以下、本実施形態の音響通信システム10について図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるように、音響通信システム10は、1つまたは複数の放音部の一例としてのスピーカ12を有する音響送信装置20と、スピーカ12から放音された音響信号ASを収音(受信)する収音部の一例としてのマイクロホン31(図2参照)を有する情報端末15に内蔵された音響受信装置30とを備える。音響信号ASには、音電子透かし技術により埋込情報SC(図2参照)が埋め込まれている。利用者は、可搬型の情報端末15を携帯して移動する。利用者が、スピーカ12から放音される音響信号ASをマイクロホン31で収音可能な所定エリア内に位置するときに、情報端末15に内蔵された音響受信装置30が音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCを受信する。
例えば、利用者は、情報端末15を携帯して、駅や商店街、公共施設などの放送主体が利用者に向けて提供情報を提供することを目的として想定する想定受信エリア内に位置するときに、スピーカ12から放送される音響信号ASに音電子透かし技術により埋め込まれた埋込情報を受信する。情報端末15は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン等である。音響受信装置30は、音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCに基づいて、放送主体が提供する提供情報を取得する。このようにして、音響受信装置30を利用する利用者は、放送主体が提供する提供情報を受け取ることができる。
放送主体は、例えば、音響信号ASを放送する者もしくは事業者であり、または、音響信号ASの放送を依頼する者もしくは事業者である。放送主体は、音響信号ASを自ら形成する者または事業者であってもよい。放送主体は、音響信号ASを自ら形成する者または事業者でなくてもよい。例えば、放送主体は、店舗を運営する事業者、鉄道等の公共交通機関を運営する事業者、学校等を含む学習施設の事業者または団体、美術館や展示会を運営する事業者、プール等のレジャー施設を運営する事業者、宿泊施設を運営する事業者、災害警報を放送する自治体等である。
提供情報は、放送主体が利用者に提供する情報である。提供情報の保存場所は限定されない。一例では、提供情報は、インターネットIN上のサーバに記憶される。他の例では、提供情報は、音響受信装置30に記憶される。提供情報の例を次に挙げる。放送主体が店舗を運営する事業者の場合、提供情報は、店舗内の商品の詳細内容である。放送主体が自治体である場合、提供情報は、災害時に避難する場所を示す地図である。放送主体が展示を運営する事業者である場合、提供情報は、展示品の詳細を示す情報である。提供情報は、音響信号ASとして放送されたアナウンスを他言語に翻訳したアナウンスであってもよい。放送主体が映画館である場合、提供情報は、映画の台詞の字幕文であってもよい。提供情報は、詳細な情報が保存されている場所を示すリンク情報(例えば、URL:Uniform Resource Locator)であってもよい。提供情報は、情報端末15の表示部17(図3参照)に表示されてもよいし、情報端末15のイヤホンジャックに接続されたヘッドホンまたはイヤホンから放音されたり、あるいは情報端末15のスピーカから放音されたりしてもよい。
音響信号ASは、可聴域の周波数を含む音波である。音響信号ASには、埋込情報SCが音電子透かしによって埋め込められる。音響信号ASは、音響送信装置20が備えられる放送装置11から放送される。音響信号ASの例として、アナウンス、警報、一般用または視力障害者用の音サイン、BGM(バックグラウンドミュージック)、美術館や展示会において出力される説明の音声、番組の放送が挙げられる。
図2に示されるように、音響送信装置20は、装置本体20Aと、装置本体20Aに接続された放音部の一例としてのスピーカ12とを備える。音響送信装置20は、原音信号OS(図3参照)に音電子透かしによって埋込情報SCを埋め込んで生成した音響信号ASを、スピーカ12から放音する。音響信号ASは、音声または音楽よりなる原音信号OSと、原音信号OSに所定の時間間隔で埋め込まれた複数の埋込情報SC1,SC2,…SCnにより構成される。これらの埋込情報SCk(但しkはk=1,2,…,n)は、音強度測定モードでは、埋込情報SCkの音強度に関する音強度情報である。音電子透かし技術で埋込情報SCkをハイディングするために、音響信号AS中のアナウンス等の原音に隠れるように、原音の音強度よりも小さな音強度で埋め込まれる。
音響受信装置30は、収音部の一例としてのマイクロホン31を備える。音響受信装置30は、マイクロホン31によって収音した音響信号ASから複数の埋込情報SCkを抽出する。ここで、音響信号AS中の1つの原音OS1の音強度(例えば単位強度「1」)に対する埋込情報SCkの音強度αk(k=1,2,…,n)の比率が大き過ぎると、ハイディング性能が低下し、アナウンス等の原音信号OSが聴きづらくなる。一方、音響信号AS中の1つの原音OS1の音強度に対する埋込情報SCkの音強度αk(k=1,2,…,n)の比率が小さ過ぎると、ハイディング特性が高まってアナウンス等の原音信号OSが聴き易いものの、埋込情報SCの受信特性が低下し、埋込情報SCの受信漏れの発生頻度が高まる。このため、ハイディング特性と受信特性との両立を図るうえで、原音OS1の音強度に対する埋込情報SCの音強度αkを適正な値に設定することが重要になる。
音響受信装置30が、音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCをマイクロホン31で受信する際の受信のし易さは、音響受信装置30の受信環境に影響される。音電子透かし技術で音響信号ASに埋め込まれる識別情報ID等の埋込情報SCは音波である。そのため、埋込情報SCの受信のし易さは、スピーカ12からマイクロホン31までの距離やスピーカ12の向き以外に、スピーカ12から音響受信装置30までの間で音波の伝達を妨げる障害物の有無(音波易伝達性)、音響受信装置30の周辺エリアにおける騒音などのノイズに係る環境が影響する。障害物には、音を吸収または反射する、鉄塔、煙突、ビル等の建物などがある。また、スピーカ12の向きが、想定受信エリアRAに向けられていても、想定受信エリアRA内の位置によって埋込情報SCの受信し易さが異なる場合がある。この種の様々な要因により埋込情報SCの受信し易さが変化し、受信漏れが発生し易くなる。一方、原音OS1の音強度に対する埋込情報SCkの音強度αkが大き過ぎると、埋込情報SCのハイディング特性が低下し、アナウンス音声や音楽等の原音が聴きづらくなる。
よって、原音OS1の音強度に対する埋込情報SCkの音強度αkを一律に決めると、上述の受信環境の悪いエリアでは埋込情報SCの音強度が小さ過ぎて受信漏れが発生したり、反対に埋込情報SCの音強度をもっと小さくしてハイディング特性を高められるにも関わらず埋込情報SCが大き過ぎる音強度で埋め込まれたりする不都合が発生する。
そこで、本実施形態では、音響送信装置20は、音強度αkの異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnを埋め込んで音響信号ASをスピーカ12から放音する。情報端末15を携帯する放送主体側の作業者は、想定受信エリアRA内で情報端末15により音響信号ASを収音することで、埋込情報SC1,SC2,…,SCnを受信する。そして、音響受信装置30は、音響信号ASに埋め込まれた音強度αkの異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnのうち受信できた埋込情報SCkの音強度αkを示す音強度情報ADkを出力する。音強度情報ADkの出力は、情報端末15の表示部17(図3参照)への表示または情報端末15から無線通信による送信である。
図2に示されるように、音響受信装置30は、出力部の一例としてアンテナ16および送信部36(図4参照)を有する可搬型の情報端末15に備えられる。送信部36は、音強度情報ADを無線通信で出力する。また、音響送信装置20は、アンテナ13を備える。音響送信装置20と情報端末15は、アンテナ13,16を介して互いに無線通信が可能である。この無線通信は、インターネットINまたは公衆通信網を介してアンテナ13,16間で行われる。音響送信装置20は、アンテナ13を介した無線通信によってインターネットINに接続可能である。また、情報端末15は、アンテナ16を介した無線通信によってインターネットINに接続可能である。インターネットINには、サーバ40が接続されている。音響受信装置30が無線通信で出力した音強度情報ADは、インターネットIN上のサーバ40に送信される。サーバ40はプロバイダまたは放送主体が所有する。音響送信装置20は、情報端末15が出力して登録された音強度情報ADをサーバ40からダウンロードしてもよい。なお、無線通信は、アンテナ13,16間で直接行われてもよい。
