、硫黄系架橋剤で架橋されるため、ジエン単位を含んでいる。すなわち、内表面層のエチレン−α−オレフィンエラストマーは、構成単位として、エチレン単位、α−オレフィン単位、ジエン単位を含んでおり、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴムであってもよい。
α−オレフィン単位を形成するためのα−オレフィンは、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層本体におけるエチレン−α−オレフィンエラストマー(A1)の項で例示されたα−オレフィンから選択できる。
ジエン単位を形成するためのジエンモノマーは、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層本体におけるエチレン−α−オレフィンエラストマー(A1)の項で例示されたジエンモノマーから選択できる。硫黄架橋における架橋効率の点から、エチリデンノルボルネンが好ましい。
代表的なエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)が好ましい。
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体において、エチレンとプロピレンとの割合(質量比)は、前者/後者=35/65〜90/10、好ましくは40/60〜80/20、さらに好ましくは45/55〜70/30、最も好ましくは50/50〜60/40であってもよい。
ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴム)のエチレン含量は30質量%以上(例えば30〜80質量%)であってもよく、好ましくは50〜70質量%、さらに好ましくは52〜65質量%、より好ましくは53〜60質量%、最も好ましくは54〜58質量%である。エチレン含量が少なすぎると、耐熱性が低下する虞がある。
ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴム)のジエン含量は、圧縮ゴム層本体におけるエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量よりも多ければよい。ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量は3.5質量%以上であってもよく、例えば3.5〜10質量%、好ましくは3.6〜6質量%、さらに好ましくは3.8〜5.5質量%、より好ましくは4〜5質量%である。ジエン含量が少なすぎると、架橋が不十分となって耐側圧性が低下する虞があり、ジエン含量が多すぎると耐熱性が低下する虞がある。
内表面層を形成するエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量は、圧縮ゴム層本体を形成するジエン含量に対して1.1倍以上であってもよく、例えば1.1〜5倍、好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜2倍、より好ましくは1.5〜1.8倍である。
未架橋のエチレン−α−オレフィンエラストマーのムーニー粘度は、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層本体におけるエチレン−α−オレフィンエラストマー(A1)の項で記載された粘度から選択できる。
ゴム組成物中のジエン単位を含むα−オレフィンエラストマーの割合は10質量%以上であってもよく、例えば10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは35〜65質量%、より好ましくは45〜55質量%である。ゴム組成物中のジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合が少なすぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞があり、多すぎると耐側圧性が低下する虞がある。
(B2)硫黄系架橋剤
本発明では、圧縮ゴム層の内表面層における架橋剤として硫黄系架橋剤を用いることにより、圧縮ゴム層本体に比べて内表面層を低硬度に調整でき、耐屈曲疲労性(耐亀裂性)を向上できる。
硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)などが挙げられる。これらの硫黄系架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、粉末硫黄などが汎用される。
硫黄系架橋剤の割合は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜3質量部(例えば0.5〜2質量部)、より好ましくは1〜3質量部(例えば0.8〜1.5質量部)、最も好ましくは1.5〜2.5質量部である。硫黄系架橋剤の割合が少なすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(B3)架橋促進剤
前記ゴム組成物は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤に加えて、架橋促進剤をさらに含んでいてもよい。
架橋促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤[例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィドなど]、チアゾ−ル系促進剤[例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−メルカプトベンゾチアゾ−ルの亜鉛塩、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど]、スルフェンアミド系促進剤[例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなど]、グアニジン類(ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジンなど)、ウレア系又はチオウレア系促進剤(例えば、エチレンチオウレアなど)、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類などが挙げられる。これらの架橋促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋促進剤のうち、TMTD、DPTT、CBSなどが汎用される。
