[記述]
ラセミ化合物の形態にあるアセチル−ロイシン(アセチル−DL−ロイシン)及びその塩は、種々の原因からのめまい、特にメニエ−ル病のめまい及び炎症性(前庭神経炎)又は毒性原因からのめまいの処置(治療)において有効である。例えば、アセチル−ロイシンは、タンガニル(Tanganil)(登録商標)という商品名下において、めまい防止薬剤としてラセミ化合物の形態においてピエ−ル・ファ−ブル・メディカメント(Pierre Fabre Medicament)によって市販される。様々な著者によって報告されているタンガニル(Tanganil)(登録商標)の臨床結果は、めまい発作の消失を含む、95%以上の症例において、めまい症状における改善を示している。
アセチル−DL−ロイシンは、1957年からフランスにおいて急性めまいを処置(治療)するために使用されてきており、優れた安全性プロファイルを有しているが、慢性使用における長期の安全性は、決定されていない。膜電位の安定化を含む多数の仮説にもかかわらず、その作用の薬理学の及び電気生理学のモ−ドは不明のままである。(Vibertら (2001)Eur J Neurosci;13(4):735−48;Ferber−Viartら (2009)Audiol Neurootol;14(1):17−25)。急性片側迷路切除術のラット・モデルにおけるFDG−μPET研究(Zwergalら (2016)Brain Struct Funct;221(1):159−70)は、後側部の視床の不活性化及び前庭小脳の活性化によって姿勢補償に及ぼす、L−エナンチオマ−、N−アセチル−L−ロイシンの有意な効果を示した(Guntherら (2015)PLoS One;10(3):e0120891)。アセチル−DL−ロイシンを用いた小脳性運動失調症の症状の改善は、小脳患者を伴う症例シリ−ズにおいて示された(Struppら (2013)J Neurol;260(10):2556−61)。もう1つの症例シリ−ズは、有益性を見いださなかった(ペルツら(Pelz et al)(2015)J Neurol;262(5):1373−5)。定量的な歩行解析(gait analysis)は、アセチル−DL−ロイシンが、小脳性運動失調症を有する患者における一時的な歩行変動性を改善することを示した(Schnieppら (2015)Cerebellum;3:8)。ニ−マン−ピック病C型(NPC)を有する患者12人を含む1か月間の研究において、運動失調の症状の改善が示された(Bremovaら (2015)Neurology;85(16):1368−75)。更に、アセチル−DL−ロイシンを与えられた運動失調症を有する患者におけるPET研究は、応答者における中脳及び下位脳幹における代謝の増加を示した(Becker−Benseら (2015)要約(Abstract)EAN)。
しかしながら、アセチル−ロイシンが、神経変性疾患を処置(治療)するとは知られていないが、この疾患は一般に数年から数十年にわたって進行する。本開示は、驚くべきことに、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩が、例えば、神経変性疾患の発症又はそうしなければ典型的な疾患の進行により発現することが予期されるであろう神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を遅らせることにより、及び/又は、神経変性疾患の進行又は典型的な疾患の進行と比較して長期間にわたるような神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を遅らせる若しくは止めることにより、それを必要とする対象者における神経変性疾患を治療する方法において使用することができることを示す。
本開示に示されるように、ロイシン、又はその薬学的に許容される塩が、例えば、神経変性疾患の発症又はそうしなければ典型的な疾患の進行により発現することが予期されるであろう神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を遅らせることにより、及び/又は、神経変性疾患の進行又は典型的な疾患の進行と比較して長期間にわたるような神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を遅らせる若しくは止めることにより、それを必要とする対象者における神経変性疾患を治療する方法において使用することができることを見出してきた。
本開示によるこれらの例示的な使用法、及びここにおいて記述される別様のことは、全く予期されなかったので、そのような利益は観測されなかったし、そして、先行技術の教示から推定もできなかった。広範囲の神経変性疾患にわたって有効性を示す実験例によって証拠付けされるように、本発明者らは、ロイシン及びアセチル−ロイシンが神経保護薬として作用し、そして、そうでなければ発現すると予期される神経変性を抑制すると信じる。加えて、多くの神経変性疾患は、リソソ−ム蓄積における欠陥と関連しており、そして異常に高いレベルのリソソ−ム蓄積のようなリソソ−ム機能障害は、ニュ−ロン(神経細胞の)機能障害及びニュ−ロン(神経細胞の)死の原因であるかもしれない。実験例により証拠付けされるように、しかしながら、如何なる特定の理論によって拘束されることを望まないが、本発明者らは、とりわけ、ロイシン及びアセチル−ロイシンが細胞機能障害を(例えば、対照値(コントロ−ル値(control values))に向かってリソソ−ム量を減少させることにより)改善し、且つ、神経防護作用を提供することができることを発見した。
従って、本開示は、その必要性のある対象者において神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)する方法において使用のためのロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
ここにおいて使用される「対象者」は、脊椎動物、哺乳動物又は家畜であってもよい。従って、本開示による組成物は、如何なる哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ又はブタ)、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ又はモルモット)、実験動物(例えば、マウス又はラット)を処置(治療)するために使用されてもよく、或いは、獣医学の応用において使用されてもよい。1つの実施例において、対象者はヒトである。
ここにおいて使用される「神経変性疾患」は、ニュ−ロンに影響を及ぼし、ニュ−ロン構造の進行性喪失、ニュ−ロン機能の進行性喪失、又は進行性ニュ−ロン細胞(セル)死を含む、如何なる障害をも意味する。
ここにおいて使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、複数の参照を含む。「おおよそ」及び「約」という用語は、測定の性質又は精度を考慮すると、測定された量に対して許容可能な程度の誤差を含む、参照された数又は値とほぼ同じであることを意味する。
ここにおいて使用されるように、「おおよそ」及び「約」という用語は、一般に、特定された量、頻度又は値の±20%を包含すると理解されるべきである。ここにおいて示される数量は、別様に述べられていない限り、概算であり、明示的に述べられていないときは、「約」又は「おおよそ」という用語が推測され得ることを意味する。
ここにおいて使用される「投与する」、「投与」、又は「投与すること」という用語は、(1)本開示による組成物を、開業医又は彼の委任代理人によって或いは彼の指導の下で、供給し、与え、投与し、及び/又は処方することを意味し、そして、(2)本開示による組成物を、患者又は自分自身によって摂取、服用又は消費することを意味する。
明示的に述べられていなくても、全体を通して「アセチル−ロイシン」への言及は、その薬学的に許容される塩を含む。
ロイシン又はアセチル−ロイシンはラセミ化合物の形態であってもよいが、このことは、その化合物がほぼ同じ量のエナンチオマ−を含むことを意味する。或いは、L−エナンチオマ−(光学異性体)又はD−エナンチオマ−(光学異性体)の何れかのエナンチオマ−過剰で存在していてもよい。ロイシン又はアセチル−ロイシンは、L−エナンチオマ−又はD−エナンチオマ−のいずれかの単一のエナンチオマ−の形態(型)であるかもしれない。1つの実施例において、単一のエナンチオマ−形態(型)はL−エナンチオマ−である。ラセミ体及びエナンチオマ−の形態は、本分野で知られている手順に従って得られるかもしれない。
ここにおいて、言及する「薬学的に許容される塩」は、薬学的応用における使用に適切な任意の塩の調製物であるかもしれない。薬学的に許容される塩は、限られることなく、N、N’−ジベンジルエチレンジアミン(N,N’−dibenzylethylenediamine)、クロロプロカイン(chloroprocaine)、コリン(choline)、アンモニア(ammonia)、ジエタノ−ルアミン(diethanolamine)及び他のヒドロキシアルキルアミン(hydroxyalkylamines)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、N−メチルグルカミン(N−methylglucamine)、プロカイン(procaine)、N−ベンジルフェネチルアミン(N−benzylphenethylamine)、1−パラ−クロロ−ベンジル−2−ピロリジン−1’−イルメチルベンズイミダゾ−ル(1−para−chloro− benzyl−2−pyrrolidin−1’−ylmethylbenzimidazole)、ジエチルアミン(diethylamine)及び他のアルキルアミン(alkylamines)、ピペラジン(piperazine)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane)等のようなアミン塩;リチウム、カリウム、ナトリウム等のようなアルカリ金属塩;バリウム、カルシウム、マグネシウム等のようなアルカリ土類金属塩;亜鉛、アルミニウム等のような遷移金属塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸二ナトリウム等のような他の金属塩;塩酸塩、硫酸塩等のような無機酸;及び酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、フマル酸塩等のような有機酸の塩を含む。
ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、当技術分野で知られる教示に従って製剤化されて対象者に投与されるかもしれない。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、医薬組成物として製剤化されるかもしれない。その医薬組成物は、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含むかもしれない。医薬組成物への言及は、単独で又は医薬組成物の形態における、活性薬剤(例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩)を包含する。
医薬組成物は、特に、それが使用されることになっている様式により、多数の異なる形態の如何なるものをも取ってもよい。従って、例えば、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリ−ム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレ−、ミセル溶液、経皮貼布、リポソ−ム懸濁液、又は治療の必要性のあるヒト又は動物に投与されるのに妥当な別の形態であるかもしれない。
ここにおいて言及する「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物を製剤化するのに有用であることが当業者に知られている如何なる既知の化合物又は既知の化合物の組合せである。医薬組成物の担体は、それが与えられる対象者によって十分に耐えられるものであるべきであることは認識されるであろう。
1つの実施例において、薬学的に許容される担体は、固体であるかもしれず、そして、その組成物は、粉末又は錠剤の形態であるかもしれない。固体の薬学的に許容される担体は、限定されることなく、香味剤、緩衝剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、染料、増量剤、流動促進剤、圧縮補助剤、不活性結合剤、甘味剤、保存剤、染料、コ−ティング剤、又は錠剤崩壊剤としても機能するかもしれない1又はそれ以上の物質を含むかもしれない。担体はまた、封入材料でもあるかもしれない。粉末において、担体は、本発明による微粉化された活性薬剤と混合されている微粉化された固体であるかもしれない。錠剤において、活性薬剤は、必要な圧縮特性を有する担体と適切な割合で混合され、そして、所望の形状及び大きさに圧縮されるかもしれない。粉末剤及び錠剤は、例えば、99%までの活性薬剤を含むかもしれない。適切な固体担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクト−ス、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロ−ス、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂を含む。もう1つの実施例において、薬学的に許容される担体はゲルであってもよく、組成物はクリ−ム等の形態であってもよい。
更なる実施例において、担体は、1つ又はそれ以上の賦形剤又は希釈剤を含むことができるが、これらに限定されない。そのような賦形剤の例は、ゼラチン、アラビアガム、乳糖、微結晶セルロ−ス、デンプン、デンプングリコ−ル酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド状二酸化ケイ素などである。
もう1つの実施例において、薬学的に許容される担体は、液体であるかもしれない。1つの実施例において、医薬組成物は、溶液の形態である。液体担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤及び加圧組成物を調製する際に使用される。ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、水、有機溶媒、両方の混合物、又は薬学的に許容される油脂のような薬学的に許容される液体担体に溶解又は懸濁されるかもしれない。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤又は浸透圧調整剤のような他の適切な医薬品添加物を含有するかもしれない。経口及び非経口投与のための液体担体の好適妥当な例は、水(例えば、カルボキシ・メチルセルロ−ス・ナトリウム溶液のようなセルロ−ス誘導体のような上述の添加剤を部分的に含む)、アルコ−ル(例えば、グリコ−ルのような、一価アルコ−ル及び多価アルコ−ルを含む)及びそれらの誘導体、及び油(例えば、分画したヤシ油及びラッカセイ油)を含む。非経口投与の場合、担体はまた、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルのような油性エステル(oily ester)であってもよい。滅菌液担体は、非経口投与用の滅菌液の形態の組成物において有用である。加圧組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素又は他の薬学的に許容される噴射剤であるかもしれない。
滅菌溶液又は懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内及び皮下注射によって利用されるかもしれない。活性薬剤は、滅菌水、食塩水、又は他の適切な滅菌注射可能な媒体を使用して、投与時に溶解又は懸濁されるかもしれない滅菌固体組成物として調製されるかもしれない。
その組成物は、他の溶質又は懸濁剤(例えば、溶液を等浸透圧にするのに十分な生理食塩水又はグルコ−ス)、胆汁酸塩、アカシア(acacia)、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monoleate)、ポリソルベ−ト80(ソルビト−ルのオレイン酸エステル及びエチレンオキシドで共重合されたその無水物)などを含有する滅菌溶液又は懸濁液の形態で経口投与されるかもしれない。その組成物はまた、液体又は固体組成物の形態のいずれかで経口投与されるかもしれない。経口投与に適した組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤、及び粉末のような固体形態、及び、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、及び懸濁剤のような液体形態を含む。非経口投与に有用な形態は、無菌液剤、乳剤、及び懸濁液剤を含む。
或いは、組成物は、吸入によって(例えば、鼻腔内に)投与されてもよい。組成物はまた、局所的使用のために製剤化されるかもしれない。例えば、クリ−ム又は軟膏は皮膚に適用されるかもしれない。
ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、徐放出デバイス又は遅延放出デバイス内に組み込まれるかもしれない。このようなデバイスは、例えば、皮膚の上又は下に挿入されるかもしれず、薬剤は、数週間又は数ヶ月に渡って放出されるかもしれない。このようなデバイスは、本開示に従って使用されるロイシン又はアセチル−ロイシンによる長期治療が必要なときに、そして、(例えば、少なくとも連日投与の)頻繁な投与を通常必要とする場合に、有利かもしれない。
1つの実施例において、医薬組成物は、錠剤などの固体経口剤形である。錠剤において、活性薬剤は、必要な圧縮特性を有する、薬学的に許容される担体のようなビヒクルと適切な割合で混合され、そして、所望の形状及び大きさに圧縮されるかもしれない。錠剤は、99重量%まで、活性剤を含有してもよい。
錠剤のような固体の経口剤形における医薬組成物は、薬学の分野で知られている如何なる方法によって調製されてもよい。医薬組成物は通常、活性剤を従来の医薬的に許容される担体と混合することにより調製される。
錠剤は、当技術分野において知られるように製剤化されてもよい。タンガニル(Tanganil)(登録商標)は、例えば、賦形剤として、小麦のデンプン、アルファ化トウモロコシ(トウモロコシ)デンプン、炭酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムを含む。例えば、同じ又は類似の賦形剤は、本開示と共に使用されるかもしれない。
各700 mgのタンガニル(Tanganil)(登録商標)錠剤の組成は以下の通りである。500mgのアセチル−DL−ロイシン、88mgの小麦デンプン、88mgのアルファ化トウモロコシ(トウモロコシ)デンプン、13mgの炭酸カルシウム及び11mgのステアリン酸マグネシウム。例えば、同じ錠剤が本開示と共に使用されてもよい。
上記で論じたように、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、如何なる数の異なる形態をとる医薬組成物として製剤化され及び投与されてもよい。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、血液脳関門を通過するそれのデリバリを容易にするための医薬組成物として製剤化されてもよい。更なる例として、ロイシン、アセチル−ロイシン又はその薬学的に許容される塩は、血液脳関門をバイパスするための医薬組成物として製剤化されてもよい。血液脳関門を通過するデリバリを容易にする、又は、血液脳関門をバイパスする態様での投与に適する製剤は、ここにおいて記述されるように、(アセチル化されていない)ロイシンを調製及び投与するために使用されてもよい。本開示において実証されるように、リソソ−ム疾患表現型を示す細胞へのロイシン曝露は、アセチル−ロイシンへの曝露のように、細胞機能障害を(例えば、リソソ−ム蓄積量を対照値に向けて減少させることにより)改善したが、それによりロイシン及びアセチル−ロイシンの同様の活性を実証する(図14を参照)。
1つの実施例において、、医薬組成物(例えば、ロイシン又はその塩を含む)は、例えば、コロイド薬物キャリア−システム(colloidal drug−carrier systems)のようなナノデリバリ(nanodelivery)のために製剤化される。適切な例は、限られることなく、リポソ−ム(liposomes)、ナノ粒子(nanoparticles)(例えば、ポリマ−、脂質、及び無機ナノ粒子)、ナノゲル(nanogels)、デンドリマ−(dendrimers)、ミセル(micelles)、ナノエマルション(nanoemulsions)、ポリマ−ソ−ム(polymersomes)、エクソソ−ム(exosomes)、及び量子ドット(quantum dots)を含む。例えば、Patelら「血液脳関門を交差して:脳への薬物(ドラッグ)デリバリにおける最近の進歩」、CNS Drugs 31:109−133(2017);Kabanovら、「血液脳関門を通過する薬物(ドラッグ)デリバリのための新技術」、Curr Pharm Des.,10(12):1355−1363(2004); Chengら、「インビトロの血液脳関門モデルにおいて及びアルツハイマ−病Tg2576マウスにおいてテストされた高度に安定化されたクルクミンナノ粒子(Curcumin Nanoparticles)」、The AAPS Journal,vol.15、no.2,pp.324−336(2013); Laehdeら「エアロゾル・フロ−・リアクタ−法(Aerosol Flow Reactor Method)を使用した、種々の条件下でのL−ロイシン(L−Leucine)ナノ粒子の生産」Journal of Nanomaterials,vol.2008,article ID 680897(2008)を参照。
1つの実施例において、医薬組成物(例えば、ロイシン又はその塩を含む)は、注射又は点滴によるように、中枢神経系(CNS)への直接のデリバリのために製剤化される。CNSへの直接のデリバリのための製剤及び方法は、当技術分野において知られている。例えば、米国特許第9,283,181号を参照されたい。そのような投与の例は、限られることなく、鼻腔内(intranasal)、脳室内(intraventricular)、くも膜下腔内(intrathecal)、頭蓋内(intracranial)、及び、鼻粘膜移植(nasal mucosal grafting)によるデリバリを含む。
1つの実施例において、医薬組成物は、鼻腔内送達(デリバリ)のために製剤化される(及びそれによって投与される)。例えば、Hansonら、「鼻腔内送達(デリバリ)は、治療薬を中枢神経系に向けて狙い神経変性疾患を治療するために、血液脳関門をバイパスする」、BMC Neurosci. 9(Suppl 3):S5(2008)を参照されたい。1つの実施例において、医薬組成物は、鼻粘膜移植を介したデリバリのために製剤化される(及びそれによって投与される)。1つの実施例において、医薬組成物は、脳室内注射又は点滴のために製剤化される(及びそれによって投与される)。別の実施例において、医薬組成物は、くも膜下腔の大槽内 注射又は点滴のために製剤化される(及びそれによって投与される)。1つの実施例において、医薬組成物は、くも膜下腔の腰部(脊椎)注射(intrathecal lumbar injection)又は点滴のために製剤化される(及びそれによって投与される)。例えば、活性剤は、くも膜下腔投与のために製剤化され、及び/又は、Oryら「くも膜下腔の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(2−hydroxypropyl−β−cyclodextrin)は、ニ−マン−ピック病C1型において神経疾患の進行を減少させる:非ランダム化された、非盲の、フェ−ズ1−2試験」Vol.390,Issue 10104,pp.1758−1768(2017) により議論された同じ又は類似の方法でくも膜下腔内に投与されてもよい。
当技術分野で知られている、穿頭孔又は大槽又は腰椎穿刺などを介する注射を、限られることなく含んで、種々な技法が使用されてもよい。内部(例えば、埋め込まれた)又は外部のいずれかを問わず、ポンプ、カテ−テル、リザ−バ−等のような当技術分野で知られているように、送達(デリバリ)のために、種々のデバイスが使用されてもよい。1つの実施例において、投与間隔は2週間毎に1回である。
1つの実施例において、投与間隔は月毎に1回である。1つの実施例において、投与間隔は2ヶ月毎に1回である。1つの実施例において、投与間隔は、月毎に2回である。1つの実施例において、投与間隔は週毎に1回である。1つの実施例において、投与間隔は、週毎に2回又は数回である。1つの実施例において、投与間隔は毎日である。1つの実施例において、投与は、持続点滴のように連続的である。
ロイシン又はその薬学的に許容される塩は、CNSへのそれの直接送達(デリバリ)又は血液脳関門を通過するそれの送達(デリバリ)のいずれかに相当するように調整された、アセチル−ロイシンに対してここにおいて開示されるものと同等の量又は1回の用量で投与されてもよい。
