JP2021534200A - 脳損傷を回復させるための上皮成長因子と分泌促進物質ペプチドghrp6とを含む薬学的組合せ - Google Patents

脳損傷を回復させるための上皮成長因子と分泌促進物質ペプチドghrp6とを含む薬学的組合せ Download PDF

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Abstract

本発明は、中枢神経系に存在する未分化細胞内、又は神経細胞内の神経細胞特殊化及び分化の機構を刺激することによって脳損傷を回復させるのに有用な、上皮成長因子(EGF)と分泌促進物質ペプチドGHRP6とを含む薬学的組合せを開示する。本発明はまた、脳損傷を回復させるための薬学的組合せの製造における上記の生体分子の使用を包含する。さらに、本発明は、脳損傷を回復させる方法であって、EGFとGHRP6とを含む薬学的組合せの治療有効量が、それを必要とする患者に投与される方法を提供する。薬学的組合せの治療効果は、薬理学的介入が脳損傷後の最初の数時間以内に行われるかどうかとは無関係であり、これにより、治療ウィンドウが広がる。

Description

本発明は、医学の分野、特に神経薬理学の分野に関する。具体的には、本発明は、虚血性損傷又はタンパク質症により死滅する他のニューロンを置き換えることを可能にする表現型及び機能を獲得する、中枢神経系に存在する未分化細胞内、又は神経細胞内の分化及び神経細胞特殊化の機構を増強及び刺激することによって脳損傷を回復させるための薬学的組合せに関する。組合せの治療効果は、その適用の時点とは無関係である。
中枢神経系内の組織損傷(虚血性、出血性、圧迫、栄養因子の欠乏、又は何らかの他の発作)に対する薬理学的アプローチは、多くの試験が行われているが、効果的な治療結果の点で依然として実を結ばず、その転換段階の臨床診療ではまったく成功していない分野である。これは、死んだニューロン及びグリア細胞の再生及び置換を妨げる、神経系の細胞成分の複雑さ及び非常に高度な特殊化に起因する。
神経系組織に損傷を与える事象の大部分が世界中で発生している。例えば、虚血性脳卒中は世界中で第2位の死因であり、身体障害の第3位の主因である(Krishnamurthi RV,Neuroepidemiology 2015;45(3):190−202)。若年成人にも虚血性脳卒中に罹患するリスクがあるため、これは高齢者だけに起こることではない(Krishnamurthi RV,Neuroepidemiology 2015;45(3):177−89)。さらに、神経系に影響を与える外傷性事故は非常に頻繁であり、高い社会的費用を伴う身体障害を引き起こす(Greenwald BD,J Neurotrauma 2015;32(23):1883−92)。
一方、タンパク質症として知られる、細胞内タンパク質の形態的及び機能的な変化によって引き起こされる疾患の数は世界中で深刻な健康問題であり(Kawamata H,y otros,.J Cell Biol 2017;216(12):3917−29)、その中には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症がある。後者の疾患については、神経可塑性の増強を介した脳の回復を目的とした、疾患の進行過程を低減し、及び/又は顕著な回復を誘導する治療は未だ存在しない。神経系損傷の他の原因、例えば、栄養欠乏(Lewis CM,Stem Cell Res Ther 2014;5(2):32)は、上記の疾患及び状態ほど頻繁ではないが、それらは、患者の良好な生活の質に重要であり、かつそれに影響を与える脳の回復に基づく治療を実施することが今まで不可能であった科学界にとって大きな課題である。したがって、とりわけ虚血性損傷及びタンパク質症などの状況では、脳の回復を促進するための薬理学的介入を発見する必要がある。神経系の多くの疾患を治療するための候補薬物として、神経栄養活性を有する組換えタンパク質を臨床評価することは、脳の回復を誘導するための合理的なアプローチである。しかし、臨床診療に対する上記タンパク質の治療上の利点は、これまで実証されていない(Henriques A,et al.Frontiers in Neuroscience.2010;4:32;Larpthaveesarp A,et al.Brain Sci 2015;5(2):165−77)。
これまで臨床的に評価されてきた神経保護薬のいずれもが身体障害の回復を実現することができなかったため、神経学的身体障害は不可逆的であるという認識が、事実によって客観的に裏付けられている(Nicholson KA,Neurotherapeutics 2015;12(2):376−83)。これらの薬物は、生活の質によって調整された生存者の生存年数に良い影響を示していない。したがって、虚血性損傷、タンパク質症、又は永続的な神経損傷の他の原因によって引き起こされるものなど、神経系障害に関連する身体障害の軽減に影響を与える代替治療法を発見することが現時点で重要である。上記代替治療法は、中枢神経系の損傷を被っている患者の脳の回復を促進するはずである。
