詳細な説明
本発明の実施形態は、体の様々な位置に薬剤を送達するためのデバイス、システム、および方法、ならびに薬剤を含む治療組成物を提供する。本明細書で使用される場合、用語「薬剤」は、1つまたは複数の薬物または他の治療剤、ならびに1つまたは複数の薬学的賦形剤を含み得る任意の形態の医薬調製物を指す。多くの実施形態が、小腸の壁を含むGI管の内部に薬剤を送達するための嚥下可能デバイスを提供する。特定の実施形態は、小腸の壁および/または腹膜および/または腹腔内、または他のGI臓器内に、凝固障害の処置のための凝固因子などの薬剤を送達するためのカプセルなどの嚥下可能デバイスを提供する。本明細書で使用される場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸、および肛門を指すが、「腸管」は、小腸および大腸を指す。同様に、本明細書で使用される場合、用語「腹膜」は、臓側腹膜および壁側腹膜の1つまたは両方を指し、腹壁という用語と互換的である。さらに本明細書で使用される場合、腹腔という用語は、壁側腹膜と臓側腹膜の間の空間を指す。同様に、本明細書で使用される場合、用語「約」は、パラメーター、変数、次元等(例えば、t1/2、tmax、Cmax等などの薬物動態パラメーター)の所定の記載の数値の10%以内、より好ましくは、必ずしもその必要はないが5%以内を意味する。
次に図1〜11を参照すると、小腸の壁および/または腹壁もしくは腹腔などの腸管の送達部位DSに薬剤100を送達するためのデバイス10の実施形態は、少なくとも1つのガイド管30、少なくとも1つのガイド管に位置するまたはそうでなければその中を前進可能な1つまたは複数の組織貫通部材40、送達部材50、作動機構60、および解放要素70を含むカプセル20を含む。本明細書に調製物100としても記載される薬剤100は、典型的には少なくとも1つの薬物または治療剤101を含み、当技術分野で公知の1つまたは複数の薬学的賦形剤を含み得る。集合的に、送達部材50および機構60の1つまたは複数は、腸管の壁に薬剤100を送達するための手段を含み得る。本明細書において企図される他の送達手段は、1つまたは複数の拡張可能なバルーン(例えば、送達バルーン172)または本明細書に記載の他の拡張可能なデバイス/部材を含む。
デバイス10は、液体、半液体、もしくは固体形態の薬剤100、または3つ全ての形態を送達するように構成することができる。薬剤/調製物100の固体形態は、粉末およびペレットの両方を含み得る。半液体形態は、スラリーまたはペーストを含み得る。いかなる形態であれ、調製物100は、望ましくは薬剤をデバイスから腸壁(またはGI管の他の内腔壁)内に前進させた後、腸壁で分解し、薬物または他の治療剤101を放出する形状および材料の適合性を有し、薬物または他の治療剤101は、様々な実施形態では、血友病または本明細書に記載の他の凝固障害の処置のための1つまたは複数の凝固因子に対応し得る。例えば、血友病Aの処置の場合は第VIII因子、および血友病Bの処置の場合は第IX因子。調製物の材料の適合性は、調製物の(体液中の)硬度、多孔性、および溶解度、同様に腸壁を通して腹腔内に貫通するための組織貫通末端を有するその形状の1つまたは複数を含み得る。材料の適合性は、以下:i)調製物を作製するために使用する圧縮力;ii)当技術分野で公知の1つまたは複数の薬学的崩壊剤の使用;iii)他の薬学的賦形剤の使用;iv)調製物の粒径および分布(例えば、微粒子化粒子);およびv)当技術分野で公知の微粒子化および他の粒子形成方法の使用、の1つまたは複数によって達成することができる。調製物100の適した形状は、円柱、立方体、直方体、円錐、球、半球、およびその組合せを含み得る。同様に、形状は、調製物100の特定の表面積および体積、したがって両者の比を定義するように選択することができる。次に、表面積の体積に対する比を使用して、腸壁またはGI管内の他の内腔壁内で選択された分解速度を達成することができる。より大きい比(例えば、単位体積あたりの表面積のより大きい量)を使用して、より急速な分解速度を達成することができ、その逆も同様である。特定の実施形態では、表面積の体積に対する比は、約1:1〜100:1の範囲であり得、特定の実施形態では2:1、5:1、20:1、25:1、50:1、および75:1(約5%以内)であり得る。調製物/薬剤100は、典型的には組織貫通部材40の内腔44内に予め充填されるが、同様にカプセル20の内部24内の別の位置に、または液体もしくは半液体の場合には、囲まれたリザーバー27内に含有され得る。薬剤は、内腔に適合するように予め成形され得るか、または例えば粉末型で充填され得る。典型的には、デバイス10は、薬剤100の一部として単一の薬物101を送達するように構成される。しかし、一部の実施形態では、デバイス10は、単一または複数の薬剤100に調合することができる第1、第2、または第3の薬物を含む複数の薬物101を送達するように構成され得る。複数の薬剤/薬物を有する実施形態では、薬剤は、個別の組織貫通部材40、またはカプセル20内の個別の区画もしくはリザーバー27内に含有され得る。別の実施形態では、図1bの実施形態に示すように、第1の薬物101を含有する薬剤100の第1の用量102を貫通部材44の中に充填することができ、薬剤100の第2の用量103(同じまたは異なる薬物101を含有する)をカプセルの表面25上にコーティングすることができる。薬剤102および103の2つの用量中の薬物101は、同じであり得るかまたは異なり得る。このようにして、同じまたは異なる薬物の二相性の薬物動態放出を達成することができる。薬剤100の第2の用量103は、それが小腸で放出され、同様に薬剤100の持続放出を達成することを確実にするために腸溶コーティング104を有することができる。腸溶コーティング104は、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の1つまたは複数の腸溶コーティングを含み得る。
薬剤100を小腸の壁および/または腹壁またはGI管内の他の位置に送達するためのシステム11は、選択された状態または複数の状態の処置のための1つまたは複数の薬剤100を含有するデバイス10を含み得る。一部の実施形態では、システムは、図1bの実施形態に示すように、デバイス10と通信するための本明細書に記載の携帯型デバイス13を含み得る。システム11はまた、図1cの実施形態に示すようにパッケージング12に包装される、システム11および一組の使用説明書15を含むキット14として構成してもよい。説明書は、食事の摂取または血糖値、コレステロール等などの生理的測定などの1つまたは複数の事象に関連して、デバイス10をいつ摂取するかを患者に指示することができる。そのような実施形態では、キット14は、処置される状態に応じて、選択された投与期間、例えば1日、1週間、または数週間の薬剤100のレジメンを含有する複数のデバイス10を含み得る。
カプセル20は、嚥下されて腸管の中を通過するサイズである。サイズはまた、送達される薬物の量、ならびに患者の体重、および成人の適応であるか小児の適応であるかに応じて調整することができる。カプセル20は、内部体積24、およびガイド管30のサイズに合わせた1つまたは複数の開口部26を有する外部表面25を含む。デバイス10の他の構成要素(例えば、作動機構等)に加えて、内部体積は1つまたは複数の区画またはリザーバー27を含み得る。カプセル20の1つまたは複数の部分は、好ましい実施形態においてPGLA(ポリ乳酸−co−グリコール酸)を含み得る様々な生物分解性ポリマーを含む、当技術分野で公知の様々な生物適合性のポリマーから作製することができる。他の適した生物分解性材料には、本明細書に記載の様々な腸溶性材料、ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、その混和物およびコポリマーが挙げられる。本明細書にさらに詳しく記載するように、様々な実施形態では、カプセル20は、腸管の中をより容易に通過する小片23へと制御可能に分解するように、生物分解性材料の継ぎ目22を含み得る。加えて、様々な実施形態では、カプセルは、蛍光透視法、超音波、または他の医用撮像モダリティを使用してデバイスの位置を特定するための様々な放射線不透過性またはエコー源性の材料を含み得る。特定の実施形態では、カプセルの全てまたは一部は、図1aおよび1bの実施形態に示すように、放射線不透過性/エコー源性マーカー20mを含み得る。使用する場合、そのような材料は、GI管におけるデバイス10の位置特定を可能にするのみならず、GI管の中のデバイスの通過時間の決定も可能にする。
好ましい実施形態では、組織貫通部材40は、組織、例えば小腸の壁、および/または腹壁、またはGI管の他の部分への部材40の前進を誘導および支持する役目を果たすガイド管30内に位置する。組織貫通部材40は、典型的には、中空の針または他の類似の構造を含み、内腔44および腸壁IWの中に選択可能な深さで貫通するための組織貫通末端45を有する。部材40はまた、本明細書に記載のモーションコンバーター90と係合するためのピン41も含み得る。貫通の深さは、部材40の長さ、本明細書に記載のモーションコンバーター90の構成、ならびに一実施形態では本明細書に記載のピン41に対応し得る部材40上のつめまたはフランジ40sの留置によって制御することができる。薬剤100は、典型的には、内腔44を通して組織に送達される。多くの実施形態では、内腔44は、所望の薬剤100を予め充填され、薬剤100は、送達部材50または他の前進手段(例えば、部材40の崩壊可能な実施形態に印加される力によって)を使用して内腔から前進する。代替として、薬剤100は、カプセル20における別の位置/区画から内腔44の中に前進することができる。一部の実施形態では、組織貫通部材40の全てまたは一部は、薬剤100そのもの(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、もしくは第X因子などの凝固因子、または他の凝血タンパク質)から作製することができる。これらのおよび関連する実施形態では、薬剤は、挿入後腸壁(例えば、小腸の壁)または周辺組織(例えば腹壁または腹腔)を貫通して、その中で保持されるように構成される、針もしくはダーツ様構造(バーブを有するまたは有しない)、または尖った末端を有する他の伸長した構造を有し得る。ダーツは、薬剤、用量、および腸壁への所望の貫通の深さに応じたサイズおよび形状であり得る。薬剤100は、薬学技術分野で公知の様々な圧縮成形法を使用してダーツ、ペレット、または他の形状に形成することができる。
様々な実施形態では、デバイス10は、図7aおよび7bの実施形態に示すように、第2の42および第3の43組織貫通部材40を含み得るが、追加の数が企図される。各々の組織貫通部材40を使用して、同じまたは異なる薬剤100を送達することができる。好ましい実施形態では、組織貫通部材40は、薬剤100の送達時に腸壁IWにカプセルを固定するためにカプセル20の外周21の周囲に実質的に対称性に分布することができる。そのようにカプセル20を固定することは、カプセルが、薬剤の送達時に起こる蠕動収縮によってずれるまたは移動する可能性を低減させる。特定の実施形態では、固定させる力の量は、小腸の蠕動収縮の際に印加される典型的な力に調整することができる。固定は、組織貫通部材40の一部または全てが湾曲したまたは弓状の形状を有するように構成することによってさらに容易にすることができる。
送達部材50は、薬剤100を、組織貫通部材内腔44の中を通して腸壁IW内に前進させるように構成される。従って、送達部材50の少なくとも一部は、組織貫通部材内腔44の中で前進可能であり、このように部材50は、送達部材内腔44内に適合するように構成されるサイズおよび形状(例えば、ピストン様形状)を有する。
一部の実施形態では、送達部材の遠位末端50d(組織の中に前進する末端)は、組織貫通部材内腔44内に薬剤を前進させ、同様に内腔との封止を形成するプランジャー要素51を有し得る。プランジャー要素51は、送達部材50と一体型であり得るか、または送達部材50に取り付けることができる。好ましくは、送達部材50は、薬物の固定用量または一定用量を腸壁IW内に送達するように針の内腔44内で固定距離移動するように構成される。これは、送達部材の直径(例えば、直径は遠位で先細りとなり得る)、組織貫通部材の直径(その遠位末端で狭くなり得る)の選択、つめの使用、および/または作動機構の1つまたは複数によって達成され得る。しかし、一部の実施形態では、部材50のストロークまたは移動距離は、GI管における1つまたは複数の感知される条件などの様々な要因に応答してin situで調整することができる。in situでの調整は、作動機構60の電気機械的実施形態に連結されたロジックリソース29(コントローラー29cを含む)の使用を通して達成することができる。これによって、薬剤の多様な用量、および/または薬剤が腸壁に注射される距離の変動が可能となる。
作動機構60を、組織貫通部材40または送達部材50の少なくとも1つに連結させることができる。作動機構は、組織貫通部材40aを、腸壁IWの中に選択可能な距離前進させ、ならびに送達部材を前進させて薬剤100を送達し、その後組織貫通部材を腸壁から後退させるように構成される。様々な実施形態では、作動機構60は、解放要素70によって解放されるように構成されるばね搭載機構を含み得る。適したばね80は、コイル(円錐形状のばねを含む)および板ばねの両方を含み得るが、他のばね構造も同様に企図される。特定の実施形態では、ばね80は、圧縮時のばねの長さが、ほぼ数コイル分(例えば2または3個)またはわずか1コイル分の厚さとなる点まで、圧縮状態でのばねの長さを低減させるために実質的に円錐形状であり得る。
特定の実施形態では、作動機構60は、図2、4、および8a〜8cの実施形態に示すように、ばね80、第1のモーションコンバーター90、および第2のモーションコンバーター94、およびトラック部材98を含み得る。解放要素70は、解放要素が分解するとばねを解放するように、ばねを圧縮状態で保持するようにばね80に連結される。ばね80は、ラッチまたは他の接続要素81によって解放要素70に連結されてもよい。第1のモーションコンバーター90は、ばね80の動きを変換して、組織貫通部材40を腸壁または他の組織の中および外に前進および後退させるように構成される。第2のモーションコンバーター94は、ばね80の動きを変換して、送達部材50を組織貫通部材内腔44内に前進させるように構成される。モーションコンバーター90および94は、ばねによって押され、コンバーター90のトラック部材内腔99内に適合する棹または他のトラック部材98に沿って動く。トラック部材98は、コンバーター90の経路を誘導する役目を果たす。コンバーター90および94は、組織貫通部材40および/または送達部材50(直接または間接的に)に係合し、所望の動きを生じる。それらは、その長手軸に沿ったばね80の動きを、組織貫通部材40および/または送達部材50の直交性の動きに変換するように構成される形状および他の特徴を有するが、他の方向の変換も同様に企図される。モーションコンバーターは、楔、台形、または湾曲形状を有し得るが、他の形状も同様に企図される。特定の実施形態では、第1のモーションコンバーター90は、図2、3、および4の実施形態に示すように、台形形状90tを有し、スロット内を動く組織貫通部材上のピン41に係合するスロット93を含み得る。スロット93はまた、コンバーター90の全体的な形状を映す、またはそうでなければ対応する台形形状93tを有することができる。スロット93は、台形の上り坂部分91の間で組織貫通部材40を押し、次に、下り坂部分92の間にそれを戻す役目を果たす。1つの変形形態では、モーションコンバーター90および94の1つまたは両方は、カムまたはカム状デバイス(示していない)を含み得る。カムは、ばね80によってスイッチが入れられ、組織貫通部材および/または送達部材40および50に係合することができる。モーションコンバーター90および94を含む機構60の1つまたは複数の構成要素(ならびにデバイス10の他の構成要素)は、選択された小型化の量がカプセル10内に適合することができるように当技術分野で公知の様々なMEMSベースの方法を使用して作製することができる。同様に本明細書に記載されるように、それらは当技術分野で公知の様々な生物分解性の材料から形成することができる。
他の変形形態では、作動機構60はまた、ソレノイドまたは圧電デバイスなどの電気機械的デバイス/機構も含み得る。一実施形態では、機構60で使用される圧電デバイスは、非展開状態および展開状態を有する成形された圧電素子を含み得る。この素子は、電圧の印加によって展開状態となり、次に電圧の除去または電圧の他の変化によって非展開状態に戻るように構成することができる。このおよび関連する実施形態によって、作動機構60の反復運動が可能となり、組織貫通部材の前進およびその後の後退の両方が可能となる。圧電素子のための電圧は、カプセル周囲の小腸の蠕動収縮によるカプセル20の圧縮から起こる変形などの機械的変形によって電圧を生成するバッテリーまたは圧電ベースのエネルギーコンバーターを使用して得て、生成することができる。圧電ベースのエネルギーコンバーターのさらなる説明は、全ての目的に関して完全に参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第12/556,524号において見出される。一実施形態では、組織貫通部材40の展開は、実際には、圧電素子のための電圧を生成するための機械エネルギーを提供する小腸の蠕動収縮によって誘発することができる。
解放要素70は、典型的には作動機構60および/または作動機構に連結されたばねに連結されるが、他の構成も同様に企図される。好ましい実施形態では、解放要素70は、図2の実施形態に示すように、ばねを圧縮状態85で保持するために、カプセル20内に位置するばね80に連結される。解放要素70が分解すると、ばね80を解放して作動機構60を作動させる。したがって、解放要素70は、このようにアクチュエーター70a(アクチュエーター70もまた、ばね80および機構60の他の要素を含み得る)としても機能することができる。以下に詳しく説明するように、解放要素70およびアクチュエーター70aは、治療剤調製物100がカプセル20内に含有される第1の構成、および治療剤調製物がカプセルから小腸の壁および/または腹壁もしくは腹腔、または腸管の他の内腔壁内に前進する第2の構成を有する。
多くの実施形態では、解放要素70は、pHなどの小腸または大腸における化学的条件に暴露されると分解するように構成される材料を含む。典型的には、解放要素70は、小腸における選択されたpH、例えば7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、8.0、またはそれより高いpHに暴露されると分解するように構成される。解放要素はまた、例えば7.0〜7.5などの特定の範囲のpH内で分解するように構成することもできる。特定の実施形態では、解放要素70が分解するpH(本明細書で分解pHとして定義される)は、選択されたpHに対応する小腸の位置で薬物を放出するよう特定の薬物が送達されるように選択することができる。さらに、複数の薬剤100を有するデバイス10の実施形態では、デバイスは、第1のpHで分解するように構成される第1の解放要素70(第1の薬物を送達するための作動機構に連結される)、および第2のpHで分解するように構成される第2の解放要素70(第2の薬物を送達するための作動機構に連結される)を含み得る(追加の数の解放要素が多様な数の薬物に関して企図される)。
解放要素70はまた、小腸(または他のGI位置)における他の条件に応答して分解するように構成することもできる。特定の実施形態では、解放要素70は、小腸の流体における特定の化学的条件、例えば食事(例えば、脂肪、デンプンまたはタンパク質を含有する食事)の摂取後に起こる化学的条件に応答して分解するように構成することができる。このようにして、薬剤100の放出は、食事の摂取と実質的に同期し得るか、またはそうでなければ食事の摂取と同時であり得る。
解放要素70の生物分解に関して様々なアプローチが企図される。特定の実施形態では、小腸(またはGI管の他の位置)における1つまたは複数の条件による解放要素70の生物分解は、以下のアプローチ:i)解放要素のための材料の選択、ii)それらの材料の架橋量;およびiii)解放要素の厚さおよび他の寸法、の1つまたは複数によって達成することができる。架橋量がより少なく、および/または寸法がより薄ければ、分解速度を増加させることができ、その逆も当てはまる。解放要素にとって適した材料は、腸におけるより高いpHに暴露されると分解するように構成される様々な腸溶性材料などの生物分解性の材料を含み得る。適した腸溶性材料には、以下:酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、カルボキシメチルエチルセルロース、共重合したメタクリル酸/メタクリル酸メチルエステル、ならびに当技術分野で公知の他の腸溶性材料が挙げられるがこれらに限定されない。選択した腸溶性材料を、生物分解に加えて複数の他の特定の材料特性を得るために、1つまたは複数の他のポリマーと共重合することができ、またはそうでなければ組み合わせることができる。そのような特性には、剛性、強度、柔軟性、および硬度が挙げられ得るがこれらに限定されない。
代替の実施形態では、解放要素70は、ガイド管30を覆う、またはそうでなければ遮断し、ガイド管の内部で組織貫通部材40を保持する被膜または栓70pを含み得る。これらのおよび関連する実施形態では、組織貫通部材40は、解放要素が十分に分解すると、組織貫通部材を解放し、これが次にガイド管から飛び出して腸壁内を貫通するように、ばね搭載作動機構に連結される。なお他の実施形態では、解放要素70は、組織貫通要素40をその場で保持するラッチとして機能するように成形することができる。これらのおよび関連する実施形態では、解放要素は、カプセル20の外部または内部に位置し得る。後者の場合、カプセル20および/またはガイド管30は、解放要素の分解を可能にするためにカプセル内部への腸液の進入を可能にするように構成することができる。
一部の実施形態では、作動機構60は、小腸におけるカプセルの存在を検出するセンサー67、例えばpHセンサー68または他の化学センサーによって作動することができる。センサー67は、次に、作動機構60または機構を作動するために作動機構60に連結された電子コントローラー29cに信号を送ることができる。pHセンサー68の実施形態は、電極に基づくセンサーを含み得るか、または小腸における選択されたpHまたは他の化学的条件に暴露されると収縮もしくは拡張するポリマーなどの機械に基づくセンサーであり得る。関連する実施形態では、拡張可能/収縮可能センサー67はまた、センサーの拡張または収縮からの機械的動きを使用することによって作動機構60そのものも含み得る。
デバイスが小腸(またはGI管の他の位置)にあることを検出するための別の実施形態に従って、センサー67は、カプセル20が腸管における特定の位置の内部で受ける蠕動収縮の回数を検出するための歪みゲージなどの圧力/力センサーを含み得る。そのような実施形態では、カプセル20は望ましくは蠕動収縮の際に小腸によって掴まれるサイズである。GI管内部での異なる位置は、異なる回数の蠕動収縮を有する。小腸は、小腸の長さを減少させる頻度が1分間に12〜9回の収縮を有する。このように、1つまたは複数の実施形態に従って、蠕動収縮の回数の検出を使用して、カプセル20が小腸内に存在するか否かのみならず、腸内での相対的位置も決定することができる。使用する場合、これらのおよび関連する実施形態は、小腸における特定の位置で薬剤100の放出を可能にする。
