JP2021190406A - 電界放射装置,電界放射方法,位置決め固定方法 - Google Patents

電界放射装置,電界放射方法,位置決め固定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エミッタの電子発生部とガード電極との両者を所望通りに近接または当接し易くし、所望の電界放射を発揮し易くする。【解決手段】エミッタ支持部4に設けられているエミッタ支持部雌螺子穴45の開口縁面45aは、エミッタ支持部雌螺子穴45の径方向に沿って延在し、真空容器11のフランジ部30aに設けられたエミッタ支持部操作孔32は、位置調整シャフトおよび押し込みシャフト9から選択された一つを、それぞれ先端部側から貫装自在な形状であり、位置調整シャフトの先端部の外周面は、エミッタ支持部雌螺子穴45と螺合自在な先端部側雄螺子部が設けられたものとし、押し込みシャフト9の先端部91の先端面91aは、エミッタ支持部雌螺子穴45の開口径よりも大径であって、押し込みシャフト9の径方向に沿って延在しているものとする。【選択図】図1

Description

本発明は、X線装置,電子管,照明装置等の種々の機器に適用可能な電界放射装置,電界放射方法,位置決め固定方法に関するものである。
X線装置,電子管,照明装置等の種々の機器に適用される電界放射装置の一例としては、筒状の絶縁体の両端が封止されて当該絶縁体の内周側に真空室が形成された真空容器を用いた構成がある。
真空室には、前記絶縁体の両端方向(以下、単に両端方向と適宜称する)の一方側にエミッタ(炭素等を用いてなる電子源)が配置され、当該両端方向の他方側にターゲットが配置される。そして、エミッタとターゲットとの間に電圧印加することにより、エミッタの電界放射(電子を発生させて放出)によって電子線を放出し、その放出した電子線をターゲットに衝突させて所望の機能(例えばX線装置の場合はX線の外部放出による透視分解能)を発揮できることとなる。
前記のような電界放射装置では、例えば、エミッタとターゲットとの間にグリッド電極等を介在させて3極管構造としたり、エミッタの電子発生部(ターゲットに対向する側に位置し電子を発生する部位)の表面を曲面状にしたり、エミッタと同電位のガード電極を当該エミッタの外周側に配置する等により、エミッタから放出される電子線の分散を抑制することが検討されている。
前記のような電圧印加においては、エミッタの電子発生部のみから電子を発生させて電子線を放出することが望ましい。しかしながら、真空室内に不要な微小突起や汚れ等が存在していると、意図しない閃絡現象を起こし易くなり、耐電圧性等が得られず、所望の機能を発揮できなくなる虞がある。
このような現象が起こる理由としては、例えば真空室内のガード電極等(ターゲット,グリッド電極,ガード電極等;以下、単にガード電極等と適宜称する)において、局部的な電界集中を起こし易い部位が形成(例えば加工において形成された微小突起等)されている場合、ガス成分(例えば真空容器内に残存するガス成分)を吸着している場合、電子を発生させ易い元素が含まれている場合(適用する材料中に含まれている場合)等が挙げられる。このような理由の場合、例えばガード電極にも電子発生部が形成され、電子の発生量が不安定になり、電子線が分散し易くなり、例えばX線装置の場合にはX線等の焦点はずれ等を起こすおそれもある。
そこで、閃絡現象の抑制を図る手法(電子の発生量を安定化させる手法)として、例えばガード電極等に電圧(高電圧等)を印加(例えばガード電極とグリッド電極に印加)し放電を繰り返す電圧放電コンディショニング処理(改質(再生);以下、単に改質処理と適宜称する)を施す手法が検討されている。
例えば特許文献1には、エミッタを真空室の両端方向に対し移動自在に支持する可動自在なエミッタ支持部(特許文献1の図1では符号4)と、真空容器の一方側に貫通形成されたエミッタ支持部操作孔(特許文献1の図1では符号62c)と、そのエミッタ支持部操作孔を介してエミッタ支持部のエミッタ支持部雌螺子穴(特許文献1の図1では符号40a)に螺合接続され当該エミッタ支持部を当該両端方向に移動させる位置調整シャフト(特許文献1の図1では符号61)と、を備えた電界放射装置が開示されている。
また、特許文献1の場合、例えば電界放射装置の各構成要素(例えば真空容器,エミッタ支持部,ガード電極等)を組み付けた後、エミッタ支持部に螺合接続されている位置調整シャフトを締付方向に軸回転させてエミッタ支持部を操作し、エミッタを放電可能領域(特許文献1の図1では符号m)から無放電領域(特許文献1の図1では符号n)に移動させることが開示されている。これにより、エミッタの電界放射を抑制した状態にし、その状態でガード電極等に電圧を印加して改質処理を行うことが可能とされている。
そして、前記改質処理後は、前記エミッタ支持部に螺合接続されている位置調整シャフトを弛緩方向に軸回転させてエミッタ支持部を操作し、エミッタを無放電領域から放電可能領域に移動させることが開示されている。これにより、エミッタの電子発生部とガード電極との両者間を狭めて、当該両者を近接または当接し、エミッタ(電子発生部)の電界放射が可能な状態になるものとされている。
特許6226033号公報
電界放射装置においては、各構成要素の寸法公差や組み立て誤差等の各種公差(以下、単に公差と適宜称する)が存在していることがある。このような公差が存在していると、例えば改質処理後、前記のように単に位置調整シャフトによりエミッタ支持部を操作してエミッタを無放電領域から放電可能領域に移動させても、当該エミッタの電子発生部とガード電極との両者を十分に近接または当接できない場合(例えば両者間に意図しない間隙が形成されている場合)がある。この場合、エミッタ(電子発生部)において所望の電界放射が行われないことも考えられる。
本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたものであって、エミッタの電子発生部とガード電極との両者を所望通りに近接または当接し易くし、所望の電界放射を発揮し易くすることに貢献可能な技術を提供することにある。
