JP2021190458A - 複合誘電体薄膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリマーと無機材料とを含む複合誘電体材料において、高比誘電率を維持したまま、絶縁破壊強度の低下を抑制すること。【解決手段】複合誘電体薄膜10は、膜厚方向に沿って配向している柱状晶12と、柱状晶12の隙間に充填された充填層14とを備えている。柱状晶12は誘電体セラミックスからなり、充填層14はポリマーからなる。さらに、複合誘電体薄膜10は、εh/εpoly>1、及び、(εh×Rh2)/(εpoly×Rpoly2)=(εh/εpoly)×(Rh/Rpoly)2≧2の関係を満たす。但し、εhは前記誘電体セラミックスの比誘電率、εpolyは前記ポリマーの比誘電率、Rhは前記誘電体セラミックスの電気抵抗(Ω・m)、Rpolyは前記ポリマーの電気抵抗(Ω・m)。【選択図】図1

Description

本発明は、複合誘電体薄膜に関し、さらに詳しくは、比誘電率が高く、かつ、絶縁破壊強度が高い複合誘電体薄膜に関する。
コンデンサは、2枚の電極の間に誘電体を挿入したものであり、その静電容量は、誘電体の比誘電率に比例する。コンデンサに使用される誘電体としては、例えば、セラミックス、プラスチック、絶縁油、マイカなどが知られている。特に、BaTiO3は、比誘電率が大きいため、小型・大容量のコンデンサの誘電体には、主としてBaTiO3が用いられている。
BaTiO3は、常温(25℃)では正方晶であるが、結晶構造が正方晶(強誘電体)から立方晶(常誘電体)に変化するキュリー点(約125℃)を持ち、キュリー点では比誘電率が最も高くなる。そのため、BaTiO3を用いたコンデンサは、キュリー点近傍において静電容量が大きく変化する。しかし、BaTiO3からなる緻密な焼結体を得るためには、1300℃前後の高い焼結温度を必要とする。さらに、BaTiO3は、加工性に乏しいために、任意の形状や複雑な形状に加工するのが難しい。
一方、ポリプロピレンなどのポリマーからなるプラスチックフィルムは、フィルムコンデンサの誘電体として用いられている。プラスチックフィルムは、可撓性があるために、容易にロール状に巻き取ることができる。しかしながら、ポリマーは、比誘電率が小さいために、コンデンサ容量を大きくするためには、巻回数を多くする必要がある。そのため、フィルムコンデンサは、積層セラミックチップコンデンサに比べて大型化するという問題がある。
これに対し、可撓性のあるポリマーと、高い比誘電率を有する無機フィラーとを複合化させると、可撓性と高比誘電率とを両立させることができる。また、このような複合体を用いてフィルムコンデンサを作製すると、ポリマーのみを用いた場合に比べて、フィルムコンデンサを小型化することができる。そのため、このような有機材料と無機材料からなる複合誘電体に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)フッ化ビニリデン(VdF)系樹脂と、Al23、MgO、ZrO2、Y23、BeO、又は、MgO・Al23からなる無機酸化物粒子との複合体からなり、
(b)無機酸化物粒子の含有量がVdF系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部未満である
高誘電性フィルムが開示されている。
同文献には、
(A)通常、高誘電性複合酸化物粒子によってVdF系樹脂フィルムの誘電性を向上させるためには、フィルムに多量の複合酸化物粒子を配合する必要があり、その結果として、フィルムの電気絶縁性が低下する点、及び、
(B)VdF系樹脂フィルムに特定の無機酸化物粒子を少量配合すると、VdF系樹脂の高い比誘電率を維持したまま体積抵抗率が向上する点
が記載されている。
ポリプロピレンフィルムは、絶縁破壊強度は高いが、比誘電率は低い。そのため、フィルムコンデンサを高性能化するためには、より比誘電率の高い材料が必要である。この問題を解決する材料の一つとして、高い比誘電率を持つ無機材料をポリマー中に分散させた複合材料が提案されている。しかし、無機材料とポリマーとの複合材料では、一般に、比誘電率はポリマーより向上するものの、絶縁破壊強度はポリマーより低下する。
