JP7355334B2 - 電子閃光サングラスからなる認知症治療器具 - Google Patents
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Description
この種の器具を利用する認知症の治療技術として、繰り返し周波数40Hzの波形で点滅する専用光源が発する閃光を被治療者に照射し、強制的に視覚を刺激することによって脳波(ガンマ波)を発生させ、認知症の原因となる脳内の毒性物質を低減する40Hz閃光療法(40Hz Flashing Light Therapy)という治療法が知られている。
非特許文献1は、40Hz閃光療法のアイディアを応用した器具であり、認知症の予防、軽減、および治療のため、繰り返し周波数40Hzの強烈な閃光を照射するのではなく、繰り返し周波数40Hzで明滅する表示装置として米国製のiPad(登録商標)に認知症治療のための各種の認知ゲームの画像を表示する装置であり、米国では既に販売されている。
特許文献2の研究事例は、40Hz閃光療法のアイディアを応用した器具であり、強烈な閃光を閉じたまぶたの上から照射する。ガンマ波を誘導する最適な周波数は38.6~39.6Hzの範囲である、と独自の研究にもとづいて主張している。
ちなみに、60Hz~144Hzなどの規格化された周波数で右目と左目に対応する画像を交互に表示する画面を、右目レンズと左目レンズに配した液晶シャッター素子を左右の画面と同期して左右交互に透過・遮断させて立体映像を視聴する3Dディスプレイ用の市販品の3Dメガネがよく知られている。
この市販品に組み込まれた液晶シャッター素子は、外部から印加される電圧によって透過率を変化させて、通過する光束を制御する電子部品である。偏光子を組み込んだ液晶シャッター素子の場合、透過率が最大なるように制御しても、現時点では実際の市販品の透過率は30%~50%にすぎず、3Dメガネの外見は偏光レンズつきの黒いサングラスのように見える。
そこで以下の説明では、実際に入手しうる電子部品としての液晶シャッター素子を、「透過率が30%から50%程度の仮想的な黒色の光学フィルタと、最大100%から最小0%の範囲で透過率を制御しうる理想的な電子シャッター機能を貼り合わせた電子部品」と近似的に扱い、理想的な電子シャッター機能139の透過率を最大100%から最小0%の範囲で制御することを想定して本発明の技術思想と実施例を説明する。
なお、実際に入手しうる電子部品としての液晶シャッター素子では、透過率が30%から50%程度の仮想的な黒色の光学フィルタの作用によって目から入る光の照度は低下するが、人間の目の瞳孔の開閉の働きによって、網膜に届く光の照度の低下は自動的に調整されるため、光が網膜に届く段階では、前述の仮想的な黒色の光学フィルタの影響による網膜における照度の低下の影響はほとんど無くなる。
このため、本発明では網膜に届く光を、繰り返し周波数24Hzから50Hzの間で透過率制御する電子シャッター機能139による技術思想の創作に関して説明する。
なお、以下の文章を読みやすくするため、本発明に独特な用語としての「電子シャッター機能139」を、簡単に「電子シャッター」と記載する。
なお、電子シャッターの機能を実際の機器設計に適用するには、低コストで入手可能な電子部品が必要である。前述の3Dディスプレイ用の3Dメガネ用に量産されている液晶シャッター素子は、発明者による実験の結果、本発明における電子シャッターの機能を実現する電子部品として利用可能である。
そこで、このようなことがないように、周囲の明るさを一定の範囲に保つために治療環境の照明条件を整備する必要があり、認知症の治療コストがかさむ原因となる。
なお、例えば前記右目の電子シャッターと前記左目の電子シャッターに位相差を与える場合は、左右の電子シャッターを独立に制御する。
一方、前記右目の電子シャッターと前記左目の電子シャッターを同一波形かつ同位相で制御する場合には、前記右目の電子シャッターと前記左目の電子シャッターの透過率をそれぞれ独立に制御するのではなく、例えば電気的に並列あるいは直列に接続することにより、駆動状態を共通にして制御しても本発明の課題を解決することができる。
したがって、「透過率をそれぞれ制御する」とは、「透過率を独立に、もしくは共通に、制御する」という意味である。
また、電子サングラス本体のメガネのレンズ部分の光の透過率を制御することによって周囲光そのものを変調して閃光を発生させるので、従来のような周囲光が明るすぎて専用光源の閃光が目立たなくなる問題も解決される。従って、治療環境の照明条件を整備する必要がなくなり、照明条件の整備のために認知症の治療コストがかさむ第2の問題も解決される。
このようにして本発明は、従来の40Hzで点滅する特殊な専用の光源が不要となる。
そのため、日常の生活習慣を守って、輝く太陽や明るすぎる室内照明などの光源を凝視しないように注意するだけで、強すぎる光で目を傷めることがないうえに、治療環境の照明条件を整備するコストを大幅に削減することができる。
まず、本発明を利用する際に、従来技術との違いを明確に表す産業上の利用方法の特徴を説明する。 図1は、被治療者1が電子閃光サングラス30を装着して40Hz閃光療法を実施する場面を例示したものである。
本発明において、医療機関での治験や治療における処方の便宜上、厳密に定量化する場合に備え、閃光Hの定義を「一定周期で繰り返して目に入射する光の最高照度Cが、一定周期で繰り返して目に入射する平均照度Aに対して突出した照度差H=C-A」を表すものとする。本発明は、この閃光Hを40Hz閃光療法の視覚刺激として利用する。
また図2(c)は多数の中間照度Fを持つ波形で電子シャッターを駆動する波形を表し、
この場合でも、閃光HはH=C-Aで定義する。時間や照度の設定値が離散的にならざるをえない場合は、時系列波形は図のような傾斜した直線ではなく階段状になる。
本発明では、単純な矩形波波形にとどまらず、任意の時系列波形で透過率を制御できる。つまり、目に入射する光の照度を、最高照度Cと最低照度Gだけの2値だけにとどまらず、1つ以上の値を持つ中間照度Fも出力する機能と構造を電子閃光サングラスのシステム全体に与えることで、2値を超える数の照度で構成される時系列波形についても出力することができるようにした。
実際の治験や治療の処方時には、閃光Hの値が同じ場合でも、照度の時系列的な波形の違いによって治療効果が異なる可能性もある。十分な治験を行って、被治療者1の個人ごとに異なる多様な症状に適した時系列的な波形を見出してくださるよう、医療関係者にお願いしたい。
図3は、本発明の電子閃光サングラスと、従来の3Dメガネの技術思想の相違点を説明する。電子閃光サングラスは従来の3Dメガネ用に量産された安価な液晶シャッター素子を利用して低コストに実現することができる点で技術的な共通部分が多い。ところが、電子閃光サングラスは、従来の3Dメガネの技術思想では着想することすらできない下記の独創的な特徴を持っている。
一方、従来の3Dメガネは、他励動作で電子シャッターの透過率を制御する多様な規格が制定されて量産されている。最近では繰り返し周波数が3D画像のディスプレイ装置の規格に対応して96Hz~144Hzなどの高速で動作する安価な量産品が市販されている。そのため、3Dメガネに使われる量産品の液晶シャッター素子は、電子閃光サングラスへの組み込み用の電子部品として活用できる十分高い応答性を持っている。
しかし、後に実施例で説明するように、電子サングラス本体10を構成する透過率制御装置150と電子シャッター部135を分離する構造を採用する設計形態においては、これらの外見形状は電子シャッター部135の形状として採用することができる。
図4(a)は、メガネ型の電子サングラス本体10の事例を示す。この形状は従来の3Dメガネにも多く採用されているものである。電子閃光サングラスは内蔵した透過率制御情報170にもとづいて自励動作で電子シャッターの透過率を制御する。
しかし、市販の3Dメガネなどの他用途の類似機器は、認知症治療のための医療器具ではなく事務用品や玩具などとしてそれぞれの用途に合わせて設計されている。電気品としての品質や耐久性も含めて医療器具ほど高品質でない場合があるかもしれない。
もし、それらの改造あるいは用途転用品が、「認知症治療に使える」などと宣伝されて販売され、故障や性能不良で医療事故が起きた場合には、販売者への損害賠償責任が高額になるおそれもある。つまり、3Dメガネなどの別目的の機材を簡単に改造しただけで販売されると、「医療器具としては非合法な粗悪品」になりうるかもしれない。
つまり、医療機関による治験や医師の診断に基づいて処方された器具でなく、然るべき公的機関や公益的な法人による試験、検査、規格、規制、認証などを全く受けずに、「認知症治療に使える」などと宣伝されて販売されるなら、そのような危険性を内在した物品の製造、輸入および販売などに携わった業者は責任を問われることを覚悟すべきかもしれない。
これは、治験用の機器の製造業者が、治験用の機材を供試品として医療機関に提供する場合にも注意すべき課題である。然るべき公的機関や公益的な法人による試験、検査、規格、規制、認証などの展望を織り込んだ契約を行うべきであろうと思われるが、この点は、本装置を治験に供給する上での実務上の課題となろう。
なお、個人で自分専用の機材を設計製作して自分だけに適用するなら、失敗してもそれは全くの自己責任であることを覚悟すべきである。部品単体ごとに自ら進んで調達したのであれば、部品単体の提供者などの第三者に責任を転嫁すべきではなかろう。つまり、企画、設計から購入部品の受け入れ検査、組み立て、調整および自分自身への適用した結果に至るまで、全て自己責任であるという覚悟を持つべきではないだろうか。
図5は、視覚が検出可能な明るさの範囲を示す。具体的には、周囲の明暗への視覚の順応は、目の瞳孔が開閉する働きによって、10万ルクスを越える真夏の海岸から、1,000ルクス程度の室内の夜間照明、さらに暗い1ルクス以下の星空や月明かりまで、きわめて広い範囲に及ぶことを示すものである。
