JP2021185877A - 細胞培養容器、細胞培養方法、及び細胞生育状態の評価方法 - Google Patents

細胞培養容器、細胞培養方法、及び細胞生育状態の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】培養培地中の培養成分の使用量を低減でき、かつ閉鎖系で細胞の生育状態に応じて適切に培地を供給することができる細胞培養容器を提供することを主目的とする。【解決手段】本発明の細胞培養容器は、細胞を培養する培養室と、流体を貯留する貯留室と、上記培養室及び上記貯留室を区画し、上記細胞を透過せず所定の物質を選択的に透過する物質交換膜と、上記培養室又は上記貯留室と外部を隔てるガス交換膜と、を備え、上記培養室及び上記貯留室はそれぞれ流体を流入出可能な開口部を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養容器、その細胞培養容器を用い細胞を培養する細胞培養方法、及びその細胞培養方法で細胞の生育状態を評価する細胞生育状態の評価方法に関する。
医療や製薬等を用途とする細胞培養に自動培養装置を用いる細胞製造技術の開発が進んでいる。自動培養装置は、従来の人の手技による培養と比較して、培養場の拡大による大量培養が容易である点、及び閉鎖系を構築することで細胞培養時の汚染リスクを大幅に低減できる点で有利である。
こうした自動培養装置及びその関連技術は種々開発されており、例えば、特許文献1には、培養槽での懸濁培養方式の自動培養装置が提案されている。また、特許文献2には、自動培養装置に適用可能なバック型の培養容器が提案されている。
さらに、特許文献3には、透析膜で区切られた培地画室及び培養画室を有する細胞培養容器を備える細胞培養装置が記載されている。この細胞培養装置の細胞培養容器では、培地画室が培養画室の上に存在し、培養画室及び培地画室に細胞懸濁液及び培地をそれぞれ分けて供給することで、培地交換をせずに細胞の長期培養が可能である。
特開2015−216880号公報 特開2009−136156号公報 特開昭61−108373号公報
一般に細胞培養に使用する培地は、細胞が生育時に消費する栄養成分の他に、培地環境を安定化させる成分や少量で細胞の増殖や分化に影響する生理活性物質成分等のようなタンパク質成分などの培養成分を含んでいる。これらの培養成分は、生体由来の成分も多く、血清や精製タンパク等の添加又は培養中の細胞自身の分泌等により培地に存在している。
細胞は培養中に培養培地に含まれる栄養成分を消費し老廃物を排出する。従って、細胞の生育に伴い培地の劣化が進行するので、一般的な細胞培養では、使用済みの培養培地の新鮮な培養培地への定期的な交換が必要となる。一方で、この培地交換の際に、培養培地に残存する培養成分が不要に廃棄されている。そのため、従来の細胞培養方法では、培養成分を効率的に利用できていない点に問題がある。特に産業用途の自動培養装置では、培養場の拡大に伴う培地消費量が増大しているため、この問題による培養成分の損失を無視することができない。
これに対し、特許文献3に記載された細胞培養装置の細胞培養容器では、培養画室に血清を含む培養培地を添加し、培地画室には血清を含まない栄養培地を添加することで細胞を培養している。しかしながら、この細胞培養容器は培地交換をせずに細胞の長期培養を行うための構成であり、細胞の生育状態に応じて培地を適切に供給する運用や閉鎖系で細胞を培養する運用に適用することができない。
さらに、近年では、三次元培養による細胞の大量培養や高機能を発現する三次元組織の培養による作製が必要となっている。これらの培養では、従来の平面培養と比較して細胞密度が非常に増大するため、それに応じて培地の劣化速度も増大する。そのため、大量の培地を貯留し供給するために、培地容量の制約を受けない構造や迅速かつ頻繁に新鮮な培地を供給可能な構造が求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、培養培地中の培養成分の使用量を低減でき、かつ閉鎖系で細胞の生育状態に応じて適切に培地を供給することができる細胞培養容器、その細胞培養容器を用い細胞を培養する細胞培養方法、及びその細胞培養方法で細胞の生育状態を評価する細胞生育状態の評価方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の細胞培養容器は、細胞を培養する培養室と、流体を貯留する貯留室と、上記培養室及び上記貯留室を区画し、上記細胞を透過せず所定の物質を選択的に透過する物質交換膜と、上記培養室又は上記貯留室と外部を隔てるガス交換膜と、を備え、上記培養室及び上記貯留室はそれぞれ流体を流入出可能な開口部を有することを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本発明の細胞培養方法は、上記細胞培養容器を用い、上記培養室で上記細胞を培養する細胞培養方法であって、上記開口部を介して上記培養室及び上記貯留室に成分又は成分濃度が異なる培地を供給することを特徴とする。
さらに、上記課題を解決するために、本発明の細胞生育状態の評価方法は、上記細胞培養方法で上記細胞を培養する過程において、上記細胞の生育状態を評価する細胞生育状態の評価方法であって、上記貯留室に供給される上記培地及び上記貯留室から排出される上記培地のグルコース濃度の差を測定し、当該グルコース濃度の差からグルコース消費速度を算出し、上記グルコース消費速度から上記培養室内の細胞数を推定することを特徴とする。
本発明によれば、培養培地中の培養成分の使用量を低減でき、かつ閉鎖系で細胞の生育状態に応じて適切に培地を供給することができる。
以上に説明した内容以外の本発明の課題、構成、及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
実施形態の細胞培養容器の一例の要部を示す概略断面図である。 図1に示すA−A線における概略断面図である。 実施形態の細胞培養容器の変形例の要部を示す図であって、図2に示される断面に対応する断面を示す概略断面図である。 実施形態の細胞培養容器の他の変形例の要部を示す概略断面図である。 (a)は、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)におけるグルコース濃度の経時変化を示すグラフであり、(b)は、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)における乳酸濃度の経時変化を示すグラフである。 実施例1で設計した細胞培養容器を示す概略断面図である。
