JP2021179634A - チャープミラー及びチャープミラーユニット - Google Patents
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Abstract
Description
フェムト秒光パルスは、様々な波長の光が、位相を揃えた状態で重畳されて構成される。
フェムト秒光パルスは、波長毎に光の速度が異なる媒質中、即ち光の群速度に波長依存性がある媒質中を伝搬すると、ある波長の光に対して別の波長の光がその伝搬方向において相対的に速く進むことないしはその重畳により、パルス幅が広がったり、ピーク強度が下がったりする。光の群速度に波長依存性があることで、波長に応じ光の速度にずれが生ずることは、チャープと呼ばれる。
例えば、可視域の波長の光が重畳され、伝搬により赤色光が伝搬方向で他の色の光より速くチャープしたフェムト秒光パルスを、互いに異なる膜厚に係る複数のブラッグ膜を有する誘電体多層膜鏡(チャープミラーの一例)でブラック反射させ、反射における赤色光の光路長を他の色の光の光路長より長くすれば、チャープミラーにおける反射によって、速くずれた赤色光が光路長の差に応じて遅くなり、光路長の差が適切であれば、赤色光のチャープが解消されることとなる。又、他の色においても、チャープミラーの層数や膜厚を調整して光路長の差を調整すれば、同様に補償される。
そこで、特許第3569777号公報(特許文献1)のチャープ量可変装置では、2枚のチャープミラーが向かい合わせて配置され、それらの間におけるフェムト秒光パルスの反射回数を変えるための可動鏡や固定鏡が更に配置される。この装置によれば、チャープミラーにおける反射回数を変えることで、反射1回当たりの分散補償量の自然数倍の分散補償量において、フェムト秒光パルスの分散補償を行うことができる。
又、分散補償量の種類を増やすため、10回程度以上といった比較的に多い反射回数にも変えられるようにすると、装置が大掛かりになる。
更に、チャープミラーにおける反射率は現実的には100%未満であり、反射回数が増えるほど、最終的な(総合的な)反射率が低下して、フェムト秒光パルスの損失が大きくなる。
そこで、本発明の主な目的は、フェムト秒光パルスを始めとする超短光パルス等の分散補償をきめ細く行えるチャープミラーを提供することである。
又、本発明の主な目的は、反射回数を抑制することができ、分散補償による超短光パルスの損失を抑制可能であるチャープミラーを提供することである。
加えて、本発明の主な目的は、上述のチャープミラーを有することで、簡単に分散補償が行え、又コンパクトであるチャープミラーユニットを提供することである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記所定入射角域の大きさが、15°以上であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域における群速度遅延分散GDDの平均値GDDaveのフィッティング直線が、前記所定入射角域内における前記入射角θと、前記所定入射角域内の所定値である基本入射角θ0について、GDDave=a(θ−θ0)+b,−200≦a≦200,−6000≦b≦6000,という条件を満たすものであることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域が、1025nm以上1035nm以下を含んでおり、前記中心波長が、1030nmであることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域が、780nm以上820nm以下を含んでおり、前記中心波長が、800nmであることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、前記チャープミラーの反射光路を調整する光路調整ミラーを備えていることを特徴とするものである。
又、本発明の主な効果は、反射回数を抑制することができ、分散補償による超短光パルスの損失を抑制可能であるチャープミラーを提供することである。
更に、本発明の主な効果は、上述のチャープミラーを有することで、簡単に分散補償が行え、又コンパクトであるチャープミラーユニットを提供することである。
以下、超短光パルスがフェムト秒光パルスである場合について説明されるが、本発明において、超短光パルスはフェムト秒光パルスに限定されるものではない。又、本発明は、超短光パルスではない光パルスや、フェムト秒であるものを始めとした様々な周期に係る光に適用することも可能である。尚、以下、特に断られない限り、フェムト秒光パルスは単に光パルスとされる。
例えば、媒質が石英である場合、波長400nmにおける光(青色光)の群速度は約198nm/fs(ナノメートル毎フェムト秒)であり、550nm(緑色光)での群速度は約202nm/fsであり、700nm(赤色光)での群速度は約204nm/fsであって、400nm以上1200nmの波長域において、波長(nm)の増加に応じ、群速度(nm/fs)が緩やかに単調増加する。
よって、石英中を伝搬する光パルスは、赤色光が緑色光や青色光に対して相対的に速くなり、赤色光が伝搬方向で先行するようにずれて行く。
