JP2021503934A - 網膜色素上皮中の遺伝子の特異的発現のためのプロモーターSynPIII - Google Patents

網膜色素上皮中の遺伝子の特異的発現のためのプロモーターSynPIII Download PDF

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Abstract

本発明は、配列番号1の核酸配列又は配列番号1の前記配列と少なくとも80%の同一性を有する少なくとも1000bpの核酸配列を含み、又はそれからなる単離核酸分子であって、遺伝子の網膜色素上皮細胞の細胞中の発現を、前記遺伝子をコードする核酸配列に作動可能に結合している場合に特異的にもたらす単離核酸分子を提供する。

Description

本発明は、網膜色素上皮細胞の細胞中の遺伝子の発現を特異的にもたらす核酸配列に関する。
発現目的のため、組換え遺伝子は、通常、標的細胞、細胞集団又は組織中に、異種遺伝子の転写を可能とする活性発現カセットの環境下のcDNA構築物として形質移入される。DNA構築物は、シス制御エレメント、例として、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター及びプロモーター(本明細書においてまとめて「プロモーター」と称される)における多くのトランス作用性転写因子(TF)の活性を含むプロセスにおける細胞転写機構により認識される。
遺伝子プロモーターは、それらの調節のレベルの全てに関与し、DNA配列、転写因子結合及びエピジェネティックな特色の影響を組み込むことにより遺伝子転写における決定因子として機能する。これらは、例えば、プラスミドベクターによりコードされる導入遺伝子発現の強度及び前記導入遺伝子が発現される1つ又は複数の細胞タイプを決定する。
哺乳動物細胞中の異種遺伝子発現をドライブするために使用される最も一般的なプロモーターは、ヒト及びマウスサイトメガロウイルス(CMV)主要最初期プロモーターである。これらは強力な発現を付与し、いくつかの細胞タイプにおいてロバストであることが証明されている。他のウイルスプロモーター、例えば、SV40最初期プロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーターも発現カセット中で高頻度で使用される。
ウイルスプロモーターの代わりに、細胞プロモーターを使用することもできる。公知のプロモーターの中には、大量に転写される細胞転写産物、例えば、ベータ−アクチン、伸長因子1−アルファ(EF−1アルファ)、又はユビキチンをコードするハウスキーピング遺伝子からのものがある。ウイルスプロモーターと比較して、真核生物遺伝子発現は複雑であり、多くの異なる因子の正確な協調を要求する。
導入遺伝子発現のための内因性調節エレメントの使用に関する態様の1つは、安定なmRNAの生成であり、発現が、それに応じてトランス作用性転写因子が提供される宿主細胞の天然環境中で生じ得ることである。真核生物遺伝子の発現は、シス及びトランス作用性調節エレメントの複雑な機構により制御されるため、ほとんどの細胞プロモーターは、詳細な機能の特徴付けが欠けている。真核生物プロモーターの一部は、通常、その転写される配列のすぐ上流に位置し、転写開始点として機能する。コアプロモーターは、転写機構により認識されるのに十分である転写開始部位(TSS)を直接囲む。近位プロモーターは、コアプロモーターの上流の領域を含み、TSS及び転写調節に要求される他の配列特色を含有する。転写因子は、プロモーター及びエンハンサー配列中の調節モチーフに結合し、それにより、ヌクレオソーム構造及び最終的に転写の開始を可能とするその位置を変更するクロマチン及びヒストン修飾酵素を活性化させることにより配列特異的に作用する。機能プロモーターの同定は、主に、関連する上流又は下流のエンハンサーエレメントの存在に依存的である。
導入遺伝子発現のための内因性調節エレメントの使用に関する別の重大な態様は、一部のプロモーターが細胞特異的様式で作用し得、規定のタイプの細胞中で、又はプロモーターに依存して特定のサブセットの細胞中で導入遺伝子の発現をもたらすことである。
従って、本発明の1つの課題は、哺乳動物細胞中で高い発現レベルで、細胞タイプ特異的様式で組換え遺伝子を発現させるのに好適な新たな配列を得ることである。
このような配列は、神経変性障害、視力回復、創薬、腫瘍療法及び障害の診断の研究のための系を開発するための網膜細胞特異的プロモーターについての当分野における必要性に対処する。
網膜は、2つの部分、網膜色素上皮(RPE)及び神経感覚網膜に分けることができる。RPEは、神経感覚網膜機能を維持することに能動的に関与している。神経感覚網膜は、光受容器及び網膜神経節細胞(RGC、又は網膜神経節)を含む神経回路網として組織化されている。光受容器は、光の情報をRGCに向けた電気的情報に変換させ、RGCは、視覚情報を網膜から視覚皮質へ伝達するための責任を担っている。これらの異なる細胞型間では、光強度の様々な条件及びコントラスト情報の増加への網膜応答の適応を可能にする負のフィードバックを誘導する、例えば水平細胞等の制御的機能を有する細胞もまた見出すことができる。
網膜若しくは網膜色素上皮(RPE)の着色層は、黒色色素としても公知であり、網膜視細胞に栄養分を与える神経感覚網膜の直ぐ外側にある着色細胞層であり、下にある脈絡膜及び上にある網膜視細胞にしっかりと付着している。RPEは、色素顆粒で密に充填されている六角形の細胞の単層から構成される。鋸状縁では、RPEは、毛様体の上方を通過して虹彩の裏面として続く膜として延びている。これは、拡張筋の線維を生成する。この上皮の直ぐ下方にあるのは、RPEと一緒になった神経上皮(即ち、桿体及び錐体)路である。結合した両者は、胚の毛様体上皮であると理解されている。網膜の前端延長部は、虹彩内に入ると色素を呈する後虹彩上皮である。外面から眺めると、これらの細胞は平滑且つ六角形である。断面で見ると、各細胞は、大きな楕円形の核及び桿体間を一連の直線状の糸状突起として伸びる内側の着色部分を含有する外側の非着色部分から成るが、これは特に目が光に曝された場合に該当する。RPEは、複数の機能、つまり、光吸収、上皮輸送、空間的イオン緩衝、視覚サイクル、食作用、分泌及び免疫調節を有する。
RPEには、数種の疾患、つまり加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症又は網膜色素上皮肥大症が関連している。
網膜色素上皮(RPE)の細胞中の遺伝子発現を特異的に駆動することができるプロモーターは、例えば、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症又は網膜色素上皮肥大症の患者の罹患網膜内の網膜色素上皮細胞中の遺伝子発現に対処して標的化することは極めて有用である。
これらの疾患の1つについての原因である遺伝子、又は神経保護因子をコードする遺伝子の健常バージョンのRPEの細胞中での標的発現は、これらの病状の治療を可能にし得る。従って、遺伝子療法を提供するためには、これらの細胞中において強力で特異的な遺伝子発現を得られることが不可欠である。
本発明者らは、エピジェネティックス、バイオインフォマティクス及び神経科学を組み合わせて、眼球中に存在する場合、網膜色素上皮の細胞中でのみ遺伝子発現を駆動するプロモーターを見出した。
本発明の配列の核酸配列は:

である。
従って、本発明は、配列番号1の核酸配列又は配列番号1の前記核酸配列と少なくとも70%の同一性を有する少なくとも1000bpの核酸配列を含み、又はそれからなる単離核酸分子であって、遺伝子をコードする前記核酸配列に作動可能に結合している前記遺伝子の網膜色素上皮細胞の細胞中の発現を特異的にもたらす単離核酸分子を提供する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも85%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも95%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも96%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも97%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも98%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも99%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と100%の同一性を有する。
本発明の単離核酸分子は、最小プロモーター、例えば、SV40最小プロモーター、例えば、SV40最小プロモーター又は例、例えば

において使用されるものを更に含み得る。