また、音響受信装置30は、出力部の一例として図3に示される表示部17を有する可搬型の情報端末15に備えられる。音響受信装置30は、図3に示されるように、受信できた埋込情報SCkに含まれる音強度情報ADを表示部17に表示させる。
埋込情報SC1,SC2,…,SCnの異なる音強度αは、n段階に設定されている。すなわち、埋込情報SCの音強度である埋込強度として、音強度レベル1〜nが設定されている。音強度αの調整段数は、2段階、3段階、5段階、7段階、10段階のいずれであってもよい。本例では、音強度αの段数が、音強度レベル1〜7の7段階(n=7)に設定された例で説明する。音響受信装置30が、音強度測定テストで、例えば、音強度レベル4以上の埋込情報SCを受信できた場合、音強度レベル4〜7の埋込情報SCを受信可能である。この場合、音響受信装置30は、音強度レベル1〜3の埋込情報SCを受信不能である。
図3は、情報端末15の表示部17に表示された音強度測定テストの測定結果の一例を示す。図3に示される例では、情報端末15の表示部17に、受信できた音強度のうち最低の音強度を示す音強度情報が表示される。音強度レベル4以上の埋込情報SCを受信できた例では、図3に示されるように「埋込情報の音強度」として、受信できた音強度レベル4〜7のうち最低レベルの「音強度レベル:4」が表示される。この音強度レベルの値は、相対値を示す。
この最低の音強度レベル4未満の音強度レベル1〜3は音強度が小さ過ぎる場合に相当する。また、この最低の音強度レベル4またはこの音強度レベル4よりも1段階大きい音強度レベル5は適正な音強度に相当する。さらに、この最低の音強度レベル4よりも2段階以上大きい音強度レベル6,7は音強度が大き過ぎる場合に相当する。本実施形態の音響送信装置20は、音強度測定テストで得られた最低の音強度または最低の音強度よりも1段階分のマージンを見込んで最低の音強度よりも1段階高い音強度を設定する。
本実施形態の音響送信装置20は、音響受信装置30が表示部17に表示した音強度レベルの値または無線通信で送信した応答信号に含まれる音強度レベルの値に基づいて、埋込強度を、受信できた最低の音強度レベルまたはそれよりも1段階高い音強度に調整する。図3に示される最低の音強度レベルが「4」であった例では、音響送信装置20は、最低の音強度「4」またはこれより1段階高い音強度「5」を設定する。
このように音響通信システム10では、音響送信装置20が音強度測定テストの測定結果に応じて音響信号ASに埋め込む埋込情報SCの埋込強度を設定する。つまり、音響送信装置20は、埋込情報SCの埋込強度を、想定受信エリアRA内に位置する情報端末15が確実に受信できる適正な音強度に調整する。
また、音響信号AS中の原音信号OSの音強度を上げることで、埋込情報SCの音強度を上げることができる。本実施形態では、情報端末15は、音強度測定テストにおいて音響信号ASの音強度も測定する。音響信号ASの音強度には、人が聴き取りやすい範囲がある。この音響信号ASの音強度を適正な値に設定するために、音響信号ASがない状態で想定受信エリアRAのノイズの音強度を測定するノイズ測定と、複数種の音強度で音響信号ASを放音して想定受信エリアRA内で音響信号ASの音強度の音響信号測定とを行う。ノイズ測定結果から得られるノイズの音強度に応じて、利用者がアナウンスやBGMを聴き取り易い音強度を設定する。そのため、音響送信装置20は、ノイズ測定と音響信号測定とを含む事前テストを行い、事前テストの結果、情報端末15から応答されたノイズの音強度および音響信号ASの音強度に基づいて、原音信号OSの音強度を設定する。そして、音響送信装置20は、事前テストで決定した音強度で音響信号ASを放音し、この音響信号ASに音強度(埋込強度)の異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnを埋め込んで音強度測定テストを行う。
そして、音響送信装置20は、音強度測定テストで情報端末15が受信できた埋込情報SCの音強度に基づいて適正な音強度(埋込強度)を決定する。音響送信装置20は、その決定した埋込強度で識別情報ID(図4参照)を埋込情報SCとして埋め込んだ音響信号ASを放音することで、想定受信エリアRA内の利用者が携帯する情報端末15に埋込情報SCを送信する。想定受信エリアRA内の情報端末15は、音響信号ASに埋込情報SCとして埋め込まれた識別情報IDを確実に受信可能になる。
そして、音響受信装置30は、埋込情報SCとして埋め込まれた識別情報IDを受信すると、識別情報IDと関連付けられた提供情報を取得する。詳しくは、音響受信装置30は、識別情報IDを基に不図示のメモリに記憶された参照テーブルを参照することで、識別情報IDに対応する提供情報を取得する。音響受信装置30は、情報端末15の表示部17に提供情報を表示させたり、イヤホンジャックに接続されたヘッドホンまたはイヤホン、あるいはスピーカから提供情報を放音させたりする。識別情報と提供情報との対応関係を示す参照テーブルは、情報端末15の記憶部に記憶されてもよいが、情報端末15が無線通信でアクセス可能なサーバ40に記憶されてもよく、この場合、情報端末15がサーバ40にアクセスして提供情報を取得してもよい。例えば、音響信号AS中の原音信号OSがアナウンス音声である場合、アナウンス音声に埋め込まれた埋込情報SCを受信した情報端末15は、埋込情報SCから取得される識別情報IDを基に参照テーブルを参照することで、識別情報IDに対応する提供情報を取得し、その提供情報を表示または音声により出力する。
次に、図4を参照して、音響送信装置20と音響受信装置30の構成について説明する。音響送信装置20は単体で構成されてもよいが、例えば、図4に示される放送装置11に備えられる。放送装置11は、放送作業を行う作業者が入力操作するためのキーボードまたは操作パネル等の入力操作部14を備える。また、音響受信装置30は、情報端末15に備えられる。なお、本実施形態では、空間を伝送される音波による音信号と電気信号とを区別するため、音波を音響信号AS、電気信号を音響信号Sasと表記する。また、原音信号OSは、電気信号である。また、埋込情報SC1,SC2,…,SCnは、音響信号ASに埋め込まれたものは音波であり、音響信号Sasに埋め込まれたものは電気信号である。
まず、音響送信装置20について説明する。音響送信装置20は、原音信号OSを入力する第1入力部21と、識別情報IDを入力する第2入力部22とを備える。この音響送信装置20は、音響送信装置20を統括的に制御する第1制御部23を備える。第1制御部23は、音強度測定モードと通常モードとを有する。第1制御部23は、音強度測定モード時に、音強度情報ADをエンコード部26に出力する。また、第1制御部23は、通常モード時に、識別情報IDをエンコード部26に出力する。
また、音響送信装置20は、原音信号OSに埋め込む識別情報IDの音強度を調整する音強度調整部24を備える。さらに、音響送信装置20は、拡散符号発生器25と、エンコード部26と、原音信号OSに埋込情報SCとしての拡散符号を畳み込む機能を有する埋込部27とを備える。また、音響送信装置20は、埋込部27による埋込情報SCが埋め込まれた音響信号Sasに基づいてスピーカ12から音響信号ASを放音させる放音処理部28およびアンテナ13が受信した音強度情報ADkを受信する受信部29を備える。
なお、本実施形態の音響送信装置20は、音響信号ASの音切れ、過小音、ノイズ等が原因で、音響受信装置30側で埋込情報SCの受信漏れがあっても、同じ埋込情報SCを複数回ずつ繰り返して送信することで、受信漏れを抑制する。また、複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnを順番に1回ずつ送り、これを複数回繰り返してもよい。
拡散符号発生器25は、拡散符号を発生させる。拡散符号は、どのような符号であってもよい。例えば、拡散符号として、PN系列が用いられる。PN系列とは、Pseudo-Noise Sequence:疑似雑音系列と呼ばれる系列である。
エンコード部26は、音響送信装置20が通常モードにあるとき、識別情報IDを埋込情報SCに符号化(エンコード)する。また、エンコード部26は、音響送信装置20が音強度測定モードにあるとき、第1制御部23から送られた音強度情報ADを埋込情報SCに符号化(エンコード)する。
埋込部27は、埋込情報SCを原音信号OS畳み込むことで、埋込情報SCを原音信号OSに埋め込む。原音信号OSは、例えば、アナウンス等の音声信号やBGM等の音楽信号である。本例の原音信号OSは、埋込情報SCを伝送する伝送媒体(搬送波)として機能する。また、本例の原音信号OSは可聴域の周波数を有する。なお、原音信号OSは非可聴域の周波数を有してもよい。
