JP7188667B1 - Lcdサングラスを用いる知覚刺激療法器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】LCDサングラスを用いて一定周期で繰り返す光の刺激と音の刺激を用いて神経疾患を治療または予防する知覚刺激療法器具において、治療効果のバラツキなどの不具合を防止する。【解決手段】治療効果のバラツキを防止するには、LCDサングラスの明るさやちらつきの強さを調整した場合でも、「光と音の位相差Δθ」を治療目的に適合する一定の値に維持する必要がある。そこで、透過率制御の目標値の波形とLCD素子の応答性と非線形性に起因した「光の位相遅れθL」の変動に対応して、θs=θL+Δθの等式に基づいて、「音の位相遅れθs」としての音の刺激を発生させるタイミングを自動的に調整する。【選択図】図1

Description

本発明は、脳梗塞後のリハビリや血管性MCIを含む神経疾患の治療や予防のため、一定周期で繰り返す治療用の光と音の刺激を用いて脳波を誘導することによって脳の機能的接続性を改善する治療器具LCDサングラスに関し、特に治療効果のバラツキなどの不具合を防止するための技術に関する。
<知覚刺激療法>
2015年以前から、脳の機能的接続性に関する脳の大規模ネットワークの構造(非特許文献2)が研究されるとともに、電子技術を利用して脳波を発生させて神経疾患を治療するアイディア(例えば特許文献4)が提唱され始めた。
2016年には、一定周期で繰り返す治療用の光と音の刺激を用いて脳波を誘導する知覚刺激療法器具によって、アルツハイマー型認知症を治療する40Hz刺激による疾患修飾療法(非特許文献1)としての動物実験(非特許文献4、特許文献1)が成功し、人間への臨床研究でも知覚刺激療法GENUS(登録商標)の第2相の治験が安全かつ成功裏に終了(非特許文献5、非特許文献6)したことにより、今後ますます知覚刺激療法器具の利用範囲の拡大が期待される。
<知覚刺激療法器具の動作原理>
光と音の刺激で脳波を誘導する技術はSSVEP(定常状態視覚誘発電位、Steady State Visual Evoked Potential)およびASSR(聴性定常反応、Auditory Steady State Response)と呼ばれ、SSVEPは後頭部、ASSRは前頭部と頭頂部に設置した脳波計(EEG)の電極で検出される(非特許文献7)。
また、SSVEPに関しては、周波数1Hzから100Hzの光による視覚刺激が研究され、付与した光刺激に含まれる90Hz以上の周波数成分までに対応して脳波が誘導されることが確認されている(非特許文献8)。例えば40Hzの繰返し波形の光による刺激の場合には、繰返し波形のフーリエ級数展開(あるいはFFT解析結果)に対応して、基本周波数の40Hzと第2高調波の80Hzの正弦波の脳波が発生しうる。但し治療効果を期待するのは基本周波数の40Hzである。
<異なる脳部位への刺激の位相差に関する注意点>
非特許文献3は、「異なる脳内部位に別々に刺激を付与」する場合、刺激の位相角(同相対逆相)を調整することにより認知障害が改善し、あるいは逆に障害が誘発される事例を示した重要な研究である。
具体的には、前頭前野と側頭領域の間で「シータ波の周波数(4~8Hz)とガンマ波の周波数(25Hz以上)との位相振幅結合(PAC)」と呼ばれるクロス周波数結合があり、作業記憶(ワーキングメモリ)に欠陥のある高齢者では、側頭領域のシータ・ガンマPACと前頭前野と側頭領域の間のシータ位相同期が不調である。そこでこの研究では、前頭側頭領域間の皮質相互作用を非同期化するように設計された交流電気刺激(tACS、transcranial alternate current stimulation)を用いて、被験者の作業記憶(ワーキングメモリ)の不調が改善されたり、逆に急速に障害が誘発された実験結果を紹介している。
知覚刺激療法の場合も、光の刺激は後頭部、音の刺激は前頭部と頭頂部に脳波を発生させるため、光と音の位相差Δθが90度を超えて増加すると、頭痛や激しい眠気などの有害事象が起こる事例が知られている(特許文献6)。
<知覚刺激療法で光の刺激を与える2つの手段>
知覚刺激療法には、LED(発光ダイオード)素子を点滅する刺激光の発光源とする方法と、周囲環境から入射する光をLCD(液晶)素子で明滅させて刺激光として利用する方法の2種類がある。
点滅するLED光源で光刺激を付与する技術(特許文献1、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)は制御が容易であり、欧米諸国で成功を収めつつある。しかし患者は、まばゆく点滅するLED光源を暗闇で凝視する必要があるため、運動療法や認知療法と組み合わせることができない。
一方、屋外を散歩中や屋内でのゲーム中でも周囲光を光源として使えるLCD(液晶)素子をサングラスのレンズに配設したLCDサングラスが、日米の別々の発明者によって同時期に発明(米国の特許文献2、日本の特許文献3)され、高度な潜在力を発揮するための制御の難しさを克服する技術(特許文献5、特許文献6)も発展しつつあるが、運動療法や認知療法と組み合わせて「ムラのない治療効果」を実現して実用化を推進するためには、解決すべき重要な課題が残っていた。
特表2019-502429号公報 US-A1-2020/0108270号公報 特開2022-002674号公報 特表2015-519096号公報 特願2021-174199号 特願2022-043680号
根本、"今後の抗認知症薬、今後開発が待たれる根本的認知症治療"、MEDICINAL、2012/5 Vol.2、No.5、120~ Vinod Menon.、" Large-scale brain networks and psychopathology: a unifying triple network model"、Trends Cogn Sci. 2011 Oct;15(10):483-506 Robert M. G. Reinhartほか、"Working memory revived in older adults by synchronizing rhythmic brain circuits"、Nature Neuroscience volume 22、 pages820-827 (2019) Hannah F Iaccarino、 Li-Huei Tsaiほか、"Gamma frequency entrainment attenuates amyloid load and modifies microglia" 、Nature . 2016 Dec 7;540(7632):230-235. Diane Chanほか、"40Hz sensory stimulation induces gamma entrainment and affects brain structure、 sleep and cognition in patients with Alzheimer’s dementia"、MedRxiv、Posted March 03、 2021. Diane Chanほか、"Gamma Frequency Sensory Stimulation in Probable Mild Alzheimer’s Dementia Patients: Results of a Preliminary Clinical Trial"、MedRxiv、Posted May 17、 2021. Rafal Kusほか、"Integrated trimodal SSEP experimental setup for visual、 auditory and tactile stimulation"、J Neural Eng. 2017 Dec;14(6) Christoph S.H、"Human EEG responses to 1-100 Hz flicker: resonance phenomena in visual cortex and their potential correlation to cognitive phenomena"、Experimental Brain Research volume 137、 pages346-353 (2001)
一定周期で繰り返す治療用の光と音の刺激を用いて脳波を誘導する知覚刺激療法では、「光と音の位相差Δθ」を、個人差もあるだろうが、例えばΔθ=0度付近の頭痛が発生しない安全な数値を維持するように管理する必要がある。
またΔθ=45度程度であれば、個人差はあるだろうが、若干の眠気とわずかな頭痛を催す場合もあり、例えば不眠症で悩む患者に就寝前に適用するなどの用法と用量のエビデンスは今後の研究課題である。
しかし、Δθが90度以上では、光で刺激する後頭部と音で刺激する前頭部と頭頂部にそれぞれ発生する脳波に位相の干渉や相殺などの混乱の影響が目立って大きくなる可能性があり、Δθ≧90度では数日続く頭痛などの不具合が発生した場合があった。
知覚刺激療法には、LED(発光ダイオード)素子を点滅する刺激光の発光源とする方法と、LCD(液晶)素子で周囲環境から入射する光を明滅させて刺激光として利用する方法の2種類があることは既に背景技術で紹介した。
前者のLED素子を発光源とする方式は、光の点滅を高速で精度よく任意に制御できるので「光と音の位相差Δθを一定の値の範囲に保つ管理」が容易な利点はある。
一方、患者が光の点滅を暗闇で凝視し続ける必要があるため、患者が周囲環境を見ながら行う運動療法や認知療法を併用して治療することができず、現時点では相乗効果は期待できない状況にある。
後者のLCD素子で周囲光を明滅させる方式は、患者が周囲を見ながら運動療法や認知療法を併用して治療できるという治療上の利点がある。
一方、LCD素子の応答が遅く非線形性も著しいため、患者がLCDサングラスのレンズの明るさやちらつきの強さを調節するとLCD素子の透過率の時系列波形が大幅に歪んでしまい、光と音の位相差Δθを所望の一定の値の範囲に保つ管理が困難で、「治療効果がばらつき易い」という実用化の妨げとなる問題点があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、運動療法や認知療法を併用して治療できるLCD素子を使いながら、「光と音の位相差Δθを一定の値の範囲に保って管理」することによって、治療効果のバラツキや有害事象の発生を防止することである。
本発明の知覚刺激療法の治療器具は、LCD素子をサングラスのレンズとして組み込んだLCDサングラスを用いて光の刺激を発生させ、イヤホンやヘッドホンやスピーカーなどの音響機器を用いて音の刺激を発生させる。
神経疾患の治療や予防においては、高齢者の脆弱な視力や衰えた認知機能に配慮して、LCDサングラスのレンズの明るさや明滅するちらつきの強さを調整可能に設計する必要がある。
しかし、LCD素子を駆動する波形や駆動電圧や透過率目標値などの設定を変えれば、レンズの明るさやちらつきの強さを調整することは可能だが、透過率の時系列波形が歪むので「光と音の位相差Δθ」を一定の値の範囲に保って管理できなくなる。
本発明では、(1)「光と音の位相差Δθ」が変動するメカニズムを究明したうえで、(2)LCD素子を駆動する波形や駆動電圧や透過率目標値などの設定を変えた場合におけるΔθの変動量の大きさを定量的に把握し、(3)実施例4に示す対策を講じることによって「光と音の位相差Δθ」を一定の値の範囲に保つ管理を実現することを最も主要な特徴とする。
<1.「光と音の位相差Δθ」が変動するメカニズムを究明する>
詳しくは図2(e)で詳しく説明するが、要点は下記の通りである。
第1に、視聴覚制御装置50から光の刺激の駆動信号を送出する瞬間をA点とする。
第2に、A点から光の刺激が発生する瞬間(B点)までを「光の位相遅れθL」とする。
第3に、B点から音の刺激を発生させる瞬間(C点)までの位相差をΔθとする。
第4に、A点からC点までを「音の位相遅れθs」とする。
このように問題を整理すると、図2(e)に示すように、A点とB点とC点の間にはΔθ=θs-θLの関係式が常に成り立つことに発明者は気付いた。さらに、LCDサングラスのレンズの明るさや明滅するちらつきの強さを調整すると、「光の位相遅れθL」が大幅に変化する特性があることにも発明者は気付いた。
それゆえに、従来のようにΔθ=θs-θLの関係式に気付かずにθsを常に一定値に保つ場合には、θLが大幅に変動するとΔθにも大幅な変動が生じることは自明であった。
このようにして、発明者は「光と音の位相差Δθ」が大幅に変動するメカニズムを究明した。
<2.「光の位相遅れθL」の定量的な把握>
LCD素子を駆動する波形や駆動電圧や透過率目標値などの設定を変えれば、まず制御の目標値そのものの波形が変わる。さらにLCD素子の非線形性や応答性の遅れに起因して波形が歪むため、光の位相遅れθLは大きく変動する。
知覚刺激療法の治療器具は、光の刺激によるSSVEPの現象により脳波を発生する。つまり、1Hzから90Hz以上の周波数範囲において、一定の繰返し周波数で明滅する光刺激を付与する知覚刺激療法の治療器具では、光の刺激の「基本周波数」と同じ周波数の脳波が発生する現象を利用している。
したがって、光の刺激が発生したタイミング(B点)を特定するにあたり、光の刺激における歪んだ波形に含まれる「基本周波数」の波形に着目して解析するのが適切である。
そこで本発明では、「基本周波数」としての正弦波の波形に着目したうえで、(イ)駆動電圧を矩形波とし、デューティ比の水準を変えた場合、(ロ)駆動電圧を矩形波とし、デューティ比=50%に固定して、上限値または下限値の水準を変えた場合、(ハ)比透過率Pの波形を正弦波として制御目標値の上限値または下限値の水準を変えた場合、の3つの実施例について、「光の位相遅れθL」やレンズの明るさとちらつきの強さの関係を定量的に計測して把握した。
<3.対策を講じる>
まず、「光と音の位相差Δθ」と「光の位相遅れθL」と「音の位相遅れθs」の間には、Δθ=θs-θLの関係が常に成り立つことが上記にて解明された。
次に、LCDサングラスのレンズの明るさや明滅するちらつきの強さを調整するためにLCD素子を駆動する駆動電圧や透過率目標値などの波形の設定を変えた場合の「光の位相遅れθL」を、上記のように定量的に計測して把握した。
してみると、「光と音の位相差Δθ」を所望の一定値に保つためには、Δθ=θs-θLの関係からθs=θL+Δθが常に成り立つことを利用して、視聴覚制御装置50のサンプリングタイムごとの制御ループを実行するたびに「光の位相遅れθL」を近似式で推定し、「音の位相遅れθs」の値がθs=θL+Δθに合致したタイミングで音の刺激を発生させればよい。
これが本発明において講ずる対策であり、実施例3で計測した「光の位相遅れθL」のデータを用いて、対策を施した事例を実施例4で述べる。
その結果、本発明は、LCDサングラスのレンズの明るさや明滅するちらつきの強さを調整しても「光と音の位相差Δθ」を一定の値に保って管理することを実現した。
ただし正確に言えば、視聴覚制御装置50のサンプリング時間の影響で位相の区切りが離散化されるため、「光と音の位相差Δθ」の設定精度(分解能)は、基本周波数の1周期あたりのループ回数で制約を受ける。(本発明では周波数40Hzの場合に1周期あたりのループ回数を100回に分割した事例を紹介する。)
つまり、本発明により、「光と音の位相差Δθ」を分解能の値に起因する一定の「誤差範囲」に保って管理する技術が実現した。
本発明のLCDサングラスは、レンズの明るさや明滅するちらつきの強さを調整しても「光と音の位相差Δθ」を一定の誤差の範囲に保って管理することができるので、治療効果のバラツキや有害事象などの不具合を防止することができる。
このように課題が解決したので、LCDサングラスを品質管理された治療器具として実用化でき、医療に関する学術研究にとどまらず、臨床医療や看護あるいはデジタル医薬品などの産業分野で貢献することができる。
本発明の代表図の解説 光と音の刺激の位相同期と位相差 基本周波数成分の時系列波形の抽出手順 本発明の実施例に共通するハードウエア 本発明の実施例に共通するソフトウエア構成 「駆動電圧が矩形波で、デューティ比を変更」するハードウエア構成(実施例1) 「駆動電圧が矩形波で、デューティ比を変更」するフローチャート(実施例1) 「駆動電圧が矩形波で、デューティ比を変更」した解析事例(実施例1) 「駆動電圧が矩形波で、上限値と下限値を変更」するハードウエア構成(実施例2) 「駆動電圧が矩形波で、上限値と下限値を変更」するフローチャート(実施例2) 「駆動電圧が矩形波で、上限値と下限値を変更」した解析事例(実施例2) 透過率制御目標が正弦波で、上限値と下限値を変更する方法(実施例3) 透過率制御目標が正弦波で、上限値と下限値を変更するフローチャート(実施例3) 「透過率制御目標が正弦波で、上限値と下限値を変更した解析事例(実施例3) 「音の位相遅れθsを自動的に再調整」するハードウエア構成(実施例4) 「音の位相遅れθsを自動的に再調整」するフローチャート(実施例4) 「比透過率Pの制御目標を階段状波形」にするソフトウエア構成(実施例5) 階段状波形の解析結果(実施例5) A点の決定方法に関する変形例 B点の決定方法に関する変形例
<本発明の代表図の解説>
図1は、本発明の代表図であり、LCDサングラス10の概要を説明する。
図1(a)は、通常のサングラスと同様に装着するLCDサングラス10の使用方法の一例であり、この図ではイヤホン168で音の刺激210を聴いている。
図1(b)は、視覚刺激器30としてLCD素子60を左右のレンズ80に配設したLCDサングラス10を含む知覚刺激療法器具20の構成図であり、聴覚刺激器40としてのイヤホン168とともに視聴覚制御装置50から駆動信号を与えられて動作する。
図1(c)は、LCDサングラス10の比透過率の制御と計測の概念図である。直流電源で駆動したLED素子などの光源からLCD素子60に入射する入射光Liの時系列波形は、図示のように一定値である。
そこで、LCD素子60を駆動する印加電圧を調整して比透過率P(t)の波形を図示のように制御すると、透過光Loの波形は比透過率P(t)の波形と相似に変化し、照度センサ(フォトトランジスタ)で透過光Loの明るさ(照度)を検出した電流はエミッタ抵抗に流れて電圧降下Vr(t)として測定される。
ここでk1とk2を係数とすると、Pt(t)=k1×Lo(t)=k2×Vr(t)の関係がある。したがって比透過率P(t)の波形を観測するには電圧Vr(t)の波形を計測すればよい。
なお、比透過率Pの時系列波形はP(t)=(透過光の照度の時系列波形Lo(t))/(透過光の照度の最大値Lomax)で定義する。そのため比透過率Pは100%から0%の間の数値である。
ちなみに実透過率Qは、Q=(透過光Loの照度)/(入射光Liの照度)で定義され、既存のLCD素子60の透過率が最大になるように制御した場合の実透過率Qは50%から30%程度の数値である。
≪1.「光と音の位相差Δθ」が変動するメカニズム≫
図2は、周期的に繰り返す光の刺激200と音の刺激210を位相同期させる場合の位相差を説明する図である。
図2(a)から(d)は、光の刺激200の光源としてLED素子などの高速応答する発光体150を使う知覚刺激療法器具20の事例である。
図2(a)では、繰返し周波数40.0Hz(周期25.0ミリ秒)で光を点滅させている。経過時間0ミリ秒を位相角0度として、消灯した状態(論理値0)から明るく点灯した状態(論理値1)へLED素子に通電して発光させる。さらに、その位相角0度のタイミングで、音響機器に信号を出力して音の刺激210を患者に付与する。刺激音としては、例えば、パルス幅が1ミリ秒程度のクリック音を使うことができる。
この状態では、「光と音の位相差Δθ」は0度である。
図2(b)では、光の刺激200の光源としてLED素子を位相角0度で発光させ、刺激音を発生させるタイミングを90度遅らせて音響機器に信号を出力して音の刺激210を付与した状態を示す。
この状態では、「光と音の位相差Δθ」が90度である。
図2(c)は、デューティ(Duty)比=50%の矩形波の基本周波数成分と同位相で、上限値と下限値が元の矩形波に重なるように、元の矩形波の平均値をオフセットとして加算した正弦波の波形を描いた図であり、「元の矩形波の位相0度の瞬間に、増加しながら、元の矩形波の平均値と交差する性質」がある。
図2(d)は、デューティ(Duty)比=50%の矩形波の基本周波数成分にオフセット値を加えた値に比例する光の明るさになるようにLED素子を発光させる制御を行った図である。この図では、光の刺激200の位相0度から位相差90度の位相遅れを持たせたタイミングで、音響機器に信号を出力して音の刺激210を発生させる。この状態でも「光と音の位相差Δθ」は90度である。
以上の図2(a)から(d)では発光体150を使う知覚刺激療法器具20について述べたが、光の刺激200を生ずるLED光源は100kHz以上の高速応答性を備え、音の刺激210を発する音響機器は10kHz以上の高速応答を備え、いずれも入力に対して出力が線形な応答特性を備えており制御しやすい。
このため、基本周波数が100Hz以下の繰返し波形を発生する場合には、光と音の位相差Δθを任意の値に正確に設定することができる。
図2(e)は、光の刺激200の光源としてLCD素子60を使う知覚刺激療法器具20の事例である。LCD素子60の応答性はせいぜい0.3kHz程度と低速であり、おまけに入力(印加電圧)に対して出力(比透過率P)が非線形な応答特性を備えており、波形が容易に変化してしまうので制御しにくい。
一方、音の刺激210を発する音響機器は10kHz以上の高速応答を備え、入力に対して出力が線形な応答特性を備えており制御しやすい。
そこで、音の刺激210のタイミングをうまく制御することにより、光の刺激200の制御性の悪さを補う工夫をしたのが本発明の着想のポイントであり、以下で詳細に説明する。
図2(e)の最下段は、視聴覚制御装置50が0.25ミリ秒のサンプリング間隔ごとに実行する制御ループの実行タイミングを模式的に描いた図である。この例では繰返し周波数40.0Hzの1周期25ミリ秒を100個に分割し、ループ番号の変数Loop_Numとして0から99の番号を付与している。ループ番号0番は位相角0度であり、制御の1周期の起点としての0秒目に相当する。
図2(e)の下から2段目は、視聴覚制御装置50から出力する位相同期信号Sであり、ループ番号が0から49の間で論理値1、ループ番号が50から99の間で論理値0を出力するデューティ(Duty)比=50%の矩形波である。
ループ番号0で論理値0から論理値1へ立ち上がる瞬間をA点と呼ぶことにする。
図2(e)の下から3段目(つまり上から2段目)は、光の刺激200である。前述の通り、図1(c)の入射光Liを一定とし、k1とk2を係数とすると、Pt(t)=k1×Lo(t)=k2×Vr(t)の関係がある。つまり、図2の光の刺激200の時系列波形は、LCD素子60の比透過率Pt(t)、出射光の明るさLo(t)および照度センサの電圧Vr(t)と波形が相似で位相が合致している。
つまり、図2(e)の光の刺激200の実線のグラフは照度センサが検出した光の強さを測定した電圧Vr(t)として計測でき、それはLCD素子60の比透過率Pt(t)の波形をも表している。このグラフの点線の波形は、電圧Vrの基本周波数成分Vrf1にオフセットとしてVr(t)の平均値Vr.aveを加算した値を表す。
この基本周波数成分Vrf1に平均値Vr.aveを加算した値が増加中に、平均値Vr.aveと交差する瞬間をB点と呼ぶ。
この視聴覚制御装置50では、ループ番号0のA点の瞬間から光の刺激200を出力するように制御しているので、LCD素子60の応答がLED素子と同様な高速応答であれば、A点とB点はほとんど重複する。しかし実際にはLCD素子60の応答がきわめて遅いため、B点はA点よりも遅れてしまう。
そこで、A点からB点までの位相の遅れを「光の位相遅れθL」と呼び、実際のLCDサングラス10のLCD素子60の計測結果を実施例1と実施例2と実施例3と実施例5に示す。
図2(e)の下から4段目(つまり最上段)は、音の刺激210である。これはこの視聴覚制御装置50から聴覚刺激器40としてのイヤホン168などの音響機器へ音の刺激210を発生させるタイミングを示す。この発音体160から音の刺激210の発生を繰り返すタイミングの始点をC点と呼ぶ。
図示したB点からC点までの位相差が「光と音の位相差Δθ」であり、治療目的に適する値を設定して使用する。
また、A点からC点までの位相差を「音の位相遅れθs」と呼び、これは実施例4に示すように視聴覚制御装置50の制御プログラムで制御することができる。
したがって、図2(e)のA点、B点、C点の位置関係から、LCDサングラス10の治療効果を安定化させるために重要な3つの数値の間にはΔθ=θs-θLの関係があることが明らかとなる。
すなわち、光と音の位相差Δθを設定し、一定の値の範囲に保つ管理を実現するためには、制御困難な光の位相遅れθLの数値を正確に予測するとともに、予測したθLの値に応じて、比較的制御が容易な音の刺激210を発生させるタイミングθsを自動調整すればよい。これが本発明における課題を解決するポイントであり、重要な技術思想である。
≪2.「光の位相遅れθL」の定量的な把握≫
本発明ではA点、B点、C点を確定することでΔθ、θs、θLの3つの重要な数値が確定する。
A点は視聴覚制御装置50から位相同期信号Sを出力し、その矩形波が0から1へ立ち上がる瞬間をデジタルオシロスコープOSCで観測すれば把握できる。
C点は視聴覚制御装置50から聴覚刺激器40へ音の刺激210を出力する瞬間をデジタルオシロスコープOSCで観測すれば把握できる。
ところがB点は、LCD素子60を透過する光の強さVrの波形ではなく、「Vrの基本周波数成分Vrf1にVrの平均値Vr.aveを加算した波形が増加中に、平均値Vr.aveと交差する瞬間」のタイミングを計測する必要があるが、これはデジタルオシロスコープOSCで直接的に観測して把握することはできない。
以下では、「光の位相遅れθL」の定量的な把握方法について詳細に説明する。
