JP2021512654A - 温熱条件の組織からの幹細胞の単離方法及びその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、幹細胞を得る方法及びこのような幹細胞の使用を提供する。温熱で処置された幹細胞含有組織から幹細胞を単離する方法が提供される。これらの方法を実施することにより、幹細胞単離の収率、二次培養における幹細胞の増殖速度、並びに自己免疫疾患、肝疾患及び癌(これらに限定されない)を含む疾患における治療的使用のための幹細胞の治療効力を実質的に増加させる。
Description
本出願は、米国仮出願第62/632,988(2018年2月20日出願)の利益を受けることを請求し、全ての目的のために、参照することによりその全体が本明細書に記載されているかのように組み込まれる。
本開示は、間葉系幹細胞(MSC)含有組織又は間葉系幹細胞を操作して向上した増殖能及び治療効力を有するMSCを得るための、温熱条件を使用する方法に関する。
間葉系幹細胞(MSC)に基づく治療の分野における主な課題は、インビトロにおける広範な継代の必要性なしで適切な段階で十分な量の細胞を生成することである。MSCは、制限された寿命を有し、インビトロ拡張(expansion)の間、MSCの増殖速度は低下していく。また、MSCの治療効力は、インビトロ培養拡張後に減少する可能性がある。
(概要)
MSCに基づく治療は、MSCの治療効力(疾患の処置においてより効果的で一貫した結果を得るための、抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、幹細胞の遊走及び分化を含むが、これらに限定されない)を維持又は向上させる方法から利益を得ることができる。
MSCに基づく治療は、MSCの治療効力(疾患の処置においてより効果的で一貫した結果を得るための、抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、幹細胞の遊走及び分化を含むが、これらに限定されない)を維持又は向上させる方法から利益を得ることができる。
MSCは通常、生理的状態において静止している一方、感染又は損傷などの病理学的環境において、MSCは活性化して機能的になり、栄養因子若しくは抗炎症因子を分泌すること及び/又は分化を通して失われた細胞を置換することにより、損傷を受けた組織を修復又は再生する。
従って、本明細書で開示されるいくつかの実施形態に従い、疾患模倣環境によるMSCの事前調整により、MSCはより強力な増殖及び治療機能が付与される。例えば、MSCの複製及び分化能を制御するために、MSC培養に低酸素状態が導入されている(特許PCT/US2010/032457号「幹細胞及び幹細胞因子の組成物並びにそれらを使用及び作製するための方法」)。以下でより詳細に記載される別個のアプローチにおいて、MSC含有組織を(又はMSC自体を直接)操作して向上した増殖能及び治療効力を有するMSCを得るために、温熱条件を使用する方法が提供される。
いくつかの実施形態において、MSCを含有するヒト又は他の哺乳類組織を処置してインサイチュでMSCを活性化し、結果として増殖速度及び幹細胞単離の収率を実質的に向上させるために及び/又は抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、単離後のMSCの遊走及び分化を含む治療効力を向上させるために、温熱条件を使用する方法が提供される。特に、いくつかの実施形態において、温熱処置されたヒト臍帯組織から活性化された/プライミングされた(primed)MSCを導出するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、ヒト臍帯組織は、満期分娩からのものである。更なる実施形態において、MSC含有組織(単離前)及びMSC(単離後)の両方を処置して増殖速度を向上させるために及び/又は抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、単離後のMSCの遊走及び分化を含む治療効力を向上させるために、温熱を使用する方法が提供される。自己免疫疾患、神経疾患、肝疾患又は癌(これらを含むが限定されない)用の療法として本明細書に開示される方法に由来する、幹細胞(MSC、神経幹細胞及び造血幹細胞を含むがこれらに限定されない)の組成物及び使用も提供される。
いくつかの実施形態において、対照と比較して向上した増殖速度を有するMSCを単離するために、温熱条件で間葉系幹細胞(MSC)含有組織を処置する方法が示される。いくつかの実施形態において、当該方法は、MSC含有組織を単離する工程、最適化培地においてMSC含有組織を培養する工程、温熱条件に組織を曝露させる工程、及び内科疾患を患う患者に療法を提供する工程、を含む。
いくつかの実施形態において、温熱条件により、対照と比較して向上した増殖速度及び治療効力を有するMSC含有組織が生成される。
いくつかの実施形態において、温熱条件は、摂氏37〜約40度(℃)を含む温度範囲から成る。より高い温度も、いくつかの実施形態において使用される。
いくつかの実施形態において、MSC含有組織を培養するために使用される最適化培地は、成長因子(bFGF、EGF)及びホルモン(デキサメタゾン)、抗生物質(Pen/Strap、アムホテリシンB)、血清、及びゼノフリー血清代替物から選択される1つ以上の補助剤を含む。
いくつかの実施形態において、MSC含有組織は、臍帯に由来してもよい。ヒト臍帯組織は、臍帯血が含まれず臍帯血とは異なり、組織の羊膜上皮、血管(2つの動脈及び1つの静脈)、及び、ホウォートンゼリーストローマ(Wharton‘s Jelly Stroma)を含む固形成分をいずれも除外することなく完全な臍帯固形組織を含む。
1つの実施形態において、ヒト臍帯組織は、最適化培地において培養する前に酵素消化無しで組織を切断することにより、分解される。
1つの実施形態において、ヒト臍帯組織は、直径1〜1.5mmを含む小さな切片に切断され、切断又は撹拌による損傷後の組織の環境を維持するために洗浄されず、次いで培養に直接使用される。
いくつかの実施形態において、MSC含有組織は、骨髄、脂肪組織、血液、羊水、歯髄及び胎盤から採取されてもよい。
いくつかの実施形態において、向上した増殖速度及び治療効力を有するMSCは、抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、MSCの遊走分化を含む、内科疾患を処置するのに適切に使用される。
