JP2021197241A - 診断システム - Google Patents
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Abstract
【課題】二次電池によって駆動する車両のデッドタイムを短縮すること。【解決手段】診断システム10は、温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎の二次電池の充電曲線の微分曲線を記憶する記憶部11と、充電条件と走行予測情報と、を取得する取得部12と、取得部12によって取得された充電条件に合致する微分曲線を特定し、特定した該微分曲線におけるピーク箇所を特定する特定部13と、走行予測情報に基づき、一定区間回生電流が得られる回生区間と該回生区間の始点における診断対象二次電池の残存容量とを推定し、回生区間の始点を充電開始位置に決定する決定部14と、診断対象二次電池の残存容量が、ピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくなるように、診断対象二次電池の残存容量を調整するSOC調整部15と、充電開始位置から充電制御を開始する充電制御部16と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、二次電池の診断システムに関する。
車両の駆動用バッテリとして機能する二次電池の劣化状態を診断する手法として、二次電池の充放電曲線の微分特性を求め、該微分特性におけるピーク箇所の情報から、二次電池の劣化状態を表すSOH(State Of Health)を判定する手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
ここで、SOHを高精度に判定するためには、充放電曲線の微分特性のピークが適切な形状で取得される必要がある。ピークを適切な形状で取得するためには、比較的低Cレート(すなわち低電流)で充放電が行われる必要がある。これは、比較的高Cレート(すなわち高電流)で充放電を行った場合には二次電池の化学構造変化が急激に進行してしまい充放電曲線のデータサンプリング感度が不足しピークを適切な形状で取得することができないためである。一方で、低Cレートで充放電を行った場合には、充放電に要する時間が長くなる。通常、このような充放電は車両の停止時に行われるため、二次電池の充放電制御を行うことによって、二次電池によって駆動する車両のデッドタイムが長くなってしまう。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、二次電池によって駆動する車両のデッドタイムを短縮することを目的とする。
本発明の一態様に係る二次電池の診断システムは、温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎の二次電池の充電曲線の微分曲線を記憶する記憶部と、温度、劣化状態、及びCレートの情報を含む診断対象二次電池の充電制御に係る充電条件と、該診断対象二次電池を駆動用バッテリとする車両の予測走行経路を含む走行予測情報と、を取得する取得部と、記憶部に記憶された各微分曲線の中から、取得部によって取得された充電条件に合致する微分曲線を特定し、特定した該微分曲線におけるピーク箇所を特定する特定部と、走行予測情報に基づき、一定区間回生電流が得られる回生区間と該回生区間の始点における診断対象二次電池の残存容量とを推定し、回生区間の始点を充電開始位置に決定する決定部と、決定部によって決定された充電開始位置における診断対象二次電池の残存容量が、特定部によって特定されたピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくなるように、診断対象二次電池の残存容量を調整する調整部と、調整部によって残存容量が調整された診断対象二次電池について、充電開始位置から充電制御を開始する充電制御部と、を備える。