図3は、基本周波数成分の時系列波形の抽出手順を示す図である。つまり、B点を計測するために、「Vrの基本周波数成分Vrf1にVrの平均値Vr.aveを加算した波形が増加中に、平均値Vr.aveと交差する瞬間」のタイミングを数学解析ソフトMATLAB(登録商標)を用いて計測する手段を説明する図である。
図3(a)は、入力数2チャンネルのデジタルオシロスコープOSCを用いて、電圧Vrと位相同期信号Sを同時にデータ採取する図である。2つの時系列波形は、デジタルオシロスコープOSCに内蔵されたサンプリング周波数10KHzの高速なAD変換器を使って各チャンネルごとに8000点のデータを採取し、CSVファイルの形式でメモリ媒体USBに書き込む。ちなみにデジタルオシロスコープOSCとしては、岩崎通信機製の型式DS-5105Bを使用している。
このCSVファイルをパソコンPCにインストールしたMATLABを使って、以下の手順で解析する。
解析対象波形(電圧Vr)と基準波形(位相同期信号S)の2つのデータに対して、以下の通り同じ手順で解析処理を行う。図3(b)には基準波形(位相同期信号S)の処理例を示す。
(1)採取したデジタルデータに、MATLABの関数fft(高速フーリエ変換)を適用する。
(2)FFT結果の周波数スペクトルを描画する。
(3)FFT結果から40Hz成分に相当する共役複素数の2つのデータと直流成分のデータ以外を消去する。
(4)周波数スペクトルを描画して、40Hz成分と直流成分だけが残存していることを確認する。
(5)MATLABの関数ifft(逆高速フーリエ変換)を行う。
これにより、「元波形の基本周波数成分(40Hz)に元波形の平均値を加算した波形」が得られる。
図3(c)には、上述の手順で計測した位相同期信号Sを実線の矩形波で示し、MATLABで抽出した「位相同期信号Sの基本周波数成分にSの平均値を加算」した波形を点線の正弦波で示す。
図示するように、デューティ(Duty)比=50%の位相同期信号Sと基本周波数成分Vsf1とは位相が合致する。また、「位相同期信号Sの基本周波数成分Vsf1にSの平均値Vs.aveを加算した波形」が上昇中にSの平均値Vs.aveと交差する点(つまりA点)は、位相同期信号Sが論理値0から論理値1へ立ち上がる瞬間と合致している。
同様の処理を解析対象波形(電圧Vr)に行えば、図2(e)の下から3段目(つまり上から2段目)に示すVrとその基本周波数Vrf1の波形に平均値Vr.aveを加算した波形を得ることができる。
したがって、「Vrの基本周波数成分Vrf1にVrの平均値Vr.aveを加算した波形が増加中に、平均値Vr.aveと交差する瞬間」をB点としてMATLABのグラフ上に描画できる。
以上のように、同時に採取した解析対象波形(電圧Vr)と基準波形(位相同期信号S)の2つのデータからA点とB点を特定できるので、A点とB点の位相差を図2(e)に示すように「光の位相遅れθL」としてMATLABのグラフ上で手作業で計測することができる。
ただし、上記の説明のようにグラフに描画した波形を見ながらA点とB点を手作業で確認して時間差を読み取って「光の位相遅れθL」を計測するのは、計算結果を検算する場合に行う作業である。
実際には、MATLABの関数xcorr(相互相関関数)を用いて「Vrの基本周波数成分の正弦波Vrf1」と「位相同期信号Sの基本周波数成分の正弦波Vsf1」の相互相関関数を演算し、その数値が位相差±180度の範囲で最大値となるシフト量(デジタルオシロスコープOSCでの計測で用いたサンプリング周波数10KHzに対応)を求めれば、位相同期信号Sに対するVrの基本周波数成分の位相遅れ量を自動計算できる。これが光の位相遅れθLに相当する。
手動作業であれ自動計算であれ、このようにして、「光の位相遅れθL」を定量的に把握することができる。
<実験装置の説明>
以上のように、数学用解析ソフトMATLABを用いて計測データから「光の位相遅れθL」を自動解析する準備ができたので、次は実験装置のハードウエアとソフトウエアを説明する。
図4は、本発明の実施例に共通するハードウエアに関する説明である。
図4(a)は、本発明の実施例に共通の制御用ハードウエアの構成である。制御用マイクロコンピュータには(株)秋月電子通商のESP-WROOM-02開発キットと12BitD/AコンバータのMCP4725を使用し、Arduino(登録商標)でソフトウエア開発を行った。
外部の5Vのモバイル電池またはACアダプターからDCジャックと逆接続防止ダイオードD1を介してDC/DCレギュレータで+Vcc=5.0Vの正確に安定化された電源を供給する。
制御用マイクロコンピュータの操作入力は、可変抵抗器VR1から電圧がアナログ入力端子AI1に入力され、トグルスイッチSW1と押しボタンスイッチSW2からデジタル入力端子DI1とDI2へ論理値1または0が入力される。
制御用マイクロコンピュータの制御出力は、アナログ出力端子AO1からLCD素子60への印加電圧の絶対値を出力し、デジタル出力端子DO1からLCD素子60への印加電圧の極性反転指令を出力する。LCD素子60の駆動特性のメーカ推奨仕様に適合させるように極性反転された正または負の電圧は、1つのLCD素子60の2つの入力端子の間へ駆動電圧として供給される。LCD素子60を複数用いる眼鏡型のサングラスでは、図4(a)のように左右のLCD素子60LとLCD素子60Rを並列接続できる。
なお、左右のLCD素子60の特性が異なる場合には左右のLCD素子60に別々の駆動電圧の波形を供給する制御手段を設けることもできるが、部品点数が増えるので、左右のレンズには実施例で説明する「光の位相遅れθL」の近似式に関する特性が揃ったLCD素子60を用いて並列接続することがコスト対策上は望ましい。
デジタル出力端子DO2とDO3は音の刺激210を出力する。この実験装置は多様な神経疾患を治療する目的で複数の基本周波数の光の刺激200と音の刺激210を発生できる構造になっており、例えば基本周波数としてf1=40Hzとf2=10Hzの2つの光の刺激200を含んだ波形をLCD素子60から発生する場合、それぞれのデジタル出力端子から2つの音刺激のタイミングでクリック音を出力し、イコライザEQ1とEQ2でそれぞれの刺激音の音質を調整して聞き分けられるようにする。
たとえば基本周波数f1=40Hzは低音と中音で「トントン、カンカン」という音質のクリック音によって繰返し周期40Hzで鳴らし、基本周波数f2=10Hzでは中音と高音で「カンカン、キンキン」という音質のクリック音によって繰返し周期10Hzで鳴らす。両方の音をミックスしてアンプAmpでイヤホン168などの聴覚刺激器40を駆動する。
以下では説明を簡単にするため1つの基本周波数f1だけを使う場合についての実験事例を詳しく紹介するが、基本周波数が複数ある場合でも、それぞれの基本周波数f1とf2についてそれぞれ個別に同様の手順で音の刺激210を発生するタイミングを制御すればよい。
このように、2つの基本周波数f1とf2を持つ光の刺激200と音の刺激210を発生できる構造になっているため、デジタル医薬としての臨床応用のみならず位相振幅結合(PAC)に関する学術研究用の機材としても利用することが可能である。
デジタル出力端子DO4は、位相同期信号Sを出力する。
この図4(a)の回路全体が視聴覚制御装置50の事例であり、図中に書き込んである比透過率計測回路55については図1(c)および図3(a)で説明したものと同じ回路構成であるが、これを視聴覚制御装置50に組み込んでもよいし除外しても良い。組み込めば本発明の実験と同じデータを採取できるので、LCDサングラス10のメンテナンスがやりやすい高付加価値な商品になり、除外すればコストを抑えた廉価な価格優先の商品となる。
デジタル出力端子DO4から出力される位相同期信号Sは、LCDサングラス10の商品の製造と調整の段階で品質管理に利用できる。さらに、上記の比透過率計測回路55を視聴覚制御装置50に組み込んでおけば、販売後の経時変化や長期的な品質保証を行う際に有用なデータを採取できる。その場合、発光ダイオードD2と照度センサ(フォトトランジスタ)Tr7を、レンズ80としてのLCD素子60を挟むように防塵・防水処理を行った上でLCDサングラス10に固定して組み込めばよい。
あるいはD2とTr7をレンズ80の出射側に設け、レンズ80の入射側に反射物(例えば小さな鏡)を設けて反射させることにより、レンズ80の明滅によるVrを計測してもよい。逆に、D2とTr7をレンズ80の入射側に設け、レンズ80の出射側に反射物(例えば小さな鏡)を設けて反射させてもよい。
さらに、D2とTr7の間で目に見えない赤外線だけを使うことにより、治療中にレンズ80としてのLCD素子60の明滅に伴ってD2が発光する光が治療の妨げにならないようにすることができる。
LCDサングラス10に組み込んだ比透過率計測回路55と視聴覚制御装置50を接続する電線は、常時接続であってもよいし、メンテナンス作業時だけに接続するようにしてもよい。
また、比透過率計測回路55は、1つのLCDサングラス10に1組だけを設けるのではなく、左右両眼のレンズ80としての1つのLCD素子60ごとに1組ずつ設けてLCD素子60ごとの劣化を検査してもよいし、1つのLCD素子60ごとに複数組を設けてLCD素子60の部分的な劣化を検査してもよい。LCD素子60の経年変化や劣化の状況を計測し、あるいは定期検査を行って、品質保証のデータを採取することにより、LCD素子60の老朽化をすみやかに発見でき、修理や新品購入を顧客(患者、医療機関、介護施設など)に提案する営業活動が容易になる。
図4(b)は、LCDサングラス10のレンズ80として組み込むLCD素子60に印加する電圧の極性を、例えば200Hzで正負に反転させながら、印加電圧の絶対値を0Vから5Vまでの範囲で概ね0.25V刻みで変えて、透過光Loの明るさを比透過率計測回路55の照度センサ(フォトトランジスタ)のエミッタ抵抗器R25の両端の電圧降下Vrで計測した。さらに、計測したVrを最大値Vrmaxで正規化して比透過率P=Vr/Vrmax×100%として算出した。
印加電圧の絶対値が0Vのときの比透過率PをP=100%とすれば、印加電圧の絶対値が2.48Vのとき、比透過率Pの計測値は65.6%である。 つまり、この図4(b)は、印加電圧の絶対値に対応した比透過率Pの計測値のグラフであり、以下では写像グラフ70と呼ぶ。
図4(c)は、LCD素子60の透過率制御を行う際に、所望の比透過率Pを達成したい場合に印加すべき電圧の絶対値を算出するためのグラフである。これは前述の写像グラフ70の縦軸と横軸を入れ替えて描いたもので、以下では逆写像グラフ75と呼ぶ。
例えば、透過率制御において比透過率P=65.6%を目標値とする場合には、LCD素子60に印加すべき電圧の絶対値は2.48Vである。
もし比透過率Pの目標値として写像グラフ70の特性計測試験を行った際の計測点と計測点の間にある値を使用したい場合には、逆写像グラフ75を横軸の比透過率Pの目標値ごとに複数の区間に分け、区間ごとに近似式を作成して、縦軸の印加電圧の絶対値を算出すればよい。
計測区間を細かく分け、多数の点で写像グラフ70の特性計測試験を行った場合には、「近似式」ではなく「計測点間の内挿」によって縦軸の印加電圧の絶対値を算出することもできる。
本発明の各実施例の実験に使用するLCD素子60に関する逆写像グラフ75を表す近似式Y=F(X)の例としては、比透過率P(%表示)の目標値をXとして、Xの2つの範囲ごとに下記の近似式を使い分けることで、印加電圧(ボルト表示)の絶対値をYとして算出できる。
1)X<=99%の場合
Y = -0.00001×X^3+ 0.0019×X^2 - 0.1369×X + 6.1276
なお、X^3はXの3乗を表す。
2)X>99%の場合
Y = -1.5103×X + 151.03
なお、印加電圧を変えて透過率を制御するLCD素子60としては様々な形式あるいは内部構造の素子が公知であるが、本発明においては写像グラフ70と逆写像関係にある逆写像グラフ75を使用する必要があるため、写像グラフ70において単調増加あるいは単調減少の特性を示す区間を選んで使用する。
<時間変数の制御フロー>
図5は、本発明の実施例に共通するソフトウエア構成を示す。
図5(a)は、実施例に共通の時間管理変数のフローチャートを説明する。
ステップS10では、Arduinoの起動時点からのマイクロ秒単位の経過時間を関数micro()で読み込んで、最新のループ開始時間time_Loopに代入する。また、ループ番号Loop_Numを0に設定する。
ステップS20では、関数micro()で起動後の経過時間を読んで、もし起動後の経過時間が1時間以上であれば、周期25.0ミリ秒で繰り返す制御ループを終了させて脱出する目的でステップS100へ進む。そのステップS100では、永久ループに入るのでステップS30以降の制御ループへは進まない。
そうでなければ制御ループに進入するためにステップS30へ進む。
ステップS30は、サンプリング間隔を0.25ミリ秒に整えることを目的とする。
現在の経過時間を関数micro()で読んで、最新のループ開始時間time_Loopと比較する。その結果、現在の経過時間が最新のループ開始時間time_Loopから0.25ミリ秒以上経過していなければ、ステップS30でループして待機する。
ループして待機している間に、最新のループ開始時間time_Loopから0.25ミリ秒以上経過したことを検知したら、現在の経過時間を最新のループ開始時間time_Loopに代入して、ステップS40へ進む。
ステップS40は、この事例では光と音の繰返し周期を基本周波数f1=40Hzに対応する25ミリ秒で管理することを目的とする。すなわち、ループ番号Loop_Numの値を0から99までの数値に整えることで、1周期を100回のループで回るように管理する。
そのためには、まずループ番号Loop_Numを1つ増やした後、もしループ番号Loop_Numが最大値の99を超えていれば0に書き換える。次にステップS50へ進む。
ちなみに、光と音の刺激が複数の基本周波数を持っている場合には、例えば基本周波数f1=40Hzのほかに基本周波数f2=10Hzに対応する100ミリ秒でも管理するために、新たな変数としてループ番号Loop_Num_f2を追加し、その値を0から399までの数値に整えることで、基本周波数f2=10Hzに対応する1周期を400回のループで回る管理を追加できる。
ステップS50は、LCD素子60の駆動電圧の極性反転指令として例えば200Hz(周期5ミリ秒)のデューティ比50%の矩形波として出力することを目的とする。すなわち、1サンプリング間隔が0.25ミリ秒の制御ループを20回だけ経過すると1周期である。具体的には、極性ループ番号PLoop_Numの値を0から19までの数値に整えることで、1周期を20回のループで回るように管理する。
そのためには、まず極性ループ番号PLoop_Numを1つ増やした後、もし極性ループ番号PLoop_Numが最大値の19を超えていれば0に書き換える。
さらに、極性ループ番号PLoop_Numが0から9の間にあるときには極性指令Inv_Polarityに1を代入し、それ以外の場合は極性指令Inv_Polarityに0を代入する。
そのうえで、極性指令Inv_Polarityの1または0の値は、LCD素子60の駆動電圧の極性指令としてデジタル出力DO1から出力する。次にステップS60へ進む。
ステップS60では、各実施例の基本周波数を0.1Hz単位の分解能で設定することを目的とする。
そのために、関数micro()で起動後の経過時間を利用して、浮動小数点(float)の変数として周期10.0秒の起動後時間time_10S(単位は秒)を生成する。
具体的には、関数micro()で起動後の経過時間(単位はマイクロ秒)を読み、10秒(単位をマイクロ秒に換算した値)で割った余りを秒単位の浮動小数点(float)の変数に直して周期10.0秒の起動後時間time_10Sへ代入する。この変数は、10秒周期の繰返し時間(秒単位)として使う。
基本周波数の周期の整数倍が10秒に合致しない場合には10秒ごとに位相調整を行うが、具体的には、1つあるいは複数の基本周波数ごとに10秒経過時の正弦関数(Sin)などの時間関数の位相を次の10秒の開始時に継承する処理も行う。
ステップS70は、透過率制御の目標値を、ループ番号を指標(インデックス)とする配列で指定する実施例で使う。
すなわち、この事例ではループ番号Loop_Numが0~99であるため、100個の要素を持つ配列を用いて各ループ番号Loop_Numごとに目標値を指定することができる。
ステップS80は、透過率制御の目標値を、10秒周期の繰返し時間(秒単位)としての周期10.0秒の起動後時間time_10Sを用いて時刻指定する実施例で使う。
基本周波数が1つだけの場合には、t=time_10Sとして、基本周波数f1を持つ透過率制御の目標値P(t)=y[%]を、例えば、y=[sin(2π×f1×t+φ1)+1]/2×100のように時間関数で定義することができる。なみに、基本周波数がf1=40Hzだけの事例では、基本周波数の周期(25ミリ秒)の整数倍が10秒に合致するので、正弦関数(Sin)の時間関数の位相をφ1=0とすることができる。
また、2つの基本周波数f1とf2を持つ透過率制御の目標値P(t)=y[%]を、例えば、y=[sin(2π×f1×t+φ1)+sin(2π×f2×t+φ2)+2]/4×100のように時間関数で定義することができる。ここで、基本周波数を0.1Hz単位の分解能で設定して、例えばf1=40.1Hz、f2=10.2Hzとすることができ、φ1とφ2はステップS60で記載した10秒ごとに継承する正弦関数(Sin)の位相である。
ステップS90は、各実施例に個別の処理(サブルーチン)であり、詳細は各実施例で説明する。
なお、位相同期信号Sとクリック音の出力ルーチンは、各実施例ごとのステップS90の処理フローの中に記載した。
<制御目標の2種類の設定方法:番号指定方式と時刻指定方式>
図5(b)は、ステップS70に対応する「番号指定方式」の制御目標の事例であり、ループ番号Loop_Numに対応する制御目標値の数値をメモリ上に配列で定義する。
番号指定方式は、ステップS90に含まれる位相同期信号Sのループ番号ごとの出力値を指定する場合にも適用できる。図5(b)には位相同期信号Sのループ番号0番から49番までの50個には数値5を設定し、ループ番号50番から99番までの50個には数値0を指定する例を示している。
図5(c)は、ステップS80に対応する「時刻指定方式」の制御目標を描画した事例であり、例えば図示の2つの基本周波数f1、f2を持つ制御目標値の数値を、時刻t=time_10Sで定義した正弦関数(Sin)などを含む時間関数としてLCDサングラス10から光の刺激200として発生させることができる。
図5(c)は、図5(a)のステップS80の右欄に記載したように、基本周波数f1=40.0Hzと基本周波数f2=10.0Hzの正弦波の線形和を時間tに対する正弦関数(Sin)を用いて制御目標yとして設定した出力の例を示すもので、繰返し時間の0秒目から0.1秒が経過する間に、基本周波数f1=40.0Hzの4周期分と、基本周波数f2=10.0Hzの1周期分が含まれる。
図6は、電圧波形が矩形波で、透過率制御の目標値としての電圧値(または比透過率)のデューティ(Duty)比を変更する実施例1のハードウエア構成である。
図6(a)は、図4(a)の共通ハードウエアのうち実施例1で使用する部分だけを描いたものである。アナログ入力端子AI1とアナログ出力端子AO1は使用せず、音の刺激210は音質調整のイコライザEQ1も省略してデジタル出力端子DO2だけから出力し、不要になったデジタル出力端子DO3はLCD素子60を駆動する矩形波の絶対値を指定するための論理値を出力している。
図6(b)は、矩形波の波形の指定を電圧でも比透過率Pでも行えることを示す逆写像グラフ75である。印加電圧の絶対値で指定する場合は下限値の電圧(Tr5の特性に依存するが約0.4V)または上限値の電圧(5.0V)を指定する。矩形波の波形の指定を比透過率Pで行う場合は、下限値の電圧に対応するP=100%または上限値の電圧に対応するP=12%である。デジタル出力端子DO3から論理値1または0を出力して矩形波のデューティ(Duty)比を指定する。
図6(c)は、2チャンネル同時にデータ採取する位相同期信号Sの矩形波の波形Vs=目標値P(t)とした場合における、図1(c)のエミッタ抵抗器Rの両端の電圧降下Vr(透過光Loの波形に相当する)を描いたものであり、それぞれの基本周波数の波形と平均値もVsとVrのグラフに重ね書きしてA点とB点を示した。
実施例1は、図3で説明した手順にしたがって矩形波のデューティ(Duty)比の水準を変えながらデータ採取し、MATLABを使ってA点からB点までの位相遅れθLを算出する。
なお、解析の際には、LCD素子60のレンズ80の明るさを示すVrの平均値Vr.aveと、基本周波数成分の片振幅Vraを算出し、レンズ80のちらつきの強さを示す閃光比=Vra/Vr.aveも算出する。
図7は、電圧波形が矩形波で、Duty比を変更する実施例1のフローチャートを示す。実施例1ではSW1とSW2の組み合わせで実験水準を選択し、LCD素子60を駆動する波形の指定方法は図5(b)で説明した番号指定方式を使った。
図7(a)はデューティ比=80%で明るくなる場合の番号指定方式の配列のデータを示す。印加電圧=0VでLCD素子60のレンズ80は明るくなり、印加電圧=5Vで暗くなる。図7(b)はデューティ比=50%、図7(c)は20%で明るくなる波形の事例を示す。ちなみに図6(b)の逆写像グラフに示すように、印加電圧0Vの代わりに0.4Vを出力してもレンズの明るさの比透過率PはP=100%である。
図7(d)はSW1とSW2の組み合わせで実験水準を選択する対応表である。この表ではデューティ比=20%、50%および80%から選択する例を示すが、同様にして30%、40%、60%、70%についても番号指定方式の配列のデータで波形を作成して計測実験を行った。
図7(e)のステップS10からステップS70およびステップS100は、図5(a)で説明したフローチャートのうち図5(b)の番号指定方式に必要な時間変数の管理に必要な部分を使用したので、重複する説明は省略する。
ステップS90は実施例1に特有な処理内容であり、ステップR10でスイッチSW1とSW2を読み、ステップR20からステップR60までで図7(d)に従って実験水準に対応した動作を選択する。ステップR70では、デューティ比ごとの番号指定方式の配列データにもとづいて、ループ番号に相当する印加電圧の絶対値を供給すべくデジタル出力端子DO3から論理値1または0を出力する。
ステップR80では、図5(b)の番号指定方式の配列データにもとづいて、ループ番号ごとの位相同期信号Sを出力する。実施例1は計測実験用なのでクリック音の発生は省略できるが、実施例を製品に応用する場合にはステップR80でクリック音も出力する(詳細は実施例4を参照)。
図8は、印加電圧の絶対値の矩形波について、デューティ比を変更した実施例1の解析事例である。
図8(a)は、実験と解析で採取した計測値であり、データを比較しやすくするため、デューティ(Duty)比=50%の実験水準を「基準形」と呼ぶことにする。
図8(b)は、デューティ比=50%の基準形から10%づつデューティ比を増減した実験水準における光の位相遅れθLの解析結果である。θLはデューティ比に対してほぼ線形に-33.1度から+77.8度まで大幅に変化する。
図8(c)は、電圧Vrの平均値であり、透過光Loの明るさの平均値でもあり、比透過率Pの平均値の変化の傾向でもある。つまりLCD素子60のレンズ80の明るさの変化を示す図でもある。デューティ比=20%から80%の範囲では、波形が若干は歪むものの、明るさはほぼ線形に変化する。
図8(d)は、基本周波数Vrf1の片振幅を表示したものであり、デューティ比=50%の基準形が最も大きいことがわかる。
図8(e)は、レンズ80のちらつきの程度を表す指標としての閃光比=片振幅/平均値であり、デューティ比が30%で頭打ちになり、それ以上デューティ比を下げてもレンズ80のちらつきを強くできない。
実施例1の解析結果は、デューティ比の数値に起因した変化だけでなく、実験に使用したLCD素子60の応答特性の影響も受ける。光の位相遅れθLのデータは実際の商品に組み込むLCD素子60ごとのバラツキもありうるので、LCDサングラス10を製造する際の調整工程で今回のような計測と解析を行って、音の刺激210を出力するタイミング(θs)を自動調整するための基礎データとすることが望ましい。
なおサングラスの右目と左目のレンズ80のLCD素子60の特性のバラツキが大きすぎると、左右のレンズ80への駆動電圧を別々に供給する必要が生じてLCDサングラス10の商品設計における部品点数が増えるので、左右のレンズ80には特性が揃ったLCD素子60を使うことが望ましい。
図9は、電圧波形が矩形波で、透過率制御の目標値としての電圧の上限値か下限値のどちらか一方だけを調整する実施例2のハードウエア構成である。
図9(a)は、図4(a)の共通ハードウエアのうち実施例2で使用する部分だけを描いたものである。アナログ入力端子AI1は使用せず、音の刺激210は音質調整のイコライザEQ1も省略してデジタル端子DO2だけから出力する。LCD素子60を駆動する矩形波の絶対値の電圧はアナログ出力端子AO1から出力する。
図9(b)は、比透過率Pと印加電圧の絶対値との対応関係を示す逆写像グラフ75であり、比透過率P=100%、80%、60%、40%、20%および12%に対応する電圧が、それぞれ図示のように0.0Vと1.0V、2.2V、2.6V、3.0V、4.0V、5.0Vを上限値または下限値として試験水準を変更する。
図9(c)は、2チャンネル同時にデータ採取する位相同期信号Sと図1(c)のエミッタ抵抗器Rの両端の電圧降下Vr(透過光Loの波形に相当する)のそれぞれの基本周波数成分のVsf1とVrf1だけを描いたもので、図6(c)から抜粋したグラフである。
