JP2021177713A - デアミノノイラミン酸特異的シアリダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸及びその利用 - Google Patents

デアミノノイラミン酸特異的シアリダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】デアミノノイラミン酸を選択的に糖鎖から遊離させるシアリダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸、該タンパク質の製造方法、および該タンパク質の利用方法の提供。【解決手段】1態様において、Sphingobacterium属の菌由来デアミノノイラミン酸を選択的に糖鎖から遊離させるシアリダーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列と90%以上の同一性を有し該活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、または該タンパク質のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し該活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する核酸、該核酸を含む剤を用いた該活性を有するタンパク質の製造方法、および該タンパク質の糖鎖解析への利用方法。【選択図】なし

Description

本明細書は、デアミノノイラミン酸特異的シアリダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸及びその利用に関する。
シアリダーゼは、シアル酸のO−グリコシド結合を加水分解してシアル酸を遊離させる酵素である。シアル酸は、ノイラミン酸を基本骨格としてそのアミノ基やヒドロキシ基の水素原子が置換された物質を総称するものである。シアル酸は、生体内においては、概して、糖タンパク質や糖脂質にある糖鎖の非還元末端に存在している。
シアル酸としては、例えば、ノイラミン酸の5位のアミノ基の水素原子がグリコール酸で置換されたN−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、同様に水素原子がアセチル基で置換されたN−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、5位の窒素が水酸基に置換されたデアミノノイラミン酸(2−ケトー3−デオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト ノノン酸、KDN)などが天然に存在している。
KDN残基は、広く普遍的に生物界に存在しているが、KDNを結合したスフィンゴ糖脂質であるKDN−ガングリオシドは、ニジマスの生殖器官、富栄養環境の海で発生する植物プランクトン(Emiliania huxleyi)、ヒトにおいては、奇形腫瘍、肺がん、赤血球や咽頭がんにおいて微量見出されているにすぎず、その機能についてはほとんど知られていない。
KDNを末端に有する糖鎖からKDNを遊離させるシアリダーゼとしては、Neu5Gc又はNeu5AcとともにKDNを遊離するシアリダーゼが報告されているほか、他のノイラミン酸に比してKDNを選択的に糖鎖から加水分解して遊離させるシアリダーゼ(以下、KDNaseともいう。)も報告されている(特許文献1)。
特許文献1による方法では、KDNオリゴサッカライドアルジトールをKDNase誘導剤として合成し、当該誘導剤を唯一の炭素源として利用して、マス漁場の下水泥床から分離され選抜された細菌の培養液を、超音波破砕後、硫安沈殿し、ゲル濾過クロマトグラフィー及びニジマス卵巣液から調製されるオリゴ/ポリKDN含有糖タンパク質によるアフィニティクロマトグラフィーで、粗精製物としてKDNaseを取得している。細菌は、Sphingobacterium multivorumと同定され、分離されたKDNaseの分子量は約5万であったことが報告されている。
特開2000−7669号公報
特許文献1によって既に報告されているKDNaseの取得方法は、極めて煩雑であるほか高コストであり、十分な量を取得することはできないという問題があった。一方、特許文献1には、KDNaseは、酵素活性等については報告されているが、KDNaseをコードする遺伝子は同定されておらず、そのアミノ酸配列も報告されていなかった。
本発明者らは、KDNase活性を有する細菌群についての全ゲノム解析を利用したところ、報告されている、Sphingobacterium multivorumとは異なる、Sphingobacterium属の他の細菌に由来するKDNaseを発見した。
KDNaseをコードする核酸は、KDNaseを工業的に生産することや、そのアミノ酸配列に変異を導入して変異体を作製して糖鎖に関連する疾患や診断の分野に利用することにおいて有用である。
現在までのところ、工業的に利用できる程度にKDNaseを取得することは未だできていない。
本明細書は、KDNase活性を有するタンパク質をコードする核酸及びその利用を提供する。
本発明者らは、糖グリコシドからKDNを遊離するシアリダーゼ活性を有する細菌群についての全ゲノム解析から、6種のシアリダーゼ候補遺伝子を特定し、さらに、KDNのみを遊離する活性をもつ遺伝子を同定した。本明細書は、かかる知見に基づき以下の手段を提供する。
[1]以下の(a)〜(e)からなる群から選択される少なくとも1種の塩基配列を有する核酸を含む、KDNase活性を有するタンパク質を製造するための剤。
(a)配列番号1又は3で表される塩基配列
(b)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列
(d)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(e)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
[2]前記(b)において、前記同一性は、95%以上である、[1]に記載の剤。
[3]前記(d)において、前記同一性は、95%以上である、[1]又は[2]に記載の剤。
[4]以下の(a)〜(e)からなる群から選択される少なくとも1種の塩基配列を有する核酸を用いて、KDNase活性を有するタンパク質を製造する方法。
(a)配列番号1又は3で表される塩基配列
(b)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列
(d)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(e)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入からなる群から選択される1種又は2種以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
[5]以下の(a)〜(d)からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質。
(a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
(d)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、KDNase活性を有するタンパク質
[6]以下の(a)〜(d)からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質であって、NaCl濃度が0.1M以上1.0M以下のとき、NaCl濃度が0M時のKDNase活性に対して1.5倍以上のKDNase活性を有する、タンパク質。