内部活性化薬物送達(例えば、解放要素および/またはセンサーを使用する)に対する代替または補充として、一部の実施形態では、ユーザーは、RF、磁気、または当技術分野で公知の他の無線信号伝達手段によって、作動機構60を外部から起動して、薬剤100を送達してもよい。これらのおよび関連する実施形態では、ユーザーは、デバイス10からの受信信号17を送るために、図1bの実施形態に示すような携帯型通信デバイス13(例えば、携帯電話などの携帯型RFデバイス)を使用することができる。そのような実施形態では、嚥下可能デバイスは、通信装置28、例えばRFトランシーバーチップまたは他の類似の通信デバイス/回路を含み得る。携帯型デバイス13は、信号伝達手段を含むのみならず、デバイス10が小腸またはGI管の他の位置に存在する場合にユーザーに通知する手段も含み得る。後者の実施形態は、通信装置28に連結したロジックリソース29(例えば、プロセッサー29)の使用を通して実行され、デバイスが小腸または他の位置に存在する場合を検出して、ユーザーにsingeするように信号を伝達する(例えば、センサーからの入力信号を伝達することによって)ことができる。ロジックリソース29は、プロセスの1つまたは複数の態様を制御するためのコントローラー29c(ハードウェアまたはソフトウェアのいずれか)を含み得る。同じ携帯型デバイスをまた、作動機構60が起動され、選択された薬剤100が送達された場合に(例えば、プロセッサー29および通信装置28を使用して)、ユーザーに通知するように構成することもできる。このようにして、ユーザーは、薬剤100が送達されたという確認を提供される。これによってユーザーは、他の適切な薬物/治療剤を摂取することができ、および他の関連する決定を下す(例えば、糖尿病患者の場合、食事を摂るべきか否か、またどの食物を食べるべきか)ことができる。携帯型デバイスはまた、作動機構60を乗り越えて、薬剤100の送達を防止、遅延、または加速するように嚥下可能デバイス10に信号を送るように構成することもできる。使用する場合、そのような実施形態によって、ユーザーは、他の症状および/または患者の行動(例えば、食事を摂る、眠ることを決定する、運動する等)に基づいて薬剤の送達を防止、遅延、または加速するように介入を行うことができる。ユーザーはまた、カプセルの嚥下後の選択された期間に、作動機構60を外部から起動してもよい。期間は、食物がユーザーのGI管を通して小腸などの管の特定の位置まで移動する典型的な通過時間または通過時間の範囲と相関し得る。
特定の実施形態では、カプセル20は、図10aおよび10bの実施形態に示すように、制御可能に分解して、GI管を通しての通過を容易にするために選択可能なサイズおよび形状のカプセル片23を生じる生物分解性材料の継ぎ目22を含み得る。継ぎ目22は、図10の実施形態に示すように生物分解を加速するために流体が継ぎ目の中に進入するための孔または他の開口部22pも含み得る。継ぎ目22の生物分解を加速する他の手段は、図10の実施形態にも示すように、継ぎ目に予め応力を加えること、および/または継ぎ目に穿孔22fを含めることを含み得る。なお他の実施形態では、継ぎ目22は、超音波エネルギー、例えば高周波超音波(HIFU)の吸収によって容易に分解される材料で構築され得るか、および/または容易に分解される構造を有することができ、それによって外部からまたは内視鏡(または他の最少侵襲性の方法)によって施される超音波を使用して、カプセルを小片に分解することができる。
継ぎ目22にとって適した材料は、本明細書に記載の1つまたは複数の生物分解性材料、例えばPGLA、グリコール酸等を含み得る。継ぎ目22は、ポリマーの技術分野において公知の様々な結合方法、例えば成形、ホットメルト接合等を使用してカプセル本体20に取り付けることができる。さらに、生物分解性材料から同様に作製されるカプセル20の実施形態では、継ぎ目22のより急速な生物分解は、以下:i)より急速に生物分解する材料で継ぎ目を作製するステップ、ii)継ぎ目を予め応力を加えるステップ、またはiii)継ぎ目に穴を開けるステップ、の1つまたは複数によって達成することができる。GI管において嚥下可能デバイスの制御された分解を生じるために生物分解性の継ぎ目22を使用するという考え方はまた、GI管の中の通過を容易にし、GI管においてそのようなデバイスが立ち往生する可能性を低減させるために嚥下可能カメラ(または他の嚥下可能撮像デバイス)などの他の嚥下可能デバイスにも適用することができる。したがって、生物分解性の継ぎ目22の実施形態を、嚥下可能撮像デバイスおよび他の嚥下可能デバイスにも適合させることができる。
本発明の別の態様は、嚥下可能薬物送達デバイス10の1つまたは複数の実施形態を使用して、GI管の壁内に薬物および他の治療剤(薬剤100の形態での)を送達する方法を提供する。そのような方法の例示的な実施形態を以下に記載する。薬物送達の記載の実施形態は、小腸SIで起こる。しかし、これは例示であり、本発明の実施形態は、胃および大腸を含むGI管の複数の位置で薬物を送達するために使用することができると認識すべきである。考察を容易にするために、嚥下可能薬物送達デバイス10は、時に本明細書においてカプセルと呼ばれる。上記のように、様々な実施形態では、デバイス10は、デバイス10および一組の使用説明書15を含む密封されたパッケージング12内のキット11として包装され得る。患者が携帯型デバイス13を使用している場合、患者に、手作業で、または説明書15もしくはパッケージング12に位置するバーコード18(または他の同定指標18)を介してのいずれかで、デバイス13にデータを入力するように指導してもよい。バーコードを使用する場合、患者はデバイス13上のバーコードリーダー19を使用してバーコードをスキャンする。パッケージング12を開いた後、説明書15を読み、任意の必要なデータを入力後、患者は嚥下可能薬物送達デバイス10の実施形態を嚥下する。薬物に応じて、患者は、食事と共に(食前、食事中、または食後)または生理的測定に関連してデバイス10を摂取してもよい。カプセル20は、図11の実施形態に示すように、GI管の中を通過して、患者の胃Sの中を、蠕動作用を通して小腸SIまで移動するサイズである。小腸に入ると、解放要素70が小腸の塩基性pH(または小腸に独自の他の化学的もしくは生理的条件)によって分解し、本発明の1つまたは複数の実施形態に従って作動機構60を作動させ、小腸SIの壁に薬剤100を送達する。中空の針または他の中空の組織貫通部材40を含む実施形態では、薬剤送達は、作動機構60を使用して実行され、部材40を腸壁IWの粘膜内に選択された距離前進させた後、送達部材50の前進によって薬剤を針の内腔44を通して注入する。送達部材50を後退させ、次に部材40をカプセルの本体内に後退させ(例えば、ばねの反動によって)、腸壁から外す。複数の針を有するデバイス10の実施形態では、第2または第3の針42、43も同様に使用して、同じ薬物または個別の薬物101の追加の用量を送達することができる。針または他の組織貫通部材40の前進は、実質的に同時または連続的に行うことができる。複数の針を使用する好ましい実施形態では、針の前進は、薬物送達の間に小腸においてデバイス10を固定するために実質的に同時に行うことができる。次に図11A〜Eを参照すると、薬物101が凝固因子CFを含む実施形態を含む多くの実施形態では、作動機構50を含むデバイス10は、腸壁IWおよび腹壁または腹膜P、例えば臓側腹膜PVを通して、腹腔PCの中に針または他の組織貫通部材40を前進させるように構成される。腹腔PCに入ると、針が腹腔PCにおける漿液および他の流体によって分解され、凝固因子CFを漿液および他の腹腔液の中に放出し、次いで臓側腹膜および壁側腹膜の血管系を含む腹膜の血管系への凝固因子CFまたは他の薬物101の拡散によって血流中に放出する。これらのおよび関連する実施形態では、組織貫通部材140が腹腔PC内に位置することは、部材140が対称性の尖った先端145を有するように構成することによって、ならびに腸壁IWおよび臓側腹膜PVを通して次に腹腔PCの中に部材140を噴射するための圧の増加を生成するために反応物質の量を増加させることによって容易となり得る。それらはまた、ガス169の増加量を生成し、次に部材140を腹腔内に噴射するためのガス圧を増加させるために、バルーン160における反応体165の量を増加させることによって容易にすることができる。組織貫通部材140の腹腔PCへの送達のために構成されるデバイス10の様々な実施形態では、部材140が腸壁IW内のみに位置する場合と比較して、反応体165(例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等)の重量での量を10〜30%の範囲で増加させることができる。
薬剤の送達後、次に、デバイス10は、大腸LIを含む腸管の中を通過し、最終的に排泄される。生物分解性の継ぎ目22または他の生物分解性部分を有するカプセル20の実施形態では、図9aおよび9bの実施形態に示すように、カプセルは腸管において小片へと分解され、腸管の中の通過および腸管からの排泄が容易となる。生物分解性の組織貫通針/部材40を有する特定の実施形態では、たとえ針が腸壁の中で立ち往生しても、針は、生物分解して、カプセル20を壁から放出する。
センサー67を含むデバイス10の実施形態では、機構60の作動は、作動機構60および/または作動機構に連結されたプロセッサー29またはコントローラー29cに信号を送るセンサーによって実施することができる。外部作動能を含むデバイス10の実施形態では、ユーザーは、カプセルを嚥下した後の選択された期間、作動機構60を外部から起動してもよい。期間は、食物がユーザーのGI管の中を、小腸などの管の特定の位置まで移動する典型的な通過時間また通過時間の範囲と相関し得る。
上記の方法の1つまたは複数の実施形態を、多様な薬物および他の治療剤101の治療有効量を含有する調製物100の送達のために使用して、多様な疾患および状態を処置することができる。これらは、例えば本明細書に記載の様々な凝固因子を含む、胃での化学分解によりそうでなければ注射を必要とする複数の高分子ペプチドおよびタンパク質を含む。特定の薬物の投薬量は、患者の体重、年齢、または他のパラメーターに関して用量設定することができる。同様に、本発明の1つまたは複数の実施形態によって送達した場合に所望の効果または治療効果(例えば、血糖値の調節のためのインスリン)を達成するための薬物101の用量は、薬物が通常の経口送達(例えば、胃において消化され、小腸の壁を通して吸収される嚥下可能丸剤)によって送達されている場合に必要な量より低くなり得る。これは、胃の酸および他の消化液による薬物の分解がないという事実、ならびに薬物のごく一部ではなくて全てが小腸の壁および/または腹壁(または腸管、例えば大腸、胃等の他の内腔)内に送達されるという事実による。薬物101に応じて、調製物100中で送達される用量102は、所望の治療効果(例えば、血糖値の調節、発作の調節等)を達成するために通常の経口送達(例えば丸剤)によって送達される用量の100〜5%の範囲であり得るが、さらにより低い量が企図される。特定の用量の低減は、特定の薬物、通常の経口方法の場合にGI管で起こる分解の量、投薬回数と本明細書に記載の嚥下可能カプセルの実施形態を使用する投薬回数との比較、処置される状態、ならびに患者の体重、年齢、および状態に基づいて用量設定することができる。一部の薬物(腸管における分解レベルが既知である)では、標準的な用量の低減(例えば、10〜20%)を使用することができる。分解をより受けやすく、吸収が不良である薬物では、より多量の用量低減を使用することができる。このようにして、摂取される用量が低下することにより、デバイス10によって送達される特定の薬物または複数の薬物に関して可能性がある毒性および他の副作用(例えば、胃痙攣、刺激性腸、出血等)を低減させることができる。これは次に、患者が副作用の重症度および発生率の両方の低減を有することから、患者のコンプライアンスを改善する。薬物101の用量低減を使用する実施形態の追加の利益は、患者が薬物に対する耐性(より高用量を必要とする)を発生させる可能性の低減、および抗生物質の場合には患者が細菌の耐性株を発生させる可能性の低減を含む。同様に、他のレベルの用量低減は、胃バイパス手術、および小腸の区分が除去されているまたはその実働の(例えば、消化する)長さを有効に短縮する他の技法を受けている患者に関して達成することができる。
単一の薬物の送達に加えて、嚥下可能薬物送達デバイス10の実施形態およびその使用方法を使用して、複数の状態の処置のために、または特定の状態の処置のために(例えば、HIV/AIDSの処置のためのプロテアーゼ阻害剤)、複数の薬物を送達することができる。使用する場合、そのような実施形態により、患者は、特定の状態または複数の状態に関して複数の薬剤を服用する必要がなくなる。同様に、それらは、2つまたはそれより多くの薬物のレジメンがほぼ同時に送達され、小腸において吸収され、このように血流に吸収されることを容易にする手段も提供する。化学的構成、分子量等の差により、薬物は、異なる速度で腸壁を通して吸収され、それによって異なる薬物動態分布曲線をもたらし得る。本発明の実施形態は、所望の薬物混合物を実質的に同時に注射することによってこの問題に対処する。これは次に、選択された薬物混合物の薬物動態、したがって効能を改善する。加えて、複数の薬物を摂取する必要がないことは、認知能力または身体能力が損なわれた患者を含む1つまたは複数の長期的な慢性的状態を有する患者にとって特に有益である。
様々な応用において、上記の方法の実施形態を使用して、薬物および治療剤101を含む調製物100を送達し、複数の医学的状態および疾患の処置を提供することができる。本発明の実施形態によって処置することができる医学的状態および疾患には:がん、ホルモン状態(例えば、低い/高い、甲状腺ホルモン状態、成長ホルモン状態)、骨粗しょう症、高血圧症、コレステロールおよびトリグリセリドの上昇、糖尿病および他のグルコース調節障害、感染症(局所または全身、例えば敗血症)、てんかんおよび他の発作障害、骨粗しょう症、冠動脈不整脈(心房性および心室性の両方)、冠動脈虚血性貧血または他の類似の状態が挙げられ得るがこれらに限定されない。さらに他の状態および疾患も同様に企図される。
多くの実施形態では、特定の疾患または状態の処置は、凝固因子または他の凝血タンパク質または他の治療剤(または他の非経口型送達形態、例えば坐剤)を注射する必要なく、その代わりに、小腸の壁および/または腹壁、またはGI管の他の部分に送達される治療剤のみに依存する処置を実施することができる。同様に患者は、薬物または他の治療剤の通常の経口形態を摂取する必要がなく、この場合も嚥下可能カプセルの実施形態を使用して小腸の壁および/または腹壁への送達のみに依存することができる。他の実施形態では、小腸の壁および/または腹壁に送達される治療剤は、治療剤の注射用量に関連して送達することができる。例えば、患者は、嚥下可能カプセルの実施形態を使用して、治療剤の用量を毎日摂取してもよいが、数日毎に、または患者の状態がそれを必要とする場合(例えば、高血糖症)に限って注射用量を摂取する必要があってもよい。同じことが、経口形態で、従来通りに送達される治療剤にも当てはまる(例えば、患者は、嚥下可能カプセルを摂取することができ、必要に応じて治療剤の通常の経口形態を摂取することができる)。そのような実施形態において送達される投薬量(例えば、嚥下されるおよび注射される用量)は、必要に応じて用量設定することができる(例えば、標準的な用量反応曲線および他の薬物動態法を使用して適切な投薬量を決定することができる)。同様に、通常の経口手段によって送達することができる治療剤を使用する実施形態では、嚥下可能カプセルの実施形態を使用して送達される用量は、胃または腸管の他の部分の中で治療剤がほとんどまたは全く分解しないことから(本明細書において、再度、標準的な用量反応曲線および他の薬物動態法を適用することができる)、治療剤の経口送達に関して通常与えられる投薬量より低く用量設定することができる。
様々な疾患および状態の処置のための1つまたは複数の薬物または他の治療剤101を含有する調製物100の様々な実施形態を、投薬量を参照して次に記載する。特定の治療剤およびそれぞれの投薬量を含むこれらの実施形態は、例示的であり、調製物100は、デバイス10の様々な実施形態を使用して腸管の内腔壁(例えば、小腸の壁)内に送達するように構成される本明細書に記載の複数の他の治療剤(ならびに当技術分野で公知の治療剤)を含み得ることを認識すべきである。投薬量は、記載の投薬量より高くても低くてもよく、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の1つまたは複数の方法を使用して調整することができる。
ある群の実施形態では、治療剤調製物100は、1つまたは複数の成長障害ならびに創傷治癒の処置のために成長ホルモンの治療有効用量を含み得る。一実施形態では、調製物100は、約0.1〜4mgの範囲、特に0.1〜1、1〜4、1〜2、および2〜4mgの範囲の成長ホルモンの治療有効量を含有し得るが、さらにより大きい範囲が企図される。特定の用量は、以下の要因:i)処置される特定の状態およびその重症度(例えば、高コレステロール血症または脂質異常症のレベルおよび特定のタイプ);ii)患者の体重;iii)患者の年齢;およびiv)投与頻度(例えば、毎日と1日2回との比較)、の1つまたは複数に基づいて用量設定することができる。
公知の薬物送達システムの薬物送達組成物および構成要素を、本明細書に記載の本発明の一部の実施形態において使用するために使用および/または改変してもよい。例えば、薬物パッチによって皮膚表面を通して薬物を送達するために使用されるマイクロニードルおよび他のマイクロ構造を改変して、本明細書に記載のカプセル内に含めて、小腸の壁および/または腹壁などの胃腸管の内腔壁に薬物調製物を送達する代わりに使用してもよい。適したポリマーのマイクロニードル構造は、Corium of Californiaから、例えばMicroCor(商標)マイクロ送達システム技術として販売され得る。薬物の製剤または構成要素を含むMicroCor(商標)パッチ送達システムの他の構成要素もまた、本明細書に記載のカプセルに組み入れてもよい。あるいは、多様な販売元が、ポリマーまたは他の薬物送達マトリックスと、選択された薬物および他の薬物調製物構成要素との組合せを製剤化して、所望の薬物放出特徴を有する所望の形状(例えば、本明細書に記載の放出可能な組織貫通形状)を産生するために商業的に利用可能である。そのような販売元には、例えばCorium、SurModics of Minnesota、BioSensors International of Singapore等が挙げられ得る。
本明細書に記載の治療組成物の様々な実施形態の1つの利点および特色は、嚥下可能カプセルまたは他の嚥下可能デバイスに封入されるか、またはそうでなければ含有されることによって、凝固因子(例えば、第VIII因子)または他の生物薬剤(例えば、ペプチドまたはタンパク質)薬物ペイロードが、胃腸(GI)管におけるペプチダーゼおよびプロテアーゼの作用による分解および/または加水分解から保護されるという点である。これらの酵素は生体系全体に遍在している。GI管は、その機能が個体の食事中の複合タンパク質およびペプチドをより小さいセグメントに分解して、アミノ酸を放出し、その後アミノ酸が腸から吸収されることであることから、特にプロテーゼが豊富である。本明細書に記載のデバイスおよび組成物は、治療ペプチド、凝固因子、または他のタンパク質をこれらのGIプロテアーゼの作用から保護するように、および腸の壁に直接ペプチドまたはタンパク質ペイロードを送達するように設計される。本明細書に記載の組成物の様々な実施形態では、GIプロテアーゼの作用からタンパク質またはペプチドペイロードを保護する役目を果たす2つの形体が存在する。第1に、ある特定の実施形態では、展開エンジンおよび機械を含有するカプセルシェルは、胃の低いpHでのその溶解を防止するカプセルの外表面におけるpH感受性のコーティングにより、十二指腸および十二指腸より下の腸区分に達するまで溶解しない。第2に、ある特定の実施形態では、中空ポリマーのマイクロスピア(例えば、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、マルトース、シリコーン等)は、実際の治療ペプチドまたはタンパク質を含有し、ポリマーマイクロスピアは、外部のカプセルシェルが溶解すると速やかに腸筋を貫通し、マイクロスピアそのものが腸筋壁で徐々に溶解して、薬物ペイロードを放出するように設計されている。このように、ペプチド、凝固因子、他のタンパク質ペイロードは、GIプロテアーゼの作用に暴露されず、したがってGI管においてタンパク質分解を介する分解を受けない。これは次に、上記のアプローチの1つまたは両方を使用せず、ペプチドまたはタンパク質がGIプロテアーゼに暴露された場合に予想される生物学的利用率と比較して治療ペプチドまたはタンパク質の高い生物学的利用率に寄与する。特に、分子上の特異的受容体または他の標的領域に結合する化合物を含む組成物の実施形態では、そのようなアプローチは、化合物の結合親和性および特異性を保存し、所望の受容体にそれを結合させる。
本発明の実施形態によって提供される凝固因子または他の凝血タンパク質は、様々な凝血性障害を処置するために特に有用である。処置され得る特定の凝血障害は、血友病AおよびB、ならびにフォン・ヴィレブランド病を含む。そのような実施形態によって、静脈内、真皮下、または筋肉内注射と比較して有利である特定の薬物動態特性を有する凝固因子および他の凝血タンパク質の送達がもたらされる。それらはまた、より高い治療可能比、アレルギー反応(例えば、アナフィラキシーショック;筋肉痛および神経認知および眼科事象を含む)の発生率の低減、ならびに低減された免疫原性および/または免疫原性反応(皮下および/または筋肉内注射と比較して)を含む以下の利点の1つまたは複数を提供する投薬量の使用を可能にする。一実施形態では、アレルギー反応の発生率の低減は、標準的な注射(例えば、筋肉内、静脈内等)によって凝固因子または他の凝血タンパク質を投与された患者集団のそのような発生率を、従来の化合物の経口送達によって凝固因子または他の凝血タンパク質を投与された患者集団の頻度と比較することによって決定することができ、次にその低減を使用して、凝固因子(例えば、第VIII因子)または他の凝血タンパク質の1つまたは複数に関する患者集団におけるアレルギー反応の公知の発生率に関して予想される低減のモデルとすることができる。
投薬量
1つまたは複数の実施形態に従って、嚥下可能カプセルの1つまたは複数の実施形態を使用して投与される凝固因子または他の凝血タンパク質の投薬量は通常、治療有効量であるが、必ずしもその必要はない。本明細書で使用する場合、語句「治療有効量」は、i)所定の凝血障害の凝血の1つまたは複数の臨床測定(例えば、プロトロンビン時間などの凝固時間)の検出可能な改善;またはii)血友病(AまたはB)もしくはフォン・ヴィレブランド病などの凝固障害の症状を阻害する、防止する、弱める、もしくは遅延させる凝固因子または他の凝血タンパク質の用量をもたらす、凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子)または他の凝血タンパク質の用量を意味する。様々な実施形態に従って、本発明の実施形態によって送達される凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、および第X因子)の治療有効量は、約1000〜10,000IUの範囲であり得、特定の実施形態では1400、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、50000、6000、7000、7500、8000、9000、9100、および9500IUである。薬物の投薬量が重量によって決定される実施形態では、凝固因子の治療有効量は約0.1〜10mgの範囲であり得、特定の実施形態では約1.5〜10mg、1〜5mg、1〜3mg、約0.03〜1.73mg、約0.02〜1.15mgおよび約0.34〜約1mgであり得るが、他の範囲も同様に企図される。特定の用量は、送達される特定の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子等)、処置される状態、臨床状況(例えば、予防的、または急性の出血時)、患者の体重、年齢、および性別の1つまたは複数に応じて選択することができる。表1は、様々な臨床状況における第VIII因子および第XI因子のそれぞれによる血友病AおよびBの処置に関する例示的な投薬量を、IU/kg患者体重で記載する。これらのおよび他の凝血障害ならびに他の状態(例えば、脳内出血)に関する他の投薬量を本明細書により詳細に記載する。
