上述の従来技術は、霜付きによる異常を検知するものであり、またその異常も、冷媒を逆流(冷媒サイクルを反転)させるか、ヒーターで加熱するか等により、都度、機器自身で、解消可能なものである。しかしながら、熱交換器へのゴミの付着のような、機器自身での問題の解消が困難であったり、また瞬時に運転停止を判断しなければならないような熱交換器の異常は、判定できない。
本発明の目的は、熱交換器の2次側冷媒の流路の閉塞を正確に判定することができる熱交換器の閉塞検知装置および方法を提供することである。
本発明の熱交換器の閉塞検知装置は、熱源からの熱を搬送する1次側熱冷媒と、系の外部へ熱を搬送する少なくとも1系統以上の2次側流体との熱交換を行う熱交換器における前記2次側流体の流路の閉塞を検知する装置であって、前記熱交換器の代表温度を検出する第1の検出手段(T1)と、前記熱交換器で熱交換された前記2次側流体の温度を検出する第2の検出手段(T2)と、前記第2の検出手段の検出結果と前記第1の検出手段の検出結果との差分を求める演算手段と、前記2次側流体が、加熱されるときは前記差分が予め定める閾値より大きくなる場合に、もしくは冷却されるときは前記差分が予め定める閾値より小さくなる場合に、前記熱交換器の前記2次側流体の流路に閉塞が生じていると判定する判定手段とを含むことを特徴とする。
また、本発明の熱交換器の閉塞検知方法は、熱源からの熱を搬送する1次側熱冷媒と、系の外部へ熱を搬送する少なくとも1系統以上の2次側流体との熱交換を行う熱交換器における前記2次側流体の流路の閉塞を検知する方法であって、前記熱交換器の代表温度(T1)を検出する第1の検出ステップと、前記熱交換器で熱交換された前記2次側流体の温度(T2)を検出する第2の検出ステップと、前記2次側流体の温度(T2)の検出結果と前記熱交換器の代表温度(T1)の検出結果との差分(T2−T1)を求める演算ステップと、前記2次側流体が、加熱されるときは前記差分(T2−T1)が予め定める閾値より大きくなる場合に、もしくは冷却されるときは前記差分(T2−T1)が予め定める閾値より小さくなる場合に、前記熱交換器の前記2次側流体の流路に閉塞が生じていると判定する判定ステップとを含むことを特徴とする。
上記の構成によれば、熱交換器を用いる、たとえば空気調和機では、その異常としては、圧縮機や送風機(ファンモータ)の劣化、弁の開閉や切換え不良、配管の詰まり、ガス抜けなどが生じる。しかしながら、それらの異常について、或る程度の部分は、前記空気調和機の自己診断などで検知され、適宜保護動作が行われたりもする。
一方、放熱フィンが露出して、一般に前記熱交換器の外側となる2次側流体の流路には、ゴミなどの異物が付着することがある。たとえば、前記2次側流体が空気で、熱交換器が送風機により冷却または加熱される空気調和機の室外機や給湯器の場合に顕著であり、たとえばビニルや枯葉等のゴミなどによる閉塞が生じ、熱交換の効率低下などを招く可能性がある。ところが、従来では、このような熱交換器の閉塞は正確には検知できない。詳しくは、枯葉や埃などの小さなゴミでは長期に亘って徐々に変化するので、兆候を捉え難く、またビニルなどの突発的に飛来する大きな物では、従来から得られていた前記自己診断などのための他の情報から異常を検知した時点で、重故障に陥ってしまうのが実情であった。特に、前記自己診断などのための他の情報では、圧縮機の稼働状態や制御の介入による変動が大きく、正確な判定は困難であった。現状、たとえば業務用の前記空気調和機ではサービスマンがフィルターや熱交換器を目視で確認して洗浄したり、パーソナルコンピュータのファンではユーザが埃の付着を感じてブラシなどで取り除いたりして、メンテナンスが行われている程度である。
そこで本件発明者は、熱交換器の2次側流体の流路における異物による閉塞を検知するために、前記稼働状態や制御の影響が少なく、精度良く判定できる情報を検討してきた。中でも、熱交換器の温度は、前記稼働状態や制御による影響が比較的少なく、その時点の負荷(前記稼働状態)の基準(平均)指標とすることができる可能性があるので、本発明では、これを、第1の検出ステップにおいて、第1の検出手段(T1)によって検出する。
