JP2022002674A - 電子閃光サングラスからなる認知症治療器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】脳波(ガンマ波)に含まれる周波数で繰り返し明滅する閃光を被治療者の目に照射する認知症の治療法を広く普及させるため、日常生活環境にある安全な光を治療用の光源として利用可能にする。【解決手段】液晶シャッター素子(または電子シャッターの機能を持つ部品)をサングラスのレンズ部分に設け、レンズ部分の透過率を制御して光を周期的に透過あるいは遮断させることにより、日常生活環境にある安全な光を光源として利用して、脳波(ガンマ波)に含まれる40Hz付近の周波数で周期的に繰り返し明滅する閃光を生成する。【選択図】図1

Description

本発明は、認知症の予防、軽減、および治療のための器具に関する。
<40Hz閃光療法>
この種の器具を利用する認知症の治療技術として、繰り返し周波数40Hzの波形で点滅する専用光源が発する閃光を被治療者に照射し、強制的に視覚を刺激することによって脳波(ガンマ波)を発生させ、認知症の原因となる脳内の毒性物質を低減する40Hz閃光療法(40Hz Flashing Light Therapy)という治療法が知られている。
特許文献1は、米国における40Hz閃光療法の創始者によるものであり、実験水準として繰り返し周波数40Hzの強烈な閃光を用いた動物実験を行った結果、脳内の視覚領域に近い部位の認知症が軽減される効果を確認した旨の技術情報が記載されている。現在、この40Hz閃光療法の人体への治療効果を検証するため、米国やカナダの医療研究機関や企業などで、多数の臨床試験が進められている。
なお、以下では文章記載上の表現を簡素化するため、信号波形の周波数成分の分布状態などに関する説明と混同するおそれのない箇所では、「閃光の波形の繰り返し周波数40Hz」を「閃光の周波数40Hz」などと簡略に記載する場合がある。
<その他の治療器具>
非特許文献1は、40Hz閃光療法のアイディアを応用した器具であり、認知症の予防、軽減、および治療のため、繰り返し周波数40Hzの強烈な閃光を照射するのではなく、繰り返し周波数40Hzで明滅する表示装置として米国製のiPad(登録商標)に認知症治療のための各種の認知ゲームの画像を表示する装置であり、米国では既に販売されている。
非特許文献2は、40Hz閃光療法のアイディアとは異なるが、日本製のテレビゲーム「スーパーマリオ(登録商標)」が、記憶をつかさどる海馬領域などの灰白質を高齢者の脳内で増やし脳の機能改善に効果があった旨の研究報告である。
これら2つの非特許文献は、人間の脳の機能改善に必要な光刺激の強度が動物実験の際に強制的に実験動物に浴びせた目を傷めそうなほど強烈な閃光である必要はなく、人間のためのテレビゲーム画面のような薄暗い映像でも認知症の治療効果が得られる事実を示している。
<その他の研究例>
特許文献2の研究事例は、40Hz閃光療法のアイディアを応用した器具であり、強烈な閃光を閉じたまぶたの上から照射する。ガンマ波を誘導する最適な周波数は38.6〜39.6Hzの範囲である、と独自の研究にもとづいて主張している。
非特許文献3の研究事例は、40Hz閃光療法のアイディアを応用した器具ではないが、人間が洞察力を用いて問題を解決する瞬間にガンマ波が急激に増大するが、その周波数が32Hzから48Hz以上の広い周波数に分布するとの計測結果を報告している。
これら2つの研究事例では、認知の働きに関与するガンマ波の周波数として、現状の40Hz閃光療法で使用されている厳密な40.0Hzという周波数の値が必ずしも最適値であるとは限らず、今後の臨床研究によって認知症の治療法がさらに発展する過程にある可能性を示している。
<本発明における電子シャッターという用語の説明>
ちなみに、60Hz〜144Hzなどの規格化された周波数で右目と左目に対応する画像を交互に表示する画面を、右目レンズと左目レンズに配した液晶シャッター素子を左右の画面と同期して左右交互に透過・遮断させて立体映像を視聴する3Dディスプレイ用の市販品の3Dメガネがよく知られている。
この市販品に組み込まれた液晶シャッター素子は、外部から印加される電圧によって透過率を変化させて、通過する光束を制御する電子部品である。偏光子を組み込んだ液晶シャッター素子の場合、透過率が最大なるように制御しても、現時点では実際の市販品の透過率は30%〜50%にすぎず、3Dメガネの外見は偏光レンズつきの黒いサングラスのように見える。
そこで以下の説明では、実際に入手しうる電子部品としての液晶シャッター素子を、「透過率が30%から50%程度の仮想的な黒色の光学フィルタと、最大100%から最小0%の範囲で透過率を制御しうる理想的な電子シャッター機能を貼り合わせた電子部品」と近似的に扱い、理想的な電子シャッター機能139の透過率を最大100%から最小0%の範囲で制御することを想定して本発明の技術思想と実施例を説明する。
なお、実際に入手しうる電子部品としての液晶シャッター素子では、透過率が30%から50%程度の仮想的な黒色の光学フィルタの作用によって目から入る光の照度は低下するが、人間の目の瞳孔の開閉の働きによって、網膜に届く光の照度の低下は自動的に調整されるため、光が網膜に届く段階では、前述の仮想的な黒色の光学フィルタの影響による網膜における照度の低下の影響はほとんど無くなる。
このため、本発明では網膜に届く光を、繰り返し周波数24Hzから50Hzの間で透過率制御する電子シャッター機能139による技術思想の創作に関して説明する。
なお、以下の文章を読みやすくするため、本発明に独特な用語としての「電子シャッター機能139」を、簡単に「電子シャッター」と記載する。
すなわち、本発明の説明において、電子シャッターは、顔面に装着するフレーム840に固定したメガネのレンズ部分(レンズ相当部材880)として配設することが可能な構造を持ち、あるいはレンズ相当部材880の内側(顔に近い側)もしくは外側(顔から遠い側)に配設することが可能な構造を持ち、電子的な信号(例えば電圧信号)によって透過光の透過率を制御できる。
なお、電子シャッターの機能を実際の機器設計に適用するには、低コストで入手可能な電子部品が必要である。前述の3Dディスプレイ用の3Dメガネ用に量産されている液晶シャッター素子は、発明者による実験の結果、本発明における電子シャッターの機能を実現する電子部品として利用可能である。
特表2019−502429号公報
特開2018−166568号公報
AlzLife、 「40Hz Light & Sound Therapy」
Greg L. West 、他6名、「Playing Super Mario 64 increases hippocampal grey matter in older adults」 Mark Jung−Beeman、他7名、 「Neural Activity When People Solve Verbal Problems with Insight」、PLoS Biol. 2004 Apr; 2(4): e97.Published online 2004 Apr 13.
解決しようとする問題点は2つあり、いずれも従来の40Hz閃光療法では治療に適した特性を持つ強烈な閃光を発する特殊な専用の光源を使う必要があることに起因する。
第1の問題点は、強すぎる閃光を長い期間にわたって繰り返し凝視して網膜の特定の部分に集中して照射し続けると、その部分に高い光エネルギーが集中することによって網膜を傷めるリスクがある。
第2の問題点は、部屋に差し込む直射日光や強い室内照明によって被治療者の周囲が明るくなりすぎると、明るい環境に順応して被治療者の目の瞳孔が閉じることによって治療用の閃光が目立たなくなり、40Hz閃光療法の治療効果が低下するリスクがある。
そこで、このようなことがないように、周囲の明るさを一定の範囲に保つために治療環境の照明条件を整備する必要があり、認知症の治療コストがかさむ原因となる。
本発明はこれら2つの問題を解決するために、点滅する光源からの閃光を照射して脳波(ガンマ波)を誘導して認知症を治療するにあたり、特殊な専用の光源が不要な認知症治療のため器具を提供することを課題とする。
本発明は、電子サングラス本体のメガネのレンズ部分に電子シャッターを配し、メガネのレンズ部分の光の透過率を所定の繰り返し周波数と波形で制御して遮断状態から透過状態の間で繰返し周期的に急変させることにより、目の網膜に入射する光量を急増させることで擬似的な閃光を発生させる。
これにより、日常の生活空間に存在する周囲光を光源として利用して、認知症治療のための閃光を生成することを、発明の技術思想における主たる特徴とする。
すなわち、上記の特徴を実現するために、本発明の電子閃光サングラスは、電子サングラス本体に含まれる透過率制御情報にもとづいて、透過率制御装置が電子シャッター部を透過する光の透過率を制御して発生させる閃光の繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間にある。
さらに、前記電子シャッター部は右目の電子シャッターと左目の電子シャッターから構成され、前記透過率制御情報は透過率の繰り返し周波数と波形を制御する情報を含み、前記透過率制御装置は、入力スイッチで手動操作によって指定した操作情報にもとづいて前記透過率制御情報から選択した駆動条件により前記右目の電子シャッターと前記左目の電子シャッターの透過率をそれぞれ制御する。
なお、例えば前記右目の電子シャッターと前記左目の電子シャッターに位相差を与える場合は、左右の電子シャッターを独立に制御する。
一方、前記右目の電子シャッターと前記左目の電子シャッターを同一波形かつ同位相で制御する場合には、前記右目の電子シャッターと前記左目の電子シャッターの透過率をそれぞれ独立に制御するのではなく、例えば電気的に並列あるいは直列に接続することにより、駆動状態を共通にして制御しても本発明の課題を解決することができる。
したがって、「透過率をそれぞれ制御する」とは、「透過率を独立に、もしくは共通に、制御する」という意味である。
本発明の電子閃光サングラスを装着する態様は、例えば常夏の海岸や公園のようなきわめて明るい野外を散歩している場合や、昼間の明るい日光がときおり差し込む屋内のソファに座り、あるいは室内灯で照明された屋内で認知症対策のテレビゲームで遊んだり、あるいはベッドに寝たきりで天井照明を凝視している状態などのいずれであろうとも、生活に不自由のない十分な明るさで連続した周囲光が存在する場面において同様に適用できる。
つまり、生活に不自由のない十分な明るさで安定に連続した周囲光が存在する環境であればよいので、従来の専用光源のような強すぎる閃光によって目の網膜を傷めるリスクという第1の問題は解決される。
また、電子サングラス本体のメガネのレンズ部分の光の透過率を制御することによって周囲光そのものを変調して閃光を発生させるので、従来のような周囲光が明るすぎて専用光源の閃光が目立たなくなる問題も解決される。従って、治療環境の照明条件を整備する必要がなくなり、照明条件の整備のために認知症の治療コストがかさむ第2の問題も解決される。
このようにして本発明は、従来の40Hzで点滅する特殊な専用の光源が不要となる。
本発明の個々の作用の詳細は後に説明する実施するための形態から明らかにされる。
本発明の電子閃光サングラスは、昼間なら屋外の太陽光、夜間あるいは屋内においては室内照明やモニタ画面の光を、治療用の閃光を生成する光源として利用することができる。
そのため、日常の生活習慣を守って、輝く太陽や明るすぎる室内照明などの光源を凝視しないように注意するだけで、強すぎる光で目を傷めることがないうえに、治療環境の照明条件を整備するコストを大幅に削減することができる。
また、電子サングラス本体は、市販の3Dディスプレイ装置の付属品あるいは別売品として量産実績のある液晶シャッター素子を利用して製造可能であるため、低コストに大量生産できるので、認知症予防と治療のコスト低減に一層貢献することができる。
本発明の他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
本発明の利用方法 課題を解決する方法(電子シャッターを用いて閃光を発生するメカニズム) 本発明の電子閃光サングラスと、従来の3Dメガネの技術思想の相違点 電子サングラス本体の形状(治験時に装着しやすい構造) 周囲光の明るさの変化への順応は瞳孔の働きによる 閃光比率 40%含有比 矩形波(デューティ比20%)の場合の閃光比率 矩形波(デューティ比80%)の場合の閃光比率 電子シャッターの透過率の波形を任意に設定できることの効果 電子シャッターの左右の位相差を任意に設定できることの効果 市販された量産品の3Dメガネで使用される液晶シャッター素子の特性 外部信号源を使う構造で製作したアナログ回路による電子閃光サングラス 発明の要素の概念図 実施例1の説明図 実施例1の変形例のフローチャート 実施例2の説明図 実施例2のフローチャート 実施例3の説明図 実施例3のフローチャート 実施例4の説明図 実施例4の書き込み情報の検査 実施例4の透過率制御装置150のフローチャート 実施例4の遠隔操作情報185を記述するOSC手順 実施例4の任意波形の送信データの例 実施例4のリモコン装置20のフローチャート 実施例4のリモコン受信部180のフローチャート 実施例4のリモコン装置、リモコン受信機、透過率制御装置の間の動作例 実施例5の遮光板と電子シャッターの位置関係 実施例5の透明レンズの外側の遮光板は飾り板 実施例5の飾り板に電子シャッターを固定する例
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。また、以下の実施の形態で示す具体的な発明品の外見形状の意匠や、発明要素を組み合わせた設計の例は、発明の技術思想の理解を容易にするための例示に過ぎず、この説明で例示した組み合わせ方や図示された厳密な形状に限定されるものではない。
≪本発明の利用形態≫
まず、本発明を利用する際に、従来技術との違いを明確に表す産業上の利用方法の特徴を説明する。 図1は、被治療者1が電子閃光サングラス30を装着して40Hz閃光療法を実施する場面を例示したものである。
図1(a)は、被治療者1が常夏の太陽2の下で海岸を散歩する場面である。本発明は周囲光を治療用の閃光の光源として利用するため、真昼の海岸のようにサングラスを必要とするほど極端に明るい環境でも、周囲の明るさに順応して目の瞳孔が小さく閉じるので、真昼の海岸の風景を楽しみながら散歩する利用方法であっても40Hz閃光療法を実施することができる。
図1(b)は、暗い屋内照明の下で認知症対策のテレビゲームに興じる場面である。周囲環境が暗ければ、周囲の暗さに順応して目の瞳孔が大きく開くので、屋内照明3やモニタ画面4のような照度の低い光源でも40Hz閃光療法を実施することができる。
図2(a)は、本発明が従来法の課題を解決する方法として、電子シャッターを用いて閃光Hを発生させるメカニズムを簡単に説明するものであり、電子シャッターを制御して透過する光を、一例として、25ミリ秒周期で繰返す40Hzの矩形波の波形で変調した透過出力光の相対的な照度の時間的変化を模式的に表したものである。
最高照度Cは周囲光の明るさにもとづいて電子シャッターを透過する光の相対的な照度の最大値である。平均照度Aは、図中の閃光幅で表す時間だけ電子シャッターで光を透過させた場合の1周期あたりの相対的な照度の平均値であり、十分な時間をかけて目の瞳孔が開閉した状態における光の照度に概ね相当する。
本発明において、医療機関での治験や治療における処方の便宜上、厳密に定量化する場合に備え、閃光Hの定義を「一定周期で繰り返して目に入射する光の最高照度Cが、一定周期で繰り返して目に入射する平均照度Aに対して突出した照度差H=C−A」を表すものとする。本発明は、この閃光Hを40Hz閃光療法の視覚刺激として利用する。
なお図2(b)は1つの中間照度Fを持つ波形で電子シャッターを駆動する波形を表し、この場合も、閃光HはH=C−Aで定義する。
また図2(c)は多数の中間照度Fを持つ波形で電子シャッターを駆動する波形を表し、
この場合でも、閃光HはH=C−Aで定義する。時間や照度の設定値が離散的にならざるをえない場合は、時系列波形は図のような傾斜した直線ではなく階段状になる。
本発明では、単純な矩形波波形にとどまらず、任意の時系列波形で透過率を制御できる。つまり、目に入射する光の照度を、最高照度Cと最低照度Gだけの2値だけにとどまらず、1つ以上の値を持つ中間照度Fも出力する機能と構造を電子閃光サングラスのシステム全体に与えることで、2値を超える数の照度で構成される時系列波形についても出力することができるようにした。
実際の治験や治療の処方時には、閃光Hの値が同じ場合でも、照度の時系列的な波形の違いによって治療効果が異なる可能性もある。十分な治験を行って、被治療者1の個人ごとに異なる多様な症状に適した時系列的な波形を見出してくださるよう、医療関係者にお願いしたい。
<電子閃光サングラスと従来の3Dメガネの技術思想の相違点>
図3は、本発明の電子閃光サングラスと、従来の3Dメガネの技術思想の相違点を説明する。電子閃光サングラスは従来の3Dメガネ用に量産された安価な液晶シャッター素子を利用して低コストに実現することができる点で技術的な共通部分が多い。ところが、電子閃光サングラスは、従来の3Dメガネの技術思想では着想することすらできない下記の独創的な特徴を持っている。
本発明における図3(a)の電子閃光サングラスは、目の前の現実の光景がちらついて見えるように、低い繰り返し周波数の閃光を利用して視覚刺激を与えて認知症を予防あるいは治療する器具である。従って、医療機関による治験や検査と診断を経て、個々の被治療者1ごとの症状に見合った治療のために、医療機関から処方されて設定された透過率制御情報を内蔵して、選択した繰り返し周波数と任意の波形と位相により自励動作で電子シャッターの透過率を制御する。つまり、電子シャッターが同期すべき画像同期信号の信号源を電子閃光サングラスの外部に必要としない。
一方、図3(b)の3Dメガネは、目の前の人工の3D画像がちらついて見えないように高い周波数で電子シャッターを開閉し、所望の立体感覚を生ずる視覚刺激によって仮想的な3次元空間を知覚する器具である。従って、目の前に交互に映し出される右目用の画像を右目だけで目視し、あるいは左目用の画像を左目だけで目視するように、目の前に表示される人工画像が左右どちらであるかを特定する外部信号に同期して、つまり左右両眼の電子シャッターの透過と遮断を、他励動作で逆位相に切り替える制御をする。つまり、電子シャッターが同期すべき画像同期信号の信号源を、3Dメガネの外部に必ず必要とする。
なお、本発明の電子閃光サングラスは、電子シャッターの透過率を制御する繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間で使用する。
一方、従来の3Dメガネは、他励動作で電子シャッターの透過率を制御する多様な規格が制定されて量産されている。最近では繰り返し周波数が3D画像のディスプレイ装置の規格に対応して96Hz〜144Hzなどの高速で動作する安価な量産品が市販されている。そのため、3Dメガネに使われる量産品の液晶シャッター素子は、電子閃光サングラスへの組み込み用の電子部品として活用できる十分高い応答性を持っている。
図4は、電子サングラス本体10のさまざまな形状を例示するもので、実用的で装着しやすい構造を考慮したものである。なおこの図は、透過率制御装置150と電子シャッター部135を一体化して電子サングラス本体10とした事例について描いている。
しかし、後に実施例で説明するように、電子サングラス本体10を構成する透過率制御装置150と電子シャッター部135を分離する構造を採用する設計形態においては、これらの外見形状は電子シャッター部135の形状として採用することができる。
図4(a)は、メガネ型の電子サングラス本体10の事例を示す。この形状は従来の3Dメガネにも多く採用されているものである。電子閃光サングラスは内蔵した透過率制御情報170にもとづいて自励動作で電子シャッターの透過率を制御する。
この図4(a)に限らず、市販されている従来の3Dメガネを適宜改造するだけで、電子閃光サングラスの「40Hzの擬似的な閃光という視覚刺激」を発生するだけなら、一時的に、本発明の電子閃光サングラスの類似機能を実現できてしまう可能性はある。
しかし、市販の3Dメガネなどの他用途の類似機器は、認知症治療のための医療器具ではなく事務用品や玩具などとしてそれぞれの用途に合わせて設計されている。電気品としての品質や耐久性も含めて医療器具ほど高品質でない場合があるかもしれない。
もし、それらの改造あるいは用途転用品が、「認知症治療に使える」などと宣伝されて販売され、故障や性能不良で医療事故が起きた場合には、販売者への損害賠償責任が高額になるおそれもある。つまり、3Dメガネなどの別目的の機材を簡単に改造しただけで販売されると、「医療器具としては非合法な粗悪品」になりうるかもしれない。
つまり、医療機関による治験や医師の診断に基づいて処方された器具でなく、然るべき公的機関や公益的な法人による試験、検査、規格、規制、認証などを全く受けずに、「認知症治療に使える」などと宣伝されて販売されるなら、そのような危険性を内在した物品の製造、輸入および販売などに携わった業者は責任を問われることを覚悟すべきかもしれない。
これは、治験用の機器の製造業者が、治験用の機材を供試品として医療機関に提供する場合にも注意すべき課題である。然るべき公的機関や公益的な法人による試験、検査、規格、規制、認証などの展望を織り込んだ契約を行うべきであろうと思われるが、この点は、本装置を治験に供給する上での実務上の課題となろう。
