JP2022002504A - 神経細胞が配置された基板の製造方法 - Google Patents

神経細胞が配置された基板の製造方法 Download PDF

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Hidekazu Yaginuma
真之 湯本
Masayuki Yumoto
達哉 鮫島
Tatsuya Samejima
尚樹 佐藤
Naoki Sato
奈津子 岩下
Natsuko Iwashita
貴彦 松本
Takahiko Matsumoto
裕介 野々山
Yusuke Nonoyama
健広 山▲崎▼
Takehiro Yamazaki
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Abstract

【課題】神経細胞の遊走を抑制しつつ、神経細胞を基板上に精密に配置する技術を提供する。【解決手段】細胞接着性材料が配置された領域と、細胞非接着性材料が配置された領域とを有する基板上に、神経細胞を含む複数の液滴をインクジェット法により配置して、1つ又は複数の液溜りを形成する工程と、前記液溜り内の前記神経細胞が沈降し、前記基板上に仮接着して細胞集合体を形成するまで静置する工程と、を含み、前記液溜り1つあたりの直径が500μm以下であり、前記液溜り1つあたりの神経細胞の密度が105個/cm2以上である、神経細胞が配置された基板の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、神経細胞が配置された基板の製造方法に関する。
神経細胞は生体内でネットワークを形成し機能的につながった状態で活動している。脳機能の解明や、神経系疾患への毒性評価、創薬開発等において、生体内の神経細胞の活動状態を、インビトロでなるべく正確に再現することは、試験結果の外挿性(臨床データとの相関性)を高めるうえで重要と考えられている。
このためには、任意の神経細胞を所定の位置に配置し、且つ該神経細胞同士が軸索を伸長し機能的に結合した、神経回路モデルを開発することが有効であると考えられる。しかしながら、手技により、基板上に神経細胞を精密に配置することは困難である。
特許文献1(特開2019−162097号公報)では、細胞接着性材料と細胞非接着性材料のパターンによる細胞配置を試みている。しかしながら、発明者らは、細胞接着性材料と細胞非接着性材料のパターンによる細胞配置を行った場合、特に、神経細胞においては、細胞接着部で遊走し、任意の位置に留めておくことが困難な傾向にあることを見出した。そこで、本発明は、神経細胞の遊走を抑制しつつ、神経細胞を基板上に精密に配置する技術を提供することを目的とする。
本発明に係る、神経細胞が配置された基板の製造方法は、細胞接着性材料が配置された領域と、細胞非接着性材料が配置された領域とを有する基板上に、神経細胞を含む複数の液滴をインクジェット法により配置して、1つ又は複数の液溜りを形成する工程と、前記液溜り内の前記神経細胞が沈降し、前記基板上に仮接着して細胞集合体を形成するまで静置する工程と、を含み、前記液溜り1つあたりの直径が500μm以下であり、前記液溜り1つあたりの神経細胞の密度が10個/cm以上である。
本発明によれば、神経細胞の遊走を抑制しつつ、神経細胞を基板上に精密に配置する技術を提供することができる。
図1は、インクジェットヘッドの一例を示す概略図である。 図2は、インクジェットヘッドへの入力波形の一例を示す概略図である。 図3は、インクジェットヘッドへの入力波形の一例を示す概略図である。 図4は、液滴配置装置の一例を示す概略図である。 図5は、液滴配置装置の一例を示す概略図である。 図6は、液滴配置装置の一例を示す概略図である。 図7は、液滴配置装置の一例を示す概略図である。 図8は、神経回路モデルの製造方法の一例を示すフロー図である。 図9は、神経回路モデルの製造方法を説明する模式断面図である。 図10(a)〜(c)は、実験例1で撮影した顕微鏡写真である。 図11は、実験例2の結果を示すグラフである。 図12は、基板に細胞非接着性材料のパターン及び細胞接着性材料のパターンを配置し、細胞を配置する手順を説明する模式図である。 図13(a)〜(d)は、実験例3で撮影した顕微鏡写真である。 図14は、実験例4で撮影した蛍光顕微鏡写真である。 図15(a)〜(e)は、実験例5の手順を説明する模式図である。 図16(a)〜(d)は、実験例6における細胞の配置を示す模式図である。 図17(a)は、実験例7で作製した神経回路モデルにおける、細胞非接着性材料及び神経細胞の配置パターンを示す模式図である。図17(b)は、実験例7において、細胞インクを吐出した直後の神経回路モデルの代表的な顕微鏡写真である。 図18は、実験例7で作製した神経回路モデルの蛍光顕微鏡写真である。 図19(a)及び(b)は、実験例8で基板上に配置した細胞非接着性材料のパターンを示す図である。 図20(a)及び(b)は、実験例8で撮影した蛍光顕微鏡写真である。 図21(a)及び(b)は、実験例9で撮影した顕微鏡写真である。
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一又は対応する符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
[神経細胞が配置された基板の製造方法]
1実施形態において、本発明は、細胞接着性材料が配置された領域と、細胞非接着性材料が配置された領域とを有する基板上に、神経細胞を含む複数の液滴をインクジェット法により配置して、1つ又は複数の液溜りを形成する工程と、前記液溜り内の前記神経細胞が沈降し、前記基板上に仮接着して細胞集合体を形成するまで静置する工程と、を含み、前記液溜り1つあたりの直径が500μm以下であり、前記液溜り1つあたりの神経細胞の密度が10個/cm以上である、神経細胞が配置された基板の製造方法を提供する。
実施例において後述するように、発明者らは、基板上に配置された液溜り1つあたりの直径が500μm以下であり、且つ、当該液溜り中の神経細胞の密度が10個/cm以上であると、神経細胞の遊走が抑制され、神経細胞を基板上に精密に配置できることを明らかにした。また、インクジェット法により、細胞を含む液滴を基板上に吐出することにより、細胞を数個単位でマイクロメートルオーダーの微細な領域に安定して配置することができる。
液溜り1つあたりの直径は、400μm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。液溜りの直径を小さくすると、高価な細胞の使用量を減らすことが容易となるため好ましい。
ここで、液滴とは、インクジェット法によりインクジェットヘッドから吐出される液滴をいう。また、液溜りとは、インクジェットヘッドから吐出された複数の液滴が基板上に着弾して形成された液滴をいう。また、液溜り1つあたりの直径とは、1つの液溜りが基板と接する領域の直径をいう。液溜りが基板と接する領域が円形でない場合には、液溜りが基板と接する領域と同面積の円を仮定し、その直径をいうものとする。また、液溜り1つあたりの神経細胞の密度とは、1つの液溜りが、基板と接する面積あたりの細胞数をいう。
上記の液滴は、液滴1つあたり1〜50個の神経細胞を含むことが好ましい。また、液溜り1つあたりに含まれる神経細胞の数は7〜10,000個程度であることが好ましい。液溜り1つあたりに含まれる神経細胞の数は、7個以上であってもよく、30個以上であってもよく、70個以上であってもよい。また、液溜り1つあたりに含まれる神経細胞の数は100個以下であってもよく、70個以下であってもよく、30個以下であってもよい。これらの上限と下限は任意に組み合わせることができる。
基板としては、細胞の培養に用いることができるものであれば特に限定されず、基板の材質としては、例えば、以下に記載の有機材料や無機材料が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
有機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ウレタンアクリレート等のアクリル系材料、セルロース、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコーン系材料、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸カルシウム等のアルギン酸金属塩、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、アガロース等のゲル状材料等が挙げられる。
無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
基板の構造としては、細胞の培養に用いることができるものであれば特に限定されず、例えば多孔質構造や無孔構造が挙げられる。基板は多孔質構造を有するものであってもよく、無孔の平板部材に多孔質部材が積層されたものであってもよい。
多孔質構造の細孔の大きさや形に限定はなく、例えばメッシュ構造、凹凸構造、ハニカム構造等であってもよい。多孔質構造は、細胞非接着性材料又は細胞接着性材料が固定される表面積が大きくなる点、また、多量の溶液を保持することができ、乾燥を抑制できる点で、基板の構造として好ましい。
基板として多孔質構造を有する基板を用い、予め基板に培地等の液体を保持させた上で液溜りを形成すると、上記の多孔質構造により液体が保持されるため、液溜りの乾燥を抑制することができる。
また、乾燥した基板に液滴を吐出して液溜りを形成する場合には、液溜り中の液体の蒸発を抑制する工程(乾燥抑制工程)を実施することにより、液溜りの形状維持及び細胞の基板上への接着を安定して実現することが可能となる。
乾燥抑制工程としては、例えば、(i)液溜り付近を高湿度化する工程、(ii)液体の蒸発を抑制する流体を基板上に配置した後に液溜りを形成する工程(ここで、液体の蒸発を抑制する流体としては、オイル、培地、緩衝液等が挙げられる。)、(iii)基板上に液溜りを形成した後に、液体の蒸発を抑制する流体(例えばオイル等)で、液溜りを被覆する工程、等が挙げられる。