上記の本発明の単離核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む単離核酸分子も提供される。
本発明はまた、上記の本発明の単離核酸を含む発現カセットであって、前記プロモーターが、少なくとも、網膜色素上皮細胞の細胞中で特異的に発現させるべき遺伝子をコードする核酸配列に作動可能に結合している発現カセットを提供する。
本発明は更に、本発明の発現カセットを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、前記ベクターは、ウイルスベクターである。
本発明はまた、網膜色素上皮細胞の細胞中の遺伝子の発現のための、本発明の核酸の、本発明の発現カセットの、又は本発明のベクターの使用を包含する。
本発明は更に、単離細胞、細胞系又は細胞集団(例えば、組織)に本発明の発現カセットを形質移入するステップを含む、網膜色素上皮の細胞内で遺伝子を発現させる方法であって、前記1つ以上の細胞が網膜色素上皮の細胞である、又はそれを含む場合は、発現させるべき遺伝子を単離細胞、細胞系又は細胞集団によって発現させるであろう方法を提供する。一部の実施形態において、単離細胞、細胞系若しくは細胞集団又は組織は、ヒトである。
本発明は又、本発明の発現カセットを含む単離細胞を提供する。一部の実施形態において、発現カセット又はベクターは、前記細胞のゲノム中に安定的に組み込まれる。
本発明のプロモーターに作動可能に結合させることができる典型的な遺伝子は、ハロロドプシン又はチャネルロドシン(channelrhodosin)をコードする遺伝子である。治療用遺伝子、即ち、病的状態の治療のために有用な治療用タンパク質をコードする遺伝子も又使用できる。治療用遺伝子の例としては、限定されるものではないが、例えば、MT−ND4(遺伝子ID:4538)、MT−ND1(遺伝子ID:4535)、MT−ND6(遺伝子ID:4541)、MT−CYB(遺伝子ID:4519)、MT−CO3(遺伝子ID:4514)、MT−ND5(遺伝子ID:4540)、MT−ND2(遺伝子ID:4536)、5MT−COI(遺伝子ID:4512)、MT−ATP6(遺伝子ID:4508)、MT−ND4L(遺伝子ID:4539)、OPA1(遺伝子ID:4976)、OPA3(遺伝子ID:80207)、OPA7(遺伝子ID:84233)及びACO2(遺伝子ID:50)等の網膜疾患を引き起こすことが公知である消失遺伝子若しくは突然変異遺伝子に置換するための核酸が挙げられる。これらの治療用遺伝子は、更に例えばGDNF(遺伝子ID:2668)、CNTF(遺伝子ID:1270)、FGF2(遺伝子ID:2247)、BDNF(遺伝子ID:627)及びEPO(遺伝子ID:2056)等の神経栄養因子、例えばBCL2(遺伝子ID:596)及びBCL2L1(遺伝子ID:598)等の抗アポトーシス遺伝子、例えばエンドスタチン、アンギオスタチン及びsFlt等の抗血管形成因子、例えばIL10(遺伝子ID:3586)、IL1R1(遺伝子ID:3554)、TGFBI(遺伝子ID:7045)及びIL4(遺伝子ID:3565)等の抗炎症因子又は桿体由来錐体生存因子(RdCVF)(遺伝子ID:115861)も又コードし得る。
更に、本発明は又、本発明の単離核酸分子を含む、網膜色素上皮の細胞中で遺伝子を発現させるためのキットを提供する。
プロモーター配列番号1からの霊長類網膜内の網膜着色上皮細胞への標的化発現を示す図である。成体アカゲザル(Macaca mulatta)眼におけるAAV−synPIII−ChR2−EGFPの網膜下注射から3ヶ月後の配列番号1を有するプロモーターからのEGFP発現のレーザー走査型共焦点顕微鏡写真。網膜色素上皮細胞中の誘導発現を観察することができる。緑色=配列番号1により駆動されたEGFP。白色=Hoechst。
網膜は、2つの部分、網膜色素上皮(RPE)及び神経感覚網膜に分けることができる。RPEは、神経感覚網膜機能を維持することに能動的に関与している。神経感覚網膜は、光受容器及び網膜神経節細胞(RGC、又は網膜神経節)を含む神経回路網として組織化されている。光受容器は、光の情報をRGCに向けた電気的情報に変換させ、RGCは、視覚情報を網膜から視覚皮質へ伝達するための責任を担っている。これらの異なる細胞型間では、光強度の様々な条件及びコントラスト情報の増加への網膜応答の適応を可能にする負のフィードバックを誘導する、例えば水平細胞等の制御的機能を有する細胞も又見出すことができる。
網膜若しくは網膜色素上皮(RPE)の着色層は、黒色色素としても公知であり、網膜視細胞に栄養分を与える神経感覚網膜の直ぐ外側にある着色細胞層であり、下にある脈絡膜及び上にある網膜視細胞にしっかりと付着している。RPEは、色素顆粒で密に充填されている単層の六角形の細胞から構成される。鋸状縁では、RPEは、毛様体の上方を通過して虹彩の裏面として続く膜として延びている。これは、拡張筋の線維を生成する。この上皮の直ぐ下方にあるのは、RPEと一緒になった神経上皮(即ち、桿体及び錐体)路である。結合した両者は、胚の毛様体上皮であると理解されている。網膜の前端延長部は、虹彩内に入ると色素を呈する後虹彩上皮である。外面から眺めると、これらの細胞は平滑且つ六角形である。断面で見ると、各細胞は、大きな楕円形の核及び桿体間を一連の直線状の糸状突起として伸びる内側の着色部分を含有する外側の非着色部分から成るが、これは特に目が光に曝された場合に該当する。RPEは、複数の機能、つまり、光吸収、上皮輸送、空間的イオン緩衝、視覚サイクル、食作用、分泌及び免疫調節を有する。
RPEには、数種の疾患、つまり加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症又は網膜色素上皮肥大症が関連している。
網膜色素上皮(RPE)の細胞中の遺伝子発現を特異的に駆動することができるプロモーターは、例えば、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症又は網膜色素上皮肥大症の患者の罹患網膜内の網膜色素上皮細胞中の遺伝子発現に対処して標的化することは極めて有用である。
これらの疾患の1つについての原因である遺伝子、又は神経保護因子をコードする遺伝子の健常バージョンのRPEの細胞内での標的発現は、これらの病状の治療を可能にし得る。従って、遺伝子療法を提供するためには、これらの細胞中において強力で特異的な遺伝子発現を得られることが不可欠である。
本発明者らは、エピジェネティックス、バイオインフォマティクス及び神経科学を組み合わせて、眼球中に存在する場合、網膜色素上皮の細胞中でのみ遺伝子発現を駆動するプロモーターを見出した。
本発明の配列の核酸配列は:

である。
従って、本発明は、配列番号1の核酸配列又は配列番号1の前記核酸配列と少なくとも70%の同一性を有する少なくとも1000bpの核酸配列を含み、又はそれからなる単離核酸分子であって、遺伝子をコードする前記核酸配列に作動可能に結合している前記遺伝子の網膜色素上皮の細胞中の発現を特異的にもたらす単離核酸分子を提供する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1800bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも85%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1800bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも95%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1800bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも96%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも97%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも98%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも99%の同一性を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、少なくとも1000bpであり、配列番号1の前記核酸配列と100%の同一性を有する。核酸配列は、少なくとも1000bp、1100bp、1200bp、1300bp又は1317bpを有し得る。
本発明の単離核酸分子は、追加して最小プロモーター、例えばSV40最小プロモーター、例えばSV40最小プロモーター若しくは実施例において使用した最小プロモーター、例えば、

を含み得る。
