ところで、物流施設の各設備は半恒久的に使えるものではなく、故障が生じることもある。このような場合には稼働を一度休止させて補修する必要がある。しかし上記のような物流施設は全体がコンピュータで管理されているため、部分的な稼働停止ではなく、物流施設全体を稼働停止にせざるを得なかった。このように、従来の物流施設では、いったん故障が生じると非常に大きなインパクトを受ける状況下にあった。同じ問題は、物流施設のレイアウトを変更する際も発生していた。
そのうえ、最近の多品種少量物流における顧客の要求に起因する需要変動への対応、あるいは気候変動や季節変動による需要の変化や出荷時間帯の変化への対応に対しても上記と同様の問題が存在している。しかし、前記と同じ理由によって、これらの変動に柔軟に対応することは実質的に不可能であり、非常に融通の効かない設備であった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、物流施設全体を稼働停止させることなく、故障やレイアウト変更、あるいは顧客要求に起因する需要変動、季節変動、時間変動などに柔軟かつダイナミックに(即座に)対応可能な技術思想を体現した物流機構を提供することである。
上記課題を念頭に、本発明者は、まず、自動的な移動を行うと共に、作業者による作業の少なくとも一部を代替して行うロボットであって、自身の最適制御に加えて必要に応じ全体の最適制御に基づいた動作を行うことができる自律移動ロボット(以下、ANR(Autonomous Navigation Robot)とも称することとする。)との技術思想を創出した。このような自律移動ロボットを用いることにより、物流施設の人員を削減することが可能となる。
そこで、上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る物流機構は、物品が入荷される入庫部と、前記入庫された物品を保管する保管部と、前記保管された物品を目的に従って仕分けする仕分部と、前記仕分けされた物品を出荷する出庫部と、のうちの少なくともいずれか一つとして機能することができる物流機構において、現在位置から積載位置までおよび前記積載位置から目的地まで自律的に移動するための自律移動シナリオを作成することが可能な自律移動機能と、前記物流機構からの機構指示を受領する受領部と、前記自律移動機能により作成された前記自律移動シナリオと前記受領部が受領した前記機構指示とを比較衡量して結論移動シナリオを決定する比較衡量部とを有する自律移動ロボットを備え、前記自律移動ロボットによって、前記入荷部、前記保管部、前記仕分け部、前記出荷部の少なくともいずれかに関する作業、及び/もしくは前記作業に係る移動が少なくとも一つ以上実施されることを特徴とする。
上記において、「物流機構」とは、物流に役立つあらゆる機能を成り立たせるものと定義され、物流機構、物流倉庫、物流機構/倉庫に用いられる機械/器具/装置(以下、「機械等」という。)もしくはかかる機械等をハードウェア及びソフトウェアの結合体としてとらえた機械等システム、のうちのいずれの態様をも包含することができる。
上記において、「自律移動ロボット」とは、自律移動機能を有し自動的な移動を行うと共に、作業者による作業の少なくとも一部を代替して行うロボットと定義され、自律移動ロボットが単独で作業を完結する態様の他、作業者と協働して作業を完結させる態様を含むことができる。
上記において、「自律移動機能」とは、第1の地点から第2の地点まで支障なく移動するのを可能にする機能と定義され、これには、近接ロボットとの通信機能、衝突回避機能、移動中の事故対応機能等の態様を含むことができ、これら各機能は、ロボットを構成する(公知の)ハードウェア要素と当該ハードウェア要素それぞれを起動・動作させるためのソフトウェアとの結合体として実現することができる。
上記において、「比較衡量部」とは、自律移動ロボットの自律移動機能が導出した移動経路を示す自律移動シナリオと、物流機構の機構指示とを比較衡量して最適な移動経路を示す結論移動シナリオを決定する機構と定義され、これには、少なくとも移動距離と移動経路の周辺状況を勘案する態様を含むことができ、これら各機能は、このアルゴリズムを実現するためのコンピュータを構成する(公知の)ハードウェア要素と当該ハードウェア要素それぞれを起動・動作させるためのソフトウェアとの結合体として実現することができる。
ここで、本発明の第2の態様として、上記第1の態様において、前記物流機構全体を管理する全体制御コンピュータによる制御と前記自律移動ロボットによる制御とが役割分担されており、前記全体制御コンピュータは、前記自律移動ロボットの状態、現在位置、積載位置及び目的地を管理・制御すると共に、入出庫品目情報及び入出庫数量情報を少なくとも有する入出庫情報に基づき稼働する1つ以上の前記自律移動ロボットを選出し、前記自律移動ロボットは、前記現在位置から前記積載位置まで、および前記積載位置から前記目的地まで、を自律的に移動し、前記全体制御コンピュータと、前記自律移動ロボットとは、物流倉庫全体の停止を防ぎ、稼働の融通性を担保する制御を行うことができるようにしてもよい。
ここで、物流機構が適用される「物流倉庫」とは、商品や商品を収容する収容容器等の各種物品を格納する倉庫と定義され、普通倉庫の他、冷蔵倉庫の態様を含むことができる。
