JP2021183690A - 熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】熱伝導性とともに、耐傷つき性にも優れた成形体を製造することができる樹脂組成物およびそれより得られる成形体を提供すること。【解決手段】ポリアミド樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含む熱伝導性樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)との質量比率が65/35〜32/68であり、ポリアミド樹脂(A)が結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の混合物からなり、前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド樹脂(A−2)との質量比率が88/12〜40/60である、熱伝導性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂と熱伝導性充填材を含有し、耐傷つき性および熱伝導性に優れた熱伝導性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
近年、部品および製品の高性能化により発熱量が大きくなっている。熱伝導性樹脂はこれまで、部品および製品の小型化および軽量化に伴う放熱スペースの減少により、内部にこもってしまう熱を効果的に外部へ放散させる熱対策のために使用されるなど、内部部材として使用されることが多かった。しかし、最近では、発生した熱を効率よく外部へ逃がすため、外観部品にも熱伝導性が求められるようになってきている。外観部品には、従来より耐傷つき性に優れる樹脂、例えばABSやPC/ABSなどが使用されることが多く、結露対策や省エネ効果の向上のために耐傷つき性に優れかつ熱伝導率を有する熱伝導性樹脂が求められるようになってきている。熱を効率よく外部へ逃がすことを考えた場合、1.5W/(m・K)以上の熱伝導率が必要であり、外観部品には鉛筆硬度H以上が求められる場合が多い。
これまで、樹脂材料に熱伝導性の高い熱伝導充填材(例えば、黒鉛、銅、アルミニウム、酸化アルミニウム等)を高充填することによって、高熱伝導化された樹脂組成物が得られることが知られている。このような樹脂組成物を用いて製造された成形体は電気・電子部品の製造用部材(成形体)として検討されている(例えば、特許文献1〜4)。
一方、熱伝導性樹脂組成物の分野では、冷却性、曲げ強度および曲げ弾性率、成形流動性に優れた成形体を製造できることも求められている。例えば、熱伝導性樹脂組成物の冷却性が低いと、冷却時間が長く、それに伴い、成形サイクルが長くなるため、成形サイクルの観点から好ましくない。
特開昭62−100577号公報 特開平4−178421号公報 特開平5−86246号公報 特開平2011−116842号公報
本発明の発明者等は、熱伝導性を得るために熱伝導性充填材が多量に充填された樹脂組成物を用いると、得られる成形品表面にフィラーが露出する部分が多くなり、引っかいたときにこれらが容易に欠落し傷つくため、耐傷つき性に劣るという問題が生じることを見出した。
本発明は、熱伝導性とともに、耐傷つき性にも優れた成形体を製造することができる樹脂組成物およびそれより得られる成形体を提供することを目的とする。
本発明はまた、熱伝導性とともに、耐傷つき性、冷却性、曲げ特性および成形流動性に優れた成形体を製造することができる樹脂組成物およびそれより得られる成形体を提供することを目的とする。
本明細書中、熱伝導性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて製造された成形体において、熱が伝導し易い特性のことである。熱伝導性は、例えば、成形体製造時(例えば射出成形時)の流動方向の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上である特性であってもよい。
耐傷つき性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて製造された成形体の表面が傷つき難い特性のことである。
冷却性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて成形体を製造するとき、当該成形体が十分に迅速に冷却され得る特性のことである。
曲げ特性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて製造された成形体の曲げ強度および曲げ弾性率が十分に高い特性のことである。
成形流動性は、熱伝導性樹脂組成物を用いて成形体を製造するとき、当該樹脂組成物が十分に流動し得る特性のことである。
熱伝導性および耐傷つき性は、本発明の熱伝導性樹脂組成物が有する特性である。
冷却性、曲げ特性および成形流動性は、本発明の熱伝導性樹脂組成物が有さなければならない特性というわけではなく、本発明の熱伝導性樹脂組成物が有することが好ましい特性である。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、結晶性ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の混合物の混合比率およびポリアミド樹脂と熱伝導性充填材の混合比率をある特定の範囲とすることで、前記の課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
本発明の要旨は、下記の通りである。
<1> ポリアミド樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含む熱伝導性樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)との質量比率が65/35〜32/68であり、
