JP2021175800A - シートおよび積層体 - Google Patents

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Ko Sakai
寛一 砂川
Kanichi Sunakawa
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Abstract

【課題】本発明は、吸水率が低く、透明性に優れ、さらに、製造時において、装置等への貼り付きが抑制され、剥離性に優れるシートおよび積層体を提供することを目的とする。【解決手段】繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂と、湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールとを配合してなるシートであって、該シートの固形分中の該微細繊維状セルロースの配合量が30質量%以下であり、該シートの下記式(1)で表される吸水率が50%以下であり、かつ、ヘーズが3.0%以下である、シート。吸水率=(W−Wd)/Wd×100 (1)(ここで、Wはシートをイオン交換水に24時間浸漬した後の質量、Wdはシートを23℃、相対湿度50%で24時間調湿した後の質量を示す。)【選択図】なし

Description

本発明は、シートおよび積層体に関する。
近年、石油資源の代替および環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維幅が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、とくに木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースも知られている。また、このような微細繊維状セルロースから構成されるシートや、微細繊維状セルロースと樹脂とを含む複合シート、および成形体が開発されている。微細繊維状セルロースを含有するシートや成形体においては、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度等が大きく向上することが知られている。
特許文献1には、高い透明性と耐水性とを兼ね備えた微細繊維状セルロース含有シートを提供することを目的として、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、ポリオール由来の単位および含窒素化合物由来の単位を含む重合体と、を含有するシートが開示されている。
また、特許文献2には、透明性と耐水性に優れたシートを得ることを目的として、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースと、カチオン樹脂と、を含み、ヘーズが6%以下であるシートが記載されている。
特開2018−9116号公報 国際公開第2017/138589号
特許文献1および特許文献2に記載されたシートでは、透明性と耐水性に改善の余地があり、さらに、製造容易性についての検討はなされていなかった。
本発明は、吸水率が低く、透明性に優れ、さらに、製造時において、装置等への貼り付きが抑制され、剥離性に優れるシートを提供することを目的とする。
本発明者等は、微細繊維状セルロースと、樹脂と、湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールを配合してなるシートにおいて、微細繊維状セルロースの配合量を特定の範囲とし、さらに、吸水率、およびヘーズを特定の範囲とすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>〜<14>に関する。
<1> 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂と、湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールとを配合してなるシートであって、該シートの固形分中の該微細繊維状セルロースの配合量が30質量%以下であり、該シートの下記式(1)で表される吸水率が50%以下であり、かつ、ヘーズが3.0%以下である、シート。
吸水率=(W−Wd)/Wd×100 (1)
(ここで、Wはシートをイオン交換水に24時間浸漬した後の質量、Wdはシートを23℃、相対湿度50%で24時間調湿した後の質量を示す。)
<2> 前記湿潤紙力増強剤が、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリンである、<1>に記載のシート。
<3> 前記ポリビニルアルコールが、ケン化度95mol%以下の部分ケン化ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、およびノニオン変性ポリビニルアルコールよりなる群から選択される、<1>または<2>に記載のシート。
<4> 前記樹脂が、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1つである、<1>〜<3>のいずれかに記載のシート。
<5> 前記シートの含水率が9質量%以下である、<1>〜<4>のいずれかに記載のシート。
<6> さらに架橋剤を配合してなる、<1>〜<5>のいずれかに記載のシート。
<7> 前記架橋剤が、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、およびオキサゾリン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つである、<6>に記載のシート。
<8> 前記シートの固形分中の前記樹脂の配合量が50質量%以上である、<1>〜<7>のいずれかに記載のシート。
<9> 前記シートの固形分中の前記湿潤紙力増強剤の配合量が0.1質量%以上10質量%以下である、<1>〜<8>のいずれかに記載のシート。
<10> 前記ポリビニルアルコールの配合量が、前記樹脂100質量部に対して50質量部以下である、<1>〜<9>のいずれかに記載のシート。
<11> イエローインデックス(YI)が3以下である、<1>〜<10>のいずれかに記載のシート。
<12> 屈曲角度180°、屈曲速度30回/分、屈曲半径1mmで折り曲げ試験をしたときに、耐ワレ折り曲げ回数が20万回以上である、<1>〜<11>のいずれかに記載のシート。
<13> <1>〜<12>のいずれかに記載のシートの少なくとも一方の面に、無機層および有機層の少なくともいずれか1つが形成されている、積層体。
<14> 屈曲角度180°、屈曲速度30回/分、屈曲半径1mmで折り曲げ試験をしたときに、耐ワレ折り曲げ回数が20万回以上である、<13>に記載の積層体。
本発明によれば、吸水率が低く、透明性に優れ、さらに、製造時において、装置等への貼り付きが抑制され、剥離性に優れるシートおよび積層体が提供される。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシ基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
[シート]
本発明のシートは、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロース(以下、単に「微細繊維状セルロース」ともいう)と、水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)と、湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールとを配合してなるシートであって、該シートの固形分中の該微細繊維状セルロースの配合量が30質量%以下であり、該シートの下記式(1)で表される吸水率が50%以下であり、かつ、ヘーズが3.0%以下である。
吸水率=(W−Wd)/Wd×100 (1)
(ここで、Wはシートをイオン交換水に24時間浸漬した後の質量、Wdはシートを23℃、相対湿度50%で24時間調湿した後の質量を示す。)
本発明のシートは、上述したように、吸水率が低く、透明性に優れ、さらに、製造時において、装置等への貼り付きが抑制され、剥離性に優れる。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
微細繊維状セルロースは、透明性に優れる。また、微細繊維状セルロースは、その分子内にセルロースに由来する水酸基を多く有しており、本発明では、湿潤紙力増強剤と微細繊維状セルロースとを併用することにより、湿潤紙力増強剤が、微細繊維状セルロースの耐水性を向上させ、これを樹脂と混合してシート化することで、吸水率および線熱膨張率が低く、さらに透明性に優れるシートが得られる。
また、シートを製造する際に、塗工法で製造する場合には、基材上に成膜し、乾燥後、剥離を行うが、基材との接着性が強すぎるため、剥離の際にシートが貼り付いて剥離ができないという問題や、塗工法および抄紙法のいずれにおいても、乾燥時のロールへの貼り付きにより、歩留まりが低下するという問題があった。このような製造時における装置等(基材、ロール等)への貼り付きは、該装置等の材質が金属である場合に顕著であり、とくに、SUSである場合に顕著であった。本発明において、シートにポリビニルアルコールを配合することにより、低吸水率を維持しつつ、乾燥時および乾燥後の各種装置等からの剥離が容易となった。その理由としては、ポリビニルアルコールが、両親媒性ポリマーであることから、疎水的であり、金属への密着性がよい樹脂の保護コロイドとして働き、樹脂と金属との密着力を弱める効果を有し、各種装置等からの剥離性が向上したものと考えられる。
また、ポリビニルアルコールを配合することによって、透明性が向上することも見出した。その理由としては、上述したと同様に、ポリビニルアルコールが両親媒性であることで、親水性である微細繊維状セルロースと、微細繊維状セルロースに比べて疎水的である樹脂との相溶性を向上させる効果を有し、微細繊維状セルロースと樹脂との相溶性が向上したことによるものと考えられる。
さらに、本発明のシートの付加的な効果として、線熱膨張率が低く、高温高湿下での寸法安定性にも優れるものであることを見出した。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「シートの固形分中の成分Aの配合量」とは、成分Aを含むシート原料の固形分料中の成分Aの含有量を意味する。これは、シートとした場合には、成分Aが他の成分と架橋を形成する等により、成分A自体の分子構造が保持されていない場合があるためである。
<微細繊維状セルロース>
本発明のシートは、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを配合してなる。
微細繊維状セルロースは、繊維幅が1,000nm以下である繊維状セルロースである。なお、繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。
微細繊維状セルロースの繊維幅は、1,000nm以下である。微細繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。微細繊維状セルロースの繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1,000nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、2nm以上1,000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1,000倍、5,000倍、10,000倍あるいは50,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
微細繊維状セルロースの繊維長は、とくに限定されないが、たとえば0.1μm以上1,000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、とくに限定されないが、たとえば20以上10,000以下であることが好ましく、50以上1,000以下であることがより好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、微細繊維状セルロースを含有するシートを形成しやすい。また、溶媒分散体を作製した際に十分な増粘性が得られやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば微細繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえばイオン性置換基および非イオン性置換基のうちの少なくとも1種を有する。分散媒中における繊維の分散性を向上させ、解繊処理における解繊効率を高める観点からは、微細繊維状セルロースがイオン性置換基を有することがより好ましい。イオン性置換基としては、たとえばアニオン性基およびカチオン性基のいずれか一方または双方を含むことができる。また、非イオン性置換基としては、たとえばアルキル基およびアシル基などを含むことができる。本実施形態においては、イオン性置換基としてアニオン性基を有することがとくに好ましい。また、イオン性置換基は、エステル結合またはエーテル結合を介して微細繊維状セルロースに導入される基であることが好ましく、エステル結合を介して微細繊維状セルロースに導入される基であることがより好ましい。この場合、エステル結合は、微細繊維状セルロースとイオン性置換基となる化合物の脱水縮合で形成されることが好ましい。
なお、微細繊維状セルロースには、イオン性置換基を導入する処理が行われていなくてもよい。
イオン性置換基としてのアニオン性基としては、たとえばリンオキソ酸基またはリンオキソ酸基に由来する置換基(単にリンオキソ酸基ということもある)、カルボキシ基またはカルボキシ基に由来する置換基(単にカルボキシ基ということもある)、硫黄オキソ酸基または硫黄オキソ酸基に由来する置換基(単に硫黄オキソ酸基ということもある)、ザンテート基またはザンテート基に由来する置換基(単にザンテート基ということもある)、ホスホン基またはホスホン基に由来する置換基、ホスフィン基またはホスフィン基に由来する置換基、スルホン基またはスルホン基に由来する置換基、カルボキシアルキル基等を挙げることができる。中でも、アニオン性基は、リンオキソ酸基、リンオキソ酸基に由来する置換基、カルボキシ基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、硫黄オキソ酸基および硫黄オキソ酸基、スルホン基に由来する置換基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リンオキソ酸基、リンオキソ酸基に由来する置換基、カルボキシ基、硫黄オキソ酸基および硫黄オキソ酸基に由来する置換基からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リンオキソ酸基であることがとくに好ましい。アニオン性基としてリンオキソ酸基を導入することにより、たとえば、アルカリ性条件下や酸性条件下においても、繊維状セルロースの分散性をより高めることができ、結果として高強度かつ高透明なシートが得られやすくなる。イオン性置換基としてのカチオン性基としては、たとえばアンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等を挙げることができる。中でもカチオン性基はアンモニウム基であることが好ましい。
リンオキソ酸基またはリンオキソ酸基に由来する置換基は、たとえば下記式(1)で表される置換基である。各微細繊維状セルロースには、下記式(1)で表される置換基が複数導入されていてもよい。この場合、複数導入される下記式(1)で表される置換基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2021175800
式(1)中、a、bおよびnは自然数であり、mは任意の数である(ただし、a=b×mである)。n個あるαおよびα’のうち少なくとも1つ(好ましくはa個)がOであり、残りはRまたはORである。なお、各αおよびα’の全てがOであっても構わない。n個あるαは全て同じでも、それぞれ異なっていてもよい。βb+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。なお、式(1)におけるαは、セルロース分子鎖に由来する基であってもよい。また、式(1)においては、nは1であることが好ましい。
飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、またはn−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、またはt−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、またはアリル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、または3−ブテニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。芳香族基としては、フェニル基、またはナフチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。
また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖または側鎖に対し、カルボキシ基、カルボキシレート基(−COO)、ヒドロキシ基、およびアミノ基などの官能基から選択される少なくとも1種類が付加または置換した状態の官能基が挙げられるが、とくに限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数はとくに限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リンオキソ酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細繊維状セルロースの収率を高めることもできる。なお、式(1)中にRが複数個存在する場合や微細繊維状セルロースに上記式(1)で表される複数種の置換基が導入される場合には、複数存在するRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
βb+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、有機オニウムイオンを挙げることができる。有機オニウムイオンとしては、たとえば、有機アンモニウムイオンや有機ホスホニウムイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、たとえば、脂肪族アンモニウムイオンや芳香族アンモニウムイオンを挙げることができ、有機ホスホニウムイオンとしては、たとえば、脂肪族ホスホニウムイオンや芳香族ホスホニウムイオンを挙げることができる。無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、もしくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、もしくはマグネシウム等の2価金属のイオン、水素イオン、アンモニウムイオン等が挙げられるが、とくに限定されない。これらは1種または2種類以上を組み合わせて適用することもできる。なお、式(1)中にβb+が複数個存在する場合や微細繊維状セルロースに上記式(1)で表される複数種の置換基が導入される場合には、複数存在するβb+はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βb+を含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、またはカリウムのイオンが好ましいが、とくに限定されない。
