JP2021532800A - 最適な栄養補給のためのベータ−ジペプチドとアミノ酸との組合せ - Google Patents

最適な栄養補給のためのベータ−ジペプチドとアミノ酸との組合せ Download PDF

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Abstract

本発明は、第1のアミノ酸残基としてのβ−L−アスパルチルと、第2のアミノ酸残基としての、アルギニン、リシン、オルニチン、およびシトルリンから選択されるアミノ酸とをそれぞれが含む1種または複数のβ−アスパルチル含有ジペプチドもしくはそのオリゴマーまたはその塩と、それぞれの第2のアミノ酸またはその塩との組合せを含む栄養サプリメントに関する。本発明はさらに、栄養補給のための組合せの使用、およびアミノ酸療法において使用するための組合せに関する。

Description

本発明は、第1のアミノ酸残基としてのβ−L−アスパルチルと、第2のアミノ酸残基としての、アルギニン、リシン、オルニチン、およびシトルリンから選択されるアミノ酸とをそれぞれが含む1種または複数のβ−アスパルチル含有ジペプチドもしくはそのオリゴマーまたはその塩と、それぞれの第2のアミノ酸またはその塩との組合せを含む栄養サプリメントに関する。本発明はさらに、栄養補給のための組合せの使用、およびアミノ酸療法において使用するための組合せに関する。
アミノ酸の補給は、精神的または身体的ストレスに曝されている人々のために、または運動に励むスポーツマンやボディービルダーなどのある特定の対象によって広く実践されているが、しかし多くの場合、生理的に利用可能な限界を上回る高い用量で実践されている。たとえば、アミノ酸アルギニンの投与量は、製造者によって、1日あたり6〜12gとするように推奨されることが多い。しかし、人体が一度にどれだけのアルギニンを取り込むことができるかには、自然の限界がある。ヒトの使用データでは、アルギニンの経口消費が2.5gを超えると、血中のアルギニンレベルが増大しないことが示されている。たとえば、5gのアルギニンを摂取しても、2.5gのアルギニンと同じ血中レベルとなる。また、大量のアルギニンは、胃腸痙攣や下痢などの有害作用を引き起こすこともある。今日利用可能な経口アルギニンサプリメントは、2つの限界を抱えている。第1に、アルギニンレベルを増大させることが困難であり、たとえば、強度のトレーニング期の間に、身体に利用可能なアルギニンを増やすことは、飽和の問題、および大量のアルギニンの摂取に関連したマイナスの副作用のために、実際には実現することが難しい。第2に、頻繁な投与は不便であり、運動をしているヒトは、製造者によって推奨された1日投与量を摂取するために、1日に数回アルギニンを取る必要がある(1日に1.5gを4回以上)。
一方、国際公開第2009/150252号パンフレットは、シアノフィシンの酵素消化によって得ることができるβ−Asp−Argなどのβ−ジペプチドが、アミノ酸含有サプリメントおよびアルギニン含有サプリメントとなる可能性があることを開示している。しかし、国際公開第2009/150252号パンフレットは、アミノ酸の上記の取込み限界、たとえば、アルギニンの取込み限界に関しては、いかなる解決策も提供していない。
さらに、国際公開第2017/174398号パンフレット、国際公開第2017/068149号パンフレット、および国際公開第2017/162879号パンフレットから、第2のアミノ酸残基が、アルギニン、リシン、オルニチン、グルタミン酸、シトルリン、およびカナバニンから選択される、β−L−アスパルチルジペプチドと、遊離アミノ酸との組合せ、ならびに栄養学的または化粧用組成物へのその使用は公知である。やはり、前記参考文献では、アルギニンなどのアミノ酸の取込み限界には対処がなされておらず、遊離アミノ酸の選択も、β−L−アスパルチルジペプチドの第2のアミノ酸と関連付けられていない。