一方、熱交換器で熱交換された2次側流体の温度、たとえば空気による冷却や加熱の場合では排出空気温度は、その時点の実際の熱交換器の熱交換能力を、速やかに、かつ適切に表わすことができる(前記稼働状態や制御の影響が少ない)。本発明では、これを、第2の検出ステップにおいて、第2の検出手段(T2)によって検出する。
そして、演算ステップにおいて、演算手段で、上記熱交換器の2次側流体の温度(T2)と熱交換器の温度(T1)との差分(T2−T1)を求めることで、熱交換器にゴミなどの異物の付着が無く、正常に機能していれば、それらの差分(T2−T1)は、2次側流体が、加熱されるときは大きく、冷却されるときは小さくなり、一方、ゴミなどの付着による閉塞の影響で2次側流体の流量が低下すれば、それらの差分(T2−T1)が逆の兆候を現すと予測できる。
したがって、前記差分(T2−T1)を、判定ステップにおいて、判定手段で所定の閾値と比較することで、一定の負荷(前記稼働状態)に維持した状態でなくても、その時点の負荷(前記稼働状態)に対して、熱交換器が実際にどれだけの熱交換能力を発揮できているか、すなわちゴミなどの異物による2次側冷媒の流路の閉塞状況を、正確に判定することができる。
さらにまた、本発明の熱交換器の閉塞検知装置では、前記1次側熱冷媒はフロンまたはその代替物であり、前記2次側流体は空気であり、前記熱交換器は送風機で前記冷却もしくは加熱されることを特徴とする。
また、本発明の熱交換器の閉塞検知装置では、前記第1の検出手段(T1)は、前記熱交換器の略中心部の温度を前記代表温度として検出することを特徴とする。
上記の構成によれば、熱交換器の温度の中でも、1次側熱冷媒がフロンまたはその代替物であり、2次側流体が空気である場合、熱交換器は、冷媒配管に放熱フィンが設けられて成り、1次側熱冷媒は二相状態であり、大気から吸排熱した熱はこの1次側熱冷媒の潜熱だけ変化し、温度は変化しない。そして、熱交換器の代表温度として略中心部の温度を検出することで、たとえば暖房運転の場合、熱交換器の入口冷媒は膨張弁開度と圧縮機の稼働状態とにより温度変化が大きく、また出口は気相となり、顕熱変化が大きくなるのに対して、前記略中心部の1次側熱冷媒の温度(T1)は、前記稼働状態や制御による影響が少なく、また冷媒の流れが逆転する冷暖のいずれでも同様に、その時点の負荷(前記稼働状態)の基準(平均)指標とすることができ、好適である。
さらにまた、本発明の熱交換器の閉塞検知装置では、前記判定手段の判定結果で、前記閉塞が生じている場合は、警告を発する警告手段をさらに備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、熱交換器の閉塞を判定手段で判定後、警告手段が、たとえば警報音、ランプの点灯や点滅、画面表示などで警告を発することで、使用者や、監視センターの係員などは、常時監視を行う必要がなく、監視のための負担を軽減することができる。
また、本発明の熱交換器の閉塞検知装置では、少なくとも前記判定手段の判定結果を、記録してゆく記録手段をさらに備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、判定手段の判定結果を、記録手段で、所定期間に亘り記録しておくことで、部品交換など、メンテナンスの必要性の判断に役立てることができる。
さらにまた、本発明の熱交換器の閉塞検知装置は、空気調和機に設けられることを特徴とする。
また、本発明の熱交換器の閉塞検知装置は、前記空気調和機における少なくとも室外機に設けられることを特徴とする。
上記の構成によれば、送風機により冷却または加熱される熱交換器を備える機器の内、空気調和機、特にその室外機は、屋外などに設置され、ゴミなどの異物が付着し易く、また、普段人目に付かず、さらに人目があっても前記異物による閉塞などは気にされるケースが殆ど無い。
したがって、空気調和機の室外機に、そのような異物による閉塞を遠隔監視する本閉塞検知装置は、特に好適である。
さらにまた本発明の熱交換器の閉塞検知装置では、前記第1および第2の検出手段の検出結果を集約する監視ユニットを備え、前記演算手段および判定手段は、前記検出結果を前記監視ユニットから受けるアルゴリズムで実現され、前記アルゴリズムの判定結果は、通信回線を介して接続されるモニターに表示されて、遠隔監視を実現することを特徴とする。