埋込部27が、埋込情報SCを原音信号OSに畳み込んで埋め込む方式は、拡散法による拡散方式である。この拡散方式は、特にエコー拡散方式またはスペクトラム拡散方式である。埋込方式は、他の方式であってもよい。なお、PN系列の拡散符号が秘密鍵として機能する拡散方式を採用することが、埋込情報SCの秘匿性を高める点で好ましい。
受信部29は、情報端末15のアンテナ16から無線通信で送信された音強度情報ADkを、アンテナ13を介して受信する。アンテナ13,16間の通信は、図2に示されるインターネットIN等の通信網を介して送信される。受信部29が受信した音強度情報ADkは第1制御部23に入力される。第1制御部23は、受信部29から入力した音強度情報ADkに基づき適正な音強度αpを決定する。第1制御部23は、決定した適正な音強度αpを音強度調整部24に指示する。音強度調整部24は、原音信号OSにエンコード部26が識別情報IDを符号化した埋込情報SCを適正な音強度αpで埋め込む。
放音処理部28は、音響信号Sasに基づいてスピーカ12から音響信号ASを放音させる。音響信号ASには、音強度の異なる埋込情報SC1,SC2,…,SCnが埋め込まれた音響信号ASと、識別情報IDが埋込情報SCとして埋め込まれた音響信号ASとがある。
受信部29は、音響受信装置30側のアンテナ16から無線通信で送信された後述する音強度情報ADkを、アンテナ13を介して受信する。受信部29は、受信した音強度情報ADkを第1制御部23に出力する。
音響送信装置20は、CPUおよびメモリ等が実装された電子基板を備える。メモリには、音響信号生成処理用のプログラムが記憶されている。CPUがメモリから読み出したプログラムを実行することで、音響送信装置20内でソフトウェアよりなる各部23〜28が構成される。CPUおよびメモリによりコンピュータが構成される。そして、音響送信装置20内のメモリに記憶されたプログラムは、コンピュータを、第1制御部23、音強度調整部24、拡散符号発生器25、エンコード部26、埋込部27、放音処理部28および受信部29として機能させる。なお、各部23〜29は、ソフトウェアとハードウェアとにより構成されてもよいし、ハードウェアにより構成されてもよい。
次に、図4を参照して、音響受信装置30について説明する。
音響受信装置30は、音響信号ASを収音する収音部の一例として機能するマイクロホン31と、マイクロホン31が収音した音響信号ASを電気信号である音響信号Sasに変換する不図示の受信回路とを備える。また、音響受信装置30は、音響受信装置30を統括的に制御する第2制御部32を備える。なお、受信回路は情報端末15に備えられてもよい。
音響受信装置30は、受信回路から入力した音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する抽出部33およびデコード部34を備える。抽出部33は、音強度測定モード時に、音響信号Sasから埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する。これらの埋込情報SC1,SC2,…,SCnは、音強度情報AD1,AD2,…,ADnが符号化されたものである。また、抽出部33は、通常モード時に、音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。埋込情報SCは、識別情報IDが符号化されたものである。なお、本実施形態では、抽出部33およびデコード部34により、抽出部の一例が構成される。
抽出部33は、音電子透かし方式の拡散法に応じた方法で、音響信号Sasから埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する。音電子透かし方式がエコー拡散法である場合、抽出部33は、原音信号OSに含まれる原音のエコーとして時間軸に拡散された埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する。詳しくは、抽出部33は、音響信号Sasに対してケプストラム変換を行うことで埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する。また、音電子透かし方式がスペクトラム拡散法である場合、抽出部33は、原音信号OSに含まれる原音にスペクトラム拡散された埋込情報SCを復調することで、音響信号Sasから埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する。また、音電子透かし方式が他の方式である場合、抽出部33は、他の方式に応じた抽出処理を行って音響信号Sasから埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する。なお、エコー拡散法の詳細については後述する。
デコード部34は、埋込情報SC1,SC2,…,SCnを復号する。デコード部34は、音強度測定モード時に埋込情報SC1,SC2,…,SCnを音強度情報AD1,AD2,…,ADnに復号する。デコード部34は、エンコード部26で採用する拡散に対して逆拡散を行うことで、埋込情報SC1,SC2,…,SCnを音強度情報AD1,AD2,…,ADnに復号する。詳しくは、デコード部34は、埋込情報SC1,SC2,…,SCnに対して、埋込部27が拡散させたPN系列と同じPN系列との相互相関をとることで、埋込情報SC1,SC2,…,SCnを符号化前の音強度情報AD1,AD2,…,ADnに復号する。デコード部34は、復号した音強度情報AD1,AD2,…,ADnを判定部35へ送る。
また、デコード部34は、通常モード時に埋込情報SCを識別情報IDに復号する。デコード部34は、エンコード部26で採用する拡散に対して逆拡散を行うことで、埋込情報SCを識別情報IDに復号する。詳しくは、デコード部34は、埋込情報SCに対して、埋込部27が拡散させたPN系列と同じPN系列との相互相関をとることで、埋込情報SCを符号化前の識別情報IDに復号する。デコード部34は、復号した識別情報IDを判定部35へ送る。
また、音響受信装置30は、デコード部34のデコード結果が音強度情報ADkであるか識別情報IDであるかを判定する判定部35と、判定部35の判定結果である音強度情報ADkを、アンテナ16を介して無線通信で送信する送信部36と、音強度情報ADkを表示部17に表示する表示処理を行う表示処理部37とを備える。
判定部35は、2つの判定処理を行う。1つは、判定部35は、デコード部34から入力した情報が、音強度情報ADであるか識別情報IDであるかを判定する第1判定を行う。第1判定の結果、識別情報IDであれば、その識別情報IDを第2制御部32へ送る。また、判定部35は、音強度情報ADkであれば、受信できた音強度情報ADk,…,ADnのうち最低の音強度を示す音強度情報ADkを送信部36および表示処理部37へ送る。
送信部36は、判定部35から入力した音強度情報ADkを、情報端末15が備える不図示の送受信回路およびアンテナ16を介して無線通信で送信する。送信部36は、音響送信装置20又はサーバ40を宛先に指定して音強度情報ADkを送信する。
第2制御部32は、受信した識別情報IDを入力すると、不図示のメモリに記憶された参照テーブル(図示略)を参照する。参照テーブルは、識別情報IDと提供情報とを対応付けたテーブルデータである。識別情報IDは、例えば、数ビット〜10数ビットの範囲内の所定ビット(例えば8ビット)の情報量をもつ。識別情報IDは、その情報量(ビット数)に応じて、例えば、10〜10000種の範囲内の所定種(例えば、約500種)の設定が可能である。第2制御部32は、デコード部34が復号した識別情報IDを入力すると、その識別情報IDを基に参照テーブルを参照してその識別情報IDと対応する提供情報を取得する。
そして、第2制御部32は、表示部17(図3参照)に提供情報を表示したり、情報端末15のイヤホンジャックに接続されたヘッドホンまたはイヤホン、あるいはスピーカから提供情報を放音したりする。提供情報の具体例は、前述のとおりである。例えば、表示部17には、店舗の商品の一覧、クーポン取得情報、ポイント取得情報、地図、アナウンスの翻訳文などが表示される。また、イヤホンまたはスピーカからは、展示品の説明アナウンス、案内音声、アナウンス音声の翻訳音声などが放音される。なお、音響受信装置30は、情報端末15が内蔵するGPS受信器18を備える。GPS受信器18は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)が測位した情報端末15の位置を示す位置情報を取得する。この位置情報は、後述する第3実施形態で使用する。