様々な実施形態に従って、特定の凝固因子(例えば、表1に記載の凝固因子)の投薬量は、プロトロンビン時間などの凝固時間の測定に基づいて用量設定(すなわち、調整)することができる。そのため、例えばより長い凝固時間の場合、凝固因子の用量を増加させることができ、より短い凝固時間の場合、用量を減少させることができる。このようにして、本発明の実施形態によって送達される凝固因子の投薬量は、凝固時間を含むその血液の凝血/凝固特性に影響を及ぼし得る成長、食事、および他の薬剤などの条件を考慮に入れてその処置期間にわたって所定の患者に関して最適化することができる。特定の実施形態では、患者に、特定の凝固因子(例えば、第VIII因子)の異なる用量を有する嚥下可能カプセルの一覧表を提供し、次に凝固時間の測定に基づいて一覧表から使用する用量を選択することができる。特定の実施形態では、患者に、凝固時間または関連する測定に基づいて凝固因子の特定の用量を選択するための表または他の情報を提供してもよい。一部の実施形態に従って、表または他の情報は、携帯電話、タブレット、または他のコンピューターデバイスならびにクラウドの1つまたは複数のメモリーまたはロジックリソースに電子的に保存され得る。
関連するまたは追加の実施形態では、プロトロンビン時間または他の凝固時間の測定を使用して、所定の患者および凝血障害に関する凝固因子の最適なソースを選択することができる。例えば、第VIII因子の場合、プロトロンビン時間を使用して、通常の生理的範囲、例えば25〜30秒間の凝固時間を生じ、それを維持することに基づいて、血漿由来第VIII因子を、本明細書に記載の遺伝子改変第VIII因子分子と比較して選択することができる。
凝固因子および他の凝血タンパク質を腸壁または腸管の他の位置に送達する利点
使用する場合、上記の状態の1つまたは複数の処置のために凝固因子または他の凝血タンパク質の腸の壁および/または腹壁および隣接する組織(例えば、腹壁または腹腔)、または腸管の他の標的部位、例えば大腸への送達を提供する本発明の実施形態は、注射形態の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、および第X因子)と比較して多くの利点を提供する。そのような利点には、i)より高い治療可能比;ii)アナフィラキシーショック、または他のアレルギー反応(注射部位を含む)、注射部位でのあざおよび出血、鼻咽頭炎、上気道感染症、インフルエンザ、背部痛筋痛症、神経認知事象、および眼科事象、ならびに本明細書で記載される阻害性抗体の発生を含む免疫原性および/または免疫原性反応の減少の1つまたは複数を含む有害反応の発生率および重症度の低減が挙げられ得るがこれらに限定されない。これらの利益は、以下:i)本発明の実施形態によって送達される用量がかなり少ないこと;ii)用量が、毎週または毎月ではなくて毎日送達されること;およびiii)用量が静脈内ではなくて経口に送達されるという事実、の1つまたは複数による。
多くの実施形態では、本発明の実施形態によって経口送達される凝固因子または他の凝血タンパク質の投薬量の治療可能比は、注射(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下等の毎週、2週間に1回、または毎月)によって送達された第VIII因子などの凝固因子の治療可能比と比較して有意に増加し得る。様々な実施形態では、用語「有意に」は、2倍またはそれより高い量、例えば7〜30倍高いまたはそれより高い量の治療可能比の増加に対応する。注射(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下等)される場合、典型的に1週間に2〜3日毎の用量で送達される第VII因子、第VIII因子、第IX因子、または第X因子などの凝固因子に関して、治療可能比(例えば、毒性用量/有効用量)は、本発明によって提供される嚥下可能デバイスを使用して毎日経口用量を送達した場合、3〜7倍の範囲で増加し得るが、凝固因子の用量を毎月注射する場合では、治療可能比は、本発明の実施形態による経口用量を毎日送達した場合に30倍増加し得る。さらに、凝固因子(または他の凝血タンパク質)の経口用量を1日に複数回投与すると、増加が得られ得る。免疫原性/免疫応答(筋肉内および/または皮下注射と比較して)、アレルギー反応および他の有害反応の1つまたは複数の発生率に、類似の改善(例えば、2倍、3倍、30倍またはさらにそれより大きい)が認められ得る。免疫原性/免疫応答は、投与された凝血タンパク質/凝固因子に対する抗体(例えば、阻害性抗体)の体による産生であり、凝固因子または他の凝血タンパク質の臨床効能を中和するかまたはそうでなければ減損させる。アレルギー反応の発生率および重症度の2分の1から30分の1までの低減は、抗体が、免疫系を脱感作する(アレルギー反応の程度は、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができ、当技術分野で公知の1つまたは複数のin vitro試験と相関し得る)傾向がある2週間に2回またはそれより少ない周期で投与されるのではなく、1日用量で投与されるという事実による。同様に、第VIII因子などの1つまたは複数の凝固因子に対する阻害性抗体の産生を含む、低減された免疫原性の程度は、2分の1〜30分の1またはそれより低く低減され得る。これは、3つの要因:1)用量が皮下および/または筋肉内に送達されないこと(そのような応答を悪化させる傾向がある);2)注射される用量が毎週、2週間に1回、1ヶ月に1回等送達されるかに応じて、用量がより少ない量、例えば7分の1〜30分の1の量で送達されること;および3)上記で考察したように、凝固因子(または他の凝血タンパク質)の用量がパイエル板を回避し、その後の免疫細胞および他の免疫応答の産生を回避する小腸の上部に送達されること、による。当技術分野で公知の1つまたは複数の免疫分析法を使用して、所定の凝固因子(例えば、第VIII因子等)に対する免疫応答の量を定量して、例えば、送達された凝固因子(例えば、第VIII因子)または他の凝血タンパク質)に対して生成される抗体(例えば、インヒビター抗体)の産生、および/または患者自身の抗体(例えば、インヒビター抗体)によって中和される投与された凝固因子のパーセンテージを測定することができる。これらのおよび関連する実施形態では、凝固因子(または他の凝血タンパク質)の投薬量および用量レジメンは、患者において最少の免疫応答を生じるように構成することができ、最少とは、送達された凝固因子(または他の凝血タンパク質)の10%未満、より好ましくは5%未満が、患者自身の抗体によって中和されることを意味する。
他の実施形態では、投与された凝固因子(または他の凝血タンパク質)に対する免疫応答および/またはアレルギー応答は、2日毎、もしくは3日毎、2週間に1回、もしくは月1回の静脈内用量で投与した場合と比較して、毎日の経口用量で投与した場合の所定の凝固因子(例えば、第VIII因子)に対する抗体の血清力価の差を測定することによって定量することができる。これらのおよび関連する実施形態では、凝固因子(または他の凝血タンパク質)の投薬量および用量レジメンは、患者において最少の免疫応答を生じるように構成することができ、最少とは、投与された凝固因子(例えば、第VIII因子)に対する患者自身の抗体(例えば、インヒビター抗体)の血清濃度の10%未満の増加、より好ましくは5%未満の増加を意味する。
関連するアプローチでは、サイトカイン(例えば、インターロイキン、例えばインターロイキン7)の血清力価および/または白血球を、所定の凝固因子の用量および投与に関して測定することができる。これらのおよび関連する実施形態では、凝固因子または他の凝血タンパク質の投薬量および用量レジメンは、患者において最少の免疫応答を生じるように構成することができ、最少とは、患者の白血球および/または特定のサイトカイン(例えば、インターロイキン7)の1つまたは複数の血清濃度の10%未満の増加、より好ましくは5%未満の増加を意味する。関連する実施形態では、免疫応答は、白血球百分率の変化(例えば、アレルギー反応に存在する好酸球または好塩基球の%の増加)を使用することによって定量することができる。これらのおよび関連する実施形態では、凝固因子または他の凝血タンパク質の投薬量および用量レジメンは、患者において最少の免疫応答を生じるように構成することができ、最少とは、患者の総白血球数中の特定のタイプの白血球(例えば、好酸球)のパーセンテージの10%未満の変化を意味する。
様々な凝固因子または他の凝血タンパク質の用量の1日用量での送達を、通常の注射手段によって(例えば静脈内、筋肉内、または皮下注射によって)用量の間をより長い期間空けて(例えば、2日または3日に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回の用量)送達する場合と比較して達成される別の利点は、特定の凝固因子または他の凝血タンパク質に関する患者の血漿濃度プロファイルの変動の低減であり、これによって経時的にさらにより平坦な血漿濃度が得られる。別紙1により詳細に説明する薬物動態モデルを使用して、アリロクマブの2週間に1回の送達期間での送達を、1日用量(2週間に1回の用量から下方に用量設定した)と比較して血漿濃度曲線を作製した(図21aおよび21b)。図から認められ得るように、曲線における日毎の変動量は、本発明の実施形態によって経口送達したアリロクマブではかなり少ない。同様に、「%定常状態変動」として知られる値を、別紙2に示して詳細に説明した等式を使用して、これらの抗体の各々について計算した。値は、所定の薬物の血漿濃度の日毎の変動量を反映する。以下の表2に示すように、特定の抗体の血漿濃度の定常状態変動の計算量は、抗体を本発明の実施形態によって1日用量で送達した場合、皮下注射によって送達した場合と比較して有意に低減した(66.3%から0.39%)。結果は、アリロクマブの定常状態変動の約170倍低減である。モデルはまた、2つの抗インターロイキン抗体、すなわちセクキヌマブおよびブロダルマブの定常血漿変動の低減を示すためにも使用されており(全ての目的に関して十分に参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第15/150,379号に記載されている通り)、表3に結果が示されている。これらの例では、定常変動の低減は、171〜216倍であった。このように、モデルは、本発明の実施形態を使用して薬物を1日用量で投与する場合を、皮下注射を使用して2週間に1回または毎月注射する場合と比較すると、所定の薬物(例えば、凝固因子)の定常血漿濃度の170〜216%の低減を一貫して示す。そのようなモデルを使用して、%定常状態変動の類似の絶対値(例えば、0.12〜0.39%)および低減が、本明細書に記載の様々な凝固因子に関して予想される。そのような低減の利点は、有害事象のリスクの低減、アレルギー反応および免疫原性の低減(例えば、第VIII因子などの特定の凝固因子に対する阻害性抗体の発生率および量の低減)、同様に所定の凝固因子の治療範囲を患者が維持している期間がより長く、凝固因子が意図される凝固障害、例えば血友病をより良好により一貫して処置することができること、の1つまたは複数を含む。定常状態変動の低減はまた、インヒビター抗体の数の低減などの特定の凝固因子に対する患者の免疫応答の低減を定量するためにも使用され得る。そのような低減は、比例(例えば、正比例、分数比例等)、または一次比例もしくは二次比例の形態であり得る。
第VIII因子を含む治療組成物の実施形態
上記で考察されたように、本発明の様々な実施形態は、血友病Aまたは血友病Bなどの凝固障害を処置するための第VIII因子などの凝固因子を含む治療組成物を提供する。
以下に、第VIII因子化合物の簡単な説明を示す。第VIII因子(本明細書においてFVIIIまたはF8とも呼ばれる)は、損傷時に凝血シグナル伝達カスケードを増幅し、時宜を得た凝固を可能にする糖タンパク質である。FVIIIをコードする遺伝子は、X染色体Xq28の長腕{Thompson、2003 #37}に位置し、26個のエクソンで構成され、これらは、様々なサイズのイントロンによってインターカレートされている。FVIIIは、19アミノ酸長のシグナルペプチドおよび2332アミノ酸の配列として合成される。これは、主に肝臓によって産生される。腎臓、脾臓、およびリンパ球は、少量のFVIIIを産生する。培養ヒト細胞株は、FVIIIを発現することができず、現在、ヒトFVIII cDNAによって遺伝子改変されたチャイニーズハムスター卵巣細胞、ベビーハムスター腎細胞、またはヒト胎児腎細胞を使用して産生されている。
FVIII分子は、3つの異なるタイプのドメインで構成される:A1、A2およびA3ドメインは、互いに相同であり、触媒活性にとって必須であり;Bドメインは種間で高度に可変であり、高度にグリコシル化されているがタンパク質の凝血促進活性にとって必須ではなく{Kaufman、1997 #36}、およびC1、C2ドメインは、他の凝血因子(FIXおよびFX)およびリン脂質との結合に関係している。
FVIIIは、小胞体(ER)内部のリボソーム上のそのmRNAから産生され、次に、シグナルペプチドがER内腔で切断され、タンパク質はマンノース残基に富むオリゴ糖によってBドメインにおいてグリコシル化される。Bip(免疫グロブリン結合タンパク質)、カルネキシン、およびカルレチクリンを含むERシャペロンに対する結合もまた、内腔で起こり、Bipは、FVIII凝集体を分解のためにサイトゾルに輸送する。Bドメインの欠失は、おそらくBipに対する結合が阻害されることから、FVIIIの分泌を増加させる。別のシャペロンであるERGC−53は、Bipがタンパク質から解離した後にFVIIIがゴルジ体に移行する原因である。ERGC−53は、Bドメイン上のマンノース残基に結合する。ゴルジ体では、FVIIIは、さらなるグリコシル化、ジスルフィド結合形成、およびフォールディングを受ける。2つのペプチド結合は、Bドメイン内で切断されることから、得られた分泌タンパク質は、重鎖および軽鎖によって形成されるヘテロ二量体である。血友病患者における一部のミスセンス変異は、分解のためにタンパク質のERからサイトゾルへの輸送が増加するために、およびゴルジ体分解の増加のために、FVIIIの分泌の低減を引き起こす。
循環中のFVIIIは、Bドメイン上で起こるフォン・ヴィレブランド因子(VWF)とのその結合によって安定化される。循環中のFVIIIの半減期は、健常な対象においておよそ18時間である。血友病の対象における組換えFVIIIの半減期は、血液型およびVWFレベルに応じて10〜20時間の範囲である。FVIIIの最高活性は、静脈内投与後1〜2時間で検出可能である。FVIIIは、肝臓のマルチリガンドエンドサイトーシス受容体である低密度リポタンパク質関連受容体タンパク質(LRP)との結合を介して循環から除去される{Saenko、1999 #39}。
調製物100を含む本発明の実施形態で使用される第VIII因子は、典型的には、ヒト第VIII因子を含み、天然に存在する形態であってもよく、組換え形態であってもよい。前者はヒト血漿に由来する第VIII因子を含む。後者は、野生型の活性と比較して同じかまたはそれより高い生物活性を有するが、野生型第VIII因子とは1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって異なる野生型第VII因子のバリアントを含む。
本発明の実施形態によって送達される第VIII因子のタイプ
本発明の様々な実施形態は、複数の異なるタイプの利用可能な第VIII因子補充療法の送達を企図する。第1は、血漿由来濃縮第VIII因子である。典型的には、そのような血漿由来因子は、プールしたヒト血漿から抽出され、病原体による混入を最小限にするために精製される(例えば、ALPHANATEおよびHUMATEP)。第2は、組換えDNA技術から哺乳動物細胞株において産生された組換えヒト第VIII因子であり、完全長のヒト第VIII因子タンパク質をもたらす(例えば、HELIXATE、KOGENATE、RECOMBINATEおよびADVATE)。第3は、野生型バージョンから改変されている組換えヒト第VIII因子であり、最も一般的な改変はBドメインの欠失である(例えば、REFACTO、AFSTYLAおよびNOVOEIGHT)。最後に、一部の製品は、循環中の半減期を増加させるために、Fc融合またはPEG化によって改変された組換え第VIII因子、野生型またはアナログを含有する(ADYNOVATEおよびELOCTATE)。
上記で言及したタイプの第VIII因子の簡単な説明を以下に示す。
ADVATE
ADVATE(抗血友病因子(組換え型)、Shire Corporationから入手可能)は、遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって合成されるが、血漿またはアルブミンを含有しない2,332アミノ酸からなる精製糖タンパク質である。ADVATEの産生に使用したCHO細胞株は、RECOMBINATEの生合成に使用した細胞株に由来する。ADVATEは、その生化学および物理化学的特性ならびにその非臨床のin vivo薬理学に関してRECOMBINATEと同等であることが示されている。CHO細胞によって合成されたrAHFは、凝固に関してヒト抗血友病因子(hAHF)と同じ生物学的効果を有する。構造的には、組換えタンパク質は、AHF(ヒト)において見出される組合せと類似の不均一な重鎖および軽鎖の組合せを有する。ADVATEは、静脈内注射のための滅菌の非発熱性粉末として製剤化されている。フォン・ヴィレブランド因子(VWF)は、第VIII因子と同時発現され、培養においてそれを安定化するために役立つ。最終的な製品は、rAHFのIUあたり2ng以下のVWFを含有する。ADVATEの比活性は、4000〜10000国際単位/mgタンパク質である。予防のために、20〜40IU/kg体重の第VIII因子を1日おきに(週に3〜4回)使用することができる。
ADYNOVATE
ADYNOVATE(Shire Corporationから入手可能)は、組換え完全長ヒト凝血第VIII因子(1つまたは複数のポリエチレングリコール(MW 20kDa)分子に共有結合によりコンジュゲートした分子量(MW 280kDa)の2,332アミノ酸)である。ADYNOVATEの治療活性は、CHO細胞株から組換えDNA技術によって産生されるその親薬物物質ADVATEに由来する。ADVATEは、一連のクロマトグラフィーカラムを使用して培養培地から精製される。次に、ADVATE分子を、リジン残基を主に標的とするポリエチレングリコールに共有結合によりコンジュゲートさせる。第VIII因子分子のPEG化は、その半減期を増加させ、それによって循環中の活性の治療レベルを維持するために必要な注射回数が減少する。日常的な予防の場合、ベースライン活性を増加させるために55IU/kgの負荷用量の週に2回投与後に40〜50IU/kg体重の週に2回投与を行う。正確な、個別化した投薬レジメンを、各患者について個々に決定しなければならない。Adynovateは、異なる含量で利用可能な1回使用のバイアル中の凍結乾燥粉末である。
ALPHANATE
ALPHANATE(Grifols Biologics,Inc.から入手可能)は、プールしたヒト血漿から精製したフォン・ヴィレブランド因子と複合体を形成した第VIII因子の滅菌凍結乾燥濃縮物である。抽出したタンパク質をいくつかのプロセスおよび化学的処置に供して無菌性およびウイルス量の最少化を確実にする。両方の因子の凝血促進活性を、国際単位(IU)で報告する。最終製品は、ヒトアルブミンの添加によって安定化される。この製品における第VIII因子の1IUは、新鮮なヒト血漿1mlの第VIII因子活性とほぼ等価である。製品の比活性は少なくとも5IU/mgタンパク質である。血友病A患者の予防に関して、IUでの投薬および注入回数は、経験を有する医師が症例毎に決定すべきである。薬物動態プロファイルを、重度の血友病Aを有する12人の成人患者において評価したところ、平均半減期は17.9±9.6時間であり、注入後10分で96.7±14.5%であった。注入後10分での回収率もまた、注入したFVIIIのIU/kg体重あたり、FVIIIの2.4±0.4IUの上昇/dL血漿として決定された。
ELOCTATE
ELOCTATEは、Biogen Corporationから入手可能である。ELOCTATEにおける活性成分は、Bドメイン欠失組換え第VIII因子、Fc融合タンパク質(BDD−rFVIIIFc)である。BDD−rFVIIIFcは、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fcドメイン配列に共有結合したヒト凝血第VIII因子のBドメイン欠失アナログからなる組換えタンパク質である。分子の第VIII因子部分は、90kDa重鎖および80kDa軽鎖(内因性の第VIII因子と類似の)を有し、これらは中央のBドメインからの14(908個中)アミノ酸によって連結される。FVIII部分は、内因性の第VIII因子と同等である翻訳後改変を有する。分子のFcドメインは、IgG1のヒンジ、CH2、およびCH3領域を含有する。BDD−rFVIIIFcは、見かけの分子量220kDaの1890アミノ酸を含有する。発現されたタンパク質の大部分は、2つの鎖の分子に切断されるが、ELOCTATEもまた、39%までの一本鎖の非プロセシング型を含有し得る。両方の分子が同等の第VIII因子活性を有することが示されている。タンパク質は、ヒト胎児腎細胞株から産生され、細胞培養培地から精製される。Eloctateは、再構成してIV注射するための滅菌水と共に滅菌非発熱性凍結乾燥粉末として供給される。これは異なる含量で入手可能である。日常的な予防の場合、50IU/kgの4日毎が推奨される。用量は、患者の応答に基づいて、25〜65IU/kgの範囲で3〜5日間隔での投薬に調整しなければならない。
HUMATE−P
HUMATE−P(CLS Behringから入手可能)は、血友病AおよびVW病を有する患者の処置のための第VIII因子(FVIII)およびフォン・ヴィレブランド因子(VWF)の精製滅菌凍結乾燥濃縮物である。Humate−Pは、プールしたヒト血漿の低温不溶性分画から精製される。VWFまたはFVIIIの1国際単位(IU)は、プールした新鮮なヒト血漿1.0mL中のVWFまたはFVIIIの活性量にほぼ等しい。個々の患者のPKに応じて、投薬を6、8または12時間毎に繰り返してもよい。
HELIXATE FSおよびKOGENATE FS
HELIXATE FS(CLS Behringから入手可能)およびKOGENATE FS(Bayer corporationから入手可能)は、ベビーハムスター腎細胞に完全長のヒト第VIII因子を導入することによって産生される。次に、得られた第VIII因子タンパク質は精製され、動物起源からのタンパク質を含有しない。この製品の生物活性は、血漿由来ヒト第VIII因子と同じである。活性な薬学的成分は、両方のAPIがBayerによって産生されることから、Helixate FSおよびKogenateの両方について同一であり、Helixate FSは、2社の間の合意に基づいてCLS Behringによって分布される。両方の薬物の推奨される予防投薬レジメンは、成人に関して25IU/kgの週に3回、および子供の場合、25IU/Kgの1日おきである。
RECOMBINATE