上記の構成によれば、前記第1および第2の検出手段の検出結果を集約するとともに、それらの検出手段の検出の際に必要となる電源を発生する監視ユニットを設ける一方、前記差分の演算を行う演算手段および異常判定を行う判定手段は、たとえばクラウド環境などに設けられた専用のアルゴリズムに与えられて、監視が行われる。その監視の結果は、通信回線を介して接続されるモニターに表示される。
したがって、たとえば長期メンテナンスに必要な情報となる前記室外機へのゴミの付着状況は、従来では、実際にサービスマンが出向いて目視で確認するしか無かったところ、またサービスマンが実際に現場に出向いて各種の検出手段で検出して判定を行う必要があったのに対して、さらにまた、ビニルなど、突発的に大きな飛来物があっても、本発明では、空気調和機のメンテナンス会社の監視センターや、空気調和機を設置している事業所のモニターで、遠隔監視することができる。これによって、サービスマンは、ゴミの除去などの実際のメンテナンス作業が必要になってから出向けばよく、メンテナンス作業を効率化することができる。
また本発明の熱交換器の閉塞検知装置では、前記第1および第2の検出手段ならびに前記監視ユニットは、前記室外機毎に設けられることを特徴とする。
上記の構成によれば、空気調和機の異常を検知するにあたって、室内機では、フィルターの汚れや、ファンの回転不良などで、異常の発生する項目および可能性は少なく、そのため遠隔監視するにあたっても、複数台の室内機の内の代表機の監視を行えば良いのに対して、室外機では、該室外機(熱交換器)へのゴミの付着だけでなく、熱交換器の詰まり、弁の開閉や切換え不良、ファンの回転不良、ガス抜けなど、異常の発生する項目および可能性は大きく、また複数台の各室外機の状況も異なる。
したがって、各室外機には前記第1および第2の検出手段ならびに監視ユニットを設ける一方、演算手段および判定手段は、前記のアルゴリズムや監視センターなどで複数台の室外機を監視することができ、異常の検知精度を向上しつつ、監視の構成を簡略化することができる。
本発明の熱交換器の閉塞検知装置および方法は、以上のように、稼働状態や制御による影響が少なく、その時点の負荷(前記稼働状態)の基準(平均)指標とすることができる熱交換器の温度を第1の検出手段(T1)によって検出し、その時点の実際の熱交換器の熱交換能力を、速やかに、かつ適切に表わすことができる該熱交換器の2次側流体の温度を第2の検出手段(T2)によって検出し、演算手段において、それらの差分(T2−T1)を求め、判定手段で閾値と対比して、ゴミなどの付着による閉塞の影響で流量が低下しているか否かを判定する。
それゆえ、一定の負荷(前記稼働状態)に維持した状態でなくても、その時点の負荷(前記稼働状態)に対して、熱交換器が実際にどれだけの熱交換能力を発揮できているか、すなわちゴミなどによる閉塞状況を、前記差分の大きさから正確に判定することができる。
図1は、本発明の実施の一形態に係る熱交換器の閉塞検知装置を用いる空気調和機のメンテナンスシステムの全体構成を示すブロック図である。本システムの概要は、各顧客先に設けられた1または複数台(図1では図面の簡略化のために1台分のみ示す)の空気調和機1の状態を、図示しないセンサおよび監視ユニット21,31で検出し、その検出結果を、公衆無線通信回線41を備えるネットワークサービス4で集約し、遠隔監視するものである。前記の検出結果は、前記ネットワークサービス4におけるクラウド環境42に設けられる専用アルゴリズムで集約され、後述の演算および異常判定が行われる。前記専用アルゴリズムからは、インターネット回線5を介して、監視センターのコンピュータ6や、顧客先のパーソナルコンピュータ7に、前記の判定による警告を発したり、検出結果の記録を表示したりする。
