JP2021184366A - 放射性同位体製造装置および放射性同位体製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射性同位体を効率的に製造することのできる放射性同位体製造装置を提供する。【解決手段】ターゲットを収容するターゲット収容容器と、加速されたイオンを、前記ターゲット収容容器内に収容された前記ターゲットに照射する照射機構と、前記ターゲット収容容器に設けられ、上側に前記ターゲットを保持した状態で下側から加速されたイオンを照射可能とされた、ターゲット保持部と、前記ターゲットから気化した放射性同位体を不活性ガスにより輸送する輸送機構と、不活性ガスによって輸送された放射性同位体を回収する回収機構と、を有する。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、放射性同位体製造装置および放射性同位体製造方法に関する。
現在のがん治療では、外科手術、抗がん剤治療、陽子線や重粒子線を用いた放射線療法が用いられている。これらの治療法に加え、アルファ線を用いたがん治療が注目されている。これは、アルファ線の飛程が短いことから、アルファ線がん治療は標的となるがん細胞を選択的に攻撃することができ、正常細胞への影響が小さいことによる。
アルファ線を用いたがん治療の線源としては、アスタチン−211は半減期が短く、すみやかに安定核に崩壊することから、最も期待されている放射性同位体である。アスタチン−211は着目されている一方で半減期の短さ等の制約条件により、研究レベルの提供量しか流通しておらず、薬事法認可取得後の市場を支えるレベルの放射能量(数十GBq/日)単位の製造・供給は実現していない。
アスタチン−211の大量製造には、ビスマス−209に、加速した大電流のヘリウムイオン(アルファ線)を照射する必要がある。しかし、大電流のアルファ線をビスマス−209ターゲットに照射するとターゲットが融解し、生成したアスタチン−211が放出してしまう恐れがある。
アルファ線照射の後工程では、ターゲットを加熱し分離する乾式蒸留分離手法がよく用いられるが、アルファ線照射中のターゲットからアスタチン−211が放出されない条件で照射し、回収する方法が開発されてきた。しかし、溶解しない程度にアルファ線を照射するには、照射するアルファ線の電流量に制約がかかる。一度の照射電流が限られた状態では、短半減期のアスタチン−211を大容量発生させ分離回収することは困難である。
本発明の目的は、放射性同位体を効率的に製造することのできる放射性同位体製造装置および放射性同位体製造方法を提供することにある。
実施形態の放射性同位体製造装置は、ターゲットを収容するターゲット収容容器と、加速されたイオンを、前記ターゲット収容容器内に収容された前記ターゲットに照射する照射機構と、前記ターゲット収容容器に設けられ、上側に前記ターゲットを保持した状態で下側から加速されたイオンを照射可能とされた、ターゲット保持部と、前記ターゲットから気化した放射性同位体を不活性ガスにより輸送する輸送機構と、不活性ガスによって輸送された放射性同位体を回収する回収機構と、を有する。
本発明の放射性同位体製造装置および放射性同位体製造方法によれば、放射性同位体を効率的に製造することができる。
以下、実施形態に係る放射性同位体製造方法および放射性同位体製造装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る放射性同位体製造装置100の構成を模式的に示す図である。放射性同位体製造装置100は、気密構造の容器からなるターゲット収容容器110を有する。ターゲット収容容器110内にはターゲット112を保持するためのターゲット保持部111が設けられている。このターゲット保持部111は、上方開放型の皿状の形状を有し、ヘリウムイオン(アルファ線)121を照射するための照射窓を兼ねている。すなわち、ターゲット保持部111は、ターゲット収容容器110内と外部とを気密に閉塞するとともに、ターゲット収容容器110の外部から照射されるヘリウムイオン(アルファ線)121を透過させてターゲット112に照射可能となっている。
ターゲット保持部111の下方には、加速器を含む照射装置120が設けられている。この照射装置120によって加速されたヘリウムイオン(アルファ線)121が、照射窓を兼ねたターゲット保持部111を介して、ここに保持されたターゲット112に照射されるようになっている。
ターゲット保持部111には、ターゲット112を加熱するための加熱機構113が設けられている。加熱機構113は、例えば、通電により発熱する抵抗加熱ヒーターや、内部に加熱した流体を通流させる伝熱管等から構成することができる。また、ターゲット112の温度を検出し、加熱機構113の加熱状態を調整することによってターゲット112を所定の温度に制御する温度制御機構114が設けられている。
