JP2021190714A - 金属配線を有する構造体及びその製造方法 - Google Patents

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Hitomi Ohashi
徹 湯本
Toru Yumoto
正人 齋藤
Masato Saito
雅志 古川
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Abstract

【課題】直線性に優れた金属配線を有する構造体及びその製造方法を提供する。【解決手段】基材と、前記基材上に配置された金属配線とを有する構造体であって、前記金属配線の表面に、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔が存在し、前記金属配線の表面の面積に対する、前記0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合が0.5%以上70%以下である構造体、及び当該構造体の製造方法が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は、金属配線を有する構造体及びその製造方法に関する。
回路基板は、基板上に導電性の配線を施した構造を有する。回路基板の製造方法は、一般的に、次の通りである。まず、金属箔を貼り合せた基板上にフォトレジストを塗布する。次に、フォトレジストを露光及び現像して所望の回路パターンのネガ状の形状を得る。次に、フォトレジストに被覆されていない部分の金属箔をケミカルエッチングにより除去してパターンを形成する。これにより、高性能の導電性基板を製造することができる。
しかしながら、従来の方法は、工程数が多く、煩雑であると共に、フォトレジスト材料を要する等の欠点がある。
これに対し、金属粒子及び金属酸化物粒子からなる群から選択された粒子を分散させた分散体(以下、「ペースト材料」ともいう)で基板上に所望の金属配線を直接印刷する直接配線印刷技術が注目されている。この技術は、工程数が少なく、フォトレジスト材料を用いる必要がない等、極めて生産性が高い。
直接印刷配線技術の一例としては、ペースト材料をスクリーン印刷やインクジェット印刷によって基材上に印刷し、その後ペースト材料を熱焼成することで低抵抗な金属配線を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ペースト材料を基板の全面に塗布し、ペースト材料にレーザ光をパターン状に照射して選択的に熱焼成することで、所望の金属配線を得る方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、酸化第一銅の凝集体粒子を含む分散液を厚み10〜20μmで塗布し、これをレーザ光で焼成することで銅配線を製造する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。この方法によれば、レーザ光照射部以外は加熱されないため、基材としてPET基材のような低耐熱樹脂材料を用いることができる。
国際公開第2010/024385号 特開平5−37126号公報 特表2010−534932号公報
特許文献1〜3に記載された、ペースト材料の塗膜に対するレーザ光照射により金属配線を形成する直接配線印刷技術では、レーザ光照射時に塗膜が収縮したり、低耐熱樹脂材料からなる基板が部分的に溶融して塗膜を貫通することで、金属配線内にクラック等の異常部が生じたりすることがある。この異常部が金属配線の端部に生じると、金属配線の直線性が悪くなり、金属配線同士のスペース幅を狭めるため(図1参照)、マイグレーションが起こりやすくなる問題が生じる。また、異常部が金属配線全体に生じると、金属配線の絶縁を引き起こすことがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、直線性に優れた金属配線を有する構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] 基材と、前記基材上に配置された金属配線とを有する構造体であって、
前記金属配線の表面に、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔が存在し、
前記金属配線の表面の面積に対する、前記0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合が0.5%以上70%以下である、構造体。
[2] 前記金属配線が、銅とカーボンとを含む、上記態様1に記載の構造体。
[3] 前記金属配線の厚み方向断面に、0.3μm2以上700μm2以下の断面積を有する孔が少なくとも1つ存在する、上記態様1又は2に記載の構造体。
[4] 配線材、携帯情報機器筐体用アンテナ、メッシュ電極、電磁波シールド材、又は放熱材料である、上記態様1〜3のいずれかに記載の構造体。
[5] 上記態様1〜4のいずれかに記載の構造体の製造方法であって、
金属及び/又は金属酸化物を含む塗布液を基材上に塗布して塗膜を得る塗布工程と、
レーザ光を前記塗膜に照射して、金属配線を形成するレーザ光照射工程と、
を含む、構造体の製造方法。
[6] 前記レーザ光照射工程において、前記塗膜上にガスがフローしている状態で、前記レーザ光を前記塗膜に照射する、上記態様5に記載の構造体の製造方法。
[7] 前記レーザ光が355nm以上550nm以下の範囲に中心波長を有する、上記態様5又は6に記載の構造体の製造方法。
