JP2021197257A - 荷電粒子ビーム装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】荷電粒子ビーム装置における撮像画像のブライトネス(B)およびコントラスト(C)を調整する機能に関して、スループットとロバストネスとを両立できる技術を提供する。【解決手段】荷電粒子ビーム装置は、試料を撮像して得る画像のBおよびCを調整する機能(ABCC機能)を有するコンピュータシステムを備える。コンピュータシステムは、試料の撮像対象について撮像して得た第1画像を評価した結果に基づいて、調整の要否を判定し(ステップS2)、判定の結果に基づいて、要の場合には、撮像対象の第2画像について調整を実行して調整後のB値およびC値を設定し(ステップS4)、調整後の設定値に基づいて撮像対象についての第3画像を撮像して観察用の画像を生成する(ステップS5)。【選択図】図5

Description

本発明は、荷電粒子ビーム装置の技術に関し、撮像画像処理技術に関する。
荷電粒子ビーム装置として、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)等がある。SEMは、試料である微細な対象物に対して電子ビームを照射・走査することによって、試料から出射した信号電子を検出器で検出し、検出信号に基づいて試料の観察、検査、寸法計測等を行う機能を有する装置である。試料は、撮像等の対象であるウエハ等がある。試料の表面には、高さの違いによる凹凸等のパターン等が存在する。試料の表面には、撮像の視野や位置に対応させて、複数の撮像対象(言い換えると撮像領域等)がある。SEMは、撮像画像から例えば欠陥部分を観察し検出する。
荷電粒子ビーム装置において、検出信号に基づいて画像を生成する際の調整の1つに、画像のコントラストとブライトネスの調整がある。また、画像のブライトネスとコントラストを自動で調整する機能として、オート・ブライトネス・コントラスト・コントロール(Auto Brightness Contrast Control:ABCC)機能が知られている。
上記に係わる先行技術例として、特開2007−329081号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、荷電粒子線装置として、さまざまなパターン密度を持つ撮像対象にも柔軟に対応し、常に最適なブライトネス・コントラストを持った画像を撮像できるブライトネス・コントラスト調整機能を有する装置を提供する旨が記載されている。
特開2007−329081号公報
従来の荷電粒子ビーム装置におけるABCC機能、言い換えると、撮像画像のブライトネス(記号Bで表す場合がある)およびコントラスト(記号Cで表す場合がある)を調整する技術では、以下のような第1方式や第2方式がある。
第1方式は、特許文献1のような例がある。特許文献1のような第1方式では、さまざまなパターン密度を有し得る複数の撮像対象における、すべての撮像対象に、ABCCを行う。これにより、さまざまなパターン密度の撮像対象にも適応して好適な画像が得られる。すなわち、第1方式では、ロバストネスの高さが確保され、ロバストネスの観点で優位である。ロバストネスは、言い換えると、変化する様々な入力に対して柔軟に対応できることである。しかし、第1方式では、撮像対象毎に毎回ABCCを行うので、その分処理時間を要し、装置のスループット、言い換えると時間的処理効率が低い場合がある。
第2方式は、試料の複数の撮像対象における最初の撮像対象についての撮像時のみにABCCを行い、そのABCCによって得た調整されたB値やC値(総称してBC値と記載する場合がある)を、その後に続くそれぞれの撮像対象に適用する。第2方式では、ABCCの回数や処理時間が減るので、第1方式よりもスループットを高められる点で優位である。しかし、第2方式では、撮像対象のパターン密度の違いによっては、適切な階調値(対応するBC値)に設定できない場合があり、すなわち撮像対象を適切に表示した観察用画像を取得できない場合がある。第2方式は、試料の撮像等の条件(対応するレシピ)での撮像の実行時に、パターン密度の違いに対応できるロバストネスの観点では不十分である。
試料の表面のパターンにおいて、複数の撮像対象には、パターン密度に大きく違いがある場合や、欠陥等の有無や度合いの状態に違いがある場合がある。これらの場合、撮像画像において例えばB値(対応する階調値)が飽和することがある。この点について、第1方式の場合では、飽和が無い画像が得られやすいので、ロバストネスは高いが、スループットが低く、第2方式の場合では、スループットは高いが、飽和が有る画像が得られやすいので、ロバストネスが低い。
本発明の目的は、荷電粒子ビーム装置における撮像画像のブライトネスおよびコントラストを調整する機能に関して、スループットとロバストネスとを両立でき、それらをバランス良く実現できる技術を提供することである。
本開示のうち代表的な実施の形態は、以下に示す構成を有する。実施の形態の荷電粒子ビーム装置は、試料を撮像して得る画像のブライトネスおよびコントラストを調整する機能を有するコンピュータシステムを備え、前記コンピュータシステムは、前記試料の撮像対象について撮像して得た第1画像を評価した結果に基づいて、前記調整の要否を判定し、前記判定の結果に基づいて、要の場合には、前記撮像対象の第2画像について前記調整を実行して調整後のブライトネス値およびコントラスト値を設定し、調整後の設定値に基づいて前記撮像対象についての第3画像を撮像して観察用の画像を生成し、否の場合には、前記撮像対象について前記調整を実行せず、調整前の設定値に基づいて前記撮像対象についての前記第3画像を撮像して前記観察用の画像を生成する。
本開示のうち代表的な実施の形態によれば、荷電粒子ビーム装置における撮像画像のブライトネスおよびコントラストを調整する機能に関して、スループットとロバストネスとを両立でき、それらをバランス良く実現できる。
本開示の実施の形態1の荷電粒子ビーム装置の構成を示す図である。 実施の形態1で、コンピュータシステムの構成例を示す図である。 実施の形態1で、試料の撮像対象の例を示す図である。 実施の形態1で、撮像対象のパターン密度の違いの例を示す図である。 実施の形態1で、コンピュータシステムによる主な処理のフローを示す図である。 実施の形態1で、画像評価処理に係わる撮像画像のヒストグラムの例を示す図である。 実施の形態1で、ABCCによるBC値の調整例として撮像画像のヒストグラムの例を示す図である。 実施の形態1で、コンピュータシステムによるGUI画面例を示す図である。 実施の形態1で、効果に関する説明図である。 本開示の実施の形態2の荷電粒子ビーム装置における、並列処理の概要および例を示す図である。 実施の形態2で、コンピュータシステムの主な処理のフローを示す図である。 実施の形態2の方式の効果に関して、複数の撮像対象およびステージ移動を考慮したフローを示す図である。 実施の形態2および各方式の効果に関して、処理時間の見積もりのグラフを示す図である。 本開示の実施の形態3の荷電粒子ビーム装置におけるコンピュータシステムの処理のフローを示す図である。 実施の形態3で、再実行後BC値(保存BC値)を用いた処理の概要および例を示す図である。 本開示の実施の形態4の荷電粒子ビーム装置におけるコンピュータシステムの処理のフローを示す図である。 実施の形態4で、試料情報等を管理する表の構成例を示す図である。 本開示の実施の形態5の荷電粒子ビーム装置におけるコンピュータシステムの処理のフローを示す図である。 実施の形態5で、BC値の実行頻度を含む情報を管理する表の構成例を示す図である。
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、全図面において同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
<実施の形態1>
図1〜図9を用いて、本開示の実施の形態1の荷電粒子ビーム装置について説明する。実施の形態1におけるABCC機能に係わる方式は、前述の第1方式のロバストネスの優位性と、第2方式のスループットの優位性とを両立すべく、それらを組み合わせた上で工夫を加えた新しい方式である。
実施の形態1の荷電粒子ビーム装置は、対象の試料の撮像対象についての画像を撮像する前に、ABCCの実行の要否を判定し、その結果で「要」となった場合には、その後に撮像対象についてのABCCを実行する。すなわち、荷電粒子ビーム装置は、ABCCによって好適なBC値に調整し、調整後のBC値を設定(言い換えると更新、再設定)する。そして、荷電粒子ビーム装置は、その調整後のBC値を用いて、観察用の画像を撮像する。
[処理概要]
実施の形態1での処理概要は以下の通りである。図1等に示される荷電粒子ビーム装置1は、試料5の撮像対象毎に、予め設定・記憶されたABCC機能の初期設定値であるBC値を用いて、そのBC値を含む条件によって、例えばMフレームの画像(第1画像とする)を撮像する。条件とは、撮像や検出の条件であり、例えば検出器パラメータを含む。荷電粒子ビーム装置1は、その第1画像を用いて画像評価処理を行い、その評価結果に基づいて、その撮像対象についてのABCCを行うべきか否か、要否を判定する。画像評価処理の内容については限定しないが、例としては階調のヒストグラムを用いた後述の飽和の判断が挙げられる。荷電粒子ビーム装置1は、例えば飽和が無い場合にはABCC「否」(不要を表す)と判定し、飽和が有る場合にはABCC「要」と判定する。