音響受信装置30を備える情報端末15は、CPUおよびメモリ等が実装された電子基板を備える。CPUおよびメモリによりコンピュータが構成される。メモリには、音響信号受信処理用のプログラムが記憶されている。このプログラムは、例えば、インターネットIN経由で情報端末15にインストールされたアプリケーションである。CPUがメモリから読み出したプログラムを実行することで、音響受信装置30内でソフトウェアよりなる各部32〜37が構成される。つまり、音響受信装置30内のメモリに記憶されたプログラムは、コンピュータを、各部32〜37として機能させる。詳しくは、音響受信装置30内のメモリに記憶されたプログラムは、コンピュータを、第2制御部32、抽出部33、デコード部34、判定部35、送信部36および表示処理部37として機能させる。なお、各部32〜37は、ソフトウェアとハードウェアとにより構成されてもよいし、ハードウェアにより構成されてもよい。
次に、図5、図6を参照して、埋込情報SCを埋め込む埋込方法について説明する。図5、図6は、エコー拡散法による原音とエコーカーネルとを示す。図5に示されるように、エコーの原音OS1に対してオフセット時間Δtを空けたオフセット時刻から時間軸を複数の時間フレームに区切り、複数の時間フレームにPN系列を用いて「0」「1」の二値のそれぞれに対応する異なる時間差の位置に複数のピークが位置する。α1は、原音OS1の音強度を単位強度「1」とすると、拡散長Lのときの埋込強度である。つまり、α1は、エコーを形成するPN系列のピークの振幅である。エコー拡散法では、埋込強度α1を、エコー法における単発エコーの埋込強度に対して1/Lにしても同等の検出精度が確保される。このような埋込強度α1をもつ図5に示す埋込情報SCを、標準の埋込情報SC1とする。
音電子透かしの埋込処理は、埋込部27が原音OS1とエコーカーネルとを畳み込むことにより行われる。また、検出時は、抽出部33が、原音信号OSに埋込情報SCが埋め込まれた音響信号Sasに対してケプストラム変換を行う。一方、スペクトラム拡散法を採用する場合、埋込部27は、変調前の搬送波に対して数10倍の占有帯域に埋込情報SCをPN系列を用いて拡散させる。検出時は、抽出部33が逆拡散を行って埋込情報SCを復調することで取り出す。
図6は、標準の埋込強度α1(図5)に対してm倍の埋込強度m・α1に調整された埋込情報SCmの例において、エコー拡散法による原音OS1とエコーカーネルとを示す。埋込情報SCmの埋込強度m・α1は、図5に示される標準の埋込強度α1のm倍に調整される。音強度調整部24は、埋込情報SCmの埋込強度を、標準の埋込情報SC1の埋込強度α1に対してm倍に調整する。ここで、埋込強度m・α1は、原音OS1の音強度「1」よりもエコーの音強度が小さいことを条件とし、0<m・α1<1を満たす。特に、本例では、埋込強度m・α1は、0.1<m・α1<0.5を満たす。つまり、最大の倍率mで調整した最大の埋込強度αmaxでも、原音OS1の音強度に対して1/2以下の音強度に抑えられる。
また、標準の埋込強度α1に対する倍率mは、例えば、0.1≦m≦3を満たす。倍率mは、標準の埋込情報SC1の倍率であるm=1を中心とする所定範囲に複数段階設定される。倍率mは、例えば、m=0.4,0.6,0.8,1.0,1.2,1.4,1.6の7段階設定される。なお、音強度の調整段数は、7段階に限定されず、例えば、2段階、3段階、5段階、10段階、20段階でもよい。また、埋込強度m・α1の調整は、段階的な非連続な調整に限らず連続的な調整であってもよい。なお、埋込情報SC1,SC2,…,SCnの異なる音強度の段数と、音強度調整部24が調整可能な音強度の調整段数は、同じであってもよいし、音強度の調整段数の方が多くてもよい。
なお、コンピュータが、原音信号OSに音強度の異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnが音電子透かしとして埋め込まれた音響信号ASをスピーカ12から放音させる処理が、放音処理ステップに相当する。また、コンピュータが、マイクロホン31が収音した音響信号Sasから複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する処理が、抽出ステップの一例に相当する。さらに、コンピュータが、音響受信装置30が抽出できた埋込情報SCkに含まれる音強度情報ADkを出力する処理が、出力ステップの一例に相当する。また、コンピュータが、出力ステップで出力された音強度情報を音響送信装置が入力部により入力した音強度情報ADkに基づいて原音信号OSに埋め込む埋込情報SCの音強度(埋込強度)を調整する処理が、音強度調整ステップに相当する。
次に、音響通信システム10の作用について説明する。
音強度測定を行うとき、放送主体の作業者は、情報端末15を携帯して想定受信エリアRA(図2参照)内に位置する。音響送信装置20は、音強度測定モードにおいて、音強度の異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnを例えば拡散法で埋め込んだ音響信号ASを、スピーカ12から放音する。音強度の異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnは、それぞれの音強度(埋込強度)を示す音強度情報AD1,AD2,…,ADnが符合化されたものである。
詳しくは、第1制御部23は、エンコード部26に音強度情報AD1,AD2,…,ADnを出力するとともに、音強度調整部24を介して埋込部27が埋込情報SC1,SC2,…,SCnを埋め込むタイミングでそれぞれの音強度(埋込強度)を制御する。つまり、第1制御部23は、埋込部27が原音信号OSに埋込情報SCkを埋め込む音強度を、埋込部27が埋込情報SCkを埋め込むタイミングでその埋込情報SCkの符合化前の音強度情報ADkが示す音強度(埋込強度)に調整する。この結果、スピーカ12から複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnがそれぞれ異なる音強度(埋込強度)で埋め込まれた音響信号ASが放音される。
想定受信エリアRA内に位置する情報端末15は、マイクロホン31により音響信号ASを収音する。マイクロホン31で収音された音響信号Sasは、情報端末15に内蔵された音響受信装置30内の抽出部33に不図示の受信回路を介して入力される。抽出部33はマイクロホン31から入力した音響信号ASから埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する。次に、デコード部34が埋込情報SC1,SC2,…,SCnを音強度情報AD1,AD2,…,ADnに復号する。判定部35は、音強度測定モード時は、受信できた音強度情報ADk,…,ADnのうち最低の1つを判定し、その判定結果である受信できた最低の音強度情報ADkを、送信部36を介してアンテナ16から無線通信で出力する。
この受信できた最低の音強度情報ADkは、アンテナ13により音響送信装置20が受信するか、一旦、サーバ40に送られる。サーバ40に送られた場合、音響送信装置20はサーバ40から音強度情報ADkをダウンロードする。受信部29を介して音強度情報ADkを受信した第1制御部23は、情報端末15が受信できた最低の音強度情報ADkで示された音強度αkを適正な音強度αpとして採用するか、最低の音強度情報ADkで示される音強度αkよりも1段階高い音強度αk+1を適正な音強度として採用する。なお、サーバ40が、最低の音強度情報ADkを基に適正な音強度αpを判定し、その音強度αpの情報を音響送信装置20がサーバ40からダウンロードして取得してもよい。
第1制御部23は、音強度調整部24に対して通常モードで使用する音強度として適正な音強度αpを設定する。この結果、図6に示されるように、通常モード時の埋込強度m・α1が、図5に示される標準の埋込強度α1を適正な音強度αpに応じてm倍した値に調整される。例えば、音強度測定モード時の音強度測定において、図5に示される標準の埋込強度α1が大き過ぎた場合、倍率mがm<1とされ、埋込強度α1よりも小さな値の埋込強度m・α1に調整される。また、音強度測定において、図5に示される標準の埋込強度α1が小さ過ぎた場合、倍率mがm>1とされ、埋込強度α1よりも大きな値の埋込強度m・α1に調整される。
こうして適正な音強度αpが設定された後の通常モードでは、原音信号OSに対して識別情報IDが適正な音強度αpで埋め込まれる。すなわち、第1入力部21から入力される原音信号OSに対して、第2入力部22から入力される識別情報IDがエンコード部26で符合化された埋込情報SCが埋込部27により適正な埋込強度αpで埋め込まれる。この埋込情報SCが埋め込まれた音響信号ASはスピーカ12から放音され、想定受信エリアRA内を移動中の利用者が携帯する情報端末15のマイクロホン31に収音される。この結果、情報端末15内の音響受信装置30において、マイクロホン31からの音響信号Sasから抽出部33により抽出される埋込情報SCの受信漏れが抑制され、埋込情報SCを確実に受信できる頻度が高まる。