ポリアミド樹脂(A)が結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の混合物からなり、前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド樹脂(A−2)との質量比率が88/12〜40/60である、熱伝導性樹脂組成物。
<2> 前記熱伝導性樹脂組成物を成形してなる成形体の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上であり、かつ、引っかき硬度がH以上である、<1>に記載の熱伝導性樹脂組成物。
<3> 前記熱伝導性充填材(B)が、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、およびステンレスからなる群から選択される1種以上の材料である、<1>または<2>に記載の熱伝導性樹脂組成物。
<4> 前記熱伝導性樹脂組成物が、さらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、前記ポリアミド樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜60/40である、<1>〜<3>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
<5> 前記非熱伝導性繊維状強化材(C)がガラス繊維である、<4>に記載の熱伝導性樹脂組成物。
<6> 前記ポリアミド樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が58/42〜32/68であり、
前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)がポリアミド6であり、
前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド(A−2)との質量比率が88/12〜55/45である、<1>〜<5>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
<7> 前記ポリアミド樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が52/48〜38/62であり、
前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)がポリアミド6であり、
前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド(A−2)との質量比率が87/13〜55/45であり、
前記熱伝導性充填材(B)がタルクであり、
前記熱伝導性樹脂組成物が、さらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、前記ポリアミド樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜82/18である、<1>〜<5>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
<8> 前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド(A−2)との質量比率が87/13〜65/35である、<7>に記載の熱伝導性樹脂組成物。
<9> <1>〜<8>のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物を含む成形体。
本発明によれば、熱伝導性とともに、耐傷つき性にも優れた成形体を製造することができる樹脂組成物およびそれにより得られる成形体を提供することができる。
[熱伝導性樹脂組成物]
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)を含有する。
本発明に用いるポリアミド樹脂(A)は、アミド結合を有するホモポリアミドもしくはコポリアミド、またはこれらの混合物である。アミド結合を有するホモポリアミドおよびコポリアミドは、ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミン、ジカルボン酸等を重合することによって得ることができる。
本発明においてポリアミド樹脂(A)は、結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の混合物であることが必要である。当該混合物を用いることにより、熱伝導性と耐傷つき性の両立を達成することができる。
結晶性ポリアミド樹脂(A−1)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で16℃/分の昇温速度により測定した融解熱量の値が、1cal/g以上であるポリアミド樹脂を意味する。
非晶性ポリアミド樹脂(A−2)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で16℃/分の昇温速度により測定した融解熱量の値が、1cal/g未満であるポリアミド樹脂を意味する。