高湿度化による蒸発抑制を行う場合、周囲への影響を最小に留めるために局所的な湿度制御を行うことが好ましい。また、乾燥抑制にオイルを使用する場合には、細胞への影響を抑える点で生体適合性があるオイルを使用することが好ましい。
本実施形態の製造方法は、細胞集合体が形成された基板に培地を供給する工程を更に含んでいてもよい。培地としては、使用する細胞に適したものを適宜選択して用いることができる。具体的な培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、DMEM)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、D−MEM/F12培地、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)、イーグルMEM培地(Eagle’s Minimum Essential Medium、EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagle’s Minimum Essential Medium、αMEM)、MEM培地(Minimum Essential Medium)、RPMI1640(Roswell Park Memorial Institute−1640)培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium、IMDM)、MCDB131培地、ウィリアム培地E、IPL41培地、Fischer’s培地、M199培地、高性能改良199培地(Hight Performance Medium 199)、StemPro34(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、X−VIVO 10(Chembrex社製)、X−VIVO 15(Chembrex社製)、HPGM(Chembrex社製)、StemSpan H3000(ステムセルテクノロジーズ社製)、StemSpanSFEM(ステムセルテクノロジーズ社製)、StemlineII(シグマ−アルドリッチ社製)、QBSF−60(Quality Biological社製)、StemProhESCSFM(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、Essential8(登録商標)培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、mTeSR1又はmTeSR2培地(ステムセルテクノロジーズ社製)、ReproFF又はReproFF2(リプロセル社製)、PSGro hESC/iPSC培地(System Biosciences社製)、NutriStem(登録商標)培地(バイオロジカルインダストリーズ社製)、CSTI−7培地(細胞科学研究所社製)、MesenPRO RS培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、MF−Medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡株式会社製)、Sf−900II(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、Opti−Pro(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)等が挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。特に、DMEM/F12培地の場合、DMEM培地とF12培地を6:4〜4:6の範囲の質量比で混合することが好ましい。
また、培地に添加剤を添加してもよい。添加剤としては、神経細胞の培養に通常用いられるものが挙げられ、例えば、SM1サプリメント(ステムセルテクノロジーズ社)、N2サプリメントA(ステムセルテクノロジーズ社)、ラットアストロサイト培養上清(富士フイルム和光純薬)、ヒトアストロサイト培養上清(サイエンセルリサーチ社)、Component N(Elixirgen Scientific社)、Component G2(Elixirgen Scientific社)、Component P(Elixirgen Scientific社)、N2 Supplement(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、iCell Neural SupplementB(CDI社)、iCell Neuvous System Supplement,B−27 plus(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)等が挙げられる。
また、本実施形態の製造方法は、液溜りを形成する工程において液溜りを複数形成し、静置する工程において細胞集合体を複数形成し、培地が供給された基板をインキュベートして、少なくとも2つの前記細胞集合体を機能的に結合させる工程を更に含んでいてもよい。
基板上に液溜りが複数形成される場合、それぞれの液溜り中で細胞集合体が形成される。そして、これらの細胞集合体に培地を供給してインキュベートした結果、これらの少なくとも2つの細胞集合体が機能的に結合すると、神経回路モデルを製造することができる。ここで、細胞集合体同士が機能的に結合するとは、神経細胞が軸索と呼ばれる突起を伸ばし、別の神経細胞の樹状突起との間でシナプス結合を形成することをいう。この結果、神経回路が形成される。
神経細胞は、例えば末梢神経と中枢神経に大別することもできる。末梢神経としては、例えば、感覚神経細胞、運動神経細胞、自律神経細胞が挙げられる。中枢神経としては、例えば、介在神経細胞、投射ニューロンが挙げられる。投射ニューロンとしては、例えば、皮質ニューロン、海馬ニューロン、扁桃体ニューロン等が挙げられる。また、中枢神経細胞は、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンとに大別することもできる。中枢神経系で主に興奮性伝達を担うグルタミン酸作動性ニューロン、主に抑制性伝達を担うGABA(γ−aminobutyric acid)作動性ニューロン等が挙げられる。
その他、神経調節物質を放出するニューロンとして、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ヒスタミン作動性ニューロン等が挙げられる。
本実施形態の製造方法において、神経細胞が配置された基板上には、神経細胞以外の細胞を含む細胞集合体が更に配置されていてもよい。神経細胞が含まれる細胞集合体以外の細胞集合体は、神経細胞からの伝達シグナルを受信可能な細胞を含んでいてもよい。神経細胞からの伝達シグナルを受信可能な細胞としては、例えば神経細胞、筋細胞等が挙げられる。筋細胞としては、例えば、心筋細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞等が挙げられる。これらの細胞は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の製造方法において、神経細胞は、初代培養細胞であってもよく、継代培養細胞であってもよく、株化された細胞であってもよく、不死化細胞であってもよく、各種遺伝子編集を施した神経細胞であってもよい。また、所望の神経細胞を多く含む細胞集団を得やすいという観点から、幹細胞から分化誘導された神経細胞であってもよい。
幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、臍帯血由来幹細胞、神経幹細胞等が挙げられる。人工多能性幹細胞としては、例えば、核移植胚性幹細胞(ntES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)等が挙げられる。間葉系幹細胞としては、例えば、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞等が挙げられる。中でも、幹細胞としては、iPS細胞が好ましい。
iPS細胞は健常者由来のものであってもよく、各種神経系の疾患を有する患者由来のものであってもよい。また、各種遺伝子編集が施されたものであってもよく、例えば、遺伝子編集を施し各種神経系の疾患の原因又はリスク因子となる遺伝子を持つ細胞であってもよい。
iPS細胞が各種神経系の疾患を有する患者由来の細胞である場合には、当該神経系の疾患モデルを構築するために利用することができる。神経系の疾患としては、特別に限定されないが、例えば、神経変性疾患、自閉症、てんかん、注意欠陥−多動性障害(Attention−deficit hyperactivity disorder、ADHD)、統合失調症、双極性障害等が挙げられる。神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症等が挙げられる。
神経細胞の由来となる動物種は、特に限定されず、例えば、ヒト、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等が挙げられる。中でも、ヒトが好ましい。
本実施形態の製造方法において、神経細胞は、生体から採取されたものであってもよく、株化され培養されたものであってもよく、幹細胞から分化誘導されたものであってもよい。
複数の種類の神経細胞を用いて神経回路モデルを製造する場合、1つの細胞集合体は1種類の神経細胞を含むことが好ましい。また、複数の細胞集合体のそれぞれは、目的に応じて異なる種類の神経細胞を含んでいてもよい。
以下、神経細胞を含む液滴を基板上に配置して、1つ又は複数の液溜りを形成する工程を説明する。本工程は、少なくとも神経細胞及び細胞乾燥抑制剤を含有する細胞懸濁液(細胞インク)を、インクジェット方式により液滴として吐出することにより行う。