なお、個人で自分専用の機材を設計製作して自分だけに適用するなら、失敗してもそれは全くの自己責任であることを覚悟すべきである。部品単体ごとに自ら進んで調達したのであれば、部品単体の提供者などの第三者に責任を転嫁すべきではなかろう。つまり、企画、設計から購入部品の受け入れ検査、組み立て、調整および自分自身への適用した結果に至るまで、全て自己責任であるという覚悟を持つべきではないだろうか。
図4(b)は、着脱可能な電子サングラス本体10の事例を示す。この形状は被治療者1が個人用のメガネを日常的に使用している場合に、そのメガネフレームにクリップオンなどのメガネ業界では周知の方法で着脱可能に装着することができる。被治療者1が快適に愛用する個人用のメガネをしたまま電子閃光サングラスを利用することができるため、治験あるいは予防や治療の場面で利用しやすい形態である。
図4(c)は、ゴーグル型の電子サングラス本体の事例を示す。この形状はスキューバダイビング用の水中眼鏡に似ており、左右の電子シャッターを同位相で透過率制御する用途に限定すれば左右どちらか一方の駆動信号で1枚の大きな電子シャッターを駆動してもよい。この形状は視野が広い利点があるものの、視線と電子シャッターの表面が交わる角度のばらつきの範囲が広くなるため、一枚ガラスのような平板な形状の液晶シャッター素子では視野の範囲内に生ずる明暗のムラが大きくなることが課題である。
図4(d)は、着脱可能な電子サングラス本体を一枚ガラスのような平板な形状の電子シャッターで構成した例である。この構造も視野が広い利点と、視野にムラを生ずる課題がある。
図4(e)は、水泳用ゴーグルに似た形状の遮光板つきの電子サングラス本体の事例を示す。この形状の利点は、メガネフレームのレンズ部分の電子シャッターを通らずに目に飛び込んでくる周辺光を水泳用ゴーグルの防水ゴムのような形状の黒い遮光板などで遮ることが容易である点にある。このため、目の網膜には電子シャッターを透過した光だけが到達するため、目に飛び込む光の平均照度Aと最高照度Cの値を正確に予測して計算しやすい。そのため、治験用あるいは治療用において、透過率制御情報170を処方する際に計画した効果を正確に実現できる利点がある。
つまり、図4のいずれの形状であっても、遮光板を備えてメガネフレームのレンズ部分の電子シャッターを通らずに目に飛び込んでくる周辺光を遮ることにより、治験用あるいは治療用に使用する透過率制御情報170を正確に実現することが容易になる利点がある。従って、図4における多様な形状ごとに適切な形態の遮光板を設けることは有用である。
さらには、遮光板が着脱可能な形式であってもよい。これもまた、電子サングラスの効果を事前の計算値どおりに正確に実現するために有用な方法である。
≪周囲の明るさ(照度)が大きく変化することへの対応≫
図5は、視覚が検出可能な明るさの範囲を示す。具体的には、周囲の明暗への視覚の順応は、目の瞳孔が開閉する働きによって、10万ルクスを越える真夏の海岸から、1,000ルクス程度の室内の夜間照明、さらに暗い1ルクス以下の星空や月明かりまで、きわめて広い範囲に及ぶことを示すものである。
なお、この資料の出典は: 大阪市立科学館、 「こよみハンドブック 2006.4〜2008.4」、照度と明るさの目安、(令和元年、2019年6月7日インターネット検索)である。
一方、視覚が明るさの変化に追従する応答性については、健常な人の瞳孔の収縮・拡大の運動は、1秒以上の持続光を照射した場合、約0.2〜0.3秒の潜時をおいて収縮を開始し、約1秒で最大収縮に達することが下記の文献などで知られている。
出典: 松永勝也、”瞳孔運動” 第17回日本生理心理学会学術大会 生理心理と精神生理学 17巻2号 65−66ページ 1999年
このため、例えば繰り返し周波数40Hz、周期25ミリ秒の矩形波で電子シャッターの透過率を制御した場合には、1周期25ミリ秒のうちに透過光の照度が平均照度Aから最高照度Cまで急上昇する閃光の明るさの急変に、瞳孔の開閉は応答することができない。
なぜならば、瞳孔の応答速度は約1秒であるため、瞳孔は平均照度Aに順応したままで、周期25ミリ秒の間に最高照度Cまで上昇する光の明るさの急変には全く応答できないからである。
だとすれば、上記の場合に網膜に到達する光の明るさも、平均照度Aから最高照度Cまで(C−A)/Aの比率で変化して、ちらついて見えることになる。
つまり、「周囲環境が明るくても暗くても、1秒よりも十分に長い時間にわたって目を順応させておけば、同一の波形で透過率制御する場合の光のちらつき具合は同等であろう」、という仮説が成り立つ。
上記の仮説を確かめるために網膜に到達する光の明るさを実測することは困難である。そこで、本発明の電子閃光サングラスを試作して発明者自身が実際に装着し、繰り返し周波数40Hzで透過率を制御して、光の明るさのちらつき具合を官能試験として実験した。
これは、自分自身を実験動物に見立てた、自己責任で行う動物実験にほかならない。
結果的には、本発明の電子閃光サングラスを用いると、晴れた日中に屋外で太陽を背にして白色の壁からの反射光を見たときの光の明暗のちらつき具合と、屋内で夜間に60W白熱電球相当の明るさのLED卓上照明(電球タイプの形状で、内部で交流電源を整流して直流に変換したうえでLEDを点灯する製品)を直視したときの光の明暗のちらつき具合とがほぼ同等に見えた。
なお、上記の官能試験の際に、首を動かさずに眼球の向きだけを意図的かつ極端に上下左右に動かした場合、視野内に見える対象物の明暗のちらつき具合には、視野方向に応じて、ある程度再現性のあるバラつきが見られた。
その原因については、電子シャッターの機能を実現する目的で試作品に組み込んだ「市販の3Dメガネを分解して調達した液晶シャッター素子」の、視線と交差する電子シャッターの表面方向への透過特性のばらつきの影響によるものか、あるいは視覚における知覚機能の特性などによるものか、十分な治験などの研究がなされていない現時点ではまだ判然としないが、今後の技術開発における品質向上等のための課題になることが予想される。
≪電子閃光サングラスの透過率を制御して発生させる閃光の定量的評価≫
図6は、所定の繰り返し周波数で発生する「閃光の強さ」を定量的に評価するための閃光比率Eの定義を表す。
すなわち、電子閃光サングラスを透過率制御して得られる平均照度Aと、1周期の間の最高照度Cにより、平均照度Aから最高照度Cへと突出する閃光Hの照度変化H=C−Aの、平均照度Aに対する相対的な閃光の明るさの割合であり、本発明では、閃光比率E=(C−A)/Aで定義する。
図7は、所定の繰り返し周波数(例えば40HZ)で発生させた閃光に含まれる治療のための周波数成分の大きさを定量的に評価する含有比Dの定義を表す。
すなわち、例えば繰り返し周波数40Hzの矩形波の透過光の平均照度Aは、周波数分析すると周波数ゼロHzの直流成分の振幅Aで表現される。そこで、平均照度Aに対する周波数分析の40Hzの振幅Bの大きさを含有比D=B/Aで定義する。
図2(a)、(b)、(c)で示した3種類の波形は閃光H=C−Aの値は同じであるが、波形が異なるので40Hzの含有比D=B/Aはそれぞれ固有の数値を持つ。
本発明の場合、透過率の制御において中間値を含む任意の波形を利用できるので、例えば40Hzの正弦波を制御用のサンプリング間隔でサンプリングした時系列の波形などを透過率制御の目標値として採用して電子シャッターを駆動することで、40Hzの含有比D=B/Aを、より好ましい値に調整する試みも可能であろう。
図8は、電子閃光サングラスを制御して透過状態とした場合の最大照度(相対値0.9)と、遮断状態とした場合の最小照度(相対値0.1)を仮定して、40HZ矩形波のデューティ比を20%に設定した場合の閃光比率Eと40Hzの含有比Dの傾向を表す。この事例では閃光比率Eは200%を超え、40Hz含有比Dは100%を超えるので、電子閃光サングラスそのものは黒く見えるが、比較的強い閃光Hが得られる。つまり、ちらつきの強い閃光Hが発生する。
この図8から明らかなように、40HZ矩形波のデューティ比を20%よりも小さくすれば、閃光Hの強さを示す閃光比率Eは急激に増加するので、より強い視覚刺激を得る傾向にある。
しかしながら、電子シャッターを透過する光と電子シャッターの周囲から回り込む光が同時に目に飛び込んで来る場合は、実際の平均照度Aは、透過率制御の目標値としての時系列の波形にもとづく計算値よりも高くなり、その結果として、実際の平均照度Aに対する閃光Hの強さとしての閃光比率Eは計算値よりも小さくなってしまう。
この問題を軽減するためには、図4に関する説明で述べたように、電子シャッターの周囲から回り込む光をさえぎる遮光板を設けることが有効である。遮光板の材質や形状は、水泳用やスキューバダイビング用の水中ゴーグルと顔面の間の防水に使われている黒くて弾力性のあるゴムのような部材を用いてもよい。
図9は、40Hz矩形波において、デューティ比を80%に設定した場合の閃光比率Eと40Hzでの含有比Dの傾向を表す。この事例では、閃光比率Eも40Hz含有比Dも50%を下回るので、ちらつきの弱い閃光Hしか得られない。
しかし、デューティ比が80%なので、電子閃光サングラスを透過する光は多くなり、電子閃光サングラスを通して見る景色は比較的明るく、明暗のちらつきが少なく感じられる。
そのため、図9に示したデューティ比が80%の駆動条件は、モニタ画面を見ながら認知症予防用のテレビゲームを使う治療法や、被治療者1に散歩や花壇などでの軽作業をさせて認知機能を改善する治療法を併用するには有用である。
≪電子シャッターの透過率の波形を中間値を含んで任意に設定できることの効果≫
図10は、電子シャッターの透過率の波形を任意に設定できることの効果を説明する事例である。液晶シャッター素子は駆動電圧を調整すれば中間的な透過率も実現できるので、デューティ比80%の40Hz矩形波波形(周期25ミリ秒)を例にとれば、最高照度Cで光を透過させていた部分の一部の照度を僅かに暗くして中間照度Fまで下げることができる。
その場合でも、20ミリ秒という長い時間にわたって画像を比較的明るい状態で表示され続けるので画像の内容を認知しやすいうえ、平均照度Aが低下するので閃光比率Eが上昇して閃光Hの強さが向上する。このように、電子シャッターの透過率制御における時系列の波形における中間値を工夫することは、認知症対策のテレビゲームを併用する治療法や散歩あるいは軽作業を併用する認知症の治療法にとって、有用な改善策である。
つまり、最高照度Cが一定の値だとしても、最高照度Cの波形の一部をテレビゲームなどの画像を視認することが可能な範囲で中間照度Fまで低下させれば、平均照度Aも低下するので、結果的に閃光比率E=(C−A)/Aの数値は増加する。このようにして、図10のように電子シャッターの透過率の目標値の波形を「最高透過率と中間的な透過率の値(中間値)と最低透過率からなる、2値以上をも含みうる任意の時系列波形」とすることで、より強い閃光Hを発生させることが可能である。
≪電子シャッターの左右の位相差を任意に設定できることの効果≫
図11は、電子シャッターの左右の位相差を任意に設定できることの効果を説明するための図である。 まず、図11(a)は、左右の視野と大脳半球の関係を示す。人間の右と左の視野AとBは、それぞれ大脳の左半球と右半球に分かれて処理されることが知られている。
図11(b)は、光源Aと光源Bに位相差を持たせて個別に点灯した事例である。この場合、右視野の光源Aは大脳左半球で処理され、左視野の光源Bは大脳右半球で処理される。そのため、結果的に、大脳左半球と大脳右半球の視覚刺激に位相差を与えることができる。
図11(c)は、左右の電子シャッターに位相差を持たせて個別に透過率制御した事例である。この場合、大脳左半球の内部において右目の画像130Aと左目の画像140Aに対応する脳神経の間で位相差が生じる。さらに、大脳右半球の内部においても右目の画像130Bと左目の画像140Bに対応する脳神経の間で位相差が生じる。
このように大脳の左右半球ごとの内部で視覚刺激に位相差を与えることでどのような臨床効果が生ずるかは不明であるが、治験を実施するうえで実現可能な選択肢の多様性を提供できる効果がある。
≪繰り返し周波数を24Hzから50Hzに制限することの効果≫
下限周波数の24Hzは「てんかん」などの医療事故を避ける目的で制限し、上限周波数の50Hzはテレビゲームなどを併用する認知症治療が有効に機能するようスプラリミナル効果に配慮して制限した。
つまり、下限周波数の24Hzは、ガンマ波の周波数範囲のさまざまな定義があるうちで、最も低い下限値の値を選択した。ガンマ波よりも低いベータ波の周波数を避けたのは、最近の臨床研究で、難治性側頭葉てんかん患者の脳波には、特にベータ波(13〜25Hz)とハイ・ガンマ波(80〜150Hz)の振幅での組み合わせで発作を検出していることにも起因する。
出典: 国立大学法人大阪大学、「てんかん発作時の特徴的な脳波を世界で初めて検出―病態解明や診断精度・治療成績の向上など新たな治療への発展に期待」、日本医療研究開発機構、平成28年5月13日付けプレスリリース、
この知見によれば、従来の40Hz閃光療法の枠組みを大きくはずれた低い周波数の脳波を誘導する閃光を用いて視覚に光刺激を与えると、てんかん発作などの治療上の事故リスクが高まる可能性にも注意が必要である。
なお、本発明では透過率制御情報170の繰り返し周波数を設定する際に、設定可能な繰り返し周波数の下限値に配慮するだけである。しかし、さらに、設定ミスや機器故障によって繰り返し周波数がガンマ波の下限周波数としての24Hzよりも低い周波数へ逸脱できないように透過率制御装置150の制御系に自動的な制限を加える機能を追加する設計とすることが望ましい旨を示唆しておく。
一方、上限周波数の50Hzは、ある映像刺激が20ミリ秒以上の長さで表示されたとき、それを意識的に認知できる現象(スプラリミナル効果)に起因する。つまり、繰返し周波数が50Hzを超えると、一定周期で明暗を繰り返す画像を、意識的に認知しやすい明るい画像として見ることができる映像刺激の長さを20ミリ秒以上にすることができなくなる。
それゆえ、野外散歩中の身の回りの風景や、室内でテレビゲームのモニタ画面を見る際に目の前の映像刺激を認知する認識作用に不具合が生じないように、スプラリミナル効果を利用できることを意図して、望ましい上限周波数の数値として50Hzを採用した。
なお、本発明は40Hz閃光療法に適用する治療器具に関するものであり、通常は約40Hz付近の繰り返し周波数で使用する。つまり本発明で、繰り返し周波数の具体的な数値範囲を24Hzから50Hzまでとするのは、あくまでも望ましい範囲であって、治験終了後の治療のための用途としては広すぎるのかもしれない。
しかしながら、治験をも念頭においた治療用器具を設計する観点においては、治験の実験水準を多様に選択するうえで、医療事故や併用する治療法の効果を妨げない周波数の範囲で、繰り返し周波数を多様に設定できる機能を有することは望ましい。
また、治験後の臨床利用における事故防止などの意味では、透過率制御情報170の設定ミスや、電子シャッター部135などの故障により、異常な繰り返し周波数や波形の閃光が発生したことに気づかずに治療行為を継続する危険を避けるため、少なくとも異常発生を警告するための自己診断機能だけでも備えておくことが好ましいことも示唆しておく。
さらに、今後の治験で好適な範囲が確認されれば、24Hzから50Hzよりも狭い数値範囲に限定するように設計標準や商品規格あるいは医療機関における処方の基準などを制定することも有益であろう。
≪発明の効果を確認した基礎実験について≫
本発明を着想した研究開発の初期段階において、発明者は以下に述べるアナログ回路で制御装置を設計し、実際に電子閃光サングラスを試作するとともに、2ヶ月以上にわたり、毎日30分以上にわたって自ら装着して試用した。
この間、少なくとも明確な危険が生じないパラメータ設定を、身をもって試行錯誤するとともに、極端に明るい野外(例えば晴れた日の青空)や夜間に屋内照明で照らされたパソコン画面や天井照明における「ちらつき」の発生具合を自分の目で観察しながら実験した。その結果、屋外・屋内とも、繰り返し周波数40Hzの閃光Hによって、明確に知覚できる「ちらつき」の視覚刺激が得られる事実を官能試験で確認した。
ただし、発明者は予め、閃光の繰り返しという視覚刺激による脳波誘導によって脳波に全く異常が生じない体質であることを、正規の医療機関による検査と診断を受けて確認済みである。そのうえで、自己責任の範囲で官能試験を実施するにあたり、自己の身に新たな不具合が生じていないことを自ら確認しながら、あるいは医師による定期的な検査を受けるように心がけながら、本発明の研究開発を行っている。
もし本発明を参照して自己責任で黎明期の追試を行おうとする勇敢な研究者がいるとすれば、必ずや脳神経科や眼科などの適切な医療機関の検査と診断と指導を受け、この発明を追試するうえで十分な健康体であることを事前および研究中に確認し続けることを強くお勧めする。個人差の有無や未知の副作用が生じないかどうかなど、治験前の現時点では不明である。発明者も含めて研究者自身が自らの心身を犠牲に差し出して、自己責任にて実施する研究開発になることを覚悟されたい。
特に、認知症の脅威をわが身の問題として真剣に取り組む高齢な研究者の場合、本発明の研究開発中に偶然、何らかの疾病に罹患することもある。そのような場合には、本発明との因果関係が不明であっても、ひとまず研究活動を中止し、すみやかに医師の診断と指導を仰いでいただきたい。
なお、発明者は研究初期段階から現在に至るまで、40Hz療法の治療器具の研究開発を行う中で、内臓の動き、知覚系、あるいは認知系が明らかに活性化するなどの現象を体験し続けている。主観的に表現すれば、「真昼の高原の白い霧が見る間に晴れて、遠くの山々がはっきりと見通せる状態まで戻る」という実感がある。それゆえに、本発明が神経系に何らかの変化を実際に惹起したものと認識している。
しかし、個人差を考慮した複数の被験者による統計的な治療効果のデータの計測と採取については、専門の医療機関による客観的な治験の実施を待望することしかできない。
また本発明を利用して治験を行おうとする医療機関に対しては、40.0Hzではない繰り返し周波数の条件、あるいは、40Hzの矩形波を例にあげれば、デューティ比20%以下の強烈な閃光Hを連続して発生させる条件などによる官能試験や治験を行う上での安全性は、発明者自身にとって未知である旨を正直にお伝えする。必ずや治験の条件ごとに医療用の脳波計や眼底検査装置などを用いながら、十分に安全を確認しながら治験を進めていただくよう強くお勧めする。
なお、40Hzの矩形波でデューティ比20%以上の比較的穏やかな閃光Hによる連続30分以内の使用であれば、危険が生じなかったことを、発明者が我が身をもって確認した。とはいえ、危険が生じないパラメータ設定には個人差があろう。この点についても十分な安全確認の治験を実施することを強くお勧めする。
≪発明の効果を最初に確認した基礎実験装置について≫
図12(a)は、量産品として市販されている144Hzに応答する仕様の3Dメガネを分解し、取り出した液晶シャッター素子の静特性を計測した事例である。印加電圧0Vから2Vの範囲で透過する光の相対的な照度を0.9と仮定すると、印加電圧6Vから8Vの範囲で透過する光の相対的な照度は0.1であった。
実際の量産機器の設計にあたっては、液晶シャッター素子の特性を最大限に生かせる駆動波形など、液晶シャッター素子のメーカが推奨する技術を適用すべきである。しかし本発明では、以下の説明を簡単にするため、最小電圧2V以下かつ最大電圧6V以上の正の電圧波形による40Hzの矩形波を用いてこの液晶シャッター素子を駆動すれば、相対的な照度で0.9から0.1の範囲で透過率を制御することができることを利用する。
なお図12(a)から明らかな通り、開閉動作のみの3Dメガネ用の液晶シャッター素子であっても、上記電圧の範囲で中間的な透過率も実現可能である。
しかし、中間的な透過率を利用して中間照度を実現する電子閃光サングラスとしての用途において、液晶シャッターの透過率の精度、再現性、耐久性などの品質管理については、最適な駆動電圧波形の付与方法なども含め、信頼性の高い高品質な製品設計に織り込むために多数の課題がありうることを示唆しておく。
図12(b)は、中間的な透過率を利用して中間照度を実現するためにフィードフォアード型の電子シャッター制御を行う事例である。これは、透過率制御装置150から出力される左右の電子シャッター(STD1、STD2)に供給される駆動信号として、例えば図12(a)で印加電圧が3.0Vならば、照度の相対値が0.56という中間照度Fが得られる。従って、電子シャッターに印加する駆動電圧そのものを中間値にすることで、透過率も中間値を得ることができ、その結果として中間照度Fが得られる、という簡単な方式である。本発明の以下の実施例では、このフィードフォアード型の電子シャッター制御を行う簡単な事例を用いて説明する。
ちなみに、フィードフォアード型の制御方法で電子シャッターの透過率を制御する場合には、透過率制御情報170に収められた透過率制御の目標値の波形を、電子シャッターの駆動電圧と透過率の間の特性データにもとづいて、電子シャッターを駆動する電圧の波形に変換した上で、電子シャッターの駆動電圧として供給することはいうまでもない。
図12(c)は、中間的な透過率を利用して中間照度を実現するためにフィードバック型の電子シャッター制御を行う事例である。つまり、電子シャッター部135のフレーム840に固定される左右の電子シャッター(STD1、STD2)ごとに透過率検出器(FBS1,FBS2)を設け、透過率制御装置150から出力される中間値を含んだ駆動指令信号を目標値としてフィードバック系を構成し、左右の透過率の偏差値を制御アンプ(CNT1,CNT2)で増幅して左右の電子シャッター(STD1、STD2)に印加する。