だとすれば、上記の場合に網膜に到達する光の明るさも、平均照度Aから最高照度Cまで(C-A)/Aの比率で変化して、ちらついて見えることになる。
つまり、「周囲環境が明るくても暗くても、1秒よりも十分に長い時間にわたって目を順応させておけば、同一の波形で透過率制御する場合の光のちらつき具合は同等であろう」、という仮説が成り立つ。
これは、自分自身を実験動物に見立てた、自己責任で行う動物実験にほかならない。
図6は、所定の繰り返し周波数で発生する「閃光の強さ」を定量的に評価するための閃光比率Eの定義を表す。
すなわち、電子閃光サングラスを透過率制御して得られる平均照度Aと、1周期の間の最高照度Cにより、平均照度Aから最高照度Cへと突出する閃光Hの照度変化H=C-Aの、平均照度Aに対する相対的な閃光の明るさの割合であり、本発明では、閃光比率E=(C-A)/Aで定義する。
すなわち、例えば繰り返し周波数40Hzの矩形波の透過光の平均照度Aは、周波数分析すると周波数ゼロHzの直流成分の振幅Aで表現される。そこで、平均照度Aに対する周波数分析の40Hzの振幅Bの大きさを含有比D=B/Aで定義する。
図2(a)、(b)、(c)で示した3種類の波形は閃光H=C-Aの値は同じであるが、波形が異なるので40Hzの含有比D=B/Aはそれぞれ固有の数値を持つ。
本発明の場合、透過率の制御において中間値を含む任意の波形を利用できるので、例えば40Hzの正弦波を制御用のサンプリング間隔でサンプリングした時系列の波形などを透過率制御の目標値として採用して電子シャッターを駆動することで、40Hzの含有比D=B/Aを、より好ましい値に調整する試みも可能であろう。
そのため、図9に示したデューティ比が80%の駆動条件は、モニタ画面を見ながら認知症予防用のテレビゲームを使う治療法や、被治療者1に散歩や花壇などでの軽作業をさせて認知機能を改善する治療法を併用するには有用である。
図10は、電子シャッターの透過率の波形を任意に設定できることの効果を説明する事例である。液晶シャッター素子は駆動電圧を調整すれば中間的な透過率も実現できるので、デューティ比80%の40Hz矩形波波形(周期25ミリ秒)を例にとれば、最高照度Cで光を透過させていた部分の一部の照度を僅かに暗くして中間照度Fまで下げることができる。
図11は、電子シャッターの左右の位相差を任意に設定できることの効果を説明するための図である。 まず、図11(a)は、左右の視野と大脳半球の関係を示す。人間の右と左の視野AとBは、それぞれ大脳の左半球と右半球に分かれて処理されることが知られている。
下限周波数の24Hzは「てんかん」などの医療事故を避ける目的で制限し、上限周波数の50Hzはテレビゲームなどを併用する認知症治療が有効に機能するようスプラリミナル効果に配慮して制限した。
出典: 国立大学法人大阪大学、「てんかん発作時の特徴的な脳波を世界で初めて検出―病態解明や診断精度・治療成績の向上など新たな治療への発展に期待」、日本医療研究開発機構、平成28年5月13日付けプレスリリース、
それゆえ、野外散歩中の身の回りの風景や、室内でテレビゲームのモニタ画面を見る際に目の前の映像刺激を認知する認識作用に不具合が生じないように、スプラリミナル効果を利用できることを意図して、望ましい上限周波数の数値として50Hzを採用した。
しかしながら、治験をも念頭においた治療用器具を設計する観点においては、治験の実験水準を多様に選択するうえで、医療事故や併用する治療法の効果を妨げない周波数の範囲で、繰り返し周波数を多様に設定できる機能を有することは望ましい。
さらに、今後の治験で好適な範囲が確認されれば、24Hzから50Hzよりも狭い数値範囲に限定するように設計標準や商品規格あるいは医療機関における処方の基準などを制定することも有益であろう。
本発明を着想した研究開発の初期段階において、発明者は以下に述べるアナログ回路で制御装置を設計し、実際に電子閃光サングラスを試作するとともに、2ヶ月以上にわたり、毎日30分以上にわたって自ら装着して試用した。
特に、認知症の脅威をわが身の問題として真剣に取り組む高齢な研究者の場合、本発明の研究開発中に偶然、何らかの疾病に罹患することもある。そのような場合には、本発明との因果関係が不明であっても、ひとまず研究活動を中止し、すみやかに医師の診断と指導を仰いでいただきたい。
なお、発明者は研究初期段階から現在に至るまで、40Hz療法の治療器具の研究開発を行う中で、内臓の動き、知覚系、あるいは認知系が明らかに活性化するなどの現象を体験し続けている。主観的に表現すれば、「真昼の高原の白い霧が見る間に晴れて、遠くの山々がはっきりと見通せる状態まで戻る」という実感がある。それゆえに、本発明が神経系に何らかの変化を実際に惹起したものと認識している。
しかし、個人差を考慮した複数の被験者による統計的な治療効果のデータの計測と採取については、専門の医療機関による客観的な治験の実施を待望することしかできない。
図12(a)は、量産品として市販されている144Hzに応答する仕様の3Dメガネを分解し、取り出した液晶シャッター素子の静特性を計測した事例である。印加電圧0Vから2Vの範囲で透過する光の相対的な照度を0.9と仮定すると、印加電圧6Vから8Vの範囲で透過する光の相対的な照度は0.1であった。
実際の量産機器の設計にあたっては、液晶シャッター素子の特性を最大限に生かせる駆動波形など、液晶シャッター素子のメーカが推奨する技術を適用すべきである。しかし本発明では、以下の説明を簡単にするため、最小電圧2V以下かつ最大電圧6V以上の正の電圧波形による40Hzの矩形波を用いてこの液晶シャッター素子を駆動すれば、相対的な照度で0.9から0.1の範囲で透過率を制御することができることを利用する。
なお図12(a)から明らかな通り、開閉動作のみの3Dメガネ用の液晶シャッター素子であっても、上記電圧の範囲で中間的な透過率も実現可能である。
しかし、中間的な透過率を利用して中間照度を実現する電子閃光サングラスとしての用途において、液晶シャッターの透過率の精度、再現性、耐久性などの品質管理については、最適な駆動電圧波形の付与方法なども含め、信頼性の高い高品質な製品設計に織り込むために多数の課題がありうることを示唆しておく。
ちなみに、フィードフォアード型の制御方法で電子シャッターの透過率を制御する場合には、透過率制御情報170に収められた透過率制御の目標値の波形を、電子シャッターの駆動電圧と透過率の間の特性データにもとづいて、電子シャッターを駆動する電圧の波形に変換した上で、電子シャッターの駆動電圧として供給することはいうまでもない。
図12(c)は、中間的な透過率を利用して中間照度を実現するためにフィードバック型の電子シャッター制御を行う事例である。つまり、電子シャッター部135のフレーム840に固定される左右の電子シャッター(STD1、STD2)ごとに透過率検出器(FBS1,FBS2)を設け、透過率制御装置150から出力される中間値を含んだ駆動指令信号を目標値としてフィードバック系を構成し、左右の透過率の偏差値を制御アンプ(CNT1,CNT2)で増幅して左右の電子シャッター(STD1、STD2)に印加する。
なお、透過率検出器(FBS1,FBS2)の構造は、例えば電子シャッターを挟んで赤外線発光LEDと赤外線受光センサを設ければよい。また、偏差値を増幅する制御アンプ(CNT1,CNT2)の設計は、例えばPID制御装置に加え、液晶シャッター素子の特性を最大限に生かせる駆動波形などの液晶シャッター素子のメーカが推奨する技術を織り込んで設計することは、当業者であれば容易に実施可能であることを示唆しておく。
なお、以下の説明に使用する用語として、登録商標のある市販品の説明への配慮や、できるだけ自然な文章で説明するなどの事情もあり、前後の文脈によって「音楽(music)」、「音声(voice)」あるいは「音響(sound)」という異なる表現が登場する。しかしどれも、本発明では、技術的には「人間の可聴周波数帯域のオーディオ信号(audio signal)」の意味を含んで表現するために使用しており、本発明では工学的に同義語である。
透過率制御情報170としては、MP3規格の音声データを収納できる音楽再生装置P200に音声情報として記録した。具体的にはステレオ音声のLチャンネルに40Hzの視覚刺激信号を記録し、ステレオ音声のRチャンネルには特許文献1で提唱された40Hzの音声刺激情報を記録した。
4kHzの搬送波の波形や波数の描画は不正確であるが、理解しやすさを重視して模式的に描いてある。4kHzの搬送波は、繰り返し周波数40Hzでデューティ比50%の矩形波によって振幅変調され、周期25ミリ秒の半分の12.5ミリ秒ごとに波形の振幅が大幅に変化する。
一方、出力信号の振幅は図示の通り最小値1V、最大値7Vの矩形波である。
音楽再生装置P200に市販品のiPod(登録商標)を使用する事例では、複数の駆動条件に相当するアナログの音声信号を複数の音声データとして予め生成して記録しておき、所望の音声データを選択することで、異なる駆動条件を容易に切り替えて選択することができる。
なお、試作1号機の段階では、40Hzの矩形波について再現できたデューティ比の精度は、アナログ回路のノイズの影響もあり、所望するデューティ比の数値の±3%程度であった。
また、ステレオ音声のLチャンネルに記録された40Hzの視覚刺激信号は、透過率の繰り返し周波数と波形を制御する情報なので、透過率制御情報170に相当する。さらに、音楽再生装置P200と復調増幅器P400は透過率制御装置150に相当する。
なお、音楽再生装置P200に市販品のiPod(登録商標)を使用する事例では、記録した複数の音声データのうちから手動操作で押しボタンなどのスイッチによって希望する楽曲を選択できる。つまり、複数の入力スイッチ120で手動操作によって指定したiPod(登録商標)内の操作情報155にもとづいて透過率制御情報170から選択した駆動条件により右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140をそれぞれ電圧信号で駆動して、それぞれの透過率をフィードフォアード制御する。