(a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
(d)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、KDNase活性を有するタンパク質
[7]KDNase活性のための剤のスクリーニング方法であって、
以下の(b)、(c)及び(d)からなる群から選択される少なくとも1種を被験タンパク質として、KDNase活性を評価する工程、
を備える、方法。
(b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
(d)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、KDNase活性を有するタンパク質
[8]糖鎖含有化合物を、[5]又は[6]に記載のタンパク質で処理する処理工程、を備える、糖鎖の処理方法。
[9]前記糖鎖含有化合物は、糖タンパク質及び糖脂質から選択される、[8]に記載の処理方法。
[10]前記処理工程は、細胞表面に提示される前記糖鎖含有化合物を前記剤で処理する工程である、[8]又は[9]に記載の処理方法。
[11]糖鎖含有化合物を[5]又は[6]に記載のタンパク質で処理する処理工程、
を備える、糖鎖特性の決定方法。
[12]糖鎖分解産物の生産方法であって、
糖鎖含有化合物を[5]又は[6]に記載のタンパク質で処理する処理工程と、
前記処理工程によって生じるKDN及び/又はKDN脱離物を回収する工程と、
を備える、生産方法。
[13]以下の(a)〜(e)からなる群から選択される少なくとも1種の塩基配列を有する核酸を備える、KDNase発現ベクター。
(a)配列番号1又は3で表される塩基配列
(b)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列
(d)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(e)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
[14]KDNase発現キットであって、
[13]に記載のシアリダーゼ発現ベクターを備える、キット。
シアル酸の構造を示す図である。 組換え体KDNaseの精製結果を示す図である。 組換え体KDNaseのKDNase活性のpH依存性を示す図である。 組換え体KDNaseのKDNase活性の温度依存性を示す図である。 組換え体KDNaseの基質特異性を示す図である。 組換え体KDNaseのKDNase活性のNaCl依存性を示す図である。 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を発現する大腸菌の破砕液の上清及び沈殿への前記タンパク質の分画状況を示すSDS−PAGEの結果を示す図である。 大腸菌破砕液上清に分画された配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質がKDNase活性を有することを示す図である。
本明細書は、KDNase活性を有するタンパク質をコードする核酸及びその利用を提供する。
本明細書に開示されるKDNase活性を有するタンパク質(以下、本タンパク質ともいう。)は、本発明者らが、Sphingobacterium属に属する菌のゲノム情報から取得した配列番号1で表される塩基配列に関連している。この塩基配列は、KDNase活性を有するタンパク質をコードしており、この塩基配列及びアミノ酸配列は、KDNaseに関する配列として初めて同定されたものである。
KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列が同定されたことで、KDNase活性を有するタンパク質のアミノ酸配列も同定できた。このため、従来、非効率的であったKDNaseを遺伝子工学的に生産すること、及び、KDNase活性を有するタンパク質を意図に応じて改変することが可能となる。
細胞表面に露出される糖鎖は、発生、分化、がんなどの疾患の発症、転移等に関連しているほか、植物プランクトンなどの広く生物界において、細胞の特性と深く関連している。KDNase活性を有するタンパク質及び当該タンパク質をコードする核酸によれば、こうした細胞の識別や捕捉、ひいては、疾患の診断や治療などの用途に向けた利用や改変が可能となる。
本明細書において、KDNaseとは、O−グリコシド結合により結合したKDN残基を、O−グリコシド結合の加水分解により遊離させる酵素をいう。また、KDNase活性とは、O−グリコシド結合の加水分解によりKDNを遊離する活性をいう。
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された「シアリダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸及びその利用」を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
なお、本明細書において、「以上」の語は、下限として以上のほか超としての意義を有する。また、「以下」の語は、上限値として以下のほか未満の意義を有する。したがって、「以上」及び「以下」として記載される範囲は、以上及び以上のほか、超及び以下、超及び未満、以上及び未満の意義を有する。
以下、本タンパク質を製造するための剤(以下、単に、本剤ともいう。)及びその利用に関し、各種実施形態を詳細に説明する。
(KDNase活性を有するタンパク質を製造するための剤)
本剤は、KDNase活性を有するタンパク質(本タンパク質)を製造するための剤であり、本タンパク質をコードする塩基配列を備える核酸を有している。なお、本剤における核酸とは、本タンパク質を製造するのに用いることができる限り、DNA、RNA又はこれらのキメラである一本鎖及び当該一本鎖を組み合わせてなる二本鎖を意味している。以下、本剤が製造しようとする、本タンパク質についてまず説明する。なお、本タンパク質は、それ自体、糖鎖末端からKDNを遊離させるための剤(KDNase活性のための剤)として用いることができる。
(本タンパク質)
本タンパク質は、以下の4つの態様からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質を含むことができる。
(a)第1の態様
第1の態様の本タンパク質は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、本発明者らがSphingobacterium属菌から取得した、配列番号1で表される塩基配列によってコードされるKDNaseである。また、配列番号2で表されるアミノ酸配列のうち、1〜108位のアミノ酸が除去されたアミノ酸配列(配列番号4)からなるタンパク質もKDNase活性を有していることを確認しており、配列番号4で表されるアミノ酸配列(当該アミノ酸配列は、配列番号3で表される塩基配列によってコードされる。)を有するタンパク質は、KDNase活性の観点において、第1の態様の本タンパク質といえる。
配列番号2で表されるアミノ酸配列は、アミノ酸残基数が537個であり、配列番号4で表されるアミノ酸配列は、同数が429個である。第1の態様の本タンパク質は、配列番号2で表されるアミノ酸配列とアライメントしたとき、その175位〜177位に相当する位置に、細菌から哺乳類まで広く保存されているシアリダーゼモチーフであるRIPを備えている。また、同アミノ酸配列の212位〜219位に相当する位置に、アスパラギン酸ボックス(Aspボックス)(SXDXGXTW、Xは任意のアミノ酸))としてのSRDGGLTW、309位〜316位に相当する位置に、同様にAspボックスとしてのSEDNGRTW、368位〜375位に相当する位置に、同様にAspボックスとしてのSKDGGTTWを備えている。