結晶性ポリアミド樹脂(A−1)としては、例えば、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ポリアミド4I)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリカプラミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリウンデカミド(ポリアミド11)、ポリカプラミド/ポリウンデカミドコポリマー(ポリアミド6/11)、ポリドデカミド(ポリアミド12)、ポリカプラミド/ポリドデカミドコポリマー(ポリアミド6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリカプラミド/ポリテトラメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/4T)、ポリカプラミド/ポリテトラメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/4I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリテトラメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/4T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリテトラメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/4I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMDT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリオクタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド8T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)およびこれらの混合物が挙げられる。中でも、熱伝導性および耐傷つき性のさらなる向上ならびに冷却性、曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、ポリアミド6、および/またはポリアミド66がより好ましく、ポリアミド6がより好ましい。結晶性ポリアミド樹脂は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
非晶性ポリアミド樹脂(A−2)としては、例えば、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタム共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタム共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/その他ジアミン成分の共重合体が挙げられる。中でも、熱伝導性および耐傷つき性のさらなる向上ならびに冷却性、曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体とテレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン共重合体との混合物、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン共重合体が好ましく、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン共重合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン共重合体がより好ましい。非晶性ポリアミド樹脂は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の質量比率は88/12〜40/60であり、熱伝導性および耐傷つき性のさらなる向上ならびに曲げ特性、冷却性および成形流動性の向上の観点から、好ましくは88/12〜55/45、より好ましくは87/13〜55/45、さらに好ましくは82/18〜55/45、特に好ましくは82/18〜65/35、最も好ましくは82/18〜70/30である。結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と非晶性ポリアミド樹脂(A−2)を上記の比率とすることで耐傷つき性が向上し、熱伝導性および機械物性(特に曲げ特性)も維持することが可能である。非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の質量比率が多すぎると、成形(特に射出成形)の冷却時間が長くなり、成形サイクルが悪くなったり、成形流動性が低下する場合がある。さらには、成形自体が困難になることがある。他方、非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の質量比率が少なすぎると、耐傷つき性が低下する。結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の質量比率を87/13〜65/35、特に87/13〜70/30とすることにより、熱伝導性および耐傷つき性だけでなく、曲げ特性、冷却性および成形流動性をより一層、向上させることができる。
ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は特に限定されないが、機械的特性(特に曲げ特性)および耐熱性の向上の観点から、溶媒として96質量%濃硫酸を用いて温度が25℃で濃度が1g/dLの条件で測定した相対粘度が、1.6以上(特に1.8以上)であることが好ましい。当該相対粘度は通常、3.5以下、特に3.0以下である。
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物には、上記ポリアミド樹脂(A)とともに、熱伝導性充填材(B)を含有させることが必要である。熱伝導性充填材(B)としては、例えば、タルク(5〜10)、酸化アルミニウム(36)、酸化マグネシウム(60)、酸化亜鉛(25)、炭酸マグネシウム(15)、炭化ケイ素(160)、窒化アルミニウム(170)、窒化ホウ素(210)、窒化ケイ素(40)、カーボン(10〜数百)、黒鉛(10〜数百)等の無機系充填材、銀(427)、銅(398)、アルミニウム(237)、チタン(22)、ニッケル(90)、錫(68)、鉄(84)、ステンレス(15)等の金属系充填材が挙げられる(括弧内の数値は、熱伝導率の代表値(単位:W/(m・K))を表す)。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱伝導性のさらなる向上と経済性の向上の観点から、無機系充填材、特にタルクが好ましい。タルクを用いると、樹脂組成物を様々な色への着色が可能となる。