絶縁破壊強度が低下する原因の一つに、無機材料の低抵抗が挙げられる。無機材料は、一般的に結晶粒界を有しているため、相対的に抵抗が低い。しかし、結晶粒界を持たない単結晶はコストが高く、かつ欠陥フリーの単結晶を作製することは非常に困難である。
特開2014−082523号公報
本発明が解決しようとする課題は、ポリマーと無機材料とを含む複合誘電体薄膜において、高比誘電率を維持したまま、絶縁破壊強度の低下を抑制することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る複合誘電体薄膜は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記複合誘電体薄膜は、
膜厚方向に沿って配向している柱状晶と、
前記柱状晶の隙間に充填された充填層と
を備え、
前記柱状晶は、誘電体セラミックスからなり、
前記充填層は、ポリマーからなる。
(2)前記複合誘電体薄膜は、次の式(1)及び式(2)の関係を満たす。
εh/εpoly>1 …(1)
h×Rh 2)/(εpoly×Rpoly 2)=(εh/εpoly)×(Rh/Rpoly)2≧2 …(2)
但し、
εhは、前記誘電体セラミックスの比誘電率、
εpolyは、前記ポリマーの比誘電率、
hは、前記誘電体セラミックスの電気抵抗(Ω・m)、
polyは、前記ポリマーの電気抵抗(Ω・m)。
垂直配向した柱状晶と粒界層とを含む誘電体セラミックス薄膜から粒界層を取り除くと、材料全体が高抵抗、かつ、高比誘電率の材料となる。また、ポリマーは誘電体セラミックスに比べて高抵抗であるため、粒界層が除去された後に残る空隙にポリマーを充填して複合誘電体薄膜とすると、複合誘電体薄膜の電気抵抗は誘電体セラミックスのそれより高くなる。
さらに、このような複合誘電体薄膜の両面に電極を形成すると、高比誘電率材料が電極面で短絡した状態となり、高い比誘電率を示す。そのため、得られた複合誘電体薄膜は、高い比誘電率εと高い電気抵抗Rを持つ材料となり、それぞれの材料単体よりも高いコンデンサ性能(∝ε×R2)を示す。
本発明に係る複合誘電体薄膜の断面模式図である。 εh/εpoly比及びVhと性能比との関係(但し、Rh/Rpoly=1)を示す図である。 h/Rpoly比と性能比との関係(但し、εh/εpoly=5、Vh=50vol%)を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 複合誘電体薄膜]
図1に、本発明に係る複合誘電体薄膜の断面模式図を示す。図1において、複合誘電体薄膜10は、
膜厚方向に沿って配向している柱状晶12と、
柱状晶12の隙間に充填された充填層14と
を備えている。
なお、複合誘電体薄膜10をコンデンサの誘電体として使用する場合、複合誘電体薄膜10の下面及び上面には、それぞれ、下部電極16a及び上部電極16bが形成される。
[1.1. 柱状晶]
[1.1.1. 材料]
柱状晶12は、誘電体セラミックスからなる。誘電体セラミックスは、膜厚方向に沿って配向している柱状晶12を形成することができ、かつ、後述する条件を満たすものである限りにおいて、特に限定されない。
誘電体セラミックスとしては、例えば、
(a)チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン鉛、AサイトにBiを有する層状ペロブスカイト型酸化物、若しくは、ニオブ酸系ペロブスカイト型酸化物、
(b)これらを母体とする固溶体
などがある。
チタン酸バリウムを母体とする固溶体としては、例えば、BaサイトにCa、Mn、Sr、Bi、Cu及びPbからなる群から選ばれるいずれか1以上の元素を固溶させ、並びに/又は、TiサイトにSn及び/又はZrを固溶させた系などがある。
チタン酸ジルコン鉛を母体とする固溶体としては、例えば、(Zr、Ti)サイトにMn、Mg及びNbからなる群から選ばれるいずれか1以上の元素を固溶させた系などがある。
層状ペロブスカイト型酸化物を母体とする固溶体としては、例えば、SrBi2Ta29のSrサイトにCa及び/又はBaを固溶させた系などがある。
ニオブ酸系ペロブスカイトを母体とする固溶体としては、例えば、KNbO3のKサイトにNaを固溶させた系などがある。