[8] 前記レーザ光照射工程において、前記レーザ光を前記レーザ光の走査線の線幅方向にオーバーラップさせながら塗膜上に繰り返し走査する、上記態様5〜7のいずれかに記載の構造体の製造方法。
[9] 前記オーバーラップが前記線幅の5%以上99.5%以下である、上記態様8に記載の構造体の製造方法。
[10] 前記金属酸化物が酸化第一銅である、上記態様5〜9のいずれかに記載の構造体の製造方法。
本発明の一態様によれば、直線性に優れた金属配線を有する構造体及びその製造方法を提供することができる。
金属配線の端部に生じた異常部の一例を示す光学顕微鏡写真である。 本発明の一態様に係る構造体の模式図である。 本発明の一態様に係る構造体における金属配線表面の孔の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。 本発明の一態様に係る金属配線の製造方法におけるレーザ光の重複照射について説明する模式図である。 本発明の一態様において用いる金属配線製造装置の模式図である。 実施例1及び比較例1における直線性の評価方法について説明する模式図である。 実施例1における金属配線の表面の光学顕微鏡写真である。 比較例1における金属配線の表面の光学顕微鏡写真である。
以下、本発明の一実施の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。
<構造体>
本発明の一態様は、基材と、基材上に配置された金属配線とを有する構造体を提供する。一態様においては、金属配線の表面に、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔が存在する。一態様においては、金属配線の表面の面積に対する、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合が0.5%以上70%以下である。
図2は、本実施形態に係る構造体を示す断面模式図である。図2を参照し、構造体1は、基材11と、基材11が構成する面上に配置された金属配線13とを有する。典型的な態様においては、基材11上に、厚み方向断面視において、金属配線13と絶縁領域14とが互いに隣接して配置されて単一層15が形成されている。一態様において、金属配線13は、後述する塗膜のうちレーザ光が照射された領域である。一態様において、絶縁領域14は、後述する塗膜のうちレーザ光が照射されていない領域であり、存在しても存在しなくてもよい。
[基材]
基材11は、金属配線13を配置するための面を構成するものである。形状は、特に限定されない。基材11の材質は、絶縁領域14が存在する場合、当該絶縁領域14により離隔された金属配線13の間での電気絶縁性を確保するため、絶縁材料であることが好ましい。ただし、基材11の全体が絶縁材料であることは必ずしも必要がない。単一層15が配置される面を構成する部分が絶縁材料であれば足りる。
基材の、金属配線が配置される面は、平面又は曲面であってよく、また段差等を含む面であってもよい。基材は、より具体的には、基板(例えば、板状体、フィルム又はシート)、又は立体物(例えば、筐体等)であってよい。板状体は、例えば、プリント基板等の回路基板に用いられる支持体である。フィルム又はシートは、例えば、フレキシブルプリント基板に用いられる、薄膜状の絶縁体であるベースフィルムである。
立体物の一例としては、携帯電話端末、スマートフォン、スマートグラス、テレビ、パーソナルコンピュータ等の電気機器の筐体が挙げられる。また、立体物の他の例としては、自動車分野では、ダッシュボード、インストルメントパネル、ハンドル、シャーシ等が挙げられる。
基材の具体例として、例えば、無機材料からなる基材(以下、「無機基材」)又は樹脂からなる基材(以下、「樹脂基材」という)が挙げられる。
無機基材は、例えば、ガラス、シリコン、雲母、サファイア、水晶、粘土膜、及び、セラミックス材料等から構成される。セラミックス材料は、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、イットリア及び窒化アルミニウム、並びに、これらのうち少なくとも2つの混合物から選ばれる。また、無機基材としては、特に光透過性が高い、ガラス、サファイア、水晶等から構成される基材を用いることができる。
樹脂基材は、例えば、ポリプロピレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)(PA6、PA66等)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、及びシリコーン樹脂(ポリシロキサン)等から構成される。
また、上記以外に、セルロースナノファイバーを含有する樹脂シートを基材として用いることもできる。
特に、PI、PET及びPENからなる群から選択される少なくとも一種は、単一層との密着性に優れ、且つ、市場流通性が良く低コストで入手可能であることから、事業上の観点から優位であり、好ましい。
さらに、PP、PA、ABS、PE、PC、POM、PBT、m−PPE及びPPSからなる群から選択される少なくとも一種は、特に筐体に用いられる場合、単一層との密着性に優れ、成型性や成型後の機械的強度に優れ、金属配線を形成するときに照射されるレーザ光等による熱にも十分耐えうる耐熱性も有しているため、好ましい。
樹脂基材の荷重たわみ温度は、400℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。荷重たわみ温度が400℃以下の基材は、低コストで入手可能であり、事業上の観点から優位であるため、好ましい。荷重たわみ温度は、樹脂基材の取扱い性の観点から、好ましくは、70℃以上、又は80℃以上、又は90℃以上、又は100℃以上である。荷重たわみ温度は、JIS K7191に準拠して測定される値である。