いくつかの実施形態において、温熱条件は、温熱処置に加えて、切断又は撹拌、HGMB1、S100Bなどのダメージ関連分子パターン(DAMPs)、ペプチドグリカン(PGN)及び二本鎖RNAなどの病原体関連分子パターン(PAMPs)、熱ショックタンパク質、炎症性サイトカイン(TNF−α、IFN−γ、インターロイキン−1(IL−1)など)刺激、幹細胞遊走関連タンパク質(CXCL12、G−CSF、SCF、PDGF−BBなど)刺激及び低酸素状態(<20% O2)、のうちの1つ以上を含んでもよい。
1つの実施形態において、ダメージ関連分子パターン(DAMPs)は、HGMB1(クロマチン関連タンパク質高移動度群ボックス1)、S100B、プリン代謝産物(ATP、アデノシン、及び尿酸)を含むが、これらに限定されない。
1つの実施形態において、病原体関連分子パターン(PAMPs)は、ペプチドグリカン(PGN)、及び二本鎖RNAを含むが、これらに限定されない。
1つの実施形態において、熱ショックタンパク質は、HSP40、HSP60、HSP70、HSP72、HSP78、HSP90、HSP104、HSP110を含むが、これらに限定されない。
1つの実施形態において、炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、TGF−β、IL−1、IL−6、IL−8を含むが、これらに限定されない。
1つの実施形態において、幹細胞遊走関連タンパク質は、CXCL12(ストローマ細胞由来因子−1:SDF−1)、CCL2(単球走化性タンパク質−1:MCP−1)、CCL5(活性化制御で、正常T細胞で発現、分泌される(regulated on activation,normal T cell expressed and secreted):RANTES)、CCL8、G−CSF、SCF、PDGF−BBを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、当該療法は、自己免疫疾患若しくは肝疾患、又は癌を処置するために使用されてもよい。
いくつかの実施形態において、当該療法は、様々な自己免疫疾患を処置する可能性がある。これらの疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、自己免疫性膵炎、1型糖尿病、全身性硬化症を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、当該療法は、様々な肝疾患を治療する可能性がある。これらの肝疾患は、肝不全、肝硬変、脂肪肝、肝炎を含んでもよい。
温熱条件無しで単離された対照MSCと比較して向上した増殖速度及び治療効力を有するMSCの単離のために、温熱条件で間葉系幹細胞(MSC)含有組織を処置する方法、である。
別の実施形態において、温熱条件はまた、単離後のMSCを処置又はMSC含有組織とMSCとの両方を処置して、向上した増殖速度及び治療効力を有するMSCを生成するために使用される。
温熱条件は、「ヒトの正常生理的深部体温の摂氏37度(℃)よりも高い温度」である温熱を少なくとも含む。本発明において使用される温熱条件は、摂氏37〜40度を含むが、これに限定されない。
MSC含有組織は、好ましくはヒト臍帯組織を含み、このヒト臍帯組織は、臍帯血が含まれず臍帯血とは異なり、組織の羊膜上皮、血管(2つの動脈及び1つの静脈)、及び、ホウォートンゼリーストローマを含む固形成分をいずれも除外することなく完全な臍帯固形組織を含む。
MSC含有組織の他の例としては、骨髄、脂肪組織、血液、羊水、歯髄及び胎盤が含まれるが、これらに限定されない。
MSCの治療効力は、抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、MSCの遊走分化を含むが、これらに限定されない。
他の実施形態において、温熱条件は、温熱処置に加えて、以下:機械的切断又は撹拌、HGMB1、S100Bなどのダメージ関連分子パターン(DAMPs)、ペプチドグリカン(PGN)及び二本鎖RNAなどの病原体関連分子パターン(PAMPs)、熱ショックタンパク質、炎症性サイトカイン(TNF−α、IFN−γ、インターロイキン−1(IL−1)など)刺激、幹細胞遊走関連タンパク質(CXCL12、G−CSF、SCF、PDGF−BBなど)刺激及び低酸素状態(<20% O2)のうちの1つ以上を含んでもよい。
ダメージ関連分子パターン(DAMPs)は、HGMB1(クロマチン関連タンパク質高移動度群ボックス1)、S100B、プリン代謝産物(ATP、アデノシン、及び尿酸)を含むが、これらに限定されない。
病原体関連分子パターン(PAMPs)は、ペプチドグリカン(PGN)、及び二本鎖RNAを含むが、これらに限定されない。
熱ショックタンパク質は、HSP40、HSP60、HSP70、HSP72、HSP78、HSP90、HSP104、HSP110を含むが、これらに限定されない。
炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、TGF−β、IL−1、IL−6、IL−8を含むが、これらに限定されない。
幹細胞遊走関連タンパク質は、CXCL12(ストローマ細胞由来因子−1:SDF−1)、CCL2(単球走化性タンパク質−1:MCP−1)、CCL5(活性化制御で、正常T細胞で発現、分泌される(regulated on activation,normal T cell expressed and secreted):RANTES)、CCL8、G−CSF、SCF、PDGF−BBを含むが、これらに限定されない。
請求項3に記載のヒト臍帯組織からMSCを単離するための方法では、好ましくは、酵素消化無しでの機械的切断により、組織分離が得られる。
当該方法では、ヒト臍帯組織は、小さな切片(直径1〜1.5mm)に機械的に切断され、組織培養に直接使用され、ここで切断又は撹拌による機械的損傷後の環境を維持するために、この切片の洗浄は行われない。
最適化培地及び補助剤(成長因子(bFGF、EGF)及びホルモン(デキサメタゾン)、抗生物質(Pen/Strap、アムホテリシンB)、血清を含む又は含まない、ゼノ(xeno)を含む又は含まないものなど)でMSCを培養及び増殖する方法。
