JP2022001314A - 安全器 - Google Patents

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Abstract

【課題】高所等での作業において作業性及び安全性に優れる、安全器2の提供。【解決手段】安全器2は、枠体4と、枠体4に設置された、親綱Rに係合しうる第一及び第二の支承ローラ6、8と、枠体4に回動可能に枢支された、第一及び第二の押圧リンク10、12と、各押圧リンクの一端側に連結された連結具14とを備えており、各押圧リンクは、その他端側に親綱押圧部34、36を有しており、連結具14に引っ張り力が作用したとき、第一押圧リンク10が、その親綱押圧部34が親綱Rを第一支承ローラ6に押圧する方向に回動するとともに、第二押圧リンク12が、その親綱押圧部36が親綱Rを第二支承ローラ8に押圧する方向に回動し、上記引っ張り力が解除されたとき、両押圧リンク10、12が、それぞれの親綱押圧部34、36が親綱から離間する方向に回動するように構成されている。【選択図】図3

Description

本発明は、安全器に関する。詳細には、本発明は、高所作業を行う作業者の墜落を防止するための安全器に関するものであり、さらに詳細には、作業者をいわゆる親綱に連結するための安全器に関するものである。
建築現場、電線工事等において、高所で作業を行う作業者は、墜落防止の目的で安全器を使用することが多い。この安全器は、高所の作業範囲内に張り渡された綱(張り綱、親綱等とも呼ばれる)に、作業者の身体を可動状態で連結するものである。安全器は、例えば、ロープ(命綱、子綱等と呼ばれる)によって作業者の身体に取り付けられる。作業者は、たとえ高台から足を踏み外した場合でも、子綱、安全器及び親綱を介して吊り下げられ、墜落が防止される。また、作業者は、安全器により、親綱に対して可動状態で連結されているため、通常は親綱に沿って移動が可能である。しかし、作業者が足を踏み外して落下した場合等において、この安全器に大きな荷重が負荷されたとき、安全器は親綱を把持する機能を発揮する。
このような安全器の一例が、実開昭49−28698号公報に記載されている。この安全器は、摺動板8に大きな引っ張り荷重が負荷されると、溝車4と爪金10とで、張り綱aを把持する。しかし、1個の溝車4に対して、2本の爪金10が共に下方から略斜め横方向に押圧するように張り綱を把持している。この構成では、効率よく大きな把持力を発生させることは期待できないと考えられる。
また、この安全器では、溝車が1個しか設置されていないため、水平に張られた親綱に対して略垂直な姿勢を保つことが難しい。作業者が移動する際、安全器が親綱の展張方向である水平方向に向けて大きく傾くので、作業者はスムーズに移動することが困難となるおそれがある。また、安全器は実質的に一点で親綱に吊り下げられることになるため、この支持点を通る鉛直線回りに捻られやすくなる。そのため、作業者はスムーズに移動することが困難となるおそれがある。
また、安全器の他の例が、実公昭64−4263号公報に記載されている。この安全器では、その2個の摺動ローラ21が互いに大きく離間している。回動リンク5、6の押圧部材4は、金属製送電線の両摺動ローラ21間の部位を押すことになる。この構成では、押圧部材4と保持体3の天井とで送電線を把持することになる。この安全器の把持対象は、剛性の高い金属製送電線であるため、屈曲することは殆ど無い。このため、作業者はスムーズに移動することができる。しかし、この安全器を、比較的緩い張力で張られた繊維ロープ製の親綱に対して用いた場合には、効率よく大きな把持力を発生させることは期待できないと考えられる。さらに、通常の作業者の移動に対して抵抗が発生しうる。
実開昭49−28698号公報 実公昭64−4263号公報
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、親綱等の把持対象を把持する能力に優れており、且つ、把持対象に沿った作業者のスムーズな移動を阻害しない安全器の提供をその目的とするものである。
本発明に係る安全器は、
親綱に可動状態で連結されうる安全器であって、
枠体と、
この枠体に設置された、親綱に係合しうる第一支承ローラ及び第二支承ローラと、
上記枠体に回動可能に枢支された、第一押圧リンク及び第二押圧リンクと、
各押圧リンクの一端側に連結された連結具とを備えており、
各押圧リンクは、その他端側に親綱押圧部を有しており、
