JP2021177229A - 偏光板および光学機能層付偏光板 - Google Patents

偏光板および光学機能層付偏光板 Download PDF

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Abstract

【課題】非常に薄いにもかかわらず、優れた耐久性および優れた屈曲性を有する偏光板を提供する。【解決手段】偏光板100は、偏光子10と、該偏光子10の一方の側に配置された保護層20と、を有し、該保護層20が、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物で構成されており、総厚みが20μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、偏光板および光学機能層付偏光板に関する。
画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置)には、その画像形成方式に起因して、多くの場合、表示セルの少なくとも一方の側に偏光板が配置されている。近年、画像表示装置の薄型化およびフレキシブル化が進んでおり、これに伴い、偏光板の薄型化も強く要望されている。しかし、偏光板を薄くすればするほど、加熱加湿環境下での光学特性が低下するという耐久性の問題が顕著となる。
近年、湾曲した画像表示装置および/または折り曲げもしくは折り畳み可能な画像表示装置に対する要望が高まっている。それに伴い、偏光板(結果として、光学機能層付偏光板)についても機械的特性としての優れた屈曲性および屈曲により光学特性が変化しないことが求められている。しかし、このような特性を満足する偏光板(結果として、光学機能層付偏光板)は、実用化に向けて検討の余地が残されている。また、耐屈曲性を向上させた場合、偏光板の強度が低下し、物理的な耐久性が低下するという問題がある。
特開2015−210474号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、非常に薄いにもかかわらず、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立する偏光板および光学機能層付偏光板を提供することにある。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された保護層と、を含む。この保護層は、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物で構成されている。この偏光板の総厚みは20μm以下である。
1つの実施形態においては、上記保護層は上記芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物であり、オキセタン樹脂をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記保護層の軟化温度は100℃以上である。
1つの実施形態においては、上記保護層の厚みは10μm以下である。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みは10μm以下である。
1つの実施形態においては、上記芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂がビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂である。
本発明の別の局面においては、光学機能層付偏光板が提供される。この光学機能層付偏光板は、上記偏光板と、上記偏光子の上記保護層と反対側に配置された光学機能層とを含む。この光学機能層付偏光板の総厚みは25μm以下である。
1つの実施形態においては、上記光学機能層は、上記保護層とは別の保護層として機能する。
1つの実施形態においては、上記光学機能層は、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層である。
本発明の実施形態によれば、非常に薄いにもかかわらず、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立する偏光板および光学機能層付偏光板を提供することができる。本発明の実施形態では、保護層を、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物で構成する。そのため、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立した偏光板および光学機能層付偏光板を提供することができる。
本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。 本発明の1つの実施形態による光学機能層付偏光板の概略断面図である。 本発明の1つの実施形態による偏光板の製造方法における加熱ロールを用いた乾燥収縮処理の一例を示す概略図である。
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
A.偏光板および光学機能層付偏光板の概要
A−1.偏光板の概要
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。図示例の偏光板100は、偏光子10と、偏光子10の一方の側に配置された保護層20と、を有する。偏光板100の総厚みは20μm以下である。保護層20は、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物である。すなわち、保護層は芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂を光カチオン重合により硬化させることにより形成した層、または、エポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物である。偏光板100がこのような保護層を有することにより、非常に薄い厚みにも関わらず、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立する偏光板を提供することができる。1つの実施形態において、偏光子10の厚みは好ましくは10μm以下である。また、1つの実施形態において、保護層20の厚みは好ましくは10μm以下である。1つの実施形態においては、保護層の軟化温度は好ましくは100℃以上である。保護層の軟化温度は用いるエポキシ樹脂により決定され得る。
偏光板100の総厚みは20μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。本発明によれば、偏光板の総厚みを上記範囲としても優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立する偏光板を提供することができる。偏光板の総厚みは、例えば、5μm以上である。
偏光板を構成する各層または光学フィルムは、代表的には接着層を介して貼り合わせられている。接着層としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。本発明の実施形態においては、接着剤層が好適に採用され得る。このような構成であれば、偏光板のさらなる薄型化が可能となる。接着剤層を構成する接着剤としては、代表的には、活性エネルギー線硬化型接着剤(例えば、紫外線硬化型接着剤)が挙げられる。
本発明の実施形態において偏光板の厚みはきわめて薄くなり得る。そのため、フレキシブルな画像表示装置に好適に適用され得る。より好ましくは、画像表示装置は、湾曲した形状(実質的には、湾曲した表示画面)を有し、および/または、屈曲もしくは折り曲げ可能である。画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。言うまでもなく、上記の説明は、本発明の偏光板が通常の画像表示装置に適用されることを妨げるものではない。
A−2.光学機能層付偏光板の概要
図2は、本発明の1つの実施形態による光学機能層付偏光板の概略断面図である。図示例の光学機能層付偏光板110は、偏光子10と、偏光子の一方の側に配置された保護層20と、偏光子のもう一方の側に配置された光学機能層30とを含む。光学機能層付偏光板の総厚みは25μm以下である。1つの実施形態において、偏光子10と、保護層20として、上記偏光板100が用いられる。
光学機能層付偏光板110の総厚みは25μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。本発明によれば、偏光板の総厚みを上記範囲としても優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立する偏光板を提供することができる。光学機能層付偏光板の総厚みは、例えば、10μm以上である。
1つの実施形態においては、光学機能層は、保護層20とは別の保護層として機能する。このような保護層は、所定の位相差および光学特性を有する位相差層としても機能し得る。別の実施形態においては、光学機能層は、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層である。このような位相差層は、偏光子の保護層としても機能し得る。光学機能層が位相差層である場合、1つの実施形態においては、位相差層は液晶化合物の配向固化層である。位相差層は、配向固化層の単一層であってもよく、第1の配向固化層と第2の配向固化層との積層構造を有していてもよい。以下、光学機能層が位相差層である偏光板を、位相差層付偏光板と称する場合がある。
光学機能層付偏光板を構成する各層または光学フィルムは、代表的には接着層を介して貼り合わせられている。接着層としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。本発明の実施形態においては、接着剤層が好適に採用され得る。このような構成であれば、光学機能層付偏光板のさらなる薄型化が可能となる。接着剤層を構成する接着剤としては、代表的には、活性エネルギー線硬化型接着剤(例えば、紫外線硬化型接着剤)が挙げられる。
位相差層として機能する光学機能層を備えた偏光板は、別の位相差層がさらに設けられてもよい。別の位相差層は、代表的には、光学機能層(位相差層)30の外側(偏光子10と反対側)に設けられる。別の位相差層は、代表的には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す。このような別の位相差層は、好ましくは、位相差層が配向固化層の単一層である場合に設けられる。なお、便宜上、光学機能層(位相差層)30を第1の位相差層と称し、別の位相差層を第2の位相差層と称する場合がある。光学機能層付偏光板は、その他の位相差層をさらに含んでいてもよい。その他の位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
光学機能層付偏光板には、導電層または導電層付等方性基材が設けられてもよい。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、光学機能層30の外側(偏光子10と反対側)に設けられる。偏光板が位相差層と別の位相差層とを有する位相差層付偏光板である場合には、別の位相差層ならびに導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層(光学機能層)30側からこの順に設けられる。導電層または導電層付等方性基材が設けられる場合、偏光板または位相差層付偏光板は、画像表示セル(例えば、有機ELセル)と偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。