同様に、アセチル−ロイシン又はその薬学的に許容される塩は、ここにおいて開示されるような量又は1回の用量で投与されてもよく、その用量は、その投与経路(例えば、CNSへの直接送達(デリバリ))に従って調整されてもよい。
本開示は、その必要性のある対象者において、神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)するため、組成物及び方法を含んで、ロイシン、セチル−ロイシン、及びその薬学的に許容される塩を記述する。その必要性のある対象者は、神経変性疾患の遺伝的、生化学的、又は他の同様な同定可能なマ−カ−を有するかもしれない。例えば、神経変性疾患のマ−カ−は、細胞マ−カ−であるかもしれない。その必要性のある対象者は、神経変性疾患を有すると診断されたかもしれない。例えば、その対象者は、遺伝的、生化学的、又は他の同様な同定可能なマ−カ−に従って神経変性疾患を有すると診断されたかもしれない。その必要性がある対象者は、神経変性疾患を有することが疑われるか、又は有する恐れがあるとされるかもしれない。例えば、対象者は、神経変性疾患に対する遺伝的素因を有するかもしれない(例えば、対象者は、一人又はそれ以上の神経変性疾患を有する家族構成員を有するかもしれない)。その必要性のある対象者は、症状を示すかもしれない(即ち、神経変性疾患に関連する1つ又はそれ以上の症状を有する)。その必要性のある対象者は、無症状であるかもしれない。用語「症状を示す」及び「無症状である」は、神経変性疾患の症状に関して使用されることが理解されるべきである。遺伝的、生化学的、又は他の類似の同定可能なマ−カ−に基づいて神経変性疾患と診断されたが、それ以上の疾患の症状がない対象者のような、神経変性疾患の遺伝的、生化学的、又は他の類似の同定可能なマ−カ−を有する対象者は、本開示の目的のために「無症状である」の範囲内に含まれる。
ここにおいて使用されるように、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)すること」などは、そうでなければ典型的な病気の進行に従って発現すると予期されるであろう神経変性疾患の発症又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を遅らせること、経時的に神経変性疾患の重症度を低減すること又は神経変性疾患に関連する1つ又はそれ以上の既存の症状の重篤度の低減すること、典型的な病気の進行と比較して、経時的に神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の進行を遅らせること、及び/又は、経時的に神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の進行を逆行させること、を意味する。「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)すること」はまた、神経変性疾患の生化学的マ−カ−を改善することを意味してもよい。
ここにおいて使用されるように、「典型的な病気の進行」、「典型的に予期される病気の進行」などは、もし対象者が処置(治療)されないのであれば、神経変性疾患の典型的な又は予期される進行、神経変性疾患に関連する1つ又はそれ以上の症状、又は、神経変性疾患の生化学的マ−カ−を意味する。典型的な又は予期される病気の進行は、ここにおいて実験例として記述されるもののような、神経変性疾患の進行、神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状、或いは、神経変性疾患の生化学的マ−カ− を評価するため、例えば、既知の尺度、指数、評価、又はスコア、或いは、他の適切なテストに、基づいていてもよい。その尺度、指数、評価、スコア、又は他の適切なテストは、その疾患全体の進行又はその疾患に関連する1つ又はそれ以上の症状の進行に対応してもよい。例えば、典型的な又は予期される病気の進行は、神経変性疾患の典型的な又は予期される発症若しくは重症度、又は神経変性疾患に関連する症状若しくは症状の集合に基づいてもよい。典型的な又は予期される病気の進行は、対象者毎に決定されてもよく、或いは、典型的に、対象者の個体群又は下位個体群のような神経変性疾患に罹患している対象者の集団によって経験される又はその集団に対して観察されるものに基づいてもよい。その下位個体群は、例えば、同じ性別の、同じ又は類似の年齢の、1つ又はそれ以上の症状の発症のための同じ又は類似のタイミングの下位個体群などを含むかもしれない。
1つの実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の処置(治療)すること」は、そうでなければ、典型的な病気の進行に従って発現すると予期されるであろう神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の発症を遅らせることを意味する。ここにおいて使用されるように、「神経変性疾患の発症又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を遅らせること」などは、神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の発症までの時間を延ばす、又は、その発症を防止することを意味する。例えば、神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の発現までの時間が、典型的な病気の進行に従って観察されるよりも少なくとも5%より長くなるとき、発症を遅らせたと言うことができる。更に、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%の時間における増加が観測される。1つの実施例において、対象者は無症候性(無症状)である。ロイシン又はアセチル−ロイシンの投与は、そうでなければ、典型的な病気の進行に従って、発現すると予期されるであろう神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の発症を遅らせるため、対象者が無症候性(無症状)である時点で開始されてもよい。もう1つの実施例において、対象者は症候性(症状を示す状態)である。ロイシン又はアセチル−ロイシンの投与は、そうでなければ、典型的な病気の進行に従って発現すると予期されるであろう神経変性疾患の1つ又はそれ以上の追加の症状の発症を遅らせるために、対象者が幾つかの症状を有する時点で開始されてもよい。その必要性がある対象者は、ここにおいて記述される期間によって、ロイシン又はアセチル−ロイシンによる処置(治療)を受け続けてもよい。1つの実施例において、処置(治療)は、そうでなければ、典型的な病気の進行に従って発現すると予期されるであろう神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の発症を防止する。
1つの実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)すること」は、神経変性疾患の重症度を低減すること、又は、神経変性疾患と関連する1つ又はそれ以上の既存の症状の重症度を低減すること若しくは除去することを意味する。神経変性疾患の重症度又は既存の症状の重症度は、ここにおいて、例として記述されるもののような、既知の尺度、指数、評点、又はスコア、或いは重症度を評価するためのもう1つの適切なテストを使用して評価してもよい。例えば、尺度、指数、評価、スコア、又は他の適切なテストは、その病気(疾患)全体の重症度又はその病気(疾患)に関連する1つ又はそれ以上の症状の重症度に対応するかもしれない。1つの実施例において、処置(治療)は、症状のある(症候性の)患者に特徴的な値又は度合いから、症状のない(無症候性の)患者に特徴的な値又は度合いまでのような評価を改善する。
1つの実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)すること」は、典型的な病気の進行と比較して、神経変性疾患又は神経変性疾患に関連する1つ又はそれ以上の症状の進行を経時的に遅延させること、或いは、神経変性疾患又は神経変性疾患に関連する1つ又はそれ以上の症状の進行を経時的に逆行させること、を意味する。処置(治療)が進行を遅らせている或いは逆行させている時間は、ここにおいて記述されるような処置(治療)の期間と一致してもよい。その処置(治療)は、例えば、約7日以上、約2週間以上、約3週間以上、約1ヶ月以上、約6週間以上、約7週間以上、又は約2ヶ月以上の期間にわたって進行を遅延又は逆行させるかもしれない。その処置(治療)は、例えば、約3ヶ月以上、約4ヶ月以上、約5ヶ月以上、又は約6ヶ月以上の期間にわたって進行を遅らせるか又は逆行させるかもしれない。それは、例えば、約1年以上、約2年以上、約3年以上、約4年以上、約5年以上、又は約10年以上の期間にわたって進行を遅らせるか又は逆行させるかもしれない。その処置(治療)は、患者の寿命にわたって、神経変性疾患又は神経変性疾患に関連する1つ以上の症状の進行を遅延又は逆行させるかもしれない。
1つの実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ以上の症状を処置(治療)すること」とは、典型的な病気の進行と比較して、神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ以上の症状の進行を経時的に遅らせることを意味する。ここにおいて使用されるように、「神経変性疾患の又は神経変性疾患に関連する1つ以上の症状の進行を経時的に遅らせること」などは、その病気又はその病気の1つ以上の症状の進行をゆるやかにする及び/又は停止する(例えば、その病気又はその病気の1つ以上の症状の悪化又は重症度の増大をゆるやかにする及び/又は停止する)ことを意味する。病気の進行は、例えば、ここにおいて例として記述されているもののような、既知の尺度、指数、評価、又はスコア、或いは、進行を評価するための他の適切なテストを使用して決定されてもよい。例えば、尺度、指数、評価、スコア、又は他の適切なテストは、その病気全体の進行又はその病気に関連する1つ以上の症状の進行に対応してもよい。1つの実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患に関連する1つ以上の症状の進行を遅らせること」は、既知の尺度、指数、評価など、又は、重症度を評価するための他の適切なテストによって決定される対象の病気の重症度の値(例えば、全体の重症度又は1つ以上の症状の重症度)が、有意に増加しない(例えば、少なくとも実質的に一定のままである)ことを意味する。1つの実施例において、「神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の進行を遅らせること」は、典型的な病気の進行に対応する値と比較して進行を評価するための、既知の尺度、指数、評価、スコアなど、又は、他の適切なテストに従って、対象者が重症度の値に到達する時間を増大させ(例えば、重症度を増大させる変化の速度を減少させ)、或いは、対象者がその値に到達することを妨げることを意味する。例えば、重症度の値に達するまでの時間が、典型的な病気の進行によって観察される時間より、少なくとも5%より長くかかるとき、その進行は遅延させられたと言われることができる。更に、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%の時間における増大が観測される。処置(治療)が、神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ以上の症状の進行を遅らせている時間は、ここにおいて記述されるような処置(治療)の期間と一致してもよい。1つの実施例において、処置(治療)は、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、又は少なくとも約6ヶ月の間、進行を遅らせる。処置(治療)は、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、又は少なくとも約10年間の間、進行を遅らせるかもしれない。処置(治療)は、患者の寿命に渡って、進行を遅らせるかもしれない。
1つの実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)すること」は、神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を経時的に逆行させることを意味する。ここにおいて使用されるように、「経時的な神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ以上の症状の進行を逆行させること」などは、その病気又はその病気の1つ以上の症状の進行を停止させること及びその重症度を軽減することを意味する。病気の進行及び重症度は、例えば、ここにおいて例として記述されるもののような既知の尺度、指数、評価、又はスコア、或いは、進行及び重症度を評価するためのもう1つの適切なテストを使用して、決定されてもよい。例えば、尺度、指数、評価、又はスコア、又は他の適切なテストは、その病気全体の進行及び重症度に、又は、その病気に関連する1つ以上の症状の進行及び重症度に対応してもよい。1つの実施例において、「経時的に神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ以上の症状の進行を逆行させること」は、既知の尺度、指数、評価、スコアなど、又は、重症度を評価するためのもう1つの適切なテストによって、決定される病気の重症度の値(例えば、全体の重症度又は1つ以上の症状の重症度)が、経時的に改善する(即ち、経時的に重症度における減少を示す)ことを意味する。処置(治療)が神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ以上の症状を逆行させる時間は、ここにおいて記述されるような処置(治療)の期間と一致してもよい。1つの実施例において、処置(治療)は、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、又は少なくとも約6ヶ月の間、進行を逆行させる。更なる実施例において、処置(治療)は、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、又は少なくとも約10年間の間、進行を逆行させる。処置(治療)は、患者の寿命にわたって進行を逆行させてもよい。
1つの実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状を処置(治療)すること」は、対象者における神経変性疾患の生化学的マ−カ−(例えば、一次的蓄積に起因する二次的生化学的変化又は蓄積代謝物の増大するレベル)を改善することを意味する。生化学的マ−カ−は、病気の活動性のシグナルであり、そして、経時的な病気の重症度及び進行の進行中の指標を提供してもよい。1つの実施例において、生化学的マ−カ−は、対照(コントロ−ル)値の観点から、改良されている。1つの実施例において、生化学的マ−カ−は、増大したリソソ−ム量、増大したスフィンゴ糖脂質(glycosphingolipid)(GSL)レベル、増大した微小管結合タンパク質1A/1B−軽鎖3−ホスファチジルエタノ−ルアミン・コンジュゲ−ト(microtubule−associated protein 1A/1B−light chain 3−phosphatidylethanolamine conjugate)(LC3−II)レベル、及び増大したアミロイド前駆体タンパク質C末端フラグメント(amyloid precursor protein C−terminal fragment)(APP−CTF)レベルから選択される。1つの実施例において、生化学的マ−カ−は、増加したリソソ−ム量であり、そして、処置(治療)は、対象者におけるリソソ−ム量を減少させる。1つの実施例において、生化学的マ−カ−は、増大したスフィンゴ糖脂質(GSL)レベルであり、処置(治療)は、対象者におけるGSLレベルを低下させる。1つの実施例において、生化学的マ−カ−は、増大した微小管結合タンパク質1A/1B−軽鎖3−ホスファチジルエタノ−ルアミン・コンジュゲ−ト(LC3−II)レベルであり、そして、その処置(治療)は、対象者におけるLC3−IIレベルを低減する。1つの実施例において、生化学的マ−カ−は、アミロイド前駆体タンパク質C末端フラグメント(APP−CTF)レベルであり、そして、その処置(治療)は、対象者におけるAPP−CTFレベルを低下させる。1つの実施例において、処置(治療)は、経時的に生化学的マ−カ−を改善する。例えば、1つの実施例において、経時的に生化学的マ−カ−を改善することは、処置(治療)が、典型的な病気の進行と比較して、対照値に向かって経時的に生化学的マ−カ−を改善すること、経時的に生化学的マ−カ−の進行を防ぐこと、及び/又は、経時的に生化学的マ−カ−の進行を遅らせることを意味する。処置(治療)が生化学的マ−カ−を改善する時間は、ここにおいて記述されるような処置(治療)の期間と一致してもよい。1つの実施例において、処置(治療)は、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、又は少なくとも約6ヶ月の間、生化学的マ−カ−を改善する。その処置(治療)は、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、又は少なくとも約10年間、生化学的マ−カ−を改善する。その処置(治療)は、患者の寿命にわたって生化学的マ−カ−を改善してもよい。
神経変性疾患の「症状」は、神経変性疾患に関連する如何なる臨床的又は実験室的発現を含み、そして、対象者が感じことができる又は観察することができるものに限定されない。ここにおいて記述されるような症状は、限られることなく、神経症状及び精神科的症状を含む。神経症状の例は、運動機能低下、硬直、震え又はジストニア、レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群(restless legs syndrome (RLS))、垂直及び水平の核上サッカ−ド(supranuclear saccade)/凝視麻痺のような中枢眼球運動障害及び、認知症のような神経心理学的障害を含む。1つの実施例において、神経学的症状は、RLSである。1つの実施例において、ここにおいて記述されるような神経変性疾患を処置(治療)することは、例えば、RLSの重症度を低減又はRLSを改善、RLSの進行を抑制する又は遅延させる、或いはRLSを除去することのような、対象者のRLSを処置(治療)することを含む。精神科的症状の例は、鬱病、行動障害又は精神病を含む。症状の発現は、出生から成人まで及ぶかもしれない。
例えば、2つ以上の時点での1つ以上の既知のテストを使用してその結果を比較することにより、経時的又は処置(治療)による神経変性疾患の進行をモニタ−することができる。統一パ−キンソンの評価尺度(Unified Parkinson’s Rating Scale)(UPRS)又は統一多システム萎縮評価尺度(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale)(UMSARS)又は他の適切なテストのような運動障害において使用される尺度だけでなく、例えば、運動失調のアセスメント及び評価のための尺度(スケ−ル・フォ−・ザ・アセスメント・アンド・レイティング・オブ・アトラクシア)(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)、脊髄小脳性運動失調症の機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)、国際協力失調症評価尺度(the International Cooperative Ataxia Rating Scale)(ICARS)、簡単な運動失調症評価尺度(the brief ataxia rating scale)(BARS)、修正障害評価尺度(the modified Disability Rating Scale)(mDRS)、EuroQol 5Q−5D−5L (EQ−5D−5L)、視覚的アナログスケ−ル(the visual analogue scale)(VAS)、ウェクスラ−成人知能検査−改訂版(Wechsler Adult Intelligence Scale−Revised)(WAIS−R)、児童向けウェクスラ−式知能検査−IV(Wechsler Intelligence Scale for Children−IV)(WISC−IV)、モントリオ−ル認知評価(Montreal Cognitive Assessment)(MoCA)、を使用して、病気の進行及び/又は重症度を評価できる。NPCのようなあるLSD(LSDs)に対して、例えば、臨床重症度スコア(clinical severity score)(CSS)及び年間重症度増分スコア(annual severity increment score)(ASIS) (Yanjaninら、「ニ−マン−ピック病C型における発症の年齢から独立したリニアな臨床的進行」 Am J Med Genet Part B 153B:132−140参照)、及び、修正6−ドメインNP−C障害尺度(modified 6−Domain NP−C disability Scale)(mDRS スコア)のような特定のスコアが、この数十年の間に開発され、そして、認証されてきた。例えば、NPC患者の重症度は、病気の種々のパラメ−タ(歩行、発作、眼球運動など)を評価し、そして、各パラメ−タに5段階のスコアを与えるような、CSSの割り当によって、定量化され得る。スコアが高いほど、重症度が高くなる。ASISは、CSSを患者の年齢で割ることによって計算された、CSSの年間の変化率を定量化する。これに関して、これらのテストにおけるあるスコアは、症候性神経変性疾患患者に特徴的であり、そして、病気の進行及び/又は重症度を証明する。
このようにして、例えば、「神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ以上の症状を処置(治療)すること」は、ここにおいて記述される、SARA、SCAFI、ICARS、BARS、mDRS、EQ−5D−5L、VAS、WAIS−R、WISC−IV、CSS、UPRS、UMSARS及び/又はMoCAスコア、のような改善された評価を、或いは、神経変性疾患の患者を特徴付けるのに適したもう1つのテストの結果を、達成することと、同等であるかもしれない。例えば、1つの実施例において、「神経変性疾患の重症度を軽減すること、又は、神経変性疾患の1つ又はそれ以上の既存の症状の重症度を軽減すること若しくは除去すること」は、SARA、SCAFI、ICARS、BARS、mDRS、EQ−5D−5L、VAS、WAIS−R、WISC−IV、CSS、UPRS、UMSARS、及び/又はMoCAスコア、或いは、症候性の対象者の特徴的な重症度の値から無症候性の対象者の特徴的な値までのスコア若しくは結果を改善するような、重症度を評価するため、もう1つの適切なテストの結果を改善することを意味する。もう1つの実施例において、「神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の進行を遅らせること」は、対象者のSARA、SCAFI、ICARS、BARS、mDRS、EQ−5D−5L、VAS、WAIS−R、WISC−IV、CSS、UPRS、UMSARS、及び/又は、MoCAスコア、或いは、進行を評価するためのもう1つの適切なテストの結果が、有意に増加しないことを意味する(例えば、少なくとも実質的に一定のままである)。更なる実施例において、「神経変性疾患又は神経変性疾患に関連する1つ又はそれ以上の症状の進行を遅らせること」は、対象者のSARA、SCAFI、ICARS、BARS、mDRS、EQ−5D−5L、VAS、WAIS−R、WISC−IV、CSS、UPRS、UMSARS、及び/又はMoCAスコア、或いは、進行を評価するためのもう1つの適切なテストの結果が、典型的な病気の進行の値と比較した値に到達することを防止すること、又は、到達するのにかかる時間を増大させることを意味する。もう1つの実施例において、「経時的に神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ又はそれ以上の症状の進行を逆行させること」は、対象者のSARA、SCAFI、mDRS、EQ−5D−5L、VAS、WAIS−R、WISC−IV、CSS及び/又はMoCAスコア、或いは、進行を評価するためのもう1つの適切なテストの結果が、経時的に改善すること(即ち、経時的に重症度の低下を示すこと)を意味する。