上記の本発明の単離核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む単離核酸分子も提供される。
本発明は、上記の本発明の単離核酸を含む発現カセットであって、前記プロモーターが、少なくとも、網膜色素上皮の細胞中で特異的に発現させるべき遺伝子をコードする少なくとも1つの核酸配列に作動可能に結合している発現カセットを提供する。
本発明は更に、本発明の発現カセットを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、前記ベクターは、ウイルスベクターである。
本発明は又、網膜色素上皮の細胞中の遺伝子の発現のための、本発明の核酸の、本発明の発現カセットの、又は本発明のベクターの使用を包含する。
本発明は更に、単離細胞、細胞系若しくは細胞集団(例えば、組織)に本発明の発現カセットを形質移入するステップを含む、網膜色素上皮の細胞中の遺伝子を発現させる方法であって、前記1つ以上の細胞が網膜色素上皮の細胞である、又はそれらを含む場合、発現させるべき遺伝子を単離細胞、細胞系又は細胞集団により発現させる方法を提供する。一部の実施形態において、単離細胞、細胞系又は細胞集団若しくは組織はヒトである。
本発明はまた、本発明の発現カセットを含む単離細胞を提供する。一部の実施形態において、発現カセット又はベクターは、前記細胞のゲノム中に安定的に組み込まれている。
本発明のプロモーターに作動可能に結合させることができる典型的な遺伝子は、ハロロドプシン又はチャネルロドプシンをコードする遺伝子である。治療用遺伝子、すなわち病的状態の治療のために有用な治療用タンパク質をコードする遺伝子もまた使用できる。治療用遺伝子の例としては、限定されるものではないが、例えば、MT−ND4(遺伝子ID:4538)、MT−ND1(遺伝子ID:4535)、MT−ND6(遺伝子ID:4541)、MT−CYB(遺伝子ID:4519)、MT−CO3(遺伝子ID:4514)、MT−ND5(遺伝子ID:4540)、MT−ND2(遺伝子ID:4536)、5MT−COI(遺伝子ID:4512)、MT−ATP6(遺伝子ID:4508)、MT−ND4L(遺伝子ID:4539)、OPA1(遺伝子ID:4976)、OPA3(遺伝子ID:80207)、OPA7(遺伝子ID:84233)及びACO2(遺伝子ID:50)等の網膜疾患を引き起こすことが公知である消失遺伝子若しくは突然変異遺伝子に置換するための核酸が挙げられる。これらの治療用遺伝子は、更に例えばGDNF(遺伝子ID:2668)、CNTF(遺伝子ID:1270)、FGF2(遺伝子ID:2247)、BDNF(遺伝子ID:627)及びEPO(遺伝子ID:2056)等の神経栄養因子、例えばBCL2(遺伝子ID:596)及びBCL2L1(遺伝子ID:598)等の抗アポトーシス遺伝子、例えばエンドスタチン、アンギオスタチン及びsFlt等の抗血管形成因子、例えばIL10(遺伝子ID:3586)、IL1R1(遺伝子ID:3554)、TGFBI(遺伝子ID:7045)及びIL4(遺伝子ID:3565)等の抗炎症因子又は桿体由来錐体生存因子(RdCVF)(遺伝子ID:115861)もまたコードし得る。
更に、本発明はまた、本発明の単離核酸分子を含む、網膜色素上皮細胞の細胞中で遺伝子を発現させるためのキットを提供する。
本明細書において使用される場合、用語「プロモーター」は、任意のシス調節エレメント、例として、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター及びプロモーターを指す。プロモーターは、転写が必要とされる遺伝子の上流に(5’領域に向かって)一般には位置するDNAの領域である。プロモーターは、それが制御する遺伝子の適切な活性化又は抑制を可能とする。本発明の関連において、プロモーターは、それらに作動可能に結合している遺伝子の網膜色素上皮細胞の細胞中の特異的発現をもたらす。「あるタイプの細胞中でのみの発現」とも称される「特異的発現」は、目的の遺伝子を発現する細胞の少なくとも75%超が、規定されたタイプ、すなわち、本事例においては網膜色素上皮細胞の細胞であることを意味する。
発現カセットは典型的には、宿主細胞中への発現カセットの侵入及び宿主細胞中の発現カセットの維持を促進するベクター中に導入される。このようなベクターは一般に使用されており、当業者に周知である。多数のそのようなベクターは、例えば、Invitrogen、Stratagene、Clontech等から市販されており、多数のガイド、例えば、Ausubel、Guthrie、Strathem、又はBerger等に記載されている(全て前掲)。このようなベクターとしては、典型的には、多重クローニング部位、及び追加のエレメント、例えば、複製起点、選択マーカー遺伝子(例えば、LEU2、URA3、TRP1、HIS3、GFP)、セントロメア配列等と共にプロモーター、ポリアデニル化シグナル等が挙げられる。
ウイルスベクター、例えば、AAV、PRV又はレンチウイルスは、本発明のプロモーターを使用して遺伝子を網膜色素上皮細胞の細胞に標的化し、送達するのに好適である。
網膜細胞のアウトプットは、電気的方法、例えば、多電極アレイ若しくはパッチクランプを使用して、又は視覚的方法、例えば、蛍光の検出を使用して計測することができる。
本発明の核酸配列を使用する方法であって、本発明のプロモーター下で1つ以上の導入遺伝子を発現する網膜色素上皮細胞の細胞と試験化合物を接触させるステップ、及び前記試験化合物の存在下で得られた網膜色素上皮細胞の細胞の少なくとも1つのアウトプットを、前記試験化合物の不存在下で得られた同一のアウトプットと比較するステップを含む方法は、網膜色素上皮細胞の細胞が関与する神経障害、又は網膜の障害の治療のための治療剤を同定するために使用することができる。
更に、本発明のプロモーターを使用する方法であって、本発明のプロモーターの制御下で1つ以上の導入遺伝子を発現する網膜色素上皮細胞の細胞を薬剤と接触させるステップ、及び前記薬剤との接触後に得られた少なくとも1つのアウトプットを、前記薬剤との前記接触前に得られた同一のアウトプットと比較するステップを含む方法も、視力回復のインビトロ試験に使用することができる。
チャネルロドプシンは、光開閉型イオンチャネルとして機能するオプシンタンパク質のサブファミリーである。これらは、単細胞緑藻中で感覚光受容器として機能し、走光性、すなわち、光に応答する運動を制御する。他の生物体の細胞中で発現されると、それらは、細胞内酸性度、カルシウム流入、電気興奮性、及び他の細胞プロセスを制御するための光の使用を可能とする。以下の少なくとも3つの「天然」チャネルロドプシン:チャネルロドプシン−1(ChR1)、チャネルロドプシン−2(ChR2)、及びボルボックスチャネルロドプシン(VChR1)が現在公知である。更に、これらのタンパク質の一部の改変/改善バージョンも存在する。全ての公知のチャネルロドプシンは非特異的陽イオンチャネルであり、H+、Na+、K+、及びCa2+イオンを伝導する。
ハロロドプシンは、塩化物イオンに特異的な光駆動性イオンポンプであり、好塩菌として公知の系統発生的に古代の「細菌」(古細菌)に見出される。これは、レチニリデンタンパク質ファミリーの7回膜貫通型タンパク質であり、光駆動性プロトンポンプバクテリオロドプシンと相同であり、網膜中で光を感知する色素の脊椎動物ロドプシンと三次構造において類似する(しかし、一次配列構造においては類似しない)。ハロロドプシンは、光駆動性イオンチャネルのチャネルロドプシンとも配列類似性を共有する。ハロロドプシンは、必須の光異性化可能ビタミンA誘導体オールトランスレチナールを含有する。ハロロドプシンは、結晶構造が公知の数少ない膜タンパク質の1つである。ハロロドプシンアイソフォームは、好塩菌の複数の種、例として、H.サリナラム(H.salinarum)及びN.ファラオニス(N.pharaonis)に見出すことができる。非常に進行中の研究はこれらの違いを探究中であり、それらを使用して光周期及びポンプ特性を別個に解析している。バクテリオロドプシンの後に、ハロロドプシンは研究される最良のI型(微生物)オプシンであり得る。ハロロドプシンレチナール複合体のピーク吸光度は約570nmである。近年、ハロロドプシンは、オプトジェネティクスにおけるツールとなっている。青色光活性化イオンチャネルのチャネルロドプシン−2が、青色光の短いパルスで興奮性細胞(例えば、ニューロン、筋細胞、膵臓細胞、及び免疫細胞)を活性化させる能力を開くように、ハロロドプシンは、黄色光の短いパルスで興奮性細胞を静める能力を開く。このように、ハロロドプシン及びチャネルロドプシンは一緒になって、神経活動の多色光学的な活性化、鎮静、及び脱同期を可能とし、強力な神経工学のツールボックスを作出する。
一部の実施形態において、プロモーターは、網膜色素上皮細胞の生存細胞中で検出可能である少なくとも1つのレポーター遺伝子を発現する、網膜に標的化されるベクターの一部である。