上記連結具に引っ張り力が作用したとき、上記第一押圧リンクが、その親綱押圧部が親綱を対応する第一支承ローラに押圧する方向に回動するとともに、上記第二押圧リンクが、その親綱押圧部が親綱を対応する第二支承ローラに押圧する方向に回動し、上記引っ張り力が解除されたとき、両押圧リンクが、それぞれの親綱押圧部が親綱から離間する方向に回動するように構成されている。
好ましくは、対応する支承ローラに対して親綱を押圧している親綱押圧部の位置である押圧位置が、対応する支承ローラの中心位置に関して、他方の支承ローラの位置とは反対側に位置するように構成され、
対応する支承ローラに対して親綱を押圧している親綱押圧部の押圧方向が、他方の支承ローラに向いた方向の成分を含むように構成されている。
好ましくは、上記各支承ローラの外周面に、その周方向に沿って、親綱が係合しうる係合溝が形成されており、
上記各押圧リンクの回動に伴う親綱押圧部における押圧点の移動軌跡が、対応する支承ローラの溝径部の範囲内を通る円弧状を呈しており、
上記押圧点は、押圧リンクの回動に伴い、親綱押圧部の他の部位に較べて早く親綱を押圧する部位である。
さらに好ましくは、上記各支承ローラの外周面に、その周方向に沿って、親綱が係合しうる係合溝が形成されており、
上記各押圧リンクの回動に伴って、上記押圧位置にある親綱押圧部の押圧点が押圧する方向が、対応する支承ローラの溝径部の範囲内を通るようにされており、
上記押圧する方向は、上記押圧点を通るとともに、押圧リンクの枢支点と上記押圧点とを結ぶ直線に垂直な方向であり、
上記押圧点は、押圧リンクの回動に伴い、親綱押圧部の他の部位に較べて早く親綱を押圧する部位である。
好ましくは、上記枠体が、前部支持部材と後部支持部材と蓋部材とを備えており、
上記第一支承ローラが第一支軸に枢支され、第二支承ローラが第二支軸に枢支され、第一押圧リンク及び第二押圧リンクがともに第三支軸に枢支されており、
上記第一支軸及び第二支軸が前部支持部材と後部支持部材との間に掛け渡されており、
上記第一支軸、第二支軸及び第三支軸のうちのいずれかの先端に、上記蓋部材が、その開位置と閉位置との間を回転可能に枢支されており、
上記蓋部材が開位置にあるときには、親綱が上記両支承ローラに着脱可能にされ、蓋部材が閉位置にあるときには、親綱が両支承ローラに着脱不能にされるように構成されている。
さらに好ましくは、上記蓋部材が、上記第一支軸及び第二支軸のうちのいずれか一方の先端に回転可能に枢支されており、
この蓋部材には、第一支軸及び第二支軸のうちの他方の先端が相対移動可能に係合しうる案内用長孔と、第三支軸に係止しうる係止用切欠部とが形成されており、
上記案内用長孔が、蓋部材の閉位置から開位置に至るまでの角度範囲に相当する円孔状を呈しており、
上記係止用切欠部は、上記閉位置において、第三支軸に係止するようにされており、
上記第三支軸には、係止された蓋部材を前部支持部材の前面に押圧してロックするロック装置が備えられている。
本発明に係る安全器は、通常の作業時には作業性に寄与し、緊急時には把持対象を把持する優れた把持能力を発揮し、作業者の安全に寄与する。
図1は、本発明の一実施形態に係る安全器の蓋部材が閉じた状態を示す斜視図である。 図2は、図1の安全器の蓋部材が開いた状態を示す斜視図である。 図3は、図1の安全器の、蓋部材が開かれ且つ親綱を把持していない状態を示す正面図である。 図4は、図3の安全器の右側面図である。 図5は、図1の安全器の主要部品を示す正面図である。 図6は、図1の安全器の、蓋部材及び前部支持部材が取り外され且つ親綱を把持していない状態を示す正面図である。 図7は、図1の安全器の、蓋部材及び前部支持部材が取り外され且つ親綱を把持した状態を示す正面図である。 図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、それぞれ親綱押圧部の形態を例示する正面図である。 図9は、安全器における、押圧リンクの親綱押圧部が親綱を押圧する方向に変位する軌跡を例示する正面図である。 図10は、安全器における、押圧リンクの親綱押圧部の親綱を押圧する方向を例示する正面図である。 図11は、本発明の他の実施形態に係る安全器の蓋部材が閉じた状態を示す斜視図である。 図12は、図11の安全器の蓋部材が開いた状態を示す斜視図である。 図13は、本発明のさらに他の実施形態に係る安全器の蓋部材が閉じた状態を示す斜視図である。 図14は、図13の安全器の蓋部材が開いた状態を示す斜視図である。 図15は、本発明のさらに他の実施形態に係る安全器の蓋部材が開いた状態及び閉じた状態を示す正面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1から図7に示された安全器2は、枠体4と、この枠体4に互いに平行に設置された第一支承ローラ6及び第二支承ローラ8と、枠体4に回動可能に枢支された第一押圧リンク10及び第二押圧リンク12と、各押圧リンク10、12の一端側に連結された連結具14とを備えている。