この温度制御機構114によって、ターゲット112がビスマスの場合、その温度は、例えば、アスタチンの融点以上の温度でビスマスの沸点以下の温度に制御される。また制御温度は、アスタチンの沸点以上の温度でビスマスの沸点以下の温度としてもよい。なお、アスタチンの融点は302℃、沸点は337℃であり、ビスマスの融点は271℃、沸点は1560℃である。この場合、ターゲット保持部111は、温度制御機構114による制御温度以上の耐熱性を有する必要がある。例えば、ターゲット保持部111をアルミニウムから構成すれば、アルミニウムの融点は、アスタチンの融点及びビスマスの融点より高い660℃であり、アルファ線照射に対しても核的に安定で2次生成物が生じない。
ターゲット収容容器110の一方の端部(図1中左側端部)には、不活性ガスからなるキャリアガスとして、例えばヘリウムガスを流すためのヘリウムガス供給配管130の一端が接続されている。ヘリウムガス供給配管130の他端は、ヘリウムガス供給源であるヘリウムガスタンク131に接続されている。また、ヘリウムガス供給配管130には、ヘリウムガス流量を測定するための流量計132が接続されている。
ターゲット収容容器110の一方の端部(図1中右側端部)には、採取配管140の一端が接続されている。この採取配管140の他端は、コールドトラップ141内に開口している。コールドトラップ141には排気配管142が接続されている。コールドトラップ141は、ターゲット収容容器110から採取配管140によって導出される放射性同位体を冷却することによって回収するためのものである。
また、ヘリウムガス供給配管130の流量計132の下流側には、ターゲット収容容器110内にエアロゾルを導入するためのエアロゾル導入配管150の一端が接続されている。エアロゾル導入配管150の他端は、エアロゾル発生装置151に接続されている。このエアロゾル発生装置151は、例えば、NaCl、KCl、等のエアロゾルを発生させる。エアロゾルは、例えば、粒径が1nm程度から1mm程度の粒子である。これらのエアロゾルに放射性同位体が付着することにより、放射性同位体の輸送中に放射性同位体が配管に付着することによって失われる量を低減することができる。
上記構成の放射性同位体製造装置100では、ターゲット収容容器110に設けられた図示しない開閉機構を開いてターゲット112をターゲット収容容器110内に導入し、ターゲット保持部111上に配置する。
そして、コールドトラップ141の下流側の排気配管142から排気しつつ、ヘリウムガスタンク131からヘリウムガス供給配管130を介してターゲット収容容器110内にヘリウムガスを供給し、ターゲット収容容器110内に所定流量のヘリウムガスの流れを形成する。この場合、ターゲット収容容器110内の圧力は、所定圧力に維持される。
この状態で、ターゲット112に、照射装置120から加速されたヘリウムイオン(アルファ線)121を照射するとともに、加熱機構113及び温度制御機構114によって、ターゲット112を所定温度、例えばアスタチンの融点である302℃以上の温度に加熱する。なお、この時、加速されたヘリウムイオン(アルファ線)121が照射されることによってもターゲット112の温度が上昇する。したがって、この照射による温度上昇でターゲット112の温度が所定温度以上に加熱される場合は、加熱機構113及び温度制御機構114による加熱は行わなくてもよい。
この時、同時にエアロゾル発生装置151において例えば、NaCl、KCl、等のエアロゾルを発生させ、エアロゾル導入配管150を介してヘリウムガス流路上にエアロゾルを供給し、ターゲット収容容器110内にエアロゾルを導入する。
ビスマス−209からなるターゲット112では、加速されたヘリウムイオン(アルファ線)121の照射によって、アスタチン−211が生成される。また、アスタチン−211の融点以上の温度にターゲット112の温度が制御されることによって、ビスマス−209及びアスタチン−211は、溶融した状態となる。
そして、溶融したビスマス−209及びアスタチン−211から気化したアスタチン−211がヘリウムガスの流れによって、採取配管140側に運ばれ、さらにコールドトラップ141内に流入して冷却されることによって、コールドトラップ141内に止まる。また、ヘリウムガスは、排気配管142からコールドトラップ141の外部に排気される。
このように、本実施形態によれば、ターゲット112に加速されたヘリウムイオン(アルファ線)121を照射しながら、生成されたアスタチン−211を回収することができる。したがって、途中でターゲット112を変えることなく、長時間(例えば20時間程度)連続的にアスタチン−211を生成、回収することができる。また、所定時間のヘリウムイオン(アルファ線)121の照射が終了した後においても、加熱機構113及び温度制御機構114によって、ターゲット112の温度を維持することによって、ターゲット112中に残存するアスタチン−211を回収することができる。