パーソナルコンピュータ7は、空気調和機1を設置する事業所に設置されるものであり、コンピュータ6は、その事業所からメンテナンスを請け負うサービス会社に設置される。コンピュータ6には、空気調和機1の監視結果や、それに応じたメンテナンスの立案などに有効な情報が、前記クラウド環境42の専用アルゴリズムから提供される。前記メンテナンスの情報は、前記インターネット回線5を介して、各顧客先のパーソナルコンピュータ7へ送信され、メンテナンス作業の調整が行われたり、またネットワークサービス4を介して、サービスカー81や、サービスマンの携行する情報端末82へ、実際のメンテナンスの指示として与えられたりする。ネットワークサービス4は、たとえば3G−LTE回線から成る前記公衆無線通信回線41や、前記クラウド環境42を実現するサーバコンピュータなどを備えて構成され、このネットワークサービス4の構成や、インターネット回線5との組合わせは任意である。
空気調和機1は、室内機2と、室外機3と、リモコン11とを備えて構成され、室内機2および室外機3へは、商用電源12から、電源線15を介して電源供給が行われる。室内機2と室外機3との間は、冷媒(1次側熱冷媒)のための配管13で接続される。リモコン11からの運転指示は、制御線14を介して室外機のコントローラ16へ送信され、また室内機2および室外機3に設けられる多数のセンサの検出結果も、前記制御線14を介してコントローラ16へ送信される。コントローラ16は、前記センサの検出結果から、過電流やガスの抜けなど、深刻な異常が発生した場合には、適宜安全のために保護動作を行ったりする。メーカのサービスマンなどは、コントローラ16に蓄積された運転データを、たとえばリモコン11に接続したツールから読出したりすることが可能になっている。
このように空気調和機1に予め設けられている各種のセンサの検出結果を、特に大規模なビルや商業施設などでは、設置した機器メーカや、工事を請け負った企業などに設けたサービスセンターへ送信し、電力や照明などの他のインフラ設備とともに、遠隔監視やメンテナンスが行われることもある。しかしながら、本発明は、そのような機器メーカによるメンテナンスではなく、たとえば本件出願人のようなメンテナンスを専門に行う会社、たとえば前記コンピュータ6が設置される監視センターを運営する会社が、独自に、後述のセンサや前記監視ユニット21,31を空気調和機1に設置(後付け)して、遠隔監視やメンテナンスを行うシステムである。監視ユニット21,31および後述のセンサは、前記メンテナンスを専門に行う会社から、顧客先に販売され、或いは契約に伴い、リースで貸し出されたりする。
或いは、顧客先で或る程度の台数の空気調和機1を保有する場合などで、前記メンテナンスを専門に行う会社から本システムが買取られるなどした場合、遠隔監視は顧客先で行われてもよい。詳しくは、監視ユニット21,31からの検出結果は、適宜、有線、無線で、前記専用アルゴリズムが格納されたパーソナルコンピュータ7に送信され、検出結果の蓄積や異常判定、警告の表示が行われる。
各室内機2については、前記自己診断から保護動作のために、メーカにより予め取付けられているセンサとは別に、前記メンテナンスを専門に行う会社によって、たとえば室内機風量を測定する風速センサ、室内温度を測定する温度センサ、およびファンモータの電流を測定する電流センサが設けられ、検出結果が前記監視ユニット21で集約されて、予め定める周期、たとえば10分毎に、前記クラウド環境42へ送信される。その結果、該クラウド環境42では、たとえば電流が上がっている割に、風量が出ていないし、温度も高いので、フィルター汚れが生じている等の警告や、警告となる前のメンテナンス情報(メンテナンスの案内)を作成し、コンピュータ6へ送信するとともに、必要に応じて、サービスカー81や、サービスマンの携行する情報端末82へ、メンテナンス指示を発出する。コンピュータ6では、センサの検出結果を所定期間に亘り記憶したり、前記警告やメンテナンス情報を表示したりするとともに、メンテナンス情報から、各顧客先のパーソナルコンピュータ7を介して、メンテナンスの調整を行ったりする。
たとえば、前記監視ユニット21は、室内機2の天井に搭載され、該室内機2の端子台に電源線を接続することで電源供給され、クラウド環境42への送信を行ったり、或いはセンサの能動化(バイアス)に必要な場合は、センサに電源供給したりすることが可能になる。ここで、室内機2での異常の発生項目の多くはフィルター汚れであり、同じ室内で使用される室内機2は同じような傾向を示し、またその異常自体が発生する可能性も少ない。そのため、前記メンテナンスを専門に行う会社と顧客先との契約によっては、前記監視ユニット21およびセンサは、1台の室内機2にのみ設けられて、検出結果は代表値として、前記クラウド環境42で遠隔監視されることも可能である。