また、前記電子シャッター部135は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140から構成され、
透過率制御情報170は透過率を制御する前記繰り返し周波数と前記波形の情報を含み、
前記透過率制御装置150は、入力スイッチ120で手動操作によって指定した操作情報155にもとづいて前記透過率制御情報170から選択した駆動条件により前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率をそれぞれ制御する。
ここで、「透過率をそれぞれ制御する」とは、「透過率を独立に、もしくは共通に、制御する」という意味である。
なおこの事例では、前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140をそれぞれ独立に制御するのではなく、電気的に並列に接続する手段により、それぞれの電子シャッターの駆動状態を共通に制御して本発明の課題を解決することができた。
ちなみに、図13には明示していないが、電子回路を駆動するための内蔵電池や商用電源からの電源変換器などの電源装置(電源部160)を備えることはいうまでもない。
図14は、発明者が考える発明実施の最良の方式を実現するために有用な、6つの発明の要素を説明する概念図である。
ここでは、本発明の課題の解決手段に対応する基本的な最小限の構成だけにとどまらず、発明者が考える発明実施の最良の方式を実現すべく、新たに発生する追加の課題を解決するための発明の要素も含めて以下に記載する。
図14(a)は、本発明で創作した技術思想を表す基本構成である。具体的には、電子サングラス本体10に含まれる透過率制御情報170にもとづいて、透過率制御装置150が電子シャッター部135を透過する光の透過率を制御して発生させる閃光の繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間にあることを特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これがアナログ回路又はデジタル回路で本発明を実現する為の最上位概念である。
特に、「電子サングラス本体10に含まれる透過率制御情報170にもとづいて」とは、従来の3Dメガネのように外部に設けた映像モニタ装置や映像プロジェクタなどの映像機器が発生した映像同期信号に同期させることなく、電子サングラス本体10の内部にある透過率制御情報170に記述された、「透過率の繰り返し周波数」と「明示的に設定することが可能な任意の波形の形状」にもとづいて制御するという本発明の技術思想を示している。
図14(a)に描かれた基本構成のアナログ回路による実現例は、既に図13で説明した。この図13の構成によって本発明の2つの課題は基本的には解決したのであるが、アナログ回路による実現手段では、性能のばらつきを抑える品質管理やコスト低減を進めるうえで問題が残る。そこで、本発明における治療コストの低減という課題をさらに解消するうえで、CPUを含むデジタル回路による実現手段をも包含することが第2の発明要素となる。
具体的には、前記電子シャッター部135は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140から構成され、透過率制御情報170は透過率を制御する前記繰り返し周波数と前記波形の情報を含み、 前記透過率制御装置150は、入力スイッチ120で手動操作によって指定した操作情報155にもとづいて前記透過率制御情報170から選択した駆動条件により前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率をそれぞれ制御することを特徴とする電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これは、第1の発明要素をアナログ回路のみならずデジタル回路でも具体的に実現するための基本構成であり、第1の発明要素の下位概念である。
なお、「透過率をそれぞれ制御する」とは、「透過率を独立に、もしくは共通に、制御する」という意味である。
本発明の発明者は、電子シャッターを用いることで周囲光を40Hz閃光療法の光源として認知症の予防や治療に利用する、というアイディアを初めて提唱するものであると考えている。それゆえ、過去に治験で蓄積された40Hz閃光療法のデータが少ないのであれば、本発明そのものが治験のための有用な手段でなければならない。そこで、既に図11で示したように、治験の試験水準の選択肢をより多く提供することは有意義である。
具体的には図14(a)において、前記透過率制御情報170は、さらに前記右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率の波形の位相差を制御する情報を含む、ことを特徴とする電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具である。
これは、第2の発明要素に位相差の情報を追加するもので、第2の発明要素の下位概念である。
図14(b)は、治験機材としての電子サングラス本体10に内蔵される全ての治験水準の制御情報を迅速に更新することを可能にする第4の発明の要素を説明する図である。
治験を行うにあたり、試験条件の設定を誤らぬように正確に管理するとともに、限りある数量の治験機材を効率的に運用することは、治験作業のコスト低減と多くの水準の治験を早期に終わらせる期間短縮に役立ち、有利な効果が高まる。
これは、第2の発明要素の制御情報を手動で交換するもので、第2の発明要素の下位概念である。
図14(c)は、特許文献1に記載されたように、40Hz閃光療法に40Hzの音声刺激を併用する療法を実現する手段を提供するものである。アナログ回路を用いた実現方法は既に図13で説明したので、図14(c)ではデジタル回路によって実現する。
図13のアナログ回路では市販のiPod(登録商標)で音声データを交換したが、図14(c)のデジタル回路では第4の発明要素の交換記憶装置190を利用して音声データを交換する。
これは、第4の発明要素の交換記憶装置190を利用するもので、第4の発明要素の下位概念である。
図14(d)は、本発明を用いた40Hz閃光療法が治験を終えて普及期に入った時点で、臨床治療のコストをさらに下げるとともに、それぞれの被治療者1ごとに医療機関から治療のための透過率制御情報170を効率的に処方するための発明要素である。
すなわち、例えば既存の市販品である3Dメガネに似た図4(a)のような単純な形状に電子サングラス本体10としての全ての機能を収める構造を採用すれば、量産による製造コスト削減効果を得るうえで有利である。さらに、リモコン装置20を用いて電子サングラス本体10の透過率制御情報170を交換し、データ更新後の動作確認までリモコン装置20で行えば、治療器具としての電子サングラス本体10の価格低減に加えて透過率制御情報170を処方するコストの低減も見込めるので、治療コスト全体を低減できる。
これは、第2の発明要素を利用するもので、第2の発明要素の下位概念である。
なお、「前記入力スイッチ120からも手動操作で指定しうる信号を含んだ前記操作情報155」とは、リモコン装置20から送信する操作情報155には、リモコン装置20のみから送信できる「遠隔操作の開始と終了を操作する信号」が含まれていることに対応する。詳しくは、実施例4にて詳細に説明する。
なお後述する実施例に記載した6つの発明要素の個々の実現手段は、あくまでも説明を目的として理解の容易さを高めるために例示したものであり、当業者に広く知られた代替手段で置き換えて設計変更できることはいうまでもない。
<実施例1>
図15は、第1の発明要素、および第2の発明要素の実現方法を記載する実施例であり、本発明の技術思想をデジタル回路でも実現するための基本的な構成の例を説明する。
なお、この実施例1の電子閃光サングラスは、電子サングラス本体10に内蔵した複数の透過率制御情報170を切り替える機能は持っているが、透過率制御情報170そのものを全く新たなデータに入れ替える機能は持っていない。
あるいは標準的な複数種類の閃光を発生させる駆動条件の候補のうち、当該の被治療者1にとって最適な条件を見つけるために脳波計などを併用して適性検査を行い、最適な1種類が判明したら、その駆動条件を用いて治療する用途に用いてもよい。
なお、透過率制御情報170は、発生させる閃光の繰り返し周波数が24Hzから50Hzの間になるように設定する。
透過率制御装置150は、入力スイッチ120で手動操作によって指定した操作情報155にもとづいて、透過率制御情報170として蓄積された情報の中から選択した駆動条件により、右目の電子シャッター130と前記左目の電子シャッター140の透過率をそれぞれ制御する。電子サングラス本体10には電池などの電源部160を含む。
電源部160のON-OFFスイッチはこの図に見えない部分に配置されており、押しボタンの形状であってもよいし、折りたたんだメガネのテンプル(腕、つる)を開閉することによって電源が入り切りされる構造であってもよい。
電子シャッターSTD1とSTD2は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140に相当する。制御装置CNTは透過率制御装置150に相当する。手動式のスイッチS1とS2は入力スイッチ120に相当する。
次に、CPUは記憶装置(メモリー)MEMに記録した透過率制御情報170を読み取る(ステップS01)。さらに、電源スイッチPSをONした瞬間の操作スイッチS1の操作状態を読み取り(ステップS02)、スイッチS1がONかどうか判定する(ステップS03)。
次に、ステップS03に戻って、この動作を繰り返す。
例えば、図15(d)のステップS04とステップS05では、説明を簡単にするため、1サイクルの間に最大値と最小値の2値だけをとりうる矩形波の波形を例として取り上げた。だが、1サイクルの間に最大値と最小値の間に中間値を含む3値をとる階段状の波形や、あるいはさらに、1サイクルの間に最大値と最小値の間で多数の中間値をとる正弦波を近似した階段状の波形も発生できることはいうまでもない。任意波形を表現する制御情報の構造の例は後の実施例で示す。