架橋促進剤の割合は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば0.2〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1.5〜3質量部、最も好ましくは1.5〜2.5質量部である。架橋促進剤の割合が少なすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(B4)短繊維
前記ゴム組成物は、短繊維をさらに含んでいてもよい。短繊維は、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層本体における短繊維(A4)の項で例示された短繊維から選択できる。
短繊維の割合は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば5〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは8〜35質量部、より好ましくは10〜30質量部、最も好ましくは15〜25質量部である。
(B5)フィラー
前記ゴム組成物は、フィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーは、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層本体におけるフィラー(A5)の項で例示されたフィラーから選択できる。
フィラー(特に、カーボンブラック)の割合は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば10〜200質量部、好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは30〜100質量部、より好ましくは50〜80質量部、最も好ましくは60〜70質量部である。フィラーの割合が少なすぎると、弾性率が不足して耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、弾性率が高くなりすぎて、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(B6)他の成分
前記ゴム組成物は、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、前記圧縮ゴム層本体における他の成分(A6)として例示された他の成分に加えて、共架橋剤などを利用できる。
他の成分の合計割合は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは8〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部である。
(B7)圧縮ゴム層の内表面層の特性
圧縮ゴム層の内表面層の硬度は、例えば70〜95度、好ましくは80〜94度、さらに好ましくは85〜94度(例えば85〜93度)、より好ましくは90〜94度(最も好ましくは92〜94度)である。内表面層のゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、大きすぎると、耐屈曲性疲労性が低下する虞がある。
圧縮ゴム層本体と内表面層とのゴム硬度の差(圧縮ゴム層本体のゴム硬度−内表面層のゴム硬度)は、例えば0〜30度、好ましくは3〜20度、さらに好ましくは5〜15度、より好ましくは6〜10度、最も好ましくは7〜9度である。耐側圧性および耐久性が重要な用途では、前記差は、例えば1〜10度、好ましくは1〜5度、さらに好ましくは1〜3度であってもよい。圧縮ゴム層本体と内表面層とのゴム硬度の差が小さすぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、耐側圧性が低下する虞がある。
内表面層の平均厚みは0.3〜3.5mm(特に0.5〜3.5mm)であり、好ましくは0.5〜3mm、さらに好ましくは0.6〜3mm、より好ましくは0.7〜1.5mm、最も好ましくは0.8〜1.2mmである。耐久性が重要な用途では、前記平均厚みは、例えば0.5〜5mm、好ましくは1〜3mm、さらに好ましくは1.5〜2.5mm、より好ましくは1.8〜2.2mmである。内表面層の厚みが薄すぎると、ゴムシートの調整が困難で生産性が低下するとともに、耐屈曲疲労性が低下する虞があり、厚すぎると、耐側圧性が低下する虞がある。
なお、本願において、内表面層の平均厚みは、マイクロスコープを用いて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
内表面層の平均厚みは、ベルト全体の厚みに対して、例えば2〜44%(特に3〜30%)、好ましくは4〜25%、さらに好ましくは5〜20%、より好ましくは6〜20%(例えば6〜15%)、最も好ましくは7〜20%(例えば7〜12%)であり、耐久性の点から、好ましくは10〜25%(特に15〜20%)である。
[伸張ゴム層]
伸張ゴム層は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含むゴム組成物の硬化物で形成されていればよく、架橋剤は、有機過酸化物であってもよく、硫黄系架橋剤であってもよい。これらのうち、耐久性の点から、硫黄系架橋剤が好ましい。さらに、伸張ゴム層の層構造は特に限定されず、単層構造であってもよく、二層構造であってもよい。工数を低減でき、ベルトの生産性を向上できる点からは、単層構造が好ましく、ベルト背面における亀裂を抑制できる点からは、二層構造が好ましい。
伸張ゴム層が単層構造である場合、伸張ゴム層は、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成されていてもよく、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成されていてもよい。これらのうち、耐久性の点から、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成されているのが好ましい。単層構造の伸張ゴム層を形成するゴム組成物は、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層の内表面層の項で例示されたゴム組成物から選択できる。単層構造の伸張ゴム層を形成するゴム組成物は、圧縮ゴム層の内表面層を形成するゴム組成物と異なるゴム組成物であってもよく、同一のゴム組成物であってもよい。生産性などの点から、同一のゴム組成物が好ましい。伸張ゴム層の硬度は、例えば70〜95度、好ましくは80〜93度、さらに好ましくは85〜90度であってもよい。