この時、エアロゾル発生装置151及びエアロゾル導入配管150によってターゲット収容容器110内に導入されたエアロゾルにアスタチン−211が付着することによって、輸送中にアスタチン−211が配管に付着することによって失われる量を低減することができる。なお、図1に示すように、エアロゾルのターゲット収容容器110内への導入位置は、キャリアガスであるヘリウムガスの流れ方向において、ターゲット112より上流側にすることが好ましい。このようにヘリウムガスの流れ方向において、ターゲット112の上流側からエアロゾルを導入することによって、下流側から導入する場合に比べてアスタチン−211の回収効率を高めることができる。
以上のように、本実施形態によれば、アスタチン−211等の放射性同位体を効率的に製造することができる。また、照射装置120から照射されるヘリウムイオン121が、ターゲット112の下部から供給されることにより、ビーム窓からターゲット112までの間の核反応上不要な物質を排除することが可能となり、ビームのロス(エネルギー・電流値)や副生成物生成量を低減することができる。
なお、照射装置120から照射されるヘリウムイオン(アルファ線)121のエネルギーは、ターゲット112の到達時に29MeV以下とすることが好ましい。照射されるアルファ線のエネルギーが、30MeV程度になると、アスタチン−211のみでなく、アスタチン−210が生成される。アスタチン−210はベータ崩壊してポロニウム−210になる。このように毒性の強い娘核種ポロニウム−210を持つアスタチン−210生成を抑制するために、ヘリウムイオン(アルファ線)121のエネルギーは、29MeV以下とすることが好ましい。
ターゲット112の厚さについては、ヘリウムイオン(アルファ線)121が貫通しない厚さ(例えば、1mm以上)とすることによって、ターゲット112を貫通したヘリウムイオン(アルファ線)121が作用することによって、ビスマス−209以外の核種との反応や、構造物のアルファ線による放射化等を低減することができる。
次に、図2を参照して第2実施形態に係る放射性同位体製造装置200の構成について説明する。なお、図1に示した放射性同位体製造装置100と対応する部分については、同一の符号を付して、重複した説明は省略する。
図2に示す第2実施形態に係る放射性同位体製造装置200は、図1に示した放射性同位体製造装置100とは、照射装置120aの構成が相違している。照射装置120aは、加速器122と、この加速器122からヘリウムイオン(アルファ線)121をターゲット収容容器110へ導く加速イオン導出管123とを具備している。加速イオン導出管123の加速器122側には、ビーム窓124が設けられ、ターゲット112側にはターゲット側ビーム窓125が設けられている。
また、加速器122とビーム窓124との間には、ゲートバルブ127が設けられ、加速イオン導出管123には、加速イオン導出管123内の圧力を検出するための圧力検出器126が設けられている。そして、圧力検出器126の検出信号は制御器128に入力され、制御器128は、圧力検出器126からの検出信号が所定値以上となった場合、ゲートバルブ127を閉じるように制御している。
これによって、加速イオン導出管123内の真空が破れた際に、ゲートバルブ127を閉じて加速器122を保護できるようになっている。なお、ビーム窓124及びターゲット側ビーム窓125は、例えばポリイミドフィルム等から構成することができる。
また、上記のように、加速器122側の真空を担保するビーム窓124と、ターゲット側ビーム窓125を分離することにより、ターゲット側ビーム窓125がターゲット112の発熱等で破れた場合においても、加速器122の真空を直ちに破る可能性を抑制することができる。
なお、第2実施形態では、加速器122の後段にワブラー電磁石等のアルファ線ビームを曲げる機構を設けている。これによって、ターゲット112をまんべんなく加熱することが可能となる。
次に、図3,4を参照して、第3実施形態に係る放射性同位体製造装置300及び第3実施形態に係る放射性同位体製造装置300の構成について説明する。なお、第3実施形態は第1実施形態の変形例であり、第4実施形態は第2実施形態の変形例であるので、これらの第1実施形態、第2実施形態と対応する部分については、同一の符号を付して、重複した説明は省略する。
これらの第3実施形態、第4実施形態では、第1実施形態、第2実施形態におけるコールドトラップ141に代えて放射性同位体を回収するための機構として、フィルタ143を用いている。このように、吸着物がエアロゾルである場合には、コールドトラップ141の代わりにフィルタ143を用いることができる。この場合のフィルタ143の性能は、吸着物(エアロゾル)の粒径が0.3μmに対して、捕集効率が99.99%程度であることが望ましい。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100,200,300,400……放射性同位体製造装置、110……ターゲット収容容器、111……ターゲット保持部、112……ターゲット、113……加熱機構、114……温度制御機構、120、120a……照射装置、121……ヘリウムイオン(アルファ線)、122……加速器、123……加速イオン導出管、124……ビーム窓、125……ターゲット側ビーム窓、126……圧力検出器、127……ゲートバルブ、128……制御器、130……ヘリウムガス供給配管、131……ヘリウムガスタンク、132……流量計、140……採取配管、141……コールドトラップ、142……排気配管、143……フィルタ、150……エアロゾル導入配管、151……エアロゾル発生装置。