上記において、「全体制御コンピュータによる制御と前記自律移動ロボットによる制御とが役割分担され」るとは、全体制御コンピュータは、自律移動ロボットが移動経路を選出するために必要な情報を管理し自律移動ロボットに提供し、他方、自律移動ロボット(もしくは当該自律移動ロボットに係るコンピュータ)は全体制御コンピュータから提供される情報に基づき自律的に移動経路を決定することで全体と各自立移動ロボットとが必要な機能/制御を分かちあって受け持ち、互いにバッティングしないようにすることと定義され、無線ネットワークにより情報を授受する態様の他、物流倉庫内の充電設備等の所定の箇所において自律移動ロボットが物流倉庫の所定の構成に接触することで情報を授受する態様を含むことができる。
上記において、「自律的に移動」するとは、自律移動ロボットが自律的に移動経路を決定し、決定した移動経路に沿い、他の機構から介在を受けることなく移動することと定義され、決定した移動経路を移動途中で修正して修正後の移動経路に沿い移動する態様を含むことができ、これら各機能は、自律移動ロボットを構成する(公知の)ハードウェア要素と当該ハードウェア要素それぞれを起動・動作させるためのソフトウェアとの結合体として実現することができる。
上記において、「稼働の融通性を担保する制御を行う」とは、物流倉庫の稼働を停止することなく修理やレイアウト変更、あるいは単位時間当たりの作業処理量を増減することができるよう制御を行うことと定義され、状況に合わせて投入する自律移動ロボットの数を増減させる態様を含むことができ、これら各機能は、ロボットもしくはロボットを制御するコンピュータを構成する(公知の)ハードウェア要素と当該ハードウェア要素それぞれを起動・動作させるためのソフトウェアとの結合体として実現することができる。
これにより、物流施設全体を稼働停止させることなく、故障やレイアウト変更、あるいは顧客要求に起因する需要変動、季節変動、時間変動などに柔軟かつダイナミックに対応することができることを特徴としてもよい。
すなわち、自律移動ロボット(ANR)の移動制御に際しては、ANRと全体制御コンピュータとの間で役割分担が行われる。全体制御コンピュータはANRの現在位置と状態を知ることができ、かつ物品を積載する積載位置と物品を降ろす目的地を管理する。全体制御コンピュータは、物品を積載しておらず、かつ積載予約のないANRを選択し、選択されたANRに対して積載位置、目的地と共に稼働指令を発する。
選択されたANRは受けた指令を基に、現在位置から積載位置に自律的に移動する。その後物品が積載されたら、目的地に自律的に移動する。この間、ANRは全体制御コンピュータからの制御を受けない。
すなわち、全体制御コンピュータは、最低限、非稼働ANRの現在位置、積載位置、目的地と、ANRの空き状態のみを管理すればよい。一方、ANRは移動経路を自ら(自律的に)決定し、その移動を制御することのみを行えばよい。
このような役割分担を持たせることにより、新たなANRが追加された場合には、全体制御コンピュータはそれに対する上記制御を追加するだけでよく、プログラムの変更は必要ない。一方、閑期に稼働するANRの台数を減じる場合には、ANRを全体制御コンピュータの制御対象から外すだけで良い。この変更にもプログラムの変更は不要である。このように全体制御コンピュータとANRの制御を分担させることにより、ANRの台数をダイナミックに増減させることが可能となる。
そして、ANRの増減を容易に行うことができるため、物流施設の短期間での構築、レイアウト変更の短期間での実現、及び容易な維持管理に対応する脆弱性の改善を行うことが可能となる。
本発明の第3の態様として、上記第2の態様において、前記自律移動ロボットは、移動経路上の状況を検知手段により検知し状況情報を生成し、前記状況情報に基づき移動経路を修正することを特徴としてもよい。
これにより、ANRはより適切な移動経路を選択できることを特徴としてもよい。
本発明の第4の態様として、上記第3の態様において、前記自律移動ロボットは、前記状況情報を他の前記自律移動ロボットと共有することを特徴としてもよい。
これにより、ANR同士が状況情報を共有し他機が検知した状況を自機のものとして活用し、より適切な移動経路を選択することができることを特徴としてもよい。
本発明の第5の態様として、上記第3又は第4の態様において、前記自律移動ロボットは、前記状況情報を前記全体制御コンピュータに送信し、前記全体制御コンピュータは、前記状況情報に基づき稼働する前記自律移動ロボットの数を調整することを特徴としてもよい。
これにより、物流施設内の状況に応じて最適な数のANRを稼働させることができることを特徴としてもよい。
本発明の第6の態様として、上記第3乃至第5の態様のうちのいずれかの態様において、前記自律移動ロボットは、前記状況情報に基づき移動経路上の状況を予測し予測情報を生成する予測情報生成部と、前記予測情報に基づき移動経路を修正する修正部とをさらに備えるようにしてもよい。
これにより、ANRは過去の状況に基づき状況を予測して移動経路を選択することができ、より迅速かつ効率的なシステム運用が可能となることを特徴としてもよい。
本発明の第7の態様として、上記第6の態様において、前記自律移動ロボットは、前記予測情報を他の前記自律移動ロボットと共有することを特徴としてもよい。
これにより、より高精度な状況予測が可能となり、更に迅速かつ効率的なシステム運用が可能となることを特徴としてもよい。
本発明の第8の態様として、上記第6もしくは第7の態様において、前記自律移動ロボットは、前記予測情報を前記全体制御コンピュータに送信し、前記全体制御コンピュータは、前記予測情報に基づき稼働する前記自律移動ロボットの数を調整することを特徴としてもよい。
これにより、物流施設内の現在の状況及び将来予測される状況に応じて最適な数のANRを稼働させることができ、より効率的なシステム運用が可能となることを特徴としてもよい。
