JP2021185022A - 3次元焼成物の製作方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】土質材料を用いて、高品質な3次元焼成物を製作することの可能な、3次元焼成物の製作方法を提供する。【解決手段】土質材料を撒き出して粒子層11を形成したのち、照射経路20に沿って粒子層の表面にレーザー光を照射し、粒子層を溶融凝固する溶融凝固工程を、粒子層を積層しつつ繰り返す3次元焼成物の製作方法において、照射経路は、レーザー光の進行方向を示す照射ラインPを備え、先行の照射ラインPに対して、後行の照射ラインPを幅方向にずらしながら略平行に重ね、粒子層における3次元焼成物となる領域Eが、レーザー光により複数回照射されるように設定され、レーザー光を、先行の前記照射ラインPに沿って照射させたのち、後行の前記照射ラインPに沿って照射させるまでの間には、前記粒子層の表面から深度方向への伝熱期間が設けられる。【選択図】図5

Description

本発明は、土質材料を素材とする3次元焼成物を得るための、3次元焼成物の製作方法に関する。
従来より、樹脂や金属等の粉末に熱源であるレーザーを照射して焼結させ、造形物を製作する粉末床溶融結合法(PBF)が知られている。粉末床溶融結合法は、粉末状の素材を薄く敷いて粉末層を形成したのち、粉末層の焼結予定箇所にレーザーを照射する工程を繰り返し実施することで、3次元の造形物を製作する方法である。
ところが、粉末床溶融結合法において熱源として用いるレーザーは、その照射径が小さく局所的に急加熱するものであるため、粉末層の表面に温度のばらつきを生じやすい。このため、例えば特許文献1では、レーザーの照射による到達温度が一定となるような粉末層へのレーザーの照射パスを設定し、照射位置を制御している。
具体的には、レーザーの照射径の2倍以上のスキャンピッチで第1照射パスを設定するとともに、このスキャンピッチを1/Nとなる距離だけずらした、第1照射パスの間を補完する第2照射パス〜第N照射パスを設定する。そして、第1照射パスから順にレーザー照射を行うが、レーザー照射を行う際、粉末層が先行のレーザー照射による温度上昇歴を引きずって場合には、レーザー光を照射しない休止期間を設けるなどして、到達温度を一定にしている。
特開2019−151050号公報
特許文献1の方法は、粒径が一様で小径(例えば、100μm程度)な造粒物を粉末層を構成する素材として用いる場合に、適した方法である。しかし、この方法を例えば砂を素材とする砂層に適用しようとすると、様々な課題が生じる。
具体的には、砂の粒径は、最大2mm程度と大きく、また一様でないため、砂を撒き出して形成した砂層は、部分的に層厚が大きくなるなど一定の厚さとはならない。また、砂層は、粉末床溶融結合法の素材として一般に用いられている金属や樹脂よりなる粉末層と比較して、熱伝導率は小さく、吸収係数は大きい。なお、吸収係数とは、放射線を照射した際、物質の中を進むときの単位長さ当たりに吸収される割合をいう。
このため、砂層の表面に到達する到達温度を一定にしても、砂層全体の温度が一様とはなりにくいだけでなく、下面まで加熱されず溶融されない事態が生じやすい。これに対応するべく、レーザーの出力を上げることも考えられるが、これを用いて急加熱すると、粒径の小さいものや、砂に含まれる鉱物のうち沸点の低いものは揮発し、品質の高い造形物を製作することが困難となる。
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、土質材料を用いて、高品質な3次元焼成物を製作することの可能な、3次元焼成物の製作方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明の3次元焼成物の製作方法は、土質材料を撒き出して粒子層を形成したのち、照射経路に沿って前記粒子層の表面にレーザー光を照射し、前記粒子層を溶融凝固する溶融凝固工程を、前記粒子層を積層しつつ繰り返す3次元焼成物の製作方法において、前記照射経路は、前記レーザー光の進行方向を示す照射ラインを備え、先行の前記照射ラインに対して、後行の前記照射ラインを幅方向にずらしながら略平行に重ね、前記粒子層における3次元焼成物となる領域が、前記レーザー光により複数回照射されるように設定され、前記レーザー光を、先行の前記照射ラインに沿って照射させたのち、後行の前記照射ラインに沿って照射させるまでの間には、前記粒子層の表面から深度方向への伝熱期間が設けられることを特徴とする。