なお、透過率検出器(FBS1,FBS2)の構造は、例えば電子シャッターを挟んで赤外線発光LEDと赤外線受光センサを設ければよい。また、偏差値を増幅する制御アンプ(CNT1,CNT2)の設計は、例えばPID制御装置に加え、液晶シャッター素子の特性を最大限に生かせる駆動波形などの液晶シャッター素子のメーカが推奨する技術を織り込んで設計することは、当業者であれば容易に実施可能であることを示唆しておく。
図13は、発明者が初めて試作して、2ヶ月以上にわたって毎日30分ずつの官能試験に実際に使用したアナログ回路による電子閃光サングラスの説明図である。市販の音楽再生装置で再生したアナログ音声信号を利用する構造を採用している。
なお、以下の説明に使用する用語として、登録商標のある市販品の説明への配慮や、できるだけ自然な文章で説明するなどの事情もあり、前後の文脈によって「音楽(music)」、「音声(voice)」あるいは「音響(sound)」という異なる表現が登場する。しかしどれも、本発明では、技術的には「人間の可聴周波数帯域のオーディオ信号(audio signal)」の意味を含んで表現するために使用しており、本発明では工学的に同義語である。
図13(a)は、試作1号機の構造を示す概略図である。電子シャッター部135は市販の3Dメガネから制御装置を切除した残りの部分P100に該当し、レンズ相当部材880としての右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140と、これを固定するフレーム840とで構成される。
透過率制御情報170としては、MP3規格の音声データを収納できる音楽再生装置P200に音声情報として記録した。具体的にはステレオ音声のLチャンネルに40Hzの視覚刺激信号を記録し、ステレオ音声のRチャンネルには特許文献1で提唱された40Hzの音声刺激情報を記録した。
なお、試作1号機では、音楽再生装置P200として、Apple社(登録商標)のiPod(登録商標)を使用した。
ちなみに、40Hzの音声刺激情報としては、特許文献1に記載された40Hzのパルス音や正弦波だけではなく、40Hzを含む脳波を誘導するバイノーラルビート(Binaural Beat)やガンマ波を増強させる瞑想指導の音声、あるいは脳波の状態をリラックスさせるヒーリング音楽などのようなBGM(background music)を利用することができるよう、左右の両耳をモノラル音源用に電気的に並列接続したヘッドホンP300を用いて聴取した。
また、40Hzの視覚刺激情報としては、40Hzで任意のデューティ比の矩形波を歪の少ない原型の波形のままで音楽用のMP3に収録することはできない。そこで、4kHzの搬送波を40Hzの矩形波で振幅変調し、復調増幅器P400を通した復調信号を、最大電圧7V、最小電圧1Vの40Hzの矩形波に整形して出力し、出力信号線を介して右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140を並列接続した電子シャッター部135に供給した。
図13(b)は音楽用のMP3に収録したステレオ信号を再生した場合の波形を説明するための概念図であり、4kHzの搬送波を40Hzでデューティ比50%の矩形波で振幅変調した波形の概念を示す模式図である。
4kHzの搬送波の波形や波数の描画は不正確であるが、理解しやすさを重視して模式的に描いてある。4kHzの搬送波は、繰り返し周波数40Hzでデューティ比50%の矩形波によって振幅変調され、周期25ミリ秒の半分の12.5ミリ秒ごとに波形の振幅が大幅に変化する。
なおこの図は模式的に単純化して描いたが、実際に音楽再生装置P200から復調増幅器P400に入力される40Hz視覚刺激信号は複雑な波形をしている。なぜならば、搬送波としての4kHzの細かい矩形波が12.5ミリ秒にわたって連続する波形そのものがなまって崩れており、さらにノイズが重畳しているためである。
図13(c)は、復調増幅器P400の入力と出力の関係を模式的に描いたものである。入力信号の振幅は±0.1Vとして描いたが、実際には音楽再生装置P200からヘッドホンP300に出力される音声刺激情報の音量をボリウム調整するたびに振幅が±0.5V〜±0.01V程度の範囲で大幅に変化してしまう。
一方、出力信号の振幅は図示の通り最小値1V、最大値7Vの矩形波である。
図13(d)は、復調増幅器P400の内部の処理機能のブロックダイヤグラムを示す。Amp.Aは倍率70倍以上の増幅器である。出力が常に飽和するように、音楽再生装置P200の音量出力のボリウムを調整した。倍率が1のAmp.Bと、倍率が−1のAmp.Cの出力をそれぞれ整流してAmp.Dで加算したうえ、一次遅れで信号をなまらせると、大きなノイズのある矩形波に近い波形になる。さらにヒステリシス特性を持たせたAmp.Eを通すことで、ほぼノイズのない40Hzの矩形波が出力される。
この図13で示したアナログ式の試作1号機では、40Hz視覚刺激信号の波形を例えばデューティ比20%に変更しようとすれば、4Kzの矩形波の搬送波を、新たな波形で振幅変調した音声信号を生成して録音しなおす必要がある。実際には、例えば、制御シミュレーション用の市販ソフトウエアMATLAB(登録商標)を用いれば、4Kzの矩形波の搬送波を、繰り返し周波数24Hzから50Hzの間の任意の波形で振幅変調したアナログの音声信号を容易に生成できる。
音楽再生装置P200に市販品のiPod(登録商標)を使用する事例では、複数の駆動条件に相当するアナログの音声信号を複数の音声データとして予め生成して記録しておき、所望の音声データを選択することで、異なる駆動条件を容易に切り替えて選択することができる。
なお、試作1号機の段階では、40Hzの矩形波について再現できたデューティ比の精度は、アナログ回路のノイズの影響もあり、所望するデューティ比の数値の±3%程度であった。
ちなみに図13のアナログ式の試作機では、音楽再生装置P200と復調増幅器P400と電子シャッター部135に相当する部分P100とを図13(a)のように連接した全体が電子サングラス本体10に相当する。
また、ステレオ音声のLチャンネルに記録された40Hzの視覚刺激信号は、透過率の繰り返し周波数と波形を制御する情報なので、透過率制御情報170に相当する。さらに、音楽再生装置P200と復調増幅器P400は透過率制御装置150に相当する。
なお、音楽再生装置P200に市販品のiPod(登録商標)を使用する事例では、記録した複数の音声データのうちから手動操作で押しボタンなどのスイッチによって希望する楽曲を選択できる。つまり、複数の入力スイッチ120で手動操作によって指定したiPod(登録商標)内の操作情報155にもとづいて透過率制御情報170から選択した駆動条件により右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140をそれぞれ電圧信号で駆動して、それぞれの透過率をフィードフォアード制御する。
したがって、アナログ式の試作1号機の構造を整理すると、電子サングラス本体10に含まれる透過率制御情報170にもとづいて、透過率制御装置150が電子シャッター部135を透過する光の透過率を制御して発生させる閃光の繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間にある。
また、前記電子シャッター部135は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140から構成され、
透過率制御情報170は透過率を制御する前記繰り返し周波数と前記波形の情報を含み、
前記透過率制御装置150は、入力スイッチ120で手動操作によって指定した操作情報155にもとづいて前記透過率制御情報170から選択した駆動条件により前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率をそれぞれ制御する。
ここで、「透過率をそれぞれ制御する」とは、「透過率を独立に、もしくは共通に、制御する」という意味である。
なおこの事例では、前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140をそれぞれ独立に制御するのではなく、電気的に並列に接続する手段により、それぞれの電子シャッターの駆動状態を共通に制御して本発明の課題を解決することができた。
ちなみに、図13には明示していないが、電子回路を駆動するための内蔵電池や商用電源からの電源変換器などの電源装置(電源部160)を備えることはいうまでもない。
≪発明者が考える発明実施の最良の方式を実現するための、発明の要素≫
図14は、発明者が考える発明実施の最良の方式を実現するために有用な、6つの発明の要素を説明する概念図である。
ここでは、本発明の課題の解決手段に対応する基本的な最小限の構成だけにとどまらず、発明者が考える発明実施の最良の方式を実現すべく、新たに発生する追加の課題を解決するための発明の要素も含めて以下に記載する。
<第1の発明要素>
図14(a)は、本発明で創作した技術思想を表す基本構成である。具体的には、電子サングラス本体10に含まれる透過率制御情報170にもとづいて、透過率制御装置150が電子シャッター部135を透過する光の透過率を制御して発生させる閃光の繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間にあることを特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これがアナログ回路又はデジタル回路で本発明を実現する為の最上位概念である。
特に、「電子サングラス本体10に含まれる透過率制御情報170にもとづいて」とは、従来の3Dメガネのように外部に設けた映像モニタ装置や映像プロジェクタなどの映像機器が発生した映像同期信号に同期させることなく、電子サングラス本体10の内部にある透過率制御情報170に記述された、「透過率の繰り返し周波数」と「明示的に設定することが可能な任意の波形の形状」にもとづいて制御するという本発明の技術思想を示している。
<第2の発明要素>
図14(a)に描かれた基本構成のアナログ回路による実現例は、既に図13で説明した。この図13の構成によって本発明の2つの課題は基本的には解決したのであるが、アナログ回路による実現手段では、性能のばらつきを抑える品質管理やコスト低減を進めるうえで問題が残る。そこで、本発明における治療コストの低減という課題をさらに解消するうえで、CPUを含むデジタル回路による実現手段をも包含することが第2の発明要素となる。
具体的には、前記電子シャッター部135は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140から構成され、透過率制御情報170は透過率を制御する前記繰り返し周波数と前記波形の情報を含み、 前記透過率制御装置150は、入力スイッチ120で手動操作によって指定した操作情報155にもとづいて前記透過率制御情報170から選択した駆動条件により前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率をそれぞれ制御することを特徴とする電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これは、第1の発明要素をアナログ回路のみならずデジタル回路でも具体的に実現するための基本構成であり、第1の発明要素の下位概念である。
なお、「透過率をそれぞれ制御する」とは、「透過率を独立に、もしくは共通に、制御する」という意味である。
<第3の発明要素>
本発明の発明者は、電子シャッターを用いることで周囲光を40Hz閃光療法の光源として認知症の予防や治療に利用する、というアイディアを初めて提唱するものであると考えている。それゆえ、過去に治験で蓄積された40Hz閃光療法のデータが少ないのであれば、本発明そのものが治験のための有用な手段でなければならない。そこで、既に図11で示したように、治験の試験水準の選択肢をより多く提供することは有意義である。
具体的には図14(a)において、前記透過率制御情報170は、さらに前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率の波形の位相差を制御する情報を含む、ことを特徴とする電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これは、第2の発明要素に位相差の情報を追加するもので、第2の発明要素の下位概念である。
<第4の発明要素>
図14(b)は、治験機材としての電子サングラス本体10に内蔵される全ての治験水準の制御情報を迅速に更新することを可能にする第4の発明の要素を説明する図である。
治験を行うにあたり、試験条件の設定を誤らぬように正確に管理するとともに、限りある数量の治験機材を効率的に運用することは、治験作業のコスト低減と多くの水準の治験を早期に終わらせる期間短縮に役立ち、有利な効果が高まる。
具体的には、前記電子サングラス本体10は、記憶した情報の内容を手動操作によって交換可能な交換記憶装置190を備え、前記透過率制御装置150は、前記交換記憶装置190へ記憶指令197を送信して制御情報175を読み出し、読み出した前記制御情報175に含まれる透過率の繰り返し周波数と波形の情報を前記透過率制御情報170に設定する、ことを特徴とする電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これは、第2の発明要素の制御情報を手動で交換するもので、第2の発明要素の下位概念である。
<第5の発明要素>
図14(c)は、特許文献1に記載されたように、40Hz閃光療法に40Hzの音声刺激を併用する療法を実現する手段を提供するものである。アナログ回路を用いた実現方法は既に図13で説明したので、図14(c)ではデジタル回路によって実現する。
図13のアナログ回路では市販のiPod(登録商標)で音声データを交換したが、図14(c)のデジタル回路では第4の発明要素の交換記憶装置190を利用して音声データを交換する。
具体的には、前記電子サングラス本体10は音響増幅器210を備え、前記交換記憶装置190はさらに、聴覚における可聴範囲の周波数特性で構成されるデジタル音響信号として聴覚刺激情報215を記録しており、前記透過率制御装置150は、前記透過率制御情報170を選択する前記操作情報155にもとづいて、前記記憶指令197を前記交換記憶装置190へ送出して、前記交換記憶装置190から前記聴覚刺激情報215を読み出して前記音響増幅器210へ入力させ、前記音響増幅器210は、入力した前記聴覚刺激情報215をアナログ音響信号に変換するとともに増幅して外部音響信号端子220へ音響信号225を出力する、ことを特徴とする電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これは、第4の発明要素の交換記憶装置190を利用するもので、第4の発明要素の下位概念である。
<第6の発明要素>
図14(d)は、本発明を用いた40Hz閃光療法が治験を終えて普及期に入った時点で、臨床治療のコストをさらに下げるとともに、それぞれの被治療者1ごとに医療機関から治療のための透過率制御情報170を効率的に処方するための発明要素である。
すなわち、例えば既存の市販品である3Dメガネに似た図4(a)のような単純な形状に電子サングラス本体10としての全ての機能を収める構造を採用すれば、量産による製造コスト削減効果を得るうえで有利である。さらに、リモコン装置20を用いて電子サングラス本体10の透過率制御情報170を交換し、データ更新後の動作確認までリモコン装置20で行えば、治療器具としての電子サングラス本体10の価格低減に加えて透過率制御情報170を処方するコストの低減も見込めるので、治療コスト全体を低減できる。
具体的には、前記電子閃光サングラス30は前記電子サングラス本体10とリモコン装置20を備え、前記リモコン装置20は、前記入力スイッチ120からも手動操作で指定しうる信号を含んだ前記操作情報155、または透過率制御情報170へ設定する透過率の繰り返し周波数と波形の情報を含んだ前記制御情報175を、遠隔操作情報185として送信し、前記電子サングラス本体10は前記リモコン装置20が送信した前記遠隔操作情報185を受信するリモコン受信部180と入力スイッチ部125を備え、前記入力スイッチ部125は、前記リモコン受信部180からの指令により自動開閉する遠隔リレー接点127と、手動操作する前記入力スイッチ120とから構成し、前記リモコン受信部180が受信した前記遠隔操作情報185の内容が前記操作情報155であれば、前記遠隔リレー接点127を自動開閉することにより前記操作情報155を前記透過率制御装置150へ入力し、もしくは前記リモコン受信部180が受信した前記遠隔操作情報185の内容が前記制御情報175であれば、前記透過率制御装置150へ前記制御情報175を入力する、ことを特徴とする電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これは、第2の発明要素を利用するもので、第2の発明要素の下位概念である。
なお、「前記入力スイッチ120からも手動操作で指定しうる信号を含んだ前記操作情報155」とは、リモコン装置20から送信する操作情報155には、リモコン装置20のみから送信できる「遠隔操作の開始と終了を操作する信号」が含まれていることに対応する。詳しくは、実施例4にて詳細に説明する。
以上の6つの発明要素の具体的な実現方法を以下の実施例で詳細に説明する。
なお後述する実施例に記載した6つの発明要素の個々の実現手段は、あくまでも説明を目的として理解の容易さを高めるために例示したものであり、当業者に広く知られた代替手段で置き換えて設計変更できることはいうまでもない。
≪6つの発明要素の実現方法を説明する実施例≫
<実施例1>
図15は、第1の発明要素、および第2の発明要素の実現方法を記載する実施例であり、本発明の技術思想をデジタル回路でも実現するための基本的な構成の例を説明する。
なお、この実施例1の電子閃光サングラスは、電子サングラス本体10に内蔵した複数の透過率制御情報170を切り替える機能は持っているが、透過率制御情報170そのものを全く新たなデータに入れ替える機能は持っていない。
そこで、実施例1の電子閃光サングラスは、予め定めた検査要領にしたがって閃光Hの駆動条件を選択する用途での利用が期待される。具体的には、電子閃光サングラスを用いる治療法に対する被治療者1の適性を検査するため、例えば複数種類の閃光Hの駆動条件を適用して、脳波や眼底などに異常が生じないことを確認することができる。
あるいは標準的な複数種類の閃光を発生させる駆動条件の候補のうち、当該の被治療者1にとって最適な条件を見つけるために脳波計などを併用して適性検査を行い、最適な1種類が判明したら、その駆動条件を用いて治療する用途に用いてもよい。
図15(a)は実施例1の構成図であり、第1の発明要素、および第2の発明要素で説明した構成を持っている。すなわち、電子サングラス本体10に含まれる透過率制御情報170にもとづいて、透過率制御装置150が電子シャッター部135を透過する光の透過率を制御することにより、被治療者1が頭部に装着した電子閃光サングラスを通して見る景色は、ちらついて見える。
なお、透過率制御情報170は、発生させる閃光の繰り返し周波数が24Hzから50Hzの間になるように設定する。
さらに、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140とをまとめて電子シャッター部135と呼ぶ。透過率制御情報170は透過率を制御する前記繰り返し周波数と前記波形の情報を含む。
透過率制御装置150は、入力スイッチ120で手動操作によって指定した操作情報155にもとづいて、透過率制御情報170として蓄積された情報の中から選択した駆動条件により、右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率をそれぞれ制御する。電子サングラス本体10には電池などの電源部160を含む。
図15(b)は、実施例1の電子サングラス本体10であり、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140からなる電子シャッター部135と、2つの押しボタンとして図中に描かれた入力スイッチ120を備えた透過率制御装置150がメガネのフレーム840と一体になって組み込まれている。
電源部160のON−OFFスイッチはこの図に見えない部分に配置されており、押しボタンの形状であってもよいし、折りたたんだメガネのテンプル(腕、つる)を開閉することによって電源が入り切りされる構造であってもよい。
図15(c)は、実施例1の電子サングラス本体10を実現する主要部品の構成であり、図15(a)のブロックダイヤグラムを部品の形態で説明するものである。
電子シャッターSTD1とSTD2は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140に相当する。制御装置CNTは透過率制御装置150に相当する。手動式のスイッチS1とS2は入力スイッチ120に相当する。
スイッチS1とS2の開閉操作は入力ユニットINPで検知され、操作情報155としてCPUに取り込まれる。透過率制御情報170は記憶装置(メモリー)MEMに記憶されており、必要なタイミングでCPUに取り込まれる。CPUの制御出力は出力ユニットOUTを介して出力アンプAMP1とAMP2で適切な駆動電圧に調整されたのち、それぞれの電子シャッターSTD1とSTD2を駆動する。電源PWは電源部160に相当し、電源スイッチPSでON−OFF操作する。
図15(d)は、実施例1のフローチャートである。ちなみに、この電子サングラス本体10の操作方法としては、入力スイッチS1の操作を選択した状態(押せばON、押さなければOFF)で電源スイッチPSをONすればフローチャートが起動し、フローチャート実行中に電源スイッチPSをOFFすればフローチャートが中断されて電子サングラス本体10の動作が終了する。