タルクの形態としては、板状、鱗状、鱗片状、薄片状等が挙げられる。これらの中でも、鱗片状タルク、薄片状タルクは、成形体としたときに、面方向に配向しやすく、その結果、熱伝導率を高めることができるため、より好ましい。鱗片状タルクの平均粒径は、熱伝導性のさらなる向上と機械的特性(特に曲げ特性)の向上の観点から、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましく、15〜70μmであることが特に好ましい。
本発明に用いる熱伝導性充填材(B)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ポリアミド樹脂(A)との密着性を向上させるため、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤で表面処理を施してもよい。シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノシラン系カップリング剤や、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤が挙げられる。チタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)との質量比(A/B)は、65/35〜32/68であることが必要であり、熱伝導性および耐傷つき性のさらなる向上ならびに冷却性、曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、好ましくは58/42〜32/68、より好ましくは52/48〜38/62、さらに好ましくは50/50〜40/60、特に好ましくは50/50〜45/55である。熱伝導性充填材(B)の量が多すぎると、耐傷つき性が低下したり、かつ/または成形性が著しく低下したりする。熱伝導性充填材(B)の量が少なすぎると、十分な熱伝導性が得られない場合がある。
本発明に用いる樹脂組成物には熱伝導性充填材とは異なる繊維状強化材(C)を含有させることができる。詳しくは、本発明の樹脂組成物は当該繊維状強化材(C)を含有してもよいし、または含有しなくてもよい。繊維状強化材(C)は非熱伝導性を有する繊維状強化材である。繊維状強化材(C)が非熱伝導性を有するとは、繊維状強化材(C)を構成する物質が5W/(m・K)未満、特に4W/(m・K)以下の熱伝導率を有するという意味である。
繊維状強化材(C)としては、例えば、無機繊維、有機繊維、またはそれらの混合からなる繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のポリアミド、ポリエステル等の有機繊維が挙げられる。本発明においてポリアミド樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)の複合樹脂組成物に配合した際に効果的に曲げ特性(特に曲げ強度)が向上することからガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維は、マトリックス樹脂との密着性や均一分散性の向上のため、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤等により表面処理されていてもよい。通常、ガラス繊維は、チョップドストランドの形態で用いられる。ガラス繊維の断面は、丸型、偏平型、ひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品等いずれの形状であってもよい。
ガラス繊維の繊維長は、1〜10mmであることが好ましく、1.5〜6mmであることがより好ましい。また、ガラス繊維の繊維径は4〜18μmであることが好ましく、7〜15μmであることがより好ましい。繊維断面が、丸型以外で、例えば、偏平型、ひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形である場合は、断面形状における長辺(例えば最大長)と短辺(例えば最大長に対して垂直方向の長さ)との比(すなわちアスペクト比)は、1.5〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましい。
繊維状強化材(C)の含有量について、ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)の合計と繊維状強化材(C)の質量比は通常、100/0〜60/40質量部であり、熱伝導性および耐傷つき性のさらなる向上ならびに冷却性、曲げ特性および成形流動性の向上の観点から、100/0〜70/30質量部であることが好ましく、100/0〜82/18質量部であることがより好ましい。繊維状強化剤(C)を、上記範囲とすることで成形性を損なわずに効率よく機械強度、衝撃強度を向上させることができる。ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)の合計と繊維状強化材(C)の質量比が100/0であることは、繊維状強化材(C)は含有されないことを意味する。換言すると、本発明の樹脂組成物は繊維状強化材(C)を含有してもよいし、または含有しなくてもよい。本発明の樹脂組成物が繊維状強化材(C)を含有する場合、ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)の合計と繊維状強化材(C)の質量比は、99/1〜60/40質量部、特に98/2〜70/30質量部、または97/3〜82/18質量部であってもよい。