リンオキソ酸基またはリンオキソ酸基に由来する置換基としては、より具体的には、リン酸基(−PO)、リン酸基の塩、亜リン酸基(ホスホン酸基)(−PO)、亜リン酸基(ホスホン酸基)の塩が挙げられる。また、リンオキソ酸基またはリンオキソ酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえば、ピロリン酸基)、ホスホン酸が縮合した基(たとえば、ポリホスホン酸基)、リン酸エステル基(たとえば、モノメチルリン酸基、ポリオキシエチレンアルキルリン酸基)、アルキルホスホン酸基(たとえば、メチルホスホン酸基)などであってもよい。
また、硫黄オキソ酸基(硫黄オキソ酸基または硫黄オキソ酸基に由来する置換基)は、たとえば下記式(2)で表される置換基である。各微細繊維状セルロースには、下記式(2)で表される置換基が複数種導入されていてもよい。この場合、複数導入される下記式(2)で表される置換基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2021175800
式(2)中、bおよびnは自然数であり、pは0または1であり、mは任意の数である(ただし、1=b×mである)。なお、nが2以上である場合、複数あるpは同一の数であってもよく、異なる数であってもよい。式(2)中、βb+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、有機オニウムイオンを挙げることができる。有機オニウムイオンとしては、たとえば、有機アンモニウムイオンや有機ホスホニウムイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、たとえば、脂肪族アンモニウムイオンや芳香族アンモニウムイオンを挙げることができ、有機ホスホニウムイオンとしては、たとえば、脂肪族ホスホニウムイオンや芳香族ホスホニウムイオンを挙げることができる。無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、若しくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、若しくはマグネシウム等の2価金属のイオン、水素イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。なお、微細繊維状セルロースに上記式(2)で表される複数種の置換基が導入される場合には、複数存在するβb+はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βb+を含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、またはカリウムのイオンが好ましいが、とくに限定されない。
微細繊維状セルロースに対するイオン性置換基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.05mmol/g以上であることが好ましく、0.10mmol/g以上であることがより好ましく、0.20mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.50mmol/g以上であることがよりさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、微細繊維状セルロースに対するイオン性置換基の導入量は、たとえば繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.50mmol/g以下であることがさらに好ましく、3.00mmol/g以下であることがよりさらに好ましい。イオン性置換基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、イオン性置換基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの増粘剤などの種々用途において良好な特性を発揮することができる。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、イオン性置換基の対イオンが水素イオン(H)であるときの微細繊維状セルロースの質量を示す。
また、繊維状セルロースに対するイオン性置換基の導入量は、繊維状セルロース1g(質量)あたり0.50mmol/g未満であってもよく、0.40mmol/g以下であってもよく、0.30mmol/g以下であってもよく、0.25mmol/g以下であってもよく、0.15mmol/g以下であってもよい。このような低置換基量の繊維状セルロースであって、繊維幅が100nm以下の繊維状セルロースは、たとえば、微細繊維状セルロースに置換基を除去させる処理を施すことにより得られるものであってもよい。このような繊維状セルロースを用いて繊維層を形成することにより、よりヘーズが低く、かつ黄色度の低い樹脂成形体が得られやすくなる。
微細繊維状セルロースに対するイオン性置換基の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた微細繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、導入量を測定する。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。たとえば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、上述のリンオキソ酸基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量を示すことから、酸型の繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、リンオキソ酸基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リンオキソ酸基量(C型)=リンオキソ酸基量(酸型)/{1+(W−1)×A/1000}
A[mmol/g]:繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基由来の総アニオン量(リンオキソ酸基の強酸性基量と弱酸性基量を足した値)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
図2は、カルボキシ基を有する微細繊維状セルロースに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
微細繊維状セルロースに対するカルボキシ基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図2に示すような滴定曲線を得る。なお、必要に応じて、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
図2に示されるように、この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が一つ観測される。この増分の極大点を第1終点と呼ぶ。ここで、図2における滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼ぶ。第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中のカルボキシ基量と等しくなる。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除すことで、カルボキシ基の導入量(mmol/g)を算出した。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、カルボキシ基の対イオンが水素イオン(H)であるときの繊維状セルロースの質量1gあたりの置換基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量であることから、酸型の繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、カルボキシ基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(C型))(mmol/g)を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
カルボキシ基量(C型)=カルボキシ基量(酸型)/{1+(W−1)×(カルボキシ基量(酸型))/1000}
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
なお、滴定法による置換基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液1滴の滴下量が多すぎる場合や、滴定間隔が短すぎる場合、本来より低い置換基量となるなど正確な値が得られないことがある。適切な滴下量、滴定間隔としては、たとえば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒に10〜50μLずつ滴定するなどが望ましい。また、繊維状セルロース含有スラリーに溶解した二酸化炭素の影響を排除するため、たとえば、滴定開始の15分前から滴定終了まで、窒素ガスなどの不活性ガスをスラリーに吹き込みながら測定するなどが望ましい。
また、繊維状セルロースに対する硫黄オキソ酸基またはスルホン基の導入量は、繊維状セルロースを含むスラリーを凍結乾燥し、さらに粉砕した試料の硫黄量を測定することで算出することができる。具体的には、繊維状セルロースを含むスラリーを凍結乾燥し、さらに粉砕した試料を、密閉容器中で硝酸を用いて加圧加熱分解した後、適宜希釈してICP−OESで硫黄量を測定する。供試した繊維状セルロースの絶乾質量で割り返して算出した値を繊維状セルロースの硫黄オキソ酸基量またはスルホン基量(単位:mmol/g)とする。
本発明のシートにおいて、該シートの固形分中の微細繊維状セルロースの配合量は30質量%以下である。微細繊維状セルロースの含有量を上記の範囲とすることにより、吸水率の低いシートが得られる。
より吸水率の低いシートを得る観点から、シートの固形分中の微細繊維状セルロースの配合量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、そして、吸水率が低く、高湿下での寸法安定性に優れるシートを得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりさらに好ましくは8質量%以上である。
〔微細繊維状セルロースの製造方法〕
(セルロースを含む繊維原料)
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。
セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。
また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
上述のようなイオン性置換基を導入した微細繊維状セルロースを得るためには、上述したセルロースを含む繊維原料にイオン性置換基を導入するイオン性置換基導入工程、洗浄工程、アルカリ処理工程(中和工程)、解繊処理工程をこの順で有することが好ましく、洗浄工程の代わりに、または洗浄工程に加えて、酸処理工程を有していてもよい。イオン性置換基導入工程としては、リンオキソ酸基導入工程、カルボキシ基導入工程、硫黄オキソ酸基導入工程、ザンテート基導入工程、ホスホン基またはホスフィン基導入工程、スルホン基導入工程、およびカチオン性基導入工程が例示される。以下、それぞれについて説明する。
(イオン性置換基導入工程)
−リンオキソ酸基導入工程−
リンオキソ酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リンオキソ酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リンオキソ酸基導入繊維が得られることとなる。
本実施形態に係るリンオキソ酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、とくに乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、とくに水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
本実施態様で使用する化合物Aとしては、リン原子を有し、セルロースとエステル結合を形成可能な化合物であればよく、リン酸もしくはその塩、亜リン酸もしくはその塩、脱水縮合リン酸もしくはその塩、無水リン酸(五酸化二リン)などが挙げられるが、とくに限定されない。リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することができる。亜リン酸としては、たとえば99%亜リン酸(ホスホン酸)が挙げられる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により2分子以上縮合したものであり、たとえばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。リン酸塩、亜リン酸塩、脱水縮合リン酸塩としては、リン酸、亜リン酸または脱水縮合リン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。
これらのうち、リンオキソ酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、とくに限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
本実施態様で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素などが挙げられる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、とくに限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、とくにトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リンオキソ酸基導入工程においては、繊維原料に化合物A等を添加または混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リンオキソ酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、バンド型乾燥装置、ろ過乾燥装置、振動流動乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置を用いることができる。
本実施形態に係る加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料に化合物Aを含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練または撹拌しながら加熱する方法を採用することができる。これにより、繊維原料における化合物Aの濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にリンオキソ酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存する化合物Aが表面張力によって水分子に引き付けられ、同様に繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、化合物Aの濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分および化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、たとえば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1,000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リンオキソ酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リンオキソ酸基導入工程は、少なくとも1回行えばよいが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のリンオキソ酸基導入工程を行うことにより、繊維原料に対して多くのリンオキソ酸基を導入することができる。本実施形態においては、好ましい態様の一例として、リンオキソ酸基導入工程を2回行う場合が挙げられる。
繊維原料に対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.05mmol/g以上であることが好ましく、0.10mmol/g以上であることがより好ましく、0.20mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.50mmol/g以上であることがよりさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、繊維原料に対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リンオキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
−カルボキシ基導入工程−
カルボキシ基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、オゾン酸化やフェントン法による酸化、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物もしくはその誘導体、またはカルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物もしくはその誘導体によって処理することにより行われる。
カルボン酸由来の基を有する化合物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物としては、とくに限定されないが、たとえば無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が、アルキル基、フェニル基等の置換基により置換されたものが挙げられる。
カルボキシ基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合には、たとえばその処理をpHが6以上8以下の条件で行うことが好ましい。このような処理は、中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、たとえばリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、繊維原料としてパルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等のニトロキシラジカル、犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシ基まで酸化することができる。