尚、群速度Vg(nm/fs)は、波長をλ(nm),波長λの関数である媒質の屈折率をn(λ)、光速をc(nm/fs)とすると、次の[数1]で表される。
例えば、チャープミラーの反射面において、互いに異なる膜厚に係る複数のブラッグ膜を有する光学多層膜が形成されれば、ブラッグ反射により、光パルスは各波長の光の光路長に差が付いた状態で反射される。又、回折格子により、光パルスが各波長の光の光路長に差が付いた状態で反射されるようにすることも可能である。
光パルスは、ブラッグ反射により、角速度ωの関数である位相のずれ即ちチャープミラーの反射位相φ(ω)を生ずる。反射位相φ(ω)は、時刻をt(秒)、所定の定数をCとすると、次の[数5]で表される。
又、ωの非線形項の最低次項である−∂2φ/∂ω2|0は、φとして中心波長の値が代入されるものであり、群速度遅延分散GDD(Group Delay Dispersion)に対応するものであって、位相のずれの指標となる。そして、GDD=−∂2φ/∂ω2である。
チャープを経た光パルスのピーク強度Imaxないしパルス幅Δτは、群速度分散GVDと同様に、群速度遅延分散GDDを用いて、順に次の[数6],[数7]で表すこともできる。
ここで、iは、伝搬経路中における媒質の種類毎に付されるナンバーであり、伝搬経路に石英ガラスと空気が存在する場合は、例えばi=1(石英),i=2(空気)である。又、GVD1は石英のGVDであり、GVD2は空気のGVDである。更に、媒質の厚さ1は石英の厚さ(石英における経路長)であり、媒質の厚さGVD2は空気の厚さ(空気における経路長)である。
即ち、チャープミラーにおいて、伝搬経路全体におけるGVDが打ち消されるGDDを有するようにすれば、分散補償がなされる。
尚、400nm以上1200nmの波長域において、石英のGVDも空気のGVDも共に単調減少し、波長800nmの光において石英のGVDは363.49fs2/cm、空気のGVDは0.21fs2/cmであって、他の波長でも同様のオーダーであることから、石英のGVDは空気のGVDのおよそ1000倍であり、目安として石英中を1mm(ミリメートル)進行する場合のGVDと空気中を1m(メートル)進行する場合のGVDがほぼ同様になる。
従って、例えば、向かい合わせのチャープミラーMpにおいて所定の入射角ないし反射角で合計10回各反射地点R1〜R10で反射されるように光パルスP2を入射させて、図1(b)において一点鎖線で示されるGVDを有する光パルスP2が、各反射によるGDDの減少によりGVDが都度減少され(同図における10本の実線)、760nm以上850nm以下の波長域で分散補償される(光パルスP3)。尚、同図の実線に対し、反射地点R1〜R10と同じ符号が付される。
ここでのチャープミラーMpは、当該入射角において、当該波長域におけるGVDの大きさの1/10に相当する大きさであるGDDを有するものとされており、当該波長域においておよそ−60fs2(600の1/10)でフラットである。尚、GDDがマイナスであるチャープミラーMpは、負分散ミラーとも呼ばれる。
光パルスP1は、発振装置から発出され、例えば模式的に7段階の波長成分(図1(a)における短波長側から順に波長成分W1〜W7)を互いに位相が揃った状態で有しているところ、1cm厚の光学ガラスBK7ないし空気を通ってチャープミラーMpに達するまでに、長波長側の波長成分W7,W6・・が短波長側の波長成分W1,W2・・に対して伝搬方向で先行するようにチャープする。かようにチャープした光パルスP2のGVDは、図1(b)の一点鎖線Gのようになるところ、1回目の反射で当該波長域において1/10程度即ち60fs2程度減少し、同図において一点鎖線Gに最も近い(最上の)実線R1で示されるGVDとなる。又、2回目の反射で、図1(b)において次に近い(上から2番目の)実線R2に係るGVDとなり、以下同様にして、10回目の反射で、当該波長域にわたってGVDが0となって、光パルスP1と同等であるように補償された光パルスP3が得られる。
かような従来の向かい合うチャープミラーMpでは、光学ガラスBK7の厚みが変わる場合、60fs2/cm又はその倍数に相当するようにGVDが変化する厚みの離散的な変化に対しては、反射回数を変更することで分散補償可能であるが、その離散的な厚み以外の厚みに対しては、光学多層膜(ブラッグ膜構成)について別途設計された別のチャープミラーMpが必要になる。
従って、光パルスのチャープミラー反射面に対する入射角を、光パルス入射経路に対するチャープミラーの相対的な回転等によって調整すれば、GDDを連続的に変化させることができ、光学ガラスBK7の厚みが様々に変わる等、光パルスの伝搬経路が様々に変化したとしても、光パルスに対して分散補償を行うことができる。
尚、本発明において、光パルスの入射角の変化に応じGDDが単調増加または単調減少するチャープミラーが、10回程度の反射のなされる光学系に組み込まれても良く、この場合であっても、チャープミラーの相対的な回転により、GDDを容易に微調整することができる。