本発明の樹脂組成物はロジン(D)を含有してもよいし、または含有しなくてもよい。本発明の樹脂組成物がロジン(D)を含有することにより、本発明の効果を低下させることなく、当該樹脂組成物の成形加工性を向上させることができる。特に、熱伝導性充填材(B)と繊維状強化材(C)等の充填材を多く含有させた場合であっても、また粒径(または寸法)が大きい充填材を用いた場合であっても、優れた成形加工性を奏することができる。
ロジン(D)とは、樹脂酸(ロジン酸)といわれるジテルペン酸系化合物のことである。ロジン(D)としては、天然ロジン、変性ロジン、重合ロジンが挙げられる。
天然ロジンとは、マツ科植物から採取される樹脂酸の混合物である。当該樹脂酸の主成分はアビエチン酸であり、さらに、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸等が含まれる。
変性ロジンとは、天然ロジンを変性したものであり、例えば、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸等の水素化ロジン、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸等の不均化ロジン、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等により天然ロジンを変性した酸変性ロジン、これらのエステル体が挙げられる。
重合ロジンとは、天然ロジンまたは変性ロジン同士を反応させたものであり、それらの2量化物、3量化物が挙げられる。
ロジン(D)の軟化温度は特に限定されず、例えば、110℃以上(特に110〜220℃)であってもよく、成形加工性の観点から、好ましくは120〜180℃であり、より好ましくは130〜150℃である。
ロジン(D)の軟化温度は、JIS−7206:1999に記載の方法に準じて測定された値を用いている。
ロジン(D)の含有量について、ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)と繊維状強化材(C)の合計とロジン(D)との質量比は特に限定されず、例えば、100/0〜90/10質量部であってもよく、成形加工性、熱伝導性および耐傷つき性のさらなる向上と機械的特性(曲げ特性および曲げ弾性率)の向上の観点から、好ましくは99.7/0.3〜95/5、より好ましくは99.5/0.5〜97/3、より好ましくは99.5/0.5〜98/2である。
本発明に用いる樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、難燃剤、結晶核剤、相溶化剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤等の添加剤を加えてもよい。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤、ホスフィン酸塩およびジホスフィン酸塩並びにそれらの重合体、ポリリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、赤リン、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物が挙げられる。
結晶核剤としては、例えば、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩が挙げられる。
相溶化剤としては、例えば、アイオノマー系相溶化剤、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、共重合体系相溶化剤が挙げられる。
顔料としては、例えば、有機系、無機系のいずれも用いることができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の酸化防止剤が挙げられる。
耐候剤は、紫外線を吸収、遮断して樹脂の光劣化を防ぐものであったり、あるいは紫外線又は熱により発生するラジカルを捕捉してポリマー分解を抑制したりするものである。
耐候剤としては、例えば、紫外線遮断剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤が挙げられる。
これらの添加剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明にこれらの添加剤を混合する方法は特に限定されない。
[熱伝導性樹脂組成物の製造方法および成形体]
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、熱伝導性充填材(B)、さらには必要に応じて各種添加物を、一般的な押出機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混錬機、ブラベンダーを用いて溶融および混練することにより製造することができる。溶融および混練後は通常、溶融物をストランド状に押出して冷却固化した後、ペレタイザーでカッティングして、本発明の熱伝導性樹脂組成物をペレット形態で得ることができる。溶融および混練前において、スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用することが効果的である。混練状態をよくするためには二軸押出機を用いることが好ましい。
押出機は、シリンダーおよび当該シリンダー内に配置されるスクリューを有する。押出機は、材料(特に原料)を供給するためのホッパー(特に主ホッパー)を有し、押出機の主ホッパーから添加された材料はスクリューの回転によりシリンダー内を搬送されつつ、溶融および混練され、吐出口から吐出される。押出機は通常、当該押出機の押出方向の途中において、サイドフィーダーをさらに有する。このような押出機において、少なくともポリアミド樹脂(A)は通常、主ホッパーから添加される。熱伝導性充填材(B)、繊維状強化材(C)およびロジン(D)の添加方法としては特に限定されないが、熱伝導性充填材(B)、繊維状強化材(C)およびロジン(D)はそれぞれ独立して、ホッパー(特に主ホッパー)から添加されてもよいし、またはサイドフィーダーから添加されてもよい。曲げ特性の向上の観点から、繊維状強化材(C)はサイドフィーダーから添加されることが好ましい。熱伝導性充填材(B)およびロジン(D)は主ホッパーから添加されることが好ましい。