上記枠体4は、それぞれが板状を呈した前部支持部材16と後部支持部材18と蓋部材20とを有している。本実施形態では、前部支持部材16及び閉状態の蓋部材20と、後部支持部材18とは、平行にされている。図6及び図7はいずれも、安全器2の動きの理解を容易にするために、その蓋部材20及び前部支持部材16が取り外された状態を示している。図1に示すように、前部支持部材16と閉じた状態の蓋部材20とがなす正面視の形状は、後部支持部材18の正面視形状と略同一である。また、枠体4の前部分は、蓋部材20がその上半分を占め、前部支持部材16が下半分を占めている。ここでいう安全器2に関する上下左右方向は、図3、図6及び図7それぞれにおける上下左右方向を意味する。前後方向は、図4における左右方向を意味する。
後部支持部材18には、第一支軸22、第二支軸24及び第三支軸26が、互いに平行に立設されている。第一支軸22及び第二支軸24は蓋部材20に掛け渡され、第三支軸26は前部支持部材16に掛け渡されている。第三支軸26は、前部支持部材16を貫通して外方へ突出している。この第三支軸26の突出した部分には、後述するロック装置58が装着される。前部支持部材16と後部支持部材18との間には、さらに、一対の弾性体取付軸28と、一対の連結具案内軸30とが掛け渡されている。前部支持部材16と後部支持部材18とは、第三支軸26、弾性体取付軸28及び連結具案内軸30によって、互いに間隔を置いて平行に且つ固定的に結合されている。
第一支承ローラ6、第二支承ローラ8、第一押圧リンク10、第二押圧リンク12及び連結具14は、後部支持部材18と、前部支持部材16及び蓋部材20との間に配置されている。しかし、連結具14の後述する連結用孔42の部分は、この内部空間から下方に露出している。
第一支承ローラ6が第一支軸22に回転可能に枢支され、第二支承ローラ8が第二支軸24に回転可能に枢支されている。各支承ローラ6、8の外周面には、その周方向に沿って、親綱Rが係合しうる係合溝32が形成されている。この係合溝32の側面視(図4参照)における曲率半径は、親綱Rの効果的な係合の観点から、親綱Rの横断面の半径より大きくされるのが好ましい。図3、図6及び図7に示すように、両支承ローラ6、8は、互いの動きを干渉しないように、互いに離間して配置されている。安全器2は、親綱Rによって、離間した2点で支持される。この2つの支持点間の親綱Rの部分は、図6及び図7に示すように、連結具14が下方に引かれているか否かに関わらず、略水平状態を維持しうる。従って、この安全器2にとっては、前述した単一の溝車しか備えていない従来の安全器のように、鉛直線回りに捻られるというおそれは無いと言える。蓋部材20は、第一支軸22の先端部に回転可能に枢支されている。蓋部材20については後述される。第一押圧リンク10及び第二押圧リンク12は、ともに第三支軸26に回転可能に枢支されている。第一押圧リンク10と第二押圧リンク12とは、正面視において、その枢支位置を通る下記中心線CLに関して左右対称の形状及び配置とされている。
図7に示された、第一支軸22の軸心と第二支軸24の軸心とを結ぶ直線、すなわち、両支承ローラ6、8の中心同士を結ぶ直線を中心結合直線LLと呼ぶ。また、この中心結合直線LLに対し、その中央を垂直方向に通る直線が、安全器2の中心線CLに相当する。第三支軸26は、その中心がこの中心線CL上に位置するように設けられている。本実施形態では、この中心線CLは、連結具14の上下方向の中心線と一致している。上記一対の弾性体取付軸28及び一対の連結具案内軸30は、いずれも、正面視において、中心線CLに関して左右対称に配置されている。
各押圧リンク10、12の一端側には、連結具14と連結するための連結用長孔38、40が形成されている。第一連結用長孔38には、後述する連結具14の第一係合用凸部48が係合し、第二連結用長孔40には第二係合用凸部50が係合する。第一押圧リンク10の他端側には第一親綱押圧部34が形成され、第二押圧リンク12の他端側には第二親綱押圧部36が形成されている。この親綱押圧部34、36の表面には、対応する支承ローラ6、8とで親綱Rをしっかりと挟持しうるように、多数の突条が幅方向に形成されている。対応する支承ローラとは、第一押圧リンク10にとっては第一支承ローラ6であり、第二押圧リンク12にとっては第二支承ローラ8である。以下同じである。各押圧リンク10、12とも、その形状が「く」の字状にされている。すなわち、各押圧リンク10、12の中心軸が、枢支点において屈曲している。従って、押圧リンク10、12が連結具14によって引かれる方向と、親綱Rを押す方向とは、相互に傾斜している。