これに対して、室外機3は、異常を発生する項目および可能性が大きく、監視ユニット31およびセンサは、室外機3毎に設けられる。たとえば、監視ユニット31は、室外機3の筐体外側で、空気の流れを阻害しないような所にタッピン止めなどで設置され、センサは後述する各部に設けられ、ケーブルは筐体のスリットの隙間から引出されたりする。この監視ユニット31でも、室外機3の端子台に電源線を接続することで電源供給され、クラウド環境42への送信を行ったり、或いはセンサの能動化(バイアス)に必要な場合は、センサに電源供給したりすることが可能になる。
図2は、空気調和機1の冷媒の流れおよび本発明のセンサ配置を示すブロック図であり、暖房運転時のヒートポンプサイクル回路の概念を示している。本実施形態の空気調和機1は、1次側熱冷媒はフロンやその代替え物から成り、2次側流体は前記空気である。そのため、図2において、熱交換器22,32の三角部分(白抜きと網点で区分している)は、1次側熱冷媒の気液二相を表す。この熱交換器22,32の内部では、原則、1次側熱冷媒は潜熱のみ変化し、顕熱は一定となる。1次側熱冷媒は、圧縮機33に吸入され、圧縮されて高圧ガス状態となる。その高圧ガスは、四方弁34を経由して室内機2の熱交換器22へ供給され、2次側流体である空気に放熱後、凝縮し、高圧液状態となって室外機3側に戻る。その高圧液は、膨張弁35で減圧され、低圧液となって熱交換器32に供給される。熱交換器32では、低圧液は、2次側流体である屋外空気から吸熱し、気化して低圧ガスとなり、四方弁34を経由してアキュムレータ36に一時滞留した後、再び圧縮機33に吸入される。
熱交換器32で冷却された空気は、モータ38で駆動されるファン39によって排出され、熱交換器22の放熱は、モータ28で駆動されるファン29からの風を暖気として、室内へ放出される。冷房運転時には、四方弁34は、圧縮機33からの高圧ガスを室外機3の熱交換器32へ供給し、室内機2の熱交換器から戻って来た低圧ガスをアキュムレータ36に送る。本実施形態では、図2では省略しているが、圧縮機33は2台並列配置され、負荷状態などによって、同時に、または一方が、適宜駆動される。
上述のように構成される空気調和機1において、本メンテナンスシステムで注目すべきは、室外機3において、熱交換器32の代表温度として略中心部の1次側熱冷媒温度を第1の検出ステップで検出するセンサT1を第1の検出手段とし、熱交換器32の排出空気温度を熱交換後の2次側流体の温度として第2の検出ステップで検出するセンサT2を第2の検出手段とし、クラウド環境42のアルゴリズムを演算・判定手段として、熱交換器32(室外機3)の閉塞検知装置を構成することである。前記アルゴリズムは、演算ステップで、センサT2とT1との検出結果の差分を求め、判定ステップで、前記2次側流体が、加熱される暖房運転のときは前記差分が予め定める閾値より大きくなる場合に、もしくは冷却される冷房運転のときは前記差分が予め定める閾値より小さくなる場合に、該熱交換器32(室外機3)の前記2次側流体の流路に閉塞が生じていると判定する。
前記閾値は、閉塞の有無で、前記の差分を大凡にグループ化できる値に選ばれるので、機種や使用環境などによる差が生じる。後に示す暖房運転での本件発明者の実験結果によれば、前記グループ分けできる閾値としては、1.1℃が適切であった。
センサT1,T2は、監視ユニット31に接続され、測定のために必要であれば電力付勢が行われ、測定結果が、該監視ユニット31に集約され、予め定める周期、たとえば10分毎や、予め定める時刻、たとえば毎正時などに、前記クラウド環境42のアルゴリズムへ送信される。センサT1,T2による測定は、それぞれの測定項目の変動の度合いに応じて行われてもよく、たとえば、変動の激しい項目は、1分毎、緩い項目は1時間毎、運転停止中は測定を休止する等である。