本発明の一態様に係る二次電池の診断システムでは、充電条件に合致した微分曲線が特定されると共に、走行予測情報に基づき回生区間及び回生区間の始点における診断対象二次電池の残存容量が推定され、回生区間の始点が充電開始位置に決定される。そして、本診断システムでは、充電開始位置における診断対象二次電池の残存容量が、微分曲線から特定されるピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくなるように、診断対象二次電池の残存容量が調整され、充電開始位置において充電制御が開始される。このように、走行予測情報に基づき特定される回生区間の始点(充電開始位置)において、診断対象二次電池の残存容量が、充電条件から推定されるピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくされて充電制御が開始されることにより、充電制御によって電池の残存容量が増えていく過程で、ピークの情報が適切に取得される。すなわち、このような制御によれば、走行中において、充電制御時の微分曲線のピークの情報が適切に取得され、該ビークの情報に基づき診断対象二次電池の劣化状態を適切に推定することができる。走行中に取得される情報により診断対象二次電池の劣化状態を推定することができるため、車両の停車時に充電制御を行う必要がなく、診断対象二次電池のデットタイムを短縮することができる。以上のように、本発明の一態様に係る二次電池の診断システムでは、走行予測情報を利用して回生区間が適切に推定されると共に、回生区間の始点(充電開始位置)から充電が開始された場合にピークの情報が取得されるように診断対象の残存容量が調整されることによって、走行中に取得した情報に基づく二次電池の劣化状態推定を可能にし、車両の停止時における充電制御を不要とすることによって、当該車両のデットタイムを短縮することができる。
調整部は、車両において走行以外の機能によって電力が消費されるように診断対象二次電池の強制放電制御を行うことにより、診断対象二次電池の残存容量を調整してもよい。例えば電動補機類のようなコントロール可能な機能によって電力が消費されるように強制放電制御が行われることにより、診断対象二次電池の残存容量がピーク箇所における二次電池の残存容量よりも大きい場合であっても、適切且つ容易に、診断対象二次電池の残存容量を小さく(ピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さく)することができる。
充電制御部は、回生区間において、要求される制動力が所定値を超えた場合に、超過分の制動力をモータ以外の制動装置が担うように充電制御を行うことにより、モータの回生電流を一定にしてもよい。充電制御時において適切に微分曲線を取得するためには、一定の回生電流とされることが好ましい。この点、制動力が所定値を超えた場合においてモータ以外の制動装置が超過分の制動力を担うことにより、モータによる制動力(すなわち回生電流)を適切に一定にすることができる。
本発明によれば、二次電池によって駆動する車両のデッドタイムを短縮することができる。
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。
図1は、二次電池の診断システム10の機能ブロック図である。本実施形態における二次電池とは、例えば車載用のリチウムイオン電池であるが、その他の車載用の二次電池であってもよい。本実施形態における二次電池は、車両の駆動用バッテリとして機能する。また、本実施形態における二次電池は、車両の電動補機類(コンプレッサー、空調、DCDCコンバータ等)のバッテリとしても機能する。本実施形態では、二次電池が車両の駆動用バッテリ等として機能するリチウムイオン電池であるとして説明する。より詳細には、二次電池は、グラファイト系負極を用いたリチウムイオン電池である。
最初に、図2〜図4も参照しながら、本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システム10の概要について説明する。診断システム10は、例えば、駆動用バッテリとして機能するリチウムイオン電池の状態推定・監視を行うBMS(Battery Management System)の機能である。診断システム10は、リチウムイオン電池の内部状態を非破壊で推定するシステムであり、具体的にはリチウムイオン電池の残存容量を表すSOC(State Of Charge)の値を推定する。診断システム10は、リチウムイオン電池の電流、電圧、及び表面温度に基づいて、周知の技術によりSOCの値を推定する。ここで、SOCの値を高精度に推定するためには、リチウムイオン電池の劣化状態(SOH)が考慮されること(すなわち、SOCの値がSOHの値に基づき補正されること)が好ましい。診断システム10は、SOHの値を推定し、該SOHの値によりSOCの値を補正することにより、SOCの値を高精度に推定している。
