JP2021180251A - 移動体用演算装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】演算用素子と基板とを接続するはんだ接合部の接続状態が悪化することを抑制する。【解決手段】実装基板40,50に対してはんだ接合部14を介して結合されかつ移動体の走行に関する演算を行うための半導体デバイス11と、該半導体デバイス11を冷却するための冷却装置を有する演算装置100は、演算量に基づく半導体デバイス11の消費電力に基づいて、はんだ接合部14に生じる応力を推定する熱応力推定部102と、冷却装置を制御する冷却制御部104とを備える。冷却制御部104は、熱応力推定部102の推定結果が所定応力未満になるように、冷却装置を作動させる。【選択図】図9

Description

ここに開示された技術は、移動体用演算装置に関する技術分野に属する。
近年では、自動車や鉄道車両などの移動体に備えられたアクチュエータのほぼ全てが電子制御されるようになっている。電子制御を行うための演算装置は、例えば、電子素子により構成される。このような電子素子は、実装基板にはんだ付けにより実装される。演算量が多くなり、電子素子が発熱するとはんだが融解して接合状態が悪化するおそれがある。このため、はんだを用いた接合部の状態を解析する方法が提案されている。
例えば特許文献1には、複数個のはんだバンプを介してプリント配線基板に接続された半導体パッケージの実装状態を構造モデルとして、実際の温度サイクル試験におけるはんだ接合部の破壊形態に対応した破壊形態対応断面に基づいて2次元モデルを設定する工程と、設定した2次元モデルに基づいて有限要素法解析により、はんだ接合部に発生する塑性ひずみを計算する工程とを備えた半導体パッケージ実装構造の解析方法が開示されている。
特許第4096452号公報
ところで、移動体の自動運転では走行シーンに応じて演算量が変化するため、演算量の増減が大きい。特に、自動運転と運転者による手動運転との切り替え時には、演算量が大きく変動する。このため、自動運転の演算に用いられる演算用素子は、発熱量が増減しやすい。演算用素子の発熱量が大きく増減すると、演算用素子を実装基板に接続するはんだ接合部に負荷がかかるようになる。
演算用素子の温度を調整するために冷却装置が用いられる。一般に、冷却装置は温度を指標として作動される。しかし、単に温度を調整するだけでは、はんだ接合部にかかる負荷が考慮されないため、演算用素子の破壊は抑制できたとしても、はんだ接合部の破壊までは抑制できないおそれがある。
特許文献1に記載のような解析方法は、温度サイクル試験を反映するものであるため、設計段階においては有効である。しかし、実際の移動体に実装された演算用素子において、演算量が増減するような環境は想定されておらず、実装された演算用素子を冷却するための制御に利用することは困難である。
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこは、演算用素子と実装基板とを接続するはんだ接合部の接続状態が悪化することを抑制することにある。
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、実装基板に対してはんだ接合部を介して実装されかつ移動体の走行に関する演算を行うための演算用素子と、該演算用素子を冷却するための冷却装置を有する移動体用演算装置を対象として、演算量に基づく前記演算用素子の消費電力に基づいて、前記はんだ接合部に生じる応力を推定する熱応力推定部と、前記冷却装置を制御する制御部と、を更に備え、前記制御部は、前記熱応力推定部の推定結果が所定応力未満になるように、前記冷却装置を作動させる、という構成とした。
すなわち、演算量が変化すれば演算用素子で消費される電力が変化する。演算用素子で消費される電力が変化すれば、演算用素子の発熱量が変化する。そして、演算素子の発熱量の変化量が分かれば、当該演算用素子に設けられたはんだ接合部に生じる熱応力が算出できる。このため、演算量に基づく演算用素子の消費電力を入力情報として、当該演算用素子にも受けられたはんだ接合部に生じる熱応力を推定するようにすれば、移動体の実際の走行シーンに応じて、冷却装置を適切に制御することができる。
そして、前記構成では、冷却装置は、熱応力推定部の推定結果が所定応力未満になるように作動されるため、演算用素子と実装基板とを接続するはんだ接合部の接続状態が悪化することを抑制することができる。