以下、本発明の細胞培養容器、細胞培養方法、及び細胞生育状態の評価方法に係る実施形態について説明する。
最初に、実施形態の細胞培養容器の一例について、図1及び図2に沿って説明する。図1は、実施形態の細胞培養容器の一例の要部を示す概略断面図である。図2は、図1に示すA−A線における概略断面図である。
図1に示されるように、本例の細胞培養容器1は、筐体5を備え、筐体5の内部に細胞Cを培養する培養室10及び流体を貯留する貯留室20を有している。細胞培養容器1は、培養室10及び貯留室20を区画し、所定の物質を選択的に透過する物質交換膜30と、培養室10及び貯留室20と外気をそれぞれ隔てるガス交換膜40と、をさらに備えている。培養室10は、側面側が筐体5により外気と隔てられ、下面側がガス交換膜40により外気と隔てられ、上面側が物質交換膜30により貯留室20と隔てられている。貯留室20は、側面側が筐体5により外気と隔てられ、上面側がガス交換膜40により外気と隔てられ、下面側が物質交換膜30により培養室10と隔てられている。物質交換膜30は、貯留室20に供給される栄養培地に含まれる栄養成分及び培養室10に培養で生じる老廃物等の低分子量の成分を透過し、培養室10に供給される培養培地に含まれる生理活性物質成分等のような高分子量のタンパク質成分を透過しない選択的透過性を有する膜である。ガス交換膜40は酸素を透過し、培地を透過しない膜である。
そして、培養室10の側面の対向する2箇所にはポート51、52(流体を流入出可能な開口部)がそれぞれ設けられ、ポート51、52のそれぞれに開閉機構(図示せず)が設けられている。貯留室20の側面の対向する2箇所にはポート61、62(流体を流入出可能な開口部)がそれぞれ設けられ、ポート61、62のそれぞれに開閉機構(図示せず)が設けられている。
これに続いて、実施形態の細胞培養方法の一例として、図1に示す細胞培養容器1を用い、培養室10で細胞Cを培養する細胞培養方法について説明する。
本例の細胞培養方法では、事前に、細胞培養容器1の培養室10に培養足場80(細胞を接着又は包埋可能な構造体)及び培養足場80に接着させた細胞Cを導入する。さらに、培養室10のポート51に配管(図示せず)を接続し当該配管のポート51とは反対側を培養培地供給源(図示せず)等に接続することで流入路を構築し、培養室10のポート52に配管(図示せず)を接続し当該配管のポート52とは反対側を回収タンク等に接続することで流出路を構築する。また、貯留室20のポート61に配管(図示せず)を接続し当該配管のポート61とは反対側を栄養培地供給源(図示せず)等に接続することで流入路を構築し、貯留室20のポート62に配管(図示せず)を接続し当該配管のポート62とは反対側を貯留タンク等に接続することで流出路を構築する。そして、貯留室20に接続する流入路及び流出路のそれぞれにサンプリングポートS1又は成分分析用センサーS2を設置する。これにより、細胞培養容器1、培養培地供給源及び栄養培地供給源、流入路及び流出路、回収タンク及び貯留タンク、並びにサンプリングポートS1又は成分分析用センサーS2から構成される閉鎖系の細胞培養装置を構築する。この細胞培養装置では、流入路及び流出路を介し貯留室20又は培養室10に培地やガス等を灌流することによって、細胞を連続培養することができる。
続いて、細胞培養容器1をインキュベータ(図示せず)内に設置し、細胞培養容器1の培養室10で細胞を培養する。この際には、まず、細胞培養容器1の貯留室20のポート61、62を開閉機構で開放することで、貯留室20からポート62を介して流出路に空気を押し出しながら、栄養培地供給源からポート61を介して貯留室20に新鮮な栄養培地を供給することで貯留室20を新鮮な栄養培地で満たした後に、ポート61、62を開閉機構で閉鎖する。次に、培養室10のポート51、52を開閉機構で開放することで、培養室10からポート52を介して流出路に空気を押し出しながら、培養培地供給源からポート51を介して培養室10に液体の培養培地を供給することで培養室10を培養培地で満たした後に、ポート51、52を開閉機構で閉鎖する。次に、貯留室20のポート61、62を開閉機構で連続的に開放することで、栄養培地供給源からポート61を介して貯留室20に栄養成分を含む新鮮な液体の栄養培地を連続的に供給し、貯留室20からポート62を介して培養で生じる老廃物を含む使用済みの栄養培地を連続的に回収タンクに排出する。これにより、貯留室20に供給される栄養培地に含まれる栄養成分が物質交換膜30を透過することで培養室10に供給され、培養室10に培養で生じる老廃物が物質交換膜30を透過することで貯留室20に移動する。一方、培養室10に供給される培養培地に含まれるタンパク質成分が培養室10内に保持される。このような透析の結果、閉鎖系の細胞培養装置において、培養培地供給源から貯留室20への新鮮な栄養培地の連続的な供給及び貯留室20から回収タンクへの使用済みの栄養培地の連続的な排出を行うことによって、培養室10内の培養培地の劣化を防止することができ、かつ培養室10内に培養培地に含まれるタンパク質成分を保持することができる。そのため、閉鎖系の細胞培養装置において、培養室10内の培養培地を交換することなく培養室10で細胞を培養することができる。よって、培養培地中のタンパク質成分の使用量を低減し細胞Cの製造コストを抑制することができ、かつ閉鎖系で培地を供給することができる。
これに続いて、実施形態の細胞生育状態の評価方法の一例として、上記細胞培養方法の一例において、細胞Cの生育状態を評価する細胞生育状態の評価方法について説明する。