[1.1.2. 形状]
柱状晶12は、複合誘電体薄膜10の膜厚方向に沿って配向している。個々の柱状晶12の大半は、結晶粒界を持たない結晶相からなる。柱状晶12のサイズは、誘電体セラミックスの組成、製造条件などにより異なる。製造条件を最適化すると、柱状晶12の高さは、2nm〜20μm程度となる。また、柱状晶12の直径は、3nm〜100nm程度となる。
[1.2. 充填層]
柱状晶12の隙間には、充填層14が充填されている。充填層14は、ポリマーからなる。ポリマーは、柱状晶12の隙間に充填することができ、かつ、後述する条件を満たすものである限りにおいて、特に限定されない。
ポリマーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリフルオレン、ポリスルホン、ポリエチレンイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリウレタン、セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル、シアノエチルセルロースなどがある。充填層14は、これらのいずれか1種のポリマーからなるものでも良く、あるいは、2種以上のポリマーからなるものでも良い。
これらの中でも、ポリマーは、PVDFが好ましい。PVDFは、他のポリマーに比べて高い比誘電率を持つので、充填層14の材料として好適である。
[1.3. 電極]
複合誘電体薄膜10をコンデンサの誘電体として使用する場合、複合誘電体薄膜10の下面及び上面には、それぞれ、下部電極16a及び上部電極16bが形成される。
下部電極16a及び上部電極16bの厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて、最適な厚さを選択するのが好ましい。
後述する方法を用いて複合誘電体薄膜10を製造する場合、下部電極16aは、電極としての機能だけでなく、膜厚方向に沿って柱状晶12を成長させるための「種結晶」としても機能する。この場合、下部電極16aは、柱状晶12の底面と格子整合性を有する結晶面を持つ材料からなり、かつ、下部電極16aの表面は、柱状晶12の底面と格子整合性を有する結晶面が配向しているものが好ましい。
このような条件を満たす下部電極16aの材料としては、例えば、Pt、Au、RuO2、SrRuO3などがある。また、下部電極16aの配向面としては、例えば、{100}面、{111}面、{110}面などがある。
一方、上部電極16bの材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。上部電極16bの材料としては、例えば、Au、Alなどがある。
[1.4. 特性]
[1.4.1. εh/εpoly比]
本発明に係る複合誘電体薄膜10は、次の式(1)を満たしている必要がある。
εh/εpoly>1 …(1)
但し、
εhは、前記誘電体セラミックスの比誘電率、
εpolyは、前記ポリマーの比誘電率。
式(1)は、複合誘電体薄膜10の比誘電率をポリマーのそれより大きくするために必要な条件を表す。εh/εpoly比が大きくなるほど、複合誘電体薄膜10の比誘電率が大きくなる。また、複合誘電体薄膜10の比誘電率が大きくなるほど、複合誘電体薄膜10の性能(すなわち、最大エネルギー密度)が向上する。複合誘電体薄膜10は、特に、次の式(1’)を満たすものが好ましい。
εh/εpoly≧5 …(1’)
εh/εpoly比は、好ましくは、100以上、さらに好ましくは、300以上である。
[1.4.2. (εh×Rh 2)/(εpoly×Rpoly 2)比]
本発明に係る複合誘電体薄膜10は、上述した式(1)に加えて、次の式(2)をさらに満たしている必要がある。
h×Rh 2)/(εpoly×Rpoly 2)=(εh/εpoly)×(Rh/Rpoly)2≧2 …(2)
但し、
εhは、前記誘電体セラミックスの比誘電率、
εpolyは、前記ポリマーの比誘電率、
hは、前記誘電体セラミックスの電気抵抗(Ω・m)、
polyは、前記ポリマーの電気抵抗(Ω・m)。