入力スイッチS1の操作を選択しながら電源スイッチPSをONすればフローチャートがSTARTから開始される。
次に、CPUは記憶装置(メモリー)MEMに記録した透過率制御情報170を読み取る(ステップS01)。さらに、電源スイッチPSをONした瞬間の操作スイッチS1の操作状態を読み取り(ステップS02)、スイッチS1がONかどうか判定する(ステップS03)。
もしスイッチS1がONであれば、デューティ比20%の40Hzの矩形波を左右の電子シャッターに対して同位相で1サイクル(1周期に相当する時間)だけ出力する(ステップS04)。逆にスイッチS1がOFFであれば、デューティ比80%の40Hzの矩形波を左右の電子シャッターに対して同位相で1サイクルだけ出力する(ステップS05)。
次に、ステップS03に戻って、この動作を繰り返す。
図15(d)のフローチャートで説明した透過率制御情報170に収められた駆動条件や数値などは、わかりやすく説明するために簡略化した事例であり、この記載に限定されるものではない。例えば、入力スイッチの数を増して条件の組み合わせを複雑にしたり、あるいは図15(d)に記載したもの以外の駆動条件を適用するなどの簡単な変更を加えることができる。
例えば、図15(d)のステップS04とステップS05では、説明を簡単にするため、1サイクルの間に最大値と最小値の2値だけをとりうる矩形波の波形を例として取り上げた。だが、1サイクルの間に最大値と最小値の間に中間値を含む3値をとる階段状の波形や、あるいはさらに、1サイクルの間に最大値と最小値の間で多数の中間値をとる正弦波を近似した階段状の波形も発生できることはいうまでもない。任意波形を表現する制御情報の構造の例は後の実施例で示す。
なお、発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、24Hzから50Hzの間になるように設定する。
<実施例1の変形例>
図16は、実施例1の変形例として、使用する入力スイッチの数を増した事例である。これは第1の発明要素と第2の発明要素に加えて、第3の発明要素の実現方法を記載する実施例であり、左右の電子シャッターに位相差をつける制御情報を取り扱うフローチャートである。図15(a)、図15(b)、図15(c)については実施例1の変形例においても適用され、図15(d)のフローチャートのみ図16に置き換える。
つまり、透過率制御情報170は、さらに右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140の透過率の波形の位相差を制御する情報を含む。
フローチャートの起動手順と終了手順は実施例1と同じであり、起動する際に選択するスイッチが2つであること、つまりスイッチS1とS2の状態(押せばON、押さなければOFF)を選択する必要がある点だけが異なる。
まず、スイッチS1とS2の2つの状態を選択しながら電源スイッチPSをONにするとフローチャートがSTARTから起動する。
次に、CPUは記憶装置(メモリー)MEMに記録した透過率制御情報170を読み取る(ステップS01)。さらに、電源スイッチPSをONした直後のスイッチS1とS2の操作状態を読み取り(ステップS02)、スイッチS1がONかどうか判定する(ステップS03)。
もしスイッチS1がONであれば、デューティ比20%の40Hzの矩形波を波形として選択する(ステップS04)。逆に、スイッチS1がOFFであれば、デューティ比80%の40Hzの矩形波を波形として選択する(ステップS05)。
さらに、スイッチS2がONかどうか判定する(ステップ06)。
もしスイッチS2がONであれば、選択済みの波形を左右の電子シャッターに対して逆位相で1サイクル(1周期に相当する時間)だけ出力する(ステップ07)。逆に、スイッチS2がOFFであれば、選択済みの波形を左右の電子シャッターに対して同位相で1サイクルだけ出力する(ステップ08)。
次に、ステップS03に戻って、この動作を繰り返す。
図16のフローチャートで説明した透過率制御情報170に収められた駆動条件や数値などは、わかりやすく説明するために簡略化した事例であり、この記載内容に限定されるものではない。例えば、入力スイッチS2の条件の組み合わせを逆位相、同位相などと設定するのではなく、入力スイッチの数を増して条件の組み合わせを複雑にしたり、あるいは位相差についても+5.3度、−10.4度などの詳細な数値を指定することもできる。
また、発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、24Hzから50Hzの間になるように設定することができる。
同様に、入力スイッチの数も2つに限定されず、透過率制御情報170に収められた駆動条件の選択肢の数に応じて増すように設計変更できる。
波形として最大値や最小値の2値に加えて中間値を出力する場合には、例えば、左右の電子シャッターに中間値を持つ任意の左右同一の波形を図16のステップS04とステップS05でそれぞれ個別に定義してもよい。具体的には、例えば、ステップS04では「最大値と最小値を指定した40Hzの正弦波の1サイクル相当の数値データ」を波形として選択し、ステップS05では「最大値と最小値を指定した40Hzの鋸状波の1サイクル相当の数値データ」を波形として選択する、などの方法で中間値を持つ波形を出力することができる。そして、ステップS07とステップS08で、それぞれの左右位相差の数値を定義して1サイクル分を出力すればよい。
<実施例2>
図17は、第1の発明要素、および第2の発明要素に加えて第4の発明要素を追加する実現方法を記載する実施例であり、透過率制御情報170そのものを全く新たなデータに入れ替える方法を説明する。
実施例2の電子閃光サングラスは、例えば、治験に協力してもらう関係者に電子閃光サングラスの動作原理や基礎的な使い方を紹介あるいはトレーニングする用途での利用が期待される。具体的には、電子閃光サングラスを用いる治療法について被治療者1や医療関係者への説明会や指導を行う際に、適切な治験用データを間違いなく設定していることの確認方法や電子サングラス本体10の使い方の基礎的な訓練に簡便に利用することができる。
もちろん、小規模な治験や予防や治療のために実施例2の器具を利用してもよい。
図17(a)は実施例2の構成図であり、第4の発明要素で説明した構成を持っている。すなわち、電子サングラス本体10は、記憶した情報の内容を手動操作によって交換可能な交換記憶装置190を備え、透過率制御装置150は、交換記憶装置190へ記憶指令197を送信して制御情報175を読み出し、読み出した制御情報175に含まれる透過率の繰り返し周波数と波形の情報を透過率制御情報170に設定する。
なお、「記憶した情報の内容を手動操作によって交換」するという表現を具体的に説明すると、例えばSD(登録商標)のような規格化されたメモリーカードを交換記憶装置190に手動操作で差し替えたり、USB(登録商標)のメモリースティックのような記憶媒体を交換記憶装置190に手動操作で抜き差ししてデータを移植したり、ipod(登録商標)に通信用の電線を接続して音声データを入れ替えるのと同様に、交換記憶装置190に手動操作で通信用の電線を接続してデータを入れ替えるなど、手動操作を伴う当業者に広く知られた多様な実現方法が包含されている。
図17(b)は、実施例2の制御情報175の内容を示す例であり、交換記憶装置190の中に4種類の治療メニューが電子ファイルとして収められている。図中の(A)欄は治療メニューのID番号であり、図中の1つのID番号に対応する行ごとに制御情報175や付加的な情報が記載されている。
(B)欄は付加的な情報で、治療メニューの名称922である。それ以降が制御情報175を示しており、(C)欄が繰り返し周波数、(D)欄は波形の種別、(E)欄は波形の特性、(F)欄が左右位相差を示す文字あるいは数値の情報が記載されている。
なお、中間値を持つ任意波形を用いる場合の制御情報175の設定方法の事例は、後の実施例3で簡単に紹介し、さらに実施例4で詳細に説明する。
図17(c)は、実施例2の電子サングラス本体10の全体像を示す。実施例2における電子サングラス本体10は、取り扱いの便宜上、電子シャッター部135だけを、既存のメガネに付加できるクリップオン方式の構造とした。残りの部分については1つの筐体に収めてコントローラ部900とし、電子シャッター部135と電線でつないで右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140を駆動する信号をコントローラ部900から送出する。
なお、コントローラ部900から電子シャッター部135へ信号を伝える際に、本実施例に記載した有線(電線)で信号伝送する代わりに、無線(赤外線などの光や、電波を用いた各種の通信方式、あるいは超音波などの音波)を用いて信号伝送するように変更することは、当業者であれば容易に思いつくことができる設計変更であって、この実施例の説明に含まれる。
例えば有線式のイヤホンを、Bluetooth(登録商標)などの送信機と受信機の組み合わせを利用する無線式の市販のイヤホンに置き換えて、イヤホンを駆動するためのステレオ音声信号を伝送するのと同じ着想である。
具体的には、コントローラ部900から電子シャッター部135へ信号を伝える際に、音声のアナログ信号に相当する周波数帯域の信号を無線で伝送すればよい。例えば、コントローラ900側では、4kHzの搬送波を振幅変調する機能を備えた変調装置を左右の駆動信号用として2台設け、「左右で独立した電子シャッターのための2つの駆動電圧」をそれぞれの変調装置ごとに入力させる。その出力としての左右独立の2チャンネルの音声信号をステレオ音声信号として合成する無線送信機を介して無線信号を送信する。さらに、電子シャッター部135には、前記送信した無線信号を受信して左右のステレオ音声信号に分離する受信機を備え、そのステレオ出力を、左右それぞれの信号ごとに設けた復調増幅器P400(図13の説明を参照)に入力し、左右の信号ごとの復調増幅器P400の出力波形を「左右の電子シャッターのための駆動電圧」として取り出す。この2つの駆動信号を用いて左右の電子シャッターを独立に駆動することができる。
もちろん、左右独立したステレオ信号ではなく、左右共通ないしは左右どちらか一方だけの「電子シャッターのための駆動電圧」をモノラルの駆動信号として上記の変調装置を通した後に無線で伝送し、無線を受信して取り出したモノラルの音声信号を入力させた復調増幅器P400の出力で、左右の電子シャッターを共通に駆動することもできる。
なお、Bluetooth(登録商標)など周知の技術を利用して、上記のステレオやモノラルの音声信号を送受信できる。同様に、変調装置と復調装置も上記に例示した内容に限定されるものではなく、上述した「有線式イヤホンを無線式イヤホンに置き換える」という着想にもとづいて、周知の技術を組み合わせて多様に設計変更できることは言うまでもない。
実施例2の図17(c)において、コントローラ部900には透過率制御装置150、交換記憶装置190、電源部160、表示装置(表示部)165、および入力スイッチ120としての押しボタンS1とS2、さらに電源部160の電源スイッチPSを含む。実施例2の交換記憶装置190はデータ媒体192としてSDカード(登録商標)を手動で交換できる構造とした。
この実施例2では、交換記憶装置190はSDカードの読み取り装置であり、透過率制御装置150から記憶指令197に相当する読み出し指令を送信すれば、制御情報175や付加的な情報を透過率制御装置150へ読み出す機能を持つ。
透過率制御装置150から入力スイッチ120としての押しボタンであるスイッチS1とS2、交換記憶装置190および表示装置(表示部)165との間の相互接続にはマイコン用の入出力ポートを使用する。なお、マイコンソフトの開発にArduino(登録商標)を適用する場合は、通信インターフェースとしてI2C(登録商標)を利用して通信系を構成することもできる。なお、交換記憶装置190でSDカードを使用する設計事例では、事実上の業界標準になっているSPI通信を使用するライブラリがArduinoに準備されており、容易に装置を実現することができる。
なお、図17(c)ではデータ媒体192を交換記憶装置190に挿入する前に治療メニューの名称922が表示装置165に描かれているが、これはあくまでも実施例2の装置構成を模式的に説明するための便宜上の作画にすぎない。実際の操作手順はフローチャートを用いながら説明する。
図18は、実施例2のフローチャートである。
操作手順としては、まず交換記憶装置190にSDカードのデータ媒体192を挿入する。そして、起動させたいID番号に該当する操作スイッチS1とS2を操作(押す=ON、離す=OFF)したまま、電源スイッチPSを投入すると図18のフローチャートがSTARTから起動する。
電源が起動すると、透過率制御装置150のCPUは、SDカードを収納した交換記憶装置190へ読み出し指令としての記憶指令197を送信し、SDカードに記憶された図17(b)のID番号、繰り返し周波数(図中では周波数と記載)、波形種別、波形特性、左右位相差からなる制御情報175を全て読み込んで、CPUのバスに接続されたメモリー上の透過率制御情報170へ、制御情報175を書き込む。(図18のステップS01)
また、CPUはSDカードを収納した交換記憶装置190にアクセスして、付加情報としてのID番号ごとの治療名称も読み込んで、透過率制御情報170へ付加情報として書き込む。(図18のステップS02)
さらに、操作スイッチS1とS2のON−OFF状態を読み込んで記憶する。(図18のステップS03)
次に、操作スイッチS1とS2のON−OFF状態に応じてID番号を決定し、選択したID番号に相当する治療名称922を透過率制御情報170に記録済みの付加情報から読み出して、表示装置165に表示する。(図18のステップS04)
ちなみに本実施例では、操作スイッチS1やS2の状態がONなら1、OFFなら0の値を代入した上で、ID=2×S2+S1という計算式でID番号を決定したが、あくまでも簡単に説明するための事例にすぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
選択したIDが例えばID=0の場合、図17(b)の(A)欄に記載したID番号がゼロの行に記載された制御情報175を適用する。すなわち、繰り返し周波数は40Hzの矩形波で、デューティ比80%、左右の位相差0度で1サイクル分(1周期分)を、透過率制御装置150から電子シャッター部135の右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140へ駆動信号を出力する。つまり、この図18におけるステップS05を実行したあと、ステップS04へ戻って繰り返す。
同様に図18に示すように、選択したIDがID=1ならばステップS06、ID=2ならばステップS07、ID=3ならばステップS08、をそれぞれ実行したあとステップS04へ戻って繰り返す。
ちなみに、図18のS04を通過して無制限にループしながら電子シャッターを駆動する状態になると、電子シャッター部135を透過する光がちらついて見える。このように電子シャッター部135にちらつきが見えたら起動終了であるから、起動時に操作していた操作スイッチS1とS2への操作を終了してよい。
なお、起動後に別のID番号の治療メニューに変更したければ、一旦、電源スイッチPSをOFFして、再び希望するID番号を選択しながら起動しなおせばよい。
また、図18のフローチャートを終了するには、電源スイッチPSをOFFすればよい。
発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、図17(b)の(C)欄の周波数の数値を、24Hzから50Hzの間になるように設定する。
<実施例3>
図19は、第1の発明要素、第2の発明要素、および第4の発明要素に加えて第5の発明要素を追加する実現方法を記載する実施例であり、聴覚刺激を追加することにより、特許文献1に記載された本格的な治験を行えるように治験範囲を拡大する実施例を説明する。
つまり、実施例3の電子閃光サングラスは、手動操作で書き換え可能な装置を使いながら、さらに多様で正確な治験のデータ採取のための治験環境を提供するものである。
具体的には、聴覚刺激を追加して治験の環境を多様化するとともに、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140と遮光板を含む電子シャッター部135を備えることにより外部の光が電子シャッターを通過せずに目に入り込むことを防止する。
遮光板を備えることにより周囲光の混入を抑制することで、目に入る光の平均照度A、最高照度C、中間照度Fおよび最低照度Gの間の相対的な値を正確に予測しやすいため、本発明における重要なパラメータとしての閃光比率Eと含有比Dの数値の正確さと再現性の高い治験を実施することができる利点がある。
なお、電子シャッター部135の構造は、周囲光の混入を精度よく防止できる遮光板さえ備えれば、例えば図4に示した多様な形状を採用してもよい。また、遮光板は着脱式であってもよい。
また、実施例3の電子閃光サングラスのもうひとつの利点は、特許文献1に記載された40Hz閃光療法に音声刺激を併用する治療法の治験を、効率よくデータを書き換えて実施できることである。
つまり、聴覚における可聴範囲の周波数特性で構成される音声刺激として、パルス音や矩形波や正弦波のほか任意の繰り返し波形だけでなく、40Hzを含む脳波を誘導するバイノーラルビート(Binaural Beat)やガンマ波を増強させる瞑想指導の音声、あるいは脳波の状態をリラックスさせるヒーリング音楽などのようなBGM(background music)を利用することができるよう、図19の有線式又は無線式のヘッドホンP300を用いて聴取できる。あるいは有線式又は無線式のイヤホンを用いてもよい。
図19(a)は、実施例3の構成図であり、第4の発明要素と第5の発明要素で紹介した構成を持っている。すなわち、第4の発明要素において、さらに、 前記電子サングラス本体10は音響増幅器210を備え、前記交換記憶装置190はさらに、聴覚における可聴範囲の周波数特性で構成されるデジタル音響信号として聴覚刺激情報215を記録しており、前記透過率制御装置150は、前記透過率制御情報170を選択する前記操作情報155にもとづいて、前記記憶指令197を前記交換記憶装置190へ送出して、前記交換記憶装置190から前記聴覚刺激情報215を読み出して前記音響増幅器210へ入力させ、前記音響増幅器210は、入力した前記聴覚刺激情報215をアナログ音響信号に変換するとともに増幅して外部音響信号端子220へ音響信号225を出力する。
なお第5の発明要素は、第4の発明要素の下位概念であるので、「交換記憶装置190は、記憶した情報の内容を手動操作によって交換」するという着想を継承する。すなわち、例えばSD(登録商標)のような規格化されたメモリーカードを交換記憶装置190に手動操作で差し替えたり、USB(登録商標)のメモリースティックのような記憶媒体を交換記憶装置190に手動操作で抜きさししてデータを移植したり、ipod(登録商標)に通信用の電線を接続して音声データを入れ替えるのと同様に、交換記憶装置190に手動操作で通信用の電線を接続して透過率制御情報170のデータを入れ替えるなど、手動操作を伴う当業者に広く知られた多様な実現方法が包含されている。
ただし、第4の発明要素の交換記憶装置190は制御情報175を蓄積するものであり、第5の発明要素の交換記憶装置190は聴覚刺激情報215を蓄積する機能が追加される。
したがって、交換記憶装置190は、制御情報175を蓄積する機能と、例えばMP3のような音声情報ファイルに聴覚刺激情報215を蓄積する機能の2つの機能を備える必要がある。
実際の機器設計上、上記の2つの機能を1つの交換記憶装置190で実現してもよいし、あるいはそれぞれの機能を制御情報用と音声情報用とで別々の装置で実現してもよいことはいうまでもない。また例えば、制御情報を交換するためには通信用の電線を接続して行い、音声情報を交換するためにUSBのメモリースティックを使用するなど、別々の手動操作を採用してもよい。
以下に述べる実施例3の説明においては、音声情報を扱う音楽用の交換記憶装置190Mと制御用の交換記憶装置190Dとを備え、この2つをまとめて交換記憶装置190と呼ぶ。実施例3でこの構造を採用したのは、あくまでもこの発明の説明を執筆している時点で、市販部品を用いて低コストに機器を実現するうえでの設計上の都合にすぎない。第4の発明要素にもとづいて第5の発明要素を実現するにあたり、当業者であれば、本発明の説明に基づいてこれ以外にも多様な設計変更が可能である。
音楽用MP3ファイルを再生するためには、この発明を記載している時点で低コストで市販されているMicroSD(登録商標)カードに対応するArduino用の電子部品DFPlayer mini(登録商標)を音楽用の交換記憶装置190Mとして使用することができる。この部品には、透過率制御装置150としてのArduinoのライブラリ関数で発生される読み出し指令としての記憶指令197にもとづいて聴覚刺激情報215を読み取ってアナログ信号に変換する音響増幅器210までが内蔵されている。
さらに、この部品が出力するアナログ信号としての音響信号225をコントローラ部900の外部音響信号端子220に接続すれば、ヘッドホンP300へ出力できる。このようにして、音楽用MP3ファイルは市販部品を用いて容易に再生することができる。