本例の細胞生育状態の評価方法では、上記例の細胞培養方法で細胞培養容器1の培養室10で細胞Cを培養する過程において、貯留室20の流入路及び流出路のそれぞれに設置したサンプリングポートS1又は成分分析用センサーS2を用いて、貯留室20に供給される栄養培地及び貯留室20から排出される栄養培地のグルコース濃度の差を測定した後に、グルコース濃度の差からグルコース消費速度を算出し、グルコース消費速度から培養室10内の細胞数を推定する。さらに、貯留室20から排出される栄養培地の乳酸濃度を測定した後に、乳酸濃度から乳酸産生速度を算出し、グルコース消費速度及び乳酸産生速度から培養室10内の細胞の代謝挙動を推定する。そして、上記例の細胞培養方法では、このように推定した培養室10内の細胞数及び細胞の代謝挙動から、細胞の生育状態を評価し、その評価結果に基づいて、貯留室20又は培養室10に供給する栄養培地の成分を調整することができる。よって、細胞培養容器1は、閉鎖系で細胞の生育状態に応じて適切に培地を供給する細胞培養装置に適用することができる。
従って、実施形態の細胞培養容器は、上記例のように、培養培地中の培養成分の使用量を低減し細胞の製造コストを抑制することができ、かつ閉鎖系で細胞の生育状態に応じて適切に培地を供給することができる。また、実施形態の細胞培養方法によれば、実施形態の胞培養容器を用い、培養室で細胞を培養することで、培養培地中の培養成分の使用量を低減し細胞の製造コストを抑制することができ、かつ閉鎖系で細胞の生育状態に応じて適切に培地を供給することができる。さらに、実施形態の細胞生育状態の評価方法によれば、実施形態の細胞培養方法で細胞を培養する過程において、培養室内の細胞数及び細胞の代謝挙動を推定し、細胞の生育状態を評価することができる。
以下、実施形態の細胞培養容器の構成並びに実施形態の細胞培養方法及び細胞生育状態の評価方法について、詳細に説明する。
1.物質交換膜
物質交換膜は、上記培養室及び上記貯留室を区画し、所定の物質を選択的に透過する膜である。物質交換膜としては、ガスや溶液などの所定の物質を選択的に透過する選択的透過性を有する膜であれば特に限定されないが、栄養培地に含まれる栄養成分及び培養で生じる老廃物等の低分子量の成分を透過し、培養培地に含まれる生理活性物質成分等のような標的となる高分子量のタンパク質成分を透過しない選択的透過性を有するものが好ましい。このような選択的透過性を有する物質交換膜を用いることにより、栄養培地に含まれる栄養成分及び培養で生じる老廃物を貯留室及び培養室の間で交換することができ、培養培地に含まれるタンパク質成分を培養室内に保持することができる。
物質交換膜は、例えば、上記のように栄養成分及び老廃物等の低分子量の成分を透過する必要があり、標的となる高分子量のタンパク質成分を透過しない必要がある。栄養成分としては、例えば、グルコース(分子量:180.96)及び乳酸(分子量:90.08)等が挙げられ、標的となる高分子量のタンパク質成分としては、例えば、タンパク安定化剤であるウシ血清アルブミン(分子量:66000)及び成長因子であるFGF2(分子量:17400)等が挙げられる。そのため、物質交換膜の分画分子量(MWCO)は、物質交換膜を上記のような選択的透過性を有する膜とするものであれば特に限定されないが、例えば、500以上60000以下の範囲内が好ましく、中でも1000以上15000以下の範囲内が好ましい。培養室内に、例えば、これらのような標的となる高分子量のタンパク質成分を保持することができるからである。なお、ウシ血清アルブミン及びFGF2以外のタンパク質成分が標的となる場合も、適切な分画分子量の物質交換膜を用いることにより、培養室内に標的となるタンパク質成分を保持することができる。ここで、「分画分子量」とは、複数種類の低濃度の球状溶質を物質交換膜に透過させ、阻止率が90%以上となるときの球状溶質の分子量を指す。
物質交換膜は、上記のような選択的透過性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、半透膜等である。半透膜としては、例えば、セルロース系膜(例えば、再生セルロース膜、表面化改質再生セルロース膜、及びセルロースアセテート等)、合成高分子系膜(例えば、ポリアクリロニトリール、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル系ポリマーアロイ、及びフッ素系樹脂等)等が挙げられる。さらに、物質交換膜は、細胞非接着性の膜が好ましい。
2.ガス交換膜
ガス交換膜は、酸素を透過する膜である。細胞の三次元培養では細胞密度が高くなるため、細胞の生育に必要な酸素の不足が課題となる。そこで、培養室内の培養足場の近傍にガス交換膜を設置することで、外気から効率良く酸素を供給することが可能となる。ガス交換膜としては、細胞非接着性の膜が好ましい。細胞非接着性の膜を使用することで、培養足場から底面に細胞が脱離し遊走することを防ぐことができるからである。
ガス交換膜は、酸素を透過する膜であれば特に限定されないが、例えば、シリコーン、ポリトリメチルシリルプロピン、含フッ素アクリル樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルペンテン、及び天然ゴムのいずれかを主成分とするもの等が好ましい。
3.細胞培養容器
細胞培養容器は、細胞を培養する培養室と、流体を貯留する貯留室と、上記培養室及び上記貯留室を区画し、上記細胞を透過せず所定の物質を選択的に透過する物質交換膜と、上記培養室又は上記貯留室と外部を隔てるガス交換膜と、を備え、上記培養室及び上記貯留室はそれぞれ流体を流入出可能な開口部を有することを特徴とする。
細胞培養容器の筐体は、特に限定されないが、例えば、(a)生体適合性を有し、(b)滅菌可能であり、(c)耐食性を有し、(d)成形可能であるものが好ましく、中でも、ガラス、市販の培養容器に使用されているポリスチレン、ポリカーボネート、及びポリエチレンテレフタレート等の樹脂、MED610等の医療用樹脂、SUS316等のステンレス、並びにチタン等が好ましい。
