以下、添付図面を参照して、医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、図1に示すように、医用情報処理装置20を含んだ医用情報処理システム1を例として説明する。図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。また、本実施形態では、図1に示すX線CT(Computed Tomography)装置10により収集されたデータセットを用いて物質弁別処理を行なう場合を例として説明する。X線CT装置10及び医用情報処理装置20は、ネットワークNWを介して相互に接続される。
医用情報処理装置20は、X線CT装置10によって収集されたデータセットに基づく各種の処理を実行する。例えば、医用情報処理装置20は、図1に示すように、メモリ21、ディスプレイ22、入力インタフェース23及び処理回路24を備える。
メモリ21は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ21は、医用情報処理装置20に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、メモリ21は、X線CT装置10から取得したデータセットを記憶する。なお、メモリ21は、医用情報処理装置20とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
ディスプレイ22は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ22は、処理回路24によって生成される強調画像を表示する。また、例えば、ディスプレイ22は、入力インタフェース23を介してユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、ディスプレイ22は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ22は、デスクトップ型でもよいし、医用情報処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
入力インタフェース23は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路24に出力する。例えば、入力インタフェース23は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース23は、医用情報処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース23は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用情報処理装置20とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路24へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース23の例に含まれる。
処理回路24は、制御機能24a、指定機能24b、取得機能24c、生成機能24d及び出力機能24eを実行することで、医用情報処理装置20全体の動作を制御する。ここで、指定機能24bは、指定部の一例である。また、取得機能24cは、取得部の一例である。また、生成機能24dは、生成部の一例である。また、出力機能24eは、出力部の一例である。
例えば、処理回路24は、制御機能24aに対応するプログラムをメモリ21から読み出して実行することにより、入力インタフェース23を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、指定機能24b、取得機能24c、生成機能24d及び出力機能24eといった各種の機能を制御する。
また、例えば、処理回路24は、指定機能24bに対応するプログラムをメモリ21から読み出して実行することにより、被検体における関心領域を指定する。また、例えば、処理回路24は、取得機能24cに対応するプログラムをメモリ21から読み出して実行することにより、第1分布情報を取得する。また、例えば、処理回路24は、生成機能24dに対応するプログラムをメモリ21から読み出して実行することにより、第1分布情報に基づいて第2分布情報を生成する。また、例えば、処理回路24は、出力機能24eに対応するプログラムをメモリ21から読み出して実行することにより、第2分布情報に基づく強調画像を出力する。なお、指定機能24b、取得機能24c、生成機能24d及び出力機能24eによる処理については後述する。
図1に示す医用情報処理装置20においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ21へ記憶されている。処理回路24は、メモリ21からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路24は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図1においては単一の処理回路24にて、制御機能24a、指定機能24b、取得機能24c、生成機能24d及び出力機能24eが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路24を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路24が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路24は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路24は、メモリ21から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用情報処理装置20とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
次に、X線CT装置10について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置10の構成の一例を示すブロック図である。例えば、X線CT装置10は、架台装置110と、寝台装置130と、コンソール装置140とを有する。
図2においては、非チルト状態での回転フレーム113の回転軸又は寝台装置130の天板133の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、図2は、説明のために架台装置110を複数方向から描画したものであり、X線CT装置10が架台装置110を1つ有する場合を示す。
架台装置110は、X線管111と、X線検出器112と、回転フレーム113と、X線高電圧装置114と、制御装置115と、ウェッジ116と、コリメータ117と、DAS118とを有する。
X線管111は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管111は、X線高電圧装置114からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。
