一実施形態では、本発明により提供される抗体は、CSF−1Rへのリガンドの結合をブロックすることが可能である。本明細書で用いるブロックは、受容体を閉塞することなどの物理的なブロックを指すが、抗体又は断片が、例えば受容体に対する天然リガンドがもはや結合しないことを意味する立体配置変化を引き起こすエピトープに結合する場合も含む(本明細書においてアロステリックブロッキング又はアロステリック阻害と呼ばれる)。一実施形態では、本開示の抗体は、CSF−1Rの全アイソタイプ、例えばECDドメインの変異、例えばV23G、A245S、H247P、V279M及び前記変異の2つ、3つ又は4つの組合せを有するものに結合する。
CSF−1Rをブロックする抗体の能力を判定するのに適するアッセイは、本明細書の実施例に記載される。CSF−1及びIL−34は、両方ともCSF−1Rのリガンドであり、本発明の抗体は、機能的細胞スクリーニングでCSF−1及びIL−34の両方の活性を好ましくは阻害する。さらに、本発明による抗体は、CSF−1R活性化及び/又はCSF−1R内在化を好ましくは引き起こさない。さらに、本発明による抗体は、in vivoで単球の非古典的集団を好ましくは選択的に減少させる。
非古典的な単球は、CD14の発現が低く、CD16の発現が高い単球を一般に指す。単球のこの集団は、腫瘍関連マクロファージの前駆体であると考えられている。
本発明の抗体分子は、好適には高い結合親和性を有する。親和性は、単離された天然若しくは組換えのCSF−1R又は適する融合タンパク質/ポリペプチドを使用する、本明細書の実施例に記載される表面プラズモン共鳴、例えばBIAcoreなどの技術を含む、当技術分野で公知の任意の適する方法を使用して測定することができる。一例では、親和性は、本明細書の実施例に記載の組換えヒトCSF−1R細胞外ドメインを使用して測定される。一例では、使用される組換えヒトCSF−1R細胞外ドメインは、単量体である。好適には、本発明の抗体分子は、単離されたヒトCSF−1Rに対して、約1nM又は1nM未満の結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の抗体分子は、約500pM以下の結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の抗体分子は、約250pM以下の結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の抗体分子は、約200pM以下の結合親和性を有する。一実施形態では、本発明は、約100pM以下の結合親和性を有する抗CSF−1R抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、約100pM以下、好ましくは約10pM以下、より好ましくは約5pM以下の結合親和性を有するヒト化抗CSF−1R抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、約100pM以下、好ましくは約10pM以下、より好ましくは約5pM以下の結合親和性を有するヒト化抗CSF−1R抗体を提供する。
親和性の数値が低いほど、抗原に対する抗体又は断片の親和性が高い。
本明細書で用いられるヒトCSF−1Rは、ヒトタンパク質名CSF−1R又はその生物学的活性断片、例えば配列番号39に記載のもの又は番号P07333の下でUniProtに登録されているものを指す。当然ながら、発現される成熟タンパク質はシグナル配列を含まないが、その理由は後者が翻訳後に切断されるからである。
本発明者らは、ヒト化抗体を含む新しい抗CSF−1R抗体を提供している。抗体は、CSF−1R細胞外ドメインを発現するベクターでトランスフェクトされたラット線維芽細胞によるラットの免疫化から生成された。抗体のヒトCSF−1R結合のための上清の一次スクリーニングは、抗CSF−1R活性を有する抗体を含有するおよそ1000個のウェルを同定した。ヒトCSF−1RへのヒトCSF−1結合を阻止することが可能な抗体のための二次スクリーニングは、88個の陽性ウェルを同定した。一次ヒト単球のCSF−1依存性生存を阻止することが可能な抗体のための三次スクリーニングは、18個の陽性ウェルを同定した。これらの18個の陽性ウェルの可変領域をクローニングし、それは14個の抗体のクローニングの成功につながり、以降の発現は、十分なレベルで発現してCSF−1結合を阻害することが可能であった9個のキメラ抗CSF−1R抗体を提供した。これらの9個の抗体の配列決定をし、全てユニーク配列を有することが見出され、さらなる研究のために使用した。
リガンドブロッキング活性及びCSF−1及びIL−34によって媒介される単球生存を阻害する能力について、9個の抗CSF−1Rキメラ抗体を評価した。抗体の4つはCSF−1結合の完全な阻害及び単球生存の高レベルの阻害を実証したので、さらなる調査のために優先した。親和性、CSF−1結合の阻害、アカゲザル、カニクイザル及びイヌのCSF−1Rとの交差反応性、CSF−1R内在化並びにCSF−1R活性化を評価するために、これらの4つの抗CSF−1Rキメラ抗体をいくつかのin vitroアッセイでそれらの活性について試験した。4つの抗CSF−1R抗体をさらにヒト化し、ヒト化移植片の親和性を測定した。抗CSF−1R抗体の2つのヒト化は、親のキメラ抗体と同等の親和性(KD)、及び抗体が適する熱的安定性を有することを示すTmを有する、完全ヒト化抗体(ラットドナーの残基が存在しない)を生成した。対照的に、他の2つのヒト化抗CSF−1R抗体は、キメラ抗体と比較してCSF−1Rへの親和性が低減し、Tmはより低かった。これらの理由から、親和性を保持した抗体の2つの完全ヒト化移植片だけを、さらなる分析のためにより大きなスケールで発現させた。
これらの2つの抗体の完全ヒト化移植片のさらなる分析を、CSF−1結合をブロックする抗体によるCSF−1Rシグナル伝達の阻害がMCP−1分泌レベルの低減を引き起こした、MCP−1阻害アッセイで実行した。このアッセイは、驚くべきことに、完全ヒト化移植片がキメラ抗体と比較して低下した活性を示すことを明らかにした。完全ヒト化移植片がこの活性低下を示した理由を明らかにするために、Ab969と名付けた好ましい抗体の1つに関する一連の実験を実行した。Ab969のいくつかの中間体ヒト化移植片を生成し、MCP−1阻害アッセイで試験した。可変軽鎖ドナー残基Y71を含有した移植片は、MCP−1阻害アッセイでキメラAb969のそれと同等の活性を一般に示すことが判明した。MCP−1阻害アッセイでの様々な抗体移植片の活性におけるこの差は、キメラAb969と比較した抗体のオンレートの変化(低下したKa)によるものであると仮定した。
Ab969の熱安定性分析と他の抗CSF−1R抗体、例えば抗CSF−1R抗体Ab970との比較は、Ab969がより安定しているかもしれないことを示唆する。
Ab969のヒト化移植片のさらなる生物物理分析は、抗体を濃縮したときに一部の移植片が沈殿することを明らかにした。軽鎖の38位のリシン残基の例えばグルタミン置換が、改善された物理的安定性につながることを示した。
したがって、Ab969の1つの抗体移植片Ab969.g2(Ab969とも呼ぶ)を、さらなるin vitroでの特徴付け研究のために選択した。CSF−1Rへの有利な高い結合親和性、高い熱安定性及び高い物理的安定性に加えて、この抗体はIL−34依存性単球活性化の優れた阻害を実証し、CSF−1RのSNP変異体への結合が可能であることも見出された。Ab969.g2は、カニクイザルでの薬力学マーカー分析のためにも使用し、そこで、それはCSF−1Rに結合し、CSF−1結合をブロックし、腫瘍関連マクロファージの前駆体細胞であるカニクイザル単球の非古典的集団をin vivoで選択的に減少させることが示された。
したがって、一実施形態では、本発明は、重鎖及び/又は軽鎖を含む抗体を提供し、重鎖及び/又は軽鎖は抗CSF−1R抗体969.2に由来する少なくとも1つのCDRを含む。
Ab969.2は、完全長ヒト化IgG4分子である。軽鎖はヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)を含み、重鎖はヒンジ安定化突然変異S241Pを有するヒトガンマ4重鎖定常領域を含む(Angal et al.,1993)。軽鎖可変領域内には、潜在的DG異性化モチーフがCDR−L2及びフレームワークの接合部に存在する。Ab969.2完全抗体の重鎖及び軽鎖の配列は、配列番号27及び19で示される。
抗体可変ドメイン中の残基は、従来通りにKabat et al.,1987によって考案されたシステムに従って番号付けされる。このシステムは、Kabat et al.,1987,Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(以降、「Kabat et al.(上記)」)に示される。他に示される場合を除き、この番号付けシステムが本明細書で使用される。
Kabatの残基呼称は、アミノ酸残基の直線的番号付けと必ずしも直接的に対応しない。実際の直線的アミノ酸配列は、基本的可変ドメイン構造のフレームワークであるか又は相補性決定領域(CDR)であるかにかかわらず、構造成分の短縮又はそれへの挿入に対応する厳密なKabat番号付けより少ないか又は追加のアミノ酸を含有する可能性がある。所与の抗体のための残基の正しいKabat番号付けは、「標準」のKabat番号付け配列との抗体配列中の相同性残基の整列によって決定することができる。
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムにより残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)及び残基95〜102(CDR−H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia、C.及びLesk、A.M.、J.Mol.Biol.196、901−917(1987))によると、CDR−H1に相当するループは残基26から残基32まで延びている。したがって特記しない限り、本明細書に用いられる「CDR−H1」は、Kabat番号付け系及びChothiaのトポロジーループ定義の組合せによって記載されるように、残基26〜35を指すものとする。
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムにより残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)及び残基89〜97(CDR−L3)に位置する。
本開示に使用する抗体は、当技術分野で公知の任意の適する方法を使用して得ることができる。融合タンパク質を含むCSF−1Rポリペプチド/タンパク質、ポリペプチドを発現する細胞(組換え又は天然の)は、CSF−1Rを特異的に認識する抗体を生成するために使用することができる。ポリペプチドは、「成熟した」ポリペプチド又は生物学的に活性であるその断片若しくは誘導体であってもよい。ヒトタンパク質は、番号P07333の下でUniProtに登録されている。
宿主を免疫化するために使用するポリペプチドは、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から当技術分野で周知であるプロセスによって調製することができるか、又は天然の生物学的供給源からそれらを回収することができる。本出願では、用語「ポリペプチド」は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。これらは、特に明記しない限り互換的に使用される。一部の場合には、CSF−1Rポリペプチドは、例えば親和性タグ又は類似のものに融合している融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であってもよい。
CSF−1Rポリペプチドに対して生成される抗体は、動物の免疫化が必要な場合には、周知の及び慣例的なプロトコールを使用して動物に、好ましくはヒト以外の動物にポリペプチドを投与することによって得ることができる(例えば、Handbook of Experimental Immunology、D.M.Weir(ed.),4,Blackwell Scientific Publishers,Oxford,England,1986を参照する)。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタなどの多くの温血動物を免疫化することができる。しかし、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが一般的に最も適する。
モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の任意の方法によって、例えばハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein,1975,Nature,256:495−497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.,1983,Immunology Today,4:72)及びEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al.,1985,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,77−96,Alan R Liss,Inc.)によって調製することができる。
例えばBabcook,J.et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848;WO92/02551;WO04/051268及び国際特許出願番号WO04/106377に記載される方法によって特異抗体の生成のために選択される単一リンパ球から生成される免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニング及び発現させることによって、単一リンパ球抗体法を使用して抗体を生成することもできる。
抗体のためのスクリーニングは、ヒトCSF−1Rへの結合を測定するアッセイ及び/又は受容体へのリガンド結合をブロックする能力を測定するアッセイを使用して実施することができる。適するアッセイの例は、本明細書の実施例に記載される。
本明細書で用いられる特異的とは、それが特異的である抗原を認識するだけである抗体、又は、それが非特異的である抗原への結合と比較してそれが特異的である抗原に有意により高い結合親和性、例えば少なくとも、5、6、7、8、9、10倍より高い結合親和性を有する抗体を指すものとする。
本開示によるある特定の抗体のアミノ酸配列及びポリヌクレオチド配列は、図1及び2に提供される。
本発明の一態様では、抗体は、重鎖を含む抗CSF−1R抗体又はその結合断片であり、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1については配列番号4に記載の配列を有するCDR、CDR−H2については配列番号5に記載の配列を有するCDR、及びCDR−H3については配列番号6に記載の配列を有するCDRの少なくとも1つを含む。好ましくは、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1については配列番号4に記載の配列、CDR−H2については配列番号5に記載の配列、及びCDR−H3については配列番号6に記載の配列を含む。
本発明の第2の態様では、抗体は、軽鎖を含む抗CSF−1R抗体又はその結合断片であり、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1については配列番号1に記載の配列を有するCDR、CDR−L2については配列番号2に記載の配列を有するCDR、及びCDR−L3については配列番号3に記載の配列を有するCDRの少なくとも1つを含む。好ましくは、軽鎖の可変ドメインは、CDR−H1については配列番号1に記載の配列、CDR−H2については配列番号2に記載の配列、及びCDR−H3については配列番号3に記載の配列を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は、上記の重鎖及びさらに軽鎖を含む抗CSF−1R抗体又はその結合断片であり、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1については配列番号1に記載の配列を有するCDR、CDR−L2については配列番号2に記載の配列を有するCDR、及びCDR−L3については配列番号3に記載の配列を有するCDRの少なくとも1つを含む。好ましくは、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1については配列番号1に記載の配列、CDR−L2については配列番号2に記載の配列、及びCDR−L3については配列番号3に記載の配列を含む。
一実施形態では、独立して以下:
CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3のいずれか1つ;
組合せCDR−H1とH2、CDR−H1とH3、CDR−H1とL1、CDR−H1とL2、CDR−H1とL3、CDR−H2とH3、CDR−H2とL1、CDR−H2とL2、CDR−H2とL3、CDR−H3とL1、CDR−H3とL2、CDR−H3とL3、CDR−L1とL2、CDR−L1とL3、CDR−L2とL3;
CDR−H1、H2とH3、CDR−H1、H2とL1、CDR−H1、H2とL2、CDR−H1、H2とL3、CDR−H2、H3とL1、CDR−H2、H3とL2、CDR−H2、H3とL3、CDR−H3、L1とL2、CDR−H3、L1とL3、CDR−L1、L2、L3のいずれか1つ;
組合せCDR−H1、H2、H3とL1、CDR−H1、H2、H3とL2、CDR−H1、H2、H3とL3、CDR−H2、H3、L1とL2、CDR−H2、H3、L2とL3、CDR−H3、L1、L2とL3、CDR−L1、L2、L3とH1、CDR−L1、L2、L3とH2、CDR−L1、L2、L3とH3、CDR−L2、L3、H1とH2、
CDR−H1、H2、H3、L1とL2、CDR−H1、H2、H3、L1とL3、CDR−H1、H2、H3、L2とL3、CDR−L1、L2、L3、H1とH2、CDR−L1、L2、L3、H1とH3、CDR−L1、L2、L3、H2とH3のいずれか1つ;及び
組合せCDR−H1、H2、H3、L1、L2とL3
からなる群から選択される1つ又は複数のCDRで、少なくとも1つのアミノ酸が保存的置換によって置き換えられる。
一実施形態では、本明細書に開示される重鎖のドメインは、1、2、3又は4つの保存的アミノ酸置換を有する、例えば置換がフレームワーク内にある配列を含む。
一実施形態では、重鎖可変領域のフレームワークは、挿入された、削除された、置換された又はそれらの組合せである、1、2、3又は4つのアミノ酸を含む。一実施形態では、置換されたアミノ酸は、ドナー抗体からの対応するアミノ酸である。