上記のとおり、保護層を、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物で構成することにより、非常に薄いにもかかわらず、耐久性に優れた偏光板を実現することができる。具体的には、加熱加湿環境下においても光学特性の低下が抑制された偏光板を実現することができる。上記偏光板は、85℃および85%RHの環境下で48時間放置した後の単体透過率Tsの変化量ΔTsおよび偏光度Pの変化量ΔPが、それぞれ非常に小さい。単体透過率Tsは、例えば紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名「V7100」)を用いて測定され得る。偏光度Pは、紫外可視分光光度計を用いて測定される単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)から、次式により算出される。
偏光度(P)(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
なお、上記Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。また、TsおよびPは、実質的には偏光子の特性である。ΔTsおよびΔPは、それぞれ下記式により求められる。
ΔTs(%)=Ts48−Ts
ΔP(%)=P48−P
ここで、Tsは放置前(初期)の単体透過率であり、Ts48は放置後の単体透過率であり、Pは放置前(初期)の偏光度であり、P48は放置後の偏光度である。ΔTsは、好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.7%以下であり、さらに好ましくは2.4%以下である。ΔPは、好ましくは−1.0%〜0%であり、より好ましくは−0.5%〜0%であり、さらに好ましくは−0.3%〜0%である。
実用的には、光学機能層の偏光子と反対側には粘着剤層(図示せず)が設けられ、偏光板は画像表示セルに貼り付け可能とされている。さらに、粘着剤層の表面には、偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルムが仮着されていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、ロール形成が可能となる。
本発明の偏光板および光学機能層付偏光板は、枚葉状であってもよく長尺状であってもよい。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の偏光板は、ロール状に巻回可能である。
以下、偏光板および光学機能層付偏光板の構成要素について、より詳細に説明する。
B.偏光子
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。偏光子は、代表的には、二層以上の積層体を用いて作製され得る。偏光子の製造方法については、偏光板の製造方法としてF項で後述する。
偏光子の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm〜8μmであり、さらに好ましくは1μm〜7μmであり、特に好ましくは2μm〜5μmである。
偏光子のホウ酸含有量は、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは13重量%〜25重量%である。偏光子のホウ酸含有量がこのような範囲であれば、後述のヨウ素含有量との相乗的な効果により、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。ホウ酸含有量は、例えば、中和法から下記式を用いて、単位重量当たりの偏光子に含まれるホウ酸量として算出することができる。
Figure 2021177229
偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは2重量%〜10重量%である。偏光子のヨウ素含有量がこのような範囲であれば、上記のホウ酸含有量との相乗的な効果により、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。本明細書において「ヨウ素含有量」とは、偏光子(PVA系樹脂フィルム)中に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はヨウ素イオン(I)、ヨウ素分子(I)、ポリヨウ素イオン(I 、I )等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素含有量は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の量を意味する。ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析の検量線法により算出することができる。なお、ポリヨウ素イオンは、偏光子中でPVA−ヨウ素錯体を形成した状態で存在している。このような錯体が形成されることにより、可視光の波長範囲において吸収二色性が発現し得る。具体的には、PVAと三ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は470nm付近に吸光ピークを有し、PVAと五ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は600nm付近に吸光ピークを有する。結果として、ポリヨウ素イオンは、その形態に応じて可視光の幅広い範囲で光を吸収し得る。一方、ヨウ素イオン(I)は230nm付近に吸光ピークを有し、可視光の吸収には実質的には関与しない。したがって、PVAとの錯体の状態で存在するポリヨウ素イオンが、主として偏光子の吸収性能に関与し得る。
偏光子は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率Tsは、好ましくは40%〜48%であり、より好ましくは41%〜46%である。偏光子の偏光度Pは、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
C.保護層
C−1.光カチオン硬化物
1つの実施形態においては、保護層は、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物で構成される。このような保護層を用いることにより、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立した偏光板および光学機能層付偏光板を提供することができる。上記のとおり、保護層が光カチオン硬化物であるため、保護層形成用組成物は光カチオン重合開始剤を含む。光カチオン重合開始剤は、光酸発生剤の機能を持つ感光剤であり、代表的にはカチオン部とアニオン部とからなるイオン性のオニウム塩が挙げられる。このオニウム塩において、カチオン部は光を吸収し、アニオン部は酸の発生源となる。この光カチオン重合開始剤から発生した酸によりエポキシ基の開環重合が進行する。得られる光カチオン硬化物である保護層は軟化温度が高く、ヨウ素吸着量が低減され得る。そのため、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立し得る偏光板を提供することができる。
C−1−1.エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有する任意の適切なエポキシ樹脂を用いることができる。芳香族骨格としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは芳香族骨格としてビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂が用いられる。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を用いることにより、より優れた耐久性とより優れた屈曲性とを両立する偏光板が提供され得る。以下、代表例として、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂について詳細に説明する。
1つの実施形態において、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂は、以下の構造を含むエポキシ樹脂である。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2021177229
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の置換または非置換の炭化水素基、または、ハロゲン元素を表す)。
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の置換または非置換の炭化水素基、または、ハロゲン元素を表す。炭素数1〜12の直鎖状または分岐状の置換または非置換の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、n−デシル基、シクロデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、フェニル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の置換または非置換の炭化水素基としては、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。ハロゲン元素としては、好ましくはフッ素および臭素が挙げられる。
1つの実施形態においては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂は下記式で表されるエポキシ樹脂である。
Figure 2021177229
(式中、R〜Rは上記の通りであり、nは0〜6の整数を表す)。
1つの実施形態において、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂はビフェニル骨格のみを有するエポキシ樹脂である。ビフェニル骨格のみを有するエポキシ樹脂を用いることにより、得られる保護層の耐久性がさらに向上し得る。
1つの実施形態においては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂はビフェニル骨格以外の化学構造を含んでいてもよい。ビフェニル骨格以外の化学構造としては、例えば、ビスフェノール骨格、脂環式構造、芳香族環構造等が挙げられる。この実施形態においては、ビフェニル骨格以外の化学構造の割合(モル比)はビフェニル骨格よりも少ないことが好ましい。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂としては市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製、商品名:jER YX4000、jER YX4000H、jER YL6121、jER YL664、jER YL6677、jER YL6810、jER YL7399等が挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂は、好ましくはガラス転移温度(Tg)が100℃以上である。その結果、保護層の軟化温度もほぼ100℃以上となる。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂のTgが100℃以上であれば、得られる保護層を含む偏光板は、耐久性に優れたものとなりやすい。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂のTgは、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上である。一方、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂のTgは、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは160℃以下である。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂のTgがこのような範囲であれば、成形性および加工性に優れ得る。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは100g/当量以上であり、より好ましくは150g/当量以上、さらに好ましくは200g/当量以上である。また、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは3000g/当量以下であり、より好ましくは2500g/当量以下、さらに好ましくは2000g/当量以下である。ビフェニル骨格を有するエポキシ当量が上記範囲であることにより、より安定した保護層(残存モノマーが少なく、十分に硬化した保護層)が得られる。なお、本明細書において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」をいい、JIS K7236に準じて測定することができる。