なお、発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、24Hzから50Hzの間になるように設定する。
図16は、実施例1の変形例として、使用する入力スイッチの数を増した事例である。これは第1の発明要素と第2の発明要素に加えて、第3の発明要素の実現方法を記載する実施例であり、左右の電子シャッターに位相差をつける制御情報を取り扱うフローチャートである。図15(a)、図15(b)、図15(c)については実施例1の変形例においても適用され、図15(d)のフローチャートのみ図16に置き換える。
フローチャートの起動手順と終了手順は実施例1と同じであり、起動する際に選択するスイッチが2つであること、つまりスイッチS1とS2の状態(押せばON、押さなければOFF)を選択する必要がある点だけが異なる。
次に、CPUは記憶装置(メモリー)MEMに記録した透過率制御情報170を読み取る(ステップS01)。さらに、電源スイッチPSをONした直後のスイッチS1とS2の操作状態を読み取り(ステップS02)、スイッチS1がONかどうか判定する(ステップS03)。
もしスイッチS2がONであれば、選択済みの波形を左右の電子シャッターに対して逆位相で1サイクル(1周期に相当する時間)だけ出力する(ステップ07)。逆に、スイッチS2がOFFであれば、選択済みの波形を左右の電子シャッターに対して同位相で1サイクルだけ出力する(ステップ08)。
次に、ステップS03に戻って、この動作を繰り返す。
また、発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、24Hzから50Hzの間になるように設定することができる。
同様に、入力スイッチの数も2つに限定されず、透過率制御情報170に収められた駆動条件の選択肢の数に応じて増すように設計変更できる。
波形として最大値や最小値の2値に加えて中間値を出力する場合には、例えば、左右の電子シャッターに中間値を持つ任意の左右同一の波形を図16のステップS04とステップS05でそれぞれ個別に定義してもよい。具体的には、例えば、ステップS04では「最大値と最小値を指定した40Hzの正弦波の1サイクル相当の数値データ」を波形として選択し、ステップS05では「最大値と最小値を指定した40Hzの鋸状波の1サイクル相当の数値データ」を波形として選択する、などの方法で中間値を持つ波形を出力することができる。そして、ステップS07とステップS08で、それぞれの左右位相差の数値を定義して1サイクル分を出力すればよい。
図17は、第1の発明要素、および第2の発明要素に加えて第4の発明要素を追加する実現方法を記載する実施例であり、透過率制御情報170そのものを全く新たなデータに入れ替える方法を説明する。
もちろん、小規模な治験や予防や治療のために実施例2の器具を利用してもよい。
なお、中間値を持つ任意波形を用いる場合の制御情報175の設定方法の事例は、後の実施例3で簡単に紹介し、さらに実施例4で詳細に説明する。
なお、コントローラ部900から電子シャッター部135へ信号を伝える際に、本実施例に記載した有線(電線)で信号伝送する代わりに、無線(赤外線などの光や、電波を用いた各種の通信方式、あるいは超音波などの音波)を用いて信号伝送するように変更することは、当業者であれば容易に思いつくことができる設計変更であって、この実施例の説明に含まれる。
例えば有線式のイヤホンを、Bluetooth(登録商標)などの送信機と受信機の組み合わせを利用する無線式の市販のイヤホンに置き換えて、イヤホンを駆動するためのステレオ音声信号を伝送するのと同じ着想である。
具体的には、コントローラ部900から電子シャッター部135へ信号を伝える際に、音声のアナログ信号に相当する周波数帯域の信号を無線で伝送すればよい。例えば、コントローラ900側では、4kHzの搬送波を振幅変調する機能を備えた変調装置を左右の駆動信号用として2台設け、「左右で独立した電子シャッターのための2つの駆動電圧」をそれぞれの変調装置ごとに入力させる。その出力としての左右独立の2チャンネルの音声信号をステレオ音声信号として合成する無線送信機を介して無線信号を送信する。さらに、電子シャッター部135には、前記送信した無線信号を受信して左右のステレオ音声信号に分離する受信機を備え、そのステレオ出力を、左右それぞれの信号ごとに設けた復調増幅器P400(図13の説明を参照)に入力し、左右の信号ごとの復調増幅器P400の出力波形を「左右の電子シャッターのための駆動電圧」として取り出す。この2つの駆動信号を用いて左右の電子シャッターを独立に駆動することができる。
もちろん、左右独立したステレオ信号ではなく、左右共通ないしは左右どちらか一方だけの「電子シャッターのための駆動電圧」をモノラルの駆動信号として上記の変調装置を通した後に無線で伝送し、無線を受信して取り出したモノラルの音声信号を入力させた復調増幅器P400の出力で、左右の電子シャッターを共通に駆動することもできる。
なお、Bluetooth(登録商標)など周知の技術を利用して、上記のステレオやモノラルの音声信号を送受信できる。同様に、変調装置と復調装置も上記に例示した内容に限定されるものではなく、上述した「有線式イヤホンを無線式イヤホンに置き換える」という着想にもとづいて、周知の技術を組み合わせて多様に設計変更できることは言うまでもない。
この実施例2では、交換記憶装置190はSDカードの読み取り装置であり、透過率制御装置150から記憶指令197に相当する読み出し指令を送信すれば、制御情報175や付加的な情報を透過率制御装置150へ読み出す機能を持つ。
操作手順としては、まず交換記憶装置190にSDカードのデータ媒体192を挿入する。そして、起動させたいID番号に該当する操作スイッチS1とS2を操作(押す=ON、離す=OFF)したまま、電源スイッチPSを投入すると図18のフローチャートがSTARTから起動する。
ちなみに本実施例では、操作スイッチS1やS2の状態がONなら1、OFFなら0の値を代入した上で、ID=2×S2+S1という計算式でID番号を決定したが、あくまでも簡単に説明するための事例にすぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
なお、起動後に別のID番号の治療メニューに変更したければ、一旦、電源スイッチPSをOFFして、再び希望するID番号を選択しながら起動しなおせばよい。
また、図18のフローチャートを終了するには、電源スイッチPSをOFFすればよい。
発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、図17(b)の(C)欄の周波数の数値を、24Hzから50Hzの間になるように設定する。
図19は、第1の発明要素、第2の発明要素、および第4の発明要素に加えて第5の発明要素を追加する実現方法を記載する実施例であり、聴覚刺激を追加することにより、特許文献1に記載された本格的な治験を行えるように治験範囲を拡大する実施例を説明する。
具体的には、聴覚刺激を追加して治験の環境を多様化するとともに、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140と遮光板を含む電子シャッター部135を備えることにより外部の光が電子シャッターを通過せずに目に入り込むことを防止する。
なお、電子シャッター部135の構造は、周囲光の混入を精度よく防止できる遮光板さえ備えれば、例えば図4に示した多様な形状を採用してもよい。また、遮光板は着脱式であってもよい。
したがって、交換記憶装置190は、制御情報175を蓄積する機能と、例えばMP3のような音声情報ファイルに聴覚刺激情報215を蓄積する機能の2つの機能を備える必要がある。
なおこの市販部品をArduino対応のマイコンと接続するには、ハードウエアは指定された端子どうしを接続すればよく、ソフトウエアはライブラリとサンプルコードが公開されているので、取扱説明書にもとづいて容易に装置全体を開発できる。
これにより、透過率制御装置150のソフトウエア開発システムとしてのArduinoのSDカード用のライブラリ関数で発生される読み出し指令としての記憶指令197にもとづいて、制御情報175を読み取ることができる。
なお、波形種別に「波形データ」と記載されている場合には、中間値を持つ任意の波形の時系列データが記録されていることを示し、その時系列データを収めたファイルの名称として、波形特性の欄に「Data#1」と記載されている。
任意の波形の時系列データの表現方法の一例は、後の実施例4で詳細に説明する。
なお、コントローラ部900から電子シャッター部135へ信号を伝える際に、本実施例に記載した有線(電線)で信号伝送する代わりに、無線(赤外線などの光や、電波を用いた各種の通信方式、あるいは超音波などの音波)を用いて信号伝送するように変更することは、当業者であれば容易に思いつくことができる設計変更であって、この実施例の説明に含まれる。例えば有線式のイヤホンを、無線式の市販のイヤホンに置き換えるのと同じ着想である。詳細な実現方法は実施例2で説明したので、重複説明は省略する。
透過率制御装置150をArduinoマイコンで構成する場合には、入力スイッチ120やSDカードを使用する交換記憶装置190との接続は実施例2で説明した公知の技術を利用できる。電源スイッチPSは電源部160に接続する。
なお、図19(c)ではデータ媒体192を交換記憶装置190に挿入する前に治療メニューの名称922などが表示装置165に描かれているが、これはあくまでも実施例の装置構成を模式的に説明するための便宜上の作画である。実際の操作手順はフローチャートを用いながら説明する。