前記移動体用演算装置において、前記熱応力推定部は、前記演算用素子の消費電力に基づいて、該演算用素子の発熱量を推定する熱量推定部を有するとともに、該熱量推定部により推定された前記演算用素子の発熱量に基づいて、当該演算用素子の前記はんだ接合部に生じる応力を推定する、という構成でもよい。
この構成によると、演算用素子の発熱量が精度良く熱応力の計算に反映されるため、はんだ接合部に生じる熱応力を精度良く算出することができる。これにより、演算用素子と実装基板とを接続するはんだ接合部の接続状態が悪化することをより効果的に抑制することができる。
前記移動体用演算装置の一実施形態では、前記冷却装置は、冷却媒体を利用して前記演算用素子を冷却する装置を含み、前記制御部は、前記冷却媒体の流量が徐々に変化するように前記冷却装置を作動させる。
この構成によると、冷却媒体の流量が徐々に変化すれば、冷却装置の冷却能力は徐々に変化する。これにより、演算用素子の発熱量の変化が小さくなって、はんだ接合部に生じる熱応力が小さくなる。したがって、演算用素子による演算の精度を維持しつつ、はんだ接合部の接続状態が悪化することを抑制することができる。
前記移動体用演算装置の他の実施形態では、前記冷却装置は、前記演算用素子の消費電力を調整することで該演算用素子の発熱量を調整する装置を含み、前記制御部は、前記演算用素子の消費電力が徐々に変化するように前記冷却装置を作動させる。
この構成によると、冷却装置が演算用素子の消費電力を徐々に変化させることで、演算用素子の発熱量の変化が小さくなる。これにより、はんだ接合部の熱応力が小さくなる。この結果、はんだ接合部の接続状態が悪化することを効果的に抑制することができる。
以上説明したように、ここに開示された技術によると、はんだ接合部の接続状態が悪化することを抑制することができる。
例示的な実施形態1に係る演算装置が搭載された自動車を示す概略図である。 演算装置の一部を示す断面図である。 演算装置が有する機能を概略的に示すブロック図である。 半導体デバイスが実装された実装基板の一例を示す平面図である。 図4に示す実装基板の温度分布を示す分布図である。 図4に示す実装基板の応力分布を示す分布図である。 半導体デバイスを冷却する際の処理動作を示すフローチャートである。 冷却装置を制御する処理動作を示すフローチャートである。 半導体デバイスを冷却する様子を示すタイムチャートであって、(a)は従来の演算装置における冷却制御を示し、(b)は実施形態1に係る演算装置における冷却制御を示す。 実施形態2に係る演算装置の半導体デバイスを冷却する際の処理動作を示すフローチャートである。 実施形態2に係る演算装置において、半導体デバイスの消費電力を制御する処理動作を示すフローチャートである。 実施形態2に係る演算装置の半導体素子を冷却する様子を示すタイムチャートであって、(a)は従来の演算装置における冷却制御を示し、(b)は実施形態2に係る演算装置における冷却制御を示す。
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る演算装置が搭載された自動車1を示す。この自動車1は、不図示の駆動装置(エンジンやモータ)が車両前側に搭載されたFF式又はFR式の自動車である。自動車1は演算装置100を備える。演算装置100は、コンピュータハードウェアであって、具体的には、CPUを有するプロセッサ、複数のモジュールが格納されたメモリ等を有している。演算装置100は、半導体デバイス11(図2参照)が搭載されている。複数の半導体デバイス11は、車両の走行を制御するための演算を実行する半導体チップを有している。半導体チップには、例えば、自動車1の自動運転を可能にするためのAI(Artificial Intelligence)機能が搭載されている。半導体デバイス11は、移動体としての自動車1の走行に関する演算を行うための演算用素子の一例である。
自動車1は、演算装置100に供給する電力が蓄積されたバッテリ4を有する。バッテリ4は電源ライン5により、演算装置100と電気的に接続されている。
自動車1には、演算装置100の冷却体60に冷却水を供給するためのウォータポンプ2が設けられている。ウォータポンプ2は、流水管3を介して演算装置100の冷却体30(図3等参照)と接続されている。つまり、演算装置100は、ウォータポンプ2から供給される冷却水により冷却されるようになっている。ウォータポンプ2から冷却体60に供給される冷却水の流量は、演算装置100からの制御信号により調整可能となっている。ウォータポンプ2は、本実施形態1において、半導体デバイス11を冷却する冷却装置の一部を構成する。