X線検出器112は、X線管111から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS118へと出力する。X線検出器112は、例えば、X線管111の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャンネル方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器112は、例えば、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
例えば、X線検出器112は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器112は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
回転フレーム113は、X線管111とX線検出器112とを対向支持し、制御装置115によってX線管111とX線検出器112とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム113は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム113は、X線管111及びX線検出器112に加えて、X線高電圧装置114やウェッジ116、コリメータ117、DAS118等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム113は、図2において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置110において、回転フレーム113、及び、回転フレーム113と共に回転移動する部分を、回転部とも記載する。
X線高電圧装置114は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管111に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管111が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行なうX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置114は、回転フレーム113に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
制御装置115は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置115は、入力インタフェース143からの入力信号を受けて、架台装置110及び寝台装置130の動作制御を行なう。例えば、制御装置115は、回転フレーム113の回転や架台装置110のチルト、寝台装置130の動作等について制御を行なう。一例を挙げると、制御装置115は、架台装置110をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム113を回転させる。なお、制御装置115は架台装置110に設けられてもよいし、コンソール装置140に設けられてもよい。
ウェッジ116は、X線管111から照射されたX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ116は、X線管111から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管111から照射されたX線を減衰させるX線フィルタである。例えば、ウェッジ116は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow−tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して作製される。
コリメータ117は、ウェッジ116を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ117は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、図2においては、X線管111とコリメータ117との間にウェッジ116が配置される場合を示すが、X線管111とウェッジ116との間にコリメータ117が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ116は、X線管111から照射され、コリメータ117により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
DAS118は、X線検出器112が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS118は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行なう増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS118は、例えば、プロセッサにより実現される。
DAS118が生成したデータは、回転フレーム113に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置110の非回転部分(例えば、固定フレーム等。図2での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置140へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム113を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム113から架台装置110の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
寝台装置130は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台131と、寝台駆動装置132と、天板133と、支持フレーム134とを有する。基台131は、支持フレーム134を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置132は、被検体Pが載置された天板133を、天板133の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム134の上面に設けられた天板133は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置132は、天板133に加え、支持フレーム134を天板133の長軸方向に移動してもよい。
コンソール装置140は、メモリ141と、ディスプレイ142と、入力インタフェース143と、処理回路144とを有する。なお、コンソール装置140は架台装置110とは別体として説明するが、架台装置110にコンソール装置140又はコンソール装置140の各構成要素の一部が含まれてもよい。
メモリ141は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ141は、被検体Pに対するスキャンを実行することで収集される各種のデータを記憶する。また、例えば、メモリ141は、X線CT装置10に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ141は、X線CT装置10とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