そこで、透過率制御装置150のCPUは交換記憶装置190Dにアクセスして、被治療者の氏名と個人ID921を読んで表示装置165に表示することに加えて、付加情報としてのID番号ごとの治療名称を読み込んで、透過率制御情報170へ付加情報として書き込む。(図20のステップS02)
ちなみに本実施例でも、操作スイッチS1とS2の状態がONなら1、OFFなら0の値を代入した上で、ID=2×S2+S1という演算式を用いてID番号を決定するが、これはあくまでも簡単に説明するための事例にすぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
なお、音響増幅器210はアナログの音響信号225を外部音響信号端子220に出力するので、有線又は無線で接続されたヘッドホンP300やイヤホンから、聴覚刺激としてのオーディオ音声が出力される。
さらに、治療メニューの継続予定時間や、治療メニュー開始後の継続時間の残り時間を表示装置165に表示するように設計変更することもできる。
また、図19の構成では音響信号225の音量調整はヘッドホンP300やイヤホン側に付属する操作器具で行う必要があるが、音響増幅器220に出力音量を増加あるいは減少させる音量調整機能が内蔵されているDFPlayer miniのような市販部品などを使う場合には、音量調整ボタンをコントローラ部900に付加することも容易である。
なお、起動後に別のID番号の治療メニューに変更したければ、一旦、電源スイッチPSをOFFして、再び希望するID番号を選択しながら起動しなおせばよい。
また、図20のフローチャートを強制的に終了するには、電源スイッチPSをOFFすればよい。
また、発生させる閃光の繰り返し周波数を40Hz以外の数値に変更する場合には、図19(b)の(C)欄の周波数の数値を24Hzから50Hzの間になるように設定する。
実施例4は、米国特許法におけるベストモード(best mode)であって、発明者の主観において最良の実施例を、当業者が実施できるように開示するものである。
この実施例4は、あくまでも発明者の主観としてのベストモードであって、治験を終了して臨床治療が普及した時点における大きな生産規模において低コストで高品質な治療を実施できる点に着眼して主観的にこれを選択した。
したがって、治験段階での有用性にのみ着眼して主観的に評価するとすれば、実施例4に記載するベストモードに比べて「より良い実施例」を既に開示済みであることを意味する。
したがって、この実施例4は、発明の第4要素に付加した発明の第5要素に相当する音楽再生機能を電子サングラス本体10に付加しないことで、電子サングラス本体10の生産コストを削減した事例を以下で記載する。
システム全体としての電子閃光サングラス30は、透過率制御情報170を書き換え可能な透過率制御装置150と電子シャッター部135とを一体化して構成した電子サングラス本体10に加えて、透過率制御情報170を書き換える遠隔操作情報185を送信するリモコン装置20を含んで構成される。
なお上記に記載した「前記入力スイッチ120からも手動操作で指定しうる信号を含んだ前記操作情報155」とは、リモコン装置20から送信する操作情報155には、リモコン装置20のみから送信できる「遠隔操作の開始と終了を操作する信号」も含まれていることに対応する。具体的には、図21や図23のリレーR3がこれに該当する。
また、リモコン受信部180が制御情報175を受信した場合には通信によって透過率制御装置150へ伝達され、リモコン受信部180が操作情報155を受信した場合には接点信号によって透過率制御装置150へ伝達されるが、詳しくはフローチャートで説明する。
なお、波形として中間値を含む任意の時系列波形を表現する方法の一例は、図25の制御情報175として任意データを転送する事例を用いて詳細に説明する。
さらに、(C)欄に記載する発生させる閃光の繰り返し周波数を24Hzから50Hzの間になるように設定することは、他の実施例と同様である。
また、a接点(リレーを励磁すると接点が接続され、リレーを消磁すると接点は遮断される)としてのリレー接点R1とR2と、b接点(リレーを励磁すると接点が遮断され、リレーを消磁すると接点は接続される)としてのリレー接点R3と、の3つのリレーR1,R2,R3によって遠隔リレー接点127を構成する。
この実施例では、スイッチS1とリレーR1は並列接続され、スイッチS2とリレーR2も並列接続される。もちろん各スイッチおよび各リレーと入力装置INPのデジタル入力回路の対応関係を、1接点ごとに1接点入力を割り当てるように設計変更できることはいうまでもない。
また、スイッチS1とS2は手動操作でON-OFFされ、リレーR1、R2、R3はリモコン受信部180からの指令により励磁されて自動開閉する。
これにより、入力スイッチ部125は、入力スイッチ120からの手動操作でもリモコン装置20からの遠隔操作でもどちらからでも操作情報155を発生させることができる。
さらにリモコン装置20が送信した遠隔操作情報185と比較して、電子サングラス本体10の電子シャッターが発生する閃光の繰り返し周波数や波形や左右位相差などが精度よく動作しているかどうか、あるいは電子サングラス本体10が故障していないかどうかを自動診断することもできる。
この機能は医療機関の処方箋が適切に反映されたかどうかを医療機関自身が確認するうえで有用である。
次に、ID番号に応じた駆動条件で電子シャッター部135の駆動を繰り返し周波数の1サイクル(1周期)だけ出力する(図23のステップS04)。
なお、ステップS06でリモコン受信部180から透過率制御装置150へ転送するべき未転送の制御情報175が残っていない場合には、何もせずにステップS06を終了する。
このように、リレーR3が遮断状態のときには、図23のステップS01とステップS06を通ってループし続けて、遠隔操作で制御情報175を書き込むことができるので、これを「遠隔操作のループ」と呼ぶ。
一方、リレーR3が接続状態のときには、図23のステップS04とステップS05を通ってループし続けて、左右の電子シャッターが指定した駆動条件でちらつくので、これを「閃光発生のループ」と呼ぶ。
そして、「閃光発生のループ」を回っているときに、もしリモコン受信部180側から遠隔操作を開始する指令が届いてリレーR3が遮断状態に変われば(ステップP02)、図23のステップS05で「閃光発生のループ」を脱出して図23のステップS01へと進み、さらには「遠隔操作のループ」へと進む。
例えば、任意波形の時系列データを送信するOSCパス/fes/wave_dataでは、右目の透過率(R_data)と左目の透過率(L_data)が、透過率0.0%から100.0%まで0.1%刻みで、2値以上を含みうる任意の時系列波形を設定しうる構造を備えている旨が記載されている。
動作モードを大別すると、矩形波の波形データを書き込むモード(図24(b)のステップS1)と、任意の波形を書き込むモード(図24(b)のステップS2)と、入力スイッチ部125を遠隔操作するモード(図24(b)のステップS3)の3種類がある。
次のステップS24では、送信完了のフラグ(eof)を確認し、送信完了(eof=1)に該当していなければステップS22へ戻る。あるいは、送信完了(eof=1)に該当していれば、このモードを終了する。
リモコン装置20およびリモコン受信部180における個別の処理フローについては、後に詳細に説明する。
具体的には、OSCパスの/fes/wave_dataを用いて、図25(b)の任意波形のデータを送信する事例を説明する。
図25(a)は、「データに変化があるか、もしくは確認する必要がある場合のみ更新データを送る」という原則にもとづいて任意波形の送信データを記述した数表の例である。
これは、透過率制御情報170に納められて透過率を制御する目標値としての任意の時系列の波形のデータが、所定のサンプリング時刻ごとに、2値よりも多くの数値をとりうる構造を備えていることを示すものである。
図25(a)の1行目は、OSCパスの/fes/wave_dataとして最初に送信するデータであり、送信完了のフラグeof=0、当該データの時刻(time)は0.00ミリ秒、右目の透過率(R_data)は90.0%、左目の透過率(L_data)は0.0%である。
これは、時刻以外は1行目と同じ内容のデータであるが、この次の行のデータに変化がある場合に、まだこの行では変化がないことを示すため、確認のために送信する。つまり、1行目の時刻0.00ミリ秒から2行目の12.49ミリ秒まで、時刻以外は同じ内容のデータが続くので、この間のデータ送信を省略したものである。
このようなデータ形式の構造とすることで、このデータをグラフ表示すれば、この任意波形の1周期分を簡単に描画して目視確認することができる。
これは、時刻以外は3行目と同じ内容のデータであり、確認のために送信する。つまり、3行目の時刻12.50ミリ秒から4行目の24.99ミリ秒まで、時刻以外は同じ内容のデータが続くので、この間のデータ送信を省略したものである。
この情報として、繰り返し周波数(Freq)として40.0Hzを送信すれば、この波形の周期が25.00秒であることが判明する。そこで、図25の4行目の当該時刻24.99ミリ秒の次の0.01秒後に該当する当該時刻25.00ミリ秒のデータとして、1行目の当該時刻0.00ミリ秒のデータを使えることを明示的に示すことができる。
しかし、ここではあくまでも、OSCパスの/fes/wave_dataを用いて任意波形のデータを送信する方法をわかりやすく説明するための事例として用いたにすぎない。
したがって、任意の波形を送信する場合には、最大値と最小値の2値しかとらない矩形波だけでなく、最大値と最小値と中間値の3値をとる階段状の波形も表現できるのみならず、正弦波や鋸歯状波などを階段状に近似した多数の中間値を持つ任意の波形も、電子シャッターの透過率を制御するための目標値として利用することができる。
このようにして、繰り返し周波数が24Hzから50Hzで、サンプリング間隔が0.01秒の任意の波形を、図25で説明した形式のデータとしてOSC通信で送信することができる。