図2は移動体の一例である車両に搭載される演算装置の構造例を示す断面図である。図1に示す演算装置100は、筐体101の内部に、一対の実装基板40,50と、実装基板40,50に挟まれるように配置された冷却体60とが収容されている。冷却体60は、アルミニウム合金で構成されたブロック状の本体部61と、冷却水が流通する流通経路62とを有する。
実装基板40の図面下側すなわち冷却体60側の表面と、実装基板50の図面上側すなわち冷却体60側の表面に、はんだ接合部14を介して半導体デバイス11が実装されている。各半導体デバイス11は、伝熱シート12を介して冷却体60と熱的に接続されている。半導体デバイス11には、電力センサ11a(図3参照)が搭載されている。各半導体デバイス11は、それぞれの電力センサ11aにより自信の消費電力を検出する。
また、実装基板40の図面上側の表面と、実装基板50の図面下側の表面に、半導体デバイス11以外のコンデンサなどの電気部品13が実装されている。
冷却体60は、伝熱シート12介して半導体デバイス11から伝達された熱を、本体部61を介して冷却水に伝達することで、半導体デバイス11を冷却する。つまり、冷却体60は、冷却媒体を利用して半導体デバイス11を冷却する。ウォータポンプ2、流水管3、及び冷却体60の流通経路62の少なくとも1つには、冷却水の温度を検出する水温センサ63(図3参照)が設けられている。詳しくは後述するが、冷却体60は、本実施形態1において、半導体デバイス11を冷却するための冷却装置の一部を構成する。尚、本開示における演算装置の構造は、図1に示すものに限られるものではない。
自動運転に関する計算を行う半導体デバイス11は、画像処理や走行経路の算出を行うために大量の演算処理を行う。このため、半導体デバイス11は、他の電気部品13と比較して発熱しやすく、積極的な冷却が求められる。しかし、積極的な冷却を行った結果、半導体デバイス11の発熱量が大きく増減すると、はんだ接合部14に負荷がかかるようになる。
図4〜図6には、温度分布と応力分布との関係を例示している。図4は、半導体デバイスSが配置された実装基板Bを示し、図5は、温度分布を示し、図6は、図5の温度分布を示す状態での応力分布を示す。
図4に示すように、実装基板Bには、半導体デバイスSの他、コンデンサC等の多数の電気部品が実装されている。各電気部品は、はんだを用いて実装基板Bに実装されている。本実装基板Bを用いて演算処理を行ったときには、図5に示すように、集積回路を中心として温度の高い領域が広がる。ここで示す実装基板Bでは、集積回路に近くに存在するコンデンサCにも高温の領域が広がっている。
一方で、図6の応力分布を参照すると、温度分布に対応して温度差が大きい領域(温度勾配の大きい領域)が、応力が高くなっていることが分かる。つまり、半導体デバイスSやコンデンサCが発熱すると、当該半導体デバイスS及び当該コンデンサCの周囲にかかる応力が変化する。この応力の分布は、電気部品の発熱時のみならず、過冷却の際にも発生する。すなわち、ここでは発熱による膨張変化により生じる応力を例示しているが、過冷却による収縮変化でも同様に応力が生じる。このように温度が急激に変化して強い応力が発生すると、はんだ接合部に割れが生じるなどして、実装基板Bと電気部品との間に接続不良が生じてしまう。
従来は、半導体デバイス11を冷却させる際には、半導体デバイス11又はその周囲の温度を指標として作動されるため、はんだ接合部14にかかる負荷が考慮されない。単に温度を指標としたのでは、半導体デバイス11の破壊は抑制できたとしても、はんだ接合部14の破壊までは抑制できないおそれがある。特に、過冷却が起こった場合にもはんだ接合部14に過剰な応力がかかる。このため、応力の変化を考慮した上で半導体デバイス11の冷却を行う必要がある。
そこで、本実施形態1では、演算装置100は、はんだ接合部14に生じる応力を推定して、該推定結果が所定応力未満になるように、ウォータポンプ2を作動させる。図3に示すように、演算装置100は、演算量に基づく半導体デバイス11の消費電力に基づいてはんだ接合部14に生じる応力を推定する熱応力推定部102と、ウォータポンプ2を作動制御する冷却制御部104とを有する。熱応力推定部102は、半導体デバイス11の消費電力に基づいて、該半導体デバイス11の発熱量を推定する熱量推定部103を有している。熱量推定部103は、推定した半導体デバイス11の発熱量から、半導体デバイス11のジャンクション温度の温度分布を算出する。熱応力推定部102は、ジャンクション温度の温度分布から熱応力モデルにより、当該半導体デバイス11のはんだ接合部14に生じる応力を推定する。ジャンクション温度とは、半導体デバイス11の内部温度のことであり、例えば、半導体デバイス11の内部のリード線と素子を構成する部材の接続部の発熱温度を意味する。