今回、結合した第2のアミノ酸残基としてアルギニンまたは構造上同類であるその誘導体、たとえば、シトルリンまたはオルニチンを有する、ある特定のβ−L−アスパルチルジペプチド、特に、国際公開第2009/150252号パンフレットから公知のβ−L−アスパルチルジペプチドが、それぞれ個々(単独)のアミノ酸、アルギニン、シトルリン、およびオルニチンと組み合わせると、これらのアミノ酸の取込みを強化し、長引かせることが見出された。この効果は、β−ジペプチドの、単独のアミノ酸とは異なる取込み機序(2つの別個の特殊化された取込み経路)によって引き起こされると考えられる。ジペプチドとアミノ酸は、両方の成分が別々に取り込まれた後も、それぞれ、異なる生理的挙動を示し、組合せのうちの遊離アミノ酸成分とは異なって、ジペプチド成分は、その構成アミノ酸の代謝に関与する血漿酵素に抵抗性となる(ジペプチドのβ−ペプチド結合によるものと考えられる効果)。したがって、両方の成分の組合せは、短期かつ広範な利用能(単独のアミノ酸)ならびに(ジペプチドによる)構成アミノ酸の長期かつ的確な送達を実現するための理想的な組成物/方法となる。したがって、本発明は、以下を提供する:
(1)第2のアミノ酸残基としての、アルギニン、オルニチン、およびシトルリンから選択されるアミノ酸に結合している、第1のアミノ酸残基としてのβ−L−アスパルチル残基をそれぞれが含む1種または複数のβ−アスパルチル含有ジペプチドもしくはそのオリゴマーまたはその塩と、それぞれ個々(以下では、「単独」または「遊離」とも呼ぶ)の第2のアミノ酸またはその塩との組合せを含む栄養サプリメント、
(2)上記(1)で定義したとおりの栄養サプリメントの好ましい一実施形態において、ジペプチドであるβ−L−アスパルチル−L−アルギニンと遊離L−アルギニンまたはその塩とを含む、またはジペプチドであるβ−L−アスパルチル−L−アルギニンおよびβ−L−アスパルチル−L−リシンと遊離L−アルギニンまたはその塩、および場合により遊離リシンまたはその塩とを含む組合せ、
(3)アミノ酸療法において使用するための、上記(1)または(2)で定義したとおりの組合せ、
(4)上記(1)または(2)で定義したとおりの組合せの、ヒト栄養およびスポーツ栄養のためのアミノ酸サプリメントとしての使用、ならびに
(5)アミノ酸療法または補給のための方法であって、前記療法または補給を必要とする対象に、上記(1)または(2)で定義したとおりの組合せを適用することを含む方法。
2.5g(Δ)または5g(■)のジペプチドの経口投与後の全血中の濃度を示すグラフである。誤差バーは、平均値の標準誤差を表す。 図1に示した、2.5g(Δ)または5g(■)のジペプチドの経口投与後の全血中の濃度について、曲線下面積を示すグラフである。 2.5g(Δ)または5g(■)の経口投与後の全血中の単独のアミノ酸成分(ここでは、アルギニン)の濃度を示すグラフである。誤差バーは、平均値の標準誤差を表す。 それぞれ2.5gの組合せの経口投与後の、全血中のジペプチド成分(Δ)およびアミノ酸成分(■)の濃度を示すグラフである。誤差バーは、平均値の標準誤差を表す。 アルギニンアルギナーゼ対照反応(Mol%としての濃度)を示すグラフである。 アルギナーゼによる遊離アルギニンおよびジペプチド加水分解(%としての濃度)を示すグラフである。 異なるプロテアーゼによる24時間のジペプチド処理(%としての濃度)を示すグラフである。 4時間の時間尺度でのウシ肝臓抽出物による37℃でのジペプチドの切断(■)およびアスパラギン酸の放出(Δ)を示すグラフである。
本発明の態様(1)の組合せのβ−ジペプチドまたはβ−ジペプチドオリゴマーは、シアノフィシン(シアノフィシン顆粒ペプチドのCGPとも略される)またはシアノフィシン様ポリマーから、選択的な加水分解によって得られる。自然界では、いくつかの従属栄養細菌に加えて、ほとんどのラン藻種(ラン藻類)が、ポリペプチドCGPを炭素および窒素の備蓄材料として蓄える。CGPは、細菌の早期定常成長期に蓄積され、大部分は、2種のアミノ酸、すなわち、アスパラギン酸およびアルギニンから構成される。環境/培養条件に応じて、アルギニンと構造が似た1種または複数のアミノ酸、たとえば、リシン、オルニチン、グルタミン酸、シトルリン、およびカナバニンが、CGPのアルギニン残基と部分的に入れ替わる場合もある。
化学合成されたジペプチドに比べて、CGP−ジペプチドは、バイオマスから、生物工学的であり環境に配慮した方法で産生される、自然で立体特異的(構造が均一)な物質である。さらに、CGPジペプチドの産生には、はるかに少ない技術的費用および労力、非常に少しの時間、および極めて少ない財務努力しか必要とならない。産生プロセスでは、保護基も、有害または環境面で安全でない溶媒も用いないため、こうしたジペプチドの生体適合性は、常に確保される(Sallam et al. 2009. AEM 75:29-38)。