インクジェット方式による液滴吐出手段としては、例えば、細胞インクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いて細胞懸濁液の容積を変化させて液滴を吐出させる、いわゆるピエゾ方式(例えば、特公平2−51734号公報参照)、発熱抵抗体を用いて細胞インクを加熱して気泡を発生させる、いわゆるサーマル方式(例えば、特公昭61−59911号公報参照)、振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、細胞インクの容積を変化させて液滴を吐出させる静電方式(例えば、特開平6−71882号公報参照)等が挙げられる。
(インクジェットヘッド)
神経細胞及び細胞乾燥抑制剤を含有する細胞インクを液滴として吐出するために使用するインクジェットヘッドの具体的態様について、以下説明する。図1は、インクジェットヘッドの一例を示す概略図である。図1では、圧力発生手段として圧電素子を用いている。図2及び図3は、インクジェットヘッドへの入力波形の一例を示す概略図である。
液滴吐出ヘッド10は、細胞インク11を保持する液室12と、ノズル15と、膜状部材のメンブレン13と、メンブレン13に振動を与える加振部16と、加振部16を振動させるため、加振部16に特定の駆動信号として電圧を与える駆動部14とを有する。
液室12には、液室内を大気に開放するための大気開放部17が設けられている。液滴吐出ヘッド10は、細胞インクに振動を与えることで、ノズルから細胞インクの液滴が吐出される。
駆動部14は、駆動信号として吐出波形Pjを加振部16に加えることができるようになっており、メンブレン13の振動状態を制御することによって液室12に保持された細胞インク11を液滴状に吐出させることが可能となっている。吐出波形Pjは、メンブレン13を共振させて、細胞インク11をより少ない電圧で吐出させるために、メンブレン13の固有振動周期Toを含む駆動信号に設定するとよい。吐出波形Pjは、三角波、正弦波のみでなく、ローパスフィルタにかけてエッジを緩やかにした三角波も用いることができる。更に、駆動部14は、駆動信号として液滴吐出後のメンブレン残留振動を抑制する免振波形Psを加振部16に加えることができるようになっている。これによって、液滴形成後のメンブレン残留振動が早く抑制されることにより、より高周波な連続吐出が可能となる。更に、サテライトやミストが減少することにより、液滴のより微小な量の制御が可能になる。免振波形Psは、三角波、正弦波のみでなく、ローパスフィルタにかけてエッジを緩やかにした三角波も用いることができる。
液室12に保持される細胞インク11の量は特に制限されず、例えば、1μLから1mL程度の液を保持することが可能である。特に、細胞を分散させた細胞インクのように高価な液を使用する際には、少量の液量で液滴形成ができるようになっていることが好ましく、1μLから50μL程度の液量を保持することができる構成であるとよい。
メンブレン13の形状としては、円形であっても、楕円状や四角形であってもよい。メンブレン13の材質は、特に制限されないが、柔らかすぎるとメンブレンが簡単に振動してしまい、液滴が吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難となるため、ある程度の硬さがある材質であるとよい。メンブレン13の材質としては、例えば、金属材料、セラミック材料、ある程度の硬さのある高分子材料等を用いることができる。
ノズル15は、メンブレン13の中心に実質的に真円状の貫通孔として形成されていることが好ましい。加振部16としては、例えば、圧電素子が挙げられる。電圧を印加することによって紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレン13を変形させることができる。圧電素子の材料としては、例えば、一般的に使用されているジルコン酸チタン酸鉛を用いることができる。この他にも、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、あるいはこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたもの等、様々な圧電材料を用いることができる。
メンブレン13を変形させるためのメンブレン13に振動を与える手段としては、圧電素子に限られず、例えば、メンブレン13上にメンブレンとは異なる線膨張係数が異なる材料が貼り付けられており、加熱することによって線膨張係数の差を利用してメンブレン13を変形させることも可能である。このとき、例えば、線膨張係数の異なる材料にはヒーターが形成されており、通電によってヒーターが加熱し、メンブレン13が変形できるようになっている。
(細胞インク)
続いて、細胞インクについて説明する。細胞インクは、少なくとも神経細胞及び細胞乾燥抑制剤を含有する。更に、細胞懸濁液(細胞インク)は、細胞を分散させる分散媒を含有し、必要に応じて、分散剤、pH調整剤等のその他の添加材料を含有してもよい。神経細胞については上述したものと同様である。
細胞乾燥抑制剤とは、細胞の表面を覆い、細胞の乾燥を抑制する機能を有するものであり、例えば、多価アルコール類、ゲル状多糖類、及び、細胞外基質から選ばれるタンパク質等が挙げられる。
多価アルコールとしては、細胞へダメージを与えなければ特に制限はなく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、グリセリンが好ましい。グリセリンは、細胞への毒性が低く、低添加量であっても乾燥を抑制する効果が期待できる。
ゲル状多糖類とは、ゲル状態となっている多糖類をいう。ゲル状多糖類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルギン酸カルシウム、ジェランガム、アガロース、グァーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガム、タマリンドガム、ダイユータンガム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、アルギン酸カルシウムが好ましい。アルギン酸カルシウムは、アルギン酸のカルボキシル基にカルシウムイオンが結合した塩であり、カルシウムイオンは2価であるため、2つのカルボキシル基にまたがる形で結合(イオン架橋)して増粘することにより、細胞インクの乾燥を抑制することができる。このときカルシウムイオンは分散媒中に含まれており、乾燥による濃縮で過剰になったカルシウムイオンと結合すると考えられ、浸透圧を調整する役割も期待できる。
細胞外基質から選ばれるタンパク質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、フィブリン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、コラーゲンが好ましい。コラーゲンには多様な種類が存在するが、濃度や温度によって増粘することが知られており、細胞インク中に含ませることで、濃度が上昇した際に増粘させることができる。
分散媒としては、細胞培養用の培地や緩衝液が好ましい。培地については上述したものと同様である。緩衝液は、pHを調整するためのものであり、公知のものを適宜選択して使用することができる。
基板上に配置された液溜りは微小量であるため、数十秒から数分で液溜り中の液体の蒸発が進行し、液溜り内の成分濃度が急激に上昇してしまう。この濃度変化に起因する浸透圧等の急激な変化によって、液溜り内の細胞にダメージを与えてしまい、最悪の場合、細胞死に至る。したがって、下記のような方法により液溜り中の液体の蒸発を抑制することが好ましい。
例えば、基板として多孔質構造を有する基板を用い、予め基板に培地等の液体を保持させた上で液溜りを形成すると、上記の多孔質構造により液体が保持されるため、液溜りの乾燥を抑制することができる。
また、乾燥した基板に液滴を吐出して液溜りを形成する場合には、液溜り中の液体の蒸発を抑制する工程(乾燥抑制工程)を実施することにより、液溜りの形状維持及び細胞の基板上への接着を安定して実現することが可能となる。乾燥抑制工程としては、上述したものと同様の工程が挙げられる。
(液滴を配置する工程)
続いて、基板上に、細胞を含む1つ又は複数の液滴を配置して1つ又は複数の液溜りを形成する工程について説明する。液滴を配置する工程では、細胞インクの液滴を基板上の目的の位置に吐出する。神経細胞を含む液滴は、基板上の1か所に配置されてもよいし、基板上の複数の位置に配置されてもよい。インクジェットヘッドから吐出される細胞インクの複数の液滴が基板上の1か所に配置され、1つの液溜りが形成される。
液滴を吐出するタイミングを調整することにより、細胞接着性材料が配置された領域(細胞接着部)に接着される細胞の位置を調整することができる。また、その際の細胞インクの吐出量(液滴数や液滴量)や細胞濃度を調整することにより、基板上に配置する細胞の数を調整することができる。
基板上に配置された液溜り内の細胞は、沈降し、基板上に仮接着して細胞集合体を形成する。インクジェット法によれば、細胞インクの液滴が手技に比べて非常に小さいため、細胞が基板上に仮接着するまでの時間が非常に短時間である。また、インクジェット法により液滴を配置することにより、神経細胞を所定の位置に配置する、細胞パターンの形状精度が高い。所定の位置に所定数の神経細胞を配置できる確率、あるいは配置した細胞数が所望の数となっている確率が高く、所望の数の神経細胞を配置する精度が高い。また、配置された神経細胞の所定時間経過後における生存率も高い。
(液滴配置装置)
以下、基板上に液滴を配置する装置(以下、「液滴配置装置」という場合がある。)の具体的態様について説明する。しかし、本発明は、これらの実施態様に何ら限定されるものではない。
液滴配置装置は、ステージ部と、細胞インクの液滴を吐出する液滴吐出手段であるインクジェットヘッドを有する。ステージ部は、基板を保持する。液滴吐出ヘッドの構成は、上述したインクジェットヘッドと同様である。
図4から図7に、インクジェットヘッドを搭載した液滴配置装置の一例を示す。図4に示す液滴配置装置400は、ステージ部31と、インクジェットヘッド21とを有する。インクジェットヘッド21は、上述したように、液室部25、加振部27、駆動部26、及び、メンブレン28を有する。また、インクジェットヘッド21には、大気開放部24が形成されている。