もう1つの基準には、虚血性脳損傷に対して、血栓溶解による(Mowla A,et al,J Neurol Sci 2017;376:102−5)又は非血栓溶解治療による(Matsuo R,et al.Stroke 2017;48(11):3049−56)神経保護的アプローチを用いた治療アプローチは、症状の発症から4時間経過する前に行われなければならないということがある。これは、これまでに知られている神経保護治療の主要な制限の1つを構成する。
神経保護治療アプローチが一次神経変性事象の阻害に向けられているという事実を区別することが重要である。対照的に、脳の回復のための治療アプローチは、代償性再生機構を刺激することに向けられている(Francardo V,et al.,Exp Neurol 2017;298(Pt B):137−47)。
特許文献国際公開第2002/053167号パンフレットは、上皮成長因子(EGF)と、英語の頭字語ではGHRP6(Growth Hormone Releasing Hexapeptide:成長ホルモン放出ヘキサペプチド)として知られるヘキサペプチド分泌促進物質との組合せを記載している。この組合せの成分は、動脈血の欠乏による細胞損傷の予防では、同時に又は順次使用することができる。再生又は栄養目的のためのこの組合せの使用については言及されているが、脳の回復のためのその使用又はその別個の成分の使用は実証も示唆もされていない。一方、国際公開第2006/092106号パンフレットは、神経系の自己免疫障害の治療のためのEGF−GHRP6の組合せの使用を記載している。しかし、上記特許文献は、脳損傷を回復させるためのこの組合せの能力を実証も示唆もしていない。本発明では、治療効果を有するEGFの量は、1〜10μg/kg体重の範囲である。
さらに、インビボでの研究では、EGF−GHRP6の組合せが全体的な脳梗塞及び限局性脳梗塞の実験モデルに対して神経保護効果を有することが証明されている(Garcia DB−H.,Et al.Restor Neurol Neurosci 2013;31(2):213−23)。これらのモデルでは、ビヒクルにより処置した対照動物と比較して、この組合せにより、神経学的症状の数又は重症度が低減し、梗塞体積が減少し、神経細胞密度が維持され、梗塞を有する動物の生存率が増加する。この神経保護効果は、虚血性発作後4時間以内に治療が開始された場合にのみ生じる。さらに、この組合せの両成分は、体重1キログラム当たり約数百マイクログラムの有効成分で投与される(Subiros N,et al.Neurol Res 2015;38(3):187−195)。動物モデルを対象としたこれらの試験は、非常に短い期間に限って薬理学的介入の治療効果を示し、これは、体重1kg当たり約100μgのEGF及び体重1kg当たり約600μgのGHRP6の投与量を用いた他の神経保護的介入(Alberts MJ.Circulation 2017;135(2):140−2)について記載された治療ウィンドウに類似していた。以前の試験では、脳の回復に関して治療効果は示されなかった。また、この薬理学的組合せの投与が発作の4時間後に行われる場合、脳梗塞の体積減少に関して、臨床的にも組織学的にも治療効果の兆候はない。一方、神経学的回復に対するEGF−GHRP6の組合せの使用は、運動ニューロン疾患を模倣する軸索病態の動物モデルでも試験されている(Del Barco DG et al.,Neurotox Res 2011;19(1):195−209)。治療効果は、EGFについては体重1キログラム当たり約200μg、GHRP6については体重1キログラム当たり約660μgの投与量を用いて達成された。神経可塑性とは、環境の変化に応じて、又は発作に起因して、中枢神経系が適応する能力として文献に記載されている。さらに、神経可塑性とは、神経細胞集団が、発作に続発する機能不全に機能的に、かつ神経学的に応答する能力であるか、シナプスの再編成と、1つのニューロン又はいくつかの損傷したニューロンからの新しいシナプスの成長の可能性とに基づいて、他の損傷した神経細胞集団の役割を引き受ける能力である(Kaas JH.Neural Plasticity A2−Smelser,Neil J.En:Baltes PB,editor.International Encyclopedia of the Social&Behavioral Sciences.Oxford:Pergamon;2001.p.10542−6)。