本発明に好適なウイルスベクターは、当分野において周知である。例えば、AAV、PRV又はレンチウイルスは、遺伝子を網膜色素上皮細胞の細胞に標的化し、送達するのに好適である。
単離された網膜を用いて作業する場合、網膜細胞のための最適なウイルス送達は、網膜の光受容器側が露出させられ、従ってより良好に形質移入され得るように、神経節細胞側片を下向きに載せることによって達成できる。また別の技術は、例えば、送達ウイルスが内膜を透過できるように、網膜の内境界膜を例えば安全剃刀を用いてスライスする方法である。また別の方法は、寒天内に網膜を包埋し、前記網膜をスライスし、そして送達ウイルスをスライスの側面から適用する方法である。
形質移入された細胞のアウトプットは、周知の方法を使用して、例えば、電気的方法、例えば、多電極アレイ若しくはパッチクランプを使用して、又は視覚的方法、例えば、蛍光の検出を使用して計測することができる。一部の場合、内境界膜の顕微手術により内境界膜が除去される。他の場合、記録は、内境界膜に実施されたスライスを通して達成される。
網膜細胞の任意の供給源を、本発明に使用することができる。本発明の一部の実施形態において、網膜細胞は、ヒト網膜由来であり、又はその中に存在する。他の実施形態において、網膜は、動物からのもの、例えば、ウシ又はげっ歯類起源のものである。ヒト網膜は、前記網膜が通常は角膜の切開後に廃棄される角膜バンクから容易に入手することができる。成人のヒト網膜は大きな表面積(約1100mm)を有するので、このため多数の実験的小区域に容易に分離することができる。更に、網膜は、脳の残りの部分と同一であるシナプスを有するので、シナプス連絡にとっての申し分のないモデルとして使用することもできる。
本明細書において使用される場合、用語「動物」は、全ての動物を含むように本明細書において使用される。本発明の一部の実施形態において、非ヒト動物は脊椎動物である。動物の例は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ネコ、イヌ等である。用語「動物」はまた、胚期及び胎生期を含め、全ての発生段階における個々の動物を含む。「遺伝子改変動物」は、細胞下レベルでの意図的な遺伝子操作、例えば、標的化組換え、マイクロインジェクション又は組換えウイルスの感染によるものにより、直接的又は間接的に変更され、又は受け入れられた遺伝子情報を担持する1つ以上の細胞を含有する任意の動物である。用語「遺伝子改変動物」は、古典的な交雑も体外受精も包含するものではなく、むしろ、1つ以上の細胞が組換えDNA分子により変更され、又はそれを受け入れている動物を包含することを意味する。この組換えDNA分子は、規定の遺伝子座に特異的に標的化され得、染色体内にランダムに組み込まれ得、又はそれは、染色体外複製DNAであり得る。用語「生殖細胞系列遺伝子改変動物」は、遺伝子変更又は遺伝子情報が生殖系列細胞中に導入され、それにより、遺伝子情報をその子孫へ伝達する能力が付与された遺伝子改変動物を指す。このような子孫が、実際、その変更又は遺伝子情報の一部又は全部を保有する場合、それらは、同様に遺伝子改変動物である。
変更又は遺伝子情報は、レシピエントが属する動物の種にとって外来、若しくは特定の個々のレシピエントにとってのみ外来であり得、又はレシピエントにより既に保有される遺伝子情報であり得る。その最後の場合、変更され、又は導入された遺伝子は、天然遺伝子とは異なって発現され得、又は全く発現され得ない。
標的遺伝子を変更するために使用される遺伝子は広範な技術により得ることができ、それとしては、限定されるものではないが、ゲノム資源からの単離、単離mRNAテンプレートからのcDNAの調製、直接的合成、又はそれらの組合せが挙げられる。
導入遺伝子導入のための標的細胞のタイプは、ES細胞である。ES細胞は、インビトロで培養された着床前胚から得ることができ、胚と融合することができる(Evans et al.(1981),Nature 292:154−156;Bradley et al.(1984),Nature 309:255−258;Gossler et al.(1986),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:9065−9069;Robertson et al.(1986),Nature 322:445−448;Wood et al.(1993),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:4582−4584)。導入遺伝子は、標準的技術、例えば、エレクトロポレーションを使用するDNA形質移入により、又はレトロウイルス媒介性形質導入によりES細胞中に効率的に導入することができる。得られた形質転換ES細胞は、その後、凝集により桑実胚と組み合わせることができ、又は非ヒト動物からの胚盤胞中に注射することができる。その後、導入ES細胞は胚をコロニー化し、得られたキメラ動物の生殖細胞系列に寄与する(Jaenisch(1988),Science 240:1468−1474)。遺伝子標的化された遺伝子改変マウスの生成における遺伝子標的化されたES細胞の使用は1987年に記載され(Thomas et al.(1987),Cell 51:503−512)、他箇所で概説されている(Frohman et al.(1989),Cell 56:145−147;Capecchi(1989),Trends in Genet.5:70−76;Baribault et al.(1989),Mol.Biol.Med.6:481−492;Wagner(1990),EMBO J.9:3025−3032;Bradley et al.(1992),Bio/Technology 10:534−539)。
染色体アレル中に特異的変化を挿入するための標的化相同組換えを使用することにより、任意の遺伝子領域を不活性化させ、又は所望される任意の突然変異に変更する技術が利用可能である。
本明細書において使用される場合、「標的化遺伝子」は、ヒトの介入により非ヒト動物の生殖細胞系列中に導入されるDNA配列であり、それとしては、限定されるものではないが、本明細書に記載の方法が挙げられる。本発明の標的化遺伝子としては、同族の内因性アレルを特異的に変化させるように設計されるDNA配列が挙げられる。
本発明において、「単離」は、その元の環境(例えば、それが天然に存在する場合、天然の環境)から取り出された材料を指し、従って、その天然状態から「人工的に」変更されている。例えば、単離ポリヌクレオチドは、ベクター若しくは物質の組成物の一部であり得、又は細胞内に含有され得、依然として「単離」されている。それというのも、そのベクター、物質の組成物、又は特定の細胞はそのポリヌクレオチドの元の環境ではないためである。用語「単離」は、ゲノムライブラリーもcDNAライブラリーも、全細胞トータルRNA調製物もmRNA調製物も、ゲノムDNA調製物(電気泳動により分離され、ブロット上に転写されたものを含む)も、剪断された全細胞ゲノムDNA調製物も、当分野が本発明のポリヌクレオチド/配列の区別される特色を実証していない他の組成物も指さない。単離DNA分子のさらなる例としては、異種宿主細胞中で維持された組換えDNA分子又は溶液中の(部分的に、又は実質的に)精製されたDNA分子が挙げられる。単離RNA分子としては、本発明のDNA分子のインビボ又はインビトロRNA転写産物が挙げられる。しかしながら、ライブラリーの他のメンバーから単離されていないライブラリー(例えば、ゲノム又はcDNAライブラリー)のメンバーであるクローン中に(例えば、ライブラリーのそのクローン及び他のメンバーを含有する均質な溶液の形態で)、或いは細胞又は細胞溶解物から取り出された染色体(例えば、核型におけるような「染色体スプレッド」)内に、或いはランダムに剪断されたゲノムDNAの調製物又は1つ以上の制限酵素により切断されたゲノムDNAの調製物内に含有される核酸は、この発明においては、「単離」されていない。本明細書に更に考察されるとおり、本発明による単離核酸分子は、天然に、組換えにより、又は合成により産生することができる。
「ポリヌクレオチド」は、一本鎖DNA及び二本鎖DNA、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖RNA及び二本鎖RNA、並びに一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、又はより典型的には二本鎖、又は一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であり得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。更に、ポリヌクレオチドは、RNA又はDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。ポリヌクレオチドはまた、1つ以上の改変塩基又は安定性のために若しくは他の理由のために改変されたDNA若しくはRNA骨格を含有し得る。「改変」塩基としては、例えば、トリチル化塩基及び異常塩基、例えば、イノシンが挙げられる。種々の改変がDNA及びRNAになされ得;従って、「ポリヌクレオチド」は、化学的に、酵素的に、又は代謝的に改変された形態を包含する。