また、TEMPO酸化処理は、その処理をpHが10以上11以下の条件で行ってもよい。このような処理は、アルカリTEMPO酸化処理ともいう。アルカリTEMPO酸化処理は、たとえば繊維原料としてのパルプに対し、触媒としてTEMPO等のニトロキシラジカルと、共触媒として臭化ナトリウムと、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより行うことができる。
繊維原料に対するカルボキシ基の導入量は、置換基の種類によっても変わるが、たとえばTEMPO酸化によりカルボキシ基を導入する場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.05mmol/g以上であることが好ましく、0.10mmol/g以上であることがより好ましく、0.20mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.50mmol/g以上であることがよりさらに好ましく、0.90mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.00mmol/g以下であることがより好ましく、2.50mmol/g以下であることがさらに好ましく、2.20mmol/g以下であることがよりさらに好ましく、2.00mmol/g以下であることがとくに好ましい。その他、置換基がカルボキシメチル基である場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.8mmol/g以下であってもよい。カルボキシ基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細化処理工程におけるセルロース繊維の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
−硫黄オキソ酸基導入工程−
微細繊維状セルロースの製造工程は、イオン性置換基導入工程として、たとえば、硫黄オキソ酸基導入工程を含んでもよい。硫黄オキソ酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と硫黄オキソ酸が反応することで、硫黄オキソ酸基を有するセルロース繊維(硫黄オキソ酸基導入繊維)を得ることができる。
硫黄オキソ酸基導入工程では、上述した<リンオキソ酸基導入工程>における化合物Aに代えて、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、硫黄オキソ酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物C」ともいう)を用いる。化合物Cとしては、硫黄原子を有し、セルロースとエステル結合を形成可能な化合物であればよく、硫酸もしくはその塩、亜硫酸もしくはその塩、硫酸アミドなどが挙げられるがとくに限定されない。硫酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば96%硫酸(濃硫酸)を使用することができる。亜硫酸としては、5%亜硫酸水が挙げられる。硫酸塩または亜硫酸塩としては、硫酸塩または亜硫酸塩のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。硫酸アミドとしては、スルファミン酸などを使用することができる。硫黄オキソ酸基導入工程では、上述した<リンオキソ酸基導入工程>における化合物Bを同様に用いることが好ましい。
硫黄オキソ酸基導入工程においては、セルロース原料に硫黄オキソ酸、並びに、尿素および/または尿素誘導体を含む水溶液を混合した後、当該セルロース原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、硫黄オキソ酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱処理温度は、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
加熱処理工程では、実質的に水分がなくなるまで加熱をすることが好ましい。このため、加熱処理時間は、セルロース原料に含まれる水分量や、硫黄オキソ酸、並びに、尿素および/または尿素誘導体を含む水溶液の添加量によって、変動するが、たとえば、10秒以上10000秒以下とすることが好ましい。加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、バンド型乾燥装置、ろ過乾燥装置、振動流動乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置を用いることができる。
セルロース原料に対する硫黄オキソ酸基の導入量は、0.05mmol/g以上であることが好ましく、0.10mmol/g以上であることがより好ましく、0.20mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.50mmol/g以上であることがよりさらに好ましく、0.90mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、セルロース原料に対する硫黄オキソ酸基の導入量は、5.00mmol/g以下であることが好ましく、3.00mmol/g以下であることがより好ましい。硫黄オキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。
−塩素系酸化剤による酸化工程(第二のカルボキシ基導入工程)−
イオン性置換基導入工程としては、塩素系酸化剤による酸化工程を含んでもよい。塩素系酸化剤による酸化工程では、塩素系酸化剤を湿潤あるいは乾燥状態の、水酸基を有する繊維原料に加えて反応を行うことで、繊維原料にカルボキシ基が導入される。
塩素系酸化剤としては、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、二酸化塩素などが挙げられる。置換基の導入効率、ひいては解繊効率、コスト、取り扱いやすさの点から、塩素系酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素であることが好ましい。塩素系酸化剤を添加する際には、試薬(固形状もしくは液状)としてそのまま繊維原料に加えてもよいし、適当な溶媒に溶かして加えてもよい。
塩素系酸化剤による酸化工程における塩素系酸化剤の溶液中濃度は、たとえば有効塩素濃度に換算して、1質量%以上1,000質量%以下であることが好ましく、5質量%以上500質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。塩素系酸化剤の繊維原料100質量部に対する添加量は、1質量部以上100,000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上10,000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上5,000質量部以下であることがさらに好ましい。
塩素系酸化剤による酸化工程における塩素系酸化剤との反応時間は、反応温度に応じて変わり得るが、たとえば1分間以上1,000分間以下であることが好ましく、10分間以上500分間以下であることがより好ましく、20分間以上400分間以下であることがさらに好ましい。反応時のpHは、5以上15以下であることが好ましく、7以上14以下であることがより好ましく、9以上13以下であることがさらに好ましい。また、反応開始時、反応中のpHは塩酸や水酸化ナトリウムを適宜添加しながら一定(たとえば、pH11)を保つことが好ましい。また、反応後は濾過等により、余剰の反応試薬、副生物等を水洗・除去してもよい。
−ザンテート基導入工程(キサントゲン酸エステル化工程)−
イオン性置換基導入工程としては、たとえばザンテート基導入工程(以下、ザンテート化工程ともいう。)を含んでもよい。ザンテート化工程では、二硫化炭素とアルカリ化合物を、湿潤あるいは乾燥状態の、水酸基を有する繊維原料に加えて反応を行うことで、繊維原料にザンテート基が導入される。具体的には、二硫化炭素を後述の手法でアルカリセルロース化した繊維原料に対して加え、反応を行う。
<<アルカリセルロース化>>
繊維原料へのイオン性置換基導入に際しては、繊維原料が含むセルロースにアルカリ溶液を作用させ、セルロースをアルカリセルロース化することが好ましい。この処理により、セルロースの水酸基の一部がイオン解離し、求核性(反応性)を高めることができる。アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、とくに限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。アルカリセルロース化は、イオン性置換基の導入と同時に行ってもよいし、その前段として行ってもよいし、両方のタイミングで行ってもよい。
アルカリセルロース化を始める際の溶液温度は、0℃以上50℃以下であることが好ましく、5℃以上40℃以下であることがより好ましく、10℃以上30℃以下であることがさらに好ましい。
アルカリ溶液中のアルカリ濃度としては、モル濃度として0.01mol/L以上4mol/L以下であることが好ましく、0.1mol/L以上3mol/L以下であることがより好ましく、1mol/L以上2.5mol/L以下であることがさらに好ましい。とくに、アルカリセルロース化における処理温度が10℃未満である場合は、アルカリ濃度は1mol/L以上2mol/L以下であることが好ましい。
アルカリセルロース化の処理時間は、1分間以上であることが好ましく、10分間以上であることがより好ましく、30分間以上であることがさらに好ましい。また、アルカリ処理の時間は、6時間以下であることが好ましく、5時間以下であることがより好ましく、4時間以下であることがさらに好ましい。
アルカリ溶液の種類、処理温度、濃度、浸漬時間を上述のように調整することで、セルロースの結晶領域へのアルカリ溶液浸透を抑制でき、セルロースI型の結晶構造が維持されやすくなり、微細繊維状セルロースの収率を高めることができる。
イオン性置換基導入とアルカリセルロース化を同時に行わない場合、アルカリセルロース化はイオン性置換基導入の前段で行われるのが好ましい。この場合、アルカリセルロース化処理で得られたアルカリセルロースは、遠心分離や、濾別などの一般的な脱液方法により、固液分離し、水分を除去しておくことが好ましい。これにより、次いで行われるイオン性置換基導入工程での、反応効率が向上する。固液分離後のセルロース繊維濃度は、5%以上50%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましく、15%以上35%以下であることがさらに好ましい。
−ホスホン基またはホスフィン基導入工程(ホスホアルキル化工程)−
イオン性置換基導入工程としては、ホスホン基またはホスフィン基導入工程(ホスホアルキル化工程)を含んでもよい。ホスホアルキル化工程では、必須成分として、反応性基とホスホ基またはホスフィン基とを有する化合物(化合物E)、任意成分としてアルカリ化合物、前述した尿素およびその誘導体から選択される化合物Bを、湿潤あるいは乾燥状態の、水酸基を有する繊維原料に加えて反応を行うことで、繊維原料にホスホン基またはホスフィン基が導入される。
反応性基としては、ハロゲン化アルキル基、ビニル基、エポキシ基(グリシジル基)などが挙げられる。
化合物Eとしては、たとえばビニルホスホン酸、フェニルビニルホスホン酸、フェニルビニルホスフィン酸等が挙げられる。置換基の導入効率、ひいては解繊効率、コスト、取り扱いやすさの点から化合物Eはビニルホスホン酸であることが好ましい。
さらに任意成分として、上述した<リンオキソ酸基導入工程>における化合物Bを同様に用いることも好ましく、添加量も前述のようにすることが好ましい。
化合物Eを添加する際には、試薬(固形状もしくは液状)としてそのまま繊維原料に加えてもよいし、適当な溶媒に溶かして加えてもよい。繊維原料は事前にアルカリセルロース化するか、反応と同時にアルカリセルロース化されることが好ましい。アルカリセルロース化の方法は、前述のとおりである。
反応時の温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
化合物Eの繊維原料100質量部に対する添加量は、1質量部以上100,000質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10,000質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上1,000質量部以下であることがさらに好ましい。
反応時間は、反応温度に応じて変わり得るが、たとえば1分間以上1,000分間以下であることが好ましく、10分間以上500分間以下であることがより好ましく、20分間以上400分間以下であることがさらに好ましい。また、反応後は濾過等により、余剰の反応試薬、副生物等を水洗・除去してもよい。
−スルホン基導入工程(スルホアルキル化工程)−
イオン性置換基導入工程としては、スルホン基導入工程(スルホアルキル化工程)を含んでもよい。スルホアルキル化では、必須成分として、反応性基とスルホン基とを有する化合物(化合物E)と、任意成分としてアルカリ化合物、前述した尿素およびその誘導体から選択される化合物Bを、湿潤あるいは乾燥状態の、水酸基を有する繊維原料に加えて反応を行うことで、繊維原料にスルホン基が導入される。
反応性基としては、ハロゲン化アルキル基、ビニル基、エポキシ基(グリシジル基)などが挙げられる。
化合物Eとしては、2−クロロエタンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。中でも、置換基の導入効率、ひいては解繊効率、コスト、取り扱いやすさの点から化合物Eはビニルスルホン酸ナトリウムであることが好ましい。
さらに任意成分として、上述した<リンオキソ酸基導入工程>における化合物Bを同様に用いることも好ましく、添加量も前述のようにすることが好ましい。
化合物Eを添加する際には、試薬(固形状もしくは液状)としてそのまま繊維原料に加えてもよいし、適当な溶媒に溶かして加えてもよい。繊維原料は事前にアルカリセルロース化するか、反応と同時にアルカリセルロース化されることが好ましい。アルカリセルロース化の方法は、前述のとおりである。
反応時の温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
化合物Eの繊維原料100質量部に対する添加量は、1質量部以上100,000質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10,000質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上1,000質量部以下であることがさらに好ましい。
反応時間は、反応温度に応じて変わり得るが、たとえば1分間以上1,000分間以下であることが好ましく、10分間以上500分間以下であることがより好ましく、15分間以上400分間以下であることがさらに好ましい。また、反応後は濾過等により、余剰の反応試薬、副生物等を水洗・除去してもよい。
−カルボキシアルキル化工程(第三のカルボキシ基導入工程)−
イオン性置換基導入工程としては、カルボキシアルキル化工程を含んでもよい。必須成分として、反応性基とカルボキシ基とを有する化合物(化合物E)、任意成分としてアルカリ化合物、前述した尿素およびその誘導体から選択される化合物Bを、湿潤あるいは乾燥状態の、水酸基を有する繊維原料に加えて反応を行うことで、繊維原料にカルボキシ基が導入される。
反応性基としては、ハロゲン化アルキル基、ビニル基、エポキシ基(グリシジル基)などが挙げられる。
化合物Eとしては、置換基の導入効率、ひいては解繊効率、コスト、取り扱いやすさの点からモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、2−クロロプロピオン酸ナトリウム、3−クロロプロピオン酸ナトリウムが好ましい。
さらに任意成分として、上述した<リンオキソ酸基導入工程>における化合物Bを同様に用いることも好ましく、添加量も前述のようにすることが好ましい。
化合物Eを添加する際には、試薬(固形状もしくは液状)としてそのまま繊維原料に加えてもよいし、適当な溶媒に溶かして加えてもよい。繊維原料は事前にアルカリセルロース化するか、反応と同時にアルカリセルロース化されることが好ましい。アルカリセルロース化の方法は、前述のとおりである。
反応時の温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
化合物Eの繊維原料100質量部に対する添加量は、1質量部以上100,000質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10,000質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上1,000質量部以下であることがさらに好ましい。
反応時間は、反応温度に応じて変わり得るが、たとえば1分間以上1,000分間以下であることが好ましく、3分間以上500分間以下であることがより好ましく、5分間以上400分間以下であることがさらに好ましい。また、反応後は濾過等により、余剰の反応試薬、副生物等を水洗・除去してもよい。
−カチオン性基導入工程(カチオン化工程)−
必須成分として、反応性基とカチオン性基とを有する化合物(化合物E)、任意成分としてアルカリ化合物、前述した尿素およびその誘導体から選択される化合物Bを、湿潤あるいは乾燥状態の、水酸基を有する繊維原料に加えて反応を行うことで、繊維原料にカチオン性基が導入される。
反応性基としては、ハロゲン化アルキル基、ビニル基、エポキシ基(グリシジル基)などが挙げられる。
カチオン性基としては、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等を挙げることができる。中でもカチオン性基はアンモニウム基であることが好ましい。
化合物Eとしては、置換基の導入効率、ひいては解繊効率、コスト、取り扱いやすさの点からグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が好ましい。
さらに任意成分として、上述した<リンオキソ酸基導入工程>における化合物Bを同様に用いることも好ましい。添加量も前述のようにすることが好ましい。
化合物Eを添加する際には、試薬(固形状もしくは液状)としてそのまま繊維原料に加えてもよいし、適当な溶媒に溶かして加えてもよい。繊維原料は事前にアルカリセルロース化するか、反応と同時にアルカリセルロース化されることが好ましい。アルカリセルロース化の方法は、前述のとおりである。
反応時の温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
化合物Eの繊維原料100質量部に対する添加量は、1質量部以上100,000質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10,000質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上1,000質量部以下であることがさらに好ましい。