Claims (12)
- ターゲットを収容するターゲット収容容器と、
加速されたイオンを、前記ターゲット収容容器内に収容された前記ターゲットに照射する照射機構と、
前記ターゲット収容容器に設けられ、上側に前記ターゲットを保持した状態で下側から加速されたイオンを照射可能とされた、ターゲット保持部と、
前記ターゲットから気化した放射性同位体を不活性ガスにより輸送する輸送機構と、
不活性ガスによって輸送された放射性同位体を回収する回収機構と、
を有することを特徴とする放射性同位体製造装置。 - 前記照射機構は、イオンを加速する加速器と、当該加速器によって加速されたイオンを前記ターゲット保持部に導いて前記ターゲットに照射する加速イオン導出管とを具備し、
前記加速器と前記加速イオン導出管との間に設けられこれらの間を気密に閉塞する第1のビーム窓と、
前記加速イオン導出管と前記ターゲット収容容器との間に設けられこれらの間を気密に閉塞する第2のビーム窓と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の放射性同位体製造装置。 - 前記第1のビーム窓と、前記第2のビーム窓との間の圧力を測定する圧力測定機構と、
前記加速器と前記加速イオン導出管との間を気密に閉塞可能とされたゲートバルブと、
前記圧力測定機構による圧力測定値が所定値以上となった場合に前記ゲートバルブを閉じる制御機構と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の放射性同位体製造装置。 - 前記ターゲット保持部は、前記ターゲット収容容器内部と外部とを仕切る照射窓と前記ターゲットを収容する容器とを一体にした構成である
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の放射性同位体製造装置。 - 前記ターゲット保持部は、上方開放型の皿状の形状を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の放射性同位体製造装置。 - 前記ターゲット保持部を構成する材料の融点が、前記ターゲットの融点及び前記放射性同位体の沸点よりも高い
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射性同位体製造装置。 - 前記ターゲットの温度を所定温度に制御する温度制御機構を具備した
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の放射性同位体製造装置。
同位体製造装置。 - 前記所定温度が、前記ターゲットの融点および放射性同位体の沸点を超え、前記ターゲットの沸点を超えない温度である
ことを特徴とする請求項7に記載の放射性同位体製造装置。 - 前記ターゲット収容容器内にエアロゾルを流入させるエアロゾル流入機構を有する
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の放射性同位体製造装置。
同位体製造装置。 - 前記エアロゾル流入機構は、
不活性ガス流路上にエアロゾルを流入させる
ことを特徴とする請求項9に記載の放射性同位体製造装置。 - 前記エアロゾル流入機構は、
不活性ガス流路上で前記ターゲットの位置より前段にエアロゾルを流入させる
ことを特徴とする請求項9に記載の放射性同位体製造装置。 - 請求項1乃至11の何れか1項に記載の放射性同位体製造装置を使用し、ビスマス−209からアスタチン−211を製造することを特徴とする放射性同位体製造方法。
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JP2020089783A JP2021184366A (ja) | 2020-05-22 | 2020-05-22 | 放射性同位体製造装置および放射性同位体製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023095818A1 (ja) | 2021-11-24 | 2023-06-01 | 金属技研株式会社 | 放射性核種の製造方法、ならびに量子線照射のための標的保持装置、システム、および標的 |
-
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WO2023095818A1 (ja) | 2021-11-24 | 2023-06-01 | 金属技研株式会社 | 放射性核種の製造方法、ならびに量子線照射のための標的保持装置、システム、および標的 |
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