この発明に係る電界放射装置,電界放射方法,位置決め固定方法は、前記の課題を解決できるものである。電界放射装置の一態様は、筒状の絶縁体の両端が封止されて当該絶縁体の内周側に真空室が形成された真空容器と、真空室において前記両端方向の一方側に位置し、当該両端方向の他方側に対向する電子発生部を有したエミッタと、エミッタの電子発生部の外周側に位置しているガード電極と、真空室において前記両端方向の他方側に位置し、エミッタの電子発生部に対向して設けられたターゲットと、エミッタを前記両端方向に対し移動自在に支持する可動自在なエミッタ支持部と、エミッタ支持部において前記両端方向の一方側方向に開口した形状で、螺合軸が当該両端方向に延在しているエミッタ支持部雌螺子穴と、エミッタ支持部雌螺子穴よりも大径の筒状であって、軸心がエミッタ支持部雌螺子穴の螺合軸と同軸となるように延在し、当該筒状の一端側が真空容器における前記両端方向の一方側に支持され、当該筒状の他端側がエミッタ支持部の外周側に支持されて、真空室の一部を形成している前記両端方向に伸縮自在なベローズと、真空容器における前記両端方向の一方側でベローズ内周側を当該両端方向に貫通し、軸心がエミッタ支持部雌螺子穴の螺合軸と同軸となるように延在しているエミッタ支持部操作孔と、を備えたものである。
そして、エミッタ支持部雌螺子穴の開口縁面は、当該エミッタ支持部雌螺子穴の径方向に沿って延在し、エミッタ支持部操作孔は、位置調整シャフトおよび押し込みシャフトから選択された一つを、それぞれ先端部側から貫装自在な形状であり、位置調整シャフトは、エミッタ支持部操作孔に貫装された状態で軸回転自在であって、当該位置調整シャフトの先端部の外周面に、エミッタ支持部雌螺子穴と螺合自在な先端部側雄螺子部が設けられ、押し込みシャフトは、当該押し込みシャフトの先端部の先端面が、エミッタ支持部雌螺子穴の開口径よりも大径であって、当該押し込みシャフトの径方向に沿って延在していることを特徴とする。
また、押しこみシャフトの先端部の先端面中心側には、前記両端方向の他方側方向に開口した形状で、エミッタ支持部雌螺子穴の開口径よりも大径の凹部が設けられていることを特徴としても良い。
また、エミッタ支持部操作孔は、内周面における前記両端方向の中央側に、当該両端方向の一方側から他方側に向かって階段状に縮径された形状の内周段差部が設けられ、押し込みシャフトは、外周面における前記両端方向の中央側に、当該両端方向の一方側から他方側に向かって階段状に縮径された形状の外周段差部が設けられ、内周段差部および外周段差部の両者は、前記両端方向において重畳し、エミッタの電子発生部とガード電極との両者が近接または当接している状態において、互いに接触することを特徴としても良い。
また、内周段差部および外周段差部の両者の接触面は、前記両端方向の一方側から他方側に近づくに連れてエミッタ支持部操作孔径方向に縮径されたテーパー状であることを特徴としても良い。
また、エミッタ支持部操作孔における前記両端方向の一方側には、螺合軸が当該両端方向に延在している操作孔雌螺子部が設けられており、押しこみシャフトの基端部の外周面には、操作孔雌螺子部と螺合自在な基端部側雄螺子部が設けられていることを特徴としても良い。
また、エミッタ支持部操作孔は、前記両端方向の一方側から中央側に延在し、エミッタ支持部操作孔の径方向のうち対向する二方向に拡径された基端部通路と、基端部通路における前記両端方向の他方側でエミッタ支持部操作孔径方向外側に膨出した空洞部と、を有し、押しこみシャフトの基端部は、押し込みシャフト径方向のうち対向する二方向に突出した突出部を有し、基端部通路は、エミッタ支持部操作孔における前記両端方向の他方側よりも大径であって、当該エミッタ支持部操作孔に貫装された状態の押し込みシャフトが軸回転方向において任意の角度で固定された姿勢の場合に、当該押し込みシャフトの基端部が両端方向に移動自在な形状であり、空洞部は、基端部通路における前記両端方向の他方側に位置する押しこみシャフトの基端部が軸回転自在な形状である、ことを特徴としても良い。
また、押し込みシャフトの基端部が基端部通路における前記両端方向の他方側に位置する場合に、エミッタの電子発生部とガード電極との両者が近接または当接する状態となる、ことを特徴としても良い。
また、ガード電極における前記両端方向の他方側には、エミッタ支持部の前記両端方向の移動によりエミッタの電子発生部が接離する小径部が設けられていることを特徴としても良い。
また、ガード電極における前記両端方向の他方側には、エミッタ支持部雌螺子穴の螺合軸側に延出し当該両端方向においてエミッタの電子発生部の周縁部と重畳する縁部が設けられていることを特徴としても良い。
電界放射方法の一態様は、前記電界放射装置を用いた電界放射方法であって、電界放射電流の出力は、位置調整シャフトおよび押し込みシャフトから選択したシャフトを先端部側からエミッタ支持部操作孔に貫装し、当該シャフトを介してエミッタの電子発生部とターゲットとの両者間の距離を変更し任意の距離でエミッタを位置決め固定して設定し、当該位置決め固定の状態でエミッタの電子発生部から電界放射することを特徴とする。
位置決め固定方法の一態様は、前記電界放射装置のエミッタの位置決め固定方法であって、位置調整シャフトを先端部側からエミッタ支持部操作孔に貫装し、当該位置調整シャフトをエミッタ支持部雌螺子穴に螺合して締付方向に軸回転させることにより、エミッタの電子発生部とターゲットとの両者を互いに離反した状態にし、前記離反した状態でガード電極に電圧を印加することにより、真空室内の少なくともガード電極を改質処理し、前記改質処理後、前記位置調整シャフトを弛緩方向に軸回転させてエミッタ支持部操作孔から取り外してから、押し込みシャフトを先端部側からエミッタ支持部操作孔に貫装し、前記貫装した押し込みシャフトを介して、エミッタの電子発生部とターゲットとの両者を近接または当接している状態にし、当該エミッタを位置決め固定することを特徴とする。
以上示したように本発明によれば、エミッタの電子発生部とガード電極との両者を所望通りに近接または当接し易くし、所望の電界放射を発揮し易くすることに貢献可能となる。
実施例1によるX線装置10を説明するための概略構成図(真空室1両端方向に縦断した断面図(押し込みシャフト9を適用している場合の断面図))。 実施例1,2によるX線装置10を説明するための概略構成図(真空室1両端方向に縦断した断面図(位置調整シャフト6を適用している場合の断面図))。 ガード電極5の一例を説明するための概略構成図(図1の一部の拡大図に相当し縁部52の替わりに小径部51を有した図)。 実施例2によるX線装置10を説明するための概略構成図(真空室1両端方向に縦断した断面図(押し込みシャフト9Aを適用している場合の断面図))。 実施例3によるX線装置10Bを説明するための概略構成図(真空室1両端方向に縦断した断面図(押し込みシャフト9Bを適用している場合の断面図))。 実施例3によるX線装置10Bを説明するための概略構成図(真空室1両端方向に縦断した断面図(位置調整シャフト6を適用している場合の断面図))。 実施例4によるX線装置10Cを説明するための概略構成図((A)は真空室1両端方向に縦断した断面図(押し込みシャフト9Cを適用している場合の断面図)、(B)は(A)の図示右側からフランジ部30aを臨んだ図)。 実施例4によるX線装置10Cを説明するための概略構成図(真空室1両端方向に縦断した断面図(位置調整シャフト6を適用している場合の断面図))。