図1、図2及び図4から明らかなように、親綱押圧部34、36の幅は、前部支持部材16と後部支持部材18との間隔に近い寸法にされている。一方、各押圧リンク10、12の親綱押圧部34、36以外の部分(以下、基部ともいう)の幅は、親綱押圧部34、36の幅の約1/3程度にされている。これは、両押圧リンク10、12及び連結具14が、同一の第三支軸26によって枢支されるためである。すなわち、第三支軸26の周囲では、両押圧リンク10、12の基部が連結具14を真ん中に挟むようにして、三枚重ねとなるからである。かかる構成により、多くの部品が、前部支持部材16と後部支持部材18との間にコンパクトに収まる。図示では、第一押圧リンク10の基部が連結具14の前側に在り、第二押圧リンク12の基部が後側に在る。
図5も併せて参照すれば明らかなように、本実施形態では、連結具14は、正面視が略T字の板状を呈している。この連結具14は、前後方向で両押圧リンク10、12の基部同士の間に配置される。連結具14の中央下部には、命綱等と連結するための連結用孔42が形成されている。この連結用孔42より僅か上方には、復元用弾性体としての一対の復元用コイルばね52の一端を係止するための係止用凸部44が形成されている。この係止用凸部44より僅か上方には、係合用長孔46が形成されている。この係合用長孔46の長軸は、連結具14の上下方向中心軸に沿っている。この係合用長孔46には、上記第三支軸26が貫通して係合している。連結具14は、この係合用長孔46の長さの範囲で上下動しうる。前述した一対の連結具案内軸30は、連結具14の左右の外側面に近接した位置に突設されている。以上の構成から、連結具14の上下動は、係合用長孔46及び第三支軸26と、連結具案内軸30により、効果的に案内される。
上記係合用長孔46の右側の前面に、第一係合用凸部48が突設されている。係合用長孔46の左側の後面に、第二係合用凸部50が突設されている。上記第一係合用凸部48は、第一連結用長孔38に係合する。上記第二係合用凸部50は、第二押圧リンク12の連結用長孔40に係合する。従って、安全器2の使用者が落下したとき等、この連結具14が下方に引かれると、両押圧リンク10、12はその枢支点(第三支軸26の位置)を中心に回転し、その各親綱押圧部34、36が上方へ回転移動する。そして、各親綱押圧部34、36は、対応する支承ローラ6、8とで親綱Rを挟持しうる。本実施形態では、連結具14が係合用長孔46の長さ範囲で移動すると、各押圧リンク10、12が約45°の角度回転するようにされている。しかし、この範囲には限定されない。
図3、図6及び図7に示すように、上記復元用コイルばね52は、連結具14を上方へ付勢するように、すなわち、各親綱押圧部34、36を支承ローラ6、8から離す方向へ付勢するように設置されている。換言すれば、この安全器2は、親綱Rの開放姿勢への復元機能が備わっている。具体的には、各復元用コイルばね52の一端が連結具14の係止用凸部44に係止されている。一方の復元用コイルばね52の他端が左側の弾性体取付軸28に係止され、他方の復元用コイルばね52の他端が右側の弾性体取付軸28に係止されている。本実施形態では、両方の復元用コイルばね52が連結具14の前方に設置されている。係止用凸部44の位置は、両弾性体取付軸28の位置より下方にある。両復元用コイルばね52は、僅かに引き伸ばされた状態で取り付けられている。従って、連結具14は両復元用コイルばね52によって上方へ付勢されている。連結具14が下方に引かれると、復元用コイルばね52の上方への付勢力(復元力)が増加する。連結具14に対する下方への引っ張り力が開放されると、一気に親綱開放作用が奏される。図4に示すように、係止用凸部44は、連結具14の前面及び後面の両方に突設されている。従って、一方の復元用コイルばね52を連結具14の前方に設置し、他方の復元用コイルばね52を後方に設置することも可能である。また、両方の復元用コイルばね52を連結具14の後方に設置することも可能である。
図6から図10を参照して、安全器2の好ましい形状構造が説明される。図6、図7、図9及び図10はいずれも、安全器2の動きの理解を容易にするために、その蓋部材20及び前部支持部材16が取り外された状態を示している。図6は、両押圧リンク10、12が親綱Rを把持していない状態(開放状態)を示している。図7は、両押圧リンク10、12が親綱Rを把持した状態(把持状態)を示している。