情報端末15では、第2制御部32が、受信した識別情報IDを基に不図示のメモリに記憶された参照テーブルを参照してその識別情報IDに対応する提供情報を取得する。第2制御部32は、取得した提供情報を、表示部17に表示したり、情報端末15のイヤホンジャックに接続されたヘッドホンまたはイヤホン、あるいはスピーカから放音したりする。
例えば、情報端末15の表示部17には、原音信号OSのアナウンスに関連する、店舗情報、商品情報、クーポン情報、地図、展示品の説明文、アナウンスの翻訳文などのうちいずれか1つまたは複数が表示される。また、情報端末15に接続されたヘッドホン、イヤホンあるいはスピーカから、原音信号OSのアナウンスに関連する、店舗情報、商品情報、クーポン情報、道案内音声、アナウンスの翻訳音声などのうちいずれか1つまたは複数が放音される。例えば、原音信号OSがBMG等の音楽である場合、情報端末15を携帯する利用者が移動中の想定受信エリアRAが商店街やデパートである場合、店舗情報、商品情報、クーポン情報、地図、道案内音声のうち1つまたは複数が、情報端末15に表示または放音される。また、原音信号OSがBMG等の音楽である場合、情報端末15を携帯する利用者が位置する想定受信エリアRAが、美術館、博物館などの館内、駅の構内、または競技場や会議場などの会場である場合、説明文や多言語対応の説明音声、案内文や多言語対応の案内音声などのうち1つまたは複数が、情報端末15に表示または放音される。
このように、想定受信エリアRAの受信環境等が考慮された適正な音強度(埋込強度)で識別情報IDをアナウンスや音楽等の原音信号OSに埋め込むことができるので、情報端末15において識別情報IDの受信漏れ画像発生し難い。したがって、識別情報IDに対応する提供情報が情報端末15に表示または放音されない提供エラーを抑制できる。
以上詳述述したように、第1実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)音響通信システム10は、埋込情報SCが埋め込まれた音響信号ASを放音するスピーカ12を有する音響送信装置20と、音響信号ASを収音するマイクロホン31を有する音響受信装置30とを備える。音響送信装置20は、異なる音強度で原音信号OSに埋め込まれるとともにそれぞれの音強度を示す音強度情報を含む複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnが埋め込まれた音響信号ASをスピーカ12から放音させる放音処理部28と、原音信号OSに埋め込む埋込情報SCの音強度(埋込強度)を調整する音強度調整部24と、調整された音強度で原音信号OSに埋込情報SCを埋め込む埋込部27とを備える。また、音響受信装置30は、マイクロホン31が収音した音響信号ASから埋込情報SC1,SC2,…,SCnを抽出する抽出部33と、抽出部33が抽出できた埋込情報SCに含まれる音強度情報ADkを出力する出力部を備える。音響送信装置20は、出力部によって出力された音強度情報ADkを入力する入力部を有し、音強度調整部24は、入力した音強度情報ADkに基づいて埋込情報SCの音強度を調整する。
この構成によれば、音響信号ASに含まれる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnのうち音響受信装置30が受信した音響信号Sasから抽出できた埋込情報SCkに含まれる音強度情報ADkが出力部によって出力される。音響送信装置20は、その出力された音強度情報ADkを取得し、その取得した音強度情報ADkに基づく適正な音強度αpで埋込情報SCを音響信号ASに埋め込むことができる。
(2)音響送信装置20は、出力部によって出力された音強度情報ADkを入力する入力部を有し、音強度調整部24は、入力した音強度情報ADkに基づいて音強度を調整してもよい。この構成によれば、音響受信装置30が受信(抽出)できた埋込情報SCに含まれる音強度情報ADが出力部によって出力される。音響送信装置20は、音響受信装置30から出力された音強度情報ADkを入力部によって入力することで、音響信号ASに埋め込む埋込情報SCの適正な音強度αpを取得できる。よって、送り手側の音響送信装置20において音響信号ASを適正な音強度αpで埋め込むことができる。
(3)音響受信装置30は、表示部17を有する情報端末15に備えられる。出力部は、受信できた音強度情報ADkを表示する表示部17である。また、入力部は、表示部17に表示された音強度情報ADkを入力操作によって音響送信装置20に入力する。この構成によれば、情報端末15の表示部17に表示された音強度情報ADを見た作業者が、音響送信装置20の入力操作部14を操作するなどの入力操作によって音強度情報ADを音響送信装置20に入力することで、音響送信装置20は音響受信装置30が受信できた音強度αkを示す音強度情報ADkを取得できる。よって、音強度調整部24は、音強度情報ADkに基づいて適正な音強度(埋込強度)を設定できる。
(4)音響受信装置30は、アンテナ16および送信部36を有する情報端末15に備えられる。出力部は、音強度情報ADkを無線通信で出力するアンテナ16および送信部36である。入力部は、音強度情報ADkを受信するアンテナ13および受信部29である。よって、情報端末15から無線通信で送信された音強度情報ADkが、アンテナ13および受信部29が受信することで音響送信装置20に入力される。音強度調整部24は、音響受信装置30に入力された音強度情報ADkに基づいて埋込情報SCの適正な音強度αpを設定できる。
(5)音響送信装置20は、入力部が入力した音強度情報ADkに基づいて音強度を決定する音強度決定部の一例として第1制御部23を備える。よって、音響送信装置20は、音強度情報ADkに基づく適正な音強度αpで埋込情報SCを原音信号OSに埋め込んだ音響信号ASをスピーカ12から放音することができる。この結果、想定受信エリアRA内に位置する利用者が携帯する情報端末15内の音響受信装置30は、音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCの受信漏れを抑制することができる。
(6)音響送信装置20は、音強度情報AD1,AD2,…,ADnを個々に埋込情報SC1,SC2,…,SCnに変換する符号化と、識別情報IDを埋込情報SCに変換する符号化とを行うエンコード部26を備える。埋込部27は、音強度調整部24により調整された音強度αpで埋込情報SCを原音信号OSに埋め込むことができる。抽出部は、音響信号ASから抽出した埋込情報SCを復号するデコード部34を備える。よって、原音信号OSに埋込情報SCが拡散方式で埋め込まれることから、音強度情報AD1,AD2,…,ADnを異なる音強度で埋め込んでも、また識別情報IDを埋め込んでも、原音の聴感に悪影響を与えることを極力抑制しつつ音響信号ASを送信することができる。
(7)音響送信装置20は、異なる音強度で原音信号OSに埋め込まれるとともにそれぞれの音強度を示す音強度情報AD1,AD2,…,ADnを個々に含む複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnが埋め込まれた音響信号ASをスピーカ12から放音させる放音処理部28と、音強度調整部24と、埋込部27とを備える。音強度調整部24は、音響受信装置30の出力部によって出力された音強度情報ADkを入力部により入力するとともに音強度情報ADkに基づいて原音信号OSに埋め込む埋込情報SCの音強度αを調整する。そして、埋込部27は、調整された音強度αpで原音信号OSに埋込情報SCを埋め込む。よって、音響送信装置20が音響通信システム10の一部として使用されることで、上記(1)の効果が同様に得られる。
(8)音響受信装置30は、音響信号ASを収音するマイクロホン31と、マイクロホン31が収音した音響信号ASから埋込情報SCを抽出する抽出部33と、抽出できた埋込情報SCkに含まれる音強度情報ADkを出力する出力部とを備える。よって、音響受信装置30が音響通信システム10の一部として使用されることで、上記(1)の効果が得られる。
(9)音響送信装置20が備えるプログラムは、コンピュータを、放音処理部28、音強度調整部24、埋込部27として機能させる。よって、コンピュータにプログラムを実行させることにより、上記(7)で述べた音響送信装置20と同様の効果が得られる。
(10)音響受信装置30が備えるプログラムは、コンピュータを、抽出部、出力部として機能させる。よって、コンピュータにプログラムを実行させることにより、上記(8)で述べた音響受信装置30と同様の効果が得られる。