ディスプレイ142は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ142は、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUIや、被検体Pから収集された各種の画像を表示する。例えば、ディスプレイ142は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。ディスプレイ142は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
入力インタフェース143は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路144に出力する。例えば、入力インタフェース143は、スキャン条件の設定やスキャン開始の指示等を入力する操作をユーザから受け付ける。例えば、入力インタフェース143は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース143は、架台装置110に設けられてもよい。また、入力インタフェース143は、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース143は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置140とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路144へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース143の例に含まれる。
処理回路144は、制御機能144a、収集機能144b及び出力機能144cを実行することで、X線CT装置10全体の動作を制御する。
例えば、処理回路144は、制御機能144aに対応するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、入力インタフェース143を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、収集機能144b、出力機能144cといった各種の機能を制御する。
また、例えば、処理回路144は、収集機能144bに対応するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、被検体Pに対するスキャンを実行する。例えば、収集機能144bは、X線高電圧装置114を制御することにより、X線管111に高電圧を供給する。これにより、X線管111は、被検体Pに対し照射するX線を発生する。また、収集機能144bは、寝台駆動装置132を制御することにより、被検体Pを架台装置110の撮影口内へ移動させる。また、収集機能144bは、ウェッジ116の位置、及び、コリメータ117の開口度及び位置を調整することで、被検体Pに照射されるX線の分布を制御する。また、収集機能144bは、制御装置115を制御することにより回転部を回転させる。また、収集機能144bによってスキャンが実行される間、DAS118は、X線検出器112における各検出素子からX線の信号を収集し、検出データを生成する。また、収集機能144bは、DAS118から出力された検出データに対して、前処理を施す。例えば、収集機能144bは、DAS118から出力された検出データに対して、対数変換処理やオフセット補正処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。なお、前処理を施した後のデータについては生データとも記載する。また、前処理を施す前の検出データ及び前処理を施した後の生データを総称して、投影データとも記載する。
また、例えば、処理回路144は、出力機能144cに対応するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、被検体Pから収集された各種のデータを出力する。例えば、出力機能144cは、被検体Pに対するスキャンを実行することで収集されたデータを、ネットワークNWを介して、医用情報処理装置20に送信する。また、例えば、出力機能144cは、ディスプレイ142における表示の制御を行なう。
図2に示すX線CT装置10においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ141へ記憶されている。処理回路144は、メモリ141からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路144は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図2においては単一の処理回路144にて、制御機能144a、収集機能144b及び出力機能144cが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路144を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路144が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路144は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路144は、メモリ141から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線CT装置10とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図2に示す各機能を実現する。
以上、X線CT装置10及び医用情報処理装置20を含んだ医用情報処理システム1の構成例について説明した。以下、医用情報処理システム1において行なわれる処理について詳細に説明する。
物質弁別処理を行なう場合、X線CT装置10における収集機能144bは、被検体Pに対するスキャンを行なって、異なるX線エネルギーに対応する複数のデータセットを収集する。例えば、収集機能144bは、被検体Pに対するデュアルエナジーのスキャンを行なって、第1のX線エネルギーに対応する第1のデータセットと、第1のX線エネルギーよりも高い第2のX線エネルギーに対応する第2のデータセットとを収集する。
本実施形態では、デュアルエナジー収集が行われ、2つの異なるX線エネルギーに対応する第1のデータセット及び第2のデータセットが収集された場合を例として説明する。なお、デュアルエナジー収集の方式については特に限定されるものではない。例えば、収集機能144bは、Slow−kVスイッチングや、Fast−kVスイッチング、積層型検出器(デュアルレイヤー)、デュアルソース方式、スプリット方式といった方式により、デュアルエナジー収集を実行することができる。
Slow−kVスイッチングの方式でデュアルエナジー収集を実行する場合、収集機能144bは、第1のX線エネルギーのX線を用いて1回目のスキャンを行なった後、第2のX線エネルギーのX線を用いて2回目のスキャンを行なう。これにより、収集機能144bは、1回目のスキャンにおいて第1のX線エネルギーに対応する第1のデータセットを収集し、2回目のスキャンにおいて第2のX線エネルギーに対応する第2のデータセットを収集することができる。なお、収集機能144bは、X線高電圧装置114を制御し、X線管111に供給する管電圧を制御することで、第1のX線エネルギーと第2のX線エネルギーとの切り替えを行なうことができる。