一実施形態では、本明細書に開示される軽鎖可変領域は、1、2、3又は4つの保存的アミノ酸置換を有する、例えば置換がフレームワーク内にある配列を含む。
一実施形態では、軽鎖可変領域のフレームワークは、挿入された、削除された、置換された又はそれらの組合せである、1、2、3又は4つのアミノ酸を含む。一実施形態では、置換されたアミノ酸は、ドナー抗体からの対応するアミノ酸である。
本発明の一態様では、抗CSF−1R抗体又はその結合断片が提供され、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDR−H1の配列は配列番号4に記載の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性又は類似性を有し、CDR−H2の配列は配列番号5に記載の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性又は類似性を有し、CDR−H3の配列は配列番号6に記載の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性又は類似性を有する。好ましくは、抗CSF−1R抗体又はその結合断片は軽鎖をさらに含み、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDR−L1の配列は配列番号1に記載の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性又は類似性を有し、CDR−L2の配列は配列番号2に記載の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性又は類似性を有し、CDR−L3の配列は配列番号3に記載の配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する。
一実施形態では、可変領域は、本明細書で開示される可変領域配列との少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%の同一性又は類似性が与えられる。別の実施形態では、CSF−1R受容体、好ましくはCSF−1R受容体の細胞外ドメイン、より具体的には配列番号35、36、37、38及び/若しくは39のCSF−1R受容体又はUniProtデータベースエントリーP07333の配列、特に配列番号36のCSF−1R受容体の細胞外ドメイン又はUniProtデータベースエントリーP07333で開示される細胞外ドメインの498アミノ酸(P07333のアミノ酸20〜517)への結合のために、本発明の抗体又は断片の結合と競合する抗CSF−1R抗体が提供される。
一実施形態では、CDR−L1については配列番号1の、CDR−L2については配列番号2の、CDR−L3については配列番号3の、CDR−H1については配列番号4の、CDR−H2については配列番号5の、及びCDR−H3については配列番号6の配列に記載の6つのCDRを含む抗体の結合を交差ブロックする、例えば100pM以下の親和性を有し、特に交差ブロッキングがアロステリックである、抗CSF−1R抗体が提供される。
別の実施形態では、CSF−1R受容体の細胞外ドメインへのCSF−1及び/又はIL−34の結合を阻害するか又はそれと重なる、抗CSF−1R抗体又はその結合断片が提供される。
一実施形態では、CDR−L1については配列番号1の、CDR−L2については配列番号2の、CDR−L3については配列番号3の、CDR−H1については配列番号4の、CDR−H2については配列番号5の、及びCDR−H3については配列番号6の配列に記載の6つのCDRを含む抗体の結合を交差ブロックする、例えば100pM以下の親和性を有し、特に抗体が、それがブロックする抗体と同じエピトープに結合することによって結合を交差ブロックする、抗CSF−1R抗体が提供される。
一実施形態では、抗体配列のC末端残基、例えば重鎖配列のC末端残基、例えば末端のリシンが切断される、抗体又はその結合断片が提供される。一実施形態では、アミノ酸は、本明細書に開示される配列から切断される。一般に、切断は、発現される抗体又は結合断片の翻訳後修飾から生じる。
別の実施形態では、配列番号27又は配列番号29に記載の重鎖配列のC末端リシンが欠落しているか又は欠失されている、上又は下の実施形態のいずれかの抗CSF−1R抗体が提供される。欠落しているか又は欠失されているC末端リシン、例えば配列番号27の453位又は配列番号30の472位は、例えば末端のリシンをコードすることのない発現系での抗CSF−1R抗体の発現によって達成することができる。或いは、リシンなどのC末端残基の欠失は、翻訳後修飾として実行することができる。
一実施形態では、本発明による抗体又は結合断片はヒト化される。
本明細書で使用されるように、用語「ヒト化抗体」は、アクセプター抗体(例えばヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワークに移植されたドナー抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)からの1つ又は複数のCDR(所望により、1つ又は複数の改変CDRを含む)を重鎖及び/又は軽鎖が含有する、抗体又は抗体分子を指す(例えば、US5,585,089;WO91/09967を参照)。レビューについては、Vaughan et al.,Nature Biotechnology,16,535−539,1998を参照する。一実施形態では、全体のCDRが移されるのではなく、本明細書の上記のCDRのいずれか1つからの特異性決定残基の1つ又は複数だけがヒト抗体フレームワークに移される(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods,36:25−34を参照する)。一実施形態では、本明細書の上記のCDRの1つ又は複数からの特異性決定残基だけがヒト抗体フレームワークに移される。別の実施形態では、本明細書の上記のCDRの各々からの特異性決定残基だけがヒト抗体フレームワークに移される。CDR又は特異性決定残基を移植するとき、マウス、霊長類及びヒトのフレームワーク領域を含む、CDRが由来するドナー抗体のクラス/型に関係する、任意の適当なアクセプター可変領域フレームワーク配列を使用することができる。
好適には、本発明によるヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域及び本明細書に具体的に提供されるCDRの1つ又は複数を含む可変ドメインを有する。したがって、一実施形態では、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域及びヒト以外のドナーCDRを含む、ヒトCSF−1Rに結合するヒト化抗体が提供される。
本発明で使用することができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOMである(Kabat et al.,上記)。例えば、KOL及びNEWMは重鎖のために使用することができ、REIは軽鎖のために使用することができ、EU、LAY及びPOMは重鎖及び軽鎖の両方のために使用することができる。或いは、ヒト生殖細胞系配列を使用することができる。これらは、http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/で入手できる。
本発明のヒト化抗体では、アクセプターの重鎖及び軽鎖は同じ抗体に由来する必要があるとは限らず、所望により、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含むことができる。
一実施形態では、ヒトフレームワークは、1、2、3又は4つのアミノ酸置換、付加又は欠失、例えばドナー残基の1、2、3又は4つの保存的な置換又は置換を含む。
一実施形態では、ヒトフレームワークとして用いられる配列は、本明細書に開示される配列と80%、85%、90%、95%又はそれ以上類似しているか又は同一である。
本発明のヒト化抗体の重鎖のためのそのような適するフレームワーク領域の1つは、JH3 J領域と一緒のヒトサブグループVH2配列3−1 2−70に由来する(配列番号33)。
したがって、一例では、CDR−H1については配列番号4に記載の配列、CDR−H2については配列番号5に記載の配列、及びCDR−H3については配列番号6に記載の配列を含み、重鎖フレームワーク領域はJH4と一緒のヒトサブグループVH3配列1−3 3−07に由来する、ヒト化抗体が提供される。
一例では、抗体の重鎖可変ドメインは、配列番号23に記載の配列を含む。
本発明のヒト化抗体の軽鎖に適したフレームワーク領域は、JK4 J領域と一緒のヒト生殖細胞系サブグループVK1 2−1−(1)O12に由来する(配列番号31)。
したがって、一例では、CDR−L1については配列番号1に記載の配列、CDR−L2については配列番号2に記載の配列、及びCDR−L3については配列番号3に記載の配列を含み、軽鎖フレームワーク領域はヒトサブグループVK1 2−1−(1)O12プラスJK4 J領域に由来する、ヒト化抗体が提供される。
一例では、抗体の軽鎖可変ドメインは、配列番号15に記載の配列を含む。
本発明のヒト化抗体では、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のそれらと正確に同じ配列を有する必要はない。例えば、通常でない残基は、そのアクセプター鎖のクラス又は型のより頻繁に出現する残基に変えることができる。或いは、アクセプターフレームワーク領域で選択される残基は、それらがドナー抗体の同じ位置で見出される残基に対応するように変えることができる(Reichmann et al.,1998,Nature,332:323−324を参照する)。そのような変化は、ドナー抗体の親和性を回復するのに必要な最小限に保つべきである。変える必要があるかもしれないアクセプターフレームワーク領域の残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967に示されている。
したがって、一例では、重鎖の可変ドメインの少なくとも78位の残基(Kabat番号付け)がドナー残基である、ヒト化抗体が提供される。一実施形態では、重鎖可変ドメインの残基78は、アラニンで置き換えられる。
本明細書で用いられるドナー残基とは、CDRを提供したヒト以外の抗体(例えばマウス抗体)からの残基を指す。
一実施形態では、重鎖可変ドメインがいかなるドナー残基も含有しないヒト化抗体が提供される。
したがって、一例では、軽鎖の可変ドメインの38、71及び87位の残基(Kabat番号付け)の少なくとも1つがドナー残基である、ヒト化抗体が提供される。一実施形態では、軽鎖の可変ドメインの38、71及び87位の残基(Kabat番号付け)から選択される残基の1つはドナー残基である。一実施形態では、軽鎖の可変ドメインの38、71及び87位の残基(Kabat番号付け)から選択される残基の2つ、例えば38及び71位、又は38及び87位、又は71及び87位の残基はドナー残基である。一実施形態では、軽鎖の可変ドメインの38、71及び87位の3つの残基(Kabat番号付け)は、ドナー残基である。
一実施形態では、軽鎖可変ドメインの残基38は、リシンで置き換えられる。代替実施形態では、軽鎖可変ドメインの残基38は、グルタミンで置き換えられる。
一実施形態では、軽鎖可変ドメインの残基71は、チロシンで置き換えられる。
一実施形態では、軽鎖可変ドメインの残基87は、フェニルアラニンで置き換えられる。
一実施形態では、軽鎖可変領域の残基71だけがドナー残基、好ましくはチロシンである、ヒト化抗体が提供される。
特定の実施形態では、本発明は、配列番号23に記載の重鎖可変ドメイン配列を含む重鎖、及び配列番号15に記載の軽鎖可変ドメイン配列を含む軽鎖を有する、抗CSF−1R抗体又はその結合断片を提供する。
本発明のさらなる態様では、CSF−1R、好ましくはCSF−1Rの細胞外ドメイン、最も好ましくはヒトCSF−1Rの細胞外ドメインに結合する、抗CSF−1R抗体又はその結合断片が提供され、抗体又は結合断片は配列番号15の軽鎖可変ドメイン及び配列番号23の重鎖可変ドメインを含み、好ましくは抗体又はその結合断片はモノクローナル抗体であり、IgG1−、IgG2−、IgG4型の抗体であり、Fab、改変Fab、Fab’、改変Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、二、三若しくは四価の抗体、ビス−scFv、ダイアボディ、トリアボディ又はテトラボディである。
一実施形態では、本開示は、本明細書に開示される配列と80%類似するか又は同一である、例えば関連する配列の一部又は全体にわたって85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似するか又は同一である抗体配列を提供する。一実施形態では、関連する配列は、配列番号15である。一実施形態では、関連する配列は、配列番号23である。
本明細書で使用されるように、「同一性」は、整列させた配列中の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で使用されるように、「類似性」は、整列させた配列中の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で類似の型であることを示す。例えば、イソロイシン又はバリンのためにロイシンを置換することができる。お互いのためにしばしば置換することができる他のアミノ酸には、限定されずに以下のものが含まれる:
− フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
− リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
− アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
− アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);並びに
− システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)。同一性及び類似性の程度は、容易に計算することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part1,Griffin,A.M.and Griffin,H.G.eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M. and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991,NCBIから入手できるBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410;Gish,W.及びStates,D.J.1993,Nature Genet.3:266−272。Madden,T.L.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.及びMadden,T.L.1997,Genome Res.7:649−656)。
本発明の抗体分子は、完全長重鎖及び軽鎖又はその結合断片を有する完全な抗体分子を含むことができ、限定されずにFab、改変Fab、Fab’、改変Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えばVH又はVL又はVHH)、scFv、二、三又は四価抗体、ビス−scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及び上記のいずれかのエピトープ結合断片であってもよい(例えば、Holliger and Hudson,2005,Nature Biotech.23(9号):1126−1136;Adair and Lawson,2005,Drug Design Reviews−Online 2(3号),209−217を参照する)。これらの抗体断片を作製及び製造する方法は、当技術分野で周知である(例えばVerma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216:165−181を参照する)。本発明で使用するための他の抗体断片には、国際特許出願WO05/003169、WO05/003170及びWO05/003171に記載されるFab及びFab’断片が含まれる。多価抗体は、複数の特異性、例えば二重特異性を含むことができるか、又は単一特異的であってもよい(例えば、WO92/22853、WO05/113605、WO2009/040562及びWO2010/035012を参照する)。
本明細書で用いられる抗体の結合断片は、その断片を抗原に特異的であると特徴付ける親和性で抗原に結合することが可能な断片を指す。
一実施形態では、本開示による抗体は、例えば全て参照により本明細書に組み込まれるWO2009/040562、WO2010/035012、WO2011/030107、WO2011/061492及びWO2011/086091に記載されている通り、免疫グロブリン部分、例えばFab又はFab’断片及び直接的又は間接的にそれに連結される1つ又は2つの単一ドメイン抗体(dAb)を含むCSF−1R結合抗体融合タンパク質として提供される。
一実施形態では、融合タンパク質は、例えばジスルフィド結合によって任意選択で連結される、重鎖可変(VH)及び軽鎖可変(VL)対形成として2つのドメイン抗体を含む。
一実施形態では、融合タンパク質のFab又はFab’エレメントは、単一ドメイン抗体(単数又は複数)への同じであるか又は類似の特異性を有する。一実施形態では、Fab又はFab’は単一ドメイン抗体(単数又は複数)への異なる特異性を有する、すなわち融合タンパク質は多価性である。一実施形態では、本発明による多価融合タンパク質はアルブミン結合部位を有する、例えばその中のVH/VL対はアルブミン結合部位を提供する。
存在するならば、本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、抗体分子の提案された機能、及び特に必要とされることがあるエフェクター機能に関して選択することができる。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、抗体分子が治療的使用を目的とし、抗体エフェクター機能が必要とされるときは、特にIgG1及びIgG3アイソタイプのヒトIgG定常領域ドメインを使用することができる。或いは、抗体分子が治療目的のためであり、抗体エフェクター機能が必要とされないときは、IgG2及びIgG4アイソタイプを使用することができる。
具体的な実施形態では、本発明の抗体は、IgG2又はIgG4抗体である。