本発明の第9の態様として、上記第1乃至第8の態様のうちのいずれかの態様において、前記物流機構は、商品を流通過程に載せるための物流センター/物流機構、メーカーで物品を生産するために部品を保管する倉庫、空港において手荷物の預け口や受取口と飛行機との間で前記手荷物を取り扱うシステム、郵便・宅配便を取り扱う倉庫、のうちの少なくともいずれか一つにおいて適用可能なようにしてもよい。
上記態様によれば、多品種、多数の物品の保管と仕分けが行われる様々な施設において本発明に係る物流機構を適用することが可能となる。
本発明の第10の態様として、上記第1乃至第9の態様のうちのいずれかの態様において、前記自律移動ロボットには、前記入荷部、前記保管部、前記仕分け部、前記出荷部の少なくともいずれかに関する作業、及び/もしくは前記作業に係る移動のために、棚、コンベヤ、仕分け台、牽引手段のうちの少なくともいずれか一つが設けられるようにしてもよい。
上記において、「棚」とは、自律移動ロボットのいずれかの部位(たとえば天端)に設置され、物流対象の物品を保持/保管する機能を持つ固定物と定義され、いわゆる仮置棚のような複数段積層された棚の態様等を含むことができる。
上記において、「コンベヤ」とは、自律移動ロボットのいずれかの部位(たとえば天端)に設置され、物流対象の物品を移動もしくは搬送する機能を備えた機械と定義され、たとえば天端上に小型コンベアがロボットに一体化された態様を含むことができる。
上記において、「仕分け台」とは、ロボットのいずれかの部位(たとえば天端)に設置され、出荷先別に商品をまとめて載置する機能を持つ固定物と定義され、平板状の仮置台の態様を含むことができる。
上記において、「牽引手段」とは、ロボットのいずれかの部位(たとえば下部)に設置され、ロボット自体を外部から動かすことのできる機能を備えた機械/器具/装置(以下、「機械等」という。)もしくはかかる機械等をハードウェア及びソフトウェアの結合体としてとらえた機械等システムとして定義され、これには、たとえば、6輪台車(6輪に限られず、任意の整数台数の台車であってよい)によって実現される態様、別個の牽引装置からの引っかかり部によって実現される態様、等をも包含することができる。
上記態様によれば、自律移動ロボットにより従来の物流倉庫の各構成が担っていた機能を代替することができる。
本発明の第11の態様として、上記第1乃至第10の態様のうちのいずれかの態様において、前記物流機構には、少なくとも棚、コンベヤ、仕分け台のうちの少なくともいずれか一つが含まれるようにしてもよい。
上記において、「棚」とは、たとえば保管スペース(保管庫であってもよい)に設置され、物流対象の物品を保持/保管する機能を持つ固定物と定義され、いわゆる複数段積層された棚の態様等を含むことができる。
上記において、「コンベヤ」とは、物流対象の物品を移動もしくは搬送する機能を備えた機械と定義され、たとえば入庫部と保管部との連接箇所、保管部と仕分け部との連接箇所、仕分け部と出荷部との連接箇所等のいずれかの場所に設置される搬送機構(たとえば、ベルト式、ローラ式等)の態様を含むことができる。
上記において、「仕分け台」とは、出荷先別に商品をまとめて載置する機能を持つ固定物と定義され、コンベヤに併設された平板状の仮置台の態様を含むことができる。
上記態様によれば、従来の物流機構の構成を一部保存しつつ、他の構成について自律移動ロボットにより代替することができ、柔軟な運用を行うことができる。
本発明の各態様によれば、物流施設全体を稼働停止させることなく、故障やレイアウト変更、あるいは顧客要求に起因する需要変動、季節変動、時間変動などに柔軟かつダイナミックに対応することが可能となる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る物流機構1の全体構成を示す一実施例としての模式図である。図1に示すように、物流機構1は、入庫された物品を保管する保管部としての倉庫部2と、出荷部3と、倉庫部2及び出荷部3内を移動可能な自律移動ロボット(ANR)4と、倉庫部2の在庫管理とANR4の駆動制御を行う制御部としての全体制御コンピュータ5を備えて構成されている。なお、図1には示していないが、物流機構1は更に、物品が入庫される入庫部と、倉庫部2に保管された物品を目的に従って仕分けする仕分部とを備えている。
倉庫部2は、複数種類の商品Gと、商品Gを収容可能な出荷容器Bの格納が行われる倉庫であり、上下に複数層の平棚部211が積層された棚21により構成されている。図1においては倉庫部2として1つの棚21しか図示されていないが、実際には倉庫部2は、複数の棚21が所定の間隔を開けて整列して形成されている。
出荷容器Bとして、段ボール箱、樹脂製の箱、再利用可能な樹脂製の組み立て式ラック箱、袋、コンテナ又はトレイのうち少なくとも1つが用いられ、また、サイズも1種類に限られず、種々のサイズの出荷容器Bを用いることができる。
倉庫部2の平棚部211には、商品G及び出荷容器Bの出入庫を検知するセンサ(不図示)が設けられている。このセンサは商品Gや出荷容器Bの出入庫を検知すると、当該検知情報を全体制御コンピュータ5に送信する。
出荷部3は、商品Gを収容した出荷容器Bが方面別のトラックバースに仕分けされ、パレットP上に所定の態様で集積され、トラックTに積み込まれるエリアである。