又、入射角θの変化の幅Δθ(所定入射角域の大きさ)は、15°以上あれば、GDDの調整幅や調整精度を十分に確保することができる。入射角の変化の幅Δθ内において、最も多用する(設計においてGDDが狙った値をとる)角度として定められた基本入射角θ0が含まれるようにすれば、基本入射角θ0を標準として入射角θを変化の幅Δθ内で調整することにより、GDDがより調整し易くなる。尚、基本入射角θ0は、所定入射角域内に含まれていれば、どのような値であっても良く、所定入射角域内の定数(所定値)であると言える。又、入射角の変化の幅Δθについて、5°以上とすることもできるし、10°以上とすることもできるし、20°以上とすることもできるし、他の任意の値以上とすることもでき、大きいほどGDDの調整幅が十分なものとなり、あるいはGDDの微調整が可能となる。
更に、対象とする波長域は、用途やチャープミラーの作製の容易さ等に応じて限定されていて良く、1025nm以上1035nm以下あるいはこれを含むものとされれば、中心波長1030nmのYb:YAGレーザーに係る光パルスの分散補償に好適なものとなり、780nm以上820nm以下あるいはこれを含むものとされれば、中心波長800nmのTi:Sapphireレーザーに係る光パルスの分散補償に好適なものとなる。
加えて、対象とする波長域におけるGDDの平均値GDDaveが、入射角θと基本入射角θ0を用いて、次の[数9]で示される関係を有するようにすれば、チャープミラーが一層GDDを調整し易いものとなる。ここで、aは定数であって、−200≦a≦200[fs2/°]であり、bは定数であって、−6000≦b≦6000[fs2]である。
更に、かようなチャープミラーユニットにおいて、チャープミラーが複数設けられていても良いし、回転移動可能及び平行移動可能な複数のチャープミラーが設けられていても良いし、1以上の回転するチャープミラーと1以上の通常のミラー(分散補償せずあるいはGDD変化させずに反射即ち伝搬方向変換のみ行うことを目的としたミラー)が設けられていても良い。
但し、実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。特に、実施例の中心波長は、800nmあるいは1030nmとされているところ、本発明における中心波長は、これらのものに限られない。
又、本発明の捉え方により、実施例が本発明の範囲外となる実質的な比較例となったり、比較例が本発明の範囲内である実質的な実施例となったりすることがある。
基材は、直径30mmの円形板状であり、光学ガラスBK7製である。
尚、反射面における誘電体多層膜は、真空蒸着によって、膜物質を、各膜厚の制御された状態で交互に蒸着させることで実際に形成可能である。
実施例7における誘電体多層膜は、奇数層がNb2O5(高屈折率層)、偶数層がSiO2であり、各層は図8に示すような物理膜厚を有している。実施例7における誘電体多層膜の全層数は、44である。
実施例8〜9における誘電体多層膜は、奇数層がTa2O5、偶数層がSiO2であり、各層は順に図9〜10に示すような物理膜厚を有している。実施例8〜9における誘電体多層膜の全層数は、順に58,70である。
実施例10〜11における誘電体多層膜は、奇数層がNb2O5、偶数層がSiO2であり、各層は図11〜12に示すような物理膜厚を有している。実施例10〜11における誘電体多層膜の全層数は、順に62,66である。
実施例12〜16における誘電体多層膜は、奇数層がTa2O5、偶数層がSiO2であり、各層は順に図13〜17に示すような物理膜厚を有している。実施例12〜16における誘電体多層膜の全層数は、順に62,62,72,50,50である。
実施例17〜18における誘電体多層膜は、奇数層がNb2O5、偶数層がSiO2であり、各層は順に図18〜19に示すような物理膜厚を有している。実施例17〜18における誘電体多層膜の全層数は、順に44,44である。
光パルスの波長は、実施例1〜6,8〜9,12〜16において中心波長1030nmないしその前後の1025nm,1035nm(Yb:YAGレーザー)であり、実施例7,11,17〜18において中心波長800nmないしその前後の780nm,820nm(Ti:Sapphireレーザー)である。
実施例1〜18に係る0°〜90°の入射角依存性が、順に図20〜37に示される。
他方、45≦θ≦68(Δθ=23)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、45≦θ≦52(Δθ=7)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、75≦θ<90(Δθ=15)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、40≦θ≦57(Δθ=17)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、70≦θ<75(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、38≦θ≦62(Δθ=24)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、38≦θ≦62(Δθ=24)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、38≦θ≦43(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、50≦θ≦55(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、62≦θ≦72(Δθ=10)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、70≦θ≦77(Δθ=7)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、0≦θ≦33(Δθ=33)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