これらの定常領域ドメインの配列変異体を使用することもできることが理解される。例えば、Angal et al.,1993,Molecular Immunology,1993,30:105−108に記載されるように、241位のセリンがプロリンに変化しているIgG4分子を使用することができる。したがって、抗体がIgG4抗体である実施形態では、抗体は突然変異S241Pを含むことができる。
抗体が様々な翻訳後修飾を受けることができることも、当業者に理解される。これらの修飾の型及び程度は、抗体を発現させるために使用される宿主細胞系及び培養条件にしばしば依存する。そのような修飾には、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミドの変形を含めることができる。高頻度の修飾は、カルボキシペプチダーゼ作用によるカルボキシ末端塩基性残基(リシン又はアルギニンなど)の喪失である(Harris,RJ.Journal of Chromatography 705:129−134、1995に記載される)。したがって、抗体重鎖のC末端のリシンは、不在であってもよい。
一実施形態では、抗体重鎖はCH1ドメインを含み、抗体軽鎖はカッパ又はラムダのCLドメインを含む。
一実施形態では、抗体重鎖はCH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、抗体軽鎖はカッパ又はラムダのCLドメインを含む。
本発明により提供される抗体は、配列番号27に記載の配列を含む重鎖及び配列番号19に記載の配列を含む軽鎖を有する。重鎖及び軽鎖は、配列番号27に記載の配列を含む重鎖及び配列番号19に記載の配列を含む軽鎖に少なくとも80%(好ましくは85%、90%、95%又は98%)同一であるか又は類似している、抗CSF−1R抗体又はその結合断片も提供される。一実施形態では、軽鎖は、配列番号19に記載の配列を有するか又はそれからなり、重鎖は、配列番号27に記載の配列を有するか又はそれからなる。別の実施形態では、軽鎖は、配列番号19の配列を有するか又はそれからなり、重鎖は、配列番号27の配列を有するか又はそれからなり、配列番号27の453位のアミノ酸リシンは欠落又は欠失している。
本発明は、本発明によって提供される抗体、特に重鎖配列gH2(配列番号27)及び/又は軽鎖配列gL7(配列番号19)を含む抗体969.g2が結合する、ヒトCSF−1Rの特異的領域又はエピトープも提供する。
ヒトCSF−1Rポリペプチドのこの特異的領域又はエピトープは、本発明によって提供される抗体のいずれか1つと組み合わせた、当技術分野で公知の任意の適するエピトープマッピング方法によって同定することができる。そのような方法の例は、CSF−1Rに由来する様々な長さのペプチドを、抗体によって認識されるエピトープの配列を含有する、抗体に特異的に結合することができる最小断片による本発明の抗体への結合についてスクリーニングすることを含む(例えば、長さが約5〜20個、好ましくは約7個のアミノ酸の領域のペプチド)。CSF−1Rペプチドは、合成的に、又はCSF−1Rポリペプチドのタンパク消化によって生成することができる。抗体に結合するペプチドは、例えば質量分析によって同定することができる。別の例では、本発明の抗体が結合するエピトープを同定するために、NMR分光法又はX線結晶学を使用することができる。同定されると、必要ならば、本発明の抗体に結合するエピトープ断片は、同じエピトープに結合する追加の抗体を得るための免疫原として使用することができる。
生体分子、例えば抗体又は断片は、酸性及び/又は塩基性の官能基を含有し、それによってネットで正又は負の電荷を分子に与える。全体の「観察される」電荷の量は、実体の絶対的アミノ酸配列、3D構造での荷電基の局所の環境及び分子の環境条件に依存する。等電点(pI)は、特定の分子又はその溶媒アクセサブル表面がネットの電荷を有しないpHである。一例では、本発明のCSF−1R抗体及び断片は、適当な等電点を有するように操作することができる。これは、より頑強な特性、特に適する溶解性及び/又は安定性プロファイル及び/又は改善された精製特性を有する抗体及び/又は断片をもたらすことができる。
したがって一態様では、本発明は、当初同定された抗体の等電点と異なる等電点を有するように操作されるヒト化CSF−1R抗体を提供する。この抗体は、例えば、アミノ酸残基を置き換えることによって、例えば酸性アミノ酸残基を1つ又は複数の塩基性アミノ酸残基で置き換えることによって操作することができる。或いは、塩基性アミノ酸残基を導入することができるか、又は酸性アミノ酸残基を取り除くことができる。或いは、分子が容認できないほど高いpI値を有する場合は、必要に応じてpIを下げるために酸性残基を導入することができる。pIを操作するときには、抗体又は断片の望ましい活性を保持するように注意しなければならないことが重要である。したがって一実施形態では、操作された抗体又は断片は、「未改変の」抗体又は断片と同じか又は実質的に同じ活性を有する。
抗体又は断片の等電点を予測するために、**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html、及びhttp://www.iut−arles.up.univ−mrs.fr/w3bb/d_abim/compo−p.htmlなどのプログラを使用することができる。
本発明により提供される抗体の親和性は、当技術分野で公知の任意の適する方法を使用して変更することができることが理解される。したがって、本発明は、CSF−1Rへの改善された親和性を有する本発明の抗体分子の変異体にも関する。そのような変異体は、CDRを突然変異させること(Yang et al.,1995,J.Mol.Biol.254:392−403)、鎖シャフリング(Marks et al.,1992,Bio/Technology,10:779−783)、大腸菌(E.coli)のミューテーター株の使用(Low et al.,1996,J.Mol.Biol.,250:359−368)、DNAシャフリング(Patten et al.,1997,Curr.Opin.Biotechnol.,8:724−733)、ファージディスプレイ(Thompson et al.,J.Mol.Biol.256,77−88,1996)及び有性PCR(Crameri et al.,1998,Nature,391:288−291)を含むいくつかの親和性成熟プロトコールによって得ることができる。Vaughanら(上記)は、親和性成熟のこれらの方法を議論する。
所望により、本発明で使用するための抗体は、1つ又は複数のエフェクター分子(単数又は複数)にコンジュゲートされてもよい。したがって、エフェクター分子は、単一のエフェクター分子を、又は本発明の抗体に付着することができる単一部分を形成するように連結される2つ以上のそのような分子を含むことができることが理解される。エフェクター分子に連結される抗体断片を得るのが望まれる場合、これは、抗体断片が直接的に又はカップリング剤を介してエフェクター分子に連結される標準の化学的又は組換えDNA方法によって調製することができる。そのようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートする技術は、当技術分野で周知である(Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,Robinson et al., eds.,1987,623−53;Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.,62:119−58及びDubowchik et al.,1999,Pharmacology and Therapeutics,83、67−123を参照する)。特定の化学的方法には、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03/031581に記載されるものが含まれる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合は、結合は組換えDNA方法、例えばWO86/01533及びEP0392745に記載される方法を使用して達成することができる。
本明細書で使用される用語エフェクター分子には、例えば、抗腫瘍剤、薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば酵素、他の抗体若しくは抗体断片、合成された若しくは天然に存在する重合体、核酸及びその断片、例えばDNA、RNA及びその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子及びレポーター基、例えば蛍光性化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出することができる化合物が含まれる。
エフェクター分子の例には、細胞に有害である(例えば殺傷性の)任意の薬剤を含む細胞毒素又は細胞傷害剤を含めることができる。例には、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステルリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、及びその類似体又は相同体が含まれる。
エフェクター分子には、限定されずに、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロルエタミン、チオテパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC及びシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアミシン又はデュオカルマイシン)、及び有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)も含まれる。
他のエフェクター分子には、キレート化放射性核種、例えば111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188、又は、限定されずに、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物が含まれてもよい。
他のエフェクター分子には、タンパク質、ペプチド及び酵素が含まれる。目的の酵素には、限定されずに、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、転移酵素が含まれる。目的のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドには、限定されずに、免疫グロブリン、毒素、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素、タンパク質、例えばインスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓性の薬剤又は抗血管新生薬剤、例えばアンギオスタチン若しくはエンドスタチン、又は生物学的応答修飾因子、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、神経成長因子(NGF)又は他の増殖因子及び免疫グロブリンが含まれる。
他のエフェクター分子には、例えば診断で有益な検出可能な物質が含まれてもよい。検出可能な物質の例には、様々な酵素、接合団、蛍光性材料、発光性材料、生物発光材料、放射性核種、陽電子放射金属(陽電子放射断層撮影用)及び非放射性常磁性金属イオンが含まれる。診断薬として使用するための抗体にコンジュゲートすることができる金属イオンについては、一般に、米国特許第4,741,900号を参照する。適する酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適する接合団には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが含まれ;適する蛍光性材料には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンが含まれ;適する発光性材料にはルミノールが含まれ;適する生物発光材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが含まれ;適する放射性核種には、125I、131I、111In及び99Tcが含まれる。
別の例では、エフェクター分子はin vivoで抗体の半減期を増加させること、及び/又は抗体の免疫原性を低減すること、及び/又は上皮障壁越しの免疫系への抗体の送達を増強することができる。このタイプの適するエフェクター分子の例には、重合体、アルブミン、アルブミン結合性タンパク質又はアルブミン結合性化合物、例えばWO05/117984に記載されているものが含まれる。
一実施形態では、CSF−1Rから独立してエフェクター分子により提供される半減期は、有利である。
エフェクター分子が重合体である場合は、それは一般に、合成であるか又は天然に存在する重合体、例えば任意選択で置換された直鎖若しくは分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレン重合体又は分枝状若しくは非分枝状の多糖、例えばホモ若しくはヘテロ多糖であってもよい。
前述の合成重合体に存在することができる具体的な任意選択の置換基には、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基が含まれる。
合成重合体の具体例には、任意選択で置換された直鎖又は分枝鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に任意選択で置換されたポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体が含まれる。
具体的な天然に存在する重合体には、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はその誘導体が含まれる。
一実施形態では、重合体は、ヒト血清アルブミン又はその断片などの、アルブミン又はその断片である。
本明細書で使用される「誘導体」は、反応性誘導体、例えばマレイミドなどのチオール選択的反応性基を含むものとする。反応性基は、直接的に又はリンカーセグメントを通して重合体に連結することができる。そのような基の残基は、一部の場合には抗体断片と重合体の間の連結基として生成物の一部を形成することが理解される。
重合体のサイズは所望により変更することができるが、一般には500Daから50000Da、例えば5000から40000Da、例えば20000から40000Daの平均分子量範囲内である。重合体サイズは、特に生成物の使用目的、例えば腫瘍などのある特定の組織に局在化させるか又は循環半減期を延長する能力に基づいて選択することができる(レビューについては、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531−545を参照する)。したがって、例えば腫瘍の処置で使用するために、例えば、生成物が循環を離れ、組織を透過することを意図する場合は、小分子量、例えばおよそ5000Daの分子量の重合体を使用することが有利なことがある。生成物が循環中に残る適用のためには、より高い分子量、例えば20000Daから40000Daの範囲内の分子量を有する重合体を使用することが有利なことがある。
適する重合体には、ポリアルキレン重合体、例えばポリ(エチレングリコール)又は、特にメトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体、特に約15000Daから約40000Daの範囲内の分子量を有するものが含まれる。
一例では、本発明で使用するための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に付着させる。1つの特定の例では、抗体は抗体断片であり、PEG分子は、抗体断片に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端のアミノ酸官能基、例えば任意の遊離のアミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を通して付着させることができる。そのようなアミノ酸は抗体断片に天然に存在してもよく、又は組換えDNA方法を使用して断片に組み入れられてもよい(例えば、US5,219,996;US5,667,425;WO98/25971、WO2008/038024を参照する)。一例では、本発明の抗体分子は、改変がエフェクター分子の付着を可能にするためのその重鎖のC末端への1つ又は複数のアミノ酸の付加である、改変Fab断片である。好適には、追加のアミノ酸は、エフェクター分子を付着させることができる1つ又は複数のシステイン残基を含有する改変ヒンジ領域を形成する。2つ以上のPEG分子を付着させるために、複数の部位を使用することができる。
好適には、PEG分子は、抗体断片に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を通して共有結合する。改変抗体断片に付着する各重合体分子は、断片に位置するシステイン残基の硫黄原子に共有結合することができる。共有結合は、一般にジスルフィド結合又は、特に硫黄炭素結合である。チオール基が付着点として使用される場合、適切に活性化されたエフェクター分子、例えばチオール選択的誘導体、例えばマレイミド及びシステイン誘導体を使用することができる。上記の重合体改変抗体断片の調製では、出発材料として活性化重合体を使用することができる。活性化重合体は、チオール反応性基、例えばハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドを含有する任意の重合体であってもよい。そのような出発材料は市販されている(例えば、Nektar、元Shearwater Polymers Inc.、Huntsville、AL、USAから)か、又は従来の化学的方法を使用して市販の出発材料から調製することができる。特定のPEG分子には、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar、元Shearwater;Rapp Polymere;及びSunBioから入手可能)、及びM−PEG−SPA(Nektar、元Shearwaterから入手可能)が含まれる。