液滴配置装置は、細胞インクだけでなく、細胞非接着性材料又は細胞接着性材料を含む溶液の液滴も吐出できる構成としてもよい。図5に示す液滴配置装置500は、細胞インクの液滴を吐出するインクジェットヘッド21の他に、細胞非接着性材料又は細胞接着性材料を含む溶液の液滴を吐出するインクジェットヘッド23を備える。インクジェットヘッド23の基本構成は、インクジェットヘッド21と同様である。図5において、符号29は駆動部を、符号30は細胞非接着性材料又は細胞接着性材料の溶液を保持する液室を示す。インクジェットヘッド23は、インクジェットヘッド21と同様に、図示しない加振部やメンブレンを有する。
液滴配置装置では、2種類以上の細胞を含む液滴を配置することもできる。図6に示す液滴配置装置600は、細胞インクの液滴を吐出するインクジェットヘッド21を複数備えることができる。図6では、インクジェットヘッド21、及び、インクジェットヘッド21と同じ構成のインクジェットヘッド22を備えた例を示す。また、図7に、インクジェットヘッド21及び22に加え、インクジェットヘッド23も備えた液滴配置装置700を示す。液滴配置装置は、上述した構成のほかにも、インクジェットヘッドを保持する保持部や、ステージとインクジェットヘッドの相対位置を制御する機構部等を備えていてもよい。
神経細胞を配置する基板は、細胞接着性材料が配置された領域と、細胞非接着性材料が配置された領域とを有する。本明細書において、細胞接着性材料が配置された領域を細胞接着部という場合がある。また、細胞非接着性材料が配置された領域を細胞非接着部という場合がある。実施例において後述するように、表面に細胞非接着性材料のパターンを配置することにより、神経細胞を配置した場合の軸索伸長をより柔軟に制御することが可能になる。
基板に細胞非接着性材料が配置されていることにより、細胞の成長方向を規定することができる。また、基板に細胞非接着性材料が配置されていることにより、複数種類の細胞を互いに混ざり合うことなく配置することができる。ここで、複数種類の細胞をインクジェット法により配置する場合、細胞同士のコンタミネーションを避ける観点から、細胞インクの液滴を吐出するインクジェットヘッドは、細胞1種類に対して1つ用意することが好ましい。
細胞非接着性材料のパターンは、細胞非接着性材料が配置された領域と、細胞非接着性材料が配置されていない領域とを有し、細胞非接着性材料が配置されていない領域が、線状形状(線状)を有していてもよい。この場合、線状形状の幅が100μm以下であることが好ましい。
線状形状の幅が100μm以下であると、細胞非接着性材料が配置されていない線状形状に沿って軸索を伸長させることができる。つまり、2つの線状形状の細胞非接着性材料のパターンで挟まれた領域を、軸索が伸長する経路にすることができる。
細胞を配置する基板は、表面に細胞非接着性材料のパターンを配置されているだけでなく、表面に細胞接着性材料のパターンが更に配置されている。細胞インクの液滴は、前記細胞接着性材料に接して配置されてもよい。細胞インクの液滴が、細胞接着性材料に接して配置され、基板上に配置された細胞インクの液溜りが基板と接する面積よりも、細胞接着性材料のパターンの面積の方が小さい場合、液滴に含まれた細胞は、沈降して基板上に仮接着した後、細胞接着性材料のパターン上に移動して集合する傾向がある。したがって、基板上に細胞接着性材料のパターンを配置することによって、細胞の配置を制御することができる。
(細胞非接着性材料)
細胞非接着性材料としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、アルギン酸金属塩(アルギン酸カルシウム等)のゲル、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート(pHEMA)、ポリエチレングリコール(PEG)、これらの誘導体等が挙げられる。
ここで、細胞非接着性材料がポリエチレングリコールである場合について説明する。この場合、例えば、ポリエチレングリコールを骨格とし、側鎖及び/又は末端に1以上の求核性官能基又は求電子性官能基のいずれか一方の官能基を有する多分岐型ポリマーを含む第1溶液と、ポリエチレングリコールを骨格とし、側鎖及び/又は末端に1以上の求核性官能基又は求電子性官能基の他方の官能基を有する多分岐型ポリマーを含む第2溶液とを接触させることにより、これらが架橋して細胞非接着性材料のパターンを形成することができる。
「ポリエチレングリコールを骨格とする多分岐型ポリマー」(以下、単に「多分岐型ポリマー」又は「Multi−Arm PEG」という場合がある。)は、ゲル化材として用いられるポリマーである。複数のポリエチレングリコール(PEG)分岐の末端に、求核性官能基と求電子性官能基をそれぞれ有する2種類のMulti−Arm PEGが、互いに架橋し合うことで、網目構造ネットワークを有するゲル(Multi−Arm PEGゲル)を形成することができる。
例えば、4つのPEG分岐の末端に求核性官能基と求電子性官能基をそれぞれ有する2種類の四分岐型ポリマー(以下、「Tetra−PEG」という場合がある。)の場合であれば、均一な網目構造ネットワークを有する「Tetra−PEGゲル」と称されるゲルを形成できる。
多分岐型ポリマーの分岐数は特に限定はされない。通常は求電子末端と求核末端を含む3分岐以上のPEGであれば問題はなく、必要に応じて適宜選択することができる。求核性官能基と求電子性官能基をそれぞれ有していれば、Multi−Arm PEGを構成する2以上のPEGは、それぞれ異なる分岐数を有していてもよい。Multi−Arm PEGの中でも、Tetra−PEGゲルは、理想的な均一網目構造を有することが知られている。
また、Tetra−PEGゲルは、第1溶液及び第2溶液に含まれる2種類のTetra−PEGの単純な混合によって、その場で簡便かつ短時間で形成可能であり、さらに各Tetra−PEGのpHや濃度を調節することで、ゲル化時間を制御することもできる。加えて、PEGを主成分とするため、生体適合性にも優れている。細胞とTetra−PEGを含む溶液を液滴吐出装置で吐出し、2種類のTetra−PEGを反応させて、Tetra−PEGゲルを造形することで、細胞を三次元に配置することが可能になる。
Tetra−PEGは、一実施形態として、以下の一般式(1)で表される構造を有する化合物であってよい。
Figure 2022002504
上記式(1)中のmは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。mの値が近いほど均一な立体構造をとることができ、ゲルが高強度となる。このため、高強度のゲルを得るためには、同一であることが好ましい。mの値が高すぎるとゲルの強度が弱くなり、各mの値が低すぎると化合物の立体障害によりゲルが形成されにくい。そのため、各mとしては、25〜250の整数値が挙げられ、35〜180が好ましく、50〜115がさらに好ましく、50〜60が特に好ましい。そして、その分子量としては、5×10〜5×10 Daが挙げられ、7.5×10〜3×10 Daが好ましく、1×10〜2×10 Daがより好ましい。
上記式(1)中、Xは、官能基とコア部分を繋ぐリンカー部位である。各Xは、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、均一な立体構造を有する高強度なゲルを製造するためには同一であることが好ましい。Xは、C−Cアルキレン基、C−Cアルケニレン基、−NH−Ra−、−CO−Ra−、−Rb−O−Rc−、−Rb−NH−Rc−、−Rb−CO−Rc−、−Rb−CO−NH−Rc−、−Rb−CO−Rc−、又は、−Rb−CO−NH−Rc−を示す。ここで、RaはC−Cアルキレン基を示し、RbはC−Cアルキレン基を示し、RcはC−Cアルキレン基を示す。
「C−Cアルキレン基」とは、分岐を有してもよい炭素数が1以上7以下のアルキレン基であって、直鎖C−Cアルキレン基、又は、1又は2以上の分岐を有するC−Cアルキレン基(分岐を含めた炭素数が2以上7以下)を含む。C−Cアルキレン基の例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。C−Cアルキレン基の例は、−CH−、−(CH−、−(CH−、−CH(CH)−、−(CH(CH))−、−(CH−CH(CH)−、−(CH−CH(CH)−、−(CH−CH(C)−、−(CH−、−(CH−C(C−、及び、−(CHC(CHCH−等が挙げられる。
「C−Cアルケニレン基」とは、鎖中に1個若しくは2個以上の二重結合を有する直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数2〜7個のアルケニレン基である。例えば、アルキレン基から隣り合った炭素原子の水素原子の2〜5個を除いてできる二重結合を有する2価基が挙げられる。
上記式(1)中、Yは、上述のように、共有結合による架橋反応であるクロスエンドカップリング反応によって網目構造ネットワークを形成させるための官能基であって、求核性官能基又は求電子性官能基から選択される。
「求核性官能基」としては、限定されないが、例えば、ゲル化時間を短くできる観点からチオール基が好ましい。当該官能基は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。官能基が同一であることによって、架橋反応の対象となる求核性官能基との反応性が均一になり、均一な立体構造を有する高強度のゲルを得やすくなる。以下、求核性官能基を有するTetra−PEGを「求核性Tetra−PEG」という場合がある。
「求電子性官能基」としては、限定されないが、例えば、ゲル化時間を短くできる観点からマレイミジル基が好ましい。当該官能基は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。官能基が同一であることによって、架橋反応の対象となる求核性官能基との反応性が均一になり、均一な立体構造を有する高強度のゲルを得やすくなる。以下、求電子性官能基を有するTetra−PEGを「求電子性Tetra−PEG」という場合がある。