分解/加水分解によって得ることができるCGPβ−ジペプチド組成物は、単一種類のβ−ジペプチド、または異なるβ−ジペプチドの混合物、または単一種類のβ−ジペプチドオリゴマー、または異なるβ−ジペプチドオリゴマーの混合物、またはこうしたβ−ジペプチドおよびβ−ジペプチドオリゴマーの混合物から構成される場合がある。しかし、β−ジペプチドは、アスパラギン酸、アルギニン、リシン、およびCGPまたはCGP様ポリマーに存在する他のアミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基を含むことが好ましい。β−ジペプチドは、β−L−アスパルチル−L−アルギニンであることが特に好ましい。
CGP分解に適するCGPaseは、P.アルカリゲネス(P. alcaligenes)、特に好ましくは、P.アルカリゲネス(P. alcaligenes)DIP1株由来のCGPaseである。前記CGPaseは、(i)45kDaの分子量、50℃の最適温度、および7〜8.5の最適pH範囲を有し、CGPをβ−Asp−Argに分解する、かつ/または(ii)DSMZにDSM21533として寄託されているP.アルカリゲネス(P. alcaligenes)DIP1 CGPase CphEal、またはCGPもしくはCGP様ポリマーをジペプチドに切断することができるその突然変異体、派生体、もしくは断片である。
前述の未変性CGPaseの突然変異体、派生体、または断片には、(未変性配列の少なくとも50の連続したアミノ酸残基、好ましくは、50までの末端アミノ酸残基が除去されているNおよび/またはC末端トランケーション産物を有する)断片、派生体(特に、分泌ペプチド、リーダー配列などの機能性タンパク質およびペプチドとの融合産物、およびPEG、アルコール、アミンなどの化学部分との反応生成物)、および突然変異体(特に、未変性酵素との、アミノ酸を基準とした配列同一性が、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%であり、または1〜20、好ましくは1〜10の連続したもしくは隔てられたアミノ酸残基が、付加され、置換され、挿入され、および/または欠失されており、置換突然変異体については、保存的置換が特に好ましい、付加、置換、挿入、および欠失突然変異体)が含まれるが、しかし、前記修飾CGPaseは、未変性CGPaseの酵素活性を有することを前提とする。
分解プロセスの前に、CGPまたはCGP様ポリマー調製物を得るステップ、すなわち、原核または真核細胞株の培養が実施される場合がある。産生用細胞株は、CGPまたはCGP様ポリマーを産生することができるいずれの細胞株でもよい。産生用細胞株は、大腸菌(Escherichia coli)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、アシネトバクター・バイリイ(Acinetobacter baylyi)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、酵母菌株、および植物バイオマスから選択されることが好ましい。特に好ましい産生用細胞株は、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)H16−PHB4−Δeda(pBBR1MCS−2::cphA6308/edaH16)および大腸菌(E. coli)DH1(pMa/c5−914::cphAPCC6803)である。
上記プロセスは、産生用細胞株の培養によって得られたCGP産物を単離、精製、および/または化学修飾するステップをさらに含む場合がある。そのような単離、精製、化学修飾、および分離は、当業界で十分に確立されている方法によって実施することができる。
しかし、産生用細胞株の培養によって得られたCGP産物を、直接、すなわち、単離または精製せずに、CGPaseによる分解にかけることが好ましい。
一方、分解生成物は、精製および/または化学修飾される場合がある。ここでも、そうした精製、分離、または化学修飾は、当業界で十分に確立されている方法によって実施することができる。それには、特に、以下で実施例2に記載するとおりに、β−Asp−Arg中のアルギニン残基をシトルリンおよびオルニチンへとアルカリ加水分解して、β−Asp−Citおよびβ−Asp−Ornを得ることが特に含まれる。