更に、55≦θ≦58(Δθ=3)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、70≦θ<90(Δθ=20)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、23≦θ≦33(Δθ=10)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、85≦θ<90(Δθ=5)において、対象波長域に係るGDDが単調増加している。
他方、0≦θ≦10(Δθ=7)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
他方、0≦θ≦30(Δθ=30)において、対象波長域に係るGDDが単調減少している。
又、5≦θ≦30の入射角範囲における実施例12の反射率とGDDとが図60に示され、1020〜1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例12の反射率とGDDとが図61に示される。図31,60によれば、0≦θ≦13(Δθ=13)において対象波長域に係るGDDが単調減少しており、19≦θ≦22(Δθ=3)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、0≦θ<15(Δθ=15)において単調減少しており、15≦θ≦22(Δθ=7)において単調増加している。
又、5≦θ≦30の入射角範囲における実施例13の反射率とGDDとが図62に示され、1020〜1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例13の反射率とGDDとが図63に示される。図32,62によれば、0≦θ≦7(Δθ=7)において対象波長域に係るGDDが単調減少しており、15≦θ≦17(Δθ=2)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、0≦θ<12(Δθ=12)において単調減少しており、12≦θ≦17(Δθ=5)において単調増加している。
又、5≦θ≦30の入射角範囲における実施例14の反射率とGDDとが図64に示され、1020〜1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例14の反射率とGDDとが図65に示される。図33,64によれば、9≦θ≦16(Δθ=7)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、5≦θ≦22(Δθ=17)において単調増加している。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例15の反射率とGDDとが図66に示され、1020〜1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例15の反射率とGDDとが図67に示される。図34,66によれば、35≦θ≦42(Δθ=7)において対象波長域に係るGDDが単調減少しており、50≦θ≦53(Δθ=3)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、30≦θ≦42(Δθ=12)において単調減少しており、45≦θ≦55(Δθ=10)において単調増加している。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例16の反射率とGDDとが図68に示され、1020〜1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例16の反射率とGDDとが図69に示される。尚、図69(b)において、θ=55のデータは省略されている。
図35,68によれば、51≦θ≦53(Δθ=2)において対象波長域に係るGDDが単調増加している。尚、中心波長のGDDは、0≦θ≦43(Δθ=43)において単調減少しており、50≦θ≦54(Δθ=4)において単調増加している。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例17の反射率とGDDとが図70に示され、1020〜1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例17の反射率とGDDとが図71に示される。図36,70によれば、この入射角範囲において対象波長域1025〜1035nmに係るGDDが何れも単調増加したり、何れも単調減少したりする部分は見受けられない。