表現「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、そのポリペプチドについてのコード配列のみを含むポリヌクレオチド並びに追加のコード配列及び/又は非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、50%のホルムアミド、5×SSC(750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の42℃における一晩のインキュベーションとそれに続く約50℃における0.1×SSC中のフィルターの洗浄を指す。ハイブリダイゼーション及びシグナル検出のストリンジェンシーの変化は、主に、ホルムアミド濃度(より低い割合のホルムアミドがストリンジェンシーの低下をもたらす);塩条件、又は温度の操作を通して達成される。例えば、中程度に高いストリンジェンシー条件としては、6×SSPE(20×SSPE=3MのNaCl;0.2MのNaHPO;0.02MのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/mlのサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中の37℃における一晩のインキュベーションとそれに続く50℃における1×SSPE、0.1%のSDSによる洗浄が挙げられる。更に、いっそうより低いストリンジェンシーを達成するため、ストリンジェントなハイブリダイゼーション後に実施される洗浄は、より高い塩濃度(例えば、5×SSC)において行うことができる。上記の条件における変法は、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するために使用される代替ブロッキング試薬の包含及び/又は置換を通して達成することができる。典型的なブロッキング試薬としては、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、及び市販の専売配合物が挙げられる。規定のブロッキング試薬の包含は、適合性についての問題に起因して上記のハイブリダイゼーション条件の改変を要求し得る。
ポリペプチドに言及する場合の用語「断片」、「誘導体」及び「アナログ」は、そのようなポリペプチドと実質的に同一の生物学的機能又は活性のいずれかを保持するポリペプチドを意味する。アナログとしては、プロタンパク質部分の開裂により活性化させて活性成熟ポリペプチドを産生することができるプロタンパク質が挙げられる。
用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味し;それは、コード領域に先行する領域及びその後に続く領域「リーダー及びトレーラー」並びに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含む。
ポリペプチドは、ペプチド結合により互いに連結しているアミノ酸又は改変ペプチド結合により互いに連結しているアミノ酸、すなわち、ペプチドイソスターから構成され得、20個の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、天然プロセス、例えば、翻訳後プロセシング、又は当分野において周知の化学修飾技術のいずれかにより修飾することができる。このような修飾は、基礎的な教本及びより詳細なモノグラフ、並びに膨大な研究論文に十分記載されている。修飾は、ポリペプチド中のいずれの箇所においても生じ得、その箇所としては、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ又はカルボキシル末端が挙げられる。同一のタイプの修飾が、所与のポリペプチド中のいくつかの部位において同一又は変動する程度で存在し得ることが認識される。更に、所与のポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含有し得る。ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として分枝鎖であり得、それらは分枝を有し、又は分枝を有さない環状であり得る。環状、分枝鎖、及び分枝鎖環状ポリペプチドは翻訳後の天然プロセスから生じ得、又は合成方法により作製することができる。修飾としては、限定されるものではないが、アセチル化、アシル化、ビオチン化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合性付着、ヘム部分の共有結合性付着、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合性付着、脂質又は脂質誘導体の共有結合性付着、ホスホチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合性付着、架橋、環化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、抗体分子又は他の細胞リガンドへの結合、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング(例えば、開裂)、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA媒介付加、例えば、アルギニル化、及びユビキチン化が挙げられる(例えば、PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993);POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.I−12(1983);Seifter et al.,Meth Enzymol 182:626−646(1990);Rattan et al.,Ann NY Acad Sci 663:48−62(1992)参照)。
「生物学的活性を有する」ポリペプチド断片は、用量依存性を伴い、又は伴わない、特定の生物学的アッセイにおいて計測される元のポリペプチド、例えば、成熟形態の活性と類似するが必ずしも同一でなくてもよい活性を示すポリペプチドを指す。用量依存性が存在する場合、それは、ポリペプチドのそれと同一である必要はなく、むしろ、元のポリペプチドと比較して所与の活性において用量依存性と実質的に類似する(すなわち、候補ポリペプチドは、元のポリペプチドに対して高い活性又は約25倍以下少ない、一部の実施形態においては、約10倍以下少ない活性、若しくは約3倍以下少ない活性を示す)。
種ホモログは、本明細書に提供される配列から好適なプローブ又はプライマーを作製し、好適な核酸資源を所望のホモログについてスクリーニングすることにより単離及び同定することができる。
「バリアント」は、元のポリヌクレオチド又はポリペプチドとは異なるが、その必須の特性を保持するポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。一般に、バリアントは、元のポリヌクレオチド又はポリペプチドと全体的に密接に類似し、多くの領域において、同一である。
実際問題として、任意の特定の核酸分子又はポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるか否かは、慣用的には、公知のコンピュータプログラムを使用して決定することができる。グローバル配列アラインメントとも称される、クエリ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体的なマッチを決定するための好ましい方法は、Brutlagら(Comp.App.Blosci.(1990)6:237−245)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定することができる。配列アラインメントにおいて、クエリ配列及び対象配列は両方ともDNA配列である。RNA配列は、UをTに変換することにより比較することができる。前記グローバル配列アラインメントの結果は、パーセント同一性におけるものである。パーセント同一性を計算するためのDNA配列のFASTDBアラインメントに使用される好ましいパラメータは以下である:行列=ユニタリー、k−タプル=4、ミスマッチペナルティ−−1、結合ペナルティ−−30、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=l、ギャップペナルティ−−5、ギャップサイズペナルティ0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象ヌクレオチド配列の長さのどちらか短い方。