基材の厚みは、例えば板状体、フィルム又はシートである場合、好ましくは、1μm〜100mm、又は25μm〜10mm、又は25μm〜250μmである。基材の厚みが250μm以下である場合、作製される電子デバイスを、軽量化、省スペース化及びフレキシブル化ができるため好ましい。
なお、基材が立体物である場合、その最大寸法(すなわち一辺の最大長さ)は、好ましくは、1μm〜1000mm、又は200μm〜100mm、又は200μm〜5mmである。上記範囲の厚みを有する基材を用いると、成型後の機械的強度や耐熱性が良好となる。
[単一層]
本実施形態において、構造体は、金属配線13を含み、典型的には、金属配線13と絶縁領域14とを含む単一層15を有する。簡易なプロセスでの製造という観点からは、金属配線13と絶縁領域14との両方が存在することが好ましい。一方、絶縁性を高める観点からは、絶縁領域14が存在しないことが好ましい。
単一層15において、「単一」とは、層が多層構造でないこと、及び、層が断面視で連続していることを意味する。したがって、単一層は、例えば、プリント基板で見られるような、パターニングされた配線層の間をソルダーペーストで埋めて一層としているような状態とは区別される。また、単一とは、全体が均質であることを意味するものではない。すなわち、単一層には、金属配線13と絶縁領域14との関係のように、導電性、粒子状態(焼成と未焼成)等に違いがあってもよいし、金属配線13と絶縁領域14との間に境界(すなわち界面)が存在していてもよい。
(金属配線)
金属配線13は、導電性を示す。一態様において、金属配線13は、レーザ光をパターン状に照射して熱焼成することで所望の金属配線を得る製造方法において、レーザ光による照射を受けた被照射領域である。また、一態様において、金属配線13は、絶縁領域14を光照射によって焼成して得られる焼成体を含む焼成領域である。
金属配線13の、平面視における形状、すなわちパターンは、直線状、曲線状、円状、四角状、屈曲形状等の任意形状を有してよく、特に限定されない。パターンは、レーザ光の走査により形成できるため、形状上の制約が少ない。
金属配線は、例えば、銅、銀等の金属を含む。コストが低いことや、マイグレーション耐性が高いことから、銅が好ましい。金属配線における銅は、例えば、銅を含む粒子同士が互いに融着した構造を示していてもよい。また、金属配線は、粒子の形状を有さず、全てが融着した状態になっていてもよく、又は、一部分が粒子の形状、他の部分が融着状態であってもよい。
また、金属配線は、金属の他に、金属酸化物、例えば酸化銅(酸化第一銅、酸化第二銅、及び/又は亜酸化銅)を含んでいてもよい。例えば、金属配線の表面側の部分は、銅を含む粒子同士が互いに融着した構造であり、基材側の部分は、酸化銅を含む構造であってよい。これにより、酸化銅が銅粒子同士の強固な結合を生じさせ、さらに酸化銅が銅粒子と基材との密着性を高めることができるため、好ましい。
金属配線における金属元素の含有率(一態様において、銅の含有率)は、高い導電性を得る観点から、金属配線100体積%に対して、好ましくは、50体積%以上、又は60体積%以上、又は70体積%以上であり、100体積%であってもよい。
金属配線は、上記有機物を含んでいてもよい。金属配線における有機物の含有率は、金属配線100体積%に対して、0.5体積%以上20体積%以下であることが好ましい。当該含有率が0.5体積%以上である場合、金属配線の曲げ耐性が高く、20体積%以下である場合、実用に適した低抵抗な金属配線となる。
一態様において、金属配線の表面には、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔が存在する。金属配線上に発生する異常部を少なくする観点から、孔の開口面積は、一態様において0.3μm2以上700μm2以下、好ましくは0.3μm2以上600μm2以下、より好ましくは0.3μm2以上500μm2以下である。
一態様においては、金属配線の表面の面積に対する、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合、又は0.3μm2以上600μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合、又は0.3μm2以上500μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合は、0.5%以上70%以下である。上記面積割合は、金属配線上に発生する異常部を少なくする観点から、一態様において0.5%以上70%以下であり、好ましくは1%以上50%以下、より好ましくは1.5%以上30%以下、さらに好ましくは2%以上25%以下、さらに好ましくは2.5%以上20%以下、さらに好ましくは3%以上20%以下である。
図3は、本発明の一態様に係る構造体における金属配線表面の孔の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。レーザ光が照射されると、通常、塗膜が体積収縮するが、孔の面積割合が上記範囲内にある場合、レーザ光が照射されることによって塗膜が体積収縮する際の応力が緩和され、又は、レーザ光照射時に発生する熱が塗膜の外に放熱されるため、金属配線のクラック、基材の部分的な焦げ等の異常部が生じにくくなる(図3参照)。