ANR4は、倉庫部2及び出荷部内3を移動可能であり、商品G及び出荷容器Bを保持可能である自律移動手段である。図2は、図1の物流機構に用いられるANR4を示す一実施例としての模式図である。図2に示すように、ANR4は、駆動輪41と、昇降装置42と、ステージ可動手段43と、ステージ44と、アーム45と、バッテリー46と、通信部47と、センサ48と、制御部49と、記憶部490とを備えて構成されている。
駆動輪41は、ANR4の水平方向の移動を可能にする、モータ(不図示)により駆動される車輪である。
昇降装置42は、本実施形態においてはANR4の前面部と後面部に設けられた一対の車輪駆動機構である。一対の棚21の側面にそれぞれ対向して設けられたレール(不図示)間に、ANR4の前後に設けられた昇降装置42をそれぞれ当接して車輪を回転駆動することで、ANR4が垂直方向に移動する。なお、これに限らず、ANR4の倉庫部2内の上下移動を実現することができる任意の他の機構を採用してもよい。ANR4は昇降装置42を備えていていなくてもよい。
ステージ可動手段43は、商品Gや出荷容器Bを載置するステージ44を上下動させたり傾斜させたりする手段である。ANRはステージ可動手段43を備えていていなくてもよい。
ステージ44は、商品G、出荷容器B及びパレットPが載置されると共に、アーム45が設けられる基台となるトレイ状の部材である。
アーム45は、商品Gや出荷容器Bを把持可能であり倉庫部2の棚21からこれらを取り出すことができると共に、商品Gを収容した出荷容器BをパレットP上に載置することができ、更にこのパレットPを保持可能である一対の腕状移載手段である。 アーム45は、備えていていなくてもよい。
バッテリー46は、駆動輪41、昇降装置42、ステージ可動手段43、通信部47、センサ48、制御部49及び記憶部490に動力を供給する、充電可能な二次電池である。バッテリー46の充電は、例えば物流機構1内の任意の箇所に設けられた充電設備(不図示)にANR4が接近して行われる。充電設備による充電は接触方式又は非接触方式により行われてもよい。
通信部47は、全体制御コンピュータ5や他のANR4と無線通信を行うための機構であり、任意の通信手段を採用することができる。
センサ48は、ANR4の周辺状況を検知する手段であり、例えばANR4の移動経路上において所定の距離内に障害物がある場合にこれを検知することができる。センサ48により検知された周辺状況を示す状況情報は、記憶部490に記憶される。
制御部49は、ANR4全体を制御するCPU(Central Processing Unit)と、CPU上で動作する制御プログラム等を格納したROM(Read−only Memory)と、各種データを一時的に格納するためのRAM(Random Access Memory)(何れも不図示)を備えて構成されている。
図3は、図2のANR4に用いられる制御部49の一実施例としての機能ブロック図である。図3に示すように、制御部49は、CPUがROMに格納されている制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、移動距離算出部491、状況情報抽出部492、予測情報生成部493、動力残量算出部494、予測情報抽出部495、移動経路決定部496、ステージ動作部497、アーム動作部498、昇降装置動作部499、駆動輪動作部4991及び受領部4493として機能する。
移動距離算出部491は、ANR4の現在位置を示す現在位置情報と、全体制御コンピュータ5から送信される積載位置を示す積載位置情報及び目的地を示す目的地情報とに基づき、移動距離を算出する。現在位置情報は、本実施形態においてはANR4が図示しないGPS(Global Positioning System)や床面に設置されたグリッド等を用いて自律的に判断することを想定しているが、本発明においてはこれに限らず、任意の位置特定手段を用いて自律的に判断する他、全体制御コンピュータ5が図示しないレーダ等を用いて各ANR4の位置情報を把握、管理し、全体制御コンピュータ5から各ANR4にそれぞれの位置情報を通知する態様を採用することができる。
状況情報抽出部492は、センサ48により検出され記憶部490に記憶されている、ANR4の移動経路上にある充電設備等の設備、故障して稼働を停止しているANR4、障害物等、移動経路周辺の状況情報を記憶部490から抽出する。
予測情報生成部493は、記憶部490に記憶されている過去の状況情報に基づき移動経路上の状況を予測し予測情報を生成し、記憶部490に記憶する。例えば、状況情報が経時的に複数存在し、それぞれの状況情報が何れも所定の区域内にフォークリフトが存在していることを示す場合、予測情報生成部493は、新たな移動経路の作成時に当該区域内にまだフォークリフトが存在していることを予測し、予測情報を生成する。この予測情報は移動経路決定部496による移動経路の決定の際に活用される。
動力残量算出部494は、バッテリー46の残存電力を算出する。
予測情報抽出部495は、記憶部490に記憶されている予測情報を呼び出す。
移動経路決定部496は、候補となる経路毎の目的地までの移動距離、経路毎の状況情報、経路毎の予測情報及び自機の動力残量に基づき現在位置から積載位置までおよび積載位置から目的地まで自律的に移動するための自律移動シナリオ、すなわち移動経路を示す情報を作成する。そして、移動経路決定部496は、物流機構1の全体制御コンピュータ5から送信される、移動すべき1つ以上の場所の位置、及び当該位置において行う動作指示を示す情報(機構指示)と自律移動シナリオとを比較衡量して、最終的な移動経路を示す結論移動シナリオを決定する。なお、移動経路決定部496は、移動経路の状況や、予測情報生成部493が生成した予測情報に基づき移動経路を修正する修正部としても機能することができる。