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患若しくは肝疾患及び癌を処置するためのMSCの組成物及び使用も、提供される。
自己免疫疾患を処置する方法は、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、自己免疫性膵炎、1型糖尿病、全身性硬化症を含むが、これらに限定されない。
肝疾患の治療方法の対象は、肝不全、肝硬変、脂肪肝、肝炎を含むがこれらに限定されない。
(詳細な説明)
いくつかの実施形態は、間葉系幹細胞(MSC)含有組織又は幹細胞を直接処置して向上した増殖及び治療効力(抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有するMSCを生成するための他の疾患模倣条件の存在又は不在下での温熱様条件の使用に関する。ごく一般的な言い方をすると、少なくとも向上した増殖及び/又は治療特性を有する幹細胞集団を生成するために、他の疾患模倣条件の有無にかかわらず温熱条件で幹細胞含有組織をインキュベートすること、温熱条件の組織から幹細胞集団を単離すること、疾患模倣条件の幹細胞集団の存在又は不在化で温熱への曝露の有無にかかわらずインビトロで幹細胞集団を培養することにより、このような実施形態は実施され得る。ここで開示される幹細胞を用いる方法はまた、本発明の実施形態として企図される。
いくつかの実施形態は、間葉系幹細胞(MSC)含有組織又は幹細胞を直接処置して向上した増殖及び治療効力(抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有するMSCを生成するための他の疾患模倣条件の存在又は不在下での温熱様条件の使用に関する。ごく一般的な言い方をすると、少なくとも向上した増殖及び/又は治療特性を有する幹細胞集団を生成するために、他の疾患模倣条件の有無にかかわらず温熱条件で幹細胞含有組織をインキュベートすること、温熱条件の組織から幹細胞集団を単離すること、疾患模倣条件の幹細胞集団の存在又は不在化で温熱への曝露の有無にかかわらずインビトロで幹細胞集団を培養することにより、このような実施形態は実施され得る。ここで開示される幹細胞を用いる方法はまた、本発明の実施形態として企図される。
温熱
用語「温熱」、「温熱条件」及び「高温」は、通常のそれらの意味を有し、及び「正常な生理的ヒト体温である摂氏37度よりも高い温度」を指すものとする。温熱条件は一般的に、摂氏37度より高い、好ましくは摂氏37〜41度、より好ましくは摂氏38度である任意の温度を意味する。正常な生理的ヒト体温は、異なる組織又は器官において変わり、よっていくつかの実施形態において、幹細胞含有組織用に使用される条件は、組織及び器官の起源に依存し、このような条件は、当業者に公知である。生理的体温は、健康な組織又は器官において通常見いだされる酸素レベルの範囲である。
用語「温熱」、「温熱条件」及び「高温」は、通常のそれらの意味を有し、及び「正常な生理的ヒト体温である摂氏37度よりも高い温度」を指すものとする。温熱条件は一般的に、摂氏37度より高い、好ましくは摂氏37〜41度、より好ましくは摂氏38度である任意の温度を意味する。正常な生理的ヒト体温は、異なる組織又は器官において変わり、よっていくつかの実施形態において、幹細胞含有組織用に使用される条件は、組織及び器官の起源に依存し、このような条件は、当業者に公知である。生理的体温は、健康な組織又は器官において通常見いだされる酸素レベルの範囲である。
本発明による使用のための疾患模倣条件は、炎症性サイトカイン、機械的切断又は攪拌、ダメージ関連分子パターン(DAMPs)、病原体関連分子パターン(PAMPs)、熱ショックタンパク質、幹細胞遊走関連タンパク質及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、温熱条件は、摂氏約37〜41度の温度を含む。追加の実施形態において、温熱条件は、摂氏約37.5〜約38.5度の温度を含む。更なる実施形態において、温熱条件は、摂氏約38度の間の温度を含む。いくつかの実施形態において、温熱条件は、一般的にこれらの範囲のいずれか又は特定の細胞に対する生理的温熱条件を模倣するこれらの範囲のいずれかの間の温熱条件に該当する。従って、いくつかの実施形態において、温度の培養条件は、摂氏37.1、37.2、37.3、37.4、37.5、37.6、37.7、37.8、37.9、38.0、38.1、38.2、38.3、38.4、38.5、38.6、38.7、38.8、38.9、39.0、39.1、39.2、39.3、39.4、39.5、39.6、39.7、39.8、39.9、40.0、40.1、40.2、40.3、40.4、40.5、40.6、40.7、40.8、40.9、41.0度又はこれらの数字のいずれかの間にある任意の他の温度条件に設定される。
1つの実施形態において、温熱条件は、幹細胞の生成中に導入される。当業者は、幹細胞生成のための温熱条件の導入のタイミングが、所望する幹細胞の特徴に依存することを理解するであろう。温熱条件は、幹細胞の生成中の任意のタイミングで導入され得る。温熱条件は、幹細胞含有組織の収集後、機械的又は酵素的方法によりこのような組織試料を任意の大きさの切片に分離後、幹細胞の初代培養(例えば外植)中、幹細胞のインビトロ拡張中(例えば、複数の細胞継代にわたって)、プライミング中(例えば、幹細胞が被験体への注入前の所望の生物学的活性を呈するように誘導されるとき)及びそれらの組み合わせを含むタイミングで導入されるが、これらに限定されない。
MSC含有組織及び/又はMSCは、高められた増殖速度及び治療効力(本明細書で開示されるような、抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有する幹細胞の生成を可能にする任意の方法下で温熱条件に曝露され得る。幹細胞の増殖速度を指すのに使用される場合、「向上した」は、幹細胞の有糸分裂細胞の分裂速度における任意の測定可能な増加を意味する。幹細胞の治療効力を指すのに使用される場合、「向上した」は、幹細胞がインビトロ培養において拡張及び継代する際の、幹細胞の抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着又は分化特性を維持すること、又は喪失を阻害することを意味する。
