JP2021186876A5 - - Google Patents
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本発明は、溶接用ワイヤを案内するとともに、溶接電流を供給する溶接用コンタクトチップに関するものである。
この種のコンタクトチップは、図4に示すように、クロム銅、クロムジルコニウム銅等の銅合金製のコンタクトチップ51に、溶接用ワイヤ52の挿通孔53を形成し、この挿通孔53に溶接用ワイヤ52を挿通し、溶接用ワイヤ52が挿通孔53の壁面に接触することによって電流を供給し、溶接母材と溶接用ワイヤとの間にアークを発生して溶接母材を溶接するものである。(特許文献1を参照)
従来、コンタクトチップ51の寿命の原因は、溶接時の高温にてコンタクトチップ51が軟化され、溶接ワイヤ52が送り出されるときの摩擦により、コンタクトチップの挿通孔53の先端が摩耗することにより変形することが原因と考えられていた。
前記のような溶接用ワイヤは銅メッキを施した銅メッキワイヤと銅メッキを施さないノーメッキワイヤとの二種類あるが、ノーメッキワイヤを使用すると銅メッキワイヤを使用した場合より、コンタクトチップの寿命が極端に短くなるという問題があった。
前記コンタクトチップの寿命についての調査研究の結果、溶接時に発生するヒューム(金属酸化物)に、ノーメッキワイヤの構成物質の珪素(Si)が酸化された二酸化珪素(SiO2)が含まれ、この二酸化珪素は硬度の高い絶縁物であるのでコンタクトチップからの給電性の低下と高硬度によるコンタクトチップの挿通孔先端の摩擦磨耗による変形により、コンタクトチップの寿命が極端に短くなることが分った。
そこで、二酸化珪素の生成を防止するため、クロムジルコニウム銅製の母材に、下層にニッケルメッキ、上層にニッケルボロンメッキを施したコンタクトチップを検討したが、上層では二酸化珪素(6SiO2)にニッケル(3Ni)とボロン(8B)が反応し、二ケイ化ニッケル(3NiSi2)と三酸化ホウ素(4B2O3)が生成され、また下層では二酸化珪素(10SiO2)にニッケル(5Ni)とリン(8P)が反応し二ケイ化ニッケル(5NiSi
2
)と十酸化四リン(2P4O10)が生成され、母材では二酸化珪素(3SiO2)に銅(7Cu)とクロム(Cr)とジルコニウム(Zr)が反応し、珪化銅(Cu5Si)と酸化銅(2CuO)と珪化クロム(CrSi2)とジルコニア(2ZrO2)が生成される。
クロムジルコニウム銅製の母材に、下層にニッケルメッキ、上層にニッケルボロンメッキを施したコンタクトチップでは、上層で生成される三酸化ホウ素はガラス質の絶縁体であり、母材で生成されるジルコニアは高硬度の絶縁体であるので、二酸化珪素の発生は防止できるがコンタクトチップの寿命は従来のものとあまり変わらないものであった。
本発明は前記のような問題点を解決するためになされたものであり、ノーメッキワイヤを用いて溶接する際に、二酸化珪素だけではなく他の絶縁体の酸化物の生成も防止することにより、ノーメッキワイヤを使用したときの寿命を大幅に伸ばしたコンタクトチップを提供することを目的になされたものである。
上記課題を解決するためになされた本発明のコンタクトチップは、溶接用ワイヤを挿通する挿通孔を形成し、溶接用ワイヤを案内するとともに、溶接電流を供給するコンタクトチップにおいて、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない銅合金製の母材に、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない導電性の被膜を施したことを特徴としたものである。
前記母材がクロム銅製であり、前記被膜が銅メッキであることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
前記銅メッキ被膜の下層にニッケルメッキ被膜を施すことが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
本発明では、溶接用ワイヤを挿通する挿通孔を形成し、溶接用ワイヤを案内するとともに、溶接電流を供給するコンタクトチップにおいて、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない銅合金製の母材に、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない導電性の被膜を施したので、ノーメッキワイヤを使用して溶接するときに生成する酸化物(ヒューム)内の絶縁性酸化物の生成が抑えられ、給電性が低下することが無く、ノーメッキワイヤを使用して溶接したときのコンタクトチップの寿命を、銅メッキワイヤを使用して溶接したのと同じくらいに、大幅に延ばすことができる。
また、銅メッキ被膜の下層にニッケルメッキ被膜を施したので、コンタクトチップの母材表面が固くなり、さらにコンタクトチップの寿命を延ばすことができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について図1から図3に基づいて説明すると、1は導電性に優れたクロム銅からなる先端先細状のコンタクトチップである。溶接用ワイヤ2を挿通する挿通孔3が、該コンタクトチップ1の基端の外周面にねじ部を螺刻した取付け部4から本体部5の先端まで貫通されている。尚、取付け部4の基端部に溶接用ワイヤ2のガイド部3cが形成されている。