金属配線の厚み方向断面には、0.3μm2以上700μm2以下の断面積を有する孔が少なくとも1つ存在することが好ましい。金属配線上に発生する異常部を少なくする観点から、孔の上記断面積は、好ましくは0.3μm2以上700μm2以下、より好ましくは0.3μm2以上600μm2以下、さらに好ましくは0.5μm2以上500μm2以下である。金属配線の断面方向に孔が存在する場合、レーザ光が照射されることによって塗膜が体積収縮する際の応力が緩和され、又はレーザ光照射時の熱が塗膜の外に放熱されるため、金属配線のクラック、基材の部分的な焦げ等の異常部が生じにくくなる。
なお、上記の開口面積又は断面積を有する孔の存在の確認、及び上記の面積割合の算出は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、以下の条件で行う。
測定装置:走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、FlexSEM1000)
測定条件:加速電圧 5kV
測定モード:二次電子(表面観察について)、又は反射電子(断面観察について)
観察倍率:2000倍(表面観察について)、又は2500倍(断面観察について)
観察及び画像解析の視野サイズ:40μm×40μm(表面観察について)、又は[金属配線厚み]×[当該厚み方向に対して垂直の方向の長さ40μm]の矩形(断面観察について)
孔の面積及び面積割合は、SEM観察で得られた画像から、解析ソフトImageJ(オープンソース、パブリックドメインの画像処理ソフトウェア)を用いた画像解析により求められる値である。具体的には、孔が識別できるように画像を2値化(一態様において閾値は90とする)して、孔と孔以外の部分との面積比を求め、上記面積割合を算出する。
孔の大きさは、レーザ光照射時のレーザ光の走査速度及びレーザ光のスポット径によって制御できる。レーザ光走査速度を大きくすると孔のサイズが大きくなる傾向があり、レーザ光走査速度を小さくすると孔のサイズが小さくなる傾向がある。また、スポット径を大きくすると孔のサイズが大きくなる傾向があり、スポット径を小さくすると孔のサイズが小さくなる傾向がある。
金属配線の表面における孔の上記の面積割合は、レーザ光照射時のレーザ光の走査速度及びレーザ光を後述のように重複照射する場合の後述のオーバーラップ率によって制御できる。レーザ光走査速度を大きくすると上記の面積割合が大きくなる傾向があり、レーザ光走査速度を小さくすると上記の面積割合が小さくなる傾向がある。後述のオーバーラップ率を低くすると上記の面積割合が大きくなる傾向があり、オーバーラップ率を高くすると上記の面積割合が小さくなる傾向がある。
金属配線は、レーザ光照射時の金属粒子の焼結性を高める観点から、銅とカーボンとを含むことが好ましい。カーボンは、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機化合物が炭化したもの等であってよい。一態様において、カーボンは、基材に含まれるカーボン前駆体の一部がカーボン化されて形成されたものであってよい。
(絶縁領域)
絶縁領域14は、電気絶縁性を示す。一態様において、絶縁領域14は、レーザ光をパターン状に照射して熱焼成することで所望の金属配線を得る製造方法において、レーザ光の照射を受けていない未照射領域である。一態様において、絶縁領域14は、光照射によって焼成されていない未焼成領域である。
一態様において、絶縁領域は、金属酸化物を含み、より具体的には、酸化銅(一態様において酸化第一銅及び/又は酸化第二銅)を含む。酸化銅は、例えば、粒子形状を有する。酸化銅を含む粒子の平均一次粒子径は、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上50nm以下、さらに好ましくは1nm以上20nm以下である。粒子径が小さいほど、絶縁領域の電気絶縁性に優れるため、好ましい。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定される値である。
絶縁領域は、金属酸化物に加え、金属粒子、例えば銅粒子を含んでもよい。すなわち、後述の塗布液が銅を含んでもよい。
<構造体の製造方法>
本発明の一態様は、構造体の製造方法を提供する。一態様において、当該方法は、
金属及び/又は金属酸化物を含む塗布液を基材上に塗布して塗膜を得る塗布工程と、
レーザ光を塗膜に照射して、金属配線を形成するレーザ光照射工程と、
を含む。
以下、塗布液として、酸化第一銅粒子を含む塗布液を用いた方法を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
[塗布工程]
本工程では、塗布液を基材上に塗布して塗膜を得る。塗布液は、金属及び/又は金属酸化物を分散媒に分散させて調製できる。低抵抗な金属配線を得る観点から、金属としては銅粒子が好ましい。また、塗布液の安定性の観点から、金属酸化物としては酸化銅粒子が好ましく、酸化銅粒子としては酸化第一銅粒子が特に好ましい。好ましい態様において、塗布液は、酸化銅粒子と分散剤とを含む。分散剤としてはリン含有有機化合物が好ましいが、絶縁領域の電気絶縁性に悪影響がない範囲で、他の分散剤を使用しても構わない。
例えば、塗布液を基材上に塗布し、必要に応じて乾燥により分散媒を除去することで、塗膜を形成できる。塗膜の形成方法は、特に限定されないが、ダイコート、スピンコート、スリットコート、バーコート、ナイフコート、スプレーコート、ディップコート等の塗布法を用いることができる。これらの方法を用いて、基材上に均一な厚みで塗布液を塗布することが望ましい。