単層構造である伸張ゴム層の平均厚みは、ベルトの種類に応じて0.5〜6mm(特に1〜4mm)程度の範囲から選択でき、ローエッジダブルコグドベルトの場合、例えば2〜6mm、好ましくは2.5〜5mm、さらに好ましくは3〜4mmであってもよく、ローエッジコグドベルトの場合、0.5〜3mm、好ましくは0.8〜2.5mm、さらに好ましくは1〜2mmであってもよい。
伸張ゴム層が二層構造である場合、伸張ゴム層は、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された伸張ゴム層の本体と、この本体のベルト外周側表面を被覆し、かつジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された表面層(外表面層)とからなる二層構構造であってもよい。伸張ゴム層を、このような二層構造に調整することにより、二層構造の圧縮ゴム層との組み合わせにおいて、内周面における亀裂の発生のみならず、外周面における亀裂の発生をも抑制して、ローエッジタイプVベルトの耐久性をさらに向上できる。
伸張ゴム層の本体(伸張ゴム層本体)を形成するゴム組成物としては、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層の本体の項で例示されたゴム組成物から選択できる。伸張ゴム層本体を形成するゴム組成物は、圧縮ゴム層本体を形成するゴム組成物と異なるゴム組成物であってもよく、同一のゴム組成物であってもよい。生産性などの点から、同一のゴム組成物が好ましい。
伸張ゴム層本体の平均厚みは、例えば0.5〜5.5mm、好ましくは1〜4mm、さらに好ましくは1.5〜3mm、より好ましくは2〜3mmである。
伸張ゴム層の外表面層を形成するゴム組成物は、好ましい態様も含めて、前記圧縮ゴム層の内表面層の項で例示されたゴム組成物から選択できる。伸張ゴム層の外表面層を形成するゴム組成物は、圧縮ゴム層の内表面層を形成するゴム組成物と異なるゴム組成物であってもよく、同一のゴム組成物であってもよい。生産性などの点から、同一のゴム組成物が好ましい。
伸張ゴム層の外表面層の平均厚みは0.3〜3.5mmであり、好ましくは0.5〜3.5mm、さらに好ましくは0.6〜3mm(特に1〜2mm)、より好ましくは0.7〜1.5mm、最も好ましくは0.8〜1.2mmである。外表面層の厚みが薄すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞があり、厚すぎると、耐側圧性および耐久性が低下する虞がある。
伸張ゴム層の外表面層の硬度は、例えば70〜95度、好ましくは80〜94度、さらに好ましくは85〜94度(例えば85〜93度)、より好ましくは90〜94度(最も好ましくは92〜94度)である。外表面層のゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、大きすぎると、耐屈曲性疲労性が低下する虞がある。
伸張ゴム層本体と外表面層とのゴム硬度の差(伸張ゴム層本体のゴム硬度−外表面層のゴム硬度)は、例えば0〜30度、好ましくは3〜20度、さらに好ましくは5〜15度、より好ましくは6〜10度、最も好ましくは7〜9度である。耐側圧性および耐久性が重要な用途では、前記差は、例えば1〜10度、好ましくは1〜5度、さらに好ましくは1〜3度であってもよい。伸張ゴム層本体と外表面層とのゴム硬度の差が小さすぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、耐側圧性および耐久性が低下する虞がある。
[接着ゴム層]
本発明のローエッジタイプVベルトは、接着ゴム層を含んでいなくてもよいが、芯体と圧縮ゴム層本体、芯体と伸張ゴム層(または伸張ゴム層本体)の接着力を高めて、芯体と前記層との剥離を抑制できる点から、接着ゴム層を含むのが好ましい。接着ゴム層は、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび架橋剤を含むゴム組成物で形成されていてもよい。
(C1)エチレン−α−オレフィンエラストマー
エチレン−α−オレフィンエラストマーは、好ましい態様も含めて、圧縮ゴム層の本体におけるエチレン−α−オレフィンエラストマー(A1)の項で例示されたエチレン−α−オレフィンエラストマーから選択できる。
ゴム組成物中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合は10質量%以上であってもよく、例えば10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%、より好ましくは45〜55質量%である。ゴム組成物中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合が少なすぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞があり、多すぎると耐側圧性が低下する虞がある。
(C2)架橋剤
架橋剤としては、圧縮ゴム層本体における有機過酸化物(A2)の項で例示された有機過酸化物、圧縮ゴム層の内表面層における硫黄系架橋剤(B2)の項で例示された硫黄系架橋剤などを利用できる。これらの架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、有機過酸化物が好ましい。
架橋剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば0.2〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1.5〜3質量部、最も好ましくは1.5〜2.5質量部である。架橋剤の割合が少なすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(C3)共架橋剤または架橋促進剤
共架橋剤としては、圧縮ゴム層本体における共架橋剤(A3)の項で例示された共架橋剤などを利用できる。架橋促進剤としては、圧縮ゴム層の内表面層における架橋促進剤(B3)の項で例示された架橋促進剤などを利用できる。これらの共架橋剤および架橋促進剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、共架橋剤が好ましく、(メタ)アクリル酸亜鉛などの不飽和カルボン酸の金属塩が特に好ましい。
共架橋剤および架橋促進剤の合計割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば0.2〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1.5〜3質量部、最も好ましくは1.5〜2.5質量部である。前記割合が少なすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(C4)フィラー