上記培養室及び上記貯留室はそれぞれ培地などの流体を流入出可能な開口部を有する。これらのポートを介し培地やガス等の流体及び細胞を流入させ、かつ流出させることができる。培養室が有する開口部は、例えば、図1に示すポート51、52のように、流体を外部に流入出可能な少なくとも2つの開口部でよく、流体を外部に流入出可能な3つ以上の開口部でもよい。同様に、貯留室が有する開口部は、例えば、図1に示すポート61、62のように、流体を外部に流入出可能な少なくとも2つの開口部でよく、流体を外部に流入出可能な3つ以上の開口部でもよい。貯留室又は培養室は、各開口部に設けられた開閉機構をさらに備えていてもよい。開口部の開閉機構により、貯留室又は培養室への流体の供給及び貯留室又は培養室からの流体の排出を連続的又は逐次的に行うことを設定することができる。なお、物質交換膜を介した貯留室及び培養室間の物質交換は液体間の界面で生じるために、物質交換膜の表面に空気が残存すると物質交換膜を介した物質交換の効率が低下することがある。そこで、貯留室及び培養室の各室に少なくとも2つの開口部を設けることにより、各室に培地の液体や細胞を含む液体等を流入させる際に空気を押し出すことができ、培地の液体や細胞を含む液体等の流路(例えば、物質交換膜の表面等)に空気を残存させずに各室を培地で簡便に満たすことができるので、物質交換の効率の低下を抑制することができる。これに対し、貯留室及び培養室の各室に1つだけ開口部を設ける場合には、各室に培地の液体や細胞を含む液体等を流入させる際に空気を残存させずに各室を培地で満たすことが困難である。
ここで、図3は、実施形態の細胞培養容器の変形例の要部を示す図であって、図2に示される断面に対応する断面を示す概略断面図である。図3に示すように、本例の細胞培養容器1の貯留室20は、ポート61、62(開口部)とは別に空気抜き用のポート63(開口部)を有していてもよい。同様に、培養室10は、ポート51、52(開口部)とは別に空気抜き用のポート53(開口部)を有していてもよい。
貯留室又は培養室は、流体を外部から流入可能な複数の開口部及び流体を外部に流出可能な複数の開口部を有していてもよい。この場合には、貯留室又は培養室は、各開口部に設けられた開閉機構をさらに備えていてもよい。これにより、異なる複数の培地供給元を準備し、貯留室又は培養室が有する複数の開口部に異なる複数の培地供給元をそれぞれ接続することにより、貯留室又は培養室に導入する培地の種類を連続的に切り替えることができ、貯留室又は培養室に複数種類の培地を流入させ混合することで導入する培地の成分を調整することができる。無論、貯留室又は培養室の一つの開口部に接続し、当該開口部の反対側を分岐させ複数の培地供給元にそれぞれ接続する流路を配管等で構築してもよい。この場合にも、同様に、培地の種類を連続的な切り替えや培地の成分の調整が可能である。
ここで、図4は、実施形態の細胞培養容器の他の変形例の要部を示す概略断面図である。図4に示すように、本例の細胞培養容器1は、筐体5の内部に細胞Cを培養する培養室10並びに流体をそれぞれ貯留する第1貯留室21及び第2貯留室22を有する三段構造でもよい。この場合には、細胞培養容器1は、培養室10及び第1貯留室21を区画し、所定の物質を選択的に透過する第1物質交換膜31と、培養室10及び第2貯留室22を区画し、所定の物質を選択的に透過する第2物質交換膜32と、第1貯留室21と外気を隔てる第1ガス交換膜41と、第2貯留室22と外気を隔てる第2ガス交換膜42と、をさらに備えている。培養室10は、側面側が筐体5により外気と隔てられ、上面側が第1物質交換膜31により第1貯留室21と隔てられ、下面側が第2物質交換膜32により第2貯留室22と隔てられている。第1貯留室21は、側面側が筐体5により外気と隔てられ、上面側が第1ガス交換膜41により外気と隔てられ、下面側が第1物質交換膜31により培養室10と隔てられている。第2貯留室22は、側面側が筐体5により外気と隔てられ、上面側が第2物質交換膜32により外気と隔てられ、下面側が第2ガス交換膜42により外気と隔てられている。そして、培養室10の側面の対向する2箇所にはポート51、52(流体を流入出可能な開口部)がそれぞれ設けられている。第1貯留室21の側面の対向する2箇所にはポート61、62(流体を流入出可能な開口部)がそれぞれ設けられている。第2貯留室22の側面の対向する2箇所にはポート61、62(流体を流入出可能な開口部)がそれぞれ設けられている。
細胞培養容器1がこのような三段構造である場合には、第1貯留室21及び第2貯留室22がそれぞれ第1物質交換膜31及び第2物質交換膜32を介して培養室10に隣接するので、物質交換の有効面積が増大し、より効率的に物質交換可能となる。例えば、第1物質交換膜31及び第2物質交換膜32が、同一範囲の低分子量の成分を透過し、同一範囲の高分子量のタンパク質成分を透過しないという同一の選択的透過性を有する場合において、第1貯留室21及び第2貯留室22の両方に同一の栄養培地を供給するときには、培養室10に栄養成分をより効率的に供給することができ、培養室10から老廃物をより効率的に排出することができる。一方、第1物質交換膜31及び第2物質交換膜32が、異なる範囲の分子量の成分を透過するという互いに異なる選択的透過性を有する場合には、複数種類の物質を選択的に交換する物質交換を行うことができる。例えば、第1物質交換膜31を栄養成分及び老廃物等の低分子量の成分を透過する透析膜とし、第2物質交換膜32をガス交換膜とする場合には、第1貯留室21に栄養培地を供給し、第2貯留室22に酸素濃度を調整したガスを供給することで、培養室10に酸素を効率的に供給しつつ、栄養成分及び老廃物を第1貯留室21及び培養室10の間で交換することができる。
4.細胞培養方法及び細胞生育状態の評価方法
細胞培養方法は、上記細胞培養容器を用い、上記培養室で上記細胞を培養する細胞培養方法であって、上記開口部を介して上記培養室及び上記貯留室に成分又は成分濃度が異なる培地を供給することを特徴とする。
培養室で培養する細胞は、接着細胞及び浮遊細胞のどちらでもよく、一種の細胞でもよいし、複数種の細胞でもよい。さらに、培養室で培養する細胞は、分散して存在する単一の細胞に限定されず、スフェロイドでもよいし、細胞及び細胞外マトリックスを含有する組織でもよい。
培養室で培養する細胞が接着細胞である場合には、培養室に培養足場を導入することが好ましい。培養足場は、細胞を接着又は包埋可能な構造体である。培養足場の材料としては、細胞を接着又は包埋可能な生体適合性材料であれば特に限定されないが、例えば、シリコーン、樹脂、ガラス、多糖類、又はタンパク質等から構成される多孔質体、ゲル、フィルム、ディスク、及びビーズ等が挙げられる。
培養室に細胞又は培養足場を導入する方法としては、例えば、図1に示すポート51、52のような開口部を介して培養室に細胞又は培養足場を流入させる方法等が挙げられる。培養室を組み立て式とする場合には、組立て前の培養室に予め細胞又は培養足場を導入した後に培養室を組み立てることにより、培養室に細胞又は培養足場を導入することができる。