荷電粒子ビーム装置1は、ABCC「要」の場合、その撮像対象について、上記BC値を含む条件によって、ABCC用の例えばMフレームの画像(第2画像とする)を撮像する。荷電粒子ビーム装置1は、画像の階調値の飽和の判断等に基づいて、ABCC処理を終了するかどうかを判定する。荷電粒子ビーム装置1は、ABCCによって好適なBC値に調整した場合、その調整後BC値を、ABCC機能に係わる新たな設定値として保存する。そして、荷電粒子ビーム装置1は、上記ABCCによる調整後BC値を含む調整された条件によって、撮像対象について、加算処理用の例えばNフレームの画像(第3画像とする)を撮像し、その撮像画像に基づいて観察用の画像を生成してユーザに対し出力する。
[荷電粒子ビーム装置]
図1は、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1の構成を示す。実施の形態1では、荷電粒子ビーム装置1として、SEMに適用した場合を説明する。このSEMは、言い換えるとウエハ観察装置である。実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1であるSEMは、筐体100と、コンピュータシステム10とを有し、それらが電気的に接続されている。筐体100内には、電子ビーム源101、電子光学系102、ステージ103、および検出器104等を備える。検出器104には、アナログ・デジタル変換器105が接続されている。アナログ・デジタル変換器105は、コンピュータシステム10と接続されている。また、検出器104は、コンピュータシステム10の検出器パラメータ制御部108と接続されている。
コンピュータシステム10は、荷電粒子ビーム装置1を制御するシステムであり、荷電粒子ビーム装置1のコントローラに相当する。コンピュータシステム10は、荷電粒子ビーム装置1の筐体100の各部(ステージ103や検出器104を含む)についての駆動を制御する。
コンピュータシステム10は、機能ブロックとして、演算制御部107、画像処理部106、検出器パラメータ制御部108、および入出力部109等を備える。操作者であるユーザU1は、コンピュータシステム10の入出力部109に対し操作を行うことで、荷電粒子ビーム装置1を利用する。コンピュータシステム10は、ユーザU1に対し、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を含むユーザ・インタフェースを提供する。入出力部109は、入力装置や表示装置等を用いて構成される。ユーザU1は、コンピュータシステム10が提供する表示画面で観察用の画像や各種の情報を見ることができる。
筐体100は、気密室等で構成されている。気密室内には、ステージ103等を備える。ステージ103上には、外部から搬送・投入された試料5が載置・保持される。試料5は、例えばシリコンウエハであり、製造プロセス(例えばエッチングや成膜)に応じたパターン等が形成されている。試料5は、半導体デバイス等の製造対象物(製造デバイスと記載する)を製造するための試料である。試料5は、ステージ103の移動に基づいて、視野110に合わせた位置に配置される。視野110は、撮像時の一定の視野(対応する範囲)の例を示す。
気密室内におけるステージ103は、コンピュータシステム10からの駆動制御に基づいて、図示しないステージ移動機構によって、例えば水平方向の各方向(図示のX,Y方向)で移動可能である。コンピュータシステム10は、ステージ103の移動制御によって、試料5の表面の所望の箇所を、視野110に対応させるように配置して、撮像対象とする。
荷電粒子ビーム装置1は、電子ビーム源101から電子ビーム111を発生し、電子光学系102による偏向等の制御を経て、ステージ103上の試料5の表面の撮像対象に対し、電子ビーム111を収束させて走査するように照射する。電子光学系102は、例えば電子レンズやコイル等がある。走査は、試料5の面内の各方向(X,Y方向)での走査が可能である。電子ビーム102の照射に応じて試料5の表面から発生する二次電子等は、検出器104で検出される。検出器104で検出されたアナログ信号である検出信号は、アナログ・デジタル変換器105でデジタル信号に変換され、コンピュータシステム10の画像処理部106に送られる。
コンピュータシステム10の画像処理部106は、検出信号を処理して画像を生成する。演算処理部107は、その画像について、ABCC機能に係わる処理等を行う。演算処理部107は、画像の加算処理等に基づいて観察用の画像を生成し、入出力部109を通じてユーザU1に対し出力する。また、演算処理部107は、ABCC機能に係わる制御を行う場合、検出器パラメータ制御部108を制御する。演算処理部107は、検出器パラメータを含む、撮像や検出に係わる条件を制御・設定する。条件の詳細については限定しない。検出器パラメータ制御部108は、検出器104での検出に係わるパラメータを設定する。このパラメータは、撮像画像のB値やC値に影響するパラメータである。検出器パラメータの例としては、検出器104を構成する光電子増倍管の電圧等が挙げられる。ABCC機能のBC値は、このような検出器パラメータと所定の対応関係を有する。荷電粒子ビーム装置1は、その対応関係を把握している。ABCC機能のBC値の制御は、言い換えると、検出器パラメータ等の制御である。
荷電粒子ビーム装置1は、主にコンピュータシステム10によるプログラム処理に基づいてABCC機能を実現する。ABCC機能の用途としては、試料5の表面の観察によって欠陥部分を検知することや、高精度の寸法測定を実現するために、好適なB値およびC値を持つ観察用の画像を得ることが挙げられる。荷電粒子ビーム装置1は、試料5についてのABCC機能に係わる処理の際には、コンピュータシステム10によって、撮像対象に関する画像の撮像前に、ABCC要否判定を行い、「要」と判定された場合に、その撮像対象についてのABCCを実行し、調整後のBC値を再設定した後に、観察用の画像を撮像する。
[コンピュータシステム]
図2は、コンピュータシステム10の構成例を示す。コンピュータシステム10は、コンピュータ200と、コンピュータ200に接続される入力装置205や表示装置206とで構成されている。コンピュータ200は、プロセッサ201、メモリ202、通信インタフェース装置203、入出力インタフェース装置204、およびそれらを相互に接続するバス等で構成されている。入出力インタフェース装置204には、例えばキーボードやマウス等の入力装置205や、液晶ディスプレイ等の表示装置206が接続されている。通信インタフェース装置203は、図1の荷電粒子ビーム装置1の検出器104やアナログ・デジタル変換器105等の各部とも信号線で接続されており、それぞれとの間で信号の入出力または通信を行う。また、通信インタフェース装置203は、外部の装置(例えばサーバ)と所定の通信インタフェース(例えばLAN)で接続されて、外部の装置との通信を行ってもよい。
プロセッサ201は、例えばCPU、ROM、RAM等で構成され、コンピュータシステム10のコントローラを構成する。プロセッサ201は、ソフトウェアプログラム処理に基づいて、コンピュータシステム10の機能を実現する。機能は、ABCC機能を含む。機能は、ソフトウェアプログラム処理のみならず、専用の回路等で実装されてもよい。
メモリ202は、不揮発性記憶装置等で構成され、プロセッサ201等が使用する各種のデータや情報を格納する。メモリ202には、制御プログラム202A、設定情報202B、検出データ202C、および画像データ202D等が格納される。制御プログラム202Aは、機能を実現するためのプログラムである。設定情報202Bは、制御プログラム202Aの設定情報やユーザU1による設定情報である。設定情報202Bは、ABCC機能のBC値等の情報を含む。検出データ202Cは、検出器104から得られる検出信号に対応するデータである。画像データ202Dは、検出データ202Cに基づいて得た画像のデータであり、各処理の段階に応じた各種の画像のデータを含む。画像データ202Dは、ユーザU1に出力するための観察用の画像のデータを含む。
[試料の撮像対象の例]
図3は、試料5の撮像対象の例を示す。図3は、図1のステージ103上の試料5の水平面(X−Y面に対応する)での模式図を示す。本例では、試料5として1枚の円形のウエハがあり、このウエハの表面の領域が、一定の大きさの矩形の領域300毎に区画されている。この領域300が1つの撮像対象(対応する撮像領域)に相当する。1つの領域300は、図1の視野110に対応付けられる。ウエハ全体では複数の撮像対象を有し、本例では、1つのウエハにおいて複数の撮像対象(#1〜#16)を有する。各撮像対象の領域300は、同じパターン密度を有するとは限らず、製造プロセスに応じて欠陥部分が生じている場合もある。なお、本例に限らず、複数の試料5がある場合にも、同様に複数の撮像対象が構成できる。
なお、撮像対象は、言い換えると、設定された条件、視野110およびステージ103の位置等に対応付けられた、対象物や撮像領域である。撮像の視野110および位置は、試料5を保持したステージ103の位置等に対応付けられる。荷電粒子ビーム装置1は、複数の撮像対象について複数回の撮像を行う場合には、各回でステージ103の位置等を変化させるように制御する。
各実施の形態では、試料5の表面のパターン密度や欠陥状態を扱うことができる。なお、欠陥とは、試料5における予め設計された基準のパターン形状等の状態からの差異が大きいことである。欠陥は、設計では意図していない、例えば製造プロセス上で生じる部分である。
なお、図3は、ウエハの表面の全領域を対象として複数に区分して撮像する場合であるが、これに限られず、ウエハの表面の一部領域(例えば欠陥部分を含む領域のみ)を撮像対象とする場合もある。その一部領域は、コンピュータシステム10で任意に設定可能である。
[撮像対象のパターン密度の例]