本発明の実施形態における電界放射装置,電界放射方法,位置決め固定方法は、例えば特許文献1のように単に位置調整シャフトによりエミッタ支持部を操作して、エミッタを無放電領域と放電可能領域との間で移動させるような構成(以下、単に従来構成と適宜称する)とは、全く異なるものである。
すなわち、本実施形態は、エミッタ支持部の両端方向の一方側方向に開口した形状のエミッタ支持部雌螺子穴の開口縁面において、当該エミッタ支持部雌螺子穴の径方向に沿って延在したものとする。
また、真空容器の両端方向の一方側(後述の図1,図2ではフランジ部30a)に設けられたエミッタ支持部操作孔においては、位置調整シャフト(後述の図1,図2では位置調整シャフト6)および押し込みシャフト(後述の図1,図2では押し込みシャフト9)から選択された一つを、それぞれ先端部側から貫装自在な形状とする。
また、位置調整シャフト先端部の外周面は、エミッタ支持部雌螺子穴と螺合自在な先端部側雄螺子部が設けられたものとする。また、押し込みシャフト先端部の先端面(貫装状態においてエミッタ支持部雌螺子穴と対向する先端面)は、エミッタ支持部雌螺子穴の開口径よりも大径であって、当該押し込みシャフトの径方向に沿って延在しているものとする。
このような構成の本実施形態によれば、例えばエミッタ支持部操作孔に位置調整シャフトの先端部がエミッタ支持部雌螺子穴に螺合している状態で、当該位置調整シャフトを締付方向(エミッタ支持部雌螺子穴内に浸入する方向)に軸回転させた場合、エミッタを放電可能領域から無放電領域に移動させることが可能である。
このように無放電領域に移動させた状態でガード電極等に電圧を印加することにより、改質処理を行うことが可能とされている。また、改質処理後、前記位置調整シャフトを弛緩方向(エミッタ支持部雌螺子穴内から退出する方向)に軸回転させた場合には、エミッタを無放電領域から放電可能領域に移動させることが可能である。
ここで、例えば電界放射装置において公差が存在していると、従来構成のように単に位置調整シャフトを軸回転させても、エミッタの電子発生部とガード電極との両者を所望通りに近接または当接できない場合(例えば両者間に意図しない間隙が形成されている場合)がある。
このような場合、本実施形態においては、まず、エミッタ支持部操作孔から位置調整シャフトを取り外してから、当該エミッタ支持部操作孔に押し込みシャフトを貫装して両端方向の他方側に押し込み(エミッタ支持部操作孔に案内されながら押し込み)、当該押し込みシャフト先端部における先端面をエミッタ支持部雌螺子穴の開口縁面に面接触した状態(以下、単に面接触状態と適宜称する)にする。
そして、前記面接触状態において押し込みシャフトを更に押し込むことにより、エミッタ支持部に対する押し込みシャフトの軸心ズレ(平行偏心,偏角等)を抑制しながら、当該エミッタ支持部を両端方向の他方側に移動できる。
したがって、本実施形態によれば、たとえ電界放射装置において公差が存在していても、押し込みシャフトを適宜適用してエミッタ支持部を移動させることにより、エミッタの電子発生部とガード電極との両者を所望通りに近接または当接した状態(以下、所定隣接状態と適宜称する)にし易くなる。そして、所望の電界放射を発揮(X線装置の場合はX線照射等)し易くなる。
本実施形態は、前述のようにエミッタ支持部操作孔において、位置調整シャフトおよび押し込みシャフトから選択された一つをシャフト先端部側から貫装して軸回転自在な形状とし、当該位置調整シャフトおよび押し込みシャフトをそれぞれ適宜選択して適用しエミッタ支持部を移動できる構成であれば良く、種々の分野(例えば電界放射装置分野,カーボンナノチューブ分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて特許文献1等を適宜参照して設計変形することが可能であり、その一例として以下に示す実施例1〜4が挙げられる。
なお、以下の実施例1〜4では、例えば重複する内容について同一符号を適用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。また、便宜上、後述の真空容器11の両端方向を単に両端方向と適宜称し、当該両端方向のうち一方側を単に両端一方側と適宜称し、当該両端方向の他方側を単に両端他方側と適宜称する。
≪実施例1≫
<X線装置10の概略構成>
図1,図2に示す符号10は、実施例1によるX線装置の概略構成を説明するものである。X線装置10においては、筒状の絶縁体2の両端一方側の開口21と両端他方側の開口22とが、それぞれエミッタユニット30とターゲットユニット70とにより封止(例えば蝋付けして封止)されて、絶縁体2の内周側に真空室1を有した真空容器11が構成されている。
エミッタユニット30とターゲットユニット70との間(後述のエミッタ3とターゲットとの間)には、当該真空室1の横断面方向(真空容器11の両端方向に対して交差する方向;以下、単に横断面方向と適宜称する)に延在するグリッド電極8が設けられている。
絶縁体2は、例えばセラミック等の絶縁材料を用いて成り、エミッタユニット30(後述のエミッタ3)とターゲットユニット70(後述のターゲット7)とを互いに絶縁し、内部に真空室1を形成できるものであれば、種々の態様を適用することができる。例えば、図示するように同軸状で軸方向に連なって配置された2つの円筒状の絶縁部材2a,2bの両者間に、グリッド電極8(例えば後述の引出端子82)を介在させた状態で、当該両者を蝋付け等により互いに組み付けて構成されたものが挙げられる。
エミッタユニット30は、絶縁体2の開口21の端面21aに支持されて当該開口21を封止するフランジ部30aと、ターゲットユニット70(後述するターゲット7)に対向する部位に電子発生部31を有したエミッタ3と、エミッタ3を両端方向に対し移動自在に支持する可動自在なエミッタ支持部4と、エミッタ3の電子発生部31の外周側に位置しているガード電極5と、を備えている。
また、エミッタ支持部4は、両端方向に伸縮自在なベローズ41を介してフランジ部30aに支持されており、後述する位置調整シャフト6,押し込みシャフト9を適宜選択して適用(選択した一つを後述するエミッタ支持部操作孔32に貫装して適用)することにより、両端方向に可動自在な構成となっている。