ちなみに、このようにしてリモコン装置20から送信された波形データは、リモコン受信部180を介して制御情報175として透過率制御装置150に伝達され、透過率制御情報170として書き込まれ、電子シャッター部135を駆動するための目標値の波形として利用される。
しかしながら本発明はこの操作事例に限定されるものではなく、図24のOSCパスによるモードの切り替えの説明にもとづいて、個々のIDに該当する制御情報175を選択的して送信し、あるいは確認する手順を組み合わせてリモコン装置20を操作しても構わない。
もしIDが最大値ID_maxを超えていなければ、次のステップS14へ進む。
なお、図21(b)の制御情報(例)の(E)欄の波形特性の項目に、例えば「Data#1」などとして図25(a)の任意波形の送信データを記録したファイルの名称を記載しておくことで、送信すべきデータが記されたファイルを指定することができる。
また、この送信完了のフラグ(eof)の値がeof=1であれば送信を完了しているので、次のステップS19へ進む。
もしIDが最大値ID_maxを超えていなければ、次のステップS24へ進む。
なお、この時点で、透過率制御装置150は図23のステップS01とステップS06を通過する「遠隔操作のループ」を回り始める。
引き続き、IDの値から求めたリレーR2の状態を送信するために、OSCパスとして/fes/swを発行するにあたり、スイッチ番号=2、ON-OFF=リレーR2の状態(1又は0)を記載して送信する。そのうえで、次のステップS26へ進む。
一方、リレーR1、R2の状態の指令を受信したリモコン受信部180では、入力スイッチ部125の遠隔リレー接点127に対して、受信した遠隔操作の指令に従ってリレーR1,R2の状態を設定する。
なお、この時点で、透過率制御装置150は図23のステップS01とステップS06を通過する「遠隔操作のループ」を回ることをやめて、図23のステップS01からステップS02へと進むフローをたどる。
次に、図26(c)のステップS27ではこの状態を30秒間維持して、電子シャッター部135の動作状況を図22の検査装置40を用いて目視確認するか、あるいは前述の自動検査の機能を準備している場合には自動的に検査する。
なお、ステップS27を継続する時間の30秒という数字はあくまでも説明の理解を容易にするための事例に過ぎず、目視検査や自動検査で必要十分な時間を設定すればよい。
これで図26(c)の説明を終わる。
従って、手動操作で電子サングラス本体10を通常通りに起動するためには、他の実施例と同様に、所望のID番号に応じて入力スイッチ120を操作した状態で、電源スイッチPSを投入しなおせばよい。
もうひとつの機能は、リモコン装置20から遠隔操作されて遠隔操作リレー127の状態をON又はOFFの状態に設定することである。
従って図27は、図24(b)のOSC通信手順と同様に、S10では矩形書き込みモードM1に該当するかチェックし、該当しなければS20で任意波形書き込みモードM2かチェックし、該当しなければさらにS30でスイッチ遠隔操作モードM3かどうかチェックする。
もしどれにも該当しない場合にはS10に戻り、次の動作モードが指定されるまでこのループを回り続ける。
なお前述の通り、電源スイッチPSを投入すると、遠隔リレー接点127の状態は初期状態(リレーR1とR2は遮断、リレーR3は接続)にリセットされる。
図27のステップS10とステップ11の内容は、図24(b)におけるステップS1とステップ11の内容と同じであるので重複する説明は省略する。
図27のステップS12においては、直前のステップ11で処理して読み取ったID番号(ID)、繰り返し周波数(Freq)、デューティ比(duty)、および左右の位相差(Phase)のデータを、制御情報175として透過率制御装置150へ転送する。 なお、透過率制御装置150では、受信した制御情報175を透過率制御情報170の該当するID番号のデータとして書き換える。
その後、図27のステップS10へ戻る。
図27のステップS21からステップ24までの内容は、図24(b)におけるステップS21からステップ24までの内容と同じであるので重複する説明は省略する。
図27のステップS25においては、直前のステップ21からステップ24の間で処理して読み取った任意波形の情報を制御情報175として透過率制御装置150へ転送する。なお、透過率制御装置150では、受信した制御情報175を透過率制御情報170の該当するID番号のデータとして書き換える。
その後、図27のステップS10へ戻る。
図27のステップS30からステップ31までの内容は、図24(b)におけるステップS3からステップ31までの内容と同じであるので重複する説明は省略する。
図27のステップS32においては、直前のステップS31で読み取ったスイッチ番号(SW_No)に相当する遠隔リレー接点127としてのリレーR1、R2およびR3のいずれか1つを、指定されたON又はOFFの状態に設定する。その後、図27のステップS10へ戻る。
しかしながら、実施例4をよく理解できるように説明するためには、上記の3つの要素が相互に動作する関係を関連付けて説明する必要がある。
以下ではまず3つの要素別の動作の流れを説明し、さらに3つの要素の横断的な連携の例を説明する。
まず、図28のステップA00でリモコン装置20の電源を投入し、ステップA01でOSCによる送信処理を開始するためにOSC通信の初期設定などを行う。
続くステップA02では遠隔操作モードを開始し、ステップA03では指定するID番号の制御情報175を送信する。ステップA04では指定するID番号の実行を準備させ、ステップA05では指定するID番号の実行を指令し、ステップA06では電源を遮断して終了する。
図28に記載したように、電子サングラス本体10のリモコン受信部180は、ステップB00で電源投入して動作を開始し、次にステップB01でOSC受信処理を開始するとともに、遠隔リレー接点127の状態を初期状態(R1、R2は遮断、R3は接続)にリセットする。
さらに図28のステップB02では、受信した遠隔操作情報185にもとづいて、遠隔リレー接点127のリレーR3をOFF(遮断)し、次のステップB03では指定されたID番号の制御情報175を受信する。
続くステップB04では、受信した指定されたID番号の制御情報175を、透過率制御装置150へ向けて出力して送信する。
次のステップB05では、遠隔リレー接点127のリレーR1とR2を、指定IDを選択するように設定する。
さらに次のステップB06では遠隔リレー接点127のリレーR3をON(接続)し、ステップB07では電源を手動で遮断されて終了する。
図28に記載したように、電子サングラス本体10の透過率制御装置150は、ステップC00で電源を投入し、ステップC01で起動時に入力スイッチ120で指定IDを読む。これは図23におけるS01において、b接点で構成されるリレーR3が初期状態で接続されたまま、ステップS02で操作スイッチS1とS2を読み、ステップS03でスイッチS1とS2に応じてIDを選択する動作に対応する。
さらに図28のステップC02では、起動時に操作スイッチS1とS2で指定したIDを実行する。これは図23におけるステップS04において、b接点で構成されるリレーR3が初期状態で接続されたまま、図23におけるステップS04を繰り返して実行する「閃光発生のループ」の動作を開始することに対応する。ここまでは、通常の起動時の動作と同じである。
さらにステップC05は遠隔リレー接点127のリレーR1とR2で指定されたID番号を読む準備であり、ステップC06では遠隔リレー接点127のリレーR3のON(接続)を検知して、ここで図23の「遠隔操作のループ」を終了する。
次のステップC07では、遠隔リレー接点127のリレーR1とR2で指定されたIDによる電子シャッター部135の駆動を繰り返し実行し、ステップC08で電源を手動で遮断されて終了する。
次に、リモコン装置20で行った遠隔操作が、どのようにリモコン受信部180や透過率制御装置150へ波及するかを横断的に説明する。
具体的には、遠隔操作モードの開始を指令する目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/swを発行して、リレーR3をOFFする指令を送信する。
リモコン受信部180では、これをステップB02で受信して、遠隔リレー接点127のリレーR3をOFF(遮断)する。
遠隔リレー接点127のリレーR3がOFF(遮断)したことを透過率制御装置150が検出すると、図28のステップC03における遠隔操作が開始される。
若干の解説を加えると、リレーR3をOFF(遮断)することによって、透過率制御装置150は図23におけるステップS05やステップS01における「遮断」の判定で分岐することになり、その結果、図23のステップS06を実行する「遠隔操作のループ」を回る。つまり、ステップS06の「リモコン受信部180から転送されてくる制御情報175を読み取って、該当するID番号の透過率制御情報170に書き込む」という繰り返し動作が開始される。
具体的には、制御情報175を送信する目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/squareを発行して、指定するID番号の矩形波データを送信する。
リモコン受信部180では、これをステップB03で受信する。続くステップB04では、受信したID番号の制御情報175を透過率制御装置150へ転送する。
透過率制御装置150では、これをステップC04で受信して、透過率制御情報170の該当するID番号のデータを書き換える。
若干の解説を加えると、図23の透過率制御装置150のステップS06における制御情報175を読み込む「遠隔操作のループ」を回り続けることに対応する。
具体的には、実行するID番号の準備をする目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/swをリレーR1とR2に関して別々に発行して、リレーR1とR2のON-FF状態を指定する。