例えば、全体的な神経学的状態を評価するために、mDRS、4つのドメイン・スケ−ル(four−domain scale)(歩行(ambulation)、操作(manipulation)、言語(language)及び嚥下(swallowing))が適用されてもよい。小脳機能は、SARA、8項目臨床評価尺度(eight−item clinical rating scale)(歩行、立脚(stance)、座位(sitting)、発話、微細運動機能及び走性(taxis);0〜40の範囲、0は最良の神経学的状態で40は最悪である)、及び、8mウォ−キング時間(8−m−Walking−Time)(8MW;患者に、タ−ンを除いて1つのラインから別のラインに2倍速く歩行することによって実施される)、9ホ−ルペッグテスト(9−Hole−Peg−Test)(9HPT)及び10秒にわたる「PATA」の繰り返し回数を含む、SCAFIを使用して、評価されてもよい。主観的障害及び生活の質は、EQ−5D−5Lのアンケ−ト及びVASを用いて評価されてもよい。眼球運動機能を評価するために、3次元ビデオ眼球運動記録法(videooculography)(EyeSeeCam)は、サッカ−ドのピ−ク速度、円滑追跡の獲得、注視誘発眼振のピ−ク緩徐相速度(視線保持機能)、視覚運動性眼振のピ−ク緩徐相速度、及び水平前庭動眼反射の獲得(ゲイン)を測定するために使用されるかもしれない。認識状態、WAIS−R又はWISC−IV、及びMoCAを評価するために、注意と集中、実行機能、記憶、言語、視覚構築スキル、概念的思考、計算、及びオリエンテ−ションを含む異なる認識ドメインを、最大30点で、26のカットオフ・スコアを備えて、評価することは、使用されるかもしれない。当業者は、これら及び他のそのようなテストをどのように実施するかを知っているであろう。
レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群(RLS)は、典型的に安静時に及び不快又は奇妙な感覚を伴って、身体を動かそうとする圧倒的な衝動によって特徴付けられる神経学的状態である。最も一般的には、特に膝と足首の間の脚に影響するが、腕、胴体、又は幻肢のような他の領域にも影響を与えることができる。本開示の1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、神経変性疾患を有する対象者におけるRLSを処置(治療)するための方法において使用される。この方法は、治療効果のある量のロイシン、アセチル−ロイシン、又はそれらの薬学的に許容される塩を対象者に投与することを含む。1つの実施例において、RLSに罹患している対象者は、パ−キンソン症(例えば、ここにおいて記述されるもののような)、脊髄小脳失調症、ハンチントン病、遺伝性痙性対麻痺、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及びアルツハイマ−病から選択される神経変性疾患を有する。1つの実施例において、神経変性疾患は、前頭側頭型認知症、レビ−小体認知症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、及び大脳皮質基底核変性症から選択される。1つの実施例において、神経変性疾患は、運動ニュ−ロン疾患(例えば、ここにおいて記述されるようなもの)である。1つの実施例において、神経変性疾患は、パ−キンソン病である。1つの実施例において、神経変性疾患は、ド−パミン作動性セル喪失のようなド−パミン作動系機能障害に関連する。1つの実施例において、RLSは、神経変性疾患の症状であるか、そうでなければ、神経変性疾患に関連するか、又は神経変性疾患に関連するかもしれない。本開示の更なる実施例において、RLSが神経変性疾患として特徴付けられる場合、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、それを必要とする対象者においてRLSを処置(治療)するために使用される。
ここにおいて論じられるようにRLSを治療することは、RLSの1つ又はそれ以上の症状の重症度を軽減すること、或いは、低減、抑制、又は除去することを含んでよい。RLSの「症状」は、RLSに関連する如何なる臨床的又は実験室的発現を含む。RLSの症状は、必ずしもそうである必要はないが、しばしば、対象者が感じる又は観察できる疾患に関連する兆候である。RLSに関連する症状は、下肢感覚、睡眠時周期性下肢運動(PLMS)、不快な下肢感覚、動きたい衝動、落ち着きのなさ、睡眠障害、日中の過度の眠気等を、限られることなく含む。1つの実施例において、減少、抑制、又は除去されるRLSに関連する症状は、下肢感覚、睡眠時周期性下肢運動(PLMS)、不快な下肢感覚、動きたい衝動、落ち着きのなさ、日中の過度の眠気、及び睡眠障害の如何なる1つ又は組み合わせから選択される。
RLSの重症度又はRLSの1つ又はそれ以上の症状は、例えば、既知の尺度、指数、評価、又はスコアを使用して、評価されてもよい。例えば、尺度、指数、評価、スコア、又は他の適切なテストは、RLS全体の重症度又はRLSに関連する1つ又はそれ以上の症状の重症度に対応してもよい。1つの実施例において、ここにおいて記述される処置(治療)は、症状のある(症候性の)対象者の特徴的な値又は度合いから、症状のない(無症候性の)対象者に特徴的な値又は度合いまでのそのような評価を改善する。1つの実施例において、ここにおいて記述される処置(治療)は、ベ−スラインと比較されるそのような評価を改善する。そのベ−スラインは、例えば、RLSの治療を開始する前、又はロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩を用いたRLSの治療を開始する前の対象者の状態であってもよい。或いは、そのベ−スラインは、例えば、RLSの治療から一定期間後の対象者の状態であってもよい。
国際レストレスレッグズ症候群研究グル−プ評価尺度(International Restless Leg Syndrome Study Group Rating Scale)(「IRLS」)として知られる、広く報告されている評価尺度は、国際レストレスレッグズ症候群研究グル−プ(International Restless Legs Syndrome Study Group)(「IRLSSG」)(http://www.irlssg.org/)によって、開発された(Waltersら、レストレスレッグズ症候群に対する国際レストレスレッグズ症候群研究グル−プ評価尺度の検証(International Restless Legs Syndrome Study Group rating scale for restless legs syndrome) Sleep medicine. 2003 Apr 01;4(2):121−32)。IRLSは10項目の尺度で、スコアは0(症状なし)から40までである。スコア>30であると、非常に重度とみなされ、重度(スコア21〜30)、中程度(スコア11〜20)、及び スコア≦10で軽度である。この尺度の使用は、RLSを使用した臨床評価、研究、及び治験に対して、一般的である。1つの実施例において、ここにおいて記述されるようなロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩での処置(治療)は、ベ−スラインと比較して、対象者の国際レストレスレッグ症候群研究グル−プ評価尺度(「IRLS」)を減少させる。1つの実施例において、IRLSは、ベ−スラインと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%だけ低減される。1つの実施例において、IRLSは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%だけ低減させられる。
1つの実施例において、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、例えば、1日当たり約1.5gから約10gの範囲のような、1日あたり約500mgから約15gの範囲の又は1日あたり約500mgから約10gの範囲の用量で、投与されるかもしれず、オプションとして、固体経口又は液体経口経路によるかもしれない。アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、例えば、1日あたり1.5gから2gの用量で、朝と夕方の2回分の服用で3−4錠で、成人に処方されているタンガニル(Tanganil)(登録商標)の用量に従う投与量で投与されるかもしれない。
1つのエナンチオマ−が投与されるならば、その用量は、それに応じて減少するかもしれない。例えば、アセチル−L−ロイシン(acetyl−L−leucine)のみを、又はアセチル−D−ロイシン(acetyl−D−leucine)のみを投与するならば、投与量は1日当たり約250mgから約15gの範囲、1日当たり約250mgから約10gの範囲、又は、1日当たり約0.75gから約5gのような1日当たり約250mgから約5gの範囲であるかもしれない。
1つの実施例において、投与量は、1日あたり約1gから約15g、1日あたり約1gから約10g、又は1日あたり約1.5gから約7gの範囲である。それは、1日あたり約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14gから約15gであるかもしれない。それは1日当たり約2、3、4、5、6、7、8又は9gから約10gであるかもしれない。それは1日あたり約1.5gを超えるが、1日あたり約15、14、13、12、11、10、9、8、7、6又は5g未満であるかもしれない。1つの実施例において、投与量は1日あたり約4gから約6gの範囲である。1つの実施例において、投与量は1日あたり約4gから約5gの範囲である。1つの実施例において、投与量は1日あたり約4.5gである。1つの実施例において、投与量は1日あたり約5gである。1つの実施例において、これらの用量は、固形の経口剤形、特に錠剤で投与される。もう1つの実施例において、これらの投与量は、そのラセミ形態である場合に、アセチル−ロイシンに対するものである。エナンチオマ−過剰が存在する場合、アセチル−ロイシンに対する投与量は、ここに列挙されたものよりも低く、例えば、約50%より低いかもしれない。このように、半減されたときの上述の投与量の範囲はまた、本開示によって明示的に包含される。
1つの実施例において、1日の総投与量は、複数回投与に分散させることができ、即ち、投与は1日の総投与量を達成するために1日に2回以上行われてもよい。一例として、アセチル−ロイシンの1日の総投与量を提供するのに必要な錠剤の数は、2回の投与(例えば、朝及び晩)、又は3回の投与(例えば、朝、昼、及び晩)に分けられてもよい。各用量は、食物と共に又は食物なしで適切に投与されるかもしれない。例えば、アセチル−ロイシンは、食事の約1又は約2時間前、例えば食事の少なくとも約20分前、少なくとも約30分前、少なくとも約40分前、又は食事の少なくとも約1時間前などに投与されるかもしれず、或いは、食事後約1時間、約2時間、又は約3時間、例えば、食事後、少なくとも約20分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、又は少なくとも約2.5時間待つように投与されるかもしれない。例えば、4.5gのアセチル−DL−ロイシンの総一日量を、朝食前、朝食中、又は朝食後に、3つのタンガニル(Tanganil)(登録商標)(又は同等のもの)錠剤として、更に、昼食前、昼食中、又は昼食後に、3錠として、そして、夕食前、夕食中、又は夕食後に、更に、3錠として、投与されるかもしれない。
本開示によるロイシン又はアセチル−ロイシンの投与は、対象者が神経変性疾患の遺伝的、生化学的、又は他の類似の同定可能なマ−カ−を有することが見出される前又は後に開始されるかもしれないが、前者の場合は、対象者が神経変性疾患を持っている疑いがある又は神経変性疾患を持つ恐れがあるときである。対象者が神経変性疾患の遺伝的、生化学的、又は他の類似の同定可能なマ−カ−を有することが見出された時点又はその前後で投与が開始されるかもしれない。同様に、対象者が、神経変性疾患の遺伝的、生化学的、又は他の類似の同定可能なマ−カ−を有することが見出される前、見出されたとき又はその前後、又は見出された後のように、神経変性疾患を有すると対象者が診断される前、診断されたとき又はその前後、又は診断された後に、投与は、開始されるかもしれない。ロイシン又はアセチル−ロイシンの投与は、対象者が症候性又は無症候性であるときに開始されるかもしれない。特に、本開示によるロイシン又はアセチル−ロイシンによる処置(治療)の利点の1つは、対象者が神経変性疾患の症状を示す前(遺伝的及び/又は生化学的マ−カ−以外、即ち、対象者は無症候性である)又は対象者が病気の顕著な特徴と考慮される1又はそれ以上の症状を示す前であるが、対象者が遺伝的及び/又は生化学的マ−カ−を有することが判明した後の早い時期にアセチル−ロイシンの投与を開始することがあるかもしれないことである。ここにおいて記述されるように、処置(治療)は、神経変性疾患又は神経変性疾患に関連する1つ以上の症状の発症を遅らせるかもしれない。処置(治療)はまた、ここにおいて記述されるような期間継続されるかもしれない。
ここにおいて論じられるように、本開示によるロイシン又はアセチル−ロイシンによる処置(治療)の利点は、例えば、典型的な病気の進行と比較して対象者において神経変性疾患又は1以上の神経変性疾患の症状の進行を遅延する又は逆行させることさえするために、ロイシン又はアセチル−ロイシンを長期間にわたって投与してもよいことである。処置(治療)期間は、例えば、約7日以上、約2週間以上、約3週間以上、約1ヶ月以上、約6週間以上、約7週間以上、又は約2ヶ月以上であるかもしれない。1つの実施例において、それは、約3ヶ月以上、約4ヶ月以上、約5ヶ月以上、又は約6ヶ月以上である。処置(治療)期間は、約1年以上、約2年以上、約4年以上、約5年以上、又は約10年以上であるかもしれない。処置(治療)期間は患者の寿命であるかもしれない。
剤形、投与量、投与スケジュ−ル及び処置(治療)期間のありとあらゆる組み合わせが想定され、本発明に含まれる。1つの実施例において、用量は、約2ヶ月以上の処置(治療)期間で、1日に1回、2回、又は3回の投与にわたって摂取される、1日あたり約4gから約10gである。もう1つの実施例において、用量は、約6ヶ月以上の処置(治療)期間にわたって、1日に1回、2回、又は3回の投与にわたって摂取される、1日当たり4gを超え5g以下である。剤形は、固形の経口剤形、特に錠剤であるかもしれない。
ここに記載の医薬組成物は、対象者において神経変性疾患を処置(治療)するための単剤療法(例えば、活性剤単独の使用)として使用されるかもしれない。或いは、医薬組成物は、例えば対象者における神経変性疾患を処置(治療)するための、他の既知の療法の補助として、又はそれと組み合わせて使用されてもよい。
神経変性疾患は、必ずしもそうである必要はないが、リソソ−ム機能障害(例えば、リソソ−ム蓄積欠陥)と関連しているかもしれない。本開示によれば、リソソ−ム機能障害に関連しない神経変性疾患は、限られることなく、レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群(Restless Legs Syndrome (RLS))、アレキサンダ−病(Alexander’s disease)、アルパ−病(Alper’s disease)、脳性麻痺(cerebral palsy)、コッカイン症候群(Cockayne syndrome)、大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、HIV 関連神経認知症(HIV−associated dementia)、ケネディ病(Kennedy’s disease)、神経ボレリア症(neuroborreliosis)、原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis)、レフサム病(Refsum’s disease)、シルダ−病(Schilder’s disease)、悪性貧血に続発する脊髄の亜急性連合変性症(subacute combined degeneration of spinal cord secondary to pernicious anaemia)、近位筋優位遺伝性運動感覚ニュ−ロパチ−(hereditary motor and sensory neuropathy with proximal dominance)、ハリネズミふらつき症候群(Wobbly Hedgehog Syndrome)(WHS)、進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy)(デュシェンヌ−アラン型筋萎縮症(Duchenne−Aran muscular atrophy))、進行性球麻痺(progressive bulbar palsy)、仮性球麻痺(pseudobulbar palsy)、HIV関連神経認知障害(HIV−associated neurocognitive disorders)(HAND)、血管性パ−キンソン症候群(Vascular Parkinsonism)、下半身パ−キンソン病(lower body Parkinson’s syndrome)、小脳性下眼瞼向き眼振(cerebellar downbeat nystagmus)、及び小脳性運動失調症(cerebellar ataxia)を含み、ここで、それは、脊髄小脳失調症(SCA)4(Spinocerebellar ataxia (SCA) 4)、脊髄小脳失調症(SCA)5(Spinocerebellar ataxia (SCA) 5)(リンカ−ン運動失調(Lincoln’s Ataxia))、脊髄小脳失調症(SCA)8(Spinocerebellar ataxia (SCA) 8)、脊髄小脳失調症(SCA)10(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 10)、脊髄小脳失調症(SCA)11(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 11)、脊髄小脳失調症(SCA)12(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 12)、脊髄小脳失調症(SCA)13(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 13)、脊髄小脳失調症(SCA)14(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 14)、脊髄小脳失調症(SCA)15/16(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 15/16)、脊髄小脳失調症(SCA)18(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 18)(運動失調を伴う感覚性/運動性ニュ−ロパチ−(sensory/motor neuropathy with ataxia))、脊髄小脳失調症(SCA)19/22(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 19/22)、脊髄小脳失調症(SCA)20(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 20)、脊髄小脳失調症(SCA)21(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 21)、脊髄小脳失調症(SCA)23(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 23)、脊髄小脳失調症(SCA)25(Spinocerebellar Ataxia (SCA)25)、脊髄小脳失調症(SCA)26(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 26)、脊髄小脳失調症(SCA)27(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 27)、脊髄小脳失調症(SCA)29(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 29)、脊髄小脳失調症(SCA)30(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 30)、脊髄小脳失調症(SCA)31(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 31)、脊髄小脳失調症(SCA)32(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 32)、脊髄小脳失調症(SCA)35(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 35)、脊髄小脳失調症(SCA)36(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 36)、発作性運動失調症(EA)1(Episodic Ataxia (EA) 1)、発作性運動失調症(EA)2(Episodic Ataxia (EA) 2)、発作性運動失調症(EA)3(Episodic Ataxia (EA) 3)、発作性運動失調症(EA)4(Episodic Ataxia (EA) 4)、発作性運動失調症(EA)5(Episodic Ataxia (EA) 5)、発作性運動失調症(EA)6(Episodic Ataxia (EA) 6)、発作性運動失調症(EA)7(Episodic Ataxia (EA) 7)、脊髄小脳失調症(SCA)28(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 28)、脊髄小脳失調症(SCA)24(Spinocerebellar Ataxia (SCA) 24)(脊髄小脳失調症常染色体劣性4型(spinocerebellar ataxia autosomal recessive type 4)(SCAR4); サッカ−ディック・イントル−ジョンを伴う脊髄小脳失調症(Spinocerebellar ataxia with saccadic intrusions))、脊髄癆(Tabes dorsalis)、眼球運動失行を伴う運動失調症1型(Ataxia with Oculomotor Apraxia Type 1)(AOA1)、眼球運動失行を伴う運動失調症2型(Ataxia with Oculomotor Apraxia Type 2)(AOA2)、眼球運動失行を伴う運動失調症4型(Ataxia with Oculomotor Apraxia Type 4) (AOA4)、脊髄小脳失調症常染色体劣性10型(spinocerebellar ataxia autosomal recessive type 10)(SCAR 10)、ミトコンドリア劣性運動失調症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome)(MIRAS)、ミオクロ−ヌスてんかん−ミオパチ−−感覚性運動失調(Myclonic Epilepsy Myopathy Sensory Ataxia)(MEMSA)、感覚性運動失調ニュ−ロパシ−構音障害眼球麻痺(Sensory Ataxic Neuropathy Dysarthria Opthalmoparesis)(SANDO)、幼児発症脊髄小脳失調症(infantile−onset spinocerebellar ataxia)、遺伝性痙性対麻痺7(Hereditary Spastic Paraplegia 7)(HSP SPG7遺伝子(HSP SPG7 gene))、ミトコンドリア・ミオパチ−(mitochondrial myopathy)、脳障害(encephalopathy)、ラクトアシド−シス(lactacidosis)、卒中症候群(stroke syndrome)(MELAS)、赤色ぼろ線維・ミオクロ−ヌスてんかん症候群(myoclonic epilepsy with ragged red fibers)(MERRF)、神経性筋力低下(neurogenic muscle weakness)、運動失調(ataxia)、及び網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)(NARP)を含み、更に、キ−ンズ・セイア−症候群(Kearns−Sayre)(KSS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(Fragile X tremor/ataxia syndrome) (FXTAS)、ア−ツ症候群(Arts Syndrome)、X連鎖脊髄小脳失調症1(X−linked Spinocerebellar Ataxia 1)、X連鎖脊髄小脳失調症2(X−linked Spinocerebellar Ataxia 2)、X連鎖脊髄小脳失調症3(X−linked Spinocerebellar Ataxia 3)、X連鎖脊髄小脳失調症4(X−linked Spinocerebellar Ataxia 4)又はX連鎖脊髄小脳失調症5(X−linked Spinocerebellar Ataxia 5)を含み、クリスチャンソン型X連鎖症候性精発達遅滞(Christianson type X−linked syndromic mental retardation)、X連鎖鉄芽球性貧血(X−linked sideroblastic anemia)、特発性遅発性小脳性運動失調症(Idiopathic Late−Onset Cerebellar Ataxia)、原因不明の散発性成人発症性失調症(Sporadic Adult−Onset Ataxia of Unknown Etiology) (SAOA)、及び小脳性運動失調ニュ−ロパチ−前庭反射消失症候群(cerebellar ataxia, neuropathy, vestibular areflexia syndrome)(CANVAS)を含む。1つの実施例において、リソソ−ム機能障害に関連しない神経変性疾患は、大脳皮質基底核変性症、SCA28、及びAOA4である。