本発明の樹脂組成物の熱伝導率は1.5W/(m・K)以上である必要があり、熱伝導性のさらなる向上の観点から、好ましくは1.8W/(m・K)以上、より好ましくは2.0W/(m・K)以上である。熱伝導率が1.5W/(m・K)未満の場合、成形体にしたときに十分な放熱効果が得られない場合がある。当該熱伝導率の上限値は特に限定されず、当該熱伝導率は通常、50W/(m・K)以下、特に20W/(m・K)以下である。
樹脂組成物の熱伝導率は、当該樹脂組成物を用いて製造された成形体の熱伝導率のことである。詳しくは、樹脂組成物の熱伝導率は、ASTM D790に準拠して、射出成形法により製造された試験片における流動方向(すなわち射出方向)の熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpから算出される、「α×ρ×Cp」に相当する値を用いている。
熱拡散率αは、成形体の流動方向の熱拡散率を測定できる装置であれば、あらゆる装置を用いて測定されてよく、例えば、レーザーフラッシュ法(特に熱定数測定装置TC−7000(アルバック理工社製))を用いて測定することができる。
密度ρは、成形体の密度を測定できる装置であれば、あらゆる装置を用いて測定されてよく、例えば、電子比重計ED−120T(ミラージュ貿易社製)を用いて測定することができる。
比熱Cpは、成形体の比熱を測定できる装置であれば、あらゆる装置を用いて測定されてよく、例えば、示差走査熱量分析法(例えば、DSC―7(パーキンエルマー社製))を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
本発明の樹脂組成物の引っかき硬度はH以上である必要があり、耐傷つき性のさらなる向上の観点から、好ましくは2H以上である。引っかき硬度がH未満の場合、成形体にしたときに十分な耐傷つき性が得られない。当該引っかき硬度の上限値は特に限定されず、当該引っかき硬度は通常、3H以下である。なお、硬度は高いほど、好ましい。
樹脂組成物の引っかき硬度は、当該樹脂組成物を用いて製造された成形体を鉛筆法試験に供したときの成形体の引っかき硬度のことである。詳しくは、樹脂組成物の引っかき硬度は、射出成形法により製造された125×125×2mm寸法の試験片を、鉛筆法試験に供したときの評価結果を用いている。
引っかき硬度は、試験片の引っかき硬度を測定できる鉛筆法に基づく方法であれば、あらゆる方法を用いて測定されてよく、例えば、JIS K5600(ISO/DUN 15184)に基づいて測定することができる。
なお、引っかき硬度が測定される上記試験片の部位は125mm×125mm寸法の面である。当該面は通常、0.1μm以下の算術平均表面粗さを有するいわゆる鏡面である。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、シート成形等の通常公知の溶融成形法を用いて所望の形状に成形して成形体とすることができる。
本発明の樹脂組成物から製造された成形体は、耐傷つき性に優れているため、一般的に成形体の表面に形成される、いわゆる保護層の形成を要さない。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。実施例および比較例の樹脂組成物の評価に用いた測定法は次のとおりである。
A.評価方法
(1)相対粘度
96%硫酸に溶解し、濃度1g/dLの試料溶液を作製した。続いて、ウベローデ型粘度計を用い、25℃の温度で試料溶液および溶媒の落下時間を測定し、以下の式を用いて相対粘度を求めた。
相対粘度=(試料溶液の落下時間)/(溶媒のみの落下時間)
(2)密度
電子比重計(京都電子工業社製)を用いて、温度20℃で測定した。
(3)冷却性(冷却時間)
125mm×125mm×3mm厚の板材を成形した時の、成形品(良品)が採取できる最短の冷却時間Tにより評価した。冷却時間が冷却時間Tよりも短いと、成形品を取り出すために、金型開放後、成形物をエジェクターピンで押し出した時に、成形品が変形したり、ピンの接触部分が大きくへこんだ成形品となるなど、製品としての成形品が得られない。冷却時間Tが長い場合は成形サイクルが長くなるため、成形サイクルの観点から好ましくなく、冷却時間が25秒以下を合格とした。
◎:12秒以下(最良);
○:12秒超15秒以下(良好);
△:15秒超25秒以下(合格);
×:25秒以上(実用上問題あり)。
(4)流動長
十分に乾燥した樹脂組成物を、幅20mm、厚さ1mmのバーフロー試験金型(スパイラル状)を取り付けた射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110−12E)を用いて10回射出成形して、その平均をバーフロー流動長とした。シリンダー温度、金型温度は、表に記載の温度とし、射出圧力は150MPaとした。樹脂温度が同一条件の下、流動長が長いほど成形流動性がよいことを示す。流動長の評価基準は以下の通りである。
◎:285mm以上(最良);
○:255mm以上285mm未満(良好);
×:255mm未満(実用上問題あり)。
(5)曲げ強度、曲げ弾性率
ISO規格178に準拠して測定した。曲げ強度および曲げ弾性率の評価基準は以下の通りである。
・曲げ強度
◎:88MPa以上(最良);
○:80MPa以上88MPa未満(良好);
×:80MPa未満(実用上問題あり)。
・曲げ弾性率
◎:11GPa以上(最良);
○:8GPa以上11GPa未満(良好);