診断システム10は、充放電時において測定されるリチウムイオン電池の電流及び電圧に基づいて、リチウムイオン電池の充放電曲線(図3参照)を求め、更に、該充放電曲線の微分特性(微分曲線,図4参照)を求め、該微分曲線に基づいてリチウムイオン電池の劣化状態(SOH)を推定している。
図3は、リチウムイオン電池の充放電曲線の一例を示す図である。図3に示されるように、充放電曲線は、横軸が容量(mAh)、縦軸が電圧(V)とされて、充電時及び放電時におけるリチウムイオン電池の電流及び電圧に基づき導出される。図4は、リチウムイオン電池の充放電曲線の微分特性(微分曲線)の一例を示す図である。図4に示されるように、微分曲線は、横軸が容量(SOC(%))、縦軸がdV/dQ(Vは電圧、Qは容量)とされて、充放電曲線に基づき導出される。
図4に示されるように、微分曲線においては、充電及び放電共に、ピーク(曲線において局所的に凸形状となった部分)が生じている。すなわち、図4の例では、充電曲線において2つのピークP1,P2、放電曲線において2つのピークP3,P4が生じている。このようなピークの情報(ピークの形状及び位置)は、リチウムイオン電池の劣化状態を推定する上で重要な情報となる。
診断システム10は、具体的には、リチウムイオン電池の温度(詳細には内部温度)、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎に充放電曲線の微分曲線を記録した台上データ(図2参照)を予め記憶しており、導出した微分曲線と台上データの微分曲線とを照合する(互いのピークの形状及び位置を比較する)ことにより、リチウムイオン電池の劣化状態を導出する。すなわち、診断システム10は、台上データの中から、充放電制御に係る充放電条件であるリチウムイオン電池の温度及びCレートの情報が一致すると共に微分曲線におけるピークの情報が類似するデータを特定し、該データの劣化状態を、診断対象のリチウムイオン電池の劣化状態とみなす。なお、Cレートとは、電池に対して充放電する時の電流の大きさであり、電流に基づき導出されるものである。Cレートは、充放電のスピードを示すものである。
ここで、上述したような劣化状態を推定すべく、充電曲線の微分曲線を取得する場合には、通常、車両の停止時にリチウムイオン電池の充電が行われる。劣化状態(SOH)を高精度に導出するためには、微分曲線のピークが適切な形状で取得される必要がある。この点、比較的高Cレート(すなわち高電流)で充電を行った場合にはリチウムイオン電池の化学構造変化が急激に進行してしまい充電曲線のデータサンプリング感度が不足しピークを適切な形状で取得することができないおそれがある。そのため、ピークの形状及び位置を適切に取得する観点から、比較的低Cレート(すなわち低電流)で充電が行われる。このことにより、充電に要する時間が長くなり、リチウムイオン電池が車両の駆動用バッテリとして機能していない時間(デットタイム)が長くなってしまうことが問題になる。
診断システム10は、上述した問題を解決すべく、充電曲線の微分曲線を取得するための充電制御を、走行中に行う。充電制御が走行中に行われることにより、充電中においてもリチウムイオン電池が車両の駆動用バッテリとして機能することになり、上述したデットタイムを大幅に短縮することができる。診断システム10は、走行中の充電制御を実現するための機能として、回生区間推定機能と、放電コントロール機能と、充電コントロール機能と、を有している。すなわち、診断システム10は、走行予測情報に基づき一定区間回生電流が得られる(走行中に充電が可能である)回生区間を推定する。また、診断システム10は、回生区間の始点である充電開始位置から充電を開始した場合に、微分曲線にピーク箇所が含まれるように、リチウムイオン電池の残存容量を小さくする放電コントロールを行う。そして、診断システム10は、適切な微分曲線を取得するために充電制御時のモータの回生電流を一定にすべく、モータ以外の制動装置に制動力の一部を担わせる充電コントロールを行う。以上の処理により、診断システム10による走行中の充電制御(充電曲線の微分曲線を取得するための充電制御)が可能になる。
以下では、図1を参照し、リチウムイオン電池の診断システム10の機能の詳細について説明する。図1に示されるように、診断システム10は、記憶部11と、取得部12と、特定部13と、決定部14と、SOC調整部15(調整部)と、充電制御部16と、電池状態推定部17と、を備えている。