一実施形態では、抗体は改変されたFab断片、Fab’断片又はdiFabであり、それはペグ化されている、すなわち、例えばEP0948544又はEP1090037に開示される方法によりそれに共有結合されるPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する[「ポリエチレングリコールの化学的、生物工学的及び生物医学的適用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry、Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press,New York,「ポリエチレングリコールの化学的及び生物学的適用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications)」,1997,J.Milton Harris and S.Zalipsky(eds),American Chemical Society,Washington DC及び「バイオメディカルサイエンスのためのバイオコンジュゲーションによるタンパク質のカップリング技術(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」,1998,M.Aslam and A.Dent,Grove Publishers,New York;Chapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews 2002,54:531−545も参照する]。一例では、PEGはヒンジ領域のシステインに付着させる。一例では、PEG改変Fab断片は、改変ヒンジ領域の単一のチオール基に共有結合しているマレイミド基を有する。リシン残基をマレイミド基に共有結合することができ、リシン残基のアミン基の各々には、およそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)重合体を付着させることができる。したがって、Fab断片に付着するPEGの全分子量は、およそ40,000Daであってもよい。
特定のPEG分子には、PEG2MAL40K(Nektar、元Shearwaterから入手可能)としても知られる、N,N’−ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)MW20,000)改変リシンの2−[3−(N−マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドが含まれる。
PEGリンカーの代替供給源には、GL2−400MA3(下の構造でmは5である)及びGL2−400MA(mは2である)を供給し、nはおよそ450であるNOFが含まれる:
すなわち、各PEGは、約20,000Daである。
したがって一実施形態では、PEGは、SUNBRIGHT GL2−400MA3として知られる、2,3−ビス(メチルポリオキシエチレン−オキシ)−1−{[3−(6−マレイミド−1−オキソヘキシル)アミノ]プロピルオキシ}ヘキサン(2アーム分枝状PEG、−CH2)3NHCO(CH2)5−MAL、Mw40,000である。
さらなる代替PEGエフェクター分子は、以下の型のものである:
一実施形態では、鎖の中のアミノ酸226、例えば重鎖のアミノ酸226(逐次的番号付けによる)あたりのシステインアミノ酸残基を通して付着している、ペグ化された(例えば本明細書に記載のPEGで)完全長抗体などの抗体が提供される。
一実施形態では、本開示は、1つ又は複数のPEG重合体、例えば1つ又は2つの重合体、例えば40kDaの重合体(単数又は複数)を含むFab’PEG分子を提供する。
本開示によるFab−PEG分子は、それらがFc断片とは無関係な半減期を有するという点で特に有利であるかもしれない。
一実施形態では、重合体、例えばPEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子にコンジュゲートされるscFvが提供される。
一実施形態では、抗体又は断片は、例えば半減期を増加させるためにデンプン分子にコンジュゲートされる。タンパク質にデンプンをコンジュゲートする方法は、参照により本明細書に組み込まれるUS8,017,739に記載される。
本明細書に用いられるレポーター分子は、検出することが可能である分子、例えば蛍光色素、放射標識又は他の検出可能な実体である。
本発明は、本発明の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列も提供する。好適には、DNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。本発明のDNA配列は、合成DNA、例えば化学的プロセシングによって生成されるもの、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は、当業者に周知の方法によって得ることができる。例えば、抗体の重鎖及び軽鎖の一部又は全体をコードするDNA配列は、所望により決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成することができる。
アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者に広く利用でき、それらの公知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。
本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製するために、分子生物学の標準の技術を使用することができる。オリゴヌクレオチド合成技術を使用して、所望のDNA配列を完全に又は一部合成することができる。適宜、部位特異的突然変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用することができる。
適するDNA配列の例を、図1に提供する。
本発明は、本発明の1つ又は複数のDNA配列を含むクローニング又は発現ベクターにも関する。したがって、本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含むクローニング又は発現ベクターが提供される。一実施形態では、ベクターは、配列番号28及び/又は配列番号20に記載の配列を含む。好適には、クローニング又は発現ベクターは、本発明の抗体分子の軽鎖及び重鎖、好ましくはそれぞれ配列番号28及び配列番号20、並びに適するシグナル配列をコードする2つのDNA配列を含む。一例では、ベクターは、重鎖及び軽鎖の間の遺伝子間配列を含む(WO03/048208を参照する)。
ベクターを構築することができる一般方法、トランスフェクション方法及び培養方法は、当業者に周知である。これに関しては、「分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」,1999,F.M.Ausubel(ed),Wiley Interscience,New York及びCold Spring Harbor Publishingによって作成されたManiatis Manualを参照する。
本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む1つ又は複数のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために、任意の適する宿主細胞/ベクター系を使用することができる。細菌、例えば大腸菌、及び他の微生物系を使用することができ、又は真核生物、例えば哺乳動物の宿主細胞発現系を使用することもできる。適する哺乳動物の宿主細胞には、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマ細胞が含まれる。
本発明は、本発明による抗体分子の生成のための方法であって、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現を導くのに適する条件下で本発明のベクターを含有する宿主細胞を培養するステップと、抗体分子を単離するステップとを含む方法も提供する。
抗体分子は重鎖又は軽鎖ポリペプチドだけを含むことができ、その場合には、宿主細胞をトランスフェクトするために重鎖又は軽鎖ポリペプチドのコード配列だけを使用する必要がある。重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物の生成のために、細胞系を2つのベクターでトランスフェクトすることができ、第1のベクターは軽鎖ポリペプチドをコードし、第2のベクターは重鎖ポリペプチドをコードする。或いは、単一のベクターを使用することができ、ベクターは軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。
本開示による抗体及び断片は、宿主細胞から優れたレベルで発現される。したがって、抗体及び/又は結合断片の特性は、商業スケールでの発現に適する。
したがって、宿主細胞を培養して抗体又はその断片を発現させ、後者を単離し、それを任意選択で精製して単離された抗体又は断片を提供する方法が提供される。一実施形態では、この方法は、単離された抗体又は断片にエフェクター分子をコンジュゲートする、例えばPEG重合体、特に本明細書に記載のものにコンジュゲートするステップをさらに含む。
一実施形態では、抗体(特に本発明による抗体又は断片)を精製するための方法であって、不純物がカラムに保持され、抗体が溶出される非結合モードで陰イオン交換クロマトグラフィーを実施するステップを含む方法が提供される。
一実施形態では、精製は、CSF−1Rカラムの上での親和性捕捉を用いる。
一実施形態では、精製は、アルブミン融合又はコンジュゲート分子の精製のためにシバクロンブルー又は類似のものを用いる。
この方法で使用するのに適するイオン交換樹脂には、Q.FF樹脂(GE−Healthcareから供給される)が含まれる。ステップは、例えば、約8のpHで実施することができる。
この方法は、例えば約4〜5のpH、例えば4.5で実施される陽イオン交換クロマトグラフィーを用いる初期捕捉ステップをさらに含むことができる。陽イオン交換クロマトグラフィーは、例えばCaptoS樹脂又はSPセファロースFF(GE−Healthcareによって供給される)などの樹脂を用いることができる。次に抗体又は断片は、塩化ナトリウムなどのイオン性塩溶液を例えば200mMの濃度で用いて樹脂から溶出することができる。
したがって、適宜、クロマトグラフのステップ(単数又は複数)は、1回又は複数回の洗浄ステップを含むことができる。
精製方法は、ダイアフィルトレーションステップなどの1つ又は複数の濾過ステップを含むこともできる。
したがって一実施形態では、実質的に精製された形態の、特にエンドトキシン及び/又は宿主細胞タンパク質若しくはDNAが含まれないか又は実質的に含まれない、精製された抗CSF−1R抗体又は断片、例えばヒト化抗体又は断片、特に本発明による抗体又は断片が提供される。
上で使用される精製形態は、少なくとも90%の純度、例えば91、92、93、94、95、96、97、98、99w/w%又はそれ以上の純度を指すものとする。
エンドトキシンを実質的に含まないとは、1mgの抗体生成物につき1EU又はそれ以下、例えば1mgの生成物につき0.5又は0.1EUのエンドトキシン含有量を一般に指すものとする。
宿主細胞タンパク質又はDNAを実質的に含まないとは、適宜、抗体生成物1mgにつき400μg又はそれ以下、例えば1mgにつき100μg以下、特に1mgにつき20μgの宿主細胞タンパク質及び/又はDNA含有量を一般に指すものとする。
本発明は、医薬用の本開示による抗CSF−1R抗体(又はそれを含む医薬組成物)も提供する。
本発明は、がんの処置のための本開示による抗CSF−1R抗体(又はそれを含む医薬組成物)も提供する。
本発明は、がんの処置又は予防のための医薬の製造における、本開示による抗CSF−1R抗体(又はそれを含む医薬組成物)の使用も提供する。
本発明は、がんを患っているか又はその危険があるヒト対象の処置のための方法であって、本開示による抗CSF−1R抗体の有効量を対象に投与するステップを含む方法も提供する。
本開示による抗体は、乳がん、前立腺がん、骨がん、骨髄腫、結腸直腸がん、白血病、リンパ腫、黒色腫などの皮膚がん、食道がん、胃がん、星状細胞がん、子宮体がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、肺がん、肝がん、甲状腺がん、頭頚部がん、膵がん及び卵巣がんからなる群から選択されるがんを処置するために使用することができる。
一実施形態では、がんは、上記の元のがんのいずれか、特に骨がんからの転移がんである。
驚くべきことに、CSF−1R活性を阻害する抗CSF−1R抗体が線維性疾患の処置で活性であることを実証することができた。具体的には、抗CSF−1R抗体が肺線維症のin vivo動物モデルで活性であることを実証することができた。
本発明は、線維性疾患の処置のための本開示による抗CSF−1R抗体(又はそれを含む医薬組成物)も提供する。
本発明は、線維性疾患の処置又は予防のための医薬の製造における、本開示による抗CSF−1R抗体(又はそれを含む医薬組成物)の使用も提供する。
本発明は、線維性疾患を患っているか又はその危険があるヒト対象の処置のための方法であって、本開示による抗CSF−1R抗体の有効量を対象に投与するステップを含む方法も提供する。
本出願では、用語「線維性疾患」は、過剰な線維結合組織が器官又は組織に形成される創傷治癒への異常な応答によって特徴付けられる疾患を含む。例示的な線維性疾患には、限定されずに、肺線維症、例えば特発性肺線維症及び嚢胞性線維症、尿細管萎縮及び間質性線維症を含む腎臓線維症、肝臓線維症、肝硬変、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維化症、進行性の大規模な線維症、腎原性の全身性線維症、クローン病、ケロイド、心筋梗塞、強皮症、全身性硬化症及び関節線維症が含まれる。
一実施形態では、本開示による抗体又は断片は、がん又は線維性疾患の処置又は予防で用いられる。
本開示による抗体は、炎症性疾患など、例えば、炎症性関節炎、アテローム硬化症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、リウマチ様脊椎炎、強直性脊椎炎、関節炎、乾癬性関節炎、慢性関節リウマチ、骨関節炎、湿疹、接触性皮膚炎、乾癬、毒性ショック症候群、敗血症、敗血症性ショック、内毒素ショック、喘息、慢性肺炎症性疾患、ケイ肺症、肺サルコイドーシス、骨粗しょう症、再狭窄、心臓及び腎臓再かん流損傷、血栓症、糸球体腎炎、糖尿病、移植片対宿主反応、同種異系移植片拒絶反応、多発性硬化症、筋変性、筋ジストロフィー、アルツハイマー病及び脳卒中の処置で使用することができる。
本開示による抗体及び断片は、処置又は予防で用いることができる。
本発明の抗体分子は、診断で、例えばCSF−1Rが関与する疾患状態のin vivo診断及び画像化で使用することもできる。
本発明の抗体は病態の処置及び/又は予防で有益であるので、本発明は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1つ又は複数と一緒に本発明の抗体分子を含む医薬用又は診断用の組成物も提供する。したがって、医薬の製造のための本発明の抗体の使用が提供される。組成物は、薬学的に許容される担体を通例含む、無菌の医薬組成物の一部として通常供給される。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバントをさらに含むことができる。
本発明は、医薬用又は診断用の組成物の調製のための方法であって、本発明の抗体分子を薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1つ又は複数と一緒に加えて混合するステップを含む方法も提供する。
抗体分子は、医薬用又は診断用の組成物で唯一の有効成分であってもよい。或いは、抗体は、1つ又は複数の他の治療活性成分と組合せて、例えば同時、逐次的又は別々に投与することができる。したがって、医薬用又は診断用の組成物中の抗体分子には、他の有効成分、例えば他の抗体成分、例えば表皮成長因子受容体ファミリー(EGFR、HER−2)、血管内皮細胞成長因子受容体(VEGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)抗体)、又は非抗体成分、例えばイマチニブ、ダサチニブ、ニオルチニブ、バスチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、テムシロリムス、バンデタニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ボリノスタット、ロミデプシン、ボルテゾミブ、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、ピルフェニドン(perfenidone)、ステロイド若しくは他の薬物分子、特に半減期がCSF−1R結合と無関係である薬物分子が伴うことができる。
本明細書で用いる有効成分とは、関連する用量で治療効果などの薬理効果を有する成分を指す。
医薬組成物は、好適には本発明の抗体の治療有効量を含む。本明細書で使用される用語「治療有効量」は、標的の疾患又は状態を処置、改善若しくは予防するのに必要な、又は検出可能な治療的、薬理学的若しくは予防的効果を表すのに必要な治療剤の量を指す。任意の抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイで、又は動物モデル、通常齧歯動物、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類で最初に推定することができる。動物モデルは、適当な濃度範囲及び投与経路を決定するために用いることもできる。そのような情報は、ヒトでの投与のための有益な用量及び経路を判断するために次に用いることができる。
ヒト対象のための正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の健康状態、対象の齢、体重及び性別、食事、投与の時期及び頻度、薬物組合せ(単数又は複数)、反応感度並びに療法への耐容性/応答による。この量は慣例的な実験によって判定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、治療有効量は0.01mg/kgから500mg/kg、例えば0.1mg/kgから200mg/kg、例えば100mg/kgである。
医薬組成物は、1用量につき本発明の活性薬剤の所定量を含有する単位用量形態で便利に提供することができる。
本開示による抗体の治療用量は、in vivoで明らかな毒作用を示さないか又は限定された毒作用しか示さない。
組成物は、患者に個々に投与することができるか、又は他の薬剤、薬物若しくはホルモンと組み合わせて(例えば、同時、逐次的又は別々に)投与することができる。