RECOMBINATE(Baxter Healthcare Corporationから入手可能)は、ヒト第VIII因子およびフォン・ヴィレブランド因子(VWF)を同時発現するように遺伝子操作されているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって合成される糖タンパク質である。CHO細胞株は、組換え第VIII因子(rFVIII)を細胞培養培地に分泌する。VWFと複合体を形成した第VIII因子は、一連のクロマトグラフィーカラムを利用して培養培地から精製される。CHO細胞によって産生された合成されたrFVIIIは、ヒト第VIII因子と同じ生物作用を有する。構造的には、タンパク質は、ヒト第VIII因子に見出される組合せと類似の重鎖および軽鎖の組合せを有する。RECOMBINATEは、静脈内注射のための濃縮組換え第VIII因子の滅菌非発熱性凍結乾燥粉末調製物として製剤化される。この製剤の1国際単位(IU)は、第VIII因子タンパク質約1.5μgを含有する。最終製品は、rFVIIIのIUあたり2ng以下のrVWFを含有するが、これは、フォン・ヴィレブランド病患者においていかなる臨床的に関連する作用も有しない。製品は、保存剤を含有しない。この製品1IUは、患者のベースラインが<1%であると仮定して、患者のベースラインより2倍高い第VIII因子ピーク活性を引き起こす。したがって、患者におけるFVIII活性をX%増加させるためには、IU用量はおよそ(X*Kg)/2でなければならない。患者69人を含むPK試験では、RECOMBINATEの循環中の平均半減期は、14.6±4.9時間(n=67)であった。RECOMBINATEについて観察された実際のベースライン回収率は、123.9±47.7IU/dL(n=23)であり、RECOMBINATEについて計算された実際の回収率の予想回収率に対する比は、121.2±48.9%であった。
本発明の実施形態を介する第VIII因子製品の送達
本明細書に記載されるように、嚥下可能デバイス10および治療調製物100を含む本発明の様々な実施形態は、様々な凝固障害の処置のための第VIII因子補充療法の経口送達のために適合させることができる。一実施形態に従って、デバイス10の実施形態を使用する第VIII因子の経口送達のための前向きな予防投薬レジメンは、1日1錠の経口投与に対応し、1錠あたりのIUの量は、活性な薬学的成分の製造元の推奨に基づいて計算されるであろう。他の実施形態は、より頻回(例えば、1日2回)またはあまり頻繁でない(2、3、5、7または他の数の日数で1回)送達を企図する。特定のタイプの第VIII因子のより具体的な投薬レジメンを、以下に記載する。
特定のタイプの第VIII因子の投薬レジメン
Helixate FSおよびKogenate FSは、25IU/kgを週に3回(およそ2日毎)という推奨用量を有する。これらの化合物に関して、70kgの成人の総用量は、1750IUの2日毎であり、これは経口デバイス10/カプセル20の実施形態によって経口送達される場合、875IU/日に換算される。Helixate FSおよびKogenate FSはいずれも、4000IU/mgタンパク質の比活性を有し、したがって1日用量875IUは、第VIII因子約0.22mgに換算され、これは1つの経口カプセル20の1日1回によって容易に送達される。Eloctateは、50IU/Kgの用量で4日毎に投与される。したがって、通常の体重70kgの成人の総用量は、3500IUの4日毎であり、これはカプセル20の実施形態によって経口送達した場合に、約875IU/カプセル/日に対応する。Eloctateの比活性は4000〜10020IU/mgタンパク質であることから、0.22〜0.00mgの1日用量範囲を1つの経口カプセルによって投与することができる。AfstylaおよびAdynovateの推奨投薬量は、約20〜50IU/kgの2日毎または3日毎である。
70kgの成人の範囲は、1400〜3500IUの2日毎/3日毎であり、これは2日毎に投与した場合に約700〜1750IU/日に対応し、または3日毎に投与した場合に約467〜1167IU/日に対応する。したがって、これらの投薬量は、デバイス10の実施形態によって経口送達した場合に、467〜1750IU(患者および活性成分に応じて)の間の1日用量に対応する。Afstylaの場合、7400〜16000IU/mg第VIII因子の比活性を有し、0.03〜0.24mgの用量範囲が、1つの経口デバイスによって毎日送達される。最後に、Adynovateの場合、2700〜8000IU/mgの比活性を有し、1つのカプセル20によって経口送達される1日用量範囲は、0.06〜0.65mgであろう。これらの用量は全て、特定の投与経路(例えば、腹腔への送達)の生物学的利用率の減少を説明するために増加(例えば倍加)させることができる。たとえ用量を倍加させても、経口デバイス10/カプセル20の1デバイスの毎日投与は、第VIII因子治療用量を投与するために十分であろう。
一部の第VIII因子製品(例えば、Advate(登録商標)、ReFacto(登録商標)、NovoEight(登録商標))では、第VIII因子タンパク質1ミリグラムの比活性が処方情報について報告され、所望の治療効果(例えば、凝固の改善、凝固時間の低減等)を達成するためにカプセル10の実施形態を使用して投与される薬物の重量(例えば、mg)の計算を容易にする。例えば、Advateの推奨投薬レジメンは、20〜40IU/kgの1日おきである。70Kgの成人の場合、これは1400〜2800IU/日の1日おきおよび700〜1400IU/日となる。Advateの比活性は4000〜10,000IU/mgタンパク質(例えば、第VIII因子)であることから、薬物のmgでの治療範囲は、0.07〜0.14mg(IUでの用量および因子の最高活性10,000IU/mgを考慮して)の範囲または0.175〜0.35mg(IUでの用量および因子の最低活性4000IU/mgを考慮して)の範囲であろう。これらの用量は、1つの経口デバイス10/カプセル20/日によって投与することができる。40〜225IU/kgの1日投薬レジメンを有するReFactoに関する類似の計算は、したがって70kgの成人に関して280〜15750IUであり、因子の活性が9110IU/mgである場合には、0.03〜1.73mgの1日用量範囲に換算され、因子の活性が13700IU/mgである場合には、0.02〜1.15mgに換算される。1日あたり1カプセルは、これらの治療範囲を送達することができる。NovoEightは、8340IU/mgの因子比活性を有し、20〜60IU/kgの1日おきの投薬レジメンは、最低用量および最高用量を単一の範囲に組み合わせた、子供および成人に関する全体的な予防的投薬範囲を考慮する。成人に関して、1つまたは複数の実施形態に従って、NovoEightの1日の低用量は2800IU/日(例えば、70Kgの患者×2×20IU/kgと仮定して)であり、高用量は8400IU/日(70Kg×2×60IU/kgを仮定して)であろう。ミリグラムに変換すると、用量範囲は、カプセル20の実施形態を使用して、または本発明の実施形態によって企図される他の経口送達手段によって経口送達した場合に約0.34〜約1mg/日である。デバイス10およびカプセル20の様々な実施形態は、そのような用量を含有する針40、140を産生することによって第VIII因子製品の上記の用量のいずれかを送達するように容易に構成することができる。特に単一の針40または140を、これらの用量のいずれかを含有するように構成することができる。
第VIII因子および他の凝固因子の投薬の調整を説明する実施形態
様々な実施形態では、因子または本明細書に記載の任意の凝固因子の所定のソースまたはバッチの力価(IU/mgとして表記される)の変化に関して調整を行ってもよい。そこで、例えば、力価を増加させる場合(例えば、第VIII因子または他の凝固因子に関して増加したIU/mg)、カプセルあたりのmgを減少させて、それによって必要なカプセル数を減少させることができる。同様に、IV注入によって送達した場合の薬物の生物学的利用率と比較して、経口デバイス10の実施形態による経口投与経路を介して送達された所定の凝固因子の生物学的利用率の低減を投薬量において許容することができる。特に、小腸壁、腹膜、または腹腔の1つまたは複数などのGI管における特定の位置に送達された経口デバイス10内の凝固因子のそのような生物学的利用率の低減を許容することができる。例えば、経口デバイス10の実施形態による腹腔への第VIII因子(または本明細書に記載の他の凝固因子)の送達の場合、生物学的利用率は、IV注入した第VIII因子の生物学的利用率のおよそ50%である。全ての目的に関して十分に参照により本明細書に組み込まれている、"Intravascular of VWF and Factor VIII following Intraperitoneal Injection and differences from Intravenous and Subecutaneous Injection in Mice." Q. Shi. et. al., Hemophilia (2012), 18, 639-646を参照されたい。このように、カプセルあたりの薬物のmgまたは摂取するカプセルの数に関して第VIII因子の記載のいずれの投薬量も、生物学的利用率の他の減少と比較して倍加させてもよく、または別の量を増加させてもよい。
第VII因子を含む治療組成物の実施形態
上記で考察したように、本発明の様々な実施形態は、先天性および後天性血友病などの様々な凝固障害の処置のための第VII因子などの凝固因子を含む治療組成物を提供する。したがって、第VII因子化合物に関する簡単な説明を以下に示す。第VII因子(EC3.4.21.21として記載、血液凝血第VII因子、活性化血液凝血第VIIa因子、以前はプロコンベルチンとして知られていた)は、凝血カスケードにおいて血液を凝固させるタンパク質の1つである。第VII因子は、第VII因子欠乏を有する血友病患者ならびに第VIII因子を含む凝固因子の1つまたは複数に対する阻害性抗体を産生する患者における補充療法として使用される。これはまた、外傷患者における出血の制御および脳出血の処置のためにも適応外使用されている。これはセリンプロテアーゼクラスの酵素であり、肝細胞によって産生され、循環中に排泄される。排泄された糖タンパク質は、質量およそ50KDの406アミノ酸の一本鎖であり、これはタンパク質分解切断および他の機構によってその活性型に変換される。第IXa因子、第Xa因子、第XIIa因子、またはトロンビンを含むいくつかの因子が、第VII因子のタンパク質分解切断をもたらし得る。38〜60アミノ酸配列のタンパク質分解後、FVIIは、活性型またはFVIIaを含む、ジスルフィド結合によって接続される2つの鎖に変換される。軽鎖(152アミノ酸)は、上皮成長因子のドメインおよび異常なリン脂質結合およびカルシウムイオンに結合するカルボキシル化グルタミン酸残基を含有するが、重鎖(254アミノ酸)は、第IX因子および第X因子のその活性化型への活性化を触媒するセリンプロテアーゼ活性を含有する。
本明細書で使用される場合、用語「第VII因子」は、非切断型FVII(酵素前駆体)および第VIIa因子としても知られる第VII因子の活性化型の両方を含む。同様に第VII因子の様々な実施形態は、ヒト野生型ヒト第VII因子の1〜406位のポリペプチド配列(米国特許第4,784,950号に開示される)、または別の種(例えばウシ、ブタ、イヌ、ネズミ)に由来するFVIIを含むポリペプチドに対応し得る。本発明の実施形態によって企図され、送達される他の形態のFVIIは、存在し得る第VII因子の天然の対立遺伝子変形形態、および任意の形態または程度のグリコシル化または他の翻訳後修飾を含み得る。用語「第VII因子」はまた、野生型の活性と比較して同じまたはより高い生物活性を有する第VII因子のバリアントも含み、これらの特定のバリアントは、野生型第VIIa因子とは、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって異なるポリペプチドを含む。用語「第VII因子の生物活性」は、例えば活性化血小板の表面上でのトロンビン生成能を含む。
インヒビターを有する血友病患者における出血エピソードの処置のための第VIIa因子の典型的な用量は、90μg/kgを止血が達成されるまで2〜6時間毎に繰り返すことである。13.3〜22μg/kgの用量を、FVII補充療法のために使用し、20〜160μg/kgを外傷および脳内出血患者のために使用する。残念なことに、第VIIA因子は、2〜4時間の短い半減期を有し、頻繁なIV注射を必要とする。第VIIA因子の半減期を延長させるために静脈内注射の代替として皮下注射が研究されているが、皮下注射による第VII因子の生物学的利用率は、21〜30%のみである。この低い生物学的利用率を考慮すると、皮下注射は、第VII因子のあまり効率的または実際的な投与経路ではない。そのため、嚥下可能送達デバイス10の実施形態による第VII因子または第VIIa因子の送達は、生物学的利用率の増加、および1日を通しての複数回注入の必要性の低減または必要性がないことを含むいくつかの明確な利点を表す。後者の要因は、病院への移動または自宅での注入の必要性をなくすことによって、患者のクオリティオブライフの有意な改善を提供する。
本発明の実施形態を介した第VII因子製品の送達
一実施形態に従って、デバイス10の実施形態を使用して第VII因子の経口送達のための前向きな予防投薬レジメンは、1日1錠の経口投与に対応し、1錠あたりのIU量は、活性な医薬成分の製造元の推奨に基づいて計算される。他の実施形態は、より頻繁な(例えば、1日2回)またはより頻繁でない(2、3、5、7、または他の日数毎に1回)の送達を企図する。デバイス10の実施形態によって送達され得る第VII因子の特定の投薬量は、約10〜90μg/kgの範囲であり、特定の用量は、後天性血友病患者では70〜90μg/kgの範囲の2〜3時間毎であり、先天性第VII因子欠乏症の患者では15〜30μg/kgの4〜6時間毎であり、インヒビターを有する先天性血友病AもしくはBの患者では90μg/kgの2時間毎、またはグランツマン血小板無力症患者では90μg/kgの2〜4時間毎であり得る。出血エピソードの際には前述の条件の投薬量は、止血が達成される(例えば、出血が停止する、および/または有意に低減される)まで投与される。インヒビターを有する先天性血友病AまたはBの患者では、止血が達成された後、早期の投与によって達成された止血栓を維持するために、90μg/kgの用量を3〜6時間毎に投与してもよい。また、前述の投薬量のIUの単位名称を有する活性単位への変換を許容することもできる。
本発明の実施形態によって送達される第VII因子のタイプ
治療調製物100に含まれる複数のタイプの第VII因子を使用して、本発明の実施形態によって送達してもよい。様々な実施形態では、治療調製物100に含まれる第VII因子のタイプは、典型的にはヒト第VII因子または第VIIa因子を含み、天然の形態であっても、組換え形態であってもよい。前者は、ヒト血漿に由来する第VII因子または第VIIa因子を含む。後者は、野生型の活性と比較して同じまたはより高い生物活性を有するが、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって野生型の第VII因子または第VIIa因子とは異なる、野生型第VII因子または第VIIa因子のバリアントを含む。本発明の実施形態によって使用され得る特定の市販のタイプの第VII因子には、以下に記載されるNovoseven(登録商標)、NovesevenRT(登録商標)およびAryoseven(登録商標)が挙げられるがこれらに限定されない。これらのおよび他の形態の第VII因子は、多様な方法で、例えばヒト血漿の非寒冷沈降可能分画から、または細胞もしくはトランスジェニック動物からの遺伝子操作によって得る/産生することができる。特定の実施形態に従って、ヒト第VII因子は、このタンパク質を産生するように遺伝子操作された非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳汁において産生される。好ましくは、これはトランスジェニックウサギまたはヤギの乳汁である。哺乳動物の乳腺による第VII因子の分泌は、トランスジェニック哺乳動物の乳汁へのその分泌を可能にし、第VII因子組織依存的な発現の制御を必要とする。そのような制御方法は当技術分野で周知である。発現の制御は、タンパク質を動物の特定の組織に発現させる配列を使用して実施される。これらには、プロモーター配列WAP、ベータカゼイン、ベータラクトグロブリン、およびシグナルペプチド配列が挙げられる。特に、トランスジェニック動物の乳汁からの目的のタンパク質の抽出プロセスは、欧州特許第0264166号に記載されている。
NOVOSEVENおよびNOVSEVEN RT
1つまたは複数の実施形態に従って、デバイス10の実施形態によって送達される第VII因子のタイプは、NovoSeven(登録商標)に対応し得るが、これは血友病患者における制御されない出血のためにFDAの承認を受けている組換え型ヒト第VIIa因子(NovoNordisk Corporationから入手可能)である。これはまた、同様にNovoNordiskから入手可能なNovoSeven(登録商標)RTとしても知られるNovoSevenのバリアントにも対応し得る。特に、Novaseven RTは、室温で製造され、冷蔵することなく保存することができる。関連するまたは追加の実施形態では、これは、Aryogen Pharmedから入手可能なAryoSeven(登録商標)などの第VIIa因子のバイオシミラーに対応し得る。
NovaSevenの簡単な概要を以下に提供するが、この概要はまた、Novaseven RTにも当てはまる。NovoSevenは、406アミノ酸残基からなるビタミンK依存性糖タンパク質である(MW 50Kダルトン)。組換え型ではあるが、NovoSevenは、ヒト血漿由来第VIIa因子と構造的に類似である。NovaSevenの薬物動態プロファイルは、血友病の処置のための投薬を、先天性第VII因子欠乏症の処置のための投薬と比較すると異なる。NovaSevenの処方情報においてNovoNordiskによって報告された臨床試験によれば、NovoSevenの1回用量の薬物動態(17.5、35、および70μg/kg)は、血友病AまたはBを有する対象15人において用量依存的な挙動を示した。定常状態での見かけの分布容積の中央値は、103mL/kg(範囲、78〜139)であった。クリアランスの中央値は、33mL/kg/時間(範囲27〜49)であった。滞留時間の中央値は、3.0時間(範囲、2.4〜3.3)であり、t1/2は、2.3時間(範囲、1.7〜2.7)であった。in vivo血漿回収率の中央値は、44%(30〜71%)であった。第VII因子欠乏症の処置に関する臨床試験では、NovoSevenの15および30μg/kg体重の用量の1回用量の薬物動態は、使用した2つの用量の間で用量非依存的パラメーター:全身クリアランス(70.8〜79.1mL/時間×kg)、定常状態での分布容積(280〜290mL/kg)、平均滞留時間(3.75〜3.80時間)、および半減期(2.82〜3.11時間)に関して有意差を示さなかった。平均in vivo血漿回収率は、およそ20%(18.9%〜22.2%)であった。
NovaSevenおよびNovoSevenRTの投薬レジメン
後天性血友病および先天性第VII因子欠乏症を有する患者のNovaSevenおよびNovasevenRTの投薬量レジメンを、各々の凝固障害に関する根拠と共に以下に記載する。これらのレジメンは、NovaSevenおよびNovaSevenRTの両方に当てはまる。血友病患者の処置のためのNovaSenvenまたはNovaSevenRTの推奨用量は、止血が達成されるまで70〜90μg/kg患者体重の範囲の2〜3時間毎の繰り返しである。したがって、70kgの患者に関して必要用量は、NovaSeven rFVIIa 4.9〜6.3mgの2〜3時間毎であろう。FVIIの生物学的利用率が、腹腔内送達を介する場合は約50%であることを考慮すると、70kgの患者の平均的な投薬は、9.8〜12.6mgの範囲で2〜3時間毎であろう。約3mg〜9mgの間の薬物を有するように構成されるカプセル20の実施形態では、これは約1〜3カプセルの2〜3時間毎となる。
先天性第VII因子欠乏症の患者に関して、NovaSevenまたはNovaSevenRTの推奨用量は、15〜30μg/kg体重の4時間毎である。したがって、70kgの患者の場合、薬物の必要な用量は、1.05〜2.10mgの範囲の4時間毎である。腹腔内送達を介した第VII因子の生物学的利用率の低減(50%)を考慮すると、NovaSevenまたはNovaSevenRTの必要用量は、約2.10〜4.20mgの4時間毎であろう。薬物約1mg〜4mgを有するように構成されるカプセル20の実施形態では、これは約1〜2カプセルの4時間毎となる。
第IX因子を含む治療組成物の実施形態
本明細書で考察されるように、本発明の様々な実施形態は、先天性および後天性血友病などの様々な凝固障害を処置するために第IX因子などの凝固因子を含む治療組成物を提供する。したがって、第IX因子化合物に関する簡単な説明を次に示す。凝血第IX因子(FIX)は、凝血カスケードにおける重要な構成要素であり、傷害に対する止血応答の原因物質である。これは、肝臓において分子量57,000の一本鎖糖タンパク質として合成される。FIXの欠乏によって、血友病Bが起こる。FIXは、内因性の凝血経路における活性化第IX因子(FIXa)によって活性化される。FIXaは、第VIIIc因子と共に、第X因子(FX)を第Xa因子に活性化することによって凝血カスケードを拡張し、このようにプロトロンビンをトロンビンに変換して、フィブリン塊の形成をもたらす。FIXの活性化は、2つのステップを含み、最初のステップでは、内部ペプチド結合が切断されて、ジスルフィド結合によって架橋された2つの鎖の中間体の形成をもたらす。次に、重鎖のアミノ末端領域における第2の特定のペプチド結合が切断され、活性化第IX因子(FIXa)を形成する。FIX療法は、血友病に罹患している患者に関して一時的に止血を回復することが示されている。いくつかのFIX補充製品および療法が現在市販されている。それらには、以下:Alphanine SD、Alprolin、Bebulin、Bebulin VH、Benefix、Idelvion、Ixinity、Immunine、Mononine、Profilnine SD、ProplexおよびRixubisが挙げられる。上記で言及した5つのタイプの第IX因子についての簡単な説明を以下に示す。
Mononine(CSL Behring)
Mononine(登録商標)は、CLS Behringから入手可能な第IX因子のヒト由来形態である。これは、免疫アフィニティクロマトグラフィーを使用することによって無関係な血漿由来タンパク質から精製される。具体的には、FIXに対するマウスモノクローナル抗体を、親和性リガンドとして使用してFIXを捕捉および抽出する。Mononineは、静脈内に注入される。Mononine中のFIXの投薬量は、患者の体重および所望のFIX(IU/dL)に依存する。Mononineの1ml製剤は、FIX 100IU(各IUは、1つの活性なFIXを表す)、マンニトール、ポリソルベート80、ヒスチジン、水酸化ナトリウム、および/または塩酸からなる。