誘電体の最大エネルギー密度(Umax)は、誘電体の比誘電率εと誘電体の電気抵抗R(又は、絶縁破壊強度)の2乗の積(=ε×R2)に比例する。式(2)は、複合誘電体薄膜10の最大エネルギー密度をポリマーのそれより大きくするために必要な条件を表す。(εh×Rh 2)/(εpoly×Rpoly 2)比が大きくなるほど、複合誘電体薄膜10の最大エネルギー密度が大きくなる。(εh×Rh 2)/(εpoly×Rpoly 2)比は、好ましくは、5以上、さらに好ましくは、10以上である。
[1.4.3. Rh/Rpoly比]
本発明に係る複合誘電体薄膜10は、次の式(3)の関係をさらに満たしているのが好ましい。
h/Rpoly≧0.7 …(3)
式(2)から明らかなように、Rh/Rpoly比が大きくなるほど、(εh×Rh 2)/(εpoly×Rpoly 2)比は大きくなる。すなわち、Rh/Rpoly比が大きくなるほど、複合誘電体薄膜10の性能(すなわち、最大エネルギー密度)が向上する。高い最大エネルギー密度を得るためには、Rh/Rpoly比は、0.7以上が好ましい。Rh/Rpoly比は、好ましくは、0.8以上、さらに好ましくは、0.9以上である。
[1.4.4. Vh
本発明に係る複合誘電体薄膜10は、次の式(4)の関係をさらに満たしているのが好ましい。
50vol%≦Vh≦97vol% …(4)
但し、Vhは、前記誘電体セラミックス及び前記ポリマーの総体積に対する、前記誘電体セラミックスの体積の割合。
複合誘電体薄膜10の比誘電率は、誘電体セラミックスの体積割合Vhに依存する。本発明において、εhとεpolyとの間に式(1)の関係が成り立つため、Vhが大きくなるほど、複合誘電体薄膜10の比誘電率が大きくなる。高い性能を得るためには、Vhは、50vol%以上が好ましい。Vhは、好ましくは、60vol%以上、さらに好ましくは、70vol%以上である。
一方、Vhが大きくなりすぎると、ポリマーの充填が困難になる。従って、Vhは、97vol%以下が好ましい。Vhは、好ましくは、96vol%以下、さらに好ましくは、95vol%以下である。
[2. 複合誘電体薄膜の製造方法]
本発明に係る複合誘電体薄膜は、
(a)基板上に下部電極を形成し、
(b)下部電極の表面に誘電体セラミックスからなる薄膜を形成し、
(c)薄膜内の粒界層を除去し、
(d)粒界層を除去した後に残る隙間にポリマーを充填する
ことにより製造することができる。
[2.1. 第1工程]
まず、基板上に下部電極を形成する(第1工程)。
基板の材料は、特に限定されない。基板としては、例えば、Si、SiO2、MgO、ガラスなどがある。
下部電極は、膜厚方向に柱状晶12を配向させるための「種結晶」としても機能する。そのため、下部電極の材料及び配向面は、誘電体セラミックスの組成に応じて最適なものを選択するのが好ましい。下部電極の材料及び配向面の詳細は、上述した通りであるので、説明を省略する。
下部電極の形成方法は、特に限定されない。下部電極の形成方法としては、スパッタ法などがある。
[2.2. 第2工程]
次に、下部電極の表面に誘電体セラミックスからなる薄膜を形成する(第2工程)。
薄膜の形成方法は、特に限定されない。薄膜形成方法としては、例えば、ゾルゲル法、パルスレーザー堆積法、スパッタ法、化学気相成長法、蒸着法などがある。薄膜の形成条件を適切に選択すると、誘電体セラミックスを柱状に配向成長させることができる。
[2.3. 第3工程]
次に、薄膜内の粒界層を除去する(第3工程)。
粒界層の除去は、粒界層を酸、熱、又はプラズマでエッチングすることにより行う。エッチング条件は、特に限定されるものではなく、エッチング方法に応じて最適な条件を選択する。適切な条件下で薄膜をエッチングすると、粒界層のみが選択的に除去され、柱状晶の集合体からなる薄膜が得られる。
[2.4. 第4工程]
次に、粒界層を除去した後に残る隙間にポリマーを充填する。これにより、本発明に係る複合誘電体薄膜が得られる。ポリマーの充填は、具体的にはポリマーを融解させ、隙間に融液を圧入することにより行う。この時、内部に空気が残留しないように、真空引きを行いながらポリマーを充填するのが好ましい。
[3. 作用]
ハイブリッド自動車や電気自動車のパワーコントロールユニット(PCU)に用いられるフィルムコンデンサには、高性能化が求められている。コンデンサの性能の指標として、最大エネルギー密度(Umax)がある。式(5)に、最大エネルギー密度Umaxを示す。式(5)より、Umaxを向上させるためには、材料の比誘電率と絶縁破壊強度を向上させる必要があることが分かる。