求核性官能基と求電子性官能基のモル比は、0.5:1〜1.5:1となるように求核性Tetra−PEGと求電子性Tetra−PEGを混合すればよい。当該官能基はそれぞれ1:1で反応して架橋し得るので、混合モル比は1:1に近いほど好ましいが、高い強度のハイドロゲルを形成させるには0.8:1〜1.2:1が好ましい。また、第1又は第2溶液中の分散媒のpHが5〜10のとき各溶液に含有されるTetra−PEGの濃度は0.3〜20%の範囲であればよく、pH6〜10のときは1.7〜20%の範囲が好ましい。
第1溶液が求核性Tetra−PEG又は求電子性Tetra−PEGのいずれか一方のTetra−PEGで構成され、第2溶液が他方のTetra−PEGで構成されていてもよい。
《第1溶液》
「第1溶液」とは、少なくとも側鎖及び/又は末端に1以上の、求核性官能基を有するポリエチレングリコール又は求電子性官能基を有するポリエチレングリコールのいずれか一方を骨格とする多分岐型ポリマー、及び、分散媒を構成要素として包含する水溶液であって、必要に応じて、細胞や細胞作用添加物を含むことができる。
第1溶液は複数種存在してもよい。その場合、各第1溶液に含まれる側鎖及び/又は末端に1以上の、求核性官能基を有するポリエチレングリコール又は求電子性官能基を有するポリエチレングリコールのいずれか一方を骨格とする多分岐型ポリマー、分散媒、細胞、及び細胞作用添加物は、その全部又は一部が異なっていてもよい。例えば、第1溶液aに含まれる分散媒と第1溶液bに含まれる分散媒は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1溶液が複数種存在する場合、例えば、ハイドロゲルを積層形成させる際に、各層において分散媒を任意に変更することができる。
《第2溶液》
「第2溶液」とは、ポリエチレングリコールを骨格とし、その側鎖及び/又は末端に1以上の第1溶液とは異なる方の官能基(求核性官能基又は求電子性官能基)を有する多分岐型ポリマー、及び分散媒を必須の構成要素として包含する水溶液であって、必要に応じて、細胞や細胞作用添加物を含むことができる。
第2溶液は複数種存在してもよい。その場合、各第2溶液に含まれる側鎖及び/又は末端に1以上の求核性官能基又は求電子性官能基を有するポリエチレングリコールを骨格とする第1溶液とは異なる官能基の多分岐型ポリマー、分散媒、細胞、及び細胞作用添加物は、その全部又は一部が異なっていてもよい。例えば、第2溶液aに含まれる細胞と第2溶液bに含まれる細胞は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
《ゲル形成工程》
「ゲル形成工程」とは、第1溶液と第2溶液が混合することにより、それぞれに含まれるポリエチレングリコールを骨格とする多分岐型ポリマーが反応して、ハイドロゲルが形成される工程である。第1溶液と第2溶液のいずれか一方を液滴吐出装置で吐出してもよいし、第1溶液と第2溶液の双方を液滴吐出装置で吐出してもよい。
「液滴吐出装置」とは、液室中に収納された溶液を液滴にして射出し、対象部位に着弾させる手段である。吐出装置の吐出方法としてはインクジェット法、ゲル押し出し法のディスペンサ法などが挙げられる。インクジェット法では、溶液が吐出孔(ノズル)から射出される。吐出方法は、吐出孔からの微小な溶液(液滴と称すことがある)を吐出することが可能なため、高精度な三次元構造体を作製することができる。
吐出される液滴の量は、任意の液量とすることができる。好ましくは、9pL以上、15pL以上、20pL以上、30pL以上、40pL以上、50以上、60pL以上、70pL以上、80pL以上、90pL以上、又は、100pL以上であり、900pL以下、800pL以下、700pL以下、600pL以下、500pL以下、400pL以下、300pL以下である。
「着弾」とは、溶液を標的部位に接触させることをいう。これは、吐出方法により標的部位に対して液滴を吐出することで達成される。溶液を吐出する位置は、特に制限されず、所望の標的位置に溶液が着弾するように吐出すればよい。また、それぞれの着弾部位は離れていてもよいし、一部が接触又は重なっていてもよい。
ゲル形成は、求核性官能基と求電子性官能基を有するポリエチレングリコールを骨格とする多分岐型ポリマーの反応によるため、第2溶液が第1溶液に着弾することでハイドロゲルが形成される。第2溶液を液滴吐出装置で吐出させた場合、1度の着弾で、ハイドロゲルは、限定はしないが、通常、ドット状ハイドロゲルとして形成され得る。本明細書において「ドット(形)状」とは、点状の形状をいう。したがって、真円形状や半球形状に限られず、略円形状や略半球形状の他、多角形状、略多角形状、不定形、又はそれらの組み合わせ等、いずれの形状であってもよい。また、ドット(形)状は、三次元構造的には、所定の長さと厚さを有していればよい。第2溶液が複数回吐出される場合は、ドット状ハイドロゲルを最小単位とする多彩な形状のハイドロゲルが形成される。
1回の着弾による架橋反応で形成されるハイドロゲル、すなわちドット状ハイドロゲルの体積は、第2溶液の同一箇所への吐出回数に依存する。また、吐出孔径が大きいほど、同一箇所への吐出回数が増えるほどドット状ハイドロゲルの体積は大きくなる。したがって、同一箇所への吐出回数、吐出孔径を変えることで、ドット状ハイドロゲルの体積を調製することができる。限定はしないが、本明細書におけるドット状ハイドロゲルの体積は、9pL以上、15pL以上、20pL以上、30pL以上、40pL以上、50以上、60pL以上、70pL以上、80pL以上、90pL以上、又は100pL以上であり、900pL以下、800pL以下、700pL以下、600pL以下、500pL以下、400pL以下、300pL以下が好ましい。ドット状ハイドロゲルの直径は、限定はしないが、10μm以上300μm以下、厚さは5μm以上150μm以下の範囲であればよい。
第2溶液が任意回数吐出されるため、複数個のドット状ハイドロゲルが形成されることがある。ドット状ハイドロゲルは、全部又は一部が接触していてもよい。複数のドット状ハイドロゲルが連なって配置されることで、点状のみならず、任意形状のハイドロゲルを形成できる。形状は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、1軸方向にドットを並べることで、線状ハイドロゲルを形成することができる。また、線状ハイドロゲルを隙間なく同一平面状に並べることで膜状(面状)ハイドロゲルを形成することもできる。
《除去工程》
「除去工程」は、ゲル形成工程後、基板上やハイドロゲル上に存在する未反応、すなわち未架橋の前記多分岐型ポリマーを除去する工程である。本工程は、選択工程であり、必要に応じて行えばよい。
除去方法は、特に制限されず、形成されたハイドロゲルに物理的、生物学的、又は、化学的影響を与えない方法であれば、公知のいかなる除去方法を使用することもできる。通常行われる簡便な除去方法は、支持体又はハイドロゲルを適当な洗浄液で洗浄する方法である。
洗浄方法で使用する洗浄液は、ハイドロゲル及び細胞に影響を与えない溶液であれば、特に制限はない。pH、浸透圧等を考慮して、適宜定めればよい。好ましくは緩衝液又は培地等が挙げられる。
洗浄方法は、支持体又はハイドロゲル上に洗浄液を掛け流してもよく、ハイドロゲルに対する物理的なダメージを軽減するために洗浄液中に浸漬する方法でもよい。洗浄は1度の工程で複数回行ってもよい。
(細胞接着性材料)
細胞接着性材料としては、例えば、細胞外基質から選ばれるタンパク質などが挙げられる。細胞外基質から選ばれるタンパク質としては、上述したものと同様である。細胞接着性材料は、液滴吐出装置で吐出して基板上に配置してもよい。液滴吐出装置については上述したものと同様である。
[神経回路モデル]
1実施形態において、本発明は、基板と、前記基板上に離散的に配置された複数の細胞集合体とを備え、前記複数の細胞集合体のそれぞれは神経細胞を含み、少なくとも2つの前記細胞集合体が機能的に結合している、神経回路モデルを提供する。本実施形態の神経回路モデルにおいて、細胞集合体のそれぞれは7〜10,000個の細胞を含むことが好ましい。
本実施形態の神経回路モデルは、生体内の神経細胞の活動状態を、インビトロで正確に再現できるものであり、脳機能の解明や、神経系疾患への毒性評価、創薬開発等に利用することができる。
本実施形態の神経回路モデルにおいて、基板、神経細胞については上述したものと同様である。また、細胞集合体同士が機能的に結合するとは、上述したものと同様であり、神経細胞が軸索と呼ばれる突起を伸ばし、別の神経細胞の樹状突起との間でシナプス結合を形成することをいう。この結果、神経回路が形成される。
本実施形態の神経回路モデルにおいて、基板は、表面に細胞非接着性材料のパターンが配置されたものであってもよい。また、基板は、表面に細胞接着性材料のパターンが配置されたものであってもよい。
基板上の細胞集合体の配置のパターンや数は特に制限されず、例えば、サークル状であってもよいし、矩形状であってもよいし、格子状であってもよい。また、基板上に配置された細胞集合体同士の機能的な結合は、ランダムに結合していてもよいし、各細胞集合体を循環するように結合していてもよい。
[神経回路モデルの製造方法]
1実施形態において、本発明は、基板上に細胞接着性材料及び細胞非接着性材料を配置して細胞配置用微細構造を形成する細胞培養担体形成工程と、前記基材上に神経細胞を配置する細胞配置工程と、配置した神経細胞が沈降し、前記基板上に仮接着して細胞集合体を形成するまで静置する工程と、前記細胞集合体が形成された前記基板に培地を供給する培地添加工程と、前記細胞集合体を培養し、神経回路モデルを形成する培養工程を含む、神経回路モデルの製造方法を提供する。
本実施形態の製造方法において、基板は、上述したものであってもよく、無孔の平板部材に多孔質部材が積層されたものであってもよい。無孔の平板部材としては、上述した基板の材質から形成されたものが挙げられ、より具体的には、例えば、培養皿、ガラス等が挙げられる。
多孔質部材は、例えば多孔質メンブレンであってもよい。多孔質部材のポアサイズは、細胞が埋没しない大きさであることが好ましく、例えば1μm以下のポアサイズであることが好ましい。