演算装置100による半導体デバイス11の冷却制御について、図7のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
まず、ステップS11において、演算装置100は、各半導体デバイス11について消費電力の情報を取得する。演算装置100は、各半導体デバイス11に搭載された電力センサ11aから消費電力の情報を取得する。
次に、ステップS12において、演算装置100は、発熱量予想モデルにより、消費電力から半導体デバイス11の発熱量を算出する。発熱量予想モデルは、例えば、消費電力から電力量を算出して、該電力量を発熱量に変換することで算出するモデルである。
次いで、ステップS13において、演算装置100は、熱移動モデルにより、発熱量からジャンクション温度を算出する。熱移動モデルは、発熱量から熱流束等を算出して、該熱流束等を用いて特定位置の温度変化を求めるモデルである。
続いて、ステップS14において、演算装置100は、前記ステップS13で算出したジャンクション温度に基づいて、熱移動モデルにより半導体デバイス11の周囲の温度分布を算出する。
次に、ステップS15において、演算装置100は、熱応力モデルにより応力分布を算出する。熱応力モデルは、例えば、実装基板40、はんだ接合部14、半導体デバイス11の線膨張係数の違いに基づいて、接合部近傍のひずみ量を算出して、該ひずみ量と弾性率とから弾性応力を算出するモデルである。
そして、ステップS16において、演算装置100は、ジャンクション温度とはんだ接合部14の応力とが基準範囲以内になるように、冷却水の流量の変化量を制限する流量制限制御を実行する。ステップS16の後はリターンする。
演算装置100による流量制限制御は、図8に示すフローチャートのようになっている。
まず、ステップS101において、演算装置100は、現在の冷却能力G0を取得する。冷却能力G0は、冷却水の水温と流量とにより算出されるパラメータである。演算装置100は、水温センサ63から現在の冷却水の水温を取得するとともに、ウォータポンプ2の制御状態から現在の冷却水の流量を取得して、冷却能力G0を算出する。
次に、ステップS102において、演算装置100は、現在の設定から予想される冷却能力の変化量ΔGkを算出する。冷却能力の変化量ΔGkは、冷却水の流量の変化量に相当するパラメータである。この変化量は絶対値である。
次いで、ステップS103において、演算装置100は、現在の冷却能力G0から冷却能力の変化量ΔGkを差し引いた冷却能力Gnを算出する。冷却能力Gnは、現在の冷却能力G0よりの低い値である。
続いて、ステップS104において、演算装置100は、冷却能力をG0からGnに変更したときの温度分布及び応力分布を算出する。演算装置100は、温度分布については熱移動モデルを用いて算出し、応力分布については熱応力モデルを用いて算出する。
次に、ステップS105において、前記ステップS104で算出した温度分布及び応力分布から、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力の各推定値が予め設定された基準範囲内であるかを判定する。基準範囲は、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力のそれぞれに対して設定されていて、それぞれの値が、下がりつつも過剰には低くなっていないような範囲に設定されている。演算装置100は、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力の各推定値の両方が基準範囲内であるYESのときには、ステップS107に進む一方で、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力の少なくとも一方の推定値が基準範囲外であるNOのときには、ステップS106に進む。