記憶部11は、リチウムイオン電池の温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎のリチウムイオン電池の充放電曲線の微分曲線が記録された台上データ(図2参照)を記憶するデータベースである。このような台上データは、例えば電池の種類毎に予め準備されている。
取得部12は、温度、劣化状態、及びCレートの情報を含む診断対象二次電池の充電制御に係る充電条件を取得する。温度は、リチウムイオン電池の内部温度であり、例えばリチウムイオン電池の表面温度及び電池モジュール2の電流センサ21により検出される電流等に応じて導出される。劣化状態は、例えば車両の走行履歴から推定されるリチウムイオン電池の劣化状態である。Cレートは、予め定められた値であってもよいし、電流センサ21により検出される電流に応じて導出されてもよい。
取得部12は、診断対象二次電池を駆動用バッテリとする車両の予測走行経路を含む走行予測情報を取得する。取得部12は、例えばロケータECU4から当該車両の走行予測情報を取得する。走行予測情報とは、例えば、現在のGPS情報、車速等であり、少なくとも予測経路上の標高情報予測(図5(a)参照。詳細は後述)が可能になる情報である。
また、取得部12は、充電時の処理として、充電時において検出される電流及び電圧の値を取得する。取得部12は、複数のリチウムイオン電池22から構成されある電池モジュール2の電流センサ21から、リチウムイオン電池22に流れる電流値を取得する。また、取得部12は、電池モジュール2を構成するリチウムイオン電池22の端子間の電圧を測定する電圧センサから、リチウムイオン電池22に印可される電圧値を取得する。
特定部13は、記憶部11に記憶された台上データの各微分曲線の中から、取得部12によって取得された充放電条件に合致する微分曲線を特定する。すなわち、特定部13は、取得部12によって取得された充放電条件と、温度、劣化状態、及びCレートの全てが一致する(或いは、最も近似する)台上データの微分曲線を特定する。そして、特定部13は、特定した微分曲線におけるピーク箇所を特定する。
決定部14は、取得部12によって取得された走行予測情報に基づき、一定区間回生電流が得られる回生区間と該回生区間の始点における診断対象二次電池の残存容量とを推定し、回生区間の始点を充電開始位置に決定する。
図5は、ロケータECU4の情報(すなわち走行予測情報)に基づくSOC推移の予測について説明する図である。図5(a)は、横軸を距離、縦軸を標高とした場合の、取得部12によって取得された走行予測情報から推定される走行経路の各位置における標高情報予測の結果を示すグラフである。図5(b)は、横軸を距離、縦軸を位置エネルギーとした場合の、走行経路の各位置における位置エネルギーを示すグラフである。図5(c)は、横軸を距離、縦軸をパワーとした場合の走行経路の各位置における電力(パワー)を示すグラフである。図5(d)は、横軸を距離、縦軸を電流とした場合の、走行経路の各位置における電流を示すグラフである。図5(e)は、横軸を距離、縦軸をSOCとした場合の走行経路の各位置におけるSOCを示すグラフである。
決定部14は、まず、取得部12によって取得された走行予測情報に基づき、図5(a)に示されるような走行経路の各位置における標高情報を推定する。更に、決定部14は、図5(a)の標高情報に基づき、図5(b)に示されるような走行経路の各位置における位置エネルギーを推定する。更に、決定部14は、推定した位置エネルギーを微分することにより、図5(c)に示されるような走行経路の各位置における入出力電力を推定する。図5(c)に示されるように、電力(パワー)が正の値である場合には駆動パワーが発生しており、電力(パワー)が負の値である場合にはで移動パワーが発生している。更に、決定部14は、推定した電力を電圧で割ることにより、図5(d)に示されるような走行経路の各位置における電流を推定する。図5(d)に示されるように、電流が正の値である場合には放電されており、電流が負の値である場合には充電されている。そして、決定部14は、推定した電流の積算値に基づいて、図5(e)に示されるような走行経路の各位置におけるSOC(SOC推移)を推定する。
決定部14は、図5(d)に示される各位置における電流の情報から、一定区間回生電流が得られる回生区間(図5(d)において電流が負の値である区間)を特定し、該回生区間の始点を充電開始位置に特定する。そして、決定部14は、図5(e)に示されるSOC推移の情報から、特定した充電開始位置におけるSOCの値(診断対象二次電池の残存容量)を推定する。