なおこの市販部品をArduino対応のマイコンと接続するには、ハードウエアは指定された端子どうしを接続すればよく、ソフトウエアはライブラリとサンプルコードが公開されているので、取扱説明書にもとづいて容易に装置全体を開発できる。
制御情報のファイルを読み込むためには、市販のマイクロSDカードスロットを制御用の交換記憶装置190Dとして使用できる。ハードウエアは取扱説明書の記載に従ってAruduinoマイコンの各端子に接続すればよい。ソフトウエアはライブラリとサンプルコードが公開されているので、取扱説明書にもとづいて容易に開発できる。
これにより、透過率制御装置150のソフトウエア開発システムとしてのArduinoのSDカード用のライブラリ関数で発生される読み出し指令としての記憶指令197にもとづいて、制御情報175を読み取ることができる。
図19(b)は実施例3の制御情報の例であり、交換記憶装置190Dの中に4種類の治療メニューが電子ファイルとして収められている例を示す。図中の(A)欄は治療メニューのID番号であり、図中の1つのID番号に対応する行ごとに制御情報175や付加的な情報が記載されている。
(B)欄は付加的な情報で、治療メニューの名称922。それ以降が制御情報175を示しており、(C)欄が繰り返し周波数、(D)欄は波形の種別、(E)欄は波形の特性、(F)欄が左右位相差、(G)欄が聴覚刺激の名称を示す文字あるいは数値の情報が記載されている。
なお、波形種別に「波形データ」と記載されている場合には、中間値を持つ任意の波形の時系列データが記録されていることを示し、その時系列データを収めたファイルの名称として、波形特性の欄に「Data#1」と記載されている。
任意の波形の時系列データの表現方法の一例は、後の実施例4で詳細に説明する。
図19(c)は実施例3の電子サングラス本体10の全体像を示す。実施例3における電子サングラス本体10は、治験の条件設定の正確さを確保する目的で、電子シャッター部135を分離して水泳用ゴーグルに似た形状の柔軟な黒色の遮光板を備えた構造とし、電子シャッターを通過せずに目に入る周囲光を遮断した。
電子サングラス本体10から電子シャッター部135を分離した残りを1つの筐体に収めてコントローラ部900とし、電子シャッター部135と電線でつないで、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140を駆動する信号をコントローラ部900から送出する。
なお、コントローラ部900から電子シャッター部135へ信号を伝える際に、本実施例に記載した有線(電線)で信号伝送する代わりに、無線(赤外線などの光や、電波を用いた各種の通信方式、あるいは超音波などの音波)を用いて信号伝送するように変更することは、当業者であれば容易に思いつくことができる設計変更であって、この実施例の説明に含まれる。例えば有線式のイヤホンを、無線式の市販のイヤホンに置き換えるのと同じ着想である。詳細な実現方法は実施例2で説明したので、重複説明は省略する。
この実施例では音楽用のデータ媒体192Mも、制御用のデータ媒体192DもどちらもマイクロSDカードを使用している。治験時に誤ってこの2つのマイクロSDカードを逆に差し込まないように、カードのラベルを色分けするか大きな文字で記号などを表示しておくことが望ましい。
コントローラ部900には、透過率制御装置150、交換記憶装置190、電源部160、表示装置165、および入力スイッチ120を含む。なお実施例3の交換記憶装置190は音楽用の交換記憶装置190Mと制御用の交換記憶装置190Dから構成される。
透過率制御装置150をArduinoマイコンで構成する場合には、入力スイッチ120やSDカードを使用する交換記憶装置190との接続は実施例2で説明した公知の技術を利用できる。電源スイッチPSは電源部160に接続する。
治験を行う際の手違いを予防するため、表示装置165には治療メニューの名称922と波形特性の名称だけでなく、被治療者1の氏名と個人ID921もデータ媒体192に記録しておき、電子サングラス本体10を使用するときには表示することが望ましい。
なお、図19(c)ではデータ媒体192を交換記憶装置190に挿入する前に治療メニューの名称922などが表示装置165に描かれているが、これはあくまでも実施例の装置構成を模式的に説明するための便宜上の作画である。実際の操作手順はフローチャートを用いながら説明する。
図20は、実施例3のフローチャートである。操作手順としては、まず交換記憶装置190Mと190Dにデータ媒体192Mと192Dを挿入する。そして、起動させたいID番号に該当する操作スイッチS1とS2を操作(押す=ON、離す=OFF)したまま、電源スイッチPSを投入すると図20のフローチャートがSTARTから起動する。
電源が起動すると、透過率制御装置150のCPUは、制御用の交換記憶装置190Dへ読み出し指令としての記憶指令197を送信し、図19(b)のID番号、繰り返し周波数、波形の種別、波形の特性、左右位相差、聴覚刺激の名称からなる制御情報175を読み込んで、CPUのバスに接続されたメモリー上の透過率制御情報170へ、制御情報175を書き込む。(図20のステップS01)
なお、治験の手違いを予防するためには、被治療者1の氏名と個人ID921も付加情報としてデータ媒体192Dに記録しておき、上記と同様に読み込んで透過率制御情報170へ付加情報として書き込むことが望ましい。
そこで、透過率制御装置150のCPUは交換記憶装置190Dにアクセスして、被治療者の氏名と個人ID921を読んで表示装置165に表示することに加えて、付加情報としてのID番号ごとの治療名称を読み込んで、透過率制御情報170へ付加情報として書き込む。(図20のステップS02)
さらに、操作スイッチS1とS2のON−OFF状態をCPUが読み込む。(図20のステップS03)
すると、操作スイッチS1とS2のON−OFF状態に応じてID番号を決定し、選択したID番号に相当する治療名称(治療メニューの名称)922を透過率制御情報170に記録済みの付加情報から読み出して、表示装置165に表示する。(図20のステップS04)
ちなみに本実施例でも、操作スイッチS1とS2の状態がONなら1、OFFなら0の値を代入した上で、ID=2×S2+S1という演算式を用いてID番号を決定するが、これはあくまでも簡単に説明するための事例にすぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
次に、選択したID番号にもとづいて、透過率制御情報170に読み込まれた図19(b)の(G)欄に記載された聴覚刺激名称を読み出す。そして、音楽用の交換記憶装置190Mへ読み出し指令としての記憶指令197を送信し、聴覚刺激名称に該当する聴覚刺激情報215を読み出して音響増幅器210から音響信号225の出力を開始する。(図20のステップS05)
なお、音響増幅器210はアナログの音響信号225を外部音響信号端子220に出力するので、有線又は無線で接続されたヘッドホンP300やイヤホンから、聴覚刺激としてのオーディオ音声が出力される。
以上により、選択したID番号の治療メニューを開始したので、あとはID番号に応じた駆動条件で電子シャッター部135の駆動を、繰り返し周波数の1サイクル(1周期)だけ出力する動作を繰り返す。(図20のステップS06)
なお、本実施例の設計を拡張する可能性を示唆するとすれば、例えば、制御情報175に項目を追加して、それぞれのID番号ごとに個別に継続予定時間を指定して、所定時間だけ継続したら図20のフローチャートの実行を終了し、聴覚刺激の音響信号225の出力を停止するとともに、電子シャッター部135を駆動する信号を停止してもよい。
さらに、治療メニューの継続予定時間や、治療メニュー開始後の継続時間の残り時間を表示装置165に表示するように設計変更することもできる。
また、図19の構成では音響信号225の音量調整はヘッドホンP300やイヤホン側に付属する操作器具で行う必要があるが、音響増幅器220に出力音量を増加あるいは減少させる音量調整機能が内蔵されているDFPlayer miniのような市販部品などを使う場合には、音量調整ボタンをコントローラ部900に付加することも容易である。
ちなみに、起動時に操作スイッチS1とS2を操作してID番号を選択していたが、電子シャッター部135がちらつき始めたら起動完了しているので、操作スイッチS1とS2の操作を終了してよい。
なお、起動後に別のID番号の治療メニューに変更したければ、一旦、電源スイッチPSをOFFして、再び希望するID番号を選択しながら起動しなおせばよい。
また、図20のフローチャートを強制的に終了するには、電源スイッチPSをOFFすればよい。
また、発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、図19(b)の(C)欄の周波数の数値を24Hzから50Hzの間になるように設定する。
<実施例4(best mode)>
実施例4は、米国特許法におけるベストモード(best mode)であって、発明者の主観において最良の実施例を、当業者が実施できるように開示するものである。
この実施例4は、あくまでも発明者の主観としてのベストモードであって、治験を終了して臨床治療が普及した時点における大きな生産規模において低コストで高品質な治療を実施できる点に着眼して主観的にこれを選択した。
ちなみに、前述の実施例1では発明の基本的な技術思想を開示し、実施例2と実施例3は医療機関などの治験の用途を念頭において、小さな生産規模において低コストで高品質な治験ができることに着眼した実施例の構成を開示した。
したがって、治験段階での有用性にのみ着眼して主観的に評価するとすれば、実施例4に記載するベストモードに比べて「より良い実施例」を既に開示済みであることを意味する。
ここに開示する事例は、本発明の内容の理解を容易にする目的において、設計事例の記述が具体的すぎて限定的に感じる箇所があるかもしれないが、これらはあくまでも本発明の一つの設計例にすぎない。したがって、ここにベストモードとして開示した設計事例を、あるいは示唆した着想を、当業者であれば代替可能な実現手段に置き換えて実施しうる設計変更も、本発明において創作して開示した技術思想に含まれる。
図21は、第1の発明要素と第2の発明要素、さらに第6の発明要素も加えた実現方法を記載する実施例であり、本格的な普及期における医療機関による処方として、検査と診察の後に、治療用の制御情報175を被治療者1が使用する電子サングラス本体10に書き込んで処方する実施例を説明する。
なお、特許文献1に記載された40Hz療法では視覚刺激と聴覚刺激を併用することが提唱されており、前述の治験用の実施例3でも視覚刺激と聴覚刺激を併用して治験を行う実施の形態を記載した。
一方、この実施例4は、本格的な普及期における医療機関による臨床処方を念頭においた用途であって、聴覚刺激については個々の被治療者1が各自の嗜好に合った音楽再生装置を個人の自由意志で選択して使用できることを尊重する。
したがって、この実施例4は、発明の第4要素に付加した発明の第5要素に相当する音楽再生機能を電子サングラス本体10に付加しないことで、電子サングラス本体10の生産コストを削減した事例を以下で記載する。
もちろん、実施例3に発明の技術思想を開示した音楽再生機能を、電子サングラス本体10から除外することなく実施例4の発明の技術思想と組み合わせて拡張して適用することは、当業者ならば容易に行える設計の追加であることを示唆しておく。
電子サングラス本体10の外観は、図4に記載した各種の形状に加え、電子シャッターを通過せずに目に飛び込む周囲光を遮断する遮光板を固定式あるいは着脱可能な形態で付加した構造であることが、処方した医療機関の意図通りの治療効果を生じる目的からは、望ましい。
図21(a)は実施例4の構成図であり、第1の発明要素と第2の発明要素に加えて第6の発明要素で説明した構成を持っている。
システム全体としての電子閃光サングラス30は、透過率制御情報170を書き換え可能な透過率制御装置150と電子シャッター部135とを一体化して構成した電子サングラス本体10に加えて、透過率制御情報170を書き換える遠隔操作情報185を送信するリモコン装置20を含んで構成される。
さらに特徴を述べれば、システム全体としての前記電子閃光サングラス30は前記電子サングラス本体10とリモコン装置20を備え、前記リモコン装置20は、前記入力スイッチ120からも手動操作で指定しうる信号を含んだ前記操作情報155、または透過率制御情報170へ設定する透過率の繰り返し周波数と波形の情報を含んだ前記制御情報175を、遠隔操作情報185として送信し、 前記電子サングラス本体10は前記リモコン装置20が送信した前記遠隔操作情報185を受信するリモコン受信部180と入力スイッチ部125を備え、前記入力スイッチ部125は、前記リモコン受信部180からの指令により自動開閉する遠隔リレー接点127と、手動操作する前記入力スイッチ120とから構成し、前記リモコン受信部180が受信した前記遠隔操作情報185の内容が前記操作情報155であれば、前記遠隔リレー接点127を自動開閉することにより前記操作情報155を前記透過率制御装置150へ入力し、もしくは前記リモコン受信部180が受信した前記遠隔操作情報185の内容が前記制御情報175であれば、前記透過率制御装置150へ前記制御情報175を入力する。
なお上記に記載した「前記入力スイッチ120からも手動操作で指定しうる信号を含んだ前記操作情報155」とは、リモコン装置20から送信する操作情報155には、リモコン装置20のみから送信できる「遠隔操作の開始と終了を操作する信号」も含まれていることに対応する。具体的には、図21や図23のリレーR3がこれに該当する。
また、リモコン受信部180が制御情報175を受信した場合には通信によって透過率制御装置150へ伝達され、リモコン受信部180が操作情報155を受信した場合には接点信号によって透過率制御装置150へ伝達されるが、詳しくはフローチャートで説明する。
図21(b)は、実施例4の制御情報の例であり、リモコン装置20の中に4種類の治療メニューのデータが電子ファイルとして収められている。図中の(A)欄は治療メニューのID番号であり、図中の1つのID番号に対応する行ごとに制御情報175や付加的な情報が記載されている。
(B)欄は付加的な情報で、治療メニューの名称922。それ以降が制御情報175を示しており、(C)欄が繰り返し周波数、(D)欄は波形の種別、(E)欄は波形の特性、(F)欄が左右位相差を示す文字あるいは数値の情報が記載されている。
なお、波形として中間値を含む任意の時系列波形を表現する方法の一例は、図25の制御情報175として任意データを転送する事例を用いて詳細に説明する。
さらに、(C)欄に記載する発生させる閃光の繰り返し周波数を24Hzから50Hzの間になるように設定することは、他の実施例と同様である。
図21(c)は、実施例4の遮光板つきの電子サングラス本体10とリモコン装置20からなる電子閃光サングラス30のシステムの全体像を示す。なお図21(a)に記載したように、電子サングラス本体10には、電子シャッター部135、透過率制御装置150、入力スイッチ部125、リモコン受信部180および電源部160を収納しており、さらに入力スイッチ120は手動操作できる構造である。
リモコン装置20は透過率制御情報170を書き換える制御情報175を遠隔操作情報185として送信する機能を有するものであり、その実現手段はパソコンやスマートフォンあるいはノートパッドや専用のコンピュータ内蔵機器のほか、テレビやエアコンの付属品のような片手で持てる小型のCPU内蔵の遠隔操作器具であってもよく、多様な代替手段による設計変更が可能である。
図21(d)は、実施例4の入力スイッチ部125の構成を説明する。スイッチS1とS2は入力スイッチ120を構成する。
また、a接点(リレーを励磁すると接点が接続され、リレーを消磁すると接点は遮断される)としてのリレー接点R1とR2と、b接点(リレーを励磁すると接点が遮断され、リレーを消磁すると接点は接続される)としてのリレー接点R3と、の3つのリレーR1,R2,R3によって遠隔リレー接点127を構成する。
この実施例では、スイッチS1とリレーR1は並列接続され、スイッチS2とリレーR2も並列接続される。もちろん各スイッチおよび各リレーと入力装置INPのデジタル入力回路の対応関係を、1接点ごとに1接点入力を割り当てるように設計変更できることはいうまでもない。
また、スイッチS1とS2は手動操作でON−OFFされ、リレーR1、R2、R3はリモコン受信部180からの指令により励磁されて自動開閉する。
入力スイッチ部125のスイッチS1、S2とリレーR1、R2、R3で発生した接点のON−OFF情報は操作情報155として入力装置INPで検出され、透過率制御装置150に相当する制御装置CNTの演算装置CPUに入力される。
これにより、入力スイッチ部125は、入力スイッチ120からの手動操作でもリモコン装置20からの遠隔操作でもどちらからでも操作情報155を発生させることができる。
図22は、実施例4の透過率制御情報170に書き込んだ制御情報175の検査方法を説明する図である。つまり、リモコン装置20から電子サングラス本体10へ制御情報175を書き込むだけでなく、制御情報175が正確に書き込まれたかどうかをリモコン装置20からの遠隔操作で検査する機能を説明する。
具体的には、電子サングラス本体10の入力スイッチ120を手動操作せずに(具体的にはS1とS2はOFFの状態で)電源スイッチを投入した後、操作情報155を含んだ遠隔操作情報185を、リモコン装置20から電子サングラス本体10へ送信する。すると、電子サングラス本体10はリモコン装置20が指令した治療メニューのID番号にもとづいて、そのID番号に対応した透過率制御情報170に書き込まれた駆動条件で電子シャッターの透過率を制御し、電子シャッターがちらついて閃光Hを発生させる。
図22に示すように、連続的に点灯するLED光源と左右の受光センサを用いて電子シャッターを透過する光の照度の変化を検出すれば、左右の電子シャッターの透過率の時間的変化の波形を検査装置40のディスプレイに表示することができる。リモコン装置20からID番号をひとつひとつ指定しながら、透過率制御情報170が正常に書き換え終わったかどうか、検査装置40のディスプレイの波形を見ながら目視検査を行うことができる。
なお図22の図中にも記載したとおり、LEDと受光センサに接続された検査装置40によって電子シャッターを透過する光の照度を計測する際に、検査装置40とリモコン装置20とを信号ケーブル(あるいは光通信やWIFIなどの各種の無線通信)を介して検査データをリモコン装置20へ送信することが可能である。
したがって、検査装置40やリモコン装置20に診断用ソフトウエアを準備すれば、透過率制御情報170が正常に書き換え終わったかどうか自動検査できる。
さらにリモコン装置20が送信した遠隔操作情報185と比較して、電子サングラス本体10の電子シャッターが発生する閃光の繰り返し周波数や波形や左右位相差などが精度よく動作しているかどうか、あるいは電子サングラス本体10が故障していないかどうかを自動診断することもできる。
この機能は医療機関の処方箋が適切に反映されたかどうかを医療機関自身が確認するうえで有用である。
本発明の利用性を向上させるために開示したこれらの着想の詳細な実現方法は、当業者であれば、周知の技術情報を利用しながら設計しうる旨も示唆しておく。
以下、実施例4のフローチャートを順次説明する。この実施例4には3つのコンピュータ機能を含んでおり、相互に通信して動作する。具体的にはリモコン装置20、リモコン受信部180および透過率制御装置150の3つの間で、透過率制御情報170の書き換えに関連して通信を行いながら連携動作する。
そこで、3つのコンピュータ機能の連係動作を含む動作フローを説明する前に、それぞれ個別のフローチャートと、リモコン装置20とリモコン受信部180の間の通信を実現する例を詳細に説明する。
なおリモコン装置20を使って電子サングラス本体10の透過率制御情報170の情報の書き換えを行った後、以下で説明する通信仕様を参考にすれば、当業者であれば情報の書き換え結果を自動検査あるいは自動診断する機能まで設計するのは容易である。
しかし、自動検査や自動診断の設計の詳細を開示するためには、本発明における6つの発明要素を超えた複雑な通信を含むフローチャートの説明が必要になるので、ここでは着想を開示するにとどめ、その具体的な設計例の説明は省略する。
それゆえに、以下の説明では、内容の理解を容易にするために、実施例4における電子サングラス本体10の単体での動作を説明した上で、電子サングラス本体10の透過率制御情報170の情報の書き換えと目視検査のための遠隔操作の動作の2つだけに限定して、できるかぎり簡素化して説明する。
図23は、実施例4の透過率制御装置150のフローチャートである。基本的には実施例1や実施例2のフローチャートと同じように、入力スイッチ120の操作スイッチS1とS2を用いてID番号を選択しながら電源スイッチを投入すれば、STARTから起動する。
なお、電子サングラス本体10の機能を停止させるには、電源スイッチをOFFすればよいことも、実施例1や実施例2と同じ操作手順である。
さらに、ID番号を変更するには、電源を一旦OFFしてから、ID番号を選択しながら起動しなおせばよいことも同様である。
図23のフローチャートが実施例1や実施例2のフローチャートと比べて複雑に見えるのは、1つはリモコン受信部180から遠隔リレー接点127を操作する操作情報155が届いていないかどうか確認し、遠隔操作されるリレーR1,R2およびR3に遮断又は接続の状態を反映する(図23のステップP01およびP02)動作を別処理で実行しているためである。