また、本発明の3次元焼成物の製作方法は、前記3次元焼成物となる領域を前記レーザー光で照射する回数を、前記レーザー光を前記照射ラインに沿って、1回照射したことによる前記粒子層の上昇温度に基づいて決定することを特徴とする。
本発明の3次元焼成物の製作方法によれば、レーザー光を、先行の照射ラインに沿って照射させたのち、後行の照射ラインに沿って照射させるまでの間に、粒子層の表面から深度方向への伝熱期間を設ける。これにより、先行の照射ラインに沿ってレーザー光を照射したことにより供給された熱が、粒子層の深度方向に伝熱されたのち、後行の照射ラインに沿ってレーザー光を照射する動作が繰り返される。
したがって、一般に、粉末床溶融結合法(PBF)の素材として用いられる樹脂や金属等の粉末と比較して、熱伝導率が低く粒度分布のある土質材料よりなる粒子層に対して、表面に熱を集中させることなく底面に至るまで一様に加熱し、温度上昇させることができる。
このため、粒子層を底面に至るまで溶融凝固させて、高品質な3次元焼成物を製作することが可能となる。また、粒子層を予熱する必要がなく、成形に型枠も不要なため、レーザー光を照射するのみの簡略な構成で、所望の形状を有する3次元焼成物を容易に製作することが可能となる。
さらに、レーザー光を照射ラインに沿って1回照射したことによる粒子層の上昇温度に基づいて、粒子層における3次元焼成物となる領域を照射する回数を決定する。これにより、粒子層を溶融するために必要なエネルギー密度の熱を、無駄なくかつ効率よく粒子層へ供給しつつ、短期間で3次元焼成物を製作することが可能となる。
本発明によれば、粒子層にレーザー光を照射する期間と、粒子層の伝熱期間とを交互に設けることから、これまで粉末床溶融結合法(PBF)の素材として取り扱いが困難であると見做されていた、土質材料よりなる粒子層を、上面から下面に至るまで一様に加熱して温度上昇させて溶融凝固し、高品質な3次元焼成物を製作することが可能となる。
本発明の実施の形態における粉末焼結積層法の概略を示す図である。 本発明の実施の形態における3次元焼成物の製作に用いる装置を示す図である。 本発明の実施の形態における3次元焼成物の製作方法(その1)を示す図である。 本発明の実施の形態における素材となる砂の粒度分布を示す図である。 本発明の実施の形態における3次元焼成物の製作方法(その2)を示す図である。 本発明の実施の形態における3次元焼成物の製作方法(その3)を示す図である。 本発明の実施の形態における3次元焼成物の製作方法(その4)を示す図である。 本発明の実施の形態における3次元焼成物を示す図である。 本発明の実施の形態における3次元焼成物の一軸圧縮強度試験の試験結果を示す図である。
本発明の3次元焼成物の製作方法は、土質材料を粉末床溶融結合法に基づいて溶融凝固させ、高品質な3次元焼成物を製作するものである。以下に、図1〜図9を参照しつつ、3次元焼成物の製作方法の説明をするが、これに先立ち、粉末床溶融結合法についてその概略を説明する。
≪粉末床溶融結合法(PBF)≫
粉末床溶融結合法は、粉末状の素材に熱源となるレーザー光Lを照射して焼結し、立体的な造形物を作成する方法である。具体的には、図1(a)で示すように、チャンバーC内で上下動自在なステージS上に、粉末状の素材を所定の層厚で敷き均して1層目の粉末層31を形成する。次に、1層目の粉末層31に給熱した状態で、図1(b)で示すように、照射経路20に沿ってレーザー光Lを照射し、1層目の粉末層31の所望の領域を溶融凝固する。
こののち、図1(c)で示すように、1層目の粉末層31上に粉末状の素材を敷き均して2層目の粉末層32を作成する。上記と同様の手順で2層目の粉末層32を溶融凝固するとともに、1層目と2層目の粉末層31、32を結合する。この作業を、製作しようとする造形物の高さに到達するまで繰り返す。
上記のレーザー光Lによる照射は、図2で示すように、レーザー発生装置41と、スキャナー42を用いて行う。レーザー発生装置41は、粉末層30に向けて熱源となるレーザー光Lを照射するもので、いわゆるファイバーレーザーを採用している。また、スキャナー42は、レーザー光Lを粉末層30上に設定した照射経路20の沿って照射させるもので、いわゆるガルバノスキャナを採用している。
≪3次元焼成物の製作方法≫
上記の粉末床溶融結合法に基づいて、粉末層30に代えて粒度分布のある土質材料を敷き均した粒子層10を溶融凝固し、図8で示すような、3次元焼成物50を製作する手順を、以下に、図3〜図8を参照しつつ、その詳細を説明する。