SOC調整部15は、決定部14によって決定された充電開始位置における診断対象二次電池の残存容量(SOCの値)が、特定部13によって特定された微分曲線におけるピーク箇所の二次電池の残存容量(SOCの値)よりも小さくなるように、診断対象二次電池の残存容量(SOCの値)を調整する。SOC調整部15は、車両において走行以外の機能によって電力が消費されるように診断対象二次電池の強制放電制御を行う(放電コントロールを行う)ことにより、診断対象二次電池残存容量を調整する。コントロール可能な電力としては、例えば電動補機類(コンプレッサー、空調、DCDCコンバータ等)の電力が挙げられる。
図6は、放電コントロールについて説明するグラフである。図6(a)において、横軸は距離、縦軸はSOCを示しており、破線は放電コントロールを行わなかった場合の予測SOC推移を示している。図6(a)において、SOC推移のグラフの折り返し地点(下落から上昇に生じる地点)が、充電開始位置を示している。また、図6(a)には、微分曲線におけるピークのSOCの範囲が示されている。図6(a)に示されるように、放電コントロールを行わなかった場合、充電開始位置以降の回生区間(微分特性取得区間)において、診断対象二次電池のSOCがピークのSOCの範囲まで下がっていないと、ピークを取得することができない。図6(a)において、実線は放電コントロールを行った場合の予測SOC推移を示している。この点、図6(a)の実線のグラフで示されるように、放電コントロールにより充電開始位置において診断対象二次電池のSOCの値がピーク箇所のSOCの値よりも小さくされることにより、回生区間(微分特性取得区間)において、微分曲線のピークを確実に取得することができる。
図6(b)において、横軸は距離、縦軸は電力(パワー)を示しており、破線はモータ走行により消費される電力、実線は電動補機類により消費される電力を示している。図6(b)に示されるように、充電開始位置までの期間に、電量補機類の電力消費を促す放電コントロールが行われることにより、図6(a)の実線で示されるように、充電開始位置までに診断対象二次電池のSOCの値を小さく(ピーク箇所のSOCの値よりも小さく)することができる。
充電制御部16は、SOC調整部15によって残存容量が調整された診断対象二次電池について、充電開始位置から充電制御を開始する。上述したように、SOC調整部15によって診断対象二次電池の残存容量がピーク箇所の二次電池の残存容量よりも小さくされているため、充電制御部16による充電制御によって、ピーク箇所を含む微分曲線を確実に取得することができる。
充電制御部16は、回生区間においては、要求される制動力が所定値を超えた場合に、超過分の制動力をモータ以外の制動装置が担うように充電制御を行う(充電コントロールを行う)ことにより、充電制御中のモータの回生電流を一定にする。すなわち、充電制御部16は、回生電流が目標レートを超えた場合に、超過分の制動力をモータ以外の制動装置が行うように、充電制御を行う。これにより、バッテリに流入する電流(回生電流)が一定となる。
図7は、充電コントロールについて説明するグラフである。図7(a)〜図7(c)において、横軸は距離を示している。図7(a)における縦軸は標高を、図7(b)における縦軸は電力(パワー)を、図7(c)における縦軸はバッテリ電流を、それぞれ示している。いま、図7(a)示されるように、標高が徐々に低くなる走行経路(下り坂)において充電制御が行われているとする。この場合、回生のみで制動力を担おうとすると、制動力の変化に応じて回生電流が一定とならない。微分曲線を取得する際の充電制御においては、当該回生電流が一定とされることが好ましい。この点、図7(b)に示されるように、ある一定の制動力を超えた超過分については、例えばブレーキ等の他の制動装置が担うことにより、モータの制動力を一定にすることができる。このような制御が行われることにより、図7(c)に示されるように、バッテリに流入する電流(回生電流)を一定値に維持することができる。
電池状態推定部17は、充電時に取得部12によって取得された電流値及び電圧値に基づいて、充電曲線及び該充電曲線の微分曲線を導出し、温度及びCレートの情報並びに導出した微分曲線と情報(ピークの情報)が一致する台上データ(台上データに含まれたデータ)を特定する。そして、電池状態推定部17は、特定した台上データの劣化状態を、診断対象二次電池の劣化状態と推定する。電池状態推定部17は、更に、劣化状態(SOHの値)によりSOCの値を補正することにより、SOCの値を高精度に推定する。