正確には、このステップP01の処理はリモコン受信部180側で並列に処理される別処理であるので、図23のステップP01のタイミングだけに限って処理されるわけではないが、次のステップS01の処理に先立って実行される必要がある場合もあるため、参考までこの位置に記載した。もしステップP01の処理がタイミング的に未処理であれば、起動時においては、b接点で構成されるリレーR3は接続したままの初期状態を維持する。
このフローチャートがSTARTから起動した後に、透過率制御装置150が最初に実行するのは、リレーR3の状態を確認するステップ(図23のステップS01)である。
b接点で構成されるリレーR3が接続状態であれば、手動操作される操作スイッチS1とS2を読み(図23のステップS02)、さらに進んで、S1とS2の状態に応じてIDを選択する(図23のステップS03)。図23のステップS03の処理は、本実施例では、操作スイッチS1とS2の状態がONなら1、OFFなら0の値を代入し、ID=2×S2+S1でID番号を決定するが、あくまでも簡単に説明するための事例にすぎず、本発明がこの計算式に限定されるものではない。
なお、この実施例4では、ステップS03でIDを選択した段階で、透過率制御情報170からID番号に該当する制御情報175を読み出し、これをID番号に応じた駆動条件とする。
次に、ID番号に応じた駆動条件で電子シャッター部135の駆動を繰り返し周波数の1サイクル(1周期)だけ出力する(図23のステップS04)。
次のステップP02も、リモコン受信部180側で並列に処理される別処理を参考まで記載したにすぎない。もしこの時点でリレーR3が接続状態のままであればS04へ戻り、遠隔操作が指令されてリレーR3が遮断状態になっていればP01へ戻る。(図23のステップS05)
上記に続いて、ステップP01へ戻った場合には、すでに遠隔操作が指令されてリレーR3が遮断状態になっている。そこで、図23のステップS01でもR3が遮断状態なのでステップS06へ進み、リモコン受信部180から透過率制御装置150への通信による制御情報175の転送を受信し、透過率制御情報170に書き込む。
なお、ステップS06でリモコン受信部180から透過率制御装置150へ転送するべき未転送の制御情報175が残っていない場合には、何もせずにステップS06を終了する。
ステップS06の処理を終えたらステップP01に戻り、もしリモコン受信部180側から遠隔操作を終了する指令が届かずにリレーR3が遮断状態を継続しているなら、再びステップS06に進む。
このように、リレーR3が遮断状態のときには、図23のステップS01とステップS06を通ってループし続けて、遠隔操作で制御情報175を書き込むことができるので、これを「遠隔操作のループ」と呼ぶ。
一方、リレーR3が接続状態のときには、図23のステップS04とステップS05を通ってループし続けて、左右の電子シャッターが指定した駆動条件でちらつくので、これを「閃光発生のループ」と呼ぶ。
「遠隔操作のループ」を回っているときに、もしリモコン受信部180側から遠隔操作を終了する指令が届いてリレーR3が接続状態に変われば(ステップP01)、図23のステップS01で「遠隔操作のループ」を脱出して図23のステップS02へと進み、さらには「閃光発生のループ」へと進む。
そして、「閃光発生のループ」を回っているときに、もしリモコン受信部180側から遠隔操作を開始する指令が届いてリレーR3が遮断状態に変われば(ステップP02)、図23のステップS05で「閃光発生のループ」を脱出して図23のステップS01へと進み、さらには「遠隔操作のループ」へと進む。
以上が、電子サングラス本体10の内部にある透過率制御装置150の動作において、治療時の閃光を発生する「閃光発生のループ」のみならず、透過率制御情報170を書き換える制御情報175を遠隔操作で読み込む「遠隔操作のループ」を実行することが可能なフローチャートである。
図24は、実施例4でリモコン装置20からリモコン受信部180へ遠隔操作情報185を送信する通信として、UDP(User Datagram Protocol)を使うOSC(OpenSound Control)で実施する方法について詳細に説明する。
リモコン装置20からリモコン受信部180への通信媒体としては、WIFI(登録商標)やBluetooth(登録商標)のような電波を利用した無線や、USB(登録商標)を介した有線通信、あるいは赤外線による光通信などの多様な公知の技術を適用することができる。
図24(a)は、実施例4で使用するOSC通信の内容の一覧表である。リモコン装置から送信するデータ項目は4種類のOSCパスによって区分され、送信されるOSCパスごとに送信するデータとその数値範囲や単位などを予め定めておく。
例えば、任意波形の時系列データを送信するOSCパス/fes/wave_dataでは、右目の透過率(R_data)と左目の透過率(L_data)が、透過率0.0%から100.0%まで0.1%刻みで、2値以上を含みうる任意の時系列波形を設定しうる構造を備えている旨が記載されている。
図24(b)は、リモコン装置20から上記の4種類のOSCパスを送信し、リモコン受信部180の動作モードを切り替えてデータの処理を行わせるフローの概要を説明する。
動作モードを大別すると、矩形波の波形データを書き込むモード(図24(b)のステップS1)と、任意の波形を書き込むモード(図24(b)のステップS2)と、入力スイッチ部125を遠隔操作するモード(図24(b)のステップS3)の3種類がある。
リモコン受信部180は電源が投入されてSTARTから起動した後は、ループを回りながら、リモコン装置20から送信されてくる遠隔操作情報185のOSCパスの情報を監視している。上記3種類のモードの実行を指示するOSCパスを受信したら、受信したデータを読み取って所定の処理を実施する。
図24(b)のステップS1では、OSCパスの/fes/squareの該当の有無を確認し、もし該当していなければステップS2へ進む。もし該当していれば矩形波の波形データを書き込むモードと判断し、ID番号(ID)、繰り返し周波数(Freq)、デューティ比(duty)、および左右の位相差のデータ(Phase)を読み取るなどの処理(ステップS11)を行った後にこのモードを終了する。
図24(b)のステップS2では、OSCパスの/fes/wave_formの該当の有無を確認し、もし該当していなければステップS3へ進む。もし該当していれば任意の波形を書き込むモードのヘッダ情報と判断し、ID番号(ID)と繰り返し周波数(Freq)を処理する(ステップS21)。
図24(b)のステップS21を終了すると、OSCパスの/fes/wave_dataの該当の有無を確認し、該当がなければステップS22へ戻ってループし、該当があれば任意の波形のデータを受信したものと判断し(ステップS22)、次へ進んで送信完了のフラグ(eof)、当該データの時刻(time)、右目の透過率(R_data)、左目の透過率のデータ(L_data)を読み込む処理をする(ステップS23)。
次のステップS24では、送信完了のフラグ(eof)を確認し、送信完了(eof=1)に該当していなければステップS22へ戻る。あるいは、送信完了(eof=1)に該当していれば、このモードを終了する。
図24(b)のステップS3では、OSCパスの/fes/swの該当の有無を確認し、該当がなければステップS1に戻り、該当があれば入力スイッチ部125を遠隔操作するモードと判断し、スイッチ番号(SW_No)と接続・遮断の状態のデータ(ON−OFF)を読み込む処理を行い(ステップS31)、このモードを終了する。
この図24では、リモコン装置20からリモコン受信部180へ遠隔操作情報185を送信する通信にOSCを利用する方法について一般的な事項を説明した。
リモコン装置20およびリモコン受信部180における個別の処理フローについては、後に詳細に説明する。
図25は、任意の波形を書き込むモード(図24(b)のステップS2)で使用する任意波形の送信データの一例を示す。
具体的には、OSCパスの/fes/wave_dataを用いて、図25(b)の任意波形のデータを送信する事例を説明する。
図25(a)は、「データに変化があるか、もしくは確認する必要がある場合のみ更新データを送る」という原則にもとづいて任意波形の送信データを記述した数表の例である。
OSCパスの/fes/wave_dataでは、図24(a)のOSC通信の内容の一覧表にもとづいて、送信完了のフラグ(eof)、当該データの時刻(0.01ミリ秒単位で記述)、右目の透過率(0.1%単位で記述)および左目の透過率(0.1%単位で記述)を送信する。
これは、透過率制御情報170に納められて透過率を制御する目標値としての任意の時系列の波形のデータが、所定のサンプリング時刻ごとに、2値よりも多くの数値をとりうる構造を備えていることを示すものである。
図25(a)の1行目は、OSCパスの/fes/wave_dataとして最初に送信するデータであり、送信完了のフラグeof=0、当該データの時刻(time)は0.00ミリ秒、右目の透過率(R_data)は90.0%、左目の透過率(L_data)は0.0%である。
図25(a)の2行目は、OSCパスの/fes/wave_dataとして2番目に送信するデータであり、送信完了のフラグeof=0、当該データの時刻は12.49ミリ秒、右目の透過率は90.0%、左目の透過率は0.0%である。
これは、時刻以外は1行目と同じ内容のデータであるが、この次の行のデータに変化がある場合に、まだこの行では変化がないことを示すため、確認のために送信する。つまり、1行目の時刻0.00ミリ秒から2行目の12.49ミリ秒まで、時刻以外は同じ内容のデータが続くので、この間のデータ送信を省略したものである。
このようなデータ形式の構造とすることで、このデータをグラフ表示すれば、この任意波形の1周期分を簡単に描画して目視確認することができる。
図25(a)の3行目は、OSCパスの/fes/wave_dataとして3番目に送信するデータであり、送信完了のフラグeof=0、当該データの時刻は12.50ミリ秒、右目の透過率は0.0%、左目の透過率は90.0%である。これは、データに変化があるので、時刻12.50ミリ秒におけるデータを送信する。
図25(a)の4行目は、OSCパスの/fes/wave_dataとして4番目に送信するデータであり、送信完了のフラグeof=0、当該データの時刻は24.99ミリ秒、右目の透過率は0.0%、左目の透過率は90.0%である。
これは、時刻以外は3行目と同じ内容のデータであり、確認のために送信する。つまり、3行目の時刻12.50ミリ秒から4行目の24.99ミリ秒まで、時刻以外は同じ内容のデータが続くので、この間のデータ送信を省略したものである。
図25(a)の5行目は、OSCパスの/fes/wave_dataとして5番目に送信するデータであり、送信完了のフラグeof=1である。これは、データ送信を完了したので、図24(b)のステップS24で、任意波形の書き込みモードを終了する旨を指令するものである。
なお、図24(b)で説明したように、OSCパスの/fes/wave_dataを用いて任意波形のデータを送信するに先立ち、OSCパスの/fes/wave_formを用いて任意の波形を書き込むモードを開始する旨の情報を送ってある。
この情報として、繰り返し周波数(Freq)として40.0Hzを送信すれば、この波形の周期が25.00秒であることが判明する。そこで、図25の4行目の当該時刻24.99ミリ秒の次の0.01秒後に該当する当該時刻25.00ミリ秒のデータとして、1行目の当該時刻0.00ミリ秒のデータを使えることを明示的に示すことができる。
なお、図25で例題として使って説明した波形データは、OSCパスの/fes/squareで矩形波の波形データを書き込むモードを使って送信することも可能である。
しかし、ここではあくまでも、OSCパスの/fes/wave_dataを用いて任意波形のデータを送信する方法をわかりやすく説明するための事例として用いたにすぎない。
したがって、任意の波形を送信する場合には、最大値と最小値の2値しかとらない矩形波だけでなく、最大値と最小値と中間値の3値をとる階段状の波形も表現できるのみならず、正弦波や鋸歯状波などを階段状に近似した多数の中間値を持つ任意の波形も、電子シャッターの透過率を制御するための目標値として利用することができる。
このようにして、繰り返し周波数が24Hzから50Hzで、サンプリング間隔が0.01秒の任意の波形を、図25で説明した形式のデータとしてOSC通信で送信することができる。
ちなみに、このようにしてリモコン装置20から送信された波形データは、リモコン受信部180を介して制御情報175として透過率制御装置150に伝達され、透過率制御情報170として書き込まれ、電子シャッター部135を駆動するための目標値の波形として利用される。
図26は、リモコン装置20を操作する手順のフローチャートの一例である。以下では説明を簡単にするため、全てのIDに関する制御情報175を一括して送信する処理と、送信結果を一括して確認する処理の操作事例を説明する。
しかしながら本発明はこの操作事例に限定されるものではなく、図24のOSCパスによるモードの切り替えの説明にもとづいて、個々のIDに該当する制御情報175を選択的して送信し、あるいは確認する手順を組み合わせてリモコン装置20を操作しても構わない。
図26(a)は、リモコン装置20を操作するフローチャートの一例を模式的に描いたものである。起動するとSTARTから始まり、次に遠隔操作モードの開始を指令(ステップS01)した事例を描いている。具体的には、図24のOSC通信の手順に示したOSCパスの/fes/swを発行し、その際にSW_No=3、ON−OFF=0(つまり遮断)を設定することで、図21(d)に記載したリレーR3を遮断に設定する。これは、図23のステップS01およびステップS05の分岐において、S06の制御情報175を読み込む動作を実施させるものである。
次に、図26(a)のR01のルーチンで制御情報175を全てのID番号について一括して送信する事例を描いている。このR01のルーチンの内容は後に詳細に説明する。
次に、図26(a)のステップS02では遠隔操作モードの終了を指令する。具体的には、図24のOSC通信の手順に示したOSCパスの/fes/swを発行し、その際にSW_No=3、ON−OFF=1(つまり接続)を設定することで、図21(d)に記載したリレーR3を接続に設定する。これは、図23のステップS01およびステップS05の分岐において、制御情報175を読み込む動作を実施することなく図23のステップS04を繰り返して電子シャッター部135の駆動を行う動作を実施させるものである。
次に、図26(a)のR02のルーチンで制御情報175を全てのID番号について一括して送信結果を確認する。このR02のルーチンの内容も後に詳細に説明する。
図26(b)は、制御情報175を送信するルーチンR01を詳細に説明するものである。まずステップS11で、図24(a)のOSC通信の内容に記載したIDの最大値の3をID_maxに代入する。
次にステップS12でID=0として、ステップS13でIDが最大値ID_maxを超えたかどうか判断する。 もしIDが最大値ID_maxを超えていれば、RETURNから図26(a)のフローへ戻る。
もしIDが最大値ID_maxを超えていなければ、次のステップS14へ進む。
次のステップS14では、指定されたID番号の制御情報175が矩形波か任意の波形かを判定する。具体的には、図21(b)の制御情報(例)の(D)欄において、矩形波と記載されていれば矩形波の波形であるからステップS18へ進み、波形データと記載されていれば任意の波形であるからステップS15へ進む。
次のステップS15では、任意波形のヘッダを送信する。具体的には、図24(b)のステップS2の任意波形書き込みモードで説明したように、OSCパスとして/fes/wave_formを発行するにあたり、図21(a)の制御情報(例)の(A)欄のID番号(ID)と、(C)欄の周波数(Freq)を記載して送信する。
次のステップS16では、任意波形のデータを送信する。具体的には、図24(b)のステップ22のOSCパスとして/fes/weve_dataを発行するにあたり、図25(a)の任意波形の送信データの例に記載した、送信完了のフラグ(eof)、当該データの時刻(time)、右目の透過率(R_data)、左目の透過率(L_data)を、未送信の行番号のうちで最も若い行番号に該当するデータを記載して送信する。
なお、図21(b)の制御情報(例)の(E)欄の波形特性の項目に、例えば「Data#1」などとして図25(a)の任意波形の送信データを記録したファイルの名称を記載しておくことで、送信すべきデータが記されたファイルを指定することができる。
次のステップS17では、任意波形のデータの送信を完了したかどうか確認する。具体的には直前のステップS16で送信した送信完了のフラグ(eof)の値が、図24(a)に記載したようにeof=0であれば送信が継続中で未完なのでステップS16へ戻る。
また、この送信完了のフラグ(eof)の値がeof=1であれば送信を完了しているので、次のステップS19へ進む。
もしステップS14で矩形波が選択されていた場合には、ステップS18へ進んで矩形波のデータを送信する。具体的には、図24(b)のステップS1の矩形波書き込みモードで説明したように、図24(a)に記載したOSC通信の内容の一覧表のうち、矩形波データに該当する/fes/squareを発行するにあたり、図21(b)の制御情報(例)の(A)欄のID番号(ID)、(C)欄の周波数(Freq)、(E)欄の波形特性としてのデューティ比(duty)および(F)欄の左右位相差(Phase)を記載して送信し、次のステップS19へ進む。
次のステップS19では、ステップS14で矩形波であろうと任意の波形であろうと、1つのID番号に該当するデータの送信が終わっているので、IDの値を1だけ増やして、ステップS13へ戻る。 以上で図26(b)の説明を終わる。
次の図26(c)は、図26(a)における送信結果を確認するルーチンR02を詳細に説明するものである。まずステップS21で、図24(a)のOSC通信の内容に記載したIDの最大値の3を、ID_maxに代入する。
次に図26(c)のステップS22でID=0として、ステップS23でIDが最大値ID_maxを超えたかどうか判断する。 もしIDが最大値ID_maxを超えていれば、RETURNから図26(a)のフローへ戻る。
もしIDが最大値ID_maxを超えていなければ、次のステップS24へ進む。
次のステップS24では、遠隔操作モードを開始する。具体的には図26(a)のステップS01で詳細に説明した内容と同じなので重複説明は省略する。
なお、この時点で、透過率制御装置150は図23のステップS01とステップS06を通過する「遠隔操作のループ」を回り始める。
次のステップS25では、IDに相当する操作情報155を送信する。具体的には、遠隔リレー接点127のリレーR1またはリレーR2の状態をON(接続)なら1、OFF(遮断)なら0として、ID=2×R2+R1にもとづいてリレーR1とリレーR2の接続または遮断の状態を決定する。
そしてまず、IDの値から求めたリレーR1の状態を送信するために、図24(b)のステップS3のスイッチ遠隔操作モードで説明したように、OSCパスとして/fes/swを発行するにあたり、スイッチ番号=1、ON−OFF=リレーR1の状態(1又は0)を記載して送信する。
引き続き、IDの値から求めたリレーR2の状態を送信するために、OSCパスとして/fes/swを発行するにあたり、スイッチ番号=2、ON−OFF=リレーR2の状態(1又は0)を記載して送信する。そのうえで、次のステップS26へ進む。
一方、リレーR1、R2の状態の指令を受信したリモコン受信部180では、入力スイッチ部125の遠隔リレー接点127に対して、受信した遠隔操作の指令に従ってリレーR1,R2の状態を設定する。
次のステップS26では、遠隔操作モードを終了する。具体的には図26(a)のステップS02で詳細に説明した内容と同じなので重複説明は省略する。
なお、この時点で、透過率制御装置150は図23のステップS01とステップS06を通過する「遠隔操作のループ」を回ることをやめて、図23のステップS01からステップS02へと進むフローをたどる。
具体的には、遠隔操作モードが終了したのでリレーR3は接続されており(図23のステップS01)、透過率制御装置150は図23で説明したステップS02に従って操作スイッチS1とS2を読み込もうとする。 しかし電源起動時とは異なり、操作スイッチS1とS2は手動操作していない。従って手動操作されていない操作スイッチS1とS2は遮断状態であり、図21(d)に記載したようにスイッチS1とリレーR1は並列接続され、スイッチS2とリレーR2も並列接続されているので、送信済みのリレーR1とリレーR2の状態を読み込むことになる。
つまり、透過率制御装置150では図23で説明したステップS03に従ってリレーR1とリレーR2の状態に対応するIDを選択することになる。次に、同じく図23で説明したステップS04に従ってIDに応じた駆動条件で電子シャッター部135を駆動する。
このようにして、前述の図26(c)のステップS25でリモコン装置20から指定したリレーR1とリレーR2の状態に対応したID番号に従って、電子シャッター部135は駆動され始める。
次に、図26(c)のステップS27ではこの状態を30秒間維持して、電子シャッター部135の動作状況を図22の検査装置40を用いて目視確認するか、あるいは前述の自動検査の機能を準備している場合には自動的に検査する。
なお、ステップS27を継続する時間の30秒という数字はあくまでも説明の理解を容易にするための事例に過ぎず、目視検査や自動検査で必要十分な時間を設定すればよい。