max=1/2ε0εrBDS 2 …(5)
但し、
ε0:真空の誘電率、8.854×10-12[F/m]、
εr:誘電体フィルムの平均の比誘電率、
BDS:誘電体フィルムの絶縁破壊強度(V/μm)
ポリマーは、絶縁破壊強度が高い。そのため、ポリマは、フィルムコンデンサの誘電体として好適である。しかし、ポリマーは、比誘電率が低い。
一方、誘電体セラミックスは、比誘電率が高い。しかし、絶縁破壊強度は、比誘電率とトレードオフの関係にある。そのため、フィルムの比誘電率を向上させるために、比誘電率の高い無機材料とポリマーとを複合化させると、通常、絶縁破壊強度は低下する。
これに対し、基板上に誘電体セラミックスからなる薄膜を形成する場合において、基板の材料、成膜条件等を最適化すると、基板上に柱状晶が垂直配向している薄膜が得られる。得られた薄膜をエッチング処理すると、柱状晶の隙間にある粒界層を除去することができる。さらに、粒界層を除去した後に残る柱状晶の隙間にポリマーを充填すると、本発明に係る複合誘電体薄膜が得られる。
柱状晶の隙間にある粒界層は、欠陥を多く含むために、柱状晶に比べて電気抵抗が低い。そのため、垂直配向した柱状晶と粒界層とを含む誘電体セラミックス薄膜の電気抵抗は、相対的に低い。一方、垂直配向した柱状晶と粒界層とを含む誘電体セラミックス薄膜から粒界層を取り除くと、材料全体が高抵抗、かつ、高比誘電率の材料となる。また、ポリマーは誘電体セラミックスに比べて高抵抗であるため、粒界層が除去された後に残る空隙にポリマーを充填して複合誘電体薄膜とすると、複合誘電体薄膜の電気抵抗は誘電体セラミックスのそれより高くなる。
さらに、このような複合誘電体薄膜の両面に電極を形成すると、高比誘電率材料が電極面で短絡した状態となり、高い比誘電率を示す。そのため、得られた複合誘電体薄膜は、高い比誘電率εと高い電気抵抗Rを持つ材料となり、それぞれの材料単体よりも高いコンデンサ性能(∝ε×R2)を示す。
(実施例1)
[1. 試験方法]
COMSOL(登録商標)を用いて、図1の構造を作製し、AC/DCモジュールで比誘電率と抵抗値をシミュレーションした。ポリマーの比誘電率εpolyは固定し、
(a)高比誘電率材料(誘電体セラミックス)の比誘電率εhと体積割合Vh、又は
(b)高比誘電率材料とポリマーの電気抵抗の比(Rh/Rpoly
を変化させた。
さらに、得られた複合誘電体薄膜の性能(最大エネルギー密度)をポリマーのみの性能で除すことで、性能比(ポリマーの性能で規格化された複合誘電体薄膜の性能)を算出した。
[2. 結果]
図2に、εh/εpoly比及びVhと性能比との関係(但し、Rh/Rpoly=1)を示す。図3に、Rh/Rpoly比と性能比との関係(但し、εh/εpoly=5、Vh=50vol%)を示す。なお、図2の「性能比」とは、PVDFの性能で規格化された性能をいう。また、図3の「性能比」とは、Rh/Rpoly=1である複合誘電体薄膜の性能で規格化された性能をいう。図2及び図3より、以下のことが分かる。
(1)εh/εpoly比が大きくなるほど、Vhが大きくなるほど、及び/又は、Rh/Rpoly比が大きくなるほど、性能比が大きくなる。
(2)Rh/Rpoly比を0.7にすると、性能比は0.68となる。
(3)εh/εpoly=5、Vh=50vol%、Rh/Rpoly=1の場合、性能比は3である。従って、Rh/Rpoly比が0.7となっても、性能比は2以上となる。すなわち、性能比を2以上とするためには、εh/εpoly≧5、Vh≧50vol%、かつ、Rh/Rpoly≧0.7以上とするのが好ましい。
(実施例2)
[1. 試料の作製]
[1.1. 下部電極(Pt膜)の形成]
SiO2からなる基板の表面に、下部電極としてPt膜をRFマグネトロンスパッタ法で成膜した。この時、基板とPtとの密着性を向上させるために、基板には、表面に厚さ約20nmのTi膜からなるバッファ層が形成されているものを用いた。基板の温度は室温とし、Ar雰囲気中、1mTorr(0.133Pa)の条件下で成膜した。Pt膜の厚さは、約200nmとした。スパッタ後、400℃で1時間アニールした。