(11)スピーカ12を有する音響送信装置20と、マイクロホン31を有する音響受信装置30とを備えた音響通信システム10における音電子透かしの埋込強度設定方法は、放音処理ステップと、抽出ステップと、出力ステップと、音強度調整ステップとを備える。この音電子透かしの埋込強度設定方法によれば、音響通信システム10と同様の作用効果が得られる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態の音響通信システム10は、リアルタイムで音強度を調整する。なお、音響送信装置20と音響受信装置30の構成は、前記第1実施形態と同様である。
図7に示されるように、音響送信装置20は、スピーカ12から音強度(埋込強度)が異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnが埋め込まれた音響信号ASが放音される。想定受信エリアRA内の利用者が携帯する情報端末15は、マイクロホン31により音響信号ASを収音する。情報端末15に内蔵される音響受信装置30は、音強度(埋込強度)が小さ過ぎる音強度の埋込情報SCk-1を受信することができず、最低の音強度以上の音強度の埋込情報SCk,…,SCnを受信できる。音響受信装置30は、情報端末15のアンテナ16から受信できた最低の音強度情報ADkを無線通信で送信する。この送信された音強度情報ADkは、無線通信またはインターネットINあるいは公衆無線通信網を介して音響送信装置20のアンテナ13に受信される。音響送信装置20は、受信した音強度情報ADkを基に適正な音強度(埋込強度)を決定する。第1制御部23は、音強度調整部24を制御し、埋込部27が原音信号OSに埋込情報SCを埋め込むときの埋込強度を、決定した適正な音強度に調整する。
図4に示す音響送信装置20は、メモリに図8中の左側に示される音響送信装置側のプログラムを記憶する。また、図4に示す音響受信装置30を内蔵する情報端末15は、メモリに図8中の右側に示される情報端末15側のプログラムを記憶する。
以下、図8を参照しつつ第2実施形態における音響通信システム10の作用について説明する。
まずステップS11において、音響送信装置20の第1制御部23は、原音信号OSに音強度を変えてテスト用の埋込情報SC1,SC2,…,SCnを埋め込む。つまり、第1制御部23は、音強度情報AD1,AD2,…,ADnをエンコード部26により埋込情報SC1,SC2,…,SCnに符号化し、これら埋込情報SC1,SC2,…,SCnを原音信号OSにそれぞれの音強度を変えて埋め込む。
次のステップS12において、第1制御部23は、音強度情報AD1,AD2,…,ADnが埋込情報SC1,SC2,…,SCnとしてそれぞれ異なる音強度で埋め込まれた音響信号ASをスピーカ12から送信(放音)する。この音響信号ASは情報端末15のマイクロホン31が収音する。
図8に示されるステップS21において、情報端末15の第2制御部32は、埋込情報SCを受信したか否かを判定する。詳しくは、第2制御部32は、マイクロホン31からの音響信号Sasから抽出部33が抽出した埋込情報SCkを受信できたか否かを判定する。埋込情報SCkには音強度情報ADkとテストの旨を示す値とが含まれている。埋込情報SCを例えば8ビットとすると、そのうち音強度情報ADkに3ビット、テストかそれ以外かを判定する判定用に1ビットが使用される。音響受信装置30では、抽出部33が埋込情報SCkを抽出する。埋込情報SCkはデコード部34により復号され、音強度情報ADkとテストの旨を示す値とが取り出される。
ステップS22において、第2制御部32は、テストであるか否かを判定する。詳しくは、埋込情報SCkにテストの旨を示す値があればテストと判定し、テストの旨を示す値でなければテストではないと判定する。この判定は、第2制御部32が判定部35に行わせてもよい。第2制御部32は、テストであればステップS23に進み、テストでなければステップS25に進む。音強度測定モード時は、埋込情報SC1,SC2,…,SCnにテストの旨を示す値が含まれているので、テストと判定される。
ステップS23では、第2制御部32は、埋込情報SCkから音強度情報ADkを取得する。本例では、第2制御部32は、判定部35に埋込情報SCが音強度情報ADであるか識別情報IDであるかを判定させ、その判定結果を取得する。
次のステップS24では、第2制御部32は、音強度情報ADkを含む応答信号を無線通信で送信する。本例では、第2制御部32は、判定部35の判定結果が音強度情報ADkであると、判定部35に対して、受信した音強度情報ADk,…,ADnのうち最低の音強度情報ADkを音響送信装置20へ送信する指示を与える。その結果、判定部35は、受信できた音強度情報ADk,…,ADnのうち最低の音強度情報ADkの送信を送信部36に指示する。送信部36は、指示された最低の音強度情報ADkをアンテナ16から無線通信で送信する。この送信された最低の音強度情報ADkはインターネットINや公衆無線通信網を介するなどして音響送信装置20へ送信される。
その間、ステップS13において、音響送信装置20の第1制御部23は、応答信号を受信したか否かを判定している。そして、情報端末15のアンテナ16から無線通信により送信された音強度情報ADkを含む応答信号を、音響送信装置20のアンテナ13が受信すると、第1制御部23はステップS14に進む。
ステップS14において、第1制御部23は、音強度情報ADkに基づいて適正な音強度に調整する。すなわち、第1制御部23は、受信した最低の音強度情報ADkから適正な音強度を決定する。そして、第1制御部23は、音強度調整部24に適正な音強度への調整を指示する。音強度調整部24は、埋込部27が埋め込みを行う際の音強度(埋込強度)を、指示された適正な音強度に調整する。こうして適正な音強度が設定され、音強度測定モードが終了する。なお、音響送信装置20は、定期または不定期にこの音強度測定モードに移行する。
次のステップS15において、第1制御部23は、原音信号OSに適正な音強度で識別情報IDを埋め込む。詳しくは、音強度調整部24により埋込部27が原音信号OSに埋込情報SCを埋め込む音強度(埋込強度)は適正な値に調整されているので、エンコード部26により識別情報IDが符号化された埋込情報SCが、埋込部27によって適正な音強度(埋込強度)で原音信号OSに埋め込まれる。この結果、原音信号OSに識別情報IDが埋込情報SCとして適正な音強度で埋め込まれた音響信号Sasが生成される。
ステップS16において、第1制御部23は、音響信号ASを送信する。詳しくは、第1制御部23は、音響信号Sasに基づき放音処理部28を介してスピーカ12から音響信号ASを送信(放音)する。スピーカ12から放音された識別情報IDが埋込情報SCとして埋め込まれた音響信号ASは、情報端末15のマイクロホン31に収音される。
そして、ステップS22において、コンピュータの判定部35は、埋込情報SCが識別情報IDであることから、テストではないと判定する。詳しくは、情報端末15内では、音響信号ASを収音したマイクロホン31からの音響信号Sasから抽出部33が埋込情報SCを抽出し、その埋込情報SCがデコード部34によりデコードされることにより音響受信装置30が識別情報IDを受信する。判定部35は、その識別情報IDがテストの旨の値を含まずテストではないと判定すると、ステップS25に進む。このとき、識別情報IDは、判定部35から第2制御部32へ送られる。
ステップS25において、第2制御部32は、識別情報IDに対応する提供情報を出力する。詳しくは、第2制御部32は、識別情報IDを基に参照テーブルを参照することでその識別情報IDに対応する提供情報を取得する。そして、第2制御部32は、提供情報を表示または音声により出力する。すなわち、第2制御部32は、表示処理部37により提供情報を表示部17に表示させたり、不図示の放音処理部によりヘッドホン、イヤホン、スピーカから提供情報を放音させたりする。情報端末15が、表示または放音により利用者に提供する提供情報は、第1実施形態と同様である。
この第2実施形態の音響通信システム10は、定期的または不定期に音強度測定モードに移行する。この音強度測定モードで想定受信エリアRA内の情報端末15はマイクロホン31で音響信号ASを収音する。音響送信装置20は、スピーカ12から放音した音響信号ASに埋め込まれた音強度の異なる複数の音強度情報AD1,AD2,…,ADnのうち音響受信装置30が受信できた最低の音強度αkを示す最低の音強度情報ADkに基づいて適正な埋込強度(音強度)を設定する。この結果、音響送信装置20は原音信号OSに識別情報IDを適正な音強度で埋め込んだ音響信号ASを放音できるので、情報端末15が識別情報IDの受信に失敗する受信漏れが発生しにくい。しかも、想定受信エリアRA内のその時々の受信環境の変化に対応してリアルタイムで埋込強度が適正な音強度に調整されるので、想定受信エリアRA内において情報端末15が識別情報IDの受信に失敗する受信漏れが一層発生しにくい。
この第2実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1)〜(11)が同様に得られる。そのうえ、以下の効果が得られる。