生理的又は温熱培養条件は、本明細書に記載の温熱条件の範囲に到達可能な市販のチャンバーを使用することにより維持できる。温熱条件の温度に予め温められ、培養物の底部を温度制御加熱プラットフォームに接触させることにより維持された培養培地で幹細胞含有組織及び/又は幹細胞をインキュベートすることにより、温熱培養条件はまた、達成され得る。特定の実施形態において、本明細書に記載の温度制御チャンバー、予め温めた培養培地及び温度制御加熱プラットフォームのうちいずれか2つ又は全ての方法が、温熱培養条件を達成するために使用され得る。
1つの実施形態において、MSC含有組織及び/又は幹細胞が温熱条件に曝露される時間の長さは、制御される。このような実施形態では、幹細胞含有組織及び/又は幹細胞は、本明細書で開示される幹細胞の増殖及び/又は治療効力を向上させる任意の時間の間、温熱条件に曝露され得る。この時間は、5分、10分、15分、20分、30分、45分、60分又はそれ以上であってもよく、この時間は連続的であってもよい(例えば、組織収集からインビトロで培養した幹細胞の収集までの全時間)。培養物が温熱曝露の時間枠内にはない場合、培養物に対する典型的なインキュベーション条件は、5%CO2,20%O2、湿度100%、温度が摂氏約37度である。
間葉系幹細胞含有組織及び間葉系幹細胞
間葉系幹細胞(MSC)含有組織及びMSCで実施されるいくつかの実施形態において、本発明は、幹細胞が存在する任意の組織及び本発明の方法下で増大され得る任意の幹細胞(又は幹細胞の組み合わせ)を操作するために使用され得る。本発明による使用のための適切な幹細胞含有組織は、ヒト又は他の哺乳類の臍帯組織、臍帯血、骨髄穿刺液、脂肪組織(すなわち脂肪)、胎盤、羊水、歯髄、末梢血、骨、軟骨、心臓、肺、腎臓、肝臓、脳、脊髄、皮膚及び腫瘍組織を含むが、これらに限定されない。本発明による使用のための適切な幹細胞は、多能性胚性幹細胞、MSC、神経幹細胞、造血幹細胞、内皮前駆細胞、肝幹細胞、心臓幹細胞、皮膚幹細胞及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
間葉系幹細胞(MSC)含有組織及びMSCで実施されるいくつかの実施形態において、本発明は、幹細胞が存在する任意の組織及び本発明の方法下で増大され得る任意の幹細胞(又は幹細胞の組み合わせ)を操作するために使用され得る。本発明による使用のための適切な幹細胞含有組織は、ヒト又は他の哺乳類の臍帯組織、臍帯血、骨髄穿刺液、脂肪組織(すなわち脂肪)、胎盤、羊水、歯髄、末梢血、骨、軟骨、心臓、肺、腎臓、肝臓、脳、脊髄、皮膚及び腫瘍組織を含むが、これらに限定されない。本発明による使用のための適切な幹細胞は、多能性胚性幹細胞、MSC、神経幹細胞、造血幹細胞、内皮前駆細胞、肝幹細胞、心臓幹細胞、皮膚幹細胞及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、MSC含有組織が使用される。すなわち、MSC含有組織を処置するために他の疾患模倣条件の存在又は不在下で温熱を用いることにより、向上した増殖及び治療効力(抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有するMSCが生成される。MSCは、任意のヒト及び他の哺乳類の組織又は器官から単離され得、よってMSC含有組織は、ヒト又は他の哺乳類の臍帯組織、臍帯血、骨髄穿刺液、脂肪組織(すなわち脂肪)、胎盤、羊水、歯髄、末梢血、骨、軟骨、心臓、肺、腎臓、肝臓、脳、脊髄、皮膚及び腫瘍組織を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、MSC含有組織としてヒト臍帯組織が使用される。すなわち、ヒト臍帯組織を処置するために他の疾患模倣条件の存在又は不在下で温熱を用いることにより、向上した増殖及び治療効力(抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有するMSCが生成される。ヒト臍帯組織は、分娩直後に満期妊娠健康ドナーから無菌条件下で採集される。臍帯又はその切片は、適切な温度(好ましくは摂氏2〜8度)で維持された保存培地を含む滅菌容器において、分娩の臨床現場から処置実験室に輸送される。臍帯組織は、臍帯血が含まれず臍帯血とは異なり、羊膜上皮、2つの動脈及び1つの静脈、並びにホウォートンゼリーを含む。本発明のいくつかの実施形態において、臍帯組織は、温熱曝露及びMSC単離用のバルクとして使用される。すなわち、組織培養の前に、臍帯組織の成分は除去されない。
いくつかの実施形態によるMSC含有組織及び/又はMSC用の培養及び/又は継代条件は、本明細書に記載のMSC含有組織インキュベーション又はMSCの拡張に適した任意の培養及び/又は継代条件を用いて、好ましくは基本成長培地としてDMEM/F12を用いて、実施されてもよい。すなわち、これらの実施形態は、向上した増殖及び治療効力(抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有するMSCを生成するために、本明細書に記載の他の疾患模倣因子の存在又は不在下で温熱と組み合わせた場合、任意の細胞培養及び/又は継代条件を用いて、好ましくは基本成長培地としてDMEM/F12を用いて実施されてもよい。本明細書で使用する用語「細胞培養及び/又は継代条件」は、基本成長培地、血清、栄養物、追加の成長因子補助剤、継代のための細胞コンフルエンス(confluence)速度、継代中の細胞剥離及び解離用に使用される消化酵素、細胞播種密度、細胞バンク保存又は使用のために採取する細胞(継代)のステージ、及びこれらの組み合わせ、を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、MSC含有組織用の培養条件は、MSCの目的により、MSC含有組織から単離される次のMSC用に使用される培養条件とは同一であるか又は異なっていてもよい。すなわち、MSC含有組織としてヒト臍帯組織を使用する場合、ヒト臍帯組織用の培養条件は、ヒト臍帯組織由来MSCに対して使用される培養条件とは同一又は異なっていてもよい。
幹細胞バンキング