ステージ動作部497は、全体制御コンピュータ5から送信される、目的地において行う動作を示す動作情報に基づきステージ可動手段43の動作を制御する。
アーム動作部498は、全体制御コンピュータ5から送信される動作情報に基づきアーム45の動作を制御する。すなわち、アーム動作部498は、動作情報に基づき、商品G及び出荷容器Bを倉庫部2から出入庫したり、出荷容器B内に商品Gを収容したりするアーム45の動作を制御する。
昇降装置動作部499は、倉庫部2内におけるANR4の上下方向の動作量を所定の方向に目的の距離だけ行えるよう、昇降装置42の動作を制御する。
駆動輪動作部4991は、倉庫部2内及び出荷部3内におけるANR4の水平方向の動作を所定の方向に目的の距離だけ行えるよう、駆動輪41の動作を制御する。
状態情報生成部4992は、ANR4の現在位置、物品の積載の有無、積載予定の有無、動力残量算出部494に算出された残存電力、及び故障の有無を示す状態情報を生成し、全体制御コンピュータ5に送信する。全体制御コンピュータ5が受信した状態情報は、記憶部50に記憶される。
受領部4493は、物流機構1の全体制御コンピュータ5から送信される、移動すべき1つ以上の場所の位置、及び当該位置において行う動作指示を示す機構指示を受信する。
図2に戻り、記憶部490は、各種データを記憶するための記憶手段である。例えば記憶部490には、ANR4がセンサ48により検知した状況情報や、予測情報生成部494により生成された予測情報等が記憶される。
図1に戻り、全体制御コンピュータ5は、無線ネットワークNを介して平棚部211に設けられたセンサ(不図示)やANR4と接続され、平棚部211への商品G及び出荷容器Bの入出庫を把握して在庫管理を行うと共に、稼働するANR4を選出し、選出されたANR4に対して移動すべき1つ以上の場所の位置、及び当該位置において行う動作指示を示す情報である機構指示を送信する。
全体制御コンピュータ5は、CPU(Central Processing Unit)と、CPU上で動作する制御プログラム等を格納したROM(Read−only Memory)と、各種データを一時的に格納するためのRAM(Random Access Memory)(何れも不図示)を備えて構成されている。
図4は、図1の物流機構1に用いられる全体制御コンピュータ5の一実施例としての機能ブロック図である。図4に示すように、全体制御コンピュータ5は、CPUがROMに格納されている制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、出入庫情報管理部51、ロボット選出部52、位置情報生成部53、動作情報生成部54及び処理状況判断部55として機能する。
出入庫情報管理部51は、平棚部211に設けられた各センサから平棚部211に入出庫する商品Gや出荷容器Bの品目を示す入出庫品目及び品目毎の入出庫数量を示す入出庫情報を収集し、記憶部50に記憶する。また、出入庫情報管理部51は、商品Gや出荷容器Bの入庫時には、既存の入出庫情報に基づき、入庫した商品Gや出荷容器Bをそれぞれ倉庫部2のどの空きスペースにどれだけの数量を格納すればよいかを判断する。更に、出入庫情報管理部51は、商品Gや出荷容器Bの出庫時には、既存の入出庫情報に基づき、商品Gや出荷容器Bを倉庫部2のどの平棚部211からどれだけの数量を取り出せばよいかを判断する。
ロボット選出部52は、各ANR4の現在位置、状態情報及び入出庫情報に基づき、商品Gや出荷容器Bの出入庫作業に加わる1台以上のANR4を選出する。また、ロボット選出部52は、状況情報及び予測情報に基づき、出入荷作業に加わるANR4の台数を調整する。
位置情報生成部53は、出荷指示情報の処理に加わるANR4に対して送信される、ANR4の移動先となる移載位置及び目的地を示す1つ以上の目的地情報を生成する。目的地は、具体的には出入庫情報に含まれる、商品Gや出荷容器Bを格納する棚21の所定の箇所や、出庫した商品Gや出荷容器Bを載置する所定の箇所、そしてパレットPが積み込まれるトラックTがあるトラックバースの位置等である。
動作情報生成部54は、ANR4に対して送信される、各移載位置及び目的地において行う動作を示す動作情報を生成する。動作は、例えば所定の平棚部211においてどの商品Gや出荷容器Bをどれだけの数量出入庫するかを示す情報や、出荷容器BをどのパレットPにどのように載置するか等である。
処理状況判断部55は、入庫作業や出庫作業の処理状況を判断する。処理状況は、具体的には入庫した商品Gや出荷容器Bの入庫作業の達成状況、出荷指示情報に含まれる商品Gの出庫作業の達成状況、投入した各ANR4の稼働状況が含まれている
次に、上述した構成を備える物流機構1の具体的な運用について説明する。ANR4によって、入荷部、保管部、仕分け部、出荷部の少なくともいずれかに関する作業、及び/もしくは作業に係る移動が少なくとも一つ以上実施されるが、この様子を以下に詳述する。
<入庫>
まず、倉庫部2に対する商品G及び出荷容器Bの入庫について説明する。
商品Gや出荷容器Bが図示しない荷受部に到着すると、全体制御コンピュータ5の出入庫情報管理部51は、当該入庫品目及び入庫数量に関する情報(入庫情報)と、倉庫部2の格納状況を示す格納情報に基づき、入庫した商品Gや出荷容器Bがどこにあり、それぞれ倉庫部2のどの空きスペースにどれだけの数量を格納すればよいかを判断する。