図6に示すように、この安全器2では、両押圧リンク10、12の上端及び連結具14の上端と、両支承ローラ6、8の下端との間隔が、親綱Rの外径より大きくされている。従って、安全器2を親綱Rに対して容易に着脱することができる。一例では、通常使用される外径が12mmの親綱Rに対して、上記間隔が18mmとされている。
図7に示すように、親綱Rを実際に押圧して係合溝32との間で挟持しているときの各親綱押圧部34、36の位置を押圧位置と呼ぶ。より具体的には、押圧位置は、親綱Rを押圧している親綱押圧部34、36の表面のうち、親綱Rに最も強い押圧力を加えうる点(以下、押圧点と呼ぶ)35の位置である。この押圧点35については、図8を参照しつつ後述する。上記押圧位置が、対応する支承ローラ6、8の中心位置に関して、他方の支承ローラ8、6の位置とは反対側の位置となるように構成されるのが好ましい。換言すれば、押圧位置は、対応する支承ローラ6、8の中心を上下方向に通る直線VLに関して、他方の支承ローラ8、6とは反対側の位置となるように構成されるのが好ましい。すなわち、各押圧リンク10、12による押圧力には、親綱Rを中心線CLに向けて押圧する力成分、換言すれば、両支承ローラ6、8の中心結合直線LLに平行で且つ他方の支承ローラに向いた方向の力成分、が含まれている。かかる構成により、親綱押圧部34、36は、親綱Rを、対応する支承ローラ6、8に対して内側及び上方に向けて押圧することとなる。従って、親綱Rは、押圧位置において曲げられて直線状では無くなり、安全器2の親綱R上の不用意な移動が抑制される。かかる構成は、第一支軸22と第二支軸24との間隔、及び、各押圧リンク10、12における枢支点(第三支軸26に貫通される孔の中心)から親綱押圧部34、36までの長さを調整することにより、容易に実現することができる。なお、上記直線VLは、中心結合直線LLに対して垂直に延びている。
図8には、第一押圧リンク10における上記押圧点35の3例が説明されている。図示しない第二押圧リンク12における押圧点の場合は、図示の第一押圧リンク10とは左右が逆になるだけで実質的に同一である。押圧点35は、押圧部34のうちで親綱Rに最も強い押圧力を加えうる点である。図8(a)に示すのは、押圧部34の長手方向の先端部が押圧点35として機能する例である。この構成では、押圧部34が親綱Rに近づいたときに、押圧部34の複数の突条のうち先端部における突条が、最も親綱R及び第一支承ローラ6の係合溝32の溝底に近い位置にある。従って、この先端部の突条が、他の突条に較べて早く親綱Rを押圧しうる。その結果、最も強く親綱Rを押圧しうる。
図8(b)に示すのは、押圧部34の長手方向の中間部が押圧点35として機能する例である。この構成では、押圧部34の複数の突条のうち中間部における突条が、最も親綱R及び第一支承ローラ6の係合溝32の溝底に近い位置にある。この中間部の突条が、他の突条に較べて早く親綱Rを押圧しうる。その結果、最も強く親綱Rを押圧しうる。
図8(c)に示すのは、押圧部34の長手方向の基端部が押圧点35として機能する例である。この構成では、押圧部34の複数の突条のうち基端部における突条が、最も親綱R及び第一支承ローラ6の係合溝32の溝底に近い位置にある。この基端部の突条が、他の突条に較べて早く親綱Rを押圧しうる。その結果、最も強く親綱Rを押圧しうる。
図9には、第一押圧リンク10の回転に伴う押圧点35の移動軌跡S0が示されている。ここでは、図示左側の第一支承ローラ6及び第一押圧リンク10を例にとって説明される。第二支承ローラ8及び第二押圧リンク12の場合は、第一支承ローラ6及び第一押圧リンク10とは左右が逆になるだけで実質的に同一である。また、押圧点35としては、図8(a)に示された、押圧部34の長手方向先端部に形成されたものが採用されている。押圧点35の移動軌跡S0は、第三支軸26の中心を中心とし、この中心から押圧点35まで延びる直線(第一押圧リンク10の腕長さ)ALの長さを半径とする円を描く。この移動軌跡S0は、各時点での押圧点35による押圧方向と言える。
しっかりした親綱Rの把持は、押圧点35を中心とした親綱押圧部34と、支承ローラの係合溝32の溝底との挟圧によって成される。従って、親綱押圧部34による押圧の中心部と言える押圧点35の移動軌跡S0は、支承ローラ6の溝径部を通過するようにされているのが好ましい。上記溝径部とは、係合溝32の円形横断面部分とも言え、溝底の径の範囲であるとも言える。換言すれば、図9において、押圧点35が、第三支軸26の中心を中心とする外円S1と内円S2との間に位置するのが好ましい。この外円S1とは、係合溝32の溝底のうちで第三支軸26の中心から最も遠い部位を通る円である。内円S2とは、係合溝32の溝底のうちで第三支軸26の中心から最も近い部位を通る円である。このように、移動軌跡S0の半径(AL)は、外円S1の半径以下であり、内円S2の半径以上であるのが好ましい。かかる構成は、各押圧リンク10、12の長さを調整すること、第三支軸26から第一及び第二の支軸22、24までの間隔を調整すること、第一及び第二の支軸22、24同士の間隔を調整すること等により、実現することができる。