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される他の疾患模倣因子の存在又は不在下での温熱への幹細胞含有組織、幹細胞自体、又はその両方の曝露後に、向上した増殖及び治療効力(抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有する、幹細胞の、好ましくはヒト臍帯組織からの間葉系幹細胞(MSC)のバンクを生成する方法が提供される。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される他の疾患模倣因子の存在又は不在下での温熱への幹細胞含有組織、幹細胞自体、又はその両方の曝露後に、向上した増殖及び治療効力(抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、遊走、ホーミング、生着、又は分化特性を含む)を有する、幹細胞の、好ましくはヒト臍帯組織からの間葉系幹細胞(MSC)のバンクを生成する方法が提供される。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される方法で生成される、向上した増殖及び治療効力を有するヒト臍帯組織からのMSCは、細胞の適切な段階(継代)でバンクされる(banked)。幹細胞の培養がひとたび確立すると、十分な細胞密度(例えば80〜90%のコンフルエンス)に到達するときに新鮮な培地に培養物が移送されるものとする。すなわち、細胞密度がコンフルエンスを超えている(例えば、100%コンフルエンス)状態の細胞の単分子層の形成は、防止又は最小化させるべきである。あるいは、懸濁細胞培養システムにおいて細胞が接着する又は成長するのを防止するために、培養システムが撹拌され得る。
いくつかの実施形態において、特定のドナーユニットからの幹細胞用の細胞バンクは、少なくとも1つのマスター細胞バンク(Master Cell Bank)及び少なくとも1つのワーキング細胞バンク(Working Cell Bank)を含む。本明細書で使用される「マスター細胞バンク」は、単一のドナーからのヒト臍帯組織ユニットから調製された幹細胞のプールである。「ワーキング細胞バンク」は、マスター細胞バンク由来の幹細胞のプールである。
1つの実施形態では、細胞バンクにおける幹細胞は、本発明において凍結保存される。細胞の冷凍保存は、例えば、Doyleら,1995,Cell and Tissue Culture(参照)に記載の方法などの任意の周知の方法に従って実行されてもよい。例えば、限定するのではなく、細胞は、例えばミリリットル当たり約1〜10×106細胞数の密度で、10〜90%のウシ胎児血清(FBS)及び10%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培養培地などの「凍結培地」において懸濁されてもよい。細胞は、ガラス又はプラスチックアンプルに分注され、次いで密閉され、プログラム可能な冷凍庫の凍結チャンバーに移送される。凍結の最適速度は、経験的に決定される。例えば、融解熱を通して1分当たり約−1℃の温度の変化を与える凍結プログラムが、使用されてもよい。一旦アンプルが約−180℃到達すると、アンプルは、液体窒素貯蔵エリアに移送される。凍結保存された細胞は、数年間にわたって貯蔵され、凍結保存された細胞の試料を、生存能力及び/又は効力を維持するための貯蔵の確立後、適切な頻度(例えば、6又は12ヶ月毎)でチェックするものとする。
本明細書で開示される細胞バンクにおける凍結保存された細胞は、解凍により「呼び起こされ(woken up)」てもよく、次いで、必要に応じて、マスター細胞バンクからワーキング細胞バンクを生成するため、又は、ワーキング細胞バンクから幹細胞治療剤を生成するために、使用されてもよい。解凍は、例えばアンプルを液体窒素から摂氏37度の水槽に移送することにより、一般的に急速に行われる。アンプルの解凍された内容物は、本発明に記載の継代培養及び拡張のために、例えば成長因子有り又は無しの、10% FBSが補充されたDMEM/DF12などの適切な培地を含む培養容器に滅菌条件下で即座に移送されるものとする。
いくつかの実施形態において、1)幹細胞含有組織からの幹細胞の遊走を加速させ、幹細胞が親組織から離れて培養で個別に成長するのに必要な時間を減少させること、2)培養における幹細胞の増殖速度を上昇させて、細胞の特定の段階(継代)到達する又は細胞バンク貯蔵若しくは利用のための所望の数の幹細胞を得る時間を減少させることにより、特定の幹細胞含有組織からの幹細胞の製造のために、効率及びスケールアップ能力が向上される。
いくつかの実施形態において、幹細胞の治療効力は、向上される。このような実施形態において、他の疾患模倣条件の存在又は不在下でその親の幹細胞含有組織、それら自体又は両方を温熱に曝露させることにより、幹細胞は増加した治療効力を得る。幹細胞が、インビトロ、インビボ、又は両方であれ、効力検定における読み取り情報で測定可能な増加を有する場合、幹細胞は向上した治療効力を有するとみなされ、そのことは、インビボ遊走、増殖、生存、生着、抗炎症、免疫調節、因子の分泌、及び/又は分化能力を反映する。
1つの実施形態において、幹細胞は、様々な自己免疫疾患及び障害における使用のために(例えば間葉系幹細胞(MSC))提供される。本明細書で使用される用語「自己免疫疾患及び障害」は、例えば、体の免疫系が関節を攻撃して関節の圧痛、腫れ、及び機能障害を引き起こす関節リウマチ、体の免疫系が消化管を攻撃し、腹痛、下痢、発熱、及び体重減少を引き起こすクローン病、体の免疫系が、神経線維を覆うミエリンのオリゴデンドロサイトを攻撃し、神経機能障害を引き起こす多発性硬化症などの、体の免疫系が健康な細胞を攻撃し、攻撃された組織又は器官の通常の機能を損なう状態を指す。他の自己免疫疾患及び障害は、1型糖尿病、乾癬、全身性エリテマトーデス(ループス)、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、血管炎、悪性貧血、セリアック病を含むが、これらに限定されない。
他の実施形態において、幹細胞は、様々な肝疾患及び障害における使用のために生成される(例えばMSC)。本明細書で使用される用語「肝疾患及び障害」は、例えば、様々な原因からの慢性肝疾患により損傷及び肝不全が引き起こされる肝硬変、酒の飲みすぎにより肝炎が引き起こされるアルコール性肝炎など(これらに限定されない)を含む、肝臓に損傷を与える及び/又は肝臓が正常に機能することを妨げる任意の状態を指す。他の肝疾患及び障害は、非アルコール性脂肪性肝疾患及び感染性肝炎(例えば、B型肝炎)を含むが、これらに限定されない。