図4は、試料5の表面の撮像対象(対応する領域300)におけるパターンの形状および密度の例を示す。本例では、試料5の表面において、LSIでは一般的なライン・アンド・スペース・パターンを有する。このパターンは、例えばX方向において高さの違いが凹凸のように繰り返される形状を有する。例えば、部分41は第1高さを持ち、部分42は第1高さよりも低い第2高さを持つ。(A)は、(B)と比べて相対的にパターン密度が小さい場合を示し、(B)は、(A)と比べて相対的にパターン密度が大きい場合を示す。
(C)は、(A)よりもさらにパターン密度が小さい例を示す。領域300内において多くの面積が部分41であり、一部の面積が部分42である。また、例えば、部分41内には、一部に高さが異なるような欠陥部分43を含んでいる。欠陥部分43は、例えば設計値に対し高さが異なる。
(A),(B),(C)のような例では、撮像対象においてパターン密度が異なっている。これらに対し、従来技術では、同じ条件でABCCを適用した場合、見やすい好適な画像が得られるとは限らない。撮像対象によっては、あるBC値でのABCCを適用した結果、見にくい画像となってしまう場合もある。
例えば、(A)の撮像対象の画像について、部分41と部分42とにおけるB値(対応する階調値)の差が小さい場合、ABCCによる調整として、その差を広げるように調整すれば、コントラストを高くした見やすい画像が得られる。しかし、(C)のような撮像対象の画像について、同じ条件のABCCを適用した場合に、必ずしも、見やすい画像が得られるとは限らない。例えば、部分43のような欠陥部分が、見えにくくなって検出しにくくなってしまう可能性がある。
なお、特許文献1にも記載があるが、荷電粒子ビーム装置1は、このような試料5の表面における撮像対象の領域について、パターン密度を計算し、制御に利用してもよい。
[処理フロー]
図5は、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1におけるコンピュータシステム10による主な処理のフローを示す。図5のフローは、ステップS1〜S5を有する。ステップS1は、ABCC機能のBC値の初期設定値を設定しておくステップ、またはその初期設定値を参照するステップである。なお、ステップS1は、BC値のみならず、広く言えば、ABCC機能のパラメータ値を設定または参照するステップと捉えてもよい。このBC値の初期設定値は、撮像対象について初回に適用するBC値となる。
ステップS1は、そのBC値の設定を含む、荷電粒子ビーム装置1の撮像や検出の条件の設定を含む。条件の設定は、少なくとも検出器104のパラメータの設定を含む。設定された各種の情報は、図2のメモリ202の設定情報202Bの一部として保持される。
また、ステップS1は、試料5の複数の撮像対象についての情報(試料情報と総称する)の入力または設定を含む。試料情報の入力または設定は、処理対象の試料5(1つでも複数でもよい)における複数の撮像対象(例えば図3)に関する情報の入力または設定である。この入力または設定は、コンピュータシステム10が自動的に行うものとしてもよいし(例えば製造管理システム等から情報を参照してもよい)、ユーザU1が適宜に入力・設定するものとしてもよい。この試料情報は、例えば、複数の撮像対象の各々を識別するID等の情報や、試料5による製造デバイスや製造プロセス等を識別するID等がある。また、試料情報は、撮像対象のパターンについての情報を有してもよい。例えば、予め、パターンの種類が規定されている場合には、そのパターンの種類を識別する情報でもよいし、計算によってパターン密度がわかる場合には、そのパターン密度の情報でもよい。その他、ユーザU1が任意にコメント等の情報を設定してもよい。
ステップS2は、撮像対象についてのABCC要否判定を行うステップである。ステップS2は、詳しくは、ステップS21〜S24で構成される。ステップS21とステップS24は、ステップS2のループ処理に関する開始と終了の条件等のステップである。ステップS21は、撮像対象の画像毎のループ処理の開始を表し、ステップS24は、そのループ処理の終了を表す。全ての撮像対象の画像についての処理が終了した場合には、ループを抜けて、ステップS2が終了となる。
ステップS22は、ABCC要否判定用の所定の数(Mとする)の画像フレーム(前述の第1画像)を撮像して取得する処理である。この数Mは、1以上であり、後述のステップS5の加算処理での画像フレームの数N以下の数である(M≦N)。この数Mは、典型的には1でも済むが、これに限らず、2以上としてもよい。また、ステップS22のMフレームの撮像の際には、ステップS1で参照したBC値を含む条件が使用される。
ステップS23は、ステップS22で取得したMフレームの第1画像を用いて、画像評価処理によって、ABCC要否を判定するステップである。この画像評価処理の例としては、後述の図6のB値の飽和に関する処理が挙げられる。例えば、飽和が有る場合にはABCC「要」と判定され、飽和が無い場合にはABCC「否」と判定される。
ステップS3は、ステップS2のABCC要否判定結果に応じた分岐であり、「要」であった場合にはステップS4へ進み、「否」であった場合にはステップS5へ進む。
ステップS4は、撮像対象についてのABCCを実行するステップである。ステップS4は、詳しくは、ステップS41〜S46で構成される。ステップS41とステップS46は、ステップS4のループ処理に関する開始と終了のステップである。このループ処理は、撮像対象についてのABCC用のMフレームの画像の画像毎に繰り返しであり、Mフレームの最後の画像まで処理が終了すると、ステップS4が終了する。ステップS4のABCC用の画像フレームの数Mは、ステップS2の判定用の画像フレームの数Mと同じである。
ステップS42では、荷電粒子ビーム装置1は、ABCC用のMフレームの画像のうちのi番目のフレームの画像(前述の第2画像)を撮像する。処理用の変数iはi=1〜Mである。
ステップS43では、荷電粒子ビーム装置1は、ABCC処理を終了するかどうかの終了判定処理を行う。このABCC終了判定は、例えば画像のBC値が好適となったかどうかの判断であり、ステップS22の画像評価処理と同様の内容として飽和の判断の処理としてもよいし、他の処理としてもよい。
ステップS44は、ステップS43の判定結果に応じた分岐であり、ABCC終了の場合(Y)にはステップS4のループを抜けてステップS5へ進み、ABCC終了ではない場合(N)にはステップS45へ進む。
ステップS45では、荷電粒子ビーム装置1は、撮像対象について、ABCCのBC値を調整して調整後のBC値を決定し、その調整後のBC値をABCC機能の設定値として設定する。この設定では、ステップS1で初期設定値であるBC値として述べた、図2のメモリ202の設定情報202Bの一部であるABCC機能の設定値が更新される。すなわち、その後に撮像対象に応じてこのフローの繰り返しとしてステップS1のBC値が参照される場合には、その更新されたBC値が参照されることになる。
ステップS5では、荷電粒子ビーム装置1は、撮像対象について、加算処理用の所定の数(Nとする)の画像フレームを撮像して取得し、取得したNフレームの画像を用いて加算処理を行う。そして、荷電粒子ビーム装置1は、この加算処理に基づいて、観察用の画像を生成し、メモリ202の画像データ202Dの一部として記憶するとともに、ユーザU1に対し出力する。出力は、図2の表示装置206の表示画面での画像表示等である。数Nは、前述の数Mとの関係で、N≧1、N≧Mである。この加算処理は、品質が高い観察用画像を得るために、例えばNフレームの画像を画素毎に加算して平均等の統計値をとる処理(積算処理と呼ばれる場合もある)や、品質が良い一部の画像を選択する処理等が挙げられる。N=1として、加算処理を省略または簡易化してもよい。加算処理の詳細については限定されない。
[画像評価(ABCC要否判定)]
図5のステップS23の画像評価処理の例を説明する。コンピュータシステム10は、撮像対象についての評価用のMフレームの画像について、画素の階調値に基づいてヒストグラムを作成し、飽和の有無や度合いを評価する。
図6は、画像評価処理についての説明図として、撮像画像のヒストグラムの例を示す。図6の(A)は、ABCCが不要(「否」)と判定すべき例であり、ある撮像対象の評価用画像の階調値のヒストグラムの例として、飽和が無い場合を示す。図6の各グラフは、横軸が階調値(B値等と対応関係を有する)であり、とり得る階調範囲600として例えば0から255までの範囲を有する。縦軸は、階調値毎の頻度値である。(A)では、階調値の分布は、階調範囲600の最小値である0や最大値である255の付近には無く、このような場合を、飽和が無いと呼んでいる。分布範囲R01は、階調の頻度値が存在する範囲を示し、最小値Rminと、最大値Rmaxとを有する。Rmin>0、Rmax<255である。例えば、Rmin≒50、Rmax≒200である。なお、最小値Rminは、言い換えると、最小B値であり、特許文献1での輝度ボトムに相当する。最大値Rmaxは、言い換えると、最大B値であり、特許文献1での輝度ピークに相当する。また、分布範囲R01は、頻度値が最も大きい階調値Rhを有する。
図6の(B)や(C)は、ABCC「要」と判定すべき例であり、飽和が有る場合を示す。(B)では、階調の頻度値の分布として、分布範囲R02は、最小値である0の付近にも存在する。最小値Rminは0となっている。多くの画素ではB値が0とみなされるため、階調の最小値0での頻度値が特に大きくなっている。すなわち、(B)の場合、低階調側での飽和が有る。このような低階調側での飽和は、いわゆる白とびに対応する。白とびは、画像中のブライトネスが高い部分が全面的に白になってしまうことである。(C)では、分布範囲R03は、最大値である255の付近にも存在する。最大値Rmaxは255となっている。多くの画素ではB値が255とみなされるため、階調の最大値255での頻度値が特に大きくなっている。すなわち、(C)の場合、高階調側での飽和が有る。このような高階調側での飽和は、いわゆる黒つぶれに対応する。黒つぶれは、画像中のブライトネスが低い部分が全面的に黒になってしまうことである。