図8は、本実施形態の製造方法のフロー図である。図8に示すように、まず、細胞培養担体形成工程において、基板上に細胞接着性材料及び細胞非接着性材料を配置して細胞配置用微細構造を形成する。細胞接着性材料、細胞非接着性材料については上述したものと同様である。
続いて、細胞配置工程において、細胞配置用微細構造の細胞配置領域に細胞を配置する。細胞の配置はインクジェット法により行うことが好ましい。また、ここで、細胞配置用微細構造に複数種類の細胞を配置する場合には、全ての種類の細胞を配置する。
本実施形態の製造方法において、乾燥抑制処置を行うことが好ましい。例えば、基板として多孔質構造を有する基板を用い、予め基板に培地等の液体を保持させた上で液溜りを形成すると、上記の多孔質構造により液体が保持されるため、液溜りの乾燥を抑制することができる。
また、乾燥した基板に液滴を吐出して液溜りを形成する場合には、液溜り中の液体の蒸発を抑制する工程(乾燥抑制工程)を実施することにより、液溜りの形状維持及び細胞の基板上への接着を安定して実現することが可能となる。乾燥抑制工程としては、上述したものと同様の工程が挙げられる。乾燥抑制処置は、細胞配置工程の後に実施してもよく、細胞培養担体形成工程の前に実施してもよい。
続いて、静置する工程において、全ての細胞が接着するまで静置する。続いて、培地添加工程において、培地を添加する。培地については上述したものと同様である。続いて、培養工程において、前記細胞集合体を培養し、神経回路モデルを形成する。
図9は、神経回路モデルの製造方法を説明する模式断面図である。図9に示すように、細胞培養担体930は、平板部材910に多孔質部材920が積層されたものである。
多孔質部材上に細胞配置用微細構造を形成する方法は特に限定されないが、図9の例では、上述した第1溶液940に多孔質部材920を浸漬させた後、平板部材910の上に配置し、インクジェットヘッドから第2溶液950を吐出している。
第1溶液940と第2溶液950が反応すると、細胞非接着性材料であるハイドロゲル(Tetra−PEGゲル)960が形成される。第1溶液940と第2溶液950との反応は、例えば高湿度環境下で30分間静置することにより行うことができる。ここで、高湿度環境としては、相対湿度90%以上が好ましい。
続いて、細胞を配置する。図9の例では、インクジェット法により、上述した細胞インク970を吐出することにより、細胞980を配置している。このとき、多孔質部材920に培地が保持されていることにより、吐出された細胞インク970の微小液滴が着弾した際の衝撃を緩和し、細胞へのダメージを軽減させることができる。更に、多孔質部材920に培地が保持されていることにより、微小液滴が乾燥してしまうことを防ぐことができる。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(細胞の遊走の評価1)
基板に細胞を播種し、遊走の発生を評価した。基板としては、表面にマトリゲル(登録商標、コーニング社製)をコートしたスライドガラスを使用した。細胞としては、ラット褐色細胞腫由来の細胞株であるPC12細胞を使用した。細胞の播種はインクジェット法により行った。
《細胞インクの調製》
まず、細胞を染色した。緑色蛍光染料(商品名:Cell Tracker Green、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を10mmol/L(mM)の濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)へ溶解させ、培地と混合し、濃度10μmol/L(μM)の緑色蛍光染料含有培地を調製した。
続いて、培養したPC12細胞のディッシュに緑色蛍光染料含有無血清培地を5mL添加し、インキュベーター(KM−CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5体積%CO環境)内で30分間培養した。その後、トリプシン処理によりディッシュから細胞を剥離させて、細胞懸濁液を得た。続いて、細胞懸濁液の一部をPMMA製プラスチックスライドに載せ、商品名:Countess Automated Cell Counter(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて細胞数を計測した。
細胞インクの分散媒として、PBS(−)に、細胞乾燥抑制剤としてグリセリン(分子生物学用グレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)を0.5質量%添加したものを使用した。PC12細胞を6×10個/mLとなるように分散媒へ分散させて、細胞インクを得た。
《細胞の吐出》
図4の装置の細胞吐出ヘッドの液室に細胞インクを充填した。続いて、基板上に、細胞インクの液滴を吐出し、液溜りを配置した。液溜り1つあたりの直径は約200μmであった。また、基板上に配置された液溜り中には、液溜り1つあたり細胞が約100個含まれており、液溜り中の細胞密度は3×10個/cmであった。なお、液溜り中の細胞密度とは、基板上に配置された液溜りが、基板と接する面積あたりの細胞数をいう。
図10(a)は細胞インクを吐出した直後の顕微鏡写真である。細胞インクの液滴を着弾し終えてから約10分間、相対湿度95%以上の高湿度環境で静置すると、液滴内の細胞が沈降し、基板上に仮接着して細胞集合体を形成した。続いて、培地を静かに加えた。図10(b)は培地を添加した直後の顕微鏡写真である。
《細胞の培養》
続いて、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で1日間培養した。図10(c)は培養開始から1日後の細胞中のCell Tracker Greenの蛍光を観察した蛍光顕微鏡写真である。その結果、細胞が遊走し、吐出直後の位置から移動したことが明らかとなった。このような遊走が発生すると、細胞を所定の位置に留めておくことが困難である。
[実験例2]
(細胞の遊走の評価2)
液溜り中の細胞数を変化させて基板に細胞を播種し、遊走の発生を評価した。基板としては、表面にマトリゲル(登録商標)をコートしたスライドガラスを使用した。細胞としては、PC12細胞を使用した。細胞の播種はインクジェット法により行った。
細胞インクの作製及び細胞の吐出は、実験例1と同様にして行った。但し、細胞の吐出において、液溜り中の細胞数を変化させた。具体的には、基板上に配置された液溜り1つあたり、1個以上3個未満(細胞密度2×10個/cm)、3〜6個(細胞密度6×10個/cm)、7〜11個(細胞密度1×10個/cm)の細胞を配置した。ここで、細胞密度とは、基板上に配置された液溜りが、基板と接する面積あたりの細胞数をいう。また、液溜り1つあたりの直径は100μmであった。
続いて、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で1日間培養し、倒立顕微鏡(型式「CKX41」、オリンパス株式会社製)を使用して個々の細胞を経時的に観察し、それぞれの細胞の遊走距離を測定した。図11は、培養開始から1日後の細胞の遊走距離の測定結果を示すグラフである。グラフの縦軸は遊走距離(μm)を示す。
その結果、液溜り1つあたりの細胞数が7個以上であり、且つ、前記液溜り中の細胞密度が10個/cm以上であると、細胞の遊走が抑制されることが明らかとなった。
[実験例3]
(神経細胞パターン制御)
基板に細胞非接着性材料のパターン及び細胞接着性材料のパターンを配置した。基板としては、スライドガラス上に直径13mmのポリエステル製多孔質培養メンブレン(商品名:ipCELLCULTURE Track Etched Membrane、ポアサイズ:0.45μm、ポア密度:4×10個/cm、厚さ:12 μm、it4ip社製)を積層したものを用いた。
続いて、この基板に神経細胞を播種し、軸索の伸長を観察した。神経細胞としては、ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を使用した。図12は、基板に細胞非接着性材料のパターン及び細胞接着性材料のパターンを配置し、細胞を配置する手順を説明する模式図である。
《第1溶液の調製》
Tetra−PEG−SH(商品名「SUNBRIGHT PTE−100SH」、油化産業式会社製)をPBS(−)に溶解後、平均孔径0.2μmのフィルター(商品名「Minisart Syringe Filter 175497K」、ザルトリウス社製)で濾過し、2%Tetra−PEG−SHを含む第1溶液を得た。
《第2溶液の調製》
Tetra−PEG−マレイミジル(商品名「SUNBRIGHT PTE−100MA」、油化産業式会社製)及びマトリゲル(登録商標、コーニング社製)をPBS(−)に溶解し、平均孔径0.2μmのフィルターで濾過し、2%Tetra−PEG−マレイミジル及び1%マトリゲルを含む第2溶液を調製した。
《パターン形成》
基板を第1溶液に浸漬して取り出し、基板上へ第1溶液の液相を形成した。続いてインクジェットヘッドの液室に第2溶液を充填し、基板上に、第2溶液を滴下し、幅が約200μmの線状のパターンを形成した。その結果、第1溶液に含まれるTetra−PEG−SHと、第2溶液に含まれるTetra−PEG−マレイミジルが、架橋してハイドロゲルのパターンを形成した。このハイドロゲルは細胞非接着性材料である。また、マトリゲル(登録商標)がコートされた部分は細胞接着性材料のパターンを形成した。続いて、基板をリン酸緩衝生理食塩水(ライフテクノロジーズ社製、以下、PBS(−)とも称する)に浸漬し、余剰な第1溶液及び第2溶液を取り除いた。
《細胞インクの調製》
細胞にヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を使用した点以外は実験例1と同様にして細胞インクを調製した。
《細胞の吐出》
図1の装置の細胞吐出ヘッドの液室に細胞インクを充填した。続いて、基板上の細胞接着性材料のパターン上に、細胞インクの液滴を吐出し、液溜りを配置した。
細胞インクの液滴を着弾し終えてから約30分間静置すると、液滴内の細胞が沈降し、基板上に仮接着して細胞集合体を形成した。続いて、培地を静かに加えた。
《細胞の培養》