Fast−kVスイッチングの方式でデュアルエナジー収集を実行する場合、収集機能144bは、1回のスキャンの中でビューごとにX線のエネルギーを変化させて、第1のデータセット及び第2のデータセットを収集する。即ち、スキャン中、X線管111は図2に示したZ軸を回転軸として被検体Pの周囲を回転し、照射角度を変えながら被検体PにX線を照射する。ここで、収集機能144bは、照射角度(ビュー)ごとに、X線のエネルギーを第1のX線エネルギーと第2のX線エネルギーとの間で高速に切り替えることで、第1のデータセット及び第2のデータセットを収集する。
デュアルレイヤーの方式でデュアルエナジー収集を実行する場合、X線CT装置10は、X線検出器112として、積層型検出器を備える。例えば、X線検出器112は、第1の層112aと、第2の層112bとから構成され、X線管111から照射されたX線を分光して検出する。例えば、第1の層112aは第1のX線エネルギーのX線を検出し、第2の層112bは、第1の層112aを透過した第2のX線エネルギーのX線を検出する。この場合、収集機能144bは、第1の層112aからの出力に基づいて第1のデータセットを収集し、第2の層112bからの出力に基づいて第2のデータセットを収集することができる。
デュアルソースの方式でデュアルエナジー収集を実行する場合、X線CT装置10は、X線管111として、第1のX線管111a及び第2のX線管111bを備える。また、X線CT装置10は、X線検出器112として、第1のX線管111aから照射されたX線を検出する第1のX線検出器112cと、第2のX線管111bから照射されたX線を検出する第2のX線検出器112dとを備える。この場合、収集機能144bは、第1のX線管111aから第1のX線エネルギーのX線を照射させ、第2のX線管111bから第2のX線エネルギーのX線を照射させることで、第1のX線検出器112cからの出力に基づいて第1のデータセットを収集し、第2のX線検出器112dからの出力に基づいて第2のデータセットを収集することができる。
スプリット方式でデュアルエナジー収集を実行する場合、X線CT装置10は、ウェッジ116として、X線管111から照射されたX線をエネルギーの異なる複数のX線に分割するフィルタを備える。例えば、X線CT装置10は、ウェッジ116として、X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bを備える。この場合、収集機能144bは、X線管111から照射されてX線フィルタ116aを透過したX線の検出結果に基づいて第1のデータセットを収集し、X線管111から照射されてX線フィルタ116bを透過したX線の検出結果に基づいて第2のデータセットを収集することができる。
次に、出力機能144cは、第1のデータセット及び第2のデータセットを医用情報処理装置20に送信する。また、取得機能24cは、第1のデータセット及び第2のデータセットを受信して、メモリ21に記憶させる。なお、出力機能144cが送信する第1のデータセット及び第2のデータセットは、前処理前のデータでもよいし前処理後のデータでもよい。前処理前の状態で第1のデータセット及び第2のデータセットを送信する場合には、取得機能24cが第1のデータセット及び第2のデータセットに対する前処理を実行することができる。
次に、取得機能24cは、第1のデータセット及び第2のデータセットに基づいて、物質の分布を示す第1分布情報を生成する。例えば、取得機能24cは、基準物質として第1物質及び第2物質を定義し、第1物質の存在量に関する指標に応じた軸、及び、第2物質の存在量に関する指標に応じた軸を有する座標系における物質の分布を示す散布図を生成する。以下、第1物質として水(H2O)が定義され、第2物質としてカルシウム(Ca)が定義されている場合について説明する。水の存在量に関する指標は、第1指標の一例である。また、カルシウムの存在量に関する指標は、第2指標の一例である。
例えば、取得機能24cは、まず、第1のデータセット及び第2のデータセットに基づく物質弁別処理を行ない、撮影対象部位に存在する水及びカルシウムを分離する。例えば、取得機能24cは、第1のデータセット及び第2のデータセットにおける画素ごとに、水及びカルシウムそれぞれの存在量に関する指標を推定する。一例を挙げると、取得機能24cは、画素ごとに、水に対するカルシウムの存在比率と、カルシウムに対する水の存在比率とをそれぞれ推定する。また、取得機能24cは、水成分に対応する単色X線の投影データセット及びカルシウム成分に対応する単色X線の投影データセットをそれぞれ生成する。
次に、取得機能24cは、水成分に対応する単色X線の投影データセットに基づいて水成分に対応するCT画像(ボリュームデータ)を再構成し、カルシウム成分に対応する単色X線の投影データセットに基づいてカルシウム成分に対応するCT画像を再構成する。次に、取得機能24cは、再構成したCT画像に対する画像処理を行なって、MPR画像等の表示用画像を生成する。例えば、取得機能24cは、水成分に対応するCT画像に基づいて基準物質画像Im11を生成し、カルシウム成分に対応するCT画像に基づいて基準物質画像Im12を生成する。
なお、投影データの段階で物質弁別処理を行なうものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得機能24cは、まず、第1のデータセットに基づくCT画像と、第2のデータセットに基づくCT画像とをそれぞれ再構成する。次に、取得機能24cは、第1のデータセットに基づくCT画像及び第2のデータセットに基づくCT画像に基づいて水及びカルシウムを分離し、水成分に対応するCT画像及びカルシウム成分に対応するCT画像をそれぞれ生成する。そして、取得機能24cは、水成分に対応するCT画像に基づいて基準物質画像Im11を生成し、カルシウム成分に対応するCT画像に基づいて基準物質画像Im12を生成する。
次に、出力機能24eは、基準物質画像をディスプレイ22に表示させる。例えば、出力機能24eは、図3に示すように、水成分に対応する基準物質画像Im11をディスプレイ22に表示させる。なお、図3は、第1の実施形態に係る基準物質画像Im11及び第1分布情報を示す図である。
ここで、指定機能24bは、被検体Pにおける関心領域を指定する。例えば、図3においては被検体Pにおける3つの椎骨が基準物質画像Im11に含まれており、指定機能24bは、これら3つの椎骨のうち中心の椎骨に対応する領域を、関心領域として指定する。
なお、指定機能24bは、基準物質画像Im11を参照したユーザからの入力操作を受け付けることにより関心領域を指定してもよいし、基準物質画像Im11から骨領域を自動抽出することで関心領域を指定してもよい。
或いは、指定機能24bは、基準物質画像Im11以外の画像に基づいて関心領域を指定してもよい。例えば、取得機能24cは、第1のデータセットに基づいてCT画像を再構成し、再構成したCT画像に対する画像処理を行なって、図3の基準物質画像Im11と同じ位置のMPR画像を生成する。なお、第1のデータセットに基づくMPR画像については、低エネルギー画像とも記載する。同様に、取得機能24cは、第2のデータセットに基づいてCT画像を再構成し、再構成したCT画像に対する画像処理を行なって、高エネルギー画像を生成する。そして、指定機能24bは、低エネルギー画像や高エネルギー画像等に基づいて、関心領域を指定する。