より好ましい構成は、図10に矢印で示すように、上記押圧位置における押圧点35の押圧方向が、前述した溝径部(係合溝32の円形横断面部分)を通過するようにされていることである。この押圧方向は、図示のごとく、押圧点35を通り、上記直線ALに垂直な方向であり、対応する支承ローラに向かう方向である。この押圧方向が、溝径部の中心(支承ローラ6の中心)に近いほど好ましい。押圧点35の押圧位置は、第一押圧リンク10における押圧点35の位置、上記溝径部に対する押圧点35の移動軌跡S0、安全器設置対象となる親綱の外径及び材質から特定することができる。一般的に親綱として使用されるロープの外径は、12mm、14mm、16mmである。親綱として通常使用される繊維ロープの場合、図8に示されるような一般的な形状の親綱押圧部によって挟圧された場合、押圧方向の外径が40%から60%程度まで減少する。
上記蓋部材20は、第一支軸22の先端部に、その閉位置と開位置との間を回転可能に枢支されている。閉位置は図1に示され、開位置は図2から図4に示されている。蓋部材20には、円弧状の案内用長孔54が形成されている。この案内用長孔54には、第二支軸24の先端部が相対移動可能に係合している。この案内用長孔54は、蓋部材20の閉位置から開位置に至るまでに相当する角度範囲に形成されている。さらに、この蓋部材20には、その周縁から内部に向かう係止用切欠部56が形成されている。図1に示すように、係止用切欠部56には、この蓋部材20が閉位置に回動したとき、第三支軸26が係止される。
この第三支軸26の突出した部分には、蓋部材20を閉位置でロックするスプリング式のロック装置58が装着される。このロック装置58は、図4に示すように、内蔵されたロック用コイルばね60によって蓋部材20を前部支持部材16に押圧して固定する装置である。具体的には、第三支軸26に、ロック用コイルばね60が外嵌され、その外周面を覆うように、円筒容器62が外嵌されている。ロック用コイルばね60は、第三支軸26の先端側に形成された鍔64と円筒容器62の底部との間に配置されている。圧縮されたロック用コイルばね60の復元力により、円筒容器62は前部支持部材16に向かって移動する。円筒容器62の底部を介して、蓋部材20の係止用切欠部56の外周延が前部支持部材16に押圧される。この作用により、蓋部材20が閉位置でロックされる。このロックを解除するには、上記円筒容器62を、ロック用コイルばね60の圧縮力に抗して引けばよい(図2及び図4における矢印参照)。蓋部材20が開位置にあるときには、親綱Rが両支承ローラ6、8に着脱可能にされ、蓋部材20が閉位置にあるときには、親綱Rが両支承ローラ6、8に着脱不能にされるように構成されている
図11及び図12には、他の実施形態に係る安全器72が示されている。図13及び図14には、さらに他の実施形態に係る安全器92が示されている。これらの安全器72、92は、前述の安全器2とは、主にその蓋部材の構造が異なり、主要な内部構造及びその動きは同一である。また、前述の安全器2とは、前部支持部材16及び後部支持部材18の一部分が異なっているものもある。従って、前述の安全器2と同一構成の部品や構造には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図11及び図12に示された安全器72でも、前部支持部材16と閉じた状態の蓋部材76とがなす正面視の形状は、後部支持部材18の正面視形状と略同一である。また、枠体74の前部分は、蓋部材76がその上半分を占め、前部支持部材16が下半分を占めている。この蓋部材76は、第三支軸26の先端部に回転可能に枢支されている。蓋部材76は、閉位置(図11)と開位置(図12)との間を回動しうる。具体的には、閉状態における蓋部材76の、上記第一及び第二の支軸22、24に対応する位置それぞれに、係止孔78が形成され、第三支軸26に対応する位置に枢支用孔80が形成されている。第一及び第二の支軸22、24の先端部の上面には、係合溝82が形成されている。第三支軸26の先端部には、図示しない雄ねじが形成されている。この雄ねじには、図示のごとくナットのような雌ねじ(図示せず)が形成されたネジロック部材84が螺着されうる。