次に、本実施形態に係るリチウムイオン電池(診断対象二次電池)の診断処理(診断方法)について、図8を参照して説明する。図8は、リチウムイオン電池の診断処理(診断方法)を示すフローチャートである。
図8に示されるように、診断システム10では、最初に、充電条件及び走行予測情報が取得される(ステップS1)。充電条件とは、リチウムイオン電池の温度、劣化状態、及びCレートの情報である。走行予測情報とは、例えば、現在のGPS情報、車速等であり、少なくとも予測経路上の標高情報予測(図5(a)参照。詳細は後述)が可能になる情報である。
つづいて、診断システム10は、記憶する台上データの各微分曲線の中から、取得した充電条件に合致する微分曲線を特定し、ピーク箇所(ピーク箇所のSOC)を特定する(ステップS2)。
つづいて、診断システム10は、取得した走行予測情報に基づき、一定区間回生電流が得られる回生区間と該回生区間におけるSOC推移(特に、回生区間の始点における診断対象二次電池のSOC)とを推定し、回生区間の始点を充電開始位置に決定する(ステップS3)。
つづいて、診断システム10は、充電開始位置においてSOCの値が、特定したピーク箇所のSOCの値よりも小さくなるように、放電コントロールを実施する(ステップS4)。具体的には、診断システム10は、車両において走行以外の機能によって電力が消費されるように、診断対象二次電池の強制放電を行い、診断対象二次電池のSOCを調整する。
つづいて、診断システム10は、充電開始位置から充電制御を開始し、充電コントロールにより回生電流を一定に保ちながら受電を実施する(ステップS5)。具体的には、診断システム10は、回生区間において、要求される制動力が所定値を超えた場合に超過分の制動力をモータ以外の制動装置が担うように充電制御を行うことにより、モータの回生電流を一定にする。
つづいて、診断システム10は、充電時に取得された電流値及び電圧値に基づいて、充電曲線及び該充電曲線の微分曲線を導出し、ピークの情報を取得する(ステップS6)。そして、診断システム10は、台上データを参照することにより、ピークの情報等に基づき、診断対象二次電池の劣化状態を推定する(ステップS7)。
最後に、本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システムの作用効果について説明する。
本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システム10は、温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎の二次電池の充電曲線の微分曲線を記憶する記憶部11と、温度、劣化状態、及びCレートの情報を含む診断対象二次電池の充電制御に係る充電条件と、該診断対象二次電池を駆動用バッテリとする車両の予測走行経路を含む走行予測情報と、を取得する取得部12と、記憶部11に記憶された各微分曲線の中から、取得部12によって取得された充電条件に合致する微分曲線を特定し、特定した該微分曲線におけるピーク箇所を特定する特定部13と、走行予測情報に基づき、一定区間回生電流が得られる回生区間と該回生区間の始点における診断対象二次電池の残存容量とを推定し、回生区間の始点を充電開始位置に決定する決定部14と、決定部14によって決定された充電開始位置における診断対象二次電池の残存容量が、特定部13によって特定されたピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくなるように、診断対象二次電池の残存容量を調整するSOC調整部15と、SOC調整部15によって残存容量が調整された診断対象二次電池について、充電開始位置から充電制御を開始する充電制御部16と、を備える。