次に、取得機能24cは、指定された関心領域内の画素について、物質の分布を示す第1分布情報を生成する。例えば、取得機能24cは、水の存在量に関する指標に応じて横軸を定義し、カルシウムの存在量に関する指標に応じて横軸を定義した座標系において、関心領域内の各画素をプロットすることにより、図3の右図に示す散布図Sc11を生成する。なお、図3の散布図Sc11における横軸及び縦軸は、第1軸の一例である。
散布図Sc11においては、各画素のプロットを白点で示す。即ち、より水らしい画素は散布図Sc11においてより右側にプロットされ、よりカルシウムらしい画素は散布図Sc11においてより上側にプロットされる。なお、散布図Sc11において横軸と縦軸のスケールは異なっている。具体的には、散布図Sc11における縦軸は、横軸と比較して圧縮されている。
図3に示すように、関心領域(3つの椎骨のうち中心の椎骨に対応する領域)には、浮腫が生じている。浮腫に相当する領域には他の正常領域と比較して水成分がより多く存在するため、水成分に対応する基準物質画像Im11を用いれば、浮腫の観察を行なうことが可能である。
具体的には、基準物質画像Im11の正常領域における各画素は、散布図Sc11における領域R11にプロットされる。また、基準物質画像Im11の浮腫領域における各画素は、散布図Sc11における領域R21にプロットされる。なお、図3においては、領域R11の中心及び領域R21の中心を、それぞれ「×」のマークで示す。図3に示すように、領域R11と領域R21とは横軸方向にずれているため、領域R11に対応する正常領域と領域R21に対応する浮腫領域とは、基準物質画像Im11において色が異なることとなる。より具体的には、基準物質画像Im11における正常領域及び浮腫領域は、領域R11及び領域R21の中心間の距離Dに応じて平均画素値に差が生じるため、基準物質画像Im11を参照したユーザは、浮腫領域を正常領域と区別して観察することができる。
ここで、理論値としては、散布図Sc11における領域R11及び領域R21は円形となるものである。例えば、図3に示すように散布図Sc11の縦軸を圧縮している場合、理論値としては、領域R11及び領域R21は、横軸と平行な長軸を有する楕円形となるものである。
しかしながら、被検体Pの生体組織の組成によって、散布図Sc11は理論値通りとならない場合が多い。例えば、浮腫領域の主要構成物質が純粋な水ではなく血液であること、骨密度には個人差があること等から、設定した基準物質と実際の生体組織の組成との間には乖離が生じる。この結果、領域R11及び領域R21は、散布図Sc11の横軸と平行な長軸を有する楕円形とはならず、例えば長軸が散布図Sc11の横軸に対して傾いた楕円形になることがある。
このように、領域R11及び領域R21が散布図Sc11において斜め方向に分布することによって、領域R11及び領域R21の中心間の距離Dが小さくなり、正常領域と浮腫領域との間のコントラストが小さくなる場合がある。即ち、領域R11及び領域R21が散布図Sc11において斜め方向に分布することによって、物質分離能が低下し、浮腫領域を観察しにくくなる場合がある。
そこで、医用情報処理装置20は、散布図Sc11等の第1分布情報に基づいて第2分布情報を更に生成し、第2分布情報に基づく強調画像を出力することで、物質分離能を向上させる。
例えば、生成機能24dは、まず、散布図Sc11の横軸及び縦軸とは異なる複数の軸を、散布図Sc11において設定する。即ち、生成機能24dは、複数の第1軸とは異なる複数の第2軸を、第1分布情報において設定する。ここで、生成機能24dは、領域R11と領域R21との間の分離能が高くなるように、第2軸の設定を行なう。
一例を挙げると、生成機能24dは、図4Aに示すように、散布図Sc11において、散布図Sc11の横軸及び縦軸とは異なる軸A11及びA21を設定する。なお、図4Aは、第1の実施形態に係る第2分布情報の生成処理について説明するための図である。
具体的には、生成機能24dは、散布図Sc11において、領域R11及び領域R21を設定する。例えば、生成機能24dは、散布図Sc11において、基準物質画像Im11の正常領域の画素に対応するプロットのうち所定の割合以上のプロットが含まれる楕円形であって、面積が最小となる楕円形となるように、領域R11を設定する。同様に、生成機能24dは、散布図Sc11において、基準物質画像Im11の浮腫領域の画素に対応するプロットのうち所定の割合以上のプロットが含まれる楕円形であって、面積が最小となる楕円形となるように、領域R21を設定する。
次に、生成機能24dは、領域R11及び領域R21のいずれかを選択する。以下では、領域R11を選択したものとして説明する。次に、生成機能24dは、選択した領域R11の長軸に沿って軸A11を設定する。例えば、生成機能24dは、楕円形である領域R11の円周と、領域R11の長軸との交点となる2点を結ぶ直線に沿って、軸A11を設定する。なお、軸A11は、第2軸及び第3軸の一例である。
また、生成機能24dは、物質の存在量の変化に応じた軸を、軸A21として設定する。例えば、生成機能24dは、カルシウムの存在量(骨密度)を変化させた複数の対象物について生成された、物質の分布を示す分布情報を取得する。ここで、生成機能24dは、散布図Sc11の横軸及び縦軸と同じ軸を有する座標系における物質の分布を示す分布情報を取得する。また、生成機能24dは、取得した分布情報において、複数の対象物それぞれに対応する複数の対応領域を設定する。また、生成機能24dは、設定した複数の対応領域に基づいて、軸A21を設定する。なお、軸A21は、第2軸及び第4軸の一例である。
ここで、軸A21の設定について、図4Bを用いてより詳細に説明する。図4Bは、第1の実施形態に係る第2軸の設定方法の一例を示す図である。
例えば、まず、骨密度を変化させた3つの対象物について、X線CT装置10によるスキャンが実行される。例えば、収集機能144bは、骨密度の低いサンプルSa1、サンプルSa1より骨密度の高いサンプルSa2、サンプルSa2より骨密度の高いサンプルSa3を埋め込んだファントムについてデュアルエナジーのスキャンを実行し、異なるX線エネルギーに対応する2つのデータセットを収集する。
次に、生成機能24dは、サンプルSa1、サンプルSa2及びサンプルSa3についての散布図を生成する。例えば、取得機能24cは、水の存在量に関する指標に応じて横軸を定義し、カルシウムの存在量に関する指標に応じて横軸を定義した座標系において、サンプルSa1に対応する各画素、サンプルSa2に対応する各画素、及び、サンプルSa3に対応する各画素をそれぞれプロットすることにより、散布図を生成する。
次に、生成機能24dは、生成した散布図においてサンプルSa1に対応する領域R31を設定する。例えば、生成機能24dは、生成した散布図において、サンプルSa1に対応する各画素のプロットのうち所定の割合以上のプロットが含まれる楕円形であって、面積が最小となる楕円形となるように、図4Bに示す領域R31を設定する。同様に、生成機能24dは、サンプルSa2に対応する領域R32及びサンプルSa3に対応する領域R33をそれぞれ設定する。領域R31、領域R32及び領域R33は、対応領域の一例である。
次に、生成機能24dは、領域R31、領域R32及び領域R33に基づいて、図4Bに示す軸A3を設定する。一例を挙げると、生成機能24dは、まず、領域R31の中心を特定する。なお、領域R31の中心とは、楕円形の中心(長軸と短軸の交点)であってもよいし、サンプルSa1に対応する各画素のプロットの平均値であってもよい。同様に、生成機能24dは、領域R32及び領域R33それぞれの中心を特定する。