エミッタ3においては、前述のように電子発生部31を有し、電圧印加により電子発生部31から電子を発生し、図示するように電子線L1を放出できるもの(放射体)であれば、種々の態様を適用することが可能である。具体例としては、例えば炭素等(カーボンナノチューブ等)の材料を用いてなるものであって、図示するように塊状に成形された、または薄膜状に蒸着させたエミッタ3を適用することが挙げられる。電子発生部31においては、ターゲットユニット70(後述するターゲット7)に対向する側の表面を凹状(曲面状)にして、電子線L1を集束し易くすることが好ましい。
エミッタ支持部4においては、前述のようにエミッタ3を両端方向に対して移動自在に支持できるものであって、後述の位置調整シャフト6,押し込みシャフト9によって操作されて可動するものであれば、種々の態様を適用することが可能である。
図中のエミッタ支持部4の場合、ガード電極5の内周側においてエミッタ3の両端一方側を支持(例えば、エミッタ3における電子発生部31の反対側を、かしめや溶着等により固着して支持)する先端部42と、当該先端部42の両端一方側において両端方向に延在し当該先端部42よりも小径の柱状部43と、を備えている。また、当該先端部42と柱状部43との間の外周面には、段差部44が形成されている。
柱状部43においては、両端一方側方向に開口した形状で螺合軸が両端方向に延在しているエミッタ支持部雌螺子穴45が、設けられている。このエミッタ支持部雌螺子穴45の開口縁面45aは、当該エミッタ支持部雌螺子穴45の径方向に沿って延在した形状となっている。
また、エミッタ支持部4は、種々の材料を適用して構成することができ、特に限定されるものではないが、例えばステンレス(SUS材等)や銅等のように導電性の金属材料を用いてなるものが挙げられる。
ベローズ41は、柱状部43よりも大径(エミッタ支持部雌螺子穴45よりも大径)の筒状であって、軸心がエミッタ支持部雌螺子穴45の螺合軸と同軸で延在するように配置されている。このベローズ41は、両端一方側の端部がフランジ部30aに支持され、両端他方側の端部がエミッタ支持部4の外周側(図中では段差部44)に支持されている。
このようなベローズ41により、真空室1と大気側(真空容器11外周側)とが区分され、当該真空室1を気密に保持できる構成(真空容器11の一部を形成する構成)となっている。また、ベローズ41を介してエミッタ支持部4を支持することにより、後述の位置調整シャフト6,押し込みシャフト9を適宜選択して適用しエミッタ支持部4を操作した場合には、ベローズ41が伸縮しながらエミッタ支持部4が両端方向に移動し、その結果、エミッタ3も両端方向に移動することになる。
ベローズ41は、前述のように両端方向に伸縮自在なものであれば、種々の態様を適用することが可能であり、例えば薄板状金属材料等を適宜加工して成形されたものが挙げられる。具体例としては、図示するように、柱状部43の外周側を包囲するように両端方向に延在する蛇腹状筒壁41aを有した構成が挙げられる。
ガード電極5においては、前述のようにエミッタ3の電子発生部31の外周側に位置するように設けられたものであって、エミッタ支持部4の可動によって移動するエミッタ3の電子発生部31が接離し、当該ガード電極5とエミッタ3とが所定隣接状態(例えば図1に示す状態)の場合に、当該エミッタ3から放出される電子線L1の分散を抑制できるものであれば、種々の態様を適用することが可能である。
ガード電極5の具体例としては、例えばステンレス等(SUS材等)の材料を用いてなり、エミッタ3の外周側で両端方向に延在した筒状で、両端一方側の端部がフランジ部30aにおけるベローズ41よりも外周側に支持され、両端他方側の端部(すなわち後述のターゲット7側)がエミッタ3と接離する構成が挙げられる。
このガード電極5のエミッタ3と接離する構成は、特に限定されるものではない。例えば図3に示すように両端他方側の端部に小径部51を形成した構成であっても良いが、図1,図2に示したように、エミッタ支持部雌螺子穴45の螺合軸側に延出し両端方向においてエミッタ3の電子発生部31の周縁部31aと重畳する縁部52が形成された構成も挙げられる。また、小径部51および縁部52の両方を形成した構成(図示省略)も挙げられる。
このような接離構成のガード電極5を備えた場合、エミッタ支持部4の可動により、エミッタ3が当該ガード電極5の内周側(筒状内周側)において両端方向に移動し、エミッタ3の電子発生部31が小径部51あるいは縁部52に接離することになる。また、縁部52を備えた構成の場合には、当該ガード電極5とエミッタ3とが所定隣接状態である場合に、電子発生部31の周縁部31aが、縁部52よって覆われて保護されることになる。
また、エミッタ3の電子発生部31の周縁部31aの見かけ上の曲率半径を大きくなるようにし、電子発生部31(特に周縁部31a)で起こり得る局部的な電界集中を抑制したり、その電子発生部31から他の部位に対する閃絡を抑制できる形状とすることが挙げられる。例えば、図示するガード電極5のように、両端他方側の端部に凸の曲面部51aを有した形状が挙げられる。
なお、図3中のガード電極5の場合、外周側にゲッター54が溶接等により取り付けられているが、そのゲッター54の取付位置や材質等は特に限定されるものではない。
フランジ部30aには、当該フランジ部30aにおけるベローズ41内周側の位置を両端方向に貫通し、軸心がエミッタ支持部雌螺子穴45の螺合軸と同軸となるように延在したエミッタ支持部操作孔32が、設けられている。このエミッタ支持部操作孔32においては、位置調整シャフト6および押し込みシャフト9から選択された一つを、それぞれシャフト先端部(位置調整シャフト6の場合は先端部61)側から貫装自在な形状とする。
図中のエミッタ支持部操作孔32の場合、当該エミッタ支持部操作孔32における両端一方側に、螺合軸が両端方向に延在している操作孔雌螺子部32aが設けられ、後述の基端部側雄螺子部92aが螺合自在な構成となっている。
位置調整シャフト6は、先端部61の外周面に、当該位置調整シャフト6をエミッタ支持部操作孔32に貫装している状態(図2に示すような状態)でエミッタ支持部雌螺子穴45と螺合自在な先端部側雄螺子部61aが、設けられている。
図中の位置調整シャフト6の場合、当該位置調整シャフト6における基端部62の両端一方側に螺子頭60が設けられており、ワッシャー(スペーサ等)60aを介してエミッタ支持部操作孔32の開口縁面に係止できる構成となっている。