反応時間は、反応温度に応じて変わり得るが、たとえば1分間以上1,000分間以下であることが好ましく、5分間以上500分間以下であることがより好ましく、10分間以上400分間以下であることがさらに好ましい。また、反応後は濾過等により、余剰の反応試薬、副生物等を水洗・除去してもよい。
(洗浄工程)
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてイオン性置換基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりイオン性置換基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。
(アルカリ処理(中和処理)工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理(中和処理)を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえばアルカリ溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、とくに限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶媒などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるイオン性置換基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえばイオン性置換基導入繊維の絶乾質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、イオン性置換基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、イオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行ったイオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
(酸処理工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性置換基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、繊維原料に対して酸処理を行ってもよい。たとえば、イオン性置換基導入工程、酸処理工程、アルカリ処理工程および解繊処理工程をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、とくに限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、とくに限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることがとくに好ましい。
酸処理における酸溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえば繊維原料の絶乾質量に対して100質量%以上100,000質量%以下であることが好ましく、1,000質量%以上10,000質量%以下であることがより好ましい。
(解繊処理工程)
イオン性置換基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。
解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、とくに限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
解繊処理工程においては、たとえばイオン性置換基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶媒などの有機溶媒から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶媒としては、とくに限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン性極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。
また、リンオキソ酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、たとえば水素結合性のある尿素などのリンオキソ酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
(窒素除去処理)
微細繊維状セルロースの製造工程は、窒素量を低減させる工程(窒素除去処理工程)をさらに含んでもよい。窒素量を低減させることで、さらに着色を抑制し得る微細繊維状セルロースを得ることができる。窒素除去処理工程は、解繊処理工程の前に設けられることが好ましい。
窒素除去処理工程においては、置換基導入繊維を含むスラリーのpHを10以上に調整し、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理においては、スラリーの液温を50℃以上100℃以下とすることが好ましく、加熱時間は15分以上180分以下とすることが好ましい。置換基導入繊維を含むスラリーのpHを調整する際には、上述したアルカリ処理工程で用いることができるアルカリ化合物をスラリーに添加することが好ましい。
窒素除去処理工程の後、必要に応じて置換基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりイオン性置換基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、特に限定されない。
(置換基除去処理)
微細繊維状セルロースの製造方法は、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースから、置換基の少なくとも一部を除去する工程を含んでもよい。このような工程を経ることで、置換基導入量が低いが、繊維幅の小さい微細繊維状セルロースを得ることもできる。本明細書において、微細繊維状セルロースから、置換基の少なくとも一部を除去する工程は、置換基除去処理工程とも言う。
置換基除去処理工程としては、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを加熱処理する工程、酵素処理する工程、酸処理する工程、アルカリ処理する工程等が挙げられる。これらは単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。中でも、置換基除去処理工程は、加熱処理する工程または酵素処理する工程であることが好ましい。上記処理工程を経ることで、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースから、置換基の少なくとも一部が除去され、置換基導入量が0.5mmol/g未満の微細繊維状セルロースを得ることができる。
置換基除去処理工程は、スラリー状で行われることが好ましい。すなわち、置換基除去処理工程は、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを含むスラリーを、加熱処理する工程、酵素処理する工程、酸処理する工程、アルカリ処理する工程等であることが好ましい。置換基除去処理工程をスラリー状で実施することによって、置換基除去処理時の加熱等によって生じる着色物質や、添加もしくは発生する酸、アルカリ、塩などの残留を防ぐことができる。これにより、繊維層や積層体の着色を抑制することができる。また、置換基除去処理後に除去した置換基由来の塩の除去処理を行う場合、塩の除去効率を高めることも可能となる。
置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを含むスラリーに対して置換基除去処理を行う場合、該スラリー中の微細繊維状セルロースの濃度は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましい。また、該スラリー中の微細繊維状セルロースの濃度は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。スラリー中の微細繊維状セルロースの濃度を上記範囲内とすることにより、置換基除去処理をより効率よく行うことができる。さらに、スラリー中の微細繊維状セルロースの濃度を上記範囲内とすることにより、置換基除去処理時の加熱等によって生じる着色物質や、添加もしくは発生する酸、アルカリ、塩などの残留を防ぐことができる。これにより、繊維層や積層体の着色を抑制することができる。また、置換基除去処理後に除去した置換基由来の塩の除去処理を行う場合、塩の除去効率を高めることも可能となる。
置換基除去処理工程が、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを加熱処理する工程である場合、加熱処理する工程における加熱温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱処理する工程における加熱温度は、250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。中でも、置換基除去処理工程に供する微細繊維状セルロースが有する置換基がリンオキソ酸基である場合、加熱処理する工程における加熱温度は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
置換基除去処理工程が加熱処理する工程である場合、加熱処理工程において使用できる加熱装置としては、特に限定されないが、熱風加熱装置、蒸気加熱装置、電熱加熱装置、水熱加熱装置、火力加熱装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波加熱装置、撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、バンド型乾燥装置、ろ過乾燥装置、振動流動乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置を用いることができる。蒸発を防ぐ観点から、加熱は密閉系で行われることが好ましく、さらに加熱温度を高める観点から、耐圧性の装置内や容器内で行われることが好ましい。加熱処理はバッチ処理であってもよく、バッチ連続処理であってもよく、連続処理であってもよい。
置換基除去処理工程が、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを酵素処理する工程である場合、酵素処理する工程では、置換基の種類に応じて、リン酸エステル加水分解酵素、硫酸エステル加水分解酵素等を用いることが好ましい。
酵素処理工程では、微細繊維状セルロース1gに対して酵素活性が0.1nkat以上となるよう酵素を添加することが好ましく、1.0nkat以上となるよう酵素を添加することがより好ましく、10nkat以上となるよう酵素を添加することがさらに好ましい。また、微細繊維状セルロース1gに対して酵素活性が100000nkat以下となるよう酵素を添加することが好ましく、50000nkat以下となるよう酵素を添加することがより好ましく10000nkat以下となるよう酵素を添加することがさらに好ましい。微細繊維状セルロース分散液(スラリー)に酵素を添加した後には、0℃以上50℃未満の条件下で1分以上100時間以下処理を行うことが好ましい。
酵素反応の後、酵素を失活させる工程を設けてもよい。酵素を失活させる方法としては、酵素処理を施したスラリーに酸成分もしくはアルカリ成分を添加して酵素を失活させる方法、酵素処理を施したスラリーの温度を90℃以上に上昇させて酵素を失活させる方法が挙げられる。
置換基除去処理工程が、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを酸処理する工程である場合、酸処理する工程では、上述した酸処理工程で用いることができる酸化合物をスラリーに添加することが好ましい。
置換基除去処理工程が、置換基を有し、かつ繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースをアルカリ処理する工程である場合、アルカリ処理する工程では、上述したアルカリ処理工程で用いることができるアルカリ化合物をスラリーに添加することが好ましい。
置換基除去処理工程では、置換基除去反応が均一に進むことが好ましい。反応を均一に進めるためには、たとえば、微細繊維状セルロースを含むスラリーを撹拌してもよく、スラリーの比表面積を高めてもよい。スラリーを撹拌する方法としては、外部からの機械的シェアを与えてもよく、反応中のスラリーの送液速度を上げることで自己撹拌を促してもよい。
置換基除去処理工程では、スペーサー分子を添加してもよい。スペーサー分子は、隣接する微細繊維状セルロースの間に入り込み、それにより微細繊維状セルロース間に微細なスペースを設けるためのスペーサーとして働く。置換基除去処理工程において、このようなスペーサー分子を添加することで、置換基除去処理後の微細繊維状セルロースの凝集を抑制することができる。これにより、繊維層や積層体の透明性をより効果的に高めることができる。
スペーサー分子は水溶性有機化合物であることが好ましい。水溶性有機化合物としては、たとえば、糖や水溶性高分子、尿素等を挙げることができる。具体的には、トレハロース、尿素、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)等を挙げることができる。また、水溶性有機化合物として、メタクリル酸アルキル・アクリル酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、クインスシード、アルギン酸、プルラン、カラギーナン、ペクチン、カチオン化デンプン、生デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、アミロース等のデンプン類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の金属塩を用いることもできる。
また、スペーサー分子として公知の顔料を使用することができる。たとえば、カオリン(含クレー)、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ(含コロイダルシリカ)、酸化アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等が挙げられる。
(pH調整工程)
上述した置換基除去処理工程がスラリー状で行われる場合、置換基除去処理工程の前に、微細繊維状セルロースを含むスラリーのpHを調整する工程を設けてもよい。たとえば、セルロース繊維にイオン性置換基を導入し、このイオン性置換基の対イオンがNa+である場合、解繊後の微細繊維状セルロースを含むスラリーは弱アルカリ性を示す。この状態で加熱を行うと、セルロースの分解により着色要因の一つである単糖が発生する場合があるため、スラリーのpHを8以下に調整することが好ましい。また、酸性条件においても同様に単糖が発生する場合があるため、スラリーのpHを3以上に調整することが好ましい。
また、置換基を有する微細繊維状セルロースがリン酸基を有する微細繊維状セルロースである場合、置換基の除去効率向上の観点から、リン酸基のリンが求核攻撃を受けやすい状態であることが好ましい。求核攻撃を受けやすいのは、セルロース−O−P(=O)(−O−H)(−O−Na)と表される中和度1の状態であり、この状態とするには、
スラリーのpHを3以上8以下に調整することが好ましく、pHを4以上6以下に調整することがさらに好ましい。
pHを調整する手段は特に限定されないが、たとえば微細繊維状セルロースを含むスラリーに酸成分やアルカリ成分を添加してもよい。酸成分は無機酸および有機酸のいずれであってもよく、無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、セバシン酸、ステアリン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸等が挙げられる。アルカリ成分は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。無機アルカリ化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アルカリ化合物としては、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等が挙げられる。
また、pH調整工程では、pHを調整するためにイオン交換処理を行ってもよい。イオン交換処理に際しては、強酸性陽イオン交換樹脂もしくは弱酸性イオン交換樹脂を用いることができる。適切な量の陽イオン交換樹脂で十分な時間処理することにより、目的とすpHの微細繊維状セルロースを含むスラリーを得ることができる。さらに、pH調整工程では酸成分やアルカリ成分の添加とイオン交換処理を組み合わせてもよい。
(塩の除去処理)
置換基除去処理工程の後には、除去した置換基由来の塩の除去処理を行うことが好ましい。置換基由来の塩を除去することで、着色を抑制し得る微細繊維状セルロースが得られ易くなる。置換基由来の塩を除去する手段は特に限定されないが、たとえば洗浄処理やイオン交換処理が挙げられる。洗浄処理は、たとえば水や有機溶媒により、置換基除去処理で凝集した微細繊維状セルロースを洗浄することにより行われる。イオン交換処理では、イオン交換樹脂を用いることができる。
(均一分散処理)
置換基除去処理工程の後には、置換基除去処理を経て得られた微細繊維状セルロースを均一分散処理する工程を設けてもよい。微細繊維状セルロースに対して置換基除去処理を施すことにより、少なくとも一部の微細繊維状セルロースが凝集する。均一分散処理工程においては、このように凝集した微細繊維状セルロースを均一分散する工程である。
均一分散処理工程では、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機またはビーターなどを使用することができる。上記均一分散処理装置の中でも、高速解繊機、高圧ホモジナイザーを用いることがより好ましい。
均一分散処理工程における処理条件は特に限定されないが、処理中の微細繊維状セルロースの最高移動速度や、処理時の圧力を大きくすることが好ましい。高速解繊機においては、その周速が20m/sec以上であることが好ましく、25m/sec以上であることがより好ましく、30m/sec以上であることがさらに好ましい。高圧ホモジナイザーは、高速解繊機よりも、処理中の微細繊維状セルロースの最高移動速度や、処理時の圧力が大きくなるため、より好ましく使用できる。高圧ホモジナイザー処理においては、処理時の圧力は1MPa以上350MPa以下が好ましく、10MPa以上300MPa以下がより好ましく、50MPa以上250MPa以下がさらに好ましい。
なお、均一分散処理工程においては、上述したスペーサー分子を新たに添加してもよい。均一分散処理工程において、このようなスペーサー分子を添加することで、微細繊維状セルロースの均一分散をよりスムーズに行うことができる。これにより、繊維層や樹脂成形体の透明性をより効果的に高めることができる。