本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システム10では、充電条件に合致した微分曲線が特定されると共に、走行予測情報に基づき回生区間及び回生区間の始点における診断対象二次電池の残存容量が推定され、回生区間の始点が充電開始位置に決定される。そして、本診断システム10では、充電開始位置における診断対象二次電池の残存容量が、微分曲線から特定されるピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくなるように、診断対象二次電池の残存容量が調整され、充電開始位置において充電制御が開始される。このように、走行予測情報に基づき特定される回生区間の始点(充電開始位置)において、診断対象二次電池の残存容量が、充電条件から推定されるピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくされて充電制御が開始されることにより、充電制御によって電池の残存容量が増えていく過程で、ピークの情報が適切に取得される。すなわち、このような制御によれば、走行中において、充電制御時の微分曲線のピークの情報が適切に取得され、該ビークの情報に基づき診断対象二次電池の劣化状態を適切に推定することができる。走行中に取得される情報により診断対象二次電池の劣化状態を推定することができるため、車両の停車時に充電制御を行う必要がなく、診断対象二次電池のデットタイムを短縮することができる。以上のように、本実施形態に係るリチウムイオン電池の診断システム10では、走行予測情報を利用して回生区間が適切に推定されると共に、回生区間の始点(充電開始位置)から充電が開始された場合にピークの情報が取得されるように診断対象二次電池の残存容量が調整されることによって、走行中に取得した情報に基づくリチウムイオン電池の劣化状態推定を可能にし、車両の停止時における充電制御を不要とすることによって、当該車両のデットタイムを短縮することができる。
SOC調整部15は、車両において走行以外の機能によって電力が消費されるように診断対象二次電池の強制放電制御を行うことにより、診断対象二次電池の残存容量を調整してもよい。例えば電動補機類のようなコントロール可能な機能によって電力が消費されるように強制放電制御が行われることにより、診断対象二次電池の残存容量がピーク箇所における二次電池の残存容量よりも大きい場合であっても、適切且つ容易に、診断対象二次電池の残存容量を小さく(ピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さく)することができる。
充電制御部16は、回生区間において、要求される制動力が所定値を超えた場合に、超過分の制動力をモータ以外の制動装置が担うように充電制御を行うことにより、モータの回生電流を一定にしてもよい。充電制御時において適切に微分曲線を取得するためには、一定の回生電流とされることが好ましい。この点、制動力が所定値を超えた場合においてモータ以外の制動装置が超過分の制動力を担うことにより、モータによる制動力(すなわち回生電流)を適切に一定にすることができる。
10…診断システム、11…記憶部、12…取得部、13…特定部、14…決定部、15…SOC調整部、16…充電制御部。
Claims (3)
- 温度、劣化状態、及びCレートの組み合わせ毎の二次電池の充電曲線の微分曲線を記憶する記憶部と、
温度、劣化状態、及びCレートの情報を含む診断対象二次電池の充電制御に係る充電条件と、該診断対象二次電池を駆動用バッテリとする車両の予測走行経路を含む走行予測情報と、を取得する取得部と、
前記記憶部に記憶された各微分曲線の中から、前記取得部によって取得された前記充電条件に合致する前記微分曲線を特定し、特定した該微分曲線におけるピーク箇所を特定する特定部と、
前記走行予測情報に基づき、一定区間回生電流が得られる回生区間と該回生区間の始点における前記診断対象二次電池の残存容量とを推定し、前記回生区間の始点を充電開始位置に決定する決定部と、
前記決定部によって決定された前記充電開始位置における前記診断対象二次電池の残存容量が、前記特定部によって特定された前記ピーク箇所における二次電池の残存容量よりも小さくなるように、前記診断対象二次電池の残存容量を調整する調整部と、
前記調整部によって残存容量が調整された前記診断対象二次電池について、前記充電開始位置から充電制御を開始する充電制御部と、を備える二次電池の診断システム。 - 前記調整部は、前記車両において走行以外の機能によって電力が消費されるように前記診断対象二次電池の強制放電制御を行うことにより、前記診断対象二次電池の残存容量を調整する、請求項1記載の診断システム。
- 前記充電制御部は、前記回生区間において、要求される制動力が所定値を超えた場合に、超過分の制動力をモータ以外の制動装置が担うように前記充電制御を行うことにより、モータの回生電流を一定にする、請求項1又は2記載の診断システム。
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