上述のように、多くの神経変性疾患はリソソ−ム機能障害と関連しており、これには神経変性リソソ−ム蓄積症(LSD(LSDs))及びリソソ−ム欠損との連鎖が示唆されてきた他の多くの神経変性疾患の両方が含まれる。例えば、Bomanら、Journal of Parkinson’s Disease、vol. 6, no. 2, pp. 307−315(May 2016);Makiokaら, Neuroreport, 23(5):270−276 (March 2012); Orrら, Alzheimers Research & Therapy, 5:53 (Oct. 2013); Barlowら, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA, 18;97(2):871−6 (2000)を参照。
1つの実施例において、神経変性疾患は、リソソ−ム機能障害(例えば、リソソ−ム蓄積欠陥)に関連する。本開示によれば、リソソ−ム機能障害に関連する神経変性疾患は、限られることなく、アルコ−ル中毒、アルツハイマ−病、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)(ALS)、カナバン病、前頭側頭葉変性、ハンチントン病、レビ−小体型痴呆、多系統萎縮症(MSA−P/MSA−C)、多発性硬化症、ナルコレプシ−、パ−キンソン病、スミス・レムリ・オピッツ症候群(Smith Lemli Opitz Syndrome)(SLOS)(先天的コレステロ−ル生成異常(inborn error of cholesterol synthesis))、タンジ−ル病(Tangier disease)、ペリツェウス・メルツバッハ−病、ピック病、17番染色体に連鎖するパ−キンソン症及び前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17)、スクレイピ−(scrapie)を含むプリオン病、伝達性ミンク脳症(transmissible mink encephalopathy)、慢性消耗病(chronic wasting disease)、ウシ海綿状脳症(BSE)、ネコ海綿状脳症(feline spongiform encephalopathy)、外来性有蹄類脳症(exotic ungulate encephalopathy)、クル(kuru)、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラ−・シャインカ−症候群(Gerstmann−Straeussler−Scheinker syndrome)、及び致死性家族性不眠症(fatal familial insomnia)、進行性核上性麻痺、脊髄性筋萎縮症、神経変性LSD、及び、脊髄小脳失調症(SCA)1、脊髄小脳失調症(SCA)2、脊髄小脳失調症(SCA)3(マシャド・ジョセフ病)、脊髄小脳失調症(SCA)6、脊髄小脳失調症(SCA)7、脊髄小脳失調症(SCA)17、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral−pallidoluysian atrophy)、シャルルボア・サガネ−の 常染色体劣性痙攣性運動失調症(Autosomal Recessive Spastic Ataxia of Charlevoix−Saguenay)(ARSACS)、常染色体劣性小脳性運動失調症1型(autosomal recessive cerebellar ataxia type 1)(ボ−スの劣性運動失調症(Recessive Ataxia of Beauce)(RAB)、SYNE−1変異株)、常染色体劣性小脳性運動失調症2型(autosomal recessive cerebellar ataxia type 2)(脊髄小脳失調症常染色体劣性9(spinocerebellar ataxia autosomal recessive 9)、SCAR9)、ビタミンE欠乏症を伴う運動失調(ataxia with vitamin E deficiency)(AVED)、毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangiectasia)(ルイス・バ−病(Louis Barr disease))、フリ−ドライヒ運動失調症(Freidreich’s ataxia)(FRDA)、及び補酵素Q10欠乏を伴う運動失調症(ataxia with coenzyme Q10 deficiency)を含む脊髄小脳失調症を含む。1つの実施例において、リソソ−ム機能障害に関連する神経変性疾患は、アルコ−ル依存症、アルツハイマ−病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、カナバン病、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA−P/MSA−C)、多発性硬化症、ナルコレプシ−、パ−キンソン病、スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)(先天的コレステロ−ル生成異常)、タンジ−ル病、ペリツェウス・メルツバッハ−病、ピック病、前頭側頭型認知症、パ−キンソン症を伴う前頭側頭型認知症、プリオン病、進行性核上性麻痺、及び脊髄性筋萎縮症から選択される。1つの実施例において、リソソ−ム機能障害に関連する神経変性疾患は、ALS、MSA−P、MSA−C、パ−キンソン症を伴う前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、SCA 28、SCA 1、及びアルツハイマ−病から選択される。
神経変性LSDは、細胞機能障害及び神経変性という結果となる未消化又は部分消化高分子の蓄積によって特徴付けられるが、これは、しばしば身体的障害及び/又は精神的な悪化へと導く進行性である。それらは、人生の最初の数年間に現れる傾向があり、重度の進行は頻繁な入院という結果になる。未処置(未治療)(untreated)のままにしておくと、患者はしばしば10代半ばで死亡する。成人発症患者もまた記述されてきた。本開示によれば、神経変性LSD(LSDs)は、限られることなく、神経セロイドリポフスチン症(1−10型)、ゴ−シェ病2/3型(神経障害性)、クラッベ病、マルチプルスルファタ−ゼ欠損症、ムコリピド−シスI、ムコリピド−シスII、及びムコリピド−シスIVを含むムコリピド−シス、ニ−マン−ピック病A型、ニ−マン−ピック病B型、ニ−マン−ピック病C型、幼児発症型ポンペ病、遅発型ポンペ病、テイ・サックス病、サンドホフ病、ファ−バ−病、ガラクトシアリド−シス(galactosialidosis)、ファブリ−病、シンドラ−病、GM1ガングリオシド−シス、AB変異型GM2ガングリオシド−シス、異染性白質ジストロフィ−(MLD)、MPS IH、MPS IS、MPS IH−S、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIIC、MPS IIID、及びMPS VIIを含むムコ多糖症、βマンノシド−シス、アスパルチルグルコサミン尿症、フコシド−シス(fucosidosis)、サラ病(Salla disease)、乳児性遊離シアル酸蓄積症(infantile free sialic acid storage disease)(ISSD)、及びダノン病(Danon disease)を含む。1つの実施例において、神経変性LSDは、NPC、NPA、ムコリピド−シスII、MPS IIIB、アスパルチルグルコサミン尿症、ムコリピド−シスIIIA、MPS VII、サンドホフ病、テイ・サックス病、テイ・サックス病のAB変異体、及びGM1ガングリオシド−シスから選択される。1つの実施例において、神経変性疾患は、神経変性LSDから選択されない。
1つの実施例において、神経変性疾患は、運動ニュ−ロン病(Motor Neuron Disease)である。1つの実施例において、運動ニュ−ロン病は、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、進行性球麻痺、仮性球麻痺、ALS、アルツハイマ−病、カナバン病、前頭側頭葉変性、ハンチントン病、多発性硬化症、ナルコレプシ−、パ−キンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ−病、及び脊髄性筋萎縮症から選択される。
これまで論じてきたように、本開示の1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、ここにおいて記述される運動ニュ−ロン病の如何なるものをも、限られることなく、含む運動ニュ−ロン病を有する対象者において、レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群(RLS)を治療するために使用される。
1つの実施例において、神経変性疾患(neurodegenerative disease)は小脳性運動失調症である。1つの実施例において、神経変性疾患はニ−マン−ピック病である。1つの実施例において、神経変性疾患はニ−マン−ピック病C型である。一実施形態において、神経変性疾患はニ−マン−ピック病A型である。1つの実施例において、神経変性疾患はパ−キンソン症である。1つの実施例において、神経変性疾患は神経障害性ゴ−シェ病である。1つの実施例において、神経変性疾患はテイ・サックス病である。1つの実施例において、神経変性疾患はサンドホフ病である。1つの実施例において、神経変性疾患はファブリ−病である。1つの実施例において、神経変性疾患はGM1ガングリオシド−シスである。1つの実施例において、神経変性疾患はルイ−バ−症候群である。1つの実施例において、神経変性疾患はアルツハイマ−病である。1つの実施例において、神経変性疾患はパ−キンソン病である。1つの実施例において、神経変性疾患は多系統萎縮症である。1つの実施例において、神経変性疾患は多系統萎縮症C型(MSA−C)である。1つの実施例において、神経変性疾患は多系統萎縮症P型(MSA−P)である。1つの実施例において、神経変性疾患は前頭側頭型認知症である。1つの実施例において、神経変性疾患はパ−キンソン症を伴う前頭側頭型認知症である。1つの実施例において、神経変性疾患は下半身パ−キンソン症候群である。1つの実施例において、神経変性疾患は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。1つの実施例において、神経変性疾患は大脳皮質基底核変性症候群である。1つの実施例において、神経変性疾患は進行性核上性麻痺である。1つの実施例において、神経変性疾患は小脳性下眼瞼向き眼振である。1つの実施例において、神経変性疾患はSCA28である。1つの実施例において、神経変性疾患は毛細血管拡張性運動失調症である。1つの実施例において、神経変性疾患はSCA 1である。1つの実施例において、神経変性疾患はAOA4である。
パ−キンソン病(PD)の主な症状は、筋固縮、振戦、及び動作緩慢を含む。これらの症状が広まる他の病気もある。これらの病気、及びPD自体は、総称パ−キンソン症(Parkinsonism)下に該当する。PDは、一次性パ−キンソン症(Primary Parkinsonism)と呼ばれ得る。パ−キンソン症の他の例は、多系統萎縮症;進行性核上性麻痺;正常圧水頭症(Normal pressure hydrocephalus);及び血管性又は動脈硬化性パ−キンソン症候群(Vascular or arteriosclerotic parkinsonism)を含む。パ−キンソン症として分類され得るが、PDではないこれらの疾患はまた、「パ−キンソンプラス症候群」と呼ばれ得る。PD患者とは異なり、パ−キンソンプラス症候群の個人は、Lド−パ(L−Dopa)に反応しない。ここにおいて使用される「パ−キンソン症(parkinsonism)」という用語は、主な症状が、安静時振戦、硬直(stiffness)、運動の鈍化、及び姿勢反射障害(postural instability)である運動症候群を指してもよい。パ−キンソン症候群は、その起源に応じて4つのサブタイプに分類され得るが、それらは、一次性又は特発性;二次性又は後天性;遺伝性パ−キンソン症;及びパ−キンソンプラス症候群又は多系統変性症(multiple system degeneration)である。
1つの実施例において、パ−キンソン症は、パ−キンソンプラス症候群又は多系統変性症である。
1つの実施例において、パ−キンソン症は、血管性(動脈硬化性)パ−キンソン症候群、下半身パ−キンソン症、パ−キンソン症状を優位とする多系統萎縮症(MSA−P)、小脳機能を有する多系統萎縮症(Multiple System Atrophy with cerebellar features)(MSA−C;散在性オリ−ブ橋小脳萎縮症(Sporadic olivopontocerebellar atrophy)(OPCA))、シャイ・ドレ−ガ−症候群(Shy−Drager syndrome)、進行性核上性麻痺(スティ−ル・リチャ−ドソン・オルゼウスキ−症候群(Steele−Richardson−Olszewski syndrome))、レビ−小体認知症、ピック病、又は、17番染色体に連鎖するパ−キン症及び前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17)である。
これまで論じたように、本開示の1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、ここにおいて記述されるパ−キンソン症の如何なるものをも限られることなく含む、パ−キンソン症を有する対象者において、レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群(RLS)を処置(治療)するために使用される。
ニ−マンピック病は、常染色体劣性LSD(autosomal recessive LSDs)の異種群である。共通する細胞の特徴は、肝脾腫大((hepato)splenomegaly)だけでなく、単核食細胞及び実質組織における異常なスフィンゴミエリン(SM)蓄積を含む。3つのニ−マン−ピック病の主なサブグル−プ(A〜C)から、NPC(以前はNPC及びNPDとして分類され、現在は単一の病気(疾患)であると認識されている)は、後期エンドソ−ム/リソソ−ム区画(late endosome/lysosomal compartments)における、非エステル化コレステロ−ルの異常な細胞内コレステロ−ル輸送誘導性蓄積によって引き起こされる致命的な内臓神経LSDとして分類される。CNSの外側で、NPCの細胞特性は、後期エンドソ−ム/リソソ−ム区画内の他の脂質(例えばGSL(GSLs))及び非エステル化コレステロ−ルの異常蓄積を含む。逆に、CNS内ではコレステロ−ルの正味の上昇はないが(但し、変化した分布はある)、非常に上昇したGSLのレベルがある。進行性神経変性は、小脳におけるGABA作動性プルキンエニュ−ロン(GABAergic Purkinje neurons)の連続的な変性によって特に特徴付けられるが、これは小脳性運動失調症の発症及び進行、並びにNPCの経過中に見られる神経機能障害の他の側面と並行する。遺伝学的研究は、NPC疾患がNpc1又はNpc2遺伝子のいずれかにおける突然変異によって引き起こされることを示した。これら2つの遺伝子間の正確な機構的関連性は未知のままであり、そして、これらのタンパク質の機能的役割は謎のままである。NPC1は、後期エンドソ−ム/リソソ−ムの限界膜の多膜貫通タンパク質をコ−ド化するのに対して、NPC2はリソソ−ムの可溶性コレステロ−ル結合タンパク質である。NPC1が不活性化されると、スフィンゴシンは蓄積される最初の脂質であり、NPC1がリソソ−ムからのスフィンゴシンの輸送において役割を果たすことを示唆するが、ここで、それは通常、スフィンゴ脂質異化の一部として生成される。上昇したスフィンゴシンは、次に酸性蓄積庫内へのカルシウム流入における欠陥を引き起こし、この区画からのカルシウム放出が大幅に減少するという結果となる。これは、カルシウム依存性プロセスである、後期エンドソ−ム−リソソ−ム融合を防ぎ、そして、後期エンドサイト−シス経路を通過する積荷である脂質(コレステロ−ル、スフィンゴミエリン及びスフィンゴ糖脂質)の二次的な蓄積を引き起こす。NPC1機能を阻害することの他の二次的な結果には、不完全なエンドサイト−シス及び自食作用胞を除去できないことが含まれる。NPC1/NPC2細胞経路は、後期エンドソ−ムにおけるそれらの生存を促進するために病原性ミコバクテリアによって標的とされることが示されてきた。
NPCマウス・モデルは、例えばアルツハイマ−病(AD)と多くの病理学的特徴を共有する。微小管結合タンパク質1A/1B−軽鎖3−ホスファチジルエタノ−ルアミン・コンジュゲ−ト(LC 3−II)レベルは、NPCマウスにおいて上昇することが以前に報告されていた。LC3−IIは、自食胞(オ−トファゴソ−ム)形成(autophagosome formation)のマ−カ−であり、そしてLC3−IIの増加したレベルは、自食作用胞(autophagic vacuoles)のクリアランス障害を反映し得る。自食胞(オ−トファゴソ−ム)は形成されるが、除去されない。自食作用は、ADにおいて損なわれ、そしてAD脳は、増加したレベルのLC3−IIを示す。更に、アミロイド前駆体タンパク質(APP)は、そのタンパク質分解がβアミロイド(Aβ)を生成する前駆体分子である。Aβプラ−クは、AD脳の特徴であり、そして、疾患病状における原因因子であることが提案されてきた。アミロイド前駆体タンパク質C末端フラグメント(Amyloid precursor protein C−terminal fragments)(APP−CTFs)は、APPからAβへのタンパク質分解における中間体であるところ、AD脳内に蓄積し、かつまた、NPC1マウスの脳内に漸進的に蓄積する。
テイ・サックス病は、β−ヘキソサミニダ−ゼのAアイソザイムの欠乏のために、特にCNS組織において特徴付けられる、脂質代謝の致命的な遺伝性疾患である。β−ヘキソサミニダ−ゼのαサブユニットをコ−ド化するHEXA遺伝子における突然変異は、Aアイソザイム欠乏症を引き起こす。テイ・サックス病は、欠陥のあるGM2ガングリオシド分解によって特徴付けられる、GM2ガングリオシド−シスのような一群の障害のプロトタイプである。GM2ガングリオシド(モノシアリル化ガングリオシド2(monosialylated ganglioside 2))は、胎児期にすでに始まっているニュ−ロンに蓄積する。
サンドホフ病は、β−ヘキソサミニダ−ゼのA及びB(塩基性)アイソザイムの両方の欠乏から生じる。β−ヘキソサミニダ−ゼのβサブユニットをコ−ド化するHEXB遺伝子における突然変異は、Bアイソザイム欠乏症を引き起こす。
GM1ガングリオシド−シスは、β−ガラクトシダ−ゼの欠乏により引き起こされ、それは、GM1ガングリオシド(モノシアル化ガングリオシド1(monosialylated ganglioside 1))のリソソ−ム蓄積という結果となる。
ファブリ−病は、α−ガラクトシダ−ゼの欠乏により引き起こされ、それは、セラミドトリヘキソシドのリソソ−ム内蓄積という結果となる。
1つの実施例において、神経変性疾患は小脳性運動失調症ではない。1つの実施例において、神経変性疾患はニ−マン−ピック病ではない。1つの実施例において、神経変性疾患はニ−マン−ピックC型疾患ではない。1つの実施例において、神経変性疾患は、小脳性運動失調症又はニ−マン−ピック病(例えば、ニ−マン−ピック病C型)ではない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、ニ−マンピック病(例えば、ニ−マン−ピック・タイプC又はタイプA)又はムコリピド−シスII型に関連する、体重減少、歩行悪化、及び/又は運動機能低下を処置(治療)する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、ニ−マン−ピック病(例えば、ニ−マン−ピック・タイプC又はA)又はムコリピド−シスII型に関連する、体重減少、歩行悪化、及び/又は運動機能低下の進行を、遅延又は逆行するかもしれず、除去するかもしれず、その重症度を低下させるかもしれず、又は、その発症を遅らせるかもしれない。1つの実施例において、体重減少、歩行悪化、及び/又は運動機能低下は、ニ−マン−ピック・タイプA又はムコリピド−シスII型に関連する。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、サンドホフ病に関連する、歩行悪化、運動機能低下、及び/又は低下した運動性を処置(治療)する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、サンドホフ病に関連する、歩行悪化、運動機能低下、及び/又は低下した運動性の進行を遅らせる又は逆行させる、それを除去又はその重症度を低下させる、又は、その発症を遅らせるかもしれない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、テイ・サックス病に関連する、低下協調性、振戦、低下運動性、認知機能障害、及び/又は歩行悪化を処置(治療)する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、テイ・サックス病に関連する、低下協調性、振戦、低下運動性、認識機能障害、及び/又は歩行悪化の進行を遅らせる又は逆行させる、その重症度を低下させる若しくは除去する、又はその発症を遅らせるかもしれない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連する、発話の悪化(例えば、発話の流暢性及び/又は声の変調)、歩行の悪化、低下運動性、嚥下機能の低下、及び/又は麻痺を治療する例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、ALSに関連する、発話の悪化(例えば、発話の流暢性及び/又は声の変調)、歩行の悪化、運動性の低下、嚥下機能の低下、及び/又は麻痺の進行を遅延させる若しくは逆行させる、又は、それを除去する若しくはその重症度を低下させる、或いは、その発症を遅延させるかもしれない。もう1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、ALSに関連した睡眠の質の低下を治療する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、ALSに関連する睡眠の質の低下の進行を遅延させる若しくは逆行させる、又は、それを除去する若しくはその重症度を低下させる、又はその発症を遅らせるかもしれない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、多系統萎縮症小脳型(MSA−C)に関連する、発話の悪化、歩行の悪化、及び/又は転倒傾向の増加を治療する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、MSA−Cに関連する、発話の悪化、歩行の悪化、及び/又は転倒傾向の増加の進行を、遅延させる若しくは逆行させる、又は、それを除去する若しくはその重症度を低下させる、又は、その発症を遅延させるかもしれない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、パ−キンソン症を伴う前頭側頭型認知症に関連する、歩行の悪化、転倒傾向の増加、及び/又は発話の悪化を、治療する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、パ−キンソン症を伴う前頭側頭型認知症に関連する、歩行の悪化、転倒傾向の増加、及び/又は発話の悪化の進行を、遅延させる若しくは逆行させる、又は、それを除去する若しくはその重症度を低下させる、又は、その発症を遅延させるかもしれない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、大脳皮質基底核変性症候群に関連する、転倒傾向の増加、及び/又は歩行の悪化、を治療する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、大脳皮質基底核変性症候群に関連する、転倒傾向の増加、及び/又は歩行の悪化の進行を、遅延させる若しくは逆行させる、又は、それを除去する若しくはその重症度を低下させる、又は、その発症を遅延させるかもしれない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、進行性核上性麻痺に関連する、歩行の悪化を治療する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、進行性核上性麻痺に伴う歩行悪化の進行を、遅延させる若しくは逆行させる、又は、それを除去する若しくはその重症度を低下させる、又は、その発症を遅延させるかもしれない。