本発明の実施形態においては、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂と他の樹脂とを併用してもよい。すなわち、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂と他の樹脂とのブレンドを保護層の成形に供してもよい。他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂、アクリル系樹脂およびオキセタン系樹脂等の硬化型樹脂が挙げられる。好ましくは、アクリル系樹脂およびオキセタン系樹脂が用いられる。併用する樹脂の種類および配合量は、目的および得られるフィルムに所望される特性等に応じて適切に設定され得る。例えば、スチレン系樹脂は、位相差制御剤として併用され得る。
アクリル系樹脂としては、任意の適切なアクリル系樹脂を用いることができる。例えば、(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、分子内に一個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物(以下、「単官能(メタ)アクリル系化合物」ともいう)、分子内に二個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物(以下、「多官能(メタ)アクリル系化合物」ともいう)が挙げられる。これらの(メタ)アクリル系化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。これらのアクリル系樹脂については、例えば特開2019−168500号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
オキセタン樹脂としては、分子内にオキセタニル基を1個以上有する任意の適切な化合物が用いられる。例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(オキシラニルメトキシ)オキセタン、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル等の分子内にオキセタニル基を1個有するオキセタン化合物;3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等の分子内にオキセタニル基を2個以上有するオキセタン化合物;等が挙げられる。これらオキセタン樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
好ましくは3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(オキシラニルメトキシ)オキセタン、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等が用いられる。これらのオキセタン樹脂は、容易に入手可能であり、希釈性(低粘度)、相溶性に優れ得る。
1つの実施形態においては、相溶性や接着性の点から、好ましくは分子量500以下であり、室温(25℃)で液状のオキセタン樹脂が用いられる。1つの実施形態においては、好ましくは分子内に2個以上のオキセタニル基を含有するオキセタン化合物、分子内に1個のオキセタニル基と1個の(メタ)アクリロイル基または1個のエポキシ基を含有するオキセタン化合物が用いられ、より好ましくは3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(オキシラニルメトキシ)オキセタン、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルが用いられる。これらのオキセタン樹脂を用いることにより、保護層の硬化性および耐久性が向上し得る。
オキセタン樹脂としては、市販品を用いてもよい。具体的には、アロンオキセタンOXT−101、アロンオキセタンOXT−121、アロンオキセタンOXT−212、アロンオキセタンOXT−221(いずれも東亞合成社製)を用いることができる。好ましくはアロンオキセタンOXT−101およびアロンオキセタンOXT−221を用いることができる。
芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂と他の樹脂とを併用する場合、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂と他の樹脂とのブレンドにおける芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは60重量%〜100重量%、さらに好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは80重量%〜100重量%である。含有量が50重量%未満である場合には、保護層の耐熱性および偏光子との十分な密着性とが得られないおそれがある。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂とオキセタン樹脂とを併用する場合、ビフェニル骨格を有するエポキシ系樹脂とオキセタン樹脂の合計量100重量部に対して、オキセタン樹脂の含有量は好ましくは1重量部〜50重量部、より好ましくは5重量部〜45重量部、さらに好ましくは10重量部〜40重量部である。上記範囲とすることにより、硬化性が向上し、保護層と偏光子との密着性も向上し得る。
C−1−2.光カチオン重合開始剤
光カチオン重合開始剤は、光酸発生剤の機能を持つ感光剤であり、代表的にはカチオン部とアニオン部とからなるイオン性のオニウム塩が挙げられる。このオニウム塩において、カチオン部は光を吸収し、アニオン部は酸の発生源となる。この光カチオン重合開始剤から発生した酸によりエポキシ基の開環重合が進行する。光カチオン重合開始剤としては、紫外線等の光照射により芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂を硬化させることができる任意の適切な化合物を用いることができる。光カチオン重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。好ましくは、トリフェニルスルホニウム塩系ヘキサフルオロアンチモネートタイプの光カチオン重合開始剤、ジフェニルヨードニウム塩系ヘキサフルオロアンチモネートタイプの光カチオン重合開始剤が用いられる。
光カチオン重合開始剤としては市販品を用いてもよい。市販品としては、トリフェニルスルホニウム塩系ヘキサフルオロアンチモネートタイプのSP−170(ADEKA社製)、CPI−101A(サンアプロ社製)、WPAG−1056(和光純薬工業社製)、ジフェニルヨードニウム塩系ヘキサフルオロアンチモネートタイプのWPI−116(和光純薬工業社製)等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤の含有量は、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜3重量部であり、より好ましくは0.25重量部〜2重量部である。光カチオン重合開始剤の含有量が0.1重量部未満の場合、光(紫外線)を照射しても十分に硬化しない場合がある。
C−2.塗布膜の固化物
1つの実施形態においては、保護層はエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物で構成されている。
C−2−1.エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、好ましくはガラス転移温度(Tg)が100℃以上である。その結果、保護層の軟化温度もほぼ100℃以上となる。エポキシ樹脂のTgが100℃以上であれば、このような樹脂から得られた保護層を含む偏光板は、耐久性に優れたものとなりやすい。エポキシ樹脂のTgは、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上である。一方、エポキシ樹脂のTgは、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは160℃以下である。エポキシ樹脂のTgがこのような範囲であれば、成形性および加工性に優れ得る。
エポキシ樹脂としては、上記のようなTgを有する限りにおいて任意の適切なエポキシ樹脂が採用され得る。エポキシ樹脂は、代表的には、分子構造内にエポキシ基を有する樹脂をいう。エポキシ樹脂としては、好ましくは分子構造内に芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂を用いることにより、より高いTgを有するエポキシ樹脂が得られ得る。分子構造内に芳香族環を有するエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合、芳香族環を含むエポキシ樹脂と、芳香族環を含まないエポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。
分子構造内に芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−P−又は−m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−又は−5−アミノ−o−クレゾール型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂等の3つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、メタキシレンジアミン型)等の4つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。また、ヘキサヒドロ無水フタル酸型エポキシ樹脂、テトラヒドロ無水フタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸型等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂を用いてもよい。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000、最も好ましくは60000〜150000である。重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフ(GPCシステム,東ソー製)を用いて、ポリスチレン換算により求めることができる。なお、溶剤としてはテトラヒドロフランが用いられ得る。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは1000g/当量以上であり、より好ましくは3000g/当量以上、さらに好ましくは5000g/当量以上である。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは30000g/当量以下であり、より好ましくは25000当量以下、さらに好ましくは20000g/当量以下である。エポキシ当量が上記範囲であることにより、より安定した保護層が得られる。なお、本明細書において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」をいい、JIS K7236に準じて測定することができる。