上述のように構成される空気調和機1において、上述のように、異常の多くは室外機3で生じ、またその室外機3での異常としては、圧縮機33や送風機(モータ38で駆動されるファン39におけるファンモータ38)の劣化、弁34,35の開閉や切換え不良、配管の詰まり、ガス抜けなどが生じる。しかしながら、それらの異常について、或る程度の部分は、前述のように、該空気調和機1の自己診断などで検知され、適宜(場合によっては重故障となる前に)、保護動作が行われたりもする。
一方、熱交換器32は、送風機(モータ38で駆動されるファン39)により冷却されるので、たとえばビニルや枯葉等のゴミなどによる閉塞が生じ、熱交換の効率低下などを招く可能性がある。ところが、そのような閉塞に対するメンテナンスは、従来では、サービスマンが、予め定める、たとえば半年に1回の定期点検で、フィルターや熱交換器を目視で確認し、汚れていれば洗浄する程度であった。
ところで、空気調和機1自身で、従来から得られていた前記自己診断などのための他の情報から、熱交換器32の閉塞を判定しようとしても、前記ゴミが、埃や枯葉など比較的小さいゴミの場合には、付着の状況は、長期に亘って徐々に変化するので、兆候を捉え難く、また圧縮機33の稼働状態や制御の介入による変動が大きい項目もあり、正確な判定は困難であった。
また、ビニルのシートや袋など比較的大きなゴミの場合には、閉塞により、一気に熱交換不良となり、各部に過負荷が掛って、該他の情報から異常を判定した時点では、強制運転停止となる重故障となってしまうことがある。一旦重故障となると、サービスマンが出向かなければ、また出向いても部品交換をしなければ、修理できないような場合がある。したがって、一旦重故障に至ると、修理を完了するまでは、運転を再開できず、使用者の不利益となるとともに、修理コストも大きくなる。
そこで本件発明者は、送風機(モータ38で駆動されるファン39)により冷却される熱交換器32の異物による閉塞を速やかに検知し、重故障に至る前に運転を停止させたり、メンテナンスを行ったりできるように、前記稼働状態や制御の影響が少なく、精度良く判定できる情報として、前記のセンサT1,T2の検出結果が好適であることを、実験で確認した。実験で得た検出結果の内、熱交換器32の略中心部、つまり放熱フィンが設けられる冷媒配管の略中間部の冷媒温度T1は、前記稼働状態や制御による影響が比較的少なく、その時点の負荷(前記稼働状態)の基準(平均)指標とすることができる可能性があるので、本実施形態では、これを、前記熱交換器32の略中心部に設けた第1の検出手段となるセンサT1によって検出する。
一方、熱交換器32で熱交換された2次側流体の温度、すなわち本実施形態では空気による冷却や加熱の場合であるので、排出空気温度T2は、その時点の実際の室外機3(熱交換器32)の熱交換能力を、速やかに、かつ適切に表わすことができる(前記稼働状態や制御の影響が少ない)。そこで、本実施形態では、これを、排気のファン38の手前に設けた、第2の検出手段となるセンサT2によって検出する。
そして、演算手段となる前記アルゴリズムにおいて、上記熱交換器32の排出空気温度(T2)と熱交換器32の略中心部の冷媒温度(T1)との差分(T2−T1)を求める。室外機3(熱交換器32)にゴミなどの付着が無く、正常に機能していれば、それらの差分(T2−T1)は、暖房運転時には小さく、冷房運転時には大きく、これに対して、ゴミなどの付着による閉塞の影響で風量が低下すれば、それらの差分(T2−T1)は、前記と逆になる。そこで、判定手段である前記アルゴリズムにおいて、前記差分(T2−T1)を所定の閾値と比較し、暖房運転における場合は閾値以上である場合に、熱交換器32(室外機3)に前記異物による閉塞が生じていると判定するようにした。
実験は、熱交換器の吸込側開口部分を、面積比率で、略1/4と、略1/2との2段階で閉塞して行った。実験データは1日(24時間)で得ているが、実際の運転は、就業時間の7:30〜8:00の開始から、24:00の終了までである。実験は、令和2年2月に5日間に亘って行い、図3に図示するにあたって、代表的に、外気温度が異なる2日を選んだ。図3は本件発明者の実験データを示し、図3(a)における外気温の平均は約11℃、図3(b)は約6℃であった。