次に、生成機能24dは、領域R31、領域R32及び領域R33の中心に沿って、軸A3を設定する。例えば、生成機能24dは、領域R31、領域R32及び領域R33それぞれの中心座標について、最小二乗法によって一次関数を近似させることにより、軸A3を設定する。更に、生成機能24dは、散布図Sc11上で軸A3を平行移動させ、領域R11の中心を通るように配置することで、軸A21を設定する。
なお、出力機能24eは、散布図Sc11や、散布図Sc11において設定された軸A11及び軸A21をディスプレイ22に表示させることとしてもよい。また、生成機能24dは、設定した軸A11及び軸A21について、ユーザによる調整を受け付けることとしてもよい。
軸A11及び軸A21を設定した後、生成機能24dは、軸A11及び軸A21に応じて散布図Sc11の変換を行なうことで、図4Aに示す散布図Sc21を生成する。散布図Sc21は、軸A11及び軸A21を有する座標系における物質の分布を示す散布図であり、第2分布情報の一例である。
ここで、生成機能24dによる散布図Sc11の変換処理について、図4Cを用いて説明する。図4Cは、第1の実施形態に係る変換処理の一例を示す図である。例えば、生成機能24dは、まず、散布図Sc21の原点となる座標を、散布図Sc11において決定する。例えば、生成機能24dは、図4Cに示すように、散布図Sc11において軸A11と軸A21との交点となる座標(x0,y0)を、散布図Sc21の原点となる座標として決定する。換言すると、生成機能24dは、領域R11の中心を、散布図Sc21の原点となる座標として決定する。
次に、生成機能24dは、軸A11の成分について投影を行なう。例えば、生成機能24dは、散布図Sc11上の任意の点である点P(x,y)について、軸A21に沿って延長した場合に軸A11と交差する点a(xa,ya)を求める。また、生成機能24dは、点P(x,y)と点a(xa,ya)との間の距離(xa’)を求め、点P(x,y)を変換した後の横軸座標値(xa’,0)とする。
同様に、生成機能24dは、軸A21の成分について投影を行なう。例えば、生成機能24dは、点P(x,y)について、軸A11に沿って延長した場合に軸A21と交差する点b(xb,yb)を求める。また、生成機能24dは、点P(x,y)と点b(xb,yb)との間の距離(yb’)を求め、点P(x,y)を変換した後の縦軸座標値(0,yb’)とする。これにより、点P(x,y)は、点P(x’,y’)に座標変換される。また、生成機能24dは、点P(x,y)と同様にして散布図Sc11上の各ピクセルを変換することにより、散布図Sc21を生成することができる。
なお、図4Cの変換処理はあくまで一例であり、種々の変形が可能である。例えば、生成機能24dは、軸A11と軸A21との交点となる座標(x0,y0)以外の任意の座標を原点として、変換処理を行なうことが可能である。
更に、出力機能24eは、散布図Sc21に基づく基準物質画像Im21を出力する。例えば、出力機能24eは、散布図Sc21上にプロットされている各画素について、散布図Sc21の横軸座標に応じて画素値を割り当てることにより、基準物質画像Im21を生成する。また、出力機能24eは、生成した基準物質画像Im21をディスプレイ22に表示させる。基準物質画像Im21は、水成分に対応する基準物質画像であり、第2分布情報に基づく強調画像の一例である。
ここで、散布図Sc21においては、散布図Sc11の場合と比較して、領域R11と領域R21との中心間の距離Dが拡大している。従って、基準物質画像Im21においては、正常領域と浮腫領域との間のコントラストが向上しており、基準物質画像Im21を参照したユーザは、浮腫領域をより容易に観察することができる。
なお、出力機能24eは、基準物質画像Im21とともに、散布図Sc11や散布図Sc21の表示を行なうこととしてもよい。また、生成機能24dは、軸A11や軸A21といった第2軸について、ユーザによる調整を受け付けてもよい。この場合、出力機能24eは、再設定された第2軸に基づいて基準物質画像Im21を順次更新しながらディスプレイ22に表示させることができる。
また、図4A〜図4Cにおいては、散布図Sc11において設定された複数の領域のうち領域R11が選択され、領域R11との関係において第2軸が設定されるものとして説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、生成機能24dは、複数の領域から領域R21を選択し、領域R21との関係において第2軸を設定することとしてもよい。
また、第2軸の設定方法は、図4A〜図4Cに示した手法に限定されるものではない。以下、第2軸の設定方法の変形例について、図5、図6及び図7を用いて説明する。図5、図6及び図7は、第1の実施形態に係る第2軸の設定方法の一例を示す図である。
図5においては、散布図Sc11において領域R12及び領域R22が設定されているものとして説明する。領域R12及び領域R22は、図4Aに示した領域R11及び領域R21と同様にして設定することができる。図5に示す場合、生成機能24dは、まず、領域R12及び領域R22のいずれかを選択する。以下では、領域R12を選択したものとして説明する。
次に、生成機能24dは、選択した領域R12の長軸に沿って軸A12を設定する。また、生成機能24dは、軸A12と直交するように、軸A22を更に設定する。例えば、生成機能24dは、軸A12と直交し、且つ、領域R12の中心を通るように、軸A22を設定する。なお、軸A12は、第2軸及び第3軸の一例である。また、軸A22は、第2軸及び第4軸の一例である。
そして、生成機能24dは、軸A12及び軸A22に応じて散布図Sc11の変換を行ない、図5に示す散布図Sc22を生成する。また、出力機能24eは、散布図Sc22に基づいて基準物質画像Im22を生成し、ディスプレイ22に表示させる。図5に示すように、散布図Sc22においては、散布図Sc11の場合と比較して、領域R12と領域R22との中心間の距離Dが拡大している。従って、基準物質画像Im22においては、正常領域と浮腫領域との間のコントラストが向上しており、基準物質画像Im22を参照したユーザは、浮腫領域をより容易に観察することができる。
次に、図6について説明する。図6においては、散布図Sc11において領域R13及び領域R23が設定されているものとして説明する。領域R13及び領域R23は、図4Aに示した領域R11及び領域R21と同様にして設定することができる。
次に、生成機能24dは、領域R13及び領域R23を繋ぐ曲線を生成する。ここで、生成機能24dは、入力インタフェース23を介してユーザからの入力操作を受け付けることにより曲線を生成してもよいし、散布図Sc11を画像処理して曲線を自動生成してもよい。例えば、生成機能24dは、領域R23において長軸と円周が交差する点X1と、領域R23の中心と、領域R13の中心との3点を最短且つ連続的に結ぶように、曲線を生成する。なお、生成機能24dは、端部(点X1、領域R13の中心)の曲率を維持したまま曲線を延長することで、外側領域まで曲線を外挿することができる。また、生成機能24dは、自動生成した曲線について、ユーザによる調整を受け付けることとしてもよい。そして、生成機能24dは、生成した曲線に沿って、軸A13を設定する。
更に、生成機能24dは、軸A13と交差するように軸A23を設定する。例えば、生成機能24dは、軸A23として、図6に示す軸A231及び軸A232を設定する。一例を挙げると、生成機能24dは、軸A13と直交し且つ領域R23の中心を通るように、軸A231を設定する。また、生成機能24dは、軸A13と直交し且つ領域R13の中心を通るように、軸A232を設定する。なお、軸A13は、第2軸及び第3軸の一例である。また、軸A231及び軸A232は、第2軸及び第4軸の一例である。