図2に示すように、エミッタ支持部操作孔32に貫装している位置調整シャフト6の先端部61がエミッタ支持部雌螺子穴45に螺合している状態で、例えば作業者が螺子頭60を把持して当該位置調整シャフト6を操作することにより、当該位置調整シャフト6を締緩方向に軸回転させることが可能となる。
例えば、位置調整シャフト6を締付方向に軸回転させた場合、エミッタ支持部4は両端一方側に移動する。一方、当該位置調整シャフト6を弛緩方向に軸回転させた場合には、エミッタ支持部4は両端他方側(ターゲット7側)に移動することになる。また、位置調整シャフト6の軸回転を固定した状態にすることにより、エミッタ支持部4は位置決め固定、すなわちエミッタ3が位置決め固定された状態となる。
押し込みシャフト9は、先端部91における先端面(図1に示すような貫装状態においてエミッタ支持部雌螺子穴45と対向する先端面)91aが、エミッタ支持部雌螺子穴45の開口径よりも大径であって、当該押し込みシャフト9の径方向に沿って延在した形状となっている。これにより、図1に示すように押し込みシャフト9をエミッタ支持部操作孔32に貫装している状態において、先端面91aと開口縁面45aとの両者は並行(横断面方向)に延在し、面接触状態にすることが可能となる。
押し込みシャフト9の基端部92の外周面には、操作孔雌螺子部32aと螺合自在な基端部側雄螺子部92aが設けられている。
図中の押し込みシャフト9の場合、当該押し込みシャフト9における基端部92の両端一方側に、エミッタ支持部操作孔32よりも大径の螺子頭90が設けられており、例えばワッシャー等(図示省略)を適宜介してエミッタ支持部操作孔32の開口縁面に係止できる構成となっている。
図1に示すようにエミッタ支持部操作孔32に貫装している押し込みシャフト9の先端面91aとエミッタ支持部雌螺子穴45の開口縁面45aとが面接触状態で、例えば作業者が螺子頭90を把持して当該押し込みシャフト9を操作(基端部側雄螺子部92aが操作孔雌螺子部32aに螺合している場合には、軸回転するように操作)し両端他方側に移動させることにより、エミッタ支持部4も両端他方側(ターゲット7側)に移動することになる。また、押し込みシャフト9の両端方向の移動を固定した状態(例えば図1に示すような状態)にすることにより、エミッタ支持部4は位置決め固定、すなわちエミッタ3が位置決め固定された状態となる。
なお、図1に示す押し込みシャフト9のように基端部側雄螺子部92aが操作孔雌螺子部32aに螺合する構成の場合、当該押し込みシャフト9を軸回転しながら両端方向に移動できるため、例えば当該両端方向の移動量の微調整が容易になる可能性がある。
次に、ターゲットユニット70は、エミッタ3の電子発生部31に対向するターゲット7と、絶縁体2の開口22の端面22aに支持されて当該開口22を封止するフランジ部70aと、を備えている。
ターゲット7においては、エミッタ3の電子発生部31から放出された電子線L1が衝突し、図示するようにX線L2等を放出できるものであれば、種々の形態を適用することが可能である。図中のターゲット7においては、エミッタ3の電子発生部31に対向する部位に、電子線L1に対して所定角度で傾斜する交差方向に延在した傾斜面71が形成されている。この傾斜面71に電子線L1が衝突することにより、X線L2は、電子線L1の照射方向から折曲した方向(例えば図示するように真空室1の横断面方向)に、照射されることになる。
グリッド電極8においては、前述のようにエミッタ3とターゲット7との間に介在し、当該グリッド電極8を通過する電子線L1を適宜制御できるものであれば、種々の形態のものを適用することが可能である。例えば図示するように、真空室1の横断面方向に延在し電子線L1が通過する通過孔81aを有した電極部(例えばメッシュ状の電極部)81と、絶縁体2を貫通(真空室1横断面方向に貫通)する引出端子82と、を備えた構成が挙げられる。
以上示したように構成されたX線装置10によれば、位置調整シャフト6および押し込みシャフト9をそれぞれ適宜選択して適用することにより、エミッタ支持部4を移動させることができ、エミッタ3の電子発生部31とターゲット7との間の距離を変化させることができる。例えば図2に示したように、電子発生部31が放電可能領域mから無放電領域nに移動し電界放射を抑制された状態であれば、ガード電極5,ターゲット7,グリッド電極8等において所望の改質処理が可能となる。
<X線装置10のガード電極等の改質処理および電界放射方法の一例>
X線装置10のガード電極5等を改質処理する場合、まず、エミッタ支持部操作孔32に貫装している位置調整シャフト6の先端部61がエミッタ支持部雌螺子穴45に螺合している状態で、当該位置調整シャフト6を締付方向に軸回転させると、図2に示すように、エミッタ支持部4が両端一方側に移動すると共に、エミッタ3が無放電領域nに移動し、電子発生部31の電界放射が抑制された状態となる。この場合、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5の縁部52(なお、図3の場合は小径部51)との両者は、互いに離反(エミッタ3を無放電領域n(放電電界以下)に移動)した状態となる。
この図2に示すような状態であれば、例えばガード電極5とグリッド電極8(引出端子82等)との間や、ターゲット7とグリッド電極8との間などに所望の改質時電圧を適宜印加することにより、ガード電極5等において放電が繰り返され、当該ガード電極5等が改質処理(例えばガード電極5の表面が溶解平滑化)されることになる。
前述の改質処理の後の電界放射方法としては、前記位置調整シャフト6を弛緩方向に軸回転させることにより、エミッタ支持部4が両端他方側(ターゲット7側)に移動すると共に、エミッタ3が放電可能領域mに移動し、電子発生部31の電界放射が可能な状態となる。この状態において、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者が所望通りに所定隣接状態になっていれば、エミッタ3から放出される電子線L1の分散を抑制できる状態となる。
ここで、例えばX線装置10において公差が存在する等の理由により、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者を所望通りに所定隣接状態にできない場合(例えば両者間に意図しない間隙が形成されている場合)には、まず、エミッタ支持部操作孔32から位置調整シャフト6を取り外す。
次に、当該エミッタ支持部操作孔32に、押し込みシャフト9を先端部91側から貫装して両端他方側に押し込み、当該押し込みシャフト9の先端面91aとエミッタ支持部雌螺子穴45の開口縁面45aとを面接触状態にする。