血友病Bの処置のためにMononineの使用に関してBehringが実施した2つの臨床試験(患者、n=81)が、Mononineの処方情報に報告されている(http://labeling.cslbehring.com/pi/us/mononine/en/mononine-prescribing-information.pdfを参照されたい)。試験は、Mononineの安全性および効能評価の両方を評価した。様々な、しかし有意な量の他の肝臓依存的血液凝血タンパク質(例えば、第II因子、第VII因子、および第X因子)を含有するFIX複合体濃縮物を血友病B患者に注入すると、およそ0.57〜1.1IU/dLの上昇/IU/kg体重の範囲の注入したFIXの回収率をもたらし、第IX因子の血漿半減期はおよそ23時間〜31時間の範囲であった。患者5人(6%)が有害反応を報告した。投与した用量は、対象36人に対して71〜161IU/kgの間の範囲であった。平均回収率は、Mononineの用量が増加すると減少する傾向を示した:>75〜95IU/kgの用量で1.09±0.52K(n=38)、>95〜115IU/kgの用量で0.98±0.45K(n=21)、>115〜135IU/kgの用量で0.70±0.38K(n=2)、>135〜155IU/kgの用量で0.67K(n=1)、および>155IU/kgの用量で0.73±0.34K(n=5)。これらの高用量を投与された対象36人の中で、1人(2.8%)のみがおそらくMononineに関連する有害経験(「集中の困難」;対象は回復した)を報告した。いかなる患者に関しても血栓形成合併症は観察または報告されなかった。小さいパーセンテージの患者が、アナフィラキシーを含む過敏反応を示した。他の反応は、頭痛、悪心、発熱、悪寒、顔面紅潮、嘔吐、ひりひりする、無気力、および蕁麻疹を含むがこれらに限定されない。投薬量レジメンは、小手術および/または大手術を受けた患者における止血の間のFIXレベルに依存する。薬物動態(PK)および薬力学(PD)データは、Mononineに関して報告されていない。
Idelvion(CSL Behring)
CLS Behringから入手可能なIdelvionは、組換えアルブミンに融合した組換え型第IX因子である。薬物のこの融合型は、Idelvion中の第IX因子の半減期を、血漿由来のFIXの半減期より数倍増加させる。例えば、Idelvionの75IU/kgの1回用量に関して、t1/2は104時間であると決定された。Cmaxは、82IU/dLであると決定され、クリアランス比(Cl)は、0.84ml/h/kgであった。平均分布容積(Vss)は、1.20dL/kgであると決定された。全体として、IdelvionのPKパラメーターは、1回投薬および繰り返し投薬の間で比較した場合に類似であった。日常的な予防の場合、患者(>12歳)の投薬量は約25〜40IU/kg体重の7日毎である。出血エピソードの制御および予防のための投薬量は、様々なパラメーター(例えば、体重、所望のFIX上昇)、ならびに患者の状態に依存する。
Rixubis(Baxter pharmaceuticals)
Rixubis(BAX326としても知られる)は、成人および子供の血友病の処置のために使用されるBaxter Pharmaceuticalsから入手可能な凝血第IX因子の組換え型である。BAX326は、浮遊培養での組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞クローンを使用して作製された。そのアミノ酸配列は、pdFIX(Immunine)のAla−148対立遺伝子型の配列と同一であり、その構造および機能的特徴もまた類似である。FIXを分泌するCHO細胞株は、アフィニティクロマトグラフィーによって精製される。Rixubisの比活性は、>200IU/mgタンパク質であると決定された。Rixubisの製剤は、L−ヒスチジン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、マンニトール、スクロース、およびポリソルベート80からなる。投与後、Rixubisは、FIXの血漿レベルを増加させ、(in−vitroトロンボプラスチン時間)aPTTを減少させることによって、血友病患者における凝血の欠陥を一時的に修正する。平均Cmaxは、0.95IU/dLであると決定されたが、平均クリアランス比(Cl)は、6.0ml/kg/時間であった。見かけの分布容積の平均値(Vss)は、178.6mL/kgであった。半減期は25.4時間であると測定された。上記のPKデータは、Rixubisの反復投薬に関するものである。推奨用量は12歳より大きい患者に関して血漿の0.7IU(正常の0.7%)である。
AlphaNine SD(Alpha Therapeutic Corporation)
凝血第IX因子(ヒト)、AlphaNine(登録商標)SDは、ヒト血漿に由来する第IX因子の精製、溶媒洗浄剤処置、ウイルス濾過調製物である。これは、少なくとも150IUの第IX因子/mgタンパク質、検出限界未満の第VII因子(プロコンベルチン)、第II因子(プロトロンビン)および第X因子(スチュアート・プロワー因子)(第IX因子のIUあたり、0.04単位未満の第VII因子、0.05単位未満の第II因子、および0.05単位未満の第X因子)を含有する。AlphaNine SDは、静脈内投与のみが意図される滅菌凍結乾燥調製物である。各々のバイアルは1回用量容器である。AlphaNine SDは、国際単位(IU)で表記される第IX因子の力価によって表示される。AlphaNine SD製剤は、第IX因子のIUあたり、ヘパリン0.04単位、デキストロース0.2mg、ポリソルベート80 1.0μg、およびトリ(n−ブチル)ホスフェート0.10μgを含有する。保存剤は含有しない。AlphaNine SDは、総タンパク質1mgあたり150IU以上の第IX因子活性を含有する精製第IX因子製剤である。AlphaNine SDは、非治療レベルの第II因子、第VII因子、および第X因子を含有する。
BeneFIX(Pfizer)
BeneFIX、凝血第IX因子(組換え)は、組換えDNA技術によって産生された精製タンパク質である。製品は、静脈内注射のために再構成されることが意図される滅菌の非発熱性凍結乾燥粉末調製物として製剤化される。これは、国際単位(IU)で表記される表記の量の第IX因子活性を含有する1回使用バイアルとして利用可能である。各々のバイアルは、名目上250、500、1000、2000、または3000IUの組換え凝血第IX因子を含有する。力価(IUでの)は、第IX因子濃縮物の世界保健機構(WHO)国際標準品に対するin vitro1ステージ凝固アッセイを使用して決定する。1IUは、プールした健常なヒト血漿1mL中に存在する第IX因子活性の量である。凍結乾燥薬物製品の再構成後、賦形剤の濃度は、塩化ナトリウム、L−ヒスチジン、0.8%スクロース、グリシン、およびポリソルベート80である。BeneFIXの比活性は、タンパク質1ミリグラムあたり200IUより高いかまたはそれに等しい。これはヒト第IX因子のAla148対立遺伝子型と同一である一次アミノ酸配列を有し、内因性の第IX因子と類似の構造および機能的特徴を有する。BeneFIXは、十分に特徴付けされている遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって産生される。CHO細胞株は、組換え第IX因子を規定の細胞培養培地に分泌し、組換え第IX因子を、クロマトグラフィー精製プロセスによって精製する。
特定のタイプの第IX因子の投薬レジメン
第IX因子の標準的な投薬レジメンは、以下の式を使用して計算され得る:体重(kg)×第IX因子の血漿濃度の所望の増加(例えば、%またはIU/dL血漿)×第IX因子の実際の増加の逆数(IU/dL血漿/IU/kg体重)。第IX因子欠乏患者の毎日の予防処置の場合、Mononineの推奨投薬レジメンは、20〜30IU/kgの24時間毎である。このように、70kgの成人の場合、これは1400〜2100IUとなる。同様に、Mononine中の第IX因子の比活性はおよそ190IU/mgであることから、70kgの人にとって必要な第IX因子の重量での量は、およそ7mg〜10.6mg/日の範囲である。カプセル20を含む経口送達デバイス10の実施形態は、カプセルに含有される組織貫通部材140の数に応じて、錠剤あたり治療剤(例えば、凝固因子)3〜9mgの間を送達するように構成され得る。薬物約3mgを含有するカプセル20の実施形態を使用すると、これは1日あたり約3〜4カプセルとなり、錠剤あたり4mgの場合、これは1日あたり2〜3カプセルとなる。様々な実施形態では、所望の送達用量は、第IX因子の第1の用量(例えば、5mg)を送達するように構成される第1のカプセル、および第2の用量(例えば、2mg)を送達するように構成される第2のカプセルによって達成することができる。複数のデバイス10のそのような実施形態は、第IX因子または本明細書に記載の他の凝固因子を送達するために毎日の投薬レジメンとして構成され得る。上記の計算は、市販型の第IX因子の力価(例えば、IU/mg)に基づく。第VIII因子に関して上記で記載したように、薬物の腹腔内投与を静脈内注射と比較した場合の生物学的利用率の低減を説明するために調整することができる。
Rixubisなどの第IX因子のいくつかの組換え型は、40〜60IU/kg体重(例えば、70kgの対象では2800IU〜4200IU)の週に2回の投薬量で投与される。Rixubisの比活性は、200IU/mg(投薬量、0.25mg/kg)であると報告されている。したがって、これは第IX因子タンパク質14mg〜21mgの2週間に1回となる。3〜7mgの用量範囲を有するカプセル10の実施形態を使用すると、これは約2〜7カプセルの週に2回となる。毎日を含む他の投与スケジュールもまた企図される。そのため例えば3mg用量/カプセルおよび21mg/週の場合、患者は1カプセル/日を摂取することができる。3mgカプセルおよび42mg/週の場合、これは2カプセル/日となる。
長時間作用型のIdelvionまたはAlprolix(比活性55〜84IU/mgを有する)の場合、薬物の投薬はより少ない回数である。初回用量75IU/kg/週(70kgの患者では、約70mg/週)が推奨され、これを100IU/kgまで徐々に増加させることができる(70kgの患者では約100mg/週となる)。AlphaNineの場合、70kgの患者の投薬量は2800IU(70kg患者では、AlphaNineの18.6mg/週)に換算される。類似の投薬量が他のFIX、例えばBeneFIXにも当てはまる。例えば、Benefix(FIX)療法(2000IU)を受けている70kgの人は、タンパク質10mgを必要とする。投薬量レジメンは、患者の予防に依存する。Pfizerは、その処方情報において、日常的な予防の場合、BeneFIXが72.5IU/kgの週に2回の投薬量で投与されることを報告しているが、これは約0.36mg/kg患者体重となる。70kgの患者では、これは、次に約25mgの週に2回または50mg/週の用量となる。薬物8〜9mgを有するカプセルの場合(複数の組織貫通部材を使用して)、これは約3カプセルの週に2回、または毎日投与する場合には、約1カプセル/日となる。
第VIII因子に関して上記で説明したように、第IX因子製品の投薬量の調整は、腹腔に送達された場合の上記の市販型のいずれかにおける第IX因子の生物学的利用率の低減を説明するために容易に行うことができる。
第X因子を含む治療組成物の実施形態
上記で考察したように、本発明の様々な実施形態は、先天性および後天性血友病などの様々な凝固障害の処置のための第X因子を含む治療組成物を提供する。したがって、第X因子化合物に関して簡単な概要を次に示す。第X因子(EC3.4.21.6)は、凝血カスケードに関係するセリンプロテアーゼである。これは、肝臓において合成されるビタミンK依存的タンパク質である。FX遺伝子(F10)は、長さ22kbであり、F7遺伝子の2.8kb下流の13q34−terに位置する。コード配列は、他のビタミンK依存的タンパク質と相同であり、8個のエクソンに分割され、その各々がタンパク質内の特異的ドメインをコードする:エクソン1は、シグナルペプチドをコードし、エクソン2はプロペプチドおよびGlaドメインをコードし、エクソン3は、芳香族アミノ酸スタックドメインをコードし、エクソン4および5は各々、上皮成長因子様領域をコードし、エクソン6は、活性化ドメインをコードし、ならびにエクソン7および8は触媒ドメインをコードする。成熟の2つの鎖の型のFXは、ジスルフィド結合によって連結された139アミノ酸の軽鎖および重鎖からなる。軽鎖は、GLAドメインおよび2つの上皮成長因子ドメインを含有し、重鎖は、触媒セリンプロテアーゼドメインを含有する。完全な59kDaの2つの鎖のタンパク質は、10μg/mlの濃度で血漿中を循環する。
第X因子の活性型(FXaとしても知られる)は、酵素前駆体が重鎖において切断されると産生される触媒セリンプロテアーゼであり、His236、Asp228、およびSer379触媒部位を含有する52残基の活性化ペプチドを放出する。活性化は、リン脂質表面上のカルシウムイオンと共に組織因子:FVIIa複合体を介する外因性の経路を通して起こる。内因性の経路活性化は、リン脂質表面上のカルシウムイオンの存在下でセリンプロテアーゼFIXaおよびその補因子FVIIIaを通して起こる。第Xa因子は、プロトロンビンの最も重要な活性化因子であり、プロトロンビンを切断してFVa、Ca++、およびリン脂質と複合体を形成するトロンビンを生成する。FXaはまた、FVおよびFVIIIを活性化することもできる(Brown DL 2008)。FXaは、アンチトロンビンとの複合体を形成することによって阻害され、複合体は、循環から急速に排泄される。
第X因子欠乏症は、常染色体劣性であり、全般的な全世界集団において500000人に1人から1000000人に1人に罹患する。2つのタイプの欠乏症:FXタンパク質のレベルおよび活性の両方が減少するタイプI、ならびにタンパク質のレベルは影響を受けないが、活性が低減されるタイプIIに分類される。症状は、機能的なFXの循環中レベルに応じて、軽度から中等度および重度に及ぶ広範囲の重症度に分類される。
FX欠乏症の現行の治療は、ヒト血漿から抽出された複合体による補充療法である。多様な量の他の凝血因子と複合体を形成するFXを含有する市販の製品は、第X因子P(CSL Behring)およびCoadex(BDI Pharma)を含む。これらの化合物の各々の説明を投薬レジメンおよび根拠と共に次に説明する。
Coagadex
Coagadexは、BDI Pharmaによって製造される。Coagadexは、およそ100IU/mLの凝血第X因子および以下の不活性成分:塩化物、リン酸塩、クエン酸塩、スクロース、およびナトリウムを含有する。Coagadexの比活性は典型的には、80〜137IU/mgタンパク質である。処置の用量および期間は、第X因子欠乏症の重症度、出血の位置および程度、ならびに患者の臨床状態に依存する。第X因子レベルの所望のin vivoピーク増加を達成するための用量は、以下の式:用量(IU)=体重(kg)×所望の第X因子の上昇(IU/dL)×0.7を使用して決定され得る。したがって、70kgの患者の場合、投与される第X因子の投薬量は、1960IUであると決定され得るが、所望の第X因子上昇は約40%であると推定されている。10〜40%の第X因子の血漿レベルが、止血のために有効であると記載されている。24〜40時間の半減期に基づくと、第X因子の24時間毎の投与は、持続的な処置が必要である場合、一般的に十分であるはずである。
上記の推定に基づいて、1960IU中の第X因子タンパク質の量は14.3mgであると決定され、凝血第X因子の比活性は、第X因子137IU/mgタンパク質であると考えられる。腹腔内送達の生物学的利用率がIV投与と比較して約50%であることを考慮すると(腹腔内送達の場合の投薬量は倍加する必要がある)、70kgの患者の場合、必要投薬量は、約28.6mgの24時間毎に換算される。体重50kgの患者では、用量はおよそ20mgであり、体重80kgの患者では、用量は33mgであろう。この20〜33mg用量範囲を考慮すると、デバイス10/カプセル20の実施形態では、カプセルあたり約4〜9mgの間の薬物を有する(例えば、2〜3個の組織貫通部材140に含有される)。これは、約2〜8カプセルの24時間毎となる。
第X因子P(Behring)
第X因子PはCLS Behringによって製造され、約600〜1200IUのヒト凝血第X因子を含有する粉末および注射用溶液の溶媒として供給される。製剤はまた、血友病の処置における重要な凝血因子であるヒト凝血第IX因子600IUからなる。第X因子の比活性は、第X因子4〜60IU/mgタンパク質から因子3〜38IU/mgタンパク質の範囲で変動する。処置の用量および期間は、第X因子欠乏症の重症度、出血の位置および程度、ならびに患者の臨床状態に依存する。第X因子の必要用量の計算は、1単位のFX/kg体重が、血漿第X因子活性を通常活性のおよそ1.5%上昇させるという経験的知見に基づいている。必要な投薬量は、以下の式を使用して決定される:用量(IU)=体重[kg]×所望の第X因子上昇[%またはIU/dl]×0.7。したがって、70kgの患者に関して、投与される第X因子の投薬量は1960IUであると決定されるが、所望の第X因子の上昇は、約40%であると推定されている。10〜40%の間の第X因子の血漿レベルは、止血のために有効であると記載されている。24〜40時間という第X因子の半減期に基づき、FXの24時間毎の投与は、持続的処置が必要である場合に一般的に十分であるはずである。上記の推定値に基づいて、凝血第X因子の比活性が、第X因子60IU/mgタンパク質であると考えられることから、1960IU中の第X因子タンパク質の量は、32.6mgであると決定される。腹腔内送達の生物学的利用率がIV投与と比較して約50%であることを考慮すると、70kgの患者に関する必要な投薬量は、薬物約65.2mgの24〜40時間毎に換算される。薬物約5〜9mg/カプセルの間を有するデバイス10/カプセル20の実施形態では、これは約7カプセルの24〜40時間毎となる。
凝固因子または本明細書に記載の他の凝血タンパク質の生物学的同等物の実施形態
本発明の様々な実施形態はまた、本明細書に記載の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、および第X因子を含む)、ならびにそのアナログおよび誘導体とは異なるアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する組成物およびタンパク質の使用を企図する。第VII因子および第VIIa因子に対する適したアナログ、ならびにそれらを作製する方法は、全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第12/354,509号に記載されるものを含む。第VIII因子に対する適したアナログおよびそれらを作製する方法は、全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,112,950号に記載されるアナログおよび方法を含む。第IX因子に対する適したアナログおよびそれらを作製する方法は、全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第12/302,167号に記載されるアナログおよび方法を含む。第X因子に対する適したアナログおよびそれらを作製する方法は、全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,905,846号に記載されるアナログおよび方法を含む。そのようなバリアントアナログの凝固因子は、親凝血性タンパク質(例えば、第VIII因子)のアミノ酸配列と比較した場合にアミノ酸(例えば、リジンに対してロイシン等)の1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含み得るが、それでもなお凝血カスケードにおいてバリアントが機能する能力に関して記載の凝血タンパク質の生物活性と本質的に同等である生物活性(例えば、凝血機能)を示す。特定の実施形態では、バリアントは、第VIII因子分子のBドメインの欠失を含み得る。バリアントはまた、Fc融合またはPEG化を介した第VIII因子分子の改変も含み得るが、そのような変形形態は、選択された第VIII因子分子の循環半減期を増加させるように選択される。類似のアプローチを使用して、第VII因子、第IX因子、および第X因子の1つまたは複数の循環中半減期を増加させてもよい。
腸壁または周辺組織内への凝固因子または他の凝血タンパク質の送達に関する薬物動態測定値
1つまたは複数の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子等)または他の凝血タンパク質を腸壁(例えば、小腸)または周辺組織(例えば、腹膜組織)内に送達する本発明の実施形態はまた、1つまたは複数の薬物動態測定値に関しても利点を提供する。この点において注目すべき薬物動態測定値は、投与後の薬物のピーク血漿濃度であるCmax;Cmaxに達するまでの時間であるtmax;およびCmaxに達した後、薬物の血漿濃度がそのCmax値の半分に達するために必要な時間であるt1/2を含むがこれらに限定されない。これらの測定値は、当技術分野で公知の標準的な薬物動態測定技術を使用して測定することができる。例えば、1つのアプローチでは、血漿試料を、凝固因子または他の凝血タンパク質または他の治療剤の、嚥下可能デバイスの使用によるまたは非血管注射による投与開始から投与後までの設定された期間(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間等)に採取してもよい。次に、血漿中の薬物濃度を、特定の薬物に関して適合させることができるGC−質量分析、LC−質量分析、HPLC、または様々なELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)などの1つまたは複数の適切な分析方法を使用して測定することができる。濃度対時間曲線(本明細書において濃度プロファイルとも呼ばれる)を次に、血漿試料からの測定を使用して作製することができる。濃度曲線のピークは、Cmaxに対応し、これが起こる時間はtmaxに対応する。Cmaxに達した後に濃度がその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する時間は、曲線においてt1/2に対応し、この値はまた、薬物の消失半減期としても知られる。Cmaxの決定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行う時間、および嚥下可能デバイスの実施形態が1つまたは複数の組織貫通部材(薬物を含有する)を小腸またはGI管の他の位置(例えば、大腸)内に前進させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御信号(例えば、RF信号)に応答して組織貫通部材を腸壁内で展開する嚥下可能デバイスの遠隔制御実施形態、または組織貫通部材が展開されている場合に、RFもしくは体外で検出可能な他の信号を送る嚥下可能デバイスの実施形態を含む1つまたは複数の手段を使用して決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法を含む1つまたは複数の医用撮像モダリティなどの、組織貫通部材の小腸内での展開を検出する他の手段が企図される。これらの試験のいずれか1つにおいて、ヒトの薬物動態応答のモデルとするために、適切な動物モデル、例えばイヌ、ブタ、ラット等を使用することができる。