一実施形態では、本開示による抗体又は結合断片は、1つ又は複数の他のがん処置選択肢、例えば化学療法、放射線療法又は手術と一緒に用いられる。化学療法薬と一緒に投与される場合は、抗体は化学療法剤の前若しくは後に、又は同時に投与することができる。提供される抗原結合タンパク質と併用することができる化学療法薬には、限定されずに、アルキル化/DNA傷害剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン)、代謝拮抗薬(例えば、カペシタビン、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル)、有糸分裂阻害剤(例えば、パクリタキセル、ビンクリスチン)が含まれる。
様々な炎症性疾患を処置するために使用される抗体は、単独で使用すること又は様々な他の抗炎症剤と組み合わせることができる。
様々な線維性疾患を処置するために使用される抗体は、単独で使用すること又は様々な他の抗線維症剤と組み合わせることができる。そのような薬剤の例は、ピルフェニドン(perfedidone)である。
本発明の抗体分子が投与される用量は、処置される状態の性質、存在する状態の重症度、及び抗体分子が予防的に使用されるか又は既存の状態を処置するために使用されるかによる。
投与頻度は、抗体分子の半減期及びその効果持続期間による。抗体分子が短い半減期(例えば2〜10時間)を有する場合は、1日に1回又は複数回の用量を与える必要があるかもしれない。或いは、抗体分子が長い半減期(例えば2〜15日間)及び/又は持続性の薬力学(PD)プロファイルを有する場合は、1日に1回、1週に1回、又は1若しくは2カ月おきに1回さえも、投薬量を与える必要があるだけかもしれない。
本明細書に用いられる半減期とは、循環、例えば血清/血漿中の分子の持続期間を指すものとする。
本明細書に用いられる薬力学とは、本開示による分子の生物学的作用のプロファイル、特に持続期間を指す。
薬学的に許容される担体は、組成物を受ける個体に有害な抗体の生成をそれ自体誘導するべきでなく、毒性であるべきでない。適する担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体及び不活性ウイルス粒子などの大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子であってもよい。
薬学的に許容される塩、例えば鉱酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩、又は有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩を使用することができる。
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、水、食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体をさらに含有することができる。さらに、補助的物質、例えば湿潤若しくは乳化剤、又はpH緩衝物質が、そのような組成物中に存在してもよい。そのような担体は、患者による摂取のために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁剤として製剤化することを可能にする。
投与のための適する形態には、非経口投与、例えば注射又は注入、例えばボーラス注射又は連続的注入によるものに適する形態が含まれる。生成物が注射又は注入のためである場合は、それは油性又は水性のビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンの形態をとることができ、それは懸濁剤、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化薬剤を含有することができる。或いは、抗体分子は、使用前に適当な無菌液体によって再構成するために、乾燥した形態であってもよい。
製剤化されると、本発明の組成物は対象に直接的に投与することができる。処置対象は、動物であってもよい。しかし、1つ又は複数の実施形態では、組成物はヒト対象への投与のために適合させられる。
好適には、本開示による製剤では、最終製剤のpHは抗体又は断片の等電点の値に類似せず、例えば製剤のpHが7であるならば、8〜9又はそれ以上のpIが適当であるかもしれない。理論に束縛されることを欲しないが、これは、改善された安定性を有する、例えば抗体又は断片が溶液状態のままである最終製剤を最終的に提供することができると考えられる。
一例では、4.0〜7.0の範囲のpHの医薬製剤は、1〜200mg/mLの本開示による抗体、1〜100mMのバッファー、0.001〜1%の界面活性剤、a)10〜500mMの安定剤、b)10〜500mMの安定剤及び5〜500mMの等張化剤、又はc)5〜500mMの等張化剤を含む。
本発明の医薬組成物は、限定されずに、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、クモ膜下、心室内、経真皮、経皮(例えば、WO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、腟内又は直腸経路を含む任意の数の経路によって投与することができる。本発明の医薬組成物を投与するために、ハイポスプレーを使用することもできる。一般的に、治療組成物は、液体溶液又は懸濁液の注射剤として調製することができる。注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に適する固体形態を調製することもできる
組成物の直接送達は、皮下、腹腔内、静脈内若しくは筋肉内への注射によって一般に達成されるか、又は組織の間質空間に送達される。組成物を病変に投与することもできる。投薬処置は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであってもよい。
組成物中の有効成分が抗体分子であることが理解される。このように、それは胃腸管での分解に感受性である。したがって、組成物が胃腸管を使う経路によって投与される場合は、組成物は、抗体を分解から保護するが、それが胃腸管から吸収されたならば抗体を放出する薬剤を含有する必要がある。
薬学的に許容される担体の完全な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、N.J.1991)で入手できる。
一実施形態では、製剤は吸入を含む局所投与のための製剤として提供される。
適する吸入可能な調製物には、吸入可能な粉末、噴射ガスを含有する計量エアゾール又は噴射ガスを含まない吸入可能な溶液が含まれる。活性物質を含有する開示による吸入可能な粉末は、上述の活性物質だけ、又は上述の活性物質と生理的に許容される賦形剤との混合物だけからなることができる。
これらの吸入可能な粉末は、単糖(例えばグルコース又はアラビノース)、二糖(例えばラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖(例えばデキストラン)、多価アルコール(例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、又はこれらのお互いの混合物を含むことができる。好適には単糖又は二糖が使用され、ラクトース又はグルコースは、特に、しかし限定することなくそれらの水和物の形態で使用される。
肺での沈着のための粒子は、10ミクロン未満、例えば1〜9ミクロン、例えば0.1〜5μm、特に1〜5μmの粒径を必要とする。有効成分(抗体又は断片など)の粒径が第一に重要である。
吸入可能なエアゾールを調製するために使用することができる噴射用ガスは、当技術分野で公知である。適する噴射用ガスは、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタンなどの炭化水素並びにメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩素化及び/又はフッ化誘導体などのハロ炭化水素の中から選択される。上述の噴射用ガスはそれ自体で、又はそれらの混合物で使用することができる。
特に適する噴射用ガスは、TG11、TG12、TG134a及びTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上述のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)及びそれらの混合物が特に適する。
噴射用ガスを含有する吸入可能なエアゾールは、助溶剤、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、抗酸化剤、滑沢剤及びpHを調整する手段などの他の成分を含有することもできる。全てのこれらの成分は、当技術分野で公知である。
本発明による噴射剤ガスを含有する吸入可能なエアゾールは、最高5重量%の活性物質を含有することができる。本発明によるエアゾールは、例えば、0.002〜5重量%、0.01〜3重量%、0.015〜2重量%、0.1〜2重量%、0.5〜2重量%又は0.5〜1重量%の有効成分を含有する。
或いは、肺への局所投与は、例えば、ネブライザーなどの機器、例えば圧縮器に接続されたネブライザー(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.、Richmond、Va.が製造したPari Master(登録商標)圧縮器に接続されたPari LC−Jet Plus(登録商標)ネブライザー)を用いる、液体溶液又は懸濁液製剤の投与によることもできる。
本発明の抗体は、溶媒に分散させて、例えば溶液又は懸濁液の形態で送達することができる。それは、適当な生理溶液、例えば食塩水又は他の薬理的に許容される溶媒又は緩衝溶液に懸濁させることができる。当技術分野で公知である緩衝溶液は、約4.0〜5.0のpHを達成するように、1mlの水につき0.05mg〜0.15mgのエデト酸二ナトリウム、8.0mg〜9.0mgのNaCl、0.15mg〜0.25mgのポリソルベート、0.25mg〜0.30mgの無水クエン酸、及び0.45mg〜0.55mgのクエン酸ナトリウムを含有することができる。懸濁液は、例えば、凍結乾燥された抗体を用いることができる。
治療的な懸濁液又は液体製剤は、1つ又は複数の賦形剤を含有することもできる。賦形剤は当技術分野で周知であり、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液及び重炭酸緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールを含む。溶液又は懸濁液は、リポソーム又は生分解性マイクロスフェアに封入されてもよい。製剤は、無菌製造方法を用いて実質的に無菌の形態で一般に提供される。
これは、製剤のために使用される緩衝溶媒/溶液の生成及び濾過滅菌、無菌緩衝溶媒溶液中での抗体の無菌的懸濁、並びに当業者におなじみの方法による無菌容器への製剤の小分けを含むことができる。
本開示による噴霧可能な製剤は、例えばホイルエンベロープに詰め込まれた単一の用量単位(例えば、密封プラスチック容器又はバイアル)として提供することができる。各バイアルは、例えば2mL量の溶媒/溶液緩衝液中に、単位用量を含有する。
本明細書に開示される抗体は、噴霧療法による送達に適することができる。
本発明の抗体が遺伝子療法を用いて投与できることも想定される。これを達成するために、抗体鎖がin situでDNA配列から発現されて組み立てられるように、適当なDNA構成要素の制御下の抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列が患者に導入される。
一実施形態では、本開示は、例えばレポーター分子にコンジュゲートされた試薬又は診断法としての、抗体又はその断片の使用を含む。したがって、標識されている、本開示による抗体又は断片が提供される。一態様では、本開示による抗体又は断片を含むカラムが提供される。
このように、以下のような用途のための試薬として使用するための抗CSF−1R抗体又は断片が提供される:
1)CSF−1Rタンパク質(又はその結合断片)の精製−基質にコンジュゲートされて、親和性カラムとして、又は(抗CSF−1Rの改変形態として)抗Fc試薬によって任意選択で沈殿される、沈殿剤(例えば、改変されてもよい別の分子によって認識されるドメインで改変される形態として)として使用される
2)生きているか又は固定された細胞上又は細胞中のCSF−1Rの検出及び/又は数量化(in vitro又は組織中又は細胞切片中の細胞)。これのための用途には、抗CSF−1R処置の効果を追跡するためのバイオマーカーとしてのCSF−1Rの数量化を含めることができる。これらの目的のために、候補は改変形態で使用されてもよい(例えば、遺伝子融合タンパク質又は化学的コンジュゲートとして別の部分の付加、例えばレポーター分子、例えば検出目的で使用される蛍光性タグの付加による)。
3)(1)及び(2)で例示される方法によって改変される候補への結合によって標識されるCSF−1Rを有する細胞の精製又は選別。
本明細書との関連で、含む(comprise)とは含む(include)ことを意味するものとする。
技術的に適当な場合、本発明の実施形態は組み合わせることができる。
実施形態は、ある特定の特徴/要素を含むものとして本明細書に記載される。本開示は、前記特徴/要素からなるか又は本質的にそれからなる別個の実施形態にも及ぶ。
特許及び出願などの技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に具体的及び明示的に列挙されるいかなる実施形態も、単独で又は1つ又は複数のさらなる実施形態と一緒に放棄の基礎を形成する。
本発明は、以下の図を参照する以下の実施例で単なる例示としてさらに記載される。
例1−抗CSF−1R抗体の生成
免疫化:
グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーに連結したヒトCSF−1R細胞外ドメインを発現するベクターで一時的にトランスフェクトさせた同系RFL6ラット線維芽細胞で、雌SDラットを免疫化した。図3は、ラットの免疫化で使用したヒトCSF−1R細胞外ドメイン配列である配列番号39を示す。
ラットは、3週間隔で1動物につき3〜9×106個のトランスフェクション細胞の5回の皮下免疫化を受けた。最初の細胞免疫化の隣接部位に、フロイント完全アジュバント(PBS中50%)を注射した。最終免疫化の2週後に、末梢血単核細胞(PBMC)及び脾臓を収集した。
抗体上清の一次スクリーニング
抗体上清は、トランスフェクトされたHEK293細胞上で発現されたヒトCSF−1Rに結合するそれらの能力について、蛍光微量アッセイ技術(FMAT)によって最初にスクリーニングした。
600×96ウェルプレートの一次FMATスクリーニングで、抗CSF−1R反応性を有するおよそ1000ウェルが同定された。合計で、およそ3×108個のB細胞(ラット脾細胞)をFMATによってCSF−1R結合抗体の生成についてスクリーニングした。
抗体上清の二次スクリーニング
中和抗CSF−1R活性を含有したFMAT陽性ウェル、すなわちヒトCSF−1R受容体へのヒトCSF−1結合を阻止する能力を有する抗体を同定するように、中間スループットアッセイを考案した。ヒトCSF−1とのインキュベーションの前に、CSF−1Rを発現するTHP−1細胞と抗体上清をインキュベートした。THP−1細胞へのCSF−1結合のレベルは、抗CSF−1ポリクローナル抗体を使用するフローサイトメトリーによって測定した。無関係の抗体上清を、陰性対照として使用した。
779個の抗体ウェルの上清に二次スクリーニングを適用し、これらのウェルの88個は検出可能なCSF−1ブロッキング活性を実証した。
抗体上清の三次スクリーニング
二次スクリーニングで中和活性を示していた抗体上清を、一次ヒト単球のCSF−1依存性生存を阻止するそれらの能力について試験した。ヒト血液から単球を精製し、20ng/mlのヒトCSF−1の存在下で1×104個の細胞を各抗体上清とインキュベートした。72時間のインキュベーションの後、生存可能な単球の数を、CellTiter Gloアッセイによって測定した。
二次スクリーニングで同定された59個の抗体ウェルの上清に三次スクリーニングを適用し、18個のウェルはCSF−1媒介単球生存を低減する能力を実証した。
抗体可変領域のクローニング及びブロッキング活性の再分析
CSF−1中和活性を実証した18個の抗体ウェルから、可変領域(V領域)のクローニングを試みた。ラット抗体定常領域に特異的なプライマー及びラット免疫グロブリンリーダーペプチドをコードする配列にアニールする冗長なプライマーセットを用いて、重鎖及び軽鎖の免疫グロブリンV領域をRT−PCRによって増幅した。V領域遺伝子は14個の抗体から回収し、重鎖及び軽鎖のヒトIgG4発現ベクターにクローニングした。
抗体ベクター対をHEK293F細胞に一時的にトランスフェクトし、THP−1細胞上のCSF−1中和活性について馴化培地を試験した(上記の通り)。抗体の9つは、対照の馴化培地と比較してCSF−1結合を部分的又は完全に阻害する能力を有していた。
9つの中和抗CSF−1R抗体の配列分析
配列多様性を評価するために、9つの中和抗体で配列決定をした。全ての9つの抗体は特異であった。さらなるプロファイリング研究のために、これらの抗体をクローニングし、発現させた。
例2−抗ヒトCSF−1RキメラAb969及び抗マウスCSF−1R Ab535のin vitro特性
i)キメラAb969の発現
例1で同定された9つの中和抗体の可変領域を別々の重鎖及び軽鎖発現ベクターにクローニングし、完全長ヒトIgG4抗体として発現させた。
天然のリーダー配列をコードするDNA及びヒンジ安定化突然変異S241Pを有するヒトガンマ−4重鎖定常領域を含有するベクターpVhg4FL(V19H)に、VH遺伝子をクローニングした。天然のリーダー配列をコードするDNA及びヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)を含有するベクターpKH10.1(V4L)に、VL遺伝子(カッパ)をクローニングした。
マッチングさせた重鎖及び軽鎖ベクター対のCHO−K1細胞への一時的同時トランスフェクションによって、抗体を発現させた。最終調製物中の凝集体のレベルが1%未満であるように、PBS pH7.4に抗体を精製した。
9つの抗体のパネルは、抗体969と命名した抗体を含んでいた。ラット可変領域及びヒトガンマ−4重鎖定常領域及びヒトカッパ鎖定常領域を含むキメラ抗体は、以下の例では抗体969又は抗体969cHcL又は抗体969.g0と呼ぶ。
ii)リガンドブロッキングアッセイ
THP−1細胞へのCSF−1結合を阻害する9つの抗体の各々の能力は、フローサイトメトリーによって評価した。THP−1細胞は、0.5、0.125、0.031、0.0078及び0.00195μg/mlで各抗体と30分間インキュベートした。無関係なIgG4抗体は、アイソタイプ対照の役目をした。洗浄後、細胞を30分間、0.5μg/mlヒトCSF−1とインキュベートした。さらなる洗浄の後、ビオチン化抗CSF−1抗体及びAlexa488コンジュゲートストレプトアビジンとの逐次的なインキュベーションによって、結合したCSF−1を検出した。受容体結合リガンドをフローサイトメトリーによって測定し、蛍光強度中央値(MFI)をプロットした。