本発明の実施形態においては、エポキシ樹脂と他の樹脂とを併用してもよい。すなわち、エポキシ樹脂と他の樹脂とのブレンドを保護層の成形に供してもよい。他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。併用する樹脂の種類および配合量は、目的および得られるフィルムに所望される特性等に応じて適切に設定され得る。例えば、スチレン系樹脂は、位相差制御剤として併用され得る。
エポキシ樹脂と他の樹脂とを併用する場合、エポキシ樹脂と他の樹脂とのブレンドにおけるエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは60重量%〜100重量%、さらに好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは80重量%〜100重量%である。含有量が50重量%未満である場合には、保護層の耐熱性および偏光子との十分な密着性とが得られないおそれがある。
C−3.保護層の構成および特性
保護層は、上記のとおり、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物で構成されている。このような保護層であれば、押出成形フィルムに比べて厚みを格段に薄くすることができる。保護層の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは7μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは3μm以下である。保護層の厚みは、例えば1μm以上であり得る。芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物は水溶液または水分散体のような水系の塗布膜の固化物に比べて吸湿性および透湿性が小さいので加湿耐久性に優れるという利点を有する。その結果、加熱加湿環境下においても光学特性を維持し得る、耐久性に優れた偏光板を実現することができる。また、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物またはエポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物であることにより、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立し得る。
保護層の軟化温度は、好ましくは100℃以上である。保護層の軟化温度が100℃以上であれば、得られる保護層を含む偏光板は、耐久性に優れたものとなりやすい。保護層の軟化温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上である。一方、保護層の軟化温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは160℃以下である。保護層の軟化点がこのような範囲であれば、成形性および加工性に優れ得る。
保護層のヨウ素吸着量は、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは6.0重量%以下であり、特に好ましくは3.0重量%以下である。ヨウ素吸着量は小さいほど好ましい。ヨウ素吸着量がこのような範囲であれば、さらに優れた耐久性を有する偏光板が得られ得る。ヨウ素吸着量は、以下の方法で測定され得る。
保護層形成用組成物を、アプリケーターにより基材(PETフィルム)に塗布し、保護層(厚み約3μm)を形成する。得られた保護層付PETフィルムを1cm×1cm(1cm)に切り出して試料とし、ヘッドスペースバイアル瓶(20mL容量)に採取・秤量する。次に、ヨウ素溶液(ヨウ素濃度1重量%、ヨウ化カリウム濃度7重量%)1mLを入れたスクリュー管瓶(1.5mL容量)もこのヘッドスペースバイアル瓶に入れ、密栓する。その後、ヘッドスペースバイアル瓶を65℃の乾燥機に入れ、6時間加温する。これにより、ガス状態のIを試料に吸着させる。その後、試料をセラミックボートに採取し自動試料燃焼装置を用いて燃焼させ、発生したガスを吸収液10mLに捕集する。捕集後、この吸収液を純水で15mLに調製し、原液または適宜希釈した液についてIC定量分析を行う。なお、PETフィルムのみで同様の測定を行った場合のヨウ素吸着量はほぼ0である。IC定量分析で得られたヨウ素重量と、保護層単体の重量(「保護層付PETフィルムの重量」−「PETフィルムの重量」)とに基づいて、以下の式からヨウ素吸着量(重量%)を算出する。
ヨウ素吸着量(重量%)=IC定量分析で得られたヨウ素重量/保護層単体の重量×100
分析には、例えば、以下の測定装置を用いることができる。
[測定装置]
自動試料燃焼装置:三菱ケミカルアナリテック社製、「AQF−2100H」
IC(アニオン):Thermo Fisher Scientific社製、「ICS−3000」
保護層は、好ましくは、実質的に光学的に等方性を有する。本明細書において「実質的に光学的に等方性を有する」とは、波長550nmにおける位相差が、−50nm〜+50nmであることをいう。面内位相差Re(550)は、より好ましくは−30nm〜+30nmであり、さらに好ましくは−10nm〜+10nmであり、特に好ましくは0nm〜2nmである。厚み方向の位相差Rth(550)は、より好ましくは−5nm〜+5nmであり、さらに好ましくは−3nm〜+3nmであり、特に好ましくは−2nm〜+2nmである。保護層のRe(550)およびRth(550)がこのような範囲であれば、当該保護層を含む偏光板を画像表示装置に適用した場合に表示特性に対する悪影響を防止することができる。なお、Re(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(550)は、式:Re(550)=(nx−ny)×dによって求められる。Rth(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(550)は、式:Rth(550)=(nx−nz)×dによって求められる。ここで、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。
保護層の厚み3μmにおける380nmでの光線透過率は、高ければ高いほど好ましい。具体的には、光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率がこのような範囲であれば、所望の透明性を確保することができる。光線透過率は、例えば、ASTM−D−1003に準じた方法で測定され得る。
保護層のヘイズは、低ければ低いほど好ましい。具体的には、ヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズが5%以下であると、フィルムに良好なクリヤー感を与えることができる。さらに、画像表示装置の視認側偏光板に使用する場合でも、表示内容が良好に視認できる。
保護層の厚み3μmにおけるYIは、好ましくは1.27以下、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.23以下、特に好ましくは1.20以下である。YIが1.3を超えると、光学的透明性が不十分となる場合がある。なお、YIは、例えば、高速積分球式分光透過率測定機(商品名DOT−3C:村上色彩技術研究所製)を用いた測定で得られる色の三刺激値(X、Y、Z)より、次式によって求めることができる。
YI=[(1.28X−1.06Z)/Y]×100
保護層の厚み3μmにおけるb値(ハンターの表色系に準じた色相の尺度)は、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.0以下である。b値が1.5以上である場合、所望でない色味が出る場合がある。なお、b値は、例えば、保護層を構成するフィルムのサンプルを3cm角に裁断し、高速積分球式分光透過率測定機(商品名DOT−3C:村上色彩技術研究所製)を用いて色相を測定し、当該色相をハンターの表色系に準じて評価することにより得られ得る。
保護層(例えば、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物およびエポキシ樹脂の塗布膜の固化物)は、目的に応じて任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤;レベリング剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーまたは無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。添加剤は、通常、フィルム形成時に溶液に添加される。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
保護層の偏光子側には、易接着層が形成されていてもよい。易接着層は、例えば、水系ポリウレタンとオキサゾリン系架橋剤とを含む。このような易接着層を形成することにより、保護層と偏光子との密着性を高めることができる。また、保護層には、ハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、保護層が視認側偏光板の視認側の保護層として用いられる場合に形成され得る。易接着層およびハードコート層の両方が形成される場合、代表的には、これらはそれぞれ保護層の異なる側に形成され得る。
D.光学機能層
D−1.保護層である光学機能層
光学機能層30が保護層20とは別の保護層として機能する場合、当該保護層は、好ましくは厚み20μm以下の薄型保護層である。保護層の厚みは、より好ましくは18μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。保護層の厚みの、例えば1μm以上であり得る。
保護層(光学機能層)は、樹脂フィルムで構成されていてもよく、塗布膜の固化物で構成されていてもよい。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。塗布膜の固化物は、例えば、所定のアクリル系樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物、または、上記エポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物であり得る。保護層が塗布膜の固化物で構成される場合、樹脂フィルムに比べて厚みを格段と薄くすることができる。また、保護層(光学機能層)が上記芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物であってもよい。
保護層(光学機能層)は、代表的には、偏光板を画像表示装置に適用した場合に画像表示セル側に配置される。1つの実施形態においては、保護層は光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm〜10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が−10nm〜+10nmであることをいう。別の実施形態においては、保護層は、任意の適切な位相差値を有する位相差層であってもよい。この場合、保護層(位相差層)の面内位相差Re(550)は、例えば110nm〜150nmである。
D−2.円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層である光学機能層
光学機能層30が円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層である場合、当該位相差層は、樹脂フィルムの延伸フィルムであってもよく、液晶化合物の配向固化層であってもよい。好ましくは、液晶化合物の配向固化層である。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを延伸フィルムに比べて格段に小さくすることができる。その結果、位相差層付偏光板のさらなる薄型化を実現することができる。さらに、きわめて優れた屈曲性を有する位相差層付偏光板を実現することができる。以下、液晶化合物の配向固化層について詳細に説明する。なお、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される位相差層については、例えば、特開2017−54093号公報、特開2018−60014号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。本実施形態においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1の位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された第1の位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、第1の位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃〜120℃であり、さらに好ましくは50℃〜100℃であり、最も好ましくは60℃〜90℃である。