培養室に導入する培地は、貯留室に供給する培地と成分又は成分濃度が異なるものであれば特に限定されないが、例えば、細胞の培養に必要なタンパク質成分などの培養成分を含む培養培地等が挙げられる。細胞の培養には同化又は異化の対象となる栄養成分の他に、例えば、少量で細胞の増殖や分化に影響する生理活性物質成分や培地環境を安定化させる成分等のようなタンパク質成分などの培養成分が必要である。生理活性物質成分としては、例えば、サイトカインやホルモン等の成長因子及び医薬品等が挙げられる。これらの細胞の培養に必要なタンパク質成分などの培養成分は、血清や精製タンパク等の添加又は培養中の細胞自身の分泌等により培地に含ませることができる。
貯留室に供給する培地は、培養室に供給する培地と成分又は成分濃度が異なるものであれば特に限定されないが、例えば、細胞が生育時に消費する栄養成分を含む栄養培地等が挙げられる。中でも、タンパク質成分の濃度が1%以下である栄養培地等が好ましい。栄養成分としては、例えば、グルコース等の糖質、アミノ酸、脂質、ペプチド、並びに核酸等が挙げられる。栄養培地としては、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、又はグルコース等を含む基本培地等が好ましい。
細胞培養方法としては、上記開口部を介して上記貯留室に連続的又は逐次的に上記培地を供給し、上記貯留室から上記開口部を介して連続的又は逐次的に上記培地を排出しながら、上記培養室で上記細胞を培養する方法が好ましい。これにより、細胞を連続培養することができる。この方法の中でも、上記貯留室の上記開口部又は当該開口部に接続する流路にサンプリングポート又は成分分析用センサーを設置した状態において、上記培養室で上記細胞を培養する方法が好ましい。特に、上記サンプリングポート又は上記成分分析用センサーを用い、上記培地に含まれるグルコース、乳酸、アンモニア、グルタミン、グルタミン酸、酸素、及び二酸化炭素(上記二酸化炭素は、炭酸、炭酸イオン、又は炭酸水素イオンを含む)の少なくとも一種の成分の濃度を連続的又は逐次的に測定しながら、上記培養室で上記細胞を培養する方法が好ましい。これにより、貯留室に供給される培地及び貯留室から排出される培地の成分を分析し培養室内の細胞数や細胞の代謝を推定することで、細胞生育状態を評価することができる。その上で、細胞生育状態の評価結果に基づき、フィードバック制御により、貯留室又は培養室に培地を供給する方法を制御することができる。
以下、本発明の細胞培養方法で効果が得られる根拠を理論的に説明する。以下では、細胞治療で最も注目されている細胞の一種であるhMSC(human mesenchymal stem cells)の高密度培養への本発明の細胞培養方法の適用可能性を検証した結果を詳述することで、その根拠を理論的に説明する。この適用可能性の検証では、hMSCの一般的な平面培養でのコンフルエント状態における細胞密度が1×10cells/cm程度であるため、細胞密度の到達目標をその10倍の1×10cells/cmとした。この適用可能性の検証は、物質交換膜として市販の透析膜Spectra/Por 7(MWCO:10kDa)を用い、グルコース及び乳酸についての透析膜の透析特性を調査することで行った。
グルコース及び乳酸についての透析膜の透析特性を調査するために、最初に、透析膜を袋状にしたもの(以下、「袋状透析膜」という)の内部を乳酸濃度(溶質濃度)が2.0g/Lの内部溶液で満たし、袋状透析膜の外部をグルコース濃度(溶質濃度)が4.5g/Lの外部溶液で満たし、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)におけるグルコース濃度及び乳酸濃度の経時変化を測定した。ここで、図5(a)は、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)におけるグルコース濃度の経時変化を示すグラフであり、図5(b)は、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)における乳酸濃度の経時変化を示すグラフである。
一般に、透析膜を介した物質の移動は、拡散に由来するものである。そのため、透析膜を隔てて接触している2種類の溶液において、一方の溶液及び他方の溶液の間の透析膜を介した溶質の移動速度d(C)/dt〔ここで、Cは上記一方の溶液の溶質濃度であり、Vは上記一方の溶液の体積である〕は、上記一方の溶液及び上記他方の溶液の溶質濃度の差ΔC〔ここで、ΔC=C−Cであり、Cは上記他方の溶液の溶質濃度である〕、透析膜の面積Smembrane、及び透析膜固有の透過係数kに比例し、下記式(1)の微分方程式で表記することができる。
Figure 2021185877
これに対し、図5(a)に示すグルコース濃度の経時変化では、袋状透析膜を隔てて接触している袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)におけるグルコース濃度(溶質濃度)の差ΔCglucが、指数関数的な時間依存性を示している。同様に、図5(b)に示す乳酸濃度の経時変化では、袋状透析膜を隔てて接触している袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)における乳酸濃度(溶質濃度)の差ΔClacが、指数関数的な時間依存性を示している。そのため、袋状透析膜の内部(内部溶液)に着目した際に、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)の間の透析膜を介したグルコース(溶質)の移動速度d(Cglucinside)/dt〔ここで、Cglucは袋状透析膜の内部(内部溶液)におけるグルコース濃度であり、Vinsideは袋状透析膜の内部(内部溶液)の体積である〕が、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)におけるグルコース濃度の差ΔCglucに比例すること、並びに袋状透析膜の内部(内部溶液)及び外部(外部溶液)の間の透析膜を介した乳酸(溶質)の移動速度d(Clacinside)/dt〔ここで、Clacは袋状透析膜の内部(内部溶液)における乳酸濃度であり、Vinsideは袋状透析膜の内部(内部溶液)の体積である〕が、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)における乳酸濃度の差ΔClacに比例することが示唆されている。