対象配列が、内部欠失のためではなく5’又は3’欠失に起因してクエリ配列よりも短い場合、その結果を手作業により補正しなければならない。これは、FASTDBプログラムが、パーセント同一性を計算する場合、対象配列の5’及び3’トランケーションを考慮しないためである。クエリ配列に対して5’又は3’末端においてトランケートされた対象配列について、パーセント同一性は、クエリ配列の全塩基のパーセントとして、マッチング/アラインメントされていない対象配列の5’及び3’であるクエリ配列の塩基の数を計算することにより補正される。ヌクレオチドがマッチング/アラインメントされているか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。次いで、この割合は、規定のパラメータを使用する上記のFASTDBプログラムにより計算されたパーセント同一性から減算され、最終のパーセント同一性スコアに達する。この補正スコアが、本発明のために使用されるものである。クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない、FASTDBアラインメントによりディスプレイされる対象配列の5’及び3’塩基の外側の塩基のみが、パーセント同一性スコアを手作業により調整する目的に計算される。例えば、90塩基の対象配列は、100塩基のクエリ配列とアラインメントされてパーセント同一性が決定される。欠失は対象配列の5’末端において生じ、従って、FASTDBアラインメントは、5’末端における最初の10塩基のマッチング/アラインメントを示さない。この10個の損なわれた塩基はその配列の10%(マッチングされていない5’及び3’末端における塩基の数/クエリ配列中の塩基の総数)に相当し、従って、10%がFASTDBプログラムにより計算されたパーセント同一性スコアから減算される。残りの90塩基が完全にマッチした場合、最終のパーセント同一性は90%である。別の例において、90塩基の対象配列が、100塩基のクエリ配列と比較される。この場合、欠失は内部欠失であるため、クエリとマッチング/アラインメントされていない対象配列の5’にも3’にも塩基は存在しない。この場合、FASTDBにより計算されたパーセント同一性は、手作業により補正されない。再度述べると、クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない対象配列の5’及び3’の塩基のみが手作業により補正される。
本発明のクエリアミノ酸配列と少なくとも、例えば95%「同一の」アミノ酸配列を有するポリペプチドにより、対象ポリペプチドのアミノ酸配列は、対象ポリペプチド配列がクエリアミノ酸配列のそれぞれの100アミノ酸につき5つまでのアミノ酸変更を含み得ることを除きクエリ配列と同一であることが意図される。換言すると、クエリアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るため、対象配列中のアミノ酸残基の5%までを挿入し、欠失し、又は別のアミノ酸と置換することができる。参照配列のこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノ若しくはカルボキシ末端位置において、又はそれらの末端位置の間のいずれの箇所でも、参照配列中の残基の間に個々に、又は参照配列内の1つ以上の連続する群として散在して生じ得る。
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、例えば、配列に示されるアミノ酸配列又は寄託DNAクローンによりコードされるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるか否かは、慣用的には、公知のコンピュータプログラムを使用して決定することができる。グローバル配列アラインメントとも称される、クエリ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体的なマッチを決定するための好ましい方法は、Brutlagら(Comp.App.Biosci.(1990)6:237−245)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定することができる。配列アラインメントにおいて、クエリ配列及び対象配列は両方ともヌクレオチド配列又は両方ともアミノ酸配列のいずれかである。前記グローバル配列アラインメントの結果は、パーセント同一性におけるものである。FASTDBアミノ酸アラインメントに使用される好ましいパラメータは以下である:行列=PAM0、k−タプル=2、ミスマッチペナルティ−−I、結合ペナルティ=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=l、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティ−−5、ギャップサイズペナルティ−−0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象アミノ酸配列の長さのどちらか短い方。対象配列が、内部欠失のためではなくN又はC末端欠失に起因してクエリ配列よりも短い場合、その結果を手作業により補正しなければならない。これは、FASTDBプログラムが、グローバルパーセント同一性を計算する場合、対象配列のN及びC末端トランケーションを考慮しないためである。クエリ配列に対してN及びC末端においてトランケートされた対象配列について、パーセント同一性は、クエリ配列の全塩基のパーセントとして、対応する対象残基とマッチング/アラインメントされていない、対象配列のN及びC末端であるクエリ配列の残基の数を計算することにより補正される。残基がマッチング/アラインメントされているか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。次いで、この割合は、規定のパラメータを使用する上記のFASTDBプログラムにより計算されたパーセント同一性から減算され、最終のパーセント同一性スコアに達する。この最終パーセント同一性スコアが、本発明のために使用されるものである。クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない、対象配列のN及びC末端にある残基のみが、パーセント同一性スコアを手作業により調整する目的に考慮される。それは、対象配列の最も遠いN及びC末端残基の外側のクエリ残基位置のみである。クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない、FASTDBアラインメントにおいてディスプレイされる対象配列のN及びC末端の外側の残基位置のみが手作業により補正される。他の手作業による補正は、本発明のために行われるべきでない。
天然に存在するタンパク質バリアントは、「アレルバリアント」と呼ばれ、生物体の染色体上の所与の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替形態の1つを指す(Genes 11,Lewin,B.,ed.,John Wiley & Sons,New York(1985))。これらのアレルバリアントは、ポリヌクレオチドレベル及び/又はポリペプチドレベルのいずれかにおいて変動し得る。或いは、天然に存在しないバリアントは、突然変異誘発技術により、又は直接的合成により産生することができる。
「標識」は、直接的に、又はシグナル産生系の1つ以上の追加のメンバーとの相互作用を通して、検出可能なシグナルを提供し得る薬剤を指す。直接的に検出可能であり、本発明において使用することができる標識としては、蛍光標識が挙げられる。具体的なフルオロフォアとしては、フルオレセイン、ローダミン、BODIPY、シアニン色素等が挙げられる。
「蛍光標識」は、ある波長の光を、別の波長の光により活性化された場合に放射する能力を有する任意の標識を指す。
「蛍光」は、蛍光シグナルの任意の検出可能な特徴を指し、それとしては、強度、スペクトル、波長、細胞内分布等が挙げられる。