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002−533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker−Chem社の商品名LC−Sillicon−CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
液晶化合物の配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。1つの実施形態においては、基材は任意の適切な樹脂フィルムであり、当該基材上に形成された配向固化層は、偏光子10の表面に転写され得る。
上記配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006−163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
配向固化層の別の例としては、ディスコティック液晶化合物が、垂直配向、ハイブリッド配向及び傾斜配向のいずれかの状態で配向している形態が挙げられる。ディスコティック液晶化合物は、代表的には、ディスコティック液晶化合物の円盤面が第1の位相差層のフィルム面に対して実質的に垂直に配向している。ディスコティック液晶化合物が実質的に垂直とは、フィルム面とディスコティック液晶化合物の円盤面とのなす角度の平均値が好ましくは70°〜90°であり、より好ましくは80°〜90°であり、さらに好ましくは85°〜90°であることを意味する。ディスコティック液晶化合物とは、一般的には、ベンゼン、1,3,5−トリアジン、カリックスアレーンなどのような環状母核を分子の中心に配し、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された円盤状の分子構造を有する液晶化合物をいう。ディスコティック液晶の代表例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.Liq.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されている、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体や、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されているシクロヘキサン誘導体、および、J.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系のマクロサイクルが挙げられる。ディスコティック液晶化合物のさらなる具体例としては、例えば、特開2006−133652号公報、特開2007−108732号公報、特開2010−244038号公報に記載の化合物が挙げられる。上記文献および公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
1つの実施形態においては、位相差層(光学機能層)30は、液晶化合物の配向固化層の単一層である。位相差層(以下、上記のとおり第1の位相差層と称する場合がある)が液晶化合物の配向固化層の単一層で構成される場合、その厚みは、好ましくは0.5μm〜7μmであり、より好ましくは1μm〜5μmである。液晶化合物を用いることにより、樹脂フィルムよりも格段に薄い厚みで樹脂フィルムと同等の面内位相差を実現することができる。
第1の位相差層は、代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。第1の位相差層は、代表的には偏光板に反射防止特性を付与するために設けられ、第1の位相差層が配向固化層の単一層である場合にはλ/4板として機能し得る。この場合、第1の位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm〜190nm、より好ましくは110nm〜170nm、さらに好ましくは130nm〜160nmである。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。
第1の位相差層のNz係数は、好ましくは0.9〜1.5であり、より好ましくは0.9〜1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる位相差層付偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
第1の位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、第1の位相差層は、逆分散波長特性を示す。この場合、位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1未満であり、より好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
第1の位相差層の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度θは、好ましくは40°〜50°であり、より好ましくは42°〜48°であり、さらに好ましくは約45°である。角度θがこのような範囲であれば、上記のように第1の位相差層をλ/4板とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する位相差層付偏光板が得られ得る。
別の実施形態においては、第1の位相差層は、第1の配向固化層と第2の配向固化層との積層構造を有し得る。この場合、第1の配向固化層および第2の配向固化層のいずれか一方がλ/4板として機能し、他方がλ/2板として機能し得る。したがって、第1の配向固化層および第2の配向固化層の厚みは、λ/4板またはλ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。例えば、第1の配向固化層がλ/2板として機能し、第2の配向固化層がλ/4板として機能する場合、第1の配向固化層の厚みは例えば2.0μm〜3.0μmであり、第2の配向固化層の厚みは例えば1.0μm〜2.0μmである。この場合、第1の配向固化層の面内位相差Re(550)は、好ましくは200nm〜300nmであり、より好ましくは230nm〜290nmであり、さらに好ましくは250nm〜280nmである。第2の配向固化層の面内位相差Re(550)は、単一層の配向固化層に関して上記で説明したとおりである。第1の配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°〜20°であり、より好ましくは12°〜18°であり、さらに好ましくは約15°である。第2の配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°〜80°であり、より好ましくは72°〜78°であり、さらに好ましくは約75°である。このような構成であれば、理想的な逆波長分散特性に近い特性を得ることが可能であり、結果として、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。第1の配向固化層および第2の配向固化層を構成する液晶化合物、第1の配向固化層および第2の配向固化層の形成方法、光学特性等については、単一層の配向固化層に関して上記で説明したとおりである。
D−3.第2の位相差層
第2の位相差層は、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。第2の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。第2の位相差層は、好ましくは、第1の位相差層が配向固化層の単一層である場合に設けられる。第2の位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは−50nm〜−300nm、より好ましくは−70nm〜−250nm、さらに好ましくは−90nm〜−200nm、特に好ましくは−100nm〜−180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、第2の位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
nz>nx=nyの屈折率特性を有する第2の位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。第2の位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002−333642号公報の[0020]〜[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、第2の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm〜10μmであり、より好ましくは0.5μm〜8μmであり、さらに好ましくは0.5μm〜5μmである。
E.導電層または導電層付等方性基材
導電層は、任意の適切な成膜方法(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法等)により、任意の適切な基材上に、金属酸化物膜を成膜して形成され得る。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物が挙げられる。なかでも好ましくは、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)である。
導電層が金属酸化物を含む場合、該導電層の厚みは、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは35nm以下である。導電層の厚みは、好ましくは10nm以上である。
導電層は、上記基材から光学機能層(または、存在する場合には第2の位相差層)に転写されて導電層単独で位相差層付偏光板の構成層とされてもよく、基材との積層体(導電層付基材)として光学機能層(または、存在する場合には第2の位相差層)に積層されてもよい。好ましくは、上記基材は光学的に等方性であり、したがって、導電層は導電層付等方性基材として偏光板に用いられ得る。
光学的に等方性の基材(等方性基材)としては、任意の適切な等方性基材を採用し得る。等方性基材を構成する材料としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やオレフィン系樹脂などの共役系を有さない樹脂を主骨格としている材料、ラクトン環やグルタルイミド環などの環状構造をアクリル系樹脂の主鎖中に有する材料などが挙げられる。このような材料を用いると、等方性基材を形成した際に、分子鎖の配向に伴う位相差の発現を小さく抑えることができる。等方性基材の厚みは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは35μm以下である。等方性基材の厚みは、例えば20μm以上である。
上記導電層および/または上記導電層付等方性基材の導電層は、必要に応じてパターン化され得る。パターン化によって、導通部と絶縁部とが形成され得る。結果として、電極が形成され得る。電極は、タッチパネルへの接触を感知するタッチセンサ電極として機能し得る。パターニング方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。パターニング方法の具体例としては、ウエットエッチング法、スクリーン印刷法が挙げられる。