塗布液中の分散媒は乾燥除去してよい。乾燥条件及び乾燥状態は任意に設定してよい。乾燥条件は、例えば60℃〜120℃で30分間〜5時間としてよい。
以上のようにして、塗膜を形成できる。
[レーザ光照射工程]
本工程では、レーザ光を塗膜に照射して金属配線を形成する。一態様において、レーザは選択的に(すなわち金属配線を形成したい箇所のみ)塗膜に照射する。例えば、金属酸化物粒子を含む塗膜においては、当該塗膜のうちレーザ光が照射された部分でのみ、金属酸化物の還元及び粒子の焼結が進行して、金属粒子が生成されると共に生成された金属粒子同士の焼結による融着(すなわち一体化)が生じ、金属配線が形成される。
塗膜には、通常、溶媒、分散剤等の有機成分が含まれているため、レーザ光照射時の当該レーザ光による加熱により、塗膜から煙が発生することがある。この煙がレーザ光の照射光路に侵入してレーザ光を遮ると、レーザ光の散乱を招来する。本実施形態では、レーザ光の散乱を抑制する観点から、塗膜上にガスがフローしている状態で、レーザ光照射を行うことが好ましい。この際用いるガスとしては、特に限定されないが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられ、不活性かつ安価である観点からは窒素が好ましい。
また、ガスの流れは塗膜上全体に同じ流速にて発生している必要はなく、レーザ光が照射されている塗膜上の点においてガスの流れが発生していればよい。より本発明の効果を得る観点からは、塗膜上のレーザ光が照射されている点から半径10mmの領域にガスの流れが発生していることが好ましい。この場合、この領域の全てにおいて同程度のガスの流れが発生している必要はないが、当該領域に亘って、0.01m/s以上1.0m/s以下、又は0.05m/s以上0.8m/s以下、又は0.1m/s以上0.6m/s以下の範囲の流速のガスの流れが発生していることが好ましい。上記流速が0.01m/s以上である場合、煙を除去する効果が良好であり、1.0m/s以下である場合、装置内でブローしたガスが乱流を起こしにくいため、煙のレーザ光の光路内への侵入を防止できる。なお本開示においては、塗膜表面のレーザ光照射点から塗膜に対して垂直方向に10mm離れた位置に風速計の測定部を設置して測定される値を、塗膜上のガスの流速とする。
ガスの流れを生じさせる手段は、ガスを塗膜上に流すことができるものであれば、特に限定されるものではなく、任意のブロワーを使用できる。ブロワーは、例えばモータ駆動により送風するタイプのものでもよいし、高圧ガスボンベから配管を通して直接ガスを流すように構成されたものでもよく、コンプレッサー等で圧縮したガスを流す装置であってもよい。
(レーザ光の重複照射)
レーザ光は、塗膜上の所望の領域に繰り返し照射してよい。図4は、本発明の一態様に係る金属配線の製造方法におけるレーザ光の重複照射について説明する模式図である。図4を参照し、走査線幅S1を有する第1の走査線R1のようにレーザ光を照射した後、第1の走査線R1に対して、走査線幅方向にオーバーラップするように、第2の走査線R2のようにレーザ光を照射する。このようなオーバーラップによれば、塗膜の焼結度を高めることができ、堅い金属配線を形成できる。これにより、例えば、金属配線をフレキシブル基板上に形成して曲げたときに、金属配線が割れることなくフレキシブル基板に追従させることができる。
第1の走査線R1の走査線幅S1に対する、オーバーラップ幅S2の比率S2/S1(本開示で、オーバーラップ率Sともいう。)は、好ましくは、5%以上99.5%以下、又は10%以上99%以下、又は20%以上95%以下、又は30%以上90%以下、又は40%以上85%以下である。オーバーラップ率が5%以上であることで、金属及び/又は金属酸化物の焼結が良好に進行し、99.5%以下であることで、実用性のある生産速度で配線を製造することができる。なお、第2の走査線の走査方向は、第1の走査線と同じでも異なってもよい。
(レーザ光の発光波長)
レーザ光の発光波長は、355nm以上550nm以下の範囲に中心波長を有することが好ましい。この範囲の波長のレーザ光を照射することにより、塗膜に銅、銀、金及びアルミニウムなどの金属粒子が含まれている場合に、当該金属粒子を効果的に焼結できる。金属粒子の焼結性を高める観点から、レーザ光は、好ましくは、355nm以上400nm以下の範囲、より好ましくは355nmに中心波長を有する。
(レーザ光の入射角度)
レーザ光の塗膜への入射角度は、好ましくは、0度以上50度以下、又は0度以上48度以下、又は0度以上45度以下である。入射角度が50度以下である場合、塗膜の表面でレーザ光が反射したり塗膜の内部に侵入したりする光線の光量が少ないことによる塗膜の焼結不足を防止し、金属配線の抵抗値を低く且つ均一にすることができる。
<金属配線製造装置>
本実施形態の構造体は、例えば以下のような金属配線製造装置を用いて製造できる。
図5は、本発明の一態様において用いる金属配線製造装置の模式図である。図5を参照し、金属配線製造装置10は、構造体保持部101及び光線発振器102を備える。一態様において、金属配線製造装置10は、不活性ガス発生器103、光線走査部104、速度制御部105、及び/又はコンピュータ106を有してよい。
[構造体保持部]
一態様において、構造体保持部101は試料室である。試料室は、窓部を有してよい。窓部は、光線を、当該窓部を介して塗膜12まで到達させ得る光透過性を有している。一態様においては、窓部の波長532nmにおける光線透過率が80%以上であり、好ましくは、85%以上、又は90%以上であってよい。上記光線透過率は理想的には100%であるが、窓部の形成容易性の観点から、例えば、98%以下、又は95%以下であってもよい。上記光線透過率は、紫外可視分光光度計で測定される値である。