図9(c)のVsf1が上昇しながら横軸(Vsf1の平均値としてのVsf1.ave=0)を横切る点がA点であり、Vrf1が上昇しながら横軸(Vrf1の平均値としてのVrf1.ave=0)を横切る点がB点になっていることを図6(c)と比較してご確認いただきたい。
このように、位相同期信号SのVsと電圧降下Vrの、それぞれの基本周波数成分が増加中に平均値=0と交差する点をそれぞれA点、B点と定義しても、図2(e)や図6(c)でそれぞれの平均値を加算したグラフを用いたA点、B点の定義と同じ点を示す。これはA点とB点を簡単に特定する方法である。
あるいは、デューティ比=50%の位相同期信号Sと同じタイミングで、基本周波数の周期の始点にあたるループ番号0の瞬間に視聴覚制御装置50から短いパルス出力を立ち上げて、その短いパルス出力が立ち上がる瞬間をA点と定義しても良い。
すなわち、A点とは、視聴覚制御装置50が予め指定した周期で制御を繰り返すタイミングの始点(位相角0度、あるいはループ番号0番)を示す点である。一方、B点とは、LCDサングラス10のLCD素子60から光の刺激200の発生を繰り返すタイミングの始点を示す点である。
なお、本発明の各実施例では、基本周波数f1=40Hzとすれば、1周期360度を100分割したループ番号0番の期間中に相当する0.25ミリ秒のサンプリング間隔に起因した誤差(360度/100分割=3.6度)が含まれる。誤差を小さくするにはサンプリング間隔を0.25秒よりも小さくできる高速な制御用マイクロコンピュータを採用すればよいが、治療器具の価格上昇要因になる。
図10は、電圧波形が矩形波で、上限値か下限値を変更する実施例2のフローチャートを示す。SW1で実験の電圧水準の上げ下げの方向を指示し、押したSW2を離した瞬間に電圧水準を変更する。この実施例では、LCD素子60を駆動する波形は全てデューティ(Duty)比=50%とし、図5(b)の番号指定方式で波形を指定した。
なお、上限値か下限値について電圧ごとの実験水準を合計10段階に設定するだけでなく、実施例1と同様にデューティ(Duty)比を20%から80%まで合計7段階に変更する実験水準も掛け合わせて、合計70(=10×7)段階の実験水準ごとの図5(b)の番号指定方式で波形を指定してデータ採取することもできる。
しかし、実施例1では説明を簡単にするため、デューティ(Duty)比=50%の場合だけを説明する。
図10(a)の中段の図は、電圧波形の矩形波の上限値を5V、下限値を0Vとしたデューティ比=50%の波形であり、これを試験水準の基準形とする。このときのVrとVrf1の波形を図10(b)の中段に示す。
図10(a)の上段の図は、矩形波の上限値を試験水準の電圧で可変とし、下限値を0Vに固定したデューティ比=50%の電圧波形である。この条件ではLCD素子60のレンズ80は試験水準の基準形よりも明るくなる。このときのVrとVrf1の波形を図10(b)の上段に示す。
図10(a)の下段の図は、矩形波の上限値を5Vに固定し、下限値を試験水準の電圧で可変としたデューティ比=50%の電圧波形である。この条件ではLCD素子60のレンズ80は試験水準の基準形よりも暗くなる。このときのVrとVrf1の波形を図10(b)の下段に示す。
図10(c)のステップS10からステップS70およびステップS100は、図5(a)で説明したフローチャートのうち図5(b)の番号指定方式に必要な時間変数の管理に必要な部分を使用したので、重複する説明は省略する。
ステップS90は実施例2に特有な処理内容であり、ステップR10でスイッチSW1とSW2を読み、ステップR20からステップR60においてSW1で実験の電圧水準の上げ下げの方向を指示し、押したSW2を離した瞬間に電圧水準を変更する。なお、図10(c)は下限値のみ変更する実験用のフローチャートであり、上限値のみ変更する実験ではステップR40とステップR60の「下限値」を「上限値」に書き換える。
ステップR70では、デューティ比=50%の番号指定方式の配列データにもとづいて、ループ番号に相当する印加電圧の絶対値の上限値または下限値を書き変えて、試験水準の電圧で出力する。
ステップR80では、図5(b)の番号指定方式の配列データにもとづいて、ループ番号ごとの位相同期信号Sを出力する。実施例2は計測実験用なのでクリック音の発生は省略するが、製品に応用する場合にはステップR80でクリック音も出力する(詳細は実施例4を参照)。
図11は、電圧波形が矩形波で、上限値か下限値を変更する実施例2の解析事例である。
図11(a)は、実験と解析で採取した計測値であり、矩形波の上限値を5V、下限値を0Vとしたデューティ比=50%の波形を試験水準の「基準形」と記載している。
図11(b)は、上限値5Vの基準形から上限電圧を下げた実験水準における光の位相遅れθLの解析結果である。θLは23.0度から56.2度まで大きく変化することが判明した。透過率制御の目標値としての電圧波形はどの水準もデューティ比=50%の矩形波で同一であるため、この光の位相遅れθLの大きな変化は、今回の実験に使用したLCD素子60の非線形性と応答性に起因するものと思われる
図11(c)は、電圧Vrの平均値であり、透過光Loの明るさの平均値、あるいは比透過率Pの明るさの変化の傾向を示す。上限値5Vの基準形から上限電圧を下げると、明るさが増加する。
図11(d)は、基本周波数Vrf1の片振幅であり、基準形が最も振幅が大きい。
図11(e)は、レンズ80のちらつきの程度を表す指標としての閃光比=片振幅/平均値であり、基準形が最もちらつきが強く、上限電圧を下げるとちらつきは大幅に減少する。
図11(f)から(i)は下限値を変更した実験結果であり、矩形波の上限値を5V、下限値を0Vとしたデューティ比=50%の波形を試験水準の「基準形」と記載している。基準形から離れる実験水準ほどθLは減少し、レンズ80は暗くなり、ちらつきは減少する。
実施例3は比透過率Pを正弦波とし、透過率制御の目標値としての比透過率Pの上限値か下限値を変更する。ハードウエア構成は実施例2の図9(a)と同じである。
図12は、正弦波の比透過率Pを目標値とした透過率制御を、制御ステップごとに説明する図である。
<制御ステップF01>
図12(a)は、比透過率P(t)の目標値としての正弦波の時系列波形である。
ここで、図5(c)で説明した時刻指定方式を採用し、基本周波数が1つだけの場合には、P(t)=a×sin(2π×f1×t-φ)+bで表すものとし、aは正弦波の片振幅(%表示)、bはP(t)の平均値(%表示)、f1は基本周波数(単位はHz)で例えばf1=40.0Hzとし、φは位相遅れ(単位はラジアン)、tは視聴覚制御装置50の時刻(単位は秒)である。この実施例ではφ=0に設定するので、視聴覚制御装置50の時間が25ミリ秒の周期ごとの最初の0秒目の時(あるいはループ番号Loop_Numが0のとき)にはP(t)=bとなる。
ちなみに比透過率P(t)の目標値の上限値はa+b、下限値はb-aで算出され、上限値は100%以下の値であり、下限値は最も透過率が低く(暗く)なる印加電圧(本実施例では5.0V)を適用した場合の比透過率Pの数値で本実施例では12%以上の値である。
なお、基本周波数がf1とf2の2つの場合には、例えば図5(a)のステップS80で説明した2つの基本周波数を持つ時間関数に置き換えればよい。
本発明では基本周波数f1は0.1から99.9Hzの間で設定可能だが、実施例3ではf1=40.0Hzを適用する事例について詳細に説明する。その他の周波数については本実施例の説明に基づき、当業者には容易に設計変更が可能である。
この実施例でも、40.0Hzの1周期にあたる25ミリ秒の間に、サンプリング間隔0.25ミリ秒で100回のループを実行する。
比透過率P(t)の目標値を発生させる別の方法として、図5(b)で説明したループ番号Loop_Numをインデックスにした配列にループ番号ごとの目標値を予め書き込んでおいて、その配列を読み込んで使う番号指定方式を使用することができる。
基本周波数が10Hzのように低い場合には番号指定方式では配列サイズが大きくなってメモリを消費する点で不利だが、基本周波数が40Hz程度であれば番号指定方式でも時刻指定方式でもどちらを使ってもかまわない。なお、番号指定方式は波形の微調整が容易であるという利点がある。
図12(b)は、サンプリング間隔ごと(つまりループ番号ごと)に、比透過率P(t)の目標値が離散的に変化する様子を模式的に描いた図である。
以上が、図12(a)と図12(b)に示す制御ステップF01であり、一般的には制御目標値の設定を上述の番号指定方式で行う場合は図13(c)のステップS70に該当し、時刻指定方式で行う場合は図13(c)のステップS80に該当する。なお、ステップS70とステップS80は、制御目標値の設定方法に対応して、どちらか一方だけ組み込めばよい。
なお実施例3では、処理プログラムの応答性を改善する都合で、ステップS70とステップS80の両方の内容を削除し、ステップS90の「ステップR70の前半」に上述の制御ステップF01を組み込んで、時刻指定方式を適用して制御目標値を算出した。
<制御ステップF02>
図12(c)は、比透過率P(t)の目標値の値(パーセント表示)であるXを入力して、図4(c)の説明で示した逆写像グラフ75を表す近似式Y=F(X)を用いて印加電圧の絶対値(単位はボルト)をYとして算出する。
図12(d)は、印加電圧の絶対値が視聴覚制御装置50の各ループごとに算出されたYの値の波形の模式図であり、この印加電圧の絶対値を図9(a)のアナログ出力端子AO1から出力する。
以上が、図12(c)に示す制御ステップF02である。
以上の制御ステップF02で行う内容は、「印加電圧の絶対値を出力」する機能の手順を詳細に説明したものであり、図13(c)に示すステップS90の中の「ステップR70の後半」に該当する。
<LCD素子60の透過光Loの光の明るさを計測する>
図12(e)は、上記のステップで印加電圧の絶対値をアナログ出力端子AO1から出力したのち、図9(a)のデジタル出力端子DO1から図13(c)のステップS50で出力した極性反転の指令にもとづいて、この印加電圧の絶対値を正負の電圧値に極性反転した波形の模式図である。これを図12(f)におけるLCDサングラス10の左右のレンズとしてのLCD素子60に駆動電圧として印加する。
図12(g)の実線は、透過光Loを照度センサ(フォトトランジスタ)で計測した電圧値Vr(t)の基本周波数の波形Vrf1を示す模式図である。図3(a)で採取した透過光Loが明滅する照度を計測した電圧値Vr(t)はLCD素子60の応答性と非線形性のために波形が歪んでおり、電圧値Vr(t)の基本周波数の波形Vrf1は、視聴覚制御装置50に正確に同期した比透過率の目標値P(t)の点線で示した波形に比べて位相遅れを生じる。
<透過率の目標値を正弦波に設定し、位相遅れθLを算出する>
図12(h)は、図3(a)のデジタルオシロスコープOSCでデジタルファイルとして採取した電圧値Vr(t)と位相同期信号Sから、位相遅れθL(単位は度)を算出する手順を説明する図である。
前述の制御ステップF01において、比透過率の目標値P(t)の位相をφ=0度に設定した。従って、比透過率の目標値P(t)と位相同期信号Sの位相差は0度であるから、位相同期信号Sの位相の基準点(A点)は、比透過率の目標値P(t)が増加中に平均値P(t).aveと交差するA点と合致する。
そこで、このA点から、透過光Loの照度の「基本周波数の波形Vrf1に平均値Vr.aveを加算した値」が平均値Vr.aveと交差するB点までの位相遅れθLを、図3の解析手順を用いて実施例2と同様に計算処理すればよい。
図13は、比透過率の目標値P(t)を正弦波に設定し、その下限値を増減させるフローチャートである。
本実施例の実験の「基準形」としてのパラメータ設定として、数式P(t)=a×sin(2π×f1×t-φ)+bにおいて、f1=40Hz、φ=0度、a=44%、b=56%に設定し、上限値a+b=100%、下限値b-a=12%とする。
図13(a)は、「基準形」のパラメータに設定に比べ、下限値だけを上げて明るくし、あるいは上限値だけを下げて暗くした場合における透過率の目標値P(t)の波形を示す。
図13(b)は、上記における透過光Loの照度を計測した電圧VrとVrf1の波形を示す。
図13(c)は、透過率の目標値P(t)を正弦波に設定し、「基準形」の下限値だけを増減させる実験のフローチャートである。
このフローチャートの構造は図5(a)に示した実施例に共通の時間変数の管理フローを踏襲しており、特にステップS10からステップS60までは図5(a)で説明した通りである。
また、ステップS70とステップS80は実施例3では省略し、ステップS90のステップR70で時刻指定方式で制御目標値を算出する。
さらにステップS90に関しては、ステップR10からR60までとR80については、実施例2の図10(c)で説明した内容と重複する。ステップR70は、図12の説明文で制御フローF01と制御フローF02について説明した通りである。
なお実施例3では、比透過率の目標値P(t)の正弦波の「下限値だけを調整する実験」と「上限値だけを調整する実験」を行うが、図13(c)には前者の「比透過率の目標値Pの正弦波の上限値をP=100%に固定して、下限値の水準だけをスイッチで選択して出力する」内容を記載している。
もうひとつの「下限値をP=12%に固定して、上限値の水準だけをスイッチで選択して出力する」場合については、フローチャトのステップR40とステップR60で下限値を上限値と書き換えれば、同様にしてフローチャートが機能する。
図14は、比透過率の目標値P(t)の波形を正弦波とし、上限値か下限値だけを変更した解析事例である。
図14(a)から図14(e)までは、比透過率の目標値P(t)の正弦波の上限値をP=100%に固定して、下限値の水準を12%から90%まで9段階に調整した場合の実験結果である。
図14(b)に示すように、下限値の水準を基準形の12%から90%へ上げると光の位相遅れθLが増加する。
図14(c)は下限値を上げると透過光Loの平均値が増加する(レンズ80が明るくなる)ことを示し、 図14(d)は透過光の基本周波数の振幅が減少することを示す。
その結果、図14(e)によれば、下限値を上げると閃光比(=片振幅/平均値)は減少するので、ちらつきが減少する。
図14(f)から図14(j)までは、比透過率の目標値Pの正弦波の下限値をP=12%に固定して、上限値の水準を100%から20%まで9段階に調整した場合の実験結果である。
図14(g)によれば、上限値の水準を基準形の100%から20%へ下げると、光の位相遅れθLが減少する。
図14(h)によれば、上限値を下げると透過光Loの平均値が下がる(レンズ80が暗くなる)ことを示し、図14(i)は透過光の基本周波数の振幅が減少することを示す。
その結果、図14(i)によれば、上限値を下げると閃光比(=片振幅/平均値)は減少するので、ちらつきが減少する。
実施例3では、比透過率の目標値P(t)の波形を正弦波とし、その上限値か下限値だけを調整した場合の影響を調査したが、この場合も、「位相遅れθL」が大きく変化することが判明した。これは比透過率の目標値P(t)の波形はどの水準でも正弦波なので、LCD素子60の応答性と非線形性に起因している。
したがって、比透過率の目標値P(t)を正弦波とする場合であっても、正弦波の上限値や下限値を変更してレンズ80の明るさとちらつきを調整すれば光の位相遅れθLが大きく変化するから、「光と音の位相差Δθ」を治療用の所望の値に維持するためには、θs=θL+Δθの関係式から、音の刺激210を発生させるタイミング(音の位相遅れθs)も再調整する必要がある。
図15は、実施例4の「音の位相遅れθsを自動的に再調整」するハードウエア構成である。
図15(a)は実施例4のハードウエア構成で、電源は実施例1から実施例3と同じである。制御用マイクロコンピュータのアナログ入力AI1には可変抵抗VR1を接続し、比透過率Pの上限値もしくは下限値の水準を調整するために用いる。デジタル入力D11はSW1(トグルスイッチ)を読み込み、調整対象として上限値もしくは下限値を選択する。デジタル入力D12はSW2(押しボタンスイッチ)を読み込み、このボタンを押せば、上限値もしくは下限値の調整にかかわらず基準形(上限値=100%、下限値=12%)の条件でLCD素子60を駆動して明滅させる。
制御用マイクロコンピュータの出力端子の用途は実施例2や実施例3と同じだが、デジタル出力DO2とアンプAmpの間にイコライザEQ1を組み込んだ。これは、刺激音(クリック音)には低音(ドンドン)、中音(カチカチ)から高音(キンキン)までの広い周波数を含んでいるものの振幅が周波数によって不均一であることに加え、低品質なイヤホン168の音響特性では再生音の振幅が減少する周波数帯域がある。そこで、音の刺激210で強い脳波を発生させるために周波数スペクトルを均一化する目的で、振幅に過不足のある周波数帯域の増幅率を調整するため、コライザEQ1を設けた。
なお、イコライザEQ1を手動調整する際にイヤホン168が発生する音を周波数分析するスペクトラムアナライザなどの実験用の機材は図示省略した。
図15(b)は、今回使用するLCD素子60の特性に基づいて、上限値を増減させて調整する場合(下限値はP=12%に固定)に関して、X軸の比透過率Pの上限値の数値からY軸の光の位相遅れθLを算出する近似式を示す。元の計測データは図14(g)の実験結果のグラフと同じである。
図15(c)は、下限値を調整する場合(上限値はP=100%に固定)に関して、X軸の比透過率Pの下限値の数値からY軸の光の位相遅れθLを算出する近似式を示す。計測データは図14(b)の実験結果のグラフと同じである。
図16は、実施例4の「音の位相遅れθsを自動的に再調整」するフローチャートを説明する図である。
図16のフローチャートにおいて、ステップS10からステップS60までは既に説明した内容である。この実施例では、時刻指定方式を適用するが、図16のステップS80は使わず、ステップS90の中のステップR70のタイミングで時刻指定方式を適用する。
ステップS90は実施例4に固有の処理内容である。
ステップR10でスイッチSW1とSW2を読む。 ステップR20では、SW1=1なら上限値調整(つまり下限値=12%に固定)を開始し、SW=0なら下限値調整(つまり上限値=100%に固定)を開始する。ステップR30では、ボリウムVR1の電圧を読む。ステップR40では、ボリウムVR1の電圧に応じて、SW1=1なら上限値として設定する値を決定し、SW0なら下限値として設定する値を決定する。
ステップR50では、SW2=1なら基準形に相当する上限値=100%と下限値=12%を設定し、SW2=0なら何もしない。
ステップR60では、SW1=1なら上限値として設定する値を図15(b)の近似式の変数Xに代入して、光の位相遅れθLをYとして算出する。SW=0なら下限値として設定する値を図15(c)の近似式の変数Xに代入して、光の位相遅れθLをYとして算出する。
ステップR70の前半では、制御フローF01にもとづいて、比透過率の目標値P(t)を数式P(t)=a×sin(2π×f1×t-φ)+bを用いて算出する。なお、f1=40Hz、φ=0度とし、設定済みの上限値と下限値から、a=(上限値-下限値)/2とb=(上限値+下限値)/2を算出する。
さらに、ステップR70の後半では、制御フローF02にもとづいて、図12(c)で説明した逆写像の近似式を用いて印加電圧の絶対値を求め、アナログ出力AO1から出力する。
ステップR80では、位相同期信号Sと音の刺激210(クリック音)を出力する。
まず、位相同期信号Sは、実施例1と同様に、出力目標値を図5(b)のループ番号で指定するメモリ上の配列から読み取って、該当する論理値をデジタル出力DO4から出力する。
次に、音の刺激210は、クリック音としてパルス幅0.25ミリ秒の矩形波を採用する。具体的には、ループ番号NにおけるステップR80を音の刺激210の開始タイミング(C点)としてデジタル出力DO2から論理値1を出力し、次のループ番号N+1で音の刺激210を終了させるために論理値0を出力することでパルス幅が0.25ミリ秒になる。(なお、音響出力はアンプで交流信号だけを増幅するので、デジタル出力DO2から出力する論理値1と論理値0が逆でも良い)
なお、ループ番号N+2で音の刺激210を終了させればパルス幅は0.25×{(N+2)-N}=0.5ミリ秒となる。同様にしてクリック音のパルス幅を0.25ミリ秒の整数倍にすることが可能である。
音の刺激210の開始タイミングのループ番号Nは、一例として、下記の様にして算出する。
ステップR60で光の位相遅れθL(単位:度)を算出したので、所望の数値として予め内部変数で指定する例えばΔθ=10度の「光と音の位相差Δθ」を用いて、音の位相遅れθsをθs=θL+Δθで算出する。
例えば光の位相遅れθL=64.8度で、仮に内部変数で指定した「所望の光と音の位相差Δθ」がΔθ=10度ならば、θs=64.8+10=74.8度となる。
すると、図16(c)に示すように、ループ番号NのNは、Loop_Num=(θs/360)×100の整数部分なので、Loop_Num=74.8/360×100=20.8よりN=20となる。
これにより、ステップR80では、ループ番号N=20であればC点として音の刺激210を開始し、ループ番号N+1=21のときに音の刺激210を終了するようにデジタル出力DO2へ出力する。
<試験結果>
「光と音の位相差Δθ」をΔθ=0度に設定し、比透過率Pの上限値を100%~20%まで調整(下限値=12%に固定)する条件と、下限値を12%から90%まで調整(上限値は100%に固定)する条件で水準を変えて「光と音の位相差Δθ」の誤差を計測した。
この誤差の計測において、比透過率の目標値P(t)の上限値や下限値の水準ごとに計測したところ、LCDサングラスのちらつきの強さやレンズ80の明るさが変化し、同時に、光の位相遅れθLは実施例3で計測したとおり、約65度から約15度の範囲で増減した。
そこで、近似式で算出したθLを使い、実施例4の試験の事例としてΔθ=0を維持するように、数式θs=θL+Δθにもとづいて、音の位相遅れθsに相当するタイミング(C点)で音の刺激210を発生させるように自動調整した。その結果、Δθの変動幅は±10度(3σ)以内に抑えられた。
この実験により、本発明の課題である「光と音の位相差Δθ(Δθ)」を一定の値(つまり「誤差範囲」)に保って管理することが実現できたことを確認した。
図17は、実施例5の「比透過率Pの制御目標を階段状波形」にするソフトウエア構成である。
実施例5に使用するハードウエア構成は実施例2の図9(a)と同じであり、重複する説明は省略する。
図17(a)から図17(c)は、図5(b)の「番号指定方式」を用いて任意の波形形状を持つ比透過率の目標値P(t)を指定した事例である。
図17(d)は、3つの階段状波形を試験水準として選択するための、スイッチSW1とSW2の組み合わせを記載した一覧表である。
図17(e)は、選択する水準は3種類の波形だけなので、ソフトウエア構成の骨格は実施例1の図7(e)を利用し、ステップS90の中のステップR70を透過率制御の目標値を比透過率Pに変更した。
実施例5では比透過率の目標値P(t)を階段状波形にするため、比透過率の目標値P(t)を図17(a)から図17(c)までの番号指定方式の配列データで生成し、さらにその後は図12(b)から図12(d)までで説明したのと同じ処理をステップR70で実行する。透過率制御を行って結果を計測する手順も実施例3や実施例4と同じである。
図18は階段状波形の解析結果である。
図18(a)は階段状波形のデータ採取後にMATLABで解析した結果であり、3つの階段状波形の位相遅れの数値を算出した。この数値がB点を特定する光の位相遅れθLに該当する。従ってθs=θL+Δθの関係を利用して任意のΔθに対するθsが求まるので、音の刺激210を発生させるタイミング(C点)を計算できる。
具体的には、ループ番号0をA点として、光の位相遅れθL(B点)のループ番号NbをNb=θL/360×100で算出し、さらに、例えば光と音の位相差Δθを例えばΔθ=10度とした場合のC点のループ番号をNc=(θL+Δθ)/360×100で算出した。図18(a)には、B点とC点のループ番号の計算結果も記載した。
図18(b)から図18(d)は、3つの階段状波形をMATLABで解析した時系列チャートである。それぞれの階段状波形の事例では、位相同期信号Sと階段状波形Vrの波形にA点とB点を記載している。
すなわち、位相同期信号Sが論理値0から論理値1に立ち上がった瞬間が視聴覚制御装置50のループ番号0に相当しており、これがA点である。
また、それぞれの階段状波形Vrで、基本周波数成分Vrf1と平均値Vr.aveの加算値が増加しながらVr.aveを通過した瞬間がB点である。
したがって、A点からB点までの位相遅れが光の位相遅れθLであり、これに光と音の位相差Δθ(例えば10度)を加算した点がC点となる。
つまり、視聴覚制御装置50はθs=θL+Δθに相当するC点のループ番号NcにおけるステップS90の中のステップR80においてデジタル出力端子DO2から音を発生する信号を出力し、ループ番号Nc+1では音を停止することにより、パルス幅0.25ミリ秒のクリック音を適切なタイミングで生成できる。
以上のように、実施例5では、階段状波形などの任意の波形形状を繰り返す場合についても、位相同期信号Sと透過光Loの明るさの波形Vrを計測することによりA点からB点までのθLを確定でき、θs=θL+Δθの関係式を適用して任意のΔθに対するθsを算出して、音の刺激210を正確なC点のタイミングで付与できた。
このように、透過率制御の目標値が比透過率でも印加電圧の絶対値でも、あるいは波形が矩形波か正弦波かそれ以外の任意形状の繰返し波形であろうとも、音の刺激210を正確なタイミングで付与できることができる。
このようにして、本発明のLCDサングラスは、透過光を制御する波形を自由に選択でき、そのうえでレンズ80の明るさや明滅するちらつきの強さを調整しても「光と音の位相差Δθ」を一定の誤差の範囲に保って管理することができる。
≪変形例1:A点の決定方法について≫