神経可塑性の内因性の生理学的反応が存在するが、それは、失われた複雑な機能を置き換えるために神経細胞及びグリア細胞に供給するのに十分でない。これまでのところ、脳の回復を促進するための神経可塑性が、身体的又は認知的な訓練を含む方法によって試みられ、達成されてきたが、この目的のために薬理学的介入を使用することに成功した例はない。したがって、脳の回復を促進するための薬理学的介入が必要である。これらの代替治療法が、虚血性損傷、タンパク質症、又は永続的な神経損傷の他の原因によって引き起こされるものなど、神経系の状態に起因する身体障害の軽減に影響を与えることが望ましい。
本発明は、EGFと成長ホルモン分泌促進物質ペプチドGHRP6とを含む、脳損傷を回復させるための薬学的組合せを提供することによって、上記の問題の解決に寄与する。上記組合せは、虚血性損傷、タンパク質症、又は自己免疫疾患を除く永続的な神経損傷の他の原因などの以前の発作の状況では、神経可塑性を増強するのに効果的である。
本発明の文脈では、用語「薬学的組合せ」は、一般的なものもあれば排他的なものもある生物学的作用の様々な機構を有する2つの活性医薬成分の組合せを指し、そのような成分又は活性物質は、必要とする患者に治療の過程で同時に又は順次投与される。
成長ホルモン分泌促進物質ペプチドGHRP6は、この分野に精通した者には周知である。それは、以下のアミノ酸配列を有する:His−D−Trp−Ala−Trp−D−Phe−Lys−NH。EGFは前世紀に発見された成長因子であり、製薬分野、化粧品及び組織工学に応用されている。
本発明の文脈では、「脳損傷の回復」は、神経可塑性機構の活性化によって補助される、神経細胞及びグリアの構成要素の再生を必要とする。そのような機構の活性化のための経路は、例えば、Martinezら(Biochemistry and Biophysics Reports 5(2016)379−387)によって説明されているように、ガレクチン−3をコードする遺伝子の発現が抑制されるのと同時に、ヘモペキシンをコードする遺伝子の発現が増加する場合に誘導され、ヘモペキシンの発現は、ナノLC−MS(質量分析と組み合わせたナノ流体の液体クロマトグラフィー)によって測定することができる。ガレクチン−3は、ミクログリアの活性化に寄与するレクチンであるため、脳の炎症の拡大を促進し、これにより、内因性の再生又は誘発された再生が妨げられる。これは、患者の予後不良と関連している(Denes,A.,y otros,Brain Behav.Immun.2010;24:708−723)。一方、ヘモペキシンは、その神経再生機能が、脳の虚血及び/又は再灌流による損傷後の血管新生の刺激に関連するタンパク質である。(Dong B y otros,BMC Anesthesiol 2018;18:2)
本発明では、「神経可塑性(neuroplasticity)」としても知られる用語「神経可塑性(neuronal plasticity)」は、新しい神経回路を確立し(神経細胞の表現型に向かって分化する他のニューロン又は細胞によって)、それにより、虚血性、毒性、外科的、外傷性、タンパク質症、遺伝性障害、又は自己免疫疾患を除く永続的な神経損傷の他の原因によって失われたか損なわれた複雑な神経機能の遂行を可能にする能力として記載されている。この増強は脳の回復に寄与する。
本発明の一実施形態では、薬学的組合せは、体重1kg当たり0.3μg〜0.9μgのEGFと、体重1kg当たり30μg〜80μgのGHRP6とを含み、この成分は相乗効果を示す。特定の投与計画及び期間でのこれらの有効成分の同時投与は、本発明に先行する文献に記載されているものよりも優れた治療効果を示した。上記の薬学的組合せによって達成される脳の回復は、記憶及び学習能力などの複雑な機能の保存によって、ならびに治療された患者の運動能力、感覚能力及び認知能力の疑いのない迅速な回復によって証明されている。驚くべきことに、結果から、筋萎縮性側索硬化症で生じるような80%超の運動ニューロンが損傷している神経学的損傷の非常に有害な状況で、生理学的な神経可塑性を刺激し、増強することによって脳及び脊髄を回復させることが可能であり、したがって、この疾患の特徴的な遅鈍性の臨床経過を逆転させることが可能であることが示された。
上記薬学的組合せは、一次損傷の結果として失われたトロピズムの置換にある程度有利に働く。有利なことに、神経可塑性機構のこの増強は、脳損傷後の最初の数時間に行われる薬理学的介入に制限されることなく、治療効果に変換される。これは、先行技術の神経保護的介入との顕著な差である。さらに、神経可塑性機構のこの増強は、発作直後に誘発される神経可塑性の生理学的反応が、一次損傷の結果として失われたトロピズムの置換には十分でなく、必要とする患者の神経学的回復に顕著な影響を及ぼさないため、脳の回復に決定的である。
本発明の薬学的組合せは、虚血性、毒性、外科的、外傷性、タンパク質症、遺伝性障害、又は自己免疫疾患を含まない永続的な神経損傷の他の原因によって引き起こされる運動障害、感覚障害、自律神経障害及び認知障害を呈する神経系の疾患における脳の回復を促進する。