×:8GPa未満(実用上問題あり)。
(6)熱伝導性(成形体の熱伝導率)
熱伝導率λは、熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpを下記方法により求め、その積として次式で算出した。
λ=αρCp
λ:熱伝導率(W/m・K)
α:熱拡散率(m/sec)
ρ:密度(g/m
Cp:比熱(J/g・K)
熱拡散率αは、詳しくは、以下の方法により測定した。ASTM D790に準じて作製した曲げ試験片4本を、当該曲げ試験片と同じ幅および長さ(長手方向長さ)のキャビティを有する専用金型を用いて、樹脂の融点以上の温度で熱プレスにより張り合わせた。この張り合わせたものを、得られる試験片の幅(厚み)方向が射出成形時の流動方向と平行になるように、かつ得られる試験片の幅が1mm〜1.5mmとなるように、切り出した。得られた試験片を用いて樹脂流動方向について、レーザーフラッシュ法に基づく熱定数測定装置TC−7000(アルバック理工社製)にて測定した。ASTM D790では、試験片を射出成形法により作製する。
密度ρは電子比重計ED−120T(ミラージュ貿易社製)およびASTM D790に準拠して作製した曲げ試験片を用いて測定した。
比熱Cpは示差走査熱量計DSC―7(パーキンエルマー社製)およびASTM D790に準拠して作製した曲げ試験片を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
以上の方法により流動方向の熱伝導率を算出した。なお、α、ρおよびCpの各々は、10個の試験片の測定値に基づく平均値を用いた。
厚み方向についてはASTM D790に準拠して作製した曲げ試験片を用いて厚み1mm〜1.5mmになるようにサンプルを作製したこと以外、上記の流動方向の熱伝導率の算出方法と同様の方法により、厚み方向の熱伝導率を算出した。
流動方向の熱伝導率を以下の基準に基づいて評価した。
◎:2.0以上(最良);
○:1.8以上2.0未満(良好);
△:1.5以上1.8未満(実用上問題なし);
×:1.5未満(実用上問題あり)。
なお、本実施例においては、流動方向および厚み方向の熱伝導率λを求めているが、厚み方向の熱伝導率λは参考のために求めたにすぎず、本発明において熱伝導性は、流動方向の熱伝導率λが上記範囲内であればよい。
(7)耐傷つき性
十分に乾燥された樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110−12E)を用いて125mm×125mm×2mm厚みのプレート成形物を成形した。得られた成形物を用いてJIS K5600(ISO/DUN 15184)に記載の引っかき硬度(鉛筆法)により評価した。なお、評価は鏡面で評価し、H以上である場合を合格とした。鏡面とは、得られたプレート成形物における125mm×125mm寸法の面のことであり、いずれの実施例および比較例のプレート成形物の当該面も算術平均表面粗さ0.1μm以下の鏡面であった。表面粗さは表面粗さ計により測定された値の算術平均値である。
◎:2H(最良);
○:H(良好);
×:H未満(例えば、HB、B、F)(実用上問題あり)。
なお、本実施例においては、鏡面およびシボ面の引っかき硬度を求めているが、シボ面の引っかき硬度は参考のために求めたにすぎず、本発明において耐傷つき性は、鏡面の引っかき硬度が上記範囲内であればよい。
B.原料
本発明の実施例と比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)結晶性ポリアミド樹脂(A−1)
・PA6:ポリアミド6(相対粘度2.6、密度1.13g/cm、融解熱量18cal/g)
・PA66:ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重合によって得られるポリアミド66樹脂(相対粘度2.8、密度1.14g/cm、融解熱量21cal/g)
(2)非晶性ポリアミド樹脂(A−2)
・非晶PA:非晶ポリアミド(イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサメチレンジアミン共縮合体、EMS社製 G21、密度1.18g/cm、融解熱量0.1cal/g)
(3)熱伝導性充填材(B)
・TC:鱗片状タルク(平均粒子径25μm、熱伝導率5〜10W/(m・K)、密度2.70g/cm
・Gr:鱗片状黒鉛(平均粒径130μm、熱伝導率100W/m・K、密度2.25g/cm
(4)繊維状充填材(C)
・GF:ガラス繊維(日本電気硝子社製T−262H、平均繊維径11μm、平均繊維長3mm)
(5)その他(D)
・D1:マレイン化ロジン(荒川化学工業社製、マルキードNo.31、軟化温度141℃)
実施例1
ポリアミド6樹脂(PA6)48質量部と非晶性ポリアミド(非晶PA)12質量部、鱗片状タルク(TC)40質量部を軸押出機(東芝機械製:TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに供給し、260℃で溶融した。十分に溶融混練しストランド状に押出して冷却固化した後、それをペレタイザーでカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
冷却性、曲げ強度、曲げ弾性率、熱伝導性および耐傷つき性の評価のために、得られたペレットを、日精樹脂社製の成形機(NEX110−12E)により、上記した所定の形状に成形した。
他の評価および測定のためには、樹脂組成物のペレットを用いた。
実施例2〜12および比較例1〜4
樹脂組成、混練条件および成形条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た。繊維状強化材(C)は、溶融および混練の途中のサイドフィーダーにより供給した。なお、実施例12においては、ロジンD1も用いており、当該ロジンD1は、ポリアミド6樹脂等とともに主ホッパーに供給した。