なお、粒子層10の予熱は不要であり、これに伴い粒子層10を保温するチャンバーCも不要となる。また、製作予定の3次元焼成物50を製作するにあたり、1層目の粒子層11にレーザー光Lを照射する照射予定領域Eは、図3(a)で示すように、X方向とY方向とが直交する矩形である場合を事例とする。
さらに、この照射予定領域Eに対してレーザー光Lを照射する際の照射経路20は、図3(b)で示すように、X方向を往復しながらY方向に進行させる経路としてもよいし、図3(c)で示すように、X方向の1方向への移動を順次繰り返しながらY方向に進行させる経路としてもよい。本実施の形態では、図3(c)で示すように、レーザー光LをX方向の1方向へ移動させる場合を事例に挙げる。
また、溶融凝固する素材は、粒度分布のある土質材料であって、例えば、砂、礫、礫混じりの砂、砂混じりの礫等いずれでも採用可能である。なお、粒度分布のある土質材料は、粒径2mm程度以下であることが好ましい。本実施の形態では、図4の粒度分布で示すような、破線で囲まれた領域もしくはこれに沿うように分布するものを目安とし、最大粒径が約1.75mmで、石英の占める割合が最も大きい砂を事例に挙げる。
<1層目の粒子層11の溶融凝固工程>
まず、図5(a)で示すように、ステージS上に溶融凝固する素材である砂を撒き出て、1層目の粒子層11を形成する。このとき、1層目の粒子層11は、その積層ピッチhを砂の最大粒径に設定する。したがって、本実施の形態では、積層ピッチh=1.75mmとなる。次に、前述した照射経路20を照射予定領域E内に設定し、これに沿って1層目の粒子層11の表面に照射径が1mmのレーザー光を照射する。
照射経路20を設定するにあたり、まず、以下の事項を考慮し、レーザー光Lの照射方式を選択する。つまり、1層目の粒子層11を構成する砂が、粉末床溶融結合法の素材として広く用いられる樹脂や金属等の粉末と比較して、粒径が大きくまた一様ではないこと、及び熱伝導率が低いことを考慮する。
粒径が大きく熱伝導率の低い砂を溶融するには、高いエネルギー密度の熱を供給する必要があるため、ワンパス方式(1か所あたり1回のみの照射)を採用すると、1層目の粒子層11に対して高出力のレーザー光Lを照射する必要が生じる。ところが、このような方法を採用すると、1層目の粒子層11を形成する砂のうち、粒径の大きいものはその上部が、また、粒径の小さいものは全体が揮発する恐れがある。
そこで、1層目の粒子層11に設定した照射予定領域Eを、レーザー出力P=200w程度のレーザー光Lでマルチパス方式により照射し、溶融凝固する方法を採用する。マルチパス方式とは、図5(b)で示すように、レーザー光Lの照射径に相当する幅を有し、X方向に延在する照射ラインPを幅方向(Y方向)にズレ量Aだけずらしながら重ねていくことで、1層目の粒子層11における同じ位置に、レーザー光Lを複数回照射させる方式である。
また、マルチパス方式を採用するにあたり、1層目の粒子層11における同じ領域に対してレーザー光Lを照射するごとに、1層目の粒子層11の伝熱期間を設ける。伝熱期間は、1層目の粒子層11の表面にレーザー光Lを照射することにより供給した熱が、底面に至るまでに要する時間を確保することが好ましく、照射前の温度まで低下しない期間を適宜設定する。
これにより、1層目の粒子層11には、表面に熱が供給される期間と、供給された熱を1層目の粒子層11の底面まで伝導させ、1層目の粒子層11全体の温度を一様に上昇させる期間とが、交互に設けられることとなる。
そして、上記のレーザー光Lの照射経路20は、X方向に延在する複数の照射ラインPのうち、先行と後行の照射ラインPにおける、照射幅方向(Y方向)のズレ量Aを決定することにより、設定することができる。
<ズレ量Aの算定方法>
マルチパス方式により1層目の粒子層11の表面を、レーザー光Lで照射する際、X方向に延在する先行と後行の照射ラインPにおける幅方向(Y方向)のズレ量Aの決定方法を、以下に説明する。
まず、1層目の粒子層11に対する1回の照射により付与可能なエネルギー密度Edを、下記の(1)式に基づいて算定する。走査速度v=1000m/sec、レーザー出力P=200Wと仮定し、走査ピッチw=1mm、積層ピッチh=1.75mmを代入すると、照射1回あたりのエネルギー密度Ed=0.114J/mm3となる。
Ed=P/(w×h×v) ・・ ・・・・・・・・・・・・・・(1)
Ed:エネルギー密度(J/mm3
P :レーザー出力(W)
w :走査ピッチ(照射径:mm)
h :積層ピッチ(mm)
v :走査速度(mm/sec)