そして、前記面接触状態において押し込みシャフト9を更に押し込むことにより、エミッタ支持部4に対する押し込みシャフト9の軸心ズレ(平行偏心,偏角等)を抑制しながら、当該エミッタ支持部4を両端方向の他方側に移動できる。
これにより、図1に示すようにエミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者を所定隣接状態にすることができ、エミッタ3から放出される電子線L1の分散を抑制できる状態となる。
この図1に示すような状態で、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5とが互いに同電位で、例えばエミッタ3とターゲット7との間に所望の電圧を印加することにより、エミッタ3の電子発生部31から電子が発生して電子線L1が放出され、その電子線L1がターゲット7に衝突することにより、そのターゲット7からX線L2が放出される。
以上示した実施例1によれば、エミッタ支持部操作孔32に貫装した位置調整シャフト6を適宜操作して改質処理し、X線装置10においてガード電極5からの閃絡現象(電子の発生)を抑制することができ、当該X線装置10の電子発生量を安定させることができる。また、電子線L1を集束形電子束とすることができ、X線L2の焦点も収束し易くなり、高い透視分解能を得ること可能となる。
また、実施例1のような電界放射方法によれば、位置調整シャフト6および押し込みシャフト9から一つを適宜選択しエミッタ支持部操作孔32に貫装して適用することにより、たとえX線装置10において公差が存在していても、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者を所望通りに所定隣接状態にし易くなる。
すなわち、エミッタ3の電子発生部31とターゲット7との両者間の距離を変更して、任意の距離で当該エミッタ3を位置決め固定して設定し、当該位置決め固定の状態で所望のX線照射等を発揮することが可能となる。
≪実施例2≫
X線装置10においては、図2に示したように位置調整シャフト6の先端部61がエミッタ支持部雌螺子穴45に螺合している状態で、当該位置調整シャフト6を締緩方向に軸回転すると、当該エミッタ支持部雌螺子穴45に所謂バリ等の異物が発生してしまう場合がある。
このような異物が存在している場合、単に位置調整シャフト6を取り外して図1に示すように押し込みシャフト9をエミッタ支持部操作孔32に貫装し、当該押し込みシャフト9の先端面91aとエミッタ支持部雌螺子穴45の開口縁面45aとの両者を互いに接近させていくと、当該両者間に異物が介在してしまうことがある。
これにより、当該両者を面接触状態にできず、そのまま押し込みシャフト9を両端他方側に移動させると、当該押し込みシャフト9とエミッタ支持部4との両者において軸心ズレが起こるおそれがある。
そこで、実施例2では、前記のような異物を想定し、以下に示すように押し込みシャフト9Aを適用することとした。
<押し込みシャフト9Aの概略構成>
図4は、実施例2による押し込みシャフト9AをX線装置10に適用した場合の概略構成を説明するものである。この押し込みシャフト9Aにおいては、先端面91aの中心側(軸心側)に、凹部(所謂ザグリ穴)91bが設けられている。この凹部91bは、先端面91aの中心側において両端他方側方向に開口した形状であって、エミッタ支持部雌螺子穴45の開口径よりも大径の形状となっている。
以上示した実施例2によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、例えばエミッタ支持部雌螺子穴45に異物が存在している場合には、図4に示すような押し込みシャフト9Aの先端面91aとエミッタ支持部雌螺子穴45の開口縁面45aとの両者を近接させて接触すると、当該異物を凹部91b内に受容し易くなる。
これにより、先端面91aと開口縁面45aとの両者間に異物が介在しないように抑制できる。そして、当該両者を面接触状態にすることが容易となり、押し込みシャフト9Aにおいてはエミッタ支持部4に対する軸心ズレを抑制し易くなる。
≪実施例3≫
X線装置10においては、押し込みシャフト9,9Aの両端方向の移動量を適宜設定することにより、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者を所望通りに所定隣接状態にすることが可能であるが、当該X線装置10の内部を視認することができないため、当該両者が実際に所定隣接状態になっているかどうか確認することが困難となる場合が考えられる。すなわち、押し込みシャフト9,9Aの両端方向の移動量を適格に設定することが困難となる場合が考えられる。
そこで、実施例3では、以下に示すように押し込みシャフト9Bを適用できるX線装置10Bを構成し、当該押し込みシャフト9Bの両端方向の移動量を適格に設定し易くした。
<X線装置10Bの概略構成>
図5,図6に示す符号10Bは、実施例3によるX線装置の概略構成を説明するものである。X線装置10Bは、エミッタ支持部操作孔32に押し込みシャフト9Bを貫装自在な構成となっている。
このX線装置10Bのエミッタ支持部操作孔32は、内周面における両端方向の中央側に、両端一方側から両端他方側に向かって階段状に縮径された形状の内周段差部33が設けられている。これにより、エミッタ支持部操作孔32の内周面における内周段差部33から両端一方側が、当該内周段差部33から両端他方側と比較して、大径となっている。
押し込みシャフト9Bは、当該押し込みシャフト9Bの外周面における両端方向の中央側に、両端一方側から両端他方側に向かって階段状に縮径された形状の外周段差部93が設けられている。これにより、当該押し込みシャフト9Bの外周面における外周段差部93から両端一方側が、当該外周段差部93から両端他方側と比較して、大径となっている。この押し込みシャフト9Bの先端面91aにおいては、実施例2と同様に、凹部91bを設けても良い(図示省略)。
内周段差部33および外周段差部93の両者は、両端方向において重畳しており、当該両者が互いに接触(例えば面接触)する場合に、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5とが所定隣接状態となるように構成されているものとする。
以上示した実施例3によれば、実施例1,2と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、エミッタ支持部操作孔32に貫装されている押し込みシャフト9Bを、内周段差部33および外周段差部93の両者が接触するまで移動させた場合に、図5に示すように押し込みシャフト9Bの両端他方側への移動が規制されることとなり、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者が所定隣接状態になっているものと見做すことができる。