配列番号2で表される本タンパク質は、電気泳動によりその質量が59kDaであり、特許文献1に開示されるKDNaseとは相違している。本タンパク質が備えるKDNase活性については、後段で説明する。
(b)第2の態様
本タンパク質、また例えば、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と一定以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質である。
本明細書において、同一性又は類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarity と称される。同一性及び類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性及び類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschul SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997)やUniProtKBのアライメント機能を利用し決定することができる。BLASTやUniProt KBのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いることができる。
本タンパク質は、例えば、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有することができるが、前記同一性は、また例えば、同85%以上、また例えば、同86%以上、また例えば、同87%以上、また例えば、同88%以上、また例えば、同89%以上、また例えば、同90%以上、また例えば、同91%以上、同92%以上、また例えば、同95%以上、また例えば同96%以上、また例えば、同97%以上、また例えば、同98%以上、また例えば、同99%以上、また例えば、99.5%以上である。
この態様の本タンパク質は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列とアライメントしたとき、配列番号2で表されるアミノ酸配列の175位〜177位に相当する位置にRIPを備えることができる。また例えば、同アミノ酸配列の212位〜219位に相当する位置に、SRDGGLTWなどのアスパラギン酸ボックス(Aspボックス)を備えることができる。同様に、例えば、同アミノ酸配列の309位〜316位に相当する位置にSRDGGLTWなどのAspボックスを備えることができる。また例えば、同アミノ酸配列の368位〜375位に相当する位置にSEDNGRTWなどのAspボックス、また例えば、368位〜375位に相当する位置にSKDGGTTWなどのAspボックスを備えている。
例えば、この態様の本タンパク質は、配列番号2で表されるアミノ酸配列とアライメントしたとき、配列番号2で表されるアミノ酸配列の175位〜177位に相当する位置にRIP及び同アミノ酸配列の212位〜219位に相当する位置、同アミノ酸配列の309位〜316位に相当する位置及び同アミノ酸配列の368位〜375位に相当する位置にそれぞれAspボックスを備えるときには、配列番号2で表されるアミノ酸配列又は配列番号4で表されるアミノ酸配列に対して、例えば、80%以上、また例えば、85%以上、また例えば、90%以上、また例えば、95%以上の同一性を有することができる。
このように、この態様の本タンパク質は、第1の態様の本タンパク質と同様、配列番号2で表されるアミノ酸配列とアライメントしたとき、配列番号2で表されるアミノ酸配列のRIPに相当する位置におけるRIP及び同アミノ酸配列のアスパラギン酸ボックス(Aspボックス)に相当する位置における3つのアスパラギン酸ボックス(SXDXGXTW)からなる群から選択される1個又は2個以上の特定領域を備えることができる。当該特定領域を備えるとき、変異は、これの特定領域に導入されてもこれらの特定領域を維持するように、AspボックスのXに変異が導入されるか、これらの領域以外に変異が導入される。
この態様の本タンパク質は、配列番号2又は4に対するアミノ酸配列と異なっているが、当該相違については、特に限定するものではないが、例えば、後段の第3の変異態様において記載される変異の態様が挙げられる。例えば、この態様の本タンパク質が、配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して、例えば90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有しているとき、より具体的には、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、60個以下又は54個以下のアミノ酸残基が異なるか、欠失しているか、挿入しているかなどの変異を有する場合及び配列番号4で表されるアミノ酸配列において、45個以下又は43個以下のアミノ酸残基が異なるか、欠失しているか、挿入しているかなどの変異を有する場合が挙げられる。
(c)第3の態様
本タンパク質は、また例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入からなる群から選択される1種又は2種以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質である。
この態様の本タンパク質が有する変異数は、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下であるが、例えば、54個以下であり、また例えば、50個以下であり、また例えば、40個以下であり、また例えば、30個以下であり、また例えば、25個以下であり、また例えば、20個以下であり、また例えば、15個以下であり、また例えば、10個以下であり、また例えば、8個以下であり、また例えば、6個以下であり、また例えば、4個以下である。
本タンパク質は、また例えば、配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入からなる群から選択される1種又は2種以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質である。
この態様の本タンパク質が有する変異数は、配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下であるが、例えば、43個以下であり、また例えば、40個以下であり、また例えば、30個以下であり、また例えば、25個以下であり、また例えば、20個以下であり、また例えば、15個以下であり、また例えば、10個以下であり、また例えば、8個以下であり、また例えば、6個以下であり、また例えば、4個以下である。
この態様の本タンパク質が備える変異の態様は、特に限定するものではないが、例えば、アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のカッコ内のグループ内での置換が挙げられる。例えば、(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
この態様のタンパク質が備える変異態様は、第2の態様や第4の態様の本タンパク質も備えることができる。
この態様の本タンパク質は、第2の態様の本タンパク質と同様、配列番号2で表されるアミノ酸配列とアライメントしたとき、配列番号2で表されるアミノ酸配列のRIPに相当する位置におけるRIP及びアスパラギン酸ボックス(Aspボックス)に相当する位置における3つのアスパラギン酸ボックス(SXDXGXTW、例えば、SRDGGLTW、SEDNGRTW及びSKDGGTTW)からなる群から選択される1個又は2個以上を備えることができる。当該特定領域を備えるとき、変異は、これの特定領域に導入されてもこれらの特定領域を維持するように導入されているか、あるいは、備えられる特定領域以外に変異が導入される。