前記ゴム組成物は、フィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどが挙げられる。これらのフィラーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、カーボンブラックとシリカとの組み合わせが好ましい。
カーボンブラックは、好ましい態様も含めて、圧縮ゴム層本体におけるフィラー(A5)の項で例示されたカーボンブラックから選択できる。
シリカには、乾式シリカ、湿式シリカ、表面処理したシリカなどが含まれる。また、シリカは、製法での分類によって、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ゲル法シリカ(シリカゲル)などにも分類できる。これらのシリカは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、表面シラノール基が多く、ゴムとの化学的結合力が強い点から、含水珪酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。
シリカの平均粒径は、例えば1〜1000nm、好ましくは3〜300nm、さらに好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜50nmである。シリカの粒径が大きすぎると、接着ゴム層の機械的特性が低下する虞があり、小さすぎると、均一に分散するのが困難となる虞がある。
また、シリカは、非多孔質または多孔質のいずれであってもよいが、BET法による窒素吸着比表面積は、例えば50〜400m/g、好ましくは70〜350m/g、さらに好ましくは100〜300m/g、より好ましくは150〜250m/gである。比表面積が大きすぎると、均一に分散するのが困難となる虞があり、比表面積が小さすぎると、接着ゴム層の機械的特性が低下する虞がある。
カーボンブラックの割合は、シリカ100質量部に対して、例えば5〜100質量部、好ましくは10〜80質量部、さらに好ましくは15〜50質量部、より好ましくは20〜40質量部である。シリカの割合が少なすぎると、接着性の向上効果が発現しない虞がある。
フィラーの割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば10〜200質量部、好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは30〜100質量部、より好ましくは50〜80質量部、最も好ましくは60〜70質量部である。フィラーの割合が少なすぎると、弾性率が不足して耐側圧性が低下する虞があり、多すぎると、弾性率が高くなりすぎて、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
(C5)接着性改善剤
前記ゴム組成物は、接着性改善剤をさらに含んでいてもよい。接着性改善剤としては、例えば、レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物(RF縮合物)、アミノ樹脂(窒素含有環状化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサアルコキシメチルメラミン(ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなど)などのメラミン樹脂、メチロール尿素などの尿素樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂などのベンゾグアナミン樹脂など)、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)などが挙げられる。
これらの接着性改善剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのヘキサアルコキシメチルメラミンが好ましい。
接着性改善剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば0.3〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜7質量部、より好ましくは1.5〜5質量部、最も好ましくは2〜4質量部である。接着性改善剤の割合が少なすぎると、接着性の向上効果が発現しない虞があり、多すぎると、耐側圧性が低下する虞がある。
(C6)他の成分
前記ゴム組成物は、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、前記圧縮ゴム層本体における他の成分(A6)として例示された他の成分などを利用できる。
他の成分の合計割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部、より好ましくは20〜25質量部である。
(C7)接着ゴム層の特性
接着ゴム層は、圧縮ゴム層本体のゴム硬度よりも低い硬度が好ましく、圧縮ゴム層の内表面層(または伸張ゴム層の外表面層)のゴム硬度よりも低い硬度がさらに好ましい。接着ゴム層を、このような低硬度に調整することにより、せん断応力が作用した場合に大きく変形することが可能となり、芯体と圧縮ゴム層本体および伸張ゴム層本体との間の剥離を抑制できる。
接着ゴム層のゴム硬度は、例えば60〜85度、好ましくは65〜84度、さらに好ましくは70〜83度、より好ましくは75〜82度である。ゴム硬度が低すぎると、耐側圧性が低下する虞があり、高すぎると、接着性が低下する虞がある。
圧縮ゴム層本体と接着ゴム層とのゴム硬度の差(圧縮ゴム層本体のゴム硬度−接着ゴム層のゴム硬度)は5度以上であってもよく、例えば5〜30度、好ましくは8〜25度、さらに好ましくは10〜23度、より好ましくは12〜20度、最も好ましくは13〜17度である。圧縮ゴム層本体と接着ゴム層とのゴム硬度の差が小さすぎると、耐熱性、耐側圧性および耐屈曲疲労性を向上できない虞があり、逆に大きすぎても同様の虞がある。
接着ゴム層の平均厚みは、例えば0.8〜3mm、好ましくは1.2〜2.8mm、さらに好ましくは1.5〜2.5mmである。
[芯体]