態様(1)の組合せでは、1種または複数のβ−ジペプチドのそれぞれが、β−L−アスパルチルを第1のアミノ酸残基として含み、β−L−アスパルチルは、アルギニン、オルニチン、およびシトルリンから選択される第2のアミノ酸残基に共有結合されている。組合せは、加えて、第2のアミノ酸残基がリシンまたはカナバニンから選択される、構造が類似したβ−ジペプチドを含む場合もある。こうしたβ−ジペプチドのいずれかにおいて、第2のアミノ酸残基は、L−立体配置でも、D−立体配置でもよい。したがって、ジペプチドは、式I
(β−L−アスパルチル−R)
を有する場合があり、ジペプチドオリゴマーは、式II
(β−L−アスパルチル−R)
を有する場合があり、Rは、上で定義したアミノ酸残基から独立に選択され、nは、2〜150、好ましくは2〜30、最も好ましくは2〜10の整数である。
態様(1)の組合せは、さらに、互いに共有結合している2種以上の上述のとおりのジペプチドを含む場合があり、それぞれのジペプチドが結合している第2のアミノ酸残基は、独立に選択される、好ましくは、アルギニン、リシン、オルニチン、シトルリン、およびカナバニンから選択される。第2のアミノ酸残基は、アルギニンまたはリシンであることが最も好ましい。別の実施形態では、β−ジペプチドの1種または複数が、化学修飾されている。そのような化学修飾には、リン酸化、ファルネシル化、ユビキチン化、グリコシル化、アセチル化、ホルミル化、アミド化、SUMO化、ビオチン化、N−アシル化、エステル化、および環化が含まれる。
最後に、β−アスパルチルジペプチドとアミノ酸の両成分を合わせて、所望の最終組合せが得られる。このステップは、粉末形態の両成分を、たとえば、標準の「ボールミル粉砕」によって一緒に粉砕することにより実施することができる。結果として生じる両成分の組合せが、塩またはブレンド(混合物)または両方の形態の混合物のいずれになるかは、2種の成分の比およびこのステップの間に使用可能な湿度に応じて決まる。液体形態の最終組合せが所望される場合、両成分は、適切な液相、たとえば、水に同時に溶解させることによって合わせられる。本発明による組合せの剤形は、限定されない。
好ましい一実施形態では、態様(1)および(2)の栄養サプリメントは、0.01〜25gの適用可能な日用量のβ−ジペプチドもしくはそのオリゴマーまたはその塩と、0.01〜25gの遊離塩基性アミノ酸またはその塩とを、好ましくは、1〜15gのβ−ジペプチドもしくはそのオリゴマーまたはその塩と、1〜15gの遊離塩基性アミノ酸またはその塩とを、最も好ましくは、2〜5gのβ−ジペプチドオリゴマーまたはその塩と、2〜5gまたは2〜3gの遊離塩基性アミノ酸またはその塩とを含む。さらに好ましい一実施形態では、態様(1)および(2)の栄養サプリメントの組合せは、それぞれ、99:1〜1:99、好ましくは、3:1〜1:3、最も好ましくは約1:1のモル比のβ−ジペプチドまたはその塩とアミノ酸とを組み合わせ中に含む。
ジペプチドのオリゴマーは、β−ジペプチド単位が互いに共有結合されている、ホモマー(すなわち、1種のβ−ジペプチドから構成される)およびヘテロマー(すなわち、2種以上の異なるβ−ジペプチドから構成される)構造を含む。
上述のβ−ジペプチド生成物は、いくつかの条件下で安定性が高く、栄養サプリメントにおいて慣例的に使用されている許容される化合物を混ぜるのに適している。
したがって、態様(1)および(2)の生成物は、限定はしないが、グルタミン、ヒスチジン、チロシン、BCAA、またはトリプトファンを含む、1種または複数の遊離アミノ酸またはその塩をさらに含む場合がある。生成物は、限定はしないが、クレアチン、ホエータンパク質、タウリン、Sustamine、またはカルノシンを含む、1種または複数の一般的な栄養成分もさらに含む場合がある。
本発明の態様(1)および(2)の栄養サプリメントは、筋成長および筋力、トレーニング/運動の継続、運動耐性、成長ホルモン分泌の刺激、尿素排出、免疫調節、体重管理、勃起不全(ED)や血圧調節などの血流および心血管機能の支援、ヒト内皮細胞の酸化窒素(NO)刺激および細胞生存、脂肪細胞のNO刺激および褐色化、骨格筋細胞の増殖および生存、ならびに平滑筋細胞の増殖および生存を含む、アミノ酸補給を必要とするヒトに特に適する。
本発明の態様(3)は、特に、成長ホルモン分泌の刺激、尿素排出、免疫調節、勃起不全(ED)や血圧調節などの血流および心血管機能の支援、ヒト内皮細胞の酸化窒素(NO)刺激および細胞生存、脂肪細胞のNO刺激および褐色化、骨格筋細胞の増殖および生存、ならびに平滑筋細胞の増殖および生存のために、アミノ酸補給または療法において使用するための態様(1)と(2)の組合せに関係する。