(d)第4の態様
本タンパク質は、また例えば、配列番号1で表される塩基配列に対して90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質である。
タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列の同一性が、例えば、90%以上であるとき、アミノ酸配列自体の同一性や類似性も高く、配列番号1で表される塩基配列によってコードされる配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同じKDNase活性を有することができる。なお、このようなタンパク質は、例えば、配列番号1で表される塩基配列に対して変異を導入して、その変異配列によって得られる変異体につき、KDNase活性を評価するなどにより取得することができる。なお、配列番号1で表される塩基配列の一部と、コロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーションなどによって得られたDNAについて、KDNase活性を評価することによっても取得することができる。
この態様の本タンパク質も、第2及び第3の態様の本タンパク質と同様に、当該特定領域を備えるとき、変異は、これの特定領域に導入されてもこれらの特定領域を維持するように導入されているか、あるいは、備えられる特定領域以外に変異が導入される。
(KDNase活性)
本タンパク質は、いずれも、KDNase活性を有している。すなわち、基質特異性として、O−グリコシド結合によって結合された末端ノイラミン酸残基であるNeu5Ac、Neu5Gc及びKDNのうち、KDNを選択的に加水分解して遊離させる活性を有している。KDNに対する遊離活性を100とした場合において、Neu5Ac及びNeu5Gsに対する遊離活性は、それぞれ、例えば、0以上10以下であり、また例えば、0以上5以下であり、また例えば、0以上1以下である。
基質特異性は、例えば、以下の方法で測定することができる。すなわち、合成基質として4MU−KDN(2´−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−シアル酸ナトリウム(シアル酸ナトリウム:2−ケトー3−デオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト ノノン酸ナトリウム)を準備し、後述の実施例2に記載される条件(pH6.0、25℃、遮光30分)によって反応させ、得られた分解生成物である4MUに基づく蛍光シグナルを検出することなどによって行うことができる。なお、同様にして、対照としてのNeu5Ac及びNeu5Gcに対する遊離活性も測定することができる。
本タンパク質は、さらに、KDNase活性に関し、以下の比活性を有することもできる。本タンパク質が有するKDNase活性の比活性は、1分間で1nmolの4MU−KDNを加水分解する活性を1unitとすると、例えば、4000unit/mg以上であり、また例えば、4500unit/mg以上であり、また例えば、4800unit/mg以上であり、また例えば、5000unit/mg以上である。比活性は、実施例2に記載の比活性に関する方法(pH6.0、1M NaCl、25℃、15分遮光)で反応させて測定することができる。
本タンパク質は、さらに、KDNase活性に関し、以下の至適pHを有することもできる。本タンパク質が有するKDNase活性の至適pHは、例えば、5.8以上6.8以下であり、また例えば、6.0以上6.5以下である。KDNaseの至適pHは、緩衝するpH域のバッファのみを異ならせて、実施例2に記載の方法(NaCl0.5M、25℃、遮光30分)で反応させることにより測定することができる。
本タンパク質は、さらに、KDNase活性に関し、以下の至適温度を有することもできる。本タンパク質が有するKDNase活性の至適温度が、例えば、15℃以上37℃以下であり、また例えば、25℃以上37℃以下である。至適温度は、実施例2の至適温度に関して記載される方法(pH6.0、遮光30分)によって測定することができる。
本タンパク質は、さらに、KDNase活性に関し、以下のNaCl濃度依存性を有することもでききる。本タンパク質が有するKDNase活性は、例えば、NaCl濃度が0M超1M以下の範囲で濃度依存的にKDNase活性が向上する。また例えば、KDNase活性のNaCl濃度依存性は、実施例2のNaCl依存性に関する方法(pH6.0、25℃、30分遮光)によって測定することができる。本タンパク質は、例えば、0.1M〜0.1M、また例えば、0.5〜1.0M、また例えば、0.75〜1.0MのNaCl中において安定してKDNase活性を呈することができる。また、NaCl濃度が0.1M以上1.0M以下のとき、NaCl濃度(NaCl濃度以外は同条件下)が0M時のKDNase活性に対して、例えば1.5倍以上、また、0.25M以上1.0M以下のときには、例えば2.0倍以上のKDNase活性を有する。
本剤は、上記した各種の本タンパク質の少なくとも1種をコードする塩基配列を有する核酸(以下、本核酸ともいう。)を含んでいる。したがって、本剤が有する核酸は、(a)配列番号1又は3で表される塩基配列(第1の態様の本タンパク質)、(b)配列番号1又は3で表される塩基配列に対して、例えば、90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列(第4の態様の本タンパク質)、(c)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列(第1の態様の本タンパク質)、(d)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と、例えば、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列(第1の態様の本タンパク質)、(e)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1個以上数十個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入からなる群から選択される1種又は2種以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列(第3の態様の本タンパク質)からなる群から選択されるいずれかの塩基配列を有する核酸を含むことができる。
上記(b)及び(d)における、同一性は、いずれも、例えば、80%以上であり、また例えば、85%以上であり、また例えば、90%以上であり、また例えば、95%以上であり、また例えば、97%以上であり、また例えば、98%以上であり、また例えば、99%以上であり、また例えば、99.5%以上である。
また、上記(e)における変異数は、配列番号2で表されるアミノ酸配列においては、例えば、60個以下であり、配列番号4で表されるアミノ酸配列においては、例えば、45個以下であるほか、すでに記載した第3の態様において例示した各種の変異数とすることができる。
本核酸を含む本剤によれば、KDNase活性を有するタンパク質を、例えば、遺伝子工学的手法により、純度が高い本タンパク質を、KDNaseの生産誘導のためのKDN誘導剤を使用することなく、簡易な精製操作により取得することができる。これにより、工業用途及び診断や治療などの医療用途に、本タンパク質を用いることができる。なお、こうした核酸は、KDNase活性を有するタンパク質を生産するためのほかに、他のKDNase活性を有するタンパク質の開発が可能となる。