試料室は不活性ガス導入口を有してよく、例えば、不活性ガス発生器103で発生させた不活性ガスが不活性ガス導入口を介して試料室内に導入されるように構成されていてよい。
[不活性ガス発生器]
不活性ガス発生器103は、構造体保持部101に供給する不活性ガスを発生させる。例えば、不活性ガス発生器103が窒素ガス発生器である場合、空気から窒素を分離精製し、当該窒素を構造体保持部101内に供給することができる。金属配線製造装置10が不活性ガス発生器103を備えることで、ボンベ等が不要となり、省スペース化、及び低コスト化を達成できる。
不活性ガス発生器103は、例えば、吸着方式又は膜方式であってよい。例えば、吸着方式の窒素ガス発生器においては、空気中の窒素と酸素とが吸着剤に吸着される際の吸着速度差を利用して窒素ガスの純度を高くすることができる。一方、膜方式の窒素ガス発生器においては、高分子素材である中空糸膜を収容した圧力容器に圧縮空気を供給し、酸素ガスを透過させて除去することで高純度の窒素ガスを得ることができる。
[光線発振器]
光線発振器102は、光線を所望の波長で出射するように構成されている。典型的な態様において、光線はレーザ光である。光線としてレーザ光を用いる場合、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、YVO(イットリウムバナデイト)、Yb(イッテルビウム)、半導体(GaAs,GaAlAs,GaInAs)、炭酸ガス等のレーザ光源を用いてよい。レーザ光は、基本波だけでなく必要に応じ高調波を取り出して使用してもよい。また、光線としてLED光を用いてもよい。光線発振器102は、冷却装置等を備えてよい。
[光線走査部]
光線走査部104は、光線発振器102から射出された光線Lを走査する。図5では、光線走査部104がガルバノスキャナーである例を示している。光線走査部104としてのガルバノスキャナーは、X軸ガルバノミラー104a、X軸ガルバノモータ104b、Y軸ガルバノミラー104c及びY軸ガルバノモータ104dを有する。ガルバノスキャナーは、fθレンズ(図示せず)、Z軸調整用駆動レンズ(図示せず)等を有してもよい。X軸ガルバノモータ104b及びY軸ガルバノモータ104dは、速度制御部105(例えばスキャナ制御部)に電気的に接続されている。
ガルバノスキャナーは、速度制御部105からの制御信号に従って、X軸ガルバノモータ104b及びY軸ガルバノモータ104dの回転角及び回転速度を制御可能に構成されている。速度制御部105はコンピュータ106によって制御される。
光線Lは、光線走査部104により走査され、基材11の上に形成された塗膜12の表面に照射される。
上記では、光線走査部104としてガルバノスキャナーを例示したが、ガルバノスキャナー以外の光線走査部も使用可能である。例えば、光線走査部104は、ガルバノスキャナーに代えて、塗膜12が形成された基材11をX軸方向及びY軸方向の両方に移動できるX−Yステージを載置台として用い、レーザ光Lの照射点Pを移動させる代わりに基材11を移動させてもよい。
図5に示す光線走査部104(ガルバノスキャナー)は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動に、X軸ガルバノミラー104a、Y軸ガルバノミラー104cのそれぞれを用いているが、ガルバノミラーをX軸及びY軸のいずれか一方に用いること、例えば、X軸方向のみの移動にガルバノミラーを用い、Y軸方向の移動には基材11を載置している載置台(図示せず)のモータ等を用いることも可能である。
金属配線製造装置10における走査速度制御は、例えば下記のように行うことができる。まず、速度制御部105に、金属配線のパターンの所望の形状、位置及び大きさを示すスキャン用データ(座標データ)を入力する。速度制御部105としてのスキャナ制御部は、スキャン用データに基づいて、パターンのX軸方向に沿った長さから走査線の長さ(L)(単位:mm)を算出する。次に、スキャナ制御部は、算出された走査線の長さ(L)に基づいて、以下の式により、所定の走査周期(F)(単位:Hz)(例えば、15Hz)になるように、レーザ光を走査する速度(以下、走査速度という)(V)(単位:mm/秒)を算出する。
走査速度(V)=走査周期(F) x 走査線の長さ(L)
次に、スキャナ制御部は、このように算出された走査速度に従って、光線走査部104としてのガルバノスキャナーにレーザ光Lの照射点PをX軸方向に移動させ、1回の走査を実行させる。
その後、スキャナ制御部は、ガルバノスキャナーに、レーザ光Lの照射点PをY軸方向に移動させる。
上述のように、レーザ光Lの走査速度(V)を、走査線の長さ(L)に基づいて、塗膜12内のいずれの位置においても走査周期(F)が同一になるように、設定することができる。
[出力調整機構]
金属配線製造装置は、光線の出力を調整する出力調整機構を備えてよい。これにより、光線照射時のアブレーション及び/又は炭化を抑制できる。出力調整機構の一例は、光線の経路上に配置されるアッテネータである。アッテネータは、コンピュータに電気的に接続され、コンピュータからの制御信号により出力値を任意の値に変更することが出来る。又は、出力調整機構は、出力値を手動操作により変更可能であるように構成されていてもよい。
[パルス抑制機構]