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、通常、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されている。心線は、少なくともその一部が接着ゴム層と接していればよく、接着ゴム層が心線を埋設する形態、接着ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を埋設する形態、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線を埋設する形態のいずれの形態であってもよい。これらのうち、耐久性を向上できる点から、接着ゴム層が心線を埋設する形態が好ましい。
心線を構成する繊維としては、圧縮ゴム層本体における短繊維(A4)の項で例示された短繊維などを利用できる。前記繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのC2−4アルキレン−アリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維など)、ポリアミド繊維が好ましい。繊維はマルチフィラメント糸の形態で使用されていてもよい。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば2000〜10000dtex(特に4000〜8000dtex)程度であってもよい。マルチフィラメント糸は、例えば100〜5000本であってもよく、好ましくは500〜4000本、さらに好ましくは1000〜3000本程度のフィラメントを含んでいてもよい。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの直径)は、例えば0.5〜3mmであってもよく、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。
心線は、ゴム成分との接着性を改善するため、短繊維と同様の方法で接着処理(または表面処理)されていてもよい。心線は、少なくともRFL液で接着処理するのが好ましい。
[補強布]
本発明のローエッジタイプVベルトは、圧縮ゴム層の内表面層によって耐屈曲疲労性が高められているために、補強布がなくても優れた耐屈曲疲労性を有する。そのため、本発明では、補強布を設けずに工数を低減して、生産性を向上することができる。一方で、前記内表面層や伸張ゴム層をさらに補強布と組み合わせることにより、耐屈曲疲労性をさらに向上させてもよい。
本発明のローエッジタイプVベルトが補強布を含む場合、補強布の形態としては、例えば、圧縮ゴム層および伸張ゴム層(コグが圧縮ゴム層と一体に形成されている場合にはコグ)の双方(圧縮ゴム層の内周面および伸張ゴム層の外周面)に積層される形態、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のうちいずれか一方のゴム層の表面に補強布を積層する形態、圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層に補強層を埋設する形態(例えば、特開2010−230146号公報に記載の形態など)などが挙げられる。補強布は、圧縮ゴム層および伸張ゴム層のうち少なくとも一方のゴム層の表面(圧縮ゴム層の内周面および伸張ゴム層の外周面)に積層する形態、例えば、圧縮ゴム層の内周面(下面)および伸張ゴム層の外周面(上面)の双方に積層する形態である場合が多い。
補強布は、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材(特に、織布)などで形成でき、必要であれば、接着処理、例えば、RFL液で処理(浸漬処理など)したり、接着ゴムを前記布材にすり込むフリクション処理や、前記接着ゴムと前記布材とを積層(コーティング)した後、前記の形態で圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層に積層または埋設してもよい。
[ローエッジタイプVベルトの製造方法]
本発明のローエッジタイプVベルトの製造方法は、特に限定されず、各層の積層工程(ベルトスリーブの製造方法)に関しては、ベルトの種類に応じて、慣用の方法を利用できる。
例えば、コグドVベルトの代表的な製造方法について説明すると、まず、圧縮ゴム層の内表面層用シート(未架橋ゴムシート)と圧縮ゴム層本体用シート(未架橋ゴムシート)との積層体を、前記内表面層用シートを、歯部と溝部とが交互に配された平坦なコグ付き型に接触させて設置し、温度60〜120℃(特に80〜100℃)程度でプレス加圧することによりコグ部を型付けしたコグパッド(完全には架橋しておらず、半架橋状態にあるパッド)を作製してもよい。このコグパッドの両端を適所(特にコグ山部の頂部)から垂直に切断してもよい。さらに、円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けて両端(特にコグ山部の頂部)でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に第2の接着ゴム層用シート(下接着ゴム:未架橋ゴムシート)を積層した後、芯体を形成する心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、この上に第1の接着ゴム層用シート(上接着ゴム:未架橋ゴムシート)、伸張ゴム層用シート(未架橋ゴムシート)を順次に巻き付けて成形体を作製してもよい。
その後、成形体にジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度120〜200℃(特に150〜180℃)程度で架橋してベルトスリーブを調製する。その後、カッターなどを用いて、V状に切断加工してもよい。
なお、接着ゴム層は、複数の接着ゴム層用シートで形成でき、芯体を形成する心線(撚りコード)は、接着ゴム層への埋設位置に応じて、複数の接着ゴム層用シートの積層順序と関連付けてスピニングしてもよい。また、前記のように、必ずしもコグを形成する必要はなく、補強布(下布および上布)をさらに積層してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した使用材料の詳細を以下に示す。
[使用材料]
EPDM1:JSR(株)製「EP93」、エチレン含量55質量%、ジエン含量2.7質量%
EPDM2:JSR(株)製「EP24」、エチレン含量54質量%、ジエン含量4.5質量%
短繊維(パラ系アラミド短繊維):帝人(株)製「トワロン(登録商標)」、平均繊維径14μm、平均繊維長3mm
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製「ショウブラックN550」
シリカ:エボニック・デグサ・ジャパン(株)製「ウルトラシルVN−3」、比表面積155〜195m/g
可塑剤(パラフィン系オイル):出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW90」