(本核酸を用いて、KDNase活性を有するタンパク質を製造する方法)
本核酸を用いて、KDNase活性を有するタンパク質を製造する方法は、当業者であれば、適宜実施することができる。例えば,遺伝子工学的に本タンパク質を生産する手法は、当業者においてよく知られている。すなわち、本核酸であるDNAを合成するか、又は、Sphingobacterium属細菌などのDNAを鋳型DNAとしてPCR法などの公知の方法により取得し、当該DNAを、適当な宿主細胞においてタンパク質をコードする遺伝子として発現可能に構成した発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、当該宿主細胞を培養することで、培養産物として本タンパク質を取得することができる。
なお、配列番号2及び4で表されるアミノ酸配列においてアミノ酸変異を有する本タンパク質は、例えば、配列番号1及び3で表される塩基配列を有するDNA又はその相補鎖の少なくとも一部をプローブとして用いたハイブリダイゼーション、エラープローンPCRや公知の変異導入方法に従い取得することができる。こうしたタンパク質については、そのアミノ酸配列やKDNase活性を評価することで、本タンパク質であることを確認することができ、本タンパク質として製造することができる。
宿主細胞としては、特に限定するものではなく、公知の宿主細胞を用いることができる。例えば、大腸菌、枯草菌等の細菌、カンディダ・ウチリス(Candida utilis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母以外に、リゾープス・ニベウス(Rhizopus niveus)、リゾープス・デルマー(Rhizopus delemar)や高等真核生物(例えばCHO細胞など)を用いることができる。例えば、本シアリダーゼは、Rosetta gami2など大腸菌(K−12株)由来の宿主細胞を用いることで、本タンパク質を、高い収量で取得することができる。
また、発現ベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案して適宜選択することができる。例えば、発現ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス性の発現ベクターであってもよい。発現ベクターは、また、宿主細胞内で複製可能であってもよいし、宿主染色体に組み込まれて複製可能に構成されていてもよい。発現ベクターは、適宜、商業的に入手可能な種々のプラスミドなどを用いて構築することができる。
なお、発現ベクターは、遺伝子発現に必要な種々のDNA配列、例えば、プロモーター、ターミネーター、リボゾーム結合部位、転写終結シグナルなどの転写調節信号、翻訳調節信号などを有することができる。また、適宜、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性遺伝子などの適宜選択マーカーを有することができる。以上のような、遺伝子工学的な手法については、当業者であれば、例えば、適宜、Molecular Cloning: A Laboratory Manualに記載の方法に準じて行なうことができる。
形質転換した宿主細胞の培養は、使用する宿主細胞に応じて一般的な方法を用いることができる。培養条件については、例えば、遺伝子発現実験マニュアル(講談社)等を参照することができる。また、形質転換細胞からの本タンパク質の分離回収等についても、当業者の周知の方法で実施できる。
(本タンパク質を製造するための発現ベクター及びキット)
本明細書によれば、本タンパク質を発現するための発現ベクターのほか、当該発現ベクターを備える、発現キットも提供される。発現ベクターは、既述の本核酸をDNAなどとして備えることができる。発現ベクターの態様については、既に説明したとおりである。
さらに、かかるキットは、本タンパク質の発現などに適した大腸菌などの宿主細胞も備えることができる。さらにまた、この種の発現ベクターに用いる公知の他の試薬も適宜備えることができる。
(KDNase活性のための剤のスクリーニング方法)
本明細書によれば、KDNase活性のための剤のスクリーニング方法も提供される。すなわち、上記第2〜第4の態様からなる群から選択される少なくとも1種を被験タンパク質として、KDNase活性を評価する工程を備える方法が提供される。この少なくとも方法によれば、KDNase活性の発揮のためにより好適な、例えば、より活性の高い、また例えば、より熱的安定性に優れるなどの本タンパク質を取得することができる。
スクリーニングにあたって,被験タンパク質は、種々の方法で準備することができ、例えば、既述したように、例えば、配列番号1で表される塩基配列を有するDNA又はその相補鎖の少なくとも一部をプローブとして用いたハイブリダイゼーション、エラープローンPCRや公知の変異導入方法に従い取得したDNAを用いて、遺伝子工学的に取得することができる。
(KDNase活性のための剤の利用)
KDN活性のための剤は、そのKDNase活性を利用して、糖鎖含有化合物の処理、糖鎖特性の決定及び糖鎖分解産物の生産方法等に利用することができる。KDN活性のための剤によれば、KDN分解遊離の特異性等により、KDNを有する糖鎖含有化合物又はその化合物を提示する細胞からKDNを遊離させることができる。
(糖鎖の処理方法)
本明細書に開示される糖鎖の処理方法は、糖鎖含有化合物を本KDN活性のための剤で処理する処理工程を備えることができる。本処理方法によれば、糖鎖含有化合物の有する糖鎖から効率的にKDN残基を遊離させて、KDN残基が除去された糖鎖含有化合物とすることができる。
本明細書において、「糖鎖」とは、糖がグリコシド結合によって連結した化合物をいう。糖鎖含有化合物とは、かかる糖鎖からなる化合物のほか、かかる糖鎖が他の化合物と結合した化合物をいい、例えば、タンパク質と糖鎖とが結合した糖タンパク質、脂質と糖鎖が結合した糖脂質及びプロテオグリカンなどの複合糖質が挙げられる。なお、糖鎖含有化合物における糖鎖は、1以上の単糖が結合したものであればよい。
ここで、糖タンパク質は、タンパク質を構成するアミノ酸の一部に1又は2以上の糖鎖が結合したものである。糖鎖は、概して、数本〜数十本であり、主として細胞膜タンパク質や分泌タンパク質上に存在する。糖鎖が結合するアミノ酸は、典型的には、アスパラギン(N型糖鎖)、セリン及びスレオニン(O型糖鎖)が挙げられる。また、糖タンパク質を構成する糖鎖の構成単糖としては、ガラクトース、マンノース、フコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、Neu5Ac及びキシロースなどが挙げられる。
プロテオグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸などの100〜200程度の単糖からなる糖鎖を有し、グリコサミノグリカンがタンパク質に結合した複合体をいう。糖鎖は、二糖の繰り返し構造を概して備える。プロテオグリカンは、典型的には、線維タンパク質間を充填するように存在している。
糖脂質としては、糖鎖が結合した脂質をいい、糖とグリセリンとのエーテル結合を含むグリセロ糖脂質と糖とスフィンゴシンとのグリコシド結合を含むスフィンゴ糖脂質とに大別される。スフィンゴ糖脂質は、糖としてヘキソース1分子をもつ単純なセレブロシドのほか、ガラクトース、グルコース、N‐アセチルガラクトサミン、N‐アセチルグルコサミン、フコースなどのヘキソース糖やシアル酸を含むガングリオシド、硫酸化糖を含むスルファチドなどがある。