光線発振器がパルス光を出射するように構成されている場合、金属配線製造装置は、パルス光の初期パルスを抑制するパルス抑制機構を備えてよい。パルス抑制機構は、出射開始時の過大なパルス光が塗膜に照射されるのを防止することで、アブレーション及び/又は炭化を防止する。パルス抑制機構は、例えば、ファーストパルスサブレッション機能(FPS機能)、すなわち、初期パルスの余分な出力を前もって予測し、その余分な出力を低下させる機能を有してよい。
[スポット調整機構]
金属配線製造装置は、光線の焦点位置におけるスポット径を調整するスポット調整機構を有してよい。スポット調整機構は、光線の集光密度を制御してスポット径を調整することで、アブレーション及び/又は炭化を防止する。スポット調整機構の一例は、ガルバノスキャナーに入射する光線の直径を拡大若しくは縮小させる装置であり、例えばビームエキスパンダーを利用することが出来る。光線の直径を変化させることで、集光レンズによって集光された焦点におけるスポット径を変化させることが出来る。光線の直径を拡大することでスポット径は小さくなり、光線の直径を縮小することでスポット径は大きくなる。
<適用例>
本実施形態に係る構造体は、例えば、電子回路基板等の配線材(プリント基板、RFID、自動車におけるワイヤハーネスの代替など)、携帯情報機器(スマートフォン等)の筐体に形成されたアンテナ(携帯情報機器筐体用アンテナ)、メッシュ電極(静電容量式タッチパネル用電極フィルム)、電磁波シールド材、及び、放熱材料、に好適に適用することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
[実施例1]
<分散体の製造>
イオン交換水800g及び1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)400gからなる混合溶媒中に、酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)80gを溶解し、ヒドラジン水和物(和光純薬製)20gを加えて窒素雰囲気下で攪拌した後、遠心分離によって上澄みと沈殿物とに分離した。
得られた沈殿物2.8gに、リン含有有機化合物としてDISPERBYK−145(商品名、ビックケミー社製)(BYK−145)0.4g及び分散媒としてエタノール(和光純薬製)6.6gを加え、ホモジナイザを用いて窒素雰囲気下で分散した後、遠心分離して沈殿物を回収した。沈殿物をエタノールで希釈してホモジナイザで分散した。上記の遠心分離(濃縮)と分散(希釈)とを繰り返すことにより、酸化第一銅(酸化銅(I))を含む酸化第一銅粒子を含有する分散体を得た。最終組成は沈殿物が2.8g、BYK145が0.4g、エタノールが6.6g、ヒドラジン水和物が0.01gであった。
<試料の製造>
幅×奥行き×厚みが70mm×70mm×0.1mmのポリイミド基板の表面にUVオゾン処理を3分間施した後、分散体1mlを基板上に滴下してスピンコート(500rpm×300秒)し、室温で10分間乾燥後、90℃で2時間乾燥させ、基板上に厚み3.5μmの塗膜が形成された試料を得た。
<レーザ光による焼成及び導電性評価>
図5に示す構成の金属配線製造装置10を用いた。試料室には、1.0L/minで窒素ガスを送り込んだ。試料室の上面はガラスとし、レーザ光を透過させる構造とした。ガルバノスキャナー(光線走査部104として)を用いて、最大速度100mm/秒で、焦点位置を動かしながら、レーザ光(中心波長355nm、周波数300kHz、パルス出力920mW、スポット径150μm)を、試料室内の塗膜に照射した。このとき、レーザ光を走査方向に5mm動かした(1回目照射)あと、走査方向に対して垂直の方向に10μm移動させて再び走査方向に最大速度100mm/秒の速さで動かした(2回目照射)。この操作を繰り返すことで、走査方向に垂直な方向に10μmずつ移動させながらレーザ光を走査し、所望とする長さ5mm×幅1mmの寸法の銅を含む金属配線を得た。
<オーバーラップ率の算出>
得られた金属配線の表面を光学顕微鏡で観察(倍率20倍)したところ、レーザ光の走査線が、22μmの間隔で確認できた。また、金属配線の走査終端部の、オーバーラップしていない部分のレーザ光照射の軌跡の幅は255μmであった。下記の式によりオーバーラップ率を計算したところ、88.5%であった。
(オーバーラップ率)=(191μm−22μm)÷191μm
<金属配線上の孔の評価>
金属配線上の、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合を走査型電子顕微鏡(SEM)観察で得られた画像の画像解析により測定した。金属配線表面の孔の開口面積は0.3μm2〜136μm2であり、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合は15.9%であった。金属配線断面には0.01μm2〜1.9μm2の孔が存在した。
SEMの測定条件は下記のとおりである。
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製 走査型電子顕微鏡 FlexSEM1000
測定条件:加速電圧 5kV
測定モード:二次電子(表面観察について)、又は反射電子(断面観察について)
観察倍率:2000倍(表面観察について)、又は2500倍(断面観察について)
孔の面積及び面積割合は、SEM観察で得られた画像から、解析ソフトImageJを用いた画像解析により求めた。画像解析を行う範囲は、金属配線の表面では40μm×40μm、断面では[金属配線厚み]×[当該厚み方向に対して垂直の方向の長さ40μm]の矩形とした。次いで、上記で設定された視野の画像について、孔が識別できるように2値化した。解析対象の真円度は0から1とした。矩形の外枠に接する孔についても、孔の面積に含めた。2値化の際の閾値は、90とした。