そして、生成機能24dは、軸A13と、軸A231及び軸A232とに応じて散布図Sc11の変換を行ない、図6に示す散布図Sc23を生成する。具体的には、生成機能24dは、軸A13を直線となるように変形させて散布図Sc23の横軸とする。また、生成機能24dは、散布図Sc23の横軸と直交するように、軸A231及び軸A232の傾きを変化させる。更に、生成機能24dは、軸A13との間の距離を維持し、且つ、軸A231との間の距離と軸A232との間の距離との比率を維持するように、散布図Sc11上の各ピクセルを座標変換することで、散布図Sc23を生成する。なお、かかる変換処理を行なう場合には、散布図Sc11において、軸A231と軸A232との交点の近傍領域が大幅に拡大されることとなる。そこで、生成機能24dは、拡大率についての閾値を設け、閾値以上に拡大される領域を散布図Sc23から省略することとしてもよい。
また、出力機能24eは、散布図Sc23に基づいて基準物質画像Im23を生成し、ディスプレイ22に表示させる。図6に示すように、散布図Sc23においては、散布図Sc11の場合と比較して、領域R13と領域R23との中心間の距離Dが拡大している。従って、基準物質画像Im23においては、正常領域と浮腫領域との間のコントラストが向上しており、基準物質画像Im23を参照したユーザは、浮腫領域をより容易に観察することができる。
なお、図6においては、散布図Sc11が2つの領域(領域R13及び領域R23)を含むものとして説明した。即ち、図6においては、2物質(例えば正常領域及び浮腫領域など)のケースについて説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、正常領域及び浮腫領域に対して更に物質が追加されてもよい。一例を挙げると、散布図Sc11は、正常領域に対応した領域R13及び浮腫領域に対応した領域R23に加えて、第3の物質に対応した領域R4を含むこととしてもよい。かかる場合においても、生成機能24dは、図6に示した場合と同様に第2軸の設定を行なうことができる。例えば、生成機能24dは、領域R13の中心、領域R23の中心、及び、領域R4の中心の3点を通る曲線を生成し、この曲線に沿って第2軸の設定を行なうことができる。
次に、図7について説明する。図7においては、関心領域内の各画素のプロットが領域R14に分布しているものとして説明する。即ち、これまでは、関心領域内の各画素のプロットが散布図Sc11において楕円形に分布するものとして説明したが、図7においては、プロットがより複雑に分布している場合について説明する。
なお、正常領域と浮腫領域とを含む関心領域が設定されている場合、散布図Sc11には、正常領域及び浮腫領域それぞれに対応する2つの領域が現れる。即ち、散布図Sc11には、図7に示す領域R14の他、もう一つの領域が現れる。但し、図7においては、説明の便宜のため一方の領域を省略し、領域R14についてのみ説明する。
例えば、生成機能24dは、領域R14に対して所定形状のモデルを当てはめる。例えば、生成機能24dは、領域R14に対して楕円形状のモデルを当てはめる。以下では、楕円形状のモデルが当てはめられた領域を、領域R14’と記載する。
ここで、図7においては領域R14を単一のパターンで示すが、領域R14内におけるプロットの密度は均一ではない。そこで、生成機能24dは、領域R14内におけるプロットの密度を考慮して、モデルの当てはめを行なうこととしてもよい。例えば、生成機能24dは、領域R14を所定サイズの小領域に分割し、各小領域内におけるプロットの密度が閾値を超えるか否かを判定し、密度が閾値を超える小領域に対してモデルを当てはめる。
そして、生成機能24dは、領域R14’に基づいて第2軸の設定を行なう。例えば、生成機能24dは、楕円形状の領域R14’ の長軸に沿って軸A14を設定し、軸A14と直交するように軸A24を設定する。なお、軸A14は、第2軸及び第3軸の一例である。また、軸A24は、第2軸及び第4軸の一例である。そして、生成機能24dは、軸A14及び軸A24に応じて散布図Sc11の変換を行ない、図7に示す散布図Sc24を生成する。また、出力機能24eは、散布図Sc24に基づいて基準物質画像Im24を生成し、ディスプレイ22に表示させる。
なお、図7においては、第2軸として軸A14及び軸A24を設定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、楕円形状の領域R14’を設定した後、生成機能24dは、図4A〜図4Cに示した方法や、図6に示した方法と同様にして、第2軸の設定を行なうこともできる。
また、これまで、散布図Sc11を取得機能24cが生成するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得機能24cは、X線CT装置10等の他の装置において生成された散布図Sc11を、ネットワークNWを介して取得することとしてもよい。即ち、取得機能24cは、第1分布情報を自ら生成することで取得してもよいし、他の装置において生成された第1分布情報を取得してもよい。
次に、医用情報処理装置20による処理の手順の一例を、図8を用いて説明する。図8は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置20の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS101は、指定機能24bに対応する。ステップS102は、取得機能24cに対応する。ステップS103、ステップS104及びステップS107は、生成機能24dに対応する。ステップS105及びステップS106は、出力機能24eに対応する。
まず、処理回路24は、被検体Pにおける関心領域を指定する(ステップS101)。次に、処理回路24は、関心領域内の物質の分布を示す第1分布情報を取得する(ステップS102)。次に、処理回路24は、第1分布情報において複数の領域を設定し、設定した複数の領域に基づいて第2軸を設定する(ステップS103)。次に、処理回路24は、第2軸に応じて第1分布情報の変換を行なうことで、第2分布情報を生成する(ステップS104)。
次に、処理回路24は、第2分布情報に基づく強調画像を生成し(ステップS105)、生成した強調画像をディスプレイ22に表示させる(ステップS106)。ここで、処理回路24は、第2軸の再設定を行なうか否かを判定する(ステップS107)。例えば、強調画像を参照してコントラストが不十分と判断した場合、ユーザは、入力インタフェース23を介して、第2軸の再設定を行なう旨の指示を入力することができる。
第2軸の再設定を行なう場合(ステップS107肯定)、処理回路24は、再度ステップS103に移行する。ここで、処理回路24は、第2軸の再設定を自動で行なってもよいし、ユーザからの入力操作に基づいて第2軸の再設定を行なってもよい。例えば、図4A〜図4Cに示した手法により第2軸の設定を行なっていた場合において、処理回路24は、図5に示した手法により第2軸の再設定を行なうことができる。一方で、第2軸の再設定を行なわない場合(ステップS107否定)、処理回路24は、処理を終了する。