<樹脂>
本発明のシートは、水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)を配合してなる。
なお、水系樹脂エマルションとは、樹脂が水系媒体中に乳化されている樹脂の水系乳化分散液であり、乳化剤の存在下で、機械的剪断力で強制乳化することにより得られる。また、水系樹脂ディスパージョンとは、樹脂が水系媒体中に乳化剤を使用することなく分散されている樹脂の水系分散液である。水系樹脂ディスパージョンでは、たとえば、樹脂に親水性基または親水性のセグメントを付与し、自己分散型とした水系分散液が挙げられる。導入される親水性基の種類により、カチオン型(アミノ基等を導入)、アニオン型(カルボキシ基やスルホン基を導入)、ノニオン型(ポリエチレングリコール基を導入)に分類される。これらの中でも、アニオン型の自己分散型の水系樹脂ディスパージョンが、透明性に優れ、吸水率が低く、高湿下での寸法安定性に優れるシートを得る観点で好ましい。
水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンに使用される水系媒体としては、水、または水にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族類、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、イソプロパノール、エタノール、メタノール、メトキシエタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類を配合したものを適宜選択できる。水系媒体中の水の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
前記樹脂としては、とくに限定されないが、吸水率が低く、透明性に優れ、さらに高湿下における寸法安定性に優れたシートを得る観点から、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂等が例示される。これらの中でも、より吸水率が低く、透明性に優れたシートを得る観点から、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1つが好ましく、ウレタン樹脂、またはウレタン樹脂およびアクリル樹脂の複合樹脂であることがより好ましく、ウレタン樹脂であることがさらに好ましい。
前記樹脂は、架橋剤と反応性を有する官能基(たとえば、水酸基、カルボキシ基等)を有することが好ましい。
ウレタン樹脂は、変性されていてもよく、ポリウレタンに加え、たとえば、エポキシ変性ウレタン樹脂、シリコーン変性ポリウレタン樹脂であってもよい。
ウレタン樹脂は、多価アルコールと多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる。
ウレタン樹脂を形成する多価アルコールは、1分子に2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物が使用される。低分子量の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の低分子量ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3つ以上のヒドロキシ基を有する低分子量化合物が例示される。また、多価アルコールとして、これらの低分子量多価アルコールの少なくとも1種とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどを付加重合させて得られるポリエーテルジオール;低分子量ジオールの少なくとも1種とアジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸を重縮合して得られるポリエステルジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラメチレンエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリエーテルジオール;その他、ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール、ポリアクリル酸エステルジオール等が挙げられる。多価アルコールは1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂を形成する上記多価イソシアネート化合物は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する有機化合物である。多価イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネート等が挙げられる。
脂肪族の多価イソシアネート化合物の具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式の多価イソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族の多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを必須の単量体として、その他にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、スチレン等のオレフィン化合物またはビニル化合物を単量体として得られる樹脂が例示される。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が例示される。
また、上記アクリル樹脂は、さらにウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、スチレンまたはその誘導体によって変性された、変性アクリル樹脂であってもよい。
水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンとして、変性樹脂のエマルションやディスパージョンを使用してもよく、たとえば、ウレタン変性アクリル樹脂の水系ディスパージョンであるリカボンドSU−100(ジャパンコーティングレジン株式会社製)等が例示される。
水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョン中の分散樹脂粒子の平均粒子径はとくに限定されないが、面内均一性および透明性に優れるシートを得る観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは0.9μm以下である。
分散樹脂粒子の平均粒子径は、光散乱法により測定される。
本発明において、シートの固形分中の樹脂の配合量は、吸水率が低く、高湿下での寸法安定性に優れるシートを得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは72質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
樹脂の配合量を72質量%以上とすることにより、さらに繰り返し屈曲時の耐ワレ性・耐久性に優れたシートが得られる。
繰り返し屈曲時の耐久性に優れる明確な理由は不明であるが、下記と推測している。
すなわち、樹脂のみのときには、シートの柔軟性が高く、屈曲時の耐ワレ性は良好であるが、十分な強度を持たないために、繰り返し屈曲に対する耐久性は低くなり、折り曲げ筋や白化が発生する。ここに微細繊維状セルロースを添加することにより、樹脂の柔軟性を保持しつつ、シート内部に繊維の骨格構造ができ、樹脂を補強するため、繰り返し屈曲時の応力に耐えることが可能となり、耐ワレ性・耐久性に優れると考えられる。
一方で、微細繊維状セルロースの添加量が増加してくると、この骨格構造が密に形成され、樹脂による柔軟性が保持できなくなり、屈曲時にその応力に追随せず、耐ワレ性に劣ると考えられる。
<湿潤紙力増強剤>
本発明のシートは、湿潤紙力増強剤を配合してなる。湿潤紙力増強剤は、紙が水に濡れたときに紙力の低下を抑えるための薬剤であり、水に対してほぐれやすいパルプ繊維に添加することにより、水に濡れてもパルプ繊維の結合を保持してほぐれにくくし、強度を高める効果を有する。
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が例示される。
ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンは、たとえば、多価酸とポリエチレンポリアミンとを縮合した主鎖に、エピクロロヒドリンを付加して合成される。ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンは、幅広いpH範囲で使用可能であり、また、低添加量で高い湿潤紙力増強効果を得られる。
メラミンホルムアルデヒド樹脂は、メラミンにホルムアルデヒドを付加後、酸縮合して合成される。
また、尿素ホルムアルデヒド樹脂は、尿素にホルムアルデヒドを付加した後、一部を架橋して合成される。
これらの中でも、本発明において、湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリンを使用することが、吸水率および線熱膨張率が低く、透明性に優れるシートを得る観点から好ましい。ポリアミドポリアミンエピハロヒドリンの中でも、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンがより好ましい。
本発明のシートの固形分中の湿潤紙力増強剤の配合量は、吸水性および線熱膨張率が低いシートを得る観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、よりさらに好ましくは1.0質量%以上、とくに好ましくは1.5質量%以上であり、そして、柔軟性および透明性に優れるシートを得る観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは3.5質量%以下である。
<ポリビニルアルコール>
本発明のシートは、ポリビニルアルコールを配合してなる。なお、ポリビニルアルコールは、水溶性樹脂であり、上述した水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂には含まれない。
本発明者らは、シートにポリビニルアルコール(PVA)を配合することにより、装置等(塗工時の基材、乾燥時のロール等)への貼り付きが抑制され、顕著に生産性が向上することを見出した。
ポリビニルアルコールは、化学式[−CHCH(OH)−][−CHCH(OC(=O)CH)−]で表され、PVOHやPVA、ポバールなどと呼称されている。ポリビニルアルコールは、一般的には、酢酸ビニルモノマーを重合して得られたポリ酢酸ビニル樹脂をけん化することで製造される。なお、前記化学式において、nはけん化部分を示し、mは未けん化部分を示す。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、m+nで表され、また、ケン化度は、{n/(n+m)}×100(モル%)で表される。平均重合度は、酢酸ビニルモノマーを重合させる工程において、重合開始剤量や反応速度を調整することにより、調整できる。また、ケン化度は、ポリ酢酸ビニル樹脂をケン化する工程において、アセトキシ基をどの程度水酸基に変換(ケン化)するかにより、調整できる。ポリビニルアルコールの平均重合度およびケン化度は、JIS K 6726:1994に準じて測定される。
ポリビニルアルコールとして、水酸基(−OH)、アセトキシ基(−O(C=O)CH基)以外の官能基を導入していない未変性ポリビニルアルコールを使用してもよく、また、水酸基およびアセトキシ基以外の官能基を導入した変性ポリビニルアルコールを使用してもよい。変性ポリビニルアルコールに導入される官能基としては、たとえば、カルボキシ基、カルボニル基、スルホン酸基等のアニオン性基;シラノール基;カチオン性基;アルキル基などが挙げられる。すなわち、変性ポリビニルアルコールとしては、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
本発明において、ポリビニルアルコールは、ケン化度が95mol%以下の部分ケン化ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、およびノニオン変性ポリビニルアルコールよりなる群から選ばれることが好ましい。
本発明において、ポリビニルアルコールとして、ケン化度が95mol%を超えるポリビニルアルコールを使用すると、親水性が高くなりすぎるため、ヘーズが悪化する傾向がある。
これらの中でも、ポリビニルアルコールとしては、ケン化度が95mol%以下の部分ケン化ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコールがより好ましい。
前記部分ケン化ポリビニルアルコールのケン化度は、95mol%以下であり、89.0mol%以下であることが好ましい。また、その下限はとくに限定されないが、40mol%以上、より好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上である。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、第4級アンモニウム塩が側鎖に導入されたポリビニルアルコールが例示される。
また、アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、スルホン酸基が側鎖に導入されたポリビニルアルコール、カルボキシ基が側鎖に導入されたポリビニルアルコールが例示される。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、エチレンオキサイド基が側鎖に導入されたポリビニルアルコールが例示される。
ポリビニルアルコールは、ケン化度および平均重合度の異なる種々の製品や、ポリビニルアルコールの各種の変性物が、たとえば、株式会社クラレ、三菱ケミカル株式会社、信越アステック株式会社等から市販されている。
JIS K 6726:1994に準拠して測定したポリビニルアルコールの平均重合度は、線熱膨張率を低くする観点から、好ましくは300以上、より好ましくは400以上であり、そして、好ましくは4,000以下が好ましく、より好ましくは3,000以下、さらに好ましくは2,500以下である。
シートへのポリビニルアルコールの配合量は、吸水率の低いシートを得る観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、よりさらに好ましくは10質量部以下、とくに好ましくは7質量部以下であり、そして、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上である。
<架橋剤>
本発明のシートは、さらに架橋剤を配合してなることが好ましい。架橋剤を配合することにより、シートとしたときに、架橋剤によって架橋構造が形成され、より吸水率および線熱膨張率が低いシートが得られる。
架橋剤としては、微細繊維状セルロース、樹脂、またはポリビニルアルコールが有する親水性基と反応性を有する架橋剤が好ましく、樹脂が有する親水性基としては、水酸基およびカルボキシ基が例示される。ポリビニルアルコールが有する親水性基としては、水酸基が例示され、ポリビニルアルコールがカチオン変性ポリビニルアルコールである場合には、カチオン性基が、また、ポリビニルアルコールがアニオン変性ポリビニルアルコールである場合には、アニオン性基が、また、ポリビニルアルコールがノニオン変性ポリビニルアルコールである場合には、ノニオン性基が親水性基として例示される。
架橋剤は、1分子内に水酸基およびカルボキシ基から選択される少なくとも1つと反応性を有する官能基を2つ以上有する化合物であることがより好ましい。前記官能基としては、カルボジイミド基、イソシアネート基(イソシアナト基)、オキサゾリン基、アジリジン基、エポキシ基等が例示され、好ましくはカルボジイミド基、イソシアネート基、オキサゾリン基である。
架橋剤としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物が例示され、これらの中でも、架橋剤は、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、およびオキサゾリン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。より吸水率および線熱膨張率の低いシートを得る観点から、イソシアネート化合物およびカルボジイミド化合物から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、カルボジイミド化合物であることがさらに好ましい。
カルボジイミド化合物は、1分子中にカルボジイミド基を複数有する化合物であればとくに限定されない。
イソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基(イソシアナト基ともいう)を複数有する化合物であればとくに限定されない。たとえば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)が例示される。
オキサゾリン化合物は、1分子中にオキサゾリン基を複数有するものであれば、とくに限定されない。たとえば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、SBR樹脂、ポリオレフィン樹脂に、オキサゾリン基をグラフト結合させたものが例示される。
オキサゾリン化合物のオキサゾリン価(オキサゾリン基1モルあたりのオキサゾリン化合物の質量)(g solid/eq.)、好ましくは40g solid/eq.以上であり、好ましくは10,000g solid/eq.以下である。
架橋剤の配合量は、樹脂を100質量部としたとき、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
[シートの製造方法]
本発明のシートは、下記工程1〜3をこの順で有する方法により製造することが好ましい。
工程1:繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールとを混合して、混合物を得る工程
工程2:工程1で得られた混合物と、水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂とを混合して、シート用組成物を得る工程
工程3:シート用組成物からシートを製造する工程
また、シートの配合成分として、架橋剤を使用する場合には、工程2が、工程1で得られた混合物と、水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂とを混合したのち、さらに架橋剤と混合して、シート用組成物を得る工程であることが好ましい。
なお、工程1において、微細繊維状セルロースと湿潤紙力増強剤とを混合した後、ポリビニルアルコールと混合してもよく、微細繊維状セルロースとポリビニルアルコールとを混合した後、湿潤紙力増強剤を混合してもよい。
上記の製造方法により得られたシートは、吸水率および線熱膨張率が低く、透明性に優れるとともに、高湿下における寸法安定性に優れる。