又、35≦θ≦55の入射角範囲における実施例16の反射率とGDDとが図72に示され、1020〜1040nmにおいて所定の入射角毎に波長を変化させた場合の実施例18の反射率とGDDとが図73に示される。図37,72によれば、対象波長域のGDDが、42≦θ≦44(Δθ=2)において単調増加する。
光パルスの入射角θは、図74に示すようなチャープミラーユニット(分散補償ユニット)によって、容易に調整することができる。
即ち、チャープミラーユニットUは、光パルスP(伝搬経路即ち光路について一点鎖線で示される)の入射口IN及び出射口OUTを有するケース2と、光学多層膜E(誘電体多層膜)が形成された反射面Fを有するチャープミラーMと、チャープミラーMを回転可能であり又所望の回転位置で保持可能であるチャープミラー回転機構3と、光路調整ミラー4と、光路調整ミラー4を回転可能ないし平行移動可能であり又所望の回転位置ないし平行移動位置で保持可能である光路調整ミラー移動機構5と、を備えている。
チャープミラーM(実施例1〜18の何れか等)は、ケース2内において、チャープミラー回転機構3を介して設けられている。チャープミラー回転機構3は、チャープミラーMにつながる鉛直方向の軸6を有しており、チャープミラーMを、その反射面Fの一点(例えば中心点)を含む鉛直線の周りで回転させ、又所望の回転位置で保持する。当該反射面Fの一点は、ここでは入射口INから入った光パルスPを受ける(反射させる)点である。
光路調整ミラー4は、ケース2内において、光路調整ミラー移動機構5を介して設けられている。光路調整ミラー移動機構5は、光路調整ミラー4につながる鉛直方向の軸(図示略)と、その軸が入るレール7とを有しており、光路調整ミラー4を、その中心を通る鉛直線の周りで回転可能であるようにし、又入射口INから入った光パルスPの伝搬経路と平行なレール7に沿って平行移動可能であるようにし、更に所望の回転位置ないし平行移動位置で保持する。光路調整ミラー4は、ここでは、対象波長域内で、何れの入射角においても(少なくとも対象入射角全域で)GDDがほぼ0である低分散ミラーである。尚、光路調整ミラー4は、光学多層膜を備えない金属製のミラーであっても良いし、光学多層膜を有するミラーであっても良いし、チャープミラーであっても良い。
出射口OUTは、レール7の仮想的な延長線上あるいはその隣接部位に配置され、入射口INと反対側に配置される。光路調整ミラー4は、チャープミラーMからの光パルスPの伝搬方向即ち反射光路の方向を、出射口OUTに向かう方向であって、レール7と平行な方向に変える。尚、出射口OUTは、入射口INと同じ側等に配置されても良い。又、光路調整ミラー4は、光パルスPの伝搬方向を、レール7と平行ではない方向や入射口INから入った光パルスPと平行ではない方向に変えても良い。又、光路調整ミラー4が複数設けられるようにし、反射光路が様々に変更されるようにしても良い。
加えて、光路調整ミラー4が、チャープミラーMと平行となるように回転され、更にチャープミラーMからの光パルスPを反射するように平行移動されれば、チャープミラーMにより分散補償された光パルスPは、入射口INからの光パルスPと平行な一定の光路で出射口OUTから出ることとなり、チャープミラーMの回転移動毎にチャープミラーユニットU外部の光学系を調整し直す必要がなく、手間がかからない。
尚、光路調整ミラー4がチャープミラーである場合、チャープミラーMは、反射された光パルスが光路調整チャープミラーにより補償される分と同等のGDDを有するように、角度調整(GDD調整)される。
例えば、実施例1では、5≦θ≦30の範囲において、中心波長1030nmに係るGDDが、入射角θに対して、−1000程度から−180程度までにかけて単調増加している。
かような入射角θの範囲において入射角θを変更すれば、GDDを連続的に変更することができ、又単調増加あるいは単調減少により、入射角θの増加に対してGDDの変化が常に増加あるいは減少となって、入射角θの調整によるGDDの調整が行い易い。
例えば、実施例1では、図39(b)に示されるように、対象波長域1025〜1035nmの何れの波長に対しても、入射角θ[°]=5のGDDより10のGDDが大きく、同様に15,20,25,30の順でGDDがより大きく、対象波長域内における何れの波長においても、対象とする入射角変化領域(5≦θ≦30)内でGDDが入射角θについて単調増加し、入射角を増すと対象波長域全域でGDDが単調増加する。
例えば、実施例1では、図38(b)に示されるように、5≦θ≦30において、1025nm(対象波長域最小端)のGDD分布と、1030nm(中心波長)のGDD分布と、1035nm(対象波長域最大端)のGDD分布とが、何れもGDD=−1000〜−200にかけて右上がりの直線に沿ったものとなっており、互いに重なっている。よって、対象波長域の大部分ないし全部において、入射角θに対するGDDの値が同様となる。