コンピュータシステム10は、例えば分布範囲の最小値Rminおよび最大値Rmaxを用いて飽和を判定する。コンピュータシステム10は、例えば、Rmin≦Ra、または、Rmax≧Rbの場合に、飽和有りとして、ABCC「要」と判定する。Ra,Rbは、評価用に事前に設定された閾値であり、例えば、Ra=0,Rb=255としてもよい。
荷電粒子ビーム装置1のコンピュータシステム10は、評価用画像のヒストグラムを適切に評価するために、フィルタ処理等によってノイズを除去した画像を評価用画像として用いてもよい。そのフィルタは、例えば、移動平均フィルタ、ガウスフィルタ、バイラテラルフィルタ等の、一般的なノイズ除去のフィルタを適用できる。
[BC値の調整]
図7は、ABCC(図5のステップS4)によってBC値を調整する例として、撮像画像のヒストグラムの例を示す。(A)は、調整前の撮像対象の画像の例における階調値のヒストグラムを示す。この階調値の分布範囲701は、比較的狭い範囲になっており、このままではコントラストが低く見にくい。分布範囲701は、最小値Rmin1および最大値Rmax1を有する。一方、(B)は、BC値を調整後の撮像対象の画像におけるヒストグラムを示す。この階調値の分布範囲702は、(A)の分布範囲701よりも広くするように、最小値Rmin1よりも小さい最小値Rmin2と、最大値Rmax1よりも大きい最大値Rmax2とを有する。これにより、(B)の画像によれば、(A)よりもコントラストが高く見やすくなる。適切な分布範囲とすることで、コントラストが低すぎず高すぎずの好適な観察用画像、例えば欠陥部分を観察・検出しやすい画像や、正確な寸法測定がしやすい画像が得られる。上記調整後の分布範囲702の最小値Rmin2や最大値Rmax2を決める際には、所定の基準値を用いてもよい。なお、ABCC機能の詳細としてどのようにBC値を調整するか等の手法の詳細については限定しない。一例としては、特許文献1に記載の手法を適用してもよい。
ABCC機能では、撮像画像のB値およびC値と、検出器104のパラメータ値との間に相関を仮定する。荷電粒子ビーム装置1は、撮像で得た画像のB値等に基づいて、BC値を調整し、そのBC値に合わせて、検出器104のパラメータ値を調整する。図1で言えば、演算処理部107は、検出器パラメータ制御部108を制御して、検出器104に調整後のパラメータ値を設定する。これにより、新たな撮像で得る画像のBC値が好適なBC値になる。
[画面例]
ユーザU1は、コンピュータシステム10が提供する画面で、GUIに従って、指示や設定情報等を入力し、観察用の画像や各種の情報を見ることができる。ユーザU1は、画面で、試料5の撮像対象の情報や条件等を入力・設定することができる。
図8は、コンピュータシステム10がユーザU1に提供するGUI画面例を示す。(A)は、ABCC方式(“ABCC method”)に関する設定画面例を示す。この画面では、リストボックスあるいは選択肢ボタン等のGUIを用いて、ユーザU1は、適用するABCC方式を、いくつかのABCC方式から選択して設定できる。本例では、選択肢となるABCC方式は、前述の第1方式(言い換えるとロバストネス優先方式)、第2方式(言い換えるとスループット優先方式)、および実施の形態1の新方式、等である。なお、このようにいくつかのABCC方式から選択できる形態に限られず、実施の形態1の新方式のみを実装した形態も勿論可能である。
(B)は、ABCC結果の表示画面例を示す。この画面では、表等の形式で、試料5の複数の撮像対象についての情報を表示する。対象の試料5は、1つでもよいし、複数でもよい。試料5毎の表を設けてもよい。この表の例では、複数の撮像対象(例えば複数の欠陥部分)の情報を表示する項目801と、撮像対象毎のABCC実行有無(実行有り:Y、実行無し:N)の情報を表示する項目802と、ブライトネス(B)値を表示する項目803と、コントラスト(C)値を表示する項目804とを有する。項目801では、行毎に欠陥部分を識別するID(“Defect ID”)が表示されている。また、ユーザU1は、表から行または項目あるいはチェックボタン等を選択操作することで、選択した欠陥部分(対応する撮像対象)についての観察用の画像を画面に表示させることもできる。
(C)は、保存BC値リストの画面例を示す。この画面は、試料5に対応付けられる製造デバイスおよび製造プロセス毎に、ABCC機能用の設定情報として保存するBC値をリスト表示して、ユーザU1による確認や設定を可能とする。ABCC機能が保存するBC値は、1つに限られず、複数を候補としてリストとして保存可能である。この画面は、例えば、試料情報811と、表とを有する。試料情報811は、製造デバイスおよび製造プロセスの識別情報を含む。表は、優先度(Priority)項目812、B値項目813、C値項目814、および周波数(Frequency)項目815等を有する。優先度項目812は、保存BC値に、優先度(例えば高い順に1,2,3,……)を付ける場合に、その優先度を設定・表示できる。B値項目813およびC値項目814は、保存BC値を示す。周波数項目815は、保存BC値に関連付けられる周波数の情報を示す。周波数に限らず、他の関連する情報要素を記憶や表示してもよい。ユーザU1は、この画面で、試料5に応じて好適なBC値等を保存・確認できる。ユーザU1は、表から行等を選択操作することで、前述の初期設定値(図5のステップS1)として適用するBC値を選択することもできる。また、荷電粒子ビーム装置1は、このような情報に基づいて、処理対象の試料5の例えば製造デバイスや製造プロセス等を認識し、自動的に、前述の初期設定値として適用するBC値を選択することもできる。試料5の情報は、これらに限られず、例えば試料5または撮像対象におけるパターンの種類やパターン密度等の情報を含んでもよい。
ユーザU1は、上記のような画面を見ながら、荷電粒子ビーム装置1に試料情報や条件等の情報を入力・設定・確認することや、複数の撮像対象のABCC処理結果をまとめて確認すること等が容易に可能である。なお、図8のような各画面は、メニュー等から選択でき、後述の実施の形態2等にも同様に適用できる。
[効果等(1−1)]
上記のように、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1によれば、撮像画像のブライトネスおよびコントラストを自動的に調整するABCC機能に関して、スループットとロバストネスとを両立でき、それらをバランス良く実現できる。
実施の形態1では、特有の処理によって、撮像対象についてABCC「要」となった場合にのみ、ABCCが実行される。ABCC機能のBC値の初期設定値が、ある撮像対象に対して適切ではなかった場合に、従来技術によれば、輝度の飽和(例えば白とびや黒つぶれ)となってしまい、観察用の好適な画像が得られない。それに対し、実施の形態1では、ABCC機能のBC値の初期設定値が、ある撮像対象に対して適切でなかった場合でも、評価の結果ABCC「要」と判定されてABCCが行われることで、その撮像対象に適した好適なBC値に調整され、観察用の好適な画像が得られる。複数の撮像対象における各撮像対象について、同様に処理が適用されることで、撮像対象のパターン密度の違いや変化に適応するようにして、ABCCの実行有無やBC値の更新が制御される。
上記のように、実施の形態1では、試料5の複数の撮像対象のパターン密度の違い等に適応できるロバストネスの高さを確保しつつ、撮像対象毎に毎回ABCCを実行する第1方式よりも、撮像までに要する時間を短くできるので、全体的に装置のスループットを高めることができる。なお、実施の形態1では、試料5のパターン密度が予めわかっている場合、不明の場合、いずれの場合でも、ABCC要否判定等によって対応できるので、効率的なABCCが実現できる。
実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1によれば、対象の試料5の例えばパターン密度や欠陥の状態や特性に対し、ABCC機能のBC値の初期設定値が適していなかった場合にも、ABCC「要」に応じて調整後のBC値を適用することで、例えばブライトネスの飽和が無い好適な画像が得られる。この荷電粒子ビーム装置1によれば、複数の撮像対象についてのABCCの適用に際して、ABCC要否判定に基づいて、多数の画像の撮像・生成を行う必要無く、例えば1回の画像の撮像のみでABCCを適用できるため、ロバストネスとスループットとを両立できる。
[効果等(1−2)]
図9は、実施の形態1の方式に関する効果をより詳しく示すための説明図である。(A)は、第1方式であるロバストネス優先方式において、試料の複数の撮像対象についてのABCCのBC値の適用の例をまとめた表である。表の1行目は撮像対象のID(例えば#1〜#m)、2行目は適用したBC値(例えば調整後BC値)を示す。第1方式の装置は、最初の撮像対象#1についてABCCを実行し、調整後のBC値としてBC1を適用する。装置は、以降の撮像対象#2〜#mについても、それぞれABCCを実行し、調整後のBC値としてBC2,……,BCmを適用する。
(B)は、第2方式であるスループット優先方式において、試料の複数の撮像対象についてのABCCのBC値の適用の例を同様にまとめた表である。第2方式の装置は、最初の撮像対象#1についてABCCを実行し、調整後のBC値としてBC1を適用し保存する。装置は、以降の撮像対象#2〜#mについては、ABCCを実行せず、最初のBC値であるBC1を適用する。