なお、走査型電子顕微鏡観察−エネルギー分散型X線分析(SEM−EDX)の結果、金属配線には銅とカーボンが含まれていることが分かった。
SEM−EDXの測定条件は下記のとおりである。
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製 走査型電子顕微鏡 FlexSEM1000
測定条件:加速電圧 15kV
解析方法:金属配線部を選択してスペクトル分析
<直線性の評価>
直線性の評価は、光学顕微鏡による観察により行った。図6に示したように、金属配線の端部を直線で結び、当該直線からの突出部分(図6中の矢印で示す部分)が存在しないか存在しても10μm未満である場合を合格、突出部分が10μm以上である場合を不合格とした。光学顕微鏡による観察は、倍率を5倍とし、金属配線部を10か所観察した。10か所すべての評価が合格であった場合、直線性評価を合格とし、1か所以上で評価が不合格であった場合、直線性評価を不合格とした。
実施例1で得られた金属配線の光学顕微鏡像を図7に示す。図7に示す像では金属配線の端部に異常部は見られず(図7中の枠で囲まれた部分参照)、直線性評価は合格であった。
[比較例1]
レーザ光の焦点位置の走査速度を5mm/秒、出力を500mW、スポット径を110μm、オーバーラップ率を91.1%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で金属配線の形成及び評価を行った。
金属配線表面には、開口面積0.005μm2〜0.05μm2の孔が存在した一方、0.05μm2を超える開口面積の孔は存在しなかった。また、金属配線表面の、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合は0%であった。また金属配線断面には断面積0.01μm2〜0.15μm2の孔が存在した一方、0.15μm2を超える断面積の孔は存在しなかった。
走査型電子顕微鏡観察−エネルギー分散型X線分析(SEM−EDX)の結果、金属配線には銅とカーボンが含まれていることが分かった。
比較例1で得られた金属配線の光学顕微鏡像を図8に示す。図8に示すように、比較例1では、金属配線の端部に異常部が見られ(図8中の枠で囲まれた部分参照)、直線性評価は不合格となった。
実施例1及び比較例1の結果から、実施例1のように、金属配線が孔を所定割合で含む場合、直線性が高い金属配線を形成できることが分かった。
本発明によって得られる直線性の高い金属配線は、電子回路基板等の配線材、メッシュ電極、電磁波シールド材、放熱材料等に好適に利用できる。
1 構造体
10 金属配線製造装置
11 基材
12 塗膜
13 金属配線
14 絶縁領域
15 単一層
101 構造体保持部
102 光線発振器
103 不活性ガス発生器
104 光線走査部
104a X軸ガルバノミラー
104b X軸ガルバノモータ
104c Y軸ガルバノミラー
104d Y軸ガルバノモータ
105 速度制御部
106 コンピュータ
L レーザ光
R1 第1の走査線
R2 第2の走査線
S1 走査線幅
S2 オーバーラップ幅

Claims (10)

  1. 基材と、前記基材上に配置された金属配線とを有する構造体であって、
    前記金属配線の表面に、0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔が存在し、
    前記金属配線の表面の面積に対する、前記0.3μm2以上700μm2以下の開口面積を有する孔の面積割合が0.5%以上70%以下である、構造体。
  2. 前記金属配線が、銅とカーボンとを含む、請求項1に記載の構造体。
  3. 前記金属配線の厚み方向断面に、0.3μm2以上700μm2以下の断面積を有する孔が少なくとも1つ存在する、請求項1又は2に記載の構造体。
  4. 配線材、携帯情報機器筐体用アンテナ、メッシュ電極、電磁波シールド材、又は放熱材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造体の製造方法であって、
    金属及び/又は金属酸化物を含む塗布液を基材上に塗布して塗膜を得る塗布工程と、
    レーザ光を前記塗膜に照射して、金属配線を形成するレーザ光照射工程と、
    を含む、構造体の製造方法。
  6. 前記レーザ光照射工程において、前記塗膜上にガスがフローしている状態で、前記レーザ光を前記塗膜に照射する、請求項5に記載の構造体の製造方法。
  7. 前記レーザ光が355nm以上550nm以下の範囲に中心波長を有する、請求項5又は6に記載の構造体の製造方法。
  8. 前記レーザ光照射工程において、前記レーザ光を前記レーザ光の走査線の線幅方向にオーバーラップさせながら塗膜上に繰り返し走査する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
  9. 前記オーバーラップが前記線幅の5%以上99.5%以下である、請求項8に記載の構造体の製造方法。
  10. 前記金属酸化物が酸化第一銅である、請求項5〜9のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
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