そして、ロボット選出部52は、入庫動作を行わせるANR4の選定を、各ANR4の位置情報及び状態情報に基づき行う。具体的には、ロボット選出部52は、商品Gや出荷容器Bのピックアップを行う載置位置から近い順に、現在特定の作業を行っておらず、また特定の作業予約も行われていない1台以上のANR4を選出してもよい。このとき、候補となるANR4の状態情報が、電池切れや故障等のトラブルが生じていて運用不可であることを示す場合には、ロボット選出部52は、当該ANR4の次に載置位置に近く、特定の作業を行っておらず、特定の作業予約も行われていないANR4を代替候補として選出してもよい。
また、位置情報生成部53及び動作情報生成部54は、目的地情報及び動作情報を生成し、選出されたANR4に送信する。
具体的には、位置情報生成部53は、各ANR4に対して、移動すべき商品Gや出荷容器Bが置かれている積載位置と、これらをどの平棚部211に収容すればよいか(目的地)を示す情報を目的地情報として個々のANR4に送信する。
また、動作情報生成部54は、ANR4が一度に運搬可能な分量の最大量を超えない範囲の運搬量となるよう、どのスタート地点でどれだけの商品Gや出荷容器Bを収集して、どの目的地にどれだけ入庫するかを示す情報を動作情報として個々のANR4に送信する。
次に、目的地情報及び動作情報を受信したANR4は、これらの情報に基づき積載位置に移動し、指示された種類及び数量だけ、商品Gや出荷容器Bをピックアップして、目的地に移動する。
このとき、ANR4の移動経路決定部496は、GPSにより取得した自機の現在位置情報と、全体制御コンピュータ5から受信した機構指示に含まれる目的地情報に基づき、目的地への移動経路を自律的に判断する。
具体的には、移動経路決定部496は、候補となる経路毎の目的地までの移動距離を算出し、原則として移動距離が最短となる経路(最短経路)を移動経路とするが、ここに経路毎の周辺状況、他のANR4の稼働状況及び自機の動力残量を加味して移動経路を変更することもある。
例えば、ANR4が最短経路上に一時的に障害物となる物体(設備工事用の機器等)が置かれていて通行不能であることをセンサ48により検知した場合には、移動経路決定部496は、当該経路を移動経路の候補から除外し、次に移動距離が短い経路を代替経路として選出する。
また、他のANR4が密集していて経路が通行不能であることをセンサ48により検知した場合にも、移動経路決定部496は、当該経路を移動経路の候補から除外し、次に移動距離が短い経路を代替経路として選出する。
更に、ANR4のバッテリー46の動力残量が足りず抽出された経路上を連続して移動することが困難である場合には、移動経路決定部496は、移動中の充電が可能となるよう、充電設備が設けられている他の移動経路を選択する。
また、移動経路決定部496は、これら以外の要素に加えて、記憶部490に記憶されている、予測情報生成部493が生成した予測情報に基づき移動経路を決定する。これにより、ANR4は過去の状況を学習し、学習した内容に基づき更に最適な移動経路を判断することが可能となる。
そして移動経路が決定すると、ANR4は当該経路に沿い移動し、積載位置で商品Gや出荷容器Bをピックアップすると共に、目的地で当該商品Gや出荷容器Bの入庫を行う。
また、処理状況判断部55は、入庫情報と、各ANR4の稼働状況とに基づき、入庫作業の処理状況を判断する。そして、処理状況判断部55が、予め定められている、物量に応じた入庫完了目標時間と比較して入庫完了が遅れそうであると判断した場合には、ロボット選出部52は、入庫作業に追加投入可能なANR4を選出し、入庫作業に追加投入する。
このとき、位置情報生成部53と動作情報生成部54は、追加投入されるANR4に対して、新たな目的地情報と動作情報を生成、送信すると共に、既に投入されているANR4に対しても、修正した新たな目的地情報及び動作情報を生成、送信する。
これにより、入庫作業の進捗状況に応じて投入するANR4の台数や作業内容を臨機応変に変更することができる。
また、全体制御コンピュータ5は、ANR4が生成した状況情報に基づき、入庫作業に従事するANR4の数を調整する。例えば、ANR4が所定のエリアについてANR4による渋滞の発生や障害物の存在を検知し状況情報を生成し、この状況情報に基づき全体制御コンピュータ5の処理状況判断部55が、当初投入した台数のANR4を稼働させ続けることが困難であると判断した場合には、ロボット選出部52は、入庫作業に投入されるANR4の台数を減じる処理を行う。
この稼働ANR4の台数の削減は、例えば商品Gや出荷容器Bを目的地に移動させたANR4から順に、適切な稼働台数になるまで休止させていくことで行われてもよい。なお、休止するANR4は、物流施設内の充電設備に移動することが好ましい。
このように、状況に応じて稼働するANR4の台数を調整することにより、物流施設内の状況に応じて最適な数のANRを稼働させることができる。
また、ANR4が生成した予測情報に基づき、全体制御コンピュータ5は、入庫作業に従事するANR4の数を調整する。例えば、ANR4が所定のエリアにおいて障害物が存続し続けることを予測する予測情報を生成し、この予測情報に基づき全体制御コンピュータ5の処理状況判断部55が、当初投入を予定していた台数のANR4を稼働させ続けることが困難であると判断した場合には、ロボット選出部52は、作業に投入されるANR4の台数を減じる処理を行う。
このように、状況予測に基づき稼働するANR4の台数を調整することにより、物流施設内の現在の状況及び将来予測される状況に応じて最適な数のANRを稼働させることができ、より効率的なシステム運用が可能となる。