1つの実施例において、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、小脳性下眼瞼向き眼振に関連する、動揺視、空間定位の悪化、視力の悪化、及び/又は姿勢動揺の増加を治療する。例えば、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩は、小脳性下眼瞼向き眼振に関連する、動揺視、空間定位の悪化、視力の悪化、及び/又は姿勢動揺の増加の進行を、遅延させる若しくは逆行させる、又は、それを除去する若しくはその重症度を低下させる、又は、その発症を遅延させるかもしれない。
それを必要とする対象者において、神経変性疾患又は神経変性疾患の1つ以上の症状を治療する方法であって、治療有効量のロイシン、アセチル−ロイシン、又はその製薬上許容される塩を、その対象者に投与することを含む方法も提供される。
薬剤の「治療有効量」は、対象者に投与したときに、所望の効果を生じるのに必要な薬剤の量であり、本開示に対して、治療的及び/又は予防的であり得る。用量は、使用されるロイシン又はアセチル−ロイシンの特定の形態;処置(治療)される患者の年齢、体重及び状態;病気の種類;投与経路;及び、必要な養生法のような様々なパラメ−タに従って決定されてもよい。医師は、如何なる特定の患者に対して、必要な投与経路及び投与量を決定することができるであろう。例えば、1日の用量は、体重1kgあたり約10から約225mg、体重1kgあたり約10から約150mg、又は体重1kgあたり約10から約100mgであってもよい。
その対象者における神経変性疾患を利用するためのキットをも開示されるが、それは、疾患/障害の診断又は予知のための手段と、ロイシン、アセチル−ロイシン又はその薬学的に許容される塩と、を含む。
神経変性疾患を診断又は予知するための手段は、特異的結合剤、プロ−ブ、プライマ−、プライマ−の対又はそれらの組み合わせ、抗体フラグメントを含む抗体又は酵素を含んでもよいが、それは、ここにおいて規定されるように、神経変性疾患の検出又は検出の補助をすることができる。キットは、蛍光マ−カ−であり、インビトロジェン(Invitrogen)及びロンザ(Lonza)の両方から市販されているライソトラッカ−(LysoTracker)(登録商標)を含んでもよい。ライソトラッカ−(LysoTracker)(登録商標)は、青、青白、黄色、緑、又は赤であるかもしれない。
キットはまた、ここにおいて定義されるように、ロイシン、アセチル−ロイシン又はその薬学的に許容される塩を含む。そのキットは、緩衝液又は水溶液を更に含んでもよい。そのキットは、本発明の方法において、ロイシン、アセチル−ロイシン又はその薬学的に許容される塩を使用するための説明書を更に含んでもよい。
更なる実施例において、必要性のある対象者(例えば、神経変性疾患を有する、有することが疑われる、又は有する恐れがある対象者)において、神経防護作用を提供する方法において使用するための、ロイシン、アセチル−ロイシン、又はその薬学的に許容される塩が開示される。
ここにおいて使用される「神経防護作用」及びその同語源語は、限定されることなく、神経細胞構造の進行性喪失、神経細胞機能の進行性喪失、及び/又は進行性の神経細胞の死を含む、神経変性の、防止、遅行、及び/又は逆行された進行を意味する。神経防護作用を提供することは、そうでなければ典型的な病気の進行に従って現れると予期される神経変性疾患の発症又は神経変性疾患の1つ以上の症状の発症を遅らせること、神経変性疾患の重症度を低下させる又は神経変性疾患に関連する1つ以上の既存症状の重症度を低下させる又は除去すること、典型的な病気の進行と比較して経時的に神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ以上の症状の進行を遅延させること、及び/又は神経変性疾患の進行又は神経変性疾患の1つ以上の症状を経時的に逆行させること、という結果になるかもしれない。神経防護作用が提供される期間は、ここにおいて記述されるように治療期間と一致してもよい。治療は、例えば、約7日以上、約2週間以上、約3週間以上、約1ヶ月以上、約6週間以上、約7週間以上、又は約2ヶ月以上の期間にわたって神経防護作用を提供するかもしれない。治療は、例えば、約3ヶ月以上、約4ヶ月以上、約5ヶ月以上、又は約6ヶ月以上の期間にわたって神経防護作用を提供してもよい。それは、約1年以上、約2年以上、約3年以上、約4年以上、約5年以上、又は約10年以上の期間にわたって神経防護作用を提供してもよい。治療は、患者の生涯にわたって神経防護作用を提供してもよい。
もう1つの実施例において、その必要性のある対象者(例えば、神経変性疾患を有する、有することが疑われる、又は有する恐れがある対象者)において、神経保護を提供する方法は、治療有効量のロイシン、アセチル−ロイシン、又は薬学的に許容される塩を、対象者へ投与することを含む。
その必要性のある対象者(例えば、神経変性疾患を有する、有することが疑われる、又は有する恐れがある対象者)において、神経保護を提供するためのキットも開示されるが、そのキットは、その疾患/障害を診断又は予知するための手段と、及び、ロイシン、アセチル−ロイシン又はその薬理学的に許容される塩と、を含む。
本開示は、その必要性のある対象者(例えば、神経変性疾患を有する、有することが疑われる、又は有する恐れがある対象者)において、神経保護剤としてのロイシン、アセチル−ロイシン又はその薬学的に許容される塩の使用を更に含む。
ここにおいて記述されるすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)、及び/又はそのように開示される如何なる方法のすべてのステップは、少なくとも幾つかのそのような特徴及び/又はステップが相互に排他的であるところの組合せを除いて、如何なる組合せにおける上記側面(特徴)の如何なるものと組み合わせられるかもしれない。
[実験例]
本発明は、以下の実験例において更に詳細に説明されるが、これは対象者における神経変性疾患の治療及び該対象者における神経防護作用の提供における、ロイシン及びアセチル−ロイシンの有用性を実証する。
[実験例1]
[インビボのマウス研究−方法]
マウスモデル
この研究は、NPCの真正のマウス・モデル、Npc1−/−(BALB/cNctr−Npc1m1N/J)マウスを利用したが、これは、NPC1タンパク質に対しては無効であり、そして、臨床疾患の全ての特徴を示す(Loftus、1997)。
この変異株は、自然発生的に発生し、10〜14週間の範囲の寿命を持ち、それゆえ、大多数の患者よりもより急性の病気(疾患)の経過を有する。この変異マウスは、病気の個体発生及びその根底にある発症メカニズムを決定するためだけでなく、実験的処置(治療)法を評価するためにも、成功裏に利用されてきた。これらのマウスを用いた解析は、動物全体、細胞レベル、及び分子レベルで行われてきた(Baudry、2003年;Smith、2009年;Cologna、2014年;Cologna、2012年)。それは、NPCの最も集中的に研究された動物モデルである
約4〜5週齢の前は、Npc1−/−マウスは、野生型の同腹仔から区別する、識別可能な病気の行動的兆候を有していない。振戦及び失調性歩行のような行動の欠陥の最初の兆候は、5〜6週までに現れ、7〜8週までに運動協調の障害がより明白になり、9〜10週までに運動失調が進行し、摂食及び摂水が困難になるにつれて体重における増大する損失及び体調不良(poor coat condition)を伴う(人道的な評価項目(humane end point)が適用される)(Smith、2009)。
野生型(Npc1+/+)同腹仔をコントロ−ル(control)として使用された。
処置(治療)プロトコル
一群のNpc1−/−マウス及び一群のNpc1+/+マウスは、離乳(3週齢)から、マウス固形飼料に混合して提供される0.1g/kgのアセチル−DL−ロイシンで処置(治療)された。コントロ−ルとして、分離群のNpc1−/−及びNpc1+/+マウスは、未処置(未治療)のままにした。
コ−ト・コンディション(Coat Condition)
アセチル−DL−ロイシン処理あり及びなしのNpc1−/−マウスのコ−ト・コンディションは、9週齢のマウスの簡単な観察によって比較された。
体重デ−タ
動物の体重を週に2回測定した。各群において全てのマウスに渡って体重が平均化された(平均)、そして、それらは比較された。
歩行解析
キャットウォ−ク(CatWalk)(登録商標)15.0システムを製造元の説明書(Noldus、Nottingham、UK)に従って使用して、8週齢でマウスの歩行解析を実施した。動物1匹につき5回の実験が記録された。
測定されたキャットウォ−ク(CatWalk)(登録商標)パラメ−タ(parameters)は以下の通りであった。
1.スタンド・ミ−ン(Stand Mean):ガラス板と接触している肢(paw)の平均持続時間(duration)(s);
2.ステップ・サイクル:同じ肢(paw)の2つの連続した接触の間の持続時間(duration)(s);
3.デュ−ティ・サイクル:ステップ・サイクルを完了するための時間と比較した、プレ−トと接触している肢(paws)の時間の割合(パ−センテ−ジ);
4.ステップ・シ−ケンス(AB):LF−RH−RF−LH交互パタ−ンにおける歩行に費やした時間の割合(パ−センテ−ジ)(LF:左前(left front);RH:右後(right hind);RF:右前(right front);LH左後(left hind));
5. 歩調(ケイデンス)(Cadence):トライアルにおける1秒あたりのステップ;
6.対角支持(Diagonal Support):対角の肢(diagonal paws)がガラス板と同時に接触する時間の割合(RF&LH又はRH&LF)。
運動機能解析
運動機能解析は、製造元の説明書(Linton Instruments、Amlogger Software)に従って、オ−プンフィ−ルド活動モニタ−(Open Field Activity Monitor)を使用して、8週齢及び9週齢のマウスで実施された。各マウスは、寝床付きのプラスチック製ケ−ジに入れられ、そして、5分間解析された。後部(Rears)は手動で数えられた。
測定された運動機能パラメ−タ(motor function parameters)は以下の通りであった。
1.センタ−・リアリング(Centre Rearing):支持なしで、後足(hind legs)でのマウスのリアリング;
2.リアリング(Rearing):ケ−ジ壁の支持の有及び無で、後足(hind legs)でのマウスのリアリング;
3.活動(Activity):歩き(walks)を含む動物の通常の動き(regular movement);
4.前から後ろ(FR)のカウント(Front to Back (FR) count):ケ−ジの前から後ろへの動物の動き(movement);
5.活動時間(Active Time):動き(movement)に関係なく活動度(activeness)の持続時間(duration)(s/min);
6.モバイル・タイム(Mobile Time):モビリティ(mobility)の持続時間(秒/分);
7.リアリング・タイム(Rearing Time):如何なるリアリング(Rearing)の持続時間。
[結果]
コ−ト・コンディション
図1Bは、未処置(未治療)のNpc1−/−年齢が一致した同腹仔を示す。Npc1−/−マウスは、摂食及び摂水が困難になったので、9週齢でコ−ト・コンディションが不良であると観察された(図1B参照)。
明確に対照的に、図1Aは、離乳からのアセチル−DL−ロイシンで処置(治療)したNpc1−/−マウスを示す。アセチル−DL−ロイシンで処置(治療)したNpc1−/−マウスは、野生型(Npc1+/+)同腹仔を思わせる、滑らかな毛艶(smooth and glossy coat)を有していた(図1A参照)。
体重デ−タ
図2Aにおいて見られるように、野生型(Npc1+/+)マウスは、研究の期間の間(即ち、3週齢から10週齢)に着実に体重が増えた。更に、図2Aは、時間における各ポイントで、マウスの群毎の平均体重を示す(Npc1−/−未処置(未治療)(untreated)、n=1;Npc1−/−アセチル−DL−ロイシンの0.1g/kg、n=3;Npc1+/+未処置(未治療)(untreated)、n=3;Npc1+/+アセチル−DL−ロイシンの0.1g/kg、n=2)。
アセチル−DL−ロイシンによる処置(治療)は、この体重増加に有意な影響を及ぼさなかった。
Npc1−/−マウスは、最初はNpc1+/+コントロ−ルとほぼ同様に体重が増加した。しかしながら、Npc1−/−マウスは6週齢から体重が減少し始めた。実験終了時(10週齢)で、マウスの体重はわずか4週齢のときと同程度に少なくなった。
アセチル−DL−ロイシンによる処置(治療)は、未処置(未治療)(untreated)群と比較してこれらの体重減少の症状を2週間遅らせた。
アセチル−DL−ロイシン処置(治療)の有及び無での、Npc1−/−マウスの体重変化の比較が図2Bに示される。特に、図2Bは、Npc1−/−マウスのみに対して、各時点におけるマウスの群あたりの体重の変化(%)を示す。体重減少を遅らせることにおけるアセチル−DL−ロイシン処置(治療)の有益な効果は、この図から明白である。
歩行解析
歩行解析の結果は、図3に示される。対角支持(Diagonal support)、歩調(cadence)、及びステップ・シ−ケンス(step sequence)デ−タは、それぞれ図3A〜図3Cに示される。図3D及び図3Eは、前肢(front paw)(FP)デ−タを示す(図3Dにおいてスタンド平均(stand mean)及びステップ・サイクル(step cycle);図3Eにおいてデュ−ティ・サイクル(duty cycle))。図3F及び図3Gは、後肢(hind paw)(HP)デ−タを示す(図3Fにおいてスタンド平均(stand mean)及びステップ・サイクル(step cycle);図3Gにおいてデュ−ティ・サイクル(duty cycle))。デ−タは平均±SEMとして表される。未処置(未治療)(untreated)のNpc1+/+に対してn=3、Npc1+/+処置(治療)(treated)対してn=2、Npc1−/−未処置(未治療)(untreated)に対してn=1(従って統計解析を行わない)、Npc1−/−処置(治療)(treated)に対してn=3である。
各グラフの第1の棒は、野生型(Npc1+/+)マウスの歩行特性を示す。
各グラフの2番目の棒は、アセチル−DL−ロイシンで処置(治療)した野生型(Npc1+/+)マウスの歩行特性を示す。これらのマウスとそれらの未処置(未治療)の同腹仔との間で歩行特性に有意差はなかった。
各グラフの3番目の棒は、Npc1−/−マウスの歩行特性を示す。概して、このマウスは、Npc1+/+マウスと比較して歩行不良を示した。マウスは、あったとしても、対角支持(diagonal support)(図3A)又はステップ・シ−ケンス(step sequence)(図3C)に非常に短い時間しか費やさず、そして、スタンド平均(stand mean)におけるその後肢(hind paw)機能(図3F)及びデュ−ティ・サイクル(duty cycle)(図3G)はまた、劇的に妨げられた。
各グラフの4番目の棒は、アセチル−DL−ロイシンで処置(治療)したNpc1−/−マウスの歩行特性を示す。これらのマウスは、それらの未処置(未治療)の同腹仔と比較して、有意に改善された歩行を示した。事実、それらはNpc1+/+マウスと同様の歩行特性を示した。
運動機能解析
8週齢での解析は、Npc1−/−マウスと野生型(Npc1+/+)マウスとの間で運動機能特性に差がないことを明らかにした(デ−タは示さず)。
しかしながら、9週齢までに、運動協調における欠陥が明らかになった。
9週齢の運動機能解析の結果が図4に示される。センタ−・リアリング(Centre rearing)、活動(activity)、リアリング(rearing)及び前から後ろへの(front to back)(FR)カウント(count)が、それぞれ、図4A〜図4Dに示される。活動時間(Active time)、モバイル・タイム(mobile time)、リアリング・タイム(rearing time)及び総手動のリアリング・カウント(total manual rearing count)は、それぞれ図4E〜図4Hに示される。デ−タは、平均±SEMとして表される。Npc1+/+未処置(未治療)(untreated)に対してn=3、Npc1+/+処置(治療)(treated)に対してn=2、Npc1−/−未処置(未治療)(untreated)に対してn=1(従って統計解析を行わない)、Npc1−/−処置(治療)(treated)に対してn=3。
各グラフの最初の棒は、野生型(Npc1+/+)マウスの運動機能特性を示す。
各グラフの第2の棒は、アセチル−DL−ロイシンで処置(治療)した野生型(Npc1+/+)マウスの運動機能特性を示す。これらのマウスとそれらの未処置(未治療)の同腹仔との間に運動機能特性に有意差はなかった。
各グラフの3番目の棒は、Npc1−/−マウスの運動機能特性を示す。概して、このマウスは、Npc1+/+マウスと比較して、乏しい運動機能を示した。マウスは、あったとしても、特に後肢(足)(hind legs)の無支持(パネルA)でのリアリング(rearing)(パネルH(panel H))にごくわずかな時間しか費やさなかった。
各グラフの4番目の棒は、アセチル−DL−ロイシンで処置(治療)したNpc1−/−マウスの運動機能特性を示す。これらのマウスは、それらの未処置(未治療)の同腹仔と比較して有意に改善された運動機能を示した。事実、それらはNpc1+/+マウスと同様の運動機能特性を示した。
寿命
Npc1−/−マウスのアセチル−DL−ロイシン(3週齢から0.1g/kg)による処置(治療)は、寿命における統計的に有意な増加と関連することもまた観察された(図5)。このデ−タは更に、病気(疾患)の発症を遅らせることにおけるアセチル−ロイシンの効果を示している。
[結論]
Npc1−/−マウスが、5〜6週齢の野生型の同腹仔から区別する病気(疾患)の識別可能な兆候を有したところ、離乳からアセチル−DL−ロイシンで処置されたNpc1−/−同腹仔は、2以上の週の後になるまでそのような兆候を示さなかった。アセチル−DL−ロイシンによるNpc1−/−マウスの処置(治療)は、NPC症状の発症及び進行を遅らせ、そして、神経防護作用の証拠を示した。
アセチル−DL−ロイシンが一般的な神経保護作用をもたらしたので、NPCで観察された結果は、他の神経変性障害、及びリソソ−ム蓄積における欠陥に関連する神経変性障害でも観察されるであろうと予想することは合理的である。
[実験例2]
[方法]
NPC患者由来の線維芽細胞株は、N−アセチル−DL−ロイシン(1mM)で3日間処置(治療)され、そして、相対的リソソ−ム量は、酸性オルガネラにおいて蓄積する蛍光染料であるライソトラッカ−(LysoTracker)を介して定量された。増加したライソトラッカ−(LysoTracker)蛍光は、リソソ−ムのサイズ及び/又は数における増加を示し、そして、それはNPC細胞の顕著な特徴である。
更に、ニ−マン−ピックA(NPA)、ムコリピド−シスII型(MLII)、ムコ多糖症IIIB型(MPS IIIB)、アスパルチルグルコサミン尿症、ムコリピド−シスIIIA型(MLIIIA)、及びムコ多糖症VII型(MPS VII)の患者由来の線維芽細胞は、6日間アセチル−DL−ロイシン(1mM)で処置(治療)されたが、リソソ−ム量は、ライソトラッカ−によって定量された。
[結果]
1mMのN−アセチル−DL−ロイシンによる軽度の臨床的重症度のNPC患者由来の線維芽細胞の処置(治療)は、ライソトラッカ−蛍光における有意な減少と関連していたが、これは経時的な減少したリソソ−ム量を示している(図6A)。これらの発見は、72時間1mMのN−アセチル−DL−ロイシンで処置(治療)された変わり易い臨床的重症度の追加のNPC患者から得られた線維芽細胞において再現された(図6B)。
NPA、及びMLII、MPS IIIB、アスパルチルグルコサミン尿症、MLIIIA、及びMPS VII患者に由来する線維芽細胞は、年齢を一致させた野生型コントロ−ルに対して、上昇したライソトラッカ−蛍光レベルを有することが観測された(図6C〜図6H)。これは、健康な個体からの線維芽細胞と比較して、脂質蓄積の結果として生じる拡大されたリソソ−ム発生を示している。アセチル−ロイシンでの処理は、それぞれ、両方のNPA及びMLII及び未処置(未治療)のNPAに相対するMPS IIIB線維芽細胞及びMLII及びMPS IIIB線維芽細胞内におけるコントロ−ル・レベルに向かってライソトラッカ−蛍光における統計的に有意な低下に関連していたし(図6C〜図6E)、及び、それぞれ、アスパルチルグルコサミン尿症、MLIIIA及び未処置(未治療)のアスパルチルグルコサミン尿症に相対的なMPS VII線維芽細胞、MLIIIA及びMPS VII線維芽細胞内におけるコントロ−ル・レベルに向かってライソトラッカ−蛍光を低下させる傾向に関連していた(図6F〜図6H)。ライソトラッカ−蛍光の低下は、リソソ−ム量の減少を示していた(図6C〜図6H及び図6D)。図6A〜図6Dに提示されたデ−タは、未処置(未治療)の野生型の線維芽細胞に相対する倍率変化(fold change)として表されたリソソ−ム量で、1 mMのアセチル−ロイシンでのそれぞれ各細胞株に対する処置(治療)の6日後の結果を示す。アスタリスク(*/****)は、未処置(未治療)の疾患線維芽細胞に対するp値(<0.05/0.001)を示す。
[結論]
N−アセチル−DL−ロイシン処置(治療)は、リソソ−ム量を減少させることによる乱されたリソソ−ム蓄積の調整と関連していたが、このようにして、アセチル−ロイシンがこれらのリソソ−ム蓄積障害の表現型を直接的に修正した。これらの病気(疾患)は、異なるクラスのLSD(LSDs)を表しており、そして、これらの結果は、広範囲のリソソ−ム蓄積障害(Lysosomal storage disorders)に対するアセチル−ロイシンの効果の有用性を更にサポ−トしている。
[実験例3]
サンドホフ病は、β−ヘキソサミニダ−ゼのβ−サブユニットをコ−ド化する、HEXB遺伝子における突然変異の常染色体潜性遺伝(autosomal recessive inheritance)から生じるかもしれない障害である。この結果として、GM2ガングリオシドは、分解されることができず、末梢及び中枢神経系(CNS)の細胞内のリソソ−ム内に蓄積する。
この研究は、Jeyakumarらに記述されているように、サンドホフ病のマウス・モデル、Hexb−/−マウスを利用した(Jeyakumar, M. et al. (1999) Proc. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 6388−6393)。
野生型(Hexb+/+)マウスは、コントロ−ル(controls)として使用された。
[寿命]
アセチル−DL−ロイシンによる処置(治療)は、サンドホフ病マウスの寿命における統計的に有意な増加と関連していた(図7A)。図7Aにおいて、アセチル−ロイシン処置(治療)マウスは、3週齢から0.1g/kgのアセチル−ロイシンで処置(治療)された。アスタリスク(*)は、未処置(未治療)のサンドホフ病マウスに対して<0.05のp値を示す。デ−タは、群あたりn=6のマウスの平均である。処置(治療)なしでは、サンドホフ病マウスの生存期間中央値は112日であった。アセチル−ロイシン(3週齢以降の体重1kg当たり0.1g)での処置(治療)は、メジアン寿命を120日に増加させた。
[運動機能]
アセチル−ロイシンでのサンドホフ病マウスの処置(治療)は、バ−・クロッシング研究及びステップ・サイクル研究によって示されるように運動機能において改善が生じた。
バ−・クロッシング・テスト
バ−・クロッシング・テストは、その前肢によって水平なバ−の中央からぶら下がって置かれる、マウスにおける運動機能を評価するための方法である。正常な運動機能を有する野生型マウスは、その後肢と連携することができ、それによって、バ−のいずれかの端部にあるプラットフォ−ムのうちの1つに移動することができ、そして、そのようにしてテストを完了する。
未処置(未治療)のサンドホフ病マウスは、およそ11週齢まで、テストを完了することができる。この時点以降、運動機能及び後肢の運動性/連携性は、マウスがテストを完了することができなくなる点まで悪化し、そして、バ−から下のパッド付表面の上に落ちるであろう。