上記の製造方法では、微細繊維状セルロースと、湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールとを混合して、混合物を得た後に、該混合物に樹脂を混合して、シート用組成物を得る。このように、微細繊維状セルロースと湿潤紙力増強剤とポリビニルアルコールとを先に混合することによって、微細繊維状セルロースと湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールとの混合が均一となり、その結果、透明性に優れるシートが得られるものと推定される。一方、微細繊維状セルロースと樹脂とを先に混合した後に湿潤紙力増強剤を混合した場合には、樹脂が微細繊維状セルロースと湿潤紙力増強剤との接触を妨げることにより耐水性が低下する傾向にある。また、微細繊維状セルロースと湿潤紙力増強剤との反応が偏在的になることにより、混合液中で一部凝集を生じさせる傾向があり、透明性が低下する傾向にある。
また、シートに架橋剤を配合する場合には、微細繊維状セルロースと湿潤紙力増強剤とポリビニルアルコールとを混合し、さらに樹脂を添加して混合した後に、架橋剤を配合することが好ましい。このような配合順とすることにより、樹脂と架橋剤による架橋が先に生じることによる微細繊維状セルロースの樹脂への均一な分散を抑制することがないので好ましい。
なお、本発明において、各工程で使用する各成分や、各成分の含有量は、シートについて記載した各成分や各成分の含有量の好ましい範囲と同様である。
また、本発明のシートの有する各特性、たとえば、吸水率、線熱膨張率、ヘーズ、高湿下における寸法安定性等は、本発明のシートの製造方法により得られたシートの好ましい特性である。
シートは、微細繊維状セルロース、湿潤紙力増強剤、ポリビニルアルコール、および樹脂の他に、上述した架橋剤に加え、さらに、たとえば界面活性剤、有機イオン、カップリング剤、無機層状化合物、無機化合物、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、および分散剤から選択される1種または2種以上の添加剤を含んでもよい。
これらの添加剤は工程1または工程2において添加すればよく、添加剤の種類、量、および性質等に基づいて、添加する工程を適宜選択すればよい。
工程1および工程2の混合では、公知の方法を適宜採用すればよく、また、均一に混合可能となるように、混合時間、撹拌条件、混合温度等の混合条件を適宜選択すればよい。
工程3は、シート用組成物からシートを製造する工程である。
シートの製造工程は、シート用組成物を基材上に塗工する塗工工程、または当該シート用組成物を抄紙する抄紙工程を含む。これにより、シートが得られることとなる。
本発明において、シートの固形分中の微細繊維状セルロースの含有量が50質量%以下であることから、塗工工程および抄紙工程のうち、塗工工程であることが好ましい。
〔塗工工程〕
塗工工程では、たとえば微細繊維状セルロース、湿潤紙力増強剤、ポリビニルアルコール、および樹脂、並びに任意に架橋剤を含むシート用組成物を基材上に塗工し、これを乾燥して形成されたシートを基材から剥離することによりシートを得ることができる。また、塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。
塗工工程で用いる基材の材質は、とくに限定されないが、シート用組成物に対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて好ましい。本発明において、各種基材への貼り付きが抑制され、剥離性に優れることから、基材の材質を選ばずに塗工することができる。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板が好ましいが、とくに限定されない。たとえばアクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄板の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を用いることができる。
塗工工程において、シート用組成物の粘度が低く、基材上で展開してしまう場合には、所定の厚みおよび坪量のシートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠としては、とくに限定されないが、たとえば乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。このような観点から、樹脂板または金属板を成形したものがより好ましい。本実施形態においては、たとえばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリプロピレン板、ポリカーボネート板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミニウム板、亜鉛板、銅板、鉄板等の金属板、およびこれらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を成形したものを用いることができる。
シート用組成物を基材に塗工する塗工機としては、とくに限定されないが、たとえばロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。シートの厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターがとくに好ましい。
シート用組成物を基材へ塗工する際のシート用組成物温度および雰囲気温度(以下、シート用組成物の温度および雰囲気温度を総称して、「塗工温度」という。)は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましく、15℃以上50℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上40℃以下であることがとくに好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、シート用組成物をより容易に塗工できる。塗工温度が上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が上述した好ましい範囲となるように、シート用組成物を基材に塗工することが好ましい。坪量が所望の範囲となるように塗工することで、より透明性、強度および柔軟性に優れたシートが得られる。
塗工工程は、上述のとおり、基材上に塗工したシート用組成物を乾燥させる工程を含む。シート用組成物を乾燥させる工程は、とくに限定されないが、たとえば非接触の乾燥方法、もしくはシートを固定しながら乾燥する方法、またはこれらの組み合わせにより行われる。
非接触の乾燥方法としては、とくに限定されないが、たとえば熱風、赤外線、遠赤外線もしくは近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、または真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、とくに限定されないが、たとえば赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができる。
加熱乾燥法における加熱温度は、とくに限定されないが、たとえば20℃以上150℃以下とすることが好ましく、25℃以上120℃以下とすることがより好ましく、50℃以上100℃以下とすることがさらに好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができる。また、加熱温度を上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制および繊維状セルロースの熱による変色の抑制を実現できる。
〔抄紙工程〕
抄紙工程は、抄紙機によりシート用組成物を抄紙することにより行われる。抄紙工程で用いられる抄紙機としては、とくに限定されないが、たとえば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等の公知の抄紙方法を採用してもよい。
抄紙工程は、シート用組成物をワイヤーにより濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、このシートをプレス、乾燥することにより行われる。シート用組成物を濾過、脱水する際に用いられる濾布としては、とくに限定されないが、たとえば繊維状セルロースおよび樹脂粒子は通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないものであることがより好ましい。このような濾布としては、とくに限定されないが、たとえば有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはとくに限定されないが、たとえばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。本実施形態においては、たとえば孔径0.1μm以上20μm以下であるポリテトラフルオロエチレンの多孔膜や、孔径0.1μm以上20μm以下であるポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
抄紙工程において、シート用組成物からシートを製造する方法は、たとえば微細繊維状セルロース、湿潤紙力増強剤および樹脂を配合してなるシート用組成物を無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたシート用組成物から分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させてシートを生成する乾燥セクションとを備える製造装置を用いて行うことができる。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
抄紙工程において用いられる脱水方法としては、とくに限定されないが、たとえば紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられる。これらの中でも、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、さらにロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、抄紙工程において用いられる乾燥方法としては、とくに限定されないが、たとえば紙の製造で用いられている方法が挙げられる。これらの中でも、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどを用いた乾燥方法がより好ましい。
[積層体]
本発明は、上述した本発明のシートに、さらに他の層を積層した構造を有する積層体に関するものであってもよい。このような他の層は、シートの両表面上に設けられていてもよく、シートの一方の面上にのみ設けられていてもよい。シートの少なくとも一方の面上に積層される他の層としては、たとえば、有機層や無機層を挙げることができる。これらの層を形成することにより、よりヘーズを低下することができるので好ましい。
すなわち、本発明のシートは、上述した本発明のシートの少なくとも一方の面に、無機層および有機層の少なくともいずれか1つが形成されているものである。
<有機層>
有機層は、樹脂により形成された層であることが好ましく、有機層は、天然樹脂や合成樹脂を主成分とする層である。ここで、主成分とは、有機層の全質量に対して、50質量%以上含まれている成分を指す。樹脂の含有量は、有機層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがとくに好ましい。なお、樹脂の含有量は、100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
天然樹脂としては、たとえば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
合成樹脂としては、たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリウレタン樹脂であることがより好ましい。なお、アクリル樹脂は、ポリアクリロニトリルおよびポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくともいずれか1種であることが好ましい。
有機層を構成するポリカーボネート樹脂としては、たとえば、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの具体的なポリカーボネート系樹脂は公知であり、たとえば特開2010−023275号公報に記載されたポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
有機層を構成するポリウレタン樹脂としては、たとえば、上述した樹脂で例示したポリウレタン樹脂が例示される。
また、耐水性や高湿下での寸法性をさらによくするために、有機層を構成する樹脂に架橋剤を併用してもよい。
有機層を構成する樹脂は1種を単独で用いてもよく、複数の樹脂成分が共重合または、グラフト重合してなる共重合体を用いてもよい。また、複数の樹脂成分を物理的なプロセスで混合したブレンド材料として用いてもよい。
有機層の形成方法は、とくに限定されない。たとえば、有機層形成用の樹脂組成物をシート上に塗工することで形成してもよい。また、予め形成した有機層をシート上に積層してもよい。この場合、有機層とシートの間には接着層を設けてもよく、このような接着層も有機層に包含されるまた、シート製造時の基材が樹脂の場合、基材を剥離せずに、有機層の一部としてもよい。
シートと有機層との間には、接着層が設けられていてもよく、また接着層が設けられておらず、シートと有機層が直接密着をしていてもよい。シートと有機層との間に接着層が設けられる場合は、接着層を構成する接着剤として、たとえば、アクリル系樹脂を挙げることができる。また、アクリル系樹脂以外の接着剤としては、たとえば、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
シートと有機層との間に接着層が設けられていない場合は、有機層が密着助剤を有してもよく、また、有機層の表面に親水化処理等の表面処理を行ってもよい。
密着助剤としては、たとえば、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基およびシラノール基から選択される少なくとも1種を含む化合物や、有機ケイ素化合物が挙げられる。中でも、密着助剤はイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)および有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、たとえば、シランカップリング剤縮合物や、シランカップリング剤を挙げることができる。
表面処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ放電処理、UV照射処理、電子線照射処理、火炎処理等を挙げることができる。
有機層の厚みは、とくに限定されないが、たとえば、100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましく、500nm以上であることがさらに好ましい。また、有機層の厚みは、透明性、フレキシブル性の観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。なお、上記厚みは、シートの両面に有機層を設ける場合には、片面あたりの有機層の厚みの好ましい範囲である。
<無機層>
無機層を構成する物質としては、とくに限定されないが、たとえばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン;これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、もしくは酸化炭化窒化物;またはこれらの混合物が挙げられる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、またはこれらの混合物が好ましい。
無機層の形成方法は、とくに限定されない。一般に、薄膜を形成する方法は大別して、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)と物理成膜法(Physical Vapor Deposition、PVD)とがあるが、いずれの方法を採用してもよい。CVD法としては、具体的には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。PVD法としては、具体的には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
また、無機層の形成方法としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、ALD)を採用することもできる。ALD法は、形成しようとする膜を構成する各元素の原料ガスを、層を形成する面に交互に供給することにより、原子層単位で薄膜を形成する方法である。成膜速度が遅いという欠点はあるが、プラズマCVD法以上に、複雑な形状の面でもきれいに覆うことができ、欠陥の少ない薄膜を成膜することが可能であるという利点がある。また、ALD法には、膜厚をナノオーダーで制御することができ、広い面を覆うことが比較的容易である等の利点がある。さらにALD法は、プラズマを用いることにより、反応速度の向上、低温プロセス化、未反応ガスの減少が期待できる。
無機層の厚みは、とくに限定されないが、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、100nm以上であることが特に好ましい。また、200nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。無機層の厚みは、透明性、フレキシブル性の観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。上記厚みは、シートの両面に無機層を設ける場合には、片面あたりの無機層の厚みの好ましい範囲である。
[シートの特性]
<吸水率>
本発明のシートは、下記式(1)で表される吸水率が50%以下である。
吸水率=(W−Wd)/Wd×100 (1)
(ここで、Wはシートをイオン交換水に24時間浸漬した後の質量、Wdはシートを23℃、相対湿度50%で24時間調湿した後の質量を示す。)
本発明において、シートの固形分中の微細繊維状セルロースの配合量を30質量%以下とし、また、シートに配合する成分として、微細繊維状セルロースと、樹脂と、湿潤紙力増強剤とポリビニルアルコールとを使用することにより、上記の吸水率が得られる。
上記の吸水率は、低いことが好ましいが、製造上の観点から、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下、よりさらに好ましくは30%以下、とくに好ましくは20%以下である。吸水率の下限はとくに限定されず、たとえば、0%であってもよい。
<ヘーズ>
本発明のシートは、ヘーズが3.0%以下である。ヘーズを前記範囲内とすることにより透明性に優れるシートとなる。
シートのヘーズは、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下、よりさらに好ましくは1.0%以下である。一方で、シートのヘーズの下限値は、とくに限定されず、たとえば0%であってもよい。ここで、シートのヘーズは、たとえばJIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いて測定される値である。