(12)音響通信システム10において、リアルタイムで適正な埋込強度に調整することができる。よって、情報端末15に内蔵される音響受信装置30が識別情報IDの受信に失敗する受信漏れを低減できる。また、例えば、識別情報IDの受信漏れ低減のため、同じ識別情報IDを所定の複数回繰り返し送信する構成とした場合、所定の複数回の範囲で音響受信装置30が識別情報IDを受信できる頻度が大幅に高まる。
(第3実施形態)
次に、図9、図10を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態の音響通信システム10は、音響送信装置20がリアルタイムで音強度を調整するとともに、適正な音強度の決定に、情報端末15が受信できた音強度情報ADkと、情報端末15が内蔵するGPS受信器18が受信した位置情報(GPS位置情報)とを使用する。なお、音響送信装置20と音響受信装置30の構成は、前記第1実施形態と同様である。
図9に示されるように、音響送信装置20のスピーカ12から音強度の異なる複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnが埋め込まれた音響信号ASが放音される。複数の情報端末15のマイクロホン31により音響信号ASが収音される。各情報端末15は、受信できた音強度情報ADkとGPS受信器18が受信した位置情報とを、それぞれアンテナ16から無線通信により送信する。各情報端末15から無線通信により送信された複数組の音強度情報ADkおよび位置情報は、音響送信装置20がアンテナ13により受信する。例えば、複数の情報端末15のアンテナ16から送信された複数組の音強度情報ADkおよび位置情報は、インターネットINまたは公衆無線通信網を介して音響送信装置20のアンテナ13により受信される。なお、音響送信装置20は、複数の情報端末15から送信された複数組の音強度情報ADkおよび位置情報を受信したサーバ40から、複数組の音強度情報ADkおよび位置情報をダウンロードしてもよい。
音響送信装置20は、受信した音強度情報ADkおよび位置情報を基に適正な音強度(埋込強度)を決定する。図4に示す第1制御部23は、音強度調整部24を制御し、埋込部27が原音信号OSに識別情報IDを埋め込むときの埋込強度を、決定した適正な音強度に調整する。
音響送信装置20は、図10における左側のフローチャートに示されるプログラムを不図示のメモリに記憶する。また、音響受信装置30は、図10における右側のフローチャートに示されるプログラムを不図示のメモリに記憶する。なお、図10では、図8のフローチャートと共通のステップの一部が省略されている。
以下、図10を参照して第3実施形態における音響通信システム10の作用について説明する。
音響送信装置20の第1制御部23は、前記第2実施形態におけるステップS11,S12の処理を同様に実行する。すなわち、第1制御部23は、原音信号OSに音強度(埋込強度)を変えて音強度情報AD1,AD2,…,ADnをテスト用の埋込情報SC1,SC2,…,SCnとして埋め込む(ステップS11)。次に、第1制御部23は、埋込情報SC1,SC2,…,SCnがそれぞれ異なる音強度で埋め込まれた音響信号ASをスピーカ12から送信(放音)する。この放音された音響信号ASを情報端末15のマイクロホン31が収音する。
音響受信装置30の第2制御部32は、前記第2実施形態におけるステップS21〜S23の処理を同様に実行する。すなわち、第2制御部32は、埋込情報SCを受信したか否かを判定する(ステップS21)。ここで、複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnのうち音強度の小さ過ぎる埋込情報SCは受信(抽出)できない。例えば、音強度αk以上の埋込情報SCkが受信できたとする。第2制御部32は、抽出部33が抽出した埋込情報SCkを受信できれば、埋込情報SCを復号することで、音強度情報ADkとテストの旨を示す値とを取得する。テストの旨を示す値からテストであるか否かを判定する(ステップS22)。テストであれば、埋込情報SCから音強度情報ADkを取得する(ステップS23)。
図10に示されるステップS24において、第2制御部32は、音強度情報と位置情報とを含む応答信号を無線で送信する。つまり、第2制御部32は、GPS受信器18(図4参照)が受信した情報端末15の現在の位置情報を取得する。第2制御部32は、受信できた最低の音強度情報ADkと位置情報とを含む応答信号を、送信部36を介してアンテナ16から無線通信で送信する。
ここで、位置情報は、GPS受信器18が受信したGPS位置情報そのものでもよいし、判定部35がGPS位置情報を基に判定した判定結果である位置情報でもよい。判定結果の位置情報とは、例えば、判定部35が、GPS位置情報が示す情報端末15の現在位置が想定受信エリアRA内の位置であれば「1」、想定受信エリアRA外であれば「0」の値をとる1ビットの位置情報などである。また、想定受信エリアRA内を複数の小エリアに区画し、位置情報は、情報端末15が想定受信エリアRA内のどの小エリアに位置するかを示す2ビット以上の値であってもよい。
その間、音響送信装置20の第1制御部23は、応答信号を受信したか否かを判定する(ステップS13)。第1制御部23は、応答信号を受信していなければ待機し、アンテナ13により無線通信で応答信号を受信すると、ステップS14に進む。
ステップS14において、第1制御部23は、音強度情報ADkと位置情報とに基づいて適正な音強度に調整する。詳しくは、第1制御部23は、応答信号に含まれる音強度情報ADkと位置情報とのうち位置情報が示す位置が想定受信エリアRA内の位置であるか否かを判定し、想定受信エリアRA内の位置を示す位置情報と共に送られた音強度情報ADを採用する。第1制御部23は、想定受信エリアRA内の情報端末15から送られてきた音強度情報ADが複数存在する場合、複数の音強度情報ADkが示す複数の音強度のうち最も低い音強度に基づいて適正な音強度を決定する。例えば、最低の音強度よりも1段階高い音強度を適正な音強度に決定する。また、想定受信エリアRAが複数の小エリアに区画された例では、小エリアごとに受信された最低の音強度に基づいてどの小エリアでも識別情報IDを受信できる適正な音強度を決定する。この場合、スピーカ12から各小エリアまでの距離の違いが考慮された所定のルールに従って適正な音強度を決定する。そして、第1制御部23は、音強度調整部24に適正な音強度への調整を指示する。音強度調整部24は、埋込部27が埋め込みを行う際の音強度(埋込強度)を、指示された適正な音強度に調整する。この結果、以後、埋込部27は原音信号OSに識別情報IDを適正な音強度(埋込強度)で埋め込むことになる。
次のステップS15において、第1制御部23は、原音信号OSに適正な音強度で識別情報IDを埋め込む。詳しくは、エンコード部26により識別情報IDが符号化された埋込情報SCが、埋込部27によって適正な音強度(埋込強度)で原音信号OSに埋め込まれる。この結果、原音信号OSに識別情報IDが埋込情報SCとして適正な音強度で埋め込まれた音響信号Sasが生成される。
ステップS16において、第1制御部23は、音響信号ASを送信する。詳しくは、第1制御部23は、音響信号Sasに基づき放音処理部28を介してスピーカ12から音響信号ASを送信(放音)する。識別情報IDが埋込情報SCとして埋め込まれた音響信号ASは、情報端末15のマイクロホン31に収音される。
そして、ステップS22において、コンピュータの判定部35は、埋込情報SCが識別情報IDであることから、テストではないと判定する。詳しくは、情報端末15内では、音響信号ASを収音したマイクロホン31からの音響信号Sasから抽出部33が埋込情報SCを抽出し、その埋込情報SCがデコード部34によりデコードされることにより音響受信装置30が識別情報IDを受信する。判定部35は、その識別情報IDがテストの旨の値を含まずテストではないと判定すると、ステップS25に進む。このとき、識別情報IDは、判定部35から第2制御部32へ送られる。
ステップS25では、第2制御部32は、識別情報IDに対応する提供情報を出力する。詳しくは、第2制御部32は、識別情報IDを基に参照テーブルを参照することでその識別情報IDに対応する提供情報を取得する。そして、第2制御部32は、提供情報を表示または音声により出力する。すなわち、第2制御部32は、表示処理部37により提供情報を表示部17に表示させたり、不図示の放音処理部によりヘッドホン、イヤホン、スピーカから提供情報を放音させたりする。情報端末15が、表示または放音により利用者に提供する提供情報は、第1実施形態と同様である。