本発明の一実施形態では、EGH−GHRP6の組合せの成分は、順次又は同時に非経口投与される。組合せの成分の非経口投与のための経路には、静脈内経路、髄腔内経路、脳室内経路、大槽内(intra−cistern magna)経路又は鼻腔内経路がある。特に、限定するものではないが、髄腔内投与は、腰椎穿刺及び/又はその種の投与用に設計されたデバイスの使用によって行われる。鼻腔内経路の場合、組合せの投与は、嗅球の延長部に到達することを目的とする。本発明の一実施形態では、組合せは、a)EGF及び薬学的に許容される賦形剤又はビヒクルを収容する容器又はバイアルと、b)GHRP6及び薬学的に許容される賦形剤又はビヒクルを収容する容器又はバイアルとを含むキットからなる。特定の実施形態では、キット内で、EGFは、1容器当たり5μg〜80μgの範囲にあり、GHRP6は、1容器当たり0.5mg〜6mgの範囲にある。
別の態様では、本発明は、脳損傷を回復させるための薬学的組合せを製造するためのEGF及びGHRP6の使用を企図する。脳の回復のためにこの薬学的組合せを使用することは特に有利である。両成分間の相乗作用は、幹細胞もしくは未分化ニューロン又はG0期細胞の分化を刺激して、神経細胞及び/又はグリアの表現型を有し、異なる性質の以前の発作の結果として失われたニューロン及びグリアの機能を獲得する可能性を有する細胞にする。好ましくは本発明に含まれる投与量でのこの薬学的組合せの使用は、中等度又は重度の有害作用に関連しないため、特定の利点を有する。この治療法は、患者にとっていかなるリスクも呈するものではない。
本発明の一実施形態では、組合せは、脳梗塞後の脳損傷を回復させるために用いられる。驚くべきことに、この薬学的組合せは、出血性及び虚血性の両脳梗塞に起因する運動障害の回復をもたらす。本発明の薬学的組合せの成分間に存在する相乗作用は、脳の回復に変換され、脳の回復は、治療された患者の身体障害の軽減、生活の質の実質的な改善、及び生存率に客観的に表される。これらの効果の結果は、最初の投与時間とは無関係であり、すなわち、狭い治療ウィンドウとは関連しなかった。これは、神経保護的介入に関連する既存の枠組みを壊す。さらに、これは、脳虚血の動物モデルに対してEGF及びGHRP6の組合せを用いて得られた結果、ならびに虚血性発作の4時間前に処置が開始された場合にのみ治療効果が示される他の同様の臨床的介入について記載された結果(Mowla A,et al.,J Neurol Sci 2017;376:102−5)を考慮すると、予想外である。
それどころか、本発明の薬学的組合せの投与は、虚血性障害の場合、約4〜6時間(神経保護的介入、血栓溶解的介入又は非血栓溶解的介入の場合)という特徴的な治療ウィンドウに限定されない。したがって、本発明の臨床アッセイでは、脳梗塞の診断の最初の時点と診断から24時間後との間に、組合せの最初の適用を行った。
さらに、重度の新生児低酸素症を重度に発症した新生児に対して、本発明の薬学的組合せを人道的に使用した。これらの新生児の生存率だけでなく、神経可塑性の増強による脳の回復でも、非常に好ましい結果が得られた。これらの乳児の生後1年の終了時の評価は、新生児低酸素症の程度及び重症度を考慮すると、予測よりも低い神経学的後遺症の数を示した。同様にかつ驚くべきことに、延髄に発症を呈し、人道的に治療された筋萎縮性側索硬化症患者では、本発明の薬学的組合せが、筋力及び嚥下反射を改善し、構音障害の進行を低減することが示された。
したがって、本発明はまた、脳損傷を回復させる方法であって、EGFとGHRP6とを含む薬学的組合せの治療有効量が、それを必要とする患者に投与される方法を企図する。本発明の一実施形態では、EGFの治療有効量は、体重1kg当たり0.3μg〜0.9μgのこの成長因子であり、GHRP6の治療有効量は、患者の体重1kg当たり30μg〜80μgのGHRP6である。本発明のこのアプローチは、損傷が虚血性、毒性、外科的性質、外傷性のものである場合、タンパク質症、遺伝性障害によるものである場合、又は自己免疫疾患を除く永続的な神経損傷の他の原因によるものである場合に適用可能である。
特定の実施形態では、本発明の方法は、脳損傷が新生児の脳梗塞又は重度の脳低酸素症によって引き起こされる場合に適用される。別の実施形態では、本発明の方法は、筋萎縮性側索硬化症の進行速度を低下させ、また、特徴的な神経学的症状の重症度を低下させるため、筋萎縮性側索硬化症の場合と同様に、運動ニューロンの広範囲かつ慢性的な損傷の状況で適用される。組合せは、進行性の運動ニューロン疾患及び遅鈍性の運動ニューロン疾患の治療では、筋力、嚥下反射を改善し、構音障害を低減するために投与される。
本発明の脳回復方法で投与される治療的組合せは、神経可塑性を増強することに加えて、胚及び胎児の段階の間に生理学的に生成されるものと同様の栄養補助をそれ自体構成する。これは、ニューロン及び/又はグリア細胞だけでなく、神経血管単位のあらゆる構成要素にも有利に働く。したがって、上記薬学的組合せによって示される栄養補助は、神経系の組織の生理学的状況を模倣する。