図19は、A点の決定方法に関する変形例を説明する。
実施例1から実施例5では、「位相同期信号Sが論理値0から論理値1に立ち上がる瞬間」をA点とした。これは、視聴覚制御装置50はループ番号0でステップ90の中のステップR80を実行した瞬間に相当する。
ループ番号0とは、「基本周波数f1で繰り返す光の刺激200の1周期における、最初のサンプリング間隔(各実施例では0.25ミリ秒)の期間で規定されるタイミング」である。厳密には、ループ番号0でステップR80で位相同期信号Sの出力を実行した瞬間がA点として計測される。
図19(a)は本発明において重要な、A点、B点、C点の間の光の位相遅れθLと光と音の位相差Δθと音の位相遅れθsとに関するθs=θL+Δθの関係式を図示したものである。
ところで、上記の式の左右両辺に定数Kを加算しても関係は変わらない。つまり、θs+K=θL+Δθ+Kである。
図19(b)は、基本周波数40.0Hzで周期25.0ミリ秒の繰返しを100個のループ番号に分割した0.25ミリ秒のサンプリング間隔において、当該周期のループ番号0ではなく、1つ前の周期におけるループ番号90番をD点と呼ぶ場合を例にとってθs+K=(θL+K)+Δθの関係式を表したものである。
つまり、A点を起点とする本発明の関係式θs=θL+Δθを用いて「光と音の位相差Δθ」を一定の誤差の範囲に保って管理することができるのと同様に、D点を起点とするθs+K=(θL+K)+Δθの関係式を用いても、「光と音の位相差Δθ」を一定の誤差の範囲に保って管理することができる。
説明を簡単にするため、D点の位置をA点からK度だけ先行する位置に設定した事例を図19(b)に描いて説明したが、先行するループ数Mは、M=(K[度]/360[度])×100[ループの分割数]で算出できる。ただし、KもMも先行のみならず遅れた位置にも設定することができるので正負の値をとりうる。
したがって、本発明のA点の代用として、ループ番号0のA点からMループに相当する位相差K[度]だけ前後に移動したD点を起点として利用して、θs+K=θL+Δθ+Kの関係式を使うことができる。すなわち、D点、B点、C点の間の光の位相遅れθL+Kと光と音の位相差Δθと音の位相遅れθs+Kとに関するθs+K=(θL+K)+Δθの関係式を用いても、本発明と同様に「光と音の位相差Δθ」を一定の誤差の範囲に保って管理することができる。
この変形例1は、プログラミングや計測の都合などによりA点が利用できず、A点を前後に移動させたD点を利用する場合に適用できることを示している。
ただしその場合には、θs+KはD点からC点を表し、θL+KはD点からB点を表し、Δθは従来どおりにB点からC点を表すことに注意する必要がある。
≪変形例2: B点の決定方法について≫