リモコン受信部180では、これをステップB05で受信して、遠隔リレー接点127のリレーR1とR2を指定されたON-OFF状態に設定する。これは透過率制御装置150に対して実行すべきIDを指定する準備を終えた段階である。
これは、透過率制御装置150のステップC05のタイミングに相当するが、これはあくまでも準備段階に過ぎず、透過率制御装置150はステップC05では何の動作もせずに次へ進む。
具体的には、指定したID番号の閃光発生の実行を指令する目的で、リモコン装置20からOSCパスの/fs/swを発行して、遠隔リレー接点127のリレーR3のON(接続)を指令する。
リモコン受信部180では、これをステップB06で受信して、遠隔リレー接点127のリレーR3をON(接続)に設定する。
これは、透過率制御装置150のC06のタイミングに相当するが、これにより図23の「遠隔操作ループ」を回っているときに図23のステップS01でリレーR3の接続を検出するので、「遠隔操作ループ」が終了する。
遠隔操作が終了すると、透過率制御装置150の図28のステップC07に進んで指定したID番号の閃光発生を実行する。
若干の解説を加えると、透過率制御装置150の図23のステップS02でリレーR1とR2の状態が読み込まれ、図23のステップS03でIDが選択される。選択したIDで図23のステップS04を繰り返す「閃光発生のループ」を回り始める。このようにして、電子シャッター部135はリモコン装置20のステップA04で指定したID番号に応じた駆動条件で閃光の発生を繰り返す。
実施例5は、初期の小規模な治験のために試験生産する電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135の構造について説明する。
そのため電子シャッターを具現化するための電子部品として液晶シャッター素子を入手するには、市販の安価な3Dメガネを購入し、これを分解して液晶シャッター素子を取り出して再利用するしか事実上、部品の調達方法がない。
もちろん、液晶シャッター素子を本発明の電子サングラス本体10もしくは電子シャッター部135に組み込むにあたって、振動や衝撃のみならず、ガラスの熱膨張などによっても破損しないように適切な配慮をして固定する必要もある。
図29(b)は1枚板の透明レンズ860を通して左右両眼で見る形態のフレーム840を備えた事例であり、スキューバダイビング用の水中眼鏡やゴーグル、粉塵や塗装用の保護ゴーグル、あるいは医療用の保護ゴーグルなど、日常的にメガネをかけて生活する人がメガネのままで使用する保護ゴーグルなどに用いられる形状である。
従って、右目の電子シャッター130も左目の電子シャッター140も、透明レンズ860の内側(つまり、透明レンズ860よりも顔に近い側)または外側(つまり、透明レンズ860よりも顔から遠い側)に接着剤もしくは固定する枠組を用いて固定することができる。
ただし、電子シャッターとして中古品の液晶シャッター素子を利用する場合には、ガラス基板の破損時におけるガラス粉やガラス破片から肉眼を防護する意味で、透明レンズ860の外側に電子シャッターを固定することが望ましい。
これら透明レンズ860の外側に設ける遮光板は、有色の板やフィルムあるいは有色の塗装などの膜を含む、光を通さない物体で構成できる。
あるいは、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140が窓850に重なるように固定する部材としての形状も持たせた有色の成型樹脂板を遮光板(右)810、遮光板(左)820あるいは遮光板(前)815として製作し、透明レンズ860の外側に備えてもよい。
この目的のため、この遮光板(裏)830は黒色などの光を通しにくい色彩とし、シリコンゴムや天然ゴムなどの柔らかい素材を用い、さらに、フレーム840と顔面の隙間から周囲光が漏れ入ることを防止する形状に成型することが望ましい。
窓850は、単純に遮光板(裏)830に穴を開けてもよいし、窓850の部分だけを無色透明な材質で構成してもよい。
図30(a)も図30(b)も、透明レンズ860の外側に設ける遮光板810、820および815を黒色を含む有色で半透明な素材(板、フイルム、塗装膜など)で構成するとともに、左右の電子シャッター130、140の位置よりも外側(顔から遠い側)であって、なおかつ透明レンズ860の外側に固定する。
これにより、透明レンズ860に固定された左右の電子シャッター130、140や電線を、遮光板810、820および815の外側からは目立たなくすることができる。
なお、図30で説明した実施例の利点は、透明レンズ860の外側に設ける遮光板(右)810、遮光板(左)820および遮光板(前)815には窓850を設けず、窓850の代わりに有色で半透明な素材を採用することで外の景色を電子閃光サングラス越しに見えるようにしつつ、ファッション性を高めることができるので、日常生活の場面で本発明の電子閃光サングラス30を利用しやすくすることができる。
図31(a)も図31(b)も、図30の遮光板(右)810、遮光板(左)820および遮光板(前)815ならびに透明レンズ860を持たない。その代わり、十分な強度を持つ飾り板870を透明レンズ860の代わりにフレーム840へ堅固に固定する。
これにより、飾り板870の内側に固定された左右の電子シャッター130、140や電線を、飾り板870の外側(つまり飾り板870よりも顔面から遠い側)からは目立たなくすることができる。
なお、飾り板とほぼ同じ寸法形状の左右の電子シャッター130、140を十分に透明もしくは目立たぬほど細い電線を使用して駆動する場合などは、これらを飾り板870の外側に配設しても目立たないのでさしつかえない場合もある。
そのため、図31(a)も図31(b)の左右の電子シャッター130、140と窓850を備えた遮光板(裏)830の間に、透明な保護板や保護フォルムあるいは保護膜を設けて、中古品の液晶シャッター素子のガラス基板が損傷しても顔面や目を損傷しないように保護することが望ましい。
電子シャッター部135は右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140とフレーム840とレンズ相当部材880から構成され、電子閃光サングラス30のフレーム840に配設した透明レンズ860または半透明な飾り板870からなる前記レンズ相当部材880の外側もしくは内側に右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140が配設され、前記レンズ相当部材880の内側には右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140を透過する光を通過させる透明な窓850を設けた遮光板(裏)830を配設することを特徴とする。
なおこれは第1の発明要素の下位概念に相当する。
図4の構造をまとめると、
電子シャッター部135は、レンズ相当部材880を堅固に固定するフレーム840と、前記レンズ相当部材880を構成する右目の電子シャッター130および左目の電子シャッター140の両方を備え、もしくは前記右目の電子シャッター130および前記左目の電子シャッター140のどちらか一方だけを備えて左右両眼に共通の視野を供給する前記レンズ相当部材880を構成することを特徴とする。なおこれも第1の発明要素の下位概念に相当する。
<米国特許US-A1-005308246号について>
US-A1-005308246(出願日:19930105)については、この米国特許文献を機械翻訳すると、「主な目的は、視覚化訓練装置を提供することである。 他の目的は、ユーザーが視覚刺激を受け入れまたは遮断して、ユーザーの視覚化能力を高める助けとして、見たときに邪魔にならないパノラマビューをユーザーに提供できるようなデバイスを提供することである。またこの米国特許文献の追加の目的は、(従来技術で必要とされる2つのシャッターの代わりに)単一のシャッターを使用でき、操作が簡単で、軽量で快適な視覚化トレーニング装置を提供することである。 シンプルで経済的な製造。」
なお、この特許文献には視覚に「閃光H」という着想による視覚刺激を与えることによって、認知症の40Hz療法を行うことは記載も示唆もされていない。
特表平9-510371(国際出願番号 PCT/US94/14801, 優先日1993年12月21日)は、「眼鏡型のフレームに液晶レンズを設け、このレンズを透明状態と不透明状態との間を所定周波数で切り替えることで、前記した暗室におけるトレーニングと同様の状態を作り出す動的視力訓練装置である。使用者は一層高速度で移動する対象に一層高い上達度をもって反射行動を執ることができるようになる」とされる。
なお、この特許文献にも視覚に「閃光H」という着想による視覚刺激を与えることによって、認知症の40Hz療法を行うことは記載も示唆もされていない。
特許第4426906号(特願2004-170518、出願日2004.6.8)で、発明の名称「視力訓練装置」は、暗室でストロボ光を明滅させ、「移動する対象物を間歇的に照らして、この対象物に対し反応するトレーニング方法を改良」し、TN型のLCDからなるレンズの透過状態と透過制限状態を切り替える動的視力訓練装置である。
すなわち、特許第4426906号の技術思想は、「移動する対象物を間歇的に照らして、この対象物に対し反応するトレーニング方法を改良」することであり、間歇的に照らされた物体の運動を見失わずに運動能力を高めるトレーニング方法に他ならない。
さらにまた、この特許文献にも視覚に「閃光H」という着想による視覚刺激を与えることによって、認知症の40Hz療法を行うことは記載も示唆もされていない。
つまり、「最高透過率と最低透過率の2値に加え、中間的な透過率を含めた2値以上の透過率値をとりうる任意の時系列波形」で制御する着想は、前記の特許第4426906号には記載も示唆もされていない。
このような治験と認知症治療への貢献を念頭に置いた着想は、前記の特許第4426906号には記載も示唆もされていない。