(C)は、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1におけるロバストネスとスループットとを両立する方式において、試料5の複数の撮像対象についてのABCCのBC値の適用の例をまとめた表である。表の1行目は撮像対象(#1〜#m)を示し、2行目はMフレームを用いたABCC要否判定(図5のステップS2)の結果の例を示す。3行目はMフレームを用いたABCC実行有無やその際のBC値の例を示す。4行目はNフレームの加算処理(図5のステップS5)の際に適用されるBC値を示す。また、表外の項目900は、メモリ202に保存されるBC値(ステップS1の初期設定値)の例を示す。
図5のフローに従って複数の撮像対象が処理される。最初の撮像対象#1について、BC値の初期設定値であるBC0を用いて、ABCC要否判定(ステップS2)が行われ、結果が例えば「否」となった。この場合、ABCC(ステップS4)は行われず、そのまま、BC0を用いてNフレームの加算処理(ステップS5)が行われて、観察用の画像となる。次に、撮像対象#2について、BC0を用いて、ABCC要否判定が行われ、結果が例えば「否」となった。この場合、ABCCは行われず、BC0を用いてNフレームの加算処理が行われる。次に、撮像対象#3について、BC0を用いて、ABCC要否判定が行われ、結果が例えば「要」となった。この場合、ABCC(ステップS4)が行われ、調整後のBC値としてBC3が得られ、新たな初期設定値として保存される。すなわち、BC0からBC3に更新される。そして、そのBC3を用いてNフレームの加算処理が行われる。次に、撮像対象#4について、BC3を用いて、ABCC要否判定が行われ、結果が例えば「否」となった。この場合、ABCCが行われず、BC3を用いてNフレームの加算処理が行われる。以降同様に、要否に応じた処理となる。なお、上記実施の形態1では、ABCC要否判定で「要」となってABCC実行によって得た調整後BC値を、新たな初期設定値(ステップS1)とするように更新する例を示した。これに限らず、ABCC要否判定で「要」となってABCC実行によって得た調整後BC値を、その回の撮像対象に適用するものとし、新たな初期設定値としては更新しない構成も可能である。例えば、上記ABCC要否判定で「要」となった撮像対象#3の後、BC値の初期値であるBC0を更新しなくても良い。この場合、次の撮像対象#4ではBC0を用いてABCC要否判定を行うこととなる。
<実施の形態2>
図10〜図12を用いて、本開示の実施の形態2の荷電粒子ビーム装置について説明する。実施の形態2等の基本的な構成は実施の形態1と同様であり、以下では、実施の形態2等における実施の形態1とは異なる構成部分について説明する。
実施の形態2の荷電粒子ビーム装置は、前述のABCC要否判定処理(図5のステップS2)と、観察用画像を得るための加算用の画像撮像処理(ステップS5)とを、並列的に実行する。荷電粒子ビーム装置1は、各々の撮像対象について、ABCC「要」と判定した場合、その時点で加算用の画像撮像処理を中断し、実施の形態1と同様に、その撮像対象についてのABCCを実行してBC値を調整する。そして、荷電粒子ビーム装置1は、その撮像対象について、調整後のBC値を用いて、あらためて、加算用の画像撮像処理を行って観察用の画像を得る。
実施の形態2の荷電粒子ビーム装置は、上記並列処理で、加算処理用に撮像中のNフレームから、判定用のMフレーム(例えば1フレーム)を抜き出してABCC要否判定を行い、ABCC「要」に応じてABCCを実行する。実施の形態2によれば、上記並列処理とするので、従来技術に対し、ABCC要否判定に必要なMフレームの画像の撮像分の追加処理時間が不要となる。すなわち、実施の形態2では、スループットをより高めることができる。
[並列処理]
図10は、実施の形態2での並列処理の概要についての説明図を示す。図10は、横軸を時間とし、縦軸には、(A)として、ある撮像対象について、ABCC要否判定で「否」の場合と、(B)として、ABCC要否判定で「要」の場合とを示している。まず(A)で、時点t0からは加算用のNフレームの画像撮像1001の処理が開始され、Nフレームまで撮像する場合には時点t3で終了する。撮像時間T1は、(A)の場合に、この撮像対象のNフレームの画像撮像1001の完了までに要する概略的な時間を示す。1フレームあたりの撮像時間はT1/Nである。判定1002は、画像撮像1001と並列で行われるABCC要否判定処理を示す。例えば、時点t1では、ABCC要否判定に用いるMフレームの画像が撮像済みとなる。よって、時点t1からは、そのMフレームの画像を用いた判定1002の処理が開始され、時点t2で終了している。判定1002に要する時間は、画像撮像1001よりも短い。判定1002の結果がABCC「否」であった場合、荷電粒子ビーム装置1は、画像撮像1001の処理を継続し、時点t3でNフレームまでの撮像が終了する。
次に(B)で、同様に、時点t0からはNフレームの画像撮像1003の処理が開始されている。時点t1では、Mフレームを用いた判定1004が開始され、時点t2では判定結果がABCC「要」となって終了している。この場合、荷電粒子ビーム装置1は、その時点t2(例えばi番目の画像フレームを撮像中の時点)で、画像撮像1003の処理を中断する。撮像中断1005は、時点t2から時点t4までの撮像が中断される時間を示す。判定終了の時点t2までで撮像済みの画像フレーム(例えば1からi−1まで)は記憶されているが、その時点t2の画像フレーム以降(例えばiからNまで)については撮像されない。荷電粒子ビーム装置1は、判定終了の時点t2から、撮像対象における残りの未撮像の画像フレーム(例えばiからNまで)について、ABCC1006の処理を実行してBC値を調整し調整後のBC値を記憶する。例えば時点t4でABCC1006が終了している。荷電粒子ビーム装置1は、時点t4からは、その調整後のBC値を用いて、あらためて、その撮像対象についてのNフレーム分の画像撮像1007の処理を行って観察用の画像を得る。例えば時点t5で画像撮像1007が終了している。撮像時間T2は、(B)の場合に、この撮像対象のNフレームの画像撮像の完了までに要する概略的な時間を示す。なお、判定1002および判定1004の処理はコンピュータシステム10(コンピュータ200)による判定処理であり、ハードウェアの動作を伴う画像撮像1001などの様な他の処理と比べて、処理時間が短く、ほぼ無視できるケースが多い。このため、多くのケースでは、判定に係わる処理時間をほぼ0として、t2≒t1と考えても良い。
実施の形態2では、(B)のように、ABCC「要」となった場合でも、並列処理によって、処理全体で要する時間を抑えることができる。すなわち、実施の形態2では、実施の形態1に比べ、スループットをより高めることができる。
[処理フロー(2)]
図11は、実施の形態2の荷電粒子ビーム装置1におけるコンピュータシステム10による主な処理のフローを示し、ステップS201〜S207を有する。ステップS201で、コンピュータシステム10は、BC値を含む条件や試料情報等を設定または参照する。ステップS202で、コンピュータシステム10は、加算処理用のNフレームの画像の撮像処理を行う。このステップS202は、ステップS201で設定または参照した初期設定値であるBC値を用いて、予め設定された数Nの画像フレームを撮像して取得する処理である。ステップS202は、詳しくは、ステップS202A,S202B,S202C,S202Dで構成される。ステップS202AとステップS202Cは、ループ処理の開始と終了のステップである。このループは、処理対象フレームをnとした場合に、1からNまで、n≦Nの場合に繰り返しである。ステップS202Bは、Nフレームのうちの処理対象フレームnの撮像である。ループ後のステップS202Dは、得られたNフレームの加算処理によって観察用画像を生成するステップである。ステップS202Dの後、フローの終了となる。
また、ステップS202Bでは、撮像した処理対象フレームnが、ABCC要否判定用の所定の数Mになった場合、ステップS203に遷移する。ステップS203は、撮像対象についてのABCC要否判定処理である。ステップS203で、コンピュータシステム10は、ステップS202で撮像して得た画像のうちの1からMまでのM個(M≦N)の画像フレームに対し、画像評価処理を行い、その評価結果に基づいてABCC要否を判定する。この画像評価処理は、例えば実施の形態1と同様である。
ステップS204は、ABCC要否判定結果に応じた分岐であり、「否」の場合にはステップS205へ、「要」の場合にはステップS206へ進む。ステップS205では、コンピュータシステム10は、Nフレームの撮像を継続するように、ステップS202に戻り、残りのフレームについて、同様の繰り返しである。ステップS206では、コンピュータシステム10は、ステップS202に関するNフレームの撮像を中断し、ステップS207に進む。ステップS207では、コンピュータシステム10は、撮像対象について、実施の形態1と同様にABCC処理を実行して、調整後のBC値を決定・設定し、ステップS202に戻る。ステップS207からステップS202に戻った場合、コンピュータシステム10は、ステップS207で更新されている調整後BC値を用いて、あらためて、数Nの画像フレームを撮像して加算処理した後の画像を生成し、フローが終了となる。
[効果等(2)]
上記のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の基本的な効果に加え、上記並列処理とするとで、スループットをより高めることができる。実施の形態2では、複数の撮像対象について、ABCC「要」となる撮像対象が少ない事例ほど、高いスループットが実現できる。