閉状態における蓋部材76では、その一対の係止孔78の縁が、第一及び第二の支軸22、24の係合溝82に係合されている。この状態で、ネジロック部材84が締め付けられると、蓋部材76が、前部支持部材16とネジロック部材84とで挟圧され、閉位置でロックされる。蓋部材76を開放するときには、図12に示すように、ネジロック部材84を緩め、蓋部材76を持ち上げて係合溝82から外して下方へ回転させる。なお、ネジロック部材84には限定されず、前述したスプリング式のロック装置58を採用することもできる。一方、このネジロック部材84は、前述した安全器2に対して、スプリング式のロック装置58に代えて用いることができる。
図13及び図14に示された安全器92は、その枠体94の上半分が下半分に対して開閉移動するように構成されている。換言すれば、枠体94の上半分が、下半分に対して回転しうる蓋部材96を構成している。枠体94の下半分は、互いに平行な前部支持部材98と後部支持部材100とから構成されている。前部支持部材98と後部支持部材100との間に、第一押圧リンク10、第二押圧リンク12及び連結具14が配置されている。蓋部材96は、互いに平行な板状の前板部102と後板部104とから構成されている。この前板部102と後板部104との間に、第一支軸22及び第二支軸24が掛け渡されている。前板部102と後板部104とは、第一支軸22及び第二支軸24によって固定され、一体化されている。
前板部102と前部支持部材98とは互いに平蝶番構造をなしており、後板部104と後部支持部材100とも互いに平蝶番構造をなしている。前板部102の下端縁の中央部、及び、後板部104の下端縁の中央部にはそれぞれ、円筒状の係止管部106が形成されている。前部支持部材98の上端縁の両端部、及び、後部支持部材100の上端縁の両端部にはそれぞれ、円筒状の支持管部108が形成されている。互いに同軸状に並んだ状態の係止管部106及び支持管部108に、連結用のピン110が挿入されている。図13に示すように、前後いずれの平蝶番構造にもピン110が挿入された状態では、蓋部材96は開閉し得ない。蓋部材96は閉位置でロック状態にある。図14に示すように、いずれか一方のピン110が抜き取られると、蓋部材96は他方のピン110を軸とした回転、すなわち開閉動作が可能となる。ピン110としてボルトを採用してもよい。そして、上記両端部に形成された支持管部108の一方の内周面に、このボルトと螺合しうる雌ねじを形成するのが好ましい。かかる構成により、ピン110の不用意な脱落が防止されうる。
図15に示されているような蓋部材114も採用されうる。この蓋部材114は、安全器112の中心線CLに関して左右対称形状であり且つ左右対称に配置された一対の蓋部品116、118からなる。各蓋部品116、118が、前述した弾性体取付軸28の先端に回転可能に枢支される。図示しないが、連結具案内軸30の先端に回転可能に枢支されてもよい。枢支する弾性体取付軸28の先端は、前部支持部材16を貫通して外方へ突出している。上方の前部支持部材120と下方の前部支持部材16とは、上下に離間しており、親綱Rが通過しうる隙間が形成されている。各蓋部品116、118における上記枢支位置とは反対側の端部には、係止用切欠部122、124が形成されている。図中に二点鎖線で示すように、一方の蓋部品116の係止用切欠部122は、第一支軸22の先端に係止され、他方の蓋部品118の係止用切欠部124は、第二支軸24の先端に係止される。この状態が、蓋部材114の閉止状態である。第一支軸22及び第二支軸24の各先端は、前部支持部材16を貫通して外方へ突出している。そして、第一支軸22及び第二支軸24の各先端に形成された雄ねじに、ロック用のナット126が螺着される。ロックを外し、係止用切欠部122、124を係止されている軸から外して、図中に実線で示すように、両蓋部品116、118を回転させて下方に位置させれば、安全器112は開放状態となる。
また、一対の蓋部品116、118は、第一支軸22及び第二支軸24に回転可能に枢支されてもよい。そして、係止用切欠部122、124は、弾性体取付軸28の先端又は連結具案内軸30の先端に係止されるように構成されてもよい。
以上説明されたように、この安全器2、72、92は、通常の作業時には作業性に寄与し、緊急時には作業者の安全に寄与する。
以上説明された安全器は、高所等における様々な作業に用いられ得る。
2、72、92、112・・・安全器
4、74、94・・・枠体
6・・・第一支承ローラ
8・・・第二支承ローラ
10・・・第一押圧リンク
12・・・第二押圧リンク
14・・・連結具
16、98、120・・・前部支持部材