プロテオミクス実験で見出された結果のグラフ表示。図1Aは、各クロマトグラフィーサイクルにおいて同定されたあらゆるタンパク質のヒートマップを示しており、0.6μgのEGF/kg体重及び40μgのGHRP6/kg体重を用いてラットを処置した24時間後(A)、限局性脳梗塞を有するラットに対するビヒクル処置に関して24時間後(C)、ならびに偽手術対照群に関して24時間後(B)の異なる発現プロファイルを示している。図1Bは、ビヒクルを用いて処置された対照群に関して、組合せ(0.6μgのEGF/kg体重及び40μgのGHRP6/kg体重)を用いて処置された実験群において差次的に発現されたタンパク質を示すボルケーノグラフ(volcano graph)を示している。 診断時の臨床神経学的重症度に応じた脳梗塞患者の層別化。3つの治療群に患者を無作為に割り当てた。NIHSSスケール基準に従って、神経学的臨床重症度を評価した。 EGFとGHRP6との組合せの2つの用量レベル、又は従来の治療法を用いて治療された脳梗塞患者の生存率。 脳梗塞症状の発症から90日後の修正ランキンスケールに基づく神経学的評価による、患者に観察された結果の分布。EGF−GHRP6の組合せの2つの用量レベル、又は従来の治療法を用いて、患者を治療した。A〜Cパネルは、診断時にNIHSSスケールにより評価された脳梗塞の重症度に対応している。異なる文字は、いずれの場合も、比率比較検定についてカイ二乗に従ってp<0.001の有意差を示している。 箱ひげ図を使用した、従来の治療法、又はEGF−GHRP6の組合せの2つの用量レベルを用いて治療された患者のガレクチン−3の血清レベルの比較。クラスカル・ウォリス検定、続いてダン検定を使用して、3つの群間の差を比較した。同一の文字は有意差がないことを示し、異なる文字は統計的に有意な差があることを示している。 0.8μgのEGF/kg体重と50μgのGHRP6/kg体重との薬学的組合せを用いて治療された患者群では、ランキンスケール(0〜5)に従って、治療開始時間と90日間の臨床的進展との間に有意な相関がないことを示す線形回帰分析(A)。10μgのEGF/kg体重と5μgのGHRP6/kg体重との組合せを投与された群では、ランキンスケール(0〜5)に従って、治療開始時間と臨床的進展との間に正の有意な相関が示される(B)。 脳梗塞後2カ月及び6カ月の時点でのモントリオールスケール(Montreal scale)(MoCA)による、組合せ療法(EGF−GHRP6の組合せの2つの用量レベル)、又は従来の治療法を用いて治療された患者における認知評価の分析。また、非神経疾患を発症した患者30例の対照群も含めている。クラスカル・ウォリス検定、続いてダン検定によると、アスタリスクは統計的に有意な差を示している。
例1.限局性脳梗塞を有するラットの虚血性周辺部領域内の、EGF及びGHRP6による処置を誘導するタンパク質の差次的発現の分析。
周辺部虚血性領域内のEGF−GHRP6の組合せによる処置の効果を知るために、エンドセリン1の脳内注射によって誘発された限局性脳梗塞を有するラットを対象に実験を行った。エンドセリン1を脳内注射した2時間後、EGF−GHRP6の組合せ(0.6μg/kg体重のEGF及び40μg/kg体重のGHRP6、n=9)又はビヒクル(n=10)を用いて、ラットを処置した。両実験群を追跡し、言及された薬学的組合せによる処置の3、5及び24時間後に、偽手術群の動物と一緒に、各群の動物を殺処分した。全動物の脳組織ホモジネートを調製し、3つの群にプールした。以下の手順を行った:総タンパク質量、酵素消化、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS/MS)によるペプチド混合物の分析、及びタンパク質同定。後者は、MS/MSスペクトルに基づく配列データベースで実行し、Swissprotデータベースのドブネズミ(Rattus norvegicus)分類体系(29 982のタンパク質、2016年4月)に対する検索を減らした。無料の標識定量のために、Perseusプログラムv.1.5.2.6を統計的ツールとして使用した。各タンパク質について定量化された3つ以上の複製を考慮した。偽対照動物に関して、又はEGF−GHRP6の組合せを用いて処置された動物と処置されていない動物との間で、目的の各状態についてペアード検定を行った。変化因子が1.5以上でp値が0.05未満のタンパク質については、帰無仮説を棄却した。有意な変化を伴うタンパク質群については、5%のFDR(誤発見率)も考慮した。
同時に偽手術動物と比較することによって、各虚血動物試料の定量分析を行った。さらに、EGF−GHRP6の組合せを用いて処置された限局性脳梗塞を有する動物と、ビヒクルを用いて処置された動物とを比較した。処置後24時間の時点での組合せの作用によって、発現レベルを変化させるタンパク質の最大量を特定した。97のタンパク質がそれらの発現レベルを増加させ、124のタンパク質が減少した。図1では、プロテオミクス実験で見出された結果を見ることができる。