図20は、図6(c)と図9(c)でも述べたが、B点の決定方法に関する変形例を説明する図である。
図20(a)に示すように、実施例1から実施例5では、LCDサングラス10のLCD素子60を透過する光Loの明るさを照度センサ(フォトトランジスタ)で計測した電圧Vrを用いて定義した。
これは図2(e)および図6(c)でも説明したとおり、「電圧Vrの平均値Vr.aveと基本周波数成分Vrf1とを加算した値が増加中に、平均値Vr.aveと交差する点」をB点とするものであった。
これは、手作業で解析作業を行う際に、電圧Vrの波形とグラフを重ね書きしておくことでグラフの読み取り操作を誤らないための措置であった。
図20(b)は、分析を自動化するために用いたB点の定義である。すなわち、図20(a)のような「電圧Vrの平均値Vr.aveを基本周波数成分Vrf1に加算した値」は使わずに、図9(c)のように「基本周波数成分Vrf1が増加中に、基本周波数成分Vrf1の平均値=0と交差する点」をB点とする。
簡単に言えば、「電圧Vrの基本周波数成分Vrf1が増加中に、ゼロ・クロス(数値=0の横軸と交差)する点」をB点と定義する。
この場合、A点も「位相同期信号Sの電圧Vsの基本周波数成分Vsf1が増加中に、ゼロ・クロス(数値=0の横軸と交差)する点」と定義する。これにより、MATLABの相互相関関数xcorrを用いて、デジタルオシロスコープOSCで計測した際のサンプリング周波数に対応するシフト点数を用いてVsf1とVrf1の位相差を算出できるので、A点とB点との位相差θLを自動計算できる。
各実施例の実験を行う際に、図20(a)によるB点の定義方法は実験結果の解析を手作業で検証する際に使用し、図20(b)のB点の定義方法は多数の実験結果を自動的に解析処理する際に使用した。
≪まとめ≫
以上の実施例および変形例で説明した本発明の技術思想にもとづいて、主要な6つの発明事項について重点的に整理する。
≪第1の発明事項:θs=θL+Δθの等式≫
第1の発明事項は、本発明の中心的な技術思想としてのθs=θL+Δθの等式に関し、下記の5つの段落で構成される。