前記ステップS106において、演算装置100は、ΔGkを更新する。演算装置100は、例えば、ジャンクション温度の推定値が基準範囲よりも小さいときには、冷却能力が高すぎるとしてΔGkをより大きい値に更新する一方で、ジャンクション温度の推定値が基準範囲よりも大きいときには、冷却能力が不足しているとしてΔGkをより小さい値に変更する。演算装置100は、ステップS106の後は、更新されたΔGkでもって、ステップS103〜S105の処理を行う。
前記ステップS107では、演算装置100は、冷却能力をGnに変更する。ステップS107の後はリターンする。
演算装置100は、以上のようにして、半導体デバイス11を冷却させる。図9に、従来の冷却制御と、本実施形態1の冷却制御とを比較して示す。図9(a)は、従来の冷却制御における、消費電力の変化、冷却能力の変化、パッケージ−基板間温度差、はんだ接合部14の熱応力の変化を示す。図9(b)は、本実施形態1に係る流量制限制御を実行した場合における、消費電力の変化、冷却能力の変化、パッケージ−基板間温度差、はんだ接合部14の熱応力の変化を示す。図9(a)及び図9(b)は、どちらも半導体デバイス11の冷却を開始した状態であって、冷却能力は予め設定された設定値よりも高い値となっている。
図9(a)に示すように、従来の冷却制御では、時間t1aにおいて半導体デバイス11の消費電力を下げた後、一定の冷却能力を維持しながら半導体デバイス11を冷却する。このとき、冷却体60と熱的に接続されたパッケージ部分が大きく冷却される一方で、実装基板40,50は冷却が進まないため、パッケージ−基板間温度差は大きくなる。これにより、はんだ接合部14にかかる熱応力も上昇する。そして、冷却が進むと、時間t2aにおいて、実装基板40,50も冷却されるため、温度差が小さくなって、これに伴い熱応力も小さくなる。そして、時間t3aにおいて、パッケージ−基板間温度差が実質的に0になったときに、冷却能力が前記設定値まで一気に下げられる。パッケージ−基板間温度差が実質的に0になったときには、はんだ接合部14の熱応力も実質的に0になる。
一方で、図9(b)に示すように、本実施形態1の流量制限制御では、時間t1bにおいて半導体デバイス11の消費電力を下げた後、熱応力が大きく変化しないように、冷却能力を徐々に下げながら(冷却水の流量を徐々に下げながら)半導体デバイス11を冷却する。これにより、パッケージの冷却が緩やかになって、パッケージ−基板間温度差、及びはんだ接合部14にかかる熱応力は、従来と比較して小さくなる。そして、時間t2bになると、実装基板40,50も冷却されはじめて、パッケージ−基板間温度差及び熱応力が減少する。そして、時間t3bにおいて、パッケージ−基板間温度差及びはんだ接合部14の熱応力が実質的に0になるときには、冷却能力も設定値まで下げられる。
したがって、本実施形態1では、演算量に基づく半導体デバイス11の消費電力に基づいて、はんだ接合部14に生じる応力を推定する熱応力推定部102と、冷却装置(ウォータポンプ2、冷却体60)を制御する冷却制御部104とを備え、冷却制御部104は、熱応力推定部102の推定結果が所定応力未満になるように、前記冷却装置を作動させる。これにより、自動車1の実際の走行シーンに応じて、前記冷却装置を適切に制御することができ、半導体デバイス11と実装基板40,50とを接続するはんだ接合部14の接続状態が悪化することを抑制することができる。
また、本実施形態1では、冷却装置は、冷却水を利用して半導体デバイス11を冷却する装置を含み、冷却制御部104は、冷却水の流量が徐々に変化するようにウォータポンプ2を作動させる。これにより、半導体デバイス11の発熱量の変化が小さくなって、はんだ接合部14に生じる熱応力が小さくなる。したがって、半導体デバイス11による演算の精度を維持しつつ、はんだ接合部14の接続状態が悪化することを抑制することができる。
〈実施形態2〉
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態2では、半導体デバイス11の消費電力を調整することで該半導体デバイス11を冷却するとともに、はんだ接合部14に生じる熱応力を抑えるようにしている点で、前述の実施形態1とは異なる。消費電力の調整は、冷却制御部104が実行する。すなわち、本実施形態2では、冷却制御部104自身が、半導体デバイス11の消費電力を調整することで該半導体デバイス11の発熱量を調整する冷却装置の一部となっている。
図10及び図11には、本実施形態2のおける演算装置100による半導体デバイス11の冷却制御のフローチャートを示す。尚、図10のフローチャートにおいて、ステップS21〜ステップS25は、前期実施形態1のステップS11〜ステップS15と同じであるため詳細な説明は省略する。