このように、様々な実施形態は、凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、または第X因子)、または他の凝血タンパク質もしくは他の治療剤を含む治療組成物100(本明細書において調製物とも呼ばれる)を提供する。組成物は、経口摂取後腸壁内に挿入するように適合され、挿入後、組成物は、凝固因子または他の凝血タンパク質を腸壁から血流中に放出し、血管外に注射した凝固因子または他の凝血タンパク質の用量より急速なCmaxを達成する、すなわち血管外に注射した凝固因子または他の凝血タンパク質の用量のtmaxよりも短い期間(例えば、より小さいtmax)で、挿入型の凝固因子または他の凝血タンパク質のCmaxを達成する。腸壁内に送達される組成物中の凝固因子または他の凝血タンパク質の用量、および血管外注射によって送達された用量は、これらの結果を達成するために同等であり得るが、必ずしもその必要はないことに注意すべきである。様々な実施形態では、組成物は、凝固因子または他の凝血タンパク質に関して(例えば、腸壁または周辺組織(例えば、腹膜組織)から血流中への凝固因子の放出によって)、血管外に注射した凝固因子の用量に関するtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%であるtmaxを達成するように構成される。凝固因子のそのような血管外注射用量は、例えば皮下注射または筋肉内注射であり得る。ある特定の実施形態では、凝固因子または他の凝血タンパク質の腸壁または周辺組織内への挿入によって送達することによって達成されるCmaxは、凝固因子または他の凝血タンパク質を腸壁内に挿入することなく、例えば凝固因子または他の凝血タンパク質の丸剤または他の通常の経口形態によって経口送達した場合に達成されるCmaxより、実質的により高く、例えば5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらに100倍高い。一部の実施形態では、凝固因子(または他の凝血タンパク質)組成物は、約1〜60日の範囲、特定の実施形態では6〜12時間、6〜24時間、12〜24時間、12〜36時間、1〜2日、1〜3日、1〜5日、1〜10日、1〜20日、2日、3日、5日、7日、10日、15日、20日、30日、40日、45日、50日、および60日の期間を含み得る凝固因子(または他の凝血タンパク質)の長期間放出を生じるように構成される。同様に、組成物は、選択可能なt1/2を有する凝固因子(または他の凝血タンパク質)の長期間放出を生じるように構成することもできる。例えば、選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、24、36、48および60時間であり得る。
特定の患者に関する凝固因子(または他の凝血タンパク質)の任意の適切な用量を、体重、年齢、状態、摂取している他の薬物等などの要因に応じて使用してもよい。例えば、投与される凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、または第X因子)または他の凝血タンパク質の用量は、約1〜10mgの範囲、特に1〜5、1〜4、2〜4、2〜5および2〜3mgの範囲、ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9および10mgの個々の用量であり得る。皮下投与される場合、凝固因子は、典型的には、血流中で約130時間のtmaxを有する。したがって、本明細書に記載される治療的凝固因子(例えば、第VIII因子)組成物中で投与される場合、凝固因子のtmaxは短縮され、例えば皮下注射した場合の凝固因子のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
様々な実施形態はまた、経口摂取後の腸壁および/または腹壁への挿入に適合させた凝固因子(または他の凝血タンパク質)組成物も提供し、挿入されると、組成物は、凝固因子(または他の凝血タンパク質)を腸壁または周辺組織(例えば、腹膜組織)から血流中に放出し、腸壁に挿入されていない凝固因子(または他の凝血タンパク質)の経口摂取用量のt1/2より長いt1/2を達成する。例えば、腸壁に挿入された用量のt1/2は、腸壁に挿入されていない用量より100、または50、または10、または5倍長くなり得る。
1つまたは複数の実施形態に従って、凝固因子(または他の凝血タンパク質)は、固体形態、例えば小腸の壁または腹壁などの腸壁において分解するように構成される固体形態組成物であり得る。同様に、固体形態の組成物は、例えば尖った先端などの組織貫通形体を有し得る。1つまたは複数の実施形態では、固体形態の凝固因子(例えば、第VIII因子)組成物は、尖った先端、例えば針またはダーツを有するシャフトの形態であり得、組成物を腸壁または腹壁内に貫通して挿入することができる。凝固因子(または他の凝血タンパク質)組成物は、少なくとも1つの生物分解性材料を含んでもよく、および/または生物分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースを含む少なくとも1つの薬学的賦形剤を含んでもよい。他の実施形態では、凝固因子(または他の凝血タンパク質)は、組織貫通部材の実施形態に封入されたまたはそうでなければ作製された半固体または液体形態であり得る。
本明細書に記載の凝固因子(または他の凝血タンパク質)組成物の様々な実施形態を、嚥下可能カプセルにおいて経口送達されるように適合させてもよい。ある特定の実施形態では、そのような嚥下可能カプセルを、凝固因子(または他の凝血タンパク質)組成物が、第1の構成においてカプセル内に含有され、第2の構成においてカプセルから前進して腸壁および/または周辺組織(例えば、腹膜組織)へと前進する、第1の構成および第2の構成を有する機構に作動可能に連結されるように適合させてもよい。そのような作動可能に連結された機構は、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫通部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫通部材の少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、または第X因子)または他の凝血タンパク質は、組織貫通部材の内腔内に送達されるように構成されてもよく、および/または凝固因子(または他の凝血タンパク質)組成物は、腸壁内に前進可能な組織貫通部材として成形されてもよい。組織貫通部材は、腸壁内に完全に含有されるサイズであってもよく、および/または腸壁を貫通する組織貫通形体を含んでもよく、および/または腸壁内で組織貫通部材を保持するための保持形体を含んでもよい。保持形体は、例えばバーブを含み得る。一部の実施形態では、組織貫通部材は、力(例えば、機械力)を組織貫通部材の表面に印加することによって、腸壁または周辺組織(例えば、腹膜組織)内に前進するように構成される。望ましくは、組織貫通部材は、機械力または他の力(例えば、電磁力)の印加によって腸壁内および/または貫通部材の表面まで完全に前進するために十分な剛性および/または柱状部の強度を有する。様々な実施形態では、組織貫通部材の柱状部の強度/剛性は、約1〜20lbs、7〜20lbs、または8〜12lbsの範囲であり得、個々の実施形態は7、8、9、10および11lbsである。柱状部の強度は、組織貫通部材の材料の選択および直径の1つまたは複数の選択によって達成することができる。多くの実施形態では、組織貫通部材は、拡張時に力を印加する拡張可能なバルーンまたは他の拡張可能な部材に作動可能に連結されるように構成される。一部の実施形態では、組織貫通部材は、力を印加する構造(例えば、ばね、シャフト等、またはさらには拡張可能なデバイス)に直接連結されるように構成される。これらのおよび関連する実施形態では、組織貫通部材は、力の方向が変化すると、力を印加する構造から脱着するように構成される。
本発明の様々な態様はまた、上記の実施形態に加えて薬剤100の送達のための嚥下可能送達デバイスの他の実施形態も提供する。1つまたは複数のそのような実施形態に従って、嚥下可能送達デバイスは、薬剤100を含む1つまたは複数の組織貫通部材を小腸などの腸壁内に送達するために使用するための1つまたは複数の拡張可能なバルーンまたは他の拡張可能デバイスを含み得る。次に図12〜20を参照すると、胃腸(GI)管の送達部位DSに薬剤100を送達するためのデバイス110の別の実施形態は、嚥下されて消化管の中を通過するサイズのカプセル120、展開部材130、薬剤100を含有する1つまたは複数の組織貫通部材140、展開可能アライナー160、および送達機構170を含み得る。一部の実施形態では、薬剤100(本明細書において調製物100とも呼ばれる)は、それ自身、組織貫通部材140を含み得る。展開可能アライナー160は、カプセル内に位置し、カプセルを小腸などの腸と整列させるように構成される。典型的には、これは、カプセルの長手軸を腸の長手軸と整列させることを伴う。しかし他の整列も同様に企図される。送達機構170は、薬剤100を腸壁内に送達するように構成され、典型的には、拡張可能部材などの送達部材172を含む。展開部材130は、アライナー160または送達機構170の少なくとも1つを展開させるように構成される。本明細書に詳しく記載されるように、カプセル壁の全てまたは一部は、GI管において液体との接触によって分解可能であり、それらの液体は、デバイス110による薬剤100の送達を誘発することができる。本明細書で使用される場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸、および肛門を指すが、「腸管」は、小腸および大腸を指す。本発明の様々な実施形態は、腸管ならびにGI管全体の両方に薬剤100を送達するように構成および配置することができる。
組織貫通部材140を含むデバイス110は、薬剤100の液体、半液体、または固体形態、または3つ全ての組合せを送達するように構成することができる。どのような形態であれ、薬剤100は、望ましくは薬剤が、デバイス110から出て腸壁(小腸または大腸)またはGI管の他の内腔壁内に前進した後、腸壁または周辺組織(例えば、腹膜または他の腹腔)内で分解して、薬物または他の治療剤101を壁または周辺組織内に、次に血流内に放出することができる材料の一貫性を有する。薬剤100の材料の一貫性は、調製物の硬度、多孔性、および溶解度(小腸の壁または腹腔において見出される流体などの体液、例えば漿液中の)の1つまたは複数を含み得る。薬剤100の材料の一貫性は、以下:i)調製物を作製するために使用される圧縮力;ii)当技術分野で公知の1つまたは複数の薬学的崩壊剤の使用;iii)他の薬学的賦形剤の使用;iv)調製物の粒径および分布(例えば、微粉化粒子);ならびにv)当技術分野で公知の微粉化および他の粒子形成方法の使用、の1つまたは複数の選択および使用によって達成することができる。
カプセル120は、嚥下され、腸管の中を通過するサイズである。サイズはまた、送達される薬物の量ならびに患者の体重、および成人への適応であるかまたは小児への適応であるかに依存して調整することができる。典型的には、カプセルはビタミンと類似の湾曲した末端を有する管状の形状を有する。これらのおよび関連する実施形態では、カプセルの長さ120Lは、0.5〜2インチの範囲であり、直径120Dは0.1〜0.5インチの範囲であり得るが、他の寸法も企図される。カプセル120は、カプセル壁121wを含み、内部空間または体積124vを定義する外部表面125および内部表面124を有する。一部の実施形態では、カプセル壁121wは、組織貫通部材140を外向きに前進させるサイズの1つまたは複数の開口部126を含み得る。デバイス110の他の構成要素(例えば、拡張可能な部材等)に加えて、内部体積は、1つまたは複数の区画またはリザーバー127を含み得る。
カプセルは、薬学技術分野において公知の様々な生物分解性のゼラチン材料で作製することができるが、同様にキャップを胃での分解(酸等による)から保護し、その後小腸または腸管の他の領域で見出されるより高いpHで分解するように構成される様々な腸溶コーティング120cを含み得る。様々な実施形態では、カプセル120は、その1つまたは複数が生物分解性であり得る複数の部分から形成することができる。多くの実施形態では、カプセル120は、本体部分120p”(本明細書において「本体120p”」)およびキャップ部分120p’(本明細書において「キャップ120p」)などの2つの部分120pから形成することができ、キャップは、例えば本体の上または下にスライドさせることによって(他の配置も同様に企図される)本体に適合する。1つの部分、例えばキャップ120p’は、第1のpH(例えば、pH5.5)より上で分解するように構成される第1のコーティング120c’を含むことができ、および本体120p”などの第2の部分は、第2のより高いpH(例えば、6.5)より上で分解するように構成される第2のコーティング120c”を含むことができる。カプセル120の内部124および外部125表面はいずれも、コーティング120c’および120c”によってコーティングされ、それによってカプセルのいずれかの部分が、それが選択されたpHを有する流体に接触するまで実質的に保存される。本体120p”の場合では、これによって、バルーン172を本体部分の内部に維持して、バルーン130が拡張するまで展開しないように、本体120p”の構造完全性を維持することができる。コーティング120c’および120c”は、Evonik Industriesによって商標名EUDRAGITとして製造されるコーティングなどの、様々なメタクリレートおよびアクリル酸エチルベースのコーティングを含み得る。カプセル120のこれらのおよび他の二重コーティング構成により、カプセル120の1つの部分における機構が、カプセルの他の部分における機構より前に作動することができる。これは、腸液が最初に、より低いpHでコーティングが分解している部分に入り、このようにそのような流体に応答するトリガー(例えば、分解可能なバルブ)を作動させるという事実による。使用する場合、カプセル120のそのような二重コーティングの実施形態は、小腸の特定の位置(またはGI管の他の位置)への標的化薬物送達ならびに送達プロセスの信頼性の増加を提供する。これは、アライナー160などの特定の構成要素の展開を、小腸の上部(例えば、十二指腸)の領域で始まるように構成することができ、それによって薬物が最適に送達(例えば、腸壁への)されるように腸内でカプセルを整列させることができ、ならびにカプセルがなおも小腸または他の選択された位置に存在する間に、他の構成要素の展開/作動が、腸壁内への薬物送達を達成するために十分な時間を提供するという事実による。
上記で考察したように、カプセル120の1つまたは複数の部分は、様々な生物分解性ポリマーを含む当技術分野で公知の様々な生物適合性ポリマーから作製することができ、好ましい実施形態では、それらは、セルロース、ゼラチン材料、およびPGLA(ポリ乳酸−co−グリコール酸)を含み得る。他の適した生物分解性材料は、本明細書に記載の様々な腸溶性材料ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、その混和物およびコポリマーを含む。
様々な実施形態では、カプセルの壁120wは、GI管における液体、例えば小腸における液体との接触によって分解可能であるように構成される。好ましい実施形態では、カプセル壁は、胃の中を通過する間は無傷のままであるが、その後小腸では分解するように構成される。1つまたは複数の実施形態では、これは、カプセル壁120wにおける外部コーティングまたは層120cの使用によって達成することができ、これらは小腸で見出されるより高いpHに限って分解し、カプセルが小腸に到達する(本明細書に記載されるように、薬物送達プロセスがコーティングの分解によって開始される時点)前に下層のカプセル壁が胃内部で分解しないように保護する役目を果たす。使用する場合、そのようなコーティングは、例えば小腸の壁を含む小腸などの腸管の選択された部分への治療剤の標的化送達を可能にする。
カプセル20と同様に、様々な実施形態では、カプセル120は、蛍光透視法、超音波、MRI等などの当技術分野で公知の1つまたは複数の医用撮像モダリティを使用して、様々な放射線不透過性、エコー源性、またはデバイスの位置特定のための他の材料を含み得る。そのような材料は、1つまたは複数の医用撮像モダリティを使用して腸管におけるカプセルの視覚的指標を容易に提供するようにカプセル上の別個のバンドまたは他の形状として配置することができる。それらはまた、カプセルが展開されているか否かを医師が区別することができる構成であってもよい。例えば、一実施形態に従ってバルーンまたは他の拡張可能な部材が拡張すると、マーカーが引き裂かれ、撮像下でもはや区別不可能となる、および/または撮像した場合に異なる形状を有するように、マーカーをカプセルの中心領域周囲に留置することができる。
本明細書においてさらに考察されるように、多くの実施形態では、展開部材130、送達部材172、または展開可能アライナー160の1つまたは複数は、カプセル120内に適合する形状およびサイズである拡張可能なバルーンに対応し得る。したがって、考察を容易にするため、展開部材130、送達部材172、および展開可能アライナー160を、ここでバルーン130、160および172と呼ぶが、様々な拡張可能デバイスを含む他のデバイスも同様に、これらの要素に関して企図され、例えば様々な形状記憶デバイス(例えば、形状記憶生物分解性ポリマーのスピールから作製された拡張可能なバスケット)、拡張可能な圧電デバイス、および/またはカプセル120の内部体積124vに対応する拡張した形状およびサイズを有する化学的に拡張可能なデバイスを含み得ることを認識すべきである。
バルーン130、160および172の1つまたは複数は、医用デバイスの技術分野で公知の様々なポリマーを含み得る。好ましい実施形態では、そのようなポリマーは、低密度PE(LDPE)、線形低密度PE(LLDPE)、中密度PE(MDPE)、および高密度PE(HDPE)、ならびに当技術分野で公知の他の形態のポリエチレンに対応し得る1つまたは複数のタイプのポリエチレン(PE)を含み得る。ポリエチレンを使用する1つまたは複数の実施形態では、材料を、当技術分野で公知のポリマー照射法を使用して架橋させてもよい。特定の実施形態では、放射線に基づく架橋を使用して、バルーン材料のコンプライアンスを減少させることによってバルーンの膨張時の直径および形状を制御してもよい。放射線の量は、特定の量の架橋が達成され、次に所定のバルーンに関して特定の量のコンプライアンスを生じるように選択してもよく、例えば放射線照射の増加を使用して、より硬くよりコンプライアンスが低いバルーン材料を産生することができる。他の適したポリマーは、PET(ポリエチレンテラファレート)、シリコーン、およびポリウレタンを含み得る。様々な実施形態では、バルーン130、160および172はまた、医師がバルーンの位置および物理的状態(例えば、膨張していない、膨張している、または穴が開いている)を確認することができるように、硫酸バリウムなどの当技術分野で公知の様々な放射線不透過材料を含み得る。バルーン130、160、および172は、カプセル120の内部体積124vにほぼ対応する形状およびサイズを有するように、バルーンカテーテルの技術分野で公知の様々なバルーンブロー法(例えば、ブロー成形、フリーブロー法等)を使用して作製することができる。様々な実施形態では、バルーン130、160、および172の1つまたは複数、ならびに様々な接続形体(例えば、接続管)は、シングルモールドで形成される単一構築物を有し得る。そのような単一構築物を使用する実施形態は、デバイス110の1つまたは複数の構成要素の間で作製しなければならない接合部がより少ないことから、製造性および信頼性の改善という利点を提供する。
バルーン130、160、および172に関して適した形状は、テーパーまたは湾曲した末端部分(そのような形状の例はホットドッグを含む)を有する様々な円柱形状を含む。一部の実施形態では、バルーン130、160および172の1つまたは複数の膨張時のサイズ(例えば、直径)は、膨張力(例えば、フープ応力により)によってカプセルを分解させるために、カプセル120より大きくなり得る。他の関連する実施形態では、バルーン130、160、および172の1つまたは複数の膨張時のサイズは、膨張時に、i)カプセル120が小腸の壁に十分に接触して、カプセル周囲の小腸の収縮を引き起こす蠕動収縮を誘発する、および/またはii)小腸のひだを取り除くようなサイズであり得る。これらの結果はいずれも、組織貫通部材40を、カプセルおよび/または送達バルーン172の選択された領域の上に送達するために、カプセル/バルーン表面と腸壁との間の接触の改善を可能にする。望ましくは、バルーン130、160、および172の壁は薄く、0.005〜0.0001インチの範囲、より好ましくは0.005〜0.0001の範囲、特定の実施形態では0.004、0.003、0.002、0.001、および0.0005の壁の厚さを有し得る。加えて、様々な実施形態では、バルーン130、160、または172の1つまたは複数は、図13cの実施形態に示すように、膨張チャンバー160ICおよび伸長したフィンガー160EFを有するネステッドバルーン構成を有し得る。膨張チャンバー160ICを接続する接続チューブ163は、ガス168のみの通過を可能にするために狭くなり得るが、バルーン130の2つの半分を連結する接続チューブ36は、水の通過を可能にするためにより大きくなり得る。
上記で示したように、アライナー160は、典型的に拡張可能バルーンを含み、考察を容易にするために、ここでアライナーバルーン160またはバルーン160と呼ぶ。バルーン160は、上記の材料および方法を使用して作製することができる。これは非拡張および拡張状態を有する(同様に展開状態とも呼ぶ)。その拡張または展開状態では、バルーン160は、カプセル120上の小腸SIの蠕動収縮によって発揮される力が、カプセル120の長手軸120LAを小腸SIの長手軸LAIと平行に整列させる役目を果たすように、カプセル120の長さを伸長させる。これは次に、組織貫通部材140のシャフトを腸壁IWの表面と垂直に整列させる役目を果たし、組織貫通部材140の腸壁IW内への貫通を増強および最適化する。カプセル120を小腸において整列させる役目を果たすことに加えて、アライナー160はまた、送達バルーン172の膨張前にカプセル120から送達機構170を押し出し、送達バルーンおよび/または機構がカプセルによって妨害されないように構成される。使用する場合、アライナー160のこの押し出し機能は、薬物送達が起こり得る前にカプセルの特定の部分(例えば、送達機構の上にあるもの)が分解するのを待つ必要がないことから、治療剤の送達の信頼性を改善する。
バルーン160は、バルーン160および130を連結させるための管163ならびにバルーン160およびバルーン172を連結させるための管164を含み得る、ポリマー管または他の流体学的連結162によってバルーン130および172を含むデバイス110の1つまたは複数の構成要素に流体力学的に連結され得る。管163は、バルーン130からの圧力(例えば、圧がバルーン130内の化学反応物質の混合物を生成する)によってバルーン160を拡張/膨張させるように、および/またはそうでなければバルーン130と160の間に液体を通過させて、バルーン130および160の1つまたは両方を膨張させるためのガス生成化学反応を開始するように構成される。管164は、バルーン160によるバルーン172の膨張を可能にするように、バルーン160を172に接続する。多くの実施形態では、管164は、バルーン160によるバルーン172の膨張を制御するように選択された圧で開くように構成される制御バルブ155を含むかまたはそれに連結される。このように管164は、バルブを接続する近位部分164pおよびバルブから伸びる遠位部分164dを含み得る。典型的には、近位部分および遠位部分164pおよび164dは、以下に記載されるようにバルブのハウジング158に接続される。
バルブ155は、バルブのハウジング158のチャンバー158c内に留置される材料157の三角形または他の形状の区分156を含み得る(あるいは、これはチューブ164内に直接留置されてもよい)。区分157は、管164および/またはバルブチャンバー158cの中にガスを通過させるように、選択された圧で機械的に分解するように(例えば、引き裂く、剪断する、薄い層に裂く等)構成される。バルブ155の適した材料157は、蜜ロウまたは他の形態のロウ、および選択可能な封止力/破壊圧を有する医用技術分野で公知の様々な接着剤を含み得る。バルブフィッティング158は、典型的には、材料157の区分156が、チャンバー158cの壁を共に封止するか、またはそうでなければチャンバーを通しての流体の通過を妨害するように留置される(図13bの実施形態に示すように)薄い円柱状の区画(生物分解性の材料で作製される)を含む。バルブ155の放出圧は、区分156のサイズおよび形状、ならびに材料157の選択の1つまたは複数の選択(例えば、接着強度、剪断強度等などの特性に関して)を通して制御することができる。使用する場合、制御バルブ155は、バルーン172が膨張する前にバルーン160が十分にまたはそうでなければ実質的に膨張するように、バルーン160および172の順序通りの膨張を可能にする。次に、これによって、組織貫通部材140の展開がカプセル120によって妨害されないように、バルーン160は、バルーン172が膨張する前にカプセル120から(典型的には、本体部分120p’から)送達機構170の残りと共にバルーン172を押すことができる。使用する場合、そのようなアプローチは、腸壁IW内への部材の前進がカプセル壁120wによって妨害されないことから、所望の貫通深度を達成することおよびカプセル120に含有されるより多くの数の貫通部材140を送達することの両方に関する、組織貫通部材140の腸壁IW内への貫通の信頼性を改善する。