そして、グルコース濃度及び乳酸濃度は袋状透析膜の外部(外部溶液)でほぼ一定であり、袋状透析膜の内部(内部溶液)及び外部(外部溶液)の体積はほぼ一定である。そのため、袋状透析膜の外部(外部溶液)及び内部(内部溶液)の間の透析膜を介したグルコース(溶質)の移動速度d(Cglucinside)/dtをグルコースの透過係数をkglucとして上記式(1)で表記する場合には、下記式(2)で近似して表記することができる。同様に、袋状透析膜の内部(内部溶液)及び外部(外部溶液)の間の透析膜を介した乳酸(溶質)の移動速度d(Clacinside)/dtを乳酸の透過係数をklacとして上記式(1)で表記する場合には、下記式(3)で近似して表記することができる。
Figure 2021185877
Figure 2021185877
上記式(2)に従って、図5(a)に示すグルコース濃度の経時変化について、グルコース濃度の差ΔCglucの時間依存性を指数関数でフィッティングすることにより、グルコースの透過係数kglucは2.2×10−4L/cm/hと算出される。同様に、上記式(3)に従って、図5(b)に示す乳酸濃度の経時変化について、乳酸濃度の濃度差ΔClacの時間依存性を指数関数でフィッティングすることにより、乳酸の透過係数klacは2.6×10−4L/cm/hと算出される。
続いて、これらの透過係数を用い到達細胞数Nmaxを算出し、到達細胞密度Nmax/Sculture及び到達乳酸濃度Clacを推定する。
透析培養方式における培養終期では、一定濃度のグルコースを含み乳酸を含まない透析液(上記外部溶液に相当)が、グルコースが枯渇し一定濃度の乳酸を含む培養液(上記内部溶液に相当)と透析膜を隔てて接触している状態において、透析液から培養液への透析膜を介したグルコースの供給速度がhMSCによるグルコース消費量と釣り合った状態になり、かつ培養液から透析液への透析膜を介した乳酸の排出速度がhMSCによる乳酸産生量と釣り合った状態になると考えられる。そのため、rglucをhMSCのグルコース消費速度、rlacをhMSCの乳酸産生速度、透析液のグルコース濃度をC、培養液の到達乳酸濃度をCとすると、下記式(4)及び(5)が成立すると考えられる。
Figure 2021185877
Figure 2021185877
ここで、単純のため、円筒状の細胞室を用いる条件、すなわち透析膜の面積Smembrane及び培養室の細胞接地面積Scultureが同一になる条件を想定し、透析液のグルコース濃度Cを一般的に培養で用いられる1.0g/L(低グルコース培地)と仮定する。また、hMSCは一般的に3〜7×10−11g/cell/h程度の速度でグルコースを消費すると知られている。そこで、hMSCのグルコース消費速度rglucを多めに見積もって8×10−11g/cell/hとする。さらに、完全嫌気呼吸を仮定することで、hMSCの乳酸産生速度rlacをhMSCのグルコース消費速度rglucと同一とする。以上の設定により、上記式(4)から到達細胞密度Nmax/Scultureは2.8×10cells/cmと推定される。この値は、細胞密度の到達目標(1×10cells/cm)を超える値である。さらに、上記式(5)から培養液の到達乳酸濃度Cは0.85g/Lと推定される。よって、培養液の乳酸濃度が1.0g/LであるとするとhMSCを培養可能であることからすれば、本調査での透析膜Spectra/Por 7(MWCO:10kDa)を用いた透析により、hMSCを培養するのに十分なだけ乳酸を除去することができると考えられる。
従って、本発明の細胞培養方法の適用により、従来の一般的な平面培養の10倍以上の密度でhMSCを培養可能であると考えられる。なお、上述した本発明の細胞培養方法の適用可能性の検証では、hMSCの高密度培養への適用可能性を検証したが、本発明の細胞培養方法の適用対象は、hMSCの高密度培養に限定されず、本発明の細胞培養方法は、例えば、他の種類の細胞の培養や増殖以外の分化や維持等を目的とする培養にも適用可能である。
以下、実施例及び参考例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施例及び参考例に限定されるものではない。
[実施例1]
本発明の細胞培養容器を設計した。図6は、実施例1で設計した細胞培養容器を示す概略断面図である。以下、図6に示す細胞培養容器1の設計に基づく作製方法について、具体的に説明する。
細胞培養容器1の作製において筐体5を作製する場合には、例えば、医療用樹脂(MED610)を材料として用い3Dプリンタを使用する方法、又はステンレス(SUS316)を切削加工する方法を用いる。また、筐体5の上部分である筐体上部5U及び筐体5の下部分である筐体下部5Lを別々に作製する。筐体上部5Uの上面に設けられた開口部5Ua及び筐体下部5Lの下面に設けられた開口部5Laにはそれらを塞ぐようにガス交換膜40を設置する。そして、筐体上部5U及び筐体下部5Lをそれらの間に物質交換膜30を挟みこむように組み立てることで細胞培養容器1を作製する。
細胞培養容器1の作製方法では、筐体下部5Lの内部の空間である培養室10内に三次元の培養足場80を予め導入した状態で細胞培養容器1を組み立てることができる。そのため、培養足場80は、培養室10内に収まるサイズのものであれば特に限定されず、形状及び性状を適宜選択することができる。無論、培養足場80が流動性や分散性が高い培養足場である場合には、ポート51、52を使用することにより、培養足場80を培養室10内に流体として流し込む方法を用いることができる。細胞培養容器1では、培養室10内に導入した培養足場80の構造により、簡便に三次元の培養足場を用いた細胞培養を行うことができる。