蛍光を「検出すること」は、定性的又は定量的方法を使用して細胞の蛍光を評価することを指す。本発明の実施形態の一部において、蛍光は、定性的様式で検出される。換言すれば、組換え融合タンパク質が発現されるか否かを示す蛍光マーカーが存在するか否かである。他の例として、蛍光は、例えば、蛍光強度、スペクトル、又は細胞内分布を計測する定量的手段を使用して測定することができ、異なる条件下で得られる値の統計的比較を可能とする。レベルは、定性的方法、例えば、複数の試料、例えば、蛍光顕微鏡又は他の光学的検出器(例えば、画像分析システム等)を使用して検出される試料のヒトによる目視分析及び比較を使用して測定することもができる。蛍光における「変更」又は「モジュレーション」は、別の条件と比較した特定の条件下での蛍光の強度、細胞内分布、スペクトル、波長、又は他の側面における任意の検出可能な差を指す。例えば、「変更」又は「モジュレーション」は定量的に検出され、その差は統計的に有意な差である。蛍光における任意の「変更」又は「モジュレーション」は、標準的な機器、例えば、蛍光顕微鏡、CCD、若しくは任意の他の蛍光検出器を使用して検出することができ、自動システム、例えば、統合システムを使用して検出することができ、又はヒト観測者による変更の主観的検出を反映し得る。
「緑色蛍光タンパク質」(GFP)は、青色光に曝露された場合に緑色の蛍光を発する、クラゲのエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)/エクオレア・エクオレア(Aequorea aequorea)/エクオレア・フォルスカレア(Aequorea forskalea)から最初に単離された、238アミノ酸(26.9kDa)から構成されるタンパク質である。A.ビクトリア(A.victoria)からのGFPは、395nmの波長におけるメジャー励起ピーク及び475nmにおけるマイナーピークを有する。この発光ピークは509nmであり、それは、可視スペクトルの低い方の緑色部分に存在する。ウミシイタケ(レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis))からのGFPは、498nmにおける単一のメジャー励起ピークを有する。広範な使用法の潜在性及び研究者らの発展的要望に起因して、GFPの多くの異なる突然変異体が遺伝子操作されている。最初の主要な改善は、Roger TsienによりNatureにおいて1995年に報告された単一点突然変異(S65T)であった。この突然変異は、GFPのスペクトル特徴を大幅に改善し、増加した蛍光、光安定性及びピーク放射を509nmに保持したままでのメジャー励起ピークの488nmへのシフトをもたらした。この足場への37℃フォールディング効率(F64L)点突然変異体の追加は、増強型GFP(EGFP)を生じさせた。EGFPは、9.13×10−21m/分子の光学的断面積としても公知であり、55,000L/(mol・cm)としても引用される、消衰係数(εと表示される)を有する。十分にフォールディングしていないペプチドと融合した場合でさえもGFPが迅速にフォールディングし、成熟するのを可能とする一連の突然変異であるスーパーフォールダー(Superfolder)GFPが2006年に報告された。
「黄色蛍光タンパク質」(YFP)は、エクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)に由来する緑色蛍光タンパク質の遺伝子突然変異体である。この励起ピークは514nmであり、その発光ピークは527nmである。
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他に記述しない限り、複数の参照対象を含む。
「ウイルス」は、宿主細胞の外側では成長も繁殖もし得ない超顕微鏡的感染性物質である。それぞれのウイルス粒子、又はビリオンは、キャプシドと呼ばれる保護タンパク質コート内の遺伝子材料、DNA、又はRNAからなる。キャプシド形状は、単純ならせん及び正二十面体(多面体又はほぼ球形)形態から、尾部又はエンベロープを有するより複雑な構造まで変動する。ウイルスは、細胞生物形態に感染し、感染される宿主のタイプに応じて動物、植物及び細菌タイプに分類される。
本明細書において使用される場合、用語「経シナプス性ウイルス」は、あるニューロンから別の介在ニューロンにシナプスを通って移動し得るウイルスを指す。このような経シナプス性ウイルスの例は、ラブドウイルス、例えば、狂犬病ウイルス、及びアルファヘルペスウイルス、例えば、仮性狂犬病ウイルス又は単純ヘルペスウイルスである。本明細書において使用される場合、用語「経シナプス性ウイルス」はまた、あるニューロンから別の介在ニューロンにシナプスを通って移動する能力をそれ自体で有するウイルスのサブユニット及び生物学的ベクター、例えば、そのようなサブユニットを組み込み、あるニューロンから別の介在ニューロンにシナプスを通って移動する能力を実証する改変ウイルスを包含する。
経シナプス性移動は、順行性又は逆行性のいずれかであり得る。逆行性移動の間、ウイルスは、シナプス後ニューロンからシナプス前ニューロンに動く。従って、順行性移動の間、ウイルスは、シナプス前ニューロンからシナプス後ニューロンに動く。
ホモログは、共通の祖先を共有するタンパク質を指す。アナログは、共通の祖先を共有しないが、それらを1つのクラスに含めることにさせるいくつかの(構造的よりむしろ)機能的な類似性を有する(例えば、トリプシン様セリンプロテイナーゼ及びサブチリシンは明らかに関連せず、活性部位の外側のそれらの構造は完全に異なるが、それらは、事実上幾何的に同一の活性部位を有し、従って、アナログへの収束進化の一例とみなされる)。
ホモログの2つのサブクラスのオルソログ及びパラログが存在する。オルソログは、異なる種における同一遺伝子である(例えば、シトコム(cytochome)「c」)。同一生物体における2つの遺伝子は、オルソログであり得ない。パラログは遺伝子重複の結果である(例えば、ヘモグロビンベータ及びデルタ)。2つの遺伝子/タンパク質が相同であり、同一生物体内に存在する場合、それらはパラログである。
本明細書において使用される場合、用語「障害」は、不快感、疾患、疾病、臨床病態、又は病的状態を指す。
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容可能な担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、化学的に不活性であり、それが投与される患者に対して毒性ではない担体媒体を指す。
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容可能な誘導体」は、対象に対して比較的無毒である、例えば、本発明のスクリーニングの方法を使用して同定される薬剤の任意のホモログ、アナログ、又は断片を指す。
用語「治療剤」は、障害又は障害の合併症の予防又は治療を補助する任意の分子、化合物、又は治療物を指す。
適合性医薬担体中に配合されたそのような薬剤を含む組成物は、治療のために調製し、包装し、ラベル貼付することができる。
複合体が水溶性である場合、それは、適切な緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水又は他の生理学的に適合性の溶液中で配合することができる。
或いは、得られた複合体が水性溶媒中で不十分な溶解度を有する場合、それは、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween、又はポリエチレングリコールと共に配合することができる。従って、化合物及び生理学的に許容可能なその溶媒和物は、(口腔又は鼻腔のいずれかを介する)吸入若しくは吹送による投与又は経口、バッカル、非経口、直腸投与のために配合することができ、又は腫瘍の場合、固形腫瘍中に直接注射することができる。
経口投与について、医薬製剤は、液体形態、例えば、液剤、シロップ剤若しくは懸濁液剤であり得、又は使用前の水若しくは他の好適なビヒクルによる再構成のための薬物製品として提供することができる。このような液体製剤は、薬学的に許容可能な添加剤、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水添食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシアガム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、又は分留植物油);及び保存剤(例えば、メチル若しくはプロピルp−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)を用いて慣用の手段により調製することができる。医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて慣用の手段により調製される、例えば、錠剤又はカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当分野において周知の方法によりコーティングすることができる。
経口投与のための製剤は、活性化合物の徐放性を与えるように好適に配合することができる。
化合物は、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、添加される保存剤と共に、単位剤形中で、例えば、アンプル中又は複数用量容器中で提供することができる。