まず、ステップS21において、演算装置100は、各半導体デバイス11について消費電力の情報を取得する。
次に、ステップS22において、演算装置100は、発熱量予想モデルにより、消費電力から半導体デバイス11の発熱量を算出する。
次いで、ステップS23において、演算装置100は、熱移動モデルにより、発熱量からジャンクション温度を算出する。
続いて、ステップS24において、演算装置100は、前記ステップS23で算出したジャンクション温度に基づいて、熱移動モデルにより半導体デバイス11の周囲の温度分布を算出する。
次に、ステップS25において、演算装置100は、熱応力モデルにより応力分布を算出する。
そして、ステップS26において、演算装置100は、ジャンクション温度とはんだ接合部14の応力とが基準範囲以内になるように、半導体デバイス11の消費電力の変化量を調整する電力制限制御を実行する。ステップS26の後はリターンする。
演算装置100による電力制限制御は、まず、ステップS201において、演算装置100は、現在の消費電力P0を取得する。
次に、ステップS202において、演算装置100は、現在の設定から予想される消費電力の変化量ΔPkを算出する。この変化量ΔPkは絶対値である。
次いで、ステップS203において、演算装置100は、現在の消費電力P0から消費電力の変化量ΔPkを差し引いた消費電力Pnを算出する。消費電力Pnは、現在の消費電力P0よりの低い値である。
続いて、ステップS204において、演算装置100は、消費電力をP0からPnに変更したときの温度分布及び応力分布を算出する。演算装置100は、温度分布については熱移動モデルを用いて算出し、応力分布については熱応力モデルを用いて算出する。
次に、ステップS205において、前記ステップS204で算出した温度分布及び応力分布から、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力の各推定値が予め設定された基準範囲内であるかを判定する。基準範囲は、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力のそれぞれに対して設定されていて、それぞれの値が、下がりつつも過剰には低くなっていないような範囲に設定されている。演算装置100は、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力の各推定値の両方が基準範囲内であるYESのときには、ステップS207に進む一方で、ジャンクション温度及びはんだ接合部14の応力の少なくとも一方の推定値が基準範囲外であるNOのときには、ステップS206に進む。
前記ステップS206において、演算装置100は、ΔPkを更新する。演算装置100は、例えば、ジャンクション温度の推定値が基準範囲よりも大きいときには、消費電力が大きすぎるとしてΔPkをより大きい値に更新する一方で、ジャンクション温度の推定値が基準範囲よりも小さいときには、消費電力が小さすぎるとしてΔPkをより小さい値に変更する。演算装置100は、ステップS206の後は、更新されたΔPkでもって、ステップS203〜S205の処理を行う。
前記ステップS207では、演算装置100は、消費電力をPnに変更する。ステップS207の後はリターンする。
図12には、従来の冷却制御と、本実施形態2の冷却制御とを比較して示す。図12(a)は、前記実施形態1において図9(a)に示した従来の冷却制御における、消費電力の変化、冷却能力の変化、パッケージ−基板間温度差、はんだ接合部14の熱応力の変化と同じである。図12(b)は、本実施形態2に係る電力制限制御を実行した場合における、消費電力の変化、冷却能力の変化、パッケージ−基板間温度差、はんだ接合部14の熱応力の変化を示す。図12(a)及び図12(b)は、どちらも半導体デバイス11の冷却を開始した状態である。
図12(b)に示すように、本実施形態2の電力制限制御では、冷却能力を一定に維持したまま、時間t1cにおいて半導体デバイス11の消費電力を徐々に下げながら(当該半導体デバイス11の演算量を低くしながら)、当該半導体デバイス11を冷却する。これにより、半導体デバイス11がある程度発熱した状態となるため、パッケージの冷却が緩やかになって、パッケージ−基板間温度差、及びはんだ接合部14にかかる熱応力は、従来と比較して小さくなる。そして、時間t2cになると、実装基板40,50も冷却されはじめて、パッケージ−基板間温度差及び熱応力が減少する。そして、時間t3cにおいて、パッケージ−基板間温度差及びはんだ接合部14の熱応力が実質的に0になるときには、冷却能力が設定値まで下げられる。このときには、消費電力は予め設定された設定電力まで下げられている。