<第1段落>
脳の機能的接続性の一時的な障害によるブレインフォッグのみならず、脳血管性のMCIを含む多種類の神経疾患の進行抑制を含む予防と症状の軽減のための知覚刺激療法器具20において、

<第2段落>
前記知覚刺激療法器具20は、視覚刺激器30と聴覚刺激器40と視聴覚制御装置50とから構成され、
前記視覚刺激器30は、両眼それぞれにレンズ80を配設した眼鏡、または1枚の幅広な前記レンズ80を配設して両眼で見るゴーグルやフェイスシールド、において周囲環境から入射する光を透過させる前記レンズ80としてLCD素子60を配設したLCDサングラス10であり、
前記聴覚刺激器40は、骨伝導イヤホン162、イヤホン168、ヘッドホン164またはスピーカー166を含む可聴周波数の音響を発する発音体160であり、
前記視聴覚制御装置50は、前記視覚刺激器30の前記LCD素子60に駆動信号を供給して透過率を制御するとともに前記聴覚刺激器40の前記発音体160に駆動信号を供給して制御することによって、予め前記視聴覚制御装置50で設定した繰返し周波数90と波形と光と音の位相差Δθからなる光の刺激200と音の刺激210を発生させる制御手段であって、

<第3段落>
前記視聴覚制御装置50が予め指定した周期で制御を繰り返すタイミングの始点をA点とし、
前記LCDサングラス10の前記LCD素子60から前記光の刺激200の発生を繰り返すタイミングの始点をB点とし、
前記発音体160から前記音の刺激210の発生を繰り返すタイミングの始点をC点とし、

前記A点から前記B点までを光の位相遅れθLとし、
前記B点から前記C点までを前記光と音の位相差Δθとし、
前記A点から前記C点までを音の位相遅れθsとし、

<第4段落>
前記視聴覚制御装置50は、前記視聴覚制御装置50の記録媒体上の前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθとの2つの変数にもとづいて、θs=θL+Δθの等式を成立させる前記C点のタイミングを前記音の位相遅れθsに制御して、前記音の刺激210の発生を繰り返す駆動信号を前記発音体160に供給する制御手段を備える
ことを特徴とする、 LCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具
<第1段落の説明>
『脳の機能的接続性の一時的な障害によるブレインフォッグのみならず、脳血管性のMCIを含む多種類の神経疾患の進行抑制を含む予防と症状の軽減のための知覚刺激療法器具20において』という文言は、本発明の用途を明示する記載である。
知覚刺激療法とは、光の刺激200と音の刺激210を用いてSSVEPとASSRの現象で脳波を発生する治療法であり、特許文献1に記載されたアルツハイマー型認知症の疾患修飾療法としての繰返し周波数40Hzの発光体150と発音体160を用いるGENUS(登録商標)が先行する技術として著名である。
一方、本発明では、特許文献1のみならず公知の特許文献4および非特許文献2や非特許文献3も参考にして、脳の大規模ネットワークの機能的接続性の一時的な障害による「脳梗塞治癒後に頻発する軽い認知機能低下としてのブレインフォッグ」や脳血管性の軽度認知障害(MCI)などの多種類の神経疾患の進行抑制を含む予防と症状の軽減のための知覚刺激療法器具20を本発明の用途としている。
つまり、本発明の知覚刺激療法器具20は、GENUSにおけるアルツハイマー型認知症の治療「だけに用いることを目的とする装置ではない」ことを明示する目的から、この第1段落を記載している。
本発明に基づく装置(ハードウエアおよび基本ソフトウエア)の用途は多様な神経疾患の治療と予防である。したがって本発明品の装置を利用する応用ソフトウエアを供給して他者の特許権をも実施しようとする者は、他者の特許権にかかわる応用ソフトウエアの供給者として各自で責任を負うものとする。
<第2段落の説明>
『前記知覚刺激療法器具20は、視覚刺激器30と聴覚刺激器40と視聴覚制御装置50とから構成され、
前記視覚刺激器30は、両眼それぞれにレンズ80を配設した眼鏡、または1枚の幅広な前記レンズ80を配設して両眼で見るゴーグルやフェイスシールド、において周囲環境から入射する光を透過させる前記レンズ80としてLCD素子60を配設したLCDサングラス10であり、
前記聴覚刺激器40は、骨伝導イヤホン162、イヤホン168、ヘッドホン164またはスピーカー166を含む可聴周波数の音響を発する発音体160であり、
前記視聴覚制御装置50は、前記視覚刺激器30の前記LCD素子60に駆動信号を供給して透過率を制御するとともに前記聴覚刺激器40の前記発音体160に駆動信号を供給して制御することによって、予め前記視聴覚制御装置50で設定した繰返し周波数90と波形と光と音の位相差Δθからなる光の刺激200と音の刺激210を発生させる制御手段であって、』という文言は、本発明の知覚刺激療法器具20について説明する。
「知覚刺激療法器具20は、視覚刺激器30と聴覚刺激器40と視聴覚制御装置50とから構成」することは図1(b)で説明した。
「視覚刺激器30は、両眼それぞれにレンズ80を配設した眼鏡、または1枚の幅広な前記レンズ80を配設して両眼で見るゴーグルやフェイスシールド、において周囲環境から入射する光を透過させる前記レンズ80としてLCD素子60を配設したLCDサングラス10であり」との文言についてここで追加説明する。
LCDサングラス10は特許文献3、特許文献5、特許文献6に記載される周囲環境から入射する光を透過させる前記レンズ80としてLCD素子60を配設したサングラスに似た外観を有し、両眼それぞれにレンズ80を配設した眼鏡、または1枚の幅広な前記レンズ80を配設して両眼で見るゴーグル、さらには最近になって医療機関などでも多く利用され始めたフェイスシールドのような形態で頭部に装着して使用する治療器具である。
「前記聴覚刺激器40は、骨伝導イヤホン162、イヤホン168、ヘッドホン164またはスピーカー166を含む可聴周波数の音響を発する発音体160」との文言については、可聴周波数の音響を治療用の刺激として両耳に聞こえるように発生することができる音響器具の具体的な事例として骨伝導イヤホン162、イヤホン168、ヘッドホン164またはスピーカー166を列挙したものである。
したがって、ヘルメットに内蔵する小型スピーカや、窓ガラスや机や家具に配設して電気信号から可聴周波数の音響を発生させる振動スピーカーなども、スピーカー166と同様に本発明における聴覚刺激器40の発音体160として利用することができる。
「前記視聴覚制御装置50は、前記視覚刺激器30の前記LCD素子60に駆動信号を供給して透過率を制御するとともに前記聴覚刺激器40の前記発音体160に駆動信号を供給して制御することによって、予め前記視聴覚制御装置50で設定した繰返し周波数90と波形と光と音の位相差Δθからなる光の刺激200と音の刺激210を発生させる制御手段であって、」との文言については、LCD素子60と発音体160に駆動信号を供給することについては、図1(b)および各実施例で説明した。
また、予め前記視聴覚制御装置50で設定した繰返し周波数90と波形と光と音の位相差Δθからなる光の刺激200と音の刺激210を発生させる制御手段であることについては、図2(e)をはじめ各実施例で重ねて説明した通りである。
<第3段落の説明>
『前記視聴覚制御装置50が予め指定した周期で制御を繰り返すタイミングの始点をA点とし、
前記LCDサングラス10の前記LCD素子60から前記光の刺激200の発生を繰り返すタイミングの始点をB点とし、
前記発音体160から前記音の刺激210の発生を繰り返すタイミングの始点をC点とし、

前記A点から前記B点までを光の位相遅れθLとし、
前記B点から前記C点までを前記光と音の位相差Δθとし、
前記A点から前記C点までを音の位相遅れθsとし、』の文言については、図2(e)、図16(b)、図19(a)および図19(b)などに図解し、それぞれ説明文を記載してある。
<第4段落の説明>
『前記視聴覚制御装置50は、前記視聴覚制御装置50の記録媒体上の前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθとの2つの変数にもとづいて、θs=θL+Δθの等式を成立させる前記C点のタイミングを前記音の位相遅れθsに制御して、前記音の刺激210の発生を繰り返す駆動信号を前記発音体160に供給する制御手段を備える』との文言については、図2(e)に関する説明文で概要を説明し、その具体例としてC点のタイミングを制御する事例を実施例4で説明している。
なお、発明事項1の文言は発明の技術思想を示すことに重点を置いて記載した。そこで、採取したデータからA点とB点を特定する方法を記載する文言については、発明内容をさらに明瞭に開示するため、以下の発明事項によって概念を詳細に規定する。
≪発明事項2:A点の定義≫
発明事項2では、図19(a)に記載した狭義なA点の定義を、図19(b)による定義方法を用いて広義な概念へ一般化している。
『前記A点は、前記視聴覚制御装置50が光の刺激200の制御を繰り返すタイミングの始点と位相差0度で位相同期するパルス信号としての位相同期信号Sが立ち上がる位相を基準として、位相差K度をもって位相同期する』という文言について説明する。
図2(e)の下から2段目のグラフと説明文では、図示したデューティ(Duty)比=50%の矩形波のパルス信号として説明した位相同期信号Sを用いて、繰返し周期ごとに位相同期するループ番号0ごとにA点を規定する旨を説明している。
また、図19(a)でθs=θL+Δθの関係式を説明し、図19(b)ではこのA点を基準としてK度だけ前後させたD点を用いて(θs+K)=(θL+K)+Δθによって音の刺激210を発生するC点のタイミングを規定できることを説明した。
つまり、「光の刺激200の制御を繰り返すタイミングの始点と位相差0度で位相同期するパルス信号としての位相同期信号Sが立ち上がる位相」の部分が図19(a)のA点であり、「位相同期信号Sが立ち上がる位相を基準として、位相差K度をもって位相同期する」が図19(b)のD点である。
この発明事項2で述べる「広義で一般化したA点」とは、図19(a)でθs=θL+Δθの関係式を説明した「狭義のA点」と、図19(b)で左右両辺に定数Kを加算した(θs+K)=(θL+K)+Δθの関係式を説明した際に用いたD点の概念を併合したものである。
ちなみに、K=0とすれば、A点とD点が同一の点になることは明らかである。
≪発明事項3:位相同期信号Sの出力≫
『前記視聴覚制御装置50は、前記位相同期信号Sを計測可能な信号として出力する』という文言について説明する。
これは、本発明の知覚刺激療法器具20の特性を検査あるいは調整する際に、制御系のA点を計測手段で特定するために必要であり、本発明の産業利用上の観点から重要な発明事項である。
位相同期信号Sは図2(e)の下から2段目のグラフと説明文では、図示したデューティ(Duty)比=50%の矩形波のパルス信号として生成する旨を説明したもので、これを図3の解析に使用するために図4(a)のデジタル出力DO4から外部へ出力する事例を各実施例で説明した。
一方、位相0度の点をデューティ(Duty)比=50%の矩形波で表現する以外にも、位相0度の瞬間にクリック音と同じパルス幅0.25ミリ秒のパルス波形を立ち上げたり、図5(b)の番号指定方式で任意の波形を位相同期させて出力させても製品検査の観点からは代替手段になる。
すなわち「位相同期信号Sを計測可能な信号として出力する」とは、「図2(e)の下から2段目のグラフで規定した位相同期信号Sとしてのデューティ(Duty)比=50%の矩形波のパルス信号以外の任意の波形であっても、視聴覚制御装置50における位相0度の点(またはループ番号0の期間)を計測によって特定できる既知の波形であれば、パルス波形でも正弦波でも矩形波でも三角波でも、その他波形の形状が任意の波形に変形してもよい。つまり、発明事項3で述べる計測可能な信号は、位相同期信号Sそのものでなくとも、位相同期信号Sの代用信号でもよい。さらにまた、この計測可能な信号を出力するタイミングは、位相同期信号Sが論理値0から論理値1に立ち上がる狭義のA点の代わりに、狭義のA点から既知の位相差をもって位相同期した『発明事項2のD点』でもよい。」という意味を表している。
≪発明事項4:B点の定義≫
発明事項4はB点の定義について2種類の表現を使えることを示すものである。
『前記B点は、前記LCDサングラス10の前記レンズ80として配設した前記LCD素子60の透過率が前記光の刺激200を繰り返す時系列波形Vr(t)について、
「Vr(t)の基本周波数190の時系列波形Vrf1(t)が増加中にVrf1(t)=0を通過した瞬間」、
もしくは、
「Vr(t)の前記基本周波数190の時系列波形Vrf1(t)に定数kを加算した値が増加中に、定数kを通過した瞬間」
をもって定義する』という文言について説明する。
上記の文言のうち前半の「Vr(t)の基本周波数190の時系列波形Vrf1(t)が増加中にVrf1(t)=0を通過した瞬間」、とは、変形例2の図20(b)の図と説明に示すように、データを自動解析してB点を特定する際に有用な定義である。
また、上記の後半の「Vr(t)の前記基本周波数190の時系列波形Vrf1(t)に定数kを加算した値が増加中に、定数kを通過した瞬間」とは図3の手順で詳細に説明したもので、図2(e)、図6(c)、図18および図19のように、Vrの平均値Vr.aveを定数kとして時系列波形Vrf1(t)に加算することで、Vrのグラフと重ね書きしながら手動でB点を解析する際に有用な定義である。
ちなみに、定数k=0とすればわかるように、両者で定義するB点は同一である。
≪発明事項5:光の位相遅れθLの決め方≫
発明事項5は、光の位相遅れθLの決め方について説明するものである。
『<段落A>
前記視聴覚制御装置50は、前記LCDサングラス10の前記レンズ80として配設した前記LCD素子60の透過率を制御する透過率制御の目標値として、比透過率の時系列データP(t)または印加電圧の絶対値の時系列データVabs(t)の前記繰返し周波数90と波形を固定的に使用するか、もしくは選択して調整する操作手段Aと、