実施例1から12の樹脂組成物は本発明の要件を満たしているため、熱伝導率が1.5W/(m・K)以上でありかつ、引っかき硬度がH以上の優れた成形体を得ることができた。
実施例4から6は繊維状補強材が配合されているため、ポリアミド樹脂と熱伝導性充填材の質量比が同じである実施例2と比較して曲げ強度が高く、さらに熱伝導率も高くなった。
実施例1と実施例9の比較では、熱伝導性充填材にタルクを用いたほうが引っかき硬度がより一層、高いことがわかる。
実施例1と実施例11の比較より、非晶性ポリアミド樹脂の質量比を適度に低減することにより、射出成形時の冷却時間が短くなり、成形サイクルが著しく向上することがわかった。
比較例1から2は非晶性ポリアミド樹脂が配合されていないもしくは質量比が小さすぎるため、引っかき硬度がHより悪くなった。
比較例3は熱伝導性充填材の質量比が大きすぎるため引っかき硬度がHより悪くなった。
比較例4は熱伝導性充填材の質量比が小さすぎるため、十分な熱伝導率が得られなかった。
Figure 2021183690
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品の具体例としては、例えば、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品、ランプリフレクター、ランプハウジング等の照明器具部品、スピーカー等の音響製品部品、光ケーブル用フェルール、携帯電話機、固定電話機等の通信機器部品、モーター部品及びケース等の機械部品、自動車用機構部品、電装部品、内装部品等の自動車部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具、センサー類部品が挙げられる。

Claims (9)

  1. ポリアミド樹脂(A)および熱伝導性充填材(B)を含む熱伝導性樹脂組成物であって、
    ポリアミド樹脂(A)と熱伝導性充填材(B)との質量比率が65/35〜32/68であり、
    ポリアミド樹脂(A)が結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と非晶性ポリアミド樹脂(A−2)の混合物からなり、前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド樹脂(A−2)との質量比率が88/12〜40/60である、熱伝導性樹脂組成物。
  2. 前記熱伝導性樹脂組成物を成形してなる成形体の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上であり、かつ、引っかき硬度がH以上である、請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  3. 前記熱伝導性充填材(B)が、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛、銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、およびステンレスからなる群から選択される1種以上の材料である、請求項1または2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  4. 前記熱伝導性樹脂組成物が、さらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、前記ポリアミド樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜60/40である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  5. 前記非熱伝導性繊維状強化材(C)がガラス繊維である、請求項4に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミド樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が58/42〜32/68であり、
    前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)がポリアミド6であり、
    前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド(A−2)との質量比率が88/12〜55/45である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  7. 前記ポリアミド樹脂(A)と前記熱伝導性充填材(B)との質量比率が52/48〜38/62であり、
    前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)がポリアミド6であり、
    前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド(A−2)との質量比率が87/13〜55/45であり、
    前記熱伝導性充填材(B)がタルクであり、
    前記熱伝導性樹脂組成物が、さらに、非熱伝導性繊維状強化材(C)を含有し、前記ポリアミド樹脂(A)および前記熱伝導性充填材(B)の合計と前記非熱伝導性繊維状強化材(C)との質量比率が100/0〜82/18である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  8. 前記結晶性ポリアミド樹脂(A−1)と前記非晶性ポリアミド(A−2)との質量比率が87/13〜65/35である、請求項7に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物を含む成形体。
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