F.偏光板の製造方法
F−1.偏光子の製造方法
上記B項に記載の偏光子の製造方法は、長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)とを含むポリビニルアルコール系樹脂層(PVA系樹脂層)を形成して積層体とすること、および、積層体に、空中補助延伸処理と、染色処理と、水中延伸処理と、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理と、をこの順に施すことを含む。PVA系樹脂層におけるハロゲン化物の含有量は、好ましくは、PVA系樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部である。乾燥収縮処理は、加熱ロールを用いて処理することが好ましく、加熱ロールの温度は、好ましくは、60℃〜120℃である。このような製造方法によれば、上記のような偏光子を得ることができる。特に、ハロゲン化物を含むPVA系樹脂層を含む積層体を作製し、上記積層体の延伸を空中補助延伸及び水中延伸を含む多段階延伸とし、延伸後の積層体を加熱ロールで加熱することにより、優れた光学特性(代表的には、単体透過率および偏光度)を有するとともに、光学特性のバラつきが抑制された偏光子を得ることができる。具体的には、乾燥収縮処理工程において加熱ロールを用いることにより、積層体を搬送しながら、積層体全体に亘って均一に収縮することができる。これにより、得られる偏光子の光学特性を高めることができるだけでなく、光学特性に優れる偏光子を安定して生産することができ、偏光子の光学特性(特に、単体透過率)のバラつきを抑制することができる。以下、ハロゲン化物および乾燥収縮処理について説明する。これら以外の製造方法の詳細については、例えば特開2012−73580号公報および特許第6470455号に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
F−1−1.ハロゲン化物
ハロゲン化物とPVA系樹脂とを含むPVA系樹脂層は、ハロゲン化物とPVA系樹脂とを含む塗布液を熱可塑性樹脂基材上に塗布し、塗布膜を乾燥することにより形成され得る。塗布液は、代表的には、上記ハロゲン化物および上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、熱可塑性樹脂基材に密着した均一な塗布膜を形成することができる。
ハロゲン化物としては、任意の適切なハロゲン化物が採用され得る。例えば、ヨウ化物および塩化ナトリウムが挙げられる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、およびヨウ化リチウムが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。
塗布液におけるハロゲン化物の量は、PVA系樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部〜20重量部であり、より好ましくは10重量部〜15重量部である。ハロゲン化物の量が多すぎると、ハロゲン化物がブリードアウトし、最終的に得られる偏光子が白濁する場合がある。
一般に、PVA系樹脂層が延伸されることによって、PVA系樹脂中のポリビニルアルコール分子の配向性が高くなるが、延伸後のPVA系樹脂層を、水を含む液体に浸漬すると、ポリビニルアルコール分子の配向が乱れ、配向性が低下する場合がある。特に、熱可塑性樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体をホウ酸水中延伸する場合において、熱可塑性樹脂基材の延伸を安定させるために比較的高い温度で上記積層体をホウ酸水中で延伸する場合、上記配向度低下の傾向が顕著である。例えば、PVAフィルム単体のホウ酸水中での延伸が60℃で行われることが一般的であるのに対し、A−PET(熱可塑性樹脂基材)とPVA系樹脂層との積層体の延伸は70℃前後の温度という高い温度で行われ、この場合、延伸初期のPVAの配向性が水中延伸により上がる前の段階で低下し得る。これに対して、ハロゲン化物を含むPVA系樹脂層と熱可塑性樹脂基材との積層体を作製し、積層体をホウ酸水中で延伸する前に空気中で高温延伸(補助延伸)することにより、補助延伸後の積層体のPVA系樹脂層中のPVA系樹脂の結晶化が促進され得る。その結果、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性が向上し得る。
F−1−2.乾燥収縮処理
乾燥収縮処理は、ゾーン全体を加熱して行うゾーン加熱により行ってもよいし、搬送ロールを加熱する(いわゆる加熱ロールを用いる)ことにより行う(加熱ロール乾燥方式)こともできる。好ましくは、その両方を用いる。加熱ロールを用いて乾燥させることにより、効率的に積層体の加熱カールを抑制して、外観に優れた偏光子を製造することができる。具体的には、加熱ロールに積層体を沿わせた状態で乾燥することにより、上記熱可塑性樹脂基材の結晶化を効率的に促進させて結晶化度を増加させることができ、比較的低い乾燥温度であっても、熱可塑性樹脂基材の結晶化度を良好に増加させることができる。その結果、熱可塑性樹脂基材は、その剛性が増加して、乾燥によるPVA系樹脂層の収縮に耐え得る状態となり、カールが抑制される。また、加熱ロールを用いることにより、積層体を平らな状態に維持しながら乾燥できるので、カールだけでなくシワの発生も抑制することができる。この時、積層体は、乾燥収縮処理により幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。PVAおよびPVA/ヨウ素錯体の配向性を効果的に高めることができるからである。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は、好ましくは2%〜10%であり、より好ましくは2%〜8%であり、特に好ましくは4%〜6%である。加熱ロールを用いることにより、積層体を搬送しながら連続的に幅方向に収縮させることができ、高い生産性を実現することができる。
図3は、乾燥収縮処理の一例を示す概略図である。乾燥収縮処理では、所定の温度に加熱された搬送ロールR1〜R6と、ガイドロールG1〜G4とにより、積層体200を搬送しながら乾燥させる。図示例では、PVA樹脂層の面と熱可塑性樹脂基材の面を交互に連続加熱するように搬送ロールR1〜R6が配置されているが、例えば、積層体200の一方の面(たとえば熱可塑性樹脂基材面)のみを連続的に加熱するように搬送ロールR1〜R6を配置してもよい。
搬送ロールの加熱温度(加熱ロールの温度)、加熱ロールの数、加熱ロールとの接触時間等を調整することにより、乾燥条件を制御することができる。加熱ロールの温度は、好ましくは60℃〜120℃であり、さらに好ましくは65℃〜100℃であり、特に好ましくは70℃〜80℃である。熱可塑性樹脂の結晶化度を良好に増加させて、カールを良好に抑制することができるとともに、耐久性に極めて優れた光学積層体を製造することができる。なお、加熱ロールの温度は、接触式温度計により測定することができる。図示例では、6個の搬送ロールが設けられているが、搬送ロールは複数個であれば特に制限はない。搬送ロールは、通常2個〜40個、好ましくは4個〜30個設けられる。積層体と加熱ロールとの接触時間(総接触時間)は、好ましくは1秒〜300秒であり、より好ましくは1〜20秒であり、さらに好ましくは1〜10秒である。
加熱ロールは、加熱炉(例えば、オーブン)内に設けてもよいし、通常の製造ライン(室温環境下)に設けてもよい。好ましくは、送風手段を備える加熱炉内に設けられる。加熱ロールによる乾燥と熱風乾燥とを併用することにより、加熱ロール間での急峻な温度変化を抑制することができ、幅方向の収縮を容易に制御することができる。熱風乾燥の温度は、好ましくは30℃〜100℃である。また、熱風乾燥時間は、好ましくは1秒〜300秒である。熱風の風速は、好ましくは10m/s〜30m/s程度である。なお、当該風速は加熱炉内における風速であり、ミニベーン型デジタル風速計により測定することができる。
好ましくは、水中延伸処理の後、乾燥収縮処理の前に、洗浄処理を施す。上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。
このようにして、熱可塑性樹脂基材/偏光子の積層体を得ることができる。
F−2.偏光板の製造方法
保護層は任意の適切な方法で形成することができる。例えば、上記F−1項で得られた積層体表面(例えば、偏光子表面)に、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含む組成物を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に光(例えば、紫外線)を照射することにより保護層を形成することができる。
上記組成物に含まれる溶媒としては、エポキシ樹脂(代表的には、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂)および硬化剤を溶解または均一に分散し得る任意の適切な溶媒を用いることができる。溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチリエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。
保護層が光カチオン硬化物である場合、溶液のエポキシ樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは10重量部〜30重量部である。このような樹脂濃度であれば、偏光子に密着した均一な塗布膜を形成することができる。また、硬化剤の含有量は上記C項の通りである。
溶液は、任意の適切な基材に塗布してもよく、偏光子に塗布してもよい。溶液を基材に塗布する場合には、基材上に形成された塗布膜の硬化物が偏光子に転写される。溶液を偏光子に塗布する場合には、塗布膜を例えば光照射により硬化させることにより、偏光子上に保護層が直接形成される。好ましくは、溶液は偏光子に塗布され、偏光子上に保護層が直接形成される。このような構成であれば、転写に必要とされる接着剤層または粘着剤層を省略することができるので、偏光板をさらに薄くすることができる。溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
光照射により塗布膜を硬化させる場合、任意の適切な光源を用いて任意の適切な照射量となるよう塗布膜に光(代表的には紫外線)が照射され得る。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト、LEDランプ等を用いることができる。紫外線の照射量は、例えば、2mJ/cm〜3000mJ/cm、好ましくは10mJ/cm〜2000mJ/cmである。具体的には、光源として高圧水銀灯を用いる場合、照射量は通常5mJ/cm〜3000mJ/cm、好ましくは50mJ/cm〜2000mJ/cmの条件で行われる。光源として無電極ランプを用いる場合、照射量は、通常2mJ/cm〜2000mJ/cm、好ましくは10mJ/cm〜1000mJ/cmの条件で行われる。
照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗布厚、その他の条件に応じて、任意の適切な値に設定され得る。照射時間は、通常は、数秒〜数十秒であり、数分の1秒でもよい。光の照射は、任意の適切な方向から照射することができる。不均一な硬化を防ぐ点で、保護層形成用組成物の塗工面側から照射することが好ましい。
紫外線照射等の光照射による露光後、光反応による硬化を完結させるために加熱処理をさらに施してもよい。加熱処理は任意の適切な温度および時間で行われ得る。加熱温度は、例えば、80℃〜250℃であり、好ましくは100℃〜150℃である。加熱時間は、例えば、10秒〜2時間であり、好ましくは5分〜1時間である。