本発明の態様(4)および(5)は、食品およびヒト栄養、スポーツ栄養における、態様(1)および(2)で定義したとおりの組合せのアミノ酸サプリメントとしての使用、ならびに、アミノ酸療法または補給のための方法であって、前記療法または補給を必要とする対象に、態様(1)および(2)で定義したとおりの組合せを適用することを含む方法に関する。前記使用または方法において、療法および補給は、好ましくは、筋成長および筋力、トレーニング/運動の継続、運動耐性、成長ホルモン分泌の刺激、尿素排出、免疫調節、体重管理、勃起不全(ED)や血圧調節などの血流および心血管機能の支援、ヒト内皮細胞の酸化窒素(NO)刺激および細胞生存、脂肪細胞のNO刺激および褐色化、骨格筋細胞の増殖および生存、ならびに平滑筋細胞の増殖および生存のためのものである。
DIP1 CGPase CphEalは、Westfalische Wilhelms−Universitat Munster(Corrensstr.3,48149 Munster、Germany)によって、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstr.7b,38124 Braunschweig、Germany)に、DSM21533として寄託されている。
本発明について、以下の実施例においてさらに説明するが、実施例は、本発明を限定するとは解釈されない。
[実施例1]
β−アスパルチルジペプチドの生成
CGPをジペプチドにする、CGPaseを触媒とした最終的な分解を行う前に、CGPおよび細胞外CGPase酵素を別々の発酵によって産生させた。CGPの産生については、シネコシスティス属の種(Synechocystis sp.)PCC6308のCGPシンテターゼ遺伝子(cphA)を有する市販のプラスミドを収容する大腸菌(E. coli)K12の組換え派生株を、500Lの発酵において使用し、CGPaseは、DSMZにDSM21533として寄託されているP.アルカリゲネス(P. alcaligenes)DIP1株のcphEalのゲノム組込みを収容するピキア・パストリス(Pichia pastoris)の組換え菌株を用いて産生させた。次いで、生成されたバイオマスからCGPを抽出し、精製した。CGPase酵素は、培養上清として適用された。次いで、産生されたCGPとCGPaseを特殊な条件下で合わせ、その後、バイオポリマーを、それを構成するβ−ジペプチドに分解した。次いで、β−L−アスパルチル−L−アルギニンおよびβ−L−アスパルチル−L−リシンジペプチド画分を、反応の残分から分離し、HPLCによって純度を分析し、最後に、乾燥させて粉末とした(国際公開第2009150252号パンフレットおよびSallam et al., AEM 75:29-38(2009))。2種のジペプチドを、たとえば、これらの一方を純粋な形で得るために分離するには、アルコールを用いた標準の再結晶手順を最終ステップとして適用した後、再結晶した所望の単一ジペプチドを乾燥させることができる。
[実施例2]
β−Asp−Citおよびβ−Asp−Ornを生成するためのβ−Asp−Argのアルカリ加水分解
適切な条件を選択することにより、β−L−アスパルチル−L−アルギニンのグアニジノ部分をアルカリ性pHで加水分解して、ペプチド結合を損なうことなく、β−L−アスパルチル−L−シトルリンおよびβ−L−アスパルチル−L−オルニチンを生成することができる。
β−L−アスパルチル−L−アルギニンを、室温において溶解限度までの濃度で水に溶解させた。次いで、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物溶液を使用して、pHを12.5〜13の間の値に調整した。次いで、溶液を所望の温度に加熱した。より高い温度の方が反応を加速させるため、好都合な温度は、水の沸点またはその直下の温度となった。反応の間、アルカリ溶液を適切に加えることにより、pHを一定に保った。調整なしでpHが安定したままになったとき、反応が完了した。次いで、溶液を室温に冷却し、ジペプチドをクロマトグラフィーによって精製した。典型的な変換率は、95%を上回る。β−L−アスパルチル−L−シトルリンのβ−L−アスパルチル−L−オルニチンに対する割合は、最初のジペプチド濃度、pH値、およびアルカリ溶液の選択によって制御することができる。
[実施例3]
β−アスパルチルジペプチドの単独でのまたはアミノ酸成分と組み合わせた補給