次のステップS28ではIDの値を1つ増加させてステップS23に戻る。
これで図26(c)の説明を終わる。
なお、電子サングラス本体10の電源スイッチPSを一旦遮断して再投入すると、遠隔リレー接点127の状態は初期状態(R1とR2は遮断、R3は接続)にリセットされる。
従って、手動操作で電子サングラス本体10を通常通りに起動するためには、他の実施例と同様に、所望のID番号に応じて入力スイッチ120を操作した状態で、電源スイッチPSを投入しなおせばよい。
図27は、リモコン受信部180のフローチャートである。 このリモコン受信部180の機能は、一つは制御情報175をリモコン装置20から受信して透過率制御装置150へ転送することにより、透過率制御装置150に透過率制御情報170を書き換えさせる。
もうひとつの機能は、リモコン装置20から遠隔操作されて遠隔操作リレー127の状態をON又はOFFの状態に設定することである。
図27は、リモコン受信部180がOSC通信を受信して処理するフローチャートであり、構造的には図24(b)のOSC通信手順に沿って具体的な処理を追記したものである。
従って図27は、図24(b)のOSC通信手順と同様に、S10では矩形書き込みモードM1に該当するかチェックし、該当しなければS20で任意波形書き込みモードM2かチェックし、該当しなければさらにS30でスイッチ遠隔操作モードM3かどうかチェックする。
もしどれにも該当しない場合にはS10に戻り、次の動作モードが指定されるまでこのループを回り続ける。
図27のリモコン受信部180のフローチャートは、電源スイッチPSを投入するとSTARTから始まる。
なお前述の通り、電源スイッチPSを投入すると、遠隔リレー接点127の状態は初期状態(リレーR1とR2は遮断、リレーR3は接続)にリセットされる。
図27のステップS10では、OSCパスの/fes/squareが該当していればS11に進む。
図27のステップS10とステップ11の内容は、図24(b)におけるステップS1とステップ11の内容と同じであるので重複する説明は省略する。
図27のステップS12においては、直前のステップ11で処理して読み取ったID番号(ID)、繰り返し周波数(Freq)、デューティ比(duty)、および左右の位相差(Phase)のデータを、制御情報175として透過率制御装置150へ転送する。 なお、透過率制御装置150では、受信した制御情報175を透過率制御情報170の該当するID番号のデータとして書き換える。
その後、図27のステップS10へ戻る。
図27のステップS20では、OSCパスの/fes/wave_formが該当していればS21に進む。
図27のステップS21からステップ24までの内容は、図24(b)におけるステップS21からステップ24までの内容と同じであるので重複する説明は省略する。
図27のステップS25においては、直前のステップ21からステップ24の間で処理して読み取った任意波形の情報を制御情報175として透過率制御装置150へ転送する。なお、透過率制御装置150では、受信した制御情報175を透過率制御情報170の該当するID番号のデータとして書き換える。
その後、図27のステップS10へ戻る。
図27のステップS30では、OSCパスの/fes/swが該当していればS31に進む。
図27のステップS30からステップ31までの内容は、図24(b)におけるステップS3からステップ31までの内容と同じであるので重複する説明は省略する。
図27のステップS32においては、直前のステップS31で読み取ったスイッチ番号(SW_No)に相当する遠隔リレー接点127としてのリレーR1、R2およびR3のいずれか1つを、指定されたON又はOFFの状態に設定する。その後、図27のステップS10へ戻る。
以上が実施例4におけるリモコン装置20、リモコン受信部180および透過率制御装置150という3つの要素ごとの動作の説明である。
しかしながら、実施例4をよく理解できるように説明するためには、上記の3つの要素が相互に動作する関係を関連付けて説明する必要がある。
図28は、リモコン装置20、リモコン受信部180および透過率制御装置150の3つの要素の間の相互関係を説明する動作例である。
以下ではまず3つの要素別の動作の流れを説明し、さらに3つの要素の横断的な連携の例を説明する。
まず、リモコン装置20について説明する。これは、特定のID番号の制御情報175だけを送信したあと、ID番号を指定して電子サングラス本体10へ閃光の発生を指令する動作例である。
まず、図28のステップA00でリモコン装置20の電源を投入し、ステップA01でOSCによる送信処理を開始するためにOSC通信の初期設定などを行う。
続くステップA02では遠隔操作モードを開始し、ステップA03では指定するID番号の制御情報175を送信する。ステップA04では指定するID番号の実行を準備させ、ステップA05では指定するID番号の実行を指令し、ステップA06では電源を遮断して終了する。
次は、リモコン受信部180の動作を説明する。
図28に記載したように、電子サングラス本体10のリモコン受信部180は、ステップB00で電源投入して動作を開始し、次にステップB01でOSC受信処理を開始するとともに、遠隔リレー接点127の状態を初期状態(R1、R2は遮断、R3は接続)にリセットする。
さらに図28のステップB02では、受信した遠隔操作情報185にもとづいて、遠隔リレー接点127のリレーR3をOFF(遮断)し、次のステップB03では指定されたID番号の制御情報175を受信する。
続くステップB04では、受信した指定されたID番号の制御情報175を、透過率制御装置150へ向けて出力して送信する。
次のステップB05では、遠隔リレー接点127のリレーR1とR2を、指定IDを選択するように設定する。
さらに次のステップB06では遠隔リレー接点127のリレーR3をON(接続)し、ステップB07では電源を手動で遮断されて終了する。
次は、透過率制御装置150でリモコン受信部180の出力を受けて行う動作を説明する。
図28に記載したように、電子サングラス本体10の透過率制御装置150は、ステップC00で電源を投入し、ステップC01で起動時に入力スイッチ120で指定IDを読む。これは図23におけるS01において、b接点で構成されるリレーR3が初期状態で接続されたまま、ステップS02で操作スイッチS1とS2を読み、ステップS03でスイッチS1とS2に応じてIDを選択する動作に対応する。
さらに図28のステップC02では、起動時に操作スイッチS1とS2で指定したIDを実行する。これは図23におけるステップS04において、b接点で構成されるリレーR3が初期状態で接続されたまま、図23におけるステップS04を繰り返して実行する「閃光発生のループ」の動作を開始することに対応する。ここまでは、通常の起動時の動作と同じである。
さらに図28のステップC03では、遠隔リレー接点127のリレーR3のOFF(遮断)を検知する。これは図23におけるステップS05とステップS01において遮断状態を検知する動作と同じである。ここから図23の「遠隔操作のループ」が開始される。
図28における次のステップC04では、制御情報175を読み込んで、透過率制御情報170の指定されたID番号のデータを書き直す。
さらにステップC05は遠隔リレー接点127のリレーR1とR2で指定されたID番号を読む準備であり、ステップC06では遠隔リレー接点127のリレーR3のON(接続)を検知して、ここで図23の「遠隔操作のループ」を終了する。
次のステップC07では、遠隔リレー接点127のリレーR1とR2で指定されたIDによる電子シャッター部135の駆動を繰り返し実行し、ステップC08で電源を手動で遮断されて終了する。
<図28の横断的な説明>
次に、リモコン装置20で行った遠隔操作が、どのようにリモコン受信部180や透過率制御装置150へ波及するかを横断的に説明する。
1番目の解説は、リモコン装置20のステップA02における「遠隔操作モードの開始を指令する」場面である。
具体的には、遠隔操作モードの開始を指令する目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/swを発行して、リレーR3をOFFする指令を送信する。
リモコン受信部180では、これをステップB02で受信して、遠隔リレー接点127のリレーR3をOFF(遮断)する。
遠隔リレー接点127のリレーR3がOFF(遮断)したことを透過率制御装置150が検出すると、図28のステップC03における遠隔操作が開始される。
若干の解説を加えると、リレーR3をOFF(遮断)することによって、透過率制御装置150は図23におけるステップS05やステップS01における「遮断」の判定で分岐することになり、その結果、図23のステップS06を実行する「遠隔操作のループ」を回る。つまり、ステップS06の「リモコン受信部180から転送されてくる制御情報175を読み取って、該当するID番号の透過率制御情報170に書き込む」という繰り返し動作が開始される。
2番目の解説は、リモコン装置20のステップA03における「指定するID番号の制御情報175を送信する」場面である。
具体的には、制御情報175を送信する目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/squareを発行して、指定するID番号の矩形波データを送信する。
リモコン受信部180では、これをステップB03で受信する。続くステップB04では、受信したID番号の制御情報175を透過率制御装置150へ転送する。
透過率制御装置150では、これをステップC04で受信して、透過率制御情報170の該当するID番号のデータを書き換える。
若干の解説を加えると、図23の透過率制御装置150のステップS06における制御情報175を読み込む「遠隔操作のループ」を回り続けることに対応する。
3番目の解説は、リモコン装置20のステップA04における「指定するID番号の実行を準備する」場面である。
具体的には、実行するID番号の準備をする目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/swをリレーR1とR2に関して別々に発行して、リレーR1とR2のON−FF状態を指定する。
リモコン受信部180では、これをステップB05で受信して、遠隔リレー接点127のリレーR1とR2を指定されたON−OFF状態に設定する。これは透過率制御装置150に対して実行すべきIDを指定する準備を終えた段階である。
これは、透過率制御装置150のステップC05のタイミングに相当するが、これはあくまでも準備段階に過ぎず、透過率制御装置150はステップC05では何の動作もせずに次へ進む。
4番目の解説は、リモコン装置20のステップA05における「指定したID番号の閃光発生の実行を指令する」場面である。
具体的には、指定したID番号の閃光発生の実行を指令する目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/swを発行して、遠隔リレー接点127のリレーR3のON(接続)を指令する。
リモコン受信部180では、これをステップB06で受信して、遠隔リレー接点127のリレーR3をON(接続)に設定する。
これは、透過率制御装置150のC06のタイミングに相当するが、これにより図23の「遠隔操作ループ」を回っているときに図23のステップS01でリレーR3の接続を検出するので、「遠隔操作ループ」が終了する。
遠隔操作が終了すると、透過率制御装置150の図28のステップC07に進んで指定したID番号の閃光発生を実行する。
若干の解説を加えると、透過率制御装置150の図23のステップS02でリレーR1とR2の状態が読み込まれ、図23のステップS03でIDが選択される。選択したIDで図23のステップS04を繰り返す「閃光発生のループ」を回り始める。このようにして、電子シャッター部135はリモコン装置20のステップA04で指定したID番号に応じた駆動条件で閃光の発生を繰り返す。
<実施例5(小規模な治験のための供試品)>
実施例5は、初期の小規模な治験のために試験生産する電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135の構造について説明する。
既に説明した図4では、将来の量産段階を想定して、左右の電子シャッター130と140の寸法形状を新規に設計できる場合における、電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135の多様な構造や形状を説明した。
ところが、初期の治験段階では、あまりにも電子閃光サングラスの生産規模が小さすぎて、本発明専用の電子シャッター(具体的には液晶シャッター素子)を量産メーカに生産委託することができない。
そのため電子シャッターを具現化するための電子部品として液晶シャッター素子を入手するには、市販の安価な3Dメガネを購入し、これを分解して液晶シャッター素子を取り出して再利用するしか事実上、部品の調達方法がない。
しかし、現存する液晶シャッター素子は、2枚のガラス基板を張り合わせた構造であり、もしガラス基板の側面の研磨が不十分な場合にガラス基板を市販3Dシャッターの筐体から無理やり摘出すると、ガラス基板の側面の切断面が砕けて粉になって飛散したり、ガラス基板そのものが損傷し、ひいてはガラス基板の将来の破損につながるおそれがある。
このため、液晶シャッター素子を本発明の電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135に組み込む場合には、液晶シャッター素子のガラス粉やガラス破片から裸眼を十分に防護する必要がある。
もちろん、液晶シャッター素子を本発明の電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135に組み込むにあたって、振動や衝撃のみならず、ガラスの熱膨張などによっても破損しないように適切な配慮をして固定する必要もある。
以下では、電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135のフレーム840よりも内側(つまり、フレーム840よりも顔に近い側)に設ける遮光板(裏)830などを、「液晶シャッター素子の破損から裸眼を保護する保護材」として利用するための構造についても説明する。
また、液晶シャッター素子を本発明の電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135に組み込むにあたって、適切に固定するための固定位置などについても説明する。
図29の実施例は、電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135のフレーム840に透明レンズ860を入れた事例である。図29(a)は両眼に透明レンズ860を備える事例であり、汎用のメガネやサングラスあるいは水泳用ゴーグルなどに用いられる形状である。
図29(b)は1枚板の透明レンズ860を通して左右両眼で見る形態のフレーム840を備えた事例であり、スキューバダイビング用の水中眼鏡やゴーグル、粉塵や塗装用の保護ゴーグル、あるいは医療用の保護ゴーグルなど、日常的にメガネをかけて生活する人がメガネのままで使用する保護ゴーグルなどに用いられる形状である。
図29(a)も図29(b)も、電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135のフレーム840に硬質の透明レンズ860が堅固に固定されていることが特徴である。
従って、右目の電子シャッター130も左目の電子シャッター140も、透明レンズ860の内側(つまり、透明レンズ860よりも顔に近い側)または外側(つまり、透明レンズ860よりも顔から遠い側)に接着剤もしくは固定する枠組を用いて固定することができる。
ただし、電子シャッターとして中古品の液晶シャッター素子を利用する場合には、ガラス基板の破損時におけるガラス粉やガラス破片から肉眼を防護する意味で、透明レンズ860の外側に電子シャッターを固定することが望ましい。
この場合、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140を透過率制御する駆動信号を供給する電線が透明レンズ860の外側から見えるので、外見上、これを隠すために透明レンズ860の外側であって、なおかつ右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140の外側に、遮光板(右)810、遮光板(左)820あるいは遮光板(前)815を備え、左右の電子シャッターを通過する光は通すように窓850を備える。
これら透明レンズ860の外側に設ける遮光板は、有色の板やフィルムあるいは有色の塗装などの膜を含む、光を通さない物体で構成できる。
あるいは、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140が窓850に重なるように固定する部材としての形状も持たせた有色の成型樹脂板を遮光板(右)810、遮光板(左)820あるいは遮光板(前)815として製作し、透明レンズ860の外側に備えてもよい。
ここで、透明レンズ860の外側に設ける遮光板の窓850は、遮光板810、820あるいは815の窓850に相当する部分を切除して穴をあけてもよいし、あるいは窓850の部分だけを無色透明な板またはフィルムや透明な塗装などの膜で構成してもよい。
一方、図29(a)も図29(b)も、透明レンズ860の内側には、電子シャッター130と140を通過せずに目に入る光を遮断する目的で遮光板(裏)830を設ける。
この目的のため、この遮光板(裏)830は黒色などの光を通しにくい色彩とし、シリコンゴムや天然ゴムなどの柔らかい素材を用い、さらに、フレーム840と顔面の隙間から周囲光が漏れ入ることを防止する形状に成型することが望ましい。
遮光板(裏)830には、左右の電子シャッター130、140を通過する光が肉眼に届くように窓850を設けてある。
窓850は、単純に遮光板(裏)830に穴を開けてもよいし、窓850の部分だけを無色透明な材質で構成してもよい。
図30の実施例は、透明レンズ860の外側に設ける遮光板810、820および815に窓850を設けない事例を示す。
図30(a)も図30(b)も、透明レンズ860の外側に設ける遮光板810、820および815を黒色を含む有色で半透明な素材(板、フイルム、塗装膜など)で構成するとともに、左右の電子シャッター130、140の位置よりも外側(顔から遠い側)であって、なおかつ透明レンズ860の外側に固定する。
これにより、透明レンズ860に固定された左右の電子シャッター130、140や電線を、遮光板810、820および815の外側からは目立たなくすることができる。
図30における左右の電子シャッター130,140と遮光板(裏)830の固定方法と構成については、図29の説明と同一であるので重複を避けるため記載を省略する。
なお、図30で説明した実施例の利点は、透明レンズ860の外側に設ける遮光板(右)810、遮光板(左)820および遮光板(前)815には窓850を設けず、窓850の代わりに有色で半透明な素材を採用することで外の景色を電子閃光サングラス越しに見えるようにしつつ、ファッション性を高めることができるので、日常生活の場面で本発明の電子閃光サングラス30を利用しやすくすることができる。
図31の実施例は、さらにファッション性を高めることを目的に設計する事例である。
図31(a)も図31(b)も、図30の遮光板(右)810、遮光板(左)820および遮光板(前)815ならびに透明レンズ860を持たない。その代わり、十分な強度を持つ飾り板870を透明レンズ860の代わりにフレーム840へ堅固に固定する。
図31(a)も図31(b)も、飾り板870は、黒色を含む有色で半透明であって硬質な素材で構成するとともに、その飾り板870の内側(つまり飾り板870よりも顔面に近い側)に左右の電子シャッター130、140を接着剤や型枠などで固定する。
これにより、飾り板870の内側に固定された左右の電子シャッター130、140や電線を、飾り板870の外側(つまり飾り板870よりも顔面から遠い側)からは目立たなくすることができる。
なお、飾り板とほぼ同じ寸法形状の左右の電子シャッター130、140を十分に透明もしくは目立たぬほど細い電線を使用して駆動する場合などは、これらを飾り板870の外側に配設しても目立たないのでさしつかえない場合もある。
図31(a)も図31(b)も左右の電子シャッター130、140は飾り板870の内側に配設されているため、中古品の液晶シャッター素子を使用する場合には、ガラス基板の損傷に備えて顔面や目を保護しなければならない。
そのため、図31(a)も図31(b)の左右の電子シャッター130、140と窓850を備えた遮光板(裏)830の間に、透明な保護板や保護フォルムあるいは保護膜を設けて、中古品の液晶シャッター素子のガラス基板が損傷しても顔面や目を損傷しないように保護することが望ましい。
あるいは、遮光板(裏)830に設ける窓850は、遮光板(裏)830に穴を開けるのではなく、透明な保護板や保護フィルムあるいは保護膜で構成することにより、中古品の液晶シャッター素子のガラス基板が損傷しても顔面や目が損傷しないようにすることが望ましい。
以上説明した実施例5の電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135の構造をまとめると、