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能24cは、異なるX線エネルギーに対応する複数のデータセットに基づいて生成された、複数の指標に応じた複数の第1軸を有する座標系における物質の分布を示す第1分布情報を取得する。また、生成機能24dは、第1分布情報において設定した複数の領域に基づいて、複数の第1軸とは異なる複数の第2軸を第1分布情報において設定する。また、生成機能24dは、複数の第2軸に応じて第1分布情報の変換を行なうことで、複数の第2軸を有する座標系における物質の分布を示す第2分布情報を生成する。また、出力機能24eは、第2分布情報に基づく強調画像を出力する。即ち、医用情報処理装置20は、物質の分布について回帰分析を行ない、軸を再定義して、物質分離能を向上させた強調画像を出力する。
これにより、第1の実施形態に係る医用情報処理装置20は、異なるX線エネルギーに対応する複数のデータセットを用いた物質弁別の処理において、物質分離能を向上させることができる。ひいては、医用情報処理装置20は、病変等の観察を容易にし、診断能を向上させることができる。
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
例えば、上述した実施形態では、生成された強調画像をディスプレイ22に表示させるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能24eは、生成された強調画像をX線CT装置10等の外部装置に送信し、当該外部装置において強調画像の表示が行なわれることとしてもよい。
また、上述した実施形態では、図4A〜図7等に示した方法により、第2軸を生成機能24dが自動設定するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、生成機能24dは、散布図Sc11を参照したユーザからの入力操作に基づいて、第2軸の設定を行なうこととしても構わない。
また、上述した実施形態では、第1分布情報として、関心領域内の物質の分布を示す分布情報を取得するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、関心領域を指定する処理については省略し、第1分布情報として、被検体Pから収集されたデータセットの全領域における物質の分布を示す分布情報を取得することとしても構わない。また、この場合、処理回路24は、指定機能24bを有しないこととしても構わない。
また、上述した実施形態では、第2分布情報に基づく強調画像の例として、水成分に対応する基準物質画像について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、カルシウム成分に対応する基準物質画像についても同様に物質分離能を向上させることが可能である。また、基準物質の選択は任意であり、水及びカルシウム以外の基準物質を選択する場合にも同様に適用が可能である。
また、上述した実施形態では、強調画像の例として基準物質画像について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能24eは、水成分に対応する基準物質画像とカルシウム成分に対応する基準物質画像とに基づいて重み付け計算処理を行うことにより、強調画像として、仮想単色X線画像(モノクロマティック画像)や密度画像、実効原子番号画像等を生成することも可能である。医用情報処理装置20は、基準物質画像において物質分離能を向上させることにより、基準物質画像に基づく各種の強調画像についても物質分離能を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、第1指標及び第2指標の例として、水の存在量に関する指標及びカルシウムの存在量に関する指標について説明した。即ち、上述した実施形態では、第1指標及び第2指標の例として、第1物質の存在量に関する指標及び第2物質の存在量に関する指標について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第1指標及び第2指標は、第1のX線エネルギーに関する指標及び第2のX線エネルギーに関する指標であってもよい。即ち、図3に示した散布図Sc11の横軸及び縦軸が、それぞれ、第1のX線エネルギーに関する第1指標に応じた第1指標軸及び第2のX線エネルギーに関する第2指標に応じた第2指標軸となる場合であってもよい。
また、上述した実施形態では、デュアルエナジーを例として説明したが、3種類以上のX線エネルギーを用いたマルチエナジーについても同様に適用が可能である。例えば、3種類のX線エネルギーを用いてデータセットの収集が行われた場合、取得機能24cは、第1指標に応じた第1指標軸、第2指標に応じた第2指標軸、及び、第3指標に応じた第3指標軸の3軸を有する座標系における物質の分布を示す第1分布情報を取得することができる。また、この場合、生成機能24cは、3つの第2軸を第1分布情報において設定し、設定した第2軸に応じて第1分布情報の変換を行なうことで、第2分布情報を生成する。そして、出力機能24eは、第2分布情報に基づく強調画像を出力する。
また、上述した実施形態では、X線CT装置10と医用情報処理装置20とが別体であるものとして説明したが、医用情報処理装置20はX線CT装置10に含まれることとしてもよい。例えば、X線CT装置10におけるコンソール装置140が、医用情報処理装置20としての機能を実行する場合であってもよい。
また、上述した実施形態では、異なるX線エネルギーに対応する複数のデータセットの例として、X線CT装置10により収集された投影データについて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、被検体Pを透過したX線を検出するFPD(Flat Panel Detector:平面検出器)を備えたX線診断装置により収集された、異なるX線エネルギーに対応する複数のX線画像についても同様に適用が可能である。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
また、図1においては、単一のメモリ21が処理回路24の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。また、図2においては、単一のメモリ141が処理回路144の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ21を分散して配置し、処理回路24は、個別のメモリ21から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数のメモリ141を分散して配置し、処理回路144は、個別のメモリ141から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ21又はメモリ141にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、上述した実施形態で説明した医用情報処理方法は、予め用意された医用情報処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用情報処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用情報処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、物質分離能を向上させることができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。