続いて、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で培養した。図13(a)は培養開始から4日後の細胞を観察した明視野顕微鏡写真である。スケールバーは100μmである。図13(b)、(c)は、基板上のCell Tracker Greenの蛍光を観察した蛍光顕微鏡写真である。スケールバーは100μmである。図13(d)は、細胞密度が低い領域のCell Tracker Greenの蛍光を観察した蛍光顕微鏡写真である。スケールバーは50μmである。
その結果、細胞は細胞非接着性材料のパターンが配置された領域には移動しないことが明らかとなった。また、軸索は、細胞非接着性材料のパターンを除く領域のみに形成されたことが明らかとなった。以上の結果から、基板上に細胞非接着性材料のパターンを配置することにより、神経細胞の軸索伸長を制御することができることが明らかとなった。
[実験例4]
(神経細胞非パターン制御)
実験例3と同様の方法で細胞接着性材料のみを有する基板を作製した。続いて、実験例3と同様の方法で基板上の細胞接着性材料のパターン上に、細胞インクの液滴を吐出し、神経細胞を播種した。神経細胞としては、ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を使用した。
続いて、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で培養し、培養開始から7日後に神経細胞の軸索伸長を確認した。具体的には、まず、Calcein−AM(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)をDMSOで希釈したものを、終濃度が10μMになるよう培地中に添加し、37℃、5%CO環境下で30分間インキュベートした。続いて、神経細胞を蛍光顕微鏡で観察した。
図14は、神経細胞の蛍光顕微鏡写真である。スケールバーは200μmである。その結果、基板上に細胞非接着性材料のパターンを配置しなかった場合には、神経細胞の軸索伸長方向が制御されないことが確認された。
[実験例5]
(神経回路モデルの作製1)
基材上の液溜りの直径、液溜り中の細胞密度、液溜り1つあたりの細胞数、細胞非接着性材料のパターンのサイズ、細胞接着性材料のパターンのサイズを下記表1に示す組み合わせで様々に変更し、神経回路モデルを作製し、評価した。基板としては10cmディッシュを使用した。神経細胞としては、ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を使用した。
図15(a)〜(e)は、本実験例の手順を説明する模式図である。図15(a)〜(d)は側面図であり、図15(e)は図15(b)の上面図である。図15(a)〜(e)に示すように、細胞接着性材料を円形に配置し、細胞接着部を形成した。また、細胞接着部を囲むように細胞非接着性材料を配置し、細胞非接着部を形成した。細胞非接着部の形状は、接着性材料と同心の略ドーナツ形状であった。
図15(a)は、神経細胞を含む液滴を基板上に配置する工程を説明する模式図である。図15(b)は、複数の液滴が基板上に着弾して液溜りが形成された状態を説明する模式図である。液溜りの端部は細胞非接着部上に位置していてもよいが、細胞非接着部を超えないことが好ましい。図15(c)は、液溜り内の神経細胞が沈降し、基板上に仮接着して細胞集合体を形成した状態を説明する模式図である。図15(d)は、細胞集合体が形成された基板に培地を供給する工程を説明する模式図である。
表1中、「液溜りの直径」は基材上に配置した液溜りの直径を示し、「細胞密度」は液溜り中の細胞密度を示し、「細胞数」は液溜り1つあたりの細胞数を示し、「非接着部の内径/外径」は細胞非接着部のドーナツ形状部分の内径及び外径を示し、「接着部の直径」は細胞接着部の直径を示し、「細胞の配置方法」は、細胞の配置をインクジェット法(IJ)により行ったか、手技により行ったかを示す。「細胞密度」は、基板上に配置された液溜りが、細胞接着部と接する面積あたりの細胞数とした。「N.D.」は測定不能であったことを示す。
細胞非接着性材料のパターンは、実験例3と同様にして、第1溶液に含まれるTetra−PEG−SH及び第2溶液に含まれるTetra−PEG−マレイミジルを架橋させて形成した。また、細胞接着性材料のパターンを形成する場合には、マトリゲル(登録商標、コーニング社)をインクジェットヘッドの液室に充填し、パターン状に吐出した。
神経回路モデルの評価項目として、液溜りの直径、細胞の初期配置、細胞の固定を評価した。表1に、これらの評価結果も示す。
液溜りの直径を500μm以下に制御することを目標としたが、手技では困難であった。なお、インクジェット法による細胞の配置では、液溜りの直径を500μmより大きく制御することも500μm以下に制御することも可能であった。
細胞の初期配置の評価基準は次の通りであった。
−:細胞がランダムに配置された。
+:細胞の離散パターンが形成された。
また、細胞の固定の評価基準は次の通りであり、培養1〜7日における細胞の遊走を評価した。
−:細胞が基板に配置した液滴より外側に遊走したか、ランダムな配置であった。
+:細胞が基板に配置した液滴の内側に留まった。
Figure 2022002504
その結果、実施例1〜6の神経回路モデルでは、液溜りの直径、細胞の初期配置、細胞の固定の評価項目において良好な評価結果が得られた。一方、比較例1〜6の神経回路モデルでは、液溜りの直径が500μmを超えていたか、又は、いずれかの評価項目の評価結果が不良であった。
以上の結果から、基板に配置する液滴が、液滴1つあたり7個以上の細胞を含み、且つ、液滴中の細胞密度が10個/cm以上であると、前記液溜り1つあたりの直径を500μm以下にした場合であっても細胞を基板上に安定して配置することができることが明らかとなった。
[実験例6]
(神経回路モデルの作製2)
図16(a)〜(d)は、細胞非接着性材料及び細胞接着性材料の双方を配置した、実験例の神経回路モデルの細胞の配置を示す模式図である。図16(a)及び(b)は側面図であり、図16(c)及び(d)は上面図である。図16(a)及び(c)は、細胞を配置した直後の状態を示し、図16(b)及び(d)は細胞培養後に、細胞集合体同士の間に軸索が伸長し、シナプスが形成された状態を示す。
本実験例では、図16(a)〜(d)に示す神経回路モデルを作製した。細胞非接着性材料のパターンは、実験例3と同様にして、第1溶液に含まれるTetra−PEG−SH及び第2溶液に含まれるTetra−PEG−マレイミジルを架橋させて形成した。また、細胞接着性材料のパターンを形成する場合には、マトリゲル(登録商標、コーニング社)をインクジェットヘッドの液室に充填し、パターン状に吐出した。基板としては10cmディッシュを使用した。神経細胞としては、ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を使用した。その結果、神経回路モデルが得られた。
[実験例7]
(神経回路モデルの作製3)
図17(a)に示すように、2本の同心円形状に細胞非接着性材料を配置した基板に、図17(a)に示すパターンで神経細胞を配置し、神経回路モデルを作製した。細胞非接着性材料のパターンは、実験例3と同様にして、第1溶液に含まれるTetra−PEG−SH及び第2溶液に含まれるTetra−PEG−マレイミジルを架橋させて形成した。神経細胞としては、ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を使用した。
図17(b)は細胞インクを吐出した直後の神経回路モデルの代表的な顕微鏡写真である。図17(b)中、「配置:+」は細胞の初期配置が良好であったことを示し、「配置:−」は細胞の初期配置が不良であったことを示す。
細胞を良好に初期配置できる条件で配置した後、4週間培養し、軸索を伸長させて神経回路モデルを得た。図18は、神経回路モデルのCell Tracker Greenの蛍光を観察した蛍光顕微鏡写真である。
[実験例8]
(神経回路モデルの作製4)
図19(a)及び(b)にそれぞれ示すように、基板上に細胞非接着性材料(Tetra−PEGゲル)を配置した。
基板としては、スライドガラス上に、実験例3におけるものと同様の第1溶液を含浸させた、直径13mmのポリエステル製多孔質培養メンブレン(商品名:ipCELLCULTURE Track Etched Membrane、ポアサイズ:0.45μm、ポア密度:4×10個/cm、厚さ:12μm、it4ip社製)を積層したものを用いた。
続いてインクジェットヘッドの液室に実験例3におけるものと同様の第2溶液を充填し、基板上に、第2溶液を滴下し、図19(a)及び(b)に示す幅が約200μmのパターンをそれぞれ形成した。
図19(a)に示すパターンでは、直線形状のパターンを6本形成した。これらの直線と直線の間の距離は約0.5mmであった。また、直線の長さは約5mmであった。図19(b)に示すパターンでは、同心円状の3本のパターンを形成した。各パターンの直径は中心から外側に向かって、それぞれ、約1mm、約2mm、約3mmであった。
続いて、図19(a)及び(b)にそれぞれに示すパターンで2種類の神経細胞を配置し、神経回路モデルを作製した。神経細胞としては、ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)とPC12細胞を使用した。
細胞を良好に初期配置できる条件で配置した後、1週間培養し、神経突起を伸長させて神経回路モデルを得た。続いて、神経回路モデルを免疫染色により解析した。
まず、得られた各神経回路モデルをPBSで洗浄し、4℃の4%パラホルムアルデヒド(富士フイルム和光純薬社)で30分間固定した。固定後、PBSで1回洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて室温で20分ブロッキング処理を行った。ブロッキング後、PBSで1回洗浄し、1次抗体として、抗βIIIチューブリン抗体(シグマアルドリッチ社)及び抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体(アブカム社)を、それぞれPBSで200倍に希釈した混合液を加え、4℃で一晩インキュベートした。