他の実施形態において、様々な悪性疾患を治療するための薬物送達プラットフォームとしての使用のために、幹細胞は生成される(例えばMSC)。本明細書で使用される用語「悪性疾患」、「癌」又は「腫瘍」は、異常細胞が制御不能に分裂し、体の組織を破壊する任意の疾患を指す。悪性疾患は、乳癌、結腸癌、肺癌、肝癌、脳癌、及び胃癌を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、治療剤としての幹細胞の組成物は、薬学的に許容可能な担体溶液において適切な量の細胞を懸濁させることにより製剤化される。溶液における幹細胞の最終濃度は、ミリリットル当たり1×105、ミリリットル当たり2×105、ミリリットル当たり5×105、ミリリットル当たり1×106、ミリリットル当たり1.5×106、ミリリットル当たり2×106、ミリリットル当たり3×106、ミリリットル当たり4×106又はミリリットル当たり5×106である。他の態様において、溶液における幹細胞の最終濃度は、治療の特定の目的により、ミリリットル当たり1×105からミリリットル当たり1×107の範囲のいずれかでよい。本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能な」は、ヒト又は他の哺乳類に、全身的に又は局所的に投与されるときに、任意の有害反応又は許容可能な有害反応(もしあるとしても)を引き起こさない担体溶液を意味する。このような担体は無毒で、体において炎症又はアネルギー(anergic)反応を生じず、良好な安全性プロフィールでヒト又は他の哺乳類において使用されている。本発明を実施するための薬学的に許容可能な担体は、例えば培養培地及びリン酸緩衝生理食塩水など、免疫性付与に有用な周知の成分のいずれかを含む。更なる生理学的に許容可能な担体及びその製剤は、周知であり、一般的に例えば、Remington‘s Pharmaceutical Science (18th Ed.,Gennaro,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990)及びthe Handbook of Pharmaceutical Excipients(4th Ed.,Roweら Pharmaceutical Press,Washington,D.C.)(参照)(それぞれ、参照することにより組み込まれる)に記載される。
いくつかの実施形態において、本発明における幹細胞の治療剤は、全身的に又は局所的に被験体に投与される。本明細書で使用される用語「全身的に」は、投与について、全身に作用されるように循環系に幹細胞治療剤を送達することを意図している。全身投与に対する一般的な経路は、静脈内注入、動脈内注入、門脈注入、腹腔内注入、及び鼻腔内注入を含むが、これらに限定されない。用語「局所的に」は、投与について、循環系以外の体の特定の部位(単数又は複数)に幹細胞溶液を送達することを意図している。局所投与に対する一般的な経路は、髄腔内注入、関節内注入、脳内注入、及び組織又は実質器官へ直接注入するいずれかの経路を含むが、これらに限定されない。
実施例1:温熱条件を用いるMSC単離処置に対する試験
実験デザイン
実験デザイン
温熱条件下でのMSC単離
各群の臍帯組織を切断及び接着し、それぞれ37〜39℃で30分又は1時間インキュベートした。培養後、臍帯組織を37℃で6時間培養し、次いで完成した培養培地(すなわち表XにおけるFBS又はUGシステム)を加えた。次いで細胞を約10日間インキュベートした。細胞を次いでトリプシン処置し、計数した。各群の統計は、以下の通りである。
各群の臍帯組織を切断及び接着し、それぞれ37〜39℃で30分又は1時間インキュベートした。培養後、臍帯組織を37℃で6時間培養し、次いで完成した培養培地(すなわち表XにおけるFBS又はUGシステム)を加えた。次いで細胞を約10日間インキュベートした。細胞を次いでトリプシン処置し、計数した。各群の統計は、以下の通りである。
FBSシステムにおいて、MSCの数は、38℃で1時間誘導した組織ブロックから、より高い「クローリング」であった。各ブロックは、平均して、37℃の群よりも約20%多いMSCを生成した(図1及び図2)。
UGシステムにおいて、38℃又は39℃で1時間温熱にて誘導された組織ブロックから、MSCの数がより高い「クローリング」であった。各ブロックでは、37℃の群よりも40%〜80%多いMSCが生成された(図3及び図4)。
この実験の結果より、温熱群の単離効率が37℃群の単離効率よりも高いこと、38℃群のMSC単離効率が39℃群のMSC単離効率よりも高いこと、及び各システムにおいて、温熱1時間群が30分群より効率的であったことが示される。
実施例2:温熱条件を用いて単離されたMSCの拡張に関する試験
結果:
異なる温度で誘導された細胞を、対応する培養培地においてP6に向けて拡張させた。各継代の細胞内状態、細胞数及び細胞直径を、増殖中に統計的に分析した。(図5)
結果:
異なる温度で誘導された細胞を、対応する培養培地においてP6に向けて拡張させた。各継代の細胞内状態、細胞数及び細胞直径を、増殖中に統計的に分析した。(図5)
FBSシステムにおいて、細胞形態は、P6以内(P6を含む)の継代間では著しく異ならない。細胞数は、細胞の継代と共に、段階的に増加した。38℃で1時間温熱にて誘導された細胞の総数は、他の群のものより有意に多かった。細胞直径は、継代と共にゆっくり増加し、群間の差は有意ではなかった。
UGシステムにおいて、各群における細胞形態は、P4後(P4を含む)、著しく増大した。細胞数は、継代と共に、段階的に増加した。38℃及び39℃で1時間温熱にて誘導された細胞の数は、他の群のものより有意に多かった。P3後(P3を含む)の細胞の直径は、著しく増大し、39℃群からの細胞の直径は、他の群のものより優位に大きかった。
2.1.細胞形態
FBSシステムにおいて、細胞はよく成長し、紡錘状であった。P3前(P3を含む)には、群間の形態の差異は、外見では分からず、P4後(P4を含む)に39℃で誘導された細胞は、他の群のものより肉眼で大きかった。
FBSシステムにおいて、細胞はよく成長し、紡錘状であった。P3前(P3を含む)には、群間の形態の差異は、外見では分からず、P4後(P4を含む)に39℃で誘導された細胞は、他の群のものより肉眼で大きかった。
UGシステムにおいて、P3前(P3を含む)の各群における細胞は、比較的小さい大きさで群間に可視的な差はなく、よく成長した。しかしP4後(P4を含む)、細胞の大きさは、肉眼で増加した。