図3(b)において、参照符号cは、霜取り中のデータで、除外すべきサンプル値である。図3(a)および図3(b)を参照して、共に、停止中、通常運転中、および低負荷運転中では、熱交換器32の排出空気温度(T2)と熱交換器32の略中心部の冷媒温度(T1)との差分(T2−T1)が、前記予め定める閾値である前記1.1℃未満となっていることが理解される。
これに対して、閉塞を行うと、閉塞面積に拘わらず、前記差分(T2−T1)が大きくなり、前記の熱の取り込みに支障が生じていることが理解される。その支障も、図3(b)の外気温度が低い、すなわち熱を取り込み難い状態では、元々差分(T2−T1)が大きく、閉塞状況による差も小さいのに対して、図3(a)の外気温度が高い、すなわち熱を取り込み易い状態では、差分(T2−T1)の差、つまり閉塞状況による差が表れ易いことが理解される。こうして、前記差分(T2−T1)が閾値以上であるか否かで、熱交換器32に、ゴミなどによる閉塞が生じているか否かを判定可能であることが理解される。
一方、図4には、比較例を示す。同様に、図4(a)は図3(a)と同じ日のデータ、図4(b)は図3(b)と同じ日のデータを示す。評価項目としては、{熱交換器32の吸入空気(外気)温度(T3)+排出空気温度(T2)}/2−冷媒温度(T1)である。つまり、冷媒温度(T1)を減算する点は同様であるが、吸入空気(外気)温度(T3)と排出空気温度(T2)との平均値から減算する点で、図3とは異なる。図2には、吸入空気(外気)温度のセンサT3を、仮想線で示している。図4から理解されるように、外気温が低い方(図4(b))が、多少、閉塞の有無による差が分り易いものの、その閉塞の有無を判定する閾値の設定が困難であることが理解される。
以上のように、本実施形態の熱交換器の閉塞検知装置および方法ならびにそれを用いる空気調和機のメンテナンスシステムは、2次側流体、本実施形態では送風機(モータ38で駆動されるファン39)により供給される冷却または吸熱のための空気の流路に対して、異物による閉塞の発生を検知するにあたって、熱交換器32の熱交換後の2次側流体、すなわち排出空気の温度(T2)と、熱交換器32の1次側熱冷媒の温度(T1)との差分を用いることで、一定の負荷(前記稼働状態)に維持した状態でなくても、その時点の負荷(前記稼働状態)に対して、室外機3(熱交換器32)が実際にどれだけの熱交換能力を発揮できているか、すなわちゴミなどの前記異物による2次側冷媒の流路の閉塞状況を、正確に判定することができる。前記ゴミが埃や枯葉などの比較的小さなものである場合は、閉塞が徐々に進行し、長期メンテナンスに有効な情報となる。これに対して、前記ゴミがビニルのシートや袋などの比較的大きなものである場合は、ゴミの付着を、重故障に至る前に、速やかに判定することができる。
なお、クラウド環境42のアルゴリズムは、判定手段として、前記差分(T2−T1)が予め定める閾値(上述の例では1.1℃)以上であるか否かで閉塞の有無を判定しているが、前述のように、閾値の設定は機器に応じて行われればよく、また冷房運転時には、温度T2,T1の大小関係が逆転するので、閾値より小さい場合が異常で、大きい場合が正常となり、また冷暖で閾値を変化することで、より適切に閉塞の有無を判定することができる。
また、本実施形態の熱交換器の閉塞検知装置は、たとえばパーソナルコンピュータのファン(排気口)など、送風機により冷却または吸熱される熱交換器を備える機器に適用することが可能であるが、そのような機器の内、空気調和機1の室外機3は、屋外などに設置され、ゴミなどの異物が付着し易く、また、普段人目に付かず、さらに人目があっても前記異物による閉塞などは気にされるケースが殆ど無いことから、特に好適である。