このアッセイでは、試験した残りの抗体より優れ、濃度31.3ng/mlでCSF−1結合の完全な阻害を実証した、Ab969を含む4つの抗体が同定された。Ab969の結果は、図4に示す。
iii)CSF−1及びIL−34によって媒介される単球生存の阻害
抗ヒトCSF−1R:
一次ヒト単球のCSF−1及びIL−34駆動型の生存及び増殖を阻害するそれらの能力について、精製された抗ヒトCSF−1R抗体を試験した。各アッセイで、単球の最大刺激を与える濃度でマイトジェン(CSF−1又はIL−34)を使用した。
フィコール勾配上でヒトPBMCを新鮮なヒト全血から調製し、単球を負の選択によって精製した。単球を0.25μg/mlの抗体及び20ng/mlのCSF−1と72時間インキュベートし、CellTiter Glo分析を用いて生存可能な細胞の相対数を判定した。発光の読出しは、生存可能な細胞数と相関する。結果は図5aに示す。
フィコール勾配上でヒトPBMCを新鮮なヒト全血から調製し、単球を負の選択によって精製した。単球を0.25μg/mlの抗体及び20ng/mlのIL−34と72時間インキュベートし、CellTiter Glo分析を用いて生存可能な細胞の相対数を判定した。発光の読出しは、生存可能な細胞数と相関する。結果は図5bに示す。
それらのリガンドブロッキング活性と同調して、Ab969を含む抗体の4つは、CSF−1(図5a)及びIL−34(図5b)刺激に関して残りの抗体と比較して単球生存の優れた阻害を実証した。
抗マウスCSF−1R:
一次マウスCD11b+単球をマウス脾臓から精製した。次に、単球を24時間、漸増量のマウスCSF−1(mCSF−1)とインキュベートした。細胞培地へのMCP−1の放出をELISAによって測定し、mCSF−1によるMCP−1の用量依存的放出が実証された。研究の別の群では、10μg/mlの抗マウスCSF−1R Ab535を漸増量のmCSF−1と一緒に加えた。MCP−1の放出は、試験したCSF−1の全ての濃度でAb535によって完全に阻害された(図6)。
100ng/mlの一定濃度のCSF−1及び漸増量のAb535で一次マウス単球を使用して、MCP−1放出アッセイを実施した。MCP−1放出の用量依存的阻害が実証され、IC50を計算した。2つの独立した実験からのAb535の平均IC50は、8.08ng/mlと決定された。
結論:CSF−1によるマウス単球の処置はMCP−1の用量依存的放出を引き起こし、それは10μg/mlのAb535による処置によって完全に阻害された。Ab535はCSF−1駆動型のマウス単球からのMCP−1放出を用量依存的に阻害し、平均IC50は8.08ng/ml(n=2)である。このIC50値は、抗ヒトCSF−1R抗体によって表されるものに類似している。
iv)親和性
精製された組換えCSF−1R/Fc融合タンパク質への結合動態の測定によるBIAcoreアッセイで、CSF−1Rに結合するそれらの能力について抗体を試験した。
アッセイフォーマットは、固定化された抗ヒトIgG、F(ab’)2による抗CSF−1R抗体の捕捉と、次に捕捉された表面でのhCSF−1R/Fcの滴定であった。BIAcore 3000(GE Healthcare Bio−Sciences AB)を使用して、BIA(Biamolecular Interaction Analysis)を実施した。全ての実験は、25℃で実施した。アミンカップリング化学により、CM5センサーチップ(GE Healthcare Bio−Sciences AB)の上に、Affinipure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片特異的(Jackson Immuno Research)を約5000応答単位(RU)のレベルまで固定化した。ランニングバッファーとして、HBS−EP緩衝液(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P20、GE Healthcare Bio−Sciences AB)を10μl/分の流量で使用した。固定化された抗ヒトIgG、F(ab)2の上でおよそ100RUの捕捉レベルを与えるために、抗CSF−1R抗体の注入を実施した。
組換えヒトCSF−1R/Fc(R&DSystems)を5nMで捕捉された抗CSF−1R抗体の上に30μl/分の流量で5分間流し、その後解離段階のために流量を100μl/分に30分間増加させた。対応する緩衝液対照とともに、5nMでの注入を2回実施した。これらのセンサーグラムは、解離速度を生成するために使用した。捕捉された抗CSF−1R抗体上で、30μl/分の流量で5分間、組換えヒトCSF−1R/Fcを2.5nMから滴定し、その後10分間の解離段階が続いた。これらのセンサーグラムは、結合速度を生成するために使用した。40mM HClの10μl注入と続いて10mM NaOHの5μl注入によって、表面を10μl/分の流量で再生した。BIAevaluationソフトウェア(バージョン4.1)を標準の手順に従って使用して、二重参照バックグラウンド補正結合曲線を分析した。動力学的パラメータは、フィッティングアルゴリズムから判定した。
4つの試験抗体のうちの3つは、10pM未満の親和性(K
D)を示した。これは、抗マウスCSF−1R並行試薬、Ab535と比較して有利である。Ab969及びAb553の結果を、表1に示す。
抗体の親和性は、THP−1細胞を使用した細胞ベースのアッセイによっても測定した。Alexa−488蛍光色素で抗体を直接的に標識し、定量的フローサイトメトリーによって親和性を測定した。追加のBIAcore分析は、抗体の蛍光コンジュゲーションが組換えCSF−1Rタンパク質への親和性を変化させないことを確認した。結果を、表2に示す。
2つの方法論から導かれる絶対的親和性値は異なり、この差は2つの系を比較したときに通常観察される。しかし、細胞ベースの方法は、抗体が高い親和性でCSF−1Rに結合することを実証した。
v)CSF−1結合の阻害(IC
50)
THP−1細胞へのCSF−1結合を阻害するそれらの相対力価を測定することによって、4つの抗体を分析した。このアッセイフォーマットで、全ての4つの抗体はCSF−1結合の強力な阻害を示し、IC
50値は5ng/ml未満(約30pM)であった。
vi)抗体交差反応性
アカゲザル、カニクイザル及びイヌ完全長CSF−1Rでの交差反応性について、4つの抗体を試験した。全ての4つの抗体はヒトCSF−1Rに加えてアカゲザル及びカニクイザルのCSF−1Rに結合し、アイソタイプ対照のレベルより有意に高い明らかな結合を実証した。
vii)CSF−1R内在化
Ab969:
THP−1細胞を0、0.5、2、4、24及び48時間、Ab969とインキュベートした。細胞は、それぞれ陽性及び陰性対照としての役目をしたヒトCSF−1及びアイソタイプ対照によっても処置した。各時点で、細胞表面CSF−1Rのレベルをフローサイトメトリーによって測定した(図7)。アイソタイプ対照と比較してAb969で処置した細胞上の細胞表面CSF−1Rの相対レベルを計算したものを、図8に示す。
組換えCSF−1によるTHP−1細胞の処置は、細胞表面CSF−1Rのレベルの急速で持続する減少を引き起こした。天然のリガンドはその同族受容体に結合し、リガンド−受容体複合体の内在化を促進する。
全48時間の過程を通して、未処置及びアイソタイプ対照処置THP−1細胞と比較して、Ab969で処置したTHP−1細胞は、より高いレベルの細胞表面CSF−1R発現を示した。このデータは、Ab969によるTHP−1細胞の処置が、処置から最高48時間後まで細胞表面発現hCSF−1Rの内在化を引き起こさないことを強く示唆する。
CSF−1で処置した細胞を除いては、時間が経過するに従い、未処置及び処置THP−1細胞上の細胞表面発現CSF−1Rの注目すべき増加があった。これは、48時間の実験期間中の細胞増殖期間中の発現の変化が原因かもしれず、ストレス応答である可能性がある。
Ab969が受容体の内在化を強化しないというさらなる証拠を提供するために、さらにTHP−1細胞系が生理的に関連しないという可能性を排除するために、一次ヒト単球を内在化アッセイでも使用した。このアッセイからのデータは、Ab969が健康な一次ヒト単球の上で細胞表面CSF−1Rの急速な内在化を引き起こさないことも実証した。
Ab535:
マウス白血病単球/マクロファージ細胞系RAW264.7は、高レベルのマウスCSF−1R(mCSF−1R)を発現し、抗マウスCSF−1R抗体Ab535が受容体の内在化を導き出すことができるかどうかについて試験するのに適する細胞ベースの系を代表する。
RAW264.7細胞を0、0.5、2、4、24及び48時間、Ab535とインキュベートした。細胞は、それぞれ陽性及び陰性対照としての役目をしたヒトCSF−1及びアイソタイプ対照によっても処置した。各時点で、細胞表面CSF−1Rのレベルをフローサイトメトリーによって測定した(図9)。アイソタイプ対照と比較した細胞表面CSF−1Rの相対レベルを計算したものを、図10に示す。
データは、組換えCSF−1によるTHP−1細胞の処置は、細胞表面CSF−1Rのレベルの急速で持続する減少を引き起こしたことを示す。
未処置及びアイソタイプ対照処置細胞に対して、2時間ヒトCSF−1で処置したRAW264.7細胞で、細胞表面mCSF−1Rレベルの明らかな低減が観察された。この低減は、48時間の研究の間ずっと維持される。これは、ヒトCSF−1がmCSF−1Rの内在化を誘発することを実証し、受容体内在化の監視のための実験系を確認する。
全48時間の過程を通して、未処置及びアイソタイプ対照処置細胞と比較して、Ab535で処置したRAW264.7細胞は、類似したレベルの細胞表面mCSF−1Rを示した。抗体によって媒介される受容体内在化はこの時間枠内で起こることが予想されるので、このデータはAb535がmCSF−1Rの内在化を誘発しないことを強く示唆する。
Ab535が受容体内在化を強化しないというさらなる証拠を提供するために、一次マウスCD11b+単球−マクロファージを内在化アッセイで使用した。これらの結果も、Ab535によるマウス単球−マクロファージの処置が、処置から最高24時間後まで細胞表面発現mCSF−1Rの内在化を引き起こさないことを証明した。
viii)CSF1−R活性化
CSF−1はCSF−1Rに結合して受容体二量体の形成を引き起こし、それはキナーゼドメインを近接させることによって急速な受容体リン酸化を誘発する。これはその後、受容体内在化、及びRas−MAPK経路を含むいくつかのよく特徴付けられたシグナル伝達経路の活性化につながる。抗CSF−1R抗体が受容体クラスタリングを導き出し、下流のシグナル伝達カスケードを誘発することができるかもしれない。これは受容体シグナル伝達を阻害するべきである抗体にとって望ましくない特性であるかもしれないので、Ab969による受容体アゴニズムを2つの独立したin vitroアッセイフォーマットを使用して試験した。
第1のアッセイフォーマットでは、ヒト完全長CSF−1Rでトランスフェクトした細胞と抗体をインキュベートし、受容体及び下流シグナル伝達分子のリン酸化をウエスタンブロット法によって監視した。
THP−1細胞系は、CSF−1Rの活性化状態を監視するための出発点であった。しかし、この細胞系でのCSF−1Rの発現レベルは比較的低く、生化学的分析の実施を困難にしている。したがって、CSF−1Rリン酸化のレベルを強力に検出することができるように、実験系を考案した。CSF−1Rのリン酸化は、2つのチロシン残基、Y723及びY809で検出することができる。さらに、T202及びY204でのp44/42 MAPK(Erk1/2)のリン酸化を、CSF−1R活性の独立した読出しとして測定した。CSF−1による刺激は、陽性対照として全ての実験に含まれた。
HEK293F細胞を、完全長CSF−1Rを発現するプラスミドベクターでトランスフェクトした。無血清条件で24時間のインキュベーションの後、細胞をAb969.g0の100μg/ml〜0.001μg/mlの漸増量で5分間刺激した。細胞は、陽性対照を提供するために、500ng/mlの組換えCSF−1でも処置した。未処置の細胞は、陰性対照として含まれた。処置した及び未処置の細胞からのタンパク質溶解物をSDS−ポリアクリルアミド電気泳動によって分離し、ニトロセルロースの上へブロットした。ホスホY723 CSF−1R(Cell Signaling Technology 番号3151)、ホスホY809(Cell Signaling Technology 番号3154)、全CSF−1R(Cell Signaling Technology 番号3152)及びホスホERK1/2(p44/42 MAPK)(Cell Signaling Technology 番号5301)に対する抗体を使用して、ウエスタンイムノブロッティングを実施した。
刺激されていないCSF−1RでトランスフェクトしたHEK293F細胞は、低い基礎レベルのCSF−1Rリン酸化を示した。CSF−1による細胞の刺激は、残基Y723及びY809でウエスタンブロット分析によって容易に観察されたCSF−1Rリン酸化のレベルをもたらした(図11)。CSF−1処置の結果、ERK1/2リン酸化の明らかな刺激もあった。トランスフェクトされたHEK293F細胞の抗体Ab969.g0による処置は、CSF−1Rのリン酸化を刺激せず、ERK1/2活性化を強化しなかった。
第2のアッセイでは、抗体Ab969(単量体及び架橋)を一次ヒト単球とインキュベートし、MCP−1分泌をCSF−1R活性化のマーカーとして使用した。ヒト単球のCSF−1処置は、それらに単球化学誘引タンパク質−1(MCP−1)を放出させる。抗CSF−1R抗体が単球の上でCSF−1R受容体を活性化する能力を有するならば、MCP−1の放出が起こると予想される。
以前に記載した生化学的アッセイは、単量体の抗CSF−1R抗体だけを使用した。しかし、架橋IgG1が、CSF−1R分子を近接させてチロシンリン酸化及び下流シグナル伝達を誘発する増強された能力を有するかもしれない。これを評価するために、抗ヒトFc抗体と架橋させたAb969.g0を使用したMCP−1アッセイも実施した。
ヒト単球は、以下の通りにヒト全血から調製した:60〜100mlのヒト全血を、BDバキュテーナー10mlヘパリンリチウム171 IU管に収集した。血液を3〜4本のLeucosepフィコール管(Greiner Bio−One)に分け、PBSをつぎ足した。管をブレーキなしで10分間、20℃において1000gで遠心分離し、PBMC層を収集した。細胞をペレットにし、次に製造業者のプロトコールに従って正選択ヒトCD14ビーズ(Miltenyi Biotec 130−050−201)を使用して単球を単離した。2:1のAb969.g0:Fcの比でヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(R&D Systems G−102−C)を加えることによって、抗体Ab969.g0を架橋させた。抗体Ab969.g0又は架橋Ab969.g0の漸増用量の存在下の培地に、1ウェルにつき細胞数20,000で単球を播種した(最大10μg/mlの16濃度を含む半対数希釈系列)。100ng/mlのCSF−1の存在下及び非存在下で、並びに抗ヒトFc抗体(抗体Ab969.g0の最高濃度で存在するのと同じ濃度で(5μg/ml))の存在下及び非存在下で、対照ウェルは抗体を含有しなかった。細胞を24時間インキュベートし、プレートを遠心して細胞をペレットにし、上清を収集した。分泌されたMCP−1は、製造業者のプロトコールに従ってMSD(K151AYB−2)によって測定した。
実験の結果は、図12に示す。単量体であれ架橋フォーマットであれ、Ab969.g0処置のいずれでもMCP−1レベルの増加は検出されなかった。処置細胞の培地中のMCP−1の濃度は、未処置の細胞と同一であった。予想された通り、CSF−1で処置した細胞はMCP−1レベルの有意で再現性のある増加を与えた。
例3−抗体969のヒト化とヒト化移植片の選択
例2で測定されたそれらの親和性及び特性に基づき、ヒト化について4つの抗CSF−1R抗体を選択した。
i)ヒト化移植片の生成
ヒト生殖細胞系抗体V領域フレームワークの上へラット抗体V領域からのCDRを移植することによって、抗体969及び970をヒト化した。
Chothia/Kabat定義の組合せを使用したCDR−H1を除いては、ドナーからアクセプター配列に移植されたCDRは、Kabat(Kabat et al.,1987)によって規定される通りである(Adair et al.,1991 Humanised antibodies.WO91/09967を参照)。
ヒトV領域VK1 2−1−(1)O12プラスJK4 J領域(V BASE、http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を、軽鎖CDRのためのアクセプターとして選択した。ヒトV領域VH2 3−1 2−70プラスJH3 J領域(V BASE、http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を、重鎖CDRのためのアクセプターとして選択した。
表1に示すように、ラットV領域からのいくつかのフレームワーク残基は、ヒト化配列で保持された。
それぞれgL1及びgH1と命名した初期ヒト化軽鎖及び重鎖V領域配列をコードする遺伝子を、自動化合成アプローチによって設計、構築した。オリゴヌクレオチド誘導突然変異誘発によってgL1及びgH1遺伝子を改変することによって、軽鎖及び重鎖V領域の両方のさらなる変異体を作製した。
ヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)をコードするDNAを含有するヒト軽鎖発現ベクターpKH10.1に、VK遺伝子(gL1からgL9まで)をクローニングした。ヒトガンマ−4重鎖定常領域をヒンジ安定化突然変異S241Pと一緒にコードするDNAを含有するヒトガンマ−4重鎖発現ベクターpVhγ4P FLに、VH遺伝子(gH1及びgH2)をクローニングした(Angal et al.,1993,Mol Immunol.30:105−8)。変異体軽鎖及び重鎖をコードするプラスミドの異なる組合せをHEK293Fに同時トランスフェクトさせ、ヒト化組換え969抗体の発現をもたらした。
重要であると予測される重鎖及び軽鎖のいくつかのドナー残基を含有する保存的移植片並びにドナー残基を含有しない完全ヒト化移植片を提供することによって、他の3つの抗CSF−1R抗体もヒト化した。
ii)ヒト化抗体の親和性
各ヒト化移植片は、(i)BIAcoreによるヒトCSF−1Rへの結合親和性、及び(ii)ThermoFluor分析によって測定する融点(Tm)について、両方とも親のキメラ抗体と比較して評価した。融点は抗体分子の安定性の初期の指標を提供すると考えられ、不安定な抗体は一般的に75.0℃未満のTmを示す。