したがって、実施例3によれば、所定隣接状態が確認し易くなり、押し込みシャフト9Bの両端方向の移動量を適格に設定することが容易になる。
なお、内周段差部33および外周段差部93は、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者が所定隣接状態となる場合に互いに接触できれば良く、種々の態様を適用することが可能である。その一例としては、内周段差部33および外周段差部93の両者の接触面において、横断面方向に延在した形状とすることが挙げられる。具体例としては、図5,図6に示す内周段差部33および外周段差部93の接触面のように、両端一方側から両端他方側に近づくに連れてエミッタ支持部操作孔32の径方向に縮径されたテーパー状のものが挙げられる。
≪実施例4≫
実施例4では、以下に示すように押し込みシャフト9Cを適用できるX線装置10Cを構成し、当該押し込みシャフトBの両端方向の移動量を適格に設定できるようにした。
<X線装置10Cの概略構成>
図7,図8に示す符号10Cは、実施例4によるX線装置の概略構成を説明するものである。X線装置10Cは、エミッタ支持部操作孔32に押し込みシャフト9Cを貫装自在な構成となっている。
このX線装置10Cのエミッタ支持部操作孔32には、両端一方側から中央側に延在した基端部通路34が設けられている。
押し込みシャフト9Cの基端部92は、当該押し込みシャフト9Cの径方向のうち対向する二方向に突出している突出部92cを有した形状となっている。この突出部92cは、突出方向の径寸法が、エミッタ支持部操作孔32の両端他方側よりも大径となるように構成されている。この押し込みシャフト9Cの先端面91aにおいては、実施例2と同様に、凹部91bを設けても良い(図示省略)。
基端部通路34は、エミッタ支持部操作孔32の径方向のうち対向する二方向に拡径された長孔形状となっている。この基端部通路34の拡径方向の径寸法は、エミッタ支持部操作孔32の両端他方側よりも大径であって、エミッタ支持部操作孔32に貫装された状態の押し込みシャフト9Cが軸回転方向において任意の角度で固定された姿勢の場合に、基端部92が両端方向に移動自在な形状となっている。
例えば、図7(B)の基端部通路34の場合、エミッタ支持部操作孔32に貫装された状態の押し込みシャフト9Cにおいて、突出部92cが図示左右方向に突出するように延在した姿勢の場合に、基端部92が基端部通路34を両端方向に移動自在できる構成となっている。
また、基端部通路34における両端他方側には、当該基端部通路34の径方向外側に膨出した空洞部35が設けられている。この空洞部35は、基端部通路34における両端他方側に位置する押し込みシャフト9Cの基端部92が軸回転自在な形状であり、図7に示すように当該空洞部35内に突出部92cを受容できる構成となっている。
押し込みシャフト9Cと基端部通路34の両者においては、当該押し込みシャフト9Cがエミッタ支持部操作孔32に貫装された状態で基端部92が基端部通路34における両端他方側に位置する場合(基端部92が空洞部35に位置し両端他方側への移動が規制されている場合)に、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5とが所定隣接状態となるように構成されているものとする。この押し込みシャフト9Cの先端面91aにおいては、実施例2と同様に、凹部91bを設けても良い(図示省略)。
以上示した実施例4によれば、実施例1〜3と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、エミッタ支持部操作孔32に貫装されている押し込みシャフト9Cにおいて、基端部92が基端部通路34における両端他方側に位置するまで移動させた場合に、押し込みシャフト9Bの両端他方側への移動が規制されることとなり、エミッタ3の電子発生部31とガード電極5との両者が所定隣接状態になっているものと見做すことができる。
したがって、実施例4によれば、所定隣接状態が確認し易くなり、押し込みシャフト9Cの両端方向の移動量を適格に設定することが容易になる。また、空洞部35内に基端部92を収容した状態にすることにより、押し込みシャフト9Cの両端方向の移動を規制し位置決め固定することが可能となる。
図7,図8に示すX線装置10Cの場合、基端部側雄螺子部92aや操作孔雌螺子部32aによる螺合構成を適用していない。また、電界放射する場合には、押し込みシャフト9Cの基端部92がX線装置10C(フランジ部30a)内に収容できる。
これにより、図7,図8に示すX線装置10Cにおいては、螺合構成を適用したX線装置10〜10Bと比較すると、当該X線装置10Cの簡略化や小型化ができる可能性がある。また、エミッタ支持部操作孔32に貫装されている押し込みシャフト9Cにおいて、両端方向に対する移動が容易となり、電界放射する場合には、押し込みシャフト9Cに対するX線装置10Cの外周側からの衝撃等を抑制(押し込みシャフト9Cを保護し損傷等を抑制)することが可能となる。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
例えば、X線装置10,10B,10Cにおいては、エミッタ支持部4を両端方向に案内移動させるための案内手段(例えばエミッタ支持部4の外周側で両端方向に延在させたガイドレール等;図示省略)を、必要に応じて適宜設けることが挙げられる。
その他、特許文献1等に開示されている内容を適宜適用して設計変形することもでき、実施例1〜4と同様の作用効果を奏することが可能である。
1…真空室
10,10B,10C…X線装置
11…真空容器
2…絶縁体
3…エミッタ
31…電子発生部
31a…周縁部
32…エミッタ支持部操作孔
33…内周段差部
34…基端部通路
35…空洞部
4…エミッタ支持部
41…ベローズ
45…エミッタ支持部雌螺子穴
45a…開口縁面
5…ガード電極
51…小径部
52…縁部
6…位置調整シャフト
61,91…先端部
7…ターゲット
9,9A,9B,9C…押し込みシャフト
91a…先端面
91b…凹部
62,92…基端部
92c…突出部
93…外周段差部

Claims (11)

  1. 筒状の絶縁体の両端が封止されて当該絶縁体の内周側に真空室が形成された真空容器と、
    真空室において前記両端方向の一方側に位置し、当該両端方向の他方側に対向する電子発生部を有したエミッタと、