<出庫>
次に、倉庫部2からの商品G及び出荷容器Bの出庫について説明する。
所定の商品Gについての出荷オーダーがあった場合、すなわち、出荷する商品Gの種類、数量及び宛先を示す出荷指示情報を受け付けた場合、全体制御コンピュータ5の位置情報生成部53は、出入庫情報管理部51により収集された商品Gや出荷容器Bの格納情報に基づき、当該所定の商品Gや出荷容器Bを取り出す1つ以上の平棚部211を移載位置とすると共に、更にピックアップした商品Gや出荷容器Bを降ろす地点を目的地として決定し、目的地情報として個々のANR4に送信する。
次に、動作情報生成部54は、ANR4が一度に運搬可能な分量の最大量を超えない範囲の運搬量となるよう、どの移載位置でどれだけの商品Gや出荷容器Bを収集して、どの目的地に載置するかを示す情報を動作情報として個々のANR4に送信する。
そして、ロボット選出部52は、特定の作業を行っていないANR4のうち、スタート地点に最も近いANR4を選出する。また、候補となるANR4に電池切れや故障等のトラブルが生じていて運用不可である場合には、ロボット選出部52は、特定の作業を行っていないANR4のうち、次にスタート地点に近いANR4を代替候補として選出する。
次に、目的地情報及び動作情報を受信したANR4は、これらの情報に基づき移載位置を巡りつつ、指示された種類及び数量の商品Gや出荷容器Bのピックアップを行い、出荷容器B内に商品Gを収容していき、目的地へと移動していく。
このとき、ANR4の移動経路決定部496は、GPSにより取得した自機の現在位置情報と、全体制御コンピュータ5から受信した機構指示に含まれる目的地情報に基づき、目的地への移動経路を自律的に判断する。移動経路の具体的な決定方法は、上述した入庫時の動作と同様であるためここではその詳細な説明は省略する。
そして、ANR4は移動経路に沿い移動し、商品Gや出荷容器Bのピッキングを順次行い、指示された全ての物品のピッキングが完了すると、目的地に移動し、ピッキングした物品を降ろす。
ここでいう目的地としては、例えば所定の位置にあるパレットPが挙げられる。この場合、宛先毎に、最初にANR4により出荷容器Bが運ばれパレットP上に降ろされる。そして、次に、このパレットP上の出荷容器B内に、他のANR4によりピッキングされた商品Gが次々に投入される。こうして商品Gのピッキングが行われる。
そして、予定されていた全ての出荷容器Bの載置が完了したパレットPは、ANR4により搬送され、トラックTに積み込まれる。パレットPのトラックTへの積み込みは、単独のAMR4が行ってもよく、あるいは複数台のANR4が協働して行ってもよい。また、パレットPのトラックTへの積み込みは、フォークリフト等の運搬手段を用いて作業員により行われてもよい。
また、処理状況判断部55は、出荷指示情報と、各ANR4の稼働情報とに基づき、出荷作業の処理状況を判断する。そして、処理状況判断部55が、予め定められている、物量に応じた出荷完了目標時間と比較して出荷完了が遅れそうであると判断した場合には、ロボット選出部52は、所定の作業を行っておらず、出荷作業に従事可能なANR4を選出し、出荷作業に追加投入する。
このとき、位置情報生成部53と動作情報生成部54は、追加投入されるANR4に対して、新たな目的地情報と動作情報を生成、送信すると共に、既に投入されているANR4に対しても、修正した新たな目的地情報及び動作情報を生成、送信する。
これにより、出荷作業の進捗状況に応じて投入するANR4の台数や作業内容を臨機応変に変更することができる。
また、全体制御コンピュータ5は、ANR4が生成した状況情報に基づき、出庫作業に従事するANR4の数を調整する。例えば、ANR4が所定のエリアについてANR4による渋滞の発生や障害物の存在を検知し状況情報を生成し、この状況情報に基づき全体制御コンピュータ5の処理状況判断部55が、当初投入した台数のANR4を稼働させ続けることが困難であると判断した場合には、ロボット選出部52は、作業に投入されるANR4の台数を減じる処理を行う。
この稼働ANR4の台数の削減は、上述した入庫作業の際に説明したものと同様であるためここでは詳細な説明は省略する。
このように、状況に応じて稼働するANR4の台数を調整することにより、物流施設内の状況に応じて最適な数のANRを稼働させることができる。
また、ANR4が生成した予測情報に基づき、全体制御コンピュータ5は、稼働するANR4の数を調整する。この予測情報に基づくANR4の稼働台数の調整も、上述した入庫作業の際に説明したものと同様であるためここでは詳細な説明は省略する。
このように、状況予測に基づき稼働するANR4の台数を調整することにより、物流施設内の現在の状況及び将来予測される状況に応じて最適な数のANRを稼働させることができ、より効率的なシステム運用が可能となる。
なお、出荷指示情報は、出荷希望日を示す出荷希望日情報を含んでいてもよい。この場合、ロボット選出部52は、出荷希望日情報に基づき、出荷希望日が早い出荷指示情報に対して、ANR4を優先的に投入してもよい。これにより、出荷希望日に応じて適切に出荷処理を行うことができる。
このように、本発明に係る物流機構1によると、物流施設全体を稼働停止させることなく、故障やレイアウト変更、あるいは顧客要求に起因する需要変動、季節変動、時間変動などに柔軟かつダイナミックに対応することができる。