上記のように、アライナーバルーン160の膨張時の長さ160lは、カプセル120が、腸の蠕動収縮により小腸の横軸と整列するようになるために十分である。アライナー160の適した膨張時の長さ160lは、アライナー160の膨張前のカプセル120の長さ120lの約1/2から2倍の間の範囲を含み得る。アライナーバルーン160の適した形状は、ホットドッグ様形状などの様々な伸長した形状を含み得る。特定の実施形態では、バルーン160は、第1の区分160’および第2の区分160”を含むことができ、第1の区分160’の拡張は、カプセル120から(典型的には、本体部分120p’から)送達機構170を前進させるように構成され、および第2の区分160”を使用して、送達バルーン172を膨張させる。これらのおよび関連する実施形態では、第1および第2の区分160’および160”は、第1の区分160’が最初に膨張して、カプセルから(典型的には本体部分120p’から)機構170を押し、第2の区分160”が膨張して送達部材172を膨張させる望遠鏡型膨張を有するように構成することができる。これは、第1の区分160’が最初に膨張し(そのより小さい体積のために)、第2の区分160”は第1の区分160’が実質的に膨張するまで膨張しないように、第1の区分160’が第2の区分160”より小さい直径および体積を有するように構成することによって達成することができる。一実施形態では、これは、最小の圧が区分160’に達するまで区分160”内へのガスの通過を可能にしない、区分160’および160”を接続する制御バルブ155(上記)の使用によって容易にすることができる。一部の実施形態では、アライナーバルーンは、展開しているバルーンから水または他の液体との混合物と反応する化学反応物質を含有し得る。
多くの実施形態では、展開部材130は、展開バルーン130としても知られる拡張可能なバルーンを含む。様々な実施形態では、展開バルーン130は、ガスの使用、例えば化学物質からのガス169の生成によってアライナーバルーン160の展開/拡張を容易にするように構成される。ガスは、固体の化学反応物質165、例えば酸166(例えば、クエン酸)および塩基166(例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等)の反応によって生成されてもよく、次にこれを水または他の水性液体168と混合する。反応物質の量は、バルーン130、160、および72の1つまたは複数において選択された圧を産生するために化学量論的方法を使用して選択することができる。反応物質165および液体は、バルーン130および160に個別に保存され、その後トリガー事象、例えば小腸におけるpH条件に応答して混合される。反応物質165および液体168は、いずれかのバルーンに保存することができるが、好ましい実施形態では、液体168はバルーン130に保存され、反応物質165はバルーン160に保存される。液体168を通過させて反応を開始させ、および/またはガス169を得るために、バルーン130を、以下に記載される分解可能なバルブ150などの分離手段150を同様に典型的に含む接続管163によってアライナーバルーン160に連結させてもよい。バルーン130が液体を含有する実施形態では、管163は、バルーン160を膨張させるため、ならびにバルーン172を膨張させるために所望の量のガスを産生するようにバルーン130からバルーン160まで十分な水を通過させるために十分な直径を有する。同様に、バルーン130が液体を含有する場合、バルーン130および管163の1つまたは両方は、以下、i)露出したバルーン130上での小腸の蠕動収縮によってバルーン130に印加される圧縮力;およびii)毛細管作用による管163を通しての液体のウィッキングの1つまたは複数によってバルーン160に液体を通過させるように構成される。
管163は、典型的には、バルブが分解するまでバルーン130の内容物(例えば、水158)をバルーン160の内容物(例えば、反応物質165)から分離する分解可能な分離バルブまたは他の分離手段150を含む。バルブ150は、消化管における様々な液体と共に水に暴露されるとバルブが開くように、液体の水によって分解可能であるマルトースなどの材料で作製することができる。これはまた、メタクリレートベースのコーティングなどの、腸液において見出されるより高いpHに応答して分解可能である材料で作製され得る。バルブは、望ましくはキャップ120p’が分解する際に、バルブ150がカプセルの中に入る腸液に暴露されるように、バルーン130より上に突出する、および/またはそうでなければ十分に露出する管163上の位置に位置する。様々な実施形態では、バルブ150は、キャップ120p’が分解すると、腸液に明白に暴露されるように、バルーン130の表面上に存在するように位置するか、またはさらにはその上に突出することができる(図16aおよび16bの実施形態に示すように)。本発明の様々な実施形態は、分離バルブ150に関して複数の構造、例えばビーム様構造(バルブが管163および/または接続区分136を下に押すビームを含む)、またはカラータイプの構造(バルブは、管163および/または接続区分136の上に存在するカラーを含む)を提供する。なお他のバルブ構造も同様に企図される。
バルーン130(または他の拡張可能な展開デバイス130)は、展開状態および非展開状態を有する。展開状態では、展開バルーン130は、カプセルの末端の形状に対応するドーム形状130dを有し得る。展開状態のバルーン130に関する他の形状130s、例えば球状、管形状等も同様に企図される。反応物質165は、典型的には少なくとも2つの反応物質166および167、例えばクエン酸などの酸および重炭酸ナトリウムなどの塩基を含む。他の酸、例えば酢酸および塩基、例えば水酸化ナトリウムを含む他の反応物質165も同様に企図される。バルブまたは他の分離手段150が開くと、反応物質が、液体中で混合し、アライナーバルーン160または他の拡張可能な部材を拡張させる二酸化炭素などのガスを産生する。
図13bに示す代替の実施形態では、展開バルーン130は、実際には管36または他の接続手段136(例えば、接続区分)によって接続される第1および第2のバルーン130’および130”を含むことができる。接続管136は、典型的には、上記の液体および/または小腸で見出される塩基性pH(例えば、5.5または6.5)などの特定のpHを有する液体によって分解可能である分離バルブ150を含む。2つのバルーン130’および130”は各々、半ドーム形状130hsを有し、それによってそれらは拡張状態にある場合にカプセルの末端部分に適合することができる。1つのバルーンは、化学反応物質165(例えば、重炭酸ナトリウム、クエン酸等)、他の液体の水168を含有することができ、それによってバルブが分解すると、2つの構成要素が混合してガスを形成し、1つまたは両方のバルーン130’および130”を膨張させ、次にアライナーバルーン160を膨張させる。治療剤を腹腔内に送達するように構成されるカプセル10の実施形態では、発生する圧を増加させるために、追加の量の反応物質を、バルーン130’または130”に添加することができる。
なお他の代替の実施形態では、バルーン130は、複数の区画130cを有するように形成されたまたはそうでなければ構築された多区画バルーン130mcを含み得る。典型的には、区画130cは、図14aの実施形態に示すように、分離バルブ150または他の分離手段150によって分離される少なくとも第1および第2の区画134および135を含む。多くの実施形態では、区画134および135は、分離バルブ150が典型的に留置される場所であるそれらの間に少なくとも小さい接続区分136を有する。図14aの実施形態に示すように、液体168、典型的には水を第1の区画134内に配置することができ、1つまたは複数の反応物質165(典型的には固体であるが、液体も同様に使用してもよい)を第2の区画135に配置することができる。バルブ150が開くと(例えば、小腸内の流体によって引き起こされる分解により)、液体168が区画135(またはその逆または両方)に入り、反応物質165が液体と混合し、二酸化炭素などのガス169を産生してバルーン130を拡張させ、次にこれを使用してバルーン160および172の1つまたは複数を拡張させることができる。
反応物質165は、典型的には、少なくとも第1および第2の反応物質166および167、例えばクエン酸などの酸、ならびに重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムなどの塩基を含む。本明細書で考察されるように、様々な実施形態では、それらは、バルーン130(区画134および135、または半分130’および130”を含む)、およびバルーン160の1つまたは複数に留置され得る。不活性なガス副産物を産生する酸および塩基の他の組合せを含む追加の反応物質も同様に企図される。クエン酸および重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムを使用する実施形態では、2つの反応物質間の比(例えば、クエン酸の重炭酸カリウムに対する比)は、約1:1〜約1:4の範囲であり得、特定の比は約1:3である。望ましくは、固体反応物質165は、水をほとんどまたは全く吸収しない。したがって、反応物質、例えば重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムの1つまたは複数を、バルーン130内に留置する前に予め乾燥させることができる(例えば、真空乾燥によって)。他の酸、例えば酢酸および塩基を含む他の反応物質165も同様に企図される。反応物質の組合せを含む特定の反応物質165の量は、特定の化学反応に関する公知の化学量論式ならびに膨張したバルーンの体積および理想気体の状態方程式(例えば、PV=nRT)を使用して特定の圧力を産生するように選択することができる。特定の実施形態では、反応物質の量は、i)腸壁内への特定の貫通深さを達成するために、バルーン130、160および172の1つまたは複数に関する特定の直径を生じるために;ならびにiii)腸壁IWに対して選択された量の力を発揮するために、バルーン130、160および172の1つまたは複数の選択された圧を生じるように選択することができる。特定の実施形態では、反応物質の量および比(例えば、クエン酸および重炭酸カリウム)は、バルーン130、160、および172の1つまたは複数において10〜15psiの範囲の圧力を達成するように選択することができるが、より小さいおよびより大きい圧力も企図される。この場合も、これらの圧力を達成するための反応物質の量および比は、公知の化学量論式を使用して決定することができる。
化学反応物質165を使用してガス169を生成する本発明の様々な実施形態では、化学反応物質は、単独でまたは展開バルーン130と組み合わせて、アライナーバルーン160および送達バルーン172を含む送達機構170の1つまたは両方を展開するための展開エンジン180を含み得る。展開エンジン180はまた、2つの展開バルーン130および130”(図13bに示す二重ドーム構成)、または図14aに示す多区画バルーン130mcを使用する実施形態を含み得る。展開エンジン180の他の形態、例えば拡張可能な圧電材料(電圧の印加によって拡張する)、ばね、および他の形状記憶材料、ならびに様々な熱拡張可能材料の使用もまた、本発明の様々な実施形態によって企図される。
拡張可能バルーン130、160および172の1つまたは複数は、典型的には膨張後バルーンを収縮させる役目を果たす収縮バルブ159を含む。収縮バルブ159は、小腸における流体および/またはバルーンの区画の1つにおける液体に暴露されると分解して、特定のバルーン内のガスを逃がすための開口部またはチャネルを作製するように構成される生物分解性の材料を含み得る。望ましくは、収縮バルブ159は、収縮バルブが分解する前にバルーン130、160および172を十分な時間膨張させるためにバルブ150より遅い速度で分解するように構成される。区画化バルーン130の様々な実施形態では、収縮バルブ159は、図14aの実施形態に示すようにバルーンの末端部分131に位置する分解可能区分139に対応し得る。このおよび関連する実施形態では、分解可能区分139が液体との暴露により分解すると、バルーン壁132が引き裂かれるか、またはそうでなければ分解して確実に急速な収縮を提供する。複数の分解可能区画139を、バルーン壁132内の様々な位置に留置することができる。
バルーン172の様々な実施形態では、収縮バルブ159は、図13bの実施形態に示すように、送達バルーン172の末端172e(アライナーバルーンに連結されている末端の反対)に取り付けられる管バルブ173に対応し得る。管バルブ173は、小腸における流体などの流体に暴露されると分解するマルトースまたは他の糖などの材料173mによって選択された位置173lで閉塞される内腔を有する中空管173tを含む。管173tにおける閉塞材料173mの位置173lは、閉塞材料が溶解してバルブ173を開く前に、送達バルーン172が膨張して組織貫通部材40を腸壁IW内に送達するために十分な時間を提供するように選択される。典型的には、これは、管173tの末端173eに近いが、それが材料173mに達する前に管内腔内に液体をウィッキングさせる時間を可能にするためにそれほど近くはない。1つまたは複数の実施形態に従って、収縮バルブ173が開くと、これは送達バルーン172のみならず、アライナーバルーン160および展開バルーン130を収縮させるが、その理由は、多くの実施形態では、3つ全てが流体連通しているためである(アライナーバルーンは、送達バルーン172に流体連通し、展開バルーン130はアライナーバルーン160に流体連通している)。収縮バルブ173の開口は、収縮バルブが小腸の液体に良好に暴露されるように、アライナーバルーン160の膨張によってカプセル120から押し出される送達バルーン172の末端172eに収縮バルブを留置することによって容易にすることができる。類似の管収縮バルブ173もまた、アライナーバルーン162および展開バルーン130の1つまたは両方に位置することができる。これらの後者の2つの例では、管バルブにおける閉塞材料は、送達バルーン172の膨張および組織貫通部材140の腸壁内への前進を可能にするために十分な期間かけて分解するように構成することができる。
加えて、収縮を確実にするためのさらなるバックアップとして、バルーン(例えば、バルーン130、160、172)が完全に膨張すると、それが穿刺要素182に接触して穿刺されるように、1つまたは複数の穿刺要素182をカプセルの内部表面124に取り付けることができる。穿刺要素182は、表面124から尖った先端を有する短い突起を含み得る。バルーン収縮手段の別の代替のまたは追加の実施形態では、1つまたは複数の組織貫通部材140をバルーン172の壁172wに直接連結することができ、それらが脱着するとバルーンから引き離されて、プロセスにおいてバルーン壁を引き裂くように構成することができる。
組織貫通部材140の考察を以下に示す。1つまたは複数の実施形態では、組織貫通部材140は、様々な薬物および他の治療剤101、1つまたは複数の薬学的賦形剤(例えば、崩壊剤、安定化剤等)、および1つまたは複数の生物分解性ポリマーから作製することができる。後者の材料は、貫通部材に所望の構造および材料特性を付与するように選択される(例えば、腸壁に挿入するための柱状部強度、または多孔性、および薬物の放出を制御するための親水性)。次に図18a〜18fを参照すると、多くの実施形態では、貫通部材140は、図18aの実施形態に示すように、腸壁の組織を容易に貫通することができるように、シャフト144および針の先端145または他の尖った先端145を有するように形成することができる。好ましい実施形態では、先端145は、図18cの実施形態に示すように、トロッカー形状を有する。先端145は、先端の硬度および組織貫通特性を増加させるスクロースまたは他の糖などの様々な分解可能材料(先端の本体内でまたはコーティングとして)を含み得る。腸壁または周辺組織(例えば、腹壁または腹腔)内に留置されると、貫通部材140は、壁組織内の間質液および/または腹腔内の漿液によって分解され、薬物または他の治療剤101がそれらの流体中で溶解し、血流中に吸収される。組織貫通部材が腹腔に位置する実施形態では、組織貫通部材は、腹腔内の漿液を含む腹腔内の流体によって分解され、腹腔内で凝固因子または他の治療剤が臓側腹壁および壁側腹壁を通して血流中へと輸送されるように構成される。組織貫通部材140のサイズ、形状、および化学組成の1つまたは複数は、数秒間、数分間、またはさらに数時間の間に薬物101の溶解および吸収を可能にするように選択することができる。溶解速度は、薬学的技術分野で公知の様々な崩壊剤の使用を含む様々な手段を通して制御することができる。崩壊剤の例には、デンプングリコール酸ナトリウムなどの様々なデンプン、およびカルボキシメチルセルロースなどの様々な架橋ポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。崩壊剤の選択は、小腸および/または腹膜の壁または腹腔内での流体および環境に合わせて具体的に調整することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材140は、腹腔PC中の漿液または他の流体における組織貫通部材140の分解および/または溶解を加速するまたはそうでなければ増強し、それによって凝固因子または他の治療剤101を血流中への放出を増強するように構成される分解または溶解形体147(本明細書では、形体147)を含み得る。特定の実施形態では、形体147は、図18gに示すように、組織貫通部材140の中の部分的にまたは全体を通しての開口部または穴148に対応し得る。穴または開口部149は、部材140の内部140iへの組織流体(例えば、漿液)の進入を可能にする。形体147はまた、図18hおよび18iに示すように、部材140の表面140上の1つまたは複数のチャネルまたは溝149にも対応し得る。チャネルまたは溝149は、組織流体との接触に利用することができる部材140の表面積を増強し、このように組織貫通部材の溶解および/または分解速度を増強する。追加のまたは関連する実施形態では、開口部148または溝149を含む形体147は、力学的に弱いポイント(例えば、溝149の場合には継ぎ目)としての役目を果たし、それが腹腔PC内に位置すると体によって組織貫通部材140に印加された機械力によって組織貫通部材を容易に小片へと破裂または破断するように位置し、構成されてもよい。そのような力は、内部臓器(例えば腸)の運動による力、ならびに腹筋の収縮または呼吸による腹壁の運動による力の1つまたは複数を含み得る。使用する場合、そのような分解形体147は、貫通部材が、組織流体との接触のためになおさらに多くの表面積を有する小片へと容易に分解するのを可能にすることによって、組織流体との接触のための表面積の増強によっても、組織貫通部材の溶解および/または分解速度を増強する。望ましくは、しかし必ずしもその必要はないが、1つまたは複数の形体147は、それらが部材140を患者の体から印加された力によって分解させる間に、それらがなおも尖った先端145と反対の組織貫通部材の末端140eに印加された機械力によって、組織貫通部材をカプセル20から前進させるために十分な柱状部強度を有するように位置し、およびそうでなければ構成される。そのような力は、送達部材50または作動機構60の構成要素によって印加される。様々な実施形態では、1つまたは複数の分解/溶解形体147を有する組織貫通部材140のそのような柱状部強度は、0.1〜1lbsの範囲であり得る。
組織貫通部材140はまた、典型的には、前進後に腸壁IWまたは腹膜の組織内で貫通部材を保持するためのバーブまたはフックなどの1つまたは複数の組織保持形体143も含む。保持形体143は、図18aおよび18bの実施形態に示すように、対称性にまたはそうでなければ部材シャフト144の周囲におよびそれに沿って分布する2つまたはそれより多くのバーブなどの、組織保持を増強するように様々なパターン143pで配置することができる。加えて、多くの実施形態では、貫通部材はまた、送達機構170上で連結構成要素に取り付けるための凹部または他の係合形体146も含む。
組織貫通部材140は、組織貫通部材140の腸壁への前進後、貫通部材がバルーンから脱着するように、望ましくはプラットフォーム175(または送達機構170の他の構成要素)に脱着可能に連結されるように構成される。脱着性は、i)プラットフォーム175における開口部174と部材シャフト144の間がぴったり合うことまたは適合;ii)貫通部材140上の組織保持形体143の構成および留置;ならびにiii)腸壁へのシャフト144の貫通の深さ、を含む多様な手段によって実行することができる。これらの要因の1つまたは複数を使用して、貫通部材140を、バルーンの収縮(保持形体143は、バルーンが収縮するとまたはそうでなければ腸壁から引き戻されると、組織中で貫通部材140を保持する)および/または小腸の蠕動収縮によってカプセル120に発揮された力の結果として脱着するように構成される。
特定の実施形態では、組織貫通部材140の腸壁IWにおける脱着性および保持は、組織貫通部材のシャフト144が、図18cの実施形態に示すように、逆テーパー144tを有するように構成することによって増強することができる。シャフト144上でのテーパー144tは、腸壁からの蠕動収縮力がシャフトに印加されることによってシャフトが内向きとなる(例えば、内向きに絞り出される)ように構成される。これは、シャフトテーパー144tが、側方から印加された蠕動力PFを、シャフトを腸壁内で内向きにするように作用する直交力OFに変換することによる。使用する場合、そのような逆テーパーシャフトの構成は、バルーン172の収縮時にプラットフォーム175(または送達機構170の他の構成要素)から脱着するように、組織貫通部材140を腸壁内で保持する役目を果たす。追加の実施形態では、逆テーパーシャフトを有する組織貫通部材140は、挿入後の腸壁IW内での組織貫通部材の保持をさらに増強するために、1つまたは複数の保持形体143を含んでもよい。
上記で考察したように、様々な実施形態では、組織貫通部材140は、複数の薬物および他の治療剤101から作製することができる。同様に、1つまたは複数の実施形態に従って、組織貫通部材は、完全に薬物101(例えば、第VIII因子などの凝固因子)から作製してもよく、または同様に他の構成要素、例えば様々な薬学的賦形剤(例えば、結合剤、保存剤、崩壊剤等)、所望の力学的特性を付与するポリマー等を有し得る。さらに、様々な実施形態では、1つまたは複数の組織貫通部材140は、他の組織貫通部材と同じまたは異なる薬物101(または他の治療剤)を有することができる。前者の構成は、特定の薬物101(例えば、特定の凝固因子)のより多くの量の送達を可能にするが、後者の構成は、複数の薬物の実質的に同時の送達を必要とする薬物処置レジメンを容易にするために2つまたはそれより多くの異なる薬物をほぼ同時に腸壁に送達することができる。複数の送達アセンブリ178(例えば、2つ、バルーン172の各々の面に1つずつ)を有するデバイス110の実施形態では、第1のアセンブリ178’は、第1の薬物101を有する組織貫通部材を有することができ、第2のアセンブリ178”は、第2の薬物101を有する組織貫通部材を有することができる。