EGF−GHRP6の組合せ処置の効果により、虚血性周辺部領域内の発現レベルを有意に低下させたタンパク質の中には、ガレクチン−3及び興奮性アミノ酸トランスポーター2型がある。タンパク質ヘモペキシン、ニューデシン、サイトグロビン、パルブアルブミン及びカルビンジンは、むしろ、それらの発現レベルを有意に増加させた。
例2.脳梗塞生存患者の脳の回復に対するEGF−GHRP6の組合せの投与の効果。
EGF−GHRP6の組合せを用いて、虚血性病因の脳梗塞に罹患した患者50例を診断時から治療した。診断には、症状の発症後最大24時間の時間間隔を含めた。治療は1週間行い、12時間ごとに0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6との順次非経口的投与からなった。同じ投与スキームに従って、EGF−GHRP6の組合せ(10μg/kg体重のEGF及び5μg/kg体重のGHRP6)を用いて、患者35例の第2の群を治療した。基本的に症状及び合併症の治療である従来の治療法を用いて、虚血性病因の脳梗塞を有する患者42例の別の群を治療した。
米国国立衛生研究所(NIHSS)の脳梗塞スケールに従って、患者全例を評価及びスコアリングしたところ、診断時の神経学的状態を反映していた。この評価により、患者を3群、すなわち、軽度の脳梗塞(NIHSS 0〜7)、中等度の脳梗塞(NIHSS 8〜14)及び重度の脳梗塞(NIHSS 14超)に層別化することができた。診断時、開始点での患者の神経学的状態を試験群別に図2に示し、ここで、各群の平均神経学的スコアに差は認められなかったことが分かる。続いて90日目に、初期NIHSSスコアを参照(開始点として)として、修正ランキンスケールによって評価した、治療から生じた神経学的状態と比較した。生存率分析では、0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6とのEGF−GHRP6の組合せを用いて治療された群では96%の患者が生存し、従来の治療法を受けた群では60%の患者が生存したことが示された(対数範囲のManx Cox検定(Manx Cox test)によると、p=0.0001)。他の薬学的組合せ(10μg/kg体重のEGF及び5μg/kg体重のGHRP6)を用いて治療された群と比較しても、差は有意であった(同じ統計的検定によると、p=0.02)。これらの結果を図3に示す。
脳梗塞の診断から90日後、修正ランキンスケールによって患者を評価した(図4)。スコアが0から2の患者は、十分に進展し、神経学的後遺症が少なく、機能障害が小さかった。スコアが3を超える患者は、むしろ神経学的状態が悪化し、機能障害が大きかった。ランキンスケールでは、最も高い評価は最も悪い状態に相当する。この評価では、死亡した患者にランキンスケールで5の値を割り当てた。0.8μg/kg体重のEGF及び50μg/kg体重のGHRP6による治療を受けた患者群は、他の組合せ(10μg/kg体重のEGF及び5μg/kg体重のGHRP6)を用いて治療された群に関して、及び従来の治療法を用いて治療された群に関して、神経学的改善を示した(比率の比較のためのカイ二乗検定)。この差は、診断時の神経学的状態が最も悪い患者(NIHSS>15)でも顕著である。
脳梗塞の90日後の臨床評価に加えて、血清ガレクチン−3レベルを決定した。市販のELISAイムノアッセイ(R&D Systems、Minneapolis,United States)によって、このレクチンの濃度を測定した。クラスカル・ウォリス検定、続いてダン検定によって、3群を比較した。従来の治療法を用いて、又はEGFとGHRP6との他の組合せを用いて治療された患者に関して、0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6との薬学的組合せを用いて治療された患者では、このバイオマーカーの有意な減少が実証された(図5)。
後者の結果は、前臨床評価(例1)で行われたプロテオミクス試験からの証拠を確認することに加えて、0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6との薬学的組合せによる治療が、ガレクチン−3血清レベルを低下させることを示している。これは、トール様受容体(すなわち、TLR4)を介してミクログリアを活性化するレクチンの1つであり、したがって、最も悪い予後に関連する脳の炎症反応の低減及び抑制に寄与する。ガレクチン−3のこの血清減少は、本発明の薬学的組合せによって誘導される比較的好ましい脳の回復に関連している。