<段落B>
前記比透過率の時系列データP(t)または前記印加電圧の絶対値の時系列データVabs(t)の波形が矩形波である場合には、矩形波の波形のデューティ(Duty)比か上限値か下限値のうち1つ以上を固定的に使用するか、もしくは選択して調整する操作手段Bと、

<段落C>
前記比透過率の時系列データP(t)または前記印加電圧の絶対値の時系列データVabs(t)の波形が正弦波もしくは階段状波形を含む任意の波形である場合には、波形か上限値か下限値のうち1つ以上を固定的に使用するか、もしくは選択して調整する操作手段Cと、

<段落D>
前記光と音の位相差Δθの数値を固定的に使用するか、もしくは調整して使用する操作手段Dについて、
操作手段A、操作手段B、操作手段C、もしくは操作手段Dのうち、いずれか1つ以上を備えるとともに、

<段落E>
前記視聴覚制御装置50は、前記光の位相遅れθLの数値を前記視聴覚制御装置50の記録媒体上に保持する手段として、前記LCD素子60の透過率を制御する透過率制御の目標値の波形の選択的な切替えかデューティ(Duty)比か上限値か下限値のうち1つ以上を調整した結果を入力変数とする「近似式」を備える』
まず、<段落A>に関して説明する。
『前記視聴覚制御装置50は、前記LCDサングラス10の前記レンズ80として配設した前記LCD素子60の透過率を制御する透過率制御の目標値として、比透過率の時系列データP(t)または印加電圧の絶対値の時系列データVabs(t)の前記繰返し周波数90と波形を固定的に使用するか、もしくは選択して調整する操作手段Aと、』
この段落では、透過率制御の目標値として「比透過率P」と「印加電圧の絶対値Vabs」の2種類の変数は、図4(c)の逆写像グラフで説明したとおり、透過制御の目標値としてどちらを使うこともできることを示す。
使用例としては、実施例1の図6(b)と、実施例2の図9(b)では比透過率Pと電圧のどちらを使うこともできる旨を示したうえで、電圧の上下限を調整する事例を示した。実施例3と実施例4と実施例5では比透過率Pを目標値として設定した。図12では、逆写像グラフを用いて比透過率の目標値から印加電圧の絶対値に変換し、さらにLCD素子60に正負の符合が反転する駆動電圧を印加するまでの波形の事例を示した。
これらの目標値は、繰返し周波数90と波形を設定したり切替えたり、さらには設計変更することも可能である。本発明では、繰返し波形における基本周波数f1は0.1から99.9Hzの間で0.1Hzおきに設定可能。各実施例ではf=40Hzを適用する事例について詳細に説明し、f=10Hzを適用する事例についても1サンプリング間隔を0.25ミリ秒とした事例では、1周期を400回のループで回るように設計変更する事例を説明した。なお、本明細書の説明に基づいて、当業者であれば、サンプリング間隔を0.25秒以外にして、適宜、設計変更することも容易である。
波形の指定方法には、メモリ上の配列にループ番号ごとの目標値を書き込む図5(b)の番号指定方式と、10秒周期の時刻を変数にして正弦関数(sin)などの時間関数を使って目標値を生成する図5(c)の時刻指定方式があることも実施例を用いて説明した。
スイッチや押しボタン、あるいは可変抵抗ボリウムを使用して実施例に記載したように波形を変更することができる。周波数については、例えば、図5(c)の時刻指定方式には2種類の基本周波数f1とf2を含むが、それぞれの正弦関数の振幅のうちどちらかを0に設定すれば、周波数をf1またはf2のどちらか1つだけに切替えることもできる。基本周波数を変更すれば、繰返し周波数も変化する。
振幅や周波数や波形などのパラメータを変更する手段としては、実施例で説明したスイッチやボリウムを使う方法だけでなく、リモコンやスマートホンのアプリを使って遠隔操作による操作手段を利用できることも一般的な技術知識として現時点では周知である。
これらの段落Aについて、固定もしくは選択して使用することを操作する手段を「操作手段A」とする。なお、例えば、治療に使用する繰返し周波数、波形、あるいは透過率制御の目標値が予め固定されていて、その固定値を変えずに電源投入して本発明の治療器具を使用した場合には、操作器具としての電源ボタンを投入することが「固定して使用すること」を選択したという意味であるものとする。
<段落B>に関して説明する。
『前記比透過率の時系列データP(t)または前記印加電圧の絶対値の時系列データVabs(t)の波形が矩形波である場合には、矩形波の波形のデューティ(Duty)比か上限値か下限値のうち1つ以上を固定的に使用するか、もしくは選択して調整する操作手段Bと、』
この段落は、実施例1と実施例2で矩形波の波形のデューティ(Duty)比か上限値か下限値の1つだけを変更して光の位相遅れ角θLを解析した事例を紹介した。これらのパラメータを複数同時に組み合わせて変更する計測試験を行って、複数のパラメータの組み合わせに対する光の位相遅れ角θLの実験データを採取することができる。
例えば、これらの3つのパラメータを入力変数(U、V、W)として光の位相遅れ角θLを計測した結果にもとづいて、近似式としての関数Y=F(U、V、W)を作るか、入力変数(U、V、W)を3次元配列とするθLの推定値を内挿(あるいは補間)によって求めることができる。
つまり、上限値か下限値のうち1つ以上を固定的に使用するか、もしくは選択して調整することで、計測点からわずかにずれた入力変数(U+Δu、V+Δv、W+Δw)における光の位相遅れ角θLを推定することができる。
パラメータを固定もしくは選択する方法は、スイッチや押しボタン、あるいは可変抵抗ボリウムを使用するだけでなく、リモコンやスマートホンのアプリを使って遠隔操作による操作手段を利用できる。
これらの段落Bについて、固定もしくは選択して使用することを操作する手段を「操作手段B」とする。なお、例えば、治療に使用するデューティ(Duty)比か上限値か下限値が予め固定されていて、その固定値を変えずに電源投入して本発明の治療器具を使用した場合には、操作器具としての電源ボタンを投入することが「固定して使用すること」を選択したという意味であるものとする。
次に、<段落C>に関して説明する。
『前記比透過率の時系列データP(t)または前記印加電圧の絶対値の時系列データVabs(t)の波形が正弦波もしくは階段状波形を含む任意の波形である場合には、波形か上限値か下限値のうち1つ以上を固定的に使用するか、もしくは選択して調整する操作手段Cと、』
この段落は、実施例3で正弦波の上限値か下限値の1つだけを変更して光の位相遅れ角θLを解析した事例を紹介した。実施例5では「階段状波形を含む任意の既知の波形」について上限値か下限値を固定して計測する事例を紹介したが、この「階段状波形を含む任意の既知の波形」について上限値か下限値を変更する方法は実施例3の設計変更で実施できる。
つまり、上限値や下限値や波形などのパラメータの選択を複数同時に組み合わせて変更する計測試験を予め行うことにより、選択を複数同時に変更した場合のデータを採取することができる。
パラメータや周波数を含む波形を固定もしくは選択する方法は、スイッチや押しボタン、あるいは可変抵抗ボリウムを使用するだけでなく、リモコンやスマートホンのアプリを使って遠隔操作による操作手段を利用できる。
これらの段落Cについて、固定もしくは選択して使用することを操作する手段を「操作手段C」とする。なお、例えば、治療に使用する波形か上限値か下限値が予め固定されていて、その固定値を変えずに電源投入して本発明の治療器具を使用した場合には、操作器具としての電源ボタンを投入することが「固定して使用すること」を選択したという意味であるものとする。
続いて、<段落D>に関して説明する。
『前記光と音の位相差Δθの数値を固定的に使用するか、もしくは調整して使用する操作手段Dについて、操作手段A、操作手段B、操作手段C、もしくは操作手段Dのうち、いずれか1つ以上を備えるとともに、』
この段落は、光と音の位相差Δθの数値を実施例4のようにΔθ=10[度]あるいは0[度」のように設定するか調整あるいは選択することができることを示す。
この光と音の位相差Δθの数値は、例えば周波数40Hzの正弦波を用いて比透過率Pの目標値の上限値と下限値をそれぞれLCDサングラス10の仕様上の最大値と最小値に設定した場合、ブレインフォッグを消失させるにはΔθ=0度を標準として固定して適用することが多い。あるいは、睡眠改善などの治療のために医師が適切と判断した値を処方する場合には、頭痛や過剰投与のリスクと患者個人の病状などを考慮しながら、Δθが0±90度などの範囲を超えないように調整して使用することも可能である。
光と音の位相差Δθの数値を固定もしくは選択する方法は、スイッチや押しボタン、あるいは可変抵抗ボリウムを使用するだけでなく、リモコンやスマートホンのアプリを使って遠隔操作による操作手段を利用できる。
これらの段落Dについて、固定もしくは選択して使用することを操作する手段を「操作手段D」とする。なお、例えば、治療に使用する波形か上限値か下限値が予め固定されていて、その固定値を変えずに電源投入して本発明の治療器具を使用した場合には、操作器具としての電源を投入することが「固定して使用すること」を選択したという意味であるものとする。
また、操作手段A、操作手段B、操作手段C、もしくは操作手段Dのうち、いずれか1つ以上を備えるので、操作手段A、操作手段B、操作手段C、もしくは操作手段Dのどれかあるいは全てをスイッチなどに限らずリモコンやスマートホンのアプリ、さらにはパソコンや遠隔サーバからの通信によって操作してもよい。
これらの操作手段A、操作手段B、操作手段C、もしくは操作手段Dに関する固定値を変えずに電源投入して本発明の治療器具を使用した場合には、操作器具としての電源ボタンを投入することが「固定して使用すること」を選択したという意味であるものとする。
<段落E>に関して説明する。
『前記視聴覚制御装置50は、前記光の位相遅れθLの数値を前記視聴覚制御装置50の記録媒体上に保持する手段として、前記LCD素子60の透過率を制御する透過率制御の目標値の波形の選択的な切替えかデューティ(Duty)比か上限値か下限値のうち1つ以上を調整した結果を入力変数とする「近似式」を備える』
前述の発明事項1においては、前記視聴覚制御装置50の「記録媒体上」の前記光の位相遅れθLと広く表現したので、この段落では、光の位相遅れθLがどのように「記録媒体上にある」のかを示す。
実施例4では、実施例3で行った実験をもとに、比透過率Pの上限値か下限値を調整した結果を入力変数とする近似式を視聴覚制御装置50で演算して光の位相遅れθLを算出した。同様にして、実施例1や実施例2および実施例5で行った実験をもとに、透過率制御の制御目標の波形の選択的な切替えかデューティ(Duty)比か上限値か下限値を調整した結果を入力変数とする近似式を作ることができる(例えば図8(b)の図中に記載した近似式を参照)。
さらに、複数の周波数を含みうる「波形」か「デューティ(Duty)比」か「上限値」か「下限値」のうち1つ以上のパラメータを組み合わせて変更する実験水準をきめて光の位相遅れθLを計測する実験を行うことができる。
そうすれば、たとえば波形が矩形波なら「デューティ(Duty)比」と「上限値」と「下限値」を3つのパラメータU、V、Wとして用いることで、θLの「近似式」としてのθL=F(U、V、W)を作成して利用することができる。
また、たとえば波形が基本周波数が1つだけの正弦波なら「上限値」と「下限値」の2つのパラメータをU、Vを用いて、近似式としてのθL=G(U、V)を作成して利用できる。
≪発明事項6:基本周波数の種類の数≫
発明事項6は基本周波数の種類の数が1つもしくは複数であることを示すものである。
『<段落α>
前記視聴覚制御装置50で設定した前記光の刺激200の波形には、1つもしくは複数個の前記基本周波数190を含み、

<段落β>
前記発音体160から発生を繰り返す前記音の刺激210の種類の数は、前記基本周波数190の種類の数と等しく、
前記視聴覚制御装置50が出力する前記位相同期信号Sの種類の数は、前記基本周波数190の種類の数と等しく、
前記視聴覚制御装置50で設定する前記A点と前記B点と前記C点と前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθと前記音の位相遅れθsの種類の数は、前記基本周波数190の種類の数と等しく、

<段落γ>
前記視聴覚制御装置50は、前記視聴覚制御装置50の記録媒体上の前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθとの2つの変数にもとづいて、θs=θL+Δθの等式を成立させる前記C点のタイミングを前記音の位相遅れθsに制御して、前記音の刺激210の発生を繰り返す駆動信号を前記発音体160に供給するにあたり、
前記基本周波数190の種類ごとに前記音の位相遅れθsを制御する』
まず、<段落α>について説明する。
『前記視聴覚制御装置50で設定した前記光の刺激200の波形には、1つもしくは複数個の前記基本周波数190を含み、』
本発明は、周期的な光の刺激200と音の刺激210によって脳波を発生させるメカニズムで動作するが、光の刺激200については図5(c)で説明したように1つもしくは2種類以上の基本周波数で繰り返すことができる。この時刻指定方式の説明で述べたように、例えば複数の基本周波数を持つ正弦関数(Sin)の線形和で比透過率Pの目標値を表現することにより、光の刺激200に1つだけでなく2つ以上の基本周波数を持たせることができる。
また、図4(a)のハードウエア構成で述べたように、イコライザで音質を変えて特徴をつけた2種類のクリック音を発生して、2種類の基本周波数による音の刺激210を実現できる。基本周波数の数が2種類を超える場合も同様である。
なお、基本周波数が1つの場合には繰返し周波数はそれと等しく、複数の基本周波数を有する場合にはその「繰返し周波数の周期」は「複数の基本周波数ごとの周期」の最小公倍数である。
次に<段落β>について説明する。
『前記発音体160から発生を繰り返す前記音の刺激210の種類の数は、前記基本周波数190の種類の数と等しく、
前記視聴覚制御装置50が出力する前記位相同期信号Sの種類の数は、前記基本周波数190の種類の数と等しく、
前記視聴覚制御装置50で設定する前記A点と前記B点と前記C点と前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθと前記音の位相遅れθsの種類の数は、前記基本周波数190の種類の数と等しく、』