次に、照射1回あたりの1層目の粒子層11の上昇温度ΔTを、以下の(2)式に基づいて算定する。エネルギー密度Ed=0.114J/mm3、石英の材料比熱γ=0.71及び材料密度d=2.65×10-3g/mm3を代入すると、上昇温度ΔT=61℃となる。
ΔT=Ed/(γ×d) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
Ed:エネルギー密度(J/mm3
γ :材料比熱(J/gK)
d :材料密度(g/mm3)
1層目の粒子層11を形成する砂は、前述したように石英を多く含んでおり、石英の融点は1713℃で沸点は2230℃である。そこで、1層目の粒子層11において同じ領域を伝熱期間を挟みながら繰り返し照射した場合に、1713〜2230℃の範囲まで温度上昇させるために、必要な照射回数を上昇温度ΔTに基づいて算定する。
融点を超えるには29回(1713℃/61℃)、また、沸点近傍まで上昇させるには37回(2230℃/61℃)程度、同じ場所を繰り返し照射する必要がある。このとき、1層目の粒子層11の温度が沸点を超えると、揮発が生じて製作後の3次元焼成物50の品質に影響を及ぼしかねない。したがって、1層目の粒子層11の温度を上昇させるべく照射回数を決定する際には、1層目の粒子層11に揮発が生じるような温度に到達しないよう調整する。
そこで、本実施の形態では、マルチパス方式を採用するにあたり安全を考慮し、同一個所を35回繰り返し照射することとした。そして、照射ラインPの幅は照射径Wに相当し、その大きさは上述したように1mmである。
したがって、走査速度v=1000m/sec、レーザー出力P=200Wと仮定した場合の、走査ピッチw=1mmのレーザー光Lの照射経路20は、レーザー光Lを照射予定領域EのX方向に移動させたのち、Y方向にズレ量A=0.028mm(1mm/35回)だけ移動させる。こののち再度、レーザー光Lを照射予定領域EのX方向に移動させる、といった動作を照射予定領域E全体を網羅するよう繰り返す経路となる。
上記の算定方法により決定した照射経路20に沿って、1層目の粒子層11に設けた照射予定領域Eにレーザー光Lを照射する。すると、図5(b)で示すように、照射予定領域Eにおける35回の照射が繰り返された位置以降のY方向の領域は、表面から底面に至るまで温度が、2135℃(61℃×35回)程度まで上昇した状態となる。
このように、1層目の粒子層11の溶融に必要なエネルギー密度Edの熱を複数回に分けて、伝熱期間を挟みつつ1層目の粒子層11の表面に供給する。すると、粒径が大きいとともに一様でなく、さらには熱伝導率が低い砂よりなる1層目の粒子層11に対して、表面に熱集中させることなく底面に至るまで一様に加熱し温度上昇させ、効率よく溶融凝固させることができる。
なお、3次元焼成物50を製作する範囲は、照射予定領域Eにおいてレーザー光Lが35回照射した範囲内に設定されている。また、1層目の粒子層11に対して1回の照射により付与するエネルギー密度Edは、レーザー出力P及び走査速度vを変更することで、適宜調整することが可能である。
<2層目の粒子層12の溶融凝固工程>
溶融凝固工程が終了したのちの1層目の粒子層11には、照射予定領域Eに図6(a)で示すような、砂どうしが凝結した凝固体111が形成された状態となる。したがって、これら凝固体111の隙間を埋めるようにして、図6(b)で示すように、1層目の粒子層11と同様に砂を敷き均し、2層目の粒子層12を形成する。
こののち、図7(a)で示すように、1層目の粒子層11の溶融凝固工程と同様の手順により、2層目の粒子層12にレーザー光Lを照射し、図7(b)で示すように、2層目の粒子層12を構成していた砂どうしが凝結した凝固体121を形成する。こうすると、1層目の粒子層11の凝固体111と2層目の粒子層12の凝固体121との間に多少の隙間が形成されるものの、両者は強固に溶融凝固される。
上記の工程を図8で示すように、所望の高さに到達するまで繰り返すことにより、砂を溶融凝結した3次元焼成物50を製作することができる。
上記の方法によれば、粒子層10に揮発を生じることなく、所望の密度を維持した高品質な3次元焼成物50を製作することが可能となる。また、粒子層10を予熱する必要がなく、成形に型枠も不要なため、レーザー光Lを照射するのみの簡略な構成で、所望の形状を有する3次元焼成物50を容易に製作することが可能となる。