β−アスパルチル−アルギニンを、単独で、またはアルギニンと組み合わせて、様々な用量で経口投与した。次いで、血中のジペプチドレベルを経時的にモニタリングする。実験に使用した物質は、β−アスパルチル−アルギニンの白色粉末である。純度は、99%超であり、HPLC分析によって求めた。
実験手順:ボランティアは、健康な3人の男性(41〜51才、身長173〜187cm、体重80〜85kg、25kg/m前後のBMI)とした。試験物質(β−Asp−Argジペプチド、(アルギニンアスパラギン酸塩としての)アルギニン、またはこの2つの組合せ)は、一晩の絶食後、400mlの水の溶液として与えた。ボランティアには、実験中終始絶食してもらった。ランセットデバイスを使用して指先から血液を採取し、サンプルカードに吸い取らせ、ジペプチドおよびアミノ酸のレベルを、外部のサービス提供者(Labor Blessing、Singen Germany)によるUPLC−MSMSによって求めた。
結果:血中のβ−アスパルチル−アルギニンまたはアルギニンの検出:3人全員のボランティアにおいて、全血中のジペプチド濃度が、約6時間にかけて増加し、その後、低下し始め、12時間にわたって依然として検出可能であった(図1)。遊離アルギニンは、ベースラインレベルでしか検出されなかった。経口用量を2.5gから5gへと2倍にすることで、最大濃度がおよそ2倍になり、曲線下面積も2倍になった(図2)。対照的に、等モル用量の(アルギニンアスパラギン酸塩としての)遊離アルギニンでは、血中濃度が2時間以内に急速に増大したが、濃度は、4時間以内にベースラインに戻った。5g用量でも、血中濃度の実質的な増大につながらなかった(図3)。アルギニンは、血流中に自然に存在するため、曲線下面積は算出しなかった。
β−アスパルチル−アルギニンとアルギニンの同時投与:それぞれ2.5gのβ−アスパルチル−アルギニンとアルギニンとの組合せの経口用量では、血中での濃度プロファイルに、個々に投与された2つの物質それぞれについて記録されたプロファイルに比べて、変化はもたらされなかった(図4)。
結論:経口投与されたβ−アスパルチル−アルギニンは、切断されていないジペプチド形態で血流中に吸収される。ジペプチドを投与した場合、遊離アルギニンの増加が検出されなかったため、腸および血中における切断速度は、大方ごくわずかであった。実験から、物質の量を2倍にしても、アルギニン血中濃度の関連する増大につながらなかったため、2.5gのアルギニンが、すでに血液飽和限度であることも示唆される。対照的に、ジペプチドの経口用量を2.5gから5gへと2倍にすると、血液中の濃度がおよそ2倍になり、まだ飽和限度に達していないことが示唆された。ジペプチドと遊離アルギニンを両方同じ時期に同時投与すると、取り込まれる際、2つの物質が妨害し合わないことが示された。これには、異なる取込み経路も含意され、その観察される異なる取込み動態も、対応物になるものと思われることを留意すべきである。
したがって、アスパルチル−アルギニンは、加水分解されない形で腸管によって吸収され、血流中に進む。
[実施例4]
β−アスパルチルジペプチドのヒドロラーゼ感受性
アルギナーゼは、尿素回路の最終ステップを触媒し、L−アルギニンをL−オルニチンと尿素に変換する。試験した他の酵素(プロテアーゼ)は、アスパラギン酸および/またはアルギニンが関与するα−ペプチド結合を切断することができる。これらの酵素で処理した後の、遊離アミノ酸または修飾されたジペプチドの放出を、HPLCによってモニタリングする。
実験に使用した物質は、β−L−アスパルチル−L−アルギニンの白色粉末である。純度は、99%超であり、HPLC分析によって求めた。
手順:反応条件および試験したすべての酵素の詳細を、以下で表に要約する。
Figure 2021532800
結果:
HPLC分析−アルギナーゼ反応:アルギナーゼについての(遊離アルギニンとの)対照反応では、酵素が活性を有し、アルギニンがほとんど完全にオルニチンに加水分解されることが示された(図5)。対照反応とは対照的に、ジペプチドの開始濃度に対しては有意差がない(図6)。
HPLC分析−プロテアーゼ:試験したプロテアーゼのいずれによっても、開始ジペプチド濃度に対する有意差は観察されなかった(図7)。
結論:β−アスパルチル−アルギニンは、試験した酵素のうちのいずれによる加水分解に対しても感受性をもたない。
材料:
Figure 2021532800
[実施例5]
哺乳動物酵素によるβ−アスパルチルジペプチドの切断