処理工程に供される糖鎖含有化合物としては、糖タンパク質や糖脂質が、KDN残基を含む場合が多いため、かかる複合糖質の処理にKDN活性のための剤は有用である。また、本処理方法の処理工程は、遊離した状態の糖鎖含有化合物をKDN活性のための剤で処理するほか、細胞表層に存在する糖鎖含有化合物をKDN活性のための剤で処理することを含む。KDN活性のための剤は、細胞障害性の低い条件で高いシアリダーゼ活性を発揮できるため、細胞の処理に有用である。
処理工程では、糖鎖含有化合物とKDN活性のための剤とを、KDN活性のための剤のKDN活性を発揮可能な条件下、液性媒体中で接触させることにより、そのKDNase活性によりKDN残基が遊離させることができる。処理工程における反応濃度は、本KDN活性のための剤が安定的に作用する温度域、pH域等であれば特に限定するものではない。
また、処理工程における反応温度は、反応時間の全体を通して一定である必要はなく、反応時間の初期に併用するその他の酵素の活性を高めることが望ましい場合には、その酵素の活性が高くなる温度域に、反応初期の温度を設定し、反応時間の中期や後期には、本発明の酵素の活性が高くなる温度域に温度を設定するなど、適宜調整することができる。
処理工程における反応時間は、反応温度や基質の濃度、その他の酵素を併用する場合には使用する酵素の活性等を考慮して適宜決定できる。本シアリダーゼ単剤を利用する場合には、特に限定するものではないが、例えば、10分〜16時間の範囲で適宜設定することができる。
本処理方法によれば、KDN活性のための剤によるKDNase活性が、KDN残基を選択的に遊離させることができる。このため、KDN残基が脱離された糖鎖含有化合物を容易に取得できる。したがって、例えば、KDN残基による影響を評価しやすくなる。
本処理方法においては、適宜、KDN活性のための剤以外のシアリダーゼや他のグリコシダーゼ、例えば、ガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、フコシダーゼ、マンノシダーゼなどのエキソグリコシダーゼから選択される1種又は2種以上を同時にあるいは順次処理することもできる。
(糖鎖特性の決定方法)
本明細書に開示される糖鎖特性の決定方法(以下、単に、本決定方法ともいう。)は、糖鎖含有化合物KDN活性のための剤で処理する処理工程と、KDN活性のための剤の処理によって脱離したシアル酸残基を検出する検出工程と、を備えることができる。ここで、糖鎖特性とは、糖鎖含有化合物の有する糖鎖の構成糖の組成や順序をいう。本決定方法における処理工程は、既述の本処理方法における処理工程と同様の態様で実施することができる。また、本決定方法における検出工程は、特に限定するものではないが、例えば、処理工程後の反応液中のシアル酸残基などを、各種マススペクトロメトリー、各種のクロマトグラフィー、各種NMR、各種電気泳動により分離同定する工程とすることができる。なお、分離同定に先立って、あるいは同時に、分離後に、遊離したシアル酸残基を、蛍光標識などのシグナル要素が付加された又は付加可能に形成されたレクチンや特異的抗体と結合させてもよい。こうした、糖鎖のフィンガープリントについては、適宜公知の手法を適用することができる。
また、さらに、本決定方法は、KDN活性のための剤による処理後の糖鎖化合物と糖転移酵素を作用させてその反応性や特異的抗体により、処理により露出された糖鎖末端を検出する工程を備えていてもよい。糖転移酵素としては、適宜、公知の糖転移酵素を用いることができる。
なお、本決定方法においても、本処理方法と同様、KDN活性のための剤以外のシアリダーゼ及び各種グリコシダーゼを、同時にあるいは順次処理することもできる。そして、これらのグリコシダーゼによって遊離される残基や残存末端を、それぞれ検出して、糖鎖特性を決定することもできる。
(糖鎖分解産物の生産方法)
本明細書に開示される糖鎖分解産物の生産方法(以下、本生産方法ともいう。)は、糖鎖含有化合物をKDN活性のための剤で処理する処理工程と、前記処理工程によって生じるシアル酸残基及び/又は前記シアル酸残基脱離物を回収する回収工程と、を備えることができる。本生産方法における処理工程は、既述の本処理方法における処理工程と同様の態様を採ることができる。
本生産方法における回収工程は、処理工程における分解産物、すなわち、遊離したシアル酸残基及びシアル酸残基脱離物の少なくとも一部を分離回収する工程である。本生産方法は、予定される遊離シアル酸残基及びシアル酸残基脱離物の少なくとも一部を回収する工程であればよく、これらの分離回収方法は、例えば、本決定方法において決定に際して用いる分離同定工程を、回収工程として実施することができる。
なお、本生産方法においても、本処理方法と同様、KDN活性のための剤以外のシアリダーゼ及び各種グリコシダーゼを、同時にあるいは順次処理することもできる。そして、これらのグリコシダーゼによって遊離される残基や残存末端を、それぞれ回収することもできる。
なお、本明細書によれば、KDN活性のための剤を用いて、糖鎖含有化合物を処理後、残余の糖鎖末端に1又は2以上の糖転移酵素を用いて新たに糖鎖を結合する工程を備える、糖鎖の生産方法も提供される。
(キット)
本明細書に開示されるキットは、KDN活性のための剤を備えることができる。本キットは、KDN活性のための剤を用いて糖鎖含有化合物を処理し、糖鎖特性を決定し、又は、糖鎖分解産物を生産等に用いるためのキットである。本キットは、KDN活性のための剤を備えるほか、その他のシアリダーゼを含む各種グリコシダーゼをさらに備えていてもよい。また、本キットは、そのほか、本キットの目的に応じて、遊離が予定されるKDN残基やシアル酸脱離後の糖鎖含有化合物に特異的に結合する標識されていてもよい抗体やレクチンなどを備えることもできる。本キットは、そのほか、糖鎖研究や糖鎖解析に適用される試薬やデバイスを備えることもできる。
以下、本開示を具現化した実施例について説明するが、本開示は、はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において、特に記載しない限り、「%」、「部」等は質量基準である。また、操作手順は特に記載しない限り、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook、 Maniatis ら、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989))に記載の方法に従った。
(組換え体シアリダーゼの調製)
配列番号2で表されるアミノ酸配列から分泌シグナルと推定される疎水性領域の配列(1−14AA)を除いたアミノ酸配列に対応するcDNA配列を準備した。このcDNA配列を、常法に従い、pET32aベクターにクローニングし、このベクターを用いてRosetta−gami2(DE3)(メルク株式会社)を形質転換し、LAプレート上でシングルコロニーを得た。シングルコロニーを5ml LA培地に植菌し、37℃、17時間振盪培養した。この培養液を200ml LA培地に全量移し、さらに37℃、2時間30分振盪培養を行いOD600が0.4付近になることを確認した。
培養液に終濃度0.4mMになるようにIPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトシド)を加え、15℃、4時間さらに振盪培養した。培養液を4℃、6,300g、3分の遠心で菌体を回収し、40ml PBSで洗浄した。洗浄後、20ml平衡バッファ(5mMイミダゾール、0.5M NaCl、20mMトリス−塩酸(pH8.0))を加え、さらに終濃度1mMとなるようにPMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC:終濃度1μg/mlロイペプチン、2μg/mlアンチパイン、10μg/mlベンザミジン、1μg/mlペプスタチン、1μg/mlアプロチニン)を加え懸濁した。