<線熱膨張率>
本発明のシートは、100〜150℃における線熱膨張率が60ppm/K以下であることが好ましい。
上記の線熱膨張率は、低いことが好ましいが、製造上の観点から、より好ましくは50ppm/K以下、さらに好ましくは40ppm/K以下、よりさらに好ましくは30ppm/K以下、とくに好ましくは20ppm/K以下である。線熱膨張率の下限はとくに限定されず、たとえば、0ppm/Kであってもよい。
シートの100〜150℃における線熱膨張率は、実施例に記載の方法により測定される。
<全光線透過率>
本発明のシートの全光線透過率は、たとえば80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。一方で、シートの全光線透過率の上限値は、とくに限定されず、たとえば100%であってもよい。ここで、シートの全光線透過率は、たとえばJIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いて測定される値である。
<YI値>
本発明のシートは、透明かつ、黄色味を有しないことが好ましく、本発明のシートのYI値は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下、よりさらに好ましくは0.6以下である。YI値の下限はとくに限定されず、0であってもよい。
シートのYI値は、JIS K 7373:2006に準拠して測定される。
<耐ワレ折り曲げ回数>
本発明のシートは、柔軟性および耐屈曲性に優れることが好ましい。本発明のシートを、屈曲角度180°、屈曲速度30回/分、屈曲半径1mmで折り曲げ試験(屈曲試験)をしたとき、耐ワレ折り曲げ回数が10万回以上であることが好ましい。なお、「耐ワレ折り曲げ回数」とは、所定回数の折り曲げ試験後、割れの発生がないことを意味する。なお、所定回数の折り曲げ試験後、折りグセがないか、または折りグセはあっても、筋の発生や白化がないことが好ましい。
耐ワレ折り曲げ回数は、より好ましくは20万回以上、さらに好ましくは40万回以上である。
屈曲半径が0.5mm以下であっても、耐屈曲性を有することがより好ましい。すなわち、屈曲半径0.5mmで同様に折り曲げ試験をしたときの耐ワレ折り曲げ回数は、好ましくは10万回以上、より好ましくは20万回以上、さらに好ましくは40万回以上である。
屈曲試験は、実施例に記載の方法により実施される。
<溶媒および水の含有量>
本発明において、シートは、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、たとえば水、および解繊処理工程において分散媒として例示した極性有機溶媒を用いることができる。
これらの中でも、溶媒が水を含有することが好ましく、溶媒中の水の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
シート中における水の含有量(以下、「含水率」ともいう)は、たとえばシートの全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、2質量%以上であることがよりさらに好ましい。これにより、シートに柔軟性を付与することができる。一方で、シート中における含水率は、たとえばシートの全質量に対して9質量%以下とすることが好ましく、8.5質量%以下であることがより好ましい。これにより、可とう性の良好なシートを得ることができる。また、シート中における水の含有量を上記の範囲内とすることにより、系内に水分の持ち込みを嫌う、各種の用途への応用が期待されるので好ましい。
シート中における水の含有量(含水率、質量%)は、たとえば以下の手順で算出することができる。まず、50mm角のシートを温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、シートの質量W0を測定する。次いで、このシートを105℃の恒温乾燥機にて16時間乾燥させた後、シートの質量W1を測定する。測定した質量から、下記式2に従ってシート中における水の含有量を算出する。
(式2)・・・シート中における水の含有量(含水率)=(1−W1/W0)×100
<シートの厚み>
本発明において、シートの厚みはとくに限定されないが、所望の透明性、吸水率および線熱膨張率を得る観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
<シートの坪量>
シートの坪量は、とくに限定されないが、たとえば10g/m以上であることが好ましく、20g/m以上であることがより好ましく、30g/m以上であることがさらに好ましい。また、シートの坪量は、とくに限定されないが、たとえば200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい。ここで、シートの坪量は、たとえばJIS P 8124に準拠し、算出することができる。
<シートの密度>
シートの密度は、とくに限定されないが、たとえば0.1g/cm以上であることが好ましく、0.5g/cm以上であることがより好ましく、0.8g/cm以上であることがさらに好ましい。また、シートの密度は、とくに限定されないが、たとえば5.0g/cm以下であることが好ましく、3.0g/cm以下であることがより好ましく、1.5g/cm以下であることがさらに好ましい。ここで、シートの密度は、50mm角のシートを23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、シートの厚みおよび質量を測定することにより算出することができる。
[積層体の特性]
本発明において、積層体の吸水率、線熱膨張率、ヘーズ、全光線透過率、YI値、耐ワレ折り曲げ回数は、積層体についても同様の範囲であることが好ましい。
とくに、本発明の積層体は、耐ワレ折り曲げ回数が10万回以上であることが好ましく、20万回以上であることがより好ましく、40万回以上であることがさらに好ましい。
本発明のシートは、吸水率および線熱膨張率が低く、また、透明性が高い。さらに、高湿下における寸法安定性に優れる。本発明のシートは、水分の持ち込みや、熱膨張が問題となる各種の用途に適用可能である。具体的には、たとえば、各種のディスプレイ装置、太陽電池等の光透過性の基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種乗り物や建材の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適用可能である。
また、本発明のシートを備える積層体は、吸水率および線熱膨張率が低く、透明性が高く、高湿下における寸法安定性に優れることが好ましく、水分の持ち込みや、熱膨張が問題となる各種の用途に適用が期待される。具体的には、上述した各種の用途への適用が期待される。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<製造例1>
[微細繊維状セルロース分散液(1)の製造]
原料パルプとして、王子製紙株式会社製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量208g/mシート状、離解してJIS P 8121:2012に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。
この原料パルプに対してリンオキソ酸化処理を次のようにして行った。
まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を添加して、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
次いで、得られたリン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。
洗浄処理は、リン酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
次いで、洗浄後のリン酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。
まず、洗浄後のリン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたリン酸化パルプを得た。次いで、中和処理後のリン酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。
これにより得られたリン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm−1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。
また、得られたリン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
得られたリン酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(株式会社スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて4回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液(1)を得た。
X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
また、微細繊維状セルロースの繊維幅を透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。なお、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(強酸性基量(第1解離酸量))は、1.45mmol/gであった。なお、総解離酸量は2.45mmol/gであった。
<製造例2>
[微細繊維状セルロース分散液(2)の製造]
リン酸二水素アンモニウムの代わりに亜リン酸(ホスホン酸)33質量部を用いた以外は、製造例1と同様に操作を行い、亜リン酸化パルプおよび微細繊維状セルロース分散液(2)を得た。
得られた亜リン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1210cm−1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基(ホスホン酸基)が付加されていることが確認された。
また、得られた亜リン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
X線回折により、得られた微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。また、微細繊維状セルロース分散液(2)について、後述する測定方法で測定されるセルロースに導入された亜リン酸基量(第1解離酸量)および総解離酸量はそれぞれ、1.51mmol/g、1.54mmol/gであった。
<製造例3>
[微細繊維状セルロース分散液(3)の製造]
原料パルプとして、王子製紙株式会社製の針葉樹クラフトパルプ(未乾燥)を使用した。この原料パルプに対してアルカリTEMPO酸化処理を次のようにして行った。
まず、乾燥質量100質量部相当の上記原料パルプと、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)1.6質量部と、臭化ナトリウム10質量部を、水10,000質量部に分散させた。次いで、13質量部の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して3.8mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10以上10.5以下に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。
次いで、得られたTEMPO酸化パルプに対して洗浄処理を行った。
洗浄処理は、TEMPO酸化後のパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5,000質量部のイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
また、得られたTEMPO酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
得られたTEMPO酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(株式会社スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて4回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液(3)を得た。
微細繊維状セルロース分散液(3)について、後述する測定方法で測定されるセルロースに導入されたカルボキシ基量は、1.30mmol/gであった。
<製造例4>
[微細繊維状セルロース分散液(4)の製造]
リン酸二水素アンモニウムの代わりにアミド硫酸(スルファミン酸)38質量部を用い、加熱時間を19分間に延長した以外は、製造例1と同様に操作を行い、硫酸化パルプおよび微細繊維状セルロース分散液(4)を得た。
得られた硫酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1220〜1260cm−1付近に硫酸エステル基のS=Oに基づく吸収が観察され、パルプに硫酸エステル基が付加されていることが確認された。また、得られた硫酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。なお、後述する測定方法で測定されるセルロースに導入された硫酸エステル基量は1.12mmol/gであった。
[ポリビニルアルコール溶液(1)の作製]
イオン交換水にポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、クラレポバール22−88、重合度:2200、ケン化度:87.0〜89.0mol%)を10質量%となるように加え、95℃で1時間撹拌・溶解し、ポリビニルアルコール溶液(1)を得た。
[ポリビニルアルコール溶液(2)の作製]
イオン交換水にポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、クラレポバール5−74、重合度:500、ケン化度72.5〜74.5mol%)を10質量%となるように加え、95℃で1時間撹拌・溶解し、ポリビニルアルコール溶液(2)を得た。
[ポリビニルアルコール溶液(3)の作製]
イオン交換水にポリビニルアルコール(三菱ケミカル株式会社製、ゴーセネックス(登録商標)K−434、重合度:1500、ケン化度:85.5〜88.0mol%、カチオン変性)を10質量%となるように加え、95℃で1時間撹拌・溶解し、ポリビニルアルコール溶液(3)を得た。
[繊維幅の測定]
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。微細繊維状セルロース分散液の上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。これを乾燥した後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEOL−2000EX)により観察した。
[リンオキソ酸基量の測定]
微細繊維状セルロースのリンオキソ酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ観測される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ(図1)。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値をリン酸基量(mmol/g)とした。
リンオキソ酸化パルプについては、リンオキソ酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製し、このスラリーを、湿式微粒化装置(株式会社スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理して得られた分散液に対して、上述した方法と同様にアルカリを用いた滴定を行った。
[カルボキシ基量の測定]
微細繊維状セルロースおよびカルボキシ基導入パルプ繊維のカルボキシ基量は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を30秒に1回、50μLずつ加えた以外は[リンオキソ酸基量の測定]と同様に測定した。カルボキシ基量(mmol/g)は、計測結果のうち図2に示す第1領域に相当する領域において必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して算出した。
<硫酸エステル基(硫黄オキソ酸基)量の測定>
繊維状セルロースの硫酸エステル基(硫黄オキソ酸基)量は、次のように測定した。製造例Fで得られた繊維状セルロースを冷凍庫で凍結させた後、凍結乾燥機(ラブコンコ社製FreeZone)で3日間乾燥させた。得られた凍結乾燥物をハンドミキサー(大阪ケミカル製、ラボミルサーPLUS)を用い、回転数20,000rpmで60秒、粉砕処理を行って粉末状にした。
凍結乾燥および粉砕処理後の試料を密閉容器中で硝酸を用いて加圧加熱分解した。その後、適宜希釈してICP−OESで硫黄量を測定した。供試した微細繊維状セルロースの絶乾質量で割り返して算出した値を微細繊維状セルロースの硫酸エステル基量(単位:mmol/g)とした。
<実施例1>
固形分濃度が2.0質量%の微細繊維状セルロース分散液(1)に、ポリビニルアルコールが、微細繊維状セルロース11.1質量部に対し5.6質量部となるように、ポリビニルアルコール溶液(1)を添加し、撹拌した。次いで、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン(荒川化学工業株式会社製、アラフィックス255)を微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、3.3質量部となるように添加し、撹拌した。次いで、ウレタン樹脂が、微細繊維状セルロース11.1質量部に対し100質量部となるようにウレタンディスパージョン(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックス420NS、平均粒子径100nm)を添加し、撹拌し、塗工液を得た。
上記の原料の添加順は、後述する(1)の順である。
〔シート化〕
上記の方法で得られた塗工液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム上に、アプリケーターで塗工し、100℃の乾燥機で1時間乾燥し、シートを得た。なお、アプリケーターのクリアランスは、得られるシートの厚みが40〜50μmの間に入るように適宜調整した。
<実施例2>
ポリビニルアルコールが16.7質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
<実施例3>
ポリビニルアルコールが33.3質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