サンドホフ病マウス・モデルのアセチル−DL−ロイシン(3週齢から0.1g/kg体重)での処置(治療)は、バ−・クロッシング・テストで評価したように、改善された運動機能及び後肢運動性/連携性と関連していた(図7B)。図7Bにおいて、3週齢から0.1g/kg体重のアセチル−ロイシン処置(治療)が提供された。アセチル−ロイシン処置(治療)されたサンドホフ病マウスは、13週齢まで(端を含む)テストを完了する能力を保持していた。示されたデ−タは、群あたり6匹のマウスの平均である。処置したサンドホフ病マウスは、13週齢まで(端を含む)テストを完了する能力を保持していた。
ステップ・サイクル
ステップ・サイクルは、それが地面を離れてから次の機会に地面を離れるまでの、肢(足)による移動の間にかかる時間の長さである。
未処置(未治療)及びアセチル−ロイシン処置(治療)のサンドホフ病モデル・マウスにおいて、ステップ・サイクルタイムは、12週齢で評価された。アセチルロイシン治療は、3週齢から0.1g/kg体重のアセチルロイシンを構成した。
サンドホフ病マウス・モデルのアセチル−ロイシンでの処置(治療)は、有意に速い前ステップ・サイクル・タイム(p<0.05 対 未処置(未治療)(untreated)SHマウス)、有意に速い後ステップ・サイクル・タイム(p<0.01 対 未処置(未治療)(untreated)SHマウス)及び有意に速い平均ステップ・サイクル・タイム(p<0.001 対 未処理(未治療)(untreated)SHマウス)と関連した(図7C)。図7Cにおいて、0.1g/kg体重のアセチル−ロイシン処置(治療)が3週齢から提供された。前ステップ・サイクルは、マウスの前肢(足)を指し、後ステップ・サイクルは、マウスの後肢(足)を指し、平均ステップ・サイクルは、マウスのすべての肢(足)を考慮に入れる。アスタリスク(*/**/***)は、未処置(未治療)のサンドホフ病のマウスに対して、<0.05/0.01/0.001のp値を示す。示されたデ−タは、平均値±標準偏差である。
このように、アセチル−ロイシン処置(治療)は、サンドホフ病マウス・モデルにおける、より速いステップ・サイクルと関連していたが、これは運動機能における改善を示すかもしれない。
[結論]
これらの研究は、サンドホフ病のマウス・モデルのアセチル−ロイシン処置(治療)が、有意に増加した寿命だけでなく、2つの独立した実験によって評価されるように運動機能における改善を生じさせるかもしれないことを実証する。
[実施例4]
GM2ガングリオシド−シスは、β−ヘキソサミニダ−ゼ活性における欠陥から生じる一群のリソソ−ム内蓄積障害(Lysosomal storage disorders)である。この群は、テイ・サックス病、サンドホフ病、及びテイ・サックス病のAB変異体を包含する。
GM2患者(テイ・サックス病、サンドホフ病、及びテイ・サックス病のAB変異体)由来の線維芽細胞及び健康なコントロ−ルは、高速液体クロマトグラフィ−(HPLC)によるスフィンゴ糖脂質(GSL)レベルの抽出及び定量化の前に、アセチル−DL−ロイシン(6日間に1mM)で処置(治療)された。
処置(治療)がない場合、GM2ガングリオシド−シスの全3種類に由来する線維芽細胞は、未処置(未治療)の野生型コントロ−ルと比較すると、GSLレベルの上昇を示した。全ての3つのケ−スにおいて、アセチル−DL−ロイシン(6日間で1mM)による処置(治療)は、GSL蓄積における減少と関連していた。テイ・サックス病の場合において、この減少は、統計学的に有意であった(p<0.05)。サンドホフ病及びテイ・サックス病のAB変異体の場合において、処置(治療)に関連した低下GSLレベルに向かう傾向があった。図8A〜図8Cに提示されたデ−タは、未処置(未治療)の野生型の線維芽細胞におけるレベルに相対する倍率変化として表され、及び、タンパク質含有量に対して調整された、GSLレベルで、それぞれ、各細胞株に対する治療の結果を示す。
[実施例5]
[患者1]
この症例研究の患者は、テイ・サックス病と遺伝学的に診断され、及び、運動障害性構音発声障害、振戦、立脚(stance)及び歩行の運動失調、不全対麻痺及び筋萎縮症を示した、28歳の男性であった。特に、患者は立ち上がることも歩くこともできなかったが、強いサポ−トを得て一歩踏み出すことができたが、はっきりと異なる姿勢動揺、眼球運動障害、嚥下障害及び構音障害、並びに軽度の認知機能障害を有していた。最初の症状は16歳で観察された。
処置(治療)が開始される前に、患者の検査は、15.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。更に、患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次のとおりであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):21.6秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):48.3秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):44.9秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):20
モントリオ−ル認知評価(Montreal Cognitive Assessment)(MoCA):18/30
後の比較のために、患者のビデオもまた記録された。
この検査の翌日、患者は、最初の週に1日3gの用量で、その後2週目以降に1日5gの用量で、アセチル−ロイシンによる処置(治療)が開始された。
それぞれ1ヵ月後及び4ヵ月後、患者は、処置(治療)を継続しながら、再検査された。1ヵ月後、患者は、例えば、摂食中又は摂水中に、改善された微細運動能力及び減少した手の振戦を有した。歩行は、それほど変わらなかった。4ヵ月後、患者は、わずかに改善された認知機能を伴う安定状態にあったが、立脚(stance)、歩行及び微細運動機能の悪化を示した。患者のSARAスコア及び患者のSCAFI解析の結果は、ベ−スラインと比較して以下に示される。
全体として、患者はアセチル−ロイシン処置(治療)後に症状の改善を示した。
[患者2]
この症例研究の患者は、テイ・サックス病と遺伝学的に診断され、及び、立脚(stance)及び歩行の運動失調、微細運動障害、下肢の麻痺、及び筋萎縮症を示した、32歳の女性であった。特に、サポ−トなしでは歩行は不可能であり、患者は、嚥下障害及び発話障害、眼球運動障害、並びに軽度認知機能障害を患っていた。最初の症状は7歳で観察された。
処置(治療)が開始される前に、患者の検査は、10.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。更に、患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):12.5秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):21.5秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):35.5秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):18
モントリオ−ル認知評価(Montreal Cognitive Assessment)(MoCA):21/30
後の比較のために、患者のビデオも記録した。
検査の日に、患者は、最初の週の間、1日当たり3gの用量のアセチル−ロイシンによる処置(治療)を始め、続いて2週目以降の間、1日当たり5gの用量で治療を受けた。
1ヵ月後、患者は、処置(治療)を継続しながら再検査され、増大した発音、改善された姿勢の安定性、及び増強された認知機能を示した。立脚(stance)及び歩行は、サポ−トなしで可能であった。患者のSARAスコアと患者のSCAFI解析の結果は、ベ−スラインと比較して以下に示される。
[患者3]
この症例研究の患者は、テイ・サックス病と遺伝学的に診断され、寝付く前に殆ど毎日てんかん性けいれん(強直間代性、約10秒、自己限定性)、眼球運動障害、構音障害、認知機能及び集中における明らかな問題(神経学的検査は可能ではなかった)を有していた8歳の男性であったが、自分だけで立つ又は歩くことができなかったし、日々の活動において非常に制限されていた(自分自身で食べたり、洗ったり、又は服を着たりすることが可能でなかった)。最初の症状は、9ヶ月の歳で観察された。
処置(治療)を開始する前に、患者の検査は、36/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコア、18/24のmRDSスコア、50のEQ−5D−5L視覚スケ−ル、及び18.1の8MWT(強力なサポ−トがある場合のみ)を示した。
患者は、最初の週の間、1日あたり1.5gの用量のアセチル−ロイシンで処置(治療)を開始し、その後2週目以降の間、1日あたり3gの用量で治療を受けた。
1ヵ月後、患者は、処置(治療)を継続しながら再検査され、増加した微細運動能力(小さなものを掴むことができた)、増加したモチベ−ション(自分だけで歩こうとより頻繁に試みられた)、改善された姿勢の安定性、歩行及び立脚(stance)を示し、そして、一言を発することができた。患者のSARA、mRDS、EQ−5D−5Lの視覚スケ−ル、及び8MWTのスコアが、ベ−スラインと比較して以下に示される。
[実施例6]
この症例研究の患者は、GM1ガングリオシド−シスと遺伝学的に診断され、自身だけで立ったり歩いたりすることができず、日常の活動が非常に限られていた(自分自身で食べること、洗うこと、服を着ることができなかった)13歳の男性であったが、ここで、眼球運動障害、構音障害、及び認知機能及び集中力に明らかな問題があった(神経学的検査は可能ではなかった)。最初の症状は2歳の時に観察された。
処置(治療)を開始する前に、患者の検査は、35/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコア、15のmRDSスコア、及び50のEQ−5D−5L視覚スケ−ルを示した。
患者は、最初の週の間、1日あたり1.5gの用量のアセチル−ロイシンで処置(治療)を開始し、その後2週目以降の間、1日あたり3gの用量で処置(治療)を受けた。
1ヵ月後、患者は、処置(治療)を継続しながら再検査され、安定した全身状態、増加した歩行(より流れるような)、そして、自然な位置で安定した立脚(stance)を示した。患者のSARA、mRDS、及びEQ−5D−5Lの視覚スケ−ルのスコアは、ベ−スラインと比較されて、以下に示される。
[実験例7]
[患者1]
この症例研究の患者は、以前、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された73歳の男性であった。
患者の症状は、進行性の構音障害(鼻声及び不明瞭言語)及び過去3年間の経過にわたって結果として起こる下垂足を伴う右背屈筋の衰弱によって特徴付けられた。
臨床的には、患者は、球言語(bulbar speech)、右足の背屈筋の3/5の麻痺及び大きなつま先上げ、一般化された誇張された反射(generalised exaggerated reflexes)及び右下肢のけいれんの程度の増加(spastic tone increase)を示した。EMGは自発的な活動を示した、そして、cMRTは如何なる病状も示さなかった。
患者は、ALS診断時の頃にリルゾ−ル(Riluzol)による投薬を開始した。しかしながら、臨床症状は変わらなかった。
次に、患者は、最初の週に1日あたり3グラムの用量で、その後第2週目以降に1日あたり5グラムの用量で、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始した。結果はビデオで記録された。
治療の15日後、健康診断が行われ、患者は発話の有意な改善を報告した。患者は、より流暢に話すことができ、投薬前(ビデオで記録されている)と比較してよりよく自分の声を調節することができた。
更に20日後、更なる診察が行われ、そこで患者はさらなる発話の改善を報告した。更に、患者は歩行の改善を報告した。右足−背屈筋の麻痺、そして、その結果として下垂足は劇的に改善し、臨床的にはほとんど検出できなかった。更に、患者は、より早く寝入り、より長く眠り、そして、朝には明らかにより休めたように感じた、と睡眠の改善を報告した。
患者は更に約30日間治療を続けた。患者が治療を中止してから約7日後に、診察が行われたが、患者は、右背屈筋の麻痺又は発話のいずれかの更なる主観的改善を報告しなかった。睡眠もまた悪化した。アセチル−ロイシン治療後から更に1〜2週間後、患者は発話の悪化を報告した。その時点で患者は治療を再開し、約2ヵ月後、安定した症状を報告した。アセチル−ロイシン治療が最初に開始された時と比較して、わずかな発話の悪化が観察さ得た。
患者は発話の改善見られなかったので、患者は投薬を中止するよう求めた。約2〜3週間後、患者は、再びアセチル−DL−ロイシン治療の中止後に発話の悪化を報告した。患者は治療を再開し、そして、改善した症状、特に発話の改善を報告した。
全体的には、患者は、アセチル−ロイシン治療に続いて、症状の改善を示した。
[患者2]
この症例研究の患者は、以前にALSと診断されていた74歳の男性であった。
患者の症状は、進行性構音障害(鼻声及び不明瞭言語)及び付随する嚥下障害、及び1年以上の間の歩行中の衰弱、及び約4ヶ月間の左上肢の麻痺によって特徴付けられていた。EMGは、球状部(bulbar)、頸部(cervical)及び腰部(lumbar)において、一般的な多相活動(generalised polyphasic activity)及び慢性的な神経性の機能障害(chronic neurogenic impairment)を示した。
患者の臨床検査は、重度の構音障害(severe dysarthria)、舌の運動低下(hypomotility)、微細運動能力の機能障害を伴う左腕の2/5〜3/5の麻痺、一般的な誇張された反射及び線維束性攣縮を示した。リルゾ−ル(Riluzol)での投薬は、1ヶ月早く開始された。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を最初の週は1日当たり3gの投与量で開始し、その後2週目以降は1日当たり5gの投与量とした。
約2ヵ月後、患者は再検査され、彼は、左手の運動機能の進行性の悪化を報告したが、歩行の不連続な改善を報告した。加えて、嚥下機能は安定していた。
[患者3]
この症例研究の患者は、以前にALSと診断された66歳の男性であった。
患者の症状は、両方の上肢近位筋の進行性の衰弱及び萎縮、微細運動能力のわずかな障害、及び一般的な線維束性攣縮及びけいれんによって特徴付けられた。EMGは、病理学的な自発的活動及び慢性的な神経性の変化を示し、脳及び頸部柱(cervical column)のMRTはいかなる病状も示さなかった。リルゾ−ル(Riluzol)の投薬が開始された。
約2ヵ月後、臨床検査は、肩及び近位腕の両方の3/5から4/5の麻痺、微細運動能力の遅れ(低下)、一般的な線維束性攣縮、及び正常な反射を示した。患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を、最初の週は1日当たり3gの投与量で開始し、その後2週目以降は1日当たり5gの投与量とした。
1ヵ月後、患者は、上肢の筋力の改善もなく、症状の改善を報告しなかった。アセチル−DL−ロイシンによる投薬は中断され、患者は症状の悪化を報告するよう求められた。
[患者4]
この症状研究の患者は、ALSと診断された66歳の男性だった。患者の症状は、両方の上肢近位の進行性の衰弱及び萎縮、微細運動能力のわずかな障害、及び一般的な線維束性攣縮及び痙攣によって特徴付けられた。EMGは、病理学的自発活動及び慢性的な神経性の変化を示した。脳及び頸部柱のMRTは、いかなる病状も示さなかった。リルゾ−ル(Riluzol)による治療が開始された。
臨床検査は、肩及び近位腕の両方の3/5から4/5の麻痺、微細運動能力の鈍化(低下)、一般的な線維束性攣縮、及び正常な反射、及び44/48のALS−FRSスコアを示した。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を、最初の週は1日当たり3gの投与量で開始し、その後2週目以降は1日当たり5gの投与量とした。
約1ヵ月後、患者は、嚥下障害及び唾液分泌過多の減少の主観的改善を報告した。彼の親戚は、改善された及び生き生きした顔の表情を報告した。四肢の衰弱は、変化しなかった。治療は中断され、10日後、患者は症状の悪化、特に嚥下障害及び唾液分泌過多の主観的なの悪化を報告した。患者は継続的な治療を再開した。
患者は、約8週間後に再評価され、症状は安定したままであった。患者のALS−FRSスコアは43/48であった。診断時の頃の症状と比較して、歩行及び上肢の衰弱のわずかな進行しかなかった。
[実験例8]
アセチル−ロイシン治療は、多系統萎縮小脳型(MSA−C)と診断された3人の患者において改善をもたらすことが実証された。
[患者1]
この症例研究の患者1は、過去3年間に言語障害及び歩行障害を伴う進行性運動失調を示した50歳代後半の女性であった。
患者の臨床検査は、中枢小脳眼球運動兆候、中等度の運動障害性構音発声障害、軽度の四肢失調、及び立脚(スタンス)及び歩行の中程度の運動失調を示した。更に、患者のMRIは、小脳及び脳幹、特に橋及び中脳の萎縮を示した。従って、患者はMSA−Cを有すると診断された。
患者は、1日当たり5gの用量(起床時に2g、昼食前に1.5g、及び夕食前に1.5g)で、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始した。
治療の1週間後、患者はすでに発話において有意な改善を示した。
[患者2]
この症例研究の患者は、MSA−Cと診断された77歳の男性であった。
患者の症状は、歩行(walking)及び倒れる傾向を有する不安定な歩行(insecure gait)(患者は月に約10回倒れた)の進行性の困難性によって特徴付けられた。患者は、めまい、運動過小−硬直症候群、眼球の衝動性運動、協調運動テストにおけるジスメトリア、及び自律神経機能障害、例えば、過去4年の経過期間にわたって、排尿不全、起立性低血圧症、及び勃起不全、を示した。
治療が開始される前、患者の症状は少なくとも3ヶ月間の期間中、変わらなかった。
患者は、最初の週に1日当たり3グラムの用量のアセチル−DL−ロイシンによる治療を開始し、続いて1日当たり5グラム迄の用量とした。
3週間の治療後、更なる検査が行われた。患者及び彼の妻は、患者がより安定的に歩き、及び転倒が完全になくなったと、歩行の著しい改善を報告した。更に、患者によって経験されためまいは、実質的に改善された。
患者は、投薬を中止するように指示され、そして、1週間後に患者は歩行及びめまいの悪化を報告した。患者は、転倒する強い傾向を伴って、より不安定な歩行を感じると報告した。
それから、患者は、投薬を再開するように指示され、それを彼が更に40日間続け、その後、再び止めた。 投与中止から7日後の臨床検査において、患者は、治療停止後2日で歩行及びめまいの進行的な悪化を確認し、そして、治療を停止した後5日で転倒の非常に強い傾向を確認した。その後、患者は継続的な治療に戻った。
[患者3]
この症例研究の患者は、症状に乏しいMSA−Cと診断されてた76歳の男性であった。
患者の症状は、めまいだけでなく、歩行(walking)や不安定な歩行(gait)(転倒することなく)の進行性の困難性によって特徴付けられた。
臨床的に、患者は協調運動テストにおいて、眼球の衝動性運動及びジスメトリアを示した。cMRIは、中脳の萎縮を示し、そして、脳のFDG−PETは、線条体及び小脳の代謝の低下を示した。患者の重心動揺検査(posturography test)結果は、転倒傾向が高い病状であった。
治療が開始される前は、患者の臨床症状は、少なくとも1年間にわたって不変のままであった。
歩行解析(歩容解析(gait analysis))が実施され、運動失調性歩行、通常の範囲に比べて低下した速度及び増大したトラック幅、及び歩行の揺らぎが示された。次に、患者は、最初の週に1日当たり3グラムの用量のアセチル−DL−ロイシンで治療が開始され、その後2週目以降に1日当たり5グラムの用量で治療を行った。
1ヶ月の治療後、さらなる検査が行われた。歩行解析は、歩行速度の改善、及びトラック幅及び歩行揺らぎの減少を示した。
患者は投薬を中止するように指示されたが、彼は、投薬を中止してから約2〜3週間後に歩行及びめまいの進行性の悪化を報告した。
その後、患者は継続的な治療に戻り、症状は再び改善された。治療は再び中断され、患者は3週間後に評価された。患者は症状、特にめまいの悪化を報告した。歩行解析は、治療前の状態に匹敵する増大した歩行幅を示した:
[実験例9]
この症例研究の患者は、無気力、不活発、及び無関心によって特徴付けられた進行性の人格変化を有する59歳の男性であった。加えて、患者は、微細運動能力の障害及び左腕の低下した共振を備える主に左側の運動過小−硬直症候群を示した。更に、患者は、小さなステップ及び月に2〜3回の転倒を伴う一般化された動作緩慢及び歩行障害を示した。患者はまた、精神運動性の低下及び意味ある語の流ちょうさの低下に関して、不明瞭言語及び認知障害を示した。
患者は、パ−キンソン病を伴う前頭側頭型認知症と診断され、そして、ダットスキャン(Datscan)は、診断を支持するド−パミン受容体の減少を明らかにした。脳のFDG−PETは、主に前頭の低下代謝(frontal reduced metabolism)を示した。
患者は、L−ド−パ(L−Dopa)及びロピニロ−ル(Ropinirol)による治療中にほとんど改善を示さなかった。
患者は、1週間の間に1日当たり3グラムの用量で、次に、4週間の間に1日当たり5グラムの用量で、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始した。
約1ヶ月のアセチル−ロイシン治療の後、投薬は中止され、患者は13日後に再検査された。
患者及び彼の妻及び娘は、アセチル−ロイシンによる治療中の歩行の著しい改善を報告し、更に加えて、患者の転倒が止まったことを報告した。患者はまた、発話の改善を示したが、不明瞭さが少なく、より理解でき、そして、主観的にかなり良く制御されていた。治療を中断した後、症状は悪化した。
[実験例10]
この症例研究の患者は、後方転倒を引き起こす、進行性の不安定な歩行障害及びめまいがある、75歳の男性であった。加えて、この患者は、失行症(apraxia)及び他人の肢現象(alien−limb phenomenon)を伴う主に左側の運動過小−硬直症候群(hypokinetic−rigid syndrome)を呈していた。
その患者は、大脳皮質基底核症候群と診断された。ダットスキャン(Datscan)は、ド−パミン受容体の減少を明らかにし、MRIは、診断を支持する右半球の萎縮性運動皮質(atrophic motorcortex)を示した。
患者はL−ド−パ(L−Dopa)による治療中に改善を示さなかった。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始し、最初の1週間は1日当たり3g、その後は1日当たり5gの用量で投与した。治療を開始する前に歩行解析が実施された。
20日間のアセチル−ロイシン治療の後、患者は再検査された。めまい症状の改善及び転倒頻度の有意な減少が認められた。
例えば、速度、最大速度、歩調(cadence)、減少した両脚支持(double stance)のような歩行解析のパラメ−タにおける客観的な改善があった(表2及び図9)。
アセチル−ロイシン治療の8週間後、投薬は中止され、患者は6日後に再検査された。
患者は、治療の中断の2日後にめまいの症状の増加を報告した(酔った感覚)。
その後、患者は継続的な治療に戻った。
[実験例11]
[患者1]
この症例研究の患者は、歩行中に主に起こるめまいのある76歳の女性であった。転倒は報告されなかった。患者はまた、小さなステップを伴う歩行障害、及び微細運動能力の障害を伴う全身性の動作緩慢及び垂直凝視麻痺を示した。
患者は進行性の核上性麻痺と診断された。ダットスキャン(Datscan)は、ド−パミン受容体の減少を明らかにし、そして、脳のFDG−PETは主に前頭の低下代謝を示し、診断を裏付けた。
患者は、L−ド−パ(L−Dopa)による治療中にほとんど改善を示さなかった。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を、1週間の間に1日当たり3gの用量で、次いで4週間の間に1日当たり5gの用量で開始した。27日間のアセチル−ロイシン治療の後、投薬は中止され、患者は60日後に再検査された。
その患者は、アセチル−ロイシンによる治療の下で、めまいの有意な減少及び歩行のわずかな改善を報告した。治療中断後、症状は悪化した。
患者は、約2ヵ月後に再検査され、内在する進行性の核上性麻痺の安定した症状を報告した。臨床的進行はなかった。PSPRSスコアは、安定したままであり、そして、めまいの減少は依然として有意であった。
[患者2]