典型的には、組織貫通部材140が有する薬物または他の治療剤101を、生物分解性材料105と混合して、組織貫通部材140を形成する。材料105は、PGLA、セルロース、ならびにマルトースまたは本明細書に記載のもしくは当技術分野で公知の他の生物分解性材料などの1つまたは複数の生物分解性ポリマーを含み得る。そのような実施形態では、貫通部材140は、薬物101と生物分解性材料105の実質的に不均一な混合物を含み得る。あるいは、組織貫通部材140は、図18dの実施形態に示すように、生物分解性材料105から実質的に形成された部分141と、薬物101から形成されたまたは薬物101を含有する個別の区分142とを含んでもよい。1つまたは複数の実施形態では、区分142は、薬物101のペレット、スラッグ、円柱状、または他の形状の区分142sに対応し得る。成形された区分142sは、図18eおよび18fの実施形態に示すように、個別の区分として予め形成されてもよく、次に組織貫通部材140のキャビティ142cに挿入される。あるいは、区分142sは、薬物調製物100をキャビティ142cに添加することによって形成してもよい。薬物調製物100がキャビティ142cに添加される実施形態では、調製物は、キャビティ142cに注がれるまたは注入される粉末、液体、またはゲルとして添加され得る。成形された区分142sは、薬物101そのもの、または薬物101ならびに1つまたは複数の結合剤、保存剤、崩壊剤、および他の賦形剤を含む薬物調製物から形成されてもよい。適した結合剤は、ポリエチレングリコール(PEG)および当技術分野で公知の他の結合剤を含む。様々な実施形態では、PEGまたは他の結合剤は、区分142sの約10〜90%重量パーセントの範囲を含み得るが、インスリン調製物の好ましい実施形態では約25〜90重量パーセントを含み得る。組織貫通部材140中の結合剤として使用され得る他の賦形剤は、例えば、PLA、PLGA、シクロデキストリン、セルロース、メチルセルロース、マルトース、デキストリン、スクロース、およびPGA、ならびにその組合せを含み得る。区分142における賦形剤の重量パーセントに関するさらなる情報は、表4に見出され得る。考察を容易にするために、区分142は、表においてペレットと呼ばれるが、表のデータはまた、本明細書に記載の区分142の他の実施形態にも応用可能である。
様々な実施形態では、組織貫通部材140の重量は約10〜15mgの範囲であり得るが、これより大きいおよびより小さい重量が企図される。マルトースから作製される組織貫通部材140の実施形態では、重量は約11〜14mgの範囲であり得る。様々な実施形態では、薬物101および所望の送達される用量に応じて、部材140中の薬物の重量パーセントは、約0.1〜約15%の範囲であり得る。例示的な実施形態では、これらの重量パーセントは、マルトースまたはPGLAから作製される部材140の実施形態に対応するが、それらはまた、部材140の作製に使用される生物分解性材料105、例えばポリエチレンおよび他の類似の材料のいずれにも適用可能である。部材140中の薬物または他の治療剤101の重量パーセントは、所望の用量に応じて、ならびに薬物の構造的および化学量論的安定性を提供するため、同様に血液または体の他の組織における薬物の所望の濃度プロファイルを達成するために調整することができる。当技術分野で公知の様々な安定性試験およびモデル(例えば、アレニウスの式を使用して)および/または既知の薬物化学分解速度を使用して、重量パーセント範囲に特定の調整を行ってもよい。表4は、組織貫通部材140によって送達され得るインスリンおよび複数の他の薬物の用量および重量パーセント範囲を記載する。一部の例では、表は、用量に関して範囲ならびに単一の値を記載する。これらの値は例示的であり、特許請求の範囲で列挙した値を含む本明細書で列挙した他の値もまた考慮されると認識すべきである。さらに、本発明の実施形態はまた、例えば±1、±5、±10、±25、およびさらにより大きい変動を含むこれらの値周囲の変動も考慮する。そのような変動は、特定の値または値の範囲を特許請求する実施形態の範囲内に入ると考えられる。表はまた、様々な薬物および他の治療剤に関する区分142中の薬物の重量パーセンテージも記載する。この場合も区分142は、任意の数の形状を有し得るが、考察を容易にするために、ペレットと呼ぶ。同様に、一部の実施形態に従って、表4に記載の薬物の量は、組織貫通部材140の全体に分散してもよく、区分142に含有される必要はない。
組織貫通部材140は、1つまたは複数のポリマー、および当技術分野で公知の薬学的作製技術を使用して作製することができる。例えば、薬物101(生物分解性材料105を有するまたは有しない)は、固体形態であり得、次に1つまたは複数の結合剤を添加して、成形、圧縮、または他の類似の方法を使用して組織貫通部材140の形状に形成することができる。3−Dプリンティングおよび関連する作製方法の使用もまた企図される。あるいは、薬物101および/または薬物調製物100は、固体または液体形態であってもよく、その後液体形態で生物分解性材料105に添加され、次に混合物は、成形またはポリマー技術分野で公知の他の形成方法を使用して貫通部材140に形成される。一部の実施形態では、組織貫通部材は、血流への薬物放出速度を遅らせるために、腸壁(または腹腔などの周辺組織)、次に組織を貫通する内部本体においてより遅い分解速度を有する外層またはコーティングを有し得る。様々な実施形態では、外部コーティングまたは外層は、内部コアの分解速度より10、25、50、100、200、500、または1000%遅い生物分解速度を有し得る。使用する場合、組織貫通部材140のより遅く分解する外部コーティングのそのような実施形態は、薬物101の遅い放出を可能にする。そのような実施形態は、例えば様々な凝固因子ならびにインスリンに関して長期間にわたって薬物の治療レベルを維持することが望ましい状況では特に有用である。
望ましくは、薬物または他の治療剤101および分解可能材料105を含む組織貫通部材140の実施形態は、凝血タンパク質を含む様々なペプチドおよびタンパク質などの薬物を含む薬物のいかなる実質的な熱分解も生じない温度で形成される。これは、室温硬化ポリマーならびに当技術分野で公知の室温成形および溶媒蒸発技術の使用を通して達成することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材内の熱分解した薬物または他の治療剤の量は、望ましくは約10重量%未満、より好ましくは5%未満、およびさらにより好ましくは1%未満である。特定の薬物に関する熱分解温度は公知であるか、または当技術分野で公知の方法を使用して決定することができ、次にこの温度を使用して特定のポリマー加工方法(例えば、成形、硬化、溶媒蒸発法等)を選択および調整して、薬物熱分解の温度および関連するレベルを最小限にすることができる。
送達機構170の説明を提供する。典型的には、機構は、図16aおよび16bの実施形態に示すように、送達バルーン172に取り付けられた送達アセンブリ178(組織貫通部材140を含有する)を含む。送達バルーンが膨張すると、カプセルから外向きにおよび腸壁IW内に送達アセンブリ172を係合するための機械力を提供し、それによって組織貫通部材140を壁に挿入する。様々な実施形態では、送達バルーン172は、関節式のアコーディオン様の本体172bによって接続される2つの比較的平坦な面172fを有する伸長した形状を有し得る。平坦な面172fは、バルーン172が拡張すると腸壁(IW)を押し、それによって組織貫通部材(TPM)140を腸壁内に挿入するように構成することができる。TPM140(単独でまたは以下に記載の送達アセンブリ178の一部として)は、バルーン172の1つまたは両方の面172fに位置することができ、腸壁IWの反対側に薬物含有TPM140の挿入を可能にする。バルーン172の面172fは、各々の面に複数の薬物含有TPM140を留置することができるように十分な表面積を有し得る。
次に図19を参照して、送達アセンブリ178の組み立てに関する説明を以下に提供する。第1のステップ300では、1つまたは複数の組織貫通部材140は、支持プラットフォーム175(プラットフォーム175としても知られる)に対応し得る生物分解性の前進構造175に脱着可能に連結させることができる。好ましい実施形態では、プラットフォーム175は、ステップ300に示すように、組織貫通部材140(同様に部材140とも呼ばれる)を挿入するための1つまたは複数の開口部174を含む。開口部174は、バルーン172の拡張前にプラットフォーム175における部材140の挿入および保持を可能にするが、それらが腸壁内に貫通するとプラットフォームからそれを脱着させることができるサイズである。次に、支持プラットフォーム175は、ステップ301に示すように担持構造176内に位置することができる。担持構造176は、キャビティまたは開口部176cを定義する側壁176sおよび底壁176bを有するウェル構造176に対応し得る。プラットフォーム175は、望ましくは、接着剤または当技術分野で公知の他の結合方法を使用して、底壁176bの内部表面に取り付けられる。ウェル構造176は、様々なポリマー材料を含んでもよく、ポリマー加工技術分野で公知の真空形成技術を使用して形成してもよい。多くの実施形態では、開口部176oを、ステップ302に示すように保護フィルム177によって覆うことができる。保護フィルム177は、湿度および酸化から組織貫通部材140を保護するための障壁として機能するが、なおも組織貫通部材140が以下に記載されるようにフィルムを貫通することができるように選択される特性を有する。フィルム177は、望ましくは小腸において生物分解性となるように、および/または消化管の中を不活性に通過するように構成される様々な水および/または酸素不透過性ポリマーを含むことができる。これはまた、所定の物質、例えば、酸素、水蒸気等に対して不透過であるように選択された特定の層を有する多層構築を有してもよい。使用する場合、保護フィルム177を使用する実施形態は、組織貫通部材140中の治療剤101の貯蔵寿命を増加し、次にデバイス110の貯蔵寿命を増加させる役目を果たす。集合的に、組織貫通部材140を取り付けた支持プラットフォーム175、ウェル構造176、およびフィルム177は、送達アセンブリ178を構成し得る。組織貫通部材40または他の薬物送達手段内に含有される1つまたは複数の薬物または治療剤101を有する送達アセンブリ178は、予め製造し、保存し、次いでデバイス110の製造のために後日使用することができる。アセンブリ178の貯蔵寿命は、密封されたアセンブリ178のキャビティ176cに窒素などの不活性ガスを充填することによってさらに増強することができる。
図16aおよび16bを再び参照すると、アセンブリ178は、バルーン172の1つまたは両方の面172fに位置することができる。好ましい実施形態では、アセンブリ178は、バルーン172の拡張時に腸壁IWの反対側に実質的に等しい力の分布を提供するように両方の面172fに(図16aに示すように)位置する。アセンブリ178は、接着剤またはポリマー技術分野で公知の他の連結方法を使用して面172fに取り付けてもよい。バルーン172が拡張すると、TPM140がフィルム177の中に貫通し、腸壁IWに入り、そこで保持要素143および/またはTPM140の他の保持形体(例えば、逆テーパーシャフト144t)によって保持され、バルーン172が収縮するとそれらがプラットフォーム175から脱着する。
様々な実施形態では、バルーン130、160、および172の1つまたは複数は、カプセルの内部体積124v内で空間を保存するために、折り畳まれた、畳まれた、または他の所望の構成でカプセル120の内部に詰めることができる。折り畳みは、予め形成された折り目または他の折り畳み形体または医用バルーン技術分野で公知の方法を使用して行うことができる。特定の実施形態では、バルーン130、160、および172は、以下、i)空間を保存すること、ii)特定の膨張したバルーンの所望の方向を生じること;およびiii)所望の順序のバルーン膨張を容易にすることの1つまたは複数を達成するように、選択された方向に折り畳むことができる。図15a〜15fに示す実施形態は、折り畳み方法および様々な折り畳み配置の実施形態を例証する。しかし、この折り畳み配置および得られたバルーンの方向は例示的であり、他も同様に使用してもよいことを認識すべきである。このおよび関連する実施形態では、折り畳みは、手作業で、自動機器によって、または両方の組合せによって行うことができる。同様に、多くの実施形態では、折り畳みは、図13aおよび13bの実施形態に示すように、バルーン130、160、170;バルブチャンバー158、および様々な接続チューブ162を含む単一のマルチバルーンアセンブリ7(本明細書においてアセンブリ7)を使用して容易にすることができる。図13aは、バルーン130の単一ドーム構築を有するアセンブリ7の実施形態を示し、図13bは、バルーン130の二重バルーン/ドーム構成を有するアセンブリ7の実施形態を示す。アセンブリ7は、様々な真空形成法およびポリマー加工技術分野において公知の他の関連する方法を使用して、所望の形状に真空形成された薄いポリマーフィルムを使用して作製することができる。適したポリマーフィルムは、厚さ約0.003〜約0.010インチの範囲、特定の実施形態では厚さ0.005インチを有するポリエチレンフィルムを含む。好ましい実施形態では、アセンブリは、アセンブリの1つまたは複数の構成要素を連結する必要がなくなるように単一の構築を有するように作製される(例えば、バルーン130、160等)。しかし、同様に、アセンブリ7は複数の部分(例えば、半分)または構成要素(例えばバルーン)から作製され、次に、ポリマー/医用デバイスの技術分野において公知の様々な結合方法を使用して結合されると企図される。
次に図15a〜15f、16a〜16bおよび17a〜17bを参照すると、第1の折り畳みステップ210において、バルーン160は、バルブフィッティング158の上で折り畳まれ、バルーン172はプロセスにおけるバルブフィッティング158の反対側の上を動く(図15aを参照されたい)。次に、ステップ211において、バルーン172はバルーン160およびバルブ158の折り畳まれた組合せに対して正角で折り畳まれる(図15bを参照されたい)。次に、ステップ212において、バルーン130の二重ドーム実施形態に関して、バルーン130の2つの半分130’および130”は、互いの上に折り畳まれ、バルブ150を露出する(バルーン130の単一ドーム実施形態に関しては図15cを参照されたく、自身の上に折り畳みされる場合は図15eを参照されたい)。最終的な折り畳みステップ213を行うことができ、それによって折り畳まれたバルーン130は、バルブフィッティング158およびバルーン160の反対側に対して180°で折り畳まれ、図15eに示す二重ドーム構成の最終的な折り畳まれたアセンブリ8、ならびに図15eおよび15fに示される単一ドーム構成の最終的な折り畳まれたアセンブリ8’を生じる。次に、1つまたは複数の送達アセンブリ178を、ステップ214においてアセンブリ8に取り付け(典型的にバルーン72の2つの面72f)、最終的なアセンブリ9(図16aおよび16bの実施形態に示す)を得て、これを次にカプセル120に挿入する。挿入ステップ215の後、アセンブリ9が挿入されたデバイス110の最終のアセンブルバージョンを図17aおよび17bに示す。
次に図20a〜20iを参照して、デバイス110を使用して凝固因子(例えば、第VIII因子)または他の凝血タンパク質などの薬剤101を小腸または大腸の壁、腹膜、または腹腔などのGI管の部位に送達する方法の説明を提供する。ステップおよびその順序は例示的であり、他のステップおよび順序も同様に企図されることを認識すべきである。デバイス110が小腸SIに入ると、キャップコーティング120c’が小腸上部の塩基性pHによって分解し、図20bのステップ400に示すようにキャップ120p’の分解を引き起こす。次に、バルブ150が小腸における流体に暴露され、バルブは図20cのステップ401に示すように分解し始める。次に、ステップ402において、バルーン130が、図20dに示すように拡張する(ガス169の生成により)。次に、ステップ403において、バルーン160の区分160’が拡張し始め、図20eに示すように、アセンブリ178をカプセル本体から押し出し始める。次にステップ404において、バルーン160の区分160’および160”が十分に膨張して、アセンブリ178をカプセル本体から完全に押し出してカプセルの長さ120lを伸長させ、それによって図20fに示すように、カプセルの横軸120ALを小腸LAIの横軸と整列させる役目を果たす。この時間の間、バルブ155は、バルーン60における圧の増加により機能を停止し始める(バルーンは完全に膨張し、ガス169の行き場がなくなるという事実により)。次に、ステップ405において、図20gに示すように、バルブ155は完全に開き、バルーン172を膨張させ、次に今や完全に露出したアセンブリ178(本体120p”から完全に押し出されている)を腸壁IW内へと外向きに放射方向に押し出す。次に、ステップ406において、バルーン172は、拡張し続けて、図20hに示すように、今や組織貫通部材を腸壁IW内へと前進させる。次に、ステップ407では、バルーン172(バルーン160および130と共に)は、引き戻すように収縮し、組織貫通部材を腸壁IW内に保持したままにする。同様に、カプセルの本体部分120p”は、デバイス110の他の生物分解性部分と共に完全に分解する(コーティング120c”の分解により)。分解していないいかなる部分も消化からの蠕動収縮によって小腸を通して遠位に運ばれ、最終的に排泄される。
添付書類/実施例
本発明の様々な実施形態を以下の添付書類/実施例を参照して詳しく説明する。これらの実施例は、説明目的のために限って示され、本発明はその情報または詳細に限定されないことを認識すべきである。
添付書類1 アリロクマブ血清濃度対時間のモデリング
以下の仮定および/またはデータを、アリロクマブ血清濃度対時間のモデリングに使用した。
皮下投薬スケジュールは、150mgの毎週SC(皮下)を2週間毎であり、これは本発明の実施形態を使用しておよそ21.4mg/日の毎日の投薬スケジュールに対応する。
モノクローナル抗体をRegeneron/Sanofiから得た。これは、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的として低密度リポタンパク質(LDL)を低下させる。
薬物動態パラメーターは、Lunven, C., Paehler, T., Poitiers, F., et al. entitled "A randomized study of the relative pharmacokinetics, pharmacodynamics, and safety of Alirocumab, a fully human monoclonal antibody to PCSK9, after single subcutaneous administration at three different injection sites in healthy subjects." Cardiovascular Therapeutics, 2014, 32:297.301による論文から得た。
kaは報告されなかったが、0.5日−1を選択し、Tmaxは4.3日であった。
試験は、3つの異なる注射部位に関するPKパラメーターを報告し、3つ全てが同等であることを見出した。この1回のシミュレーションに関して、使用したパラメーターは3つの平均値であった。
本発明の実施形態を使用してシミュレートした毎日の投薬に関して定常状態に達すると、薬物濃度は10.06mg/L〜20.05mg/Lの範囲であり、平均値15.06mg/Lを得た。
本発明の実施形態を使用すると、毎回およそ10.5mgの用量の毎日投薬は、150mgの2週間に1回の用量にほぼ対応した。
本発明の実施形態を使用する毎日投薬に関して、より少量を毎日投与して図21bに示す薬物動態プロファイルを得ることができる。
定常状態に達すると、アリロクマブの濃度は15.41mg/L〜15.47mg/Lの範囲であり、平均定常状態濃度は15.44mg/Lであり、2週間毎の皮下注射の場合の15.06値より上であった。
この薬物濃度の日毎の変動の低下は、有害事象および抗薬物抗体の形成を防止し、より高いトラフ濃度は、アリロクマブの生物活性が維持されることを確実にする。
添付書類2:アリロクマブ血清濃度の定常状態変動の計算に使用したモデルおよび計算
%定常状態変動は、患者の薬物の血漿/血清濃度が時間と共にどれほど多く変動するかの指標を提供する測定値である。複数の理由から定常状態変動を最小限にすることが望ましい。第1に、薬理活性にとって必要な量より高い薬物濃度は、有害事象をもたらす可能性がより高い。第VIII因子または他の凝固因子の原因に関して、そのような有害事象は、凝固事実の生化学効果を阻害するかまたはそうでなければ弱める抗薬物抗体の産生の産生を含む。薬物に対する抗薬物抗体を産生する患者はもはやその薬物に応答せず、異なるレジメンを行わなければならない。一方、薬理活性にとって必要な濃度より低い薬物濃度も同様に望ましくない。これらの期間の間に薬理活性がない可能性がより高く、このように薬物効能がより低くなる可能性が高い。標的とする障害を有効に処置するためには、一定の着実なレベルの薬理活性を維持することが理想である。
表2に示す抗体に関する%定常状態変動に関する計算を行った。値は、添付書類1に記載の既存の薬物動態シミュレーションを使用して決定した。%定常状態変動を計算するために使用した特定の式を以下に示す。
上記の等式は、ピーク定常状態濃度(Css,peak)およびトラフ定常状態濃度(Css,trough)の間の差を計算し、平均定常状態濃度(Css,avg)で除算し、平均定常状態薬物濃度と比較した血清薬物濃度のパーセント変化を生じた。定常状態変動は、単一の投薬期間において本発明者らがどれほど多くの血清薬物濃度の変化を予測することができるかの定量的測定としての役目を果たす。
データから、本発明の実施形態を使用する毎日の投薬が、同じ薬物に関して、皮下投薬よりかなり低い定常状態変動を可能にすることは明らかである。有害事象の回数がより少なく、より強度が低いという予想される利点および薬理活性の維持に加えて、本発明の実施形態を使用する小腸への注射を介する投薬は、皮下投薬において起こり得る注射部位反応を回避する。
結論
本発明の様々な実施形態の上記の説明は、説明および記載の目的のために示されている。本発明は、開示の正確な形態に限定されないと意図される。多くの改変、変形形態、および精密化が当業者には明らかとなるであろう。例えば、デバイスおよび治療調製物の実施形態(例えば、組織貫通部材の形態で)は、様々な小児および新生児での適応ならびに様々な獣医学での適応に合わせたサイズであり得、そうでなければ適合され得る(例えば、治療調製物に関して調整した投薬量)。同様に、当業者は、本明細書に記載の特定のデバイスおよび方法に対する複数の均等物を、単なる日常的な実験を使用して認識するか、または確認することができる。例えば、第VIII因子などの凝固因子の場合、アナログおよび誘導体を含む開示の凝固因子に対する生物学的均等物が具体的に企図される。そのような均等物は、本発明の範囲内であると考えられ、以下の添付の特許請求の範囲に含まれる。
1つの実施形態からの要素、特徴、または行為を、他の実施形態からの1つまたは複数の要素、特徴、または行為と容易に再結合または置換して、本発明の範囲内である複数の追加の実施形態を形成することができる。その上、他の要素と組み合わせて示されるまたは記載される要素は、様々な実施形態では、独立した要素として存在し得る。なおさらに、本発明の実施形態はまた、要素、形体、化学物質、治療剤、特徴、値、またはステップ等が積極的に列挙されている場合は、前記要素、形体、化学物質、治療剤、特徴、値、またはステップの除外または消極的列挙も同様に企図する。したがって、本発明の範囲は、記載の実施形態の詳細に限定されず、その代わりに添付の特許請求の範囲に限って限定される。