1つの実施形態においては、上記F−1項で得られた積層体表面(例えば、偏光子表面)に、エポキシ樹脂を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を固化させることにより、保護層を形成することができる。保護層が塗布膜の固化物である場合、溶液のエポキシ樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、偏光子に密着した均一な塗布膜を形成することができる。
溶液は、任意の適切な基材に塗布してもよく、偏光子に塗布してもよい。溶液を基材に塗布する場合には、基材上に形成された塗布膜の固化物が偏光子に転写される。溶液を偏光子に塗布する場合には、塗布膜を乾燥(固化)させることにより、偏光子上に保護層が直接形成される。好ましくは、溶液は偏光子に塗布され、偏光子上に保護層が直接形成される。このような構成であれば、転写に必要とされる接着剤層または粘着剤層を省略することができるので、偏光板をさらに薄くすることができる。溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
溶液の塗布膜を乾燥(固化)させることにより、塗布膜の固化物である保護層が形成され得る。乾燥温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃〜70℃である。乾燥温度がこのような範囲であれば、偏光子に対する悪影響を防止することができる。乾燥時間は、乾燥温度に応じて変化し得る。乾燥時間は、例えば1分〜10分であり得る。
以上のようにして、保護層が形成され、結果として、熱可塑性樹脂基材/偏光子/保護層の積層体を得ることができる。この積層体から熱可塑性樹脂基材を剥離することにより、図1に示すような偏光子10と保護層20とを有する偏光板を得ることができる。あるいは、熱可塑性樹脂基材/偏光子の積層体の偏光子表面に別の保護層を構成する樹脂フィルムを貼り合わせ、次いで熱可塑性樹脂基材を剥離し、当該剥離面に保護層を形成してもよい。この場合には、別の保護層をさらに有する偏光板を得ることができる。
G.光学機能層付偏光板の製造方法
光学機能層付偏光板は任意の適切な方法により、製造することができる。例えば、上記F項に記載の方法により、偏光板を作製し、該偏光板の偏光子側に任意の適切な光学機能層を積層または転写することにより作製することができる。光学機能層は偏光子に任意の適切な接着層を介して積層してもよく、偏光子に直接形成してもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)保護層の軟化温度
実施例および比較例で得られた偏光板および光学機能層付偏光板の保護層表面に関して、局所熱分析(ナノTA測定)を行い、保護層の軟化温度を算出した。測定装置および測定条件は、以下の通りである。
測定装置:日立ハイテクサイエンス社製、製品名「AFM5300E//Nano−TA2」
測定モード:コンタクトモード
探針:AN2−200
測定面積:8μm□スキャン
測定雰囲気:大気圧
(2)ヨウ素吸着量
各実施例および比較例における保護層の形成と同様にして、PETフィルムの片面に保護層(厚み:約3μm)を形成した。得られた保護層付PETフィルムを1cm×1cm(1cm)に切り出して試料とし、ヘッドスペースバイアル瓶(20mL容量)に採取・秤量した。次に、ヨウ素溶液(ヨウ素濃度1重量%、ヨウ化カリウム濃度7重量%)1mLを入れたスクリュー管瓶(1.5mL容量)もこのヘッドスペースバイアル瓶に入れ、密栓した。その後、ヘッドスペースバイアル瓶を65℃の乾燥機に入れ、6時間加温した(これにより、ガス状態のIが試料に吸着する)。その後、試料をセラミックボートに採取し自動試料燃焼装置を用いて燃焼させ、発生したガスを吸収液10mLに捕集した。捕集後、この吸収液を純水で15mLに調製し、原液または適宜希釈した液についてIC定量分析を行った。なお、PETフィルムのみで同様の測定を行った場合のヨウ素吸着量がほぼ0であったため、IC定量分析で得られたヨウ素重量と、保護層単体の重量(「保護層付PETフィルムの重量」−「PETフィルムの重量」)とに基づいて、以下の式からヨウ素吸着量(重量%)を算出した。
ヨウ素吸着量(重量%)=IC定量分析で得られたヨウ素重量/保護層単体の重量×100
また、測定装置および測定条件は、以下の通りである。
[測定装置]
自動試料燃焼装置:三菱ケミカルアナリテック社製、「AQF−2100H」
IC(アニオン):Thermo Fisher Scientific社製、「ICS−3000」
(3)単体透過率および偏光度
実施例および比較例で得られた光学機能層付偏光板から、偏光子の吸収軸方向に直交する方向および吸収軸方向をそれぞれ対向する二辺とする試験片(50mm×50mm)を切り出した。保護層が外側となるようにして粘着剤で試験片を無アルカリガラス板に貼り合わせ試験サンプルとし、当該試験サンプルについて、紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名「V7100」)を用いて、単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)を測定し、偏光度(P)を次式により求めた。この時、測定光は保護層側より入射させた。
偏光度(P)(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
なお、上記Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。また、TsおよびPは、実質的には偏光子の特性である。
次に、光学機能層付偏光板を85℃および85%RHのオーブン内で48時間放置して加熱加湿し(加熱試験)、加熱試験前の単体透過率Tsおよび加熱試験後の単体透過率Ts48から、下記式を用いて単体透過率変化量ΔTsを求めた。
ΔTs(%)=Ts48−Ts
同様に、加熱試験前の偏光度Pおよび加熱試験後の偏光度P48から、下記式を用いて偏光度変化量ΔPを求めた。
ΔP(%)=P48−P
なお、加熱試験は、実施例および比較例で得られた光学機能層付偏光板から、偏光子の吸収軸方向に直交する方向及び吸収軸方向をそれぞれ対向する二辺とする試験片(50mm×50mm)を切り出し、保護層が外側となるようにして粘着剤で試験片を無アルカリガラス板に貼り合わせ試験サンプルとした。
得られたΔTsおよびΔPの結果から、以下の基準で評価した。
良:ΔTsが2.0%未満、ΔPが−1.0%〜0%
可:ΔTsが2.0%以上5.0%未満、ΔPが−3.0%以上−1.0%未満
不良::ΔTsが5.0%以上、ΔPが−3.0%未満、または、色抜けが発生
(4)折り曲げ試験
実施例および比較例で得られた光学機能層付偏光板を30mm(偏光子の吸収軸方向と直交する方向)×120mm(吸収軸方向)のサイズに切り出し、測定試料とした。この測定試料について、無負荷U字伸縮モードの連続折り曲げ試験装置(ユアサシステム機器社製、製品名「DLDMLH−FS」)を用いて連続折り曲げ試験を行った。折り曲げ速度は60rpm、折り曲げの振幅は20mm、折り曲げの曲率半径は0.5mm、折り曲げ回数は50000回であった。また、折り曲げは、測定試料の長手方向端部を把持した状態で当該把持部をスライドさせることにより、測定試料の光学機能層または位相差層が内側となるようにして行った。以下の基準で評価した。
良:50000回の折り曲げで割れが生じなかった
不良:50000回未満の折り曲げで構成要素のいずれかに割れおよび/または折れ跡が生じた
なお、測定試料に割れが生じる場合、当該割れは吸収軸と直交する方向(測定試料の幅方向)に沿ったものであった。
<実施例1>
1.偏光子/樹脂基材の積層体の作製
樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(三菱ケミカル社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加し、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が41.5%±0.1%となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光子を形成し、偏光子/樹脂基材の積層体を作製した。偏光子の単体透過率(初期単体透過率)Tsは42.0%であり、偏光度(初期偏光度)Pは99.996%であった。
2.位相差層を構成する第1の配向固化層および第2の配向固化層の作製
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
Figure 2021177229
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて100mJ/cmの光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層Aを形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2.5μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層Bを形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1.3μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。
3.位相差層付偏光板の作製
上記1.で得られた偏光子/樹脂基材の積層体の偏光子表面に、上記2.で得られた液晶配向固化層Aおよび液晶配向固化層Bをこの順に転写した。このとき、偏光子の吸収軸と配向固化層Aの遅相軸とのなす角度が15°、偏光子の吸収軸と配向固化層Bの遅相軸とのなす角度が75°になるようにして転写(貼り合わせ)を行った。なお、それぞれの転写(貼り合わせ)は、紫外線硬化型接着剤(厚み1.0μm)を介して行った。続いて、補強のために粘着剤付き基材を配向固化層Bの表面に貼り合わせた。続いて、樹脂基材を剥離し、偏光子/接着層/位相差層(第1の配向固化層/接着層/第2の配向固化層)/粘着剤付き基材の構成を有する位相差層付偏光板を得た。
4.保護層の作製
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:jER(登録商標) YX4000)15部をメチルエチルケトン83.8部に溶解し、エポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂溶液に、光カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名:CPI(登録商標)−100P)1.2部を添加し、保護層形成組成物を得た。得られた保護層形成組成物を、上記で得られた位相差層付偏光板の偏光子表面にワイヤーバーを用いて塗布し、塗布膜を60℃で3分間乾燥した。次いで、高圧水銀ランプを用いて積算光量が600mJ/cmとなるよう紫外線を照射し、保護層を形成した。保護層の厚みは3μmであった。最後に、粘着剤層付き基材を剥離し、光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の光カチオン硬化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例2]
光学機能層として位相差層の代わりに別の保護層としてシクロオレフィン系樹脂(COP)フィルム(厚み13μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板(保護層(エポキシ樹脂の硬化層)/偏光子/保護層(COPフィルム))を作製した。偏光板の総厚みは22μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例3]
上記1で得られた偏光子/樹脂基材の積層体の偏光子に保護層形成組成物を塗布したこと以外は実施例1と同様にして偏光板(保護層(エポキシ樹脂の硬化層)/偏光子)を作製した。偏光板の総厚みは8μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例4]