図12および図13は、実施の形態2に関する効果をより詳しく示すための説明図である。まず、図12は、実施の形態1および2における、Nフレームの画像撮像(図11のステップS202)についての処理例のフローを示し、ステップS211〜S214を有する。このフローは、試料5であるウエハ(例えば図3)毎における、全体の複数の撮像対象を処理するためのシーケンスに対応しており、ステージ103(図1)の移動を考慮したフローである。ステップS211とステップS214は、ループ処理の開始と終了のステップであり、d=Dの場合に終了である。本例では、撮像対象を欠陥部分とし、各々の欠陥部分を変数dで表し、欠陥部分の数をDとする(d=1〜D)。
ステップS212で、荷電粒子ビーム装置1は、試料5を載せたステージ103を、撮像対象である欠陥部分dが視野110に入るような位置に移動する。この移動には、相応の時間を要する。
ステップS213では、荷電粒子ビーム装置1は、欠陥部分dについての画像を撮像する。ステップS213の処理内容は、図5と概略的に同様であり、BC値の設定(S213A)、ABCC要否判定(S213B)、ABCC実行(S213D)、およびNフレームの画像撮像・加算処理(S213E)を有する。
実施の形態1および2の効果を見積もり計算するための説明上の変数として以下がある。図12のような複数の撮像対象(特に欠陥部分)についての画像撮像を含むシーケンスの処理全体に要する時間を、時間TWとする。1つの撮像対象(欠陥部分d)あたりでのABCC処理に要する時間を、時間TAとする。撮像間でのステージ103の移動に要する平均時間を、時間TSとする。画像評価用のMフレームの画像の撮像に要する時間を、時間TMとする。加算用のNフレームの画像の撮像に要する時間を、時間TNとする。複数(D)の撮像対象(欠陥部分d)に関して、ABCC要否判定の結果で「要」と判定される撮像対象(欠陥部分d)の数をXとする(0≦X≦D)。
図13は、実施の形態2の効果としてスループットの観点、特に処理全体の所要時間に関する見積もりのグラフを示す。このグラフは、各方式での所要時間の推移を、欠陥部分dの数Xとの関係で表す。このグラフは、横軸が、ABCC「要」と判定される欠陥部分dの数Xであり、縦軸が、処理全体に要する時間TWの概略的な見積もりの値である。前述の従来技術のロバストネス優先である第1方式と、スループット優先である第2方式と、実施の形態1と、実施の形態2とで、時間TWに関する見積もり値を、それぞれ、TW1,TW2,TW3,TW4とすると、以下のように計算できる。
第1方式の場合: TW1=D×(TN+TS+TA)。図示のように、時間TW1は数Xに依らない一定値となる。
第2方式の場合: TW2=D×(TN+TS)+TA。図示のように、時間TW2は数Xに依らない一定値となり、TW2<TW1である。
実施の形態1の場合: TW3=D×(TN+TS+TM)+X×TA。図示の線1301は、時間TW3に関する関数TW3(X)に相当する。時間TW3は、数Xに応じて線形で増加する値となる。数Xが、ある数Xaまでである範囲では、時間TW3の方が、時間TW1よりも短くなる。しかしながら、数Xが、ある数Xa以上となる範囲では、時間TW3の方が、時間TW1よりも長くなってしまう。
実施の形態2の場合: TW4=D×(TN+TS)+X×TA。図示の線1302は、時間TW4に関する関数TW4(X)に相当する。時間TW4は、数Xに応じて線形で増加する値となり、数Xの全範囲で、時間TW3よりも短い。時間TW4と時間TW3との差1303は、D×TMである。時間TW4は、数Xが0の場合には時間TW2と同じであり、数Xが数Dの場合には時間TW1と同じである。時間TW4は、数Xが0から数Dまでの範囲で、線形に増加し、時間TW2と時間TW1との間の時間となる。時間TW4は、数Xが、ある数Xa以上となる範囲であっても、時間TW1よりも短くなる。
上記のように、実施の形態2は、実施の形態1よりもスループットの観点でより効果が高い。実施の形態1と実施の形態2との各方式では、数Xに応じて時間TWが変化する。撮像対象である欠陥部分dの数Xは、実例に応じたデータセットに依存する。数Xは、ある実例では、全体の数Dに対する10%程度である。この場合、数Xは図示する数Xbのようになる。この場合、実施の形態1,2のいずれでも、処理時間は、時間TW2に近い値となり、十分に良好な効果が得られる。
<実施の形態3>
図14および図15を用いて、実施の形態3の荷電粒子ビーム装置について説明する。実施の形態3は、実施の形態1の変形例であり、実施の形態1の構成に一部の処理が追加されている。実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1は、図5のステップS4のABCC実行におけるABCC再実行後のBC値(調整後BC値)を、「保存BC値」としてメモリに保存しておく。そして、荷電粒子ビーム装置1は、ステップS2のABCC要否判定で、評価用のMフレームの画像を撮像して画像評価処理を行う際には、前述のステップS1のBC値の初期設定値を含む条件ではなく、上記メモリに保存しておいたABCC再実行後の保存BC値を含む条件を適用する。すなわち、実施の形態3での処理フローでは、図5のステップS1は、上記ABCC再実行後BC値である保存BC値を含む条件を適用するステップに置換される。
なお、荷電粒子ビーム装置1は、ABCC機能のBC値の設定値として、調整に応じて上書き更新される最新の1つのBC値のみを保持する構成に限られず、過去の各回のBC値の履歴を保存する構成としてもよい。
これにより、実施の形態3では、以下のような効果が得られる。試料5として、同じウエハには、類似するパターンや欠陥が存在する場合が多い。ある試料5の撮像対象(例えばあるパターンや欠陥部分)に対し、ABCCによって調整された好適なBC値が保存されたとする。その保存BC値は、その試料5と類似する他の撮像対象(パターンや欠陥部分)の撮像の際にも、最適解になる場合がある。そのため、実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1は、新たな他の撮像対象について、その過去に決定された保存BC値を、ABCC要否判定での画像評価に使用するように先に試行する。
これにより、撮像対象毎に毎回ABCCによって試行錯誤的にBC値を調整・決定する構成よりも、実施の形態3によれば、試料5の特性の類似性に応じて、ABCCのBC値の設定(言い換えると調整や更新)の回数を減少させることができ、効率性の向上が期待できる。
[処理フロー]
図14は、実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1におけるコンピュータシステム10による主な処理のフローを示す。まず、実施の形態3で、複数の撮像対象についてのステージ103の移動を考慮したフローは、前述の図12と同様である。図12のうちABCC実行のステップS213Dについて、実施の形態3での詳細を、図14に示す。図14で、このステップS213Dは、ステップS141〜S147を有する。図14のフローは、概略的には図5のステップS4の内容と同様であるが、特に、ステップS145の処理内容が異なり、また、ステップS147が追加されている。
ステップS141とステップS146はループ処理の開始と終了のステップである。このループ処理は、ABCC用のMフレームにおける画像フレーム毎に繰り返しであり、処理対象の画像フレームを表す変数iを用いて、i=maxi(=M)になったら終了である。ステップS142で、装置1は、ABCC用のMフレームのうちのi番目のフレームの画像を撮像する。ステップS143はABCC処理の終了判定である。ステップS144で、終了の場合にはステップS147へ進み、未終了の場合にはステップS145へ進む。
ステップS145は、調整後のBC値の決定・設定のステップであり、詳細として、ステップS145A〜S145Dを有する。ステップS145Aで、コンピュータシステム10は、メモリ202に設定情報202Bの1つとして「保存BC値」が有るかどうかを確認する。有る場合にはステップS145Cへ進み、無い場合にはステップS145Bへ進む。ステップS145Bでは、コンピュータシステム10は、ABCC処理結果に基づいた調整後のBC値を決定する。ステップS145Cでは、コンピュータシステム10は、メモリ202の保存BC値を読み出し、その保存BC値を、調整後のBC値として決定する。ステップS145BまたはステップS145Cの後、ステップS145Dでは、コンピュータシステム10は、上記決定されたBC値を、ABCC機能において設定する。
ステップS146の後、ステップS147では、コンピュータシステム10は、上記設定したBC値を、「保存BC値」として、メモリ202に保存し、これにより、ステップS213Dの終了となる。
上記のように、実施の形態3では、ABCC要否判定(ステップS213B)で「要」となった場合に、ABCC実行(S213D)で調整後のBC値を保存する(ステップS147)。この保存されたBC値は、次の撮像対象についてのBC値設定(ステップS212)で初期設定値として使用される。実施の形態3では、保存されたBC値を順次に設定して、各々の撮像対象についてのABCC要否判定を行い、「要」に応じて同様にABCCが実行される。
[処理例]