この臨床試験では、神経学的症状の発症後最大24時間の患者を含める時間を確立して、この組合せの効果が、脳梗塞患者への介入について確立された従来の治療ウィンドウを超えて認められるかどうかを評価した(Mowla A,et al.,J Neurol Sci 2017;376:102−5)。驚くべきことに、0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6との薬学的組合せを用いて治療された患者群は、ランキンスケールによって測定して、治療開始時間と90日目の時点での臨床転帰との間に有意な相関を示さなかった(線形回帰分析及びSpermanのr=−0.1、p=0.45)(図6A)。他の組合せ(10μg/kg体重のEGF及び5μg/kg体重のGHRP6)を投与された群では、むしろ、ランキンスケールによると、開始遅延治療と最も悪い臨床転帰との間に正の有意な相関が示された(線形回帰分析及びSpermanのr=0.36、p=0.03)(図6B)。この結果は、症状の発症後24時間の間の任意の時点での治療の実施が、治療上の利点と関連していることを意味するため、非常に重要である。さらに、この結果は、脳の回復を必要とする患者に適格基準を拡大し、本発明に先行する神経保護治療介入によって達成された結果とは対照的である。
脳梗塞に罹患している患者では、認知機能が悪化することが多い。したがって、認知機能は神経可塑性の機構の最も重要な標的の1つであり、脳の回復が成功すると回復しやすくなる。本試験では、脳梗塞発症後2及び6カ月の時点で、0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6との薬学的組合せを用いて治療された患者、10μg/kg体重のEGFと5μg/kg体重のGHRP6との組合せによる治療を受けた患者、及び従来の治療法を用いて治療された患者に、認知評価検査(モントリオール、MoCAの認知評価)を適用した。また、非神経疾患を発症した患者30例の対照群を含め、年齢及び性別に基づいて本試験の脳梗塞患者と対にした。この試験の結果から、0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6との薬学的組合せを用いて治療された患者は、2カ月の上記治療後に、従来の治療法を受けた患者、又は他の組合せ(10μg/kg体重のEGF及び5μg/kg体重のGHRP6)による治療を受けた患者と比較して、認知機能に顕著な改善を有したことが示された。6カ月の時点で、0.8μg/kg体重のEGFと50μg/kg体重のGHRP6との組合せを用いて治療された群では、認知機能のこの差が維持されるだけでなく(統計的に有意)、驚くべきことに、この群の認知機能は、非神経疾患を有する患者(対照)の認知機能とほぼ同等であった(図7)。
例3.筋萎縮性側索硬化症患者の脳の回復に対するEGFとヘキサペプチド分泌促進物質との組合せの投与の効果。
筋萎縮性側索硬化症と確定診断された患者40例に、リルテック(登録商標)(リルゾール)とともに、1日おきに6カ月にわたり、0.6μg/kg体重のEGF及び60μg/kg体重のGHRP6を静脈内投与した。疾患の起源、脊髄(n=25)又は延髄(n=15)に従って、これらの患者を前もって層別化した。筋萎縮性側索硬化症と確定診断され、脊髄(n=21)又は延髄(n=9)の起源に従って層別化された患者30例の別の群も、リルテック(登録商標)のみを用いて治療した。
試験の開始前及び終了後に、筋萎縮性側索硬化症の機能スケール(ALSFRS−R)を使用して、患者全例を評価した。ALSFRS−Rスケールは、通常、上記疾患を有する患者の神経学的評価及び機能的評価に用いられる。このスケールには、様々な機能的項目、例えば、言語、唾液分泌、嚥下、書字能力、食器の取扱い、身支度及び衛生行動、寝返り、階段昇り、ならびに呼吸に関するものが含まれる。
表1に示すように、6カ月の治療後、0.6μg/kg体重のEGF及び60μg/kg体重のGHRP6とリルテック(登録商標)とを同時に用いて治療された患者は、ある程度の臨床的改善を示した。この改善は、脊髄発症及び延髄発症の両患者に見られ、唾液分泌の減少、嚥下及び呼吸の改善、ならびに構音障害のわずかな改善であった。リルテック(登録商標)のみを用いて治療された患者群では、後者のいずれも観察されなかった。
Figure 2021534200
例4.重度の脳低酸素症を有する新生児の脳の回復に対するEGF−GHRP6の組合せの投与の効果。
0.3μg/kg体重のEGF及び30μg/kg体重のGHRP6を用いて、出産前後期の様々な原因のために重度の脳低酸素症を発症した新生児の群を人道的に治療した(n=9)。治療は1週間行い、12時間ごとにEGF−GHRP6の組合せを非経口投与した。
診断時、新生児は全例、徐波型の脳波変化を示し、超音波検査では、脳室周囲領域に浮腫の兆候とエコー輝度とが認められた。臨床的観点から、軽度の肺高血圧症、動脈性低血圧、体温維持の困難、低血糖症、及び1時間当たり1mL未満の多尿の兆候が認められた。いずれの場合も発作は最初の24時間に記録され、大部分では弱い吸引反射作用(suction reflex)及び縮瞳が観察された。