続いて、PBSで3回洗浄し、2次抗体として、APC標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)及びアレクサフルオロ594標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を、それぞれPBSで500倍に希釈した混合液を加え、室温で1時間インキュベートし、その後PBSで2回洗浄した。
続いて、封止液(製品名「ProLong Diamond Antifade Mountain」、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いてカバーガラスをサンプル上にかぶせて封入し、蛍光顕微鏡で観察した。
図20(a)及び(b)は、得られた神経回路モデルの神経骨格であるβIIIチューブリンと、PC12のみで発現するチロシンヒドロキシラーゼの蛍光を観察した蛍光顕微鏡写真である。図20(a)は、図19(a)に示すパターンで神経細胞を配置した神経回路モデルの蛍光顕微鏡写真であり、図20(b)は、図19(b)に示すパターンで神経細胞を配置した神経回路モデルの蛍光顕微鏡写真である。
その結果、いずれのパターンで神経細胞を配置した神経回路モデルにおいても、βIIIチューブリンの蛍光が全細胞配置領域で観察された。また、神経突起が成長していることが確認された。また、チロシンヒドロキシラーゼの蛍光は、PC12細胞を配置した領域のみで観察され、細胞配置のパターンが維持されていることが確認された。
[実験例9]
(乾燥抑制プロセスの改善)
乾燥基板に細胞を播種し、液溜りの乾燥抑制と細胞定着の発生を評価した。基板としては、スライドガラスを使用した。細胞としては、ラット褐色細胞腫由来の細胞株であるPC12細胞を使用した。細胞の播種はインクジェット法により行った。
《細胞インクの調製》
培養したPC12細胞のディッシュに緑色蛍光染料含有無血清培地を5mL添加し、インキュベーター(KM−CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5体積%CO環境)内で30分間培養した。その後、トリプシン処理によりディッシュから細胞を剥離させて、細胞懸濁液を得た。続いて、細胞懸濁液の一部を使用し、商品名:NucleoCounter NC−3000(ChemoMetec社製)を用いて細胞数を計測した。
細胞インクの分散媒として、PBS(−)に、細胞乾燥抑制剤としてグリセリン(分子生物学用グレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)を0.5質量%添加したものを使用した。PC12細胞を3×10個/mLとなるように分散媒へ分散させて、細胞インクを得た。
《細胞の吐出》
図4の装置の細胞吐出ヘッドの液室に細胞インクを充填した。続いて、基板上に、細胞インクの液滴を吐出し、液溜りを配置した。液溜り1つあたりの直径は約400μmであった。また、基板上に配置された液溜り中には、液溜り1つあたり細胞が約100個含まれており、液溜り中の細胞密度は8×10個/cmであった。
図21(a)は細胞インクを吐出した直後に液溜りを生体適合性オイル(Oil for Embryo Culture、富士フイルム和光純薬株式会社製)で被覆し、乾燥を防止した液溜りの顕微鏡写真である。オイルで被覆することにより、37℃で60分間静置しても微小量の液溜りが乾燥することはなく、液滴内の細胞が沈降し、基板上に仮接着して細胞集合体を形成する事ができた。本手法は、PC12細胞に限らず多くの細胞種に適用することができる。
その後、オイルを静かに除去した上で培地を静かに加えた。図21(b)は培地を添加した直後の顕微鏡写真である。液溜りは微小量であるため、通常の実験室環境では数分で乾燥し、液溜りの体積が90%以上減少する。
実験例1〜2のように高湿度環境で静置する方法、実験例3〜8のように湿潤基板に液溜りを生成する方法等に加え、オイル等で液溜りを被覆することにより、乾燥した基板を用いた場合であっても、細胞の沈降、仮接着を安定して実施することが可能となることが確認された。
続いて、液溜り1つあたりの細胞数、乾燥基板上の液溜りへの乾燥抑制処置の有無を下記表2に示す組み合わせで様々に変更し、参考例1〜4の神経回路モデルを、それぞれ作製して評価した。基板としては、35mmディッシュを使用した。神経細胞としては、ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞(エリクサジェン・サイエンティフィック社製)を使用した。
下記表2中、「液溜りの乾燥抑制」は基材上に配置した液溜りへの乾燥抑制工程の有無と種類を示し、「液溜りの形状維持」は37℃で60分間静置後の液溜りの形状を維持していたか否かを示す。その他の項目は上記表1で示したものと同様である。「液溜りの形状維持」の評価基準は次の通りであった。
+:液溜りの形状が維持されていた。
−:液溜りが80%以上乾燥し細胞死が見られた。
Figure 2022002504
本発明は、以下の態様を含む。
[1]細胞接着性材料が配置された領域と、細胞非接着性材料が配置された領域とを有する基板上に、神経細胞を含む複数の液滴をインクジェット法により配置して、1つ又は複数の液溜りを形成する工程と、前記液溜り内の前記神経細胞が沈降し、前記基板上に仮接着して細胞集合体を形成するまで静置する工程と、を含み、前記液溜り1つあたりの直径が500μm以下であり、前記液溜り1つあたりの神経細胞の密度が10個/cm以上である、神経細胞が配置された基板の製造方法。
[2]前記液溜り1つあたり7〜10,000個の前記神経細胞を含む、[1]に記載の製造方法。
[3]前記液滴1つあたり1〜50個の前記神経細胞を含む、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記液滴が、前記細胞接着性材料に接して配置される、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記液溜り中の液体の蒸発を抑制する工程を更に含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記細胞集合体が形成された基板に培地を供給する工程を更に含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記液溜りを形成する工程において前記液溜りを複数形成し、前記静置する工程において前記細胞集合体を複数形成し、前記培地が供給された前記基板をインキュベートして、少なくとも2つの前記細胞集合体を機能的に結合させる工程を更に含む、[6]に記載の製造方法。
[8]前記基板が、前記細胞非接着性材料が配置された領域と、前記細胞非接着性材料が配置されていない領域とを有し、前記細胞非接着性材料が配置されていない領域が、線状形状を有しており、前記線状形状の幅が100μm以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記基板が多孔質構造を有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
10…液滴吐出ヘッド、11,970…細胞インク、12,25…液室、13,28…メンブレン、14,26…駆動部、15…ノズル、16,27…加振部、17,24…大気開放部、21,22,23…インクジェットヘッド、31…ステージ部、液滴配置装置…400,500,600,700、910…平板部材、920…多孔質部材、930…細胞培養担体、940…第1溶液、950…第2溶液、960…細胞非接着性材料、980…細胞、Pj…吐出波形、Ps…免振波形。
特開2019−162097号公報

Claims (9)

  1. 細胞接着性材料が配置された領域と、細胞非接着性材料が配置された領域とを有する基板上に、神経細胞を含む複数の液滴をインクジェット法により配置して、1つ又は複数の液溜りを形成する工程と、
    前記液溜り内の前記神経細胞が沈降し、前記基板上に仮接着して細胞集合体を形成するまで静置する工程と、を含み、
    前記液溜り1つあたりの直径が500μm以下であり、
    前記液溜り1つあたりの神経細胞の密度が10個/cm以上である、
    神経細胞が配置された基板の製造方法。
  2. 前記液溜り1つあたり7〜10,000個の前記神経細胞を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記液滴1つあたり1〜50個の前記神経細胞を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記液滴が、前記細胞接着性材料に接して配置される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記液溜り中の液体の蒸発を抑制する工程を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記細胞集合体が形成された基板に培地を供給する工程を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記液溜りを形成する工程において前記液溜りを複数形成し、
    前記静置する工程において前記細胞集合体を複数形成し、
    前記培地が供給された前記基板をインキュベートして、少なくとも2つの前記細胞集合体を機能的に結合させる工程を更に含む、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記基板が、前記細胞非接着性材料が配置された領域と、前記細胞非接着性材料が配置されていない領域とを有し、
    前記細胞非接着性材料が配置されていない領域が、線状形状を有しており、
    前記線状形状の幅が100μm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記基板が多孔質構造を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
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