実施例1では、対象波長域のGDDの平均値GDDaveの入射角θに対する分布に対して、対象波長域最小端のGDD分布と、中心波長のGDD分布と、対象波長域最大端のGDD分布とが、何れもGDDaveの変化幅の上下各15%以内に全て入っている。実施例1のθ=30において、GDDaveの値(−160)に対して対象波長域最大端(1035nm)のGDDの値(−40)が最も離れているところ、対象波長域におけるGDDaveの変化幅は840(−1000−(−160)の絶対値)であり、その上15%は−160+840×0.15=−34であって、−34≧−40であるから、GDDaveの値に対して対象波長域最大端のGDDの値は、GDDaveの変化幅の上15%以内に入っており、対象波長域最小端のGDD分布と、中心波長のGDD分布と、対象波長域最大端のGDD分布との同等度が高い。尚、GDDaveの変化幅の15%以内ではなく、5%以内、10%以内、20%以内、あるいは他の任意の値以内とすることもでき、小さいほど対象波長域におけるGDD分布の同等性が高くなる。又、GDDaveに代えて、そのフィッティング直線において上下所定%以内であるための基準線及び変化幅の少なくとも一方を把握することもできる。
かような観点を加味すると、実施例17は、0≦θ<90の何れの入射角においても、対象波長域最小端のGDD分布と、中心波長のGDD分布と、対象波長域最大端のGDD分布との同一性が少なく、又共に単調増加あるいは共に単調減少する入射角域も少なく、従って、他の実施例の方がより一層GDDを調整し易いものとなっている。
例えば、実施例5では、図47で示されるように、GDDの値が波長の関数として増加しているので、このミラーは負の3次分散(Third Order Dispersion:TOD)を有している(TOD<0)。ここで、TODは、上記[数5]におけるωの非線形項の第2項であり、TOD=−∂3φ/∂ω3|0である。入射角が増加すると、波長間の大小関係が変わることなく、GDDが単調増加する。即ち、3次分散が固定された状態で、2次分散であるGDDが調整可能となる。
かようなフィッティング直線を有するものとして、上述の通り、実施例1〜3,5〜7(5≦θ≦30),実施例4(5≦θ≦29),実施例8(37≦θ≦53),実施例9(37≦θ≦54),実施例10(36≦θ≦55),実施例11(35≦θ≦55)が挙げられる。尚、実施例14では、a=226.3となり、この観点からは急激に変化し過ぎるものとなる。
かような特徴を有するものとして、実施例6(5≦θ≦30,GDD=−2800〜1000),実施例12〜15が挙げられる。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記所定入射角域の大きさが、15°以上であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域における群速度遅延分散GDDの平均値GDDaveのフィッティング直線が、前記所定入射角域内における前記入射角θと、前記所定入射角域内の所定値である基本入射角θ0について、GDDave=a(θ−θ0)+b,−200≦a≦200,−6000≦b≦6000,という条件を満たすものであることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域が、1025nm以上1035nm以下を含んでおり、前記中心波長が、1030nmであることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記所定波長域が、780nm以上820nm以下を含んでおり、前記中心波長が、800nmであることを特徴とするものである。
Claims (7)
- 所定波長域内の中心波長での群速度遅延分散GDDの値が、入射角θの関数となっており、所定入射角域内で、単調増加又は単調減少する
ことを特徴とするチャープミラー。 - 前記所定入射角域の大きさが、15°以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のチャープミラー。 - 前記所定波長域における群速度遅延分散GDDの平均値GDDaveのフィッティング直線が、前記所定入射角域内における前記入射角θと、前記所定入射角域内の所定値である基本入射角θ0について、
GDDave=a(θ−θ0)+b,
−200≦a≦200,
−6000≦b≦6000,
という条件を満たすものである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチャープミラー。 - 前記所定波長域が、1025nm以上1035nm以下を含んでおり、
前記中心波長が、1030nmである
ことを特徴とする請求項1ないしは請求項3の何れかに記載のチャープミラー。 - 前記所定波長域が、780nm以上820nm以下を含んでおり、
前記中心波長が、800nmである
ことを特徴とする請求項1ないしは請求項3の何れかに記載のチャープミラー。 - 請求項1ないしは請求項5の何れかに記載のチャープミラーと、
前記チャープミラーを入射光路に対して相対的に回転させるチャープミラー回転機構と、
を備えている
ことを特徴とするチャープミラーユニット。 - 前記チャープミラーの反射光路を調整する光路調整ミラー
を備えている
ことを特徴とする請求項6に記載のチャープミラーユニット。
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