この症例研究の患者は、対称性運動過小−硬直症候群(symmetric hypokinetic−rigid syndrome)、不安定な及び小さなステップでの歩行障害(転倒の強い傾向)及び微細運動能力の障害を伴う垂直注視麻痺を伴う66歳の女性であった。患者は進行性の核上性麻痺と診断された。ダットスキャン(Datscan)は、ド−パミン受容体の減少を明らかにし、脳のFDG−PETは主に前頭の低下代謝(frontal reduced metabolism)を示し、診断を支持した。レボドパ反応(levodopa response)はなかった。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始し、最初の1週間は1日当たり3g、その後は1日当たり5gの用量で投与した。治療を開始する前に歩行解析を実施した。治療の17日後、投薬は中止され、患者は4日後に再検査された。患者は、歩行又は運動過小硬直症候群(hypokinetic rigid syndrome)の有意な改善を報告しなかった。
患者は約2ヵ月後に再評価され、投薬中止後の症状の悪化は報告されなかった。
[患者3]
この症例研究の患者は、対称性運動過小−硬直症候群(symmetric hypokinetic−rigid syndrome)、不安定及び転倒の既往歴及び微細運動能力の障害を伴う垂直凝視麻痺を有する56歳の男性であった。患者は進行性の核上性麻痺と診断された。ダットスキャン(Datscan)は、ド−パミン受容体の減少を明らかにし、脳のFDG−PETは、前頭近心の及び前頭側頭の低下された代謝(frontomesial and parietotemporal reduced metabolism)を示し、診断を支持した。レボドパ反応(levodopa response)はなかった。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始したが、最初の1週間は1日当たり3g、その後は1日当たり5gの用量で投与した。治療を開始する前に歩行解析が実施された。治療の17日後、投薬は中止され、患者は4日後に再検査された。患者は、歩行又は運動過小硬直症候群の有意な改善を報告しなかった。
患者は約2ヵ月後に再評価され、投薬中止後に症状の悪化は報告されなかった。
[患者4]
この症例研究の患者は、進行性の歩行障害、不安定及び小さなステップ(強い転倒傾向)、腰曲がり症(camptocormia)、低速の及びハイパ−メトリック・サッカ−ド(hypometric saccades)、眼瞼痙攣症及び微細運動能力の障害を有する76歳の男性であった。患者は、進行性の核上性麻痺と診断された。MRIは、中脳の目立たない萎縮を示した(ミッキ−マウスのしるし)。わずかなレボドパ反応(levodopa response)があった。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始し、最初の1週間は1日当たり3g、その後は1日当たり5gの用量で投与した。治療を開始する前に歩行解析を実施した。3週間の治療後、投薬は中止され、そして患者は再検査された。患者は、増大した主観的な安定性のある歩行及び転倒頻度が低下した歩行を報告した。歩行解析は、増大した速度(speed)、最大速度(max. speed)、ステップ・サイクル長さ(step cycle length)及びトラック幅(track width)の減少、両脚支持(double stance)及び変動係数(coefficient of variation)に関して歩行の改善を示した。
投薬なしで3か月後、患者は運動過小−硬直症候群の進行を報告した。より頻繁に転倒し、歩行は悪化した。
[実験例12]
[患者1]
この症例研究の患者は、ほぼ1年間めまい及び姿勢の不均衡を患っていた42歳の男性エンジニアであった。
患者は、下眼瞼向き眼振と診断された。患者は、眼振のためにかすみ目(動揺視)により重度の障害を受け、読み書き中に困難を経験していた。患者の視力は、右0.75、左0.67、両眼0.83であり、下眼瞼向き眼振は、ビデオ−眼球運動記録法(video−oculography)によって記録された。患者はまた、増大した身体の揺れを示したが、姿勢動揺検査(posturography)によって記録された。
4−アミノピリジン(ファンピラ(Fampyra)、10mgを1日2回)で4週間治療しても何の利益も生じなかった。
患者は、1週間の間は1日当たり3gの用量(朝起きて1g、昼食前に1g、夕食前に1g)で、次に、1日当たり5グラム用量(朝起きて2g、昼食前に1.5g、夕食前に1.5g)で、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始した。
10日後、患者は、有意な利益を報告し、その効果はゆっくりと進行したと報告した。患者は、この治療用量を継続したが、副作用は生じなかった。投薬の一時的な中断は、かなりの悪化をもたらした。
患者はアセチル−ロイシン治療を開始してから約14週間後に再検査され、その間に患者はその利益に非常に満足していると報告した。患者の読み書きはずっと良くなったが、これは、低下した動揺視のためであり、視覚環境のイメ−ジが安定であったからである。患者は、固視により眼振を抑制することができた。更に、患者の空間定位が改善された。
2人の独立した試験官による臨床検査は眼振の減少を明らかにし、ビデオ−眼球運動記録法は、患者が固視により眼振を抑制できることを示した。患者の視力は、右0.83、左1.0、両眼1であった。
姿勢動揺検査(posturography)は、姿勢動揺の減少を実証した。
概して、この症例研究は、これが示すことから患者の症状における改善を実証する。
[患者2]
この症例研究の患者は、下眼瞼向き眼振と診断された。患者は、姿勢不均衡及びめまいを示した。患者はファンピラ(Fampyra)(登録商標)から恩恵を受けなかった。
患者は、アセチル−DL−ロイシン(最初の週に3g/日;その後5g/日)の服用を開始し、それに続いて、はるかに長い距離(1時間)を歩く能力で歩行の改善を示し、そして、改善された注意力を示した。患者の下眼瞼向き眼振もまた改善した(ビデオ−眼球運動記録法により記録された)。患者は、タ−ゲット・センタ−(30秒間ディスプレイのセンタ−に示されたドット、図13A)を用いて、及び、特別な眼鏡で覆ったゴ−グルを用いて真っ暗闇の中で45秒間(図13B)、評価したように、固視により眼振を部分的に抑制できた。その結果(緩徐相速度(slow phase velocity)の中央値、SPV)は以下の通りであった。タ−ゲット・センタ−−水平:−0.02°/s、垂直:2.41°/s;完全な暗さ−水平:0.05°/s、垂直:3.27°/s(図13C)。図13Aに示すように、患者は、固視しながら眼球運動を最小限に抑えることができた。
歩行解析は、56から85cm/secへの自己選択速度の増加及び122から155cm/secへの最大歩行速度の増加を示した。その後、投薬は中断された。
アセチル−DL−ロイシン治療を中止後約1ヶ月で、患者の症状は悪化した。歩行解析は、85から72cm/secへの自己選択速度の減少及び155から113cm/secへの最大歩行速度の減少を示した。
[実験例13]
[患者1]
この症例研究の患者は、主に右側の運動過小−硬直症候群及び振戦、アンテコリス(antecollis)、頻繁な転倒、起立性調節障害(orthostatic dysfunction)及び切迫性尿失禁(urge incontinence)を伴う70歳の女性であった。
患者は多系統萎縮症パ−キンソン型(multiple system atrophy Parkinson type)(MSA−P)と診断された。ダットスキャン(Datscan)は、主にド−パミン受容体の左側の減少を明らかにしたが、脳のFDG−PETは、主に頭頂後頭葉の低代謝(parieto−occipital reduced metabolism)を示した。控えめなレボドパ反応(Levodopa response)(100/25mg 3回/日)があった。
患者はアセチル−DL−ロイシン(最初の週は3g/日、その後は5g/日)の服用を開始した。アセチル−DL−ロイシンで3週間後、患者を評価し、歩行の有意な改善、転倒の減少又は運動過小硬直症候群の改善は報告されなかった。投薬は中止された。
6週間後、患者は投薬中止後に症状の悪化を報告しなかった。
[患者2]
この症例研究の患者は、多系統萎縮症パ−キンソン型(multiple system atrophy Parkinson type)(MSA−P)と診断された78歳の男性であった。患者の症状は、進行性の運動過小−硬直症候群、起立性調節障害及び連続的なめまい及び平衡障害によって特徴付けられた。患者は衝動性眼球運動及び両上肢の対称性硬直を示した。架空の綱渡りの綱の上でバランスをとることは、不安定さ及び平衡感覚の喪失と関連していた。脳のFDG−PETは、レビ−小体型認知症を示唆している、頭頂葉皮質及び後頭皮質の両方の代謝の低下を示した。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始し、最初の1週間は1日当たり3g、その後は1日当たり5gの用量で投与した。患者は治療開始前に検査され、非常に顕著な不安定な歩行及びめまいを伴う、上述の臨床症状を示した。
1ヶ月の治療後、投薬を中止し、そして患者を評価した。患者は、めまいの主観的改善を報告したが、臨床検査は、架空の綱渡りの綱の上の平衡感覚の改善を示し、これは、患者が以前の検査と比較して如何なる困難性もなく実行できたものであった。歩行解析を実施した。
投薬なしの1ヵ月後、患者は安定した症状を報告した。めまい及び歩行の不安定性の悪化は報告されなかった。歩行解析が実施された。
投薬なしで2ヶ月後、歩行解析が実施され、そして、歩行の速度の減少、歩幅の減少及びFGAスコアの悪化が示された。患者は、脚の進行性の衰弱及び歩行の不安定さの増加を含む、一般的な症状の悪化を報告した。
[患者3]
この症例研究の患者は、多系統萎縮症パ−キンソン型(multiple system atrophy Parkinson type)(MSA−P)と診断された78歳の男性であった。患者の症状は、進行性の運動過小−硬直症候群、尿失禁、初期の認知機能障害、及び小さなステップ及び月に2〜3回の転倒を伴う歩行障害により特徴付けられた。認知障害は、精神運動性の低下及び断続的な精神錯乱によって特徴付けられた。ダットスキャン(Datscan)は、ド−パミン受容体の減少を明らかにし、それは診断を支持した。脳のFDG−PETは、主に線条体低下代謝を示した。レボドパ療法は、副作用のため中断された。
患者は、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始し、最初の1週間は1日当たり3g、その後は1日当たり5gの用量で投与した。患者は、アセチル−DL−ロイシン投与の1ヶ月後に評価された。患者の妻は、認知機能の著しい改善を報告した。精神錯乱のエピソ−ドは、完全に消えた。患者の認知構造は、はるかにより明確かつより真っすぐな(ストレ−トの)ように思われた。歩行機能の改善はなかった。患者の妻は、投薬の継続を支持した。
[実験例14]
この症例研究の患者は、脊髄小脳失調症28(spinocerebellar ataxia 28)(SCA 28)と診断された45歳の男性であった。遺伝子検査は、AFG3L2における既知の病原性変異体を示した。患者の症状は、30歳から進行性の小脳症候群によって特徴付けられていたが、それはまた、不明瞭言語、不安定歩行、平衡障害及びめまいによって特徴付けられていた。患者の父親及び祖母も同様の症状で苦しんでいた。患者は、協調運動検査におけるディスメトリア及び衝動性眼球運動、失調性歩行、不明瞭な発語、下肢の誇張された反射、下肢の痙縮及び左側の正のBabinski徴候(positive Babinski sign)を示した。cMRIは、小脳の著しい萎縮を示した。
患者は、1日当たり5gの用量でアセチル−DL−ロイシンによる治療を開始した。治療を開始する前に歩行解析を実施した。治療の約1ヶ月後、投薬を中止し、そして患者は評価された。患者は、症状の改善、特にめまいの減少(ほぼ消失)、及びより安定した歩行を報告した。患者は、彼がもはやロボットのように歩いておらず、手すりを使わずに階段を登ることができると報告した。歩行解析が実施されたが、パラメ−タ−の改善が示された。
[実験例15]
[患者1及び2]
この症例研究の患者は、それぞれ24歳(患者1)と19歳(患者2)の2人の女性姉妹であった。患者は、毛細血管拡張性運動失調症を患っている。
患者1は、発達上のマイルスト−ンの遅れを示した。患者は2歳までは歩かず、小脳性運動失調症の徴候及び症状、発作を有していたが、眼、耳、及び胸部において、全身性の末梢の顕著な筋緊張亢進及び毛細血管拡張症と一緒に有していた。診断は9歳の時に確立された。患者1の眼球運動機能は、右よりも大きい左への凝視(gaze to the left)における及び真っ直ぐな凝視(gaze straight−ahead)を伴う下眼瞼向き眼振(downbeat−nystagmus)、上への凝視保持眼振(gaze−holding nystagmus upward)、垂直及び水平なサッカ−ド円滑追跡(vertical and horizontal saccadic smooth pursuit)、水平に及び垂直にハイポメトリック・サッカ−ド(hypometric saccades horizontally and vertically)、を示したが、制限された上向き運動性(restricted motility upward)を伴ってであった。
治療が開始される前に、患者1の検査は、22/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):21.8秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):90.2秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTND):125.8秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):12.5
視覚的アナログ尺度(患者による評価):99
ビデオ眼球運動記録法(video−oculography)の結果は次の通りであった。
患者1は、検査後にアセチル−DL−ロイシン(5g/日)による治療を開始した。治療の1ヶ月後、患者は再評価された。介護者は、発話及び歩行の改善を報告した。患者自身は、変化を感じなかった。検査により、運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアの15.5/40が示された。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)分析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):18.5秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):77.9秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):101.3秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):13
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されたように):85
ビデオ眼球運動記録法(video−oculography)の結果は次の通りであった。
患者1のSARA及びSCAFIのサブセットは、治療後に改善され、そして、ビデオ眼球運動記録法は固視安定性の有意な改善及び下眼瞼向き眼振の強度の減少を示した。
患者2は、遅延した発達のマイルスト−ン(delayed developmental milestones)、1歳の時の発作、全身性筋緊張低下(generalized hypotonia)、左右相称に内反尖足を有する下肢の拘縮(contractures of low extremities with pes equinovarus bilaterally)、反射消失(areflexia)、3歳の時の急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia)、わずかに肥大化した脾臓(enlarged spleen)、高コレステロ−ル血症(hypercholesterolemia)、低色素性小球性貧血(hypochromatic microcytic anemia)、色素性の母斑(pigmental naevi)、及び白斑(vitiligo)を示した。最初の症状は15ヶ月の年齢で患者の両親によって気づかれた。患者2の眼球運動機能は、矩形波様眼球運動(square wave jerks)、垂直成分を伴う右よりも大きな左の凝視保持眼振(gaze−holding nystagmus left greater than right with vertical component)、下眼瞼向き眼振(downbeat−nystagmus)、サッカ−ド円滑追跡(saccadic smooth pursuit)、下向きよりも大きな上向きの垂直凝視麻痺(vertical gaze palsy upward greater than downward)、及び輻輳障害(impaired convergence)を示した。
治療が開始される前に、患者2の検査は、28.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):サポ−トなしでは実施できない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):300秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):299.2秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):13.5
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されたように):45
患者2は検査後にアセチル−DL−ロイシン(5g/日)による治療を開始した。治療の1ヶ月後、患者は再評価された。介護者は、微細運動機能、手の振戦、及び発話の改善を報告した。患者自身は何の利益も認知しなかった。検査は、運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアの23.5/40を示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):サポ−トなしではできない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):300秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):300秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):14
視覚的アナログ尺度(患者により評価されたように):80
ビデオ眼球運動記録法は、患者2において、固視安定性の改善及び下眼瞼向き眼振強度の有意な改善を示した。
[患者3]
この症例研究の患者は、幼児期から毛細血管拡張性運動失調症を患っている19歳の女性であったが、
−遅延した運動発達(delayed motor development)、小脳性運動失調の兆候及び症状(cerebellar ataxia signs and symptoms)、末端の筋緊張亢進を伴う著しい体軸性筋緊張低下(pronounced axial hypotonia with acral hypertonia)、車椅子に限定されるような整形外科的変形尖足両側的に横扁平足を伴う足の重度の拘縮(severe contractures of feet with orthopedic deformities pes equinus et transversoplanus bilaterally)、反復拮抗運動不全(dysdiadochokinesis)、及び減少した固有受容性知覚を伴う低い四肢の反射消失(areflexia of low extremities with decreased proprioceptive perception)を有しており、そして、
−非ホジキンリンパ腫(Non−Hodgkin lymphoma)、多型性(polymorphism)MTHFR (C677T)、下唇のリンパ管腫(lymphangioma of the lower lip)、胆嚢結石症(cholecystolithiasis)、拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy)、色素性の母斑(pigmental naevi)、胸部腰部の脊柱後側弯(thoraco−lumbar kyphoscoliosis)、及び両眼の強膜の毛細血管拡張症(scleral teleangiectasias)を有していた。
患者の眼球運動機能は、右及び左への凝視保持眼振(gaze−holding nystagmus)、衝動性眼球運動(saccadic eye movements)、全方向特に水平方向のゆっくりとした衝動性運動(slow saccades)、矯正追い付き衝動性運動(corrective catch−up saccades)を伴う病理学的前庭眼球反射(pathological vestibulo−ocular reflex)、及び前庭動眼反射(vestibulo−ocular reflex)を伴う病理学的固視抑制(pathological visual−fixation suppression)を有していた。
治療が開始される前、患者の検査は、23/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):実施できない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):150秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):161.6秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):14
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されるように):80
患者は、検査の約6ヶ月後にアセチル−DL−ロイシン(5g/日)による治療を開始した。治療が7か月を僅かに超えたとき、患者は再評価された。介護者及び患者は、より明確な仕様もなく、健康の全般的な改善を報告した。検査は、21.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):実施できない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):124.5秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):147.5秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):10
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されたように):80
患者は、SARA及びSCAFIサブセット9HPTのわずかな改善、及びすべての位置で固視安定性の有意な改善及び注視保持眼振の強度の減少を示した。
[患者4]
この症例研究の患者は、4歳から毛細血管拡張性運動失調症に罹患している15歳の女性であった。7歳から、患者は重度の小脳性運動失調症の徴候及び症状、微細運動機能障害、反射消失伴う筋緊張低下、筋萎縮症、及び別々の拘縮を伴う足底屈を示した。患者は、車椅子に拘束されたが、コンスタントなサポ−トを受けて、歩くことができた。患者は、重度の溶血性貧血(hemolytic anemia)、低ガンマグロブリン血症(hypogammaglobulinemia)、強膜及び胸部の毛細血管拡張(telangiectasias on the scleras and chest)、コルチコステロイド(corticosteroid)摂取による二次的クッシング症候群(Secondary Cushing syndrome)を有したが、中枢神経系非ホジキンリンパ腫(CNS Non−Hodgkin lymphoma)の疑いがあった。
患者の眼球運動機能は、上向きのゆっくりとした目の偏位(slow deviation of the eyes upward)、中心位置での左叩眼振(left beating nystagmus in the central position)、水平方向に下向きの成分を伴い(horizontally with downbeating component)、全方向の注視眼振(gaze−holding nystagmus in all directions)、突然の頭の動きでの驚き(startle with sudden head movement)、を示した。