筐体上部5Uを作製する場合には、筐体上部5Uの内部の空間である貯留室20内に流路方向と垂直な方向に沿って仕切り板24を設置する。このような筐体上部5Uの構造により、培地をポート61から貯留室20内に流入させる場合に、培地を貯留室20の下面に設置された物質交換膜30の近傍に流すことができる。これにより、貯留室20及び培養室10の間で効率よく物質交換を行うことができる。
筐体下部5Lを作製する場合には、培養室10内の上側に空気貯め16を形成する。この構造により、培地を培養室10内に供給する場合に空気が残存したとしても、空気を空気貯め16に貯めることにより、物質交換膜30に気泡が付くことによる物質交換の効率の低下を抑制することができる。
以下、細胞培養容器1を用いる細胞培養方法の一例について説明する。
本例の細胞培養方法では、まず、細胞培養容器1の組み立ての前に予め筐体上部5U及び筐体下部5L並びにガス交換膜40及び物質交換膜30を滅菌する。そして、細胞培養容器1の組み立て及び細胞播種を無菌環境下で実施する。
次に、筐体上部5Uのポート61、62及び筐体下部5Lのポート51、52にチューブを接続し、ルアーロックコネクタ又はクランプ等で密閉する。また、三次元の培養足場80を筐体下部5Lの培養室10内に開口部5Lbから導入する。この際、同時に細胞及び培養培地を培養室10内に導入してもよい。
次に、筐体下部5Lの開口部5Lbに物質交換膜30に設置し、筐体上部5U及び筐体下部5Lをそれらの間に物質交換膜30を挟み込むように組み立てることで細胞培養容器1を作製する。筐体上部5U及び筐体下部5Lは、筐体上部5U及び筐体下部5Lの組み立て時に開口部5Ub及び開口部5Lbの周囲の壁面が密着する寸法となっている。
次に、細胞培養容器1の組み立て後、筐体上部5Uのポート61、62を開放し、細胞の生育時に消費する栄養成分を含んだ培地である栄養培地を導入する。その後、筐体上部5Uのポート61、62を閉鎖する。
次に、筐体下部5Lのポート51、52を開放し、細胞及び細胞の培養に必要なタンパク質成分等を含有した培地である培養培地を導入する。その際、気泡が物質交換膜30に接して残存した場合、細胞培養容器1の全体を傾けることで、気泡を空気貯め16へ逃がす。その後、筐体下部5Lのポート51、52を閉鎖する。必要であれば、筐体下部5Lのポート51を流入路、筐体下部5Lのポート52を流出路として培養培地の流路を構築することにより、培養培地を灌流してもよい。この段階で、細胞培養容器1をインキュベータ内に設置することで細胞を培養してもよい。
次に、筐体上部5Uのポート61を流入路、筐体上部5Uのポート62を流出路として栄養培地の流路を構築する。そして、筐体上部5Uのポート61を貯留室20内へ新鮮な栄養培地を供給する栄養培地供給源に接続する。また、筐体上部5Uのポート62を使用済みの栄養培地を貯留するタンクに接続する。次に、細胞培養容器1をインキュベータ内に設置することで細胞を培養する。
本例の細胞培養方法では、細胞培養時において、貯留室20への新鮮な栄養培地の連続供給又は逐次供給を行うことができる。貯留室20へ供給する栄養培地は、栄養成分等の低分子量の成分が含まれていればよい。低分子量の成分としては、例えば、糖質、アミノ酸、脂質、ペプチド、及び核酸等の栄養成分、塩、並びに緩衝剤等が挙げられる。これらの成分は、物質交換膜30を介して、拡散により貯留室20から培養室10へ供給される。また、細胞培養時に発生する老廃物は、培養室10から貯留室20へ拡散し回収されることで除去される。老廃物は、細胞の代謝産物であり、例えば、乳酸等である。従って、細胞培養容器1では、貯留室20へ供給する栄養培地がタンパク質成分を添加していない培地であったとしても、細胞培養を行うことができる。
本例の細胞培養方法では、細胞培養後に細胞を回収する。具体的には、まず、筐体下部5Lのポート51、52を開放し、洗浄液を導入することで培地を除去する。次に、細胞剥離酵素を導入し、作用させることで培養足場80から細胞を剥離させる。次に、細胞回収用の培地をポート51から流入させ、ポート52からの流出液を回収し、細胞を回収できる。他の方法として、無菌環境下で、細胞培養容器1を筐体上部5U及び筐体下部5L等に分解し、培養室10から培養足場80ごと細胞を回収する方法を用いることができる。この方法の場合、単一細胞での回収に限定されず、組織様の構造体として細胞を回収することも可能である。
[参考例1]
本発明に適用される透析方式により、ポリスチレン製多孔質担体(3D Biotek社製PS304012−6)を培養足場としてhMSCを培養する場合における血清消費量の試算を示す。
血清消費量を試算する際には、予め、上記多孔質担体にhMSCを8.0×10cells播種したときにhMSCがコンフルエント相当の1.9×10cellsになるまでに必要とされるグルコース量を、実験により2.7mgと求めた。そして、これを血清消費量の試算でhMSCの培養に必要なグルコース量として用いた。さらに、血清消費量の試算では、栄養培地及び培養培地として、グルコースを含み血清成分を含まない基本培地及び上記基本培地に血清を10体積%添加した培地をそれぞれ想定し、栄養培地及び培養培地のグルコース濃度を一般的に培養で用いられる1.0g/L(低グルコース培地)と仮定する。これらを前提として、hMSCの培養に必要な栄養培地及び培養培地の合計量が2.7mLと試算される。
その上で、透析方式により、上記多孔質担体を培養足場としてhMSCを培養する方法として、培養培地を多孔質担体が12ウェルプレートのウェルで完全に浸漬される1mLの初期の培地としてだけ使用し、培養培地に透析膜を介して栄養培地を接触させることでグルコースを供給することで良好な培養環境を維持する方法を想定する。これにより、上記多孔質担体を培養足場としてhMSCを培養する場合における血清消費量が0.1mLと試算される。
[参考例2]
従来の培地交換方式により、ポリスチレン製多孔質担体(3D Biotek社製PS304012−6)を培養足場としてhMSCを培養する場合における血清消費量の試算を示す。この血清消費量の試算で用いるhMSCの培養に必要なグルコース量、この血清消費量の試算で想定する栄養培地及び培養培地、並びにこの血清消費量の試算で仮定する栄養培地及び培養培地のグルコース濃度は、参考例1と同一である。そのため、参考例1と同様に、hMSCの培養に必要な栄養培地及び培養培地の合計量が2.7mLと試算される。