組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションのような形態をとり得、配合用薬剤(formulatory agent)、例えば、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤を含有し得る。或いは、活性成分は、使用前の好適なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水による構成のための粉末の形態であり得る。
化合物は、例えば、局所的適用、例えば、クリーム剤又はローション剤として配合することもできる。
上記の配合物に加えて、化合物はまた、デポー製剤として配合することができる。このような長時間作用性配合物は、埋込(例えば、眼内、皮下又は筋肉内)により、又は眼内注射により投与することができる。
従って、例えば、化合物は、好適なポリマー若しくは疎水性材料と共に(例えば、許容可能な油中のエマルションとして)、又はイオン交換樹脂と共に、又は難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として配合することができる。リポソーム及びエマルションは、親水性薬物のための送達ビヒクル又は担体の周知の例である。
組成物は、所望により、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得るパック又は分注装置中で提供することができる。パックは、例えば、金属又はプラスチックホイル、例えば、ブリスターパックを含み得る。パック又は分注装置には、投与についての説明書を添付することができる。
本発明はまた、本発明の治療レジメンを実施するためのキットを提供する。このようなキットは、1つ以上の容器中で、治療又は予防有効量の組成物を薬学的に許容可能な形態で含む。
キットのバイアル中の組成物は、例えば、滅菌生理食塩水、デキストロース溶液、又は緩衝溶液、又は他の薬学的に許容可能な滅菌流体との組合せで、薬学的に許容可能な溶液の形態であり得る。或いは、複合体は、凍結乾燥又は乾燥させることができ;この場合、キットは、場合により、容器中で複合体を再構成して注射目的の溶液を形成するための好ましくは滅菌した薬学的に許容可能な溶液(例えば、生理食塩水、デキストロース溶液等)を更に含む。
別の実施形態において、キットは、複合体を注射するための、好ましくは無菌形態で包装された針若しくはシリンジ、及び/又は包装されたアルコールパッドを更に含む。臨床医又は患者による組成物の投与についての説明書が場合により含まれる。
「網膜神経節細胞」(RGC)は、眼の網膜の内表面(神経節細胞層)の近くに位置するニューロンの1つのタイプである。RGCは、光受容器から2つの中間型ニューロンである双極細胞及び網膜アマクリン細胞を介して視覚情報を受け取る。網膜神経節細胞は、網膜から画像形成及び非画像形成視覚情報を活動電位の形態で視床、視床下部及び中脳(mesencephalon若しくはmidbrain)内のいくつかの領域に集合的に伝達する。網膜神経節細胞は、それらのサイズ、結合部及び視覚刺激への反応に関しては大きく異なるが、それらは全てが脳内に伸びる長い軸索を有するという決定的な特性を共有している。これらの軸索は、視神経、視神経交叉及び視索を形成する。少ないパーセンテージの網膜神経節細胞は視覚にほとんど若しくは全く寄与しないが、それら自体が光感受性である;それらの軸索は網膜視床下部路を形成し、概日リズム及び瞳孔のサイズ調整である瞳孔対光反射に寄与する。
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は均等の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は説明のためのものにすぎず、限定的なものではない。
ベクター構築物
本試験で使用した合成プロモーター(1317bp;配列番号1)は、Pde6h、Pde6c、Cngb3、Fabp7、Gngt2、Ppm1j、Gckr、Igj、Arhgdib、Clca3、Lcn2遺伝子の転写開始部位に先行するヌクレオチド配列内で同定された系統発生的に保存されたDNAエレメントの規則正しく並べられた集合によって生成された。ChR2−GFPコーディング配列は、このプロモーター及び最適化コザック配列(GCCACC)の直後に挿入され、それにウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント(WPRE)及びSV40ポリアデニル化部位が続いた。4.27E+13GC/mLの力価を有するAAV血清型BP2を使用して、非ヒト霊長類網膜のニューロンを標的化した。
ウイルス形質移入及び組織製剤
AAV投与は、Kunming,Chinaにおいて眼科医及び外部委託先と連携して実施した。アカゲザルは、ケタミン及びフェノバルビタールナトリウムにより麻酔した。2本の穿刺トンネルは、それぞれ鼻腔及び側頭胸膜領域に配置された25ゲージの穿刺針を使用して作成した。1本のトンネルを通して照明用ファイバーを硝子体腔内に注入し、50μLのAAVは、第2トンネルを通してハミルトンシリンジ上に取り付けた30ゲージ針を使用して網膜下に注射した。3カ月後、単離網膜を30分間に渡りPBS中の4%のPFA中で固定し、次いでPBS中で4℃において洗浄ステップを行った。全網膜は、室温で1時間に渡り10%の標準ロバ血清(NDS)、1%のBSA、PBS中の0.5%のTriton X−100により処理した。PBS中3%のNDS、1%のBSA、0.5%のTriton X−100中のモノクローナルラット抗GFP Ab(Molecular Probes Inc.;1:500)による処理を室温で5日間実施した。二次ロバ抗ラットAlexa Fluor−488Ab(Molecular Probes Inc.;1:200)による処理を2時間に渡り実施した。切片を洗浄し、スライドガラス上にProLong Gold褪色防止用試薬(Molecular Probes Inc.)と共に載せ、Zeiss LSM 700 Axio Imager Z2レーザー走査型共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Inc.)を使用してイメージングした。

Claims (12)

  1. 配列番号1の核酸配列を含み、若しくはそれからなり、又は配列番号1の前記配列と少なくとも80%の同一性を有する少なくとも1000bpの核酸配列からなる単離核酸分子であって、網膜色素上皮細胞の細胞中の遺伝子の特異的発現を、前記遺伝子をコードする核酸配列が前記単離核酸分子に作動可能に結合している場合にもたらす単離核酸分子。
  2. 最小プロモーター、例えば、配列番号2の最小プロモーターを更に含む、請求項1に記載の単離核酸分子。
  3. 請求項1又は2に記載の単離核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む単離核酸分子。
  4. 規定の細胞中の遺伝子発現を促進するエレメントとして請求項1又は2に記載の単離核酸を含む発現カセットであって、前記単離核酸が、少なくとも、網膜色素上皮細胞の細胞中で特異的に発現させるべき遺伝子をコードする核酸配列に作動可能に結合している発現カセット。
  5. 請求項4に記載の発現カセットを含むベクター。
  6. ウイルスベクターである、請求項5に記載のベクター。
  7. 網膜色素上皮細胞の細胞中の遺伝子の前記発現のための、請求項1若しくは2に記載の核酸の、請求項4に記載の発現カセットの、又は請求項5に記載のベクターの使用。
  8. 単離細胞、細胞系又は細胞集団に請求項4に記載の発現カセットを形質移入するステップを含む、網膜色素上皮細胞の細胞中で遺伝子を発現させる方法であって、前記細胞が網膜色素上皮細胞の細胞であり、又は前記細胞が網膜色素上皮細胞の細胞を含む場合、発現させるべき前記遺伝子を前記単離細胞、前記細胞系又は前記細胞集団により特異的に発現させる方法。
  9. 請求項4に記載の発現カセット又は請求項5に記載のベクターを含む単離細胞。
  10. 前記発現カセット又はベクターが、前記細胞のゲノム中に安定的に組み込まれている、請求項9に記載の細胞。
  11. 前記遺伝子の産物が、光感受性分子、例えば、ハロロドプシン又はチャネルロドプシンである、請求項1若しくは2に記載の単離核酸分子、請求項4に記載の発現カセット、請求項5に記載のベクター、請求項7に記載の使用、請求項8に記載の方法又は請求項9に記載の細胞。
  12. 請求項1又は2に記載の単離核酸分子を含む、網膜色素上皮細胞の細胞中で遺伝子を発現させるためのキット。
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