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」、平均粒子径0.55μm
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
酸化マグネシウム:協和化学(株)製「キョーワマグ150」
老化防止剤:4,4'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」)
共架橋剤:メタクリル酸亜鉛(三新化学工業(株)製「サンエステルSK−30」)
有機過酸化物:1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、理論活性酸素量9.45%
硫黄:美源化学社製「硫黄」
架橋促進剤:テトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」)
接着性改善剤(ヘキサメトキシメチルメラミン):Singh Plasticisers & Resins Pvt. Ltd.社製「POWERPLAST PP−1890S」
心線:1100dtexのPETマルチフィラメント糸を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で諸撚りした総繊度6600dtexの撚りコードに接着処理を施した処理コード。
[ゴム層の形成]
表1のゴム組成物は、それぞれ、バンバリーミキサーなどの公知の方法を用いてゴム練りを行い、この練りゴムをカレンダーロールに通して圧延ゴムシート(未架橋ゴムシート)を作製した。なお、短繊維は、RFL液(レゾルシンおよびホルムアルデヒドと、ラテックスとしてのビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスとを含有)で接着処理し、固形分の付着率6質量%の短繊維を用いた。RFL液として、レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス17.2質量部、水29.0質量部を用いた。
Figure 2022003268
[ローエッジダブルコグドVベルトの作製]
凸部と凹部とが交互に配された平坦なコグ付き型に、圧縮ゴム層の内表面層を形成する未架橋ゴムシートと圧縮ゴム層の本体を形成する未架橋ゴムシートとを積層した後、100℃の加熱下でプレスして、コグ部が形成された半架橋状態のコグパッドを調製した。円筒状の金型に凸部と凹部とが交互に配された内母型を被せ、前記コグパッドを前記内母型に巻き付けて両端部をジョイントして装着した。装着したコグパッドに、接着ゴム層を形成する未架橋ゴムシート(R3)を巻き付けた後、心線を螺旋状にスピニングした。前記心線の上に、さらに接着ゴム層を形成する未架橋ゴムシート(R3)、伸張ゴム層を形成する未架橋ゴムシートを巻き付けて成形体を形成した。この成形体に、ベルト外周側にコグ形状を形成するための外母型および可撓性ジャケットを被せた後、金型を加硫缶に設置し、温度170℃、時間40分で架橋してベルトスリーブを得た。このベルトスリーブをカッターでV字状に切断して、ベルト内周側と外周側にコグを有する変速ベルトであるローエッジダブルコグドVベルト(サイズ:上幅20mm、厚み(内周側コグ山部から外周側コグ山部までの距離)12mm、V角度30度、コグ高さ(内周側)4.5mm、コグ高さ(外周側)3mm、ベルト外周長さ650mm)を作製した。
[ローエッジコグドVベルトの作製]
内周面のみにコグを有し、外周面にコグを有しないローエッジコグドVベルトを作製する場合は、成形体に外母型を被せることなく可撓性ジャケットのみを被せる以外は、ローエッジダブルコグドVベルトの作製と同様にして作製した。ローエッジコグドVベルトのサイズは、上幅19mm、厚み(内周側コグ山部からベルト外周までの距離)10mm、V角度30度、コグ高さ(内周側)4.5mm、ベルト外周長さ640mmであった。
[内表面層および外表面層の厚みの測定]
ローエッジコグドVベルトをコグ頂部においてベルト幅方向と平行に切断し、その断面をマイクロスコープで20倍に拡大して観察し、内表面層および外表面層の厚みを測定した。厚みの測定は、ベルト長さ方向に約5等分となるように5箇所で測定し、その算術平均を当該ベルトの内表面層および外表面層の厚みとした。なお、ベルトの内周側、および外周側にコグ部を有しないローエッジVベルトの切断箇所はコグ頂部に限らず、ベルト長さ方向に約5等分となるような5箇所とする。
[耐久走行試験]
耐久走行試験は、図4に示すように、直径φ100mmの駆動(DR)プーリ22と、直径φ80mmの従動(DN)プーリ23とを備える2軸走行試験機を用いて行なった。各プーリにVベルト21を軸荷重0.6kNで掛架し、雰囲気温度100℃にて、ベルトの寿命まで走行させた。なお、駆動プーリの回転数は、0〜20秒は7,000rpmで一定、20〜40秒は7,000±350rpmで変動、40〜60秒は再び7,000rpmで一定とし、従動プーリの負荷は15Nmとした。この60秒を1つのサイクルとして、試験終了まで繰り返した。
[実施例1]
伸張ゴム層として有機過酸化物を含むゴム組成物(R1)を使用し、圧縮ゴム層の本体として有機過酸化物を含むゴム組成物(R1)を使用し、かつ圧縮ゴム層の内表面層として硫黄を含むゴム組成物(R2)を使用し、伸張ゴム層が単層構造であり、かつ圧縮ゴム層が二層構造であるローエッジダブルコグドVベルトを製造した。得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは6.2mm、内表面層の厚みは0.3mmであり、伸張ゴム層の厚みは3.5mmであった。
[実施例2]
得られたベルトにおける圧縮ゴム層の本体の厚みを6.0mm、内表面層の厚みを0.5mmに変更する以外は実施例1と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは6.0mm、内表面層の厚みは0.5mmであり、伸張ゴム層の厚みは3.5mmであった。
[実施例3]
得られたベルトにおける圧縮ゴム層の本体の厚みを5.5mm、内表面層の厚みを1.0mmに変更する以外は実施例1と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは5.5mm、内表面層の厚みは1.0mmであり、伸張ゴム層の厚みは3.5mmであった。
[実施例4]