<実施例4>
固形分濃度が2.0質量%の微細繊維状セルロース分散液(1)に、ポリビニルアルコールが微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、5.6質量部となるように、ポリビニルアルコール溶液(1)を添加し、撹拌した。次いで、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン(荒川化学工業株式会社製、アラフィックス255)を微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、3.3質量部となるように添加し、撹拌した。次いで、ウレタン樹脂が微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、100質量部となるようにウレタンディスパージョンを添加し、撹拌した。次いで、ウレタン樹脂100質量部に対し8質量部となるように架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製、カルボジライトV−02−L2)を添加し、撹拌したものをシート原料とし、実施例1と同様にしてシート化した。
<実施例5>
ポリビニルアルコールが33.3質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例6>
微細繊維状セルロースが16.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。
<実施例7>
ポリビニルアルコールが16.7質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例6と同様にしてシートを得た。
<実施例8>
ポリビニルアルコールが33.3質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例6と同様にしてシートを得た。
<実施例9>
微細繊維状セルロースが16.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例10>
ポリビニルアルコールが33.3質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例9と同様にしてシートを得た。
<実施例11>
微細繊維状セルロースが33.3質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
<実施例12>
微細繊維状セルロースが33.3質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例13>
ウレタンディスパージョンの代わりに、ウレタン変性アクリルディスパージョン(ジャパンコーティングレジン株式会社製、リカボンドSU−100、平均粒子径=84nm)を添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
<実施例14>
ポリビニルアルコールが16.7質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例13と同様にしてシートを得た。
<実施例15>
ウレタンディスパージョンの代わりに、ウレタン変性アクリルディスパージョンを添加した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例16>
微細繊維状セルロースが16.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、実施例13と同様にしてシートを得た。
<実施例17>
微細繊維状セルロースが16.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、実施例15と同様にしてシートを得た。
<実施例18>
ポリビニルアルコール溶液(1)の代わりに、ポリビニルアルコール溶液(2)を添加した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例19>
ポリビニルアルコール溶液(1)の代わりに、ポリビニルアルコール溶液(2)を添加した以外は、実施例9と同様にしてシートを得た。
<実施例20>
ポリビニルアルコール溶液(1)の代わりに、ポリビニルアルコール溶液(3)を添加した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例21>
ポリビニルアルコール溶液(1)の代わりに、ポリビニルアルコール溶液(3)を添加した以外は、実施例9と同様にしてシートを得た。
<実施例22>
微細繊維状セルロース分散液(1)の代わりに、微細繊維状セルロース分散液(2)を使用した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例23>
微細繊維状セルロース分散液(1)の代わりに、微細繊維状セルロース分散液(3)を使用した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例24>
微細繊維状セルロース分散液(1)の代わりに、微細繊維状セルロース分散液(4)を使用した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<実施例25>
ウレタンディスパージョンに、架橋剤がウレタン樹脂100質量部に対して8質量部となるように添加した溶液を、実施例9で作製したシートの両面に、乾燥後膜厚が片面2μmとなるようにアプリケーターで塗工し、表面にウレタン樹脂を塗工したシートを得た。
<比較例1>
固形分濃度が2.0質量部の微細繊維状セルロース分散液(1)にポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンを微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、3.3質量部となるように添加し、撹拌した。次いで、ウレタンディスパージョンを微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、100質量部となるように添加し、撹拌したものをシート原料とし、実施例1と同様にしてシート化した。
<比較例2>
固形分濃度が2.0質量%の微細繊維状セルロース分散液(1)にポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンを微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、3.3質量部となるように添加し、撹拌した。次いで、ウレタンディスパージョンを微細繊維状セルロース11.1質量部に対し、ウレタン樹脂が100質量部となるように添加し、撹拌した。次いで、架橋剤をウレタン樹脂100質量部に対し、8質量部となるように添加し、撹拌したものをシート原料とし、実施例1と同様にしてシート化した。
<比較例3>
ポリビニルアルコールが55.6質量部となるようにポリビニルアルコール溶液(1)を添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
<比較例4>
微細繊維状セルロースが16.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、比較例1と同様にしてシートを得た。
<比較例5>
微細繊維状セルロースが16.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、比較例2と同様にしてシートを得た。
<比較例6>
微細繊維状セルロースが16.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は、比較例3と同様にしてシートを得た。
<比較例7>
原料の添加順を、後述の(3)の順に変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
<比較例8>
原料の添加順を、後述の(3)の順に変更した以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
<比較例9>
微細繊維状セルロースが66.7質量部となるように微細繊維状セルロース分散液(1)を添加した以外は実施例4と同様にしてシートを得た。
<シート原料の添加順>
実施例・比較例の表中の添加順に関しては下記のとおりである。
(1)微細繊維状セルロース分散液にポリビニルアルコール溶液を添加してから、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンを添加し、その後、樹脂を添加した。また、実施例4、5、9、10、12、15、17〜25に関しては、樹脂を添加後に、さらに架橋剤を添加した。
なお、ポリビニルアルコール溶液とポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンの添加順は順不同であり、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンをポリビニルアルコール溶液の添加前に添加しても、同様の結果が得られた。
(2)微細繊維状セルロース分散液にポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンを添加してから、樹脂を添加した。また、比較例2、5に関しては、樹脂を添加後に、架橋剤を添加した。
(3)微細繊維状セルロース分散液にポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンを添加してから樹脂を添加し、その後、ポリビニルアルコールを添加した。また、比較例8に関しては、樹脂を添加後に架橋剤を添加した。
[測定方法]
<シートの全光線透過率>
JIS K 7361:1997に準拠し、ヘーズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いて全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
<シートのヘーズ>
JIS K 7136:2000に準拠し、ヘーズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いてヘーズを測定した。結果を表1に示す。
<シートの黄色度(YI値)>
JIS K 7373:2006に準拠し、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いてシートの黄色度(YI値)を測定した。結果を表1に示す。
<シートの線熱膨張率>
シートをレーザーカッターにより、幅4mm×長さ30mmに切り出した。これを、熱機械分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、TMA7100)にセットして、引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下で室温から180℃まで5℃/分で昇温、180℃から25℃まで5℃/分で降温した際の100℃から150℃の測定値から線熱膨張率(ppm/K)を求めた。結果を表1に示す。
<シートの吸水率>
50mm角のシートを切り出し、23℃、相対湿度50%で24時間調湿したシートの質量をWd(g)、イオン交換水に24時間浸漬した後のシート質量をW(g)とし、下記の式から吸水率を求めた。結果を表1に示す。
吸水率(%)=(W−Wd)/Wd×100
<SUSからの剥離性>
各実施例・比較例にてシートを作製する際の基材をSUS板(SUS304 2B)に変え、シート化後、SUS板からの剥離性を下記のとおり評価した。
A:そのまま剥離が容易である、または水で湿らせた布巾でシートを覆い、シートを湿らせることで容易に剥離できる
B:上記のいずれの方法でも剥離ができない
なお、実施例25については表面に樹脂を塗工する前のシート(実施例9)の剥離性を評価した。
<高温高湿下でのシートの寸法安定性>
50mm角のシートを、85℃、85%RH条件下に240時間静置し、しわやぼこつき等外観で下記のとおり評価した。結果を表1に示す。
A:試験前(23℃、50%RH条件下で静置時)と比較し、しわ・ぼこつきがなく、平滑である
B:試験前と比較し、全体の平滑性は保持しているものの、一部しわ・ぼこつきがみられる
C:試験前と比較し、全体にしわ・ぼこつきが見られ、平滑なシートでない
<屈曲時の耐ワレ性・耐久性評価>
シートを15mm×100mmに切り出した。これを、折り曲げ試験機(ユアサシステム機器株式会社製、DMLHP−CS)にて、屈曲半径1mm、または0.5mm、屈曲速度30回/分、屈曲角度180°の折り曲げ試験に供した。屈曲回数40万回まで実施し、筋の発生や白化について以下の評価を行った。
−屈曲回数20万回での評価−
屈曲半径1mmで、屈曲試験を20万回行った後のシートの外観から、下記のとおり耐ワレ性・耐久性を評価した。結果を表1に示す。
A:屈曲試験20万回後、折りグセがない、または折りグセはあるが、筋の発生や白化がみられない
B:屈曲試験20万回後も割れはないが、筋の発生や白化がみられる、または、屈曲試験5万回終了時点で折りグセが発生
C:屈曲試験20万回を実施する前に割れてしまう
−屈曲回数40万回での評価−
上記の屈曲回数20万回において、評価がAであったサンプルについては、屈曲試験を40万回行った後のシートの外観から、下記のとおり耐ワレ性・耐久性を評価した。結果を表1に示す。
A:屈曲半径0.5mmおよび1mmのいずれにおいても、筋の発生や白化がみられない
B:屈曲半径0.5mmおよび1mmのいずれかにおいて、筋の発生や白化がみられる
Figure 2021175800
Figure 2021175800
Figure 2021175800
実施例では、ヘーズが3.0%以下であり、吸水率が50%以下であり、さらに、線熱膨張率が低く、高湿下での寸法安定性に優れたシートが得られた。また、実施例のシートは、全光透過率が高く、YI値が3.0以下であった。
また、シートの固形分中の樹脂の配合量が72質量%未満である実施例(実施例3、5、8、10、11、12)では、屈曲角度180°、屈曲速度30回/分、屈曲半径1mmで折り曲げ試験をしたときに、20万回後も割れは発生しないものの、白化が見られ、または、5万回終了時点で折りグセが発生した。一方、樹脂の配合量が72質量%以上である上述以外の実施例では、耐ワレ折り曲げ回数が20万回以上であり、優れた耐ワレ・耐久性を示すことが明らかとなった。また、SUSからの剥離性にも優れ、製造容易性に優れることが示された。
一方、ポリビニルアルコールを配合していない比較例1、2、4、5では、SUSから剥離ができず、製造の際にSUS製の基材やロールへの貼り付きが懸念された。
また、比較例3および6では、ポリビニルアルコールの配合量が多く、吸水率が50%を超え、本発明の範囲を満たさなかった。さらに、比較例3および6は、線熱膨張率も高く、高温高湿下での寸法安定性にも劣り、耐ワレ・耐久性にも劣るものであった。
添加順が異なる比較例7および8では、ヘーズが3.0%を超え、本発明の範囲を満たさなかった。これは、相溶性を向上させたい樹脂とCNFの混合の前にポリビニルアルコール添加しないことで、樹脂とCNF間の相溶性が向上しなかったためであると考えられる。
さらに、微細繊維状セルロースの配合量が30質量%を超える比較例9では、吸水率が50%を超え、吸水率が本発明の要件を満たさなかった。
本発明によれば、吸水率および線熱膨張率が低く、透明性に優れ、さらに、高湿下における寸法安定性に優れるシートおよびその製造方法が提供される。
本発明のシートは、水分の持ち込みや、熱膨張が問題となる各種の用途に適用が期待される。具体的には、たとえば、各種のディスプレイ装置、太陽電池等の光透過性の基板の用途、また、電子機器の基板、家電の部材、各種乗り物や建材の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適用が期待される。

Claims (14)

  1. 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、水系樹脂エマルションおよび水系樹脂ディスパージョンから選ばれる少なくとも1つに由来する樹脂と、湿潤紙力増強剤と、ポリビニルアルコールとを配合してなるシートであって、
    該シートの固形分中の該微細繊維状セルロースの配合量が30質量%以下であり、
    該シートの下記式(1)で表される吸水率が50%以下であり、かつ、ヘーズが3.0%以下である、
    シート。
    吸水率=(W−Wd)/Wd×100 (1)
    (ここで、Wはシートをイオン交換水に24時間浸漬した後の質量、Wdはシートを23℃、相対湿度50%で24時間調湿した後の質量を示す。)
  2. 前記湿潤紙力増強剤が、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリンである、請求項1に記載のシート。
  3. 前記ポリビニルアルコールが、ケン化度95mol%以下の部分ケン化ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、およびノニオン変性ポリビニルアルコールよりなる群から選択される、請求項1または2に記載のシート。
  4. 前記樹脂が、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれかに記載のシート。
  5. 前記シートの含水率が9質量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のシート。
  6. さらに架橋剤を配合してなる、請求項1〜5のいずれかに記載のシート。
  7. 前記架橋剤が、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、およびオキサゾリン化合物よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載のシート。
  8. 前記シートの固形分中の前記樹脂の配合量が50質量%以上である、請求項1〜7のいずれかに記載のシート。
  9. 前記シートの固形分中の前記湿潤紙力増強剤の配合量が0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のシート。
  10. 前記ポリビニルアルコールの配合量が、前記樹脂100質量部に対して50質量部以下である、請求項1〜9のいずれかに記載のシート。
  11. イエローインデックス(YI)が3以下である、請求項1〜10のいずれかに記載のシート。
  12. 屈曲角度180°、屈曲速度30回/分、屈曲半径1mmで折り曲げ試験をしたときに、耐ワレ折り曲げ回数が20万回以上である、請求項1〜11のいずれかに記載のシート。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載のシートの少なくとも一方の面に、無機層および有機層の少なくともいずれか1つが形成されている、積層体。
  14. 屈曲角度180°、屈曲速度30回/分、屈曲半径1mmで折り曲げ試験をしたときに、耐ワレ折り曲げ回数が20万回以上である、請求項13に記載の積層体。
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