図15は、実施の形態3における、ABCC再実行後BC値である保存BC値を用いた処理に関する概要および具体例を示す。図15の(A)は、第1試料であるウエハW1の複数の撮像対象(#1〜#16)とそれらについてのABCC結果を示す。ABCC結果の表は、撮像対象と、ABCCのBC値に関する初期設定値と調整後の値とを有する。例えば、1行目は、ウエハW1の撮像対象#1について、初期設定値がb1,c1であり、ABCC「要」の結果、調整後のBC値がb1x,c1xとなったことを示す。(B)は、(A)の第1試料と類似する他の第2試料であるウエハW2の複数の撮像対象(#1〜#16)とそれらについての適用するABCCを示す。このウエハW2の各撮像対象についての処理の際、荷電粒子ビーム装置1は、ABCC要否判定で、BC値の初期設定値ではなく、まず、ウエハW1のABCC処理結果の調整後のBC値(対応する保存BC値)を、再実行後BC値として試行するように制御する。荷電粒子ビーム装置1は、再実行後BC値を適用して試行した結果、良い結果が得られなかった場合には、初期設定値に戻して試行してもよい。
<実施の形態4>
図16および図17を用いて、実施の形態4の荷電粒子ビーム装置について説明する。実施の形態4は、実施の形態3の変形例であり、一部の処理等が追加されている。
実施の形態4では、荷電粒子ビーム装置1は、試料情報に基づいて試料5に係わる製造デバイスおよび製造プロセス毎に、ABCC終了判定(図5のステップS43)時に設定されている調整後BC値をメモリに保存しておく。荷電粒子ビーム装置1は、新たな試料5の撮像対象についての撮像や観察の処理を行う際には、試料情報に基づいて、その撮像対象に係わる製造デバイスおよび製造プロセスを確認する。そして、荷電粒子ビーム装置1は、その撮像対象に係わる製造デバイスおよび製造プロセスが、保存されているBC値に係わる製造デバイスおよび製造プロセスに該当する場合には、その保存されているBC値を、ABCC要否判定(すなわちMフレームの撮像および画像評価処理)の際に、試行、適用するように制御する。これにより、製造デバイスおよび製造プロセスに応じた好適なBC値を決定でき、全体的に効率的な処理が期待できる。
言い換えると、荷電粒子ビーム装置1は、対象の試料5に係わる製造デバイスおよび製造プロセスの判別に応じて、その製造デバイスおよび製造プロセス毎に設定・保存されているBC値を適用するように制御する。なお、上記適用の際の判断は、製造デバイスと製造プロセスとの両方が該当する場合としてもよいし、一方の情報のみが該当する場合としてもよい。また、変形例としては、製造デバイス(例えば半導体デバイスA,B,C,……等)や製造プロセス(例えばプロセスA,B,C,……等)に関して、類似性を考慮し、グループや種類等に分けて扱い、完全に同じでなくても同じグループや種類の単位で適用を判断するようにしてもよい。
[処理フロー]
図16は、実施の形態4の荷電粒子ビーム装置1による主な処理のフローを示し、ステップS161〜S168を有する。ステップS161とステップS168は、試料5毎のループ処理の開始と終了のステップである。ステップS162では、荷電粒子ビーム装置1は、対象の試料5であるウエハをロードする。すなわち、荷電粒子ビーム装置1は、試料5を図1の筐体100の気密室内に入れて、ステージ103上に載置・保持し、ステージ103を移動させて、試料5の撮像対象が視野110に入るように位置付ける。ステップS163では、コンピュータシステム10は、対象の試料5に係わる試料情報をメモリ202から例えばワークエリアへロードし、その試料5に係わる製造デバイスおよび製造プロセス等を認識する。ステップS164で、コンピュータシステム10は、メモリ202から、その試料5に関連付けられる保存BC値リストをロードする。保存BC値リストは、ABCC機能に係わる設定情報202B(図2)の1つであり、少なくとも1つの保存BC値を含む情報であり、具体例は図8の(C)である。
ステップS165では、荷電粒子ビーム装置1は、ロードされている試料5における複数の撮像対象について撮像処理を行う。このステップS165の内容は例えば図12のフローと同様であり、ABCC要否判定に応じたABCC実行を含む。撮像対象は例えばウエハ上の欠陥部分(欠陥が疑われる部分を含む)である。ステップS166では、荷電粒子ビーム装置1は、ステップS165の処理結果に基づいて、ワークエリア上のBC値リスト(更新されたBC値を含む場合がある)を、対象の試料5の試料情報と関連付けて、メモリ202に保存する。すなわち、メモリ202の保存BC値リストが適宜に更新される。ステップS167で、荷電粒子ビーム装置1は、処理済みの試料5であるウエハをアンロードする。すなわち、荷電粒子ビーム装置1は、その試料5を図1の筐体100の気密室内から外に出す。
上記のように、実施の形態4では、荷電粒子ビーム装置1は、特にステップS164,S166に示すように、試料情報とともに保存BC値リストの参照や保存を行う。荷電粒子ビーム装置1は、ロードされた試料5の試料情報を参照して、それに合致する保存BC値リストを参照する。そして、荷電粒子ビーム装置1は、その保存BC値リストの1つ以上のBC値を、ABCC要否判定、ABCC処理に適用する。荷電粒子ビーム装置1は、ABCC処理で新たに調整後のBC値を生成した場合、そのBC値を保存BC値リストに追加登録してもよい。荷電粒子ビーム装置1は、保存BC値リストの構成としては、ABCCで調整後のBC値を調整前のBC値に対して上書き更新する構成としてもよいし、調整前のBC値を消さずに調整後のBC値とともに保持する構成としてもよい。
[処理例]
図17は、実施の形態4における処理概要や具体例を示すために、試料情報等を管理するための表の構成例を示し、前述の試料情報の入力や設定の例に相当する。この表は、項目として、撮像対象、試料、製造デバイス、製造プロセス、保存BC値、および条件等を有する。例えば、ID=1001である撮像対象は、製造デバイスDev1および製造プロセスPro1に係わる試料W01に関連付けられる。この製造デバイスDev1および製造プロセスPro1に関連付けるようにして保存しておく保存BC値(B値およびC値)は、例えばb1およびc1である。また、保存BC値に関連付けられる情報として、撮像や検出の条件(例えば検出器パラメータ:p11,p12,……)等もある。
また、例えば、別の試料W03におけるID=3001である撮像対象は、試料W01と同じく製造デバイスDev1および製造プロセスPro1に関連付けられている。そこで、この試料W03のID=3001の撮像対象を新たに処理する際には、ID=1001の撮像対象と同じ保存BC値(b1,c1)が適用される。適用の結果、そのBC値が好適であった場合、そのID=3001の撮像対象の試料W03についての保存BC値項目にも、そのBC値(b1,c1)が保存される。
実施の形態4によれば、以下のような効果がある。製造デバイスおよび製造プロセスが同じまたは類似である試料については、類似するパターンを有する場合や、類似する欠陥が存在する可能性が高い。実施の形態4では、ABCC要否判定の際に、試料の撮像対象に対し、製造デバイスや製造プロセスの単位で、保存BC値を先に試行するように制御することで、ABCCのBC値の設定等の回数を減少させることができ、全体的に効率的な処理が可能となる。
<実施の形態5>
図18および図19を用いて、実施の形態5の荷電粒子ビーム装置について説明する。実施の形態5は、実施の形態3または4に関する変形例である。実施の形態5の荷電粒子ビーム装置1は、ABCC実行に応じて調整され保存された各BC値についての実行頻度(言い換えると使用頻度や設定頻度)の情報を作成・保持しておく。例えば保存BC値リストにおいてその情報が関連付けて保持される。そして、荷電粒子ビーム装置1は、保存BC値の実行頻度の情報に基づいて、撮像対象に対し、ABCC要否判定の際に、試行するBC値の順番を決めてその順番でBC値を試行する。荷電粒子ビーム装置1は、すべての保存BC値を使用する必要は無く、あるBC値の試行の結果、好適な結果が得られた場合、以降の他のBC値を試行しなくてもよい。
複数の各種の撮像対象に対してBC値の適用を繰り返す結果、BC値の実行頻度の情報が更新されてゆく。実行頻度が大きい保存BC値は、過去の多くの撮像対象に有効であったことを示しており、新たな撮像対象に対しても有効である可能性が高い。そのため、新たな撮像対象について、少ない試行の回数で、好適な処理結果が得られる可能性が高い。これにより、実施の形態5では、全体的に効率的な処理が実現できる。
[処理フロー]
図18は、実施の形態5の荷電粒子ビーム装置1におけるコンピュータシステム10による主な処理のフローを示し、ステップS181〜S188を有する。図18は、ABCC実行(ステップS213D)のフローに相当する。ステップS181〜S186のループ処理は、図14のS141〜S146と同様である。ステップS187では、コンピュータシステム10は、上記ループ処理の結果、ABCCによる調整後のBC値として設定したBC値について、実行頻度に基づいて、順番(言い換えると優先度)の情報を更新する。そして、ステップS188では、コンピュータシステム10は、上記順番の更新後の設定したBC値を、メモリ202に保存BC値として保存する。
[処理例]
図19は、実施の形態5の荷電粒子ビーム装置1における処理概要や具体例を示すために、実行頻度を含む情報を管理するための構成例を示す。まず(A)は、保存BC値に関する履歴情報の表である。この表は、過去の試料5のABCCに係わる処理の実績に基づいて、保存BC値の各BC値の保存、実行等の履歴を情報として記録したものである。保存BC値は、前述のように、ABCCによる調整後のBC値をメモリ202に保存する情報であり、検出器パラメータ等を含む条件と関連付けられている。保存BC値の実行とは、その保存BC値を使用したABCC要否判定およびABCC実行である。なお、BC値の最初の生成および保存は、1回目の実行・使用と捉えることができる。