それゆえに、「第1の発明要素」を表現した文言は、その技術的な意味内容を変更することなく、本発明で既に開示した課題を解決する方法と、その目的に沿って創作した技術思想ならびに数々の着想や本発明に特有な用語の定義などの特徴をさらに明確に表現するよう書き改めることにする。
既に詳細に開示したとおり、本発明には非常に多くのバリエーションが存在する。
そこで、閃光サングラス30のシステムを構成する最低限の要件が不明確になることを予防するため、以下に最低限の構成を整理して明確化することを試みる。
このシステム全体である閃光サングラス30は、電子サングラス本体10だけで構成される場合(実施例1、実施例2、および実施例3を参照)もあれば、電子サングラス本体10とリモコン装置20で構成される場合(実施例4を参照)もある。
一方、左右の2枚の電子シャッターを持つ場合でも、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140とを電気的に接続して共通に駆動する場合(図13を参照)と、右目の電子シャッター130と左目の電子シャッター140とを独立に駆動する場合(実施例1、実施例2、実施例3および実施例4を参照)がある。
したがって、上記の意味で、電子シャッター機能139は、直接的もしくは間接的にフレーム840に固定されることで頭部に装着する。
そこで本発明を明確かつ定量的に表現するために、図5に示す公表されたデータを参照する。そのうえで、日本の賃貸アパートの住宅環境として一般的な30w蛍光灯2灯使用八畳間の300ルクスを参考にして、その1/3の100ルクス程度をもってテレビゲームを行う暗い部屋の明るさと仮定して、これを最小照度とする。また、雪山・真夏の海岸の100,000ルクスを超える明るさを最高照度とする。この範囲の明るさをもって「日常生活できる明るさの周囲光」を表現する。いずれにせよ、上限値も下限値も、本発明を適用できる周囲光の明るさの「範囲がきわめて広い」ことを示す意図であり、その数値自体は大まかな推奨値を示すに過ぎない。
最低照度100ルクスから最高照度100,000ルクスを超える明るさの周囲光を光源として利用し、認知症治療のための視覚刺激としての閃光Hを、一定の繰り返し周波数で、周期的に発生させる電子サングラス本体10を含むシステムとしての電子閃光サングラス30であって、
前記電子サングラス本体10は、
透過率を増減させる透過率制御を適用して閃光Hの強さを調整する電子シャッター機能139と、
前記電子シャッター機能139を固定して頭部に装着させるフレーム840と、
前記電子シャッター機能139の透過率を制御する前記透過率制御を行う透過率制御装置150と、
前記電子サングラス本体10に電源を供給する電源部160を含み、
前記透過率制御装置150は、
前記透過率制御の目標値としての前記繰り返し周波数と波形を記録した透過率制御情報170を含み、
前記透過率制御情報170に記録された前記繰り返し周波数は24Hzから50Hzの間にあること
を特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
特に、「閃光の強さ」の定義づけは、網膜に到達する光の1秒以上の期間における平均的な明るさを目の瞳孔の開閉によって自動調整する機能に着眼したものであり、周囲光そのものを最高照度Cに相当する認知症治療用の光源として利用する着想とともに、本発明の基本的な技術思想に由来している。
そこで、本発明の明細書で開示した内容にもとづいて、本発明の「第1の発明要素」における、本発明に独特な用語定義を整理すると下記の文言となる。
前記閃光Hは、前記繰り返し周波数で目に入射する光の最高照度Cが、前記繰り返し周波数で目に入射する光の平均照度Aに対して突出した照度差H=C-Aを表し、
前記閃光Hの強さは、前記平均照度Aに対する前記突出した照度差H=C-Aの比率であって、閃光比率E=(C-A)/Aを表すこと
を特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
そこで、本発明の明細書で開示した内容にもとづいて、本発明の「第1の発明要素」における、本発明に独特な透過率制御の目標値としての任意の時系列波形のデータの構造を整理すると下記の文言となる。
前記透過率制御情報170には、
前記電子シャッター機能139の透過率を制御する目標値としての任意の時系列からなる前記波形が含まれ、
前記波形は、最高透過率と最低透過率のみならず、さらに中間的な透過率の値を含めた2値以上の透過率値をとりうるデータ構造であること
を特徴とする、電子閃光サングラス30からなる認知症治療器具。
本発明の基本的な課題を解決するためには、第1の発明要素が重要である。さらに、治験用あるいは治療用の実用的な機材を開発する上では、複数の実施例に記載した通り、第2の発明要素から第6の発明要素についても、上記のように改定した第1の発明要素に立脚して、それぞれ記載した新たな課題を解決する有用な効果を提供する。
さらにまた、特にパイロット的な治験や予防活動の初期段階などでは、各実施例に記載した細かい発明要素も、本発明による認知症治療器具を製作するうえで、本発明に記載したように現実的な課題を解決するさまざまな効果を提供することができる。
2 太陽
3 室内照明
4 モニタ画面
10 電子サングラス本体
20 リモコン装置
30 電子閃光サングラス
120 入力スイッチ
125 入力スイッチ部
127 遠隔リレー接点
130 右目の電子シャッター
135 電子シャッター部
139 電子シャッター機能
140 左目の電子シャッター
145 透過率制御信号
150 透過率制御装置
155 操作情報
160 電源部
165 表示部
170 透過率制御情報
175 制御情報
180 リモコン受信部
185 遠隔操作情報
190 交換記憶装置
190D 制御用の交換記憶装置
190M 音楽用の交換記憶装置
192 データ媒体
192D 制御用のデータ媒体
192M 音楽用のデータ媒体
195 音声情報
197 記憶指令
200 検証装置
205 検証情報
210 音響増幅器
215 視覚刺激情報
220 外部音響信号端子
225 音響信号
810 遮光板(右)
815 遮光板(前)
820 遮光板(左)
830 遮光板(裏)
840 フレーム
850 窓
860 透明レンズ
870 飾り板
880 レンズ相当部材
900 コントローラ部
Claims (8)
- 認知症を予防、軽減、および治療するための治療器具として、1眼または2眼のゴーグルやメガネのレンズ部分に電子シャッターを配設し、前記電子シャッターによって前記レンズ部分の光の透過率の波形を制御して、繰返し周期のうちに遮断状態から透過状態の間で変化させることにより、周囲光を光源として利用して閃光を生成する電子閃光サングラスにおいて、
前記電子シャッターは液晶シャッター素子で構成し、
前記電子シャッターの透過率を制御するにあたり、前記電子閃光サングラスを制御する透過率制御装置の透過率制御情報に収めた透過率制御の目標値の波形を、前記電子シャッターの駆動電圧と透過率の間の特性データにもとづいて、前記電子シャッターを駆動する電圧の波形に変換した上で、前記電子シャッターの駆動電圧として供給するものであり
前記透過率制御の目標値の波形は、前記繰返し周期の1サイクルの間に3値以上の透過率値をとる階段状の波形であること
を特徴とする、電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
- 前記透過率制御の目標値の波形は、連続的な正弦波を、階段状に数値が変化する波形で近似したものであること
を特徴とする、請求項1に記載の電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
- 前記周囲光は、散歩や軽作業をさせて認知機能を改善する治療法を併用する際の野外または/および屋外の光であること
を特徴とする、請求項1に記載の電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
- 前記周囲光は、生活に不自由のない十分な明るさで差し込む日光や照明やモニタ画面のほか、画面を見ながら認知症予防用のゲームを使う治療法による、室内または/および屋内の光であること
を特徴とする、請求項1に記載の電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
- 前記電子閃光サングラスは、目の前の光景がちらついて見えるように繰り返す視覚刺激を与え、さらに、人間の可聴周波数帯域のオーディオ信号を音声刺激として併用すること
を特徴とする、請求項1に記載の電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
- 前記電子閃光サングラスの前記透過率制御情報として、ステレオ信号の片チャンネルに音声情報として聴覚刺激信号を記録し、前記ステレオ信号の他チャンネルに視覚刺激情報として透過率の波形を制御する情報を記録すること
を特徴とする、請求項5に記載の電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
- 前記電子閃光サングラスは、前記透過率制御情報の交換または/および手動操作の遠隔操作情報を送信するリモコン装置を備えること
を特徴とする、請求項1に記載の電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
- 前記リモコン装置は、パソコンやスマートフォンあるいはノートパッドや専用のコンピュータ内蔵機器のほか、テレビやエアコンの付属品のような片手で持てる小型のCPU内蔵の遠隔操作器具であり、
前記リモコン装置からの通信は、電波や赤外線による無線通信、または有線通信であること
を特徴とする、請求項7に記載の電子閃光サングラスからなる認知症治療器具。
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