その上で、培地交換方式により、上記多孔質担体を培養足場としてhMSCを培養する方法として、培養培地を、多孔質担体を12ウェルプレートのウェルで完全に浸漬可能な1mLの培地として使用し、当該培地の全量を定期的に未使用の培養培地で交換することで良好な培養環境を維持する方法を想定する。これにより、上記多孔質担体を培養足場としてhMSCを培養する場合における血清量が0.3mLと試算される。なお、培地交換方式により、上記多孔質担体を培養足場としてhMSCを培養する場合における血清消費量の最小量は、0.27mLと試算可能である。
本発明は、上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含され、様々な変形例が含む。例えば、上記実施形態及び上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態及び実施例の構成の一部を他の実施形態及び実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態及び実施例の構成に他の実施形態及び実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態及び各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1 細胞培養容器
5 筐体
5U 筐体上部
5Ua 開口部
5Ub 開口部
5L 筐体下部
5La 開口部
5Lb 開口部
10 培養室
16 空気貯め
20 貯留室
21 第1貯留室
22 第2貯留室
24 仕切り板
30 物質交換膜
31 第1物質交換膜
32 第2物質交換膜
40 ガス交換膜
41 第1ガス交換膜
42 第2ガス交換膜
51、52 ポート
53 空気抜き用のポート
61、62 ポート
63 空気抜き用のポート
80 培養足場
C 細胞

Claims (14)

  1. 細胞を培養する培養室と、
    流体を貯留する貯留室と、
    前記培養室及び前記貯留室を区画し、前記細胞を透過せず所定の物質を選択的に透過する物質交換膜と、
    前記培養室又は前記貯留室と外部を隔てるガス交換膜と、
    を備え、
    前記培養室及び前記貯留室はそれぞれ流体を流入出可能な開口部を有することを特徴とする細胞培養容器。
  2. 前記物質交換膜の分画分子量は500以上60000以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養容器。
  3. 前記物質交換膜の分画分子量は1000以上15000以下の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の細胞培養容器。
  4. 前記ガス交換膜は、シリコーン、ポリトリメチルシリルプロピン、含フッ素アクリル樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルペンテン、及び天然ゴムのいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞培養容器。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞培養容器を用い、前記培養室で前記細胞を培養する細胞培養方法であって、前記開口部を介して前記培養室及び前記貯留室に成分又は成分濃度が異なる培地を供給することを特徴とする細胞培養方法。
  6. 前記培養室及び前記貯留室にそれぞれ生理活性物質を含む培養培地及び栄養培地を供給することを特徴とする請求項5に記載の細胞培養方法。
  7. 前記生理活性物質は成長因子であることを特徴とする請求項6に記載の細胞培養方法。
  8. 前記培養室に前記細胞を接着又は包埋可能な構造体である培養足場を導入し、前記培養足場で前記細胞を培養することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の細胞培養方法。
  9. 前記開口部を介して前記貯留室に連続的又は逐次的に前記培地を供給し、前記貯留室から前記開口部を介して連続的又は逐次的に前記培地を排出しながら、前記培養室で前記細胞を培養することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の細胞培養方法。
  10. 前記貯留室の前記開口部又は当該開口部に接続する流路にサンプリングポート又は成分分析用センサーを設置した状態において、前記培養室で前記細胞を培養することを特徴とする請求項9に記載の細胞培養方法。
  11. 前記サンプリングポート又は前記成分分析用センサーを用い、前記培地に含まれるグルコース、乳酸、アンモニア、グルタミン、グルタミン酸、酸素、及び二酸化炭素(前記二酸化炭素は、炭酸、炭酸イオン、又は炭酸水素イオンを含む)の少なくとも一種の成分の濃度を連続的又は逐次的に測定しながら、前記培養室で前記細胞を培養することを特徴とする請求項10に記載の細胞培養方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の細胞培養方法で前記細胞を培養する過程において、前記細胞の生育状態を評価する細胞生育状態の評価方法であって、
    前記貯留室に供給される前記培地及び前記貯留室から排出される前記培地のグルコース濃度の差を測定し、当該グルコース濃度の差からグルコース消費速度を算出し、前記グルコース消費速度から前記培養室内の細胞数を推定することを特徴とする細胞生育状態の評価方法。
  13. さらに前記貯留室から排出される前記培地の乳酸濃度を測定し、当該乳酸濃度から乳酸産生速度を算出し、前記グルコース消費速度及び前記乳酸産生速度から前記培養室内の細胞の代謝挙動を推定することを特徴とする請求項12に記載の細胞生育状態の評価方法。
  14. 請求項12又は13に記載の細胞生育状態の評価方法を用い、前記細胞の生育状態を評価し、前記細胞の生育状態の評価結果に基づき前記貯留室又は前記培養室に前記培地を供給する方法を制御することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の細胞培養方法。
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