細胞懸濁液を超音波破砕し、4℃、22,300g、10分の遠心で上清を粗精製画分(Crude)として回収した。粗精製画分に終濃度50mMとなるようにイミダゾールを加え、平衡バッファであらかじめ平衡化した2ml Ni−NTAアガロースカラムに供し、4℃で15分回転混和した。通過画分(Flow through画分)を回収した後、5ml洗浄バッファ(10mMイミダゾール、1M NaCl、40mMトリス−塩酸(pH8.0))を加え、洗浄して洗浄画分(Wash画分)を回収した。さらに、5ml溶出バッファ(100mMイミダゾール,0.5M NaCl、20mMトリス−塩酸(pH8.0))を加え、ヒスタグ付きタンパク質が溶出される溶出画分(Elute画分)を回収した。最後に5mlストリップバッファ(1Mイミダゾール、0.5M NaCl、20mMトリス−塩酸(pH8.0))を加え、ストリップ画分(Strip画分)を回収した。溶出画分はVIVA SPIN20(MWCO=10000)(Sartorius社製)を用いて限外濾過し、0.5mlまで脱塩濃縮し精製画分(Purified画分)とした。
各画分に含まれるタンパク質は、ウエスタンブロッティングおよびSDS−PAGEを行いCBB染色によって確認した。結果を図2に示す。図2に示すように、タグ付き組換え体シアリダーゼは、溶出画分(Purified画分)に約71kDaのタンパク質として精製されたことがわかった。
さらに、精製画分450μlに3unitのHisタグ付きエンテロカイネースおよび10×反応バッファを加え、4℃、16時間回転混和を行い、N末端側に付加されたヒスタグを切断した。反応液にNi−NTAアガロース10μlを加え、4℃、1時間回転混和し、4℃、2,00g、5分で遠心分離をすることでタグ付きシアリダーゼおよびエンテロカイネースを沈殿させ除去した。
この上清をVIVA SPIN20(MWCO=10000)を用いて80μlまで濃縮した。濃縮した画分は、10μlずつ分注し、−80℃に保存した。シアリダーゼのタグが外れたことを確認するためウエスタンブロッティングおよびSDS−PAGEを行い、CBB染色によってエンテロカイネース消化前後でシアリダーゼがシフトしていることを確認し、その結果を併せて図2に示した。
図2に示すように、エンテロカイネース処理により、タグなしの組換え体シアリダーゼが、SDS−PAGEによれば、質量約52kDaのタンパク質として精製されたことがわかった。また、タグなしシアリダーゼ濃度は、200μg/mlであり、タグなしシアリダーゼの収量が200ml菌体あたり、16μgであることがわかった。
2‘−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−シアル酸ナトリウム(4MU-Sialic acid)を用いたシアリダーゼ活性測定
(1)pH依存性
96穴プレートであるマルチプレート96F(住友ベークライト、Tokyo)に10μlの各種0.5Mバッファを加えた。0.5Mバッファは、pH4.0〜6.0の範囲で酢酸ナトリウムバッファ、pH5.5〜7.0の範囲でリン酸バッファ、pH6.0〜8.0の範囲でHEPES−NaOHバッファ、pH7.5〜10.0の範囲でトリス−塩酸バッファを用いた。次に、40μlの反応溶液として、4MU−KDN(終濃度40μM)、NaCl(終濃度0.5M)、20ngの実施例1で調製したタグなしシアリダーゼ(以下、同じ)を加え、25℃で30分間遮光しながら静置した。その後、50μlの0.25Mグリシン−NaOHバッファ(pH10.4)を加えて反応を停止させ、プレートリーダーEnspire(PerkinElmer, Waltham, MS, USA)を用いて、励起波長365nm、蛍光波長437nmの条件で遊離した4MUの蛍光を測定した。蛍光強度に基づく相対酵素活性の測定結果を図3に示す。
図3に示すように、シアリダーゼの至適pHは、6.0または6.5にあることがわかった。
(2)温度依存性
1.5mlエッペンドルフチューブに50μl反応溶液(0.1M 酢酸ナトリウムバッファ(pH6.0)、40μM 4MU−KDN、4ngシアリダーゼ)を加え、遮光条件で30分、4、15、25、37、50、60℃で静置した。その後、50μlの0.25Mグリシン−NaOH緩衝液(pH10.4)を加え、プレートリーダーEnspireを用いて、励起波長365nm、蛍光波長437nmの条件で遊離した4MUの蛍光を測定した。結果を図4に示す。
図4に示すように、シアリダーゼは、15℃以上37℃以下、より具体的には、25℃以上37℃以下で良好なシアリダーゼ活性を示した。
(3)基質特異性
96穴プレートであるマルチプレート96Fに40μl反応溶液(0.1M酢酸ナトリウムバッファ(pH6.0)、40μM 4MU−Neu5Acまたは4MU−Neu5Gcまたは4MU−KDN)を加え、20ngの実施例1で調製したタグなしシアリダーゼを加え50μlに調整し、遮光条件下で30分、25 ℃で静置した。その後、50μlの0.25M グリシン−NaOH緩衝液(pH10.4)を加え、プレートリーダーEnspireを用いて、励起波長365nm、蛍光波長437nmの条件で遊離した4MUの蛍光を測定した。結果を図5に示す。
図5に示すように、シアリダーゼは4MU−KDNにのみ加水分解活性を示した。
(4)NaCl依存性
96穴プレートであるマルチプレート96Fに40μlの反応溶液(40μM 4MU−KDN、0.1M酢酸ナトリウムバッファ(pH6.0)、0、0.1、0.25、0.5及び1.0M NaCl)を加え、4ngの実施例1で調製したタグなしシアリダーゼを加え50μlに調整し、室温で30分間遮光しながら静置した。その後、50μlの0.25Mグリシン−NaOHバッファ(pH10.4)を加えて反応を停止させ、プレートリーダーEnspireを用いて、励起波長365nm、蛍光波長437nmの条件で遊離した4MUの蛍光を測定した。蛍光強度に基づく相対酵素活性の測定結果を図6に示す。
図6に示すように、NaCl濃度依存的にシアリダーゼの4MU−KDN加水分解活性が向上した。また、例えば、0.1M〜1.0M、また例えば、0.25M〜1.0M(また例えば、0.5〜1.0M、また例えば、0.75〜1.0M)のNaCl中において安定してKDNase活性(NaCl 0M時に対して1.5倍又は2.0倍以上)を呈した。
(5)比活性の測定
96穴プレートであるマルチプレート96Fに40μlの反応溶液(100μM 4MU−KDN、0.1M酢酸ナトリウムバッファ(pH6.0)、1.0M NaCl)を加え、1ngの実施例1で調製したタグなしシアリダーゼを加え50μlに調整し、室温で15分間遮光しながら静置した。その後、50μlの0.25Mグリシン−NaOHバッファ(pH10.4)を加えて反応を停止させ、プレートリーダーEnspireを用いて、励起波長365nm、蛍光波長437nmの条件で遊離した4MUの蛍光を測定した。
25℃において、1分間で1nmolの4MU−KDNを加水分解する活性を1unitとすると、上記の実験結果から、シアリダーゼの比活性は5052unit/mgであった。
配列番号2で表されるアミノ酸配列から1−108AAを除いたアミノ酸配列(配列番号4)に対応するcDNA配列(配列番号3)を準備し、このDNAをクローニングしたpET32aベクターにより形質転換した大腸菌BL21(DE3)をLA培地1mlで37℃、一晩振盪培養し、100μlをLA培地3mlへと移し、さらに37℃、2時間振盪培養をした。培養後、終濃度0.4mMとなるようにIPTGを添加し、さらに15℃、4時間振盪培養を行った。大腸菌を10000×g、1分で遠心し回収し、PBSで洗浄後、150μlのPBS中で超音波破砕した。破砕液を4℃、15000×g、10分の遠心により分画した。上清を集めた後、沈殿に対し150μlのPBSを加え、超音波破砕を行うことで沈殿画分とした。その上清、沈殿画分に対しSDS−PAGEを行い、CBB染色によってタンパク質の発現を確認した結果を図7に示した。