伸張ゴム層の本体として有機過酸化物を含むゴム組成物(R1)を使用し、かつ伸張ゴム層の外表面層として硫黄を含むゴム組成物(R2)を使用する以外は実施例3と同様の方法で、伸張ゴム層および圧縮ゴム層がいずれも二層構造であるローエッジダブルコグドVベルトを製造した。得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは5.5mm、内表面層の厚みは1.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは3.0mmであり、外表面層の厚みは0.5mmであった。
[実施例5]
得られたベルトにおける伸張ゴム層の本体の厚みを2.5mm、外表面層の厚みを1.0mmに変更する以外は実施例4と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは5.5mm、内表面層の厚みは1.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mmであり、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例6]
圧縮ゴム層の本体を4.5mm、内表面層の厚みを2.0mmに変更する以外は実施例5と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは4.5mm、内表面層の厚みは2.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例7]
圧縮ゴム層の本体の厚みを3.5mm、内表面層の厚みを3.0mmに変更する以外は実施例5と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは3.5mm、内表面層の厚みは3.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例8]
伸張ゴム層の本体の厚みを1.5mm、外表面層の厚みを2.0mmに変更する以外は実施例4と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは5.5mm、内表面層の厚みは1.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは1.5mm、外表面層の厚みは2.0mmであった。
[比較例1]
伸張ゴム層として有機過酸化物を含むゴム組成物(R1)を使用し、圧縮ゴム層として有機過酸化物を含むゴム組成物(R1)を使用し、伸張ゴム層および圧縮ゴム層がいずれも単層構造であるローエッジダブルコグドVベルトを製造した。
[比較例2]
伸張ゴム層として硫黄を含むゴム組成物(R2)を使用し、圧縮ゴム層として硫黄を含むゴム組成物(R2)を使用し、伸張ゴム層および圧縮ゴム層がいずれも単層構造であるローエッジダブルコグドVベルトを製造した。
[比較例3]
伸張ゴム層として有機過酸化物を含むゴム組成物(R1)を使用し、圧縮ゴム層の本体として硫黄を含むゴム組成物(R2)を使用し、かつ圧縮ゴム層の内表面層として有機過酸化物を含むゴム組成物(R1)を使用し、伸張ゴム層が単層構造であり、かつ圧縮ゴム層が二層構造であるローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、実施例3において、圧縮ゴム層の本体と内表面層とのゴム組成物を入れ替えた。
[比較例4]
圧縮ゴム層の内表面層の厚みを4.0mmに変更する以外は実施例5と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは2.5mm、内表面層の厚みは4.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例9]
伸張ゴム層として硫黄を含むゴム組成物(R2)を使用する以外は実施例3と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは5.5mm、内表面層の厚みは1.0mmであり、伸張ゴム層の厚みは3.5mmであった。
[実施例10]
伸張ゴム層の外表面層および圧縮ゴム層の内表面層として、硫黄を含み、ゴム硬度がゴム組成物(R2)よりも小さいゴム組成物(R6)を使用する以外は実施例6と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは4.5mm、内表面層の厚みは2.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例11]
伸張ゴム層の外表面層および圧縮ゴム層の内表面層として、硫黄を含み、ゴム硬度がゴム組成物(R2)よりも大きいゴム組成物(R7)を使用する以外は実施例6と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは4.5mm、内表面層の厚みは2.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例12]
伸張ゴム層の外表面層および圧縮ゴム層の内表面層として、硫黄を含み、ゴム硬度がゴム組成物(R7)よりも大きいゴム組成物(R8)を使用する以外は実施例6と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは4.5mm、内表面層の厚みは2.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例13]
伸張ゴム層の本体および圧縮ゴム層の本体として、有機過酸化物を含み、ゴム硬度がゴム組成物(R1)よりも小さいゴム組成物(R4)を使用する以外は実施例11と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは4.5mm、内表面層の厚みは2.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例14]
伸張ゴム層の本体および圧縮ゴム層の本体として、有機過酸化物を含み、ゴム硬度がゴム組成物(R1)よりも大きいゴム組成物(R5)を使用する以外は実施例11と同様の方法でローエッジダブルコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは4.5mm、内表面層の厚みは2.0mmであり、伸張ゴム層の本体の厚みは2.5mm、外表面層の厚みは1.0mmであった。
[実施例15]
ベルトの形状をローエッジコグドVベルトとする以外は実施例9と同様の方法でローエッジコグドVベルトを製造した。すなわち、得られたベルトにおいて、圧縮ゴム層の本体の厚みは5.5mm、内表面層の厚みは1.0mmであり、伸張ゴム層の厚みは1.5mmであった。
実施例1〜15および比較例1〜4で得られたローエッジタイプVベルトの評価結果を表2〜3に示す。
Figure 2022003268
Figure 2022003268