前記コンタクトチップ1の被膜について、図2に基づいて説明すると、コンタクトチップ1のクロム銅製の母材6の表面には下層にニッケルメッキ被膜7が施され、上層に銅メッキ被膜8が施されている。
また、図3は、本発明のコンタクトチップを溶接用ロボットのトーチ本体に装着して使用する場合を示すものである。図において、9はトーチ本体、10はチップホルダー11およびコンタクトチップ1を覆う筒状のガスシールドノズルである。このように、本発明のコンタクトチップは外形状は従来のコンタクトチップと何ら変わらないので、そのまま溶接用ロボットのトーチのコンタクトチップホルダーに装着して使用することが可能である。
次に、溶接時に生成される酸化物(ヒューム)について説明すると、上層の銅メッキでは、二酸化珪素(SiO
2 )に銅(5Cu+2Cu)が反応して珪化銅(Cu5Si)と酸化銅(2CuO)が生成され、下層のニッケルメッキでは、二酸化珪素(10SiO2)にニッケル(5Ni)とリン(8P)が反応して二珪化ニッケル(5NiSi2)と十酸化四リン(2P4O10)が生成され、母材のクロム銅では、二酸化珪素(3SiO2)に銅(7Cu)とクロム(Cr)が反応して、珪化銅(Cu5Si)と酸化銅(2CuO)と珪化クロム(CrSi2)と酸素(2O2)が生成される。
以上の生成物のうち十酸化四リン(2P4O10)は360°Cにて昇華され、酸化銅(CuO)は250°C以上で還元されて銅(Cu)になるので、コンタクトチップ1の寿命を短くする絶縁物は残らず、給電性は低下しない。
以上のように本発明では、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない、銅合金製(クロム銅製)の母材6に、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない導電性の被膜(銅メッキ)8を施したので、ノーメッキワイヤを使用して溶接するときに生成する酸化物(ヒューム)にて、給電性が低下することが無く、ノーメッキワイヤを使用して溶接したときのコンタクトチップ1の寿命を、銅メッキワイヤを使用して溶接したのと同じくらいに、大幅に延ばすことができ、また銅メッキ被膜8の下層にニッケルメッキ被膜7を施したので、コンタクトチップの母材表面が固くなり、さらにコンタクトチップの寿命を延ばすことができる。
1 コンタクトチップ
2 溶接用ワイヤ
3 挿通孔
6 母材
7 ニッケルメッキ被膜
8 銅メッキ被膜
2 溶接用ワイヤ
3 挿通孔
6 母材
7 ニッケルメッキ被膜
8 銅メッキ被膜
Claims (3)
- 溶接用ワイヤを挿通する挿通孔を形成し、溶接用ワイヤを案内するとともに、溶接電流を供給するコンタクトチップにおいて、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない銅合金製の母材に、二酸化珪素と反応して絶縁物が生成されない導電性の被膜を施したことを特徴とするコンタクトチップ。
- 前記母材がクロム銅製であり、前記被膜が銅メッキであることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトチップ。
- 前記銅メッキ被膜の下層にニッケルメッキ被膜を施したことを特徴とした請求項2に記載のコンタクトチップ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020106536A JP2021186876A (ja) | 2020-05-25 | 2020-05-25 | コンタクトチップ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020106536A JP2021186876A (ja) | 2020-05-25 | 2020-05-25 | コンタクトチップ |
Publications (2)
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JP2021186876A JP2021186876A (ja) | 2021-12-13 |
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JP2020106536A Pending JP2021186876A (ja) | 2020-05-25 | 2020-05-25 | コンタクトチップ |
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Families Citing this family (1)
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2020
- 2020-05-25 JP JP2020106536A patent/JP2021186876A/ja active Pending
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