図7に示すように、IPTG誘導した大腸菌では、61kDaのタンパク質が誘導されており、そのほとんどが沈殿へと分画された。
次に、61kDaのバンドとして検出された配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質がKDNase活性を有しているかどうかを確認するために、かかるタンパク質がより少なく分画されていると考えられるIPTG誘導した大腸菌破砕液の上清を100倍希釈した後10μlを96穴プレートに加えた。各ウェルに40μl反応溶液(0.1M酢酸ナトリウムバッファ(pH6.0)、40μM 4MU−KDN、0.5M NaCl)を加え、遮光条件下で30分、37℃で静置した。その後、50μlの0.25Mグリシン−NaOH緩衝液(pH10.4)を加え、プレートリーダーEnspireを用いて、励起波長365nm、蛍光波長437nmの条件で遊離した4MUの蛍光を測定した。結果を図8に示す。
図8に示すように、上清はKDNase活性を示した。これらの結果によれば、図7に示すように上清にほとんどタンパク質が含まれていないものの、その微量なタンパク質であってもKDNase活性を示したことから、本実施例でIPTG誘導したタンパク質は、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、KDNase活性を
示すことがわかった。

Claims (14)

  1. 以下の(a)〜(e)からなる群から選択される少なくとも1種の塩基配列を有する核酸を含む、KDNase活性を有するタンパク質を製造するための剤。
    (a)配列番号1又は3で表される塩基配列
    (b)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (c)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (d)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (e)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
  2. 前記(b)において、前記同一性は、95%以上である、請求項1に記載の剤。
  3. 前記(d)において、前記同一性は、95%以上である、請求項1又は2に記載の剤。
  4. 以下の(a)〜(e)からなる群から選択される少なくとも1種の塩基配列を有する核酸を用いて、KDNase活性を有するタンパク質を製造する方法。
    (a)配列番号1又は3で表される塩基配列
    (b)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (c)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (d)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (e)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入からなる群から選択される1種又は2種以上の変異を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
  5. 以下の(a)〜(d)からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質。
    (a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質
    (b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
    (d)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、KDNase活性を有するタンパク質
  6. 以下の(a)〜(d)からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質であって、NaCl濃度が0.1M以上1.0M以下のとき、NaCl濃度が0M時のKDNase活性に対して1.5倍以上のKDNase活性を有する、タンパク質。
    (a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質
    (b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
    (d)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、KDNase活性を有するタンパク質
  7. KDNase活性のための剤のスクリーニング方法であって、
    以下の(b)、(c)及び(d)からなる群から選択される少なくとも1種を被験タンパク質として、KDNase活性を評価する工程、
    を備える、方法。
    (b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質
    (d)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、KDNase活性を有するタンパク質
  8. 糖鎖含有化合物を、請求項5又は6に記載のタンパク質で処理する処理工程、を備える、糖鎖の処理方法。
  9. 前記糖鎖含有化合物は、糖タンパク質及び糖脂質から選択される、請求項8に記載の処理方法。
  10. 前記処理工程は、細胞表面に提示される前記糖鎖含有化合物を前記剤で処理する工程である、請求項8又は9に記載の処理方法。
  11. 糖鎖含有化合物を請求項5又は6に記載のタンパク質で処理する処理工程、
    を備える、糖鎖特性の決定方法。
  12. 糖鎖分解産物の生産方法であって、
    糖鎖含有化合物を請求項5又は6に記載のタンパク質で処理する処理工程と、
    前記処理工程によって生じるKDN及び/又はKDN脱離物を回収する工程と、
    を備える、生産方法。
  13. 以下の(a)〜(e)からなる群から選択される少なくとも1種の塩基配列を有する核酸を備える、KDNase発現ベクター。
    (a)配列番号1又は3で表される塩基配列
    (b)配列番号1又は3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (c)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (d)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
    (e)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1個以上60個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有するか又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1個以上45個以下のアミノ酸の置換、欠失及び挿入の1種又は2種以上を有するアミノ酸配列を有し、KDNase活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
  14. KDNase発現キットであって、
    請求項13に記載のシアリダーゼ発現ベクターを備える、キット。
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