乳児を1年間追跡し、年4回診察した。妊娠初期の評価では、EGF及びGHRP6の適応用量を用いて治療された小児7例は、周期的な多源性の放電の存在を特徴とする脳波図を有したが、出産前後期に以前に評価されたものよりも頻度が低く、いずれの場合も、乳児は断続的な光刺激に反応した。超音波検査は、脳の脳室周囲の嚢胞性病変が明らかに退行していることを示した。身体検査、特にAmiel−Tisonスケールによる神経学的評価では、軽度の視覚障害及び聴覚障害とともに、筋緊張及び反射の軽度の障害、運動活動障害、ならびに一般に精神運動発達の遅滞からなる中枢神経系の軽度の機能障害が明らかにされた。6カ月の時点で、EGF−GHRP6の組合せを用いて治療された小児9例のうち8例は正常な脳波図を有した。覚醒状態では律動性が観察され、θ帯域では断続的な発光刺激に対する反応性が観察された。睡眠状態では、発作性要素を伴う入眠期過同期が認められたが、てんかん様ではなかった。磁気共鳴画像では脳室周囲の嚢胞性病変が消失したことが示され、コンピュータ断層撮影によって基底核の正常な外観が確認された。神経学的検査では、筋緊張及び反射にも運動活動にも障害は認められなかった。年齢に応じた正常な精神運動発達が証明された。視覚障害又は聴覚障害は検出されなかった。概して、乳児は社会環境に対して良好な反応を有した。
1歳の時点で、脳波パターンは治療を受けた小児9例のうち8例で正常であり、覚醒時には、6〜7Hzの後部領域の基本的なリズム、二相性の中電位から高電位、及び後頭部領域の両側性同期が明滅まで証明された。断続的な光刺激に対する反応性が低周波で観察された。睡眠記録は不規則なレム活動を示さなかったが、対称的かつ同期的な睡眠紡錘波が証明された。開始時の人道的なEGF−GHRP6の組合せによる治療から、これらの乳児の発達が、従来の治療法のみを用いて治療され、年齢に従って神経学的発達の顕著な遅滞を示した重度低酸素症の新生児のそれよりもはるかに良好であったことから、重度低酸素症の新生児に対するこの薬理学的介入が治療的に有効であることが示された。

Claims (17)

  1. 上皮成長因子(EGF)と成長ホルモン分泌促進物質ペプチドGHRP6とを含む、脳損傷を回復させるための薬学的組合せ。
  2. 体重1kg当たり0.3μg〜0.9μgのEGFと、体重1kg当たり30μg〜80μgのGHRP6とを含む、請求項1に記載の組合せ。
  3. EGF及びGHRP6が、非経口経路によって順次又は同時に投与される、請求項2に記載の組合せ。
  4. 非経口投与が、静脈内、髄腔内、脳室内、大槽内又は鼻腔内で行われる、請求項3に記載の組合せ。
  5. 髄腔内投与が、腰椎穿刺及び/又は前記経路による投与用に設計されたデバイスによって行われる、請求項4に記載の組合せ。
  6. a)EGF及び薬学的に許容される賦形剤を含む容器と、b)GHRP6及び薬学的に許容される賦形剤を含む容器とを含むキットからなる、請求項1に記載の組合せ。
  7. EGFを含む容器が5μg〜80μgのEGFを含み、GHRP6を含む容器が0.5mg〜6mgのGHRP6を含む、請求項6に記載の組合せ。
  8. 脳損傷を回復させるための薬学的組合せを製造するための、上皮成長因子(EGF)及び成長ホルモン分泌促進物質ペプチドGHRP6の使用。
  9. 組合せが、脳梗塞後の脳損傷を回復させるために用いられる、請求項8に記載の使用。
  10. 組合せの最初の投与が、脳梗塞の診断の最初の時点と診断から24時間後との間に行われる、請求項9に記載の使用。
  11. 組合せが、体重1kg当たり0.3μg〜0.9μgのEGFと、体重1kg当たり30μg〜80μgのGHRP6とを含む、請求項8に記載の使用。
  12. 上皮成長因子(EGF)と成長ホルモン分泌促進物質ペプチドGHRP6とを含む薬学的組合せの治療有効量が、それを必要とする患者に投与される、脳損傷を回復させる方法。
  13. 組合せが、体重1kg当たり0.3μg〜0.9μgのEGFと、体重1kg当たり30μg〜80μgのGHRP6とを含む、請求項12に記載の方法。
  14. 脳損傷が、虚血性、毒性、外科的性質、外傷性のものであるか、タンパク質症、遺伝性障害、又は永続的な神経損傷の他の原因によるものである、請求項12に記載の方法。
  15. 脳損傷が、脳梗塞、新生児における重度の脳低酸素症、又は筋萎縮性側索硬化症によって引き起こされる、請求項14に記載の方法。
  16. 組合せが、進行性の運動ニューロン疾患及び遅鈍性の運動ニューロン疾患の治療では、筋力、嚥下反射を改善し、構音障害を低減するために投与される、請求項12に記載の方法。
  17. 組合せが、ヒトの記憶、学習能力などの複雑な機能の保存、運動能力、感覚能力及び認知能力の回復のために投与される、請求項12に記載の方法。
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