以上のように、本実施形態2では、前記冷却装置は、半導体デバイス11の消費電力を調整することで該半導体デバイス11の発熱量を調整する装置を含み、冷却制御部104は、半導体デバイス11の消費電力が徐々に変化させる。半導体デバイス11の消費電力を徐々に変化させることで、半導体デバイス11の発熱量の変化が小さくなる。これにより、はんだ接合部14の熱応力が小さくなる。この結果、はんだ接合部14の接続状態が悪化することを効果的に抑制することができる。
〈その他の実施形態〉
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
前述の実施形態1では、冷却能力の変化量ΔGkを更新しながら、ジャンクション温度の推定値とはんだ接合部14の応力の推定値とが基準範囲内になる変化量ΔGkを算出していた。これに限らず、二分法を用いて、ジャンクション温度の推定値とはんだ接合部14の応力の推定値とが基準範囲内になる最大の変化量ΔGkを算出するようにしてもよい。また、前述の実施形態2においても、二分法を用いて、消費電力の変化量ΔPkを算出するようにしてもよい。
また、前述の実施形態1では、冷却制御部104は、ウォータポンプ2からの冷却水の流量を調整することで、冷却能力を調整していた。これに限らず、流水管3に流量調整用のバルブを設けて、該バルブの開度を調整することで冷却能力を調整するようにしてもよい。この場合、内燃機関に設けられたウォータポンプを利用することができる。
また、前述の実施形態1及び2では、移動体として自動車を例示したが、実装基板に対してはんだ接合部を介して実装されかつ移動体の走行に関する演算を行うための演算用素子と、該演算用素子を冷却するための冷却装置を有する演算装置を備えていれば、自動車に限らず、例えば、船舶、飛行機、あるいは、ロボット等であっても適用可能である。
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
ここに開示された技術は、実装基板に対してはんだ接合部を介して実装されかつ移動体の走行に関する演算を行うための演算用素子と、該演算用素子を冷却するための冷却装置を有する移動体用演算装置として有用である。
1 自動車(移動体)
2 ウォータポンプ(冷却装置)
11 半導体デバイス(演算用素子)
14 はんだ接合部
40 実装基板
50 実装基板
60 冷却体(冷却装置)
100 演算装置
102 熱応力推定部
103 熱量推定部
104 冷却制御部(制御部、冷却装置)

Claims (4)

  1. 実装基板に対してはんだ接合部を介して実装されかつ移動体の走行に関する演算を行うための演算用素子と、該演算用素子を冷却するための冷却装置を有する移動体用演算装置であって、
    演算量に基づく前記演算用素子の消費電力に基づいて、前記はんだ接合部に生じる応力を推定する熱応力推定部と、
    前記冷却装置を制御する制御部と、を更に備え、
    前記制御部は、前記熱応力推定部の推定結果が所定応力未満になるように、前記冷却装置を作動させることを特徴とする移動体用演算装置。
  2. 請求項1に記載の移動体用演算装置であって、
    前記熱応力推定部は、前記演算用素子の消費電力に基づいて、該演算用素子の発熱量を推定する熱量推定部を有するとともに、該熱量推定部により推定された前記演算用素子の発熱量に基づいて、当該演算用素子の前記はんだ接合部に生じる応力を推定することを特徴とする移動体用演算装置。
  3. 請求項1又は2に記載の移動体用演算装置において、
    前記冷却装置は、冷却媒体を利用して前記演算用素子を冷却する装置を含み、
    前記制御部は、前記冷却媒体の流量が徐々に変化するように前記冷却装置を作動させることを特徴とする移動体用演算装置。
  4. 請求項1又は2に記載の移動体用演算装置において、
    前記冷却装置は、前記演算用素子の消費電力を調整することで該演算用素子の発熱量を調整する装置を含み、
    前記制御部は、前記演算用素子の消費電力が徐々に変化するように前記冷却装置を作動させることを特徴とする移動体用演算装置。
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