実施例1〜15は、高温での耐久走行試験において90時間以上の寿命時間を有していた。その理由は、圧縮ゴム層の本体が有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成されるとともに、圧縮ゴム層の内表面層が硫黄を含むゴム組成物の硬化物で形成されているために、耐側圧性と耐屈曲疲労性とを両立できるためであると考えられる。
これに対して、圧縮ゴム層が内表面層を備えていない比較例1では、耐屈曲疲労性が不足して、圧縮ゴム層に亀裂が発生した。また、圧縮ゴム層全体が硫黄を含むゴム組成物の硬化物で形成された比較例2では、耐側圧性が低下するためか、ポップアウト(心線がベルトの側面からとび出す現象)が発生した。また、圧縮ゴム層の内表面層が有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された比較例3では、耐屈曲疲労性が不足して、圧縮ゴム層に亀裂が発生した。また、圧縮ゴム層の本体が有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成されるとともに、圧縮ゴム層の内表面層が硫黄を含むゴム組成物の硬化物で形成されているが、圧縮ゴム層の内表面層の厚みが4.0mmと厚くなっている比較例4では、耐側圧性が不足するためか、ポップアウトが発生し、寿命時間は低下した。
実施例1〜3の結果から、圧縮ゴム層の内表面層の厚みが増加するに伴って、耐亀裂性が向上するためか、寿命時間が長くなった。
実施例5〜7と比較例4との比較より、圧縮ゴム層の内表面層の厚みが厚すぎる場合は、寿命時間が低下することが分かった。ベルト厚みが12mmの場合では、圧縮ゴム層の内表面層の厚みは1mm程度(内表面層の厚み/ベルト全体の厚み=8%程度)が最も好ましい結果であった。
実施例4は実施例5に対して伸張ゴム層の外表面層の厚みを薄くした例であるが、寿命時間に変化はなかった。また、実施例8は実施例5に対して伸張ゴム層の外表面層の厚みを厚くした例であるが、耐側圧性が低下するためか、寿命時間は短くなった。
実施例3と実施例5との比較より、伸張ゴム層にも外表面層を設けることで、耐久寿命が向上することが分かった。また、実施例3と実施例9との比較より、伸張ゴム層を単層とする場合は、伸張ゴム層は硫黄を含むゴム組成物の硬化物で形成するのが好ましいことが分かった。
実施例10は実施例6に対して内表面層および外表面層の硬度を低下させた例であるが、耐側圧性が低下するためか、寿命時間は短くなった。
実施例11は実施例6に対して内表面層および外表面層の硬度を上昇させた例であるが、耐側圧性が向上するためか、寿命時間は最も長くなった。
実施例12は実施例11よりもさらに内表面層および外表面層の硬度を上昇させた例であるが、内表面層および外表面層の耐亀裂性が低下するためか、寿命時間は短くなった。
実施例13は実施例11に対して圧縮ゴム層の本体および伸張ゴム層の本体の硬度を低下させた例であるが、耐側圧性が低下するためか、寿命時間は短くなった。
実施例14は実施例11に対して圧縮ゴム層の本体および伸張ゴム層の本体の硬度を上昇させた例であるが、圧縮ゴム層の本体および伸張ゴム層の本体の耐亀裂性が低下するためか、寿命時間は短くなった。
実施例15のようにローエッジコグドVベルトでも十分な耐久寿命が得られたが、実施例9のローエッジダブルコグドVベルトと比べると耐久寿命が低く、耐側圧性と耐屈曲疲労性とをより効果的に向上できるローエッジダブルコグドVベルトへの適用が好ましいと考えられる。
本発明のローエッジタイプVベルトは、ローエッジVベルト、コグ部を有するローエッジコグドVベルトなどに適用でき、特に、ベルト走行中に変速比が無段階で変わる変速機(無段変速装置)に使用されるVベルト(変速ベルト)、例えば、自動二輪車やATV(四輪バギー)、スノーモービルなどの無段変速装置に使用されるローエッジコグドVベルト、ローエッジダブルコグドVベルトに好適に利用できる。
1…ローエッジコグドVベルト
2…伸張ゴム層の外表面層
3…伸張ゴム層の本体
4…接着ゴム層
4a…芯体
5…圧縮ゴム層の本体
6…圧縮ゴム層の内表面層

Claims (8)

  1. 内周面側に配設される圧縮ゴム層を含み、前記圧縮ゴム層が、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された圧縮ゴム層の本体と、前記圧縮ゴム層の本体の内周側表面を被覆し、かつジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された平均厚み0.3〜3.5mmの内表面層とを有するローエッジタイプVベルト。
  2. 外周面側に配設される伸張ゴム層をさらに含み、前記伸張ゴム層が、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成されている請求項1記載のローエッジタイプVベルト。
  3. 外周面側に配設される伸張ゴム層をさらに含み、前記伸張ゴム層が、エチレン−α−オレフィンエラストマーおよび有機過酸化物を含むゴム組成物の硬化物で形成された伸張ゴム層の本体と、前記伸張ゴム層の本体の外周側表面を被覆し、かつジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーおよび硫黄系架橋剤を含むゴム組成物の硬化物で形成された外表面層とを有する請求項1記載のローエッジタイプVベルト。
  4. ベルト全体の平均厚みが8〜18mmである請求項1〜3のいずれか一項に記載のローエッジタイプVベルト。
  5. 前記圧縮ゴム層の本体の硬度が90〜99度であり、かつ前記内表面層の硬度が70〜95度である請求項1〜4のいずれか一項に記載のローエッジタイプVベルト。
  6. 前記圧縮ゴム層の本体において、エチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量が3.5質量%未満であり、前記内表面層において、ジエン単位を含むエチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量が3.5質量%以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のローエッジタイプVベルト。
  7. 少なくとも内周面側にコグを有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のローエッジタイプVベルト。
  8. 変速ベルトである請求項1〜7のいずれか一項に記載のローエッジタイプVベルト。
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