2.2.各継代における細胞数
FBSシステムにおける細胞の総数は、継代と共に、急速に増加した。1時間温熱で誘導した群における細胞の総数は、他の群のものよりも有意に多かった。P3後(P3を含む)38℃/1時間の群の細胞数は、39℃群のものより有意に多かった。P6における38℃/1時間の群の総細胞数は、他の群のものより有意に多く、例えば37℃の群よりも2.15倍多い。(図6及び図8)
FBSシステムにおける細胞の総数は、継代と共に、急速に増加した。1時間温熱で誘導した群における細胞の総数は、他の群のものよりも有意に多かった。P3後(P3を含む)38℃/1時間の群の細胞数は、39℃群のものより有意に多かった。P6における38℃/1時間の群の総細胞数は、他の群のものより有意に多く、例えば37℃の群よりも2.15倍多い。(図6及び図8)
UGシステムにおける細胞の総数は、各継代でFBSシステムにおける総数より少なかった。1時間温熱で誘導した群における細胞の総数は、他の群のものよりも有意に多かった。P6における38℃/1時間群での細胞総数が最も多く、例えば37℃の群より1.28倍多い。(図7及び図8)
2.3 各継代における細胞直径
各継代の細胞直径を測定した。継代と共に、細胞直径は、連続して増加した。FBSシステムにおける細胞直径は、よりなだらかに変化し、群間で有意差は存在しなかった。しかしUGシステムでは、細胞間の差は、より大きかった。P3後(P3を含む)、39℃/30分及び39℃/1時間の群における細胞直径は、他の群のものよりも有意に大きかった。(図9及び図10)
各継代の細胞直径を測定した。継代と共に、細胞直径は、連続して増加した。FBSシステムにおける細胞直径は、よりなだらかに変化し、群間で有意差は存在しなかった。しかしUGシステムでは、細胞間の差は、より大きかった。P3後(P3を含む)、39℃/30分及び39℃/1時間の群における細胞直径は、他の群のものよりも有意に大きかった。(図9及び図10)
考察
1)連続的な培養後の各群における細胞の形態及び数
FBSシステムの最終収率は、UG群のものより有意に高く、その中でFBSシステムにおける38℃/1時間群が、最も高い効率を有した。
2)FBSシステムにおける38℃/30分群の細胞直径が、より安定し、群間差は有意ではなかった。UGシステムにおける39℃群の細胞直径は、P3後(P3を含む)の他の群のものより有意に大きかった。
1)連続的な培養後の各群における細胞の形態及び数
FBSシステムの最終収率は、UG群のものより有意に高く、その中でFBSシステムにおける38℃/1時間群が、最も高い効率を有した。
2)FBSシステムにおける38℃/30分群の細胞直径が、より安定し、群間差は有意ではなかった。UGシステムにおける39℃群の細胞直径は、P3後(P3を含む)の他の群のものより有意に大きかった。
実施例3:温熱条件を用いて単離されたMSC(P6)の機能についての研究
3.1 フローサイトメトリーを用いた表現型アッセイ(図11)
陰性:CD19、CD34、CD11b、CD45及びHLA−DR
陽性:CD73、CD90及びCD105
陰性:CD19、CD34、CD11b、CD45及びHLA−DR
陽性:CD73、CD90及びCD105
3.2 CCK−8細胞アッセイ
全ての群のMSCは、良好な増殖速度を示した。FBSシステムにおいて、38℃/1時間群のMSCが、最も高い増殖速度を有し、UGシステムにおいて、38℃/30分群のMSCが、最も高い増殖速度を有した。(図12)
全ての群のMSCは、良好な増殖速度を示した。FBSシステムにおいて、38℃/1時間群のMSCが、最も高い増殖速度を有し、UGシステムにおいて、38℃/30分群のMSCが、最も高い増殖速度を有した。(図12)
3.3 β−gal老化アッセイ
FBSシステムにおいて、SA−β−gal染色により、39℃誘導群からのMSCの老化が、他の群からのものより有意に高かったことが示された。(図13)
FBSシステムにおいて、SA−β−gal染色により、39℃誘導群からのMSCの老化が、他の群からのものより有意に高かったことが示された。(図13)
UGシステムにおいて、SA−β−gal染色により、39℃誘導群からのMSCの老化が、他の群からのものより有意に高かったことが示された。(図14)
3.4 TNF−α免疫調節阻害アッセイ
72時間のMSCとPHA−PBMCとの共培養後、上清におけるTNF−αの濃度をテストした。結果により、刺激を受けたPBMCがTNF−αを分泌でき、MSCとの共培養が、TNF−αの分泌を有意に阻害できることが示される。阻害効果は、MSCの細胞数と正の相関関係がある。群間でMSCから免疫抑制効果において有意差は存在しなかった。(図15)
72時間のMSCとPHA−PBMCとの共培養後、上清におけるTNF−αの濃度をテストした。結果により、刺激を受けたPBMCがTNF−αを分泌でき、MSCとの共培養が、TNF−αの分泌を有意に阻害できることが示される。阻害効果は、MSCの細胞数と正の相関関係がある。群間でMSCから免疫抑制効果において有意差は存在しなかった。(図15)
考察
1)CCK−8増殖アッセイの結果より、38℃群における細胞が安定的で、増殖速度は他の群のものより有意に高かった。39℃群における細胞増殖速度は、他の群のものより有意に低かった。
1)CCK−8増殖アッセイの結果より、38℃群における細胞が安定的で、増殖速度は他の群のものより有意に高かった。39℃群における細胞増殖速度は、他の群のものより有意に低かった。
2)フローサイトメトリーアッセイの結果より、各システムにおけるP6まで継代培養された細胞は、MSC表現型を表すことが示された。
3)β−gal細胞老化テストの結果により、39℃群における細胞老化が、38℃及び37℃群におけるものより高かったことが示されたが、38℃群と37℃群との間に、老化における有意差はなかった。30分及び1時間で誘導された細胞間に有意差はなかった。
4)TNF−α免疫抑制アッセイの結果により、両方のシステムのMSCが免疫抑制効果を有し、MSCの濃度がより高いときは免疫抑制効果がより強かったことが示された。
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」又は「により特徴付けられる」と同義であり、包括的又は非限定的であり、追加の、列挙されない要素又は方法ステップを排除しない。