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:jER(登録商標) YX4000)15部とオキセタン樹脂(東亞合成社製、商品名:アロンオキセタン(登録商標) OXT−221)10重量部と、をメチルエチルケトン73部に溶解し、エポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂溶液に、光カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名:CPI(登録商標)−100P)2部を添加し、保護層形成組成物を得た。 このエポキシ樹脂溶液を用いて保護層形成組成物を得たこと以外は実施例1と同様にして、光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の光カチオン硬化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例5]
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:jER(登録商標) 828)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の硬化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例6]
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:jER(登録商標) 828)を用いたこと以外は実施例4と同様にして光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の光カチオン硬化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例7]
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:jER(登録商標) YX8000)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の硬化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例8]
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:jER(登録商標) YX8000)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の硬化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例9]
保護層を下記の通り作製した以外は実施例1と同様にして光学機能層を備えた偏光板を作製した。エポキシ樹脂1(三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER(登録商標) 1256B40、重量平均分子量:40000、エポキシ当量:7350)20部をメチルエチルケトン80部に溶解し、エポキシ樹脂溶液(20%)を得た。このエポキシ樹脂溶液を、実施例1で用いた位相差層付偏光板(偏光子/接着層/位相差層/補強用の粘着剤付き基材)の偏光子表面にワイヤーバーを用いて塗布し、塗布膜を60℃で3分間乾燥して、塗布膜の固化物として構成される保護層を形成した。保護層の厚みは3μmであった。このようにして、光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の塗布膜の固化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例10]
エポキシ樹脂1に代えて、エポキシ樹脂2(三菱ケミカル株式会社製、商品名:jER(登録商標) YX6954BH30、重量平均分子量:36000、エポキシ当量:13000)を用いたこと以外は実施例9と同様にして保護層を形成した。保護層の厚みは3μmであった。この保護層を用いたこと以外は実施例9と同様にして光学機能層を備えた偏光板(保護層(エポキシ樹脂の塗布膜の固化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の総厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
(比較例1)
樹脂基材を剥離した後、保護層形成組成物を塗布する前に、偏光子にポリウレタン系の水分散樹脂(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックスSF210)を厚み0.1μmとなるよう塗布し、易接着層を形成した。別途、ラクトン環単位を有するポリメチルメタクリレートであるアクリル系樹脂の代わりにメチルメタクリレート/エチルアクリレート(モル比55/45)の共重合体であるアクリル系樹脂(楠本化成社製、製品名「B−722」)20部をメチルエチルケトン80部に溶解し、アクリル系樹脂溶液(20%)を得た。次いで、易接着層上にこのアクリル系樹脂溶液を、上記1で得られた偏光板の偏光子表面にワイヤーバーを用いて塗布し、塗布膜を60℃で5分間乾燥して、塗布膜の固化物として構成される保護層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、光学機能層を備えた偏光板(保護層(アクリル系樹脂の固化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。なお、加湿試験後の偏光板は色抜けが発生していたため、ΔTsおよびΔPは測定できなかった。
(比較例2)
メチルメタクリレート/エチルアクリレート(モル比55/45)の共重合体であるアクリル系樹脂の代わりにメチルメタクリレート/ブチルメタクリレート(モル比35/65)の共重合体であるアクリル系樹脂(楠本化成社製、製品名「B−734」)を用いたこと以外は比較例1と同様にして、保護層を形成した光学機能層を備えた偏光板(保護層(アクリル系樹脂の固化層)/偏光子/位相差層)を得た。偏光板の厚みは14μmであった。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。なお、加湿試験後の偏光板は色抜けが発生していたため、ΔTsおよびΔPは測定できなかった。
(比較例3)
水系ポリエステル系樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:ニチゴーポリエスターWR905)を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護層(塗布膜の固化物)を形成した。この保護層を用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を作製した。偏光板の厚みは14μmであった。なお、加湿試験後の偏光板は色抜けが発生していたため、ΔTsおよびΔPは測定できなかった。結果を表1に示す。
(比較例4)
水系ポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製、製品名「スーパーフレックスSF210」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護層(塗布膜の固化物)を形成した。この保護層を用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を作製した。なお、加湿試験後の偏光板は色抜けが発生していたため、ΔTsおよびΔPは測定できなかった。結果を表1に示す。
(比較例5)
片面に易接着処理をしたアクリル系フィルム(屈折率:1.50、厚さ:20μm)を、紫外線硬化接着剤を介して偏光子面と貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をアクリルフィルム側から照射して接着剤を硬化させた。このようにして保護層を積層した以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を作製した。偏光板の厚みは31μmであった。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
(比較例6)
アクリル系フィルムの厚みを40μmに変更した以外は比較例5と同様にして、位相差層付偏光板を作製した。偏光板の厚みは51μmであった。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
Figure 2021177229
<評価>
表1から明らかなように、実施例で得られた偏光板は、非常に薄いにもかかわらず、加熱加湿環境下においても光学特性の低下が抑制され、耐久性に優れるものであった。さらに、屈曲性にも優れており、優れた耐久性と優れた屈曲性とを両立し得るものであった。
本発明の偏光板は、画像表示装置に好適に用いられる。画像表示装置としては、例えば、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯ゲーム機などの携帯機器;パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器;ビデオカメラ、テレビ、電子レンジなどの家庭用電気機器;バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器;デジタルサイネージ、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器;監視用モニターなどの警備機器;介護用モニター、医療用モニターなどの介護・医療機器;が挙げられる。
10 偏光子
20 保護層
30 光学機能層
100 偏光板
110 光学機能層付偏光板

Claims (9)

  1. 偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された保護層と、を含み、
    該保護層が、芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物、または、エポキシ樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物で構成されており、
    総厚みが20μm以下である、偏光板。
  2. 前記保護層が前記芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂の光カチオン硬化物であり、該保護層がオキセタン樹脂をさらに含む、請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記保護層の軟化温度が100℃以上である、請求項1または2に記載の偏光板。
  4. 前記保護層の厚みが10μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の偏光板。
  5. 前記偏光子の厚みが10μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光板。
  6. 前記芳香族骨格および水素添加された芳香族骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有するエポキシ樹脂がビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂である、請求項1から5のいずれかに記載の偏光板。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の偏光板と、前記偏光子の前記保護層と反対側に配置された光学機能層とを含み、総厚みが25μm以下である、光学機能層付偏光板。
  8. 前記光学機能層が、前記保護層とは別の保護層として機能する、請求項7に記載の光学機能層付偏光板。
  9. 前記光学機能層が、円偏光機能または楕円偏光機能を有する位相差層である、請求項7に記載の光学機能層付偏光板。
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