治療が開始される前、患者の検査は、23.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)分析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):実施できない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):124.5秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):52.3秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):14
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されるように):70
患者は、検査後にアセチル−DL−ロイシン(5g/日)による治療を開始した。治療が1ヶ月をわずかに超えた後、患者は再評価された。患者とその母親は、特に手の振戦の低下と微細運動機能の改善により、手書き文字の改善を報告した。患者はまた、飲水がより容易になり、ストロ−が不要になったと報告した。家族は、安定性が増し、より少ないサポ−トしか必要としなくなったと、歩行の改善を説明した。検査は、18.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):実施できない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):93.5秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):101.7 秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):15.5
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されたように):70
患者は、利き手のSARAとSCAFIサブセット9HPTの改善を示した。ビデオ眼球運動記録法は、すべての位置で、自発的及び凝視保持眼振の強度の減少及び固視安定性の一般的な改善を示した。
[患者5]
この症例研究の患者は、幼児期から毛細血管拡張性運動失調症を患っている10歳の少年であったが、
−遅延した精神運動の発達(delayed psychomotor development)、転倒の発生率が高い(increased incidence of falls)14か月齢での不安定な歩行(instable walking)、重度の小脳性運動失調症の徴候及び症状(severe cerebellar ataxia signs and symptoms)、麻痺性構音障害(dysarthria)及び機能性構音障害(dyslalia)、まれな頭部振戦(infrequent head tremor)、遅い精神運動テンポ(slow psychomotor tempo)、筋萎縮(muscular atrophy)及び反射低下(hyporeflexia)を伴う筋緊張低下(hypotonia)、胸郭領域(thoracal area)内の後彎症(kyphosis)を伴う頭の前屈(anteflexia)、横扁平足(pedes transversoplani)、肩甲骨の奇形(scapullae allatae)、夜驚症を伴う睡眠時異常行動(parasomnia with pavor nocturnus)、及び自閉症(autism) を有していたが、また、
−著しい免疫抑制、軟口蓋の毛細血管拡張症(telangiectasias on the soft palate)、強膜(scleras)、失禁(incontinence)、及び無力症の体質(asthenic habitus)を有していた。
患者は車椅子に拘束されたが、強い継続的なサポ−トを受けながら数ステップを実施することができた。患者の眼球運動機能は、顕著な頭の前屈(pronounced head anteflexia)を伴う眼球運動の失行(oculomotor apraxia)、右及び左に向くときの「総括的な」頭及び目の動き及び低速の垂直の衝動性運動(サッカ−ド)を伴う垂直凝視麻痺、左への低速の水平な衝動性運動(サッカ−ド)、右への衝動性眼球運動(サッカ−ド)麻痺、特に垂直に、制限された眼球運動、及び全ての位置における固視不安定性を示した。
治療が開始される前に、患者の検査は、24.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)分析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):コンスタントなサポ−トなしでは歩くことができない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):102.7秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):116.8 秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):6
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されるように):90
患者は、検査後にアセチル−DL−ロイシン(5g/日)による治療を開始した。治療の約1ヶ月後、患者は再評価された。患者の母親は、歩行の安定性が著しく改善されたと述べたが、治療前は、彼は常に後ろ向きに転倒し、そして、部分的に「運搬」されなければならなかったということであった。投薬中、彼は介護者の手を握るだけで歩くことができた。
微細運動機能、手の振戦の強さ、及び体の保持力が向上した。微細運動機能の改善は、独立して摂食及び摂水のような日常活動において反映された。患者は、1.5kg体重が増え、食欲も高まった。検査は、20.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)分析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):サポ−トなしでは歩くことができない
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):103.6秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):88.8秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):7.5
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されたように):80
治療からほぼ7ヶ月後、患者は再び再評価された。患者の母親は、著しくより安定となった歩行を説明したが、この知見は、治療後の最初の評価から一定の(コンスタントな)ままであった。患者は、改善された集中力及び発話を有した。患者は、自分で立ち上がることができ、一般的に日々の活動に対してより自立していた。患者は、改善された食欲を備え、更に3kgを獲得し、そして、筋力の向上を示した。
検査は、17.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコアを示した。患者の脊髄小脳性運動失調症機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):15.3秒(手を握って)
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):92.4秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):98.3秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):11
視覚的アナログ尺度(患者にって評価されるように):100
患者は、治療から1年をわずかに超える後に再評価され、改善された社会的相互作用、活動、及び敏しょう性を示した。患者の両親は、失禁の改善を報告した。患者は、午前中に嘔吐を伴う繰り返し起こる前頭限局痛を発症した。家族歴に基づいて、限局痛は小児片頭痛に起因するかもしれないと疑われた。
検査は、16.5/40の運動失調の評価及び格付けのための尺度(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)(SARA)スコア尺を示した。患者の脊髄小脳性運動失調症の機能指数(Spinocerebellar Ataxia Functional Index)(SCAFI)解析の結果は次の通りであった。
平均8メ−トル歩行テスト(8−meters Walking Test)(8MW):13.9秒(母親が手を握って、彼だけで歩くことができる)
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストドミナント(9−Hole Pegboard Test Dominant)(9HPTD)(右):95.6秒
MW 9ホ−ルペグボ−ドテストノンドミナント(9−Hole Pegboard Test Non−Dominant)(9HPTND):127.6秒
MW PATAワ−ドテスト(Word Test):14.5
視覚的アナログ尺度(患者によって評価されるように):95
アセチル−DL−ロイシンによる治療で、患者は、改善されたSARA及びSCAFIサブテストを、向上した生活の質を、一般に改善した固視安定性を、及び自発的及び凝視保持眼振の強度の低下を、特に垂直面において、示した(1ヶ月後)。
[患者6]
この症例研究の患者は、失調性歩行及び立脚(スタンス)、手の振戦を伴う微細運動機能障害、嚥下障害及び発話障害、眼球運動障害、及び認知機能及び集中力に関する問題を有していた、毛細血管拡張性運動失調症を患う10歳の女性であった。最初の症状は1歳の時に観察された。
ベ−スライン検査の後、患者は、最初の週は1.5g/日、2週目以降は3g/日のアセチル−DL−ロイシン治療を開始した。患者は、それぞれ、治療の1ヶ月後及び6ヶ月後に評価された。治療の1ヵ月後、患者は、減少した手の振戦を伴う増大した微細運動能力、改善した姿勢の安定性及び歩行、増大した発音、及び増大した自信を示した。治療の6ヵ月後、患者は、安定した全身状態、安定した歩行と立脚(スタンス)、及び改善された手書きを有した。患者は、しかしながら、不安に悩まされていたが、それは、反応に悪影響を及ぼすと予期されるであろう。
各評価における患者のSARA及びSCAFIスコアは、次の通りであった。
[実験例16]
この症例研究の患者は、脊髄小脳失調症(Spinocerebellar Ataxia)(SCA) 1と遺伝的に診断された60歳代前半の女性であった。治療前は、患者は、話すこと及び飲み込むこと、両腕の振戦、立脚(スタンス)及び歩行の中程度の運動失調及び痙縮に関して深刻な問題を有していた。患者はまた睡眠障害を有していた。
アセチル−DL−ロイシン(5g/日)での投薬の3週間で、痙縮及び眼球運動機能の障害を含む臨床検査によって更に実証されたように、全ての症状は有意に改善した。
3ヵ月後、投薬は中止された。2週間後、徴候及び症状の強度は治療前と同じであった。治療は再び開始され、患者は、2年以上経過した後も副作用なしに同じ投与量を維持し続けてきた。
患者の娘は、執拗な徴候的な効果を備える経時的な病気のかなりの進行を報告したが、しかし、逸話的に治療から長期の徴候的な有効性が観察されたと報告した。
[実験例17]
この症例研究の患者は、不安定な歩行及び頻繁な転倒、夜間の幻視、レム睡眠障害を伴う70歳の女性であった。患者は、微細運動能力の障害及び注意機能とアウェアネスにおける変動を伴う対称性運動過小−硬直症候群を有していた。
患者はレビ−小体型認知症と診断された。脳のFDG−PETは、頭頂葉及び後頭葉におけるシナプス機能不全を示し、ダットスキャン(DATscan)は、その診断を支持する、シナプス前ドパミントランスポ−タ−の変性を示した。1日4回のレボドパ(Levodopa)100mg、及び、夜にクエチアピン(Quetiapin)25mgでの治療は、症状を改善した。
患者はアセチル−ロイシン(1週間、3g/日;その後、5g/日)の服用を開始し、4週間後に評価された。その患者は、疲労の増加及び平衡(バランス)及び発話の悪化を報告した。投薬は、3g/日に減らし、そして、患者は、約2週間後に投薬を中止するように指示された。
患者は、投薬中止後約1ヶ月で再評価され、投薬量の減少による症状の改善及び投薬中止後の症状の悪化は報告されなかった。
[実験例18]
この症例研究では、4人の患者(男性の兄弟)が、眼球運動失行症4型を伴う運動失調を患っていたが、その後そのように診断された。より高齢の3人の兄弟は、それぞれ発症時の年齢が12歳、11歳、10歳であった。15/16歳までに、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始する前に、その3人の年長の兄弟は、急場しのぎの方法で歩いていた、と患者の母親から報告された。より高齢の兄弟は、それぞれ25歳、23歳、19歳でアセチル−ロイシンによる治療を開始し、約4年間治療を受けてきた。これら3人の患者に関する利用可能な長期臨床デ−タはない。
最も若い兄弟は発症時に11歳であった。彼は13歳の時にアセチル−DL−ロイシンによる治療を始めた。治療中、最年少の兄弟は、18歳近くまでは急場しのぎの方法では歩かなかった、と患者の母親から報告された。患者の母親はまた、最年少の兄弟が、彼の年長の兄弟と比較して各年齢で、改善された微細運動能力及び改善された発話を有していたと報告した。最年少の兄弟について利用可能な長期臨床デ−タはない。
[実験例19]
NPC患者の重症度は、病気のさまざまなパラメ−タ−を評価し、各パラメ−タ−に5からなるスコア(より高いスコア=より高い重症度)を与える、臨床重症度スコア(clinical severity score)(CSS)を割り当てることによって定量化されてもよい。Yanjaninら、「ニ−マン−ピック病C型における発症年齢から独立した、線形臨床進行」、Am J Med Genet Part B 153B:132−140を参照。未治療の患者において、病気の進行が直線的(リニア)であるように見えるので、個々においてCSSが経時的にどのように変化するかを典型的に予測することができる。例えば、もし患者Aが0月及び12月の間に8のCSSから12のCSSに移動したならば、36月までに患者は、20のCSSを有するであろうと予測できる。年間重症度増分スコア(annual severity increment score)(ASIS)は、患者の年齢によって、患者のCSSを割ることによって計算された、CSSにおける年間変化率を数量化する。例えば、もし未治療の患者Bが2歳で8のCSSを有するならば、その患者のASISは4になるであろう。毎年、患者は、4のCSSポイントずつ進行すると予想され、4歳になると患者のCSSは16になるであろう。もし治療的介入が病気の進行を遅らせるか又は阻止したならば、その患者は、そのような治療後にベ−スライン時よりも小さいASISスコアを有すると予想されるであろう。
10人のNPC患者は、長期間にわたって、4.5g/日でアセチル−ロイシンを投与された。CSSは、眼球運動、歩行、発話、嚥下、微細運動能力、認知力、記憶力、及び発作に対して、ベ−スライン及びさまざまな時点で決定された。各パラメ−タ(眼球運動、歩行など)に対する個々のCSS値を加算することによって、ベ−スライン時及びそのような各時点での総CSSが計算された。表25に示されるように、CSSが評価された治療開始後の日数は、各患者で異なっていた。
以下の表26〜34は、それぞれ、全体的な、眼球運動の、歩行の、発話の、嚥下の、微細運動能力の、認知力の、記憶力の、及び発作のCSSを示す。
ベ−スライン及び各時点でのASISは、各患者のCSS及び評価時の年齢を使用して計算された。各時点における各患者の全体的なASISを下記表35に示す。
表26及び図10Aに示すように、10人の患者のうちの誰も実験の経過にわたってCSSの全体的な増加を示さなかった。患者6は、ベ−スライン及び時点2の間でCSSの増加を示したが、時点3までにベ−スラインに戻り、時点4でそこに留まった。10人の患者のうち4人(患者2、5、6、及び7)は、実験の経過中、コンスタントなCSSを有していたが、これらの個体において病気が進行しなかったことを示した。10人の患者のうち6人(患者1、3、4、8、9、及び10)は、実験の経過中、CSSの減少を示したが、これは病気が進行せず、実際には、重症度が低下したことを示した。改善は、さまざまなサブスコアで見られた。患者1:歩行; 患者3:微細運動能力; 患者4:歩行及び発話; 患者8:眼球運動及び微細運動能力; 患者9:記憶力; 患者10:認知であった。図11A〜図11Jにおいて提示されたデ−タは、それぞれ、棒グラフの形態で、各患者のCSSサブスコアを示す。
表35及び図10Bに示されるように、10人の患者全員が、ベ−スライン時のASISと比較して治療中にASISの減少を示した。患者2、5、6、及び7では、年齢が増加してもCSSは同じままであり、その結果、ASISのわずかな減少となった。患者1、3、4、8、9、及び10において、年齢が増加する一方で、CSSが減少したためにASISの減少がより大きかった。
[実験例20]
ここにおいて記述されるように、ニ−マン−ピック病C型(NPC)マウス・モデルは、アルツハイマ−病(Alzheimer’s disease)(AD)と多くの病理学的特徴を共有する。野生型NPC1−/−マウスは、3週齢からアセチル−dl−ロイシン(日々0.1g/kg体重)で処置(治療)された。マウスを8週齢で犠牲にした。野生型、未処置(未治療)の野生型NPC1−/−マウス、及びAL−処置(治療)の野生型NPC1−/−マウスに対して、小脳内の総アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)(APP)レベルと相対的に、アミロイド前駆体タンパク質C末端フラグメント(amyloid precursor protein C−terminal fragments)(APP−CTF)のレベルが評価された。微小管結合タンパク質1A/1B−軽鎖3−ホスファチジルエタノ−ルアミン・コンジュゲ−ト(microtubule−associated protein 1A/1B−light chain 3−phosphatidylethanolamine conjugate)のレベルはまた、野生型、未処置(未治療)の野生型NPC1−/−マウス、及びAL処置(治療)済野生型NPC1−/−マウスに対するチュ−ブリン・ロ−ディング・コントロ−ル(tubulin loading control)のレベルに対して評価された。
APP−CTFデ−タは、図12Aに示される。デ−タは、NPC1マウス脳内のAPP−CTF(APP−CTFs)の前述の蓄積を再現した。アセチル−dl−ロイシンによる処置(治療)は、APP−CTF(APP−CTFs)の低下と関連していた。
LC3−IIデ−タは、図12Bに示される。デ−タは、NPC1マウス脳内のLC3−IIの前述の蓄積を再現した。アセチル−dl−ロイシンによる処置(治療)は、LC3−IIの低下と関連していたが、これは、オ−トファジック・フラックス(autophagic flux)の部分的回復を示している。
[結論]
アセチル−ロイシン処置(治療)は、NPC1マウス脳内におけるAD病状における改善と関連していた。
[実験例21]
NPCチャイニ−ズハムスタ−卵巣(CHO)細胞は、1 mMのアセチル−DL−ロイシン、アセチル−L−ロイシン、アセチル−D−ロイシン、DL−ロイシン、L−ロイシン、及びD−ロイシンで、それぞれ、72時間インビトロ(in vitro)で処置(治療)された。相対的なリソソ−ム量は、ライソトラッカ−により定量化された。
NPC CHO細胞は、野生型コントロ−ルに相対的な、上昇したライソトラッカ−蛍光レベルを有すると観測されたが、このことは、疾患表現型の増加したリソソ−ム量を示している。
NPC CHO細胞をアセチル−DL−ロイシン、アセチル−L−ロイシン、アセチル−D−ロイシン、DL−ロイシン、L−ロイシン、D−ロイシンのそれぞれで処置(治療)すると、細胞内のリソソ−ム量が大幅に減少した。図14に提示されたデ−タは、未処置(未治療)の野生型の線維芽細胞に相対する倍率変化として表されたリソソ−ム量で、各処置(治療)に対する結果を示す。アスタリスク(**)は、未処置(未治療)のNPC1−無に対して<0.05のp値を示す。
デ−タは、ロイシン及びアセチルロイシンがインビトロ(in vitro)で同様の活性を示し、並びに、リソソ−ム量を減少させることにより乱されたリソソ−ム蓄積の調整と関連したこと、かつ、リソソ−ム蓄積障害の表現型を直接的に修正したことの両方を示している。
[実験例22]
[患者1]
この症例研究の患者は、下肢近位筋筋力低下を示す55歳の女性であった。彼女は、42歳からゆっくりと進行する頭部の屈筋麻痺があり、筋強直性ジストロフィ−2型と診断された(遺伝学的に確認された)。55歳で診察したとき、彼女は、感覚症状を報告しなかったが、過去2年間に発生した、夜間及び1日の休息期間のレストレスレッグズ(むずむず脚)症候群を訴えた。ド−パミン作動薬(dopamine agonist)での前処置(前治療)は症状緩和無しであった。血清クレアチンキナ−ゼ活性は、400 IU/Lまで、緩やかに上昇しただけであった。患者は、RLS診断インデックス(RLS diagnostic index)(RLS−DI)を使用して評価された(Waltersら、Sleep Med 2003; 4(2):121−132参照)。患者の国際RLS 重症度尺度(International Restless Legs Syndrome Rating Scale)スコア(IRLS)は36であったが、それにより、重度のRLSが診断された。患者は、最初の週は1日当たり3gの用量で、続いて、2週目以降は1日当たり5gの用量で、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始した。アセチル−DL−ロイシン治療の14日以内に、IRLSは26に低下し、更に、5週間後、IRLSは9にまで低下した。治療の12週後、4週間の治療の中断により、IRLSは28に増加した。治療の再導入により、2週間後にスコアが8に再度減少した。22週間以上に渡って治療を継続すると、IRLSスコアは8で安定した。
[患者2]
この症例研究の患者は、下肢の下肢近位筋筋力低下を示す72歳の女性であった。彼女は48歳から徐々に進行する頭部の屈筋麻痺があり、15年前に筋強直性ジストロフィ−2型と診断された(遺伝学的に確認された)。72歳で診察したとき、彼女は、感覚症状を報告しなかったが、過去8年間に渡って発生した、夜間及び1日の休息期間のレストレスレッグズ(むずむず脚)症候群を訴えた。ド−パミン作動薬(dopamine agonist)、L−ド−パ(L−dopa)、プレガバリン(pregabaline)、オピオイド(opiods)による前処置(前治療)では、持続的な症状緩和無しであった。血清クレアチンキナ−ゼ活性(serum creatine kinase activity)は、300 IU/Lで穏やかに上昇した。鉄の測定及び全ての追加の実験室調査は正常であった。患者はRLS−DIを使用して評価され、患者のIRLSは32であったため、中等度から重度のRLSが診断された。患者は、最初の週は1日当たり3gの用量で、その後2週目以降は1日当たり5gの用量で、アセチル−DL−ロイシンでの治療を開始した。アセチル−DL−ロイシン治療の14日以内に、IRLSは22に低下し、更に5週間後には、IRLSは7に低下した。28週間を超えて治療を継続すると、IRLSスコアは8で安定した。
[患者3]
この症例研究の患者は、50歳から緩やかに進行する上肢及び下肢の軽度の近位筋筋力低下をしめした、73歳の男性であった。この患者は、約16年前にマカ−ドル・ミオパチ−(McArdle myopathy)と診断された(遺伝学的に確認された)。73歳で診察したとき、彼は感覚症状を報告しなかったが、激しい疲労及び低下したスタミナを訴えた。患者は更に、過去12年に渡って発生した、夜間及び1日の休息期間に、レストレスレッグズ(むずむず脚)症候群を報告した。ド−パミン作動薬(dopamine agonist)、L−ド−パ(L−dopa)、プレガバリン(pregabaline)による前処置(前治療)では、持続的な症状緩和無しであった。血清クレアチンキナ−ゼ活性(serum creatine kinase activity)は、200 IU/Lで穏やかに上昇したが、しかし、患者は、過去20年間に横紋筋融解症(rhabdomyolysis)の5つのエピソ−ド(episodes)を有していた。鉄の測定を繰り返し、全ての追加の実験室の調査は正常であった。患者はRLS−DIを使用して評価され、患者のIRLSは34であったため、重度のRLSと診断された。患者は、最初の週は1日当たり3gの用量で、その後2週目以降は1日当たり5gの用量で、アセチル−DL−ロイシンによる治療を開始した。アセチル−DL−ロイシン治療の21日以内に、IRLSは20に低下し、更に10週間後、IRLSは10に低下した。30週間を超えて治療を継続すると、IRLSスコアは10で安定した。更に、患者の疲労は53から28に低下した(疲労重症度スケ−ル(Fatigue Severit Scale):9(最小)から63(最大))。