Ab969のヒト化の段階を表す移植片を、表5に示す。表5は、Ab696のキメラ抗体(969cHcL)も示す。保存的移植片(969gH1gL1)は2.4pMの親和定数(K
D)を示したので、キメララット抗体(969cHcL)と比較して親和性の明らかな減少はなかった。969gH1gL1保存的移植片のTmは78.8℃であり、したがって75.0℃の閾値の上であった。969gH2gL1を生成する重鎖のV78のためのA78ドナー残基の置換は、抗体親和性(K
D=2.3pM)を低減しなかった。それぞれQ38、F71及びY87へのK38、Y71及びF87ドナー残基の段階的置換の結果、親和性の変化は観察されなかった。ドナー残基を含有していない最終ヒト化移植片969gH2gL8は、親のキメラ抗体と類似の親和性を示した(4.1pM)。
Ab969は、CDR−L2とフレームワークの接合点に潜在的DG異性化モチーフを所有する。969gH2gL7及び969gH2gL8移植片中のこのDG部位アスパラギン酸残基は、不活性のSG配列を与えるためにセリンに突然変異させた。CSF−1Rへの親和性はBIAcoreによって測定し、親和性の明らかな減少は検出されなかった(表6)。さらに、最終969H2gL7(SG)及び969gH2gL8(SG)移植片は、それぞれ80.5℃及び79.9℃の高いTmを保持した。
Ab969及び他の1つの抗CSF−1R抗体Ab970のヒト化は、親のキメラ抗体と同等の親和性(KD)、及び分子安定性の初期予測を与えるTmを有する、完全ヒト化抗体(ラットドナーの残基は存在しない)を生成した。Ab969の完全ヒト化バージョン(969gH2gL8SG)は、Ab969.g5と改名した。これ以降、Ab969のキメラバージョンは、Ab969.g0と呼ぶ。
BIAcore分析を使用して、Ab969抗体の精製されたキメラ及びヒト化移植片の組換えCSF−1Rへの親和性を再び測定した。ヒト化工程の間に実施された以前のBIAcore実験は、精製された抗体ではなく未精製の細胞上清を使用して実行された。親和性のわずかな低減が検出され、K
D値はおよそ4pMから5pMに増加した。
iii)Ab969.g0及びAb969.g5によるCSF−1媒介単球生存の阻害
培養中の単球の活性化及び生存のために、CSF−1が必要とされる。CSF−1が除去されると、単球はアポトーシスを速やかに受ける。読出しとしてMCP−1(単球化学走性タンパク質−1;別名CCL2、ケモカインC−Cモチーフリガンド2)を使用したアッセイを考案した。CSF−1刺激の結果、ヒト単球はMCP−1を分泌し、それは一般的に刺激の24時間後にELISAによって細胞上清中に検出することができる。CSF−1結合をブロックする抗体によるCSF−1Rシグナル伝達の阻害は、MCP−1分泌の低減を引き起こす。
フィコール勾配上でヒトPBMCを新鮮なヒト全血から調製し、CD14+単球を正の選択によって精製した。合計2×104個の単球を、100ng/mlのヒトCSF−1の存在下で24時間、10μg/ml〜0.35pg/mlの抗体の半対数希釈系列とインキュベートした。最小及び最大のMCP−1放出値を提供するために、「抗体、CSF−1を含まない」及び「抗体を含まず、CSF−1を含む」対照が含まれた。24時間のインキュベーションの後、遠心分離によって細胞をペレットにし、上清を収集した。製造業者の使用説明書に従ってヒトCCL2/MCP−1 DuoSet ELISA(R&D Systems DY279)を使用して、MCP−1の濃度を測定した。
ここから、アッセイは「MCP−1阻害アッセイ」と呼ぶ。
ヒト化969.g5の活性をキメラAb969.g0と比較するために、MCP−1阻害アッセイを使用した。単球の異なる4種のドナーを使用して、5つの独立したアッセイを実施した。全てのアッセイで、Ab969.g5ヒト化移植片は、親のキメラ抗体969.g0と比較して予想外の有意により低い活性を示した。単一の代表的実験を、図13に示す。単球アッセイでの969.g0の平均IC50は、969.g5の333.0ng/mlと比較して24.6ng/mlであった。これは、このアッセイフォーマットを使用して両方の抗体を比較したときの、抗体力価の13.5分の1の減少を示す。
MCP−1阻害アッセイでヒト化抗体が低下した活性を示した理由を明らかにするために、Ab969を使用して一連の実験を実施した。データは、MCP−1阻害アッセイで観察されたAb969.g5の活性低下が、抗体及びリガンドを標的細胞に加えた順序によることを示唆した。競合アッセイフォーマットを適用したとき、Ab969.g0及びAb969.g5の両方の活性は低下したが、より重要なことに、それらのブロッキング活性のより大きな差が検出された。ヒト化Ab969のより低い「オンレート」が力価の低下の原因であるかどうか分析するために、BIAcore分析を実施した。これらのデータは、Ab969.g0及びAb969.g5のKDは類似していたが、Kaは969.g0の2.16×106M−1s−1と比較して、Ab969.g5で1.57×106M−1s−1とより低かった(表5を参照する)。競合アッセイでは、CSF−1及び抗CSF−1R抗体が同じ受容体への結合に関して競合する場合、リガンドのオンレートも高く、リガンドが高い濃度で存在するならば、より遅い抗体オンレートはブロッキング活性の低下をもたらすかもしれない。ヒトCSF−1は抗体と同様に2.19×106M−1s−1の特に高いオンレートを有することが知られており、アッセイは高いCSF−1濃度(250ng/ml)で実施した。
969.g5のブロッキング活性の低下が抗体の生来の特性に起因したというさらなる証拠を提供するために、CSF−1RへのCSF−1の結合を測定するELISAを開発した。この方法は、ここから「ELISAリガンドブロッキングアッセイ」と呼ぶ。このアッセイは、プレートに結合したCSF−1Rに加える前にCSF−1及び抗体をプレミックスした競合的結合を使用して実施した。このアッセイは、抗体活性に及ぼすCSF−1濃度の影響を評価するためにも実行した。
1ng/mlのCSF−1濃度を使用してリガンドブロッキングELISAで969.g0及び969.g5のIC50を測定したとき、両方の抗体はそれぞれ12.83ng/ml対19.65ng/mlのIC50で類似の活性を有するようであった。アッセイで10ng/mlのCSF−1の濃度を使用したとき、Ab969.g0及びAb969.g5のIC50は増加したが、より重要なことに、それらの間の差はそれぞれ79.29ng/ml対268.10ng/mlにさらに増加した。この傾向は100ng/mlのCSF−1を使用したアッセイで続き、Ab969.g0及びAb969.g5はそれぞれ828.70ng/ml及び3947.00ng/mlのIC50値を与えた。競合アッセイは、CSF−1RへのCSF−1結合のブロッキングにおいて、Ab969.g5がAb969.g0より活性が低いことを実証する。力価のこの低減は、CSF−1の濃度が増加するに従ってより顕著になる。
iv)MCP−1阻害アッセイでのキメラAb969と同等の活性を有するAb969のヒト化移植片の同定
in vitro活性を比較することができるように、一時的な発現によって一群のAb969ヒト化中間体移植片を調製した(表8)。同じバッチの中で抗体特性の直接比較ができるように、対応するキメラ抗体(Ab969.g0)及び完全ヒト化移植片(Ab969.g5)も一時的発現に含まれた。
各抗体のin vitro活性は、MCP−1阻害アッセイで試験した。そのフォーマットは大きな抗体群の急速スクリーニングを可能にし、いかなる差別的CSF−1Rブロッキング活性も強調するので、単一の抗体濃度によるCSF−1滴定を用いるアッセイフォーマットを選択した。このアッセイでは、一次ヒト単球からのMCP−1の用量依存的放出が検出され、CSF−1R活性をブロックする各抗体の相対能力は、MCP−1が放出された場合のCSF−1の濃度によって測定した。漸増量の組換えヒトCSF−1存在下の培地に、1ウェルにつき細胞数20,000で単球を播種した(最大500ng/mlの18濃度を含む2倍希釈系列)。1μg/ml抗体の単一の用量を加えた。細胞を24時間インキュベートし、上清を収集した。分泌されたMCP−1は、ELISAによって測定した。MCP−1阻害アッセイは抗体Ab969.g2及びAb969.g7が高いCSF−1Rブロッキング活性を保持し、両方の実体は、100ng/mlを超える濃度でCSF−1を単球に加えたときにMCP−1分泌を完全に阻害することが可能なことを明らかにした(図14)。このアッセイでは、活性の明らかな減少がAb969.g5について検出され、それは10ng/mlのCSF−1濃度までMCP−1分泌を阻害することができただけである。同様に、抗体Ab969.g9は、Ab969.g2及びAb969.g7と比較して低下したCSF−1Rブロッキング活性を示した。
CSF−1媒介単球活性化を阻害するそれらの相対能力のより完全な評価を提供するために、選択されたAb969ヒト化移植片のIC50をMCP−1アッセイで測定した。混合した供給源からの単球をプールせずにいくつかの異なるドナーを使用して抗体活性を評価することが重要であると考えられた。表9は、異なる6種のドナーを使用してAb969で実施したアッセイから蓄積された抗体のIC50値を示す。
Ab969.g2及びAb969.g7の両ヒト化移植片は、キメラAb969.g0抗体と同等である相対IC
50を示す。極めて対照的に、Ab969.g5はアッセイで大いに低い力価を示す(19.6の平均キメラ/移植片IC
50比)。
v)ヒト化Ab696抗体群の親和性
各Ab969ヒト化抗体移植片及び親のキメラ抗体の親和性をBIAcoreによって測定し(表10)、そこでは3つの独立した実験を実行して、平均値を計算した。データは、親和性(K
D)が、キメラ分子(Ab969.g0)から「完全ヒト化」抗体Ab969.g5まで、ヒト化の過程で変化しないようであることを示す。しかし、ヒト化がAb969.g2移植片を越えて進行するとき、抗体「オンレート」は減少する。Ab969.g4及びAb969.g5の両方は、前の移植片より低いK
a値を有する。さらに、Ab969.g5のK
aはAb969.g4より低く、SGへのDG異性化部位の突然変異がなおさらに抗体オンレートを低減することを潜在的に示す。
結論:
いくつかのアッセイでの一群のAb969ヒト化移植片の試験は、軽鎖の中の71位のチロシン残基(例えばY71)が抗体の活性を改善することを明らかにした。例えばY71のフェニルアラニンでの置換は、親のキメラ分子と比較して抗体オンレートの低減(Kaの減少)をもたらす。これは、一次ヒト単球でのCSF−1Rの活性を監視するアッセイ(MCP−1阻害アッセイ)で明らかにされた、CSF−1RへのCSF−1結合をブロックする抗体の能力の低下をもたらす。
例4−ヒト化Ab696群の分子安定性
i)熱安定性
熱安定性(融点Tmで測定される)は、2つの独立した方法によって判定した。1つの方法は、露出した疎水性表面への蛍光色素の結合によるアンフォールディングを監視し(Thermofluor方法)、他は熱量測定(DSC)、直交技術による。
抗体969の様々な移植片(PBS、pH7.4中)についてThermofluorによって測定したT
mを、表11に要約する。
全体として、Thermofluorで測定したFab’Tmは、ほとんどの969移植片がIgG4対照より熱的に安定していることを示唆する。
ii)凝集傾向に及ぼす試料濃度の影響
保存中の試料の安定性の予測因子として、PBS pH7.4中の安定性に及ぼす抗体濃度の影響を調べた。
実験1:
抗体を10mg/ml超に濃縮し、室温で5日間インキュベートした。濃縮直後(T0)に、969.g7は濁っているようであり、969.g8はわずかに乳白色に見えた。対照的に、969.g5試料は、目視検査によって透明であると判断された。室温で5日間のインキュベーションの後、965.g5試料は透明なままであったが、969.g7及び969.g8の凝集はさらに進行し、各々重い沈殿物を示した。
この研究から、以下の通りにこれらの条件での凝集抵抗性の順に試料をランク付けすることが可能であった:969.g5>969.g8>969g7。
実験2:
濃縮の前に、乳白色に見える969.g6(4.68mg/ml)を除いて、全ての3つの抗体試料は目視検査で透明であった。16mg/mlへの濃縮の結果、室温及び4℃の両方で24時間の保存の後に969.g6の沈殿が注目された。しかし、969.g1及び969.g4の両方は目視で透明のままだった。5日間のさらなるインキュベーションの後、室温及び4℃の両方において試料969.g1で大きな粒子が明白であった。目視検査によって判断された通り、室温又は4℃において試料969.g4で凝集は観察されなかった。
この研究から、PBS pH7.4に低い濃度(4.68mg/ml)で保存したときに、969.g6が多少の凝集不安定性を有したことを示すことが可能であった。さらに、この沈殿は、さらなる抗体濃縮によって悪化した。濃縮した969.g1はより遅い速度の凝集を示したが、濃縮した969.g4はいずれの保存温度でも5日間まで安定したままだった。したがって、凝集安定性の順序は、以下の通りであった:969.g4>969.g1>969.g6。
実験3:抗体969.g2、969.g5、969.g7及び969.g9
濃縮直後(T0)、一晩のインキュベーションの後及び濃縮から5日後に、試料分析を実施した。全ての試料は濃縮前に目視検査で透明であり、粒子形成の証拠はなかった。23.07mg/mlへの濃縮の直後に、969.g7試料は、実験1で以前に観察された沈殿を示した。969.g9でわずかな乳白光が観察され、それは室温又は4℃で24時間の保存の後により目立つようになった。他の969移植片の全ては、濃縮直後に目視検査によって透明に見えた。
21日間のインキュベーションの後、室温で一晩のインキュベーションの後に観察されたものからのさらなる可視的変化はなかった。試料を濃縮した結果として969.g7及び969.g9移植片は凝集したが、他の試料については明らかな可視的凝集はなかった。
全体として、濃度を増加させた結果として、969.g2試料は最少の凝集傾向を示した。これは、Thermofluorによって測定された最も高いTmとも相関した。
結論:ヒト化Ab969群の発現及び精製の間、10mg/mlを超えて抗体濃度を増加させることが、一部のヒト化抗体移植片の急速な沈殿をもたらすことが明らかになった。具体的には、Ab969.g1、Ab969.g6及びAb969.g7は沈殿物を形成し、Ab969.g2、Ab969.g4及びAb969.g5は沈殿物を形成しなかった。このデータは、軽鎖中の38位リシン残基(K38)のグルタミンでの置換が、10mg/mlを超えて濃縮したときに抗体安定性を向上させることを示す。
例5 Ab969.g2のin vitro分析
i)Ab969.g2の配列
Ab969.g2は、gL7軽鎖移植片及びgH2重鎖移植片を含有する。ラット抗体(ドナー)V領域配列とヒト生殖細胞系(アクセプター)V領域配列とのアラインメントを、軽鎖移植片gL7及び重鎖移植片gH2の最終ヒト化配列と一緒に図2A及び2Bに示す。
移植片gH2の重鎖フレームワーク残基は、全てヒト生殖細胞系遺伝子に由来する。例えば抗体及び抗体断片のN末端でのピログルタミン酸へのグルタミンの変換によって均質生成物の発現及び精製を改善するために、ヒト重鎖フレームワークの1位のグルタミン残基をグルタミン酸(E1)で置き換えた。
ドナー残基チロシンが保持された残基71(Kabat番号付け)を除いて、移植片gL7の軽鎖フレームワーク残基は全てヒト生殖細胞系遺伝子に由来する。この残基の保持は、例3に示すようにヒト化抗体の向上した力価を提供した。
ii)IL−34依存性ヒト単球活性化の阻害
IL−34依存性ヒト単球アッセイで、969.g0と比較したAb969.g2の活性を評価した。2つの別々の単球ドナーを使用して実験を実施し、IL−34媒介単球刺激の阻害の平均IC50を計算した(表12)。Ab969.g2とAb969.g0の間にIC50の有意差はなかった。
100ng/mlの組換えヒトIL−34及び抗CSF−1R抗体の漸増用量の存在下で、1ウェルにつき細胞数20,000で一次ヒト単球を播種した(最大10μg/mlの16種の濃度を含む半対数希釈系列)。細胞を24時間インキュベートし、上清を収集した。分泌されたMCP−1は、ELISA(R&D systems DY279)によって測定した。グラフは、CSF−1のみの対照と比較したMCP−1生成の阻害百分率を示す。
iii)ヒトCSF−1RのSNPへのAb969.g2の結合
ヒト母集団で報告された、ヒトCSF−1R遺伝子のリガンド結合ドメインに位置する4つの非同義の一塩基多型(SNP)がある。これらのSNPは、V32G、A245S、H247P及びV279Mである(図1F)。ヒトCSF−1Rの各SNP変異体を生成し、細胞系で安定して発現させた。各SNPへのAb969.g2の結合は、フローサイトメトリーによって確認した。
例6 カニクイザルでの6つの薬力学的マーカー分析
ヒト以外の霊長類(カニクイザル)で抗体の薬理活性を実証するために、ヒト化モノクローナル抗CSF−1R抗体969.g2による薬物動態学的/薬力学的(PK/PD)研究を実施した。3匹のカニクイザルの群に、7mg/kg(第1群)又は1.5mg/kg(第2群)の969.g2抗体の単一用量を静脈内投与した。抗体は、有害な臨床徴候がなく、良好な耐容性を示した。25日間の研究全体で複数の時点に血清試料を採取した。
969.g2の血清中濃度をELISAによって測定し、薬物動態学的分析を実施した(表13)。WinNonlinソフトウェアを使用してPKパラメータを計算した。
t1/2は、血清中の抗体の半減期である。
Cmaxは、血清中の抗体のピーク濃度である。
AUCは曲線下面積(濃度−時間曲線の積分)であり、薬物への全曝露の指標を提供する。
クリアランスは、単位時間あたりの薬物が取り除かれた血漿の容積である。
Vol.Dist.は分布容積であり、薬物が分配される見掛け容積のことである。
観察値及び予測値の間に優れた相関があった(動物2は例外で、外れ値とみなされる)。C
maxは、用量に比例した。AUCは用量比例項より大きく、より高い用量でより遅いクリアランスを示した。大多数の969.g2は、血清で検出された。
CSF−1のクリアランスの一次経路はその同族受容体CSF−1Rへの結合を通すものである。CSF−1RへのCSF−1結合の遮断は、受容体媒介クリアランスの阻止を通してCSF−1の血清中濃度を増加させると予想され;この現象はマウスモデルで観察された。したがって、血清中のCSF−1濃度の増加は、CSF−1Rの関与及び阻害の薬力学的マーカーである。
969.g2の両方の用量は、血清中のCSF−1の急速でかなりの蓄積を煽った。この影響は用量依存性であり、7mg/kg用量は1.5mg/kg用量よりおよそ10倍高いピークCSF−1濃度を与えた。抗体のクリアランスの後に続くCSF−1レベルの標準化で、薬物動態学的/薬力学的関係が観察された。両処置群について、研究の終りまでにCSF−1レベルはベースラインに戻った。結果を、図15a及び15bに示す。