本例の表は、図示のように、項目として、日時、保存BC値、条件、および試料情報を有する。日時項目は、保存BC値が保存または実行された日時である。保存BC値項目は、保存されているBC値(B値およびC値)である。条件項目は、保存BC値と関連付けられている検出器パラメータ等を含む条件である。試料情報項目は、対応する試料5の製造デバイスや製造プロセスの情報である。
(B)は、荷電粒子ビーム装置1が(A)の情報に基づいて構成した、保存BC値に関する実行頻度情報を管理する表である。この表は、図示のように、項目として、順番(言い換えると優先度)、保存BC値(B値およびC値)、条件、および実行頻度を有する。順番項目は、行で示す保存BC値を試行として適用する順番または優先度を示す。保存BC値項目および条件項目は、(A)の対応する項目と同じである。実行頻度項目は、行で示す保存BC値についての実行頻度(または実行回数)を算出したものである。実行頻度は、例えば1か月あたり10回といった値である。実行頻度を算出する期間は、例えば、全期間としてもよいし、現在から過去への一定期間としてもよい。また、学習用の試料5に対し学習用の一定期間で得た情報を用いてもよい。本例では、ある保存BC値(b2,c2)は、全保存BC値のうちで、実行頻度n1が最も大きい(n1>n2>n3……)。そのため、その保存BC値(b2,c2)は、順番が1とされている。コンピュータシステム10は、新たな撮像対象に対し、この順番に従って保存BC値を試行する。なお、この順番の情報は、図8の(C)の画面例の「Priority」項目として使用できる。
実施の形態5において、試料情報(製造デバイスや製造プロセス)を扱わない構成とすることもできる。この場合、(B)のような表は、試料5に係わる製造デバイスや製造プロセスの違いに依らずに、1つにまとめられた情報とすることができる。荷電粒子ビーム装置1は、新たな試料5の撮像対象に対し、適用する保存BC値を選択する際には、その試料5の製造デバイスや製造プロセスに依らずに、その表から順番に保存BC値を選択して試行すればよい。
また、実施の形態5において、実施の形態4と同様に、試料情報(製造デバイスや製造プロセス)を扱う構成とすることもできる。この場合、(B)のような表は、(A)のような情報に基づいて、試料5に係わる製造デバイスおよび製造プロセスの単位で構成できる。すなわち、製造デバイスや製造プロセス毎に分けて、(B)のような表を複数の表として構成できる。この場合、荷電粒子ビーム装置1は、新たな試料5の撮像対象に対し、適用する保存BC値を選択する際には、その試料5に係わる製造デバイスや製造プロセスを確認し、その製造デバイスや製造プロセスに対応させた表から保存BC値を選択して試行すればよい。
上記のように、実施の形態5の荷電粒子ビーム装置は、新たな撮像対象に対するABCC要否判定およびABCC実行の際には、ABCCの実績に基づいて実行頻度が高いBC値から先に試行するように制御する。これにより、実施の形態5では、ABCC処理に係わる、BC値設定等の試行の回数を減少させることができ、全体的に効率的な処理が実現できる。
なお、上述した各表やグラフは、コンピュータシステム10の表示画面で表示可能である。以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1…荷電粒子ビーム装置、5…試料、10…コンピュータシステム、103…ステージ、104…検出器、105…アナログ・デジタル変換器、106…画像処理部、107…演算処理部、108…検出器パラメータ制御部、109…入出力部、110…視野、U1…ユーザ。
コンピュータシステム10の画像処理部106は、検出信号を処理して画像を生成する。演算制御部107は、その画像について、ABCC機能に係わる処理等を行う。演算制御部107は、画像の加算処理等に基づいて観察用の画像を生成し、入出力部109を通じてユーザU1に対し出力する。また、演算制御部107は、ABCC機能に係わる制御を行う場合、検出器パラメータ制御部108を制御する。演算制御部107は、検出器パラメータを含む、撮像や検出に係わる条件を制御・設定する。条件の詳細については限定しない。検出器パラメータ制御部108は、検出器104での検出に係わるパラメータを設定する。このパラメータは、撮像画像のB値やC値に影響するパラメータである。検出器パラメータの例としては、検出器104を構成する光電子増倍管の電圧等が挙げられる。ABCC機能のBC値は、このような検出器パラメータと所定の対応関係を有する。荷電粒子ビーム装置1は、その対応関係を把握している。ABCC機能のBC値の制御は、言い換えると、検出器パラメータ等の制御である。
ABCC機能では、撮像画像のB値およびC値と、検出器104のパラメータ値との間に相関を仮定する。荷電粒子ビーム装置1は、撮像で得た画像のB値等に基づいて、BC値を調整し、そのBC値に合わせて、検出器104のパラメータ値を調整する。図1で言えば、演算制御部107は、検出器パラメータ制御部108を制御して、検出器104に調整後のパラメータ値を設定する。これにより、新たな撮像で得る画像のBC値が好適なBC値になる。
1…荷電粒子ビーム装置、5…試料、10…コンピュータシステム、103…ステージ、104…検出器、105…アナログ・デジタル変換器、106…画像処理部、107…演算制御部、108…検出器パラメータ制御部、109…入出力部、110…視野、U1…ユーザ。

Claims (6)

  1. 試料を撮像して得る画像のブライトネスおよびコントラストを調整する機能を有するコンピュータシステムを備え、
    前記コンピュータシステムは、
    前記試料の撮像対象について撮像して得た第1画像を評価した結果に基づいて、前記調整の要否を判定し、
    前記判定の結果に基づいて、要の場合には、前記撮像対象の第2画像について前記調整を実行して調整後のブライトネス値およびコントラスト値を設定し、調整後の設定値に基づいて前記撮像対象についての第3画像を撮像して観察用の画像を生成し、否の場合には、前記撮像対象について前記調整を実行せず、調整前の設定値に基づいて前記撮像対象についての前記第3画像を撮像して前記観察用の画像を生成する、
    荷電粒子ビーム装置。
  2. 請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
    前記コンピュータシステムは、
    前記試料の撮像対象について、前記第3画像を撮像する第1処理と、前記第1画像に基づいて前記調整の要否を判定する第2処理とを、並列に実行し、
    前記判定の結果に基づいて、前記要の場合には、前記第1処理を中断し、前記第2画像についての前記調整を実行し、前記調整後の設定値に基づいて前記第1処理を行って前記観察用の画像を生成し、前記否の場合には、前記第1処理を継続し、前記第2画像についての前記調整を実行せず、前記調整前の設定値に基づいて前記第1処理を行って前記観察用の画像を生成する、
    荷電粒子ビーム装置。
  3. 請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
    前記コンピュータシステムは、
    前記撮像対象の前記第2画像について前記調整を実行した場合に前記調整後のブライトネス値およびコントラスト値を保存値として保存しておき、
    新たな撮像対象について、前記調整の要否を判定する際に、前記保存値を適用して撮像した前記第1画像に基づいて前記評価を行う、
    荷電粒子ビーム装置。
  4. 請求項3記載の荷電粒子ビーム装置において、
    前記コンピュータシステムは、
    前記試料に係わる製造デバイスおよび製造プロセスを含む試料情報を参照し、
    前記製造デバイスおよび製造プロセスに応じて、前記調整後のブライトネス値およびコントラスト値を前記保存値として保存しておき、
    前記新たな撮像対象について、前記調整の要否を判定する際に、該当する製造デバイスおよび製造プロセスに応じた前記保存値を適用して撮像した前記第1画像に基づいて前記評価を行う、
    荷電粒子ビーム装置。
  5. 請求項3または4に記載の荷電粒子ビーム装置において、
    前記コンピュータシステムは、
    前記保存値における各々のブライトネス値およびコントラスト値について、適用された頻度または回数を記憶しておき、
    前記新たな撮像対象について、前記調整の要否を判定する際に、前記保存値の各々のブライトネス値およびコントラスト値を、前記頻度または回数に基づいて順番に試行する、
    荷電粒子ビーム装置。
  6. 請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
    前記コンピュータシステムは、
    前記機能のブライトネス値およびコントラスト値の設定値を含む条件を参照し、
    前記試料の複数の撮像対象の各々の前記撮像対象について、前記条件で撮像して得た1つ以上(M)のフレームの前記第1画像を評価した結果に基づいて、前記調整の要否を判定し、
    前記判定の結果に基づいて、前記要の場合には、前記撮像対象についての1つ以上(M)のフレームの前記第2画像について前記調整を実行して前記調整後のブライトネス値およびコントラスト値を設定し、前記調整後の設定値に基づいて前記撮像対象についての1つ以上(N)のフレームの前記第3画像を撮像して前記観察用の画像を生成し、前記否の場合には、前記撮像対象について前記調整を実行せず、前記調整前の設定値に基づいて前記撮像対象についての前記1つ以上(N)のフレームの前記第3画像を撮像して前記観察用の画像を生成する、
    荷電粒子ビーム装置。
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