この第3実施形態の音響通信システム10では、定期または不定期に音強度測定モードに移行し、音強度測定モードで想定受信エリアRA内の情報端末15が音響信号ASを受信できた最低の音強度情報ADkおよび位置情報に基づいて音響送信装置20が適正な音強度を設定する。このように適正な音強度αpを決定する際に、情報端末15が受信できた音強度情報ADkに加え、埋込情報SCを受信した情報端末15の位置情報を用いる。よって、音響送信装置20は音強度調整部24によってより適正な音強度(埋込強度)を設定することができる。この結果、識別情報IDを原音信号OSに適正な音強度で埋め込んだ音響信号ASを放音できるので、情報端末15が識別情報IDの受信に失敗する受信漏れが発生しにくい。しかも、想定受信エリアRA内のその時々の受信環境の変化に対応してリアルタイムで適正な音強度に調整されるので、想定受信エリアRA内において情報端末15が識別情報IDの受信に失敗する受信漏れが一層発生しにくい。
この第3実施形態によれば、前記第1実施形態における効果(1)〜(11)および第2実施形態における効果(12)が同様に得られるうえ、以下の効果が得られる。
(13)音響受信装置30は、自身の位置情報を取得する位置情報取得部の一例としてのGPS受信器18を有する可搬型の情報端末15に備えられる。出力部は、音強度情報ADkおよび位置情報を出力する。この構成によれば、音響受信装置30が出力した音強度情報ADkおよび位置情報から、埋込情報SCに設定すべき適正な音強度を取得できる。
(13)音強度決定部の一例としての第1制御部23は、出力部が出力した音強度情報ADkおよび位置情報に基づいて音強度を決定する。この構成によれば、音響送信装置20は、音響受信装置30が音響信号ASから抽出できた音強度情報ADkおよび位置情報から適正な音強度を取得できるので、原音信号に適正な音強度で埋込情報SCを埋め込んだ音響信号ASを放音することができる。この結果、想定受信エリア内の音響受信装置30は、音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCを受信(抽出)できない受信漏れを抑制することができる。
<その他の実施形態>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・前記第1実施形態では、音響受信装置30が受信できた音強度情報ADkをアンテナ16から無線通信で送信したが、音強度情報ADkを送信しない構成でもよい。この場合、放送主体の作業者は、情報端末15の表示部17に表示された音強度情報ADkから、受信できた音強度を知ることができる。作業者は、入力操作部14を操作して音響送信装置20に音強度を指示することで、音強度調整部24により適正な音強度(埋込強度)を設定することができる。
・第1実施形態において、応答信号にGPS受信器18が取得した情報端末15の位置情報を含めてもよい。この構成によれば、想定受信エリアRA外の位置で受信された音強度情報ADkは適正な音強度の決定には利用されないので、想定受信エリアRA内での受信にとって適正な音強度(埋込強度)に調整することができる。
・各実施形態において、予め原音信号OSに異なる音強度で音強度情報AD1,AD2,…,ADnが埋め込まれた音響信号Sasをメモリに記憶しておき、音強度測定モード時にメモリから読み出した音響信号Sasに基づいてスピーカ12から音響信号ASを放音させる構成としてもよい。また、音強度測定モード時に予め録音された音響信号Sasを音響送信装置20に入力し、音響送信装置20が音響信号Sasに基づいてスピーカ12に音響信号ASを放音させる構成でもよい。
・各実施形態において、応答信号に情報端末15の個々の受信性能に係る受信性能情報を含めてもよい。ここで、受信性能情報とは、例えば、情報端末15の製品名、品番などでもよい。品番は、製品の品番でもよいし、スピーカやサウンドデバイスの品番でもよい。また、製品名や品番に対応付けて設定された受信性能レベルを受信性能情報とすることもできる。受信性能レベルは、例えば、2〜5段階のレベルに分けられる。この構成によれば、音響送信装置20は、受信性能情報を考慮して適正な音強度(埋込強度)を設定してもよい。例えば、音響送信装置20は、受信性能レベルが標準レベルよりも高い情報端末15から音強度情報ADkを受信した場合、標準の受信性能レベルの情報端末15であれば、受信できた最低の音強度よりも1段階高い音強度を設定するところ、もう1段階高い音強度に埋込強度を調整する。また、音響送信装置20は、受信性能レベルが標準レベルよりも低い情報端末15から音強度情報ADkを受信した場合、標準の受信性能レベルの情報端末15であれば、受信できた最低の音強度よりも1段階高い音強度を設定するところ、受信できた最低の音強度そのものに埋込強度を調整する。
・第1実施形態において、音強度情報ADkと、GPS受信器18が受信した情報端末15の位置情報とを表示部17に表示してもよい。そして、第1制御部23は、位置情報に基づいて想定受信エリアRA内の情報端末15から送られてきた音強度情報ADkを選択し、その選択した音強度情報ADkに基づいて適正な音強度を決定してもよい。第1制御部23は、音強度調整部24により埋込強度を適正な音強度に調整する。
・第3実施形態において、位置情報が想定受信エリアRA外である場合は、受信できた音強度情報ADkを送信しない構成でもよい。
・第3実施形態において、表示部17に表示された音強度情報ADkおよび位置情報を見た作業者が計算したり対応表を参照したりして割り出した適正な音強度の情報を入力操作によって音響送信装置20に入力してもよい。この場合、音強度決定部は不要になる。
・音響受信装置30は、抽出部33が抽出できた最低の音強度情報ADkの音強度αk以上の音強度を示す音強度情報ADk,…,ADnを全て出力してもよい。
・各実施形態において、想定受信エリアRAまたはその周辺の位置に音響受信装置30または音響受信装置30を内蔵する情報端末15を設置してもよい。この場合、音響受信装置30は、音強度測定テスト専用とし、想定受信エリアRAのその時々の受信環境の変化に応じて適正な音強度情報ADkを出力部によって出力する。音響送信装置20は、入力操作部14またはアンテナ13及び受信部29などの入力部によって、リアルタイムで適正な音強度αpを取得できる。よって、音響送信装置20は、想定受信エリアRA内の利用者が携帯する可搬型の情報端末15に対して適正な音強度αで埋込情報SCを埋め込んだ音響信号ASを放音することができる。この結果、想定受信エリアRA内の情報端末15がマイクロホン31で収音した音響信号Sasから音強度が小さいことが原因で埋込情報SCを正しく抽出できない埋込情報SCの受信漏れを抑制できる。このように、異なる音強度で複数の埋込情報SC1,SC2,…,SCnが埋め込まれた音響信号ASを受信して抽出できた音強度情報ADkを出力する音響受信装置30と、適正な音強度αpで埋込情報SCが埋め込まれた音響信号ASを受信して識別情報IDに対応する提供情報を、情報端末15の表示部17やイヤホンジャック、スピーカなどの出力部から出力する音響受信装置30とが異なる構成であってもよい。
・情報端末15側で受信できた音強度情報ADkに基づいて適正な音強度を算出し、その算出した適正な音強度を、表示部17や送信部36に出力させてもよい。
・音響受信装置30の表示部17に音強度情報ADkを1次元コードまたは2次元コードで表示し、このコードをスマートフォンのカメラ機能で撮像して音強度情報ADkを音響送信装置20に無線通信で送信する構成としてもよい。この場合、音響受信装置30の出力部が表示部17であり、音響送信装置20の入力部がアンテナ13および受信部29である組合せとなる。
・音響受信装置30がアンテナ16および送信部36により音強度情報ADkを無線通信で送信し、アンテナ13および受信部29により受信した音強度情報ADkを音響送信装置20が不図示の表示部に表示し、この表示部に表示された音強度情報ADkを見た作業者が適正な音強度αpと判断した値を、入力操作部14を操作して入力する構成でもよい。
・各実施形態において、利用者が音響受信装置30に対して音強度測定モードへの移行を禁止する設定ができてもよい。また、音響受信装置30の第2制御部32が可搬型の情報端末15のバッテリの残量を検出し、バッテリ残量が閾値以下であれば、音強度測定モードへの移行を禁止してもよい。
・埋込情報SCの情報量は、数ビット〜10数ビットの範囲内の値である場合、2ビット、5ビット、12ビットでもよいし、例えば、良好な受信環境の下で使用される場合、埋込情報SCの情報量は16ビットでもよい。
・音電子透かし技術によるマスキングは、順向性マスキングに限らず、逆向性マスキングでもよい。
・音電子透かし方式は、エコー拡散法やスペクトラム拡散法などの拡散法に限定されない。例えば、エコー法、周期的位相変調法、位相多重化法、振幅変調法などでもよい。また、スペクトラム拡散法は、直接拡散方式でもよいし、周波数ホッピング方式でもよい。
・拡散符号は、PN系列(疑似雑音系列)に限定されず、2種類のPN系列を加算して得られるGold系列または最長系列(M系列)でもよい。