β−アスパルチルジペプチドは、タンパク質において一般的であるα結合の代わりにイソアスパルチルペプチド結合を含んでいる。したがって、最も一般的なプロテアーゼおよびペプチダーゼによる切断に耐性がある。この耐性は、目標組織に到達する前の切断を防ぐため、腸および血流中においては有利であるが、ジペプチドがどのように代謝に導入されるかについては疑問が生じる。多種類のβ−アスパルチルジペプチドおよび関連化合物を切断することのできる、特異的な細胞質型イソアスパルターゼ(β−アスパルチルペプチダーゼとしても知られる)が、哺乳動物組織において見出されている。特異性は、β−アスパルチル部分に対するものであり、この残基に結合した部分の同一性については、ほとんど重要でない。全体としての反応は、次のとおりに要約することができる。
β−アスパルチル−X+HO→アスパラギン酸+X
実験に使用した物質は、β−L−アスパルチル−L−アルギニンの白色粉末である。純度は、99%超であり、HPLC分析によって求めた。
実験手順:肝臓は、代謝活性が高いことは公知であり、β−アスパルチルジペプチダーゼ活性を呈することが以前に示されている(Dorer et al. 1968)。容易に入手可能であるため、食肉処理業者から購入したウシ肝臓をモデルとして選択した。Waringブレンダーを使用して、肝臓(新鮮重50g)を、その体積の4倍の氷冷リン酸緩衝食塩水中でホモジナイズした。4℃にて9,000×gで15分間遠心分離することにより、不溶性物質を除去した。上清(肝臓抽出物)を試験溶液として直ちに使用した。
試験の段取り:1.5mlのポリプロピレン管に入った900μlの一定分量の肝臓抽出物を37℃のヒートブロックに入れ、10分間熱した。次いで、100μlの容量の100mMのβ−アスパルチル−アルギニンリン酸緩衝食塩水の溶液を加えて、最終濃度を10mMとした。ジペプチドを加えた後0、1、2、3、および4時間の時点で、100μlのサンプルを採取した。各サンプルを採取した後直ちに、100μlの水中10%SDSおよび700μlの脱イオン水を含有する1.5mlのねじ蓋ポリプロピレン管にそれを加えた。この管を直ちに10分間100℃に加熱して、それ以上の酵素活性を阻止した。次いで、管を室温に冷却し、100μlの10%KCl溶液を加えた。次いで、溶液を少なくとも30分間氷上で冷却して、ドデシル硫酸カリウムを沈殿させ、これを、4℃にて13,000×gで10分間遠心分離することにより、他のすべての不溶性デブリと共に沈降させた。次いで、サンプルを脱イオン水で適切に希釈し、HPLCによって分析した。
結果:ジペプチドの明らかな減少および遊離アスパラギン酸の相伴う増加が観察された。加水分解速度は、実験が進むにつれて遅くなるように思われ、アスパラギン酸の放出は、2時間以内にほとんど進行しなくなった。これは、時間と共に活性が低下し、副反応によってアスパラギン酸が捕捉されることに起因した可能性があったので、実験をより短い時間尺度でも繰り返した(図8)。これにより、より高い全体としての活性、およびジペプチド加水分解速度とアスパラギン酸放出速度のより良好な相関が見出された。活性は、1時間毎に肝臓組織1グラムあたり2.5mgのジペプチドが加水分解されるという活性に相当した。これは、0.065U/mgのタンパク質に等しく、Dorerらによって、ラット肝臓抽出物について、β−アスパルチル−グリシンを基質として使用して見出された値(0.028U/mg)に十分に比肩する。したがって、β−アスパルチル−アルギニンは、ウシ肝臓に存在する酵素によって切断される。
β−アスパルチル−アルギニンは、哺乳動物体内で、最も確かなことには、β−アスパルチルペプチダーゼが見出される他の組織においても、切断されて、それを構成するアミノ酸になることが予想される。

Claims (15)

  1. 第2のアミノ酸残基としての、アルギニン、オルニチン、およびシトルリンから選択されるアミノ酸に結合している、第1のアミノ酸残基としてのβ−L−アスパルチルをそれぞれが含む1種または複数のβ−アスパルチル含有ジペプチドもしくはそのオリゴマーまたはその塩と、それぞれの遊離の第2のアミノ酸またはその塩との混合物を含む栄養または治療用サプリメント。
  2. アミノ酸成分と前記β−アスパルチル含有ジペプチドの前記第2のアミノ酸が、L−またはD−立体配置、好ましくは、L−立体配置である、請求項1に記載のサプリメント。