    エミッタの電子発生部の外周側に位置しているガード電極と、
    真空室において前記両端方向の他方側に位置し、エミッタの電子発生部に対向して設けられたターゲットと、
    エミッタを前記両端方向に対し移動自在に支持する可動自在なエミッタ支持部と、
    エミッタ支持部において前記両端方向の一方側方向に開口した形状で、螺合軸が当該両端方向に延在しているエミッタ支持部雌螺子穴と、
    エミッタ支持部雌螺子穴よりも大径の筒状であって、軸心がエミッタ支持部雌螺子穴の螺合軸と同軸となるように延在し、当該筒状の一端側が真空容器における前記両端方向の一方側に支持され、当該筒状の他端側がエミッタ支持部の外周側に支持されて、真空室の一部を形成している前記両端方向に伸縮自在なベローズと、
    真空容器における前記両端方向の一方側でベローズ内周側を当該両端方向に貫通し、軸心がエミッタ支持部雌螺子穴の螺合軸と同軸となるように延在しているエミッタ支持部操作孔と、
    を備え、
    エミッタ支持部雌螺子穴の開口縁面は、当該エミッタ支持部雌螺子穴の径方向に沿って延在し、
    エミッタ支持部操作孔は、位置調整シャフトおよび押し込みシャフトから選択された一つを、それぞれ先端部側から貫装自在な形状であり、
    位置調整シャフトは、エミッタ支持部操作孔に貫装された状態で軸回転自在であって、当該位置調整シャフトの先端部の外周面に、エミッタ支持部雌螺子穴と螺合自在な先端部側雄螺子部が設けられ、
    押し込みシャフトは、当該押し込みシャフトの先端部の先端面が、エミッタ支持部雌螺子穴の開口径よりも大径であって、当該押し込みシャフトの径方向に沿って延在していることを特徴とする電界放射装置。
  2. 押しこみシャフトの先端部の先端面中心側には、前記両端方向の他方側方向に開口した形状で、エミッタ支持部雌螺子穴の開口径よりも大径の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電界放射装置。
  3. エミッタ支持部操作孔は、内周面における前記両端方向の中央側に、当該両端方向の一方側から他方側に向かって階段状に縮径された形状の内周段差部が設けられ、
    押し込みシャフトは、外周面における前記両端方向の中央側に、当該両端方向の一方側から他方側に向かって階段状に縮径された形状の外周段差部が設けられ、
    内周段差部および外周段差部の両者は、前記両端方向において重畳し、エミッタの電子発生部とガード電極との両者が近接または当接している状態において、互いに接触することを特徴とする請求項1または2記載の電界放射装置。
  4. 内周段差部および外周段差部の両者の接触面は、前記両端方向の一方側から他方側に近づくに連れてエミッタ支持部操作孔径方向に縮径されたテーパー状であることを特徴とする請求項3記載の電界放射装置。
  5. エミッタ支持部操作孔における前記両端方向の一方側には、螺合軸が当該両端方向に延在している操作孔雌螺子部が設けられており、
    押しこみシャフトの基端部の外周面には、操作孔雌螺子部と螺合自在な基端部側雄螺子部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電界放射装置。
  6. エミッタ支持部操作孔は、
    前記両端方向の一方側から中央側に延在し、エミッタ支持部操作孔の径方向のうち対向する二方向に拡径された基端部通路と、
    基端部通路における前記両端方向の他方側でエミッタ支持部操作孔径方向外側に膨出した空洞部と、
    を有し、
    押しこみシャフトの基端部は、押し込みシャフト径方向のうち対向する二方向に突出した突出部を有し、
    基端部通路は、エミッタ支持部操作孔における前記両端方向の他方側よりも大径であって、当該エミッタ支持部操作孔に貫装された状態の押し込みシャフトが軸回転方向において任意の角度で固定された姿勢の場合に、当該押し込みシャフトの基端部が両端方向に移動自在な形状であり、
    空洞部は、基端部通路における前記両端方向の他方側に位置する押しこみシャフトの基端部が軸回転自在な形状である、
    ことを特徴とする請求項1または2記載の電界放射装置。
  7. 押し込みシャフトの基端部が基端部通路における前記両端方向の他方側に位置する場合に、エミッタの電子発生部とガード電極との両者が近接または当接する状態となる、ことを特徴とする請求項5または6記載の電界放射装置。
  8. ガード電極における前記両端方向の他方側には、エミッタ支持部の前記両端方向の移動によりエミッタの電子発生部が接離する小径部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の電界放射装置。
  9. ガード電極における前記両端方向の他方側には、エミッタ支持部雌螺子穴の螺合軸側に延出し当該両端方向においてエミッタの電子発生部の周縁部と重畳する縁部が設けられていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の電界放射装置。
  10. 請求項1〜9の何れかに記載の電界放射装置を用いた電界放射方法であって、
    電界放射電流の出力は、位置調整シャフトおよび押し込みシャフトから選択したシャフトを先端部側からエミッタ支持部操作孔に貫装し、当該シャフトを介してエミッタの電子発生部とターゲットとの両者間の距離を変更し任意の距離でエミッタを位置決め固定して設定し、
    当該位置決め固定の状態でエミッタの電子発生部から電界放射することを特徴とする電界放射方法。
  11. 請求項1〜9の何れかに記載の電界放射装置のエミッタの位置決め固定方法であって、
    位置調整シャフトを先端部側からエミッタ支持部操作孔に貫装し、当該位置調整シャフトをエミッタ支持部雌螺子穴に螺合して締付方向に軸回転させることにより、エミッタの電子発生部とターゲットとの両者を互いに離反した状態にし、
    前記離反した状態でガード電極に電圧を印加することにより、真空室内の少なくともガード電極を改質処理し、
    前記改質処理後、前記位置調整シャフトを弛緩方向に軸回転させてエミッタ支持部操作孔から取り外してから、押し込みシャフトを先端部側からエミッタ支持部操作孔に貫装し、
    前記貫装した押し込みシャフトを介して、エミッタの電子発生部とターゲットとの両者を近接または当接している状態にし、当該エミッタを位置決め固定することを特徴とする位置決め固定方法。
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