さらにまた、本実施形態の熱交換器の閉塞検知装置では、監視ユニット31を設け、第1の検出手段であるセンサT1および第2の検出手段であるセンサT2の検出結果を集約するとともに、それらのセンサT1,T2の検出の際に必要となる電源を発生する一方、前記差分(T2−T1)の演算を行う演算手段、および最終的に異常判定を行う判定手段となる専用アルゴリズムは、ネットワークサービス4のクラウド環境42によって実現し、それらの間を公衆無線通信回線41を介して接続する。また、そのクラウド環境42と監視センターのコンピュータ6や顧客先のパーソナルコンピュータ7との間をインターネット回線5などを介して接続することで、空気調和機1の監視結果や、それに応じたメンテナンスの立案などに有効な情報が提供されるとともに、前記クラウド環境42から公衆無線通信回線41を介して、サービスカー81や、サービスマンの携行する情報端末82へメンテナンスの指示を与えることもできる。したがって、たとえば長期メンテナンスに必要な情報となる前記室外機3へのゴミの付着状況は、従来では、実際にサービスマンが出向いて目視で確認するしか無かったところ、またサービスマンが実際に現場に出向いて各種の検出手段で検出して判定を行う必要があったのに対して、本実施形態では、監視ユニット31およびネットワークサービス4を利用して、遠隔監視することができる。これによって、サービスマンは、ゴミの除去などの実際のメンテナンス作業が必要になってから出向けばよく、メンテナンス作業を効率化することができる。
また 本実施形態の熱交換器の閉塞検知装置では、センサT1,T2およびその検出結果を集約する監視ユニット31を室外機3毎に設け、それらの検出結果から実際に異常の有無を判定する手段としてはネットワークサービス4のクラウド環境42を用い、判定結果を監視センターのコンピュータ6や顧客先のパーソナルコンピュータ7に送信する。これは、空気調和機1の異常を検知するにあたって、室内機2では、フィルターの汚れや、ファン28の回転不良などで、異常の発生する項目および可能性は少なく、そのため遠隔監視するにあたっても、複数台の室内機の内の代表機の監視を行えば良いのに対して、室外機3では、該室外機3(熱交換器32)へのゴミの付着だけでなく、熱交換器32の詰まり、弁34,35の開閉や切換え不良、ファン39の回転不良、ガス抜けなど、異常の発生する項目および可能性は大きく、また複数台の各室外機3の状況も異なるためである。したがって、各室外機3に対する異常の検知精度を向上しつつ、監視の構成を簡略化することができる。
ここで、熱交換器32の温度の中でも、1次側熱冷媒がフロンまたはその代替物であり、2次側流体が空気である場合、熱交換器32は、冷媒配管に放熱フィンが設けられて成り、1次側熱冷媒は二相状態であり、大気から吸排熱した熱はこの1次側熱冷媒の潜熱だけ変化し、温度は変化しない。そこで、本実施形態の熱交換器の閉塞検知装置では、第1の検出手段であるセンサT1は、熱交換器32の略中心部の温度を代表温度として検出する。したがって、たとえば暖房運転の場合、熱交換器32の入口冷媒は膨張弁35の開度と圧縮機33の稼働状態とにより温度の変化が大きく、また出口は気相となり、顕熱変化が大きくなるのに対して、前記略中心部の1次側熱冷媒の温度は、前記稼働状態や制御による影響が少なく、また冷媒の流れが逆転する冷暖のいずれでも同様に、その時点の負荷(前記稼働状態)の基準(平均)指標とすることができ、該略中心部の1次側熱冷媒の温度を採用することは、好適である。
さらにまた、本実施形態の熱交換器の閉塞検知装置は、送風機(38,39)により冷却または加熱される熱交換器32を備える機器の内、空気調和機1、特にその室外機3に設けられるので、該室外機3は、屋外などに設置され、ゴミなどの異物が付着し易く、また、普段人目に付かず、さらに人目があっても前記異物による閉塞などは気にされるケースが殆ど無く、該閉塞を遠隔監視する本閉塞検知装置は、特に好適である。
上述の実施形態は、1次側流体としては冷媒、2次側流体としては空気を使用しているが、本発明は、流体としては、液体、気体を問わず、液体では油などが用いられてもよい。また、上述の実施形態は、2次側流体の閉塞を検出しているが、1次側流体の閉塞を検出するようにしてもよい。1次側の温度検出は、たとえば、熱交換器の冷媒配管の外から温度センサを接触させ、その温度センサの外側を断熱材で覆って2次側流体から遮断することで実現することができる。したがって、上述の実施形態は、空気調和機1の室外機3で説明しているが、本発明は、これに限らず、たとえばtig溶接機において、アークによって発生した溶接トーチ内の熱を冷却水を介して外気に放熱するラジエータに適用されたり、水冷や空冷の潤滑油冷却装置(オイルクーラ)に適用されたりすることも可能である。