さらに、レーザー光Lを照射ラインPに沿って1回照射したことによる粒子層10の上昇温度Δtに基づいて、粒子層10における3次元焼成物50となる領域を照射する回数を決定することから、粒子層10を溶融するために必要なエネルギー密度Edの熱を、無駄なくかつ効率よく供給しつつ、短期間で3次元焼成物50を製作することが可能となる。
<圧縮強度試験>
上述する製作方法に基づいて、砂を素材として製作した3次元焼結物50について、一軸圧縮強度試験を実施した結果を図9に示す。
実験には、溶融凝固する素材として石英を多く含む大沢石の粉砕物を採用した。大沢石の粉砕物は、あらかじめ粒度分布を調整し、3次元焼成物の製作方法で例示した粒子層10を構成する砂と同様で、図4で示すように、粒度が数μmから2mm程度の範囲であって破線で囲まれた領域近傍に沿うように分布している。また、一軸圧縮強度を測定する供試体の作成方法は、以下のとおりである。
大沢石の粉砕物を円形状に撒き出して粒子層を形成し、外周縁から中心に向けて、渦巻き状にレーザー光Lを照射する。この作業を複数層にわたって繰り返し、所定の高さを有する供試体を製作する。供試体は、図9(b)で示すように、層厚(積層ピッチh)、掃引速度(走査速度v)、レーザー出力P等を適宜変化させて、7種類作成し、それぞれ供試体密度と一軸圧縮強度を算定した。なお、レーザー光Lの掃引速度は、円形状に撒き出した粒子層に対して外周縁から中心に進むにつれて上昇させるよう調整し、粒子層の温度上昇が外縁部と中心部で一様になるようにした。
図9(b)について、各供試体の圧縮強度を見ると、例えば、供試体番号4では、圧縮強度が、JIS普通れんが2種(15N/mm2)と同程度の14.9N/mm2まで発現している様子がわかる。また、図9(a)を見ると、供試体密度と圧縮強度との間に相関が認められ、供試体の密度を高めることにより圧縮強度が高まる様子がわかる。
これにより、図8で示すような3次元焼成物50を製作するにあたり、粒子層10を形成する際の砂の撒き出し方法やレーザー光Lの照射条件(例えば、レーザー出力P、掃引速度(走査速度)v等)等を適宜調整し、凝固体111、121間の隙間をより小さくして密度を高めれば、圧縮強度はさらに向上するものと想定できる。
本発明の土質材料を用いた3次元焼成物の製作方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本実施の形態では素材として、石英を多く含む砂を採用したが、これに限定するものではない。土質材料であれば、砂、礫、礫混じりの砂、砂混じりの礫等いずれでもよく、また、含まれる鉱物も何ら限定されるものではない。また、レーザー光Lの照射経路20を設定する際のズレ量Aも、採用する砂の融点及び沸点等を考慮し適宜設定すればよい。
さらに、本実施の形態では、照射経路20を設定するに際し、照射ラインPがX方向へ直線状に延在する場合を事例に挙げたが、これに限定されるものではなく、円弧状もしくはらせん状等いずれに設定してもよい。
10 粒子層
11 1層目の粒子層
111 凝固体
12 2層目の粒子層
121 凝固体
20 照射経路
30 粉末層
31 1層目の粉末層
32 2層目の粉末層
41 レーザー発生装置
42 スキャナー
50 3次元焼成物
S ステージ
L レーザー光
P 照射ライン
C チャンバー
E 照射予定領域(3次元焼成物となる領域)

Claims (2)

  1. 土質材料を撒き出して粒子層を形成したのち、照射経路に沿って前記粒子層の表面にレーザー光を照射し、前記粒子層を溶融凝固する溶融凝固工程を、前記粒子層を積層しつつ繰り返す3次元焼成物の製作方法において、
    前記照射経路は、前記レーザー光の進行方向を示す照射ラインを備え、先行の前記照射ラインに対して、後行の前記照射ラインを幅方向にずらしながら略平行に重ね、前記粒子層における3次元焼成物となる領域が、前記レーザー光により複数回照射されるように設定され、
    前記レーザー光を、先行の前記照射ラインに沿って照射させたのち、後行の前記照射ラインに沿って照射させるまでの間には、前記粒子層の表面から深度方向への伝熱期間が設けられることを特徴とする3次元焼成物の製作方法。
  2. 請求項1に記載の3次元焼成物の製作方法であって、
    前記3次元焼成物となる領域を前記レーザー光で照射する回数を、
    前記レーザー光を前記照射ラインに沿って、1回照射したことによる前記粒子層の上昇温度に基づいて、決定することを特徴とする3次元焼成物の製作方法。
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