電子シャッター部135は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140とフレーム840とレンズ相当部材880から構成され、電子閃光サングラス30のフレーム840に配設した透明レンズ860または半透明な飾り板870からなる前記レンズ相当部材880の外側もしくは内側に右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140が配設され、前記レンズ相当部材880の内側には右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140を透過する光を通過させる透明な窓850を設けた遮光板(裏)830を配設することを特徴とする。
なおこれは第1の発明要素の下位概念に相当する。
ちなみに、既に図4で説明したように、電子シャッターそのものをレンズ相当部材880としてフレーム840に収めたものが図4で紹介した各種の形式である。
図4の構造をまとめると、
電子シャッター部135は、レンズ相当部材880を堅固に固定するフレーム840と、前記レンズ相当部材880を構成する右目の電子シャッター130および左目の電子シャッター140の両方を備え、もしくは前記右目の電子シャッター130および前記左目の電子シャッター140のどちらか一方だけを備えて左右両眼に共通の視野を供給する前記レンズ相当部材880を構成することを特徴とする。なおこれも第1の発明要素の下位概念に相当する。
≪情報開示(自身の知っている特許性に影響する先行技術に関する情報)≫
<米国特許US−A1−005308246号について>
US−A1−005308246(出願日:19930105)については、この米国特許文献を機械翻訳すると、「主な目的は、視覚化訓練装置を提供することである。 他の目的は、ユーザーが視覚刺激を受け入れまたは遮断して、ユーザーの視覚化能力を高める助けとして、見たときに邪魔にならないパノラマビューをユーザーに提供できるようなデバイスを提供することである。またこの米国特許文献の追加の目的は、(従来技術で必要とされる2つのシャッターの代わりに)単一のシャッターを使用でき、操作が簡単で、軽量で快適な視覚化トレーニング装置を提供することである。 シンプルで経済的な製造。」
なお、この特許文献には視覚に「閃光H」という着想による視覚刺激を与えることによって、認知症の40Hz療法を行うことは記載も示唆もされていない。
<特表平9−510371号について>
特表平9−510371(国際出願番号 PCT/US94/14801, 優先日1993年12月21日)は、「眼鏡型のフレームに液晶レンズを設け、このレンズを透明状態と不透明状態との間を所定周波数で切り替えることで、前記した暗室におけるトレーニングと同様の状態を作り出す動的視力訓練装置である。使用者は一層高速度で移動する対象に一層高い上達度をもって反射行動を執ることができるようになる」とされる。
なお、この特許文献にも視覚に「閃光H」という着想による視覚刺激を与えることによって、認知症の40Hz療法を行うことは記載も示唆もされていない。
<特許第4426906号について>
特許第4426906号(特願2004−170518、出願日2004.6.8)で、発明の名称「視力訓練装置」は、暗室でストロボ光を明滅させ、「移動する対象物を間歇的に照らして、この対象物に対し反応するトレーニング方法を改良」し、TN型のLCDからなるレンズの透過状態と透過制限状態を切り替える動的視力訓練装置である。
すなわち、特許第4426906号の技術思想は、「移動する対象物を間歇的に照らして、この対象物に対し反応するトレーニング方法を改良」することであり、間歇的に照らされた物体の運動を見失わずに運動能力を高めるトレーニング方法に他ならない。
さらにまた、この特許文献にも視覚に「閃光H」という着想による視覚刺激を与えることによって、認知症の40Hz療法を行うことは記載も示唆もされていない。
前記の特許第4426906号の25段落には、「設定記憶部39には、プリセットされた設定名と、周波数およびパルス幅の関係が記憶されている。例えば、F01の設定名に対しては、周波数が1Hz、パルス幅が0.5秒などと記憶されている。また、設定記憶部39には、作動中にスリープスイッチ32dが押された場合に、現在選択されている設定名が記憶される」との記載があり、周波数と矩形波のデューティ比を選択する設定記憶部39を備える構造が記載されている。
さらにまた、前記の特許第4426906号の13段落に「「透過制限状態において半透明であるため、光量は落として明滅的な視野を得られつつも、対象物を見失うことが無く、トレーニングを行いやすい」とあり、また32段落には「例えば、前記したTN型の液晶レンズ21R,21Lの透過制限状態における濃度(光の透過率)は可変であるのが望ましい。このように光の透過率を可変とすることで、周りの明るさなどのトレーニング環境や、使用者のレベルに応じたトレーニングが可能となる。液晶レンズ21R,21Lの透過率を可変とするためには、印加する電圧を可変としたり、液晶レンズ21R,21Lに使用されている偏向フィルタの角度を機械的に回動させて可変としたりすることができる」と記載されている。
これは前記の特許第4426906号における「透過率制御は、最大透過率と最小透過率の2値を切り替えるのみ」であり、さらに「対象物を見失わぬように、最小透過率について、透過制限状態において半透明にして、より多く光が透過する調整可能」な構造を持たせるものであり、トレーニング中に「対象を見失わない」という技術思想にもとづいた構造が創作されている。
一方、本発明の69段落から71段落に記載した「電子シャッターの透過率の波形を中間値を含んで任意に設定できることの効果」、および図24(a)の任意波形のデータにおける右目の透過率(R_data)と左目の透過率(L_data)が、透過率0.0%から100.0%まで0.1%刻みで、2値以上を含みうる任意の時系列波形を設定しうる構造を備えていることを記載している。
つまり、「最高透過率と最低透過率の2値に加え、中間的な透過率を含めた2値以上の透過率値をとりうる任意の時系列波形」で制御する着想は、前記の特許第4426906号には記載も示唆もされていない。
さらに本発明の図6、図8、図9および図10などで閃光比率Eについて説明したように、任意の時系列波形を選択して用いるのは、認知症の40Hz療法における「閃光Hの強さ」を調整する目的である。そして、その閃光Hの強さは本発明の61段落に記載した閃光比率Eとして定量的に定義された数式で評価し、治験条件のデータの比較や集積、あるいは新たな治験条件の策定に利用することができる。
このような治験と認知症治療への貢献を念頭に置いた着想は、前記の特許第4426906号には記載も示唆もされていない。
また、本発明の72段落から75段落の「左右両眼の電子シャッターの波形に位相差を与えて、治験を実施するうえで実現可能な選択肢の多様性を提供する」という着想もまた前記の特許第4426906号には記載も示唆もされていない。
以上の先願調査の結果をまとめると、電子シャッターを利用して「閃光H」という着想による視覚刺激を与えることによって、認知症の40Hz療法を行う着想は記載も示唆もされていなかった。
ただし、前記の特許第4426906号は「周波数と矩形波のデューティ比を選択する設定記憶部39をという構造を備える」こと、ならびに「ストロボ光の点滅をLCDの液晶レンズで置き換える」という着想を持っており、「認知症治療用のために40Hzで点滅するフラッシュ光を用いる特許文献1をベースにして、ストロボ光の点滅をLCDの液晶レンズで置き換える構造を記載した特許第4426906号を組み合わせただけにすぎず、進歩性がない」との疑義が生じかねない。
以上のとおり、発明者自身が本発明の出願直前に行った最新の先願調査の結果、本発明の104段落に記載した「第1の発明要素」を表現した文言は、本発明の特徴を説明するためには不十分であることが明らかとなった。
それゆえに、「第1の発明要素」を表現した文言は、その技術的な意味内容を変更することなく、本発明で既に開示した課題を解決する方法と、その目的に沿って創作した技術思想ならびに数々の着想や本発明に特有な用語の定義などの特徴をさらに明確に表現するよう書き改めることにする。
<記載不備、あるいは不明確との指摘に備えて>
既に詳細に開示したとおり、本発明には非常に多くのバリエーションが存在する。
そこで、閃光サングラス30のシステムを構成する最低限の要件が不明確になることを予防するため、以下に最低限の構成を整理して明確化することを試みる。
本発明において、閃光サングラス30とは認知症治療器具のシステム全体の名称である。
このシステム全体である閃光サングラス30は、電子サングラス本体10だけで構成される場合(実施例1、実施例2、および実施例3を参照)もあれば、電子サングラス本体10とリモコン装置20で構成される場合(実施例4を参照)もある。
電子サングラス本体10は、電子サングラス本体10が1個の物品として構成される場合(実施例1および実施例4を参照)と、電子シャッター部135とコントローラ部900の2つの物品から構成される場合(実施例2および実施例3を参照)がある。
電子シャッター部135は、1枚の電子シャッターだけを持つ場合(図4(c)および図4(d)を参照)と、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140という2枚の電子シャッターを持つ場合(図4(a)、図4(b)および図4(e)を参照)がある。
電子シャッター部135の駆動のしかたには、1枚の電子シャッターだけを駆動する場合(図4(c)および図4(d)を参照)と、2枚の電子シャッターを駆動する場合(図4(a)、図4(b)および図4(e)を参照)がある。
1枚の電子シャッターだけを駆動する場合は、左右の視線を通すように面積の広い1枚の電子シャッターを駆動する。広い面積の電子シャッターでは、視線と電子シャッター表面が交わる角度によって透過率のムラが生じる新たな課題はあるが、それでも本発明の課題を基本的には解決できる。
一方、左右の2枚の電子シャッターを持つ場合でも、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140とを電気的に接続して共通に駆動する場合(図13を参照)と、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140とを独立に駆動する場合(実施例1、実施例2、実施例3および実施例4を参照)がある。
電子シャッター部135は、電子シャッターを頭部に装着させるフレーム840と、フレーム840に固定されたレンズ相当部材880とを含んで構成される。(92段落、図29を参照)
電子シャッター機能139は、これは本発明の文中では「電子シャッター」と簡単に記載する旨を説明した(11段落を参照)が、レンズ相当部材880そのものとして(92段落を参照)フレーム840に直接固定され、もしくはレンズ相当部材880の内側又は外側(286段落を参照)に取り付けて間接的にフレームに固定される。
したがって、上記の意味で、電子シャッター機能139は、直接的もしくは間接的にフレーム840に固定されることで頭部に装着する。
なお、電源起動時に入力スイッチ120を全く手動操作で選択しなくても(つまりS1とS2は押さないので、スイッチS1とS2は遮断されてOFFの状態)、必ず1通りの駆動条件で閃光を発生するループに入ることができる(実施例1、実施例2、実施例3および実施例4を参照)。つまり、本発明の課題を解決する上では、入力スイッチ120の操作がなくても閃光を発生できるので、入力スイッチ120は最小限の構成には含まない。
一方で、電源部160については、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4のいずれにも明記されているとおり、本発明の電子サングラス本体10の不可欠な最小構成として、電子回路を駆動するための電源装置(電源部160)を備えることはいうまでもない。
以上、本発明の明細書で開示した内容にもとづいて、本発明の「第1の発明要素」における、閃光サングラス30を構成する最低限の要件の最初の部分を整理して見直すと下記の文言となる。
なお、本発明では、「日常生活できる明るさの周囲光」を認知症治療用の閃光Hの光源としており、その明るさは、図1に示すように、常夏の昼間の海岸で野外を散歩し、あるいは暗い屋内でテレビゲームを行う程度の明るさを意図している。もちろん、また太陽光そのものや強烈すぎる局部照明など、目を傷める危険のある光源を凝視する使い方は、日常生活の常識の範囲で避けるべきである。
そこで本発明を明確かつ定量的に表現するために、図5に示す公表されたデータを参照する。そのうえで、日本の賃貸アパートの住宅環境として一般的な30w蛍光灯2灯使用八畳間の300ルクスを参考にして、その1/3の100ルクス程度をもってテレビゲームを行う暗い部屋の明るさと仮定して、これを最小照度とする。また、雪山・真夏の海岸の100,000ルクスを超える明るさを最高照度とする。この範囲の明るさをもって「日常生活できる明るさの周囲光」を表現する。いずれにせよ、上限値も下限値も、本発明を適用できる周囲光の明るさの「範囲がきわめて広い」ことを示す意図であり、その数値自体は大まかな推奨値を示すに過ぎない。
<第1の発明要素(1段目)>
最低照度100ルクスから最高照度100,000ルクスを超える明るさの周囲光を光源として利用し、認知症治療のための視覚刺激としての閃光Hを、一定の繰り返し周波数で、周期的に発生させる電子サングラス本体10を含むシステムとしての電子閃光サングラス30であって、

前記電子サングラス本体10は、
透過率を増減させる透過率制御を適用して閃光Hの強さを調整する電子シャッター機能139と、
前記電子シャッター機能139を固定して頭部に装着させるフレーム840と、
前記電子シャッター機能139の透過率を制御する前記透過率制御を行う透過率制御装置150と、
前記電子サングラス本体10に電源を供給する電源部160を含み、

前記透過率制御装置150は、
前記透過率制御の目標値としての前記繰り返し周波数と波形を記録した透過率制御情報170を含み、

前記透過率制御情報170に記録された前記繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間にあること
を特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
なお、上記において「閃光H(36段落から38段落を参照)」と「閃光Hの強さ(61段落、図8、図9を参照)」という文言は、認知症治療器具の治験を行う際の定量化の便宜を意図した本発明に独特な用語定義である。
特に、「閃光の強さ」の定義づけは、網膜に到達する光の1秒以上の期間における平均的な明るさを目の瞳孔の開閉によって自動調整する機能に着眼したものであり、周囲光そのものを最高照度Cに相当する認知症治療用の光源として利用する着想とともに、本発明の基本的な技術思想に由来している。
そこで、本発明の明細書で開示した内容にもとづいて、本発明の「第1の発明要素」における、本発明に独特な用語定義を整理すると下記の文言となる。
<第1の発明要素(2段目)>
前記閃光Hは、前記繰り返し周波数で目に入射する光の最高照度Cが、前記繰り返し周波数で目に入射する光の平均照度Aに対して突出した照度差H=C−Aを表し、
前記閃光Hの強さは、前記平均照度Aに対する前記突出した照度差H=C−Aの比率であって、閃光比率E=(C−A)/Aを表すこと
を特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
さらに、「最高透過率と最低透過率の2値に加え、中間的な透過率を含めた2値以上の透過率値をとりうる任意の時系列波形」で電子シャッターの透過率を制御する着想(305段落を参照)もまた本発明に独特な技術思想である。
そこで、本発明の明細書で開示した内容にもとづいて、本発明の「第1の発明要素」における、本発明に独特な透過率制御の目標値としての任意の時系列波形のデータの構造を整理すると下記の文言となる。
<第1の発明要素(3段目)>
前記透過率制御情報170には、
前記電子シャッター機能139の透過率を制御する目標値としての任意の時系列からなる前記波形が含まれ、
前記波形は、最高透過率と最低透過率のみならず、さらに中間的な透過率の値を含めた2値以上の透過率値をとりうるデータ構造であること
を特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
<第2の発明要素以降の取り扱いについて>
本発明の基本的な課題を解決するためには、第1の発明要素が重要である。さらに、治験用あるいは治療用の実用的な機材を開発する上では、複数の実施例に記載した通り、第2の発明要素から第6の発明要素についても、上記のように改定した第1の発明要素に立脚して、それぞれ記載した新たな課題を解決する有用な効果を提供する。
さらにまた、特にパイロット的な治験や予防活動の初期段階などでは、各実施例に記載した細かい発明要素も、本発明による認知症治療器具を製作するうえで、本発明に記載したように現実的な課題を解決するさまざまな効果を提供することができる。
認知症治療用の閃光を発生するための光源として日常生活環境にある安全な光を利用でき、認知症治療の社会的な総合コストを抑制することができる。これにより、治療が実施しやすくなり、脳波(ガンマ波)に含まれる40Hzの近傍の周波数で繰り返し明滅する閃光を発生させて視覚に光刺激を付与する認知症の治療法の普及に役立つ。
1 被治療者
2 太陽
3 室内照明
4 モニタ画面
10 電子サングラス本体
20 リモコン装置
30 電子閃光サングラス
120 入力スイッチ
125 入力スイッチ部
127 遠隔リレー接点
130 右目の電子シャッター
135 電子シャッター部
139 電子シャッター機能
140 左目の電子シャッター
145 透過率制御信号
150 透過率制御装置
155 操作情報
160 電源部
165 表示部
170 透過率制御情報
175 制御情報
180 リモコン受信部
185 遠隔操作情報
190 交換記憶装置
190D 制御用の交換記憶装置
190M 音楽用の交換記憶装置
192 データ媒体
192D 制御用のデータ媒体
192M 音楽用のデータ媒体
195 音声情報
197 記憶指令
200 検証装置
205 検証情報
210 音響増幅器
215 視覚刺激情報
220 外部音響信号端子
225 音響信号
810 遮光板(右)
815 遮光板(前)
820 遮光板(左)
830 遮光板(裏)
840 フレーム
850 窓
860 透明レンズ
870 飾り板
880 レンズ相当部材
900 コントローラ部

Claims (4)

  1. 最低照度100ルクスから最高照度100,000ルクスを超える明るさの周囲光を光源として利用し、認知症治療のための視覚刺激としての閃光Hを、一定の繰り返し周波数で、周期的に発生させる電子サングラス本体10を含むシステムとしての電子閃光サングラス30であって、

    前記電子サングラス本体10は、
    透過率を増減させる透過率制御を適用して閃光Hの強さを調整する電子シャッター機能139と、
    前記電子シャッター機能139を固定して頭部に装着させるフレーム840と、
    前記電子シャッター機能139の透過率を制御する前記透過率制御を行う透過率制御装置150と、
    前記電子サングラス本体10に電源を供給する電源部160を含み、

    前記透過率制御装置150は、
    前記透過率制御の目標値としての前記繰り返し周波数と波形を記録した透過率制御情報170を含み、

    前記透過率制御情報170に記録された前記繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間にあること
    を特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
  2. 前記閃光Hは、前記繰り返し周波数で目に入射する光の最高照度Cが、前記繰り返し周波数で目に入射する光の平均照度Aに対して突出した照度差H=C−Aを表し、
    前記閃光Hの強さは、前記平均照度Aに対する前記突出した照度差H=C−Aの比率であって、閃光比率E=(C−A)/Aを表すこと
    を特徴とする、請求項1項記載の電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
  3. 前記透過率制御情報170には、
    前記電子シャッター機能139の透過率を制御する目標値としての任意の時系列からなる前記波形が含まれ、
    前記波形は、最高透過率と最低透過率のみならず、さらに中間的な透過率の値を含めた2値以上の透過率値をとりうるデータ構造であること
    を特徴とする、請求項1項記載の電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
  4. 電子シャッター部135は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140から構成され、
    前記透過率制御情報170は透過率を制御する前記繰り返し周波数と前記波形の情報を含み、
    前記透過率制御装置150は、入力スイッチ120で手動操作によって指定した操作情報155にもとづいて前記透過率制御情報170から選択した駆動条件により前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率をそれぞれ制御すること
    を特徴とする、請求項1項記載の電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
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