  3. 前記混合物が、第1のアミノ酸残基としてのβ−L−アスパルチルとリシンおよびカナバニンから選択される結合した第2のアミノ酸残基とをそれぞれが含む1種または複数のβ−ジペプチドもしくはそのオリゴマーまたはその塩をさらに含む、請求項1または2に記載のサプリメント。
  4. (i)前記第2のアミノ酸残基がリシンであり、かつ/または
    (ii)前記第2のアミノ酸残基が、L−またはD−立体配置である、
    請求項3に記載のサプリメント。
  5. 組合せが、
    (i)ジペプチドであるβ−L−アスパルチル−L−アルギニンとアミノ酸アルギニンもしくはその塩、または
    (ii)ジペプチドであるβ−L−アスパルチル−L−アルギニンおよびβ−L−アスパルチル−L−リシンとアミノ酸アルギニン、および場合によりアミノ酸リシン、もしくはその塩、
    (iii)ジペプチドであるβ−L−アスパルチル−L−オルニチンとアミノ酸オルニチンもしくはその塩、または
    (iv)ジペプチドであるβ−L−アスパルチル−L−シトルリンとアミノ酸シトルリンもしくはその塩、または
    (v)(i)〜(iv)に記載した組合せのいずれかの混合物
    を含む、請求項1に記載のサプリメント。
  6. (i)前記オリゴマーが、共有結合した2つ以上のβ−ジペプチドを含み、かつ/または
    (ii)前記β−ジペプチドの1つまたは複数が化学修飾されている、
    請求項1から4のいずれか一項に記載のサプリメント。
  7. それぞれ、99:1〜1:99の範囲、好ましくは、3:1〜1:3の範囲、最も好ましくは約1:1のモル比の前記β−ジペプチドまたはその塩と前記アミノ酸成分とを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のサプリメント。
  8. 前記組合せが、限定はしないがグルタミン、ヒスチジン、チロシン、BCAA、またはトリプトファンから選択されることが好ましい、適用可能な濃度の1種または複数の遊離アミノ酸またはその塩をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のサプリメント。
  9. 前記混合物が、限定はしないがクレアチン、ホエータンパク質、タウリン、Sustamine、カルノシン、ビタミン、またはミネラルを含む、食品または飼料サプリメントにおいて慣例的に使用される、適用可能な濃度の1種または複数の成分をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のサプリメント。
  10. 筋成長および筋力、トレーニング/運動の継続、運動耐性、成長ホルモン分泌の刺激、尿素排出、免疫調節、体重管理、勃起不全(ED)や血圧調節などの血流および心血管機能の支援、ヒト内皮細胞の酸化窒素(NO)刺激および細胞生存、脂肪細胞のNO刺激および褐色化、骨格筋細胞の増殖および生存、ならびに平滑筋細胞の増殖および生存を含む、アルギニン補給を必要とするヒトのための、請求項1から9のいずれか一項に記載のサプリメント。
  11. 栄養療法において使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載のサプリメント。
  12. 食品、ヒト栄養、およびスポーツ栄養におけるアミノ酸サプリメントとしての、請求項1から9のいずれか一項に記載のサプリメントの使用。
  13. 前記補給が、筋成長および筋力、トレーニング/運動の継続、運動耐性、成長ホルモン分泌の刺激、尿素排出、免疫調節、体重管理、勃起不全(ED)や血圧調節などの血流および心血管機能の支援、ヒト内皮細胞の酸化窒素(NO)刺激および細胞生存、脂肪細胞のNO刺激および褐色化、骨格筋細胞の増殖および生存、ならびに平滑筋細胞の増殖および生存のためである、請求項12に記載の使用。
  14. アミノ酸療法または補給のための方法であって、前記療法または補給を必要とする対象に、請求項1から9のいずれか一項に記載の組合せを適用することを含む、方法。
  15. 前記療法および補給が、筋成長および筋力、トレーニング/運動の継続、運動耐性、成長ホルモン分泌の刺激、尿素排出、免疫調節、体重管理、勃起不全(ED)や血圧調節などの血流および心血管機能の支援、ヒト内皮細胞の酸化窒素(NO)刺激および細胞生存、脂肪細胞のNO刺激および褐色化、骨格筋細胞の増殖および生存、ならびに平滑筋細胞の増殖および生存のためである、請求項14に記載の方法。
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