18、100・・・後部支持部材
20、76、96、114・・・蓋部材
22・・・第一支軸
24・・・第二支軸
26・・・第三支軸
28・・・弾性体取付軸
30・・・連結具案内軸
32・・・係合溝
34、36・・・親綱押圧部
35・・・押圧点
38、40・・・連結用長孔
42・・・連結用孔
44・・・係止用凸部
46・・・係合用長孔
48・・・第一係合用凸部
50・・・第二係合用凸部
52・・・復元用コイルばね
54・・・案内用長孔
56・・・係止用切欠部
58・・・ロック装置
60・・・ロック用コイルばね
62・・・円筒容器
64・・・鍔
78・・・係止孔
80・・・枢支用孔
82・・・係合溝
84・・・ネジロック部材
102・・・前板部
104・・・後板部
106・・・係止管部
108・・・支持管部
110・・・ピン
116、118・・・蓋部品
122、124・・・係止用切欠部
126・・・ナット

Claims (4)

  1. 親綱に可動状態で連結されうる安全器であって、
    枠体と、
    この枠体に設置された、親綱に係合しうる第一支承ローラ及び第二支承ローラと、
    上記枠体に回動可能に枢支された、第一押圧リンク及び第二押圧リンクと、
    各押圧リンクの一端側に連結された連結具とを備えており、
    各押圧リンクは、その他端側に親綱押圧部を有しており、
    上記連結具に引っ張り力が作用したとき、上記第一押圧リンクが、その親綱押圧部が親綱を対応する第一支承ローラに押圧する方向に回動するとともに、上記第二押圧リンクが、その親綱押圧部が親綱を対応する第二支承ローラに押圧する方向に回動し、上記引っ張り力が解除されたとき、両押圧リンクが、それぞれの親綱押圧部が親綱から離間する方向に回動するように構成され、
    上記枠体が、前部支持部材と後部支持部材と蓋部材とを備えており、
    上記第一支承ローラが第一支軸に枢支され、第二支承ローラが第二支軸に枢支され、第一押圧リンク及び第二押圧リンクがともに第三支軸に枢支されており、
    上記第一支軸及び第二支軸が前部支持部材と後部支持部材との間に掛け渡されており、
    上記第一支軸、第二支軸及び第三支軸のうちのいずれかの先端に、上記蓋部材が、その開位置と閉位置との間を回転可能に枢支されており、
    上記蓋部材が開位置にあるときには、親綱が上記両支承ローラに着脱可能にされ、蓋部材が閉位置にあるときには、親綱が両支承ローラに着脱不能にされるように構成され、
    上記蓋部材が、上記第一支軸及び第二支軸のうちのいずれか一方の先端に回転可能に枢支されており、
    この蓋部材には、第一支軸及び第二支軸のうちの他方の先端が相対移動可能に係合しうる案内用長孔と、第三支軸に係止しうる係止用切欠部とが形成されており、
    上記案内用長孔が、蓋部材の閉位置から開位置に至るまでの角度範囲に相当する円孔状を呈しており、
    上記係止用切欠部は、上記閉位置において、第三支軸に係止するようにされており、
    上記第三支軸には、係止された蓋部材を前部支持部材の前面に押圧してロックするロック装置が備えられている安全器。
  2. 対応する支承ローラに対して親綱を押圧している親綱押圧部の位置である押圧位置が、対応する支承ローラの中心位置に関して、他方の支承ローラの位置とは反対側に位置するように構成され、
    対応する支承ローラに対して親綱を押圧している親綱押圧部の押圧方向が、他方の支承ローラに向いた方向の成分を含むように構成されている請求項1に記載の安全器。
  3. 上記各支承ローラの外周面に、その周方向に沿って、親綱が係合しうる係合溝が形成されており、
    上記各押圧リンクの回動に伴う親綱押圧部における押圧点の移動軌跡が、対応する支承ローラの溝径部の範囲内を通る円弧状を呈しており、
    上記押圧点は、押圧リンクの回動に伴い、親綱押圧部の他の部位に較べて早く親綱を押圧する部位である請求項2に記載の安全器。
  4. 上記各支承ローラの外周面に、その周方向に沿って、親綱が係合しうる係合溝が形成されており、
    上記各押圧リンクの回動に伴って、上記押圧位置にある親綱押圧部の押圧点が押圧する方向が、対応する支承ローラの溝径部の範囲内を通るようにされており、
    上記押圧する方向は、上記押圧点を通るとともに、押圧リンクの枢支点と上記押圧点とを結ぶ直線に垂直な方向であり、
    上記押圧点は、押圧リンクの回動に伴い、親綱押圧部の他の部位に較べて早く親綱を押圧する部位である請求項2又は3に記載の安全器。
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