図15aは、7mg/kgのAb969.g2の単一の静脈内用量で処置したカニクイザルから採取した血清試料中のCSF−1の濃度を示す。CSF−1の血清中濃度は、2つの独立したアッセイで測定した。グラフは、第1群(7mg/kg)の3匹の動物についてCSF−1の平均濃度を標準誤差(四角)と一緒に示す。Ab969.g2の平均血清中濃度(丸)も示す。
図15bは、1.5mg/kgのAb969.g2の単一の静脈内用量で処置したカニクイザルから採取した血清試料中のCSF−1の濃度を示す。CSF−1の血清中濃度は、2つの独立したアッセイで測定した。グラフは、第2群(1.5mg/kg)の3匹の動物についてCSF−1の平均濃度を標準誤差(四角)と一緒に示す。Ab969.g2の平均血清中濃度(丸)も示す。
ヒト及びカニクイザルの循環単球の2つの主要な集団がある;(i)CD14+CD16−「古典的」単球及び(ii)CD14+CD16+「非古典的」又は「レジデント」単球。マウスモデルは、TAMを含むレジデント組織マクロファージが非古典的単球集団に由来することを実証した。さらに、非古典的単球は、古典的単球集団のさらなる分化に由来する。969.g2を投与したカニクイザルの循環単球集団は、全血の4色フローサイトメトリーによって監視した。フローサイトメトリーは、抗cyno−CD45−PerCP、抗ヒト−HLA−DR−APC、抗ヒト−CD14−FITC(My4クローン)及び抗ヒト−CD16−PE(3G8クローン)抗体を使用して実施した。各抗体の適当なアイソタイプ対照を使用してゲートを設定した。古典的単球は、CD45+HLA−DR+CD14+CD16−と規定した。非古典的単球は、CD45+HLA−DR− CD14− CD16+と規定した。
969.g2の両方の用量は、研究の第1週全体において非古典的CD14+CD16+単球の段階的な消失を煽った。非古典的単球のほとんど完全な消失は、7mg/kg用量によって引き起こされた。7mg/kg及び1.5mg/kg用量による非古典的単球の低減は4日目の時点でピークに達したようであり、数は11日目までに正常に戻った。結果を図15cに示す。棒グラフは、研究全体の時点(0、1、4、18及び25日目(D))での非古典的CD14+CD16+循環単球の平均数を標準誤差と一緒に示す。血清CSF−1の平均濃度も、標準誤差とプロットする。
この例は、(i)抗体969.g2はカニクイザルでCSF−1Rに結合してCSF−1結合をブロックすることが可能なことを確認し、(ii)ヒト以外の霊長動物モデルで抗体969.g2の薬理活性を実証し、(iii)抗体969.g2がin vivoでカニクイザル単球の非古典的集団を選択的に減少させることを実証し−単球集団は腫瘍関連マクロファージの前駆体であると考えられている、(iv)血清CSF−1濃度は969.g2活性を測定するためのバイオマーカーとして適することを実証した。
例7:MCF−7乳がん異種移植片の増殖の阻害
抗体969.g2は、マウスCSF−1Rに結合することができない。したがって、がん及び線維症を処置するAb969.g2の有用性を示すために、抗マウスCSF−1R抗体Ab535を使用してin vivoマウス研究を実行した。いくつかのin vitro実験で、Ab535はAb969.g2と同等の特性及び活性を有することが示された。
Ab535は、例2 iii)のCSF−1媒介単球生存を阻害すること、例2 iv)の同等の親和性を有すること、及び例2 vii)のCSF−1R内在化を誘発しないことが示された。
Ab535に関するin vivo研究として、in vivoのMCF−7乳がん異種移植片モデルを以下の通りに実行した:
この研究では、ヒト乳がん異種移植片MCF−7の皮下移植片を有する免疫不全ヌードマウスにおける、対照抗体、陽性対照及びビヒクル対照と対比した、皮下投与(s.c.)された抗体Ab535の治療効力を測定した。腫瘍増殖阻害は、治療パラメータとして使用した。ヒト乳がんMCF−7は、免疫不全雌NMRI:nu/nuマウスで皮下異種移植モデルとして使用した。MCF−7細胞系は、National Cancer Institute(USA)の腫瘍バンクから得た。実験的使用のために、細胞をRPMI 1640培地+10%FCSでin vitroで培養した。亜集密培養から細胞を採取し、マウスの皮下に接種した。触知可能な腫瘍サイズ(4〜10mm)で、処置を開始した。試験化合物及びビヒクル対照を、1週に3回皮下投与した。陽性対照は、24、33及び40日目に、1日に1回静脈内投与した。注入量は、注射時の体重に個々に調整した。腫瘍直径は、カリパスで週3回測定した。腫瘍体積は、V=(長さ×(幅)2)/2により計算した。相対腫瘍体積(RTV)の計算のために、各測定日の体積を最初の処置日と関係づけた。各測定日に、群ごとの中央及び平均の腫瘍体積、加えてパーセントで表した処置対対照(T/C)中央値を計算した。
結果を図16に示す。Ab535は、用量依存的抗腫瘍効果を示した。対照マウスIgG抗体の両方の投薬量は、腫瘍増殖阻害を誘導しなかった。相対腫瘍体積はビヒクル対照と同等であり、陽性対照は腫瘍増殖阻害を引き起こした。
結論:試験抗体Ab535は、最高用量(30mg/kg/日)において、ヒト乳がん異種移植片MCF−7で統計的に有意な抗腫瘍効果を誘導した。
例8:PC−3正常位前立腺がんの増殖阻害
正常位前立腺がんモデルPC−3を使用して、in vivoで抗体Ab535の抗腫瘍及び転移抑制効力も試験した。ルシフェラーゼを連続的に発現してin vivo生物発光画像分析を可能にするようにPC−3細胞系を遺伝子改変し、これはin vivoで腫瘍増殖を監視すること及び選択された器官でex vivo転移分析を実施することを可能にした。
この研究は、無作為化の後に各々11匹(第5群)又は12匹(全ての他の群)の雄NMRIヌードマウスを含有する、6つの実験群からなった。0日目に、全ての参加した雄NMRIヌードマウスの前立腺に、PC−3細胞を正常位に移植した。3日目に、腫瘍増殖の開始をin vivo生物発光画像化を介して検証した。8日目に、第2のin vivo生物発光画像化を実施し、平均生物発光強度、したがって腫瘍サイズが各群で類似するように、画像化の結果に従って担がん動物を6つの群に無作為化した。翌日(9日目)、療法を開始した。第2群及び第3群の動物には、それぞれ30及び10mg/kgの対照抗体を42日目まで週3回皮下投与した。第4及び第5の処置群の動物には、それぞれ30及び10mg/kgの抗体Ab535を42日目まで週3回皮下投与した。第1群の動物はビヒクル対照を表し、ビヒクル(PBS)を42日まで週3回皮下投与した。第6群の動物は陽性対照を表し、360mg/kgの対照を4週間にわたって週1回(10、17、24及び31日目)静脈内投与した。研究期間中、3、8(無作為化)、15、22、29、36及び43日目に生物発光画像化を使用して、正常位移植されたPC−3腫瘍増殖をin vivoで監視した。
研究終了時に検死を実施した。原発腫瘍の重量及び体積を判定した。選択した器官(肝臓、脾臓及び肺)を収集し、各々の一部をホルマリンで固定し、残りは、in vitroルシフェラーゼアッセイを使用する生物発光画像化を通して転移パターンに関して分析した。さらに、in vitroルシフェラーゼアッセイを使用して骨で転移パターンを分析するために、片方の脚からの大腿骨及び腰椎の同じ一部を収集した。
in vivo生物発光シグナルは、原発腫瘍及び転移の両方を含んでいた(全身画像化)。これらのデータに基づいて、全ての群について腫瘍増殖曲線を計算することができた(図17)。無作為化及び療法の開始まで、腫瘍の発達は全ての試験群で均一であった。以降では、ビヒクル対照の第1群並びに2つの対照抗体RTE11の第2及び第3群は、規則的な腫瘍増殖を示した。陽性対照(第6群)では、43日目にin vivoで測定された腫瘍増殖の非常に有意な低減を観察することができた。それぞれ30又は10mg/kgで投与された(第4群及び第5群)抗体Ab535は、in vivo生物発光画像化を使用して監視したときに腫瘍増殖の有意な低減をもたらした。
44日目の検死中に、原発腫瘍の体積及び湿重量を判定した。陽性対照(第6群)は、原発腫瘍の体積及び重量の両方の非常に有意な低減をもたらした。抗体Ab535を30mg/kg(第4群)で投与すると、原発腫瘍の体積及び重量の両方の有意な低減を観察することができた。Ab535を10mg/kg(第5群)で投与したとき、腫瘍体積の低減は注目に値したが、この低減は第4群が示したものより小さかった。対照抗体の場合には、有意な抗腫瘍効力を観察することができなかった。
生物発光画像化技術を使用して、検死後に原発腫瘍ルシフェラーゼ活性を測定した。得られた結果は、検死所見及びin vivo増殖曲線の結果と同等であった。陽性対照(第6群)は、原発腫瘍のルシフェラーゼ活性の非常に有意な低減をもたらした。30mg/kg(第4群)で投与された抗体Ab535は、原発腫瘍ルシフェラーゼ活性の有意な低減をもたらしたが、Ab535を10mg/kg(第5群)で投与したときの低減はより小さかった。対照抗体でルシフェラーゼ活性の有意な低減を見出すことはできなかった。
いくつかの追加の器官(肝臓、脾臓、肺、大腿骨及び腰椎の一部)を、ex vivoの生物発光画像化技術を用いて分析した。陽性対照の場合には、大腿骨及び腰椎についてルシフェラーゼ活性の有意な低減を示すことができたが、肝臓及び脾臓の場合にはシグナル低減はわずかに有意性に届かなかった。30mg/kg(第4群)で投与された抗体Ab535の場合には、ルシフェラーゼ活性の低減は肝臓で有意であり、全ての他の器官では注目に値した。対照抗体(第2群及び第3群)は、試験した全ての器官でルシフェラーゼ活性のいかなる低減ももたらさなかった。
結論として、この腫瘍モデルで抗体Ab535の有意な抗腫瘍効力を注目すべき転移抑制効力と一緒に実証することができた。
例9:肺線維症のブレオマイシン誘導in vivoモデルにおける抗CSF−1R抗体の効果
ブレオマイシンはストレプトミセス・ベルチシラタス(Streptomyces verticillatus)から最初に単離された抗生物質であり、様々ながんのための化学療法薬として使用されている。肺線維症のブレオマイシンモデルは確立されたモデルであり、本質的にMadtes、DK et al.,1999,Am J Respir Cell Mol Biol,20,924−34に記載されているように使用された。詳細なプロトコールは、以下の参考文献Morschl,E.,Molina,J.G.,Volmer,J.,Mohsenin,A.,Pero,R.S.,Hong、J.S.,Kheradmand,F.,Lee,J.J.及びBlackburn,M.R.(2008)、A3 adenosine receptor signaling influences pulmonary inflammation and fibrosis.Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.39:697−705に見出すことができる。
使用した全てのマウスは、Harlan Labsから購入した野生型C57Blk6雌マウス(20g)であった。気管内(IT)カットダウン点滴注入を使用し、そこでは、50μlの食塩水中の3.5単位用量のブレオマイシン又は対照として50μlの食塩水を単独で注入するために、マウスにアバーティンで麻酔をかけ、気管開口形成術を実施した。この方法での処置は、ブレオマイシン曝露後7日目にピークに到達する炎症段階、及び曝露後21日目に最大である線維症段階をもたらす。抗体Ab535の効果を調査し、そこでは、抗体をモデルの線維症段階だけで投与し、30mg/kgを9日目から21日目まで1週につき3回皮下投与した。21日目に動物を屠殺し、読出しは肺の組織病理学的分析、BAL(気管支肺胞洗浄)液細胞性及びBAL液中の可溶性コラーゲンの測定を含んだ。肺線維症の重症度を判定するための改変Ashcroftスコアリング系を使用して肺傷害を評価するために、組織病理学的分析を実行した(Hubner RH et al.,2008,Biotechniques 44:507−17)。切除した肺を10%ホルマリンで25cm圧まで膨張させ、アルコール及びキシレンの系を通して処理し、パラフィンに包埋し、Massonのトリクロームによる処理及び染色の前に組織切片からパラフィンを除去した。
市販のSircolアッセイキットを製造業者の使用説明書に従って使用して、BAL液中の可溶性コラーゲンの量を調べた。
BAL液中のマクロファージ集団に及ぼす影響を、サイトスピン調製物を使用して判定した。BAL細胞の一定分量を顕微鏡スライドの上で遠心し、Diff−Quickで染色し、マクロファージを計数した。
9日目に投与を開始した抗CSF−1R抗体、Ab535による治療的処置は、ブレオマイシン誘導肺線維症を大きく低減することが判明した。線維症の重症度及び範囲は、有意に低減された。処置マウスはコラーゲン産生が低減され、線維性病状が改善され、肺障壁保護が改善された。
図18aは、Ab535によるブレオマイシン誘導肺線維症の処置が、アイソタイプ対照による処置と比較してBALFコラーゲン濃度を低減したことを示す。
図18bは、Ab535によるブレオマイシン誘導肺線維症の処置が、アイソタイプ対照による処置と比較して試料のAshcroftスコアを低減したことを示し、したがってそれは、Ab535で処置したマウスの線維性病状が改善されたことを示す。
図18cは、Ab535によるブレオマイシン誘導肺線維症の処置が、アイソタイプ対照による処置と比較して血清中アルブミン濃度を低減したことを示し、したがってそれは、Ab535で処置したマウスの血管透過性が改善されたことを示す。
図19は、食塩水対照、ブレオマイシンプラスアイソタイプ対照及びブレオマイシンプラスAb535処置動物からの肺の組織病理学的分析の代表的画像を示す。Ab535で処置した動物は、アイソタイプ対照、ブレオマイシン処置動物と比較して、肺線維症が大いに低減した。
例10.肺線維症のアデノシンデアミナーゼ欠損マウスモデルにおける抗CSF−1R抗体の効果
アデノシンは強力なシグナル伝達ヌクレオシドであり、そのレベルは細胞がストレスを受けるか又は傷害を受けるときに増加し、アデノシンがその特異的Gタンパク質結合受容体と係合するときに多種多様な応答が起こる。アデノシンデアミナーゼ(ADA)は、アデノシンをイノシンに変換するプリン異化作用酵素である。ADAノックアウトマウスが作製され、血清並びに腎臓、肝臓及び肺などの組織でのアデノシンレベルの増加を有することが示された(Blackburn,MR et al.,1998,J Biol Chem,273(9):5093−5100)。これらのマウスは、肺でのアデノシンレベルの増加と関連する、慢性肺疾患、例えば肺胞破壊、気道炎症及び過剰な粘液生成の特徴を示す(Blackburn MR et al.,2000,J Exp Med,192:159−70)。影響は、マウスが呼吸窮迫により3週齢までに死ぬというようなものである。低用量レジメンを用いた外因性ADAの投与は、アデノシンレベルを低減し、これらのマウスの寿命を延長し、肺線維症モデルの開発を可能にする(Chunn JL et al.,2005,J Immunol 175:1937−46、Pedrosa M et al.,2011,PLoS One,6(7号):e22667)。このモデルでは、アデノシンレベルの慢性的上昇は、肺でのTGF□を含む線維症促進媒介物の増加、肺組織でのコラーゲン沈着の増加及び線維性肺病状の増加と関連する。抗線維症能力を有する分子の効果を調査するために、ADA欠損マウスを数週間低用量外因性ADAレジメンで維持し、その後ADA処置を停止し、潜在的抗線維症剤を投与する。
抗CSF−1R抗体Ab535の効果を、肺線維症のADAノックアウトマウスモデルで調査した。このモデルでは、酵素欠損マウスを生後1日目から21日目までADA酵素療法で維持した。ADA−ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲートを調製し(Young HW et al.,2004,J Immunol 173:1380−89)、出生後の1、5、9、13及び17日目に筋注を投与し(それぞれ0.625、1.25、2.5、2.5及び2.5単位)、続いて21日目に腹腔内に5単位を注射した。21日目から後に、さらなる酵素は投与しなかった。25日目(出生後)から42日目に動物を屠殺した日まで週3回、100μlの容量でAb535を30mg/kgで皮下投与した。
42日目に動物を屠殺し、読出しは肺の組織病理学的分析、BAL液細胞性及びBAL液中の可溶性コラーゲンの定量を含んだ。肺線維症の重症度を判定するための改変Ashcroftスコアリング系を使用して肺傷害を評価するために、組織病理学的分析を実行した(Hubner et al.,2008,Biotechniques 44:507−17)。切除した肺を10%ホルマリンで25cm圧まで膨張させ、アルコール及びキシレンの系を通して処理し、パラフィンに包埋し、Massonのトリクロームによる処理及び染色の前に組織切片からパラフィンを除去した。
市販のSircolアッセイキットを製造業者の使用説明書に従って使用して、BAL液中の可溶性コラーゲンの量も調べた。
BAL液中のマクロファージ集団に及ぼす影響を、サイトスピン調製物を使用して判定した。BAL細胞の一定分量を顕微鏡スライドの上で遠心し、Diff−Quickで染色し、マクロファージを計数した。
抗CSF−1R抗体Ab535による治療的処置は、ADA欠損マウスで肺線維症を有意に低減することが判明した。処置マウスはコラーゲン産生が低減され、線維性病状が改善され、肺障壁の機能及び保護が改善された。
図20aは、誘導肺線維症を有するADA欠損マウスのAb535による処置が、アイソタイプ対照処置と比較してBALFコラーゲン濃度を低減したことを示す。
図20bは、誘導肺線維症を有するADA欠損マウスのAb535による処置が、アイソタイプ対照による処置と比較して試料のAshcroftスコアを低減したことを示し、したがってそれは、Ab535で処置したマウスの線維性病状が改善されたことを示す。
図20cは、誘導肺線維症を有するADA欠損マウスのAb535による処置が、アイソタイプ対照による処置と比較して血清中アルブミン濃度を低減したことを示し、したがってそれは、Ab535で処置したマウスの血管透過性が改善されたことを示す。
図20dは、Ab535を投与される誘導肺線維症を有するADA欠損マウスの処置が、BAL液中のマクロファージ数を低減したことを示す。
図21は、両方ともアイソタイプ対照又はAb535で処置した正常なマウス(ADA+)及び誘導肺線維症を有するADA欠損マウス(ADA−)からの肺の組織病理学的分析の代表的画像を示す。ADA−マウスでは、Ab535で処置した動物は、アイソタイプ対照と比較して肺線維症が大いに低減した。
したがって、肺線維症の2つのマウスモデルにおいて、抗CSF−1R抗体による処置が線維性疾患を効果的に処置することができることが示された。