[1.2. BaTiO3膜の形成]
Pt膜が形成された基板の表面に、RFマグネトロンスパッタ法でBaTiO3を成膜した。基板温度は500℃とし、Ar+O2雰囲気中、1.3Paの条件下で成膜した。膜厚は、約4μmとした。成膜されたBaTiO3は、基板に対して垂直方向に001軸が配向していた。
[1.3. BaTiO3膜のエッチング]
基板上に形成されたBaTiO3膜を、塩酸を用いて室温でエッチングし、柱状晶の間にある粒界層を除去した。処理時間は、膜厚に応じて調整した。処理後、基板をアセトンで洗浄した。
[1.4. PVDFの充填]
エッチング後のBaTiO3膜の柱状晶の隙間に、ポリフッ化ビニリデンを充填した。すなわち、真空デシケータの中に、180℃に熱して融解させたPVDFを入れた。次いで、溶融したPVDF中にエッチング処理後の基板を浸漬し、真空デシケータ内を減圧することにより、柱状晶の隙間に融解したPVDFを含浸させた。得られた複合誘電体薄膜のBaTiO3の体積割合Vhは、50vol%以上であった。
[1.5. 上部電極(Pt膜)の形成]
BaTiO3膜にPVDFを含浸させた後、基板を室温まで冷却した。さらに、複合誘電体薄膜の表面に、上部電極としてPt膜をスパッタ法で成膜した。
[2. 評価]
インピーダンスアナライザを用いてフィルムの比誘電率を測定した。また、高耐圧試験器を用いて、フィルムの絶縁破壊強度を測定した。さらに、上述した式(5)を用いて最大エネルギー密度を算出した。その結果、実施例2の比誘電率εrは100、絶縁破壊強度EBDSは240V/μm、最大エネルギー密度Umaxは25.5J/cm3であった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る複合誘電体薄膜は、ハイブリッド車やHV車のPCUに用いられるコンデンサの誘電体として使用することができる。

Claims (6)

  1. 以下の構成を備えた複合誘電体薄膜。
    (1)前記複合誘電体薄膜は、
    膜厚方向に沿って配向している柱状晶と、
    前記柱状晶の隙間に充填された充填層と
    を備え、
    前記柱状晶は、誘電体セラミックスからなり、
    前記充填層は、ポリマーからなる。
    (2)前記複合誘電体薄膜は、次の式(1)及び式(2)の関係を満たす。
    εh/εpoly>1 …(1)
    h×Rh 2)/(εpoly×Rpoly 2)=(εh/εpoly)×(Rh/Rpoly)2≧2 …(2)
    但し、
    εhは、前記誘電体セラミックスの比誘電率、
    εpolyは、前記ポリマーの比誘電率、
    hは、前記誘電体セラミックスの電気抵抗(Ω・m)、
    polyは、前記ポリマーの電気抵抗(Ω・m)。
  2. 次の式(1’)の関係をさらに満たす請求項1に記載の複合誘電体薄膜。
    εh/εpoly≧5 …(1’)
  3. 次の式(3)の関係をさらに満たす請求項1又は2に記載の複合誘電体薄膜。
    h/Rpoly≧0.7 …(3)
  4. 次の式(4)の関係をさらに満たす請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合誘電体薄膜。
    50vol%≦Vh≦97vol% …(4)
    但し、Vhは、前記誘電体セラミックス及び前記ポリマーの総体積に対する、前記誘電体セラミックスの体積の割合。
  5. 前記誘電体セラミックスは、
    (a)チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン鉛、AサイトにBiを有する層状ペロブスカイト型酸化物、若しくは、ニオブ酸系ペロブスカイト型酸化物、又は、
    (b)これらを母体とする固溶体
    からなる請求項1から4までのいずれか1項に記載の複合誘電体薄膜。
  6. 前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンからなる請求項1から5までのいずれか1項に記載の複合誘電体薄膜。
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