本発明ではMSCに焦点が当てられている一方、温熱条件を使用することが、任意の種類の幹細胞の増殖及び治療機能を向上させるために、潜在的に使用され得ることが理解される。従って、向上した増殖及び治療機能を有する幹細胞を生成するための、任意の種類の幹細胞又は任意のそれらの起源の組織を処置する温熱条件の利用は、本発明の範囲内である。
上記の記載は、本発明のいくつかの方法及び物質を開示する。本発明は、方法及び物質における改変並びに製造方法及び装置における変更が可能である。このような変更は、本開示の考慮又はここで開示される本発明の実施から当業者に明らかになるであろう。結果として、本発明が、ここで開示される特定の実施形態に限定されることは意図されず、しかし本発明が、本発明の範囲及び趣旨内に入る変更及び代替を全て包含することを意図しない。
公開及び非公開出願、特許、及び参照文献を含む(しかしこれらに限定されない)、本明細書で引用した全ての参照は、参照することにより全体が本明細書に組み込まれ、ここで本明細書の一部とされる。参照として組み込まれる公開物及び特許又は特許出願が、本明細書に含まれる開示に相反する範囲では、本明細書は、このように相反するものに取って代わる及び/又は優先することを意図される。
Claims (18)
- 温熱条件無しで単離された対照の間葉系幹細胞(MSC)と比較して向上した増殖速度及び治療効力を有するMSCの単離のために、温熱条件でMSC含有組織を処置する方法であって、
(a)MSC含有組織を得る工程、
(b)最適化培地において前記MSC含有組織を培養する工程、
(c)温熱条件に前記MSC含有組織を曝露させる工程、及び
(d)内科疾患を処置するために治療用組成物を提供する工程、を含む、方法。 - 前記温熱条件により、対照と比較して向上した増殖速度及び治療効力を有するMSC含有組織が生成される、請求項1に記載の方法。
- 前記温熱条件が、摂氏約37〜約40度(℃)の温度を含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
- 前記最適化培地が、成長因子(bFGF、EGF)及びホルモン(デキサメタゾン)、抗生物質(Pen/Strap、アムホテリシンB)、血清、及びゼノフリー血清代替物から選択される1つ以上の補助剤を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記MSC含有組織が、臍帯血を含まず、臍帯血とは異なり、前記組織の羊膜上皮、血管(2つの動脈及び1つの静脈)、及びホウォートンゼリーストローマを含む固形成分をいずれも除外することなく完全な臍帯固形組織を含むヒト臍帯組織、を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ヒト臍帯組織が、前記最適化培地において培養する前に酵素消化無しで前記組織を機械的に切断することにより分離される、請求項5に記載の方法。
- 前記ヒト臍帯組織が、直径1〜1.5mmを含む小さな切片に機械的に切断され、切断又は撹拌による機械的損傷後の前記組織の環境を維持するために洗浄されず、次いで培養に直接使用される、請求項5に記載の方法。
- 前記MSC含有組織を得る工程が、骨髄、脂肪組織、血液、羊水、歯髄及び胎盤から採取される組織を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
- 向上した増殖速度及び治療効力を有するMSCを生じることが、抗炎症、免疫調節、タンパク質分泌、前記MSCの遊走分化を含む内科疾患を処置するための治療用組成物における適切な使用である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記温熱条件が、温熱処置に加えて、機械的切断又は撹拌、HGMB1、S100Bなどのダメージ関連分子パターン(DAMPs)、ペプチドグリカン(PGN)及び二本鎖RNAなどの病原体関連分子パターン(PAMPs)、熱ショックタンパク質、炎症性サイトカイン(TNF−α、IFN−γ、インターロイキン−1(IL−1)など)刺激、幹細胞遊走関連タンパク質(CXCL12、G−CSF、SCF、PDGF−BBなど)の刺激、及び、低酸素状態(<20% O2)のうちの1つ以上を含んでもよい、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ダメージ関連分子パターン(DAMPs)が、HGMB1(クロマチン関連タンパク質高移動度群ボックス1)、S100B、プリン代謝産物(ATP、アデノシン、及び尿酸)を含むが、これらに限定されない、請求項10に記載の方法。
- 前記病原体関連分子パターン(PAMPs)が、ペプチドグリカン(PGN)、及び、二本鎖RNAを含むが、これらに限定されない、請求項10に記載の方法。
- 前記熱ショックタンパク質が、HSP40、HSP60、HSP70、HSP72、HSP78、HSP90、HSP104、HSP110を含むが、これらに限定されない、請求項10に記載の方法。
- 前記炎症性サイトカインが、TNF−α、IFN−γ、TGF−β、IL−1、IL−6、IL−8を含むが、これらに限定されない、請求項10に記載の方法。
- 前記幹細胞遊走関連タンパク質が、CXCL12(ストローマ細胞由来因子−1:SDF−1)、CCL2(単球走化性タンパク質−1:MCP−1)、CCL5(活性化制御で、正常T細胞で発現、分泌される(regulated on activation,normal T cell expressed and secreted):RANTES)、CCL8、G−CSF、SCF、PDGF−BBを含むが、これらに限定されない、請求項10に記載の方法。
- 内科疾患を処置するために治療用組成物を提供する工程が、自己免疫疾患、若しくは、肝疾患、又は癌を処置するための組成物を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記自己免疫疾患が、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、自己免疫性膵炎、1型糖尿病、全身性硬化症を含む、請求項16に記載の方法。
- 前記肝疾患が、肝不全、肝硬変、脂肪肝、肝炎を含む、請求項16に記載の方法。
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