<段落α>でも説明したとおり、本発明では発音体160から発生を繰り返す音の刺激210の種類の数は基本周波数190の種類の数と同じだけ配設する。
さらに、基本周波数ごとに位相同期信号Sを設けることで図3に記載した解析作業を製品生産時あるいは調整時に行うことが可能になるので、位相同期信号Sの種類の数は、基本周波数190の種類の数と同じだけ配設する。
このようにして図3の解析や実施例4の制御が可能であるから、A点とB点とC点と光の位相遅れθLと光と音の位相差Δθと音の位相遅れθsは基本周波数190の種類の数と等しく設けることができる。
次に、<段落γ>について説明する。
『前記視聴覚制御装置50は、前記視聴覚制御装置50の記録媒体上の前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθとの2つの変数にもとづいて、θs=θL+Δθの等式を成立させる前記C点のタイミングを前記音の位相遅れθsに制御して、前記音の刺激210の発生を繰り返す駆動信号を前記発音体160に供給するにあたり、
前記基本周波数190の種類ごとに前記音の位相遅れθsを制御する』

この<段落γ>は、基本周波数190の数が1つあるいは2つ以上の複数ある場合には、実施例に示したf1=40Hzやf2=10Hzなどのような基本周波数190の種類ごとに音の位相遅れθsを制御することを示している。具体的には、基本周波数190の種類ごとに位相同期信号Sを準備して図3の解析によって実施例1、実施例2あるいは実施例3や実施例5のように、複数の基本周波数を含みうる波形やデューティ比のほか、電圧や比透過率Pの上限値や下限値のパラメータを個別にあるいは複数組み合わせて光の位相遅れθLの値を計測・解析する。
そのうえで、視聴覚制御装置50は、視聴覚制御装置50の記録媒体上に、実施例の実験で採取した計測データにもとづいて「近似式」または「内挿」によって算出あるいは特定して準備した「光の位相遅れθL」と、光と音の位相差Δθとの2つの変数にもとづいて、θs=θL+Δθの等式を成立させるC点のタイミングを音の位相遅れθsに制御して、音の刺激210の発生を繰り返す駆動信号を発音体160に供給するものである。
<経緯>
本発明のLCDサングラスの研究開発は、発明者自身が2018年末に脳梗塞に倒れ、治癒後に頻発したブレインフォッグの症状を緩和するため、自らの身体で実験を行う自主開発からスタートした。
その当時、アルツハイマー型認知症の根本治療効果を目指して米国で開発中の「光と音の刺激を用いた治療法」であるGENUS(登録商標)に、ブレインフォッグの症状を抑える副作用があるらしいことが下記文献で報道された。
[参考文献]: CAROLYN WEAVER、2017、Brain-wave treatment for Alzheimer′s is promising、 but the first human subject is left behind、AlterNet

これが、本発明の「SSVEPとASSRによる光と音の刺激」を運動療法や認知療法と組み合わせてブレインフォッグ対策に活用する「LCDサングラス」への着想の原点(特許文献3)になった。
発明者は、LCDサングラスの1号機の開発成功以来、頻発するブレインフォッグの症状を5分から30分以内に解消できる対症療法としての効果を日常的に享受している。脳血管性の基礎疾患(脳梗塞の再発の可能性)そのものについては改善できないが、少なくともブレインフォッグの症状を短時間で解消する対症療法としての大きな効果があることは確かである。
一方、発明者が1号機を開発した2019年の段階では、本来のGENUSの作用機序は「アミロイドβを減らすアルツハイマー認知症の根本治療」であるとされ、このLCDサングラスが脳血管性のブレインフォッグ解消に即効性を発揮する事実のメカニズムは説明できなかった。
このLCDサングラスが脳梗塞の治癒後に頻発するブレインフォッグを即効性をもって消失させる事実を説明する文献を捜し求め続けたところ、2021年になって、非特許文献2や非特許文献3に加え、脳の機能的接続性を表す数学的なコヒーレンス(非特許文献5、非特許文献6)を改善する現象と関連性が高いことに気付いた。
2022年に至り、LCDサングラスを使用中における自らの脳波を工学研究用の多チャンネルのデジタル脳波計OpenBCI(登録商標)を導入して計測し、デジタルデータを数学解析ソフトMATLAB(登録商標)で分析したところ、GENUSと同様の「コヒーレンスの改善効果」が発生している事実を統計的に有意な客観的データで確認できた。
これにより、LCDサングラスがブレインフォッグを短時間で解消する効果のメカニズムが「脳の機能的接続性の改善」によるものであることがようやく判明した。
このように、発明者自身はLCDサングラスの効果を日常的に享受している。しかし、これを社会に還元するためには、LCDサングラスの安全と品質の確保が大前提である。そうでなければ、大学等や医療機関に臨床研究どころか基礎研究すら要請することができない。
そこで発明者は、自らをモルモットにして技術の改良に努め、2019年の開発着手から3年の歳月を経て、ようやく、LCDサングラスの実用化を妨げていた「効果のバラツキ」の課題を本発明によって解決した。
これにより、下記のような産業上の利用可能性が現実のものになりつつある。
<可能性の概要>
高齢者の弱った視力や認知能力あるいは脳血管性疾患のリスクを考慮して、レンズ80の明るさや明滅するちらつきの強さを調整すると、治療用に設定した「光と音の位相差Δθ」が乱れて、「効果のバラツキ」という課題を悪化させていたことに発明者は気付いた。
そこで本発明において、「光と音の位相差Δθ」を一定の誤差の範囲に保つように、音の刺激のタイミングを自動調整することによって課題を解決した。
このため、既に非特許文献5、非特許文献6で安全性が治験で確認されたデジタル医薬品のGENUS(登録商標)と同様に、治療効果のバラツキや有害事象などの不具合を防止しつつ、治療効果と安全性を高めるための用法と用量に関する臨床研究や治験を行うことが可能になった。
本発明により、LCDサングラスを運動療法や認知療法と併用して治療するための基礎研究を妨げていた品質管理上の課題が解決したため、LCDサングラスを品質管理された治療器具として供給できる可能性が高まり、医療に関する基礎的な学術研究のほか、臨床医療や看護あるいはデジタル医薬品などの産業分野で貢献できる可能性がひらけた。
また、意欲的な医薬品業界の新たな収益源となるデジタル医薬品の分野において、脳梗塞のリハビリやMCIなどの認知障害を含む多種多様な神経疾患に関する画期的な予防法や治療法を研究するにあたり、飛躍的な向上をもたらす多くの研究課題を提供できるだろう。
<具体的な事例>
本発明は、非特許文献5と非特許文献6で安全性が確認された40HzのSSVEPとASSRを同時に使用する発光体150と発音体160を用いた知覚刺激療法「GENUS」を背景技術とし、さらに脳梗塞の治癒後に「弱いブレインフォッグ」の症状が頻発する場合には5分から30分程度の短時間で症状を消すことができる発明者自身の3年間にわたる利用事例と脳波解析事例もあり、脳血管性のMCI(軽度認知障害)の発症前に患者の行動意欲を高めて症状の進行を遅らせる用途に適用できることが期待される。
あるいは、MCIの患者を治療する医薬品は現時点で存在しないが、脳血管性のMCIや非健忘性MCIによって強いブレインフォッグの症状が頻発する場合でも、本発明のLCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具によって脳の機能的接続性を高めることで、ブレインフォッグを軽減して患者の意欲を向上させながら、運動療法や認知療法と併用してMCIから健常な状態に戻すか、あるいはMCIから認知症へ進行することを遅らせることができることが期待される。
このように、運動療法や認知療法と併用することによって、元来は特許文献1や非特許文献5、非特許文献6のようにアルツハイマー型認知症の疾患修飾療法として成果の出ているGENUS(登録商標)の40Hzによる光と音の刺激による知覚刺激療法の用途を、アルツハイマー型認知症の治療と予防の用途だけではなく、脳血管性のMCIの治療と予防へも応用できることが期待される。
日本の場合、脳梗塞のような脳血管性の疾患が治癒した後になってブレインフォッグが頻発することで患者が社会参加の意欲を失って引きこもりがちになり、心身への刺激が減少して脳血管性MCIに進行し、更には重症化して認知症に進んでしまうこともある。
したがって、脳血管性疾患の治癒後のブレインフォッグが頻発した時点で、本発明によるLCDサングラスをリハビリ用の機材として医療機関から処方できるならば、日本国内の高齢者のMCIや認知症患者の発生そのものの予防に役立つ可能性がある。
これにより、高齢者の認知症発症を回避もしくは遅らせることができれば、高齢者が活動的な老後を生きることができ、それぞれの個人的な生活の質(QOL:Quality of Life)や創造性を維持し続ける可能性を高めることに貢献しうる。
また、本発明によって脳血管性MCIや認知症を予防することができれば、社会経験と職業スキルを備えた多くの高齢者が早期に認知障害に陥る危険性を減らし、社会貢献し続けることのできる社会の実現に有用である。
さらに本発明は、40Hz以外の周波数にも適用できるので、例えば10Hzなどのアルファ波や、あるいはシータ波などの多様な周波数帯域、さらには2つの基本周波数を持った位相振幅結合(PAC)に関する脳神経分野の学術研究にも貢献できる可能性がある。
また、現代社会で多発する傾向のあるうつ病などの多様な神経疾患の治療器具として、大学等をはじめとする医療機関の学術的な研究用の機材としても、社会的あるいは産業応用として多様な利用の可能性を備えるものである。
高齢者介護施設等では、認知症予防あるいは治療のため、運動療法や認知療法あるいはアロマ療法などの非薬物療法による介護の努力が行われている。ブレインフォッグのために社会参加意欲が低下しがちな高齢者の症状を本発明のLCDサングラスにより軽減できれば、様々な非薬物療法による介護の効果を高めることが期待できる。
これにより、患者個人や家族のみならず社会全体としての医療コストの抑制にも役立つ可能性がある。
10 LCDサングラス
20 知覚刺激療法器具
30 視覚刺激器
40 聴覚刺激器
50 視聴覚制御装置
55 比透過率計測回路
60 LCD素子
70 写像グラフ
75 逆写像グラフ
80 レンズ
90 繰返し周波数
150 発光体
160 発音体
162 骨伝導イヤホン
164 ヘッドホン
166 スピーカー
168 イヤホン
200 光の刺激
210 音の刺激

Claims (6)

  1. 脳の機能的接続性の一時的な障害によるブレインフォッグのみならず、脳血管性のMCIを含む多種類の神経疾患の進行抑制を含む予防と症状の軽減のための知覚療法器具20において、

    前記知覚療法器具20は、視覚刺激器30と聴覚刺激器40と視聴覚制御装置50とから構成され、

    前記視覚刺激器30は、両眼それぞれにレンズ80を配設した眼鏡、または1枚の幅広な前記レンズ80を配設して両眼で見るゴーグルやフェイスシールド、において周囲環境から入射する光を透過させる前記レンズ80としてLCD素子60を配設したLCDサングラス10であり、

    前記聴覚刺激器40は、骨伝導イヤホン162、イヤホン168、ヘッドホン164またはスピーカー166を含む可聴周波数の音響を発する発音体160であり、

    前記視聴覚制御装置50は、前記視覚刺激器30の前記LCD素子60に駆動信号を供給して透過率を制御するとともに前記聴覚刺激器40の前記発音体160に駆動信号を供給して制御することによって、光の刺激200と音の刺激210の波形パターンと位相差Δθを発生させる制御手段であって、

    前記視聴覚制御装置50が前記光の刺激200の制御を繰り返すタイミングの始点をA点として制御し、
    前記LCDサングラス10を制御するパラメータを、固定するか、選択または調整する手段で変更することによって、前記LCD素子60から前記光の刺激200の発生を繰り返すタイミングの始点をB点として固定または演算し、
    前記発音体160から前記音の刺激210の発生を繰り返すタイミングの始点をC点として制御し、

    前記A点から前記B点までを光の位相遅れθLとし、
    前記B点から前記C点までを前記光と音の位相差Δθとし、
    前記A点から前記C点までを音の位相遅れθsとし、

    前記視聴覚制御装置50は、前記視聴覚制御装置50の記録媒体上の前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθとの2つの変数にもとづいて、θs=θL+Δθの等式を成立させる前記C点のタイミングを前記音の位相遅れθsに制御して、前記音の刺激210の発生を繰り返す駆動信号を前記発音体160に供給する制御手段を備える
    ことを特徴とする、 LCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具
  2. 前記視聴覚制御装置50が前記光の刺激200の制御を繰り返すタイミングの始点を前記A点として制御する代わりに、前記A点を基準としてK度だけ前後に移動させたD点を前記光の刺激200の制御を繰り返すタイミングの始点として制御する
    ことを特徴とする、請求項1に記載のLCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具
  3. 前記視聴覚制御装置50は、前記A点または前記D点のタイミングを表す計測可能な信号を出力する
    ことを特徴とする、請求項2に記載のLCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具
  4. 前記B点は、前記LCDサングラス10の前記レンズ80として配設した前記LCD素子60の透過率が前記光の刺激200を繰り返す時系列波形Vr(t)について、
    「Vr(t)の基本周波数190の時系列波形Vrf1(t)が増加中にVrf1(t)=0を通過した瞬間」、
    もしくは、
    「Vr(t)の前記基本周波数190の時系列波形Vrf1(t)に定数kを加算した値が増加中に、定数kを通過した瞬間」
    をもって定義する
    ことを特徴とする、請求項1に記載のLCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具
  5. 前記視聴覚制御装置50は、前記光の位相遅れθLの数値を推定する手段として、前記LCD素子60の透過率を制御する透過率制御の目標値の波形の選択的な切替えかデューティ(Duty)比か上限値か下限値のうち1つ以上を調整した結果を入力変数とする「近似式」を備える
    ことを特徴とする、請求項1に記載のLCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具

  6. 透過率制御の目標値に含まれる基本周波数190において、
    前記視聴覚制御装置50で設定した前記光の刺激200の波形には、1つもしくは複数個の前記基本周波数190を含み、
    前記視聴覚制御装置50は、前記視聴覚制御装置50の記録媒体上の前記光の位相遅れθLと前記光と音の位相差Δθとの2つの変数にもとづいて、θs=θL+Δθの等式を成立させる前記C点のタイミングを前記音の位相遅れθsに制御して、前記音の刺激210の発生を繰り返す駆動信号を前記発音体160に供給するにあたり、
    前記基本周波数190の種類ごとに前記音の位相遅れθsを制御する
    ことを特徴とする、請求項1に記載のLCDサングラスを用いる知覚刺激療法器具
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