すなわち、ANR4の移動制御に際しては、ANR4と全体制御コンピュータとの間で役割分担が行われる。全体制御コンピュータ5はANR4の現在位置と状態を知ることができ、かつ物品を積載する積載位置と物品を降ろす目的地を管理する。全体制御コンピュータ5は、物品を積載しておらず、かつ積載予約のないANR4を選択し、選択されたANR4に対して積載位置、目的地と共に稼働指令を発する。
選択されたANR4は受けた指令を基に、現在位置から積載位置に自律的に移動する。その後物品が積載されたら、目的地に自律的に移動する。この間、ANR4は全体制御コンピュータ5からの制御を受けない。
すなわち、全体制御コンピュータ5は、最低限、非稼働ANR4の現在位置、積載位置、目的地と、ANR4の空き状態のみを管理すればよい。一方、ANR4は移動経路を自ら(自律的に)決定し、その移動を制御することのみを行えばよい。
このような役割分担を持たせることにより、新たなANR4が追加された場合には、全体制御コンピュータ5はそれに対する上記制御を追加するだけでよく、プログラムの変更は必要ない。一方、閑期に稼働するANR4の台数を減じる場合には、ANR4を全体制御コンピュータ5の制御対象から外すだけで良い。この変更にもプログラムの変更は不要である。このように全体制御コンピュータ5とANR4の制御を分担させることにより、ANR4の台数をダイナミックに増減させることが可能となる。
そして、ANR4の増減を容易に行うことができるため、物流施設の短期間での構築、レイアウト変更の短期間での実現、及び容易な維持管理に対応する脆弱性の改善を行うことが可能となる。
更に、ANR4は、移動経路を、候補となる経路毎の目的地までの移動距離、経路毎の周辺状況、他のANR4の稼働状況及び自機の動力残量に基づき判断するため、状況毎に最適な移動経路を選択することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限らず、種々の変更を加えることができる。
例えば、ANR4は、自機が保有する状況情報を他のANR4に送信することで、状況情報を共有することが可能であってもよい。これにより、ANR4同士が状況情報を共有し他機が検知した状況を自機のものとして活用し、より適切な移動経路を選択することができる。
また、ANR4は、自機が保有する予測情報を他のANR4に送信することで、予測情報を共有することが可能であってもよい。これにより、より高精度な状況予測が可能となり、更に迅速かつ効率的なシステム運用が可能となる。
また、上述した実施形態においてはANR4に昇降装置42を設けることで積層された平棚部211に対する商品Gや出荷容器Bの出入庫を可能としているが、本発明においてはこれに限らず、ANR4は、上下の平棚部211のそれぞれに対する商品G及び出荷容器Bの格納及び取り出しが可能なフォークリフト手段を有する態様であってもよい。このような態様であっても、倉庫部2に特段の出入庫手段を用いることなく、ANR4により商品や出荷容器の自動的な出入庫が可能となる。
また、上述した実施形態においては、単一の種類のANR4が用いられているが、本発明においてはこれに限らず、例えばANR4として、倉庫部2内を移動して商品G及び出荷容器Bの出入庫を行う小型ロボットと、小型ロボットから商品G及び出荷容器Bを受け取り出荷先毎に商品Gを出荷容器Bに収容して出荷部3内を移動する大型ロボットを用いてもよい。これにより、倉庫部内は小型で移動しやすい、出入庫作業に特化した小型ロボットを用い、出荷容器Bへの商品の収容及び出荷部3における仕分けは出力に勝る大型ロボットを用いることで、より効率的なシステム運用が可能になる。
また、上述した実施形態においては、作業はANR4のみにより行うことを想定していたが、本発明においてはこれに限らず、作業者と協働して作業を行ってもよい。
例えば、ANR4は、倉庫部2において出荷する商品G又は出荷容器Bが格納されている場所を指示するレーザー指示器を有し、作業者はレーザー指示器により示された商品Gをピッキングするという態様を採用してもよい。これにより、ピッキングは作業者が行うと共に、商品Gや出荷容器Bの運搬はANR4が行うという分業がなされ、作業者の作業負担を軽減することができる。
また、ANR4は、倉庫部2において出荷する商品G又は出荷容器Bが格納されている場所を表示する、ディスプレイ等の表示部を有し、作業者は表示部に表示されている情報に基づき商品をピッキングするという態様を採用してもよい。これにより、ピッキングは作業者が行うと共に、ANR4は商品Gや出荷容器Bの運搬を行うという分業がなされ、作業者の作業負担を軽減することができる。
また、本発明に係る物流機構1は、商品を流通過程に載せるための物流センターもしくは物流システムに限らず、メーカーで物品を生産するために部品を保管する倉庫、空港において手荷物の預け口や受取口と飛行機との間で手荷物を取り扱うシステム、郵便・宅配便を取り扱う倉庫等にも適用可能である。これにより、多品種、多数の物品の保管と仕分けが行われる様々な施設において本発明に係る物流機構を適用することが可能となる。
また、本発明に係る物流機構に用いられるANR4には、入荷部、保管部、仕分け部、出荷部の少なくともいずれかに関する作業、及び/もしくは作業に係る移動のために、棚、コンベヤ、仕分け台、牽引手段のうちの少なくともいずれか一つが設けられていてもよい。これにより、従来の物流倉庫の各構成が担っていた機能をANR4により代替することができる。
また、本発明に係る物流機構1には、少なくとも棚、コンベヤ、仕分け台のうちの少なくともいずれか一つが含まれていてもよい。従来の物流機構の構成を一部保存しつつ、他の構成について自律移動ロボットにより代替することができ、柔軟な運用を行うことができる。